JP2015189858A - インクセット - Google Patents

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Masahiro Yatake
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Abstract

【課題】定着性に優れるインクセットを提供することを目的とする。
【解決手段】顔料及びポリマー粒子を含むインク組成物と、凝集剤を含む前処理液と、を備え、前記ポリマー粒子が、ガラス転移温度が0℃未満のポリマーから構成されるコア部と、ガラス転移温度が0℃以上であるポリマーから構成されるシェル部と、を有し、前記コア部を構成する前記ポリマーに含まれる酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が、前記シェル部を構成する前記ポリマーに含まれる前記酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量より少ない、インクセット。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクセットに関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、吐出安定性等について種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、吐出安定性、保存安定性に優れ、耐マーカー性、耐擦過性などの画像堅牢性が従来にない高いレベル達成できるインクを得ることを目的として、少なくとも顔料、水、水溶性有機溶媒、ポリマー微粒子を含有してなるインクジェット記録用インクにおいて、前記ポリマー微粒子が、アクリル系ポリマーをコアとし、ポリカーボネート系ウレタンポリマーのシェルで被覆した構造をもつことを特徴とするインクジェット記録用インクが開示されている。
特開2012−25947号公報
しかしながら、従来のインク組成物を布帛に対して用いると、定着性が低下するという問題がある。そのため、布帛に用いても密着性に優れるインク組成物が望まれる。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、定着性に優れるインクセットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定のインク組成物と前処理液とを有するインクセットであれば上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
顔料及びポリマー粒子を含むインク組成物と、凝集剤を含む前処理液と、を備え、
前記ポリマー粒子が、ガラス転移温度が0℃未満のポリマーから構成されるコア部と、ガラス転移温度が0℃以上であるポリマーから構成されるシェル部と、を有し、
前記コア部を構成する前記ポリマーに含まれる酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が、前記シェル部を構成する前記ポリマーに含まれる前記酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量より少ない、インクセット。
〔2〕
前記ポリマー粒子のガラス転移温度が、−10℃以下である、前項〔1〕に記載のインクセット。
〔3〕
前記コア部を構成する前記ポリマーが、疎水性モノマーに由来する繰り返し単位を含む、前項〔1〕又は〔2〕に記載のインクセット。
〔4〕
前記シェル部の酸価が、20〜200mgKOH/gである、前項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のインクセット。
〔5〕
前記ポリマー粒子が、乳化剤を実質的に用いずに合成されたものである、前項〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のインクセット。
〔6〕
前記コア部を構成する前記ポリマー及び前記シェル部を構成する前記ポリマーの少なくともいずれかが、窒素含有モノマーに由来する繰り返し単位を含む、前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のインクセット。
〔7〕
前記インク組成物における前記ポリマー粒子の含有量が、8.0質量%以上である、前項〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のインクセット。
〔8〕
前項〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のインクセットを用いるインクジェット印捺方法であって、
布帛に前記前処理液を付着させる前処理液付着工程と、
前記前処理液の付着領域に対して、前記インク組成物を吐出して画像を記録する記録工程と、を含む捺印方法。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートの両方を意味する。
〔インクセット〕
本実施形態のインクセットは、顔料及びポリマー粒子を含むインク組成物と、凝集剤を含む前処理液と、を備え、前記ポリマー粒子が、ガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう。)が0℃未満のポリマーから構成されるコア部と、ガラス転移温度が0℃以上であるポリマーから構成されるシェル部と、を有し、前記コア部を構成する前記ポリマーに含まれる酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が、前記シェル部を構成する前記ポリマーに含まれる前記酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量より少ない、インクセットである。
〔インク組成物〕
インク組成物は、顔料及びポリマー粒子を含み、必要に応じて、後述する任意成分を含んでもよい。以下、各成分について詳述する。
〔顔料〕
顔料としては、特に限定されないが、例えば、以下に例示されるものが挙げられる。
ブラックインクに使用される顔料としては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウム等の白色無機顔料が挙げられる。当該白色無機顔料以外に、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子などの白色有機顔料を使用することもできる。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外のカラーインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
顔料の含有量(固形分)は、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.10〜4.0質量%であり、より好ましくは0.50〜3.0質量%であり、さらに好ましくは1.0〜2.0質量%である。顔料の含有量が0.10質量%以上であることにより、発色性がより向上する傾向にある。また、顔料の含有量が4.0質量%以下であることにより、保存安定性がより向上する傾向にある。
〔ポリマー粒子〕
ポリマー粒子は、ガラス転移温度が0℃未満のポリマーから構成されるコア部と、ガラス転移温度が0℃以上であるポリマーから構成されるシェル部と、を有し、コア部を構成するポリマーに含まれる酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が、シェル部を構成するポリマーに含まれる酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量より少ない。このようなポリマー粒子を含むインク組成物と前処理液とを併用することにより、記録物のべとつきを抑制し、高い風合いを維持しつつ、高い定着性が発揮される。
