JP2015191013A - 電子写真感光体、その製造方法、該電子写真感光体を有する電子写真装置およびプロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、その製造方法、該電子写真感光体を有する電子写真装置およびプロセスカートリッジ Download PDF

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正樹 野中
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Abstract

【課題】高温・高湿条件下で長期間使用した時に発生しやすいクリーニングブレードのめくれに起因する画像不良を抑制する。
【解決手段】電子写真感光体の表面層が、反応性官能基を有する正孔輸送物質の重合物を含有し、かつX線光電子分光測定(XPS測定)による表面層の最表面におけるアミン構造由来の窒素原子含有比率と、最表面から0.2μmの内部におけるアミン構造由来の窒素原子含有比率が共に0.7atm%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は電子写真感光体、その製造方法、ならびに、該電子写真感光体を有する電子写真装置およびプロセスカートリッジに関する。
有機光導電性物質を含有する電子写真感光体の耐久性を向上させることを目的として、電子写真感光体表面の材料や物性等を改良する技術が検討されている。また、電子写真感光体の感光層上に保護層を設け、更なる耐久性向上をはかることも検討されている。
特許文献1には、トリフェニルアミン骨格からなる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化することにより形成される表面層が開示されている。
特許文献2には、電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を、硬化することにより形成された表面層に、特定のアミン化合物を含有させる技術が開示されている。
しかしながら、このように電子写真感光体の耐久性を高めることにより、特に高温高湿環境での繰り返し使用時にクリーニングブレード性能の低下に起因する画像不良が発生する場合があった。これは、帯電工程において発生する放電生成物が電子写真感光体表面に付着したり、感光体の表面層に用いられている材料が劣化したりすることによる電子写真感光体の摩擦係数上昇が原因であると考えられている。電子写真感光体の耐久性が高まると、付着物や劣化層が除去されにくくなり、クリーニングブレードめくれが発生しやすくなる場合がある。
特開2007−279678号公報 特開2004−302451号公報
本発明の課題は、耐摩耗性の高い電子写真感光体において、クリーニングブレード性能の低下による画像不良を効率的に抑制し、かつ電気特性に優れた電子写真感光体、その製造方法を提供することにある。また、本発明の別の課題は、該電子写真感光体を有する電子写真装置およびプロセスカートリッジを提供することにある。
本発明は、支持体および該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体であって、該電子写真感光体の表面層が、反応性官能基を有する正孔輸送物質の重合物を含有し、該正孔輸送物質の該反応性官能基以外の構造が、炭素原子および水素原子のみからなる構造、または、炭素原子、水素原子および酸素原子のみからなる構造であり、X線光電子分光測定(XPS測定)による該表面層の最表面におけるアミン構造由来の窒素原子含有比率が0.7atm%以下であり、該表面層の最表面から0.2μmの内部におけるアミン構造由来の窒素原子含有比率が0.7atm%以下であることを特徴する電子写真感光体に関する。
また、本発明は、上記の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置に関する。
また、本発明は、上記の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
また、本発明は、支持体および該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
反応性官能基を有する正孔輸送物質、およびアミン化合物を含有する表面層用塗布液の塗膜を形成し、該塗膜を硬化させて表面層を形成する工程を有し、
該正孔輸送物質の該反応性官能基以外の構造が、
炭素原子および水素原子のみからなる構造、または、
炭素原子、水素原子および酸素原子のみからなる構造
であり、
該表面層用塗布液中の該アミン化合物の含有比率が、該正孔輸送物質と該アミン化合物の合計量に対して30質量%以下であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法に関する。
本発明によれば、耐摩耗性の高い電子写真感光体において、クリーニングブレード性能の低下による画像不良を抑制し、かつ電位変動に優れた電子写真感光体、その製造方法を提供することができる。
また、上記電子写真感光体を有する電子写真装置およびプロセスカートリッジを提供することができる。
本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。 本発明に係る電子写真感光体の層構成を説明するための図である。
以下に本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本発明は、支持体および支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体に関する。電子写真感光体の表面層は、反応性官能基を有する正孔輸送物質の重合物を含有し、正孔輸送物質の反応性官能基以外の構造が、炭素原子および水素原子のみからなる構造、または、炭素原子、水素原子および酸素原子のみからなる構造である。また、X線光電子分光測定(XPS測定)による表面層の最表面におけるアミン構造由来の窒素原子含有比率が0.7atms%以下であり、表面層の最表面から0.2μmの内部におけるアミン構造由来の窒素原子含有比率が0.7atm%以下である。
一般的に、電子写真感光体に用いられてきた正孔輸送物質としては、カルバゾール化合物、ヒドラゾン化合物、N,N−ジアルキルアリールアミン化合物、ジアリールアミン化合物、トリアリールアミン化合物、ピラゾリン化合物、エナミン化合物、アミノ基を有するスチリル化合物、アミノ基を有するスチルベン化合物、アミノ基を有するトリフェニルメタン化合物等がある。
従来の電子写真感光体に用いる正孔輸送物質としては、感光層中での電子の授受に関与し、正孔の注入および搬送を効率的に起こすために、アミン化合物、特に芳香族アミン化合物が最も多く用いられてきた。
