JP2015190019A - 高靭性高延性高強度熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】X70〜X80級電縫鋼管用あるいはスパイラル鋼管用として好適な、高強度で低降伏比、高靭性、高延性を兼備し、かつ強度−延性バランスYS×Elに優れた、高靭性高延性高強度熱延鋼板の提供。
【解決手段】質量%で、C:0.04〜0.15%、Si:0.01〜0.55%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.003〜0.1%、Nb:0.001〜0.035%、V:0.001〜0.1%、Ti:0.035〜0.10%、N:0.006%以下を含む組成と、フェライト相と面積率で20〜40%のベイナイト相とからなる組織とし、さらにNb析出物を、Nb換算で全Nb量に対する割合で10〜80%析出させた組織とする高靱性高延性高強度熱延鋼板。これにより、低降伏比、高強度、高靭性、高延性を有し、優れた強度延性バランスを有する高靭性高延性高強度熱延鋼板。
【選択図】なし

Description

本発明は、ラインパイプや油井管などに用いられる鋼管や、土木・建築分野で用いられる高強度鋼管杭の素材として好適な、高靭性高延性高強度熱延鋼板およびその製造方法に係り、とくにAPI規格X70〜X80級の高強度を有し低降伏比で、強度YS−延性Elバランスの向上に関する。なお、ここでいう「鋼板」は、鋼板、鋼帯を含むものとする。
近年、エネルギー需要の高まりから、天然ガスや原油等の輸送効率を向上するため、ラインパイプには、大径でかつ高圧操業に耐え得る高強度厚肉鋼管が使用されるようになってきた。このような要求に対して、従来から厚板を素材とするUOE鋼管が主に使用されてきた。しかし、最近では、パイプラインの施工コストの低減や、UOE鋼管の供給能力不足などのために、また鋼管の素材コスト低減の要求も強く、UOE鋼管よりも生産性が高くより安価である、熱延鋼板を素材とした電縫鋼管やスパイラル鋼管が、ラインパイプ用として用いられるようになってきた。
例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.005〜0.04%、Si:0.05〜0.3%、Mn:0.5 〜2.0%、Al:0.001 〜0.1%、Nb:0.001 〜0.1%、V:0.001 〜0.1%、Ti:0.001 〜0.1%、P:0.03%以下、S:0.005%以下およびN:0.006%以下を含み、かつCu:0.5%以下、Ni:0.5%以下およびMo:0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、Pcmが0.17以下を満足し、かつ全組織中、主相であるベイニティックフェライトの占める割合が95vol%以上である、低温靱性および溶接性に優れた高強度電縫管用熱延鋼帯が記載されている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.5〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.001〜0.05%を含み、かつC、Ti、Nbを([%Ti]+([%Nb]/2))/[%C]<4を満足するように含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、鋼板表面から板厚方向に1mmの位置における主相であるフェライト相の平均結晶粒径と鋼板の板厚中央位置における主相であるフェライト相の平均結晶粒径との差ΔDが2μm以下で、かつ鋼板表面から板厚方向に1mmの位置における第二相の組織分率(体積%)と鋼板の板厚中央位置における第二相の組織分率(体積%)との差ΔVが2%以下であり、鋼板表面から板厚方向に1mmの位置におけるベイナイト相または焼戻マルテンサイト相の最小ラス間隔が0.1μm以上である組織を有する、低温靭性に優れた厚肉高張力熱延鋼板が記載されている。
また、特許文献3には、質量%で、C:0.03〜0.06%、Si:1.0%以下、Mn:1〜2%、Al:0.1%以下、Nb:0.05〜0.08%、V:0.05〜0.15%、Mo:0.10〜0.30%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイナイト相単相で、該ベイナイト相中にNbおよびVの炭窒化物を、NbおよびVの合計量換算で0.06%以上分散させてなる組織とを有し、引張強さTS:760MPa以上の高強度と破面遷移温度vTrs:−100℃以下の高靭性とを有する、高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板が記載されている。
また、特許文献4には、質量%で、C:0.06〜0.12%、Si:0.01〜1.0%、Mn:1.2〜3.0%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Al:0.08%以下、Nb:0.005〜0.07%、Ti:0.005〜0.025%、N:0.010%以下、O:0.005%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成と、ベイナイトと島状マルテンサイトとの二相組織からなり、該島状マルテンサイトの面積分率が3〜20%でかつ円相当径が3.0μm以下である組織とを有し、一様伸びが7%以上、降伏比が85%以下、さらに250℃以下の温度で30分以下の歪時効処理を施した後においても一様伸びが7%以上かつ降伏比85%以下である、耐歪時効特性に優れた低降伏比高強度高一様伸び鋼板が記載されている。
