JP2015198476A - アーマロッドおよび送電線補強構造 - Google Patents

アーマロッドおよび送電線補強構造 Download PDF

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典幸 島田
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Abstract

【課題】アーマロッドの渦電流損およびヒステリシス損による発熱を抑制するとともに、自身の熱軟化を抑制することにより、送電線を安定的に保持するアーマロッドおよび送電線補強構造を提供する。
【解決手段】送電線の外周に巻き付けられるアーマロッドであって、鉄およびニッケルを含有する中心部を有し、中心部のキュリー点は、送電線に通電したときの送電線の最高到達温度以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、アーマロッドおよび送電線補強構造に関する。
架空送電線では、落雷、電気事故、飛来物の衝突等により、送電線を構成する素線が切れたり損傷したりすることがある。これまで、切れた素線の本数が少数であったり、素線の損傷が軽微であったりする場合、補修スリーブにより送電線の補修が行われてきた。補修スリーブによって送電線を補修する場合では、送電線の損傷部分において補修スリーブを圧縮するため、数十kgの重量を有する圧縮機を送電線の損傷部分まで持っていく必要があった。このため、特に径間内に送電線の補修が必要な部分が生じた場合、補修作業が困難となる可能性があった。
そこで、近年では、補修スリーブに代わる補修部材として、アーマロッド(送電線補修線材)が送電線の補修に用いられている。アーマロッドを送電線の損傷部分に巻き付けることにより、送電線が補修される(例えば、特許文献1)。
一方で、用途はアーマロッドと異なるが、送電線の外周に巻き付ける部材として、LCスパイラルと呼ばれる送電線用融雪線材も知られている。送電線用融雪線材は以下のような原理により送電線に付着した雪を溶かすように構成される。送電線への通電によって、送電線の周囲に交番磁界が発生する。この交番磁界により、送電線用融雪線材中に渦電流が発生する。渦電流による渦電流損によって、送電線用融雪線材が発熱する。さらに、交番磁界によって送電線用融雪線材内の磁界の向きが変化する際のヒステリシス損によって、送電線用融雪線材が発熱する。このように、送電線用融雪線材が渦電流損およびヒステリシス損によって発熱することにより、送電線に付着した雪が溶かされる。例えば、特許文献2には、鉄およびニッケルを含む送電線用融雪線材が従来例として開示されている。
特開平2011−41411号公報 特開平6−121438号公報
送電線の補修に用いられるアーマロッドが主に強磁性体の鉄からなるアルミ覆鋼線(AC線)である場合、送電線の使用温度の範囲で、アーマロッドは強磁性体のままである。送電線用融雪線材と同様の原理によって、送電線の外周に巻き付けられるアーマロッドにおいて、渦電流損およびヒステリシス損による発熱が、送電線の使用温度の範囲で常に発生しうる。このため、アーマロッドが巻き付けられた送電線の補修部分において、アルミニウム合金からなる外部素線層が局所的に熱軟化してしまう可能性がある。したがって、アーマロッドが巻き付けられた送電線の補修部分が、補修したにもかかわらず弱くなってしまう可能性がある。
一方、送電線の補修に用いられるアーマロッドがアルミニウム合金からなる場合、送電線への通電によって送電線にジュール熱が発生することによって、アーマロッド自身が熱軟化してしまう可能性がある。したがって、アーマロッド自身の熱軟化を原因として、アーマロッドによって送電線の損傷部分を補修(補強)する効果が充分に得られない可能性がある。
本発明の目的は、アーマロッドの渦電流損およびヒステリシス損による発熱を抑制するとともに、自身の熱軟化を抑制することにより、送電線を安定的に保持するアーマロッドおよび送電線補強構造を提供することである。
本発明の一態様によれば、
送電線の外周に巻き付けられるアーマロッドであって、
鉄およびニッケルを含有する中心部を有し、
前記中心部のキュリー点は、前記送電線に通電したときの前記送電線の最高到達温度以下である
アーマロッドが提供される。
本発明の他の態様によれば、
送電線と、
前記送電線の外周に巻き付けられるアーマロッドと、
を有し、
前記アーマロッドは、鉄およびニッケルを含有する中心部を有し、
前記中心部のキュリー点は、前記送電線に通電したときの前記送電線の最高到達温度以下である
送電線の補強構造が提供される。
