JP2015198170A - 磁石成形体および磁石成形体の製造方法 - Google Patents

磁石成形体および磁石成形体の製造方法 Download PDF

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宜郎 川下
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敏雄 龍輪
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Abstract

【課題】磁石粒子を堆積させて成膜する成膜工法を用いて、磁石粒子の結晶方位を容易に配向させた磁石成形体およびその製造方法を提供する。【解決手段】Sm、FeおよびNを含み、X線回折における(300)方向と(003)方向とのピーク比、(300)/(003)が3.6未満である磁石粒子を堆積させて成膜する粉体成膜により、磁石成形体を得る。また、Sm、FeおよびNを含む磁石粒子を、500℃以下で堆積させて成膜する粉体成膜工程を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、磁石成形体および磁石成形体の製造方法に関し、より詳細には、ボンド磁石に対して磁力をより向上し得る磁石成形体およびその製造方法に関する。
現在、用いられている希土類磁石には、主に焼結磁石とボンド磁石の2種類がある。ボンド磁石は、室温で、優れた磁気特性を有する磁石原料粉末を樹脂で固化成形して用いられている。ボンド磁石が焼結磁石と異なる点は、ボンド磁石の場合、磁石原料粉末が磁気特性を有するのに対し、焼結磁石の場合、磁石原料粉末には磁気特性が乏しく、液相が発生する程度の高温に加熱することで優れた磁気特性が発現する点である。そして、ボンド磁石用の原料粉末については、高温に加熱した場合、逆に磁気特性が劣化してしまう問題が生じる。
Sm-Fe-N合金系の粉末は、優れた磁石特性を有することが知られている。しかし、500℃以上の高温に晒されると、Sm-Fe-N化合物が分解して、αFeとSmの窒化物に分離し、磁力を喪失する問題がある。そのため、一般的には、樹脂で粉末を固めたボンド磁石として用いられる。しかし、この場合、バインダとして樹脂の体積が全体の約3割を占めるため、十分な磁力を得ることができない。
そこで、磁石粉末以外の物質をできるだけ含有させない磁石成形体が得られるような、固化成形方法が求められていた。一般的には、高い圧力を用いた固化成形や熱分解しない温度域での加圧加熱成形が用いられてきたが、いずれも、高圧に耐えうる金型が必要で費用がかかることや、必ずしも十分な密度に到達できないという課題があった。
それに対して、成形型を用いずに成形体を得る方法として、エアロゾルデポジッション(AD法)やコールドスプレイなどの、粒子の融点以下で成膜する成膜技術を用いた固化成形方法が試みられている。例えば、コールドスプレイで磁石粒子を成膜することで、高密度な磁石成形体を容易に得られることが示されている。しかしながら、単純に成膜技術に供した場合は、磁石粉末はランダムな方位を向いて飛行し、等方的に結晶方位が分布した状態で皮膜が成膜する。そのため、十分に強い磁石特性が得ることができないという問題が生じる。
そこで、磁石粒子を配向させた状態で成形するため、磁場中で磁石粒子を成膜させる試みがなされている。例えば、永久磁石を基板の後ろに磁場発生用の磁石を設置して、AD法に適用する例が知られている(例えば、下記非特許文献1)。しかし、この手法では、成膜中に皮膜として密着しなかった磁石粒子が皮膜に混じって皮膜上に吸着して、磁石粒子同士が接合しないで堆積する現象が生じることが示されている。そして、成膜されない磁石粒子の堆積は、ダンパ作用を発生するため成膜ができなくなるという問題を呈することが示されている。ダンパ作用とは、粉末を堆積させていくと粉末の間に空隙ができるため、膜がクッションのような作用をすることにより、ある程度以上は粉末が膜を構成せずに(固着せずに)はね飛ばされたり、粉末により膜が削られるなどの現象をいう。
この問題を解決するために、更に、磁石の設置位置を、粒子の飛行経路に設けることで解決する試みがなされている(下記非特許文献2)。この手法によれば、基板に未接合な粒子が堆積することを防止でき、ある程度結晶方位を揃えた磁石皮膜を得られることが示されている。しかし、飛行経路中に磁石を設置するため、磁化方向が基板と平行方向には配向が可能であるが、垂直方向に配向させることが困難であることが示されている。また、コールドスプレイ法の様に、粉末の吐出口から基板までの距離が十分に確保できない場合は、飛行経路内に強い磁場を発する大型の永久磁石や電磁石システムを設置することが困難で、粒子が回転するほどの磁場を印加することができない問題があった。
J.Magn.Magn.Mater.,290−291(2005)1202−1205 J.Jpn.Soc.Powder Metallurgy,vol.53,No.3,p258
本発明は、上記の従来技術の問題点を解消するためになされたものであり、磁石粒子を堆積させて成膜する成膜工法を用いて、磁石粒子の結晶方位を容易に配向させた磁石成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、X線解析により得られる特定のピーク比を有する磁石成形体が、配向度が向上し磁気特性が向上することを見出した。すなわち、本発明の磁石成形体は、
Sm、FeおよびNを含む磁石粒子を含み、
X線解析における(300)方向と(003)方向とのピーク比、(300)/(003)が3.6未満である、
前記磁石粒子を堆積させて成膜する粉体成膜により得られた磁石成形体である。
本実施形態では、磁石粒子を堆積させて成膜する粉体成膜により製造し、X線解析における特定のピーク比を特定の範囲とすることにより、磁石粒子の結晶の配向が揃い、磁気特性を向上した磁石成形体を提供することができる。
本実施形態の磁石性携帯の製造に用いる成膜装置の概略構成例を示す図である。 磁場形成部の詳細な構成例および成膜領域を示す図である。 基板の表面に形成される磁場分布について説明するための図である。 粒子の塑性変形に伴うエネルギーの弾塑性比を求めるナノインデンテーション法に使う実験装置を模式的に表した概略図である。 図4aの実験装置を使って得られた圧入深さhと荷重Pの関係から弾塑性比の算出するためのグラフである。図中の負荷曲線と除荷曲線とで囲まれた面積(実線のハッチ部分)が、塑性変形に消費したエネルギーEpである。負荷曲線の最大荷重点から横軸(圧入深さh)に下ろした垂線と除荷曲線と横軸で囲まれた面積(破線のハッチ部分)が、弾性変形で吸収されたエネルギーEeである。以上から粒子の塑性変形に伴うエネルギーの弾塑性比=Ee/Ep×100(%)として求められる値である。 実験に用いた磁石のX線解析の結果を示す図である。 本実施形態の磁石成形体のX線解析による(300)/(003)ピーク比と磁気特性との関係を示すプロットである。 本実施形態の磁石成形体の積層回数と膜厚の関係を示す図である。
以下、本実施形態の磁石成形体とその製造方法とに分けて、詳細に説明する。
[磁石成形体]
本実施形態に係る磁石成形体は、Sm、FeおよびNを含む磁石粒子を含み、X線解析における(300)方向と(003)方向とのピーク比、(300)/(003)が3.6未満である、前記磁石粒子を堆積させて成膜する粉体成膜により得られた磁石成形体である。X線解析については、後述の実施例における測定方法により行うものとする。
