JP2015193913A - 被覆工具の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、密着性に優れるDLC皮膜を被覆する被覆工具の製造方法に関するものである。
【解決手段】フィルタードアークイオンプレーティング法で基材の表面にダイヤモンドライクカーボン皮膜を被覆する被覆工具の製造方法であって、
算術平均粗さRaが0.06μm以下、最大高さ粗さRzが1.0μm以下の表面を有する基材を炉内に設置し、前記炉内に水素ガスを含む混合ガスを導入して、前記基材に−2500V以上−1500V以下のバイアス電圧を印加し、ガスボンバード処理を60分以上行う工程と、
グラファイトターゲットを用いてダイヤモンドライクカーボン皮膜を前記基材の表面に被覆する工程と、
を含む被覆工具の製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えばプレス加工用又は、鍛造用の金型や、鋸刃等の切断工具、そしてドリル等の切削工具などに用いられる被覆工具であって、ダイヤモンドライクカーボン皮膜(以下、「DLC皮膜」ともいう。)が被覆された被覆工具の製造方法に関するものである。
アルミニウム、銅および樹脂等の被加工材を金型で成形加工する場合、被加工材の一部が金型の表面に付着することでカジリ、キズ等の製品異常が発生する場合がある。この問題を解決するために、金型の表面にDLC皮膜を被覆した被覆金型が実用されている。水素を実質的に含有しないDLC皮膜(Tetrahedral amorphous carbon皮膜:ta−C皮膜)は、高硬度で耐摩耗性に優れるため、被覆金型に広く適用されている。
しかしながら、水素を実質的に含有しない高硬度なDLC皮膜は、グラファイトターゲットを用いたアークイオンプレーティング法で被覆されるため、ドロップレットといわれる、大きさが数マイクロメートルの粒子(グラファイト球)がDLC皮膜に不可避的に混入し、DLC皮膜の表面粗さが悪化する。
このような課題に対して、特許文献1は、ドロップレットを捕集する機構を備えたフィルタードアークイオンプレーティング法で被覆した、水素を実質的に含有しない平滑で高硬度なDLC皮膜を開示している。
特開2008−297171号公報
特許文献1のような、高硬度で平滑な表面状態のDLC皮膜を適用することで、工具寿命の改善が期待される。しかしながら、高硬度なDLC皮膜は、基材との密着性が乏しい傾向にある。
本発明者の検討によると、特に、炭化物が多いSKD11等の冷間工具鋼等を基材に用いた場合には、高硬度なDLC皮膜の剥離が発生し易い傾向にあることを確認した。そして、基材とDLC皮膜の間に窒化物等の中間皮膜を設けたり、基材の表面をメタルボンバード処理するような従来の密着性の改善手法では、十分な密着性が得られない場合があることを確認した。
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、密着性に優れるDLC皮膜が被覆された被覆工具の製造方法に関するものである。
本発明者は、DLC皮膜の密着性を改善できる有効な被覆方法があることを見出し、本発明に到達した。前記課題を達成するための具体的手段は、以下の通りである。
すなわち、本発明は、フィルタードアークイオンプレーティング法で基材の表面にダイヤモンドライクカーボン皮膜を被覆する被覆工具の製造方法であって、算術平均粗さRaが0.06μm以下、最大高さ粗さRzが1.0μm以下の表面を有する基材を炉内に設置し、前記炉内に水素ガスを含む混合ガスを導入して、前記基材に−2500V以上−1500V以下のバイアス電圧を印加し、ガスボンバード処理を60分以上行う工程と、グラファイトターゲットを用いてダイヤモンドライクカーボン皮膜を前記基材の表面に被覆する工程とを含む被覆工具の製造方法である。
前記混合ガスは、水素ガスを4質量%以上含有する混合ガスであることが好ましい。更には、前記混合ガスは、水素ガスを7質量%以上含有する混合ガスであることが好ましい。
