JP2015196714A - 共役ジエン系重合体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属残渣を含んだ重合体溶液から、効率的に金属残渣を除去し、色調に優れ、濁度の少ない共役ジエン系重合体を得ることのできる共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】リチウム、チタン、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属と、共役ジエン系重合体と、を含む共役ジエン系重合体溶液を調製する工程1と、
前記共役ジエン系重合体溶液に、界面活性剤(a)、硫酸、塩酸、及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の無機酸(b)、及び、極性液体(c)を添加、混合し混合液を得る工程2と、
前記混合液から、前記界面活性剤(a)、前記無機酸(b)、及び前記極性液体(c)を除去する工程3と、を有する、
共役ジエン系重合体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、共役ジエン系重合体の製造方法に関する。
近年、ゴム弾性を有する軟質材料であって、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様に成形加工及びリサイクルが可能な熱可塑性エラストマーが幅広い分野で多用されている。
例えば、1,3−ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエン単量体の重合体、又は、共役ジエン単量体と、当該共役ジエン単量体と共重合可能なスチレンのようなビニル芳香族単量体と、の共重合体は、耐衝撃性透明樹脂又はポリオレフィン及びポリスチレン樹脂の改質剤として非常に重要である。
また、上記共役ジエン系重合体に含まれるオレフィン性二重結合部分に水素を付加させた水添重合体は、耐候性に優れるという特徴を有する。この特徴を活かし、水添重合体は、自動車部品、家電部品、電線被覆、医療用部品、雑貨、履物などに使用されている。
一般的に、上記共役ジエン系重合体は、アルキルリチウムなどを開始剤としたリビングアニオン重合によって製造される。さらに、水添重合体を得る場合には、重合後に周期律表第VIII族もしくは第IV族金属を触媒としてオレフィン性二重結合部分に水素添加反応(以下、「水素化反応」とも言う。)を行う。
オレフィン性二重結合を有する重合体を水素化させる方法については様々な方法が報告されており、例えば、周期律表第VIII族金属、特に、ニッケル又はコバルトの化合物とアルキルアルミニウム化合物等の適当な還元剤を組み合わせた触媒を使用した水素化の方法が知られている。他にも、周期律表第IV族金属であるチタンの化合物、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)チタン化合物とアルキルアルミニウム化合物等の適当な還元剤を組み合わせた触媒を使用し、共役ジエン系重合体の不飽和二重結合を水素化する方法が知られている。
以上のように、熱可塑性エラストマー、特に、上記したような共役ジエン系重合体や、その水添重合体には、開始剤や水素添加触媒などに由来する金属残渣(以下、「触媒残渣」とも言う。)が含まれることになる。重合体溶液中の金属残渣は、製品のブツ、表面肌荒れ、着色、濁りなど様々な品質低下に繋がるため、製造工程で効率的に除去しなければならない。
そこで、重合体溶液中に残存する金属残渣を除去する方法として、いくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1では、噛み合せ構造を有する回転分散機を用いて、重合体溶液と水とを激しく混合することによって、重合体溶液中のリチウム残渣を除去する方法が開示されている。
また、特許文献2では、噛み合せ構造を有する回転分散機を用いて、重合体溶液と無機の強酸と有機カルボン酸を含む水とを激しく混合することによって、重合体溶液中のリチウム残渣とアルミニウム残渣を除去する方法が開示されている。
更に特許文献3では非水溶性樹脂溶液を水素雰囲気下で、有機酸水溶液で処理することでニッケル残渣とアルミニウム残渣を除去する方法が開示されている。上記以外にもリチウムやニッケル、アルミニウムといった金属残渣の除去については、これまでに多数の先行文献が開示されている。
一方、チタン残渣を除去する方法に関してはこれまで殆ど報告されていない。例えば、特許文献4にホスホン酸塩とリン酸エステル塩と水が添加されたゴム状重合体の溶媒又はスラリーをスチームストリッピングすることによりチタン残渣を除去する方法が開示されている。特許文献5に、無機酸とアルコールと水とを用いたチタン残渣の除去が開示されている。
特開平6−136034号公報 特開2002−356509号公報 特開平8−269126号公報 特開平8−340389号公報 特開2002−167406号公報
製品の品質悪化を引き起こす金属残渣は、重合体溶液中から除去する必要がある。しかしながら、前述のように、従来技術では複数の金属残渣に対して、高い効果を示す除去方法は殆ど報告されていない。
例えば、特許文献4に記載の方法においては、スチームストリッピング工程で大量のスチームを必要とするためランニングコストが高くなってしまう。更にホスホン酸塩やリン酸エステル塩を用いるため、廃液処理が問題となる。また、特許文献5に記載の方法においては、金属除去の過程において、重合体溶液とアルコールの撹拌や分離に長い時間を要するなど生産性の問題がある。更に大量のアルコールと水とを使用する必要があり、工業生産においては廃液処理が大きな問題となる。また、アルコールや水を再利用するとしても大掛かりな精製設備が必要となる。
