JP2015197136A - 差動制限機能を有するデファレンシャル装置 - Google Patents

差動制限機能を有するデファレンシャル装置 Download PDF

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Abstract

【課題】LSDの分解や部品交換が必要なく、さらに車両からLSDを取り外すことなくLSDの特性を変化させることが可能なリミテッドスリップデファレンシャル装置を提供する提供する。
【解決手段】前記ピニオンシャフトが、前記カム面と対向する第1の位置と、前記カム面より内側に退避する第2の位置との間を前記シャフト部に沿って移動する可動チップを備え、前記カム面が、前記プレッシャーリングが一方の回転方向に相対的に回転する場合に前記ピニオンシャフトに力を伝達するカム面として、前記第1の位置に前記可動チップがある場合に前記可動チップに接する第1のカム面と、前記可動チップが第2の位置にある場合に前記シャフト部の端部に接する第2のカム面と、を備え、前記可動チップが前記第1の位置にある場合と前記第2の位置にある場合とで差動制限特性が変化することを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両に装備される差動制限機能を有するリミテッドスリップデファレンシャル装置に関し、特に差動制限特性を調整可能なリミテッドスリップデファレンシャル装置に関する。
従来、車両の駆動源からの駆動力を駆動輪に分配するデファレンシャル装置として、リミテッドスリップデファレンシャル装置(以下、LSDとする。)がある。LSDは、一方の駆動車輪のトルクが極端に小さくなった場合に、他方の駆動車輪にエンジンからの駆動力がある程度分配されるように、差動動作を制限する差動制限機構を組み込んだ差動装置である(たとえば、特許文献1参照。)。
LSDは、左右両側のプレッシャーリングのカム面とピニオンシャフトとの接触角度によって、LSDによる差動動作の強弱が変わる。そのため、たとえばプレッシャーリングのカム面の角度を変えたり、ピニオンシャフトのプレッシャーリングとの接触部分の形状を変えたりすることで、LSDの特性を変えることができる。
特開2001−323988号公報
カムの角度を変えてLSDの特性を変える場合には、カム面の角度の異なるプレッシャーリングに交換したり、LSD自体を交換したりする必要があり、いずれにしても、車両に取り付けられているLSDを一度取り外さなければLSDの特性を変更することはできなかった。
本発明が解決しようとする課題は、LSDの分解や部品交換が必要なく、さらに車両からLSDを取り外すことなくLSDの特性を変化させることが可能なリミテッドスリップデファレンシャル装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る差動制限機能を有するデファレンシャル装置は、(1)駆動源により、車軸回りに回転されるデファレンシャルケースと、
前記デファレンシャルケース内に対向して収容され、前記デファレンシャルケースにより回転駆動力が伝達される一対のプレッシャーリングと、
先端部にピニオンギアを回転自在に設けた複数のシャフト部を有し、前記対向する一対のプレッシャーリング内に挟まれた状態で収容され、前記一対のプレッシャーリングとの係合により、前記一対のプレッシャーリングとの間で相対的な動力伝達が行われるピニオンシャフトと、
前記ピニオンシャフトの端部を挟む位置に前記一対のプレッシャーリングの対向面側にそれぞれ対向して設けられたプレッシャーリング側カム部と、
前記ピニオンシャフト側に設けられ、前記プレッシャーリング側カム部との接触により前記一対のプレッシャーリングに車軸方向外方に向けた分力を発生させる、カム軌跡の異なる複数のカムを有するピニオンシャフト側カム部と、
前記ピニオンシャフト側カム部の複数のカムを選択的に切り替えて前記プレッシャーリング側カム部と接触させるカム切替部と、
前記ピニオンギアとかみ合うように配置され前記ピニオンシャフトから前記ピニオンギアを介して回転駆動力が伝達される一対のサイドギアと、
前記一対のプレッシャーリングと前記デファレンシャルケースの側面との間に配置され、前記一対のプレッシャーリングが互いに車軸方向外方に移動する力によって、前記デファレンシャルケースと前記一対のサイドギアとを接続し差動を制限する、複数のクラッチプレートと、
を備える差動制限機能を有するデファレンシャル装置であって、
前記カム切替部は、車軸の軸中心と同一軸心に回転中心を有する第1ギア部と、前記第1ギア部と噛合する複数の第2ギア部と、前記第1ギア部の回転により同期回転する前記複数の第2ギア部の回転を直進移動に変換して前記ピニオンシャフト側カム部のカムを切り替える伝達動力変換部と、を有することを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置である。
(2)駆動源により、車軸回りに回転されるデファレンシャルケースと、
前記デファレンシャルケース内に対向して収容され、前記デファレンシャルケースにより回転駆動力が伝達される一対のプレッシャーリングと、
先端部にピニオンギアを回転自在に設けた複数のシャフト部を有し、前記対向する一対のプレッシャーリング内に挟まれた状態で収容され、前記一対のプレッシャーリングとの係合により、前記一対のプレッシャーリングとの間で相対的な動力伝達が行われるピニオンシャフトと、
前記ピニオンシャフトの端部を挟む位置に前記一対のプレッシャーリングの対向面側にそれぞれ対向して設けられたプレッシャーリング側カム部と、
前記ピニオンシャフト側に設けられ、前記プレッシャーリング側カム部との接触により前記一対のプレッシャーリングに車軸方向外方に向けた分力を発生させる、カム軌跡の異なる複数のカムを有するピニオンシャフト側カム部と、
前記ピニオンシャフト側カム部の複数のカムを選択的に切り替えて前記プレッシャーリング側カム部と接触させるカム切替部と、
前記ピニオンギアとかみ合うように配置され前記ピニオンシャフトから前記ピニオンギアを介して回転駆動力が伝達される一対のサイドギアと、
前記一対のプレッシャーリングと前記デファレンシャルケースの側面との間に配置され、前記一対のプレッシャーリングが互いに車軸方向外方に移動する力によって、前記デファレンシャルケースと前記一対のサイドギアとを接続し差動を制限する、複数のクラッチプレートと、