また、特許文献5には、質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.5〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.001〜0.05%を含み、かつC、Ti、Nbを([%Ti]+([%Nb]/2))/[%C]<4を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材を加熱し、粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施したのち、板厚中心位置の平均冷却速度が10℃/s以上で、かつ板厚中心位置の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s未満である冷却を、表面から板厚方向に1mmの位置での温度が650℃以下500℃以上の温度域の温度となる一次冷却停止温度まで行う一次加速冷却と、板厚中心位置の平均冷却速度が10℃/s以上で、板厚中心位置の平均冷却速度と表面から板厚方向に1mmの位置での平均冷却速度との冷却速度差が、80℃/s以上である冷却を、板厚中心位置の温度がBFS(℃)=770−300C−70Mn−70Cr−170Mo−40Cu−40Ni−1.5CR(CR:冷却速度(℃/s))以下の二次冷却停止温度まで行う二次加速冷却を施し、該二次加速冷却後に、板厚中心位置の温度でBFS0(℃)=770−300C−70Mn−70Cr−170Mo−40Cu−40Ni以下の巻取温度で巻き取る、強度−延性バランスに優れた厚肉高張力熱延鋼板の製造方法が記載されている。
特開2004−315957号公報 特開2010−196157公報 特開2011−17061号公報 特開2011−94230号公報 特開2010−196163号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、焼入れ性の確保のために、Cu、Ni、Moのうちの1種以上を含有することを必須の要件としている。しかし、これらの元素は希少元素で、将来に亘り安定した供給を確保することに問題を残しており、将来の安定生産の妨げになる。また、製造にあたり、特許文献1の実施例に示されるように、圧延終了後の冷却が20℃/s以下と遅い冷却速度となっており、生成されるベイニティックフェライトのラスの粗大化が生じやすく、強度(特に引張強さ)が低下しやすいという問題があった。また、特許文献2に記載された技術では、結晶粒径差を小さくするために、鋼板表面から板厚方向に1mmの位置における冷却速度と鋼板の板厚中央位置における冷却速度の差を少なくする必要があり、厚肉鋼板の場合、実質的に多段冷却などの特殊な冷却技術が必要となる。このため、冷却能力に優れた冷却設備等の更なる配設が必要となるなどの問題があった。
ラインパイプ用素材としては、強度、低温靭性に加え、伸び特性が重要となるが、近年の高強度化の進行に伴い、とくに板厚表層域での伸び特性の低下が問題となっている。特許文献3に記載された技術では、TS:760MPa以上と非常に高強度であることから、板厚が厚くなった場合、特に板表層域での硬度が上昇し、伸び特性の悪化が起こりやすいという問題がある。
また、特許文献4に記載された技術では、3%以上の島状マルテンサイトを含むことを必須の要件としており、靭性(特にDWTT特性)の低下が起こりやすいうえ、所定の組織を確保するために、実質的に再加熱処理を必要とし、製造工程が複雑になるとともに、再加熱設備等の更なる配設が必要となるなどの問題があった。また、特許文献5に記載された技術では、二段階の冷却を必須の要件としており、同様に、製造工程が複雑になるとともに、冷却能力に優れた冷却設備等の更なる配設が必要となるなどの問題があった。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、複雑な工程を経ることなく、また大掛かりな設備改造を行うこともなく、API規格X70〜X80級電縫鋼管用素材として、また、API規格X70〜X80級スパイラル鋼管用として好適な、高強度で低降伏比、高靭性、高延性を兼備し、かつ強度−延性バランスYS×Elに優れた、高靭性高延性高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。なお、ここでいう「高強度」とは、API規格X70〜X80級鋼管が製造可能な、降伏強さYS:550MPa以上、引張強さTS:650MPa以上を有する場合をいうものとする。また、「低降伏比」とは85%以下である場合をいい、また、「高靭性」とは、シャルピー衝撃試験の試験温度:−60℃における吸収エネルギーE−60が110J以上、破面遷移温度vTrsが−70℃以下である場合をいい、「高延性」とは、引張試験における、板厚20mm換算の全伸びEl20mmが30%以上である場合をいうものとする。また、「強度−延性バランスYS×Elに優れた」とは、YS×Elが20000MPa%以上である場合をいうものとする。この場合、YS×Elは、板厚20mm換算の伸びEl20mmを使用するものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、強度、靭性、延性に及ぼす組成と組織の影響について鋭意研究した。その結果、所望の高強度、高靭性を確保しつつ、強度−延性バランスを向上させるためには、組織を延性に優れたフェライト相を主相とする必要があることに想到した。