以下、本発明の実施形態に係る燃料電池システムについて、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、図1に示される燃料電池システム1の各構成要素の電気伝導体による接続と、図2に示される燃料電池の各構成要素の配管による接続とを区別する必要がある。このため、以下の説明においては、電気伝導体による接続を「電気的な接続」という。この「電気的な接続」には、2つの構成要素が直接的に接続される場合と、間接的に接続される場合との両方が含まれる。例えば、「電気的な接続」には、図1に示されるバッテリ8のように、給電ラインL1に直接的に接続される場合が含まれる。また例えば、「電気的な接続」には、図1に示す燃料電池6のように、システム制御基板7を介して給電ラインL1に間接的に接続される場合が含まれる。この場合も、燃料電池6は、給電ラインL1に電気的に接続される。
<システムの全体構成>
図1において、本実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池6と、システム制御基板7と、バッテリ8とを備える。燃料電池6、システム制御基板7及びバッテリ8は、給電ラインL1に電気的に接続される。給電ラインL1には、電源スイッチ5と、出力遮断リレー9と、負荷Rとが電気的に接続される。
燃料電池システム1は、電源スイッチ5をONにすることで起動する。燃料電池6の起動前は、バッテリ8からの電力が、給電ラインL1を通じて、システム制御基板7に供給される。燃料電池6の起動後は、燃料電池6からの電力が、給電ラインL1を通じて、システム制御基板7及びバッテリ8に供給される。
燃料電池6の起動直後において、システム制御基板7は、バッテリ8からの電力で動作する。燃料電池6の起動直後に、バッテリ8の電圧が規定値よりも高い場合、すなわち、バッテリ8に所定の充電量が残存している場合には、出力遮断リレー9の接点が閉状態になる。これにより、バッテリ8又は燃料電池6からの電力が負荷Rに供給される。一方、燃料電池6の起動直後に、バッテリ8の電圧が規定値以下の場合、すなわち、バッテリ8に所定の充電量が残存していない場合には、出力遮断リレー9の接点の開状態が維持される。これにより、燃料電池6からの電力は、負荷Rに供給されず、バッテリ8に充電される。その後、バッテリ8の電圧が規定値よりも高くなった場合に、出力遮断リレー9の接点が閉状態になり、燃料電池6又はバッテリ8からの電力が負荷Rに供給される。
燃料電池6又はバッテリ8からの電力は、給電ラインL1に電気的に接続されたリレー2を介して、システム制御基板7の制御基板電源74及び補器類電源75に供給される。システム制御基板7は、制御基板電源74を通じて、燃料電池6又はバッテリ8からの電力の供給を受ける。燃料電池6の補器類は、補器類電源75を通じて、燃料電池6又はバッテリ8からの電力の供給を受ける。
燃料電池6に異常が発生した場合、システム制御部71は、燃料電池6の異常に関する情報を不揮発性メモリ72に記憶させた後、燃料電池6を停止させる制御処理を行う。その後、システム制御部71は、リレー2を開状態にさせる制御を行い、バッテリ8からの電力の供給を自ら遮断する。このような制御処理により、バッテリ8には、燃料電池システム1を復帰させるための電力が確保される。また、バッテリ8に確保された電力を消費して、燃料電池システム1の復帰時に、前回の運転時に発生した異常に関する情報を表示させることが可能となる。
<燃料電池>
図1に示されるように、燃料電池6は、エアポンプ61と、流量計61aと、調圧器62cと、複数の制御弁63と、スタック100とを含む。図1中の実線は、電力の供給経路を示す。図1中の点線は、検出結果や指令などの信号の伝送経路を示す。一方、上述した燃料電池6の各構成要素を繋ぐ配管は、図2中の太い実線により示される。まず、燃料電池6の配管に関連する構成について、図2を参照しつつ説明する。次いで、燃料電池6の各構成要素について、図1、図3、図4、図5及び図6を参照しつつ説明する。
図2において、スタック100のアノード側の入口及び出口には、水素が流れる配管である水素流路部材10が接続される。一方、スタック100のカソード側の入口及び出口には、空気が流れる配管である空気流路部材20が接続される。スタック100のアノード側の入口に接続された水素流路部材10と、スタック100のカソード側の入口に接続された空気流路部材20とのそれぞれの途中の位置には、置換流路部材30の一端と他端とが接続される。
本実施形態において、水素は燃料ガスの例示であり、空気は酸化ガスの例示である。燃料電池6の発電に使用されるガスは、水素及び空気に限定されるものではない。また、水素流路部材10、空気流路部材20及び置換流路部材30として、例えば、硬質又は軟質のパイプ、チューブを用いることができる。硬質のパイプ、チューブの材質は、例えば、ステンレスなどの金属であってもよい。軟質のパイプ、チューブの材質は、例えば、ポリプロピレンなど、各種エンジニアリングプラスチックや合成樹脂であってよい。
スタック100のアノード側の入口に接続された水素流路部材10の端部には、水素の供給源である水素吸蔵合金内蔵タンク(MHタンク)62が配置される。水素の流れを基準にして、MHタンク62の配置された位置が、水素流路部材10の最も上流と定義される。水素流路部材10におけるMHタンク62とスタック100との間には、上流から下流の順に、調圧器62cと、圧力センサ62dと、第1制御弁63Aと、第2制御弁63Bとが配置される。スタック100のアノード側の出口に接続された水素流路部材10には、第3制御弁63Cが配置される。第1制御弁63A及び第2制御弁63Bは、いずれも水素遮断弁である。第3制御弁63Cは、水素パージ弁である。MHタンク62、調圧器62c及び圧力センサ62dについては、後に図1を参照しつつ説明する。
第1制御弁63A及び第2制御弁63Bは、いずれも燃料電池6の起動時に開いた状態となり、MHタンク62からスタック100に対して供給される水素を水素流路部材10へ流通させる。第1制御弁63A及び第2制御弁63Bは、いずれも燃料電池6の停止時に閉じた状態となり、MHタンク62から供給される水素を遮断する。第1制御弁63A及び第2制御弁63Bは、いずれも第3制御弁63Cの閉動作に異常が生じた場合に、閉じた状態となり、スタック100への水素の供給を遮断する。第1制御弁63A及び第2制御弁63Bは、水素パージ弁である第3制御弁63Cの閉動作の異常による水素の漏れを二重に防止する。
ここで、スタック100の出口側に接続された水素流路部材10の内部には、スタック100で生成された水や、発電に伴って濃度が高くなった不純物が滞留する。第3制御弁63Cは、開いた状態となったときに、水素流路部材10に溜まった水や不純物を外部に排出する。第1制御弁63A及び第2制御弁63Bが開いており、第3制御弁63Cが閉じている場合、水素流路部材10内には、調圧器62cによって調整された圧力で水素が閉塞された状態になる。すなわち、本実施形態の燃料電池システム1はデッドエンド式である。
第1制御弁63A、第2制御弁63B及び第3制御弁63Cは、例えば、図1に示されるシステム制御部71からの指令(例えば、信号)に基づいて開状態と閉状態とを切替可能なソレノイド弁によって構成される。但し、本発明の実施に用いられる弁は、ソレノイド弁に限定されるものではない。本発明の実施には、ソレノイド弁の代わりに、例えば、モータによって開放状態を調整可能な電動弁が用いられても差し支えない。
一方、スタック100のカソード側の入口に接続された空気流路部材20の端部には、空気の供給源であるエアポンプ61が配置される。空気の流れを基準にして、エアポンプ61の配置された位置が、空気流路部材20の最も上流と定義される。空気流路部材20におけるエアポンプ61とスタック100との間には、上流から下流の順に、流量計61aと、逆止弁23とが配置される。スタック100のカソード側の出口に接続された空気流路部材20には、第4制御弁63Dが配置される。エアポンプ61及び流量計61aについては、後に図1を参照しつつ説明する。
逆止弁23は、空気流路部材20の一方から他方への流れを許容し、他方から一方への流れを制限する。本実施形態において、逆止弁23は、空気流路部材20の上流から下流、すなわち、エアポンプ61側からスタック100側への空気の流れを許容する。逆止弁23は、空気流路部材20の下流から上流、すなわち、スタック100側からエアポンプ61側への空気及び水の流れを遮断する。逆止弁23は、遮断弁の一例である。逆止弁23としては、例えば、ポペット式、スイング式、ウエハー式、リフト式、ボール式、フート式など、任意の形式の逆止弁が用いられてよい。なお、逆止弁23の代わりに、電磁弁が用いられてもよい。
第4制御弁63Dは、開いた状態となったときに、スタック100のカソード側で生成された水を空気と共に外部へ排出する。第4制御弁63Dは、スタック100の停止時に閉じた状態となる。第4制御弁63Dが閉じた状態となることで、スタック100から外部への空気の排出が遮断され、後述するセパレータ110の第1流路111aの湿度が保たれる(図5(a)を参照)。これにより、固体高分子電解質膜131のカソード電極132の乾燥が防止される(図6を参照)。第4制御弁63Dは、例えば、図1に示されるシステム制御部71からの指令(例えば、信号)に基づいて開状態と閉状態とを切替可能なソレノイド弁によって構成される。但し、本発明の実施に用いられる弁は、ソレノイド弁に限定されるものではない。本発明の実施には、ソレノイド弁の代わりに、例えば、モータによって開放状態を調整可能な電動弁が用いられても差し支えない。
置換流路部材30は、空気流路部材20から水素流路部材10へ空気を流通させるためのものである。置換流路部材30は、水素流路部材10における第1制御弁63Aと第2制御弁63Bとの間の位置と、空気流路部材20における流量計61aと逆止弁23との間の位置とに接続される。置換流路部材30の空気流路部材20側には、第5制御弁63Eが配置される。置換流路部材30の水素流路部材10側には、遮断弁の一例である逆止弁32が配置される。
第5制御弁63Eは、水素流路部材10と空気流路部材20とを連通又は遮断させるためのものである。第5制御弁63Eは、例えば、図1に示されるシステム制御部71からの指令(例えば、信号)に基づいて開状態と閉状態とを切替可能なソレノイド弁によって構成される。但し、本発明の実施に用いられる弁は、ソレノイド弁に限定されるものではない。本発明の実施には、ソレノイド弁の代わりに、例えば、モータによって開放状態を調整可能な電動弁が用いられても差し支えない。