を備える差動制限機能を有するデファレンシャル装置であって、
前記カム切替部は、車軸の軸中心と同一の軸心の回りに配置される複数のギア部であって、カムを切り替える操作を行うための調整器具の調整用ギアを噛み合わせて、前記調整用ギアを車軸の軸中心と同一軸心を回転中心として回転させることで同期回転する前記複数のギア部と、前記調整用ギアの回転により同期回転する前記複数のギア部の回転を直進移動に変換して前記ピニオンシャフト側カム部のカムを切り替える伝達動力変換部と、を有することを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置である。
(3)上記(1)または(2)の差動制限機能を有するデファレンシャル装置において、前記伝達動力変換部によって、前記プレッシャーリング側カム部と対向する第1の位置と、前記プレッシャーリング側カム部より内側に退避する第2の位置との間を前記シャフト部に沿って移動する可動チップを備え、前記プレッシャーリング側カム部が、前記可動チップと対向する側のカム面として、前記第1の位置に前記可動チップがある場合に前記可動チップに接する第1のカム面と、前記可動チップが第2の位置にある場合に前記シャフト部の端部の接触部に接する第2のカム面と、を備え、前記可動チップの位置を前記第1の位置と前記第2の位置とで切り替えることで差動制限特性を変更可能としたことを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置である。
(4)上記(3)の差動制限機能を有するデファレンシャル装置において、前記可動チップは、内面にねじが形成されるリング部と、前記プレッシャーリング側カム部に対向する接触面のうち車軸方向における半分の接触面を形成する接触部と、を備えるチップを2つ組み合わせたことを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置である。
(5)上記(4)の差動制限機能を有するデファレンシャル装置において、前記シャフト部の側面に前記シャフト部に沿って切欠部が形成され、前記切欠部が前記2つのチップが一体に組み合わされた状態を維持するように支持しながら前記可動チップの移動をガイドすることを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置である。
(6)上記(3)から(5)のいずれかの差動制限機能を有するデファレンシャル装置において、前記第1のカム面が車軸方向に沿った平面のカム面であり、前記第2のカム面が前記第1のカム面に対して傾斜するカム面であり、前記可動チップが前記第1の位置にある場合に差動が制限されず、前記可動チップが前記第2の位置にある場合に差動が制限されることを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
(7)上記(3)から(5)のいずれかの差動制限機能を有するデファレンシャル装置において、前記第1のカム面が前記プレッシャーリングの回転方向に直交する平面に対して傾斜したカム面であり、前記第2のカム面が前記第1のカム面に対して傾斜したカム面であり、前記可動チップが第1の位置にある場合と前記可動チップが前記第2の位置にある場合とで差動を制限する強さが異なることを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
(8)上記(1)に記載の差動制限機能を有するデファレンシャル装置において、前記第1ギア部が、前記デファレンシャルケースと前記サイドギアとに形成される車軸を通す開口部を介して回転させる操作が可能であることを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置である。
(9)上記(1)または(8)に記載の差動制限機能を有するデファレンシャル装置において、前記第1ギア部が、前記複数の第2ギア部とのかみ合いと、前記ピニオンシャフトの底部と、によって車軸方向への移動が制限されて前記ピニオンシャフト内に保持されることを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置である。
実施形態のリミテッドスリップデファレンシャル(Limited Slip differential)装置の構成を示す断面図である。 LSDの一対のプレッシャーリングより車軸方向中心側の部品を組み立てた状態の外観を示す斜視図である。 片側のプレッシャーリングにクロスシャフトとピニオンギア等を組み込んだLSDの一部を組み立てた状態の斜視図である。 図3の斜視図においてピニオンギアを取り除いた状態の斜視図である。 クロスシャフトの斜視図である。 クロスシャフトの斜視図である。 クロスシャフトの内部構造を示す図1のA−A矢印方向の断面図である。 可動チップの片側のチップを示す外観斜視図である。 シャフト部およびカム面をシャフト部の先端側から見た図であり、(a)は可動チップがカム面と対向するカム対向位置にある状態を示す図であり、(b)は可動チップが退避した退避位置にある状態を示す図である。 他の実施形態のシャフト部およびカム面をシャフト部の先端側から見た図であり、(a)は可動チップがカム面と対向するカム対向位置にある状態を示す図であり、(b)は可動チップが退避した退避位置にある状態を示す図である。
以下、本願発明のデファレンシャル装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態のリミテッドスリップデファレンシャル(Limited Slip differential)装置1(以下、LSDとする。)の構成を示す断面図である。図2は、LSD1のプレッシャーリング4a、4bより車軸方向中心側の部品を組み立てた状態の外観を示す斜視図である。図3は、片側のプレッシャーリング4bにクロスシャフト100とピニオンギア6等を組み込んだ、LSD1の一部を組み立てた状態の斜視図である。図4は、図3に示した斜視図においてピニオンギア6を取り除いた状態の斜視図である。図5および図6は、クロスシャフト100の斜視図である。図7は、クロスシャフト100の内部構造を示す図1におけるA−A矢印方向の断面図である。図1および図2において両矢印で示すように左右方向が車軸方向であり、一点鎖線で車軸の軸中心を示している。そして、フロントエンジン・リアドライブ(FR)方式の車両に本実施形態のLSD1を搭載する場合には、図1、2の右側が後輪の右車輪側であり、左側が後輪の左車輪側である。本実施形態のLSD1において搭載される車両の駆動方式は特に限定されないが、以下の説明において特に説明がない限り、一例としてFR方式の車両にLSD1を搭載した場合について説明する。