本発明によれば、アーマロッドの渦電流損およびヒステリシス損による発熱を抑制するとともに、自身の熱軟化を抑制することにより、送電線を安定的に保持するアーマロッドおよび送電線補強構造が提供される。
(a)は、本発明の第1実施形態に係るアーマロッドの正面図であり、(b)は、アーマロッドの軸方向と直交する断面図である。 (a)は、本発明の第1実施形態に係る送電線補強構造の正面図であり、(b)は、送電線補強構造の軸方向と直交する断面図である。 本発明の第2実施形態に係るアーマロッドの軸方向と直交する断面図である。 通電電流に対する、送電線、本発明に係るアーマロッド、および比較例に係るアーマロッドのそれぞれの温度を示す図である。
<本発明の第1実施形態>
(1)アーマロッドの構造
本発明の第1実施形態に係る送電線について、図1を用いて説明する。図1(a)は、本実施形態に係るアーマロッドの正面図であり、(b)は、アーマロッドの軸方向と直交する断面図である。
本実施形態に係るアーマロッド(送電線補修線材)10は、送電線20の損傷部分の外周に巻き付けられ、送電線20の損傷部分を補修(補強)するよう構成される。以下、詳細を説明する。
図1(a)に示されているように、アーマロッド10は、螺旋状に成形される。後述するように、アーマロッド10は、送電線20の周方向に互いに近接した状態で送電線20の外周に複数巻き付けられる。
図1(b)に示されているように、アーマロッド10は、中心部110と、中心部110の外周を覆うように設けられる被覆層120と、を有する。中心部110の断面形状は、例えば円形である。
中心部110は、鉄(Fe)およびニッケル(Ni)を含む。これにより、中心部110は、アルミニウム合金と比較して熱軟化しにくい。したがって、送電線20への通電によって送電線20にジュール熱が発生しても、中心部110(アーマロッド10自身)が熱軟化することが抑制される。
また、中心部110のキュリー点(キュリー温度)は、送電線20に通電したときの送電線20の最高到達温度以下であり、例えば240℃以下である。ここで、送電線20への通電によって、送電線20の周囲に交番磁界が発生する。送電線20の外周に巻き付けられるアーマロッド10の中心部110は、この交番磁界を起因とする渦電流損およびヒステリシス損によって発熱しうる。一方で、送電線20に電流が流れることによって送電線20にジュール熱が発生する。例えば送電線20の外部素線が耐熱アルミニウム合金線系からなり電流容量が大きい送電線(例えばXTACIRなど)の場合では、送電線20の最高到達温度は、約290℃となることがある。本実施形態では、送電線20の温度が高くなるにつれて、アーマロッド10の中心部110が強磁性体から常磁性体に変化することにより、アーマロッド10の中心部110における渦電流損およびヒステリシス損による発熱が抑制される。これにより、アーマロッド10が巻き付けられた送電線20の補修部分の温度が局所的に高くなることが抑制される。したがって、アーマロッド10が巻き付けられた送電線20の補修部分において、送電線20の後述するアルミニウム合金からなる外部素線層230が局所的に熱軟化することが抑制される。
本実施形態では、中心部110は、例えば、いわゆるインバからなり、ニッケル(Ni)を36重量%以上38重量%以下含有し、残部鉄(Fe)と不可避不純物からなる。中心部110が上記組成を有することにより、キュリー点を240℃以下とすることができる。なお、中心部110がニッケルを36重量%含有し残部鉄と不可避不純物からなるとき、キュリー点はおよそ200℃程度であり、中心部110がニッケルを38重量%含有し残部鉄と不可避不純物からなるとき、キュリー点はおよそ240℃程度である。また、インバは送電線分野で汎用的に広く用いられていることから、アーマロッド10を容易に製造することができる。
また、中心部110の外周には、例えばアルミニウムからなる被覆層120が覆われる。これにより、中心部110の腐食が抑制される。被覆層120は、アルミニウムのほかに、マンガン(Mn)を0.1重量%以上2.9重量%以下、好ましくは0.3重量%超2.9重量%以下含有していてもよい。これにより、被覆層120の耐食性が向上する。
以上のように構成されるアーマロッド10の引張強度は、245MPa以上である。これにより、アーマロッド10の引張強度がアルミ合金製アーマロッドの引張強度以上となり、アーマロッド10は、送電線20の損傷部分を強固に保持することができる。
アーマロッド10の具体的寸法としては、中心部110の直径は、1.04m以上4.48mm以下である。被覆層120の厚さは、0.14mm以上1.44mm以下である。また、アーマロッド10の直径は、2.6mm以上5.0mm以下である。なお、上記したLCスパイラルの直径は2mm程度である。