そして、フェライト変態を促進する元素であるTiに着目し、Tiを0.035%超含有させるとともに、Nbを比較的低い量である0.035%未満に制限して含有させることにより、フェライト変態が促進され、延性さらには靭性に富むフェライト相を主相と、ベイナイト相を第二相として20〜40%含有する組織を確保でき、高延性でかつ高靭性となる素地が形成でき、さらに、所望の高強度を確保するために、Nbを、析出物として全Nb量の10〜80%を析出させることにより、フェライト相を強化でき、低降伏比で高強度で、かつ高靭性、高延性を兼備する鋼板とすることができることを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.04〜0.15%、Si:0.01〜0.55%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.003〜0.1%、Nb:0.001%以上0.035%未満、V:0.001〜0.1%、Ti:0.035%超0.10%以下、N:0.006%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相を主相とし、第二相として面積率で20〜40%のベイナイト相とからなり、さらにNb析出物を、Nb換算で全Nb量に対する割合で10〜80%析出させた組織とを有し、降伏比:85%以下の低降伏比、降伏強さYS:550MPa以上、引張強さTS:650MPa以上の高強度、試験温度:−60℃でのシャルピー吸収エネルギーvE−60:110J以上、破面遷移温度vTrs:−70℃以下の高靭性、板厚20mm換算の伸びEl20mm:30%以上の高延性を有することを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cr:0.5%以下、B:0.004%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.005%を含有することを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成がさらに、次(1)式
Pcm=[%C]+[%Si]/30+([%Mn]+[%Cu]+[%Cr])/20+[%Ni]/60+[%V]/10+[%Mo]/7+5×[%B] ‥‥(1)
ここで、[%M]:元素Mの含有量(質量%)
で定義されるPcmが0.25以下を満足することを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板。
(5)鋼素材を加熱し、粗圧延および仕上圧延からなる熱間圧延を施し熱延板としたのち、該熱延板を冷却し、所定の巻取温度で巻き取る熱延鋼板の製造方法であって、前記鋼素材を、質量%で、C:0.04〜0.15%、Si:0.01〜0.55%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.003〜0.1%、Nb:0.001%以上0.035%未満、V:0.001〜0.1%、Ti:0.035%超0.10%以下、N:0.006%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、前記加熱を、加熱温度:1000〜1250℃に加熱する処理とし、前記仕上圧延の圧延終了温度を、表面温度でフェライト変態点以下ベイナイト変態点以上とし、前記冷却を、板厚中央部での平均冷却速度で、5〜50℃/sの冷却速度で冷却する処理とし、前記巻取温度を板厚中央部で350℃以上ベイナイト変態点以下とすることを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板の製造方法。
(6)(5)において、前記仕上圧延を、オーステナイト未再結晶温度域での圧下率が35%以下となる圧延とすることを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板の製造方法。
(7)(5)または(6)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cr:0.5%以下、B:0.004%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板の製造方法。
(8)(5)ないし(7)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.005%を含有することを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板の製造方法。
(9)(5)ないし(8)のいずれかにおいて、前記組成がさらに、次(1)式
Pcm=[%C]+[%Si]/30+([%Mn]+[%Cu]+[%Cr])/20+[%Ni]/60+[%V]/10+[%Mo]/7+5×[%B] ‥‥(1)
ここで、[%M]:元素Mの含有量(質量%)
で定義されるPcmが0.25以下を満足する組成であることを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、複雑な工程を経ることなく、また再加熱設備や冷却設備など大掛かりな設備改造を行うこともなく、API規格X70〜X80級の電縫鋼管用またAPI規格X70〜X80級のスパイラル鋼管用の素材となる、高強度で低降伏比、高靭性、高延性を兼備し、かつ優れた強度−延性バランスYS×Elを有する高靭性高延性高強度熱延鋼板を容易に、しかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