アミン化合物を正孔輸送物質として用いる場合、アミン化合物は正孔輸送性能には優れているが、酸化等の劣化を受けやすいという傾向がある。特に、電子写真装置内で使用される際、電子写真感光体表面への帯電の過程において、帯電等で生成したオゾン、窒素酸化物等の酸化性ガス等の作用により、電子写真感光体表面が酸化等の劣化を受けやすくなると考えられている。
構成材料の酸化劣化を考えた場合、オゾンや窒素酸化物等の酸化性ガス、更には熱や光の作用により、感光体表面が酸化され、酸化により表面部材の極性基が増加し、それがさらに放電生成物を付着させやすくなる。その結果生じた、極性基や放電生成物の付着が、高温多湿環境と合わさって、感光体表面の動摩擦係数を上昇させ、クリーニングブレードの性能の低下が発生しやすくなると考えられる。
また、窒素酸化物とアミン化合物の間で電子移動反応が起こり、それらがイオン対を形成することにより感光体表面を低抵抗化させ、高温多湿環境と合わさって、感光体表面の動摩擦係数を上昇させると考えられる。
そこで本発明者等は鋭意検討を行った。その結果、X線光電子分光測定(XPS測定)による該表面層の最表面と、最表面から0.2μmの内部でのアミン構造由来の窒素原子含有比率が共に0.7atm%以下であることが、前記摩擦係数の上昇を抑制できるということを見出した。アミン構造由来の窒素原子含有比率が0.7atm%を超えると、感光体表面が酸化されやすくなり、感光体の動摩擦係数が上昇する。特に感光体最表面から0.2μm内部でのアミン構造由来の窒素原子含有比率を0.7atm%以下とすることにより、耐久後においても摩擦係数の上昇を抑制でき画像不良を抑制することができる。つまり、表面層における上述のトリアリールアミン化合物、エナミン化合物、スチリル化合物などのアミン化合物の含有量を少なくすることで、摩擦係数の抑制効果を得られることがわかった。
更に具体的には、正孔輸送物質の反応性官能基以外の構造が炭素原子および水素原子のみからなる構造、もしくは、炭素原子、水素原子および酸素原子のみからなる構造を有する。そして、且つ電子写真感光体に使用した時にも良好な正孔輸送特性を有する正孔輸送物質の重合物を感光体の表面層に含有させる。このような正孔輸送物質を使用することにより、酸化劣化を起こしにくく感光体表面の摩擦係数上昇が抑制され、かつ耐摩耗性に優れた表面層を提供することが可能となった。
次に、十分な正孔輸送機能を発現するためには、正孔輸送物質が特定の構造を有することが好ましい。すなわち正孔輸送物質の分子構造として、分子中に共役二重結合系が一定の広がりを有し、電子が非局在化することが好ましい。更に、正孔の授受を効率的に行い、遷移的な状態でのアニオンやカチオンの安定性を増すように、特定の平面性を有する縮合多環構造を有することが好ましい。
本発明の電子写真感光体は、反応性官能基を有する正孔輸送物質、およびアミン化合物を含有する表面層用塗布液の塗膜を形成し、該塗膜を硬化させて表面層を形成する工程により製造することができる。それに加えて、表面層用塗布液中のアミン化合物の含有比率が、正孔輸送物質とアミン化合物の合計量に対して30質量%以下(0質量%より大きく30質量%以下)である。
そこで、本発明の正孔輸送物質は、分子中に24個以上のsp2炭素原子を含む共役構造を有する分子であることが正孔輸送性の観点から好ましく、更には28個以上が好ましい。共役構造とは、sp2炭素原子が連続して結合する構造を意味する。共役構造は分子内の電子の非局在化を促進し、分子間での電荷の授受を行い易くする性質を有する。
また、膜形成能、周辺材料との相溶性などの観点から、sp2炭素原子の数は120個以下、より好ましくは60個以下が好ましい。
本発明の正孔輸送物質は、分子内の共役構造中に縮合多環構造(芳香族縮合多環構造)を有することが好ましい。本発明で述べる縮合多環構造とは、ベンゼン環のような芳香族環状構造が2個以上隣接する構造を意味する。
1つの縮合多環構造を形成する炭素原子中のsp2炭素原子の個数は、12個以上であることが好ましい。さらなる正孔輸送機能の向上の観点から、sp2炭素原子の個数は、14個以上であることが好ましく、16個以上が更に好ましい。
膜形成能、周辺材料との相溶性などの観点から、縮合多環構造を形成するsp2炭素原子の個数は、20個以下が好ましく、より好ましくは18個以下が良い。
縮合多環構造を形成する環構造に関しては、共役構造が平面的に広がることが好適である。よって、平面構造を形成するためには、好ましくは、縮合多環構造が5員環または6員環のみから構成されることが好ましい。縮合多環構造を形成する環構造の数は、2環以上が必須であるが、正孔輸送機能をより好適にするためには3環以上がより好ましい。
また、縮合多環構造も成膜性、分子のフレキシビリティーの観点から、6環以下で構成されることが好ましく、より好ましくは5環以下で構成されることが好ましい。即ち、3環もしくは4環から構成される縮合多環構造が最も好適である。
本発明の正孔輸送物質は、上記縮合多環構造を部分構造として少なくとも1単位以上有する構造が好ましい。正孔輸送機能の向上という観点から、縮合多環構造を2単位以上有することが好ましく、3単位以上有することが更に好ましい。
また、膜形成能、周辺材料との相溶性などの観点から、正孔輸送物質1分子中の縮合多環構造は好ましくは10単位以下、より好ましくは4単位以下がよい。
これら縮合多環構造を2つ以上有する場合、化学的変化に対する安定性の観点から、縮合多環構造同士が1つの単結合で直接結合している構造を有することが好ましい。
また、正孔輸送物質の反応性官能基を水素原子に置き換えた化合物は、下記式(1)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 2015191013
式中、R〜Rは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。
は、置換または無置換のアレーンから6個の水素原子を除いた基であり、該アレーンは12個以上のsp2炭素原子を含む縮合多環構造である。
nは、1〜10の整数を示す。nが2〜10のときは、式(1)中の式(2)で示される下記部分構造は同一であっても異なってもよい。
Figure 2015191013