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたものであり、金属残渣を含んだ重合体溶液から、効率的に金属残渣を除去し、色調に優れ、濁度の少ない共役ジエン系重合体を得ることのできる共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、金属残渣を含んだ重合体溶液に界面活性剤と無機酸を添加し、更に極性液体を加えることで重合体溶液中の金属残渣を効果的に分離除去できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕
リチウム、チタン、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属と、共役ジエン系重合体と、を含む共役ジエン系重合体溶液を調製する工程1と、
前記共役ジエン系重合体溶液に、界面活性剤(a)、硫酸、塩酸、及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の無機酸(b)、及び、極性液体(c)を添加、混合し混合液を得る工程2と、
前記混合液から、前記界面活性剤(a)、前記無機酸(b)、及び前記極性液体(c)を除去する工程3と、を有する、
共役ジエン系重合体の製造方法。
〔2〕
前記工程2が、
前記共役ジエン系重合体溶液と前記界面活性剤(a)とを混合し、第1の混合液を得る工程2−1と、
前記第1の混合液と前記無機酸(b)とを混合し、第2の混合液を得る工程2−2と、
前記第2の混合液と前記極性液体(c)とを混合し、前記混合液を得る工程2−3と、を順に有する、
前項〔1〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔3〕
前記工程1において、前記共役ジエン系重合体溶液が前記リチウム及び/又は前記チタンを含む、前項〔1〕又は〔2〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔4〕
前記工程2−2の後、前記第2の混合液中において、前記金属が極性液体(c)に可溶な状態になっている、
前項〔2〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔5〕
前記工程1において、前記共役ジエン系重合体溶液が前記チタンを含み、
前記工程2−2の後、前記第2の混合液中において、前記チタンが極性液体(c)に可溶な状態になっている、
前項〔2〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔6〕
前記界面活性剤(a)が、非イオン性界面活性剤を含む、
前項〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔7〕
前記無機酸(b)が、硫酸を含む、
前項〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔8〕
前記極性液体(c)が、水を含む、
前項〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔9〕
前記工程2−3において、噛み合わせ構造を有する回転分散機を用いて、下記条件で混合を行う、
前項〔2〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
P/V値≧3×10
(P:分散機の動力(kw)、V:混合部の容積(m))
周速(2πr・n)≧5
(r:ロータ最外歯の半径(m)、n:ロータの回転数(s−1
〔10〕
前記工程3において、前記混合液に遠心分離機を用いて100G以上の相対加速度を付与することにより、前記混合液から前記界面活性剤(a)、前記無機酸(b)、及び前記極性液体(c)を除去する、前項〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔11〕
前記遠心分離機が、ディスク型遠心分離機である、前項〔10〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔12〕
前記工程2において、前記混合液中のアルコール濃度が2000ppm以下である、前項〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
本発明によれば、金属残渣を含んだ重合体溶液から、効率的に金属残渣を除去し、色調に優れ、濁度の少ない共役ジエン系重合体を得ることのできる共役ジエン系重合体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〔共役ジエン系重合体の製造方法〕
本実施形態の、共役ジエン系重合体の製造方法は、
リチウム、チタン、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属と、共役ジエン系重合体と、を含む共役ジエン系重合体溶液を調製する工程1と、
前記共役ジエン系重合体溶液に、界面活性剤(a)、硫酸、塩酸、及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の無機酸(b)、及び、極性液体(c)を添加、混合し混合液を得る工程2と、
前記混合液から、前記界面活性剤(a)、前記無機酸(b)、及び前記極性液体(c)を除去する工程3と、を有する。
〔工程1〕
工程1は、リチウム、チタン、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属と、共役ジエン系重合体と、を含む共役ジエン系重合体溶液を調製する工程である。
「金属」には、金属単体、金属化合物、イオンになっているものも含まれ、これらを総じて金属残渣と呼ぶ。共役ジエン系重合体溶液に含まれる金属としては、脱灰の効率性と生産性の観点からリチウム及び/又はチタンであることが好ましく、チタンであることがより好ましい。
(共役ジエン系重合体溶液)
本実施形態で用いられる共役ジエン系重合体溶液は、少なくとも共役ジエン単量体を重合することによって得られる。このような共役ジエン系重合体溶液は、特に制限されないが、例えば、溶液中で重合開始剤によって少なくとも共役ジエン単量体を重合することによって得られる。共役ジエン系重合体溶液中の共役ジエン系重合体は水素化されていてもよい。
