道路橋床版の継手は多くの場合鋼鉄で形成され、継手と舗装とで材質が異なるので、継手に隣接する舗装の表面に、ポットホールやわだち掘れ等の損傷が発生しやすい。また、継手は2つの床版を接続するものであり、各々の床版に固定された部材の間に段差や隙間が生じやすい。さらに、継手に隣接する舗装の表面に、損傷が補修されてなる補修跡が存在することが多い。これらに起因して、継手の周辺で収集される鉛直加速度や路面形状等の測定情報は、継続して閾値を超えることが多い。したがって、上記橋脚番号標に基づく道路測定方法は、いずれの閾値を超えた測定情報が継手の設置位置に対応するのかを判断することが困難であり、測定情報の位置特定が困難になる場合がある。このような問題は、例えば横断排水溝等の他の構造物に関しても存在する。
また、道路の維持管理業務では、路面の不具合に迅速に対処する必要があることから、測定情報の収集作業に引き続いて分析作業を行い、路面の不具合を迅速かつ容易に発見し、不具合の位置を迅速かつ容易に特定できることが求められる。
そこで、本発明の課題は、構造物の近傍で収集された測定情報のうち、構造物に起因する測定情報を正確に特定できて、測定情報の測定位置を正確に特定できる道路測定システムを提供することにある。また、測定情報の収集作業に引き続いて、路面の不具合の発見と位置特定を迅速かつ容易に行うことができる道路測定システムを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の道路測定システムは、
車両に搭載され、上記車両の走行中に道路に関する測定を行って測定情報を出力する測定部と、
車両に搭載され、上記車両の走行中に、配置位置が予め特定された構造物を特定する表示物と、上記構造物と、路面とを同時に撮影して動画像を出力する動画撮影部と、
上記測定部から出力された上記測定情報と、上記動画撮影部から出力された上記動画像とを共通の時系列に沿って表示する表示部と、
上記表示部に表示された測定情報のうち、上記構造物に起因して所定の値を超えた測定情報の取得位置を、上記構造物の配置位置に対応付ける演算部と
を備えることを特徴としている。
上記構成によれば、車両に搭載された測定部により、この車両の走行中に、道路に関する測定が行われて測定情報が出力される。道路に関する測定の内容としては、例えば車両の速度、車両の加速度、走行音、路面形状、外気温度、路面の摩擦係数、降雨量及び路面温度等を採用できる。車両に搭載された動画撮影部により、この車両の走行中に、構造物を特定する表示物と、上記構造物と、路面とが同時に撮影されてなる動画像が動画撮影部から出力される。ここで、構造物とは、測定部から出力される測定情報によって存在が確認できるものであり、例えば橋梁の継手や、排水溝や、レーンマーク等が該当する。また、表示物とは、構造物の存在や位置を示すものであり、橋脚番号標や、標識や、キロポスト等が該当する。上記測定部から出力された上記測定情報と、上記動画撮影部から出力された上記動画像とが、共通の時系列に沿って表示部に表示される。この表示部に表示された測定情報のうち、上記構造物に起因して所定の値を超えた測定情報の取得位置が、演算部により、予め特定されている上記構造物の配置位置に対応付けられる。その結果、上記測定情報の取得位置を、高精度に特定することができる。ここで、上記表示部に、上記測定部から出力された上記測定情報と、上記動画撮影部から出力された上記動画像とが、共通の時系列に沿って表示部に表示されるので、操作者は、車両の走行による測定情報の収集作業に引き続いて、動画像で路面の状況を把握することができると共に、同一又は近傍の時刻に取得された動画像と測定情報とを比較検討することができる。したがって、測定情報の収集作業の後に、迅速かつ容易に路面の問題の有無を確認できると共に、問題のある路面の位置を特定することができる。
また、上記表示部に、上記測定部から出力された上記測定情報と、上記動画撮影部から出力された上記動画像とが、共通の時系列に沿って表示部に表示されるので、操作者は、同一又は近傍の時刻で取得された測定情報と動画像とを、容易に確認することができる。したがって、構造物の周辺で測定情報が継続して所定の値を超えても、測定情報と同一又は近傍の時刻で撮影された動画像を確認することにより、測定情報が所定の値を超えた原因を容易に特定することができる。
一実施形態の道路測定システムは、上記表示部に表示された測定情報のうち、上記構造物に起因して所定の値を超えた測定情報を特定する入力を受ける入力部を備え、
上記演算部は、上記入力部への入力により特定された測定情報の取得位置を、上記構造物の配置位置に対応付ける。
上記実施形態によれば、表示部を視認する操作者により、上記表示部に表示された測定情報のうち、上記構造物に起因して所定の値を超えた測定情報が特定され、入力部に入力される。ここで、上記表示部には、表示物と構造物と路面とが同時に撮影されてなる動画像のフレームが表示されるので、操作者は、路面の状況を把握することにより、所定の値を超えた測定情報が、上記表示物で特定される構造物によるものであるか否かを、確認することができる。したがって、構造物としての例えば継手の設置位置の近傍で、継手の段差と、継手に隣接する舗装のポットホールやわだち掘れと、継手に隣接する舗装の補修跡とに起因して所定の値を超えた測定情報が収集されても、上記表示部を通じて、操作者に、構造物である継手に対応する測定情報を正確に特定させて入力部に入力させることができる。その結果、構造物に起因して所定の値を超えた測定情報を適切に特定することができ、この測定情報の測定位置に、構造物の設置位置を対応させることができる。なお、この入力部への入力に基づいて行う測定情報の取得位置への構造物の配置位置の対応付けは、演算部が先ず対応付けを行った後に、演算部による対応付けを修正するために行ってもよい。この場合、演算部は、先ず、動画像に含まれる表示物の情報を抽出し、情報が抽出された表示物に対応する構造物の配置位置を、上記表示物の情報が抽出された動画像の撮影時刻の近傍の測定時刻で測定され、所定の値を超えた測定情報の測定位置に関連付ける。この後に、操作者による入力部への入力を受けることにより、上記演算部による対応付けを修正することができる。これにより、構造物に起因して所定値を超える測定情報が連続して存在する場合、演算部によって構造物に起因しない測定情報の測定位置に誤って構造物の設置位置が対応付けられても、表示部に表示される動画像を視認した操作者により修正を行って、適切な測定情報の測定位置に構造物の設置位置を対応付けることができる。
一実施形態の道路測定システムは、上記動画撮影部は、撮影方向が上記車両の進行方向に対して傾斜するように配置されている。
