JP2015199644A - ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、シートガラスの温度が歪点に向かうに従って、シートガラスの温度勾配が低減するように冷却することで、シートガラスの幅方向の中央部に常に引っ張り応力が働くように冷却することができる。これにより、シートガラスの板厚を均一に維持しながら冷却することができ、シートガラスの反りを低減することができる。なお、「シートガラスの温度勾配が低減する」の「温度勾配」は、シートガラスの幅方向の中央部の温度から、シートガラスの幅方向の縁部の温度を引いた値を、シートガラスの幅の半分の値で除した値の絶対値である。
反り低減工程で形成された温度勾配が低減するように、シートガラスを歪点まで冷却することにより、シートガラスの幅方向の中央部の冷却量は、シートガラスの幅方向の両側部の冷却量よりも大きくなる。これにより、シートガラスの体積収縮量は、シートガラスの幅方向の側部から中央部に向かうにつれて大きくなるので、シートガラスの中央部には引張り応力が働く。特に、シートガラスの中央部には、シートガラスの流れ方向および幅方向に引張り応力が働く。なお、シートガラスの幅方向に働く引張り応力よりも、シートガラスの流れ方向に働く引張り応力の方が大きいことが好ましい。引張り応力により、シートガラスの平坦度を維持しつつ冷却することができるので、シートガラスの反りを低減することができる。
本実施形態に係るガラス基板の製造方法では、例えば、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板(例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、有機ELディスプレイ用ガラス基板)、カバーガラスや磁気ディスク用などの強化ガラス用ガラス基板、ロール状に巻き取られるガラス基板、半導体ウエハ等の電子デバイスが積層されたガラス基板を製造する。このガラス基板は、例えば、ダウンドロー法を用いて製造される。
まず、図3および図4に、成形装置40の概略構成を示す。図3は、成形装置40の断面図である。図4は、成形装置40の側面図である。成形装置40は、主として、成形体41と、仕切り部材50と、冷却ローラ51と、冷却ユニット60と、引下げローラ81と、切断装置90とから構成されている。さらに、成形装置40は、制御装置91を備える(図9参照)。制御装置91は、成形装置40に含まれる各構成の駆動部を制御する。以下、成形装置40に含まれる各構成について説明する。
成形体41は、溶融ガラスFGをオーバーフローさせることによって、溶融ガラスFGをシート状のガラス(シートガラスSG)へと成形する。
仕切り部材50は、溶融ガラスFGの合流ポイントの近傍に配置されている。また、図3に示すように、仕切り部材50は、合流ポイントで合流した溶融ガラスFG(シートガラスSG)の厚み方向両側に配置される。仕切り部材50は、断熱材である。仕切り部材50は、溶融ガラスFGの合流ポイントの上側雰囲気および下側雰囲気を仕切ることにより、仕切り部材50の上側から下側への熱の移動を遮断する。
冷却ローラ51は、シートガラスSGの両側部を熱処理するユニットである。冷却ローラ51は、仕切り部材50の直下に配置されている。また、冷却ローラ51は、シートガラスSGの厚み方向両側、且つ、シートガラスSGの幅方向両側に配置される。すなわち、冷却ローラ51は、前記成形体41から離れたシートガラスSGを、前記成形体41の直下で熱処理する。シートガラスSGの厚み方向両側に配置された冷却ローラ51は対で動作する。したがって、シートガラスSGの両側部は、二対の冷却ローラ51,51,・・・によって挟み込まれる。