〜Rで示される基は、更に具体的には、水素原子、および、置換または無置換のメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基、1−メチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基等の直鎖、分岐または環状の、置換または無置換のアルキル基;置換または無置換のベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基、フェナントレニルメチル基、ピレニルメチル基、フルフリル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、4−エチルベンジル基、4−イソプロピルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、4−n−ヘキシルベンジル基、4−n−ノニルベンジル基、3,4−ジメチルベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−エトキシベンジル基、4−n−ブチルオキシベンジル基、4−n−ヘキシルオキシベンジル基、4−n−ノニルオキシベンジル基等の置換または無置換のアラルキル基;置換または無置換のフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオランテニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、テトラセンから誘導される1価の基、クリセンから誘導される1価の基、ペンタセンから誘導される1価の基、アセナフテンから誘導される1価の基、アセナフチレニル基、ペリレンから誘導される1価の基、コラニュレンから誘導される1価の基、コロネンから誘導される1価の基等の置換または無置換のアリール基である。更に、これら共役構造を有する縮合多環構造が直接、または共役二重結合基を介して連なった構造の化合物であってもよい。
中のアレーンの構造としては、ベンゼン構造をはじめとして更に複数の環が連なった構造のアレーンを適用することができる。アレーンの構造としては、ベンゼン構造、ナフタレン構造、フルオレン構造、アントラセン構造、フェナントレン構造、フルオランテン構造、ピレン構造、トリフェニレン構造、テトラセン構造、クリセン構造、ペンタセン構造、アセナフテン構造、アセナフチレン構造、ペリレン構造、コラニュレン構造、コロネン構造等が良好である。更に、これらアレーン同士が直接、または共役二重結合基を介して連なった構造でもよい。
これらの中でも、特にフルオレン構造、アントラセン構造、フェナントレン構造、フルオランテン構造、ピレン構造が好適である。
適度な大きさであり平面構造を持つアレーン構造を使用した場合は膜中の分子の緻密性が向上し、窒素酸化物等の放電生成ガスを表面層内に透過させず劣化に対して強くなっていると考えられる。
前記R〜Rのうち少なくとも1つは前記縮合多環構造であることが好ましく、更に好ましくは2つ以上が縮合多環構造であることが好ましい。また、nが2以上の場合、Rが連なった構造をとる。このとき、Rのアレーン構造はアレーン構造同士で直接結合していてもよいし、炭素原子を介して結合していてもよい。アレーン構造同士で直接結合していることが好ましい。
次に、本発明における電子写真感光体の全体的な構成について説明する。
<電子写真感光体>
本発明における電子写真感光体の好ましい構成の概略を図2に示す。図2に示す電子写真感光体においては、支持体21、支持体上に形成された下引き層22、下引き層上に形成された電荷発生層23、電荷発生層上に形成された電荷輸送層24、電荷輸送層上に形成された表面層25が積層されている。電荷発生層23と電荷輸送層24を総称して感光層とも呼ぶ。
本発明で用いられる支持体としては、導電性を有する材料からなる、導電性支持体であることが好ましい。支持体の材質としては、例えば、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、チタン、鉛、ニッケル、スズ、アンチモン、インジウム、クロム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属または合金が挙げられる。また、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム−酸化スズ合金などを真空蒸着によって形成した被膜を有する金属製支持体や樹脂製支持体を用いることもできる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子などの導電性粒子をプラスチックや紙に含浸してなる支持体や、導電性樹脂を含有する支持体を用いることもできる。支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状または板状等が挙げられるが、円筒状が最も一般的である。
支持体の表面は、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制を目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理などを施してもよい。
支持体と、下引き層の間には、レーザー等の散乱による干渉縞の抑制や、支持体の傷の被覆を目的として、導電層を設けてもよい。
導電層は、カーボンブラック、導電性顔料、抵抗調節顔料等を結着樹脂とともに分散処理することによって得られる導電層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。導電層用塗布液には、加熱、紫外線照射、放射線照射などにより硬化重合する化合物を添加してもよい。導電性顔料や抵抗調節顔料を分散させてなる導電層は、その表面が粗面化される傾向にある。
導電層用塗布液の溶剤としては、エーテル溶剤、アルコール溶剤、ケトン溶剤、芳香族炭化水素溶剤等が挙げられる。導電層の膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、さらには0.5μm以上40μm以下であることがより好ましく、さらには1μm以上30μm以下であることがより好ましい。
導電層に用いられる結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂が挙げられる。
導電性顔料および抵抗調節顔料としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀、ステンレス等の金属(合金)の粒子や、これらをプラスチックの粒子の表面に蒸着したものが挙げられる。また、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ等の金属酸化物の粒子でもよい。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
支持体または導電層と電荷発生層との間には、バリア機能や接着機能を有する下引き層(中間層)を設けてもよい。