燃料電池6の運転時において、第5制御弁63Eは、システム制御部71からの指令に従って閉じた状態となり、水素流路部材10と空気流路部材20とを遮断させる。これにより、エアポンプ61から供給される空気は、空気流路部材20を通ってスタック100のカソード側に流れる。一方、燃料電池システム1の停止時において、第5制御弁63Eは、システム制御部71からの指令に従って開いた状態となり、水素流路部材10と空気流路部材20とを連通させる。これにより、空気流路部材20、置換流路部材30及び燃料ガス流路部材10を通るルートが形成される。このとき、エアポンプ61から供給される空気は、置換流路部材30を介して、空気流路部材20から水素流路部材10へ流れる。その後、空気は、水素流路部材10からスタック100のアノード側に流れ、後述するセパレータ110の第2流路117aに残留した水素ガスを外部へ排出する(図5(b)を参照)。
逆止弁32は、置換流路部材30の一方から他方への流れを許容し、他方から一方への流れを制限する。すなわち、逆止弁32は、空気流路部材20側から水素流路部材10側への空気の流れを許容する。逆止弁32は、水素流路部材10側から空気流路部材20側への水素の流れを遮断する。逆止弁32としては、例えば、ポペット式、スイング式、ウエハー式、リフト式、ボール式、フート式など、任意の形式の逆止弁が用いられてよい。なお、逆止弁32の代わりに、電磁弁が用いられてもよい。
<<スタック>>
図3に示されるように、スタック100は、複数の単位電池セル101aと、2つのエンドプレート101Bとを備える。複数の単位電池セル101aは、直列に積層された単位電池セル群101Aを構成する。2つのエンドプレート101Bの一方は、単位電池セル群101Aの一端に配置される。2つのエンドプレート101Bの他方は、単位電池セル群101Aの他端に配置される。複数本のボルト101Cは、単位電池セル群101A及び2つのエンドプレート101Bを貫通し、単位電池セル群101A及び2つのエンドプレート101Bを互いに固定する。
一方のエンドプレート101Bには、空気流入孔101Dと、水素流入孔101Eとが形成される。空気流入孔101Dは、後述するセパレータ110の第1貫通孔112に連通する(図4を参照)。空気流入孔101Dには、上述したスタック100より上流の空気流路部材20を介して、エアポンプ61が接続される。水素流入孔101Eは、後述するセパレータ110の第3貫通孔114に連通する(図4を参照)。水素流入孔101Eには、上述したスタック100より上流の水素流路部材10を介して、MHタンク62が接続される。
他方のエンドプレート101Bには、空気排出孔(非図示)と、水素排出孔(非図示)とが形成される。空気排出孔は、後述するセパレータ110の第2貫通孔113に連通する。空気排出孔には、上述したスタック100より下流の空気流路部材20が接続される。水素排出孔は、後述するセパレータ110の第4貫通孔115貫通孔に連通する。水素排出孔には、上述したスタック100より下流の水素流路部材10が接続される。
一方のエンドプレート101Bと単位電池セル群101Aとの間には、集電板101Fが設けられる。他方のエンドプレート101Bと電池セル群101Aとの間には、集電板101Gが設けられる。これら集電板101F、101Gは、システム制御基板7を介して、給電ラインL1に接続される。停電時において、スタック100で生成された電力は、給電ラインL1を介して、燃料電池6の補器類、システム制御基板7、バッテリ8及び負荷Rに供給される。
図4〜図6に示されるように、スタック100を構成する各単位電池セル101aは、膜/電極接合体130と、2つのガスケット120a、120bと、2つのセパレータ110とを有する。2つのガスケット120a、120bは、膜/電極接合体130の周縁部にそれぞれ設けられる。2つのセパレータ110の一方は、ガスケット120aを介して、膜/電極接合体130の一方の面に接触する。2つのセパレータ110の他方は、ガスケット120bを介して、膜/電極接合体130の他方の面に接触する。
<<<膜/電極接合体>>>
図6に示されるように、膜/電極接合体130は、固体高分子電解質膜131、カソード電極132及びアノード電極133を有する。固体高分子電解質膜131は、プロトンの導電性を有する。固体高分子電解質膜131は、含水状態においてプロトンを選択的に輸送する。固体高分子電解質膜131は、例えばナフィオン(登録商標)などの、スルホン酸基を持ったフッ素系ポリマーで構成される。
アノード電極133は、膜/電極接合体130の一方の面に接触する。アノード電極133は、触媒層133aと、ガス拡散層133bとを有する。ガス拡散層133bは、導電性と、燃料ガス(例えば、水素)の通気性とを兼ね備える。ガス拡散層133bは、例えば、カーボンペーパーなどによって構成される。触媒層133aは、膜/電極接合体130の一方の面とガス拡散層133bとの間に設けられる。触媒層133aは、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒を含む。触媒層133aは、例えば、ガス拡散層133bを構成するカーボンペーパーに対して、触媒を有機溶媒に分散させたペーストを塗布することで形成される。
カソード電極132は、膜/電極接合体130の他方の面に接触する。カソード電極132は、触媒層132aとガス拡散層132bとを有する。ガス拡散層132bは、導電性と、酸化ガス(例えば、空気)の通気性とを兼ね備える。ガス拡散層132bは、例えば、カーボンペーパーなどによって構成される。触媒層132aは、膜/電極接合体130の他方の面とガス拡散層132bとの間に設けられる。触媒層132aは、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒を含む。触媒層132aは、例えば、ガス拡散層132bを構成するカーボンペーパーに対して、触媒を有機溶媒に分散させたペーストを塗布することで形成される。
<<<セパレータ>>>
セパレータ110は、長方形の平板状の部材である。セパレータ110は、例えば、アルミニウム、ステンレス、カーボンなどで構成される。セパレータ110は、複数の第1流路壁111と、複数の第2流路壁117と、2つの第1貫通孔112と、2つの第2貫通孔113と、2つの第3貫通孔114と、2つの第4貫通孔115とを含む。
図4及び図5に示されるように、セパレータ110の一方の面(例えば、表面)における中央には、複数の第1流路壁111が間隔をあけて平行に設けられる。全ての第1流路壁111を含む略長方形の領域は、膜/電極接合体130のカソード電極132の外形に対応する。各第1流路壁111と、各第1流路壁111の頂点に接触するカソード電極132とによって、膜/電極接合体130に供給される酸化ガスの複数の第1流路111aが形成される。これら第1流路111aの一端には、セパレータ110の短辺に沿って、2つの第1貫通孔112が設けられる。また、これら第1流路111aの他端には、セパレータ110の短辺に沿って、2つの第2貫通孔113が設けられる。第1貫通孔112を通過した空気は、第1流路111aを流れることで、カソード電極132に供給される。第1流路111aを流れた空気は、カソード電極132で生成された水とともに、第2貫通孔113を通過する。セパレータ110の表面には、厚み方向に突出するガスケットライン37Aが形成される。ガスケットライン37Aは、複数の第1流路111aと、2つの第1貫通孔112と、2つの第2貫通孔113との外周を隙間なく取り囲む。
また、セパレータ110の他方の面(例えば、裏面)における中央には、表面と同様に、複数の第2流路壁117が間隔をあけて平行に設けられる。複数の第2流路壁117は、表面のストレート型の流路壁111と異なり、その両端が第3貫通孔114及び第4貫通孔115に向かってそれぞれ直角に曲折したサーペンタイン型となっている。複数の第2流路壁117を含む略長方形の領域は、膜/電極接合体130の表面に設けたアノード電極133の外形に対応する。各第2流路壁117と、各第2流路壁117の頂点に接触するアノード電極133とによって、膜/電極接合体130に供給される水素が流れる複数の第2流路117aが形成される。第3貫通孔114を通過した水素は、第2流路117aを流れることで、アノード電極133に供給される。第2流路117aを流れた水素は、第4貫通孔115を通過する。セパレータ110の裏面には、表面と同様に、厚み方向に突出するガスケットライン37Bが形成される。ガスケットライン37Bは、複数の第2流路117aと、2つの第3貫通孔114と、2つの第4貫通孔115との外周を隙間なく取り囲む。
セパレータ110の互いに対向する長辺の近傍には、それぞれ複数の挿通孔116が等間隔で設けられる。本実施形態では、セパレータ110の強度を向上させるため、第3貫通孔114及び第4貫通孔115が、隣接する2つの挿通孔116の間の領域に設けられる。
<<<ガスケット>>>
ガスケット120a、120bは、セパレータ110とほぼ同一寸法の長方形のシート材からなる。ガスケット120a、120bは、貫通孔121〜126を有する。ガスケット120a、120bを形成するシート材としては、例えば、極めて薄く加工したシリコンゴム又はエラストマーなどの弾性体を用いることができる。ガスケット120a、120bの中央には、最も大きな長方形の貫通孔121が設けられる。この貫通孔121の外形及び位置は、セパレータ110の表面に形成された各第1流路壁111と、セパレータ110の裏面に形成された各第2流路壁117とを含む、略長方形の領域に対応する。また、貫通孔121の外形は、膜/電極接合体130の両面に設けたカソード電極132及びアノード電極133にも対応する。
ガスケット120a、120bの互いに対向する短辺の近傍で、かつ長方形の貫通孔121の両端には、それぞれ2つの貫通孔122と、2つの貫通孔123とが設けられる。2つの貫通孔122の外形及び位置は、セパレータ110の2つの第1貫通孔112にそれぞれ対応する。また、2つの貫通孔123の外形及び位置は、セパレータ110の2つの第2貫通孔113にそれぞれ対応する。
ガスケット120a、120bの一の長辺の近傍には、2つの貫通孔124と、2つの貫通孔125とが間隔をあけて設けられる。2つの貫通孔124の外形及び位置は、セパレータ110の2つの第3貫通孔114にそれぞれ対応する。また、2つの貫通孔125の外形及び位置は、セパレータ110の2つの第4貫通孔115にそれぞれ対応する。
ガスケット120a、120bの互いに対向する長辺の近傍には、それぞれ複数の貫通孔126が等間隔で設けてある。これら貫通孔126の外形及び位置は、セパレータ110の各挿通孔116にそれぞれ対応する。
図4及び図6に示されるように、ガスケット120aは、アノード電極133の外周に隣接し、固体高分子電解質膜131の一方の面に接触する。ガスケット120aは、セパレータ110の裏面に形成されたガスケットライン37Bによって押さえられる。ガスケット120aは、第2流路117aを流れる水素が、単位電池セル101aから外部に漏れることを防止する。ガスケット120bは、カソード電極132の外周に隣接し、固体高分子電解質膜131の他方の面に接触する。ガスケット120bは、セパレータ110の表面に形成されたガスケットライン37Aによって押さえられる。ガスケット120bは、第1流路111aを流れる空気が、単位電池セル101aから外部に漏れることを防止する。