本実施形態で用いられる共役ジエン系重合体溶液は少なくとも、リチウム、チタン、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を含んでいる。ここで、リチウム、チタン、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属は共役ジエン系重合体溶液を調整する過程で、開始剤や触媒の残渣として含まれていてもよいし、原料や共役ジエン系重合体溶液を調整する過程で用いられる溶媒等の不純物として含まれていてもよい。開始剤や触媒については、後述する。
ここで共役ジエン系重合体溶液の溶媒として用いられるものとしては、重合開始剤に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、鎖状炭化水素溶媒、環式炭化水素溶媒、又はこれらの混合物が使用される。鎖状炭化水素溶媒としては、特に限定されないが、例えば、n−ブタン、イソブタン、1−ブテン、イソブチレン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、トランス−2−ペンテン、シス−2−ペンテン、n−ペンテン、イソペンタン、neo−ペンタン、n−ヘキサンなどの、炭化水素数4〜6の鎖状アルカン及びアルケンが挙げられる。また、環式炭化水素溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物を挙げることができる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。これらの中でもn−ヘキサン、あるいはシクロヘキサン、あるいはそれらの混合物が好適に用いられる。
共役ジエン系重合体溶液中の共役ジエン系重合体の濃度は、特に限定されないが、好ましくは5〜60質量%であり、より好ましくは10〜50質量%である。
(共役ジエン系重合体)
共役ジエン系重合体は、重合によって得られたものであれば特に限定されないが、具体的には、重量平均分子量500〜1,000,000である、共役ジエンホモポリマー、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族系単量体とのランダム、テーパー若しくはブロック共重合体などが挙げられる。また、これらの共役ジエン単位の不飽和二重結合に対して水素添加をした重合体も使用可能である。本実施態様では、重合に用いられた金属残渣、水素化反応に用いられた金属残渣を効率よく除去することができる。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めることができる。
使用可能な共役ジエン単量体は、特に限定されないが、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンなどのような4〜12個の炭素原子を含有する共役ジエン系化合物を使用することができ、この中でも、1,3−ブタジエン及びイソプレンを使用することが好ましい。
共役ジエン単量体と共重合が可能なビニル芳香族系単量体は、特に限定されないが、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、アルコキシ基で置換されたスチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルナフタレン及びアルキル基で置換されたビニルナフタレンなどのようなビニルアリル化合物を使用することができ、この中でも、スチレン及びα−メチルスチレンを使用することが好ましい。
このとき、共役ジエン単量体とビニル芳香族系単量体を混合して共重合体を製造する場合は、共役ジエン単量体とビニル芳香族系単量体との質量比(共役ジエン単量体:ビニル芳香族系単量体)は、特に限定されないが、好ましくは5:95〜95:5である。共役ジエン単量体の使用量が5質量比以上であることにより、耐衝撃性が良好で、さまざまな用途に使用が可能となる傾向にある。また、共役ジエン単量体の使用量が95質量比以下であることにより、製品加工性が良好となる傾向にある。そのため前記範囲を維持することが好ましい。
このような共役ジエン系重合体は、例えば、本実施形態では有機リチウム化合物を開始剤として利用したアニオン重合を行うことで得ることができる。有機リチウム化合物としては、特に制限されないが、具体的には、n−ブチルリチウムやs−ブチルリチウムなどが挙げられる。このような開始剤の使用量は、当分野で一般的に使用される量とすることができ、目的とする高分子の分子量により自由自在に調節が可能である。ここで、有機リチウム化合物を開始剤として用いた場合、共役ジエン系重合体溶液に金属残差としてリチウムが含まれうる。
共役ジエン系重合体の重合方法としては、アニオン重合が好ましく、リビングアニオン重合がより好ましい。
(水素化反応)
得られた重合体溶液に対して、その後、水素化反応を行うことで水素化された共役ジエン系重合体を製造することができる。
水素化において用いる水素添加(水添)触媒としては、特に限定されるものではなく、従来公知の触媒、例えば、(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等の、いわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒等が挙げられる。
具体的には、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に開示されている水添触媒を適用できる。
水添触媒の好ましい例としては、チタン化合物と還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