まず、本発明熱延鋼板の組成限定理由について説明する。なお以下、質量%は単に%で記す。
C:0.04〜0.15%
Cは、固溶強化で、あるいは炭化物形成元素と結合し炭化物として析出し、析出強化で鋼板強度の増加に寄与し、所望の高強度を確保するために重要な元素である。このような効果を得るために0.04%以上の含有を必要とする。一方、0.15%を超える多量の含有は、炭化物が過剰に析出し、靭性が低下する。また、Cの多量含有は、炭素当量を増加させ、溶接部の靭性を低下させる。このようなことから、Cは0.04〜0.15%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.04〜0.10%である。
Si:0.01〜0.55%
Siは、脱酸剤として作用し、さらに固溶して鋼の強化に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.55%を超えて多量に含有すると、Mn-Si系の非金属介在物を形成して溶接部靭性を低下させる。このため、Siは0.01〜0.55%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.10〜0.25%である。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは、固溶して鋼板強度増加に寄与するとともに、靭性向上にも寄与する元素である。このような効果を確保するためには、1.0%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超える含有は、偏析を助長し、機械的特性のバラツキが発生しやすい等の悪影響を及ぼす。また、多量に含有すると、炭素当量の増加を招き、溶接部靭性を低下させる恐れがある。このため、Mnは1.0〜3.0の範囲に限定した。なお、好ましくは1.2〜2.2%である。
P:0.03%以下
Pは、鋼中では不純物として存在し、粒界等に偏析しやすく、靭性低下を招く恐れがあり、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.03%以下であれば許容できる。このため、Pは0.03%以下に限定した。なお、過度の低減は精錬コストの高騰を招くため、0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.01%以下
Sは、鋼中では硫化物系介在物として存在し、鋼板の延性、靭性を低下させる。このため、できるだけ低減することが望ましいが、0.01%以下であれば許容できる。なお、過度の低減は精錬コストの高騰を招くため、0.001%以上とすることが好ましい。
Al:0.003〜0.1%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を確保するためには0.003%以上の含有を必要とする。一方、0.1%を超えて多量に含有すると、アルミナ系介在物の多量生成を招き、溶接部欠陥を多発させる。このため、Alは0.003〜0.1%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.04%である。
Nb:0.001%以上0.035%未満
Nbは、炭窒化物あるいは炭化物を形成し、結晶粒の微細化、鋼の析出強化に有効に寄与する元素であり、このような効果を確保するためには、0.001%以上の含有を必要とする。一方、0.035%以上含有すると、仕上圧延中にフェライト変態が進行しなくなり、所望のフェライト相を主相としベイナイト相を第二相とする複合組織の形成が阻害される。このようなことから、Nbは0.001%以上0.035%未満の範囲に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.030%である。また、結晶粒の細粒化効果を確保するためには0.035%未満の含有で十分である。
V:0.001〜0.1%
Vは、炭窒化物あるいは炭化物として析出し析出強化により鋼板の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.001%以上の含有を必要とする。一方、0.1%を超えて多量に含有すると、溶接性が低下する。このため、Vは0.001〜0.1%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.05%である。
Ti:0.035%超0.10%以下
Tiは、強いフェライト生成元素であり、γ→α変態点(フェライト変態点:オーステナイトからフェライトへの変態が開始する温度)を上昇させる作用を有する元素であり、本発明では重要な元素である。また、Tiは、Nbに比較して再結晶γ域を低温化する作用は小さく、仕上圧延中のγ→α変態を促進させやすい。このような効果を得るためには、Nb含有量を0.035%未満に制限したうえで、Tiを0.035%超えて含有する必要がある。一方、0.10%を超える多量の含有は、溶接性を低下させる。このため、Tiは0.035%超0.10%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.040〜0.070%である。
N:0.006%以下
Nは、不純物として存在し、とくに溶接部の靭性を低下させるため、本発明ではできるだけ低減することが望ましいが、0.006%以下であれば許容できる。このため、Nは0.006%以下に限定した。なお、過度の低減は精錬コストの高騰を招くため、0.001%以上とすることが好ましい。