なお、「モノマーに由来する繰り返し単位」とは、ポリマーの骨格中における、モノマーに由来する単一骨格を示す。また、ポリマーの重合状態は、同一モノマーに由来する単一骨格が連続したブロック重合を示しているわけではなく、ランダム重合等の他の重合をも含む。
(コア部)
コア部を構成するポリマーのTgは、0℃未満であり、好ましくは−10℃以下であり、より好ましくは−20℃以下である。コア部を構成するポリマーのTgが0℃未満であることにより、シェル部が軟化した後、容易にコア部が流出できるため、密着性により優れる傾向にある。また、コア部を構成するポリマーのTgが0℃未満であることによりポリマー粒子全体としてのガラス転移温度が低下するため、得られる記録物の風合い、インク組成物被膜の布帛に対する追従性がより向上する。なお、コア部を構成するポリマーのTgの上限は、特に限定されないが、−50℃以上が好ましい。コア部を構成するポリマー、及び後述するシェル部を構成するポリマーのTgは実施例に記載の方法により測定することができる
コア部及び後述するシェル部を構成するポリマーは単独重合体であっても共重合体であってもよい。コア部及び後述するシェル部を構成するポリマーが単独重合体である場合、単独重合体のTgは各種文献(例えばポリマーハンドブック等)に記載されているものを使用することができる。また、コア部及び後述するシェル部を構成するポリマーが共重合体である場合、共重合体のTgは、各種単独重合体のTgn(単位:K)と、単量体の質量分率(Wn)とから下記FOX式によって算出することができる。
Figure 2015189858
ここで Wn ;各単量体の質量分率
Tgn;各単量体のホモポリマーのTg(単位:K)
Tg ;共重合体のTg(単位:K)
n ;自然数
コア部を構成するポリマーのTgは、ポリマーが単独重合体である場合にはその単独重合体を選択することにより制御できる。また、ポリマーが共重合体である場合には上記単独重合体のTgと上記FOX式とを考慮することにより制御することができる。また、コア部を構成するポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。コア部を構成するポリマーが2種以上である場合は、最も高いガラス転移温度を有するポリマーのガラス転移温度を、コア部を構成するポリマーガラス転移温度とする。
単独重合体としては、特に限定されないが、例えば、2−エチルヘキシルアクリレートホモポリマー(Tg:−70℃)、2−エチルヘキシルメタクリレートホモポリマー(Tg:−10℃)、2−ヒドロキシエチルアクリレートホモポリマー(Tg:−15℃)、2−ヒドロキシエチルメタクリレートホモポリマー(Tg:55℃)、2−ヒドロキシブチルアクリレートホモポリマー(Tg:−7℃)、2−ヒドロキシブチルメタクリレートホモポリマー(Tg:26℃)、2−メトキシエチルアクリレートホモポリマー(Tg:−50℃)、4−ヒドロキシブチルアクリレートホモポリマー(Tg:−80℃)、iso−オクチルメタクリレートホモポリマー(Tg:−45℃)、iso−ブチルアクリレートホモポリマー(Tg:43℃)、iso−ブチルメタクリレートホモポリマー(Tg:53℃)、iso−プロピルアクリレートホモポリマー(Tg:−3℃)、iso−プロピルメタクリレートホモポリマー(Tg:81℃)、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートホモポリマー(Tg:20℃)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートホモポリマー(Tg:18℃)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートホモポリマー(Tg:18℃)、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドホモポリマー(Tg:134℃)、n−ブチルアクリレートホモポリマー(Tg:−54℃)、tert−ブチルアクリレートホモポリマー(Tg:43℃)、tert−ブチルメタクリレートホモポリマー(Tg:20℃)、アクリルアミドホモポリマー(Tg:179℃)、アクリル酸ホモポリマー(Tg:106℃)、アクリロニトリルホモポリマー(Tg:125℃)、イソアミルアクリレートホモポリマー(Tg:−45℃)、イソブチルアクリレートホモポリマー(Tg:−26℃)、イソブチルメタアクリレートホモポリマー(Tg:48℃)、イソボルニルアクリレートホモポリマー(Tg:94℃)、イソボルニルメタクリレートホモポリマー(Tg:155℃〜180℃)、イタコン酸ホモポリマー(Tg:100℃)、エチルアクリレートホモポリマー(Tg:−22℃〜−24℃)、エチルカルビトールアクリレートホモポリマー(Tg:−67℃)、エチルメタクリレートホモポリマー(Tg:65℃)、エトキシエチルアクリレートホモポリマー(Tg:−50℃)、エトキシエチルメタクリレートホモポリマー(Tg:15℃)、エトキシジエチレングリコールアクリレートホモポリマー(Tg:−70℃)、オクチルアクリレートホモポリマー(Tg:−65℃)iso−オクチルアクリレートホモポリマー(Tg:−70℃)、シクロヘキシルアクリレートホモポリマー(Tg:15℃〜19℃)、シクロヘキシルメタクリレートホモポリマー(Tg:66℃〜83℃)、ジシクロペンタニルアクリレートホモポリマー(Tg:120℃)、ジシクロペンタニルメタクリレートホモポリマー(Tg:175℃)、スチレンホモポリマー(Tg:100℃)、ステアリルアクリレートホモポリマー(Tg:35℃)、ターシャリーブチルアクリレートホモポリマー(Tg:41℃)、ターシャリーブチルメタクリレートホモポリマー(Tg:107℃)、テトラデシルアクリレートホモポリマー(Tg:24℃)、テトラデシルメタクリレートホモポリマー(Tg:−72℃)、テトラヒドロフルフリルアクリレートホモポリマー(Tg:−12℃)、テトラヒドロフルフリルメタクリレートホモポリマー(Tg:60℃)、ノニルアクリレートホモポリマー(Tg:58℃)、フェノキシエチルアクリレートホモポリマー(Tg:−22℃)、フェノキシエチルメタクリレートホモポリマー(Tg:54℃)、ブチルアクリレートホモポリマー(Tg:−56℃)、ブチルメタクリレートホモポリマー(Tg:20℃)、プロピルアクリレートホモポリマー(Tg:3℃)、プロピルメタクリレートホモポリマー(Tg:35℃)、ヘキサデシルアクリレートホモポリマー(Tg:35℃)、ヘキサデシルメタクリレートホモポリマー(Tg:15℃)、ヘキシルアクリレートホモポリマー(Tg:−57℃)、ヘキシルメタクリレートホモポリマー(Tg:−5℃、ベンジルアクリレートホモポリマー(Tg:6℃)、ベンジルメタクリレートホモポリマー(Tg:54℃)、ペンチルアクリレートホモポリマー(Tg:22℃)、ペンチルメタクリレートホモポリマー(Tg:−5℃)、マレイン酸ホモポリマー(Tg:130℃)、メタクリル酸ホモポリマー(Tg:185℃)カルボキシエチルアクリレートホモポリマー(Tg:37℃)、メチルアクリレートホモポリマー(Tg:8℃)、メチルメタクリレートホモポリマー(Tg:105℃)、メトキシエチルアクリレートホモポリマー(Tg:−50℃)、メトキシメタクリレートホモポリマー(Tg:−16℃)、ラウリルアクリレートホモポリマー(Tg:10℃)、ラウリルメタクリレートホモポリマー(Tg:−65℃)、酢酸ビニルホモポリマー(Tg:32℃)が挙げられる。なお、Tgはホモポリマーの製造方法や立体規則性によって異なる場合があるため、上記に限定されない。
コア部を構成するポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、疎水性モノマー単位を有する重合体が好ましく、疎水性モノマー単位、及び親水性モノマー単位の少なくともいずれかを有する重合体がより好ましく、疎水性モノマー単位、親水性モノマー単位、及び酸性基含有モノマー単位の少なくともいずれかを有する重合体がさらに好ましく、疎水性モノマー単位、親水性モノマー単位、酸性基含有モノマー単位、及び窒素含有モノマー単位の少なくともいずれかを有する重合体が特に好ましい。