図3及び図4において、複数の単位電池セル101aが直接に積層されるので、第1貫通孔112及び貫通孔122が一直線に整列する。第3貫通孔114及び貫通孔124と、第2貫通孔113及び貫通孔123と、第4貫通孔115及び貫通孔125も、同様に、それぞれ一直線に整列する。一方のエンドプレート101Bの水素流入孔101Eは、一直線に整列した第3貫通孔114及び貫通孔124に連通する。一方のエンドプレート101Bの空気流入孔101Dは、一直線に整列した第1貫通孔112及び貫通孔122に連通する。他方のエンドプレート101Bの水素排出孔(非図示)は、一直線に整列した第4貫通孔115及び貫通孔125に連通する。他方のエンドプレート101Bの空気排出孔(非図示)は、一直線に整列した第2貫通孔113及び貫通孔123に連通する。
<<燃料電池の動作>>
水素流入孔101Eからスタック100の内部に供給された水素は、積層方向に一直線に整列した第3貫通孔114に流入する。水素は、第3貫通孔114から第2流路117aに流入する。第2流路117aに流入した水素は、アノード電極133の拡散層133bによって膜/電極接合体130の面方向に拡散され、アノード電極133の触媒層133aに接触する。触媒層133aに接触した水素は、触媒層133aに含まれる触媒によって、水素イオンと電子とに乖離する。水素イオンは、固体高分子膜131を伝導し、カソード電極132の触媒層132aに到達する。一方、電子は、集電板101Fから、外部に取り出される。アノード電極133に接触した水素ガスは、第2流路117aに沿って第4貫通孔115に到達し、水素排出孔(非図示)を介してスタック1の外部に排出される。
空気導入口101Dからスタック100の内部に供給された空気は、積層方向に一直線に整列した第1貫通孔112に流入する。空気は、第1貫通孔112から第1流路111aに流入する。第1流路111aに流入した空気は、カソード電極132の拡散層132bによって膜/電極接合体130の面方向に拡散され、カソード電極132の触媒層132aに接触する。空気に含まれる酸素は、触媒層132aに含まれる触媒によって、固体高分子膜131を伝導してきた水素イオンと、集電板101Fから取り出され、外部負荷を介して集電板101Gから伝導される電子と反応することで、水を生成する。この電子の移動によって、電力が発生する。カソード電極132に接触した空気は、生成された水とともに、第1流路111aに沿って第2貫通孔113に到達し、空気排出孔(非図示)を介してスタック1の外部に排出される。
<<燃料電池の補器類>>
図1に示されるように、燃料電池6は、スタック100に発電を行わせるための種々の補器類を備える。上述のとおり、図1中の実線は、電力の供給経路を示す。図1中の点線は、検出結果や指令などの信号の伝送経路を示す。燃料電池6の各補器類と、システム制御部71とは、図1中の実線で示された伝送経路によって電気的に接続され、点線で示された伝送経路によって信号の送受信が可能となっている。
上述のとおり、エアポンプ61は、スタック100のカソード側の入口に接続された空気流路部材20(図2を参照)に配置される。エアポンプ61は、システム制御基板7のポンプ駆動回路81に電気的に接続される。ポンプ駆動回路81は、補器類電源75に電気的に接続される(接続は非図示)。エアポンプ61には、ポンプ駆動回路81を介して補器類電源75からの直流電流が供給される。ポンプ駆動回路81は、システム制御部71からの指令(例えば、信号)に基づいて、エアポンプ61をON/OFF動作させる。
流量計61aは、エアポンプ61から供給される空気の流量を検出する。流量計61aは、検出結果を示す信号を、システム制御基板7のシステム制御部71に送信する。流量計61aの構成は、特に限定されるものではない。例えば、流量計61aとして熱式、差圧式、面積式、超音波式などの流量計を用いることができる。本実施形態の流量計61aは、サーミスタを用いた熱式の流量計である。
MHタンク62は、水素吸蔵合金(非図示)を内蔵する。MHタンク62内の水素吸蔵合金は、吸熱反応によって水素を放出する。一般に、水素吸蔵合金は、吸熱反応によって水素を放出する。水素吸蔵合金の温度が高いほど、単位体積、単位時間当たりの水素の放出量は多い。一方、水素吸蔵合金の温度が低いほど、水素の放出量は少ない。MHタンク62に内蔵される水素吸蔵合金として、例えば、AB2型、AB5型、Ti−Fe系、V系、Mg合金、Pb系、Ca系合金などの種々の構成のものを適用することができる。
MHタンク62は、配管である水素流路部材10を介して、燃料電池6の調圧器62cに接続される。調圧器62cは、水素流路部材10内の圧力が規定値になるように調整する。すなわち、調圧器62cは、システム制御部71の指令に基づいて、MHタンク62から水素流路部材10へ供給される水素の流量を制御する。規定値は、スタック100の発電に十分な水素流路部材10内の圧力の値である。例えば、本実施形態では、規定値は50kPa以上に設定される。図2に示されるように、水素流路部材10には圧力センサ62dが配置される。システム制御部71は、圧力センサ62dに検出された水素流路部材10内の圧力を規定値と比較する。システム制御部71は、圧力センサ62dから受信した信号が示す水素流路部材10内の圧力が50kPa未満のときに、調圧器62cを動作させる指令を送信する。
図1に示される複数の制御弁63は、図2に例示される第1制御弁63A、第2制御弁63B、第3制御弁63C、第4制御弁63D及び第5制御弁63Eに相当する。複数の制御弁63は、図2に示されるように、スタック100に接続された水素流路部材10、空気流路部材20及び置換流路部材30のそれぞれに配置される。複数の制御弁63は、システム制御基板7の制御弁駆動回路82に電気的に接続される。制御弁駆動回路82は、補器類電源75に電気的に接続される(接続は非図示)。制御弁63には、制御弁駆動回路82を介して補器類電源75からの直流電流が供給される。制御弁駆動回路82は、システム制御部71からの指令(例えば、信号)に基づいて、複数の制御弁63を個別に開閉動作させる。
図1に示される温度センサ64aは、図2に示されるスタック100のアノード側の出口に接続された水素流路部材10の端部と、スタック100のカソード側の出口に接続された空気流路部材20の端部との付近に設けられる。温度センサ64aは、スタック100から排気されたガスの温度を検出する。温度センサ64aは、検出結果を示す信号を、システム制御部71に送信する。スタック100から排気されたガスの温度は、発電時のスタック100の温度と相関関係を有する。スタック100から排気されたガスの温度が規定値を超える場合は、スタック100に異常が発生している可能性がある。例えば、スタック100は、膜/電極接合体130の劣化又な損傷により発熱量を増大させる。システム制御部71は、温度センサ64aに検出された温度が規定値を超える場合に、図9に示される異常検出時処理を行う。異常検出時処理については、後に詳述する。
図1に示される筐体内温度検出部66a及び冷却ファン65は、燃料電池システム1の筐体(非図示)に設けられる。筐体内温度検出部66aは、筐体内に配置される。一方、冷却ファン65は、スタック100に送風する向きに配置される。冷却ファン65は、システム制御基板7のファン駆動回路83に電気的に接続される。ファン駆動回路83は、補器類電源75に電気的に接続される。冷却ファン65には、ファン駆動回路83を介して補器類電源75からの直流電流が供給される。
筐体内温度検出部66aは、筐体内の温度を検出する。筐体内温度検出部66aは、検出結果を示す信号を、システム制御部71に送信する。スタック100は、発電中に熱を発生させる。スタック100の熱によって、筐体内の温度が規定値よりも高くなると、MHタンク62内の圧力が高くなりすぎる。システム制御部71は、筐体内温度検出部66aに検出された筐体内の温度を規定値と比較し、冷却ファン65をON/OFF動作させる指令を送信する。本実施形態では、規定値を40℃に設定してある。
システム制御部71は、筐体内温度検出部66aから受信した信号が示す筐体内の温度が40℃を超えたときに、冷却ファン65をONにさせる指令(例えば、信号)をファン駆動回路83に送信する。ファン駆動回路83は、システム制御部71の指令に基づいて、冷却ファン65への電流供給を開始する。冷却ファン65は、ファン駆動回路83から供給された電流によってONになる。ONになった冷却ファン65は、低温の外気を筐体内に取り込み、スタック100に対して送風するとともに、高温となった筐体内の空気を換気する。
一方、システム制御部71は、筐体内温度検出部66aから受信した信号が示す筐体内の温度が40℃以下になったときに、冷却ファン65をOFFにさせる指令(例えば、信号)をファン駆動回路83に送信する。ファン駆動回路83は、システム制御部71の指令に基づいて、冷却ファン65への電流供給を停止させる。電流供給が停止された冷却ファン65はOFFになる。
さらに、システム制御部71は、冷却ファン65をONにさせる指令をファン駆動回路83に送信してから規定時間が経過しても、筐体内の温度が40℃を超える場合に、図9に示される異常検出時処理を行う。異常検出時処理については、後に詳述する。
図1に示されるように、筐体内のスタック100の近傍には、水素漏洩検出部67aが設けられる。水素漏洩検出部67aは、筐体内の雰囲気中の水素濃度を検出する水素センサを備える。水素漏洩検出部67aに適用される水素センサの検出原理は、特に限定されるものではない。例えば、接触燃焼式、半導体式、熱電式などの水素センサが水素漏洩検出部67aに適用される。接触燃焼式の水素センサは、pt合金などの燃焼触媒を備え、触媒上で水素が燃焼反応したときの発熱による抵抗変化を信号として出力する。半導体式の水素センサは、半導体である酸化スズ(SnO2−X)の表面が水素によって還元されたときの抵抗変化を信号として出力する。熱電式の水素センサは、熱電変換膜とその表面の一部の上に形成された触媒膜で構成され、水素と触媒との発熱反応により発生する局部的な温度差を熱電変換膜で電圧信号に変換する。
水素漏洩検出部67aは、筐体内の雰囲気中の水素濃度を検出する。水素漏洩検出部67aは、検出結果を示す信号を、システム制御部71に送信する。システム制御部71は、水素漏洩検出部67aに検出された水素濃度の値が規定値を超える場合に、図9に示される異常検出時処理を行う。異常検出時処理については、後に詳述する。
<システム制御基板>
システム制御基板7は、システム制御部71、不揮発性メモリ72、表示部73、制御基板電源74、補器類電源75、電流/電圧検出部76、遮断回路77、電力回路78、電流/電圧検出部79、ポンプ駆動回路81、制御弁駆動回路82、ファン駆動回路83及びリレー2を含む。上述のとおり、図1中の実線は、電力の供給経路を示す。図1中の点線は、検出結果や指令などの信号の伝送経路を示す。システム制御部71の構成要素は、図1中の実線で示された伝送経路によって電気的に接続され、図1中の点線で示された伝送経路によって信号の送受信が可能となっている。