上記実施形態によれば、動画撮影部により、道路の側方と路面とを同時に撮影できて、表示物と、構造物と、路面とを同時に撮影することができる。したがって、表示部に表示される動画像により、表示物の有無と、構造物の有無と、路面の状況とを確認することができるので、測定情報の収集作業の後に、迅速かつ容易に路面の問題の有無を確認できると共に、問題のある路面の位置を特定することができる。
一実施形態の道路測定システムは、上記動画撮影部は、上記道路の側方からの入射光と、上記路面からの入射光とを単一の動画像に記録して出力する。
上記実施形態によれば、道路の側方からの入射光と、路面からの入射光とを単一の動画像に記録する動画撮影部により、同一の時刻に撮影された道路の側方の状況と路面の状況とを記録することができる。したがって、異なる動画カメラで道路の側方と路面とを撮影する場合のような、撮影された2つのデータを時刻同期する手間を省くことができる。よって、本実施形態の動画撮影部から出力された動画像を用いて、迅速に表示物の探索と路面の観察とを行うことができる。
一実施形態の道路測定システムは、上記動画撮影部は、上記道路の一方の側方からの入射光と、上記道路の他方の側方からの入射光と、上記路面からの入射光とを単一の動画像に記録して出力する。
上記実施形態によれば、道路の一方の側方からの入射光と、上記他方の側方からの入射光と、路面からの入射光とを単一の動画像に記録する動画撮影部により、同一の時刻に撮影された道路の一方の側方の状況と、他方の側方の状況と、路面の状況とを記録することができる。ここで、例えば高速道路では、一般的に、進行方向が反対向きの2つの道路が併設されており、各々の道路に走行車線と追越車線が設けられている。このような高速道路の追越車線を走行しながら道路の左側方を撮影すると、隣接する走行車線を走行する車両に妨げられて、道路の左側方の表示物が撮影できない場合がある。ここで、本実施形態によれば、走行車線に他の車両が走行しても、上記動画撮影部から出力された動画像には、右側の画像も記録されているので、この右側の画像から対向する道路に配置された表示物を抽出できる可能性がある。これは、同じ方向に走行する車両よりも、対向する道路を反対向きに走行する車両のほうが、相対速度が大幅に大きいので、表示物の撮影が妨げられる可能性が大幅に低いからである。したがって、測定のために道路を閉鎖することなく、他の車両が走行する状況において、道路の測定を行うことができる。また、本実施形態によれば、異なる動画カメラで道路の一方の側方と他方の側方と路面とを撮影する場合のような、撮影された3つのデータを時刻同期する手間を省くことができる。よって、本実施形態の動画撮影部から出力された動画像を用いて、迅速かつ確実に、表示物の探索と路面の観察とを行うことができる。
一実施形態の道路測定システムは、上記道路の側方を撮影してラインスキャン画像を出力するラインスキャン型撮影部を備える。
上記実施形態によれば、ラインスキャン型撮影部により、道路の側方の様子を、走査密度の高いラインスキャン画像に記録することができる。したがって、側方を撮影したラインスキャン画像に含まれる表示物の撮影時刻を正確に特定することができ、測定情報が構造物に起因して所定の値を超えた時刻を正確に特定することができる。また、速度計又は距離計と組み合わせることにより、上記ラインスキャン画像の撮影位置を正確に特定することができる。
一実施形態の道路測定システムは、上記表示部は、上記ラインスキャン型撮影部から出力されたラインスキャン画像を、上記測定部から出力された上記測定情報と共通の時系列に沿って表示し、
上記入力部は、上記表示部に表示された測定情報のうち、上記ラインスキャン画像に含まれる表示物の撮影時刻を特定するスキャン時刻入力を受け、
上記演算部は、上記入力部へのスキャン時刻入力で特定された撮影時刻の近傍の測定時刻にかかる測定情報であって、所定の値を超えた測定情報の測定位置を、上記表示物で特定される上記構造物の配置位置に対応付ける。
上記実施形態によれば、表示部に、ラインスキャン画像と測定情報とが共通の時系列に沿って表示され、この表示部に表示されたラインスキャン画像に含まれる表示物の撮影時刻が、入力部によってスキャン時刻入力として入力される。演算部により、スキャン時刻入力で特定された撮影時刻の近傍の測定時刻にかかる測定情報であって、所定の値を超えた測定情報の測定位置が、上記表示物で特定される上記構造物の配置位置に対応付けられる。このように、走査密度が高くて動画像よりも短い周期で取得されるラインスキャン画像に基づいて、測定情報の測定位置を構造物の配置位置に対応させることができる。
一実施形態の道路測定システムは、上記表示部に表示された上記測定情報と、上記動画像のフレームとを指定可能な指定入力部と、
上記指定入力部で測定情報が指定されると、指定された上記測定情報の測定時刻に対応する撮影時刻のフレームを上記表示部で強調表示するフレーム強調表示部と、
上記指定入力部でフレームが指定されると、指定された上記フレームの撮影時刻に対応する測定時刻の測定情報を上記表示部で強調表示する測定情報強調表示部と
を備える。
上記実施形態によれば、表示部に表示された測定情報と動画像のフレームのうち、所望の測定情報とフレームが指定入力部によって指定可能であり、この指定入力部で測定情報が指定されると、指定された上記測定情報の測定時刻に対応する撮影時刻のフレームが、フレーム強調表示部によって表示部で強調表示される。一方、上記指定入力部でフレームが指定されると、指定された上記フレームの撮影時刻に対応する測定時刻の測定情報が、測定情報強調表示部によって表示部で強調表示される。このように、表示部に表示された測定情報と動画像のフレームとの対応を、時刻を介して相互に確認することができる。したがって、表示部に表示されたフレーム中に路面の損傷が疑われる部分を発見した場合、この部分の撮影時刻に測定された測定情報を強調表示させて、この測定情報が所定の値を超えているか否かを確認し、路面の損傷の有無を判断することができる。また、表示部に表示された測定情報中に所定の値を超える部分を発見した場合、この部分の測定時刻に撮影されたフレームを強調表示させて、このフレームの内容を確認し、路面の損傷の有無を判断することができる。さらに、表示物で特定される構造物に起因して所定の値を超えた測定情報を、迅速かつ容易に特定することができるので、測定情報の精度良い位置特定を、迅速かつ容易に行うことができる。これらにより、車両による測定情報の収集作業の後に、迅速かつ容易に路面の問題を発見できると共に、問題のある路面の位置を正確に特定することができる。