本実施形態のLSD1は、複数枚のクラッチプレート(デファレンシャルケースの内面の溝にスプライン結合する複数枚のフリクションプレートと、サイドギアの軸部の溝にスプライン結合する複数枚のフリクションディスク)を備え、エンジンからの駆動力が加わるとクラッチプレート同士の摩擦力によってデファレンシャルの差動が制限される機械式のLSDである。
LSD1は、デファレンシャルケース2と、プレッシャーリング4a、4bと、ピニオンシャフトであるクロスシャフト100と、ピニオンギア6と、サイドギア8a、8bなどを備える。なお、以下の説明において、一対のプレッシャーリング4aと4bについて、一体のプレッシャーリング全体を指す場合には、プレッシャーリング4とも記載する。
デファレンシャルケース2は、LSD1を構成する各部品を収容する円筒状のケースである。デファレンシャルケース2は、筒状のケース2aと、蓋状のケース2bを備え、フランジ部2cに挿通するボルトなどの固定手段によりケース2aと2bを結合してケース体を形成する。フランジ部2cの表面には、リングギア10がフランジ部2cの全周にわたって設けられている。リングギア10にはピニオンギア12がかみ合っており、リングギア10とピニオンギア12によりファイナルギアを構成する。エンジンからの回転駆動力がピニオンギア12およびリングギア10を介してデファレンシャルケース2に伝達される。
デファレンシャルケース2には、一端側が左右の駆動輪とそれぞれ接続されるドライブシャフト(車軸)の他端側が差し込まれている。ドライブシャフトの他端側は、デファレンシャルケース2の左右の開口部を通ってサイドギア8a、8bに通され、サイドギア8a、8bとスプライン結合する。ドライブシャフトは、その軸心がデファレンシャルケース2の回転軸と同一線上に位置するように配置される。
プレッシャーリング4a、4bは、デファレンシャルケース2の内面と回転軸の車軸方向に沿ってスプライン結合している。ファイナルギアによって伝えられる駆動力によって回転するデファレンシャルケース2の回転が、スプライン結合によってプレッシャーリング4a、4bにさらに伝達される。プレッシャーリング4a、4bは、クロスシャフト100のシャフト部102の端部を両側から挟んで保持する切り欠きが左右(車軸方向)対称に形成されている。プレッシャーリング4aと4bを組み合わせることで両側の切り欠きがカム面41を構成する。図3等に示すように本実施形態では、シャフト部102の端部が接触するカム面41のうち、プレッシャーリング4の回転方向における一方の側のカム面が傾斜したカム面41cであり、反対側が第1のカム面である水平のカム面41aと、第2のカム面であるカム面41aに対して傾斜したカム面41bとで構成される。カム面41aは、車軸方向に沿った平面(プレッシャーリング4の回転方向に直交する平面)である。プレッシャーリング4a、4bのカム面41がプレッシャーリング側カム部であり、後述の可動チップ104が配置されるシャフト部102側がピニオンシャフト側カム部である。これらのプレッシャーリング側カム部とピニオンシャフト側カム部からなるカム部は、プレッシャーリング4a、4bを互いに車軸方向外方に移動させる力を発生させるカム分力機構である。
クロスシャフト100は、いわゆるピニオンシャフトであり、本実施形態では4本のシャフト部102を有する。クロスシャフト100は、アクセルオンによるエンジンからの駆動力によりプレッシャーリング4から回転力が伝わり、プレッシャーリング4のカム面41に押し当たる。またクロスシャフト100は、アクセルオフの場合には、車輪の回転力が、車軸、サイドギア8a・8b、ピニオンギア6を介して伝えられ、アクセルオンの場合と相対的に逆方向にプレッシャーリング4のカム面41を押圧する。アクセルオンの場合とアクセルオフの場合とでクロスシャフト100がプレッシャーリング4のカム面41に当たる方向は逆になるが、いずれの場合もカム面41とクロスシャフト100とが接触する角度によって、クロスシャフト100は、カム面41とともに、回転方向と直交する車軸方向にプレッシャーリング4a、4bを押し広げる力を発生させる。プレッシャーリング4a、4bが左右に押し広げられることで、デファレンシャルの差動を制限するLSDの効果が得られる。なお、カム面41のシャフト部102に接触する面の角度や、シャフト部102のカム面41に接触する面の角度、形状等によって、LSDの効果の強弱が変わる。また、車軸方向に沿った水平なカム面41(本実施形態の場合であれば、カム面41a)にシャフト部102が押し当てられる場合には、プレッシャーリング4a、4bを車軸方向に押し広げる力(分力)は発生しないので、LSDの効果は発生しない。本実施形態では、後述の可動チップ104と、シャフト部102の可動チップ104の両側に形成される接触部102sとが、カム面41に接触する。本実施形態では、詳しくは後述するが、可動チップ104がカム面41(41a)と接触する場合にはLSDの効果は発生せず、シャフト部102の先端の接触部102sがカム面41(41b)と接触する場合に分力が発生してLSDの効果が得られる構成としての実施形態である。
ピニオンギア6は、クロスシャフト100の4本のシャフト部102にそれぞれ回転自在に支持される。サイドギア8a、8bは、ピニオンギア6とかみ合うように配置され、クロスシャフト100からピニオンギア6を介して回転駆動力が伝達される。
プレッシャーリング4a、4bの車軸方向外側には、上述のように複数のクラッチプレート(多板クラッチ)が配置される。具体的には、クラッチプレートとして、デファレンシャルケースの内面の溝にスプライン結合する複数枚のフリクションプレートと、サイドギアの軸部の溝にスプライン結合し、フリクションプレートの間に配置される複数枚のフリクションディスクを備える。エンジンからの駆動力がLSD1に加わると、カム部の作用によってプレッシャーリング4a、4bがこれらのクラッチプレートを押し、クラッチプレート同士の摩擦力によってサイドギア8a、8bとデファレンシャルケース2とがロックされ、デファレンシャルの差動が制限される。