システム制御部71は、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)又はマルチコアCPUと、RAM(Random Access Memory)により構成される。また、システム制御部71は、後述する制御処理を実行するための専用の回路基板により構成されてもよい。また、システム制御部71は、後述する制御処理を実行するための専用のASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されてもよい。
システム制御部71は、燃料電池システム1の全般的な制御処理を行う。システム制御部71が行う通常の制御処理として、例えば、燃料電池6の起動制御、燃料電池6の運転制御、燃料電池6から供給される電力の平滑化制御、バッテリ8の充電制御、燃料電池6に関係する異常の検出、筐体内の温度制御、燃料電池6の停止制御などを行う。
システム制御部71は、燃料電池6に関係する異常が検出された場合に、図9に示される異常検出時処理を行う。すなわち、システム制御部71は、検出された異常に関する情報を表示部73に表示させる制御(ステップS21)、検出された異常に関する情報を不揮発性メモリ72に記憶させる制御(ステップS22)、燃料電池6の停止制御(ステップS23)、出力遮断リレー9の接点を開状態にして、バッテリ8から負荷Rへの電力の供給を遮断する制御(ステップS24)、リレー2を開状態にして、バッテリ8からシステム制御基板7への電力の供給を自ら遮断する制御(ステップS25)を行う。図9に示される異常検出時処理については、後に詳述する。
さらに、システム制御部71は、燃料電池6の異常により自ら停止させた燃料電池システム1が再起動された場合に、図10に示す異常報知・復帰の制御処理を行う。すなわち、システム制御部71は、前回の運転時に発生した異常に関する情報を表示部73に表示させる制御(ステップS31)、前回の運転時に発生した異常に応じた燃料電池6の復帰に関係する制御(ステップS32〜S39)を行う。図10に示す異常報知・復帰の制御処理については、後に詳述する。
本実施形態では、燃料電池6に関係する異常として、スタック100からの水素漏洩、スタック100の異常(異常加熱、寿命)、MHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素切れ、筐体内の温度異常、その他の異常を例示する。しかし、本発明の燃料電池システム1の制御部が検出可能な異常は、本実施形態に例示された異常に限定されるものではない。
システム制御部71は、水素漏洩検出部67aの検出結果に基づいて、筐体内における水素漏洩を検出する。システム制御部71は、温度センサ64aの検出結果に基づいて、スタック100の異常加熱を検出する。システム制御部71は、電流/電圧検出部76に検出された電圧値に基づいて、スタック100の寿命を検出する。システム制御部71は、電流/電圧検出部76に検出された電流値に基づいて、MHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素切れを検出する。システム制御部71は、筐体内温度検出部66aの検出結果に基づいて、燃料電池6が収容された筐体内の温度異常を検出する。
なお、本実施形態の燃料電池システム1は、上述した主要な制御処理を、1つのシステム制御部71が行う構成となっている。しかし、本発明の燃料電池システムは、1つの制御部を備えた構成に限定されるものではない。本発明の燃料電池システムは、システムの主要な制御処理を、複数の制御部が行う構成とすることができる。
不揮発性メモリ72は、システム制御部71の制御処理に従い、燃料電池システム1の運用に関する種々のデータを記憶する。また、不揮発性メモリ72は、システム制御部71に検出された異常に関する情報を記憶する。本実施形態では、システム制御部71は、筐体内における水素漏洩、スタック100の異常(異常加熱、寿命)、MHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素切れ、筐体内の温度異常、又はその他の異常が検出された場合に、これら異常の種別を示す情報を不揮発性メモリ72に送信する。不揮発性メモリ72は、システム制御部71から異常の種別情報を受信し、これを記憶する。
表示部73は、例えば、液晶表示パネルや7セグメントLEDなどを用いることができる。表示部73は、システム制御部71の制御処理に従って、文字、数字、記号などの情報を表示する。例えば、表示部73は、システム制御部71に検出された異常の種別情報を表示する。すなわち、システム制御部71は、筐体内における水素漏洩、スタック100の異常(異常加熱、寿命)、MHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素切れ、筐体内の温度異常、又はその他の異常が検出された場合に、これら異常の種別情報を表示させる指令(例えば、信号)を表示部73に送信する。表示部73は、システム制御部71の指令に基づいて、燃料電池6に関係する異常の種別を示す文字、数字、記号などの情報を表示する。なお、表示部73は、燃料電池システム1の異常を知らせる報知部の一例である。報知部は、視覚的な報知を行う表示部に限定されるものではない。報知部は、例えば、聴覚的な報知を行うスピーカなどであってもよい。例えば、異常により停止された燃料電池6を再起動させる前に、システム制御部71の指令に基づいて、スピーカがアラーム音を鳴らす構成にしてもよい。このような構成とした場合には、燃料電池システム1を復帰させる管理者に、燃料電池6が再起動することを知らせることができる。
制御基板電源74は、燃料電池6又はバッテリ8からの電力をシステム制御基板7で利用可能な電圧に変換したうえで、システム制御基板7に供給する。補器類電源75は、燃料電池6又はバッテリ8からの電力を燃料電池6の補器類で利用可能な電圧に変換したうえで、補器類に供給する。制御基板電源74及び補器類電源75は、リレー2を介して、給電ラインL1に電気的に接続される。バッテリ8又は燃料電池6から電力は、リレー2を介して、制御基板電源74及び補器類電源75に供給される。
燃料電池6からの電力は、電流/電圧検出部76、遮断回路77、電力回路78及び電流/電圧検出部79を通って、給電ラインL1に流れる。電流/電圧検出部76は、スタック100の出力側に接続される。電流/電圧検出部76は、スタック100が発電した電力の電圧値と電流値とを検出する。電流/電圧検出部76は、検出結果を示す信号を、システム制御部71に送信する。
スタック100の電圧値は、スタック100の寿命と相関関係を有する。例えば、図6に示される固体高分子膜131の膜質が経年劣化して薄くなると、クロスリーク量が増加する。また、図6に示される触媒層132a、133aに含まれる白金触媒が劣化すると、触媒層132a、133aの反応効率が低下する。このような要因により、スタック100の出力電圧は、時間の経過に伴って低下する。したがって、スタック100の電圧値の低下は、固体高分子膜131や触媒層132a、133aなどの構成要素の劣化を示す。システム制御部71は、スタック100の電圧値に基づいて、スタック100の寿命を判断する。システム制御部71は、スタック100の寿命が零に近い規定値に達した場合に、図9に示される異常検出時処理を行う。
一方、スタック100の電流値は、発電に使われた水素の消費量を示す。上述のとおり、燃料電池6は、水素から乖離した水素イオン及び電子と、空気に含まれる酸素とを反応させて水を生成し、このときの電子の移動によって電力を発生させる。発電の際に移動した電子の量は、スタック100の電流値に対応するとともに、発電に使われた水素の消費量に対応する。システム制御部71は、電流/電圧検出部76から受信したスタック100の電流値に基づいて、MHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素残量を算出する。システム制御部71が算出した水素残量の値は、不揮発性メモリ72に記憶される。また、システム制御部71は、MHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素残量が零に近い規定値に達した場合に、図9に示される異常検出時処理を行う。
さらに、システム制御部71は、スタック100の電流値に基づいて、エアポンプ61に対して空気の供給量を変更する指令(例えば、信号)を送信する。エアポンプ61は、システム制御部71の指令に基づいて、スタック100のカソード側に供給される空気の量を増減させる。これにより、スタック100の発電量が制御される。
遮断回路77は、スタック100が発電していない燃料電池6の停止時において、スタック100をシステム制御基板7から電気的に遮断する。バッテリ8からシステム制御基板7に供給される電力が、スタック100に流れることを防止するためである。システム制御部71は、燃料電池6の停止時に、遮断回路77を遮断させる指令(例えば、信号)を送信する。遮断回路77は、システム制御部71の指令に基づいて、システム制御基板7とスタック100との電気的な接続を遮断する。一方、システム制御部71は、燃料電池6の起動時に、遮断回路77の遮断を解除させる指令(例えば、信号)を送信する。遮断回路77は、システム制御部71の指令に基づいて、システム制御基板7とスタック100との電気的な接続の遮断を解除する。
電力回路78は、システム制御部71からの指令(例えば、信号)に基づいて、バッテリ8を定電流定電圧(CCCV)又は定電圧定電流(CVCC)で充電する。スタック100の電圧は、負荷Rの消費電力の増減に伴って変動する。電力回路78は、バッテリ8に供給されるスタック100の電流及び電圧を平滑化する。また、電力回路78は、例えば、スタック100の電流を一定の値にし、バッテリ8の電圧が規定値に達した後は、規定値の電圧が維持されるように、スタック100の電流値を下げる。例えば、本実施形態では、スタック100の電圧が30〜50Vの間で変動する。電力回路78は、スタック100の電圧を、バッテリ8の出力電圧と同じ24Vに変換する。
電流/電圧検出部79は、電力回路78を通ってバッテリ8に供給される電力の電流値及び電圧値を検出する。電流/電圧検出部79は、検出結果を示す信号を、システム制御部71に送信する。システム制御部71は、電流/電圧検出部79に検出された電流値に基づいて、バッテリ8の充電量を算出する。また、システム制御部71は、電流/電圧検出部79に検出された電圧値に基づいて、バッテリ8の電圧値を監視する。
リレー2は、システム制御部71の指令に基づいて、システム制御基板7と給電ラインL1との電気的な接続を遮断する。すなわち、リレー2は、バッテリ8からシステム制御基板7への電力の供給を遮断する。リレー2の具体的な構成が図7(a)、(b)に示される。