一実施形態の道路測定システムは、上記指定入力部で測定情報又はフレームが指定されると、指定された測定情報に最も近い所定の値を超えた測定情報、又は、指定されたフレームに最も近い表示物を含むフレームに基づいて、上記表示物に対応する構造物の設置位置に対応付けられた測定情報の測定位置から、上記指定された測定情報の測定位置又はフレームの撮影位置までの距離を算出し、上記指定された測定情報の測定位置として、上記表示物の情報と上記距離とを表示部に表示する測定位置表示部を備える。
上記実施形態によれば、指定入力部で測定情報又はフレームが指定されると、測定位置表示部により、次の処理が実行される。すなわち、指定された測定情報に最も近い所定の値を超えた測定情報、又は、指定されたフレームに最も近い表示物を含むフレームが特定される。この特定された所定の値を超えた測定情報の測定位置、又は、特定された表示物を含むフレームの撮影時刻の近傍の測定時刻にかかる測定情報であって、基準値を超えた測定情報の測定位置が、上記表示物で示される構造物の設置位置に対応づけられる。この構造物の設置位置に対応付けられた測定位置から、上記指定された測定情報の測定位置又はフレームの撮影位置までの距離が算出され、表示部に表示される。したがって、表示部に表示される所望の測定情報又はフレームについて、その測定位置又は撮影位置を、最も近い表示物で示される構造物の設置位置に基づいて、高精度に特定することができる。
一実施形態の道路測定システムは、上記測定情報は、上記車両の走行中に受信した位置検出信号を含み、
上記指定入力部で測定情報又はフレームが指定されると、指定された測定情報の測定時刻又はフレームの撮影時刻に対応する受信時刻の位置検出信号に基づいて、上記指定された測定情報の測定位置又はフレームの撮影位置を示す地図を上記表示部に表示する地図情報表示部を備える。
上記実施形態によれば、指定入力部で測定情報又はフレームが指定されると、測定情報として収集されている位置検出信号のうち、指定された測定情報の測定時刻又はフレームの撮影時刻に対応する受信時刻の位置検出信号が特定される。この特定された位置検出信号に基づいて、地図情報表示部により、指定された測定情報の測定位置又はフレームの撮影位置を示す地図が、表示部に表示される。これにより、指定された情報の取得位置の概要を、操作者に知らせることができる。ここで、位置検出信号としては、GPS衛星から受信したGPS信号や、携帯電話や携帯情報端末の基地局との通信信号を採用することができる。
一実施形態の道路測定システムは、上記測定を行う道路は高架道路であり、
上記高架道路は、複数の床構造と、これらの複数の床構造を支持する橋脚と、この橋脚の上方に位置して上記床構造の床版と床版との間を接続する上記構造物としての継手と、この継手の近傍に設けられて上記橋脚を特定する情報が表示された上記表示物とを備える。
上記実施形態によれば、高架道路において、橋脚を特定する情報が表示された表示物としての例えば橋脚番号標は、道路の側部かつ継手の近傍に設置されている場合が多い。したがって、上記表示物を撮影した画像と、継手の通過に伴って所定の値を超えた測定情報とに基づいて、この測定情報の測定位置を継手の設置位置に対応付けることにより、上記測定情報の測定位置を高精度に特定できる。
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の道路測定システムが搭載された車両を示す模式図であり、図2は、実施形態の道路測定システムの構成を示す模式図である。本実施形態の道路測定システムSは、車両1に搭載され、この車両1で道路を走行して道路に関する測定を行うものである。
この道路測定システムSは、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)81と、メモリ82と、記憶装置83と、動画カメラ2と、加速度センサ3と、表面形状センサ4と、距離センサ5と、ラインスキャンカメラ6と、通信装置84と、入力装置85と、出力装置86と、読取装置87と、GPS(Global Positioning System)受信機7と、マイクロフォン9と、わだち掘れ測定器10で構成されている。上記CPU81、メモリ82、記憶装置83、通信装置84、入力装置85、出力装置86及び読取装置87は、ノート型パーソナルコンピュータ(以下、ノートPCという)8に内蔵されており、図1に示すように、ノートPC8に動画カメラ2、加速度センサ3、表面形状センサ4、距離センサ5、ラインスキャンカメラ6、GPS受信機7、マイクロフォン9及びわだち掘れ測定器10を接続して道路測定システムSが形成されている。
演算部としてのCPU81は、記憶装置83に格納されたプログラムを読み出して実行し、本発明の道路測定システムの各機能を実現する。メモリ82は、CPU81がプログラムを実行する際にデータを一時的に保存するために用いられる。記憶装置83は、加速度センサ3、表面形状センサ4、距離センサ5、ラインスキャンカメラ6、GPS受信機7及びマイクロフォン9で収集されたデータや、プログラム本体が記憶される。なお、ノートPC8に内蔵された記憶装置83のほか、外付けの記憶装置にセンサ等で収集されたデータを記憶してもよい。
動画撮影部としての動画カメラ2は、車両1の前部に設置され、路面と道路の側方とを撮影する。この動画カメラ2は、動画と静止画を撮影可能なデジタルムービーカメラである。図1及び図3に示すように、この動画カメラ2は車両1の前部の屋根に取り付けられており、撮像レンズを、矢印Aで示すように、進行方向に対して道路の路肩寄りに傾斜した方向に向けている。この動画カメラ2によれば、走行する道路の側方と路面との両方を同時に撮影できる。すなわち、動画カメラ2で撮影された動画像のフレームを模式的に示す図4のように、高架道路の側方の壁高欄111に設置された表示物としての橋脚番号標112と、路面と、路面に設置された継手107とを、同時に撮影することができる。
測定部としての加速度センサ3は、道路を走行する際に車両1に作用する加速度を測定するものであり、互いに直行する3方向の加速度を検出する。特に、路面に存在する凹凸を車両1のタイヤが乗り越える際に生じる加速度を検出する。この加速度センサ3から出力される加速度データに基づいて、路面の凹凸の程度を検知する。なお、加速度センサ3は、路面の凹凸に最も反応する鉛直方向の加速度のみを検出してもよい。
更なる測定部としての表面形状センサ4は、道路の路面に対してレーザ光で測距を行い、路面の凹凸を検出して形状データを出力する。
更なる測定部としての距離センサ5は、空間フィルタ法に基づいて非接触で車両1の速度と走行距離を測定し、速度データと距離データを出力する。なお、車両1の速度は、車両1の車軸の回転数に応じて出力される車速パルスに基づいて検出してもよい。