水素化反応に使用されるチタン化合物としては当分野で一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用でき、(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格若しくはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物が挙げられる。
シクロペンタジエニル骨格を有するものとしては、特に限定されないが、具体的には、シクロペンタジエニルチタン化合物であり、例えば、シクロペンタジエニルチタンハロゲン化物、シクロペンタジエニル(アルコキシ)チタンジハロゲン化物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジハロゲン化物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジアルキル化物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジアリル化物及びビス(シクロペンタジエニル)ジアルコキシ化合物が挙げられ、単独又は混合して使用することができる。
チタン化合物の使用量は、共役ジエン系重合体100g当り、好ましくは0.01〜20mmolであり、より好ましくは0.05〜5mmolである。触媒として使用するチタン化合物の使用量が0.01mmol以上であることにより、水素化反応が効率よく進行し、生産性に優れる傾向にある。また、20mmol以下であることにより、十分な触媒配合量となり経済性がよく、さらに、反応後に触媒除去のために過量の化学物質を使用することも抑制される傾向にある。そのため、前記範囲を維持することが好ましい。
チタン化合物と共に使用することができる還元性有機金属化合物としては、当分野で一般的に使用される還元剤であれば特に限定されないが、具体的には、アルキルアルミニウム化合物等の有機アルミニウム化合物、アルキルマグネシウム化合物等の有機マグネシウム化合物、有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物、金属ヒドリド、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物などが挙げられ、単独でも複数種を組み合わせても使用することができる。
上記チタン系触媒を用いた水素化反応としては、特に限定されないが、具体的には、国際特許出願第00/08069号、米国特許第4,501,857号、第4,673,714号、第4,980,421号、第5,753,778号、第5,910,566号、第6,020,439号などに記載された方法を用いて実施することができる。
水素化反応は不活性溶媒中で行うことができる。ここで、不活性溶媒とは重合反応や水素化反応の際のいずれの反応物とも反応しない溶媒を意味する。このような不活性溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンのような脂環族炭化水素類;及びジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類を挙げることができ、これらの中から選択して単独又は混合して使用することができる。
共役ジエン系重合体の濃度は、特に制限されないが、共役ジエン系重合体溶液の総量に対して、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。重合体濃度が前記範囲内であることにより、取り扱いし易い重合体溶液粘度に調製でき、且つ、生産性が良好となるので好ましい。
一方、水素化反応は、重合体溶液を水素やヘリウム、アルゴン、窒素のような不活性気体雰囲気下で一定温度に維持した後、撹拌又は未撹拌状態で水素化触媒を添加し、水素ガスを一定圧力で注入することで行うことが好ましい。さらに、水素化反応の温度は30〜150℃、圧力は2〜30kg/cmの範囲で行うことが好ましい。
前記温度が30℃以上であることにより、反応性が高く、十分な反応収率を得ることができる傾向にある。また、150℃以下であることにより、高分子の熱老化による副反応が抑制される傾向にある。さらに、圧力が2kg/cm以上であることにより、反応速度が速く、反応時間が短くなる傾向にある。またさらに、30kg/cm以下であることにより、反応器に投資する費用が抑えられ、経済性の観点から好ましい。そのため、前記範囲を維持するのが好ましい。
上記のような水素化触媒により、重量平均分子量500〜1,000,000の、共役ジエン系重合体、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族系モノマーとのランダム、テーパー、若しくはブロック共重合体の共役ジエン単位の不飽和二重結合に対して選択的に水素化が可能である。
水素化反応の工程で用いられた金属を含む触媒は、共役ジエン系重合体溶液に含まれうる金属残差となる。
〔工程2〕
本実施形態の重合体溶液の精製方法において、工程2は、工程1で得られた共役ジエン系重合体溶液に、界面活性剤(a)、硫酸、塩酸、及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の無機酸(b)、及び、極性液体(c)を添加、混合し混合液を得る工程である。
工程2は、重合体溶液中の金属残渣をより効率的に極性液体への移行させるため、共役ジエン系重合体溶液と界面活性剤(a)とを混合し、第1の混合液を得る工程2−1と、第1の混合液と無機酸(b)とを混合し、第2の混合液を得る工程2−2と、第2の混合液と極性液体(c)とを混合し、混合液を得る工程2−3と、を順に有することが好ましい。このような順序とすることにより、脱灰の効率が向上し、濁度が改良される傾向にある。
(工程2−1)
工程2−1は、共役ジエン系重合体溶液と界面活性剤(a)とを混合し、第1の混合液を得る工程である。界面活性剤(a)を添加することで、重合体溶液と後述する無機酸、極性液体の混和が促進され、重合体溶液中の金属残渣の除去が簡単となる。
