本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機が知られている。
このダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図3および図4に示すように構成されている。図3に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された中間壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1とともに回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力側ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図4参照)が回転自在に挟持されている。
図3中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図3の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力(予圧)を付与する。
図4は、図3のA−A線に沿う断面図である。図4に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図4においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、支持板部16の長手方向(図4の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図4の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図3の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ(シリンダボディ)31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図4で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受(スラスト軸受)24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図4の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、さらにこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図4の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。
その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
ところで、ダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機においては、図5に示すように、一対の入力側ディスク2,2の間に配置される一対の出力側ディスク3,3の背面同士を接合した状態に、一対の出力側ディスク3,3を一体にするとともに、この一体になった出力側ディスク3,3の外周面に外周歯を設けて出力歯車4Aとした一体型出力側ディスク3Aが用いられている(例えば、特許文献1〜4参照)。なお、特許文献1〜3に記載されたトロイダル型無段変速機においては、一体型出力側ディスク3Aが、1つの部材の両面にそれぞれ一対の入力側ディスク2,2の各トラクション面(内側面2a,2a)に対向する一対のトラクション面(内側面3a,3a)を形成するとともに、前記部材の外周部に歯を形成して出力歯車4Aとしている。また、特許文献4に記載のトロイダル型無段変速機では、外周部に出力歯車となる外周歯を有する一対の出力側ディスク3,3を溶接により一体化して外周部に出力歯車4Aを有する一体型出力側ディスク3Aとしている。
また、別体に形成された一対の出力側ディスク3,3を接合するとともに、これらの外周部分に別体に設けられた出力歯車4Aを接合することにより、一対の出力側ディスク3,3と出力歯車4Aとを1つの部材としたトロイダル型無段変速機が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
なお、図5に示すトロイダル型無段変速機では、パワーローラ11を回転自在かつ揺動自在に支持する変位軸23に代えて、パワーローラ11のスラスト荷重を受けるスラスト玉軸受24の外輪28に一体に形成された支持軸23cが用いられている。したがって、変位軸23によってパワーローラ11を揺動させることにより入力軸1の略軸方向に沿って変位させる構造となっていない。その代わりにトラニオン15の支持板部16の内側面が枢軸14の軸方向に軸方向を沿わせた凸状の円筒面の一部となっている。また、支持板部16の内側面に対向する外輪28の背面側には、支持板部16の突状の円筒面に当接する凹状の円筒面となっており、支持板部16に対して外輪28とともにパワーローラ11が首を振るように揺動することにより、パワーローラ11が、入力軸1の略軸方向に沿って変位可能となっている。