コア部を構成するポリマーが、疎水性モノマーに由来する繰り返し単位を含むことにより、密着性がより向上する傾向にある。疎水性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートのような疎水性(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ジビニルベンゼンのような芳香族ビニル化合物モノマーが挙げられる。「疎水性」とは、水100mL(20℃)に対する溶解度が0.3g未満であることをいう。このなかでも、記録物の黄変を抑制する観点から、疎水性(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
コア部を構成するポリマーを構成する全繰り返し単位のうち、疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が上記範囲であることにより、加熱処理等を行うことによって被記録媒体上に記録された画像の表面に疎水性被膜が形成されるので、耐擦性がより向上する傾向にある。疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量の上限は、特に限定されないが、100質量%が好ましい。
親水性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。このなかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。ここで「親水性」とは、水100mL(20℃)に対する溶解度が0.3g以上であることをいう。
コア部を構成するポリマーを構成する全繰り返し単位のうち、親水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。親水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が上記範囲であることにより、記録物のべとつきがより抑制される傾向にある。親水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量の下限は、特に限定されないが、0質量%が好ましい。
酸性基含有モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸が挙げられる。このなかでも、(メタ)アクリル酸が好ましい。ここで、「酸性基含有モノマー」とは、酸性基と重合性不飽和基を有する重合性モノマーをいう。
コア部を構成するポリマーを構成する全繰り返し単位のうち、酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下である。酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が上記範囲であることにより、記録物のべとつきがより抑制される傾向にある。酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量の下限は、特に限定されないが、0質量%が好ましい。
コア部を構成するポリマー及び後述するシェル部を構成するポリマーの少なくともいずれかが、窒素含有モノマーに由来する単位を含むことが好ましい。このようなポリマー粒子を用いることにより、定着性がより向上する傾向にある。窒素含有モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリル(メタ)アミド等の(メタ)アクリルアミド又はそのN−置換誘導体が挙げられる。
コア部を構成するポリマーを構成する全繰り返し単位のうち、窒素含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。窒素含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が上記範囲であることにより、定着性がより向上する傾向にある。窒素含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量の下限は、特に限定されないが、0質量%である。
上記モノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
コア部の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以下であり、より好ましくは3mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは1mgKOH/g以下である。コア部の酸価が5mgKOH/g以下であることにより、記録物のべとつきがより抑制される傾向にある。また、コア部の酸価の下限は、特に限定されないが、0mgKOH/gが好ましい。酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
(シェル部)
シェル部を構成するポリマーのTgは0℃以上であり、好ましくは2℃以上であり、より好ましくは4℃以上である。また、シェル部を構成するポリマーのTgは、好ましくは35℃以下であり、より好ましくは25℃以下であり、さらに好ましくは10℃以下である。シェル部を構成するポリマーのTgが0℃以上であることにより、記録物のべとつきがより抑制される。また、記録ヘッドのノズル内におけるポリマー粒子の溶着をより抑制できるため、連続印刷安定性及び簡潔印刷安定性がより向上し、目詰まりがより抑制される。また、シェル部を構成するTgが35℃以下であることにより、密着性及び風合いがより向上する傾向にある。
シェル部を構成するポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。シェル部を構成するポリマーが2種以上である場合は、最も低いガラス転移温度を有するポリマーのガラス転移温度を、シェル部を構成するポリマーのガラス転移温度とする。
シェル部を構成するポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、酸性基含有モノマー単位を有する重合体が好ましく、親水性モノマー単位及び酸性基含有モノマー単位の少なくともいずれかを有する重合体がより好ましく、疎水性モノマー単位、親水性モノマー単位、及び酸性基含有モノマー単位の少なくともいずれかを有する重合体がさらに好ましく、疎水性モノマー単位、親水性モノマー単位、酸性基含有モノマー単位、及び窒素含有モノマー単位の少なくともいずれかを有する重合体が特に好ましい。
疎水性モノマー、親水性モノマー、酸性基含有モノマー、及び窒素含有モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、コア部において例示したものを挙げることができる。
シェル部を構成するポリマーを構成する全繰り返し単位のうち、疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは65質量%以下である。疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が上記範囲であることにより、加熱処理等を行うことによって被記録媒体上に記録された画像の表面に疎水性被膜が形成されるので耐擦性がより向上する傾向にある。親水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量の下限は、特に限定されないが、0質量%が好ましい。