冷却ユニット60は、シートガラスSGの熱処理を行うユニットである。具体的に、冷却ユニット60は、シートガラスSGの中央領域の温度が軟化点より高い温度から徐冷点近傍までの温度領域でシートガラスSGを冷却するユニットである。冷却ユニット60は、仕切り部材50の下方であって、徐冷炉80の天板80aの上に配置される。冷却ユニット60は、シートガラスSGの上流領域を冷却する(上流領域冷却工程)。シートガラスSGの上流領域とは、シートガラスSGの中央部(中央領域)の温度が徐冷点より上であるシートガラスSGの領域である。また、シートガラスSGの中央部とは、シートガラスSGの幅方向中央部分であって、シートガラスSGの有効範囲およびその近傍を含む領域である。言い換えると、シートガラスSGの中央部は、シートガラスSGの両側部に挟まれた部分である。上流領域には、具体的に、第1温度領域と第2温度領域とが含まれる。第1温度領域は、成形体41の下端部41aの直下から、シートガラスSGの中央領域の温度(より具体的には、中央領域の幅方向中心の温度)が軟化点より高い軟化点近傍になるまでのシートガラスSGの領域である。また、第2温度領域とは、シートガラスSGの中央領域の温度(より具体的には、中央領域の幅方向中心の温度)が軟化点より高い軟化点近傍から徐冷点近傍になるまでの温度領域である。すなわち、冷却ユニット60は、シートガラスSGの中央領域の温度が徐冷点に近づくように、シートガラスSGを冷却する。シートガラスSGの中央領域は、その後、後述の徐冷炉80内で、徐冷点、歪点を経て、室温近傍の温度まで冷却される(下流領域冷却工程(徐冷工程))。
中央部冷却ユニット61は、シートガラスSGの中央部を、流下方向に沿って段階的に冷却する(中央部冷却工程)。中央部冷却ユニット61は、中央部冷却ユニット61は、上部空冷ユニット62と、下部空冷ユニット63a,63bとから構成されている。上部空冷ユニット62および2つの下部空冷ユニット63a,63bは、シートガラスSGの流下方向に沿って配置される。具体的には、上部空冷ユニット62の下方に2つの下部空冷ユニット63a,63bが配置されている。図5に示すように、上部空冷ユニット62および2つの下部空冷ユニット63a,63bは、それぞれ断熱部材93を介して連結されている。断熱部材93は、上部空冷ユニット62の内部に形成される空間(第1空間SP1)と、上方に配置された下部空冷ユニット63aの内部に形成される空間(第2空間SP2)との間の熱の移動、および、第2空間SP2と、下方に配置された下部空冷ユニット63bによって形成される空間(第3空間SP3)との間の熱の移動を遮断する。上部空冷ユニット62および各下部空冷ユニット63a,63bは、それぞれ独立して制御可能である。
上部空冷ユニット62は、上述の仕切り部材50の直下に位置する。上部空冷ユニット62は、シートガラスSGの厚みを決定付ける領域の温度プロファイルを実現するためのユニットである。シートガラスSGの厚みを決定付ける領域は、上述の第1温度領域に相当する。上部空冷ユニット62は、シートガラスSGの厚みを幅方向に均一にするように制御される(第1中央部冷却工程)。上部空冷ユニット62は、主として、上部冷却調整板21と、後方水冷ユニット22とを有する。上部空冷ユニット62は、シートガラスSGの中央部(中央領域)の粘度を、例えば105.7〜107.5Poise(温度では、1000℃〜1120℃程度)の範囲内に維持するように、シートガラスの中央部(中央領域)を冷却する。
上部冷却調整板21は、シートガラスSGの幅方向(すなわち、水平方向)に延びる。上部冷却調整板21の長手方向の長さは、シートガラスSGの側部とシートガラスSGの側部周辺とを除く部分に対応する長さである。したがって、上部冷却調整板21の長さは、シートガラスSGの幅方向の長さよりも短い。
後方水冷ユニット22は、第1空間SP1の空気を水冷するユニットである。後方水冷ユニット22は、上部冷却調整板21の後方に配置され、第1空間SP1を後方から水冷する。第1空間SP1は、後方水冷ユニット22によって閉じられる。後方水冷ユニット22は、図示しない第1冷却水供給ユニットに接続されている。第1冷却水供給ユニットから後方水冷ユニット22に供給される水の量は、第1冷却水供給弁22aにより調整される(図9参照)。
