JP2015188055A - 積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明導電層を設けることによる透過率の低下が抑制され、透明導電層を設けることによる呈色が抑制された積層体を提供すること。【解決手段】重量平均分子量が5万〜100万である光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、DSC法で得られる結晶化度が20%〜80%であり、かつ、マイクロ波透過型分子配向計で測定される基準厚さを50μmとしたときの規格化分子配向MORcと前記結晶化度との積が40〜700であり、可視光線に対する内部ヘイズが5%以下である高分子圧電フィルムと、中間層と、透明導電層と、をこの順に有する積層体。【選択図】図1A

Description

本発明は、積層体に関する。
近年、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(例えばポリ乳酸系高分子)を用いた高分子圧電材料が報告されている。
例えば、ポリ乳酸の成形物を延伸処理することで、常温で、10pC/N程度の圧電率を示す高分子圧電材料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
ポリ乳酸系高分子を高分子圧電部材として用いた装置としては、例えば、ポリ乳酸から作製した圧電シートを備えたタッチ式入力装置(タッチパネル)が提案されている(例えば、特許文献2〜5参照)。タッチ式入力装置(タッチパネル)は、タッチパネル上の二次元的な位置情報だけでなく、タッチパネル面を押した圧力を検出できるため、タッチパネルの操作方法を三次元に拡張することが可能である。
タッチパネル等に用いられる透明導電性基材としては、ガラス板、樹脂板や、各種の熱可塑性高分子フィルムの基板上に、酸化インジウム錫(ITO)や酸化亜鉛などの導電性を有する金属酸化物等の屈折率の高い材料を積層したものが一般的に用いられている。
また、例えば、二軸延伸のポリエステル、アクリル樹脂及び環状ポリオレフィンからなる基材上に、接着層、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電性薄膜層をこの順に積層した積層フィルムが開示されている(例えば、特許文献6参照)。
特開平5−152638号公報 国際公開第2010/143528号 国際公開第2011/125408号 国際公開第2012/049969号 国際公開第2011/138903号 特開2014−096241号公報
しかしながら、圧電材料上に金属酸化物等の透明導電層を積層させた場合、透明導電層の反射および吸収に由来する可視光短波長域の透過率低下により全光線透過率が低下すると同時に、黄色もしくは茶色に呈色することがある。
従って、本発明の目的は、透明導電層を設けることによる透過率の低下が抑制され、透明導電層を設けることによる呈色が抑制された積層体を提供することである。
[1]重量平均分子量が5万〜100万である光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、DSC法で得られる結晶化度が20%〜80%であり、かつ、マイクロ波透過型分子配向計で測定される基準厚さを50μmとしたときの規格化分子配向MORcと前記結晶化度との積が40〜700であり、可視光線に対する内部ヘイズが5%以下である高分子圧電フィルムと、
中間層と、
透明導電層と、
をこの順に有する積層体。
[2]前記中間層の屈折率n1が1.50〜1.95であり、前記中間層の膜厚d1が5nm〜500nmであり、前記透明導電層の屈折率n2が1.85〜2.35であり、前記透明導電層の膜厚d2が5nm〜200nmであり、
n1<n2
を満たす[1]に記載の積層体。
[3]前記中間層の屈折率n1が1.55〜1.65であり、前記中間層の膜厚d1が60nm〜150nmであり、前記透明導電層の屈折率n2が1.85〜2.10であり、前記透明導電層の膜厚d2が10nm〜60nmである[1]または[2]に記載の積層体。
[4]前記中間層の屈折率n1が1.57〜1.61である[1]〜[3]のいずれか1つに記載の積層体。
[5]前記高分子圧電フィルムと前記中間層との間に硬化樹脂層を有する[1]〜[4]のいずれか1項に記載の積層体。
[6]前記硬化樹脂層が易接着層、ハードコート層、帯電防止層、及びアンチブロック層の少なくとも1つである[5]に記載の積層体。
[7]前記硬化樹脂層が、三次元架橋樹脂であって活性エネルギー線照射により硬化された活性エネルギー線硬化樹脂を含む[5]または[6]に記載の積層体。
[8]前記硬化樹脂層の屈折率が1.45〜1.55である[5]〜[7]のいずれか1つに記載の積層体。
[9]前記硬化樹脂層の屈折率が1.46〜1.52である[5]〜[8]のいずれか1つに記載の積層体。
[10]150℃で30分間加熱したときの熱収縮率が、MD方向、TD方向共に2.0%以下である[1]〜[9]のいずれか1つに記載の積層体。
[11]さらに、前記高分子圧電フィルムからみて前記中間層とは反対側に、粘着層と、剥離可能な離型フィルムと、をこの順に有する[1]〜[10]のいずれか1つに記載の積層体。
