JP2015197204A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】押圧装置の発生する推力に基づいて、入力側ディスク2cと鍔部19との間でフレッチング摩耗が発生するのを防止する。【解決手段】前記入力側ディスク2cの中心孔20の内周面に、単一円筒面状のディスク側嵌合面部21を形成する。又、入力回転軸1bの外周面のうちで、前記鍔部19と軸方向に隣接する部分に、単一円筒面状の軸側嵌合面部26を形成する。そして、この軸側嵌合面部26を前記ディスク側嵌合面部21に圧入する。【選択図】図1

Description

この発明は、自動車用変速装置として、或いはポンプ等の各種産業用機械の運転速度を調節する為の変速装置として利用する、トロイダル型無段変速機の改良に関する。
自動車用変速装置としてトロイダル型無段変速機を使用する事が、特許文献1〜4等の多くの刊行物に記載されると共に一部で実施されていて周知である。又、トロイダル型無段変速機と遊星歯車機構とを組み合わせて変速比の調整幅を広くする構造も、特許文献5等、やはり多くの刊行物に記載されて、従来から広く知られている。図3は、これら各特許文献に記載されて従来から広く知られているトロイダル型無段変速機の第1例を示している。この従来構造の第1例の場合、入力回転軸1の両端寄り部分の周囲に1対の入力側ディスク2a、2bを、それぞれがトロイド曲面である内側面同士を互いに対向させた状態で、ボールスプライン18、18を介して支持し、遠近動可能に、且つ、前記入力回転軸1と同期して回転する様にしている。又、この入力回転軸1の中間部周囲に出力筒3を、この入力回転軸1に対する相対回転を可能に支持している。又、この出力筒3の外周面には、軸方向中央部に出力歯車4を固設すると共に、軸方向両端部に1対の出力側ディスク5、5を、スプライン係合により、前記出力筒3と同期した回転を可能に支持している。又、この状態で、それぞれがトロイド曲面である、前記両出力側ディスク5、5の内側面を、前記両入力側ディスク2a、2bの内側面に対向させている。
又、前記両入力側ディスク2a、2bと前記両出力側ディスク5、5との間に、それぞれの周面を球状凸面とした複数個のパワーローラ6、6を挟持している。これら各パワーローラ6、6は、それぞれトラニオン7、7に回転自在に支持されており、前記両入力側ディスク2a、2bの回転に伴って回転しつつ、これら両入力側ディスク2a、2bから前記両出力側ディスク5、5に動力を伝達する。即ち、トロイダル型無段変速機の運転時には、駆動軸8により一方(図3の左方)の入力側ディスク2aを、押圧装置9(図示の構造はローディングカム式の押圧装置)を介して回転駆動する。この結果、前記入力回転軸1の両端部に支持された1対の入力側ディスク2a、2bが、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、前記各パワーローラ6、6を介して前記両出力側ディスク5、5に伝わり、前記出力歯車4から取り出される。尚、前記各トラニオン7、7が、特許請求の範囲に記載した支持部材に相当する。
又、前記入力回転軸1の両端部近傍で前記両入力側ディスク2a、2bを軸方向両側から挟む位置に、それぞれが大きな弾力を有する皿ばね等である予圧ばね10a、10bを設けている。そして、前記押圧装置9の非作動時(前記駆動軸8の停止時)にも、前記各パワーローラ6、6の周面と、前記入力側、出力側各ディスク2a、2b、5の内側面との転がり接触部(トラクション部)の面圧を、必要最低限だけは確保する様にしている。従って、これら各転がり接触部は、トロイダル型無段変速機の運転開始直後から、過大な滑りを生じる事なく、動力伝達を開始する。尚、前記必要最低限の面圧を確保する為の弾力は、前記押圧装置9の内径側に配置した予圧ばね10aにより得る。前記入力回転軸1の先端部に螺着したローディングナット11と入力側ディスク2bの外側面との間に配置した予圧ばね10bは、前記押圧装置9の急な作動時に加わる衝撃を緩和するものであって、省略する事もできる。前記予圧ばね10bを設ける場合には、十分に(大きなトルクを伝達する際にも完全に押し潰されない程度に)大きな弾力を持たせる。