(2)送電線補強構造
次に、図2を用い、本実施形態に係る送電線補強構造1について説明する。図2(a)は、本実施形態に係る送電線補強構造の正面図であり、(b)は、送電線補強構造の軸方向と直交する断面図である。
(送電線)
図2(b)に示されているように、アーマロッド10が巻き付けられる送電線20は、鋼心部210と、鋼心部210の外周に設けられる外部素線層230と、を有する。本実施形態の送電線20は、例えばXTACIRである。
鋼心部210は、複数の芯線220を有する。芯線220は、例えば、鋼線(高強度鋼線を含む)、インバ線、およびカーボンコンポジット線の少なくともいずれか1つである。なお、「カーボンコンポジット」とは、複数本集合させたカーボンファイバー(炭素繊維)を樹脂で固めることにより形成される。また、芯線220を構成する鋼線等の外周には、腐食を抑制するためにアルミニウム(Al)等が被覆されていてもよい。本実施形態では、芯線220は、例えば、アルミニウムが被覆されたインバ線(アルミ覆インバ線)である。
鋼心部210の外側には、外部素線層230が設けられる。外部素線層230は、複数の外部素線240を有する。外部素線240は、例えば、特別耐熱アルミ合金線(XTAL)からなる。特別耐熱アルミ合金線(XTAL)は、日本電線工業会規格JCS1404「アルミ覆インバ心特別耐熱アルミ合金より線」に規定されている。また、特別耐熱アルミ合金線(XTAL)については、社団法人日本電気協会発行「架空送電規程」にも記載されている。
本実施形態では、外部素線240の断面形状は、例えば扇形である。外部素線240は、径方向に沿って設けられる側面を有する。複数の外部素線240は、周方向に並んで設けられ、互いに側面で接する(面接触する)。これにより、外部素線層230において、外部素線240が密に充填される。
送電線20の具体的な寸法としては、送電線20がXTACIRである場合、例えば鋼心部210の芯線220の直径は3.0mm以上5.0mm以下であり、鋼心部210の直径は9.0mm以上15.0mm以下である。また、外部素線層230の外部素線240の径方向の高さ(直径)は、2.05mm以上4.45mm以下であり、送電線20の全体としての直径は、17.3mm以上32.2mm以下である。
(送電線補強構造)
本実施形態において、送電線補強構造1とは、送電線20と、送電線20の補修が必要な部分の外周に巻き付けられるアーマロッド10と、を有する複合構造のことをいう。
図2(b)に示されているように、送電線20の外周には、周方向に並んで、複数のアーマロッド10が巻き付けられる。複数のアーマロッド10のそれぞれは、送電線20の外周に接している。また、複数のアーマロッド10は、送電線20の周方向に互いに接していてもよいし、所定の間隔で互いに離間していてもよい。
また、図2(a)に示されているように、アーマロッド10は、送電線20の損傷部分の損傷具合に応じて、送電線20の長手方向に所定の長さで設けられる。アーマロッド10の送電線20の長手方向の長さは、例えば1600mm以上4000mm以下である。
また、アーマロッド10の中心には、中心マークCMが設けられる。例えば、アーマロッド10の中心マークCMは、送電線20の損傷部分と重なるように配置される。
アーマロッド10は送電線20の外部素線層230における外部素線240の撚り方向と同じ方向に沿って巻き付けられる。外部素線240がアーマロッド10によって同じ撚り方向に沿って締め付けられる。これにより、送電線20の損傷部分における張力はアーマロッド10によって負担される。これにより、アーマロッド10が巻き付けられた送電線20は、損傷前と同程度の引張強度を有するようになる。
(2)アーマロッドの製造方法
次に、本実施形態に係るアーマロッド10の製造方法について説明する。
予め、アーマロッド10の中心部110となる、鉄およびニッケルを含む中心部用線材を準備する。
一方で、アルミニウム地金に、マンガン(Mn)を0.1重量%以上2.9重量%以下、好ましくは0.3重量%超2.9重量%以下の範囲内で添加して鋳造材を作製する。次に、この鋳造材に対して熱間圧延を行うことにより、直径9.5mm程度のアルミニウム合金からなる荒引線を形成する。
次に、熱間押出法により、上記した荒引線を用いて、アーマロッド10の中心部110となる中心部用線材に被覆層120となるアルミニウム合金を被覆することにより、直径が2.6mm以上5.0mm以下のアルミニウム被覆鋼線を形成する。当該アルミニウム被覆鋼線を螺旋状に加工することにより、アーマロッド10を形成する。なお、熱間押出法により得られたアルミニウム被覆鋼線を単頭伸線機によって冷間伸線したものを螺旋状に加工してアーマロッド10を形成してもよい。