本発明によれば、密着性に優れるDLC皮膜が被覆された被覆工具を得ることができる。
本発明例に係るDLC皮膜の光学顕微鏡による表面観察写真の一例である。 比較例に係るDLC皮膜の光学顕微鏡による表面観察写真の一例である。 本発明例に係るDLC皮膜のロックウェル試験後の光学顕微鏡による表面観察写真の一例である。 比較例に係るDLC皮膜のロックウェル試験後の光学顕微鏡による表面観察写真の一例である。 実施例で用いたT字型フィルタードアーク成膜装置の概略図である。
本発明の被覆工具の製造方法について説明する。本発明では、DLC皮膜を被覆する前の基材について、平滑な表面状態の基材を準備することが重要である。つまり、本発明では、一般的な表面粗さである算術平均粗さRa(JIS−B−0601−2001に準拠)、最大高さ粗さRz(JIS−B−0601−2001に準拠)を測定した場合、Raが0.06μm以下、Rzが1.0μm以下の表面を有する基材を用いる。被覆前の基材の表面において、Raが0.06μm以下、Rzが1.0μm以下であることで、凹凸の少ない平滑な表面状態となり、硬度が高いDLC皮膜であっても基材との密着性が向上する。より好ましくはRaが0.05μm以下、Rzが0.8μm以下である。更には、Raが0.04μm以下、Rzが0.6μm以下とすることが好ましい。
このような表面粗さを達成するには、例えば、1μm以下のダイヤモンドペーストを用いて基材の表面をポリッシング研磨することが好ましい。
本発明で適用する基材は、上述した表面粗さを満たせば特に制限されるものではなく、用途や目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、超硬合金、冷間工具鋼、高速度工具鋼、プラスチック金型用鋼、熱間工具鋼等を適用することができる。基材の中でも、密着性の向上効果が高い点で、母材の炭化物が多くて皮膜剥離が発生し易い、炭素含有量が1質量%以上の高炭素鋼や、超硬合金が好ましい。高炭素鋼の例としては、例えば、JIS−SKD11等が挙げられる。
本発明では、平滑な表面状態の基材を用いることに加えて、DLC皮膜を被覆する前のガスボンバード処理が重要である。DLC皮膜を被覆する前の基材において、従来のアルゴンガスによるガスボンバード処理を行った場合、皮膜と基材との界面に酸素が多く存在してしまい密着性が劣ってしまう。この界面に存在する酸素は、専ら基材表面に最初から形成されている酸化膜に起因するものであり、アルゴンガスによるガスボンバード処理では除去しきれていない残存元素である。これに対して、水素ガスを含んだ混合ガスを用いて基材の表面をガスボンバード処理することで、基材の表面にある酸化膜が水素イオンと反応して還元され、ガスボンバード処理により酸化膜および表面の汚れを除去することが可能となる。
高硬度なDLC皮膜の密着性を高めるには、水素ガスを含んだ混合ガスを用いてガスボンバード処理をする際の、基材に印加するバイアス電圧とガスボンバード処理時間の制御が重要である。本発明では、基材に−2500V以上−1500V以下のバイアス電圧を印加して、水素ガスを含んだ混合ガスを用いてガスボンバード処理する。基材に印加するバイアス電圧が−1500Vよりも大きくなる(−1500Vよりもプラス側である)と、ガスイオンの衝突エネルギーが低いため、酸化膜および表面の汚れを除去する効果が小さくなり、基材と高硬度なDLC皮膜との密着性が低下する傾向にある。また、基材に印加するバイアス電圧が−2500Vよりも小さくなる(−2500Vよりもマイナス側である)と、プラズマが不安定となり易く異常放電を起こしてしまうことがある。異常放電が発生すると、工具表面に異常放電(アーキング)痕が形成されるため、工具表面に凹凸が発生する場合がある。
更には、ガスボンバード処理では、基材に印加するバイアス電圧が−2300V以上−1700V以下であることが好ましい。更には、ガスボンバード処理では、基材に印加するバイアス電圧が−2200V以上−1700V以下であることが好ましい。