上記した成分が基本の成分であるが、必要に応じて、基本成分に加えてさらに、選択元素として、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cr:0.5%以下、B:0.004%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ca:0.0001〜0.005%を、選択して含有できる。
Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cr:0.5%以下、B:0.004%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Mo、Cr、Bはいずれも、鋼板の強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Cuは、固溶し、γ→α変態を抑制して、鋼板強度の増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.001%以上含有することが望ましい。一方、0.5%を超える含有は、熱間加工性を低下させる。このため、含有する場合には、Cuは0.5%以下に限定することが好ましい。
Niは、固溶し、γ→α変態を抑制して、鋼板強度の増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.001%以上含有することが望ましい。一方、0.5%を超える含有は、熱間加工性を低下させる。このため、含有する場合には、Niは0.5%以下に限定することが好ましい。
Moは、固溶し、γ→α変態を抑制して、鋼板強度の増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.001%以上含有することが望ましい。一方、0.5%を超えて含有すると、焼入れ性が向上しすぎて、延性に乏しいフェライトが生成し、伸びが低下し、あるいはさらにマルテンサイトの生成が促進され、母材靭性が低下する。このため、含有する場合には、Moは0.5%以下に限定することが好ましい。
Crは、鋼板強度を増加する作用に加えて、パーライト変態を遅延させる効果を有し、さらに粒界セメンタイトを低減する作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが望ましい。一方、0.5%を超える多量に含有すると、焼入れ性が向上しすぎて延性に乏しいフェライトが形成され、伸びが低下する。また、多量の含有は、溶接部に焼入れ組織を形成する恐れがある。このため、含有する場合には、Crは0.5%以下に限定することが好ましい。
Bは、微量の含有で高温でのγ→α変態を抑制し、フェライト相の強度低下を抑制する作用を有する。このような効果を得るためには、0.0001%以上含有することが望ましい。一方、0.004%を超えて含有すると、溶接部に焼入れ組織を生成する恐れがあり、溶接部の靭性低下に繋がる。このため、含有する場合にはBは0.004%以下に限定することが好ましい。
Ca:0.0001〜0.005%
Caは、Sと結合し、MnSの生成を抑制する作用を介し、靭性向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を確保するためには、0.0001%以上含有することが好ましい。一方、0.005%を超える多量の含有は、Ca系酸化物の多量形成を招き、靭性が低下する。このため、含有する場合には、Caは0.005%以下に限定することが好ましい。
上記した成分を上記した範囲で含み、さらに(1)式で定義されるPcmが0.25以下を満足するように、各元素の含有量を調整することが望ましい。
Pcmは次(1)式
Pcm=[%C]+[%Si]/30+([%Mn]+[%Cu]+[%Cr])/20+[%Ni]/60+[%V]/10+[%Mo]/7+5×[%B] ‥‥(1)
ここで、[%M]:元素Mの含有量(質量%)
で定義される。
Pcmは、焼入れ性の程度を示す指標であり、0.25を超えて大きくなると、焼入れ性が大きくなりすぎ、所望のフェライトとベイナイトの組織分率を確保することが困難となる。このため、靭性と伸びが低下する。このようなことから、Pcmは、0.25以下に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、O:0.01%以下、Sn:0.01%以下、Mg:0.005%以下が許容できる。
次に、本発明高靭性高延性高強度熱延鋼板の組織について説明する。
本発明鋼板は、フェライト相を主相とし、第二相としてベイナイト相からなる組織を有する。なお、ここでいう「主相」とは、当該相の面積率が60%以上である場合をいうものとする。また、第二相とは、主相以外の残部をいい、第二相が複数の相(例えば、ベイナイトとパーライト)からなっていてもよいが本発明鋼板では第二相はベイナイト相である。本発明では、主相であるフェライト相は、ラス構造を示さないフェライト相とする。というのは、ラス構造を有するフェライト相では所望の高延性、高靭性を確保できなくなるためである。
そして、主相であるフェライト相は、Nb析出物が微細に分散した相とする。Nb析出物の析出量は、Nb換算で全Nb量に対する割合で10〜80%とする。Nbの析出割合が10%未満では、所望の高強度化を達成できないうえ、造管後の機械的特性のバラツキが大きくなる。一方、Nbの析出割合が80%を超えて多量になると、Nb析出物の粗大化が進行し、所望の高強度を確保できなくなる。このため、Nb析出物は、Nbの析出割合で10〜80%の範囲内となるように調整することとした。なお、Nb析出物量の調整は、冷却停止温度と巻取温度を調整することによった。