界面活性剤(a)としては、特に制限されないが、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられ、これらの界面活性剤は一種で用いられても複数で用いられてもよい。脱灰効率や濁度の改良の観点から、このなかでも、電解質の影響を受けにくく、他の界面活性剤と併用可能であるため、少なくとも非イオン性界面活性剤が含まれることがより好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル誘導体、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロールボレート脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド、セルロース誘導体などが挙げられる。このなかでも、特にポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンを用いることが好ましい。
さらに非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、ラウリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤;ステアリルアミンアセテート、アルキルアミン塩などのカチオン系界面活性剤;ラウリルカルボキシルヒドロキシルエチル、ラウリルベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられる。
また、界面活性剤の添加量は、特に制限されないが、重合体溶液中の重合体の質量に対して、0.001質量%〜10質量%添加することが好ましく、0.001質量%〜5質量%添加することがより好ましく、0.01質量%〜1質量%質量部添加することがさらに好ましい。配合量が0.001質量%以上であることにより金属残渣除去のし易さの観点から好ましい。また、添加量が10質量%以下であることにより、製品中への異物混入等の原因を防止する観点から好ましい。
(工程2−2)
工程2−2は、第1の混合液と無機酸(b)とを混合し、第2の混合液を得る工程である。無機酸(b)を添加することで重合体溶液中の金属残渣が極性液体(c)に溶解しやすくなり、重合体溶液中の金属残渣の除去が容易となる。
無機酸(b)は、硫酸、塩酸、及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、一種であっても複数種であってもよい。このなかでも、排液処理施設への負担や腐食性、金属残渣除去のしやすさ、着色性の観点から無機酸(b)として、硫酸が含まれることが好ましい。
また、無機酸(b)の添加量は、特に制限されないが、重合体溶液中の金属残渣の重量に対し、好ましくは1〜100倍であり、より好ましくは2〜50倍である。添加量が1倍以上であることにより、金属残渣除去のしやすさの観点から好ましい。また、添加量が100倍以下であることにより、廃水処理の観点から好ましい。
重合体溶液中の金属残渣が極性液体(c)により溶解しやすくなる観点から、工程2−2の後、第2の混合液中において、金属(金属残渣)が極性液体(c)に可溶な状態になっていることが好ましい。特に、工程1において、共役ジエン系重合体溶液がチタンを含む場合には、工程2−2の後、第2の混合液中において、チタンが極性液体(c)に可溶な状態になっていることが好ましい。「可溶な状態」としては、特に限定されないが、例えば、金属が無機酸と塩を形成している状態が挙げられる。
(工程2−3)
工程2−3は、第2の混合液と極性液体(c)とを混合し、混合液を得る工程である。極性液体(c)を添加することで重合体溶液中の金属残渣を極性液体に移行させることができる。
極性液体(c)としては、特に制限されないが、具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられ、好ましく用いられる。このなかでも、廃液処理施設への負担や取扱いの容易さの観点からは水であることが好ましい。
また、極性液体(c)の添加量は、特に制限されないが、重合体溶液の総量に対し、好ましくは0.5〜10容積倍であり、より好ましくは0.2〜5.0容積倍である。極性液体(c)の添加量が容積比で0.5以上であることにより、金属残渣の除去のしやすさの観点から好ましい。また、容積比で10倍以下であることにより、生産性の面から好ましい。
工程2−3において、極性液体(c)としてアルコールを用いる場合、廃液処理施設の負担の観点から工程2における混合液中のアルコール濃度は、好ましくは2000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下である。
(添加方法)
界面活性剤(a)、無機酸(b)、及び極性液体(c)の添加順序は、特に制限されないが、金属残渣除去の効率性の観点から、重合体溶液に対して界面活性剤を加えたのちに、無機酸を加え、最後に極性液体を添加することが好ましい。添加は、混合しながら行ってもよいし、添加してから混合してもよい。
(混合方法)
本実施形態における共役ジエン系重合体溶液と界面活性剤(a)と無機酸(b)と極性液体(c)の混合方法は特に限定されないが、撹拌翼を備えた容器内で混合する方法が挙げられる。撹拌翼の形状にも特に制限はなく、スクリュー翼、プロペラ翼、アンカー翼、パドル翼、ピッチトバドル翼、タービン翼、大型格子翼等の任意の翼を使用することができる。
共役ジエン系重合体溶液中の金属残渣を界面活性剤と無機酸と極性液体に十分に接触させるために、大きなせん断力・衝突力、摩擦力を与えられる混合方法が好ましい。せん断力を加えるための具体的な装置としては、攪拌機、乳化機を含めたホモジナイザー、あるいはポンプ等を挙げることができる。衝突力あるいは摩擦力を加えるための具体的な装置としては、ボールミルあるいはロッドミル等のミル、あるいは高圧粉砕ロール等が挙げられる。
