JP2015196146A - リン含有水のリン回収材、そのリン回収材を用いたリン回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造原料が安価で非加熱下に製造でき、排水中のリンとの反応性が良く、かつリンと反応及び吸着して形成した凝集体の沈降性に優れているカルシウム及びケイ素含有リン回収材及びそれを用いた排水からのリン回収方法を提供する。
【解決手段】安価なカルシウム・ケイ素含有組成物を、非加熱下にカルシウム強酸塩以外のカルシウムを強酸で処理したカルシウムの酸塩を含む組成物で、Ca/Siモル比が0.2〜5.0であるリン回収材が、リン含有排水と反応させた後、リン吸着物を速やかに沈降させることができることを見出した。
【選択図】なし

Description

本発明は、リン含有水、特に下水処理場などのリン含有排水からリンを速やかに吸着、沈降させるリン回収材及びそのリン回収材を用いたリン含有水からのリン回収法に関するものである。
リンは、細胞に必須の構成元素であるとともに多量に使用される肥料の原料としても不可欠のものである。リン資源の主な産地はアメリカ、中国、モロッコなどの外国である。わが国では、リン原料の殆どを輸入に依存しているため、今後リン資源の枯渇が懸念されている。そこで下水などのリン含有排水に含まれるリンを回収または再利用する技術の開発が急がれている。
リン含有排水中にはリン酸イオンの形で存在し、リンが比較的高濃度に溶存しているので、リンを回収するために、さまざまな方法が試みられている。
下水などのリン含有排水からリンを回収することによって河川水、湖沼水や海水の冨栄養化による水質汚染の解決にもつながる。
リン含有排水からリンを回収する技術としては、これまで化学反応を利用する晶析法や他の物質と共存させる凝集法が考えられてきた。晶析法の代表例は、リン含有排水中にカルシウム塩を添加して、HAP(Hydroxyapatite)の結晶としてリン酸塩を析出させる方法であるが、種結晶を添加するなど煩雑な操作が必要となる。
そのほかに、ハイドロタルサイトなどによる吸着法やイオン交換樹脂による技術も開発されているが、いずれもリン回収材の価格及び設備に高価な費用が伴う。
近年シリカ(SiO)を利用するリン回収法が検討されるようになり、ケイ酸化合物から除リン材を製造する方法、セメントスラッジなどを利用したケイ酸カルシウム化合物を用いた脱リン法が知られている。
ケイ酸カルシウムから構成される脱リン材が開発され、特に、非晶質ケイ酸カルシウム・水和物を用いたリン回収材を、ケイ酸化合物と水酸化カルシウムCa(OH)から製造する方法が知られている。
非晶質ケイ酸カルシウムの製造法については、製造原料、工数や設備価格を減少させるために、製造原料に工夫が凝らされ、珪質頁岩(特許文献1)、易溶性ケイ酸と水酸化ナトリウム(NaOH)との反応物(特許文献2)及び水ガラスとCa(OH)を加える非晶質ケイ酸カルシウム単独またはそれとCa(OH)との混合物(水和物)からなるリン回収材の製造方法(特許文献3)のほか、Ca(OH)の混入量によるリンとの反応性(特許文献4)についても検討されている。
別に、安価なリン回収材原料としてセメントスラッジを利用するリン回収材による脱リン法が知られている(特許文献5及び6)が、短時間に除リンして、凝集・沈降する能力に欠けている。
いずれにしても、回収剤の製造コスト低減ととともに、より短時間に効率よくリンを回収し、全コストを低減させる工夫が望まれている。
特開2012−50975号公報 特開2012−192397号公報 特開2013−27865号公報 特許2013−244466号公報 特開2013−39551号公報 特開2010−260015号公報
大竹久夫、「リン資源の回収と有効利用」、サイエンス&テクノロジー株式会社、2009年11月27日、p34−36,p46 大竹久夫、「新しいグリーン産業としてのリン資源リサイクル」環境バイオテクノロジー学会誌 10(2)71−78(2010)