特開平2013−177909号公報
特開平2013−167344号公報
特開平2013−117237号公報
特開平2005−048880号公報
特許4254029号公報
ところで、特許文献5に記載されたトロイダル型無段変速機では、一対の出力側ディスク3,3との間に、それらの外周部に設けられる出力歯車4Aの内周側の部分を挟み込んで接合して一体型出力側ディスク3Aとしているので、一対の出力側ディスク3,3の出力歯車4Aを挟み込む面にフレッチング摩耗が発生する虞がある。また、出力歯車4Aを出力側ディスク3,3と別体に作成してから出力側ディスク3,3に接合することから出力歯車4Aが大型化してしまう虞がある。
また、特許文献1から3に記載されたトロイダル型無段変速機のように最初から一体に形成された出力側ディスク3,3の外周部に歯を設けて出力歯車4Aも一体となった一体型出力側ディスク3Aでは、例えば、図6に示すように、トラクション面最外周部の軸方向寸法(軸方向に沿った厚さ)が、それより外周に設けられた出力歯車4Aの軸方向寸法と同じにされているか、また、寸法が大きくされている。なお、図6および後述の図1においては、一体型出力側ディスク3A,4Aの中心線の近傍を境とする略半分を図示している。
大きなトルクを伝達したり、噛み合い率を増やして騒音を抑制したりするためには、出力歯車4Aの軸方向寸法を小さくすることが困難であり、それに応じて一体型出力側ディスクの一対のトラクション面最外周部における軸方向寸法も決まることになる。この場合に、トロイダル型無段変速機の入力軸1の軸方向寸法は、一体型出力側ディスク3Aの軸方向寸法に影響を受けるため、軸方向の長さを短くする小型化が困難である。また、一体型出力側ディスク3Aを中実の構造とすると、一体型出力側ディスク3Aの軸方向寸法が大きくなれば、一体型出力側ディスク3Aの厚さが厚くなることになり、重量が大きくなってしまう。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、2つのトラクション面と外周歯車とを備える一体型の内側ディスクにおけるトラクション面間の軸方向長さを短くして、小型化と軽量化を図ることができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のトロイダル型無段変速機は、同心的に設けられるとともにそれぞれトラクション面を有する一対の外側ディスクと、当該一対の外側ディスクの間に同心的に設けられるとともに一対の前記外側ディスクの前記トラクション面にそれぞれ対向する一対のトラクション面を有する内側ディスクと、互いに対向する前記トラクション面の間に挟持されたパワーローラとを備え、
前記内側ディスクには、両側面にそれぞれ前記トラクション面が設けられるとともに、外周部に周方向に並んで歯が設けられることにより外周歯車が設けられたトロイダル型無段変速機において、
前記トラクション面と前記外周歯車の側面との境界部分に段差が形成されるとともに、前記外周歯車の前記側面の内周縁と前記トラクション面の外周縁との間に距離を開けるための構造として前記内周縁と前記外周縁との間に平面部が設けられることにより、前記内側ディスクの一対の前記トラクション面の最外周部間の当該内側ディスクの軸方向に沿った長さが前記外周歯車の軸方向に沿った長さより短くなっていることを特徴とする。
このような構成によれば、内側ディスクの一対のトラクション面の最外周部間の軸方向寸法(軸方向に沿った長さ)が短くなることにより、内側ディスクの厚さが薄くなり、内側ディスクを軽量化することができる。
また、内側ディスクの一対のトラクション面間の間隔を短くすると、短くなった長さ分だけ一対の外側ディスク間の間隔を短くすることができる。
これらのことから、トロイダル型無段変速機の軸方向寸法の小型化と、軽量化とを図ることができる。
また、内側ディスクの一対のトラクション面間の間隔が狭くなると、ダブルキャビティ式のトロイダル型無段変速機において、各キャビティに配置される2組のパワーローラ間の軸方向寸法も小さくなる。これにより、2組のパワーローラ同士の間隔の軸方向寸法が変わると同様に軸方向寸法が変わる周辺部品として入力軸、上下のヨーク、上下のシリンダボディ、アッパープレート(固定部材)等の軸方向寸法が小さくなるので、さらに軽量化を図ることができる。
本発明によれば、トロイダル型無段変速機の小型化と軽量化を図ることができる。
本発明の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の一体型出力側ディスクを示す要部断面図である。
図1の符号Aで示される部分の拡大図である。
従来のトロイダル型無段変速機の一例を示す断面図である。
図3におけるA−A線に沿う断面図である。
一体型出力側ディスクを備える従来のトロイダル型無段変速機の一例を示す断面図である。