下部空冷ユニット63a,63bは、上述したように、上部空冷ユニット62の下方に配置される。下部空冷ユニット63a,63bは、シートガラスSGの反り量の制御を開始する領域の温度プロファイルを実現するためのユニットである。ここで、シートガラスSGの反り量の制御を開始する領域は、上述の第2温度領域に相当する。
下部冷却調整板31は、上述した上部冷却調整板21と同様の構成を有する。すなわち、下部冷却調整板31は、シートガラスSGの幅方向(すなわち、水平方向)に延び、長手方向の長さは、上部冷却調整板21の長手方向の長さと同様である。
温度制御ユニット32は、下部冷却調整板31の温度を調整するためのユニットである。温度制御ユニット32は、主として、温度調整パイプ33と、複数のガス供給ユニット34a,34b,34cとによって構成されている。
側部冷却ユニット71は、冷却ローラ51によって急冷されたシートガラスSGの側部と、シートガラスSGの側部周辺とを、シートガラスSGの流下方向に沿って連続的に、または、段階的に冷却する(側部冷却工程)。側部冷却ユニット71は、冷却ローラ51よりも低い冷却能で動作する。言い換えると、冷却ローラ51によってシートガラスSGの側部から奪われる熱量と比較して、側部冷却ユニット71によってシートガラスSGの側部から奪われる熱量は少ない。側部冷却ユニット71は、上述したように、中央部冷却ユニット61の両側にそれぞれ配置される(図4参照)。側部冷却ユニット71は、シートガラスSGの表面に近接して配置される。側部冷却ユニット71は、シートガラスSGの側部の粘度を、例えば109.0〜1014.5Poiseの範囲内に維持するように、シートガラスの側部を冷却する。
上部水冷ユニット72は、シートガラスSGの厚みおよび/または反り量の調整に影響を与える領域の温度プロファイルを実現するためのユニットである(第1側部冷却工程)。上部水冷ユニット72は、図7に示すように、上述した冷却ローラ51の直下に位置する。また、上部水冷ユニット72は、後述する下部水冷ユニット73の天板735の上に載せられている。上部水冷ユニット72は、下部水冷ユニット73の天板735の上で水平移動することにより、シートガラスSGに対して近接させたり離反させたりできる構成になっている。シートガラスSGは、上部水冷ユニット72の、主に輻射熱伝達によって、所要の冷却速度で冷却される。ここで、所要の冷却速度とは、冷却ローラ51を通過したガラスSGの板幅の収縮が最大限抑えられ、かつ、下部水冷ユニット73以降の冷却過程でシートガラスSGにクラックが生じないような冷却速度である。すなわち、上部水冷ユニット72は、シートガラスSGに悪影響を及ぼさない範囲でガラスSGを最大限冷却する。上部水冷ユニット72は、主として、上部水冷板721と、上部連結ユニット722とを有する。
上部水冷板721は、熱伝導率が比較的高く、耐酸化性および耐熱性に優れた部材で構成されている。本実施形態では、上部水冷板721として、ステンレスが用いられる。上部水冷板721の内部には、流体(本実施形態では、水)を通すための第1流路PS1が形成されている。第1流路PS1は、上部水冷板721の表面(シートガラスSGに対向する面)721aを裏側から冷却する構成になっている。