下引き層は、結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる下引き層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
下引き層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド樹脂、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド樹脂、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂、共重合ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂あるいはポリエステル樹脂などが挙げられる。
下引き層には、さらに、金属酸化物粒子を含有させてもよく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムを含有する粒子が挙げられる。また、金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子の表面がシランカップリング剤などの表面処理剤で処理されている金属酸化物粒子であってもよい。
下引き層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族化合物などの有機溶剤が挙げられる。下引き層の膜厚は、0.05μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上25μm以下であることがより好ましい。下引き層には、さらに、有機樹脂微粒子、レべリング剤を含有させてもよい。
次に電荷発生層について説明する。電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤とともに分散処理することによって得られた電荷発生層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。
電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、トリフェニルメタン色素、キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、シアニン染料、アントアントロン顔料、ピラントロン顔料、キサンテン色素、キノンイミン色素、スチリル色素などが挙げられる。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。これら電荷発生物質の中でも、感度の観点から、フタロシアニン顔料やアゾ顔料が好ましく、特にはフタロシアニン顔料がより好ましい。
フタロシアニン顔料の中でも、特にオキシチタニウムフタロシアニンあるいはクロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが優れた電荷発生効率を示す。さらに、ヒドロキシガリウムフタロシアニンの中でも、感度の観点から、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θが7.4°±0.3°および28.2°±0.3°にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶がより好ましい。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等のビニル化合物の重合体や、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
電荷発生物質と、結着樹脂の質量比は、1:0.3〜1:4の範囲であることが好ましい。
分散処理方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルなどを用いる方法が挙げられる。
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族化合物などが挙げられる。
次に、電荷輸送層について説明する。電荷輸送層が表面層の場合は、本発明の反応性官能基を有する正孔輸送物質を含有する電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布して塗膜を形成する。その後、塗膜を乾燥および適切な手段によって反応性官能基を重合反応させることによって表面層を形成することができる。表面層としての電荷輸送層は、正孔輸送物質を重合反応させて得られる重合物を含有する。
一方、電荷輸送層上に保護層を設ける場合は、本発明の反応性官能基を有する正孔輸送物質を含有する保護層用塗布液を電荷輸送層上に塗布して塗膜を形成する。その後、塗膜を乾燥および適切な手段によって反応性官能基を重合反応させることによって保護層を形成することができる。表面層としての保護層は、正孔輸送物質を重合反応させて得られる重合物を含有する。
電荷輸送層上に保護層を設ける場合の、電荷輸送層に用いる正孔輸送性物質としては、カルバゾール化合物、ヒドラゾン化合物、N,N−ジアルキルアニリン化合物、ジフェニルアミン化合物、トリフェニルアミン化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物などの既知の正孔輸送性物質や、本発明の正孔輸送性物質の反応性官能基を水素原子に置き換えた化合物を用いることが出来る。
表面層における本発明の正孔輸送物質の含有量は、表面層の全質量に対して50質量%以上100質量%以内の含有量であることが好ましい。
電荷輸送層上に保護層を設ける場合の、電荷輸送層に用いる結着樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、硬化型フェノール樹脂、硬化型ウレタン樹脂、硬化型メラミン樹脂、硬化型エポキシ樹脂、硬化型アクリル樹脂、硬化型メタクリル樹脂等の硬化性樹脂を用いることもできる。
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
電荷輸送層の膜厚は、1μm以上100μm以下であることが好ましく、更に3μm以上50μm以下であることがより好ましく、更には5μm以上40μm以下であることが好ましい。
電荷輸送層の上に保護層を設ける場合、電荷輸送層用塗布液に用いた溶剤と同様のアルコール溶剤、スルホキシド溶剤、ケトン溶剤、エーテル溶剤、エステル溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等を用いることができる。保護層用塗布液を電荷輸送層上に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥および適切な手段によって反応性官能基を重合反応させることによって保護層を形成することができる。