磁石成形体を構成する磁石粒子の配向度は、X線解析における(300)方向と(003)方向とのピーク比、(300)/(003)によって知ることができる。特に、(300)/(003)のピーク比が3.6未満であれば、磁石成形体として、優れた磁気特性向上の効果が得られることが分かった。(300)/(003)のピーク比が3.6以上であると、磁石成形体中の磁石粒子の配向がランダムとなり、従来のAD法等による磁石成形体に比較して、磁気特性向上の効果が得られない。一方、(300)/(003)のピーク比の下限値は0を超える値であり、小さければ小さい程、磁石粒子の結晶方位が揃っていることを示すため、特に制限はないが、実使用上は好ましくは0.5以上である。(300)/(003)のピーク比は、より磁気特性に優れることから、より好ましくは3.1以下であり、さらに好ましくは2.1以下である。
また、本実施形態の磁石成形体は、粉末の磁石粒子を堆積させて成膜する粉体成膜により得られたものである。かかる方法を採用し、特定の磁場(分布、強度)をかけて成膜することにより、結晶方位の揃った、すなわちX線解析による(300)/(003)のピーク比が3.6未満である磁石成形体を容易に得ることができる。さらに、従来技術によっては困難であった、成膜面に垂直な方向に配向した、厚膜の磁石成形体を得ることも可能になる。
また、本実施形態の磁石成形体は、ThZn17構造を有し、磁化容易方向が膜厚方向であることが好ましい。この構造に限定はされないが、ThZn17構造であると、原料粉末である高い磁気特性の磁石粒子の入手が容易であるため、好ましい。また、本実施形態によれば、従来技術によっては困難であった、膜厚方向の磁化容易方向を有する磁石成形体が製造でき、その結果より強い磁力を有する磁石を得ることができるため好ましい。
(Sm、FeおよびNを含む磁石粒子)
本実施形態の磁石成形体は、Sm−Fe−Nを主成分とする磁石粒子が配向した状態で堆積して被膜として形成される磁石相を含有するものである(以下、堆積され成膜している状態の磁石粒子を磁石相とも称する)。これにより、従来のプロセスでは得られなかった磁石粒子の配向度の高い磁石成形体を得ることができ、その結果、磁石成形体の磁気特性が向上する点で優れている。
Sm−Fe−Nを主成分とする希土類磁石相(堆積した磁石粒子で構成される部分)としては、例えば、SmFe17(ここで、xは、好ましくは1.5〜4.0、より好ましくは2.0〜3.5、更に好ましくは2.5〜3.3、特に好ましくは2.8〜3.2)、SmFe17、(Sm0.75Zr0.25)(Fe0.7Co0.3)N(ここで、xは、好ましくは2.5〜3.5である)、SmFe11TiN(ここで、xは好ましくは2.5〜3.5である)、(SmZrFe848515、SmFe93(ここで、xは、好ましくは1〜20である)などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。より好ましくは、SmFe14(x=2.5〜3.3)、特に好ましくは、SmFe14(x=2.8〜3.2)が望ましい。これは、SmFeNは、x=2.8〜3.2で異方性磁界と飽和磁化が最大になり、磁気特性に優れるためである。これらSm−Fe−Nは1種単独でもよいし、2種以上を有する磁石成形体でもよい。更に、異なる種類のSm−Fe−Nの希土類磁石相が積層されてなる多層構造の磁石成形体であってもよい。この場合、多層構造の各層のSm−Fe−Nに関しても1種単独でもよいし、2種以上を有する磁石成形体でもよい。
本実施形態の希土類磁石相の主成分(Sm−Fe−N)の含有量としては、Sm−Fe−Nを主成分とするものであればよく、Sm−Fe−Nを希土類磁石相全体に対して50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは90〜99質量%である。なお、さらに好ましくは範囲の上限値を99質量%とし、100質量%としていないのは、表面の酸化物や不可避的不純物が含まれている為である。すなわち、本実施形態では50質量%以上であればよく、100質量%のものを使用することも可能であるか、実際上、表面の酸化物や不可避的不純物を取り除くことは困難かつ複雑ないし高度な精製(精錬)技術を用いる必要があり、高価である。そのため、さらに好ましい範囲には含めていないものである。
Sm−Fe−Nを主成分とする希土類磁石相には、他の元素を含有したものも本実施形態の技術範囲に含まれるものである。含有してよい他の元素としては、例えば、Ga、Nd、Zr、Ti、Cr、Co、Zn、Mn、V、Mo、W、Si、Re、Cu、Al、Ca、B、Ni、C、La、Ce、Pr、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、Th、MMなどが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは1種単独又は2種以上を含有してもよい。これらの元素は主にSm−Fe−Nを主成分とする希土類磁石相の相構造の一部と置換されるか、挿入されるなどして導入されるものである。
同様に、Sm−Fe−Nを主成分とする希土類磁石相には、Sm−Fe−N以外の他の希土類磁石相を含んでいてもよい。こうした他の希土類磁石相としては、Sm−Fe−N以外の他の既存の希土類磁石相が挙げられる。かかる他の既存の希土類磁石相としては、例えば、SmFe14B、SmCo14B、Sm(Fe1−xCo14B(ここで、xは好ましくは0≦x≦0.5である)、Sm15Fe77、Sm15Co77、Sm11.77Fe82.355.88、Sm11.77Co82.355.88、Sm1.1Fe、Sm1.1Co、SmFe10、SmCo10、(Sm1−xDy15Fe77(ここで、xは、好ましくは0≦y≦0.4である)、(Sm1−xDy15Co77(ここで、xは、好ましくは0≦y≦0.4である)、SmCo17(ここで、xは好ましくは1〜6である)、Sm15(Fe1−xCo77Al、Sm15(Fe0.80Co0.2077−yAl(ここで、yは、好ましくは0≦y≦5である)、(Sm0.95Dy0.0515Fe77.5Al0.5、(Sm0.95Dy0.0515(Fe0.95Co0.0577.56.5Al0.5Cu0.2、SmFe8020、Sm4.5Fe73CoGaB18、Sm5.5Fe66CrCo18.5、Sm10Fe74Co10SiB、Sm3.5Fe7818.5、SmFe76.518.5、SmFe77.518.5、Sm4.5Fe7718.5、Sm3.5DyFe73CoGaB18.5、Sm4.5Fe72CrCo18.5、Sm4.5Fe73SiB18.5、Sm4.5Fe71CrCo18.5、Sm5.5Fe66CrCo18.5、SmCo、SmCo17、SmCo、SmCo、SmCo、SmCo、SmCo等のSm−Co合金系、SmFe17、SmFe、SmFe等のSm−Fe合金系、CeCo、CeCo17、Ce24Co11、CeCo、CeCo、CeCo、CeCo19等のCe−Co合金系、NdFe17等のNd−Fe合金系、CaCu等のCa−Cu合金系、TbCu等のTb−Cu合金系、SmFe11Ti等のSm−Fe−Ti合金系、ThMn12等のTh−Mn合金系、ThZn17等のTh−Zn合金系、ThNi17等のTh−Ni合金系、LaFe14B、CeFe14B、PrFe14B、GdFe14B、TbFe14B、DyFe14B、HoFe14B、ErFe14B、TmFe14B、YbFe14B、YFe14B、ThFe14B、LaCo14B、CeCo14B、PrCo14B、GdCo14B、TbCo14B、DyCo14B、HoCo14B、ErCo14B、TmCo14B、YbCo14B、YCo14B、ThCo14B、YCo、LaCo、PrCo、NdCo、GdCo、TbCo、DyCo、HoCo、ErCo、TmCo、MMCo、MM0.8Sm0.2Co、Sm0.6Gd0.4Co、YFe11Ti、NdFe11Ti、GdFe11Ti、TbFe11Ti、DyFe11Ti、HoFe11Ti、ErFe11Ti、TmFe11Ti、LuFe11Ti、Pr0.6Sm0.4Co、Sm0.6Gd0.4Co、Ce(Co0.72Fe0.14Cu0.145.2、Ce(Co0.73Fe0.12Cu0.14Ti0.016.5、(Sm0.7Ce0.3)(Co0.72Fe0.16Cu0.12、Sm(Co0.69Fe0.20Cu0.10Zr0.017.4、Sm(Co0.65Fe0.21Cu0.05Zr0.027.67などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは1種単独ででもよいし、2種以上を有していてもよい。
本実施形態のSm−Fe−Nを主成分とする磁石粒子の形状としては、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば如何なる形状であってもよい。例えば、球形状、楕円形状(長軸方向に平行な中央部断面の縦横比(アスペクト比)が1.0を超えて10以下の範囲が望ましい)、円柱形状、多角柱(例えば、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱、・・n角柱(ここで、mは7以上の整数である))形状、針状ないし棒状形状(長軸方向に平行な中央部断面の縦横比(アスペクト比)が1.0を超えて10以下の範囲が望ましい。)、板状形状、円板(円盤)形状、薄片形状、鱗片形状、不定形状などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。粒子形状として好ましくは、付着性が極端に悪いような粒子速度や弾性挙動を示さなければ、特に規定しないが、あまり扁平した形状は加速が困難になるため、できるだけ球状粒子に近い形状が好ましい。なお、Sm−Fe−Nの希土類磁石相(主相・結晶相)は結晶構造を有しており、結晶成長により所定の結晶形状とすることもできる。
本実施形態のSm−Fe−Nを主成分とする磁石粒子の大きさ(平均粒子径)としては、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲内であればよく、通常0.5〜10μm、好ましくは1〜8μm、より好ましくは1〜5μmの範囲である。希土類磁石相の平均粒子径が上記範囲内であれば、磁石特性(保磁力、残留磁束密度、密着性)に優れた所望の磁石成形体とすることができる。ここで、上記希土類磁石相の平均粒子径は、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)観察、TEM(透過型電子顕微鏡)観察などにより粒度分析(測定)することができる。なお、希土類磁石相ないしその断面の中には、球状ないし円形状(断面形状)ではなく、縦横比(アスペクト比)が違う不定形状の希土類磁石相が含まれている場合もある。したがって、上記でいう希土類磁石相の平均粒子径は、希土類磁石相の形状(ないしその断面形状)が一様でないことから、観察画像内の各希土類磁石相の切断面形状の絶対最大長の平均値で表すものとする。ここで、絶対最大長とは、希土類磁石相(ないしその断面形状)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の長さをとるものとする。但し、この他にも、例えば、X線回折における希土類磁石相の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径、または透過型電子顕微鏡像より得られる希土類磁石相の粒子径の平均値を求めることにより得ることもできる。なお、他の平均粒子径の測定方法についても、同様にして求めることができる。
本実施形態の磁石成形体においては、高分子特に有機高分子からなるバインダは使用しないことが好ましい。上記のように、ボンド磁石に使用されているこれらのバインダは、ボンド磁石成形体に占める割合が3割程度と大きくなっている。しかし、バインダは磁石としては機能しないため、高分子のバインダを含むことにより磁石成形体の磁気特性は低下してしまう。本実施形態の磁石成形体は、高分子のバインダを含まなくとも粉体成膜による製造方法によって成形できるため、バインダによる磁気特性の低下を防止できる点で優れている。また、融点の低い高分子バインダを使用しないことにより、より高温の環境においても使用可能な磁石を得ることができる。また、本実施形態の磁石成形体は、バインダとして樹脂が充填されて固化成形されていたボンド磁石に対して、こうした樹脂が不要となり軽量化できる。尚且つ使用されていた樹脂量(バインダー容積)よりも空隙部の体積の方が遙に小さくでき、小型で高密度化できる。その結果、高密度で固化成形でき、モータ等のシステムの小型高性能化に寄与することができる。しかしながら、本実施形態には、高分子バインダを磁気特性の低下が許容できる程度に微量に含む場合も包含される。
本実施形態の磁石成形体は、希土類磁石相以外の磁石としては機能しない成分として、任意成分として非磁性金属粒子をSm−Fe−N成分に対して0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%含むことができる。非磁性金属粒子はバインダとして機能し、これを含有することにより、磁石成形体を厚膜化した場合にも、発生する内部応力を緩和することができるため、欠陥の少ない磁石成形体を得ることができる。さらに、金属粒子をバインダとして使用することにより、高温の環境においても使用可能な磁石成形体を得ることができる。非磁性金属粒子以外に、不可避的な成分として、希土類磁石相の境界部などに存在するものである希土類酸化物相(SmO相)、Fe・希土類の不純物、Feリッチ相、Feプアー相や他の不可避的不純物等を含み得る。非磁性金属粒子は、本実施形態の磁石成形体を製膜する際、磁石粒子同士を結合するバインダとして機能するが、ボンド磁石における高分子バインダと比較して相当程度の少量である。そのため、磁気特性に影響しその低下をもたらす恐れはない。
非磁性金属粒子としては、粒子の塑性変形に伴うエネルギーの弾塑性比が50%以下の非磁性金属粒子(以下、弾塑性比が50%以下の非磁性金属粒子とも略記する)が好ましい。弾塑性比が50%以下の変形しやすい粒子が、皮膜の厚膜化に伴う応力を緩和するため、厚膜化しても剥離しにくく、かつ保磁力の高い磁石成形体を得ることができる。
上記弾塑性比が50%以下の変形しやすい非磁性金属粒子としては、Ni、Co、Fe以外の金属元素は、非磁性金属元素であり、粉末として得られるものであれば非磁性金属粒子とすることができる。具体体的には、実施例で用いているような、Cu、Al、Znといった軟質の合金などが好適に用いられる。ただし、本実施形態では、これらに何ら制限されるものではない。