ラインスキャン型撮影部としてのラインスキャンカメラ6は、撮影する対象を、1列に並んだフォトダイオードアレイによってフォトダイオードの配列方向と直角の方向に走査することにより、走査方向に連続した画像を出力するものである。本実施形態では、ラインスキャンカメラ6は2つの撮影ユニットを備え、車両1の後部に配置されている。一方の撮影ユニットは、撮像レンズを車両1の進行方向に対して直角方向に向けて、道路の側方を撮影する。また、他方の撮影ユニットは、撮像レンズを路面に向けて路面を撮影する。このラインスキャンカメラ6により、車両1の進行方向に連続して道路の側方の状況を表す側方ラインスキャン画像と、車両1の進行方向に連続して路面の状況を表す路面ラインスキャン画像とが出力される。
通信装置84は、移動体通信を介したインターネット回線により、道路の管理施設に設置されたサーバとデータの送受信を行う。
入力装置85は、ノートPC8のキーボードや、タッチパネル、タッチパッド及びマウス等のポインティングデバイスであり、操作者により、道路測定システムSの動作に関する指令や設定が入力される。
出力装置86は、ノートPC8のディスプレイであり、道路測定システムSの操作に関するGUI(Graphical User Interface)や、各測定部で測定された測定情報や、動画カメラ2からの動画像や、ラインスキャンカメラ6からのラインスキャン画像や、CPU81による演算結果を表示する。また、他の出力装置86として、マイクロフォン9で収集した音データを出力するスピーカや、測定結果を紙媒体に出力するプリンタを備えてもよい。
読取装置87は、ノートPC8により道路測定システムSの機能を実現するためのプログラムを、CD―ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体等から読み取るものである。
更なる測定部としてのGPS受信機7は、GPS衛星から発信された位置検出信号としてのGPS信号を受信する。このGPS信号に基づいて、車両1の概略の走行位置が検出される。なお、車両1の走行位置は、位置検出信号として、通信装置84がモバイル情報通信の基地局から受信した信号を利用して検出してもよい。
更なる測定部としてのマイクロフォン9は、道路を走行する際に路面とタイヤの間に生成される音を収集する。マイクロフォン9から出力される音データを、CPU81で実行されるプログラムで処理して、収集された音の音圧や周波数を検出する。マイクロフォン9で収集された走行音の音圧や周波数に基づいて、路面の凹凸の程度を検知するようになっている。
更なる測定部としてのわだち掘れ測定器10は、路面の断面形状を連続して計測することにより、路面のわだち掘れ量を測定する。このわだち掘れ測定器10は、路面の法線方向に対して車両1の進行方向に傾斜した方向から路面の幅方向に広がるレーザ光線を扇形状に照射するレーザ発振器11と、路面に照射されたレーザ光の投影像を路面の法線方向から撮影する投影像撮影カメラ12とを有する。車両1の進行方向に傾斜した方向から路面に投射されたレーザ光は、路面の深さ方向のわだち掘れ量が車両1の進行方向に強調されて投影される。このレーザ光の投影像を撮影した投影像撮影カメラ12の画像を解析することにより、車両1の走行位置に対応するわだち掘れ量を測定するようになっている。なお、わだち掘れ測定器10は、路面の法線方向から、法線方向を中心として幅方向に扇形状に広がるレーザ光を照射するレーザ発振器と、このレーザ発振器で照射されたレーザ光の投影像を、路面の法線方向に対して車両1の進行方向に傾斜した方向から撮影する投影像撮影カメラとで形成してもよい。
この道路測定システムSは、車両1が道路を走行する際に、測定情報としての加速度データ、形状データ、速度データ、距離データ、音データ及びGPS信号を収集して記憶装置83に保存すると共に、動画カメラ2の撮影した動画データと、ラインスキャンカメラ6が撮影したスキャンデータを記憶装置83に保存する。上記測定情報と動画データとスキャンデータは、いずれも測定時刻と撮影時刻がデータを構成する単位毎に記録されており、表示部としてのディスプレイの表示画面に、時刻同期が行われて表示される。動画カメラ2で撮影された動画データについて画像認識処理を行い、動画データに映り込んだ道路に関する表示物を抽出し、抽出された表示物に記載された文字を認識する。本実施形態の道路測定システムSは、道路として、都市高速道路で採用される高架道路の測定に好適であり、高架道路に設置された表示物としての橋脚番号標を抽出し、抽出された橋脚番号標に記載されている橋脚番号を表す文字を認識する。
図5は、高架道路の継手の周辺部分を示した断面図である。高架道路は、コンクリート製の橋脚101と、この橋脚101で支持される上部構造で大略構成される。上部構造は、鋼製の主桁102と、この主桁102と直角に配置された図示しない横桁と、主桁102及び横桁上に配置されたコンクリート床版105と、コンクリート床版105の表面に敷設されたアスファルト舗装106と、コンクリート床版105の両端縁に沿って立設された壁高欄111を有する。主桁102の端部は、支承103を介して橋脚101に支持されている。高架道路は、複数のコンクリート床版105が道路の延長方向に連なって形成され、複数のコンクリート床版105の接続部分には継手107が設けられている。継手107は、主桁102の端部を支持する橋脚101の上に位置している。継手107は、各コンクリート床版105の端部に固定されて互いに噛み合う部分が櫛状をなす鋼製の継手本体108と、各コンクリート床版105に固定された継手本体108の櫛状部分の相互間に配置される止水部材109とを有する所謂フィンガージョイントである。なお、継手107の継手本体108は、相互に噛み合う部分が櫛状以外の他の形状でもよい。また、継手107は、当該フィンガージョイントのように路面に構成部材が露出する鋼製ジョイント以外に、路面にゴム等の可撓性部材が露出するゴムジョイントであってもよい。継手107で接続されるコンクリート床版105のうちの一方のコンクリート床版105に設けられた壁高欄111の端部に、橋脚101を特定するための橋脚番号標112が設置されている。なお、橋脚101の材質は、コンクリート以外に鋼であってもよく、床版はコンクリート床版105以外に鋼製床版であってもよい。また、桁の材質は、鋼以外にプレキャストコンクリートであってもよい。橋脚番号標112は、緑色に着色された矩形のプレートに、道路の名称の頭文字と、逆三角形記号と、道路の起点から計数した序数とからなる橋脚番号が記載されて構成されている。なお、橋脚番号票112は、緑色以外の色に着色されてもよく、他の文字が記載されてもよい。また、橋脚番号票112を形成するプレートの形状は、矩形以外の例えば楕円形等でもよい。要は、橋脚番号票112は、画像認識処理によって認識できる形及び/又は色を有し、橋脚101を特定できる情報が記載されていればよい。この橋脚番号標112は、道路を走行する検査車両から容易に視認されるように、壁高欄111の道路側面に設置されている。橋脚番号標112の設置位置は、橋脚番号に対応付けられて、道路の起点からの距離によって特定されている。本実施形態の道路測定システムSは、この橋脚番号標112を、測定情報の測定位置を特定するために利用する。