中でも、特開平6−136034のような噛み合せ構造を有する回転分散機を用いて、P/V値≧3×10(kw/m)、周速(2πr・n)≧5(m/s)の条件で混合を行うことが好ましい。これにより、強力なせん断を与えることができる。ここでP(kw)とは分散機の動力であり、混合時の消費電力を測定することで容易に求めることができる。V(m)は混合部の容積であり、溶液にせん断力を与える部分の空間容積である。また、r(m)とは、ロータ最外歯の半径であり、n(s−1)とはロータの回転数である。
なお、P/V値は、好ましくは3×10(kw/m)以上であり、より好ましくは5×10(kw/m)以上であり、さらに好ましくは1×10(kw/m)以上である。P/V値の上限は、特に限定されないが、1×10(kw/m)以下が好ましい。P/V値が3×10(kw/m)以上であることにより、触媒残渣が極性液体に十分に移行し、下流工程での触媒残渣の除去効率が向上する傾向にある。
また、周速(2πr・n)は、好ましくは5(m/s)以上であり、より好ましくは10(m/s)以上であり、さらに好ましくは20(m/s)以上である。周速(2πr・n)の上限は、特に限定されないが、1000(m/s)以下が好ましい。周速が5(m/s)以上であることにより、触媒残渣が極性液体に十分に移行し、下流工程での触媒残渣の除去効率が向上する傾向にある。
さらに、P/V値が3×10(kw/m)以上で、周速が5(m/s)以上であることにより、触媒残渣が極性液体に十分に移行し、下流工程での触媒残渣の除去効率が一層向上する傾向にある。
特に、混合の効率性の観点から工程2−3において、噛み合せ構造を有する回転分散機を用いてP/V値≧3×10(kw/m)、周速(2πr・n)≧5(m/s)の条件で混合を行うことが好ましい。
〔工程3〕
本実施形態においては、工程3は、混合液から、界面活性剤(a)、無機酸(b)、及び極性液体(c)を除去する工程である。工程2で添加した界面活性剤(a)や無機酸(b)の効果により、重合体溶液に含まれる金属残渣は極性液体に溶解しており、除去されやすい状態になっている。したがって、界面活性剤(a)、無機酸(b)、及び極性液体(c)を除去することで金属残渣が重合体溶液から除去される。
界面活性剤(a)、無機酸(b)、及び極性液体(c)を除去する方法に関しては、当分野において一般的に用いられる方法であれば特に限定されないが、例えば、静置分離、遠心分離などの物理的な方法で容易に除去することが可能である。
中でも、共役ジエン系重合体溶液と界面活性剤と無機酸と極性液体とを混合した後、混合された重合体溶液に遠心加速度を付与することで効率的に金属残渣を除去することが可能である。遠心加速度を付与する前に可能ならば静置分離により極性液体を除去してもよい。遠心加速度を付与する方法としては特に限定されず、バッチ式でも連続式でもよい。この中でも、工業的に触媒残渣の除去を行うには連続式の方が好ましい。連続式の装置としては、特に限定されないが、デカンター型やディスク型などの遠心分離機がある。この中でも、金属残渣や界面活性剤(a)、無機酸(b)、及び極性液体(c)の除去効率の観点から、遠心分離機を用いて、混合液に対して、100G以上の相対加速度を付与することにより、混合液から、界面活性剤(a)、無機酸(b)、及び極性液体(c)を除去することが好ましい。
遠心分離機としては生産性や小型であることによる設置容易性の観点から、ディスク型遠心分離機であることが好ましく、ディスク型遠心分離機としては、例えば、アルファ・ラバル社製やウエストファリア社製の装置が挙げられる。このような装置を用いて100G以上の相対加速度を付与することで、触媒残渣の除去効率が向上する傾向にある。
なお、相対遠心加速度(RCF:Rerative Centrifugal Force)は、下記一般式で求めることができる。
RCF=1118×r×N×10−8(G)
r:回転半径(cm)
N:1分間当たりの回転数(rpm)
本実施形態においては、相対遠心加速度が高ければ高いほど触媒残渣の除去効率が向上する。そのため、相対遠心加速度は、好ましくは500G以上であり、より好ましくは3000G以上であり、さらに好ましくは4000G以上である。相対遠心加速度の上限は、特に限定されないが、50000G以下が好ましい。
(工程3後の重合体溶液)
以上のようにして工程1〜3の工程を経て得られた重合体溶液は、工程1の際の重合体溶液と比べ金属残渣が少ないものとなる。そのため、透明性に優れ、色相の良好な重合体溶液となりうる。
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、重合体の特性や物性の測定は、下記の方法により行った。
〔(1):ブロック共重合体の調製〕
〔重合例1〕
n−ブチルリチウムを開始剤として使用し、シクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶媒中で、従来公知の逐次リビングアニオン重合法によって、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(スチレン含量:20.0質量%、ブタジエン含量:80.0質量%、重量平均分子量:90,000)を調製した。得られた共役ジエン系重合体溶液中のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体の濃度は22質量%であった。
〔製造例1〕
重合例1によって得られた共役ジエン系重合体溶液を、ジ−p−トリスビス(1−シクロペンタジフェニル)チタニウムとn−ブチルリチウムを水添触媒として、温度85℃で水素添加を行い、共役ジエン系重合体溶液1を得た。共役ジエン系重合体溶液1中の重合体の濃度は22質量%であった。共役ジエン系重合体溶液1の溶媒を加熱除去してNMR(日本電子株式会社製、装置名:JNM−ECS400)で分析した結果、ポリブタジエンブロック内の95%以上の二重結合の水素化を確認した。得られた重合体中に含まれる金属の量は、誘導結合プラズマ(ICP、Inductivity coupled plasma、株式会社島津製作所製、装置名:ICPS−7510)を用いた元素分析により確認した。該測定結果を表1に示す。