本実施形態の上記弾塑性比が50%以下の非磁性金属粒子の形状としては、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば如何なる形状であってもよい。例えば、球形状、楕円形状(長軸方向に平行な中央部断面の縦横比(アスペクト比)が1.0を超えて10以下の範囲が望ましい)、円柱形状、多角柱(例えば、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱、・・N角柱(ここで、Nは7以上の整数である。))形状、針状ないし棒状形状(長軸方向に平行な中央部断面の縦横比が1.0を超えて10以下の範囲が望ましい。)、板状形状、円板(円盤)形状、薄片形状、鱗片形状、不定形状などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。弾塑性比が50%以下の非磁性金属粒子の粒子形状として好ましくは、付着性が極端に悪いような粒子速度や弾性挙動を示さなければ、特に規定しないが、あまり扁平した形状は加速が困難になるため、できるだけ球状粒子に近い形状が好ましい。
本実施形態の弾塑性比が50%以下の非磁性金属粒子の平均粒子径としては、本実施形態の作用効果を有効に発現し得る範囲内であればよく、通常0.5〜10μm、好ましくは1〜8μm、より好ましくは1〜5μmの範囲である。非磁性金属粒子の平均粒子径が上記範囲内であれば、磁石特性(保磁力、残留磁束密度、密着性)に優れた所望の磁石成形体とすることができる。ここで、上記弾塑性比が50%以下の非磁性金属粒子の平均粒子径は、上記磁石粒子と同様の方法で測定することができる。
本実施形態では、非磁性金属粒子は、少なくともその一部が磁石成形体内に分散した構造を有するものである。詳しくは、上記したように、非磁性金属粒子は、Sm−Fe−Nの希土類磁石相と混合してなる混合成形体として、希土類磁石相内部ではなく、希土類磁石相同士の境界線上に適当に分散した構造を有するものである。即ち、非磁性金属粒子(例えば、Cu、Al)は、磁石成形体内で、Sm(Fe,Cu)NやSmFeNAlなどとしてCuやAlが置換元素として、希土類磁石相内部に存在していない状態である。即ち、SmFeNの希土類磁石相と非磁性金属粒子の混合した状態(混合成形体)のままで、磁石成形体として存在しているものである。ここで、非磁性金属粒子は、磁石成形体内に分散した構造は、磁石形成体を切断して断面の組織観察を行い、SEMで回折してマッピング(元素をX線回折)することで確認することができる。
上記した変形しやすい非磁性金属粒子の塑性変形に伴うエネルギーの弾塑性比は50%以下であることが好ましい。変形しやすい非磁性金属粒子の弾塑性比の下限値には、値も臨界的な意味も存在しないが、軟質過ぎると付着強度が小さくなりすぎるので、軟質金属でも2.5%程度の弾塑性比があった方が好ましい。また、上限値は、弾塑性比が低いほど、効率的に成膜が可能になるので、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下とする。よって、変形しやすい非磁性金属粒子の弾塑性比として好ましくは2.5〜50%、より好ましくは2.5〜45%、特に好ましくは2.5〜40%の範囲である。変形しやすい非磁性金属粒子の塑性変形に伴うエネルギーの弾塑性比は、ナノインデンテーション法を用いて、変形のし易さの指標として定義した。
図4aは、粒子の塑性変形に伴うエネルギーの弾塑性比を求めるノインデンテーション法に使う実験装置を模式的に表した概略図である。図4bは、図4aの実験装置を使って得られた圧入深さhと荷重Pの関係から弾塑性比の算出するためのグラフの模式図である。ナノインデンテーション法は、図4aに示すように、実験装置20の基盤(図示せず)上に載置した試料23の表面にダイヤモンド製の三角錐の圧子21をある荷重まで押し込んだ(圧入)後、その圧子21を取り除く(除荷)までの荷重(P)と変位(圧入深さh)の関係(圧入(負荷)−除荷曲線)を測定する方法である。図4bに示す、圧入(負荷)曲線は材料の弾塑性的な変形挙動を反映し、除荷曲線は弾性的な回復挙動により得られる。そして。図4bに示す負荷曲線と除荷曲線と横軸で囲まれた面積(実線のハッチ部分)が、塑性変形に消費したエネルギーEpである。また負荷曲線の最大荷重点から横軸(圧入深さh)に下ろした垂線と除荷曲線とで囲まれた面積(破線のハッチ部分)が、弾性変形で吸収されたエネルギーEeである。以上から、粒子の塑性変形に伴うエネルギーの弾塑性比=Ee/Ep×100(%)として求められる。例えば、実施例で用いたCu粒子およびZn粒子はいずれも弾塑性比50%以下であった。具体的には、Cu粒子の弾塑性比は22%である。
本実施形態の磁石成形体は、Sm−Fe−Nを主成分とする希土類磁石相で構成された場合の磁石成形体の理論密度の80%以上を有することが好ましい。好ましくは理論密度の80%以上96.0%未満、好ましくは81〜95%、より好ましくは82〜94.6%を有する。理論密度に対する割合が96.0%以下であれば、磁気特性(特に、残留磁束密度、密着性)が十分に得られる。一方、理論密度に対する割合が80%以上であれば、磁気特性(特に、残留磁束密度)の向上効果が確実に得られる。本明細書でいう「理論密度」とは、用いた原料粉末中の磁石主相(希土類磁石相)が、X線解析から求められる格子定数をもつとして、磁石成形体の100%の体積を占めるとした場合の密度のことである。理論密度に対する割合(%)は、その値(理論密度の値)を用いて、理論密度に対する割合(%)に換算したものである。残留磁束密度の測定方法は実施例に記載の方法に従って測定したものである。
本実施形態の磁石成形体の厚さは、使用用途に応じて適宜調整すればよく特に制限されるものではないが、本実施形態では従来の成膜プロセス磁石よりも厚膜化できることから、通常100〜1000μmであり、500〜3000μmがより好ましく、さらに好ましくは1000〜3000μmの範囲である。従来のAD法では175μmを超えて厚膜化しようとすると剥離が生じる問題があったが、本実施形態では、500μm以上の厚膜であっても、剥離の問題もなく成膜できる点で極めて優れている。更に、磁石成形体の厚さが500μm以上であれば、本発明の目的である厚膜化と高密度化と磁気特性(特に保磁力、残留磁束密度、密着性)向上を同時に満足した磁石成形体を得ることができ、極めて幅広い用途に適用することができる。特に軽量且つ小型高性能化が図れる為、あらゆる分野の希土類磁石に適用し得る点で優れている。磁石成形体の厚さが3000μm以下であれば、本発明の目的である厚膜化と高密度化と磁気特性(特に保磁力、残留磁束密度、密着性)向上を同時に満足した磁石成形体を得ることができ、極めて幅広い用途に適用することができる。特に自動車電装分野のように大型の表面磁石型同期モータや埋込磁石型同期モータなどに好適に適用することで軽量且つ小型高性能化が図れる為、電気自動車やハイブリッド自動車の小型軽量化にも大いに貢献し得るものである。
[磁石成形体の製造方法]
次に、本実施形態の磁石成形体の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、Sm、FeおよびNを含む磁石粒子を、500℃以下で堆積させて成膜する粉体成膜工程を有する。粉体成膜工程によれば、高価な成形型が不要であり、また、硬い磁石粒子を効果的に成形体に加工することが可能である。また、粉体成膜工程によれば、磁石粒子が被膜として堆積したときの運動エネルギーによって、粒子の周囲が砕けて粒子同士が互いに圧着したような状態で成形体となる。したがって、ボンド磁石のように高分子バインダを使用する必要がなく、非磁性の成分を多量に含むことによる磁気特性の低下が防止される。磁石粉末の磁気特性を損なうことなく、厚膜化と磁気特性(残留磁束密度、密着性)の向上を満足する磁石の製造方法を提供することができる。