上述の様なトロイダル型無段変速機の場合、前記必要最低限の面圧を確保する為の前記予圧ばね10aの弾力を調整する作業が面倒である。即ち、前記従来構造の第1例の場合、この予圧ばね10aの弾力を、前記入力回転軸1の先端部に螺着したローディングナット11の締め付け量を変更する事により調整する必要があり、面倒である。これに対し、特許文献6〜7等には、ローディングナットに代えてコッタと呼ばれる係止環を用いた構造が記載されている。図4〜7は、この様な係止環を組み込んだ従来構造の第2例を示している。この従来構造の第2例の場合、入力側ディスク2bの内周面の軸方向中間部乃至外端部(図4〜5の右端部)に亙る範囲に雌スプライン部12を形成し、この雌スプライン部12と、入力回転軸1aの先端寄り部分の外周面に形成した雄スプライン部13とを係合している。又、この入力回転軸1aの先端部外周面で、この雄スプライン部13から軸方向に外れた部分に、全周に亙って係止溝14を形成し、この係止溝14に、複数(2〜4個)の部分円弧状の素子から成る係止環15の径方向内半部を係止している。そして、この係止環15の内側面(図4、5の左側面)のうちの径方向外端寄り部分を、入力側ディスク2bの外側面のうちの径方向内端部に当接させる。押圧装置9(図示の構造は油圧式の押圧装置)の非作動時に、各パワーローラ6、6(図3参照)の周面と、入力、出力側各ディスク2a、2b、5aの内側面との転がり接触部の面圧を必要最低限確保する為の、予圧ばね10aの弾力の調整は、前記係止環15として、適正な軸方向の厚さ寸法を有するものを選択する事により図る。又、前記入力回転軸1aの先端部に断面L字形の抑え環16を外嵌し、この抑え環16の内周面を、前記係止環15の外周面に当接或いは近接対向させる事により、この係止環15(を構成する各素子)が前記係止溝14から抜け出るのを防止している。この様な抑え環16は、前記入力回転軸1aの先端部に係止した止め輪17により軸方向の変位を阻止する。以上の様な構成により、前記入力側ディスク2bを前記入力回転軸1aに、この入力回転軸1aと同期した回転を自在に支持している。尚、前記従来構造の第2例の場合、出力側ディスク5aとして一体型のものを使用する事により、トロイダル型無段変速機全体として小型・軽量化を図っている。但し、この部分の構造及び作用に就いては、本発明の要旨とは関係しない為、詳しい説明は省略する。
上述の様な従来構造の第2例に係るトロイダル型無段変速機の場合、運転時に、前記入力回転軸1aの先端側に配置された入力側ディスク2bは、前記押圧装置9の発生する推力に基づく前記各パワーローラ6、6から受ける力に基づいて、図8に誇張して示す様に、この入力側ディスク2bの外径寄り部分が前記係止環15側に近付く方向(軸方向)に弾性変形する。即ち、運転時に前記推力に基づき前記入力側ディスク2bに加わる力は、トロイダル型無段変速機の運転時に最大で数十kN〜百数十kN(数tF〜十数tF)程度となり、この様な力に基づく入力側ディスク2bの軸方向に関する弾性変形量は、コンマ数mm(10分の数mm)程度と無視できない量となる。そして、この様に前記入力側ディスク2bが軸方向に弾性変形すると、この入力側ディスク2bの外側面と前記係止環15の内側面とが断続的に繰り返し当接する事で互いに擦れ合い、当該部分でフレッチング摩耗が生じる可能性がある。特に、前記入力側ディスク2bが弾性変形する円周方向位置は、前記各パワーローラ6、6により押し付けられる部分が変化するのに伴って常に変化する。この為、前記擦れ合いの周波数は相当に高く(例えば百数十Hzに)なり、フレッチング摩耗発生の面からはかなり厳しい条件となる。更に、前記従来構造の第2例の場合には、前記入力側ディスク2bの内周面の軸方向中間部乃至外端部に亙る範囲に雌スプライン部12を設けている為、この入力側ディスク2bが弾性変形するのに伴って、この雌スプライン部12を構成する各雌スプライン溝の軸方向外端縁(図4、5の右端縁)と、前記係止環15の内側面(図4、5の左側面)とが断続的に繰り返し当接して互いに擦れ合い、これら各雌スプライン溝の外端縁が前記係止環15の内側面に食い込む傾向となる可能性があり、この面からもフレッチング摩耗が発生し易い厳しい条件となる。この様なフレッチング摩耗は、剥離等の損傷の起点となったり、発生した摩耗粉が潤滑油(トラクションオイル)を汚染し、各部の潤滑状態を不良にする可能性がある。
特開2003−214516号公報 特開2007−315595号公報 特開2008−25821号公報 特開2008−275088号公報 特開2004−169719号公報 特開2000−205361号公報 特開2009−41715号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、押圧装置の発生する推力に基づいて、外側ディスクと、この外側ディスクの軸方向変位を阻止する為の鍔部との間でフレッチング摩耗が発生するのを防止できる構造を実現すべく発明したものである。