上部連結ユニット722は、上部水冷板721の後方に配置され、上部水冷板721に連結されるユニットである。上部連結ユニット722は、主として、上部給水パイプ723と、上部排水パイプ724とを含む。上部給水パイプ723および上部排水パイプ724は、上部水冷板721の後方に形成された第4空間SP4の内部に配置される(図7参照)。第4空間SP4は、ステンレス製の薄板によって形成された空間であり、天板、底板、および側壁によって構成されている。上部給水パイプ723は、上部水冷板721の第1流路PS1の上部に連結される。上部給水パイプ723には、図示しない第2冷却水供給ユニットから送られる冷却水が送られる。第2冷却水供給ユニットは、第1冷却水供給ユニットとは異なるユニットである。冷却水は、上部給水パイプ723を通って上部水冷板721の第1流路PS1に供給される。第2冷却水供給ユニットから供給される冷却水の量は、第2冷却水供給弁72aによって調整される(図9参照)。上部排水パイプ724は、上部水冷板721の第1流路PS1の下部に連結される。第1流路PS1を通過して温められた冷却水は、上部排水パイプ724を通って排出される。
下部水冷ユニット73は、図7に示すように、上述の上部水冷ユニット72の直下に位置する。下部水冷ユニット73は、シートガラスSGの反り量の制御に影響を与える領域の温度プロファイルを実現するためのユニットである(第2側部冷却工程)。下部水冷ユニット73は、後述する徐冷炉80の天板80aの上に載せられている。下部水冷ユニット73は、上述の中央部冷却ユニット61に固定されている。シートガラスSGは、下部水冷ユニット73の、主に輻射熱伝達によって、所要の冷却速度で冷却される。ここで、所要の冷却速度とは、徐冷炉80に進入する際のシートガラスSG耳部周辺が最適な温度になる冷却速度である。また、所要の冷却速度とは、ガラスSGの板幅の収縮が最大限抑えられ、かつ、徐冷炉80以降の冷却過程でシートガラスSGにクラックが生じないような冷却速度である。すなわち、下部水冷ユニット73は、ガラスSGに悪影響を及ぼさない範囲でシートガラスSGを最大限冷却する。下部水冷ユニット73は、主として、下部水冷板731と、下部連結ユニット732とを有する。
下部水冷板731は、熱伝導率が比較的高く、耐酸化性および耐熱性に優れた部材で構成されている。本実施形態では、下部水冷板731として、ステンレスが用いられる。下部水冷板731の内部には、流体(本実施形態では、水)を通すための第2流路PS2が形成されている。第2流路PS2は、下部水冷板731の表面(シートガラスSGに対向する面)731cを裏側から冷却する構成になっている。
下部連結ユニット732は、上部連結ユニット722と同様の構成をしている。すなわち、下部連結ユニット732は、下部水冷板731の後方に配置され、下部水冷板731に連結されるユニットである。下部連結ユニット732は、主として、下部給水パイプ733と、下部排水パイプ734とを含む。下部給水パイプ733および下部排水パイプ734は、下部水冷板731の後方に形成された第5空間SP5の内部に配置される(図7参照)。第5空間SP5もまた、第4空間SP4と同様、ステンレス製の薄板によって形成された空間である。下部給水パイプ733は、下部水冷板731の第2流路PS2の上部に連結される。下部給水パイプ733には、図示しない第3冷却水供給ユニットから送られる冷却水が送られる。第3冷却水供給ユニットは、第1冷却水供給ユニットおよび第2冷却水供給ユニットとは異なるユニットである。冷却水は、下部給水パイプ733を通って下部水冷板731の第2流路PS2に供給される。第3冷却水供給ユニットから供給される冷却水の量は、第3冷却水供給弁73aによって調整される(図9参照)。下部排水パイプ734は、下部水冷板731の第2流路PS2の下部に連結される。第2流路PS2を通過して温められた冷却水は、下部排水パイプ734を通って排出される。
引下げローラ81は、徐冷炉80の内部に配置される。徐冷炉80は、冷却ユニット60の直下に配置される空間である。徐冷炉80では、シートガラスSGの温度が、徐冷点近傍の温度から室温近傍の温度まで冷却される(下流域冷却工程(徐冷工程))。また、引下げローラ81は、冷却ユニット60を通過したシートガラスSGを、シートガラスSGの流下方向へ引き下げる。引下げローラ81は、シートガラスSGの厚み方向両側(図3参照)、および、シートガラスSGの幅方向両側(図4参照)に複数配置される。引下げローラ81は、図示しないモーターによって駆動されている。また、引下げローラ81は、シートガラスSGに対して内側に回転する。シートガラスSGの厚み方向両側に配置された引下げローラ81は、対で動作し、対の引下げローラ81,81,・・・が、シートガラスSGを下方向に引き下げる。