磁石粒子とは、上記した希土類磁石相と同様の組成を有する、磁石成形体の原料粉末である。原料粉末としては、Sm−Fe−Nを主成分とする希土類磁石相を構成する磁石粒子と、必要に応じて任意成分として上記した非磁性金属粒子とを含むものを用いることができる。Sm−Fe−Nを主成分とする磁石粒子は、高温によって相変化し、磁気特性が低下するため、高い磁気特性を維持した磁石成形体を得るためには、500℃以下の雰囲気で原料粉末を堆積させ、粉体成膜を行うことが必要である。特に、磁石粒子のキュリー点未満の温度で成膜することにより、粒子が磁性を失うことなく、外部磁場による結晶方位の回転が発生する。これにより、磁石粒子が結晶方位の揃った状態で形成された磁石成形体を得ることが可能になる。従来の熱エネルギーを用いた成膜プロセスでは、粒子を融点近傍まで加熱するため、磁場を印加しても粒子の結晶方位を揃えることができない。
また、非磁性金属粒子は、磁石成形体形成においてバインダとして機能し、磁石成形体を厚膜化した場合に発生する内部応力を緩和することができるため、欠陥の少ない磁石成形体を得ることができる。また、従来は数100μm以上の厚さに磁石成形他の膜が成長すると、局所的に剥離を生じる問題が生じていた。しかし、非磁性金属粒子を用いることにより、成膜時の剥離が防止できるため、磁石成形体をより厚膜化することができる。
粒子を堆積させて成膜する粉体成膜の工法としては、特に制限はないが、本発明の目的である磁気特性の向上した磁石を簡単に得ることができるコールドスプレイ装置を用いた粉体成膜工法、すなわちコールドスプレイ法を用いるのが望ましい。コールドスプレイ法によれば、粒子の融点よりも低温のキャリアガスで高速に加速された粒子が、高速で衝突することで、成膜され磁石成形体となる。したがって、磁石粒子のキュリー温度未満の温度で成膜でき、印加した磁場によって粒子にトルクが発生し、結晶方位の配向が制御された、磁気特性の良好な磁石成形体を製造することができる。ただし、かかるコールドスプレイ法に何ら制限されるものではなく、本実施形態の作用効果を有効に発現し得るものであれば、いかなる粉体成膜工法であってもよい。
コールドスプレイ法は、より詳細には、キャリアガスとを含む原料粉末とを混合し加速した状態の高速キャリアガス流にて前記原料粉末を噴射する噴射段階と、噴射された前記原料粉末を基材上に堆積して固化成形する固化成形段階と、を含む。この際、噴射段階の高速キャリアガスの温度は、500℃以下である。温度の計測の仕方については、装置の説明と共に後述する。また、固化成形段階は大気圧下で行われる。コールドスプレイ法によれば、粒子速度の高速化による高密度化が達成できるため、密度に比例する磁気特性が向上する、より大きな粒子を噴射可能である、そのために、一次粒子の微粒化による凝集二次粒子(高密度化していない)に起因する磁石成形体の不均質化による局所的な密度のバラツキの発生、ひいては、磁気特性の劣化を効果的に抑制することもできる。また最適な大きさの粒子を用いることで、粒子と空隙部の最適化(最適配置)が可能となり、所望の理論密度に対する割合(%)を実現させることもできる。また、圧倒的に高速な皮膜成長速度を実現することもでき、その結果、厚膜化でバルク体が得られる。
より詳しくは、高圧キャリアガス発生部及びキャリアガス加熱ヒータを経た一次キャリアガス流と、原料粉末供給部からの窒化物を含む原料粉末を含有する原料投入ガスとをキャリアガス加速部内に投入し混合して加速してなる高速キャリアガス流を大気圧下で噴射する。かかる高速キャリアガス流の噴射にて、原料粉末を基材保持部上の基材に堆積して固化成形する。
以下、本実施形態の磁石成形体の代表的な製造方法の1つである、コールドスプレイ装置を用いた粉体成膜工法(コールドスプレイ法)を用いてなる磁石成形体の製造方法につき、図面を用いて説明する。
(コールドスプレイ装置)
従来、磁石粒子の結晶方位を揃えて成膜するためには、固化成形時に皮膜中に接合されない磁石粒子が、磁石に吸着して皮膜の成長を妨げたり、磁場方向を乱したりすることがなく、かつ基板面と垂直方向へ配向が可能な固化成形装置が求められていた。本発明者らは、まず、このような固化成形装置の開発に取り組み、Sm-Fe-N系の磁石粒子に適用した結果、非常に配向度が向上することを見出した。
本実施形態の磁石成形体を製造するには、磁場中で磁石粒子を成膜することが有効である。しかし、磁場中で、基板に向けて磁石粒子を吐出すると、成膜されなかった粒子、すなわち、運動エネルギーが不十分なために膜に固着せず形成体を構成していない粒子の一部は、磁場に吸引され粒子が滞留する。これら滞留した粉末の上にさらに磁石粒子を吐出しても、滞留した粒子がダンパ作用を呈し、粒子同士が接合するのに必要な衝突エネルギーが吸収されるため、成膜不能状態になる問題が発生していた。
そこで、本発明者らは、粒子を堆積させて皮膜を形成する成膜工法において、基板の背面から基板表面へ磁場を印加する機能を有し、発生する磁場強度が中心部よりも周辺部に強磁場を発する機能を有する装置を開発した。かかる成膜装置であれば、成膜されなかった粒子は成膜領域の周辺部に引き寄せられて堆積するので、成膜の施工領域は常に浮遊粒子がない清浄な状態に保つことができる。そのため、密着強度に優れた良好な厚膜を得ることができることを見出した。
一般的に、粒子の運動エネルギーを用いて粒子同士を接着させて成膜するプロセスでは、粒子の吐出口から基板までの距離は、近すぎるとエロージョンが発生し、遠すぎると粒子速度が減速して成膜しないため、通常は10mm前後が好適である。しかし、その様な数mmから数cmの距離内に設置可能な磁場発生装置は、小さい磁石やコイルに限定され、強い磁場を発生することが困難である。また、粒子の飛行経路周辺に磁場発生装置があるため、成膜されずに浮遊する磁石粒子がこれらの発する磁場に吸着して、シールド材として作用するため、正常な磁場を維持できなくなる問題が生じる。
この問題に対しては、磁場発生部と粒子の吐出口の間に基板を設置し、基板の背面から磁場を印加すれば、これらの問題を回避することが可能である。即ち、粒子の配向に要するトルクを発生するに十分な強度の磁場を発生させつつ、浮遊粒子の吸着による磁場強度や磁場分布の乱れも発生せず、良好な磁石厚膜を得ることができる。
本実施形態の成膜装置(コールドスプレイ装置)1は、コールドスプレイ法を用いて磁石成形体を製造する装置である。コールドスプレイ法とは、所定の原料粉末を、溶融またはガス化させることなく、キャリアガスとともに超高速で固相状態のまま基板に衝突させて皮膜(磁石成形体)を形成する方法である。ただし、本発明の成膜装置1に適用される成膜工法は、上記のコールドスプレイ法に限定されず、本実施形態の作用効果を有効に発現し得るものであれば、いかなる成膜工法が適用されてもよい。
図1は、成膜装置の概略構成例を示す図である。図2は、磁場形成部の詳細な構成例および成膜領域を示す図である。以下、図1、図2を参照して、本実施形態に係る成膜装置1について説明する。
図1に示すとおり、成膜装置1は、ガス発生部10と、ガス加熱部11と、粉末供給部12と、吐出部13と、基板14と、基板保持部15と、磁場形成部16とを有する。
(1)ガス発生部10