橋脚番号標112は、隣り合うコンクリート床版105とコンクリート床版105を接続する継手107に近接した位置に設置されているので、図4に示すように、車両1に搭載されて撮像レンズを進行方向に対して道路の路肩寄りに傾斜した方向に向けた動画カメラ2により、路面の継手107と共に撮影される。すなわち、動画カメラ2が撮影した動画データには、橋脚番号標112と共に、継手107が映り込んでいる。この動画カメラ2で撮影されて出力された動画データについて、CPU81で実行される画像認識プログラムによって画像認識が行われ、橋脚番号標112の文字が抽出される。
動画データの画像認識処理においては、動画データを構成するフレームの画像データについて、橋脚番号標112の形状である矩形の形状認識と、橋脚番号標112の色である緑色の色認識を行う。形状認識と色認識によって橋脚番号標112の部分を抽出し、抽出した部分の文字認識を行って、橋脚番号を抽出する。抽出された橋脚番号を表す文字データは、記憶装置83のテーブルに格納される。記憶装置83のテーブルには、車両1が走行して測定を行う都市高速道路について、橋脚番号に対応する継手の設置位置が、所定の道路起点からの距離によって表されて格納されている。
画像認識処理が行われる動画データは、加速度データが基準値を超えた時刻を中心として、前後数秒の範囲にわたって収集された動画データであり、複数のフレームを構成する複数の画像データで形成されている。このように、画像認識処理を行う対象を、加速度データが基準値を超えた時刻を含む所定範囲の動画データとすることにより、橋脚番号標112が継手107と多少ずれた位置に設置されているにもかかわらず、橋脚番号標112が映り込んだ画像データを確実に取得することができる。なお、画像認識処理を行う対象は、動画データのほかに、加速度データが基準値を超えたことをトリガーとして動画カメラ2で撮影動作を実行して得た静止画の画像データであってもよい。また、形状データの変化率が基準値を超えた時刻を中心として、所定の範囲の動画データの画像認識処理を行ってもよい。また、測定情報の値にかかわらず、全ての動画データの画像認識処理を行ってもよい。
この道路測定システムSを用いて、高架道路の測定を行う方法を説明する。まず、道路測定システムSの記憶装置83に、走行する道路に設置されている継手107に関する情報を格納する。継手107に関する情報は、継手107に対応する橋脚番号と、道路の起点からの距離で表された継手107の設置位置である。なお、継手107に関する情報は、道路の管理施設に設置されたサーバに格納し、必要に応じて通信装置84を通じて道路測定システムSに読み込んでもよい。
続いて、測定部としての加速度センサ3、表面形状センサ4、GPS受信機7、距離センサ5、マイクロフォン9及びわだち掘れ測定器10を起動すると共に、動画カメラ2とラインスキャンカメラ6による撮影を開始し、車両1の走行を開始する。測定対象の高架道路を走行しながら測定部で測定を行い、加速度センサ3からの加速度データと、表面形状センサ4からの形状データと、GPS受信機7からのGPS信号と、距離センサ5からの速度データ及び距離データと、マイクロフォン9からの音データと、わだち掘れ測定器10からのわだち掘れ量データを、測定時刻に対応付けて記憶装置83に格納する。また、動画カメラ2で道路の側方と路面の撮影を行うと共に、ラインスキャンカメラ6で路面と道路の側方の撮影を行い、動画カメラ2の動画データとスキャンデータを、撮影時刻に対応付けて記憶装置83に格納する。測定情報としての加速度データ、形状データ、GPS信号、速度データ、距離データ、音データ及びわだち掘れ量データの測定時刻と、動画データの撮影時刻と、スキャンデータのスキャン時刻は、互いに同期されて記憶装置83に格納される。
格納された測定情報と動画データが記憶装置83に格納されると、構造物としての継手107の設置位置に基づいて測定情報の位置特定が行われる。この位置特定は、測定情報の収集と並行して行ってもよく、測定情報の収集が完了してから行ってもよい。
まず、CPU81が、記憶装置83から動画データを読み込み、動画データのフレームに対して画像認識処理を行い、形状認識と色認識を行って、表示物としての橋脚番号標112の領域が存在するか否かを判断する。橋脚番号標112の領域が存在すると、この領域を抽出し、抽出した領域の文字認識を行って橋脚番号を抽出する。抽出した橋脚番号を示す文字データは、抽出された動画データのフレームの撮影時刻に対応付けて記憶装置83に保存する。
一方、CPU81は、動画データの画像認識処理と並行して、加速度データを記憶装置83から読み込み、加速度データが予め定められた基準値を超えるか否かを判定する。加速度データが基準値を超えると判断すると、この基準値を超えた加速度データを抽出し、測定時刻に対応付けて記憶装置83に保存する。
動画データからの橋脚番号の抽出と、基準値を超える加速度データの抽出が完了すると、抽出した橋脚番号にかかる撮影時刻と加速度データの測定時刻を比較する。加速度データが基準値を超えた測定時刻が、橋脚番号にかかる撮影時刻と実質的に一致する場合、この橋脚番号で特定される継手107の通過により、加速度データが基準値を超えたと判断する。そして、基準値を超えた加速度データの測定位置を、記憶装置83に格納されている継手107の設置位置に対応付けて特定する。一方、加速度データが基準値を超えた測定時刻が、橋脚番号にかかる撮影時刻と実質的に一致しない場合、加速度データは、ポットホールや段差等で基準値を超えたと判断する。そして、基準値を超えた加速度データの測定位置を、最も近い橋脚番号で特定される継手107の設置位置と、この継手107の設置位置からの走行距離とに基づいて特定する。この走行距離は、最も近い橋脚番号で特定される継手107に対応する加速度データの測定時刻と、ポットホールや段差等で基準値を超えた加速度データの測定時刻と、これらの測定時刻で測定された距離センサ5からの速度データ又は距離データに基づいて特定する。