〔製造例2〕
重合例1によって得られた共役ジエン系重合体溶液を、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロライドとトリエチルアルミニウムを水添触媒として、温度95℃で水素添加を行い、共役ジエン系重合体溶液2を得た。共役ジエン系重合体溶液2中の重合体の濃度は22質量%であった。共役ジエン系重合体溶液2の溶媒を加熱除去してNMR(日本電子株式会社製、装置名:JNM−ECS400)で分析した結果、ポリブタジエンブロック内の95%以上の二重結合の水素化を確認した。得られた重合体中に含まれる金属の量は、誘導結合プラズマ(ICP、Inductivity coupled plasma、株式会社島津製作所製、装置名:ICPS−7510)を用いた元素分析により確認した。該測定結果を表1に示す。
Figure 2015196714
〔(2):共重合体の構造の特定方法及び品質の評価方法〕
〔(2−1):ブロック共重合体のスチレン含有量の測定〕
上記製造例で得られたブロック共重合体のクロロホルム溶液を用いて、紫外分光光度計(株式会社島津製作所製 UV−2450)によりスチレン含有量を測定した。
〔(2−2):ブロック共重合体の分子量の測定〕
上記製造例で得られたブロック共重合体のテトラヒドロフラン(THF)溶液を用いて、GPC(東ソー株式会社製 HLC−8220)により、ブロック共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定した。
〔(2−3):水素化率の測定〕
上記製造例で得られたブロック共重合体における二重結合の水素化率をNMR(日本電子株式会社製、装置名:JNM−ECS400)によって測定した。
〔(2−4):金属残渣量の測定〕
上記製造例で得られたブロック共重合体中に含まれる金属残渣量、並びに、後述の実施例及び比較例で得られた重合体中に含まれる金属残渣量を、誘導結合プラズマ((ICP,Inductivuty Coupled Plasa,株式会社島津製作所製、装置名:ICPS−7510)を用いた元素分析によって測定した。
〔(2−4):色調の測定〕
後述の実施例及び比較例で得られたブロック共重合体を180℃でロール混練した後に、200℃の熱プレスにより2mmのシート状に成形した。この試験片を用いて比色計(日本電色株式会社製 NDJ−400−2)よりb*値を測定した。b値は−60〜60の値を持ち、−60は青色を示し、60は黄色を示す。得られた値に基づいて色調を下記の基準により評価した。評価は、良い順から○、△、×とする。
≦2 :○
2<b≦5 :△
5<b :×
〔(2−5):濁度の測定〕
上記2mmシートを用いて濁度計よりポリマーのヘイズ(日本電色株式会社製 1001DP)を測定した。ヘイズとは濁度を表す値であり、ランプにより照射され試料中を透過した全透過率Tと、試料中で拡散され散乱した光の透過率Dにより、濁度(H)=D/T×100として求められる。得られた値に基づいてヘイズ(H)を下記の基準により評価した。評価は、良い順から○、△、×とする。
H≦6.0:○
6.0<H≦12 :△
12<H :×
〔実施例1〕
製造例1で得られた共役ジエン系重合体溶液1に該共役ジエン系重合体溶液中の重合体の質量に対して、0.5質量%に当たるペグノール L4(東邦化学工業株式会社製)と、該共役ジエン系重合体溶液中の金属残渣の質量に対して3.5倍の硫酸と、該共役ジエン系重合体溶液の2.0容積倍の水とを順に添加し、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010、混合部の容積V:4×10−6)により60℃、動力P:1kwで6×10−4分間(3.6×10−2秒間)混合して混合液を得た。得られた混合液に、遠心分離機(アルファ・ラバル社製ディスク型遠心分離機、相対遠心加速度100G)で1秒間、遠心加速度を付与した。該遠心処理後の混合液を60℃に加温されたタンクに送り静置し、共役ジエン系重合体溶液相と水相とに分離した。分離状態は良好であった。
混合物から水相を除去して共役ジエン系重合体溶液を得た。該共役ジエン系重合体溶液中の重合体の1質量%に当たるIrganox1076(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を添加・混合した後に真空乾燥し、固体状の重合体を得た。得られた共役ジエン系重合体溶液及び固体状の重合体について上記各種測定を行った。測定結果を表3に示す。
〔実施例2〜5、比較例2〜3〕
用いる共役ジエン系重合体溶液や界面活性剤、酸の種類、添加量を変更した以外は実施例1と同様にして共役ジエン系重合体溶液を得た。この時に用いた共役ジエン系重合体溶液や界面活性剤、無機酸の種類を表2に示す。また、得られた共役ジエン系重合体溶液中の重合体の1質量%に当たるIrganox1076(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を添加・混合した後に真空乾燥し、固体状の重合体を得た。得られた共役ジエン系重合体溶液及び固体状の重合体について上記各種測定を行った。測定結果を表3に示す。
〔実施例6〕
製造例1で得られた共役ジエン系重合体溶液1に、該共役ジエン系重合体溶液の2.0容積倍の水を添加した後に、該共役ジエン系重合体溶液中の重合体の質量に対して0.5質量%に当たるペグノール L4(東邦化学工業株式会社製)と、該共役ジエン系重合体溶液1中の金属残渣の質量に対して3.5倍の硫酸と、を同時に添加し、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010、混合部の容積V:4×10−6)により60℃、動力P:1kwで6×10−4分間(3.6×10−2秒間)混合して混合液を得た。得られた混合液に、遠心分離機(アルファ・ラバル社製ディスク型遠心分離機、相対遠心加速度100G)で1秒間、遠心加速度を付与した。該遠心処理後の混合液を60℃に加温されたタンクに送り静置し、共役ジエン系重合体溶液相と水相とに分離した。分離状態は良好であった。