基材に印加するバイアス電圧を適切に制御しても、ガスボンバード処理の時間が短い場合は酸化膜を除去するエッチング効果が十分ではないため、基材と高硬度なDLC皮膜の密着性が低下する。基材表面の酸化物を均一に除去するためには、水素ガスを含んだ混合ガスによるガスボンバード処理を60分以上行うことが必要である。更には、混合ガスによるガスボンバード処理を70分以上行うことが好ましく、更には80分以上行うことが好ましい。
ガスボンバード処理の時間の上限は基材に合わせて適宜調整することが好ましい。但し、混合ガスによるガスボンバード処理の時間が180分以上になると、ガスボンバード処理による酸化膜および表面の汚れを除去する効果が一定となる傾向がある。そのため、混合ガスによるガスボンバード処理を180分以下とすることが好ましい。
ガスボンバード処理に用いる混合ガスは、例えば、アルゴン等の希ガスと水素ガスの混合ガスを用いればよい。混合ガスは、水素ガスを4質量%以上含有する混合ガスであることが好ましい。水素ガスが4質量%よりも少ない混合ガスであると、ガスボンバード処理で基材の表面にある酸化膜を十分に除去できない場合がある。更には、水素ガスが5質量%以上の混合ガスを用いることが好ましく、更には、水素ガスが7質量%以上の混合ガスを用いることが好ましい。更には、水素ガスが10質量%以上の混合ガスを用いることが好まし。但し、水素ガスが30質量%以上の混合ガスでは、ガスボンバード処理による酸化膜および表面の汚れを除去する効果が一定となる傾向である。そのため、水素ガスが30質量%以下の混合ガスを用いることが好ましい。更には、水素ガスが25質量%以下の混合ガスを用いることが好ましい。
上述したガスボンバード処理の後には、グラファイトターゲットを用いてDLC皮膜を被覆する。上述した条件でガスボンバード処理することで、基材の表面にある酸化膜が十分に除去されるため、基材の直上に高硬度なDLC皮膜を被覆しても優れた密着性を確保することができる。
グラファイトターゲットを用いてDLC皮膜を被覆することで、皮膜に含まれる炭素原子以外の不純物が少なくなり、ダイヤモンド構造の炭素原子が増加して、より高硬度なDLC皮膜を達成できる。DLC皮膜の被覆時は、基材温度を200℃以下とすることが好ましい。200℃よりも高温になると、DLC皮膜のグラファイト化が進むため、硬度が低下する傾向にある。
また、DLC皮膜の被覆時には、基材に印加するバイアス電圧を−300V以上−50V以下とすることが好ましい。基材に印加するバイアス電圧が−50Vよりも大きくなる(−50Vよりもプラス側である)と、カーボンイオンの衝突エネルギーが小さくなり、DLC皮膜にボイドなどの欠陥が発生しやすくなる。また、基材に印加するバイアス電圧が−300Vよりも小さくなる(−300Vよりもマイナス側である)と、成膜中に異常放電を起こし易くなる。DLC皮膜の被覆時は、基材に印加するバイアス電圧は、−200V以上−100V以下とすることがより好ましい。
より高硬度なDLC皮膜を得るために、DLC皮膜の被覆時には、炉内圧力を5×10−3Pa以下とすることが好ましい。
本発明で被覆されたダイヤモンドライクカーボン皮膜は、皮膜表面から測定したナノインデンテーション硬度が50GPa以上100GPa以下であることが好ましい。ナノインデンテーション硬度が50GPaを下回る低硬度であると、耐摩耗性が低下するため、工具寿命が十分でない傾向にある。一方、皮膜の硬さが100GPaよりも高硬度になると、残留応力が高くなり過ぎて、基材との密着性が低下する傾向にある。
本発明で被覆されたDLC皮膜は、ナノインデンテーション硬度としては、耐摩耗性が良好で基材との密着により優れたものとなる点で、55GPa以上がより好ましく、60GPa以上がさらに好ましい。また、DLC皮膜のナノインデンテーション硬度は、95GPa以下がより好ましく、90GPa以下がさらに好ましい。