そして本実施形態のクロスシャフト100は、さらに図5〜図7に示すように各シャフト部102においてプレッシャーリング4のカム面41と接触する部位を切り替え可能な切替機構を有する。この切替機構によって、シャフト部102が接するプレッシャーリング4のカム面が変わり、プレッシャーリング4を押し広げる力を切り替えることができる。たとえば、切替機構の第1の状態ではシャフト部102が車軸方向に沿った水平のカム面に接触し、LSDの効果がオフの状態であり、切替機構の第2の状態ではシャフト部102が傾斜したカム面に接触し、LSDの効果が得られる状態とすることができる。また、第1の状態と第2の状態とで、異なる傾斜角度のカム面に接触するような構成として、LSDの効果の強弱を切替可能とすることもできる。従って、クロスシャフト100の切替機構とプレッシャーリング4のカム面41の形状によって、たとえば、いわゆる1ウェイLSDの状態から2ウェイLSD(または1.5ウェイ)の状態に切り替えたり、2ウェイLSDの状態から1.5ウェイLSDの状態に切り替えたり、1.5ウェイLSDにおいてLSD効果の強弱を切り替えたりすることが可能なLSDを提供することができる。
本実施形態のクロスシャフト100が備える切替機構の具体的な構成について説明する。クロスシャフト100の切替機構は、可動チップ104と、規制リング106と、伝達動力変換部である回転軸108と、調整ノブ110と、複数の第2ギア部(または複数のギア部)であるベベルギア112と、軸受板116と、収容部100sと、シャフト部102の切欠部102kと、シャフト部102の接触部102sなどで構成される。本実施形態の切替機構は、調整ノブ110を回すことで、各シャフト部102のベベルギア112が回転する。ベベルギア112は、各回転軸108の一端部に固定されているため、ベベルギア112の回転によって回転軸108が回転する。そして、可動チップ104は回転軸108に形成されるねじに螺合しており、回転軸108が回転することでシャフト部102の根本側の退避位置(第2の位置)から先端側のカム面41と対向するカム対向位置(第1の位置)までの間を回転軸108に沿って移動する。図3〜図5はいずれも可動チップ104がカム対向位置にある状態を示し、図6は可動チップ104が退避位置にある状態を示す。退避位置は、カム対向位置よりもクロスシャフト100の中心側の位置であり、少なくとも可動チップ104がカム面41と重ならない内側の位置である。また、図7では、可動チップ104のカム対向位置と退避位置の違いをわかりやすくするために、図において左右の可動チップ104をカム対向位置に示し、上下の可動チップ104を退避位置に示すが、実際には通常はすべての可動チップは退避位置からカム対向位置の間の同じ位置にある。以下、切替機構の各部を説明する。
可動チップ104は、上述の通り回転軸108に沿って移動してカム面41とクロスシャフト100との接触状態を変化させるための部位である。本実施形態では可動チップ104は第1のチップ104aと第2のチップ104bの2つの部品で構成される。図8は本実施形態の可動チップ104の片側のチップを示す。第1のチップ104aおよび第2のチップ104bは同じ形状であり、接触部104tとリング部104rとを有する。クロスシャフト100に一体となって可動チップ104として取り付けられている状態では、2つのチップの一方を裏返してリング部104rが重なるように組み合わせて回転軸108に螺合されている。接触部104tは、2つのチップを組み合わせた状態でカム面41aと接触する接触面104sを形成する。本実施形態の接触部104tは、カム面に対向する部分が平面に形成され、チップを2つ組み合わせた状態において平面の接触面104sを形成する。リング部104rは、内径を回転軸108の径に合わせた大きさのリングであり、内面に回転軸108のねじに螺合するめねじが形成される。
また、本実施形態の可動チップ104は、リング部104rと接触部104tとの間に2つの平面部が直交して形成されるL字面部104Lを有する。L字面部104Lは、シャフト部102の軸方向に沿って形成される切欠部102kの縁部に沿う形状である。本実施形態では、2つのチップを組み合わせた状態で第1のチップ104aのL字面部104Lが切欠部102kの一方の縁部(図5において上側の縁部)にガイドされ、第2のチップ104bのL字面部104Lが切欠部102kの他方の縁部(図5において下側の縁部)にガイドされる。可動チップ104を2つ組み合わせた状態において、可動チップ104の切欠部102kに挟まれる部分の厚みが、切欠部102kの車軸方向(図5において上下方向)の幅と合うように形成されることで、2つのチップ(第1のチップ104aと第2のチップ104b)が密着した状態が維持される。そのため可動チップ104は、切欠部102kによって、接触面104sにおいて2つのチップの間にほぼ隙間ができないように一体に組み合わされた状態を維持するようにガイドされながら移動することができる。
また、本実施形態の可動チップ104は、第1のチップ104aがプレッシャーリング4aのカム面41にだけ接触し、第2のチップ104bがプレッシャーリング4bのカム面41にだけ接触する。プレッシャーリング4a、4bごとに接触するチップを別々のチップとすることで、一方のチップは一方のプレッシャーリングからのみ力を受け、他方のチップは他方のプレッシャーリングからのみ力を受けることになる。従って、可動チップ104がプレッシャーリングから受ける力が各チップに分散するため、受ける力に対して十分に強度を確保でき、可動チップ104の耐久性を向上させることができる。従って、可動チップ104は2つのチップで構成されることがより好ましいが、一体のチップであってもよい。一体のチップであれば、部品点数がより少なく、組み立ても容易である。