[12]前記粘着層の酸価が0.01mgKOH/g〜10mgKOH/gである[11]に記載の積層体。
[13]前記高分子圧電フィルムと前記粘着層との間に硬化樹脂層を有する[11]または[12]に記載の積層体。
[14]さらに、前記高分子圧電フィルムからみて前記中間層とは反対側に、剥離可能な保護フィルムを有する[1]〜[10]のいずれか1つに記載の積層体。
[15]前記高分子圧電フィルムと前記剥離可能な保護フィルムとの間に硬化樹脂層を有する[14]に記載の積層体。
[16]前記高分子圧電フィルムは、25℃において応力−電荷法で測定した圧電定数d14が1pC/N以上である[1]〜[15]のいずれか1つに記載の積層体。
[17]前記ヘリカルキラル高分子(A)が、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有するポリ乳酸系高分子である[1]〜[16]のいずれか1つに記載の積層体。
[18]前記ヘリカルキラル高分子(A)は、光学純度が95.00%ee以上である[1]〜[17]のいずれか1つに記載の積層体。
[19]前記高分子圧電フィルムは、前記ヘリカルキラル高分子(A)の含有量が80質量%以上である[1]〜[18]のいずれか1つに記載の積層体。
[20]前記高分子圧電フィルムが、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200〜60000の安定化剤(B)を、前記ヘリカルキラル高分子(A)100質量部に対して0.01質量部〜10質量部含む[1]〜[19]のいずれか1つに記載の積層体。
本発明によれば、透明導電層を設けることによる透過率の低下が抑制され、透明導電層を設けることによる呈色が抑制された積層体を提供することができる。
本発明の積層体の第1態様を示す断面図である。 本発明の積層体の第2態様を示す断面図である。 本発明の積層体の第3態様を示す断面図である。 本発明の積層体の第4態様を示す断面図である。
以下、本発明の一例である本実施形態について説明する。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「フィルム」は、一般的に「フィルム」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「シート」と呼ばれているものをも包含する概念である。
≪積層体≫
本発明の積層体は、高分子圧電フィルムと、中間層と、透明導電層と、をこの順に有する。高分子圧電フィルムは、重量平均分子量が5万〜100万である光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、DSC法で得られる結晶化度が20%〜80%であり、かつ、マイクロ波透過型分子配向計で測定される基準厚さを50μmとしたときの規格化分子配向MORcと前記結晶化度との積が40〜700であり、可視光線に対する内部ヘイズが5%以下である。
本発明の積層体は、上記構成を有することにより、透明導電層を設けることによる透過率の低下が抑制され、透明導電層を設けることによる呈色が抑制される。
従来、タッチパネル用の電極パターンとして透明導電層を用いた場合、タッチパネルの下に配置される表示装置の発色を正確に表現することが難しいといった問題があった。
これに対し、本発明の積層体は、透明導電層を設けることによる透過率の低下が抑制され、透明導電層を設けることによる呈色が抑制されるので、表示装置の発色を正確に表現することが容易になる。
また、従来、電極パターンの存在する部分と存在しない部分での透過率や色調に差が生じ、電極パターンが視認されるといった骨見えと呼ばれる現象が発生するといった問題もあった。
これに対し、本発明の積層体は、電極の存在する部分と存在しない部分での透過率や色調に差が生じにくくなるので、骨見えが低減される。
また、本発明の積層体をタッチパネル等の押圧検出装置に用いると、透過率が高いためディスプレイの表示画像のコントラストの低下が抑制される。
高分子圧電フィルムに形成される中間層と透明導電層は、高分子圧電フィルムの片面だけに形成されていても、両面に形成されていても良い。
<高分子圧電フィルム>
高分子圧電フィルム(圧電体)としては、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含む所定の高分子圧電フィルムが適用される。
〔光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)〕
ヘリカルキラル高分子(A)は、重量平均分子量が5万〜100万であり光学活性を有するヘリカルキラル高分子である。
ここで、「光学活性を有するヘリカルキラル高分子」とは、分子構造が螺旋構造であり分子光学活性を有する高分子を指す。
ヘリカルキラル高分子(A)は、上記の「光学活性を有するヘリカルキラル高分子」のうち、重量平均分子量が5万〜100万である高分子である。
上記ヘリカルキラル高分子(A)としては、例えば、ポリペプチド、セルロース誘導体、ポリ乳酸系高分子、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β―ヒドロキシ酪酸)等を挙げることができる。