図7(a)は、リレー2の閉状態を示す。リレー2の入力側は、電源スイッチ5を介して、給電ラインL1に電気的に接続される(図1を参照)。リレー2の出力側は、制御基板電源74及び補器類電源75に電気的に接続される(図1を参照)。リレー2は、スイッチ21と、コイル22と、接点23とを備える。図7(a)の点線に示されるように、スイッチ21は、手動操作によって一時的にONの状態になる。スイッチ21がONされると、燃料電池6又はバッテリ8からの電力が制御基板電源74及び補器類電源75に供給される。そして、制御基板電源74がコイル22に電流を流すように制御し、コイル22が磁力を生じさせる。コイル22の磁力によって、接点23が閉状態となる。接点23が閉状態になると、スイッチ21がOFFしても、燃料電池6又はバッテリ8からの電力が、制御基板電源74及び補器類電源75に供給され続ける。
一方、システム制御部71は、上述した燃料電池6に関係する異常が検出された場合に、図9に示される異常検出時処理を行う。すなわち、システム制御部71は、異常の種別情報を表示部73に表示させる制御(ステップS21)、異常の種別情報を不揮発性メモリ72に記憶させる制御(ステップS22)、燃料電池6を停止させる制御(ステップS23)を行う。燃料電池6の停止後は、バッテリ8からの電力がシステム制御基板7に供給される。仮に、燃料電池6の停止後も、表示部73が、異常の種別情報の表示を継続すれば、いずれバッテリ8に残存する電力が全て消費されてしまう。この結果、燃料電池システム1を復帰させることができず、また、燃料電池6に発生した異常の種別情報を表示部73に表示させることもできない。そこで、本実施形態の燃料電池システム1は、異常の検出により燃料電池6が停止された場合に、システム制御部71が、リレー2の接点23を開状態にさせる指令(例えば、信号)を送信し、バッテリ8からシステム制御基板7に供給される電力を自ら遮断する制御を行う。
図7(b)は、リレー2の開状態を示す。リレー2は、システム制御部71からの指令に基づいて、コイル22に流れる電流の供給を停止する。電流がコイル22に流れなくなると、コイル22の磁力が消失する。これにより、接点23が開状態となる。接点23が開状態になると、バッテリ8からシステム制御基板7への電力供給が遮断される。すなわち、システム制御部71は、バッテリ8からシステム制御基板7への電力供給を自ら遮断して、燃料電池システム1を停止させる。このような制御処理により、バッテリ8に残存する電力が、システム制御基板7に消費されない。これにより、バッテリ8に残存する電力が、燃料電池システム1を復帰させるための電力として確保される。また、バッテリ8に残存する電力により、燃料電池システム1の復帰時に、前回の運転時に発生した異常の種別情報を表示部73に表示させることが可能となる。
上述のとおり、ポンプ駆動回路81は、システム制御部71からの指令に基づいて、燃料電池6のエアポンプ61をON/OFF動作させる。ポンプ駆動回路81は、補器類電源75に電気的に接続されている(接続は非図示)。ポンプ駆動回路81には、補器類電源75からの直流電流が供給される。システム制御部71の指令は、例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号である。システム制御部71が、ポンプ駆動回路81に制御信号を送信することで、ポンプ駆動回路81からエアポンプ61への電流供給が開始及び停止される。
上述のとおり、制御弁駆動回路82は、システム制御部71からの指令に基づいて、燃料電池6の配管に配置された複数の制御弁63(図2の第1〜第5制御弁63A〜63E)を個別に開閉動作させる。制御弁駆動回路82は、補器類電源75に電気的に接続されている(接続は非図示)。制御弁駆動回路82は、補器類電源75からの直流電流が供給される。システム制御部71の指令は、例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号である。システム制御部71が、制御弁駆動回路82に制御信号を送信することで、制御弁駆動回路82から複数の制御弁63への電流供給が開始及び停止される。
上述のとおり、ファン駆動回路83は、システム制御部71からの指令に基づいて、冷却ファン65をON/OFF動作させる。ファン駆動回路83は、補器類電源75に電気的に接続されている(接続は非図示)。ファン駆動回路83には、補器類電源75からの直流電流が供給される。システム制御部71の指令は、例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号である。システム制御部71が、ファン駆動回路83に制御信号を送信することで、ファン駆動回路83から冷却ファン65への電流供給が開始及び停止される。
<バッテリ>
バッテリ8は、燃料電池6及びシステム制御基板7と並列に、給電ラインL1に電気的に接続される。バッテリ8は、燃料電池6が停止している場合に、制御基板電源74及び補器類電源75を介して、システム制御基板7、燃料電池6の補器類及び負荷Rに電力を供給する。また、バッテリ8は、燃料電池6が稼働している場合に、燃料電池6から供給される電力で充電される。バッテリ8は、充電可能な二次電池である。本実施形態では、バッテリ8として、24Vの出力電圧を有する鉛蓄電池が用いられる。但し、バッテリ8は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池など、他の二次電池が用いられてよい。また、バッテリ8の出力電圧は24Vに限定されず、他の任意の電圧(例えば、12V)であってよい。
バッテリ8には、温度センサ8aが設けられる。温度センサ8aは、バッテリ8の温度を検出する。温度センサ8aは、検出結果を示す信号を、システム制御部71に送信する。システム制御部71は、温度センサ8aに検出されたバッテリ8の温度が規定値を超えた場合に、バッテリ8の充電を中止する。本実施形態の燃料電池システム1では、例えば、この規定値を40℃に設定してある。なお、バッテリ8の過剰な発熱は、例えば、かつ燃料電池システム1の筐体内に、常に外気を取り入れることで防止することができる。
<出力遮断リレー>
出力遮断リレー9は図示しない入力部と出力部とを有する。出力遮断リレー9の入力部は、給電ラインL1に電気的に接続される。出力遮断リレー9の出力部は、負荷Rに電気的に接続される。出力遮断リレー9は、システム制御部71からの指令(例えば、信号)に基づいて、接点(非図示)を開閉動作させる。
システム制御部71は、燃料電池6の起動後に、バッテリ8の電圧が規定値よりも高いか判断する。システム制御部71は、バッテリ8の電圧が規定値よりも高いと判別した場合、すなわち、バッテリ8に所定の充電量が残存している場合には、出力遮断リレー9の接点を閉状態にさせる指令を送信する。出力遮断リレー9は、システム制御部71の指令に基づいて、接点を閉状態にさせる。これにより、燃料電池6又はバッテリ8からの電力が負荷Rに供給される。
一方、システム制御部71は、バッテリ8の電圧が規定値以下であると判別した場合、すなわち、バッテリ8に所定の充電量が残存していない場合には、出力遮断リレー9は、接点の開状態を維持させる。これにより、燃料電池6からの電力は、負荷Rに供給されず、バッテリ8に充電される。その後、バッテリ8の電圧が規定値よりも高くなった場合に、システム制御部71は、出力遮断リレー9の接点を閉状態にさせる指令を送信する。出力遮断リレー9は、システム制御部71の指令に基づいて、接点を閉状態にさせる。これにより、燃料電池6又はバッテリ8からの電力が負荷Rに供給される。
システム制御部71は、燃料電池6の停止後に、出力遮断リレー9の接点を開状態にさせる指令を送信する。出力遮断リレー9は、システム制御部71の指令に基づいて、接点を開状態にさせる。これにより、バッテリ8から負荷Rへの電力供給が遮断される。すなわち、バッテリ8に残存する電力が、負荷Rに消費されずに確保される。
<システムの制御処理>
次に、本実施形態の燃料電池システム1の制御処理の流れについて、図8、図9及び図10を参照しつつ説明する。図8、図9及び図10に示される各ステップは、上述したシステム制御部71により実行される。なお、図8、図9及び図10に示される各ステップが、複数の制御部により実行される構成としてもよいことは、上述のとおりである。
<<制御処理の概要>>
図8は、燃料電池システム1の通常運転時処理のメインルーチンを示す。図9は、燃料電池システム1の異常検出時処理のサブルーチンを示す。図10は、燃料電池システム1の異常報知・復帰処理のサブルーチンを示す。
燃料電池システム1は、通常の運転時において、図8に示されるメインルーチンの制御処理を行う。燃料電池システム1が起動された後、ステップS1において、前回の運転時に燃料電池6に関係する異常が検出されたかが判断される。異常が検出されないと判別された場合(NO)は、ステップS2に進み、燃料電池6を起動させる制御が行われる。一方、異常が検出されたと判別された場合(YES)は、ステップS30に進む。燃料電池システム1の制御処理は、図10に示される異常報知・復帰処理のサブルーチンに移行される。この異常報知・復帰処理では、ステップS31の異常の種別情報を表示させる制御と、ステップS32〜S39の復帰可否に関する判断とを経て、ステップS2の燃料電池6を起動させる制御が行われるかが決定される。
ステップS2の燃料電池6の起動制御が行われた後は、ステップS3に進み、バッテリ8の電圧値が規定値よりも高いか、すなわち、バッテリ8に所定の充電量が残存しているかが判断される。バッテリ8の電圧値が規定値よりも高いと判別された場合(YES)は、ステップS4に進み、出力遮断リレー9が閉状態にされる。これにより、バッテリ8からの電力が負荷Rに供給される。一方、バッテリ8の電圧値が規定値以下であると判別された場合(NO)は、バッテリ8の電圧値が規定値よりも高くなるまで、ステップS3の判断が繰り返される。
燃料電池6の起動後は、ステップS5〜S9におけるいずれかの異常が検出されたかが判断される。ステップS5〜S9において、いずれかの異常が検出された場合(YES)は、ステップS20に進む。燃料電池システム1の制御処理は、図9に示される異常検出時処理のサブルーチンに移行される。この異常検出時処理では、異常の種別情報を表示させる制御(ステップS21)と、異常の種別情報を記憶させる制御(ステップS22)と、燃料電池6を停止させる制御(ステップS23)と、出力遮断リレー9の接点を開状態にさせる制御(ステップS24)と、リレー2の接点23を開状態にさせる制御(ステップS25)とが行われる。これにより、燃料電池システム1の制御処理は終了する。
一方、ステップS5〜S9において、いずれの異常も検出されない場合(NO)は、ステップS10に進み、電源スイッチ5がOFFにされたか判断される。電源スイッチ5がOFFにされていないと判別された場合(NO)は、ステップS5〜S9の判断が繰り返される。一方、電源スイッチ5がOFFにされたと判別された場合(YES)は、ステップS11に進み、燃料電池6を停止させる制御が行われる。その後、ステップS12に進み、出力遮断リレー9の接点を開状態にさせる制御が行われる。最後に、ステップS13において、リレー2の接点を開状態にさせる制御が行われる。これにより、燃料電池システム1の通常運転時処理は終了する。
<<通常運転時処理>>