本発明の反応性官能基とは、反応性官能基を有する分子間で反応を起こした場合に、分子間を共有結合で結合することができる官能基を意味する。例えば、以下に示す反応性官能基が挙げられる。
Figure 2015191013
電子写真感光体の表面層としての耐摩耗性の観点から、反応性官能基はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が好ましい。
また、一分子内あるいは分子間で異なる反応性官能基を有しても構わない。
反応性官能基を重合反応させる手段としては、紫外線、電子線、熱などのエネルギーを付与する手段、あるいは、重合開始剤などの補助剤、酸、アルカリ、錯体などの化合物を共存させる手段を用いることができる。
本発明の正孔輸送物質の反応性官能基を水素原子に置き換えた構造について説明する。
本発明の正孔輸送物質の分子構造は、反応性官能基の構造と反応性官能基以外の構造に大別することができる。反応性官能基の構造とは、例えば前記に例示した反応性官能基の構造である。反応性官能基以外の構造とは、正孔輸送物質の分子構造から反応性官能基の構造を差し引いた構造を意味する。ここで、単純に正孔輸送物質の分子構造から反応性官能基の構造を差し引くと、反応性官能基と反応性官能基以外の構造との連結部において共有結合が余ることになる。この余った共有結合に水素原子を結合させた構造が、本発明における反応性官能基を水素原子に置き換えた化合物を意味し、上記式(1)で示される。
前記式(1)のnは、1〜10の整数を表す。正孔輸送性の観点からは、共役系が広がっていることが好ましく、nは大きい方が好ましい。しかし、分子の柔軟性、膜形成能などの観点から、nは1以上6以下が好ましく、更には1以上4以下の範囲が好ましい。分子量としての好適な値は、分子量300以上3000以下の化合物であることが好ましい。この範囲であると、正孔輸送機能が良好となる。
反応性官能基を有する正孔輸送物質において、R乃至Rは反応性官能基を有することが要件である。本発明の正孔輸送物質のうち、反応性官能基としてアクリロイルオキシ基あるいはメタクリロイルオキシ基を有する場合の化合物例を以下に示す。下記の例示化合物のアクリロイルオキシ基あるいはメタクリロイルオキシ基を、上述の反応性官能基のいずれかに置き換えてもよい。置換基についても同様に上述の置換基に書き換えてもよい。
No.1
Figure 2015191013
No.2
Figure 2015191013
No.3
Figure 2015191013
No.4
Figure 2015191013
No.5
Figure 2015191013
No.6
Figure 2015191013
No.7
Figure 2015191013
No.8
Figure 2015191013
No.9
Figure 2015191013
No.10
Figure 2015191013
No.11
Figure 2015191013
No.12
Figure 2015191013
No.13
Figure 2015191013
No.14
Figure 2015191013
No.15
Figure 2015191013
No.16
Figure 2015191013
No.17
Figure 2015191013
No.18
Figure 2015191013
No.19
Figure 2015191013
No.20
Figure 2015191013
No.21
Figure 2015191013
No.22
Figure 2015191013
No.23
Figure 2015191013
No.24
Figure 2015191013
No.25
Figure 2015191013
No.26
Figure 2015191013
No.27
Figure 2015191013
No.28
Figure 2015191013
No.29
Figure 2015191013
No.30
Figure 2015191013
No.31
Figure 2015191013
No.32
Figure 2015191013
No.33
Figure 2015191013
No.34
Figure 2015191013
No.35
Figure 2015191013
No.36
Figure 2015191013
No.37
Figure 2015191013
No.38
Figure 2015191013
No.39
Figure 2015191013
No.40
Figure 2015191013
No.41
Figure 2015191013
No.42
Figure 2015191013
No.43
Figure 2015191013
No.44
Figure 2015191013
No.45
Figure 2015191013
No.46
Figure 2015191013
No.47
Figure 2015191013
No.48
Figure 2015191013
No.49
Figure 2015191013
No.50
Figure 2015191013
No.51
Figure 2015191013
No.52
Figure 2015191013
No.53
Figure 2015191013
No.54
Figure 2015191013
No.55
Figure 2015191013
No.56
Figure 2015191013
No.57
Figure 2015191013
No.58
Figure 2015191013
No.59
Figure 2015191013
No.60
Figure 2015191013
No.61
Figure 2015191013
例示化合物 No.62
Figure 2015191013
No.63
Figure 2015191013
No.64
Figure 2015191013
No.65
Figure 2015191013
No.66
Figure 2015191013
No.67
Figure 2015191013
No.68
Figure 2015191013
No.69
Figure 2015191013
No.70
Figure 2015191013
No.71
Figure 2015191013
No.72
Figure 2015191013
No.73
Figure 2015191013
例示化合物 No.74
Figure 2015191013
No.75
Figure 2015191013
No.76