ナノインデンテーション硬度とは、探針を試料(DLC皮膜)に押し込んで塑性変形させた際の塑性硬さのことであり、押し込み荷重と押し込み深さ(変位)とから荷重−変位曲線を求めて、硬度を算出する。具体的には、株式会社エリオニクス製のナノインデンテーション装置を用い、押込み荷重9.8mN、最大荷重保持時間1秒、荷重負荷後の除去速度0.49mN/秒の測定条件で皮膜表面の硬度を10点測定し、値の大きい2点と値の小さい2点を除いた6点の平均値から求められる。
DLC皮膜の表面にドロップレットや不純物等が存在すると、これらを起点として被加工材が溶着してカジリ等が発生する。本発明で被覆されたDLC皮膜は、一般的な表面粗さである算術平均粗さRa(JIS−B−0601−2001に準拠)、最大高さ粗さRz(JIS−B−0601−2001に準拠)を測定した場合、Raが0.05μm以下、Rzが0.5μm以下の平滑性を有することで、被加工材の溶着の起点となる表面欠陥が低減するので好ましい。より好ましくは、Raは0.03μm以下である。また、より好ましくは、Rzが0.3μm以下である。
本発明では、上記した平滑なDLC皮膜を達成するために、フィルタードアークイオンプレーティング法で基材の表面にダイヤモンドライクカーボン皮膜を被覆する。また、フィルタードアークイオンプレーティング法を用いることで、平滑なDLC皮膜が得られるだけでなく、皮膜内部にドロップレットが含有されないため緻密な皮膜となり、高硬度で靱性に優れたDLC皮膜を達成することができる。特に、T字型フィルタードアークイオンプレーティング装置を用いれば、より平滑な表面状態で皮膜内部に含まれるドロップレットが極めて少ないDLC皮膜を被覆することができるので、被覆工具の耐久性がより向上して好ましい。
DLC皮膜の膜厚が薄くなり過ぎれば工具としての耐久性が不足する場合がある。また、膜厚が厚くなり過ぎれば皮膜表面の面粗度が悪化する場合がある。また膜厚が厚くなり過ぎれば、DLC皮膜が部分剥離する可能性がある。そのため、DLC皮膜の膜厚は、0.1μm以上1.5μm以下とすることが好ましい。更には、DLC皮膜の膜厚は、0.1μm以上1.2μm以下とすることがより好ましい。被覆工具に十分な耐摩耗性を付与するには、DLC皮膜の膜厚は0.2μm以上であることが好ましい。平滑な表面粗さと優れた耐摩耗性を同時に達成するには、DLC皮膜の膜厚は0.5μm以上1.2μm以下にすることがより好ましい。
フィルタードアークイオンプレーティング法で被覆されたDLC皮膜であっても、膜厚が厚くなると表面粗さが低下する場合がある。その場合は、被覆後のDLC皮膜の表面を研摩処理して平滑にすることが好ましい。
<成膜装置>
成膜装置は、T字型フィルタードアークイオンプレーティング装置を用いた。装置の概略図を図5に示す。成膜チャンバー(6)には、グラファイトターゲットを設置したカーボン陰極(カソード)(1)を装着するアーク放電式蒸発源と、基材を搭載するための基材ホルダー(7)を有する。基材ホルダーの下には回転機構(8)があり、基材は基材ホルダーを介して、自転かつ公転する。
グラファイトターゲット表面上にアーク放電を発生させると、電荷を有するカーボンのみが磁気コイル(4)に曲げられて成膜チャンバーに到達して基材に皮膜を被覆する。電荷を有しないドロップレットは磁気コイルによって曲げられずにダクト(5)内に捕集される。符号(2)は、カーボン成膜ビームを示し、符号(3)は、球状グラファイト(ドロップレット)中性粒子を示す。
<基材>
被覆されたDLC皮膜の剥離状態を評価するための基材には、寸法がφ20×5mmの60HRCに調質したJIS−SKD11相当鋼材の基材を用いた。
また、被覆されたDLC皮膜のナノインデンター硬さを測定するための基材には、コバルト含有量が10質量%の炭化タングステン(WC−10質量%Co)からなる超硬合金製の基材(寸法:12.7mm×12.7mm×5mm、平均粒度:0.8μm、硬度:91.2HRA)を用いた。