また、上記加速度データの基準値との比較のほか、マイクロフォン9から出力された音データと、表面形状センサ4から出力された形状データについても、記憶装置83から読み出し、各データ及び形状データの各々に対応して設定された基準値との比較を行う。これにより抽出した基準値を超える音データと基準値を超える形状データを、各データの測定時刻に基づいて、上記橋脚番号を抽出した動画データの撮影時刻と比較する。基準値を超える音データ又は基準値を超える形状データの測定時刻が、橋脚番号にかかる撮影時刻と実質的に一致する場合、この橋脚番号で特定される継手107の通過により、音データ又は形状データが基準値を超えたと判断する。そして、基準値を超えた音データ又は形状データの測定位置を、記憶装置83に格納されている継手107の設置位置に対応付けて特定する。一方、基準値を超える音データ又は基準値を超える形状データの測定時刻が、橋脚番号にかかる撮影時刻と実質的に一致しない場合、音データ又は形状データは、ポットホールや段差等で基準値を超えたと判断する。そして、基準値を超えた音データ又は形状データの測定位置を、最も近い橋脚番号で特定される継手107の設置位置と、この継手107の設置位置からの走行距離とに基づいて特定する。この走行距離は、最も近い橋脚番号で特定される継手107に対応する音データ又は形状データの測定時刻と、ポットホールや段差等で基準値を超えた音データ又は形状データの測定時刻と、これらの測定時刻で測定された距離センサ5からの速度データ又は距離データに基づいて特定する。
このように、記憶装置83に格納された測定情報と動画データとを読み出して測定位置を特定するとき、互いの測定情報と動画データを時刻に基づいて同期する。図6は、動画データに含まれる動画像のフレームと、各測定情報とを共通の時系列で示した模式図である。図6において、共通する時間軸を横軸として、動画像のフレームを撮影時刻順に配列したフレーム列201と、速度データの速度グラフ202と、加速度データの加速度グラフ203と、形状データの形状グラフ204とを、縦軸方向に配置している。図6において、動画データと、速度データと、加速度データと、形状データは、時刻同期が行われているが、各データの取得位置によってずれが生じている。これらのデータのずれは、図1に示すように、動画カメラ2の撮影対象位置に対して、加速度センサ3の離隔距離d1と、表面形状センサ4の離隔距離d2とが存在し、これらの離隔距離d1,d2が互いに異なることによって生じている。表1は、これらの離隔距離d1,d2によって、フレームを基準としてどの程度のずれが生じるかを示した表である。表1では、動画像のフレームレートが毎秒30枚であり、加速度センサ3の離隔距離d1が1mであり、表面形状センサ4の離隔距離d2が3mであるとして、車両1の速度が60km/hの場合と、80km/hの場合について、各測定情報に生じるずれをフレーム数によって示している。
表1のずれを考慮して、動画フレームと各測定情報とを比較することにより、各測定情報に表れる変化の原因を動画フレームで特定することができる。例えば、図6において、撮影時刻t1の動画フレームf1に橋脚番号標112及び継手107が含まれている場合、撮影時刻t1に対してずれが生じた測定時刻t2に加速度データのピークα1が表れると共に、撮影時刻t1に対して更にずれが生じた測定時刻t3に形状データのピークδ1が表れる。すなわち、継手107に起因して加速度データと形状データに表れるピークα1,δ1が、夫々異なる測定時刻t2,t3で現れる。これらの関係に基づいて、加速度データと形状データが所定の値を超える部分について、ずれを考慮して、対応する動画フレームを特定することにより、所定の値を超えた加速度データと形状データが取得された時刻の路面の状況を確認することができる。また、動画フレームに、路面の損傷が疑われる部分が発見された場合、上記ずれを考慮して、対応する加速度データと形状データを特定することにより、疑われる部分がポットホール等の損傷であるか否かを確認することができる。
基準値を超えた測定情報が、継手107の設置位置に対応付けられると、道路測定システムSの表示部として機能するノートPC8のディスプレイに、相互に検索可能に表示された測定情報と動画像とで路面の検査を行うと共に、測定情報の測定位置の修正を行うための検査画面が表示される。
図7は、道路測定システムSのノートPC8のディスプレイに表示される検査画面を示した模式図である。この検査画面は、記憶装置83に格納されたプログラムがCPU81で実行されて表示され、以下に説明する処理が行われる。図7に示すように、検査画面には、形状データに基づく路面プロファイルと、形状データから算出したIRI(International Roughness Index : 国際ラフネス指数)とを表示するプロファイル表示窓301と、わだち掘れ測定器10から出力されたわだち掘れ量を表示するわだち掘れ量表示窓302と、道路の側方のラインスキャン画像を表示する側方ラインスキャン画像表示窓303と、路面のラインスキャン画像を表示する路面ラインスキャン画像表示窓304と、動画像のフレームを表示する動画フレーム表示窓305と、動画カメラ2の画像を表示する動画像表示窓306と、指定された情報の概略の測定位置を表示する地図情報表示部としての地図表示窓307と、指定された情報の測定位置を橋脚番号と継手107からの距離で表示する測定位置表示窓308が設定されている。なお、プロファイル表示窓301と、わだち掘れ量表示窓302と、側方ラインスキャン画像表示窓303と、路面ラインスキャン画像表示窓304に替えて、また、これらに加えて、他の測定情報を表示してもよい。
プロファイル表示窓301と、わだち掘れ量表示窓302と、側方ラインスキャン画像表示窓303と、路面ラインスキャン画像表示窓304と、動画フレーム表示窓305は、横方向に共通する時間軸が設定されており、各窓301,302,303,304,305内に表示される測定情報又は画像情報は、動画カメラ2の撮影対象位置や測定装置の設置位置に起因するずれが修正して表示されている。これにより、時間軸上の同一位置に、同一の測定位置又は撮影位置における情報が配置されている。プロファイル表示窓301内には、横軸の測定時刻に応じた形状データが示される路面プロファイル線311と、横軸の測定時刻に応じた形状データに基づいて算定されたIRIが示されるIRI線312が表示されている。わだち掘れ量表示窓302内には、わだち掘れ量を示すわだち掘れ線313が表示されている。各窓301,302,303,304,305の内側の情報は、ポインタ309を介して入力装置85で指定可能になっている。