シェル部を構成するポリマーを構成する全繰り返し単位のうち、親水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上である。親水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が上記範囲であることにより、シェル部の水に対する親和性が向上するので、インク組成物中におけるポリマー粒子の分散安定性が向上する傾向にある。また、ポリマー粒子がノズルに付着することをより効果的に抑制することができるので、記録用ヘッドのノズルからの吐出安定性がより良好となる傾向にある。親水性モノマーに由来する繰り返し単位の含有量の上限は、特に限定されないが、100質量%が好ましい。
シェル部を構成するポリマーを構成する全繰り返し単位のうち、酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、好ましくは2.0〜20質量%であり、より好ましくは3.0〜17.5質量%であり、さらに好ましくは4.0〜15質量%である。酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が2.0質量%以上であることにより、ポリマー粒子の表面に酸性基を存在させることができる。これにより、前処理液の凝集剤とポリマー粒子との反応性がより向上し、密着性がより向上する傾向にある。またべとつきを低減することもできる。さらに、ポリマー粒子の分散安定性がより向上するとともに、連続印刷安定性及び簡潔印刷安定性がより向上し、目詰まりがより抑制される傾向にある。また、酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が20質量%以下であることにより、定着性がより向上する傾向にある。
上述のとおり、コア部を構成するポリマー及びシェル部を構成するポリマーの少なくともいずれかが、窒素含有モノマーに由来する単位を含むことが好ましい。このようなポリマー粒子を用いることにより、定着性がより向上する傾向にある。
シェル部を構成するポリマーを構成する全繰り返し単位のうち、窒素含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。窒素含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が上記範囲であることにより、吐出安定性がより向上する傾向にある。窒素含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量の下限は、特に限定されないが、0質量%が好ましい。
シェル部の酸価は、好ましくは20〜200mgKOH/gであり、より好ましくは20〜150mgKOH/gであり、さらに好ましくは40〜100mgKOH/gである。シェル部の酸価が20mgKOH/g以上であることにより、前処理液の凝集剤とポリマー粒子との反応性がより向上し、密着性がより向上する傾向にある。また、シェル部の酸価が200mgKOH/g以下であることにより、記録物のべとつきがより抑制される傾向にある。酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリマー粒子のガラス転移温度は、コア部及びシェル部全体として、好ましくは−10℃以下であり、より好ましくは−12℃以下であり、さらに好ましくは−15℃以下である。ポリマー粒子のガラス転移温度が−10℃以下であることにより、風合い、インク組成物被膜の布帛に対する追従性がより向上する傾向にある。また、ポリマー粒子のガラス転移温度の下限は、コア部及びシェル部全体として、特に限定されないが、好ましくは−50℃であり、より好ましくは−40℃であり、さらに好ましくは−30℃である。ポリマー粒子のガラス転移温度の下限が−50℃以上であることにより、べとつきがより抑制される傾向にある。
また、コア部を構成するポリマーのガラス転移点が、シェル部を構成するポリマーのガラス転移点よりも10℃を超えて低いと好ましい。これによってコア部を構成するポリマーのガラス転移点が、シェル部を構成するポリマーのガラス転移点よりも10℃を超えて低いことにより、両者の混合を防止し、かつ、機能分離をすることが可能となる。
上記ポリマー粒子の粒子径φ(単位:nm)は、30nm〜500nmであることが好ましく、30nm〜200nmであることがより好ましく、30nm〜150nmであることがさらに好ましい。ポリマー粒子の粒子径が上記範囲にあることにより、インク組成物中におけるポリマー粒子の分散安定性がより向上する傾向にある。なお、ポリマー粒子の粒子径(φ)は、動的光散乱法により求めることができる体積基準の平均粒子径を意味する。
上記ポリマー粒子のコア部の質量(c)とシェル部の質量(s)との比率(c/s)は、0.4〜4.0であることが好ましく、0.5〜2.5であることがより好ましく、0.6〜2.0であることが特に好ましい。また、上記ポリマー粒子が(c/s)/φ≧0.01の関係を満たす場合、ポリマー粒子の大きさにかかわらずコア部の質量とシェル部の質量とのバランスが良好となるため、インク組成物の吐出安定性と被記録媒体に記録された画像の耐擦性とが共に向上する傾向にある。
また、上記ポリマー粒子のコア部やシェル部を構成する重合体は、それぞれ非架橋であることが特に好ましい。非架橋であることにより吐出安定性がより向上する傾向にある。重合体の架橋度は、テトラヒドロフラン(THF)を用いて重合体のゲル分率(以下、「THFゲル分率」ともいう。)を測定することにより定量化できる。ポリマー粒子のTHFゲル分率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。ポリマー粒子のTHFゲル分率が上記範囲内であることにより、被記録媒体に記録された画像の耐擦性がより向上する傾向にある。
THFゲル分率は、例えば以下のようにして測定することができる。コアシェル型ポリマー粒子約10gをテフロン(登録商標)シャーレへ秤り取り、120℃で1時間乾燥して成膜する。得られた膜をTHFに20℃で24時間浸漬したものを100メッシュのフィルターでろ過し、さらに20℃で24時間再乾燥させて、次式からTHFゲル分率(%)を求めることができる。
THFゲル分率(%)=(再乾燥後の質量/元の質量)×100
ポリマー粒子の含有量(固形分換算)は、インク組成物の総量に対し、好ましくは4.0質量%以上であり、より好ましくは6.0質量%以上であり、さらに好ましくは8.0質量%以上である。ポリマー粒子の含有量が8.0質量%以上であることにより、密着性がより向上する傾向にある。また、ポリマー粒子の含有量(固形分換算)は、インク組成物の総量に対し、好ましくは16質量%以下であり、より好ましくは14質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以下である。ポリマー粒子の含有量が16質量%以下であることにより、使用する反応液量を低減することができ、反応液に由来するべとつきがより抑制される傾向にある。
ここで、本明細書におけるコアシェル型ポリマー粒子は、コア部を形成するポリマーがコア部に局在化し、シェル部を形成するポリマーがシェル部に局在化していればよく、コア部とシェル部との境界が厳密に明確でないポリマー粒子であってもよい。
(ポリマー粒子の合成方法)
ポリマー粒子の合成方法については特に限定されないが、例えば公知の乳化重合法又はこれを適宜に組み合わせることによって容易に合成することができる。具体的には、一括混合重合法、モノマー滴下法、プレエマルション法、シード乳化重合法、多段階乳化重合法(二段乳化重合法等)、転相乳化重合法等が挙げられる。このなかでも、ポリマー粒子としては、乳化剤を実質的に用いずに合成されたものが好ましい。具体的には、下記シェル部を先に合成し、合成されたシェル部内でコア部を重合する重合方法により合成されたポリマー粒子が好ましい。このようなポリマー粒子を用いることにより、気泡の発生が抑制されるため、連続印刷安定性及び間欠印刷安定性がより向上し、目詰まりがより抑制される傾向にある。
シェル部を先に合成する重合方法について説明する。まず、シェル部を合成する。具体的には、反応性乳化剤を用いて上述の親水性モノマーを含むプレエマルション溶液を調製し、該プレエマルション溶液を重合開始剤とともに水系媒体中に滴下、重合反応することでシェル部を合成する。