上述の各種脱リン材のうち非晶質ケイ酸カルシウム製造品は、製造原料にCa(OH)を使用するためにリン回収材に未反応の原料が存在し、そのためにpHが高くなって沈殿が生ずるので、リンのカルシウムをイオン化させる反応工程が必要となる。
特許文献1、2、3及び4に記載されているリン回収材は、非晶質ケイ酸カルシウム・水和物を主成分としたものを用いたもので、ケイ酸またはケイ酸ナトリウムを使用するために、製品に含まれる不純物は少ないが、製造原料が高価となる。このリン回収材は、固体にすると水和物が変化し、リン回収能力が低下するために、懸濁液として用いるのが一般的な方法と考えられている。Ca(OH)を原料に使用し、ケイ酸ナトリウムと反応させるために、リン回収材中のCa(OH)が多くなり、ナトリウムイオンの共存もあって、反応後のpHが高く、Ca(OH)溶液と同様にpH12.7以上となることが多い。非晶質ケイ酸カルシウムの利用でCa(OH)に比較して反応性は向上するが、水中の溶存CO量によって、CaCOが生成するためあらかじめ酸性にして脱CO操作を追加またはCOと反応するカルシウム添加量を少なくすることが指摘されている。
また特許文献5及び6に記載した方法は、廉価にリン回収材は製造できるが、固液反応のために時間がかかり、反応に適したpHを確保するために多量のリン回収材を必要とするために、少量のリン回収材で短時間にリンを回収することはできない。
本発明は、安価なカルシウム及びシリカ含有組成物を非加熱下で酸処理することによって、カルシウムとリンとの反応が速く、かつリンを反応・吸着して形成した凝集体の沈降性にも優れ、COの影響の少ないリン回収材及びその回収材を使用してリンを回収する方法を目的としている。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、セメントなど安価に入手しうるカルシウム化合物と無機ケイ素化合物を含むカルシウム・ケイ素含有組成物(a)に、組成物中のカルシウム強酸塩以外のカルシウムに対して特定当量の酸を反応させて得られるリン回収材が、排水中のリンと素早く反応してリン酸塩を吸着した組成物として回収されることを知見して本発明を完成した。
即ち本発明は、
(1)無機カルシウム化合物及び無機ケイ素化合物を含み、Ca/Siの原子比が0.2〜5.0であるカルシウム・ケイ素含有組成物(a)に、組成物中のカルシウム強酸塩以外のカルシウム化合物に対して0.5〜2.5当量の酸(b)を反応させることにより得られるリン含有水中のリン回収材、
(2)カルシウム・ケイ素含有組成物(a)が、セメント、トバモライト、ALC、CaSiO、モルタル、コンクリート、酸性白土、金属ケイ酸塩、珪砂から選ばれた少なくとも1種である(1)記載のリン回収材、
(3)カルシウム・ケイ素含有組成物(a)がセメントである(1)または(2)記載のリン回収材、
(4)酸(b)が無機酸である(1)〜(3)のいずれかに記載のリン回収材、
(5)無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸から選ばれた少なくとも1種である(4)記載のいずれかに記載のリン回収材、
(6)(a)と(b)との反応が、pH9.0〜12.5で行われた(1)〜(5)のいずれかに記載のリン回収材、
(7)リン回収材が水性懸濁液、スラリーまたはペーストである(1)〜(6)記載のいずれかに記載のリン回収材、
(8)リン回収材中に1.0〜5.0重量%のカルシウムを含有する(1)〜(7)のいずれかに記載のリン回収材、
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のリン回収材をリン含有排水に加え、該排水のpHを8.1〜9.0に調整して反応させ、生ずる固体を沈殿させる排水中のリン回収法、
(10)排水中のP(リン)に対して回収材中のCa(カルシウム)の原子比(Ca/P比)が1.0〜5.5となるよう回収材をリン含有排水に加える(9)に記載のリン回収法、
(11)(9)または(10)に記載の方法で生じた沈殿を分離して得られた固体を原料としたリン肥料、
である。