従来の一体型出力側ディスクを示す要部断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
なお、この実施形態のトロイダル型無段変速機の特徴は、一体型出力側ディスク(内側ディスク)3Bの構造にあり、その他の構成は図3〜図5に示したトロイダル型無段変速機と略同様であるので、以下では前記特徴について詳しく説明する。
図1および図2に示すように、一体型出力側ディスク3Bは、その両側面にそれぞれトラクション面3a,3aを有するとともに、外周部が出力歯車(外周歯車)4Bとされている。また、一体型出力側ディスク3Bの中央部には、軸方向に沿って入力軸1が貫通する貫通孔3bが形成されている。
一体型出力側ディスク3Bは、2つの略円錐台状の部材をそれぞれ大径側端が突き合わされるように逆向きに配置するとともに同軸上に配置した概略形状を有し、略円錐台形状部分の周面の断面形状は、所定の曲率半径の凹状の円弧となっており、この断面が凹状の円弧となる面がトラクション面(内側面3a)となっている。
また、一体型出力側ディスク3Bでは、トラクション面3aの最外周部(外周縁)より外側となる部分に出力歯車4Bが一体に設けられている。これらトラクション面3aおよび出力歯車4Bは、もともと1つの部材に設けられたものであり、例えば、一対の出力側ディスク3,3と出力歯車4とをそれぞれ別体で製造してから、一体に接合したものではない。なお、本実施の形態の出力歯車4Bおよび従来の出力歯車4Aは、はすば歯車となっている。
本実施の形態では、図1に示すように、一体型出力側ディスク3Bの出力歯車4B部分の軸方向に沿った長さである軸方向寸法L1が、一体型出力側ディスク3Bの一対のトラクション面3aの最外周部における軸方向に沿った長さである軸方向寸法L2より長くなっている。言い換えれば、軸方向寸法L1より軸方向寸法L2の方が短くなっている。
ここで、図6に示す従来の一体型出力側ディスク3Aと本実施の形態の一体型出力側ディスク3Bとを比較して、本実施の一体型出力側ディスク3Bを説明する。なお、図6に示す従来の一体型出力側ディスク3Aと、図1に示す一体型出力側ディスク3Bとは、外径が同じにされ、それぞれの出力歯車4A、4Bの歯の部分が同形状とされており、従来の出力歯車4Aの軸方向寸法L3と、本実施の形態の出力歯車4Bの軸方向寸法L1とが同じとなっている。また、従来の一体型出力側ディスク3Aと、本実施の形態の一体型出力側ディスク3Bとでは、トラクション面3a,3aの断面の曲率半径等の基本的な形状が同じになっている。それに対して、従来の一体型出力側ディスク3Aの一対のトラクション面3a,3aの最外周部間の軸方向に沿った長さである軸方向寸法L4より、本実施の形態の一体型出力側ディスク3Bの一対のトラクション面3a,3aの軸方向寸法L2が短くなっている。
但し、本実施の形態の一体型出力側ディスク3Bでは、出力歯車4Bの側面4bとトラクション面3aとの境界部分に、後述のように径方向に幅を有する円環状の平面部3dが設けられている。そのため、従来の一体型出力側ディスク3Aのトラクション面3aの最外周の径より、本実施の形態の一体型出力側ディスク3Bのトラクション面3aの最外周の径の方が少しだけ小さくなっている。なお、一体型出力側ディスク3A,3Bのトラクション面3aの最外周部の軸方向寸法L2,L4を計測する半径位置は、本実施の形態の一体型出力側ディスク3Bのトラクション面3aの外周縁(平面部3dとの境界)の半径位置とする。
図6に示す従来の一体型出力側ディスク3Aでは、トラクション面3a,3aと出力歯車4Aの側面4cとの境界部分においては、トラクション面3a,3aと出力歯車4Aの側面4cとが連続している状態となっており、段差がない。
それに対して、図1および図2に示す本実施の形態のトロイダル形無段変速機では、上述のように出力歯車4Bにおける軸方向寸法L1より、一対のトラクション面3aの最外周部の軸方向寸法L2が短くなっており、トラクション面3a,3aと、出力歯車4Bの側面4bとの境界部分に段差3eが形成されている。この場合に、従来の一体型出力側ディスク3Aの断面における一対のトラクション面3a,3aそれぞれの曲率半径Rの中心位置C,C間の距離L6に対して、本実施の形態の一体型出力側ディスク3Bの断面における一対のトラクション面3a,3aそれぞれの曲率半径Rの中心位置C,C間の距離L5が短くなっている。なお、ここでは、トラクション面3aの断面の従来の曲率半径Rと、本実施の形態の曲率半径Rとを同じとする。
また、上述のように、一体型出力側ディスク3Bにおいては、トラクション面3aの最外周縁と出力歯車4Bの側面4bの最内周縁との間、すなわち、トラクション面3aと段差3eとの間には、一体型出力側ディスク3Bの軸方向に直交する上述の平面部3dが設けられている。