次に、得られたシェル部を重合場として、コア部を重合し、本実施形態に係るポリマー粒子を合成する。具体的には、シェル部を含有する水系分散媒体中に上述の疎水性モノマーを含むモノマー混合物を滴下し、コア部を重合し、ポリマー粒子とする。なお、シェル部を重合場とする場合、モノマー混合物には乳化剤を含有させる必要がないため、モノマー油滴として滴下することができる。
かかる重合法によれば、反応性乳化剤を用いてシェル部を合成し、乳化剤フリーでコア部を合成することができるため、インク組成物中の乳化剤の含有量を容易に0.01質量%以下とすることができる。インク組成物において、含有される乳化剤の含有量が0.01質量%以下であると、インク界面(大気−インクにおける気液界面、インク収容容器等のインク接触部材−インクにおける固液界面)におけるインク成分の凝集が抑制され、保存安定性に優れるため好ましい。また、インク組成物において、含有される乳化剤の含有量が0.01質量%以下であると、起泡性、消泡性に優れるため、インク充填可能な注入口を有するインク収容容器を好ましく用いることができる。ここで、「インク充填可能な注入口を有するインク収容容器」とは、着脱又は開閉可能な注入口を有するインク収容容器のことであり、ユーザーが容易にインク組成物を注入できるようになっている一方で、注入時に泡立ちやすい。なお、注入口の開口面積が20mm2以上であるとインク組成物の充填が容易になるため好ましい。このようなインク収容容器は、例えば、特開2005−219483号公報や特開2012−51309号公報に開示されている。また、通常の乳化重合に用いられる重合開始剤、分子量調節剤等を、必要に応じて1種又は2種以上使用することができる。
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2−カルバモイルアザイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過酸化基を有するラジカル乳化性化合物を含有するラジカル乳化剤、亜硫酸水素ナトリウム、及び硫酸第一鉄等の還元剤を組み合わせたレドックス系を用いることができる。重合開始剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
分子量調節剤としては、特に限定されないが、例えばn−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー等の炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α−テルネピン、γ−テルネピン、ジペンテン、1,1−ジフェニルエチレンが挙げられる。分子量調節剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、大量の乳化剤を用いてポリマー粒子を合成する場合であっても、ポリマー粒子の合成後に過剰な乳化剤を除去することによって、インク組成物に含まれる乳化剤の含有量を0.01質量%以下としてもよい。
最後に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基で中和してpHを調整して、必要に応じてろ過することにより、コアシェル型ポリマー粒子分散液が得られる。
次に、コア部を先に合成する重合方法について説明する。まず、水系媒体を用いた通常の乳化重合法によりコア粒子を合成する。乳化重合の条件は、公知の方法に準ずればよいが、例えば使用するモノマー全量を100部とした場合に、通常100〜500部の水(水系媒体)を使用して重合を行うことができる。重合温度は、−10〜100℃が好ましく、−5〜100℃がより好ましく、0〜90℃がさらに好ましい。また、重合時間は、0.1〜30時間が好ましく、2〜25時間がより好ましい。乳化重合の方式としては、モノマーを一括して仕込むバッチ方式、モノマーを分割もしくは連続して供給する方式、モノマーのプレエマルジョンを分割もしくは連続して添加する方式、又はこれらの方式を段階的に組み合わせた方式等を採用することができる。なお、通常の乳化重合に用いられる重合開始剤、分子量調節剤、乳化剤等を、必要に応じて1種又は2種以上使用することができる。
乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤;親水基と疎水基とラジカル反応性基とを含有する反応性乳化剤;ビニル系重合体、ポリエステル系重合体等の重合体に親水基を導入した高分子乳化剤等を挙げることができる。乳化剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なお、親水基とは、水に対する親和性が高い原子団のことであり、例えば、ニトロ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。また、疎水基とは、親水基よりも水に対する親和性が低い原子団のことであり、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、脂環基、芳香環基、アルキルシリル基、パーフルオロアルキル基等が挙げられる。
次いで、得られたコア粒子(コア部)の存在下において、シェル部用のモノマーを重合させる。具体的には、得られたコア粒子をシード粒子として使用した状態でシェル部用のモノマーをシード重合させることによって、コアシェル型ポリマー粒子を形成することができる。例えば、コア粒子が分散した水系媒体中に、シェル部用のモノマーもしくはそのプレエマルジョンを一括、分割、又は連続して滴下すればよい。このとき使用するコア粒子の量は、シェル部用のモノマー100質量部に対して、25〜250質量部とすることが好ましい。重合に際して重合開始剤、分子量調節剤、乳化剤等を用いる場合には、コア粒子の製造時と同様のものを使用することができる。また、重合時間等の条件についても、コア粒子の製造時と同様にすればよい。
〔界面活性剤〕
インク組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。インク組成物がこれらの界面活性剤を含むことにより、被記録媒体に付着したインク組成物の濡れ性がより向上する傾向にある。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製商品名)、サーフィノール465やサーフィノール61(日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製商品名)が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S−144、S−145(旭硝子株式会社製);FC−170C、FC−430、フロラード−FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(Dupont社製);FT−250、251(株式会社ネオス製)が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
界面活性剤のインク組成物中の含有量は、インク組成物の総量に対し、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、被記録媒体に付着したインク組成物の濡れ性がより向上する傾向にある。
〔溶媒〕
インク組成物は、溶媒として、水、有機溶媒を含んでもよい。
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。これにより貯蔵安定性がより向上する傾向にある。
水の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは50〜80質量%であり、より好ましくは55〜75質量%であり、さらに好ましくは60〜70質量%である。