また、被覆されたDLC皮膜のスクラッチ試験およびロックウェル硬さ試験機による密着性を評価するための基材には、寸法が21mm×17mm×2mmのJIS−SKH51相当鋼材の基材を用いた。
各基材に対しては、表面粗さを測定して、DLC皮膜を以下の条件で被覆した。
<本発明例1>
成膜チャンバーを5×10-3Paまで真空引きを行い、加熱用ヒーターにより基材を150℃付近に加熱して90分間保持した。その後、基材に印加する負のバイアス電圧を−2000Vとし、アルゴンガスに5質量%の水素ガスを含有した混合ガスによるガスボンバード処理を90分実施した。混合ガスの流量は50sccm〜100sccmとした。
ガスボンバード処理後、基材に−150Vのバイアス電圧を印加して、基材温度を100℃以下とした。そして、炉内圧力を5×10−3Pa以下とし、グラファイトターゲットに投入する電流を50AとしてDLC皮膜を約50分間成膜した。
<本発明例2>
ガスボンバード処理に、アルゴンガスに10質量%の水素ガスを含有した混合ガスを用いた以外は本発明例1と同条件とした。
<本発明例3>
ガスボンバード処理に、アルゴンガスに20質量%の水素ガスを含有した混合ガスを用いた以外は本発明例1と同条件とした。
<本発明例4>
ガスボンバード処理中の基材に印加する負のバイアス電圧を−1700Vとした以外は本発明例1と同条件とした。
<本発明例5>
ガスボンバード処理時間を70分実施した以外は本発明例1と同条件とした。
<比較例1(従来例)>
成膜チャンバーを5×10-3Paまで真空引きを行い、加熱用ヒーターにより基材を150℃付近に加熱して90分間保持した。その後、基材に印加する負のバイアス電圧を−2000Vとし、アルゴンガスのみでガスボンバード処理を行った。ガスボンバード処理後、基材に−150Vのバイアス電圧を印加し、基材温度を100℃以下とした。そして、炉内圧力を5×10−3Pa以下とし、グラファイトターゲットに投入する電流を50Aとして、DLC皮膜を約50分間被覆した。
<比較例2(従来例)>
比較例1と同条件で基材表面をアルゴンガスのみでガスボンバード処理した。その後、約3μmのCrNを中間皮膜として被覆した。中間皮膜の被覆後、基材に−150Vのバイアス電圧を印加して、基材温度を100℃以下とした。そして、炉内圧力を5×10−3Pa以下とし、グラファイトターゲットに投入する電流を50AとしてDLC皮膜を約50分間成膜した。
<比較例3(従来例)>
比較例1と同条件で基材表面をアルゴンガスのみでガスボンバード処理した。その後、基材に印加する負のバイアス電圧を−1000Vとし、Tiボンバード処理を5分間行った。その後、基材に−150Vのバイアス電圧を印加して、基材温度を100℃以下とした。そして、炉内圧力を5×10−3Pa以下とし、グラファイトターゲットに投入する電流を50AとしてDLC皮膜を約50分間成膜した。
<比較例4(比較例)>
成膜チャンバーを5×10-3Paまで真空引きを行い、加熱用ヒーターにより基材を150℃付近に加熱して90分間保持した。その後、基材に印加する負のバイアス電圧を−1000Vとし、アルゴンガスに5質量%の水素ガスを含有した混合ガスによるガスボンバード処理を90分実施した。混合ガスの流量は50sccm〜100sccmとした。
ガスボンバード処理後、基材に−150Vのバイアス電圧を印加して、基材温度を100℃以下とした。そして、炉内圧力を5×10−3Pa以下とし、グラファイトターゲットに投入する電流を50AとしてDLC皮膜を約50分間成膜した。
<比較例5(比較例)>
成膜チャンバーを5×10-3Paまで真空引きを行い、加熱用ヒーターにより基材を150℃付近に加熱して90分間保持した。その後、基材に印加する負のバイアス電圧を−2000Vとし、アルゴンガスに5質量%の水素ガスを含有した混合ガスによるガスボンバード処理を30分実施した。混合ガスの流量は50sccm〜100sccmとした。