以上により、本実施形態に係るアーマロッド10が製造される。
(3)アーマロッドの使用方法
次に、本実施形態に係るアーマロッド10の使用方法(送電線20の補修方法)について説明する。
送電線20に対して、落雷、電気事故、飛来物の衝突等が起こったとき、送電線20の損傷位置および損傷程度を確認する。送電線20の外部素線240の切れた本数が少数であったり、送電線20の外部素線240の損傷が軽微であったりする場合、アーマロッド10を送電線20の損傷部分に複数巻き付ける。このとき、アーマロッド10の中心マークCMを、送電線20の損傷部分と重なるように配置する。また、アーマロッド10を送電線20の外部素線層230における外部素線240の撚り方向と同じ方向に沿って巻き付ける。以上により、送電線20の補修が行われる。
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態やその変形例によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)本実施形態によれば、アーマロッド10は、鉄およびニッケルを含有する中心部110と、中心部110の外周を覆うように設けられる被覆層120と、を有する。中心部110のキュリー点は、送電線20に通電したときの送電線20の最高到達温度以下である。これにより、渦電流損およびヒステリシス損による発熱を抑制するとともに、アーマロッド素線自体の熱軟化を抑制することができる。
ここで、比較例と対比しながら、アーマロッドの材質について説明する。
これまで、送電線がアルミ覆鋼撚線(AC線)や光ファイバ複合架空地線(OPGW)である場合、アーマロッドとしてはアルミ覆鋼線(AC線)が用いられてきた。また、送電線が鋼心アルミニウム撚線(ACSR)である場合、アーマロッドとしては、通常の硬アルミニウム(純アルミニウム)よりも引張強度が高い高強度アルミニウム合金線(例えばイ号アルミニウム合金線)が用いられてきた。
近年では、増容量化のため、外部素線が耐熱アルミニウム合金線系からなる送電線(例えば耐熱系ACSR、XTACIRなど)が用いられることが多くなっている。この場合、外部素線が耐熱性を有するため、送電線の電流容量を増加させることができる。特にこのような増容量化した送電線の場合、以下のような理由により、これまで用いられてきた材質により構成されるアーマロッドを用いることが困難となる可能性がある。
比較例として、送電線の補修に用いられるアーマロッドが主に強磁性体の鉄からなるアルミ覆鋼線(AC線)である場合について考える。送電線への通電によって、送電線の周囲に交番磁界が発生する。この比較例のようにアーマロッドが強磁性体を含む場合、送電線への通電によって生じる交番磁界により、送電線の外周に巻き付けられるアーマロッドにおいて、渦電流損およびヒステリシス損による発熱が発生しうる。一方で、送電線に電流が流れることによって送電線にジュール熱が発生する。例えば外部素線が耐熱アルミニウム合金線系からなり電流容量が大きい送電線(例えばXTACIRなど)の場合では、送電線の最高到達温度は、約290℃となることがある。この比較例に用いられるAC線のキュリー点は700℃以上であるため、上記した送電線の使用温度の範囲では、比較例のAC線からなるアーマロッドは強磁性体のままである。比較例のAC線からなるアーマロッドでは、渦電流損およびヒステリシス損の発熱が、送電線の使用温度の範囲で常に発生しうる。このため、送電線の通電によるジュール熱に加え、アーマロッドの渦電流損およびヒステリシス損による発熱が発生することにより、アーマロッドが巻き付けられた送電線の補修部分の温度が(アルミニウム合金の耐熱温度を超えて)局所的に高くなる。これによって、アーマロッドが巻き付けられた送電線の補修部分において、アルミニウム合金からなる外部素線層が局所的に熱軟化してしまう可能性がある。したがって、アーマロッドが巻き付けられた送電線の補修部分が、補修したにもかかわらず弱くなってしまう可能性がある。
また、別の比較例として、送電線の補修に用いられるアーマロッドがアルミニウム合金からなる高強度アルミニウム合金線等である場合について考える。この比較例のようにアーマロッドがアルミニウム合金からなる場合、送電線への通電によって交番磁界が発生しても、送電線の外周に巻き付けられるアーマロッドにおける渦電流損およびヒステリシス損による発熱は小さい。一方で、上述のように、例えば外部素線が耐熱アルミニウム合金線系からなる送電線(例えばXTACIRなど)の場合では、送電線の最高到達温度が約290℃となることがある。このため、高強度アルミニウム合金線のように耐熱アルミニウム合金線系よりも耐熱温度が低いアルミニウム合金をアーマロッドとして用いた場合、アーマロッド自身が熱軟化してしまう可能性がある。したがって、アーマロッド自身が熱軟化するため、アーマロッドによって送電線の損傷部分を補修(補強)する効果が充分に得られない可能性がある。