本発明のトロイダル型無段変速機は、回転軸と、1対の外側ディスクと、内側ディスクと、複数個の支持部材と、これら各支持部材と同数のパワーローラと、押圧装置と、鍔部とを備える。
このうちの前記両外側ディスクは、それぞれが断面円弧形である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で前記回転軸の両端部に、この回転軸と同期した回転を自在に、それぞれ支持されている。
又、前記内側ディスクは、前記回転軸の軸方向中間部の周囲に、断面円弧形である軸方向両側面を前記両外側ディスクの軸方向片側面に対向させた状態で、前記回転軸に対する相対回転を自在に支持されたもので、一体、若しくは1対の素子を結合して成る。
又、前記各支持部材は、軸方向に関して前記内側ディスクの軸方向両側面と前記両外側ディスクの軸方向片側面との間位置にそれぞれ複数個ずつ、前記回転軸に対し捩れの位置にある枢軸を中心とする揺動変位を自在に設けられている。
又、前記各パワーローラは、前記各支持部材に回転自在に支持されたもので、球状凸面としたそれぞれの周面を、前記内側ディスクの軸方向両側面と前記両外側ディスクの軸方向片側面とに当接させている。
又、前記押圧装置は、前記回転軸と、前記両外側ディスクのうちの一方の外側ディスクとの間に設けられ、この一方の外側ディスクを、これら両外側ディスクのうちの他方の外側ディスクに向け押圧する。この様な押圧装置としては、ローディングカム式或いは油圧式の押圧装置を使用する事ができる。
又、前記鍔部は、前記他方の外側ディスクが前記一方の外側ディスクから離れる方向に変位するのを阻止する為に、前記回転軸のうち、軸方向に関して前記他方の外側ディスクが配置された側である軸方向一端部(先端部)に、前記回転軸の外周面から径方向外方に突出する状態で設けられている。
特に本発明のトロイダル型無段変速機の場合は、前記他方の外側ディスクの内周面に形成され、円周方向に関する凹凸がない(この他方の外側ディスクの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状が、この他方の外側ディスクの中心軸を中心とする正円形である)ディスク側嵌合面部を、前記回転軸の外周面のうちで、前記鍔部の軸方向他端側に位置する部分に形成され、円周方向に関する凹凸がない(前記回転軸の中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状が、この回転軸の中心軸を中心とする正円形である)軸側嵌合面部に圧入(締り嵌めで外嵌)している。この様な構造により、前記他方の外側ディスクを前記回転軸に対し、この回転軸と同期した回転を自在に(これら他方の外側ディスクと回転軸との間で動力の伝達を可能に)支持する。
尚、上述の様な本発明のトロイダル型無段変速機を実施する場合に好ましくは、前記他方の外側ディスクの内周面のうちの軸方向片端縁に、断面形状が円弧形である、所謂R面取りを施す。
又、上述の様な本発明のトロイダル型無段変速機を実施する場合、例えば前記鍔部を、前記回転軸の外周面に、この回転軸と一体に形成する。
或いは、前記鍔部を、コッタと呼ばれる係止環を使用する事で設けても良い。この係止環は、複数(例えば2〜4個)の部分円弧状の素子を組み合わせる事により、全体を円環状に構成したものであって、前記回転軸の軸方向一端部に形成された係止凹溝に係止される。そして、前記係止環は、その軸方向側面の外径寄り部分(係止凹溝から露出した部分)を、前記他方の外側ディスクの軸方向他側面に当接させる(突き当てる)事により、この他方の外側ディスクが前記一方の外側ディスクから離れる方向に変位するのを阻止する。
或いは、前記鍔部を、ローディングナットを使用する事で設けても良い。このローディングナットは、前記回転軸の軸方向一端部に形成された雄ねじ部に螺合して更に締め付けられる。そして、このローディングナットは、その先端部を直接若しくは他の部材(予圧ばね等)を介し、前記他方の外側ディスクの軸方向他側面に当接させる(突き当てる)事により、この他方の外側ディスクが前記一方の外側ディスクから離れる方向に変位するのを阻止する。