ガスボンバード処理後、基材に−150Vのバイアス電圧を印加して、基材温度を100℃以下とした。そして、炉内圧力を5×10−3Pa以下とし、グラファイトターゲットに投入する電流を50AとしてDLC皮膜を約50分間成膜した。
<比較例6(比較例)>
基材の表面をショットブラスト(投射材:鉄系メディア)処理し、その後、粒度♯600の砥石(サンドペーパー)で研磨した。その後、ガスボンバード処理およびDLC皮膜の被覆は本発明例1と同条件とした。
<比較例7(比較例)>
基材の表面をダイヤモンドホイールで研削加工した。その後、ガスボンバード処理およびDLC皮膜の被覆は本発明例1と同条件とした。
<比較例8(比較例)>
基材の表面を粒度♯400の砥石(サンドペーパー)で研磨した。その後、ガスボンバード処理およびDLC皮膜の被覆は本発明例1と同条件とした。
<比較例9(比較例)>
ガスボンバード処理中の基材に印加する負のバイアス電圧を−1300Vとした以外は基材の表面状態を含むガスボンバード条件および成膜条件は本発明例1と同条件とした。
<比較例10(比較例)>
ガスボンバード処理時間を50分実施した以外の基材の表面状態を含むガスボンバード条件および成膜条件は本発明例1と同条件とした。
なお、上述した何れの試料も、基材の温度200℃以下になるように成膜と冷却を繰り返しながらDLC皮膜を被覆した。何れの試料もDLC皮膜の膜厚は約0.5μmであった。
DLC皮膜を被覆した各試料について、硬度、表面粗さおよび密着性評価を行った。以下、その測定条件について説明する。
<測定および評価>
−ナノインデンテーション硬度の測定−
株式会社エリオニクス製のナノインデンテーション装置を用い、皮膜表面の硬度を測定した。押込み荷重9.8mN、最大荷重保持時間1秒、荷重負荷後の除去速度0.49mN/秒の測定条件で10点測定し、値の大きい2点と値の小さい2点を除いて6点の平均値から求めた。標準試料である溶融石英の硬さが15GPa、CVDダイヤモンド皮膜の硬さが100GPaであることを確認した。
−表面粗さの測定−
基材およびDLC皮膜について、株式会社東京精密製の接触式面粗さ測定器SURFCOM480Aを用いて、JIS−B−0601−2001に従って、粗さ曲線より算術平均粗さRaと最大高さ粗さRzを測定した。測定条件は、評価長さ:4.0mm、測定速度:0.3mm/s、カットオフ値:0.8mmとした。
−密着性の評価−
被覆された試料のDLC皮膜表面を、株式会社ミツトヨ製の光学顕微鏡を用いて約800倍の倍率で観察して皮膜の剥離状況を評価した。DLC皮膜の表面剥離の評価基準は以下の通りとした。
<表面剥離の評価基準>
A:剥離無し
B:微小剥離あり
C:粗大剥離あり
ロックウェル硬さ試験機(ミツトヨ製AR−10)でCスケールのダイヤモンド圧子を用いて各試料のDLC皮膜に圧痕を付けた。そして、株式会社ミツトヨ製の光学顕微鏡を用いて約800倍の倍率で観察して、圧痕周辺の皮膜の剥離状況を評価した。ロックウェル硬さ(HRC)圧痕試験による密着性の評価基準は以下の通りとした。
<HRC圧痕試験の評価基準>
A:剥離無しまたは長径が20μm未満の剥離あり
B:長径が20μm以上50μm未満の剥離あり
C:長径が50μm以上の剥離あり
CSM社製スクラッチ試験機(REVETEST)を用いて剥離荷重を測定した。測定条件は、測定荷重:0〜100N、荷重スピード:99.25N/min、スクラッチスピード:10mm/min、スクラッチ距離:10mm、AE感度:5、圧子:ロックウェル、ダイヤモンド、先端半径:200μm、ハードウェア設定:Fnコンタクト0.9N、Fnスピード:5N/s、Fn除去スピード :10N/s、アプローチスピード:2%/sとした。
初期チッピングが発生した荷重をA荷重、基材が完全に露出した時の荷重をB荷重として評価した。