接触部102sは、シャフト部102に形成される切欠部102kの、車軸方向における両側の部分であり、プレッシャーリング4のカム面41bに当たって力が加わることで、一対のプレッシャーリング4a、4bを車軸方向に押し広げる分力を発生させる部位である。本実施形態では、対向するカム面41bとほぼ同じ傾斜角の面であるが、これに限られず、カム面41bに接触して分力を発生させることができれば、面の角度や形状は限定されず、曲面等でもよい。なお、後述のように本実施形態では接触部102は、可動チップ104が退避位置にある場合にのみ接触部102sはカム面41bに接触する。
規制リング106は、回転軸108に通されているリングであり、シャフト部102の根元側における可動チップ104の移動範囲を規制する。調整ノブ110を回して可動チップ104を根元側に移動させる場合に、可動チップ104が規制リング106に当たるところまで移動させることができる。
回転軸108は、上述の通り可動チップ104を螺進させるための回転軸である。回転軸108は、少なくとも可動チップ104を移動させる必要のある範囲にねじが形成されている。本実施形態では、シャフト部102の切欠部102kが形成される範囲にわたって形成される。可動チップ104は切欠部102kに係合することにより、回転軸108の軸回りの回転が規制され、かつ回転軸108の軸方向に沿って直進移動可能とする。
調整ノブ110は、LSD1の差動制限特性を調整する操作を行うための部品である。つまみ110nを回すことでギア(べべルギア110c)を介して4本の回転軸108を同時に同方向に回転(同期回転)させて、各回転軸108のねじ部に螺合する各可動チップ104を同一方向に同ピッチで軸方向に直進移動させ、LSD効果を切り替えることができる。調整ノブ110およびベベルギア110cは、車軸の軸中心と同一軸心を回転中心として回転する。本実施形態では、つまみ110nを回転させやすくするために、先端部が平板状に形成される。後述のように、つまみ110nの形状に合わせた調整器具によってつまみ110nを把持し、つまみ110nを回転させることができる。第1ギア部である調整ノブ110は、つまみ110n、軸体110a、筒体110b、ベベルギア110c、ボール110d、スプリング110e、穴110f、固定ピン110gなどを備える。なお、第1ギア部としては少なくともベベルギア110cを備える。調整ノブ110は、つまみ110nが一端に形成される軸体110aが筒体110bに納められている。軸体110aには、図1において車軸方向に直交する方向に貫通孔が形成されており、その貫通孔の内部に図7に示すようにボール110dとスプリング110eが納められている。軸体110aの他端は、ベベルギア110cの中心に形成される穴にはめ込まれており、固定ピン110gによって軸体110aとベベルギア110cが一体となって回転するように固定される。軸体110aの端部がはめ込まれたベベルギア110cの軸部110c1は、軸受板116に形成される円形の軸受穴に回転自在に差し込まれており、つまみ110nを回すことでベベルギア110cが軸体110aと一体となって回転することができる。ベベルギア110cには、軸回りに90度の角度を有してベベルギア112が噛み合っている。各ベベルギア112には各回転軸108が固定されている。なお、つまみ110nの形状は平板状のものに限定されず、軸体を回転させることができればどのようなものでもよい。ねじのように十字穴や六角穴が頭部に形成されるものでもよい。
筒体110bは外周面に、各シャフト部102のベベルギア112の頭部の平面に対向する位置に、平面状にカットされた平面部を有する。図7に示すように、この平面部にベベルギヤが4方向から接していることで、筒体110bは回転が規制され、つまみ110nを回しても回転しないように保持され、軸体110aだけが回転する。そして、筒体110bの側部には、車軸方向において軸体110aの貫通孔に対向する位置に穴110fが形成される。穴110fはボール110dよりも径が小さい穴である。筒体110bは上述の通り回転しないので、つまみ110nを回すと軸体110a(およびベベルギア110c)だけが回転する。そして、スプリング110eで付勢されたボール110dが穴110fの位置に来ると、ボール110dが穴110fにはまり込むので、一定の回転角度ごとにクリック感が得られる。本実施形態では筒体110bの側部に180度の間隔で2カ所穴が形成されており、つまみ110nを180度回転させるごとにクリック感が得られる。なお、クリック感を発生させる必要がない場合には、筒体110bやボール110d、スプリング110e等を省略してもよい。
また、調整ノブ110はベベルギア110cの軸部110c1が軸受板116(クロスシャフトの底部)に保持され、ギアの部分に4つのベベルギア112がかみ合っている。そのため、ベベルギア110cが車軸方向において両側から挟まれて保持されているので、調整ノブ110全体も車軸方向には移動しないようにクロスシャフト100の収容部100s内に保持される。
ベベルギア112は、調整ノブ110のベベルギア110cの回転によって回転し、回転軸108を回転させるギアである。ベベルギア112は、各シャフト部102において回転軸108の調整ノブ110側の端部に結合されており、本実施形態では車軸の軸中心と同一軸心の回りに(調整ノブ110の回りに)90度ごとに配置されている。ベベルギア112の頭部には、上述のように調整ノブ110の筒体110bの回転を規制する平面部が形成される。
軸受板116は、上述の通り調整ノブ110の軸受として機能する板である。軸受板116は、4本のねじ114でクロスシャフト100に対して固定される。
以上の切替機構およびプレッシャーリング4のカム面41によって実現される、LSD効果の切替動作について説明する。図9は、本実施形態のシャフト部102およびカム面41をシャフト部102の先端側から見た図であり、図9(a)は可動チップ104がカム面41と対向するカム対向位置にある状態を示す図であり、図9(b)は可動チップ104が退避した退避位置にある状態を示す図である。図9において、矢印で示すように上下方向が車軸方向である。LSD1が搭載される車両がFR方式の車両である場合、図9の上側が右車輪であり、下側が左車輪である。また、図9(b)ではわかりやすくするために可動チップ104を省略している。