切断装置90は、徐冷炉80を通過して室温近傍の温度まで冷却されたシートガラスSGを、所定のサイズに切断する。その結果、シートガラスSGは、ガラス片になる。切断装置90は、徐冷炉80の下方に配置されており、所定の時間間隔でシートガラスSGを切断していく。
制御装置91は、CPU、RAM、ROM、およびハードディスク等から構成されている。制御装置91は、図9に示すように、冷却ローラ51、引下げローラ81、第1ガス供給弁36a、第2ガス供給弁36b、第3ガス供給弁36c、第1冷却水供給弁22a、第2冷却水供給弁72a、第3冷却水供給弁73a、および切断装置90等と接続されている。
次に、図10を参照して、本実施形態に係るガラス基板の製造方法で用いる温度プロファイルと、当該温度プロファイルを実現する冷却ユニットの制御とについて説明する。図10中、破線で区分けされた領域は、冷却ローラ51および冷却ユニットに含まれる各ユニット62,63a,63b,72,73の配置を示す。また、破線で区分けされた領域に含まれる曲線10b,10c,10e,10fおよび直線10a,10dは、冷却ローラ51または各ユニット62,63a,63b,72,73によって実現される温度プロファイル20a,20b,20cに含まれるサブプロファイルである。
上部空冷ユニット62では、上述したように、シートガラスSGの厚みを決定付ける領域の温度プロファイルを実現する(第1中央部冷却工程)。具体的に、上部空冷ユニット62は、上部冷却調整板21の幅方向の温度分布を均一にする。これにより、上部冷却調整板21の表面周辺の雰囲気温度(シートガラスSGの幅方向の温度)は均一になる(サブプロファイル10a)。
下部空冷ユニット63a,63bでは、上述したように、シートガラスSGの反りの調整を開始する領域の温度プロファイルを実現する(第2中央部冷却工程および第3中央部冷却工程)。具体的に、下部空冷ユニット63a,63bは、シートガラスSGの幅方向の温度が山形(上に凸を有する放物線)になるように、下部冷却調整板31の温度分布を調整する。詳細には、下部冷却調整板31の長手方向中心の温度を最も高い温度にする。また、下部冷却調整板31の長手方向両端部の温度を最も低い温度にする。さらに、中心から両端部に向けて温度が徐々に低くなるように制御する。より詳細には、温度調整パイプ33に含まれる第1側部調整部33a、第2側部調整部33b、および中央部調整部33cのうち、中央部調整部33cから吹き出されるガスの温度を、第1側部調整部33aおよび第2側部調整部33bから吹き出されるガスの温度に対して高くする。これにより、下部冷却調整板31の表面周辺の雰囲気温度(シートガラスSGの幅方向の温度)は、山形になる(サブプロファイル10b、サブプロファイル10c)。
冷却ローラ51は、上述したように、シートガラスSGの厚みの均一化に影響を与える領域の温度プロファイルを実現する(急冷工程)。冷却ローラ51は、成形体41の下端部41aで合流したガラスの両側部を急冷する。すなわち、シートガラスSGの側部および側部周辺の雰囲気温度は、シートガラスSGの中央部周辺の雰囲気温度よりも低い温度になる(サブプロファイル10d)。
上部水冷ユニット72では、上述したように、シートガラスSGの厚みおよび/または反り量の調整に影響を与える領域の温度プロファイルを実現する(第1側部冷却工程)。上部水冷ユニット72は、上部空冷ユニット62および下部空冷ユニット63aによって生成される温度より低い温度を生成する。すなわち、シートガラスSGの側部および側部周辺の雰囲気温度は、シートガラスSGの中央領域周辺の雰囲気温度よりも低い温度になる(サブプロファイル10e)。