本発明のリン回収材の製造原料としては、前記した無機カルシウム化合物及び無機ケイ素化合物を含み、Ca/Siの原子比が0.2〜5.0であるカルシウム・ケイ素含有組成物(a)が用いられる。
無機カルシウム化合物としては、カルシウムの酸化物、水酸化物、カルシウムの酸塩が挙げられる。カルシウムの酸塩には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など強酸の塩と、炭酸、ケイ酸、ホウ酸などの中ないし弱酸の塩がある。
本発明に言う強酸とは、溶液の酸解離定数pKaが3以下のものをいう。カルシウムの強酸塩は、酸を加えた場合、酸に溶けるものや、溶けないものもあるが、溶けないものは結晶構造が変わらない。
あるカルシウム含有組成物中に含まれるカルシウム強酸塩の割合や濃度が不明な場合は、組成物を粉砕して硝酸などの酸に溶解させ、イオンクロマトグラフィーなどにより分析することで比較的容易に測定することができる。
強酸塩以外の無機カルシウム化合物としては、たとえば上述したような弱酸塩が挙げられる。これらの強酸塩以外のカルシウム化合物の多くは、酸を加えると非結晶の不溶化合物になって懸濁液を形成する。
無機ケイ素化合物には、シリカや金属のケイ酸塩があげられ、金属としては、ナトリウム,カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウム、鉄などが挙げられる。入手が容易なものはシリカ、アルカリ金属のケイ酸塩、特にケイ酸ナトリウムである。
ケイ素化合物は、酸と反応させることにより、ケイ酸イオン、メタケイ酸イオンなどのアニオンを生ずるが、カルシムイオンが存在するとケイ酸カルシウムを形成して、懸濁液を生ずる。この懸濁液に一定量の酸、好ましくは強酸を加えると、カルシウムの弱酸塩が分解されて、カルシウムイオン、カルシウムとケイ素の共存物質及びケイ酸の懸濁物質が形成される。この懸濁液は、リンと反応して速やかに沈降する。
カルシウム・ケイ素含有組成物(a)にはカルシウム強酸塩が含まれていても差し支えはないが、なるべく含まないものが好ましい。即ち、カルシウム強酸塩以外のカルシウム化合物の占める割合が多いものが望ましく、カルシウムのモル換算で、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。
また組成物(a)中Ca/Siの原子数の比は、0.2〜5.0、好ましくは0.5〜3.5である。Ca/Si比がこの範囲未満になるとリン回収能が低下し、この範囲を超えると回収物中のリン濃度が低くなり、回収物の処理に困難をきたす。
このカルシウム・ケイ素含有組成物(a)の例としては、たとえばセメント、トバモライト、ALC、モルタル、コンクリート、ケイ酸カルシウム、酸性白土などが挙げられる。これらの中でも、セメントは、入手、取扱いの容易性、リン除去性能、価格などの点で最も好ましい原料である。
リン回収材の製造原料に用いるカルシウム・ケイ素含有組成物(a)の具体例として代表的なものの例とそのCa/Siモル比を表1に示す。
これらのカルシウム・ケイ素含有組成物(a)を、必要により粉砕して、約2〜10重量倍の水と混合し、強酸塩以外のカルシウムに対して0.5〜2.5当量、好ましくは1.2〜2.0当量の酸を加えて、反応させる。反応時のpHは9.0〜12.5、好ましくは10・0〜12.0、さらに好ましくは11.0〜11.7である。この反応により懸濁液が得られる。
カルシウム・ケイ素含有組成物(a)に水を加えると固化することがあるので、添加後よく撹拌して平衡化させるのが望ましい。酸はどのような酸でもよいが、塩酸が好ましい。
反応時間は5〜500分であるが、好ましくは10〜300分、より好ましくは15〜60分である。混合時間が短いと、生成反応が不十分であり、多すぎるのは不経済である。
カルシウム・ケイ素含有組成物(a)を水と混合した際、通常は pH12.6以上のアルカリ性となるので酸を加えてpHを9.0〜12.5に調整する。もし、pHが9.0よりも低くなった場合は、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンを含むアルカリ液、または弱酸のアルカリ塩を加えてpHを9.0〜12.5に調整すればよい。pHが低いと沈殿物が出にくくなり、高すぎるとCa(OH)の沈殿が多くなりすぎてリン回収物中のリン含有率が低下する。