これに対して、本実施形態によれば、アーマロッド10の中心部110のキュリー点は、送電線20に通電したときの送電線20の最高到達温度以下である。送電線20の温度が高くなるにつれて、アーマロッド10の中心部110が強磁性体から常磁性体に変化することにより、アーマロッド10の中心部110における渦電流損およびヒステリシス損による発熱が抑制される。これにより、アーマロッド10が巻き付けられた送電線20の補修部分の温度が局所的に高くなることが抑制される。したがって、アーマロッド10が巻き付けられた送電線20の補修部分において、送電線20のアルミニウム合金からなる外部素線層230が局所的に熱軟化することを抑制することができる。
また、本実施形態によれば、アーマロッド10の中心部110が鉄およびニッケルを含むことにより、中心部110は、アルミニウム合金と比較して熱軟化しにくい。したがって、送電線20への通電によって送電線20にジュール熱が発生しても、中心部110(アーマロッド10自身)が熱軟化することを抑制することができる。
以上のように、本実施形態によれば、アーマロッド10における渦電流損およびヒステリシス損による発熱を抑制するとともに、アーマロッド10自身の熱軟化を抑制することにより、アーマロッド10によって送電線20を安定的に保持することができる。
(b)本実施形態によれば、中心部110のキュリー点は、240℃以下である。これにより、特に電流容量が大きい送電線(例えばXTACIRなど)にアーマロッド10を適用する場合に、中心部110のキュリー点を送電線20の最高到達温度以下とすることができる。
(c)本実施形態によれば、アーマロッド10が巻き付けられる送電線20における外部素線240は、特別耐熱アルミ合金線(XTAL)からなる。この場合、送電線20の電流容量を増加させることができるため、送電線20の周囲に発生する交番磁界の磁束密度が大きくなり、また送電線20に発生するジュール熱が増加する可能性がある。本実施形態では、送電線20の電流容量が増加して送電線20の周囲に発生する交番磁界の磁束密度が大きくなっても、アーマロッド10の中心部110のキュリー点が送電線20に通電したときの送電線20の最高到達温度以下であることにより、交番磁界を起因とするアーマロッド10の渦電流損およびヒステリシス損による発熱を抑制することができる。また、送電線20の電流容量が増加して送電線20に発生するジュール熱が増加しても、アーマロッド10の中心部110が鉄およびニッケルを含むことにより、送電線20のジュール熱を起因とするアーマロッド10自身の熱軟化を抑制することができる。したがって、本実施形態は、外部素線240が耐熱アルミニウム合金線系からなる送電線(例えばXTACIRなど)に適用される場合に特に有効である。
(d)本実施形態によれば、中心部110は、例えば、いわゆるインバからなり、ニッケルを36重量%以上38重量%以下含有し、残部鉄と不可避不純物からなる。中心部110が上記組成を有することにより、キュリー点を240℃以下とすることができる。また、インバは送電線分野で汎用的に広く用いられていることから、アーマロッド10を容易に製造することができる。
<本発明の第2実施形態>
図3を用い、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、本実施形態に係る送電線22の軸方向と直交する断面図である。
本実施形態は、アーマロッドの被覆層の構成が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる要素についてのみ説明し、第1実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
(1)アーマロッドの構造
図3に示されているように、本実施形態の送電線22は、第1実施形態と同様に、例えばXTACIRである。具体的には、送電線22は、複数の芯線222を有する鋼心部212と、鋼心部212の外周に設けられ断面が扇形で特別耐熱アルミ合金線(XTAL)からなる複数の外部素線242を有する外部素線層232と、を有する。