なお、Nbの析出割合は、つぎのような方法で測定した値を使用するものとする。対象とする鋼板から電解抽出用試験片を採取し、採取した試験片を、電解液(10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウム−メタノール)中で、定電流電解(約20mA/cm2)し、得られた抽出残渣をメンブランフィルター(孔径:0.2μmφ)で捕集し、硫酸、硝酸および過塩素酸の混合融剤を用いて融解し、ICP発光分析法により抽出残渣に含まれるNb量を定量し、得られたNb量(析出物となっているNb量)を用いて、全Nb量に対する割合を算出し、Nbの析出割合とする。なお、この方法によって定量される析出Nbはフェライト相以外の相(ベイナイト相、パーライトなど)中に析出しているNbを含むが、大部分はフェライト相中に析出しているNbである。
また、第二相であるベイナイト相は、面積率で20〜40%とする。
ベイナイト相の組織分率が、面積率で20%未満では引張強さの増加量が少なく、所望の低降伏比(85%以下)を確保することができない。一方、40%を超えると、圧延方向に伸びたベイナイト相が増加するため、靭性が低下する。また、ベイナイト相が40%を超えて多量に形成されると、ベイナイト相の硬さが低下する傾向があり、このため、所望の引張強さ増加量を確保できなくなる。このため、ベイナイト相は、面積率で20〜40%の範囲に限定した。
つぎに、本発明熱延鋼板の好ましい製造方法を説明する。
本発明熱延鋼板は、上記した組成の鋼素材を所定の加熱温度に加熱し、粗圧延および仕上圧延からなる熱間圧延を施し熱延板としたのち、該熱延板を所定の冷却速度にて加速冷却し、所定の巻取温度で巻き取る、工程で製造される。
なお、鋼素材の製造方法は特に限定する必要はないが、上記した組成の溶鋼を、転炉等の公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の公知の鋳造方法でスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、連続鋳造法以外に、造塊−分塊圧延法を採用してもなんら問題はない。
得られた鋼素材を、加熱温度:1000〜1250℃に加熱する。
加熱温度:1000〜1250℃
加熱温度が1000℃未満では析出強化元素であるNb、V、Tiが十分固溶せず、X80級の強度が確保できない。一方、1250℃を超えると、オーステナイト粒が粗大化し熱延板の靭性が低下する。このため、鋼素材の加熱温度は1000〜1250℃の範囲の温度に限定した。なお、好ましくは1100〜1200℃である。
上記した加熱温度に加熱された鋼素材は、粗圧延と仕上圧延からなる熱間圧延を施される。
粗圧延は、鋼素材を所定寸法のシートバーとすることができればよく、その条件はとくに限定する必要はない。粗圧延で得られたシートバーはついで、仕上圧延を施される。仕上圧延は、仕上圧延の圧延終了温度を、表面温度でフェライト変態点以下ベイナイト変態点以上とする圧延とする。なお、仕上圧延では、オーステナイト未再結晶温度域での圧下率を35%以下とすることが好ましい。
オーステナイト未再結晶温度域(未再結晶γ域)での圧下率:35%以下
オーステナイト(γ)相の再結晶が遅延するオーステナイト未再結晶温度域で圧延を行うことにより、導入される歪が蓄積され、冷却過程におけるγ/α変態の核生成サイトが増加して、析出するフェライト粒が微細化し、強度及び靭性が向上する。このような効果を得るためには、未再結晶γ域での圧下率を20%以上とすることが望ましい。なお、圧下率:35%を超える未再結晶γ域での圧延を行うと、仕上圧延中に形成されたフェライトが圧延方向に過度に展伸される。このため、低温での衝撃試験においてセパレーションが発生し吸収エネルギーが低下しやすい。このようなことから、オーステナイト未再結晶温度域(未再結晶γ域)での圧下率を35%以下に限定することが好ましい。
仕上圧延の圧延終了温度:フェライト変態点以下ベイナイト変態点以上
本発明では、所望の組織を得るために、仕上圧延中にフェライトを生成させる必要がある。そのため、仕上圧延の圧延終了温度を、フェライト変態点(オーステナイトからフェライトへの変態が開始する温度)以下に限定した。なお、圧延終了温度は、仕上圧延機の出側での鋼板表面温度の測定値である。圧延終了温度がフェライト変態点を上回ると、仕上圧延中に鋼板内部でのフェライト生成が阻害され、所望の組織が得られない。一方、圧延終了温度が、ベイナイト変態点(オーステナイトからベイナイトへの変態が開始する温度)を下回ると、生成するベイナイトの組織分率が上昇し、所望の高延性が確保できなくなる。このようなことから、仕上圧延終了温度はフェライト変態点以下ベイナイト変態点以上の範囲内に限定した。なお、好ましくは790〜850℃である。
仕上圧延を終了したのち、熱延板は冷却される。熱間圧延後の冷却条件は、板厚中央部での冷却速度で、平均で5〜50℃/sの冷却速度とする。
板厚中央部での平均冷却速度:5〜50℃/s
平均冷却速度が板厚中央部で、5℃/s未満では、冷却速度が遅く、ベイナイトの割合が低く、また、析出物が粗大化し所望の強度を確保することができなくなる。一方、50℃/sを超えて冷却速度が速くなると、板厚中央における組織のベイナイトの組織分率が高くなり、靱性、伸びが低下する。このため、仕上圧延終了後の冷却における平均冷却速度を5〜50℃/sの範囲に限定した。好ましくは、10〜40℃/sである。なお、板厚中央部での温度は、鋼板表面温度と水冷条件から熱伝導−熱伝達計算により求めるものとする。