燃料電池システム1の通常運転時処理について、図8を参照しつつ説明する。燃料電池システム1は、図1に示される電源スイッチ5がONにされることで起動され、電源スイッチ5がOFFにされることで停止される。前回の運転時において、電源スイッチ5がOFFにされ、燃料電池システム1が正常に停止された場合は、電源スイッチ5がONにされることで、燃料電池システム1は起動する。燃料電池6が起動される前は、バッテリ8からの電力がシステム制御基板7に供給される。システム制御部71は、バッテリ8からの電力を消費して、システムを起動させる。システムの起動後に、システム制御部71は、図8に示される通常運転処理のメインルーチンを実行する。
ステップS1において、システム制御部71は、前回の運転時に燃料電池6に関係する異常が検出されたかを判断する。すなわち、システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された運転履歴の情報にアクセスし、前回の運転時に検出された異常の種別情報が記憶されているかを判断する。システム制御部71は、前回の運転時に燃料電池6に関係する異常が検出されていない、すなわち、異常の種別情報が記憶されていないと判別した場合(NO)は、制御処理をステップS2に移行させる。
ステップS2において、システム制御部71は、燃料電池6を起動させる制御処理を行う。ここで、燃料電池6を起動させる制御処理の概要について、図1及び図2を参照しつつ説明する。図2に示されるように、スタック100のアノード側の入口に接続された水素流路部材10には、第1制御弁63A及び第2制御弁63Bが配置される。スタック100のアノード側の出口に接続された水素流路部材10には、第3制御弁63Cが配置される。スタック100のカソード側の出口に接続された空気流路部材20には、第4制御弁63Dが配置される。置換流路部材30の途中には、第5制御弁63Eが配置される。燃料電池6が停止状態のときには、第1制御弁63A、第2制御弁63B、第3制御弁63C、第4制御弁63D及び第5制御弁63Eは、全て閉じた状態となっている。
システム制御部71は、制御弁駆動回路82に対して、第1制御弁63A、第2制御弁63B及び第3制御弁63Cのそれぞれを開動作させる指令(例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号)を送信する。制御弁駆動回路82は、システム制御部71からの指令に基づいて、第1制御弁63A、第2制御弁63B及び第3制御弁63Cへの電流供給を開始する。制御弁駆動回路82からの電流供給を受けた第1制御弁63A、第2制御弁63B及び第3制御弁63Cは、それぞれ開いた状態となる。これにより、MHタンク62内の水素吸蔵合金から放出された水素が、アノード側の入口に接続された水素流路部材10を介して、スタック100のアノード側に供給される。時間の経過に伴い、スタック100を構成する各セパレータ110のアノード側の第2流路117a(図5(b)を参照)が、水素によって満たされる。
システム制御部71は、制御弁駆動回路82に対して、第4制御弁63Dを開動作させる指令(例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号)を送信する。制御弁駆動回路82は、システム制御部71からの指令に基づいて、第4制御弁63Dへの電流供給を開始する。制御弁駆動回路82からの電流供給を受けた第4制御弁63Dは、開いた状態となる。これにより、スタック100のカソード側の出口に接続された空気流路部材20が開放される。
システム制御部71は、所定時間の経過後、すなわち、スタック100を構成する各セパレータ110のアノード側の第2流路aが水素によって満たされた後に、制御弁駆動回路82に対して、第3制御弁63Cを閉動作させる指令(例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号)を送信する。制御弁駆動回路82は、システム制御部71からの指令に基づいて、第3制御弁63Cへの電流供給を停止する。制御弁駆動回路82からの電流供給が断たれた第3制御弁63Cは、閉じた状態となる。これにより、スタック100のアノード側の出口に接続された水素流路部材10が閉鎖される。
システム制御部71は、ポンプ駆動回路81に対して、エアポンプ61をONさせる指令(例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号)を送信する。ポンプ駆動回路81は、システム制御部71からの指令に基づいて、エアポンプ61への電流供給を開始する。ポンプ駆動回路81からの電流供給を受けたエアポンプ61がONになる。エアポンプ61は、スタック100のカソード側の入口に接続された空気流路部材20に空気の供給を開始する。これにより、スタック100を構成する各セパレータ110のカソード側の第1流路111a(図5(a)を参照)に空気が供給され、スタック100による発電が開始される。
次いで、システム制御部71は、制御処理をステップS3に移行させる。ステップS3において、システム制御部71は、バッテリ8の電圧値が規定値よりも高いか判断する。システム制御部71は、バッテリ8の電圧値が規定値よりも高いと判別した場合(YES)、すなわち、バッテリ8に所定の充電量が残存している場合には、制御処理をステップS4に移行させる。ステップS4において、システム制御部71は、出力遮断リレー9の接点を閉状態にさせる指令(例えば、信号)を送信する。出力遮断リレー9は、システム制御部71の指令に基づいて、接点を開状態から閉状態に切り換える。これにより、燃料電池6又はバッテリ8からの電力が、出力遮断リレー9を介して、負荷Rに供給される。
一方、ステップS3において、システム制御部71は、バッテリ8の電圧値が規定値以下であると判別した場合(NO)、すなわち、バッテリ8に所定の充電量が残存していない場合には、ステップS3の判断を繰り返す。この間、バッテリ8は、燃料電池6から電力の供給を受けて充電される。そして、システム制御部71は、バッテリ8の電圧値が規定値よりも高いと判別した場合(YES)、すなわち、バッテリ8に所定の充電量が残存している場合には、制御処理を、上述したステップS4に移行させる。
次いで、システム制御部71は、制御処理をステップS5に移行させる。ステップS5において、システム制御部71は、水素漏洩検出部67aに検出された水素濃度の値が規定値を超えるか、すなわち、水素漏洩が検出されたかを判断する。システム制御部71は、水素漏洩検出部67aに検出された水素濃度の値が規定値を超えると判別した場合(YES)、すなわち、水素漏洩が検出された場合には、制御処理をステップS20に移行させ、図9に示される異常検出時処理のサブルーチンを実行する。一方、ステップS5において、システム制御部71は、水素漏洩検出部67aに検出された水素濃度の値が規定値以下であると判別した場合(NO)、すなわち、水素漏洩が検出されない場合には、制御処理をステップS6に移行させる。
ステップS6において、システム制御部71は、スタック100の異常が検出されたかを判断する。本実施形態では、スタック100の異常として、スタック100の異常加熱と、スタック100の寿命とを例示する。
システム制御部71は、温度センサ64aの検出結果に基づいて、スタック100が異常加熱したかを判断する。温度センサ64aは、スタック100から排気されたガスの温度を検出する。ステップS6において、システム制御部71は、温度センサ64aに検出された温度が規定値を超えると判別した場合(YES)、すなわち、スタック100の異常が検出された場合には、制御処理をステップS20に移行させ、図9に示される異常検出時処理のサブルーチンを実行する。一方、システム制御部71は、温度センサ64aに検出された温度が規定値以下であると判別した場合(NO)、すなわち、スタック100の異常が検出されない場合には、スタック100の寿命を判断する。
システム制御部71は、電流/電圧検出部76に検出されたスタック100の電圧値に基づいて、スタック100の寿命を判断する。ステップS6において、システム制御部71は、スタック100の寿命が零に近い規定値に達したと判別した場合(YES)、すなわち、スタック100の異常が検出された場合には、制御処理をステップS20に移行させ、図9に示される異常検出時処理のサブルーチンを実行する。一方、システム制御部71は、スタック100の寿命が零に近い規定値に達していないと判別した場合(NO)、すなわち、スタック100の異常が検出されない場合には、制御処理をステップS7に移行させる。
ステップS7において、システム制御部71は、MHタンク62が水素切れになったかを判断する。システム制御部71は、電流/電圧検出部76に検出されたスタック100の電流値に基づいて、MHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素残量を算出する。システム制御部71は、MHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素残量が零に近い規定値に達したと判別した場合(YES)、すなわち、MHタンク62が水素切れになった場合には、制御処理をステップS20に移行させ、図9に示される異常検出時処理のサブルーチンを実行する。一方、システム制御部71は、MHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素残量が零に近い規定値に達していないと判別した場合(NO)、すなわち、MHタンク62が水素切れになっていない場合には、制御処理をステップS8に移行させる。
ステップS8において、システム制御部71は、燃料電池システム1の筐体内の温度が異常かを判断する。システム制御部71は、筐体内温度検出部66aから受信した信号が示す筐体内の温度が40℃を超えたときに、冷却ファン65をONにさせる指令(例えば、信号)をファン駆動回路83に送信する。ステップS8において、システム制御部71は、冷却ファン65をONにさせる指令をファン駆動回路83に送信してから規定時間が経過しても、筐体内の温度が40℃を超えるかを判断する。システム制御部71は、筐体内の温度が40℃を超えると判別した場合(YES)、すなわち、筐体内の温度が異常である場合には、制御処理をステップS20に移行させ、図9に示される異常検出時処理のサブルーチンを実行する。一方、システム制御部71は、筐体内の温度が40℃を超えないと判別した場合(NO)、すなわち、筐体内の温度が異常でない場合には、制御処理をステップS9に移行させる。
ステップS9において、システム制御部71は、その他の異常が検出されたかを判断する。システム制御部71は、その他の異常が検出されたと判別した場合(YES)には、制御処理をステップS20に移行させ、図9に示される異常検出時処理のサブルーチンを実行する。一方、システム制御部71は、その他の異常が検出されないと判別した場合(NO)には、制御処理をステップS10に移行させる。