まず本実施形態では、可動チップ104が図9(a)に示すカム面41と対向するカム対向位置にある場合、アクセルオフによってエンジンブレーキがかかり、車輪からの回転力が車軸、サイドギア8a・8b、ピニオンギア6を介してクロスシャフト100に伝わり、図9においてクロスシャフト100が左方向にプレッシャーリング4のカム面41を押す。この図9(a)の場合、クロスシャフト100の可動チップ104の接触面104sとプレッシャーリング4のカム面41aとが接触する。分力(プレッシャーリング4を押し広げる力)を発生させる、カム面41bとシャフト部102の接触部102sとは接触しない。この場合、プレッシャーリング4は左方向にシャフト部102から力を受けるだけであり、プレッシャーリング4a、4bを押し広げる方向への力は発生しない。従って、図9(a)に示す可動チップ104がカム対向位置にある状態は、LSDの効果が発生しない状態となる。
一方、調整ノブ110のつまみ110nを回して可動チップ104を図9(b)に示す退避位置に移動させた場合は、同じくアクセルオフによりクロスシャフト100がプレッシャーリング4のカム面41を左方向に押すと、分力を発生させる、カム面41bとシャフト部102の接触部102sとが接触する。この場合、図9(b)の矢印Bで示すようにプレッシャーリング4a、4bはシャフト部102から車軸方向の両側に互いに押し広げられる力を受ける。そうすると、プレッシャーリング4a、4bのそれぞれの車輪側に配置されるクラッチプレートがプレッシャーリングによって押圧され、摩擦力が発生し、デファレンシャルの差動を制限するLSD効果が発生する。
以上のように、本実施形態のLSD1は調整ノブ110を回転させて可動チップ104を移動させることで、プレッシャーリング4のカム面41とクロスシャフト100のシャフト部102との接触する部分を変化させることができる。これによって、シャフト部102が押し当たるプレッシャーリング4のカム面41の角度が切り替わり、LSD効果を変化させることができる。本実施形態では、車軸方向に沿った水平のカム面41aと斜めのカム面41bとで切り替えられるので、LSD効果がオフの状態とLSD効果がオンの状態とを切り替えることができる。なお、カム面41bの角度(およびシャフト部102の接触部102sの角度)を変えれば、LSD効果がオンの際の差動制限の強さを変えることができる。
なお本実施形態では、カム面41cについては可動チップ104の位置にかかわらず、同じカム面41cがシャフト部102と接触する。従って、アクセルオン時にエンジンの駆動力によってプレッシャーリング4が図9において左方向にシャフト部102に押し当たる場合には、可動チップの位置に関わらず同様にプレッシャーリング4a、4bが押し広げられて、同様のLSDの効果が得られる。
本実施形態のLSD1において、調整ノブ110を回転させてLSD効果を調整する場合には、LSD1に接続されている両側のドライブシャフトのうち、調整ノブ110のつまみ110nが形成される側のドライブシャフトを取り外す。図1であれば、右側のドライブシャフトをデファレンシャルケース2から取り外す。そうすると、デファレンシャルケース2とサイドギア8aのドライブシャフトを差し込むための開口部から調整ノブ110のつまみ110nにアクセス可能となる。本実施形態のつまみ110nを操作する場合には、つまみ110nの形状に合わせた凹溝が形成された棒状の調整器具を用いることができる。つまみ110n側のドライブシャフトを取り外した状態で、このような調整器具をデファレンシャルケース2およびサイドギア8a内に差し込んで、つまみ110nを凹溝で保持して回転させることで可動チップ104を移動させることができる。なお、つまみの形状が異なる場合には、そのつまみの形状に合わせてつまみを回転させることができる器具を用いればよい。
また、上述のように調整ノブ110は、ボール110dとスプリング110eと筒体110bの穴110fなどの構成を備える。そのため調整器具で調整ノブ110を操作した場合、一定の回転角度ごと(本実施形態では180度ごと)にクリック感が得られるので、どの程度つまみ110nを回転させたかを容易に把握することができる。従って、クリック感が得られる回数と、可動チップ104の位置関係をあらかじめ決めておくことで、可動チップ104をカム対向位置に正確に移動させることができる。
以上の本実施形態によれば、LSD1を車両から取り外したり、LSD1を分解したりすることなく、LSD効果(デファレンシャルの差動制限効果)の特性を変更することができる。
なお、本実施形態においてはLSD1を調整ノブ110側から見た場合に、アクセルオフによりクロスシャフト100がプレッシャーリング4を時計回り方向に押す場合に発揮されるLSD効果を変更可能としたが、これに限られない。アクセルオンの場合でのLSD効果を変更可能とするために、プレッシャーリング4がクロスシャフト100に対して時計回り方向に押圧する際に機能する側(すなわち、図9においてカム面41cと、シャフト部102のカム面41cに対向する側)に、可動チップ104と上述のような対応するカム面を形成してもよい。
また、本実施形態では調整ノブ110を回転させてLSD効果を調整する場合には、LSD1に接続されている両側のドライブシャフトのうち、調整ノブ110のつまみ110nが形成される側のドライブシャフトを取り外すとして説明した。しかしたとえば調整ノブ110側に差し込むドライブシャフトを中空構造とすることで、ドライブシャフトを取り外すことなく調整ノブ110を回転させてLSD効果を切り替えることもできる。具体的には、ドライブシャフトにシャフトの中心軸に沿った孔を形成して中空構造とする。そして、その孔よりも細い径の上述のような棒状の調整器具を孔に通してつまみ110nを回転させれば、ドライブシャフトを取り外すことなくLSD効果の切り替えが可能である。さらに、上述の調整ノブ110を回転させる機構をドライブシャフトに組み込んでもよい。この場合は、ドライブシャフトを取り外すことなく、さらに調整器具を別途用意することなくLSD効果の切替が可能である。
また、本実施形態では、ピニオンシャフトは十字状のクロスシャフト100であるとしたが、これに限られない。LSDとしての機能が得られれば、4本のシャフト部を有する十字状のピニオンシャフトに限定されない。