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機によれば、押圧装置の発生する推力に基づいて、外側ディスク(他方の外側ディスク)と鍔部との間でフレッチング摩耗が発生するのを防止できる。即ち、前記外側ディスクは、何れも円周方向に関する凹凸がない、ディスク側嵌合面部と軸側嵌合面部とを締り嵌めで嵌合する事で、前記回転軸に対し、この回転軸と同期した回転を可能に支持している。この為、前記外側ディスクの前記回転軸に対する支持剛性(特に径方向に関する支持剛性)を高くして、この外側ディスクがこの回転軸に対してがたつくのを抑えられる。又、この外側ディスクの内周面の縮径方向に関する剛性を高くする事ができる。従って、前記押圧装置の発生する推力に基づいて、前記外側ディスクの内周面の軸方向一端部が縮径する方向に弾性変形する傾向となるのを抑えられ、延いては、前記外側ディスクの外径寄り部分が軸方向に弾性変形するのを抑えられる(この外側ディスクの軸方向への弾性変形量を小さくできる)。この結果、この外側ディスクの側面と前記鍔部の側面とが互いに擦れ合って、これら両側面に著しいフレッチング摩耗が発生するのを防止できる。
又、本発明の場合、前記外側ディスクの内周面に、円周方向に関する凹凸である雌スプライン部を設けていない。この為、仮に前記押圧装置の発生する推力に基づいて、前記外側ディスクが軸方向に弾性変形した場合であっても、雌スプライン溝等の円周方向に関する凹凸の端縁が前記鍔部の側面に食い込む傾向となる事はない。この面からも、前記外側ディスクと前記鍔部との間でフレッチング摩耗が発生する事の防止を図れる。又、この外側ディスクの内周面から、応力が集中し易い、曲率半径が小さな隅部をなくして、この外側ディスクの強度確保を図れる。
本発明の実施の形態の1例を示す要部拡大断面図。 図1のX−X断面図 従来構造のトロイダル型無段変速機の第1例を示す断面図。 同第2例を示す断面図。 同じく図4の右上半部拡大図(A)と、(A)のY部拡大図(B)。 先端側の入力側ディスクを取り出して示す斜視図。 この先端側の入力側ディスクと入力回転軸との係合部の状態を示す断面図。 この先端側の入力側ディスクの弾性変形を誇張して示す模式図。
図1〜2は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例を含めて、本発明のトロイダル型無段変速機の特徴は、押圧装置9(図3、4参照)の発生する推力に基づいて、入力側ディスク2cと、入力回転軸1bの鍔部19との間でフレッチング摩耗が発生するのを防止する為の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図4〜7に示した構造を含め、従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
本例の場合、特許請求の範囲に記載した他方の外側ディスクである、前記入力側ディスク2cの中心部に、この入力側ディスク2cを軸方向に貫通する状態で中心孔20を設けている。そして、この中心孔20の内周面のうちの軸方向両端縁を除く部分に、前記入力側ディスク2cの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状が、この入力側ディスク2cの中心軸を中心とする正円形で、軸方向に関して内径が変化しない(単一円筒面状の)、ディスク側嵌合面部21を形成している。又、前記中心孔20の内周面のうちの軸方向両端縁のうちの軸方向内端縁{入力側ディスク2cの軸方向に関して「内」とは、特許請求の範囲に記載した他方の外側ディスクの軸方向片側に対応し、出力側ディスク5a(図4参照)をケーシングに対し支持する為の支柱22側であり、図1の左側を言う。以下同じ。}には、断面形状が円弧形のR面取り部23を形成している。一方、前記中心孔20の内周面のうちの軸方向両端縁のうちの軸方向外端縁(図1の右端縁)には、軸方向外側に向かう程内径が大きくなる方向に傾斜した面取り部24を形成している。
又、特許請求の範囲に記載した回転軸である、前記入力回転軸1bのうちの軸方向一端寄り部分(図1の右端寄り部分)に、この入力回転軸1bの外周面から径方向外方に突出する状態で、この入力回転軸1bと一体に、前記鍔部19を設けている。そして、この入力回転軸1bの外周面のうちで、この鍔部19の軸方向他端側(図1の左側)に隣接する部分に、この入力回転軸1bの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状が、この入力回転軸1bの中心軸を中心とする正円形で、軸方向に関して(前記入力側ディスク2cの外側面と前記鍔部19の内側面とを隙間なく当接すべく、この鍔部19との連続部に形成した凹溝25を除き)外径が変化しない(単一円筒面状の)、軸側嵌合面部26を形成している。この軸側嵌合面部26の自由状態(前記入力側ディスク2cを前記入力回転軸1bに組み付ける以前の状態)での外径は、前記ディスク側嵌合面部21の自由状態での内径よりも僅かに大きくしている。