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノ(ジ)−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ(ジ)−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ(ジ)−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ(ジ)−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ(ジ)−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ(ジ)−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ(ジ)ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ(ジ)−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ(ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノ(ジ)エチルエーテル、プロピレングリコールモノ(ジ)−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ(ジ)−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ(ジ)−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ(ジ)−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(ジ)−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(ジ)−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(ジ)−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテルのようなグリコール系溶媒;1,4−ジオキサン、N,N,−ジメチルアセトアミド、N,N,−ジメチルイミダゾリジノン、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、N-メチル−ピロリドン、N−メチルプロピオンアミド、β−ブチルラクトン、γ−ブチルラクトン、アジポニトリル、アセトニトリル、エチルセロソルブアセテート、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジグライム、ジブチルエーテル、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラグライム、テトラヒドロフラン、テトラメチルホスホリックアミド、トリグライム、ヘキサメチルホスホリックアミド、メチルセロソルブアセテート、メチルフェニルスルホキシド、モノグライム、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,1,3,3−テトラメチル尿素のような窒素含有溶媒又は非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、及びtert−ペンタノール等のモノアルコール系溶媒が挙げられる。有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは5.0〜35質量%であり、より好ましくは10〜30質量%であり、さらに好ましくは15〜25質量%である。
〔その他の成分〕
インク組成物は、その保存安定性及びヘッドからの吐出安定性を良好に維持するため、目詰まり改善のため、又はインク組成物の劣化を防止するため、溶媒、保湿剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
〔前処理液〕
前処理液は、凝集剤を含む。前処理液中の凝集剤がインク組成物と相互作用することにより、インク組成物が増粘又は不溶化する。これにより、その後に付着させるインク組成物の着弾干渉、滲みを防止でき、ラインや微細像などを均質に描画することができる。凝集剤としては、特に限定されないが、例えば、多価金属塩及び有機酸が挙げられ、凝集剤がこれらの少なくともいずれかを含むことが好ましい。凝集剤が多価金属塩及び有機酸の少なくともいずれかを含むことにより、ベタムラ、ブリードがより抑制される傾向にある。
(多価金属塩)
多価金属塩としては、特に限定されないが、例えば、無機酸の多価金属塩又は有機酸の多価金属塩が好ましい。このような多価金属塩としては、特に限定されないが、例えば、周期表の第2族のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13族からの土類金属(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。これら多価金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硫酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩が挙げられる。なお、多価金属塩は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
(有機酸)
有機酸としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸が挙げられる。このなかでも、1価あるいは2価以上のカルボン酸が好ましい。このようなカルボン酸を含むことにより、ポリマー微粒子(A)の凝集効果がより向上し、ひいては発色性によりより優れる傾向にある。なお、有機酸は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
凝集剤の含有量は、前処理液の総量(100質量部)に対して、5.0〜30質量部が好ましく、7.5〜27.5質量部がより好ましく、12.5〜22.5質量部がさらに好ましい。凝集剤の含有量が上記範囲内であることにより、ベタムラ、ブリードがより抑制される傾向にある。
前処理液は、必要に応じて他の成分を含むことができる。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、界面活性剤、溶媒などが挙げられる。
(界面活性剤)
前処理液は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。これら界面活性剤としてはインク組成物で例示したものと同様のものが例示される。
界面活性剤の含有量は、前処理液の総量(100質量部)に対し、好ましくは0.050〜2.5質量部であり、より好ましくは0.10〜3.0質量部である。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、被記録媒体に付着した前処理液の濡れ性がより向上する傾向にある。
(溶媒)
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、有機溶媒又は水を用いることができる。有機溶媒としてはインク組成物で例示したものと同様のものが例示される。
〔印捺方法〕
本実施形態のインクセットは、印捺方法に好適に用いることができる。以下、本実施形態のインクセットを用いた印捺方法について説明する。印捺方法は、上記インクセットの前処理液を布帛に付着させる前処理液付着工程と、上記インクセットのインク組成物をヘッドから吐出して、布帛上の前処理液の付着領域の少なくとも一部に付着させる記録工程と、を有する。
〔前処理液付着工程〕
前処理液付着工程は、インクセットの前処理液を布帛に付着させる工程である。前処理液を付着させる手段としては、特に限定されないが、例えば、ローラーによる塗布、スプレーによる塗布、インクジェットによる塗布を利用することができる。