下部水冷ユニット73では、上述したように、シートガラスSGの反り量の調整に影響を与える領域の温度プロファイルを実現する(第2側部冷却工程)。下部水冷ユニット73は、下部空冷ユニット63a,63bによって生成される温度より低い温度を生成する。すなわち、シートガラスSGの側部および側部周辺の雰囲気温度は、シートガラスSGの中央領域周辺の雰囲気温度よりも低い温度になる(サブプロファイル10f)。
(4−1)
本実施形態に係るガラス基板の製造方法では、ダウンドロー法により、溶融ガラスを成形体からオーバーフローさせてシートガラスに成形し、このシートガラスを流下方向に引き伸ばしながら冷却することによりガラス基板を製造する。このとき、シートガラスが成形体から離れた後、シートガラスの温度が軟化点より高い温度から徐冷点近傍になるまでの温度領域にあるとき、シートガラスの幅方向の側部に向かって張力を加えながら、側部の粘度と側部で挟まれた中央領域の粘度との粘度差を、基準値以下になるよう冷却する。これにより、シートガラスの両側部と中央領域との間の保有熱量の差を小さくし、両側部と中央領域との間で発生する応力を小さくし、両側部と中央領域との境に発生する歪や反りを小さくすることができる。
また、実施形態に係るガラス基板の製造方法では、成形体直下から徐冷点の上までの第1温度領域において、シートガラスSGの幅方向の両側部の温度が、シートガラスSGの流下方向の位置に応じて制御される。具体的には、シートガラスSGの流下方向に沿った複数の温度プロファイルが設定され、当該複数の温度プロファイルに基づいて、シートガラスSGの流下方向に沿って配置された複数の水冷ユニット72,73によって、シートガラスSGの側部の温度がそれぞれ制御される。
また、上記実施形態では、冷却ローラ51を用いてシートガラスSGの両側部である耳部を急冷した後、側部冷却ユニット71によって、シートガラスSGの耳部を継続して冷却する。
また、上記実施形態に係るガラス基板の製造方法では、熱伝導によりシートガラスSGを急冷した後、シートガラスSGを輻射熱伝達により冷却する。これにより、シートガラスSGの耳部を効率よく冷却することができる。
さらに、上記実施形態に係るガラス基板の製造方法では、下部水冷板731の表面に、ファイバーボードを配置可能な部材(上方支持部材731a、下方支持部材731b)が設けられている。これにより、下部水冷板731によって冷却する領域について、冷却時の炉内環境に応じて、部分的に熱輻射を遮断することができる。
上記実施形態において、上部水冷ユニット72は、下部水冷ユニット73の天板735の上で水平移動可能な構成である。また、下部水冷ユニット73は、遮断部材の支持が可能な構成になっている。
上記実施形態では、成形体から離れたシートガラスSGの側部の粘度を109.0〜1014.5Poiseの範囲内に維持しながら、シートガラスSGを冷却する工程が行われる。シートガラスSGの側部の粘度が109.0Poiseに満たない場合、シートガラスSGが変形しやすいので、シートガラスSGの幅方向の収縮が起きやすい。また、シートガラスSGの側部の粘度が1014.5Poiseを超える場合、シートガラスSG内部に発生する応力に耐え切れず、シートガラスSGが割れる可能性がある。
上記実施形態では、成形体直下における105.7〜107.5Poiseの粘度を有するシートガラスSGを、側部の粘度が109.0〜1010.5Poiseの範囲内になるように急冷し、シートガラスSGの急冷後、側部の粘度が1010.5〜1014.5Poiseの範囲内になるようにシートガラスSGをさらに冷却することにより、シートガラスSGの割れを防ぎつつ、シートガラスSGの幅方向の収縮を抑制する。また、中央領域の粘度が105.7〜107.5Poiseの範囲内になるように急冷し、シートガラスSGの急冷後、中央領域の粘度が107.5〜109.67Poiseの範囲内になるようにさらに冷却することがより、側部と中央領域との間で発生する応力を抑制でき、シートガラスSGの割れを防ぐことができる。