Figure 2015191013
No.77
Figure 2015191013
No.78
Figure 2015191013
No.79
Figure 2015191013
No.80
Figure 2015191013
No.81
Figure 2015191013
No.82
Figure 2015191013
本発明の電子写真感光体の各層の表面には、研磨シート、形状転写型部材、ガラスビーズ、ジルコニアビーズなど用いて表面加工を施してもよい。また、塗布液の構成材料を使って表面に凹凸を形成させてもよい。
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、円形量規制型(リング)塗布法、スピン塗布法、ローラー塗布法、マイヤーバー塗布法、ブレード塗布法のような公知の如何なる塗布方法も用いることができる。
表面層が感光層上に形成された保護層である場合、その膜厚は0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。更には0.5μm以上10μm以下であることがより好ましい。表面層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール溶剤、スルホキシド溶剤、ケトン溶剤、エーテル溶剤、エステル溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。下層の電荷輸送層を溶解しないという観点から、アルコール系溶剤が好ましい。
なお、特許文献2に記載されているとおり、特定の添加剤を感光体に含有させることで感光体の耐オゾン性の向上を達成できるが、これらの添加剤は少量の添加でも電気特性に影響を及ぼすことがある。本発明の表面層であれば、添加剤を用いずに、電気特性を維持しつつ、耐オゾン性や窒素酸化物による劣化を抑制することができる。
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、リング塗布法、スピン塗布法、ローラー塗布法、マイヤーバー塗布法、ブレード塗布法のような公知の如何なる塗布方法も用いることができる。
次に、図1に本発明の電子写真感光体およびプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の周面は、帯電手段(一次帯電手段:帯電ローラーなど)3により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。帯電手段3に印加する電圧は、直流成分に交流成分を重畳した電圧、または直流成分のみの電圧のどちらでもよいが、本発明においては直流成分に交流成分を重畳した電圧を用いた方式で使用した際に、より顕著な効果を発現する。
電子写真感光体1の周面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の周面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)7に順次転写されていく。転写材7は、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。
トナー像の転写を受けた転写材7は、電子写真感光体1の周面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)9によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。次いで、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、電子写真感光体1は、画像形成に繰り返し使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
また、転写手段として、例えば、ベルト状やドラム状の中間転写体を用いた中間転写方式の転写手段を採用してもよい。
上記の電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、少なくとも1つのものを選択して容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に支持して構成してもよい。そして、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールの如き案内手段12を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11としている。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
(実施例1)
直径30mm、長さ357.5mm、肉厚1mmのアルミニウムシリンダーを支持体(導電性支持体)とした。
次に、酸化亜鉛粒子(比表面積:19m/g、粉体抵抗:4.7×10Ω・cm)100部をトルエン500部と撹拌混合し、これにシランカップリング剤0.8部を添加し、6時間攪拌した。その後、トルエンを減圧留去して、130℃で6時間加熱乾燥し、表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。シランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM602、信越化学工業(株)製)を用いた。
次に、ポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量:40000、商品名:BM−1、積水化学工業(株)製)15部およびブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住化バイエルウレタン(株)製)15部をメチルエチルケトン73.5部と1−ブタノール73.5部の混合溶剤に溶解させた。この溶液に前記表面処理された酸化亜鉛粒子80.8部、および2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン(和光純薬工業(株)製)0.8部を加え、これを直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下で3時間分散した。分散後、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レダウコーニング(株)製)0.01部を加えた。さらに、架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(商品名:TECHPOLYMER SSX−103、積水化成品工業(株)製、平均一次粒径3.0μm)を5.6部加えて攪拌し、下引き層用塗布液を調製した。