〔記録工程〕
記録工程は、上記インクセットのインク組成物をヘッドから吐出して、布帛上の前処理液の付着領域の少なくとも一部にインク組成物を付着させる工程である。前処理液付着工程後、布帛に付着した前処理液の揮発成分が残存する状態で、記録工程を行っても、前処理液付着工程後記録工程前に乾燥工程を設けてもよい。
〔加熱工程〕
本実施形態の印捺方法は、記録工程後、布帛を加熱する加熱工程をさらに有することが好ましい。加熱することにより、前処理液又はインク組成物に含まれるポリマー粒子などの成分を布帛の表面に融着させ、かつ、水分を蒸発させることができる。また、加熱工程を行うことにより、得られる画像は耐擦性により優れる傾向にある。
加熱工程においては、布帛上の前記インク組成物付着面を加圧処理しなくても、布帛上の上記インク組成物付着面を加圧処理してもよい。布帛上の上記インク組成物付着面を加圧処理しない加熱方法としては、オーブン乾燥(コンベアオーブン、バッチオーブン等のプレスをしない方法)が挙げられる。このような加熱工程を有することにより、記録物生産性がより向上する。また、密着性、耐擦性が向上しにくいため、本発明が特に有用である。また、布帛上の上記インク組成物付着面の加圧処理もする加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、ヒートプレス、ウェットオンドライが挙げられる。なお、「加圧」とは、被記録媒体に対して、固体を接触させることにより圧をかけることをいう。
また、加熱の熱源としては、特に限定されないが、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。加熱処理時の温度は、インク組成物に含まれ得る樹脂(ポリマー)を融着し、かつ、水分を蒸発させることができればよく、100℃以上が好ましく、150〜200℃程度がより好ましい。加熱処理時の温度が上記範囲であることにより、より耐擦性が得られる傾向にある。
〔布帛〕
本実施形態で用いる布帛としては、特に限定されないが、例えば、絹、綿、羊毛、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の天然繊維又は合成繊維が挙げられる。
上記加熱工程後は、布帛を水洗し、乾燥してもよい。このとき、必要に応じてソーピング処理、即ち未固着の顔料を熱石鹸液などで洗い落とす処理を行ってもよい。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
下記の実施例及び比較例において使用したインク組成物用の主な材料は、以下の通りである。
〔顔料〕
顔料分散液(下記調製方法により製造した。)
〔ポリマー粒子〕
ポリマー粒子水分散液1〜18(下記調製方法により製造した。)
〔溶媒等〕
1,2−ヘキサンジオール
2−ピロリドン
グリセリン
〔界面活性剤〕
E1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製)
〔前処理液〕
〔凝集剤〕
硝酸カルシウム
〔溶剤〕
グリセリン
1,2−ヘキサンジオール
〔顔料分散液の調製方法〕
攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた反応容器を窒素置換した後、メチルエチルケトン300質量部を入れ、スチレン40質量部、メチルメタクリレート40質量部、ラウリルアクリレート5質量部、ラウリルメタクリレート5質量部、メトキシポリエチレングリコール400アクリレートAM−90G(新中村化学工業株式会社製)5質量部、アクリル酸5質量部、過硫酸アンモニウム0.2質量部、t―ドデシルメルカプタン0.3質量部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながらポリマー分散剤を重合反応させた。その後、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40質量%のポリマー分散剤の溶液を調製した。
上記ポリマー分散剤溶液について、株式会社日立製作所製L7100システムのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、溶媒をTHFとしてスチレン換算の重量平均分子量を測定したところ、58000であった。また、多分散度(Mw/Mn)の値は3.1であった。
また、上記ポリマー分散剤溶液40質量部と、シアン顔料としてクロモファインブルー C.I.Pigment Blue15:3(大日精化工業株式会社製、商品名、以下「PB15:3」ともいう)30質量部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100質量部、メチルエチルケトン30質量部とを混合し、アルティマイザー25005(スギノマシン株式会社製製品名)で8パスの分散処理を行った。その後、イオン交換水を300質量部添加して、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整した。次いで、シアン顔料の体積平均粒子径を粒度分布計で測定しながら、体積平均粒子径が100nmとなるまで分散してから、3μmのメンブレンフィルターでろ過して固形分(ポリマー分散剤と顔料)が20質量%である顔料分散液を得た。
〔ポリマー粒子水分散液1の調製方法〕
反応容器に滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、攪拌機を備え、イオン交換水100質量部を入れ、攪拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過硫酸アンモニウムを0.2質量部添加した。次いで、スチレン20質量部、エチルアクリレート25質量部、ブチルアクリレート22質量部、及びアクリル酸5質量部を含むモノマー溶液を、反応容器に滴下して、シェル部になるポリマーを重合した。その後、過硫酸カリウム0.2質量部、スチレン10質量部、及びn−ブチルアクリレート62質量部を含む混合液を滴下して70℃で攪拌しながら重合反応させた後、水酸化ナトリウムで中和しpH8〜8.5に調整して0.3μmのフィルターでろ過することによりポリマー粒子水分散液1を調製した。
上記で得られたポリマー粒子のコア部とシェル部のガラス転移温度は、上述のFOX式を用いて算出した。。
また、上記で得られたポリマー粒子をマイクロトラックUPA(日機装株式会社製品名)により測定して、ポリマー粒子の平均粒子径φ(nm)を求めた。ポリマー粒子の平均粒子径は、45nmであった。
酸価は、京都電子工業社(Kyoto Electronics Manufacturing Co.,Ltd.)製のAT610(製品名)を用いて測定を行い、以下の数式(1)に数値をあてはめて算出した。
酸価(mg/g)=(EP1−BL1)×FA1×C1×K1/SIZE (1)
(上記の数式中、EP1は滴定量(mL)、BL1はブランク値(0.0mL)、FA1は滴定液のファクター(1.00)、C1は濃度換算値(5.611mg/mL)(0.1mo1/L KOH 1mLの水酸化カリウム相当量)、K1は係数(1)、SIZEは試料採取量(g)をそれぞれ表す。)
〔ポリマー粒子水分散液2〜18の調製方法〕
ポリマー粒子モノマー組成を、表1に記載のモノマー組成に変更した以外は、ポリマー粒子水分散液1の調製方法と同様の操作により、ポリマー粒子水分散液2〜18を調製した。これらポリマー粒子の物性を表1に示す。
〔実施例1〜16、比較例1,2〕
〔インク組成物の調製方法〕
容器に、上記で得られた顔料分散液を顔料濃度が2質量部(インク組成物の全量を100質量部とする。以下同様。)となるように添加し、上記で得られたポリマー粒子水分散液をその固形分濃度が10質量部となるように添加し、1,2−ヘキサンジオール6質量部、2−ピロリドン5質量部、グリセリン10質量部、界面活性剤(日信化学工業株式会社製、商品名「オルフィンE1010」)1質量部を添加し、さらに純水をインク組成物の全量が100質量部となるように添加した。次いで、容器内をマグネチックスターラーで2時間混合撹拌した後、孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルターを用いてろ過することにより各インク組成物を得た。