得られたリン回収材は、カルシウムの酸塩を主成分とする非晶質または可溶性の結晶を含む懸濁液またはペーストであり、そのままリン回収材として使用することができる。リン回収材中のカルシウム含量は、1.0〜5.0重量%、好ましくは1.5〜3.5重量%である。
本発明のリン回収材は、懸濁液、スラリー、ペースト、ケーキ、粉末のいずれの形態であってもよい。このリン回収材は、使用時には懸濁液として用いるのが便利であるが、貯蔵、運搬には濃縮して重量、体積を減じた状態にすることができる。
本発明のリン回収材は、リンとの親和性が高く、短時間に選択的にリンを吸着することができ、かつリンを吸着して形成した凝集体の沈降性がよいので、リン発生源に集積されているリンを低コストで、かつ利用し易い状態で回収することができる。
本発明のリン回収材を用いてリン含有水、特にリン含有排水のリンを回収するには、排水にリン回収材を加えてpHを8.1〜9.0、好ましくは8.2〜8.9、さらに好ましくは8.4〜8.9に調整することにより、リン回収率を最高度に発揮させることができる。混合液のpHの調整は、酸またはアルカリを加えることにより、行うことができる。これにより、生成したリン酸カルシウムが液側に再溶解するのを防止するとともに、排水中のCOをHCO に変え、カルシウムを可溶性のCa(HCOとし、炭酸カルシウムの沈殿を防ぎ、リン回収材がより効率よくリンを吸着することができる。回収材を加えた後もpHが高いとリン回収時にリンの沈殿とともに炭酸カルシウムの沈殿が進み、沈殿物のリン含量の低下を来すので、リン含量の高い回収物を得るには、反応時の溶液pHを上記のように調整するのが望ましい。
この排水中のP(リン)と回収材中のCa(カルシウム)を原子比からいえば、Ca/P比が1.0〜5.5、好ましくは2.0〜4.5となるよう回収材をリン含有排水に加えるのがよい。
上記リン回収材を用いて、排水中のリンを反応・吸着させた凝集体を固液分離し、脱水ケーキ状のリン回収物を採取することにより、取扱いの容易なリン回収物を得ることができる。
本発明におけるリン回収率は下記の式により算出される。
R=(P0−P)/P0×100
式中、Rはリン回収率(%)を表し、P0はリン回収材を添加する前のリン含有水中のリン濃度を表し、Pはリン回収材を添加してリンを反応・吸着した後にリン含有水を0.45μmのフィルター(DISMIC−13HP:ADVANTEC社)でろ過して得たろ液中のリン濃度を表す。
リン沈降率は、まずリン回収材をリン含有排水に加えて30分撹拌して反応・吸着を行った後、試料を容器内で静置し、30分後に容器の溶液中間層部位から採取した非ろ過試料(NF)及びろ過試料(CF)のリン濃度から回収率を求め、下式により算出した。
SR(%)=NF/CF×100
式中、SRは沈降率(%)を表し、NFは静置30分後に容器の中間部分から採取した非ろ過試料のリン回収率、CFはろ過試料の回収率を表す。
なお、30分静置後の沈降率は、効率的にリン回収物を得るためには、80%以上が好ましく、85%以上であるものがより好ましい。
本発明のリン回収材を排水中と混合してよく撹拌し、30分間静止した後、沈殿物をろ過し、乾燥すればリン肥料とすることができる。
リン回収物は、く溶性りん酸(2%クエン酸に溶解し、肥料として土中に施せば徐々に植物に吸収される。)の濃度が高く、高い肥料効果が期待できる肥料原料となる。
本発明のリン回収方法は、移動式リン回収装置を利用して下水場での排水中のリン回収に利用することができる。
本発明によれば、リンを含有する排水や下水処理場などに集積されているリンを低コストで、短時間にリン回収材と反応させ沈降させることができる。また、リン含有回収は肥料として有効利用することが可能である。
さらに本発明のリン回収材は、排水中のリンをカルシウム及びシリカ含有組成物に無機酸を加えてカルシウムの酸塩を製造し、その不溶分による種結晶効果、懸濁液中の易溶性で易反応性のカルシウムイオンの供給に基づく特質を備えたリン回収材であり、ケイ酸カルシウム及び共存化合物によるフロック形成効果も兼ね備えたものである。