図1に本発明例に係るDLC皮膜の光学顕微鏡による表面観察写真(800倍)の一例を示す。炭化物が多い基材を用いた場合にも、本発明例は表面の皮膜剥離は殆ど発生していないことを確認した。本発明例の中でも、水素ガス濃度が高いガスボンバード処理をした本発明例2、3については、皮膜剥離が僅かであり、より優れた密着性を示す傾向にあった。
図2に比較例に係るDLC皮膜の光学顕微鏡による表面観察写真(800倍)の一例を示す。比較例1〜3は、従来の密着性の改善手法であるArボンバード処理、Tiボンバード処理および窒化物の中間皮膜を被覆したものであるが、何れも極めて大きな皮膜剥離が発生した。
比較例6〜8は、水素ガスを含有した混合ガスによってガスボンバード処理を実施したが、被覆前の基材の表面粗さが適切でないため大きな皮膜剥離が発生した。
比較例4、5、9、10は、基材を平滑研磨した上で水素ガスを含有した混合ガスによってガスボンバード処理を実施したものであり、表面剥離の状態は本発明例1と同程度であった。
図3に本発明例に係るDLC皮膜のロックウェル試験後の光学顕微鏡による表面観察写真(800倍)の一例を示す。本発明例は適切な条件で水素ガスを含有した混合ガスによってガスボンバード処理を実施したため、基材の表面にある酸化物が十分に除去されて基材とDLC皮膜の密着性が高まり、高硬度なDLC皮膜が基材の塑性変形に十分に追従して、ロックウェル硬さ圧痕試験においても粗大な皮膜剥離は発生せずに、皮膜剥離が観察される場合も僅かな剥離が一部に観察される程度であった。本発明例の中でも水素ガス濃度が高いガスボンバード処理をした本発明例2、3については、皮膜剥離が殆ど確認されず、優れた密着性を示す傾向にあった。
図4に比較例に係るDLC皮膜のロックウェル試験後の光学顕微鏡による表面観察写真(800倍)の一例を示す。比較例1〜3は、従来の密着性の改善手法であるArボンバード処理、Tiボンバード処理および窒化物の中間皮膜を被覆したものであるが、何れも、高硬度なDLC皮膜が基材の塑性変形に十分に追従できずに大きな皮膜剥離が発生した。
比較例6〜8は、水素ガスを含有した混合ガスによってガスボンバード処理したが、被覆前の基材の表面粗さが適切でないため、基材とDLC皮膜の密着性が十分ではなく皮膜剥離が発生した。
比較例4、5、9、10は、ガスボンバード処理のバイアス電圧または処理時間が適切でないため、本発明例に比べて皮膜剥離が多く発生する傾向にあった。
試験結果を纏めて表1に示す。比較例はスクラッチ試験における基材が完全に露出した時の荷重であるB荷重については、本発明例と同程度の値を示す場合もあった。しかし、比較例は、初期チッピングが発生するA荷重が低いという課題や、光学顕微鏡による表面剥離の観察で粗大剥離が存在するという課題、そしてロックウェル硬さ圧痕試験において粗大な剥離があるという課題の少なくとも何れかの課題が存在し、本発明例の密着性よりも低下する傾向にあった。本発明例は、何れも密着性が優れることを確認した。

Claims (3)

  1. フィルタードアークイオンプレーティング法で基材の表面にダイヤモンドライクカーボン皮膜を被覆する被覆工具の製造方法であって、
    算術平均粗さRaが0.06μm以下、最大高さ粗さRzが1.0μm以下の表面を有する基材を炉内に設置し、前記炉内に水素ガスを含む混合ガスを導入して、前記基材に−2500V以上−1500V以下のバイアス電圧を印加し、ガスボンバード処理を60分以上行う工程と、
    グラファイトターゲットを用いてダイヤモンドライクカーボン皮膜を前記基材の表面に被覆する工程と、
    を含むことを特徴とする被覆工具の製造方法。
  2. 前記混合ガスは、水素ガスを4質量%以上含有する混合ガスであることを特徴とする請求項1に記載の被覆工具の製造方法。
  3. 前記混合ガスは、水素ガスを7質量%以上含有する混合ガスであることを特徴とする請求項2に記載の被覆工具の製造方法。

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