例えばプロファイル表示窓301内で、ポインタ309により、路面プロファイル線311上の所定の情報が指定されると、この情報の測定時刻に対応する動画フレーム表示窓305のフレーム305aが、外枠の境界線が赤色に着色されて強調表示される。このフレーム305aの強調表示を行うプログラムとCPU81により、フレーム強調表示部が実現される。また、フレーム305aの拡大画像が動画像表示窓306に表示される。さらに、指定された情報の概略の測定位置が、指定された情報の測定時刻に対応するGPS信号に基づいて、地図表示窓307に表示される。さらに、指定された情報の測定位置として、この情報に最も近い継手107に対応する橋脚番号と、この橋脚番号から測定された走行距離とが測定位置表示窓308に表示される。
一方、動画フレーム表示窓305内の所定のフレーム305aが指定されると、プロファイル表示窓301と、わだち掘れ量表示窓302と、側方ラインスキャン画像表示窓303と、路面ラインスキャン画像表示窓304とを横断して縦方向に延びる表示バー310が、フレーム305aの撮影時刻に対応する横方向位置に表示される。この表示バー310が各窓301,302,303,304内の情報と交差することにより、指定されたフレーム305aの撮影時刻に対応する測定時刻の測定情報が強調表示される。この表示バー310による強調表示を実行するプログラムとCPU81により、測定情報強調表示部が実現される。また、動画像表示窓306には、指定されたフレーム305aの拡大画像が表示される。また、指定されたフレーム305aの概略の撮影位置が、指定されたフレーム305aの撮影時刻に対応するGPS信号に基づいて、地図表示窓307に表示される。さらに、指定されたフレーム305aの撮影位置として、この情報に最も近い継手107に対応する橋脚番号と、この橋脚番号から測定された走行距離とが測定位置表示窓308に表示される。
このように、道路測定システムSの検査画面によれば、同時刻に取得された測定情報と動画像のフレームとを相互に検索して確認できる。したがって、画像表示窓306に表示される画像に路面の損傷が疑われる部分を発見した場合、この画像の撮影時刻に測定された測定情報に対応する路面プロファイルやわだち掘れ量を表示バー310で特定し、これらの値が所定の値を超えているか否かを確認して、路面の損傷の有無を判断することができる。また、プロファイル表示窓301に表示された路面プロファイル線311又はIRI線312や、わだち掘れ量表示窓302に表示されたわだち掘れ線313に、所定の値を超える部分を発見した場合、この部分をポインタ309で指定することにより、この部分の測定時刻に撮影されたフレーム305aを強調表示させると共に動画像表示窓306に拡大表示させ、更に、表示バー310で路面ラインスキャン画像表示窓304の路面ラインスキャン画像を特定して、路面の損傷の有無を判断することができる。
また、継手107を含むフレーム305aを指定することにより、この継手107の設置位置に測定位置が対応付けられた測定情報としての路面プロファイル線311やわだち掘れ線313を、表示バー310で強調表示することができる。この表示バー310で強調表示された測定情報が、基準値を超えているかを確認することにより、継手107の設置位置の対応付けが適切であるかを確認できる。また、継手107に隣接するフレーム305aを指定することにより、表示バー310で特定される路面ラインスキャン画像表示窓304の路面ラインスキャン画像や、わだち掘れ量表示窓302のわだち掘れ量を通じて、継手107に隣接する舗装に、ポットホールやわだち掘れ等の損傷が発生しているか否かを詳細に確認することができる。また、継手107に隣接する舗装には、過去のわだち掘れ等に対する補修跡が存在することがあるが、補修跡を走行する際にも加速度センサ3やマイクロフォン9による測定情報が所定値を超える場合がある。このような場合にも、継手107に隣接するフレーム305aを指定することにより、路面ラインスキャン画像表示窓304で特定される路面ラインスキャン画像を通じて、測定情報が所定値を超えた原因が、補修跡であるのか又はポットホール等の損傷であるのかを確認することができる。
また、この道路測定システムSの検査画面によれば、路面ラインスキャン画像表示窓304には、動画カメラ2の動画像よりも高精細の路面ラインスキャン画像が表示されるので、この路面ラインスキャン画像により、路面の様子を詳細に観察することができる。そして、路面に、路面のポットホールや、わだちや、ひび割れ等が発見された場合、これらの部分をポインタ309で指定することにより、この部分の撮影位置を測定位置表示窓308に表示させることができる。したがって、路面の検査が可能であると共に、検査により発見された不具合の位置を、迅速かつ高精度に特定することができる。
さらに、この道路測定システムSの検査画面によれば、側方ラインスキャン画像表示窓303には、動画カメラ2の動画像よりも高精細の側方ラインスキャン画像が表示されるので、この側方ラインスキャン画像により、道路の側方に存在する高欄111や、高欄111の上に設置される防音壁113や、防音壁113を支持する支柱114等の様子を詳細に観察することができる。そして、側方ラインスキャン画像表示窓303に表示された側方ラインスキャン画像に、高欄111等の損傷部分が発見された場合、この損傷部分をポインタ309で指定することにより、この部分の撮影位置を測定位置表示窓308に表示させることができる。したがって、道路の側方に存在する構造物の検査が可能であると共に、検査により発見された不具合の位置を、迅速かつ高精度に特定することができる。
ここで、動画像中の橋脚番号標112が不鮮明であることや、動画カメラ2の撮影対象位置に障害物が存在すること等に起因して、画像認識による橋脚番号標112の抽出が行われない場合がある。この場合、橋脚番号標112に対応する継手107の設置位置が、この継手107に起因して所定値を超えた測定情報に対応付けられず、測定情報の位置特定の不良が生じる。この位置特定の不良は、継手107を含むフレーム304aを指定したときに、測定位置表示窓307に表示される橋脚番号が、指定したフレーム304aの継手107のものと異なることにより発覚する。このような位置特定の不良が発覚した場合、継手107を含むフレーム304aを指定したときに側方ラインスキャン画像表示窓303で表示バー309と交差して強調表示される側方ラインスキャン画像に基づいて、測定情報の測定位置を修正することができる。側方ラインスキャン画像表示窓303には、動画カメラ2による動画像よりも走査密度の高いラインスキャンカメラ6で撮影された高精細のラインスキャン画像が表示されており、このラインスキャンカメラ6は、動画カメラ2と異なる位置に設置されている。したがって、継手107を含むフレーム304aを指定して表示バー309で強調された側方ラインスキャン画像表示窓303には、強調部分またはその近傍の側方ラインスキャン画像に、鮮明な橋脚番号標112が映っているので、この側方ラインスキャン画像によって橋脚番号標112を特定できる。こうして特定した橋脚番号標112に対応する継手107の設置位置を、記憶装置83のテーブルを参照して読み出す。この継手107の設置位置を、継手107を含むフレーム304aの撮影時刻と測定時刻が実質的に同じであって基準値を超えた測定情報の測定位置として、対応づける。このようにして、測定情報の測定位置を修正することができる。