ここで、一体型出力側ディスク3A,3Bの製造工程においては、トラクション面3a,3aを図示しない砥石で研磨する工程がある。砥石は、その外周面の断面形状がトラクション面3aの曲率半径と略同様の曲率半径となった凸となる円弧状となっている。また、砥石は、中心軸に対して円対称となる形状を有している。砥石は、トラクション面3aの全体を研磨するので、砥石の外周面の断面の円弧の長さは、トラクション面3aの断面の円弧の長さより広い必要がある。図2において、トラクション面3aを示す実線から延長する破線は、トラクション面3aを研磨する砥石の断面の外周面の端側の一部を示すものであり、トラクション面3aの断面の円弧より、砥石の外周面の断面の円弧の方が長いことを示すとともに、砥石が出力歯車4Bの角部3gに接触していないことを示している。
一体型出力側ディスク3Bにおいて、出力歯車4Bの側面4bの内周縁とトラクション面3aの外周縁とが一致する状態で、この部分に段差があると、砥石による研磨に際してトラクション面3aに砥石の外周面を当接させようとした場合に、出力歯車4Bの断面において段差の出隅の角部3gに砥石の外周面が当たり、砥石の外周面をトラクション面3aに当接させることができない。すなわち、砥石による研磨が困難になる、
そこで、図2に示すように、出力歯車4Bの側面4bの内周縁(最内周部:段差3e)とトラクション面3aの外周縁(最外周部)との間にトラクション面3aの外周縁と、出力歯車4Bの側面4bの内周縁との間に距離を開けるための構造として平面部3dを設けることで、砥石が出力歯車4Bの側面4bの内周縁(角部3g)に接触するのを防止している。
また、本実施の形態では、平面部3dを設けるだけではなく、出力歯車4Bの側面4bの段差3e部分の出隅の角部3gを面取りすることにより、砥石と出力歯車4Bとが接触するのを防止ししている。
このようなトロイダル型無段変速機にあっては、同径で同じ軸方向寸法L3を有する出力歯車4Aを備える従来の一体型出力側ディスク3Aに対して、上述のように一対のトラクション面3a,3aそれぞれの曲率半径Rの中心位置C,C間の距離L5が短くなることから、各キャビティのパワーローラ11の軸方向に沿った距離が短くなり一対の入力側ディスク2,2間の軸方向に沿った距離が短くなる。これにより、トロイダル型無段変速機において、軸方向長さを短くする小型化を図ることができる。
また、一体型出力側ディスク3Bでは、実質的に厚みが薄くなることから軽量化され、トロイダル型無段変速機の軽量化を図ることができる。
また、上述のように出力歯車4Bの両側面4b,4b間の軸方向寸法L1が一対のトラクション面3a,3aの最外周部間の軸方向寸法L2より長くなっても、上述のようにトラクション面3a,3aの外周縁と、側面4b、4bの内周縁との間に、空間を設けることにより、砥石によるトラクション面3a,3aを研磨する際に、砥石が出力歯車4Bに接触しないようにすることができる。
また、一体型出力側ディスク3Bの一対のトラクション面3a,3a間の間隔が狭くなると、ダブルキャビティ式のトロイダル型無段変速機において、各キャビティに配置される2組のパワーローラ11間の軸方向寸法も小さくなる。これにより2組のパワーローラ11同士の間隔の軸方向寸法が変わると同様に軸方向寸法が変わる周辺部品として入力軸1、上下のヨーク23A,23B、上下のシリンダボディ61,62、アッパープレート(固定部材52)等の軸方向寸法が小さくなるので、さらに軽量化を図ることができる。
なお、一体型出力側ディスク3Bの径を変えない場合に、トラクション面3aの外周縁と側面4bの内周縁(段差3e)との距離を大きくすると、出力歯車4Bの段差3eより外周側で軸方向に突出する部分の径方向に沿った幅が薄くなり過ぎたり、トラクション面3aの外周縁の径が小さくなり過ぎたりするので、これらを考慮して上述の距離を決めることが好ましい。また、上述の距離を考慮して、砥石が出力歯車4Bに接触しないようにするために、上述の各トラクション面3a,3aの外周縁部の軸方向寸法L2や、各トラクション面3a、3aの曲率半径Rの中心位置C,C間の距離L5を決定することが好ましい。また、トラクション面3aの外周縁と側面4bの内周縁(段差3e)との間の形状を必ずしも平面部3dのように、軸方向に直交する平面とする必要はないが、砥石による研磨に際し、砥石の外周面に接触するように突出する部分がない必要があり、図2における上述の破線より引き込んでいることが好ましい。
また、ダブルキャビティ式のトロイダル型無段変速機において、出力側ディスク3,3を外側ディスクとし、入力側ディスク2,2を内側ディスクとする構成も可能であり、トロイダル型無段変速機において、一対の入力側ディスク2,2と外周歯車とを一体とした一体型入力側ディスクを内側ディスクとしてもよい。
本発明は、ダブルキャビティ式の様々なハーフトロイダル型無段変速機の他、ダブルキャビティ式のフルトロイダル型無段変速機にも適用することができる。
2 入力側ディスク(外側ディスク)
2a 内側面(トラクション面)
3B 一体型出力側ディスク(内側ディスク)
3a 内側面(トラクション面)
4B 出力歯車(外周歯車)
11 パワーローラ