ステップS10において、システム制御部71は、電源スイッチ5がOFFにされたかを判断する。システム制御部71は、電源スイッチ5がOFFにされていないと判別した場合(NO)には、上述したステップS5〜S9の燃料電池6に関係する異常検出の判断を繰り返す。一方、システム制御部71は、電源スイッチ5がOFFにされたと判別した場合(YES)には、制御処理をステップS11に移行させる。
ステップS11において、システム制御部71は、燃料電池6を停止させる制御処理を行う。ここで、燃料電池6を停止させる制御処理の概要について、図1及び図2を参照しつつ説明する。燃料電池6が運転状態のときには、第1制御弁63A、第2制御弁63B及び第4制御弁63Dは、開いた状態となっている。第3制御弁63C及び第5制御弁63Eは、閉じた状態となっている。
システム制御部71は、制御弁駆動回路82に対して、第1制御弁63A及び第4制御弁63Dを閉動作させる指令(例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号)を送信する。制御弁駆動回路82は、システム制御部71からの指令に基づいて、第1制御弁63A及び第4制御弁63Dへの電流供給を停止する。制御弁駆動回路82からの電流供給が断たれた第1制御弁63A及び第4制御弁63Dは、閉じた状態となる。これにより、MHタンク62からスタック100のアノード側への水素の供給が停止される。また、スタック100のカソード側の出口に接続された空気流路部材20が閉鎖される。
システム制御部71は、制御弁駆動回路82に対して、第3制御弁63C及び第5制御弁63Eを開動作させる指令(例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号)を送信する。制御弁駆動回路82は、システム制御部71からの指令に基づいて、第3制御弁63C及び第5制御弁63Eへの電流供給を開始する。制御弁駆動回路82からの電流供給を受けた第3制御弁63C及び第5制御弁63Eは、開いた状態となる。第5制御弁63Eが開いた状態となることで、置換流路部材30を介して、水素流路部材10と空気流路部材20とが連通する。これにより、エアポンプ21から供給される空気が、空気流路部材20、置換流路部材30及び燃料ガス流路部材10を通って、スタック100のアノード側に流れる。この結果、スタック100を構成する各セパレータ110の第2流路117a(図5(b)を参照)に残留した水素が、スタック100のアノード側の出口に接続された水素流路部材10から外部へ排出される。
システム制御部71は、ポンプ駆動回路81に対して、エアポンプ61をOFFさせる指令(例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号)を送信する。ポンプ駆動回路81は、システム制御部71からの指令に基づいて、エアポンプ61への電流供給を停止する。ポンプ駆動回路81からの電流供給が断たれたエアポンプ61がOFFになる。エアポンプ61は、スタック100のカソード側の入口に接続された空気流路部材20への空気の供給を停止する。
システム制御部71は、制御弁駆動回路82に対して、第2制御弁63B、第3制御弁63C及び第5制御弁63Eを閉動作させる指令(例えば、トランジスタのON/OFFによって生成される制御信号)を送信する。制御弁駆動回路82は、システム制御部71からの指令に基づいて、第2制御弁63B、第3制御弁63C及び第5制御弁63Eへの電流供給を停止する。制御弁駆動回路82からの電流供給が断たれた第2制御弁63B、第3制御弁63C及び第5制御弁63Eは、閉じた状態となる。これにより、第1制御弁63A、第2制御弁63B、第3制御弁63C、第4制御弁63D及び第5制御弁63Eの全てが閉じた状態となり、燃料電池6を停止させる制御が完了する。燃料電池6の停止後は、バッテリ8からの電力がシステム制御基板7に供給される。以後、システム制御部71は、バッテリ8からの電力を消費して、ステップS12の制御処理を行う。
次いで、システム制御部71は、制御処理をステップS12に移行させる。ステップS12において、システム制御部71は、出力遮断リレー9の接点を開状態にさせる指令を送信する。出力遮断リレー9は、システム制御部71の指令に基づいて、接点を開状態にさせる。これにより、バッテリ8から負荷Rへの電力供給が遮断される。その後、システム制御部71は、制御処理をステップS13に移行させる。ステップS13において、システム制御部71は、リレー2の接点23を開状態にさせる指令(例えば、信号)を送信する。リレー2は、システム制御部71の指令に基づいて、コイル22に流れる電流の供給を停止する。システム制御部71は、燃料電池システム1の通常運転時処理を終了する。
<<異常検出時処理>>
次に、燃料電池システム1の異常検出時処理について、図9を参照しつつ説明する。システム制御部71は、図8に示されるステップS5〜S9のいずれかにおいて、燃料電池6に関係する異常が検出されたと判別した場合(YES)には、制御処理をステップS20に移行させ、図9に示される異常検出時処理のサブルーチンを実行する。
ステップS21において、システム制御部71は、ステップS5〜S9のいずれかにおいて検出された異常の種別情報を、表示部73に表示させる。ステップS5の筐体内における水素漏洩、ステップS6のスタック100の異常(異常加熱、寿命)、ステップS7のMHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素切れ、ステップS8の筐体内の温度異常、ステップS9のその他の異常には、例えば、「E01」、「E02」、「E03」、「E04」、「E05」、「E06」・・・といったエラー番号のように、異なる種別情報が割り当てられる。システム制御部71は、ステップS5〜S9のいずれかにおいて異常が検出された場合に、この異常に割り当てられた種別情報を表示させる指令(例えば、信号)を送信する。表示部73は、システム制御部71の指令に基づいて、いずれかの種別情報を表示する。
なお、表示部73による異常種別の表示に加えて、燃料電池システム1がスピーカなどの報知部を有する場合は、ステップS21における異常の種別情報の表示と同時に、スピーカからアラームを鳴らす制御が行われるようにしてもよい。
次いで、システム制御部71は、制御処理をステップS22に移行させる。ステップS22において、システム制御部71は、ステップS5〜S9のいずれかにおいて検出された異常の種別情報を、不揮発性メモリ72に記憶させる。例えば、システム制御部71は、ステップS5〜S9のいずれかにおいて異常が検出された場合に、その異常に割り当てられた種別情報を、不揮発性メモリ72に記憶させる。不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報は、図10に示された異常報知・復帰処理におけるステップS31の異常の種別情報を表示させる制御に用いられる。
次いで、システム制御部71は、制御処理をステップS23に移行させる。ステップS23において、システム制御部71は、燃料電池6を停止させる制御処理を行う。燃料電池6を停止させる制御処理の内容については、上述したとおりである。燃料電池6の停止後は、バッテリ8からの電力がシステム制御基板7に供給される。以後、システム制御部71は、バッテリ8からの電力を消費して、ステップS24、S25の制御処理を行う。
次いで、システム制御部71は、制御処理をステップS24に移行させる。ステップS24において、システム制御部71は、出力遮断リレー9の接点を開状態にさせる指令を送信する。出力遮断リレー9は、システム制御部71の指令に基づいて、接点を開状態にさせる。これにより、バッテリ8から負荷Rへの電力供給が遮断される。
次いで、システム制御部71は、制御処理をステップS25に移行させる。ステップS25において、システム制御部71は、リレー2の接点23を開状態にさせる指令(例えば、信号)を送信する。リレー2は、システム制御部71の指令に基づいて、コイル22に流れる電流の供給を停止する。バッテリ8からの電流がコイル22に流れなくなると、コイル22の磁力が消失する。これにより、接点23が開状態となる。接点23が開状態になると、バッテリ8からシステム制御基板7への電力供給が遮断される。すなわち、システム制御部71は、バッテリ8からシステム制御基板7への電力供給を自ら遮断して、燃料電池システム1を停止させる。このような制御処理により、バッテリ8に残存する電力が、システム制御基板7に消費されない。バッテリ8に残存する電力が、燃料電池システム1を復帰させるための電力として確保される。バッテリ8に残存する電力により、燃料電池システム1の復帰時に、燃料電池6に発生した異常の種別情報を表示部73に表示させることが可能となる。その後、システム制御部71は、燃料電池システム1の異常発生時処理を終了する。
なお、本実施形態の燃料電池システム1では、システム制御部71が、バッテリ8からシステム制御基板7への電力供給を自ら遮断することで、バッテリ8に残存する電力を確保する構成となっている。しかし、本発明の燃料電池システムは、システム制御基板7への電力供給を遮断する構成に限定されるものではない。例えば、システム制御部71が、燃料電池システム1を停止させた後に、自らスリープモードとなり、バッテリ8から供給される電力の消費量を低減させる構成としてもよい。
<<異常報知・復帰処理>>
次に、燃料電池システム1の異常報知・復帰処理について、図8及び図10を参照しつつ説明する。図9に示される異常発生時処理が実行された場合、燃料電池システム1は、図7(b)に示されるリレー2のスイッチ21が、管理者の手動操作で一時的にONの状態(図7(a)を参照)にされることで再起動される。スイッチ21がONになると、バッテリ8からの電力が、システム制御基板7に供給される。システム制御基板7に電力が供給されると、システム制御部71は、リレー2の接点23を閉状態にさせる指令(例えば、信号)を送信する。リレー2は、システム制御部71の指令に基づいて、バッテリ8から供給される電流をコイル22に流す。これにより、コイル22が磁力を生じさせる。コイル22の磁力によって、接点23が閉状態となる。接点23が閉状態になると、スイッチ21がOFFの状態になっても、バッテリ8からの電力が、システム制御基板7に供給され続ける。以下に述べるシステム制御部71の制御処理は、図9のステップS25においてリレー2が開状態とされたことにより確保された、バッテリ8の電力を消費して行われる。
燃料電池システム1が再起動されると、システム制御部71は、図8のステップS1の制御処理を行う。すなわち、ステップS1において、システム制御部71は、前回の運転時に燃料電池6に関係する異常が検出されたかを判断する。システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された運転履歴の情報にアクセスし、前回の運転時に検出された異常の種別情報を検索する。システム制御部71は、前回の運転時に燃料電池6に関係する異常が検出された、すなわち、異常の種別情報が記憶されていると判別した場合(YES)は、制御処理をステップS30に移行させ、図10に示される異常報知・復帰処理のサブルーチンを実行する。