上記実施形態では、板厚均一化工程において、シートガラスSGの中央領域における幅方向の温度分布を均一にし、かつ、シートガラスSGの両側部の温度を、中央領域の温度より低くする。これにより、シートガラスSGの側部は幅方向の収縮が抑制されるように冷却され、シートガラスSGの中央領域は板厚が均一になるように冷却されるので、シートガラスSGの板厚を幅方向に均一にすることができる。
(5−1)変形例A
上記実施形態では、温度調整パイプ33が内部で三分割されており、温度調整パイプ33は、第1側部調整部33a、第2側部調整部33b、および中央部調整部33cを有する。温度調整パイプ33は、三分割に限られず、五分割されていても構わない。これにより、シートガラスSGの幅方向に、より細かい温度制御を独立して行うことができる。
上記実施形態では、熱伝導率の高い材料として、純ニッケルを採用したが、熱伝導率の高い材料として、他の材料を用いても構わない。例えば、モリブデン、焼結SiC、再結晶SiC、人造黒鉛、鉄、タングステン等であっても構わない。但し、モリブデンを採用する場合には、非酸化雰囲気で使用することが好ましい。また、モリブデンを酸化雰囲気で使用する場合には、耐酸化コートを施すことが好ましい。また、焼結SiCおよび再結晶SiCは、酸化雰囲気で採用することができ、人造黒鉛、鉄、およびタングステンは、非酸化雰囲気で使用される場合に採用することができる。
上記実施形態では、上部冷却調整板21および下部冷却調整板31としてチャンネル(溝形鋼形状)を用いたが、上部冷却調整板21および下部冷却調整板31は、上記形状に限定されず、他の形状であっても構わない。このとき、隣接する上部冷却調整板21および下部冷却調整板31同士の接触を最小限にし、隣接する上部冷却調整板21および下部冷却調整板31同士の熱伝導を抑えるような構成にすることが好ましい。例えば、上部冷却調整板21および下部冷却調整板31は、丸棒(円柱)形状や、奇数の多角柱形状などであってもよい。
上記実施形態では、上部空冷ユニット62によって、シートガラスSGの幅方向に沿って、雰囲気温度が均一になるように制御した(板厚均一化工程)。これにより、上記実施形態では、シートガラスSGの厚み(肉厚)を均一にした。しかし、上部空冷ユニット62は、シートガラスSGの幅方向に沿って、温度を変更できるような構成を取っていてもよい。例えば、空冷ユニット62の内部に形成される空間を複数に分け、空間ごとにそれぞれ冷却できるようにしたり、空冷ユニット62の内部に部分的に保温材を設置できる構成を設けたりすることにより、幅方向の雰囲気温度を変更できるようにしてもよい。これにより、中央領域の温度を均一にしているにもかかわらず、何らかの影響により、シートガラスSGの幅方向の肉厚の均一化が実現できなかった場合にも、シートガラスSGの肉厚の均一化を図ることができる。
第1の温度プロファイル20aにおいて、シートガラスSGの中央領域G2の粘度(サブプロファイル10aにより設定された粘度)とシートガラスSGの両側部G1の粘度(サブプロファイル10dにより設定された粘度)との粘度差が変化するように、温度プロファイルを変更し、中央領域G2及び両側部G1の粘度、中央領域G2と両側部G1との境に生じた最大歪み(リターデーション値)を測定した。測定した結果を表1に示す。なお、第2、第3の温度プロファイルは同一とした。
12 清澄装置
21 上部冷却調整板
22 後方水冷ユニット
31 下部冷却調整板
32 温度制御ユニット
40 成形装置
41 成形体
41a 成形体の下端部
41b 成形体の頂部
41c 成形体の側面(表面)
43 溝
50 仕切り部材
51 冷却ローラ
60 冷却ユニット
61 中央部冷却ユニット
62 上部空冷ユニット
63a,63b 下部空冷ユニット