この下引き層用塗布液を上記アルミニウムシリンダー上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を40分間160℃で乾燥させて、膜厚が18μmの下引き層を形成した。
次にCuKα特性X線回折のブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.2°にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(正孔輸送物質)を用意した。このヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶20部、下記式(3)で示されるカリックスアレーン化合物0.2部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)10部およびシクロヘキサノン600部を、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、酢酸エチル700部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を温度80℃のオーブンで15分間加熱乾燥することにより、膜厚が0.17μmの電荷発生層を形成した。
Figure 2015191013
次に、下記式(4)で示される化合物(電荷輸送物質)30部、
Figure 2015191013
下記式(5)で示される化合物(電荷輸送物質)60部、
Figure 2015191013
下記式(6)で示される化合物10部、
Figure 2015191013
ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ビスフェノールZ型のポリカーボネート)100部、下記式(7)で示されるポリカーボネート(粘度平均分子量Mv:20000)0.02部を、
Figure 2015191013
混合キシレン600部およびジメトキシメタン200部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を30分間100℃で乾燥させることによって、膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。
次に、例示化合物No.10(正孔輸送物質モノマー1)90部、下記式(8)で示される化合物(正孔輸送物質モノマー2)10部を、
Figure 2015191013
テトラヒドロフラン200部に溶解させることによって、表面層用塗布液を調製した。この表面層用塗布液を正孔輸送層上にスプレー塗布し、得られた塗膜を10分間50℃で乾燥させ、以下の条件で電子線照射と加熱による重合硬化処理を行った。
酸素濃度100ppm以下の雰囲気にて、表面層用塗布液の塗膜が塗布されたアルミニウムシリンダーを300rpmの速度で回転させながら、電子線照射装置を用いて、以下の条件で電子線照射をした。照射条件としては、照射距離30mm、加速電圧70kV、ビーム電流10mA、照射時間1.6秒とした。電子線照射後、誘導加熱装置を用いて表面層塗膜表面を20秒かけて130℃に到達させた。次に、上記アルミニウムシリンダーを大気雰囲気に取り出し、更に10分間100℃で加熱することによって、膜厚5μmの表面層を形成した。
以上のようにして実施例感光体1を作製した。
<XPSによる表面層の最表面および表面層の最表面から0.2μmの内部における元素分析>
電子写真感光体の表面層におけるアミン構造由来の窒素原子含有比率分布を、XPS(ESCA、X線光電子分光法)にて測定した。測定は、電子写真感光体の表面層の最表面と、この最表面から0.2μmの内部における測定を行った。
測定条件を以下に記載する。
使用装置:アルバック・ファイ社製 Quantum 2000
Scanning ESCA Microprobe
最表面およびエッチング後0.2μm内部測定条件:
X線源:Al Ka1486.6eV(25W15kV)
測定エリア:100μm
分光領域:1500×300μm
角度:45°
Pass Energy:117.40eV
エッチング条件:Ion gun C60(10kV 2mm×2mm)、角度70°
なお、上記表面層のエッチング後断面SEM観察により深さを同定し、最表面から0.2μmの内部の元素分析ができる。また、N1sのワイドスキャンスペクトルにより窒素原子含有比率を求めた後、ナロースキャンスペクトルによりアミン構造に由来する割合を求め、アミン構造に由来する窒素原子含有比率atm%を求めた。
別途、得られた電子写真感光体を、30℃80%RHの環境において、感光体回転時にクリーニングブレードにかかる負荷と押圧を測定できるよう改造したキヤノン(株)製の電子写真装置(商品名:iR−ADV C5051)に装着し、現像手段を用いずに、初期の動摩擦係数(表1では、「初期μ」と表記する)を測定した。その後、電子写真装置(iR−ADV C5051)に装着し10000枚相当の繰り返し使用を行い、その後、画像評価を行った。さらに、再度、現像手段を用いずに、動摩擦係数(表1では、「耐久後μ」と表記する)を測定し、電子写真感光体表面層の削れ量を算出した。なお、装置の改造によって、ドラムサイクルスピードを0.25秒とし、帯電工程の総放電電流量を100μAに設定した。
結果を表1に示す(同表中、「N比率」は窒素原子含有比率を表す)。
(実施例2、3)
例示化合物No.10と式(8)で示される化合物の添加量を表1に記載した量にした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(実施例4)
例示化合物No.10を例示化合物No.11に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(実施例5)
例示化合物No.10を例示化合物No.45に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(実施例6)
例示化合物No.10を例示化合物No.56に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(実施例7)
例示化合物No.10を例示化合物No.5に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(実施例8)
例示化合物No.10を例示化合物No.3に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(実施例9)