なお、上記した平均冷却速度で、鋼板表面温度で360〜530℃の冷却停止温度まで冷却する。冷却停止温度が上記した範囲を外れると、所望の巻取温度で巻き取ることが困難となる。
上記した条件の冷却を停止したのち、巻取温度:350℃以上ベイナイト変態点以下でコイル状に巻き取る。
巻取温度:板厚中央部の温度で350℃以上ベイナイト変態点以下
巻取温度は、Nb、V、Ti等の析出強化を有効に利用するため、巻取温度は板厚中央部の温度で350℃以上とする。一方、巻取温度が板厚中央部の温度でベイナイト変態点を超えると析出物が粗大化し、強度が低下するとともに、粗大なパーライトが生成するため、靭性が低下する。このため、巻取温度は板厚中央部の温度で、350℃以上ベイナイト変態点以下に限定した。なお、好ましくは400〜600℃である。
以下、実施例に基づきさらに本発明について説明する。
表1に示す組成の連鋳製スラブ(鋼素材)(肉厚:215mm)を出発素材とした。これら鋼素材を、表2に示す加熱温度に加熱したのち、粗圧延と表2に示す条件の仕上圧延とからなる熱間圧延を施し、仕上圧延終了後、表2に示す冷却条件で表2に示す冷却停止温度まで冷却し、表2に示す巻取温度でコイル状に巻取り、表2に示す板厚の熱延鋼板(鋼帯)とした。
得られた熱延鋼板から試験片を採取し、組織観察、抽出残渣分析、引張試験、衝撃試験、DWTT試験を実施した。試験方法は次の通りとした。
(1)組織観察
得られた熱延鋼板から組織観察用試験片を採取し、該試験片の板厚方向中央部が観察位置となるように研磨、腐食して、走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍または2000倍)を用いて組織を観察し、撮像し、画像解析を用いて、組織の種類とその分率(面積率)を求めた。なお、観察した視野数は、組織形態に応じて適宜決定した。
また、得られた熱延鋼板の板厚中央位置より薄膜用試料を採取し、透過型電子顕微鏡(倍率:20000倍)を用いて組織を各3視野以上で観察し、撮像して、フェライト相中のラス構造の有無を判定した。
(2)抽出残渣分析
得られた熱延鋼板の板厚中央位置より電解抽出用試験片を採取し、該試験片をマレイン酸系電解液中で電解し、析出物(残渣)を抽出した。抽出された残渣(析出物)中のNb量を、ICP発光分析法により測定して、試験片全量に対する質量%で算出した。得られた抽出された残渣(析出物)中のNb量(質量%)を、全Nb量に対する割合(%)で表示し、Nb析出物量の指標として、Nbの析出割合(%)とした。
なお、使用したマレイン酸系電解液の組成は、10%マレイン酸−2%アセチルアセトン−5%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノールとした。また、電解抽出にあたっては、定電流電解(約20mA)とし、残渣をメンブレンフィルターで捕集した。その後、フィルターおよび残渣を圧下したのち、ホウ酸リチウムと過酸化ナトリウムの混合融剤を用いて融解し、副生物を塩酸で溶解したのち、水で一定量に希釈した。この希釈液をICP発光分析法で分析し、析出物(残渣中)のNb量を求め、Nbの析出割合を算出した。なお、Nbの析出割合が10〜80%の範囲内にある場合を「強度、靭性、伸び特性に好ましいNbの析出割合」と評価した。
(3)引張試験
得られた熱延鋼板の板厚中央部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるように、全厚引張試験片(JIS 1A号試験片、平行部幅:40mm、平行部厚さ:鋼板厚さのまま、原標点距離:200mm)を採取し、JIS Z2241の規定に準拠して、室温で引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、全伸びEl、降伏比)を求めた。なお、得られた各種板厚の全伸びElから、板厚20mmでの伸び(El20mm)に換算した。換算に際しては、次式を使用した。
El20mm=El{(20)0.5/t0.50.4
ここで、El20mm:板厚20mmのJIS 1A号引張試験片での伸び、
El:板厚tmmのJIS 1A号引張試験片での伸び、
t :JIS 1A号引張試験片の板厚(mm)
(4)シャルピー衝撃試験
得られた熱延鋼板の板厚中央部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにVノッチ試験片(10mm厚)を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:−60℃での吸収エネルギーvE−60(J)と破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。なお、各試験温度で用いる試験片は3本としvE−60は、得られた試験片3本の吸収エネルギー値を算術平均した平均値とした。
(5)DWTT試験
得られた熱延鋼板から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにDWTT試験片(大きさ:板厚×幅3in.×長さ12in.)を採取し、ASTM E 436の規定に準拠して、DWTT試験を行い、延性破面率が85%となる最低温度(DWTT)を求めた。DWTTが、−10℃以下の場合を「優れたDWTT特性」を有すると評価した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2015190019
Figure 2015190019
Figure 2015190019