71 側部冷却ユニット
72 上部水冷ユニット
73 下部水冷ユニット
80 徐冷炉
81 引下げローラ
FG 溶融ガラス
SG シートガラス
100 ガラス基板製造装置
721 上部水冷板
722 上部連結ユニット
731 下部水冷板
732 下部連結ユニット
Claims (7)
- ダウンドロー法により、溶融ガラスを成形体からオーバーフローさせてシートガラスに成形し、前記シートガラスを流下方向に引き伸ばしながら冷却することによりガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、
前記シートガラスが前記成形体から離れた後、前記シートガラスの温度が軟化点より高い温度から徐冷点近傍になるまでの温度領域にあるとき、前記シートガラスの幅方向の側部に向かって張力を加えながら、前記側部の粘度と前記側部で挟まれた中央領域の粘度との粘度差を、基準値以下になるよう冷却する、
ことを特徴とするガラス基板の製造方法。 - 前記側部の粘度を109.0〜1014.5Poiseの第1の範囲内に維持して冷却し、前記中央領域の粘度を105.7〜109.67Poiseの第2の範囲内に維持して冷却し、前記基準値を、前記側部の前記第1の範囲の粘度と前記中央領域の前記第2の範囲の粘度との粘度差とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の製造方法。 - 前記側部の粘度及び前記中央領域の粘度が、前記流下方向に沿って高くなるように冷却する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス基板の製造方法。 - 前記温度領域において、
前記シートガラスの板厚を幅方向に均一にするための板厚均一化工程と、
前記板厚均一化処理の後に、前記シートガラスの反りを低減するための反り低減工程と、を行う、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。 - 前記板厚均一化工程は、前記シートガラスの中央領域における幅方向の温度分布を均一にし、かつ、前記シートガラスの両側部の温度を、前記中央領域の温度より低くし、
前記反り低減工程では、前記板厚均一化工程より前記シートガラスの幅方向の温度分布を低温にし、前記中央領域の中心部から前記側部に向けて前記シートガラスの幅方向に温度勾配を形成する、
ことを特徴とする請求項4に記載のガラス基板の製造方法。 - 前記成形体直下におけるシートガラスの粘度は、105.7〜107.5Poiseであり、
前記シートガラスの側部の粘度が109.0Poise以上になるように前記シートガラスを急冷し、
前記シートガラスの中央領域の粘度が105.7Poise以上になるように前記シートガラスを急冷する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。 - 一対の頂部と、下端部と、前記一対の頂部から前記下端部まで延びる一対の表面とを有し、溶融ガラスを前記一対の頂部からオーバーフローさせた後、前記一対の表面に沿って流下させ、前記下端部で合流させてシートガラスを成形する成形体と、
前記成形体から離れた前記シートガラスが、軟化点より高い温度領域にあるとき、前記シートガラスの側部の熱処理を行う第1熱処理ユニットと、
前記シートガラスが前記軟化点近傍から徐冷点近傍までの温度領域にあるとき、前記側部の熱処理を行う第2熱処理ユニットと、を備え、
前記第1熱処理ユニットおよび前記第2熱処理ユニットは、前記側部に向かって張力を加えながら、前記側部の粘度を109.0〜1014.5Poiseの範囲内に維持して冷却し、前記側部で挟まれた中央領域の粘度を105.7〜109.67Poiseの範囲内に維持して冷却する、
ことを特徴とするガラス基板の製造装置。
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