例示化合物No.10を例示化合物No.68に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(実施例10)
例示化合物No.10を例示化合物No.67に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(実施例11)
例示化合物No.10を例示化合物No.65に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(実施例12)
例示化合物No.10を例示化合物No.72に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(比較例1、2)
例示化合物No.10を例示化合物No.9に変更し、かつ、式(8)で示される化合物を下記式(9)で示される化合物に変更し、さらに、例示化合物No.9と式(9)で示される化合物とを
Figure 2015191013
表1に記載した量で使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(比較例3)
例示化合物No.10を使用することなく、式(8)で示される化合物を上記式(9)で示される化合物に変更し、式(9)で示される化合物を100部使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
(比較例4)
比較例3の構成にメチルフェニルシリコンオイル1.5部を添加した以外は比較例1と同様にして電子写真感光体を作製し、XPSによる解析、動摩擦係数の評価を行なった。
結果を表1に示す。
Figure 2015191013
表1から明らかなように、評価の結果、実施例1〜12においては10000枚の繰り返し使用における電子写真感光体表面の摩擦係数の上昇が抑制された。一方、比較例1においては10000枚の繰り返し使用によってクリーニング不良の発生が見られ、クリーニング性能が劣るものであった。比較例2においては、10000枚の繰り返し使用後半にクリーニングブレードと電子写真感光体の摺擦による異音が発生し、クリーニング不良の発生も見られた。また、10000枚の繰り返し使用後の動摩擦係数の上昇もみられた。比較例3においては、10000枚の繰り返し使用中にクリーニングブレードのめくれが発生し、異常画像が見られた。比較例4においては、初期の摩擦係数は大幅に低下したものの、10000枚の繰り返し使用中にクリーニングブレードのめくれが発生し、動摩擦係数の大幅な上昇もみられた。
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
21 支持体
22 下引き層
23 電荷発生層
24 電荷輸送層
25 表面層

Claims (12)

  1. 支持体および該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体であって、
    該電子写真感光体の表面層が、反応性官能基を有する正孔輸送物質の重合物を含有し、
    該正孔輸送物質の該反応性官能基以外の構造が、
    炭素原子および水素原子のみからなる構造、または、
    炭素原子、水素原子および酸素原子のみからなる構造
    であり、
    X線光電子分光測定(XPS測定)による該表面層の最表面におけるアミン構造由来の窒素原子含有比率が0.7atm%以下であり、
    該表面層の最表面から0.2μmの内部におけるアミン構造由来の窒素原子含有比率が0.7atm%以下であることを特徴する電子写真感光体。
  2. 前記正孔輸送物質が、分子中に24個以上のsp2炭素原子を含む共役構造を有し、該共役構造の中に12個以上のsp2炭素原子を含む縮合多環構造を有する請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記正孔輸送物質が、前記縮合多環構造を2単位以上有する、請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記縮合多環構造同士が、単結合で結合している、請求項2または3に記載の電子写真感光体。
  5. 前記縮合多環構造が、5員環又は6員環で構成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  6. 前記正孔輸送物質が、分子中に28個以上のsp2炭素原子を含む共役構造を有する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  7. 前記正孔輸送物質の反応性官能基を水素原子に置き換えた化合物が、下記式(1)で示される化合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
    Figure 2015191013
    (式(1)中、R〜Rは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基である。Rは、置換もしくは無置換のアレーンから6個の水素原子を除いた基である。
    nは1〜10の整数である。nが2〜10のときは、上記式(1)中の下記式(2)で表される部分構造は、同一であっても異なってもよい。)
    Figure 2015191013
  8. 前記式(1)中の、前記Rのアレーンが、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、またはピレンである請求項7に記載の電子写真感光体。
  9. 前記反応性官能基が、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基である請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  12. 支持体および該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
    反応性官能基を有する正孔輸送物質、およびアミン化合物を含有する表面層用塗布液の塗膜を形成し、該塗膜を硬化させて表面層を形成する工程を有し、
    該正孔輸送物質の該反応性官能基以外の構造が、
    炭素原子および水素原子のみからなる構造、または、
    炭素原子、水素原子および酸素原子のみからなる構造
    であり、
    該表面層用塗布液中の該アミン化合物の含有比率が、該正孔輸送物質と該アミン化合物の合計量に対して30質量%以下であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
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