ガス発生部10は、低温(たとえば、室温)の高圧ガス(以下では「低温ガス」と称する)を、所定の配管を介してガス加熱部11および粉末供給部12へ圧送する。ガス発生部10は、低温ガスを封入した高圧ガスボンベ、高圧ガスタンクであってもよいし、低温ガスを高圧下で液化して封入した高圧液化ボンベ、高圧液化タンク、ガスコンプレッサであってもよい。
(2)ガス加熱部11
ガス加熱部11は、ガス発生部10から圧送された低温ガスを、原料粉末の融点未満に設定された所定温度(たとえば、280℃)に達するまで加熱する。ガス加熱部11において加熱されたガスを一次キャリアガスと称する。ガス加熱部11は、所定温度まで加熱された一次キャリアガスを、所定の配管を介して吐出部13へ圧送する。具体的には、ガス加熱部11は、ガス発生部10から圧送された低温ガスを通すコイル状の内部配管を有する。ガス加熱部11は、内部配管のコイル状の部分に電流を流すことにより、内部配管内の低温ガスを加熱する。なお、内部配管の材料には、耐圧性、耐腐食性、耐候性、耐熱性等に優れた炭素鋼、ステンレス鋼等の鋼鉄が用いられる。あるいは、高強度Ni合金、高強度Fe合金、Ti合金等の超硬合金が用いられてもよい。なお、ガス加熱部11は、この形態に限定されず、低温ガスを所定温度にまで加熱できれば、どのような形態、名称、構造のものであってもよい。
(3)粉末供給部12
粉末供給部12は、原料粉末(磁石粒子、非磁性金属粒子)を、ガス発生部10から圧送された低温ガスと所定の混合比率で混合し、原料投入ガスとして、所定の配管を介して吐出部13へ圧送する。具体的には、粉末供給部12は、原料粉末を収容し、撹拌するための粉末収容室を有する。粉末収容室は、ガス発生部10から圧送された低温ガスが供給されて、加圧状態に維持されている。収容室内では、原料粉末と低温ガスが混合されて、原料投入ガスが生成される。粉末収容室の底部には開口部が設けられており、その開口部から原料投入ガスが排出される。なお、粉末供給部12は、この形態に限定されず、原料粉末が含まれている原料投入ガスを吐出部13へ供給できれば、どのような形態、名称、構造のものであってもよい。
(4)吐出部13
吐出部13は、基板14の表面に成膜するために、原料粉末(磁石粒子、非磁性木や属粒子)を基板14に向かって吐出(噴射)する。具体的には、吐出部13は、ガス加熱部11から供給された一次キャリアガスと、粉末供給部12から供給された原料投入ガスとを混合する。一次キャリアガスの供給圧力を、原料投入ガスの供給圧力より大きくすることで、減圧状態の吐出部13内に原料投入ガスが流れ込む。吐出部13において混合されてできたガスを、二次キャリアガスと称する。二次キャリアガスは、原料粉末を基板14の表面に向かって吐出(噴射)するための媒体となる。また、図1に示すように、吐出部13は、アスピレーター式のノズル17を有しており、ノズル17の細い部分で二次キャリアガスの流速を加速させて、吐出口18から基板14の表面へ向けて噴射する。したがって、吐出部13は、キャリアガス加速部とも称される。また、吐出部13は、図1、図2に示すように、吐出口18が基板14から所定の距離(たとえば、10mm)だけ離れた位置に設けられ、基板14の表面に対して水平な方向および垂直方向に移動可能なよう、ロボットアームに設置されている。たとえば、吐出部13は、原料粉末を吐出(噴射)しながら、主走査方向(図2の紙面の左方向、右方向)および副走査方向(図2の紙面の手前方向、奥行き方向)に移動して、所望の形状(たとえば、正方形)の皮膜Nを基板14上に形成する。なお、皮膜Nが形成される(すなわち、成膜がなされる)基板14上の領域を、成膜領域と称する。
上述のように本実施形態の製造方法では、500℃以下の雰囲気で紛体成膜を実施する。このことは、突出部13の、ガス加熱部11から供給された一次キャリアガスと粉末供給部12から供給された原料投入ガスとが混合される領域において、500℃以下であることをいう。一次キャリアガスと原料粉末とが混合される領域で500℃以下であれば、二次キャリアガスの吐出の際も、基板に到達する際もこの温度を超えることはないためである。したがって、突出部13の内部に、混合ガス(原料粉末が混合された二次キャリアガス)の温度を計測する為の温度センサが設置されているのが望ましい(不図示)。吐出部13内の二次キャリアガスの温度を希土類磁石粉末の結晶粒のキュリー温度未満とすることで、原料粉末が溶融・ガス化することなくキャリアガスと共に超高速で固相状態のまま基材Bに衝突・結着(堆積化)させて皮膜(磁石成形体)を固化成形することができる。これにより、厚膜化と磁気特性(特に残留磁束密度)の向上を同時に満足する磁石成形体を得ることができる。温度センサには、概ね150〜800℃程度までは正確に計測できるものを用いるのが望ましい。具体的には、例えば、Kタイプの熱電対などを利用することができる。
(5)基板14
基板14は、図1、図2に示すように、吐出部13の吐出口18と、後述する磁場形成部16との間に配置される平板状の部材である。たとえば、基板14は、Cu、ステンレス鋼、Al、炭素鋼等の金属基板であってもよいし、シリカ、マグネシア、ジルコニア、アルミナなどのセラミック基板であってもよい。
(6)基板保持部15
基板保持部15は、基板14の表面に原料粉末が衝突して成膜可能なように、基板14を保持する。これとともに、基板保持部15は、後述する磁場形成部16に原料粉末が成膜しないように磁場形成部16を保護する。たとえば、基板保持部15は、板厚1mmのAl板を加工することによって、磁場形成部16を覆う形状に形成される。
(7)磁場形成部16
磁場形成部16は、鉄芯コイルまたは空芯コイルに電流を流して磁場を発生させる電磁石を含み、基板14の背面側から磁場を形成する。たとえば、図2には、磁場形成部16に鉄芯コイルを採用した例が示されている。鉄芯コイルは、FeCo合金棒、炭素棒などの鉄芯16aに、銅などの導線16bが巻かれて作製される。磁場形成部16が発生した磁場の影響を受けて、吐出部13の吐出口18から二次キャリアガスとともに吐出(噴射)された原料粉末に含まれる各磁石粒子は、磁化の方向が揃った状態で基板14に堆積し、皮膜Nを形成する。また、磁場形成部16は、磁場強度の異なる少なくとも2種類の磁場領域(たとえば、後述する強磁場領域、弱磁場領域)を形成する。
(磁場分布の詳細)
続いて、磁場形成部16が形成する磁場分布の詳細について説明する。
図3は、基板の表面に形成される磁場分布について説明するための図である。図3の下部には、図2と同様の基板14、基板保持部15、磁場形成部16が示され、図3の上部には、磁場形成部16によって基板14の表面に形成される磁場分布を示すグラフが示されている。グラフの横軸Xは、磁場形成部16(図示する例では、鉄芯コイル)の中心からの距離(mm)を示し、縦軸Hは、磁場強度(T)を示す。
図3に示されるように、磁場形成部16として鉄芯コイルを用いる場合、コイルに流す電流を制御することで、鉄芯コイルの中心領域(コア領域)の直上よりもその周辺領域(導線16b上)の方を、相対的に高くすることができる。これは、電流が流れる導線16bに近いほど、強い磁場が発生するためである。本実施形態では、磁場強度が相対的に低い領域を弱磁場領域と称し、磁場強度が相対的に高い領域を強磁場領域と称する。図3に示す例では、鉄芯コイルの中心領域に相当するBからDの範囲(横軸X方向)に弱磁場領域が形成され、その周辺領域に相当するAからBの範囲(横軸X方向)およびDからEの範囲(横軸X方向)に強磁場領域が形成される。なお、図3のP1、P2は、磁場強度がピーク値となる位置(「ピーク位置」と称する)を示しており、Cは、ピーク位置P1、P2の間において磁場強度がボトム値となる位置(「ボトム位置」と称する)を示している。そして、A、Bは、磁場分布のグラフ上において、ピーク位置P1とボトム位置Cの中点(ただし、縦軸H方向の中点)となる位置に定義される。また、D、Eは、磁場分布のグラフ上において、ピーク位置P2とボトム位置Cの中点(ただし、縦軸H方向の中点)となる位置に定義される。