送電線22に巻き付けられるアーマロッド12は、中心部112と、中心部112の外周を覆うように設けられる被覆層122と、を有する。アーマロッド12の被覆層122は、送電線22側よりも外側の表面に凹部または凸部を有する。本実施形態では、被覆層122の送電線22側よりも外側の表面に、複数の凹部132が所定の間隔をあけて設けられる。これにより、被覆層122の送電線22側よりも外側における表面積が大きくなることにより、アーマロッド12の放熱特性が向上する。
また、被覆層122の凹部132は、アーマロッド12の軸方向に沿って延在する。
また、被覆層122の最も薄い部分の厚さ(この場合での凹部132における厚さ)は、例えば、JCS1404に記載されている直径2.6mmのアルミニウム被覆インバ線の被覆層の厚さ以上である。
好ましくは、被覆層122の最も薄い部分の厚さは、例えば、36年使用したときに腐食により減少する厚さ以上である。これにより、被覆層122による腐食抑制効果を長期にわたり維持することができる。
具体的には、例えば、被覆層122の最も薄い部分の厚さは、0.14mm以上1.14mm以下であり、好ましくは0.30mm以上である。なお、電気学会技術報告第968号「架空送電線の電線腐食現象」に記載された山間部のアルミ1100材の腐食速度が7μm/年であることから、36年使用したときに腐食により減少する厚さは0.25mmとなる。したがって、被覆層122の最も薄い部分の厚さは、0.25mmを四捨五入して0.30mm以上であることが好ましい。
被覆層122の最も薄い部分の厚さが上記した範囲であることにより、凹部132の径方向の深さは、0.30mm以上1.30mm以下となる。
なお、被覆層に凸部が設けられる場合、凸部の径方向の高さは、1.5mm以下である。凸部の径方向の高さが1.5mm以下であることにより、コロナ放電を抑制することができる。
(2)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、アーマロッド12の被覆層122は、送電線22側よりも外側の表面に凹部または凸部を有する。これにより、被覆層122の送電線22側よりも外側における表面積が大きくなることにより、アーマロッド12の放熱特性を向上させることができる。したがって、アーマロッド12が巻き付けられた送電線22の補修部分の温度が局所的に高くなることが抑制されることにより、アーマロッド12が巻き付けられた送電線22の補修部分において、送電線22のアルミニウム合金からなる外部素線層232が局所的に熱軟化することを抑制することができる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
上述の実施形態では、アーマロッド10の中心部110がインバからなる場合について説明したが、中心部は、鉄およびニッケルのほかに、クロム(Cr)、珪素(Si)を含有していても良い。
また、上述の実施形態では、アーマロッド10が中心部110の外周を覆うように設けられる被覆層120を有する場合について説明したが、中心部が耐食性を有する場合は被覆層が設けられていなくても良い。
また、上述の実施形態では、アーマロッド10の被覆層120がマンガンを含む場合について説明したが、必ずしも、被覆層にマンガンは含まれていなくても良い。
また、上述の第1実施形態では、外部素線層230の外部素線240が特別耐熱アルミニウム合金線(XTAL)からなる送電線(例えばXTACIRなど)にアーマロッドを適用する場合について説明したが、外部素線層の外部素線層が通常のアルミニウム合金線、耐熱アルミ合金線(TAL)、および超耐熱アルミ合金線(ZTAL)の少なくともいずれかからなる送電線に本発明のアーマロッドを適用してもよい。なお、耐熱アルミ合金線(TAL)は、電気学会電気規格調査会標準規格JEC−3406「耐熱アルミ合金電線」に規定されており、超耐熱アルミ合金線(ZTAL)は、日本電線工業会規格JCS1405「亜鉛めっきインバ心超耐熱アルミ合金より線」に規定されている。
次に、本発明に係る実施例について比較例と共に説明する。
(アーマロッドの製造)
以下のように、本発明の実施例に係るアーマロッドおよび比較例に係るアーマロッドを製造した。
本発明の実施例のアーマロッド:
構成:第1実施形態
中心部組成:インバ(Ni38重量%)
直径:3.8mm
中心部直径:3.4mm
被覆層厚さ:0.2mm
軸方向の長さ:2500mm
比較例のアーマロッド:
構成:アルミ覆鋼線(AC線)
直径:3.8mm
軸方向の長さ:本発明のアーマロッドと同じ
(評価)
直径が21.2mmのXTACIRとして構成される送電線を用いて、送電線の周囲に、軸方向に異なる位置に、それぞれ、本発明に係るアーマロッドと比較例に係るアーマロッドとを巻き付けた。次に、送電線に対して、貫通型トランスを用いて200A以上1200A以下の電流を印加し、そのときの送電線、本発明に係るアーマロッド、および比較例に係るアーマロッドのそれぞれの温度を測定した。