前記入力側ディスク2cを前記入力回転軸1bに組み付ける際には、この入力回転軸1bの軸方向他端寄り部分(図1に於いて、図示されていない左端寄り部分)をこの入力側ディスク2cの中心孔20内に軸方向外側(図1の右側)から挿通する。そして、前記軸側嵌合面部26を前記ディスク側嵌合面部21に圧入する(締り嵌めで内嵌する)と共に、前記鍔部19の内側面を前記入力側ディスク2cの外側面に当接させる(突き当てる)。以上の様な構成により、この入力側ディスク2cが軸方向外方に変位するのを阻止すると共に、この入力側ディスク2cを前記入力回転軸1bに対し、この入力回転軸1bと同期した回転を自在に(これら入力側ディスク2cと入力回転軸1bとの間で動力の伝達を可能に)支持する。
尚、前記ディスク側嵌合面部21と前記軸側嵌合面部26との嵌合部で伝達可能なトルクの大きさTは、この嵌合部の直径(前記入力側ディスク2cを前記入力軸1bに組み付けた状態での前記軸側嵌合面部26の外径)をdとし、前記嵌合部の軸方向長さをLとし、この嵌合部に加わる面圧をPとし、この嵌合部の摩擦係数をμとした場合、次の(1)式より求められる。
Figure 2015197204
この(1)式中のFは、安全率を示している。従って、前記軸側嵌合面部26の外径を前記ディスク側嵌合面部21の内径よりも大きくする程度は、これらディスク側嵌合面部21と前記軸側嵌合面部26との嵌合部で伝達するトルクの最大値(トロイダル型無段変速機への入力トルクの最大値の半分)に基づいて、前記嵌合部の面圧Pが適切な大きさとなる様に規制する。
上述の様に構成する本例のトロイダル型無段変速機によれば、押圧装置9(図3、4参照)の発生する推力に基づいて、入力側ディスク2cと、入力回転軸1bの鍔部19との間でフレッチング摩耗が発生するのを防止できる。
即ち、前述の図4〜7に示した従来構造の第2例の場合、入力側ディスク2bの内周面の軸方向中間部乃至外端部に亙る範囲に雌スプライン部12を設け、この雌スプライン部12と、入力回転軸1aの先端寄り部分の外周面に形成した雄スプライン部13とを係合している。又、前記従来構造の第2例の場合、図8に誇張して示す様に、入力側ディスク2bは、押圧装置9の発生する推力に基づいて各パワーローラ6、6から力が加わると、この入力側ディスク2bの外径寄り部分が軸方向外側(図8の右側)に弾性変形する。この際、この入力側ディスク2bの中心部に設けられた中心孔20aのうちの軸方向外端寄り部分が、入力回転軸1aの外周面に対し押し付けられて、その内径を縮める(縮径する)方向に弾性変形する傾向となる。
これに対し、本例の場合、前記入力側ディスク2cは、何れも断面形状が正円形である、ディスク側嵌合面部21と軸側嵌合面部26とを締り嵌めで嵌合する事で、前記入力回転軸1bに対し、トルク(動力)の伝達を可能に支持している。この為、前記入力側ディスク2cの前記入力回転軸1bに対する支持剛性(特に径方向に関する支持剛性)を、前記従来構造の第2例の場合と比較して高くして、前記入力側ディスク2cが前記入力回転軸1bに対してがたつくのを抑えられる。又、前記入力側ディスク2cの中心孔20の内周面の縮径方向に関する剛性を高くでき、前記押圧装置9の発生する推力に基づいて、前記入力側ディスク2cが、前記中心孔20の軸方向外端寄り部分を縮径する方向に弾性変形する傾向となるのを抑え、延いては、前記入力側ディスク2cの外径寄り部分が軸方向外側に弾性変形するのを抑えられる(この入力側ディスク2cの外径寄り部分の軸方向への弾性変形量を小さくできる)。この結果、この入力側ディスク2cの外側面と前記鍔部19の内側面とが互いに擦れ合って、これら両側面に著しいフレッチング摩耗が発生するのを防止できる。