そして、成膜領域は、少なくとも弱磁場領域に重なる位置となるように設定される。このとき、強磁場領域は、少なくとも磁場強度のピークが、成膜領域の外側に位置するように形成される。たとえば、図3の例では、成膜領域の全領域が弱磁場領域に重なるように設定されており、強磁場領域内の磁場強度のピーク(位置)P1、P2は成膜領域の外側に位置している。また、成膜領域は、弱磁場領域に加えて、強磁場領域の一部に重なるように設定してもよい。この場合においても、強磁場領域のピーク(位置)P1、P2は成膜領域の外側に位置している。
以上のように、本実施形態では、成膜領域に弱磁場領域の少なくとも一部が重なるように形成され、強磁場領域のピークがその成膜領域の外側に位置するように磁場分布が形成されている。弱磁場領域の磁場の影響によって、吐出部13から吐出(噴射)された各磁石粒子は磁化の方向が揃った状態で基板14に堆積され、皮膜Nを形成する。これにより、成膜領域では、磁力が十分に強い磁石成形体が得られる。さらに、弱磁場領域の周囲に形成された強磁場領域の磁場の影響によって、成膜領域で皮膜Nを構成せず密着しなかった磁石粒子は、成膜領域外の強磁場領域に引き寄せられ、そのほとんどが強磁場領域に堆積する。そのため、成膜領域が常に清浄に保たれた状態で成膜可能になる。これにより、磁力が強いだけでなく、密着強度も優れた磁石成形体が得られる。
また、本実施形態では、磁場形成部16として上述のような鉄芯コイルまたは空芯コイルを用いることにより、永久磁石を組み合わせたり、複雑な磁気回路を設計したりしなくても、容易に好適な磁場分布が得られる。また、鉄芯コイルまたは空芯コイルへの通電を止めることで、発生する磁場強度を容易にゼロにすることができるため、基板14に残留している成膜に供しない磁石粒子を比較的容易に除去クリーニングできる。
また、本実施形態では、吐出部13の吐出口18から基板14までの距離を10mm程度としている。このような距離に設定しているのは、吐出部13の吐出口18から基板14までの距離が、近すぎるとエロージョンが発生し、遠すぎると磁石粒子の速度が減速して成膜しないためである。但し、最適距離は、用いる粒子によって異なるため、通常は5〜20mmの範囲で粒子径と粒子重量に応じて、成膜効率が最大になるように調整が必要である。
従来では、このような数mm程度の距離しかない吐出口部13と基板14の間に磁場形成部16を配置していた。そのため、磁場形成部16は小さい永久磁石やコイルに限られ、本実施形態の磁場形成部16のような十分に強い磁場(強磁場領域)を形成できなかった。これに対し、本実施形態では、磁場形成部16と、吐出部13の吐出口18との間に、基板14が配置される構成となっているため、磁場形成部16のサイズが限定されず、磁石粒子の配向に要するトルクを発生するのに十分な強度の磁場を発生させることができる。そのため、磁力が強く、密着強度の優れた磁石成形体が得られる。
また、本実施形態では、磁石粒子の融点よりも低温のキャリアガスによって磁石粒子を基板14に向かって吐出(噴射)しているため、磁石粒子のキュリー点以下の温度で成膜可能である。そのため、磁石粒子の強磁性の性質は失われず、各磁石粒子は磁場形成部16から発生した磁場の影響を受けて、磁化の方向が揃うようになる。
ここで、キャリアガスとしては、任意のガスを用いることができる。より優れた磁気特
性を得るためには、希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rn)、窒素ガス(N
などの不活性ガスが挙げられるが、Ar、He、Nなど、入手が容易で安価であり、磁
気特性を劣化させない不活性ガスを用いることが好ましい。キャリアガスとして、こうし
た不活性ガスを使用することによって、より磁石粉末の磁気特性を損なうことなく、高密
度な磁石成形体(バルク成形体)を得ることができる点で優れている。Nガスは窒化物
の分解が生じにくく、Nを用いることで耐熱性特性を高めることができる利点があり、
Heガスは分子量が小さく、ガス速度が得やすい利点がある。特に、酸化防止のため水素
を含有させても良い。N−Hガスであれば、アンモニア分解ガスとして安価に入手で
きる利点がある。
磁場発生には、永久磁石でも電磁石でも磁場を発するものを用いることができる。例えば、リング状の高磁束密度の永久磁石の内側に、低磁束密度の円板型永久磁石を配することでも好適な磁場を発生することが可能である。しかし、永久磁石を用いた場合は、成膜プロセスの終了後も磁場をゼロにすることができないため、皮膜として接合しなかった磁石粒子が永久磁石に吸着するため、粉末の除去に余計な負荷を発生し、生産性を損なう場合がある。この様な問題は、電磁石を用いることで改善が可能である。即ち、電流を止めれば電磁石からの磁場がなくなるため、残留している磁石粒子の吸着力が失われ、回収や清掃を容易に実施できる利点がある。
さらに、コア材に電線を巻きつけた電磁石コイルから発生する空間磁場は、中心部のコア領域の直上よりも、電流が流れる導線コイル上での磁場強度を強くすることが可能である。そのため、磁場を発する装置として、電磁石を基板の背面に設置すれば、永久磁石を組み合わせたり、複雑な磁気回路を設計しなくても容易に、好適な磁場分布が得られる。
しかし、基板背面から磁場を印加した場合には、成膜されない磁石粒子まで基板に堆積し、ダンパ作用を発生するため種々の問題を呈する。電磁石を用いた場合は、そもそも、中心磁場には未接着の粒子は残留せずに周囲のコイル直上に引寄せられるのでこの様な問題は生じない。また、コイル直上の強磁場領域を含んで成膜する場合にも、電磁石への通電を止めることで、電磁石の磁場強度をゼロにすることができる。そのため、基板上に残留している未接着粒子を比較的容易に除去クリーニングできる利点がある。即ち、電磁石に通電し数層の成膜を行い、一旦、表面に残留する磁石粒子を除去して、また積層数を増加することが、容易に実施できる。このような利点を活用することで、最大磁場領域を含んだ、傾斜を有する磁場中での成膜が可能になり、得られる厚膜中で配向度を傾斜させた材料を得ることができる。
以下、本実施形態を実施例を通して具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例には限定されない。
[原料]
以下の実験で用いられる原料は下記の通りである。希土類磁石粒子には、SmFe14(n=2.5〜3.5)(日亜化学工業(株))を用いた。SmFe14の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)電子線表面イメージング顕微鏡装置(カールツァイス製)で解析したところ3μmであり、形状は球状であった。なお、分解温度を示差走査熱量測定(DSC)装置(TAインスツルメント社製)で解析したところ、450℃以上であった。
非磁性金属粒子には、銅(Cu)粒子(日本アトマイズ加工社製)を用いた。Cu粒子の平均粒径は、SEMで解析したところ2μmであり、形状は球状であった。
また、Cu以外には、Zn粒子(高純度化学(株)製)7um以下も用いた。