リン回収材A−1の懸濁粒子固体のXRDである。 リン回収材D−9の懸濁粒子固体のXRDである。 1m簡易リン回収装置の模式図である。
以下に実施例、実験例などを掲げて本発明を具体的に説明する。
ポルトランドセメントを原料とするリン回収材の製法
強酸塩以外のカルシウム分を0.11モル含有するポルトランドセメントを量りとり、非加熱下に、水130mLと0.15モルの塩酸を加えて60分間激しく撹拌した。さらに3時間撹拌した後水を加えて200gとしpH10.4の懸濁液を得た。
懸濁液を固液分離して得た固体のリン回収材についてXRD(PANalytical社製X線分析装置X'PertMPD PRO−MPD)を測定したところ、非晶質ケイ酸カルシウム水和物のハローピークを示した。CaO及びCa(OH)と推定されるピークをわずかに検出したが、大部分は、非晶質に変化していることが確認された(図1参照)。
Ca(OH)及びメタケイ酸ナトリウム・5水塩を原料とするリン回収材の製法
非加熱下にメタケイ酸ナトリウム0.09モルを量りとり、水120mL を加えて溶解させた。別にCa(OH)0.09モルを量りとり水35mLを加え、さらに塩酸0.17モルを加えて溶解させた。両液を合し、3時間撹拌した後200gの水を加えてpH11.7の懸濁液を得た。
懸濁液を固液分離して得た固体についてXRDを測定したところハローピークを認める無晶形でリンと易反応性のカルシウム物質であった(図2参照)。
セメント、酸性白土、塩化カルシウムを原料とするリン回収材の製法
0.08モルの塩化カルシウム、0.04モルのカルシウムを含むカルシウム・ケイ素含有組成物に、水80mLを加えてよく撹拌し、塩酸0.08モル及び水20mLを加えて1時間撹拌した。その後NaOHを加えてpHを12.0とした後、さらに水を加えてpH11.7の懸濁液200gを得た。
前記実施例1〜3のリン回収材の製法に準じて、種々の原料によりリン回収材を製造した。それらの製造の大要を下表に纏めた。
リン回収材を用いるリン含有排水からのリンの回収性
(1)実験に用いたリン含有排水試料
リン含有排水試料として、嫌気性発酵脱離液のリン濃度84ppmの試料(実試料84ppmという。)及び55ppm(実試料55ppmという。)を用いた。
これらの実試料の分析結果を参考にして、水1000mLにKHPO(2.5mM)、NHCl(13.5mM)、(NHCO(18.7mM)、NaHCO(4.2mM)を混合して、リン濃度78ppm、アンモニア(NH)約730ppm、CO約1000ppmとなる溶液を調製した。その後、塩酸でpH7.5〜8.0に調整した溶液(疑似試料78ppmという)をリン回収試験に供した。
試料中のリン濃度をモリブデンバナジン酸アンモニウム法(肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所)4.2.3)に従って測定した。
(2)リン反応・吸着試験
実験室におけるリン反応・吸着試験は、試料100mLまたは1000mLに、リン回収材を加えて、200〜400回転/分で30分撹拌した。反応時間ごとに試料懸濁液の2mLをとり孔径0.45μmのDISMIC−13HP(ADVANTEC社)のフィルターを用いてろ過した溶液0.6mLに水7.4mL及びモリブデンバナジン酸アンモニウム発色液2mLを加えて15分以上放置した後、420nmにおける吸光度を測定(紫外可視分光光度計 島津UV−1700)し、リン標準溶液と比較してリン濃度を算出し、初期のリン濃度との比較から回収率を求めた。
(3)沈降性試験
リン回収材をリン含有排水に加え30分撹拌して反応・吸着を行った後、得られた懸濁液をさらに30分間静置して凝集体を沈殿させた。静置30分後に、容器の中間層部位から0.6mLを直接(非ろ過試料)及び反応・吸着時と同様にろ過して得た0.6mLをとり、非ろ過試料の回収率をろ過時の回収率で除することによって沈降率を求めた。
(4)リン回収材製造時の添加酸当量