ステップS31において、システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報を表示させる指令(例えば、信号)を送信する。表示部73は、システム制御部71の指令に基づいて、前回の運転時に検出された異常の種別情報を表示する。これにより、管理者は、燃料電池システム1を復帰させる際に、前回の運転時に発生した異常の種別を特定することが可能である。
次いで、システム制御部71は、制御処理をステップS32に移行させる。ステップS32において、システム制御部71は、前記の運転時に発生した異常の種別が、水素漏洩であるかを判断する。すなわち、システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、図8のステップS5で検出される筐体内における水素漏洩に割り当てられたものかを判断する。システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、水素漏洩に割り当てられたものであると判別した場合(YES)、すなわち、前記の運転時に発生した異常の種別が、水素漏洩である場合には、燃料電池システム1の異常報知・復帰処理を終了する。これにより、燃料電池システム1の制御処理は、図8のステップS2に移行されず、燃料電池6は再起動されない。水素漏洩が検出された場合、水素流路部材10等の劣化又は損傷による燃料電池6の故障の可能性を示す。このような故障した状態での燃料電池システム1の再起動は、ステップS32の制御処理によって未然に防止される。
一方、ステップS32において、システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、水素漏洩に割り当てられたものでないと判別した場合(NO)、すなわち、前記の運転時に発生した異常の種別が、水素漏洩でない場合には、制御処理をステップS33に移行させる。
ステップS33において、システム制御部71は、前記の運転時に発生した異常の種別が、スタック100の異常であるかを判断する。上述のとおり、本実施形態では、スタック100の異常として、スタック100の異常加熱と、スタック100の寿命とを例示する。システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、図8のステップS6で検出されるスタック100の異常加熱又は寿命のいずれかに割り当てられたものかを判断する。システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、スタック100の異常加熱又は寿命のいずれかに割り当てられたものであると判別した場合(YES)、すなわち、前記の運転時に発生した異常の種別が、スタック100の異常加熱又は寿命である場合には、燃料電池システム1の異常報知・復帰処理を終了する。これにより、燃料電池システム1の制御処理は、図8のステップS2に移行されず、燃料電池6は再起動されない。スタック100の異常加熱と、スタック100の寿命とは、いずれも膜/電極接合体130の劣化又な損傷による燃料電池6の故障の可能性を示す。このような故障した状態での燃料電池6の再起動は、ステップS33の制御処理によって未然に防止される。
一方、ステップS33において、システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、スタック100の異常加熱又は寿命のいずれに割り当てられたものでないと判別した場合(NO)、すなわち、前記の運転時に発生した異常の種別が、スタック100の異常加熱又は寿命でない場合には、制御処理をステップS34に移行させる。
ステップS34において、システム制御部71は、前記の運転時に発生した異常の種別が、MHタンク62に内蔵された水素吸蔵合金の水素切れであるかを判断する。すなわち、システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、図8のステップS7で検出されるMHタンク62の水素切れに割り当てられたものかを判断する。システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、MHタンク62の水素切れに割り当てられたものであると判別した場合(YES)、すなわち、前記の運転時に発生した異常の種別が、MHタンク62の水素切れである場合には、制御処理をステップS35に移行させる。
ステップS35において、システム制御部71は、MHタンク62の交換が行われたかを判断する。システム制御部71は、MHタンク62の交換が行われたと判別した場合(YES)には、制御処理を図8のステップS2に移行させる。ステップS2において、システム制御部71は、燃料電池6を起動させる制御処理を行う。燃料電池6を起動させる制御処理の内容については、上述したとおりである。以後、システム制御部71は、図8に示される通常運転時処理のステップS3以降の制御処理を行う。一方、ステップS35において、システム制御部71は、MHタンク62の交換が行われていないと判別した場合(NO)には、MHタンク62の交換が行われるまで、ステップS35の判断を繰り返す。すなわち、システム制御部71は、水素切れになったMHタンク62が交換されるまで、燃料電池6を起動させる制御処理(図8のステップS2)を行わない。
一方、ステップS34において、システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、MHタンク62の水素切れに割り当てられたものでないと判別した場合(NO)、すなわち、前記の運転時に発生した異常の種別が、MHタンク62の水素切れでない場合には、制御処理をステップS36に移行させる。
ステップS36において、システム制御部71は、前記の運転時に発生した異常の種別が、筐体内の温度異常であるかを判断する。すなわち、システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、図8のステップS8で検出される筐体内の温度異常に割り当てられたものかを判断する。システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、筐体内の温度異常に割り当てられたものであると判別した場合(YES)、すなわち、前記の運転時に発生した異常の種別が、筐体内の温度異常である場合には、制御処理をステップS37に移行させる。
ステップS37において、システム制御部71は、現時点で筐体内の温度異常が解消しているかを判断する。すなわち、システム制御部71は、筐体内温度検出部66aの検出結果に基づいて、燃料電池6が収容された筐体内の温度異常を検出する。システム制御部71は、筐体内温度検出部66aの検出結果を規定値の40℃と比較する。システム制御部71は、筐体内の温度が40℃以下であると判別した場合(YES)、すなわち、筐体内の温度異常が解消している場合には、制御処理を図8のステップS2に移行させる。ステップS2において、システム制御部71は、燃料電池6を起動させる制御処理を行う。燃料電池6を起動させる制御処理の内容については、上述したとおりである。以後、システム制御部71は、図8に示される通常運転時処理のステップS3以降の制御処理を行う。一方、ステップS37において、システム制御部71は、筐体内の温度が40℃を超えると判別した場合(NO)、すなわち、筐体内の温度異常が解消していない場合には、ステップS37の判断を繰り返す。システム制御部71は、筐体内の温度が40℃以下となるまで、図8のステップS2における燃料電池6を起動させる制御処理を行わない。その後、筐体内の温度が40℃以下となった場合に、システム制御部71は、制御処理を図8のステップS2に移行させ、燃料電池6を起動させる制御処理を行う。
一方、ステップS36において、システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、筐体内の温度異常に割り当てられたものでないと判別した場合(NO)、すなわち、前記の運転時に発生した異常の種別が、筐体内の温度異常でない場合には、制御処理をステップS38に移行させる。ステップS38において、システム制御部71は、前記の運転時に発生した異常の種別が、図8のステップS9で検出されるその他の異常であると決定する。すなわち、システム制御部71は、不揮発性メモリ72に記憶された異常の種別情報が、その他の異常に割り当てられたものであると決定する。その後、システム制御部71は、制御処理をステップS39に移行させる。
ステップS39において、システム制御部71は、図8のステップS9で検出されるその他の異常に割り当てられた規定処理が行われたかを判断する。システム制御部71は、その他の異常に割り当てられた規定処理が行われたと判別した場合(YES)、すなわち、その他の異常が規定処理によって解消された場合には、制御処理を図8のステップS2に移行させる。ステップS2において、システム制御部71は、燃料電池6を起動させる制御処理を行う。燃料電池6を起動させる制御処理の内容については、上述したとおりである。以後、システム制御部71は、図8に示される通常運転時処理のステップS3以降の制御処理を行う。
一方、ステップS39において、システム制御部71は、図8のステップS9で検出されるその他の異常に割り当てられた規定処理が行われていないと判別した場合(NO)、すなわち、その他の異常が未だ解消されていない場合には、ステップS39の判断を繰り返す。システム制御部71は、その他の異常に割り当てられた規定処理が行われるまで、図8のステップS2における燃料電池6を起動させる制御処理を行わない。その後、その他の異常に割り当てられた規定処理が行われた場合に、システム制御部71は、制御処理を図8のステップS2に移行させ、燃料電池6を起動させる制御処理を行う。
<作用効果>
本実施形態の燃料電池システム1によれば、図8のステップS5〜S9におけるいずれかの燃料電池6に関係する異常が検出された場合に、システム制御部71が、リレー2を開状態にして、バッテリ8からシステム制御基板7への電力の供給を自ら遮断する制御を行う(図9のステップS25)。このような制御処理により、バッテリ8には、燃料電池システム1を復帰させるための電力が確保される。
また、本実施形態の燃料電池システム1によれば、図8のステップS5〜S9におけるいずれかの燃料電池6に関係する異常が検出された場合に、システム制御部71が、検出された異常に関する情報を不揮発性メモリ72に記憶させる(図9のステップS22)。このような制御処理により、燃料電池システム1の復帰させる際に、前回の運転時に発生した燃料電池6の異常に関する情報を表示部73に表示させることが可能となる(図10のステップS31)。したがって、管理者は、燃料電池システム1を復帰させる際に、前回の運転時に発生した燃料電池6の異常内容を特定することができる。これにより、管理者は、燃料電池6に発生した異常を解消するための適切な措置を講ずることが可能となる。