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態について説明する。本実施形態は、可動チップの形状とプレッシャーリングのカム面の形状が第1の実施形態と異なる。第1の実施形態では、差動制限特性を変化させる機能の実施形態として、調整ノブ110を操作することでLSD効果のオンとオフを切り替え可能な実施形態を示した。一方、本実施形態はLSD効果の強弱を切り替え可能な実施形態である。以下本実施形態を図面に基づき説明する。
図10は、本実施形態のシャフト部102およびカム面41’をシャフト部102の先端側から見た図である。図10(a)は可動チップ104’がカム面41’と対向するカム対向位置にある状態を示す図であり、図10(b)は可動チップ104’が退避した退避位置にある状態を示す図である。図10(b)においては可動チップ104’を省略している。
本実施形態のLSD1は、可動チップとして第1の実施形態とは異なる形状の可動チップ104’と、第1の実施形態とは異なる形状のカム面41’を有する。
可動チップ104’を構成する各チップ(第1のチップ104a’と第2のチップ104b’)は、カム面41a’と接触する接触面が曲面である。具体的には、たとえばシャフト部102の可動チップ104’の反対側の外周面と同様の曲率の曲面とすることができる。そして、可動チップ104’が接するカム面41a’はプレッシャーリング4’の回転方向に直交する面(車軸方向に沿った平面であり、図10では、上下方向に紙面に直交する面)に対して傾斜した傾斜面である。
従って、可動チップ104’がカム対向位置にある場合にシャフト部102がプレッシャーリング4に対して左方向に押圧すると、傾斜したカム面41a’が可動チップ104a’の曲面に押し当たる。そうすると、矢印Cで示すようにプレッシャーリング4a、4bを左右に押し広げる力が発生し、LSDの効果が発生する。
一方、図10(b)に示すように、可動チップ104’が退避位置にある場合には、シャフト部102の接触部102sがカム面41bに接触し、矢印Dで示すようにプレッシャー0リング4a、4bを押し広げる力が発生する。カム面41bと接触部102sとが接触する場合は第1の実施形態の図9(b)の状態と同様である。
カム面41a’とカム面41bとでは、プレッシャーリング4’の回転方向に直交する水平面(図10では、上下方向に紙面に直交する面)となす角が異なる。図10の(a)の状態と(b)の状態で、同じ力でプレッシャーリング4がシャフト部102に接触した場合には、カム面41bの方が上記水平面となす角が大きいので(b)の状態の方がプレッシャーリング4a、4bを押し広げる力が大きくなる。従って、本実施形態の場合には、可動チップ104’をカム対向位置に移動させた場合と、退避位置に移動させた場合とで、LSDの効果の強弱を切り替えることが可能となる。図10(a)のカム対向位置の場合にはLSD効果が弱であり、図10(b)の退避位置の場合にはLSD効果が強となるLSD1を提供することができる。
以上の本実施形態によれば、デファレンシャルの差動を制限するLSD効果の強弱を、LSDを分解したり車両から取り外すことなく調整可能なLSDを提供することができる。
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態においては、ベベルギア110cが取り付けられた調整ノブ110を回転させて、各シャフト部102のベベルギア112を回転させて可動チップを移動させるとした。これに対して本実施形態は、可動チップの位置を切り替えるための調整器具が、第1の実施形態において調整ノブ110に取り付けられるベベルギアと同様のベベルギア(調整用ギア)を器具の先端に備える。そして、クロスシャフトは、調整ノブ110およびベベルギア110cは備えない構成である。
本実施形態の構成において可動チップの位置を調整する場合には、調整器具のベベルギアを、クロスシャフトの各シャフト部102の4つのベベルギア112にかみ合わせる。そして、調整器具を回すことで器具側の先端のベベルギアを回転させて、各シャフト部102のベベルギア112を直接、同時に回転させて、4か所の可動チップを移動させる。調整器具側のベベルギアは、車軸の軸中心と同一軸心を回転中心として回転させることで、第1の実施形態のベベルギア110cと同様に、各ベベルギア112を同時に同期回転させることができる。
以上の本実施形態のように、クロスシャフトが調整ノブ110を備えない構成であり、調整器具側に調整ノブの機能に対応した部材(ベベルギア)を備える構成としても、LSDを分解せずにLSD効果の強弱を調整可能なLSDを提供することができる。
1 リミテッドスリップデファレンシャル装置(LSD)
2 デファレンシャルケース
4(4a、4b) プレッシャーリング
6 ピニオンギア
8a、8b サイドギア
10 リングギア
12 ピニオンギア
41、41’ カム面
100 クロスシャフト(ピニオンシャフト)
102 シャフト部
104、104’ 可動チップ
104a 第1のチップ
104b 第2のチップ
108 回転軸
110 調整ノブ
112 ベベルギア
116 軸受板

Claims (9)

  1. 駆動源により、車軸回りに回転されるデファレンシャルケースと、
    前記デファレンシャルケース内に対向して収容され、前記デファレンシャルケースにより回転駆動力が伝達される一対のプレッシャーリングと、
    先端部にピニオンギアを回転自在に設けた複数のシャフト部を有し、前記対向する一対のプレッシャーリング内に挟まれた状態で収容され、前記一対のプレッシャーリングとの係合により、前記一対のプレッシャーリングとの間で相対的な動力伝達が行われるピニオンシャフトと、
    前記ピニオンシャフトの端部を挟む位置に前記一対のプレッシャーリングの対向面側にそれぞれ対向して設けられたプレッシャーリング側カム部と、
    前記ピニオンシャフト側に設けられ、前記プレッシャーリング側カム部との接触により前記一対のプレッシャーリングに車軸方向外方に向けた分力を発生させる、カム軌跡の異なる複数のカムを有するピニオンシャフト側カム部と、
    前記ピニオンシャフト側カム部の複数のカムを選択的に切り替えて前記プレッシャーリング側カム部と接触させるカム切替部と、
    前記ピニオンギアとかみ合うように配置され前記ピニオンシャフトから前記ピニオンギアを介して回転駆動力が伝達される一対のサイドギアと、