セメント含有のカルシウムに実施例1に記載した製造法に準拠して、カルシウムと添加塩酸のモルヒ比を変えて製造したリン回収材を用いて、リン濃度に対してカルシウムモル比(Ca/P)を2.5、添加後のpHを8.7として、実試料84ppm及び55ppm並びに疑似試料78ppmにつき、適性酸量を調べた。表3(実試料84ppm)、表4(実試料55ppm)及び表5(疑似試料78ppm)に示すように、カルシウムに対する塩酸当量は凡そ1.3以上で80%以上のリン回収率が得られた。実試料と疑似試料では、実試料の方が高回収率を示し、リン含有液中のリン濃度が低い場合は、回収率がやや低下した。酸当量が多くなると回収材に加えるアルカリ量が増加するので、経済性を考慮すると酸添加当量数は、上方は2.5以下が特に望ましい。
(5)リンに対するカルシウム添加量(Ca/P)
セメントを原料にして2.0当量の塩酸を加えて製造したリン回収材を試料中のリンに対してカルシウム分が1〜5モル付近となるまで加え、リン回収材添加後のpHを8.7としてリン回収率を求め表6、表7及び表8に示した。リンの回収率はリン回収材の使用量と共に向上する。
(6)リン回収材添加時の試料のpH
リン回収材を試料に添加して反応・吸着させたときの溶液のpHを調べた。即ち、実試料84ppm、実試料55ppm、疑似試料78ppmに酸当量2.0、Ca/Pを2.5としてリン回収材添加後の試料pHを7.0付近から10.5付近まで変化させて回収率を求めた。
表9、10及び11に示す通り、pHの上昇とともに回収率は向上したが、高pHにすると、溶液中のカルシウムが共存するCOと反応して溶解性の低いCaCOを形成するので、COがHCO (pKa10.3)として大部分が存在するpH9.3以下が望ましく、HCO 量が増加するpH9.0以下がより好ましい。
(7)リン含有液とカルシウムとの反応速度
リン含有水の試料として実試料84ppm、実試料55ppm及び疑似試料78ppmを用い、リン回収材としてA−1及びD−9を用い、Ca/P2.5で反応性を観察した。撹拌30分後静置30分での回収率は表12に示すように、反応は速やかに進行し、15分でほぼ完了しており、いずれの回収材においても短時間でリン回収が可能であることが確認できた。
(8)反応・吸着物の沈降性(沈降速度)
リン含有水の試料として実試料84ppm、実試料55ppm及び疑似試料78ppmを用い、リン回収材A−1及びD−9につき、沈降性を観察した。リン吸着試験の操作に従って反応・吸着後の静置時の沈降性は表13に示すとおりである。いずれも試料を1000mLとしたときの事例であるが、15分ではほぼ沈降が終了し、以後経時的に沈降する傾向にあったが30分で、いずれも80%以上の沈降率を示し、沈降性の速いことが確認された。
他の回収材についても同様に疑似試料78ppmを用い、Ca/P3.0での結果を以下に示す。反応・吸着30分間後は、いずれも高回収率で、さらに30分静置時の沈降性も良いことが確認できた。
リン回収物のリン酸肥料としての肥料化
リン回収物のリン酸肥料としての評価を確認するために、リン回収材A−1及びD−9を、実試料84ppm、実試料55ppm及び疑似試料78ppmの溶液1000mLに、リン濃度に対して2倍モルのカルシウムを加えて30分間反応・吸着リン回収を行った後、30分間静置した。上澄み液900mLを捨てた後、5Aろ紙(ADVANTEC社)でろ過した回収物を105℃で恒量まで乾燥した。その後、肥料試験法に準じてく溶性りん酸含量を測定した。いずれもく溶性りん酸含量規格(15.0%以上)に適合した(表15)。
移動車搭載の装置による下水場現場での実験
下水場の嫌気性脱離液からのリン回収には、試験に必要な用具が全て2トントラックの荷台に積載している可動型リン回収装置(図3)を用いた。
1mの下水場の嫌気性発酵脱離液のリン含量を測定した後、リン回収材A−1及びD−9をリン濃度に対して2.2相当量を加えた。A−1では、NaOHを加えてpHを8.7とした。それぞれの液を毎分180回転で30分間撹拌した。静置30分後、上澄み液900Lを20分で排水し、残りの100Lを、ろ布でろ過した。回収物を105℃で恒量になるまで乾燥して回収物を得た。肥料試験法に従ってく溶性りん酸を測定した結果から、リン回収材添加後30分反応、30分静置の操作で副産リン酸肥料の規格を満足する回収物を得られることがわかった。