又、本例の場合、前記入力側ディスク2cの中心孔20の内周面に、前記従来構造の第2例の様に、円周方向に関する凹凸である雌スプライン部12を設けていない。この為、仮に前記押圧装置9の発生する推力に基づいて、前記入力側ディスク2cの外径寄り部分が軸方向に弾性変形した場合であっても、例えば雌スプライン部を構成する各雌スプライン溝等、円周方向に関する凹凸の軸方向外端縁が前記鍔部19の内側面に食い込む傾向となる事はない。この面からも、前記入力側ディスク2cとこの鍔部19との間でフレッチング摩耗が発生する事の防止を図れる。又、この入力側ディスク2cの中心孔20の内周面から、応力が集中し易い、曲率半径が小さな隅部をなくす事ができて、前記入力側ディスク2cの強度確保を図れる。
更に、本例の場合、前記入力側ディスク2cの中心孔20の内周面の軸方向両端縁のうちの軸方向内端縁に、断面形状が円弧形のR面取り部23を形成している。この為、前記入力側ディスク2cを前記入力回転軸1bに組み付けた状態で、これら入力側ディスク2cと入力回転軸1bとの係合部(嵌合部)の軸方向内端部に作用する、円周方向に関する引っ張り応力(フープ応力)が過度に増大するのを抑えて、前記入力側ディスク2cの強度を確保する事ができる。
尚、図示の例では、入力側ディスク2cが軸方向外側に向けて変位するのを阻止する為の鍔部19を、入力回転軸1bと一体に設けた構造に就いて説明したが、前述の図3に示した様なローディングナット11や、図4〜5に示した様な係止環15を使用する事で、入力側ディスク2cが軸方向外方に変位するのを阻止する為の鍔部を設ける事もできる。
又、入力側ディスクの内周面に設けられた、軸方向外方に向かう程内径が大きくなる方向に傾斜した部分円すい面状のディスク側嵌合面部に、入力回転軸の外周面に設けられた、軸方向外方に向かう程外径が大きくなる方向に傾斜した部分円すい面状の軸側嵌合面部を圧入(締り嵌めで外嵌)する事により構成する事もできる。
本発明は、図示の様なハーフトロイダル型に限らず、フルトロイダル型のトロイダル型無段変速機で実施する事もできる。
1、1a、1b 入力回転軸
2a〜2c 入力側ディスク
3 出力筒
4 出力歯車
5、5a 出力側ディスク
6 パワーローラ
7 トラニオン
8 駆動軸
9 押圧装置
10a、10b 予圧ばね
11 ローディングナット
12 雌スプライン部
13 雄スプライン部
14 係止溝
15 係止環
16 抑え環
17 止め輪
18 ボールスプライン
19 鍔部
20、20a 中心孔
21 ディスク側嵌合面部
22 支柱
23 R面取り部
24 面取り部
25 凹溝
26 軸側嵌合面部

Claims (1)

  1. 回転軸と、
    それぞれが断面円弧形である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、前記回転軸と同期した回転を自在として支持された1対の外側ディスクと、
    前記回転軸の軸方向中間部の周囲に、断面円弧形である軸方向両側面を前記両外側ディスクの軸方向片側面に対向させた状態で、前記回転軸に対する相対回転を自在に支持された一体、若しくは1対の素子を結合して成る内側ディスクと、
    軸方向に関してこの内側ディスクの軸方向両側面と前記両外側ディスクの軸方向片側面との間位置にそれぞれ複数個ずつ、前記回転軸に対し捩れの位置にある枢軸を中心とする揺動変位を自在に設けられた支持部材と、
    これら各支持部材に回転自在に支持され、球状凸面としたそれぞれの周面を、前記内側ディスクの軸方向両側面と前記両外側ディスクの軸方向片側面とに当接させたパワーローラと、
    前記回転軸と、前記両外側ディスクとのうちの一方の外側ディスクとの間に設けられ、この一方の外側ディスクを、これら両外側ディスクのうちの他方の外側ディスクに向け押圧する押圧装置と、
    前記他方の外側ディスクが前記一方の外側ディスクから離れる方向に変位するのを阻止する為に、前記回転軸のうち、軸方向に関して前記他方の外側ディスクが配置された側である軸方向一端部に、この回転軸の外周面から径方向外方に突出する状態で設けられた鍔部とを備えたトロイダル型無段変速機に於いて、
    前記他方の外側ディスクの内周面に形成され、円周方向に関する凹凸がないディスク側嵌合面部を、前記回転軸の外周面のうちで、前記係止部の軸方向他端側に位置する部分に形成され、円周方向に関する凹凸がない軸側嵌合面部に圧入する事により、前記他方の外側ディスクを前記回転軸に対し、この回転軸と同期した回転を自在に支持している事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
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