本発明例はいずれも、YS:550MPa以上、TS:650MPa以上の高強度と、85%以下の低降伏比で、かつ、vE−60:110J以上、vTrs:−70℃以下の高靭性と、板厚20mm換算のEl20mmが30%以上の高延性とを有し、YS×El20mm:20000MPa%以上の強度−延性バランスに優れ、DWTTも-10℃以下と、高靭性高延性高強度熱延鋼板となっている。したがって、本発明例の熱延鋼板を用いて製造された電縫鋼管等は優れた変形特性を有することが期待できる。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、強度が低いか、靭性が低下しているか、高降伏比であるか、伸びが低く延性が低下しているか、あるいはそれら全てが低下している。

Claims (9)

  1. 質量%で、
    C:0.04〜0.15%、 Si:0.01〜0.55%、
    Mn:1.0〜3.0%、 P:0.03%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.003〜0.1%、
    Nb:0.001%以上0.035%未満、 V:0.001〜0.1%、
    Ti:0.035%超0.10%以下、 N:0.006%以下
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相を主相とし、第二相として面積率で20〜40%のベイナイト相とからなり、さらにNb析出物を、Nb換算で全Nb量に対する割合で10〜80%析出させた組織とを有し、降伏比:85%以下の低降伏比、降伏強さYS:550MPa以上、引張強さTS:650MPa以上の高強度、試験温度:−60℃でのシャルピー吸収エネルギーvE−60:110J以上、破面遷移温度vTrs:−70℃以下の高靭性、板厚20mm換算の伸びEl20mm:30%以上の高延性を有することを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cr:0.5%以下、B:0.004%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高靭性高延性高強度熱延鋼板。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.005%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高靭性高延性高強度熱延鋼板。
  4. 前記組成がさらに、下記(1)式で定義されるPcmが0.25以下を満足することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高靭性高延性高強度熱延鋼板。

    Pcm=[%C]+[%Si]/30+([%Mn]+[%Cu]+[%Cr])/20+[%Ni]/60+[%V]/10+[%Mo]/7+5×[%B] ‥‥(1)
    ここで、[%M]:元素Mの含有量(質量%)
  5. 鋼素材を加熱し、粗圧延および仕上圧延からなる熱間圧延を施し熱延板としたのち、該熱延板を冷却し、所定の巻取温度で巻き取る熱延鋼板の製造方法であって、
    前記鋼素材を、質量%で、
    C:0.04〜0.15%、 Si:0.01〜0.55%、
    Mn:1.0〜3.0%、 P:0.03%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.003〜0.1%、
    Nb:0.001%以上0.035%未満、 V:0.001〜0.1%、
    Ti:0.035%超0.10%以下、 N:0.006%以下
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、
    前記加熱を、加熱温度:1000〜1250℃に加熱する処理とし、
    前記仕上圧延の圧延終了温度を、表面温度でフェライト変態点以下ベイナイト変態点以上とし、
    前記冷却を、板厚中央部での平均冷却速度で、5〜50℃/sの冷却速度で冷却する処理とし、前記巻取温度を板厚中央部温度で350℃以上ベイナイト変態点以下とすることを特徴とする高靭性高延性高強度熱延鋼板の製造方法。
  6. 前記仕上圧延を、オーステナイト未再結晶温度域での圧下率が35%以下である圧延とすることを特徴とする請求項5に記載の高靭性高延性高強度熱延鋼板の製造方法。
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cr:0.5%以下、B:0.004%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項5または6に記載の高靭性高延性高強度熱延鋼板の製造方法。
  8. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.005%を含有することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の高靭性高延性高強度熱延鋼板の製造方法。
  9. 前記組成がさらに、下記(1)式で定義されるPcmが0.25以下を満足する組成であることを特徴とする請求項5ないし8のいずれかに記載の高靭性高延性高強度熱延鋼板の製造方法。

    Pcm=[%C]+[%Si]/30+([%Mn]+[%Cu]+[%Cr])/20+[%Ni]/60+[%V]/10+[%Mo]/7+5×[%B] ‥‥(1)
    ここで、[%M]:元素Mの含有量(質量%)
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