基材には、Cu基板(市中流通品:卸売りは白銅)を用いた。当該Cu基板は、幅50mm、長さ80mm、厚さ1mmの平板状のものである。
[磁場発生装置]
電磁石として、Φ50×150mmの炭素鋼棒を鉄芯として銅線を巻きつけた電磁石コイルを作製した。電磁石の中心磁場の分布は、図3のとおりである。中心軸の鉄芯表面で最大0.6T以上の磁場が発生し、鉄芯周囲の巻線上で中心磁場よりも大きな磁場が発生することが確認できた。巻線上は最大1.2Tの磁場が発生していることが確認できた。磁場計測は、ガウスメータ(東洋テクニカ5180型)にて計測し、コイルに流す電流値と発生磁場の相関を調査して、電流量で磁場の大きさを制御した。電流量は、コイル温度が上昇しても一定になるような定電流制御回路を用いて、スプレイ中は一定の磁場が発生し続けるようにした。
この電磁石コイルをコールドスプレイ装置のチャンバー内に設置した。電磁石コイルに直接粉末が成膜しないよう、板厚1mmのAl板を加工したカバーで電磁石を保護した。さらに、そのAlのカバー上にCu基板を固定し、基板上に磁石粒子を含んだ原料粉末をスプレイできるようにした。
[希土類磁石成形体の製造](実施例1〜5および比較例1〜5)
コールドスプレイ法により希土類磁石成形体を製造した。市販のSmFe14(n=2.5〜3.5)粉末に、Cu粒子(SmFe14の質量に対して3質量%)を混合し、原料粉末とした。キャリアガスは、Heガスを用いた。装置は、ヒータで加熱されたHeガス流中に、原料粉末が吸引される仕組みを用いている。ヒータ温度は750℃とし、Heガスが約280℃に到達後、原料の吸引を開始させた。ガスの圧力は0.8MPaとした。
キャリアガス加速部のノズル先端から10mmの距離で設置したCu基材に原料粉末を含んだキャリアガスを噴射し、100mm/sの走査速度で0.5mmずらしながら、走査を繰り返し、6層、走査を繰り返すことによって、SmFe14(n=2.5〜3.5)およびCu粒子を堆積させた。
スプレイは、実施例1〜5および比較例1〜5について、それぞれ、下記表1に示すように中心磁場を0〜0.7Tの範囲で変化させた磁場を印加しつつ実施した。スプレイの走査範囲は、電磁石の中心部で、10mm×10mmの範囲で成膜を行った。
[希土類磁石成形体の評価]
(X線解析)
磁気特性の計測に先立って、磁石成形体をX線解析で回折測定を行った。装置は、リガク社製 SmartLab 9kWを用いた。電圧は45kV、電流は200mAとし、Cu−Kα線にて計測した。実施例1に用いた原料粉末のX線回折の結果を図5に示す。磁石粒子の結晶方位の向きは、完全に無秩序の場合と、一軸方向に配向した場合で(003)と(300)のピークの比が異なる。この比を数値化して、残留磁束密度とピーク比の相関とを調査した。
(剥離の有無)
得られた磁石成形体は、まず、外観上、剥離の有無を確認した。
(残留磁束密度)
外観観察の次に、表面を研磨した後、6×8mm角に試料を切りだし、Cu基材ごと試料振動型磁力計(VSM)にて磁気測定を行った。残留磁束密度(Br)について、磁場を印加しない比較例4の値を100%として、相対値を評価した。
残留磁束密度は、磁気特性の指標となるものである。当該残留磁束密度は、希土類磁石成形体と接着しているCu基材とともに、4.8MA/mのパルス着磁を行った後に、東英工業社製振動試料型磁力計(VSM)を用いて常温で測定した。
残留磁束密度の算出のため、反磁界補正は、得られた膜厚から基材の厚さを除いて厚さを算出して(形状を求めて)実施した。また、密度は、VSM計測後、基板から剥がした皮膜小片を用いてアルキメデス法によって測定した。
実施例1〜5および比較例1〜5の結果を下記表1にまとめて示す。
表1に示されるように、X線解析によるピーク比(300)/(003)が3.6より小さくなれば残留磁束密度(残留磁化)が高い磁石成形体が得られることが分かる。残留磁束密度の大きさは、(300)/(003)ピーク比が3.1以下であるとより大きく、2.1以下であるとさらに大きくなることが分かる。
[実施例6〜12]
次に、磁場を0.7T印加する条件は同一にして、実施例6〜12では、非磁性金属粒子の混合状態を下記表2のようにそれぞれ変化させた以外は、実施例1と同様にして磁石成形体をそれぞれ成膜した。スプレイの走査範囲は、電磁石の中心部で、25mm×30mmの範囲で成膜を行った。磁石成形体を成膜後、実施例1と同様の方法で、剥離の有無を確認した。
表2の結果から、Cu粒子等の非磁性金属粒子をバインダとして含有した場合は、10mm以上の厚膜が剥離することなく成膜できることが分かる。これに対して、非磁性金属粒子を含有しないと、10mm以上に厚膜化すると剥離が生じる場合があることが分かる。
[実施例13〜17]
次に、磁場を0.6T印加する条件で、3%のCu粒子を混合させて、積層数による膜厚の変化を観察した。スプレイの走査範囲は、電磁石の中心部で、25mm×30mmの範囲で成膜を行った。結果は、下記表3および図7に示す。
表3および図7の結果から、エアロゾルデポジッション等の従来技術では、困難であった100μm以上の厚膜が、10層以下の積層数で容易に得られることが確認できた。
1 成膜装置、
10 ガス発生部、
11 ガス加熱部、
12 粉末供給部、
13 吐出部、
14 基板、
15 基板保持部
16 磁場形成部、
17 ノズル、
18 吐出口、
20 ナノインデンテーション法の実験装置、
21 ダイヤモンド製の三角錐の圧子、
23 試料(粒子の塑性変形に伴うエネルギーの弾塑性比が50%以下の非磁性金属製プ
レート)、
N 皮膜。

Claims (8)

  1. Sm、FeおよびNを含む磁石粒子を含み、
    X線回折における(300)方向と(003)方向とのピーク比、(300)/(003)が3.6未満である、
    前記磁石粒子を堆積させて成膜する粉体成膜により得られた磁石成形体。
  2. ThZn17構造を有し、磁化容易方向が膜厚方向である請求項1に記載の磁石成形体。
  3. 膜厚が500μm以上である請求項1または2に記載の磁石成形体。
  4. 高分子のバインダを含まない請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁石成形体。
  5. 非磁性金属粒子をさらに含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁石成形体。
  6. Sm、FeおよびNを含む磁石粒子を、500℃以下で堆積させて成膜する粉体成膜工程を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁石成形体の製造方法。
  7. 前記粉体成膜工程が、コールドスプレイ法により行われる請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記粉体成膜工程において、バインダとして非磁性金属粒子を使用する請求項6または7に記載の製造方法。
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JP2015201628A (ja) * 2014-04-04 2015-11-12 日産自動車株式会社 保磁力に優れたSmFeN磁石
JP2021082665A (ja) * 2019-11-15 2021-05-27 昭和電工マテリアルズ株式会社 電磁波シールド膜の製造方法
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