    前記一対のプレッシャーリングと前記デファレンシャルケースの側面との間に配置され、前記一対のプレッシャーリングが互いに車軸方向外方に移動する力によって、前記デファレンシャルケースと前記一対のサイドギアとを接続し差動を制限する、複数のクラッチプレートと、
    を備える差動制限機能を有するデファレンシャル装置であって、
    前記カム切替部は、車軸の軸中心と同一軸心に回転中心を有する第1ギア部と、前記第1ギア部と噛合する複数の第2ギア部と、前記第1ギア部の回転により同期回転する前記複数の第2ギア部の回転を直進移動に変換して前記ピニオンシャフト側カム部のカムを切り替える伝達動力変換部と、を有することを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
  2. 駆動源により、車軸回りに回転されるデファレンシャルケースと、
    前記デファレンシャルケース内に対向して収容され、前記デファレンシャルケースにより回転駆動力が伝達される一対のプレッシャーリングと、
    先端部にピニオンギアを回転自在に設けた複数のシャフト部を有し、前記対向する一対のプレッシャーリング内に挟まれた状態で収容され、前記一対のプレッシャーリングとの係合により、前記一対のプレッシャーリングとの間で相対的な動力伝達が行われるピニオンシャフトと、
    前記ピニオンシャフトの端部を挟む位置に前記一対のプレッシャーリングの対向面側にそれぞれ対向して設けられたプレッシャーリング側カム部と、
    前記ピニオンシャフト側に設けられ、前記プレッシャーリング側カム部との接触により前記一対のプレッシャーリングに車軸方向外方に向けた分力を発生させる、カム軌跡の異なる複数のカムを有するピニオンシャフト側カム部と、
    前記ピニオンシャフト側カム部の複数のカムを選択的に切り替えて前記プレッシャーリング側カム部と接触させるカム切替部と、
    前記ピニオンギアとかみ合うように配置され前記ピニオンシャフトから前記ピニオンギアを介して回転駆動力が伝達される一対のサイドギアと、
    前記一対のプレッシャーリングと前記デファレンシャルケースの側面との間に配置され、前記一対のプレッシャーリングが互いに車軸方向外方に移動する力によって、前記デファレンシャルケースと前記一対のサイドギアとを接続し差動を制限する、複数のクラッチプレートと、
    を備える差動制限機能を有するデファレンシャル装置であって、
    前記カム切替部は、車軸の軸中心と同一の軸心の回りに配置される複数のギア部であって、カムを切り替える操作を行うための調整器具の調整用ギアを噛み合わせて、前記調整用ギアを車軸の軸中心と同一軸心を回転中心として回転させることで同期回転する前記複数のギア部と、前記調整用ギアの回転により同期回転する前記複数のギア部の回転を直進移動に変換して前記ピニオンシャフト側カム部のカムを切り替える伝達動力変換部と、を有することを特徴とする差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
  3. 前記伝達動力変換部によって、前記プレッシャーリング側カム部と対向する第1の位置と、前記プレッシャーリング側カム部より内側に退避する第2の位置との間を前記シャフト部に沿って移動する可動チップを備え、
    前記プレッシャーリング側カム部が、前記可動チップと対向する側のカム面として、前記第1の位置に前記可動チップがある場合に前記可動チップに接する第1のカム面と、前記可動チップが第2の位置にある場合に前記シャフト部の端部の接触部に接する第2のカム面と、を備え、
    前記可動チップの位置を前記第1の位置と前記第2の位置とで切り替えることで差動制限特性を変更可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
  4. 前記可動チップは、内面にねじが形成されるリング部と、前記プレッシャーリング側カム部に対向する接触面のうち車軸方向における半分の接触面を形成する接触部と、を備えるチップを2つ組み合わせたことを特徴とする請求項3に記載の差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
  5. 前記シャフト部の側面に前記シャフト部に沿って切欠部が形成され、前記切欠部が前記2つのチップが一体に組み合わされた状態を維持するように支持しながら前記可動チップの移動をガイドすることを特徴とする請求項4に記載の差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
  6. 前記第1のカム面が車軸方向に沿った平面のカム面であり、前記第2のカム面が前記第1のカム面に対して傾斜するカム面であり、前記可動チップが前記第1の位置にある場合に差動が制限されず、前記可動チップが前記第2の位置にある場合に差動が制限されることを特徴とする請求項3から5のいずれか1つに記載の差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
  7. 前記第1のカム面が前記プレッシャーリングの回転方向に直交する平面に対して傾斜したカム面であり、前記第2のカム面が前記第1のカム面に対して傾斜したカム面であり、前記可動チップが第1の位置にある場合と前記可動チップが前記第2の位置にある場合とで差動を制限する強さが異なることを特徴とする請求項3から5のいずれか1つに記載の差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
  8. 前記第1ギア部が、前記デファレンシャルケースと前記サイドギアとに形成される車軸を通す開口部を介して回転させる操作が可能であることを特徴とする請求項1に記載の差動制限機能を有するデファレンシャル装置。
  9. 前記第1ギア部が、前記複数の第2ギア部とのかみ合いと、前記ピニオンシャフトの底部と、によって車軸方向への移動が制限されて前記ピニオンシャフト内に保持されることを特徴とする請求項1または8に記載の差動制限機能を有するデファレンシャル装置。

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