混合物から水相を除去して共役ジエン系重合体溶液を得た。該共役ジエン系重合体溶液中の重合体の1質量%に当たるIrganox1076(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を添加・混合した後に真空乾燥し、固体状の重合体を得た。得られた共役ジエン系重合体溶液及び固体状の重合体について上記各種測定を行った。測定結果を表3に示す。
〔比較例1〕
製造例1で得られた共役ジエン系重合体溶液1に該共役ジエン系重合体溶液1の2.0容積倍の水を添加し、噛み合わせ構造を有する回転分散機(日鋼工業製 キャビトロン1010、混合部の容積V:4×10−6)により60℃、動力P:1kwで6×10−4分間(3.6×10−2秒間)混合して混合液を得た。該混合液を60℃に加温されたタンクに送り静置し、共役ジエン系重合体溶液相と水相とに分離した。分離状態は良好であった。
混合物から水相を除去して共役ジエン系重合体溶液を得た。該共役ジエン系重合体溶液中の重合体の1質量%に当たるIrganox1076(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を添加・混合した後に真空乾燥し、固体状の重合体を得た。得られた共役ジエン系重合体溶液及び固体状の重合体について上記各種測定を行った。測定結果を表3に示す。
Figure 2015196714
※−:使用せず
※「ソルボンT−80」(東邦化学工業株式会社製)
※「ソフタミンLD」 (東邦化学工業株式会社製)
Figure 2015196714
本発明の共役ジエン系重合体の重合方法は、共役ジエン系重合体溶液中に残存する金属残渣を除去する方法として、産業上の利用可能性を有している。

Claims (12)

  1. リチウム、チタン、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属と、共役ジエン系重合体と、を含む共役ジエン系重合体溶液を調製する工程1と、
    前記共役ジエン系重合体溶液に、界面活性剤(a)、硫酸、塩酸、及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の無機酸(b)、及び、極性液体(c)を添加、混合し混合液を得る工程2と、
    前記混合液から、前記界面活性剤(a)、前記無機酸(b)、及び前記極性液体(c)を除去する工程3と、を有する、
    共役ジエン系重合体の製造方法。
  2. 前記工程2が、
    前記共役ジエン系重合体溶液と前記界面活性剤(a)とを混合し、第1の混合液を得る工程2−1と、
    前記第1の混合液と前記無機酸(b)とを混合し、第2の混合液を得る工程2−2と、
    前記第2の混合液と前記極性液体(c)とを混合し、前記混合液を得る工程2−3と、を順に有する、
    請求項1に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
  3. 前記工程1において、前記共役ジエン系重合体溶液が前記リチウム及び/又は前記チタンを含む、請求項1又は2に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
  4. 前記工程2−2の後、前記第2の混合液中において、前記金属が極性液体(c)に可溶な状態になっている、
    請求項2に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
  5. 前記工程1において、前記共役ジエン系重合体溶液が前記チタンを含み、
    前記工程2−2の後、前記第2の混合液中において、前記チタンが極性液体(c)に可溶な状態になっている、
    請求項2に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
  6. 前記界面活性剤(a)が、非イオン性界面活性剤を含む、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
  7. 前記無機酸(b)が、硫酸を含む、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
  8. 前記極性液体(c)が、水を含む、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
  9. 前記工程2−3において、噛み合わせ構造を有する回転分散機を用いて、下記条件で混合を行う、
    請求項2に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
    P/V値≧3×10
    (P:分散機の動力(kw)、V:混合部の容積(m))
    周速(2πr・n)≧5
    (r:ロータ最外歯の半径(m)、n:ロータの回転数(s−1
  10. 前記工程3において、前記混合液に遠心分離機を用いて100G以上の相対加速度を付与することにより、前記混合液から前記界面活性剤(a)、前記無機酸(b)、及び前記極性液体(c)を除去する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
  11. 前記遠心分離機が、ディスク型遠心分離機である、請求項10に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
  12. 前記工程2において、前記混合液中のアルコール濃度が2000ppm以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
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