また、画像認識による橋脚番号標112の抽出が誤って行われて、測定情報の測定位置が、誤った継手107の設置位置に対応付けられて、位置特定の不良が生じる場合がある。この位置特定の不良は、いずれかの窓301,302,303内の所定の測定情報を指定したときに、測定位置表示窓307に表示される橋脚番号が、進行方向と反対方向において最も近い橋脚番号、すなわち、既に通過した橋脚番号のうちの最も近い橋脚番号と異なることにより発覚する。このような位置特定の不良が発覚した場合においても、所定の測定情報を指定したときに側方ラインスキャン画像表示窓303で強調される側方ラインスキャン画像の近傍の側方ラインスキャン画像であって、橋脚番号標112が映っている側方ラインスキャン画像に基づいて、測定情報の測定位置を修正することができる。
このように、道路測定システムSの検査画面によれば、画像認識処理の失敗により、継手107の設置位置に基づく測定情報の測定位置の特定に不良が生じても、この不良を修正することができる。なお、画像認識処理を行わず、記憶装置83に格納された測定情報と動画データとラインスキャンデータを検査画面に読み出して、操作者が、検査画面を通じて橋脚番号を認識し、入力装置85を通じて測定情報の測定位置を継手107の設置位置に対応付けてもよい。特に、側方ラインスキャン画像表示窓303に表示される橋脚番号標112に基づいて、この橋脚番号標112を含むラインスキャンデータをポインタ308で指定し、この橋脚番号標112を含むラインスキャンデータの撮影時刻を特定する。このラインスキャンデータの撮影時刻の近傍の測定時刻にかかる測定情報であって、基準値を超えた測定情報の測定位置を、橋脚番号標112で特定される継手107の配置位置に対応付けてもよい。これにより、上記測定情報の測定位置を、継手107の配置位置に基づいて正確に特定することができる。
上記実施形態の道路測定システムSでは、道路の側方と路面を、単一方向を撮影する動画カメラ2で撮影したが、道路の側方と路面を、2方向を同時に撮影する2方向動画カメラで撮影してもよい。図8は、車両1に搭載された2方向動画カメラ22の撮影方向を示す模式図である。2方向動画カメラ22は、撮影方向の異なる2つのレンズを備え、各レンズに入射した光を信号に変換し、単一の動画データとして出力するものである。この2方向動画カメラ22のレンズが、矢印A’で示す道路の側方と、矢印Bで示す進行方向とを向かうように設定する。この2方向動画カメラ22により、道路の側方と路面とを同時に撮影して、単一の動画データを出力することができる。図9は、2方向動画カメラ22で撮影された動画データを示す模式図である。図9に示すように、2方向動画カメラ22で撮影された動画データは、道路の側方を撮影した側方領域24と、道路の進行方向の路面を撮影した正面領域25とを有するフレーム23で形成される。この側方領域24と正面領域25を含むフレーム23は、単一の撮影時刻で特定される。したがって、道路の側方と路面とを異なるカメラで撮影する場合のような、各カメラから出力された動画データを時刻同期する手間を省くことができるので、迅速に橋脚番号標112の探索と路面の観察を行うことができる。また、この2方向動画カメラ22は、道路の路肩寄りに傾斜して撮影する動画カメラ2よりも、道路の側方を広範囲にわたって撮影できる。したがって、2方向動画カメラ22の動画像に基づいて、道路の側方に存在する高欄111や、高欄111の上に設置される防音壁113や、防音壁113を支持する支柱114等の様子を詳細に観察でき、これらの劣化や損傷を正確に把握することができる。
また、車両1が高架道路の壁高欄111から離れた車線を走行するとき、壁高欄111と車両1との間に存在する他の車両により、壁高欄111に設置された橋脚番号標112の撮影が妨げられる問題がある。この問題を解決するため、車両1に搭載する動画撮影部として、3方向動画カメラ32を採用することができる。図10は、車両1に搭載された3方向動画カメラ32の撮影方向を示す模式図である。3方向動画カメラ32は、撮影方向の異なる3つのレンズを備え、各レンズに入射した光を信号に変換し、単一の動画データとして出力するものである。ここの3方向動画カメラ32の3つのレンズが、矢印A’で示す同一進行方向の道路の路肩向きの側方と、矢印Bで示す進行方向と、矢印Cで示す反対進行方向の道路の路肩向きの側方とを向かうように設定する。この3方向動画カメラ32により、同一進行方向の道路の側方と路面と、反対進行方向の道路の側方とを同時に撮影することができる。したがって、隣接する車線に他の車両が存在することにより、同一進行方向の道路の壁高欄111に配置された橋脚番号標112の撮影が妨げられても、反対進行方向の道路の壁高欄111に配置された橋脚番号標112を撮影することができる。したがって、道路の測定のために高架道路を閉鎖する必要が無く、道路を供用した状態で測定を行うことができる。また、この3方向動画カメラ32により、同一進行方向の道路の側方と路面と、反対進行方向の道路の側方とを同時に撮影して、単一の動画データを出力することができる。したがって、道路の一方の側方と路面と他方の側方とを異なるカメラで撮影する場合のような、各カメラから出力された動画データを時刻同期する手間を省くことができるので、迅速に橋脚番号標112の探索と路面の観察を行うことができる。
上記実施形態において、道路の側部に設置されて動画カメラ2で撮影する表示物として、橋梁の橋脚番号標112を採用したが、道路の起点からの距離を表示するキロポストを採用してもよい。すなわち、動画カメラ2の映像データから、キロポストの領域を形状認識及び色認識で抽出し、文字認識によって道路の起点からの距離を抽出してもよい。また、表示物として、道路の路線名称を表示する路線標識や、高速道路の出入口の名称を示す出入口標識を採用してもよい。さらに、構造物として、排水溝や路面表示を採用してもよい。表示物として、キロポスト、路線標識及び出入口標識等を採用し、構造物として、排水溝や路面表示を採用した場合、これらの表示物と構造物との間の離隔距離は予め特定されている。したがって、構造物の通過時に基準値を超えた測定情報と、この構造物に対応する表示物とに基づいて、上記基準値を超えた測定情報の測定位置を高精度に特定できる。その結果、上記構造物の通過時に基準値を超えた測定情報に基づいて、他の測定情報の測定位置を高精度に特定することができる。