測定結果を表16に示すが、反応から1時間30分以内の短時間でリンを効率よく回収できた。
本発明のリン回収材は、カルシウム・ケイ素含有組成物(a)を原料として用い、酸を加えることにより、カルシウム強酸塩以外のカルシウムを可溶性のカルシウムに変えることにより、排水中のリンとの反応性を高めたものである。即ち、容易かつ安価に得られる原料からリン回収材を製造し、そのリン回収材中の易溶性のカルシウムと排水中のリンとを速やかに反応させ、リンを固体として凝集させるのである。凝集体は沈降性が高いために短時間での処理が可能となる。
本発明によるリン回収材は、たとえば2トン・トラックに備え付けた1mタンクによる移動型の回収装置により、現場で実施が可能である。また、本発明のリン回収材は、リン含有排水に添加して撹拌するだけで、リンとの反応、凝集体の沈降の全操作が短時間で終了するので、上澄み液を直接排水することが可能である。また、残留沈殿物を含む懸濁液はろ過するのみで固液分離することができる。
リン回収材を添加した後、排水液のpH調整が可能で、試料中の炭酸ガスの影響も受けにくい。また、リン含有回収物はリン酸肥料として利用できる。
a:撹拌翼 b:リン含有水注入口 c:上澄み液排出口
d:上澄み液排出口 d:凝集体取り出し口

Claims (11)

  1. 無機カルシウム化合物及び無機ケイ素化合物を含み、Ca/Siの原子比が0.2〜5.0であるカルシウム・ケイ素含有組成物(a)に、組成物中のカルシウム強酸塩以外のカルシウム化合物に対して0.5〜2.5当量の酸(b)を反応させることにより得られるリン含有水中のリン回収材。
  2. カルシウム・ケイ素含有組成物(a)が、セメント、トバモライト、ALC、CaSiO、モルタル、コンクリート、酸性白土、金属ケイ酸塩、珪砂から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のリン回収材。
  3. カルシウム・ケイ素含有組成物(a)がセメントである請求項1または2記載のリン回収材。
  4. 酸(b)が無機酸である請求項1〜3のいずれかに記載のリン回収材。
  5. 無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸から選ばれた少なくとも1種である請求項4記載のいずれかに記載のリン回収材。
  6. (a)と(b)との反応が、pH9.0〜12.5で行われた請求項1〜5のいずれかに記載のリン回収材。
  7. リン回収材が水性懸濁液、スラリーまたはペーストである請求項1〜6記載のいずれかに記載のリン回収材。
  8. リン回収材中に1.0〜5.0重量%のカルシウムを含有する請求項1〜7のいずれかに記載のリン回収材。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のリン回収材をリン含有排水に加え、該排水のpHを8.1〜9.0に調整して反応させ、生ずる固体を沈殿させる排水中のリン回収法。
  10. 排水中のP(リン)に対して回収材中のCa(カルシウム)の原子比(Ca/P比)が1.0〜5.5となるよう回収材をリン含有排水に加える請求項9に記載のリン回収法。
  11. 請求項9または10に記載の方法で生じた沈殿を分離して得られた固体を原料としたリン肥料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017154047A (ja) * 2016-02-29 2017-09-07 小野田化学工業株式会社 リン回収材およびその製造方法
CN114229945A (zh) * 2021-12-20 2022-03-25 河北工业大学 利用固体废弃物制备的含磷废水净化功能材料及其应用

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