(結果)
図4は、通電電流に対する、送電線、本発明に係るアーマロッド、および比較例に係るアーマロッドのそれぞれの温度を示す図である。図4に示されているように、通電電流が大きくなるにつれて、送電線の温度は上昇した。通電電流がおよそ1200Aのときに送電線の温度はおよそ300℃まで上昇した。
比較例に係るアーマロッドの温度は、通電電流が全ての範囲で、送電線の温度よりも高かった。送電線の温度範囲では、比較例のAC線からなるアーマロッドは強磁性体のままであるため、渦電流損およびヒステリシス損の発熱が送電線の温度範囲で常に発生したからであると考えられる。
本発明の実施例に係るアーマロッドの温度は、通電電流が約200A以上600A以下の範囲では、送電線の温度よりも若干高かったが、通電電流が約600A以上1200A以下の範囲では、送電線の温度と同等であった。送電線の温度が高くなるにつれて、本発明の実施例に係るアーマロッドの中心部が強磁性体から常磁性体に変化することにより、渦電流損およびヒステリシス損による発熱が抑制されたからであると考えられる。
なお、本発明の実施例に係るアーマロッド自身は、通電電流が大きくなるにつれて送電線の温度が上昇しても、熱軟化していなかった。
以上のように、本発明によれば、渦電流損およびヒステリシス損による発熱を抑制するとともに、自身の熱軟化を抑制することにより、送電線を安定的に保持するアーマロッドおよび送電線補強構造を提供することができる。
1 送電線補強構造
10,12 アーマロッド(送電線補修線材)
20,22 送電線
110,112 中心部
120,122 被覆層
132 凹部
210,212 鋼心部
220,222 芯線
230,232 外部素線層
240,242 外部素線

Claims (11)

  1. 送電線の外周に巻き付けられるアーマロッドであって、
    鉄およびニッケルを含有する中心部を有し、
    前記中心部のキュリー点は、前記送電線に通電したときの前記送電線の最高到達温度以下である
    ことを特徴とするアーマロッド。
  2. 前記中心部のキュリー点は、240℃以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載のアーマロッド。
  3. 前記中心部は、ニッケルを36重量%以上38重量%以下含有し、残部鉄と不可避不純物からなる
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のアーマロッド。
  4. 引張強度は、245MPa以上である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアーマロッド。
  5. 前記中心部の外周を覆うように設けられる被覆層を有する
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアーマロッド。
  6. 前記被覆層は、前記送電線側よりも外側の表面に凹部または凸部を有する
    ことを特徴とする請求項5に記載のアーマロッド。
  7. 前記被覆層は、マンガンを0.3重量%超2.9重量%以下含有する
    ことを特徴とする請求項5または6に記載のアーマロッド。
  8. 直径は、2.6mm以上5.0mm以下である
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のアーマロッド。
  9. 前記送電線の外周に撚り合せられるときの長手方向の長さは、1600mm以上4000mm以下である
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のアーマロッド。
  10. 前記送電線は、
    鋼心部と、
    前記鋼心部の外周に、耐熱アルミ合金線、超耐熱アルミ合金線および特別耐熱アルミ合金線の少なくともいずれかからなる外部素線が撚り合せられる外部素線層と、
    を有する
    ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のアーマロッド。
  11. 送電線と、
    前記送電線の外周に巻き付けられるアーマロッドと、
    を有し、
    前記アーマロッドは、鉄およびニッケルを含有する中心部を有し、
    前記中心部のキュリー点は、前記送電線に通電したときの前記送電線の最高到達温度以下である
    ことを特徴とする送電線補強構造。
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