〔前処理液の調製方法〕
硝酸カルシウム20質量%、グリセリン10質量%、1、2−ヘキサンジオール2質量%、水残量を混合して硝酸カルシウム20質量%水溶液を作製した。
〔連続印刷安定性試験〕
プリンター PX−G930(セイコーエプソン株式会社製)の一部を改造して、布帛が印刷できるプリンターとした。このプリンターのインクカートリッジに上記で得られたインク組成物を充填した。そして、縦720dpi×横720dpiの解像度で、A4判の綿の布帛上にインク組成物を吐出し、150℃で1分間乾燥することにより、シアンのベタパターンによる記録サンプルを作製した。温度40℃、相対湿度20%の環境下で、最大8時間までこの操作を繰り返してインク組成物を吐出し、安定してインク組成物の液滴がノズルから吐出されなくなるまでの時間を測定した。得られた時間に基づいて、下記評価基準により連続印刷安定性を評価した。
(評価基準)
A:吐出開始から8時間たっても、1度も不吐出や吐出乱れが観察されなかった。
B:吐出開始から2時間以上8時間未満で、不吐出や吐出乱れが観察された。
C:吐出開始から1時間以上2時間未満で、不吐出や吐出乱れが観察された。
D:吐出開始から1時間未満で、不吐出や吐出乱れ等が観察された。
〔間欠特性試験〕
プリンター PX−G930(セイコーエプソン株式会社製)の一部を改造して、布帛が印刷できるプリンターとした。このプリンターを用いて、温度40℃、相対湿度20%の環境下で間欠印刷時における吐出安定性の評価を行った。まず、全てのノズルから正常にインク組成物が吐出されることを確認した。そして、インク組成物をA4判の写真用紙(セイコーエプソン株式会社製フォト光沢紙)上に吐出した後、温度40%、相対湿度20%の環境下で2分間の休止時間を設け、再度、A4判の写真用紙上にインク組成物を吐出した。二回目の吐出において、A4判の写真用紙上に付着した1滴目のドットの位置と、狙い位置とのドットの位置ずれを光学顕微鏡で測定した。得られたドットの位置ずれに基づいて、下記評価基準により間欠特性を評価した。
(評価基準)
A:ドットの位置ずれが10μm以下であった。
B:ドットの位置ずれが10μmを超え20μm以下であった。
C:ドットの位置ずれが20μmを超え30μm以下であった。
D:ドットの位置ずれが30μm超過であった。
〔目詰まり回復性試験〕
プリンター PX−G930(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、このプリンターのインクカートリッジに上記で得られたインク組成物を充填し、縦720dpi×横720dpiの解像度で、A4判OPP用紙に印刷して全ノズルでインク組成物が吐出されることを確認した。その後、プリンターを温度40℃、相対湿度20%の環境下に30日間放置した。放置後、再び全ノズルよりインク組成物を吐出し、初期と同等の印刷が可能となるまでにクリーニングを繰り返し実施し、その際のクリーニングの回数を計測した。クリーニングの回数に基づいて、下記評価基準により目詰まり回復性を評価した。
(評価基準)
A:1回から3回のクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
B:4回から6回のスクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
C:7回以上のクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
D:クリーニングではいずれかのノズルからインク組成物が吐出できなかった。
〔定着性試験〕
プリンター PX−G930(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、このプリンターのインクカートリッジに上記で得られたインク組成物を充填し、縦720dpi×横720dpiの解像度で、A4PPC用紙に印刷して全ノズルでインク組成物が吐出されることを確認した。そして、綿の布帛に、まず前処理液を吐出して付着させ、その後、前処理液が付着した部分にインク組成物を吐出して付着させ、150℃で1分乾燥することにより、シアンのベタパターンによる記録サンプルを作製した。その後、摩擦に対する染色堅牢度試験方法(JIS L−0849)に規定されている摩擦試験機II形(学振形)に準拠した学振式耐擦性試験機AB−301(テスター産業株式会社製)により、耐擦性を評価した。
(評価基準)
A:JIS−L0849−2004法の試験で5級または4/5級
B:JIS−L0849−2004法の試験で4級または3/4級
C:JIS−L0849−2004法の試験で3級または2/3級
D:JIS−L0849−2004法の試験で2級以下
Figure 2015189858
※モノマーのカッコ内は単独重合体のガラス転移温度を示す。
実施例1〜16のインク組成物は、連続印刷安定性、間欠印刷安定性、目詰まり回復性及び定着性が良好となる結果が得られた。

Claims (8)

  1. 顔料及びポリマー粒子を含むインク組成物と、凝集剤を含む前処理液と、を備え、
    前記ポリマー粒子が、ガラス転移温度が0℃未満のポリマーから構成されるコア部と、ガラス転移温度が0℃以上であるポリマーから構成されるシェル部と、を有し、
    前記コア部を構成する前記ポリマーに含まれる酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が、前記シェル部を構成する前記ポリマーに含まれる前記酸性基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量より少ない、インクセット。
  2. 前記ポリマー粒子のガラス転移温度が、−10℃以下である、請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記コア部を構成する前記ポリマーが、疎水性モノマーに由来する繰り返し単位を含む、請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記シェル部の酸価が、20〜200mgKOH/gである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクセット。
  5. 前記ポリマー粒子が、乳化剤を実質的に用いずに合成されたものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクセット。
  6. 前記コア部を構成する前記ポリマー及び前記シェル部を構成する前記ポリマーの少なくともいずれかが、窒素含有モノマーに由来する繰り返し単位を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクセット。
  7. 前記インク組成物における前記ポリマー粒子の含有量が、8.0質量%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクセット。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクセットを用いるインクジェット印捺方法であって、
    布帛に前記前処理液を付着させる前処理液付着工程と、
    前記前処理液の付着領域に対して、前記インク組成物を吐出して画像を記録する記録工程と、を含む捺印方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017110182A (ja) * 2015-12-10 2017-06-22 セイコーエプソン株式会社 インク組成物、及び記録方法

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