上記ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(グルタル酸γ−ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ−メチル)等が挙げられる。
上記セルロース誘導体としては、例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。
ヘリカルキラル高分子(A)は、高分子圧電フィルムの圧電性を向上する観点から、光学純度が95.00%ee以上であることが好ましく、96.00%ee以上であることがより好ましく、99.00%ee以上であることがさらに好ましく、99.99%ee以上であることがさらにより好ましい。望ましくは100.00%eeである。ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度を上記範囲とすることで、圧電性を発現する高分子結晶のパッキング性が高くなり、その結果、圧電性が高くなるものと考えられる。
ここで、ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度は、下記式にて算出した値である。
光学純度(%ee)=100×|L体量−D体量|/(L体量+D体量)
すなわち、ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度は、
『「ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕との量差(絶対値)」を「ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕との合計量」で割った(除した)数値』に、『100』をかけた(乗じた)値である。
なお、ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により得られる値を用いる。具体的な測定の詳細については後述する。
上記ヘリカルキラル高分子(A)としては、光学純度を上げ、圧電性を向上させる観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有する高分子が好ましい。
上記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖とする高分子としては、ポリ乳酸系高分子が挙げられる。
ここで、ポリ乳酸系高分子とは、「ポリ乳酸(L−乳酸及びD−乳酸から選ばれるモノマー由来の繰り返し単位のみからなる高分子)」、「L−乳酸又はD−乳酸と、該L−乳酸又はD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」、又は、両者の混合物をいう。
ポリ乳酸系高分子の中でも、ポリ乳酸が好ましく、L−乳酸のホモポリマー(PLLA)又はD−乳酸のホモポリマー(PDLA)が最も好ましい。
ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合によって重合し、長く繋がった高分子である。
ポリ乳酸は、ラクチドを経由するラクチド法;溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法;などによって製造できることが知られている。
ポリ乳酸としては、L−乳酸のホモポリマー、D−乳酸のホモポリマー、L−乳酸及びD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むブロックコポリマー、及び、L−乳酸及びD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むグラフトコポリマーが挙げられる。
上記「L−乳酸又はD−乳酸と共重合可能な化合物」としては、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシメチルカプロン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸;グリコリド、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状エステル;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸及びこれらの無水物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール等の多価アルコール;セルロース等の多糖類;α−アミノ酸等のアミノカルボン酸;等を挙げることができる。
上記「L−乳酸又はD−乳酸と、該L−乳酸又はD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」としては、らせん結晶を生成可能なポリ乳酸シーケンスを有する、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーが挙げられる。
また、ヘリカルキラル高分子(A)中におけるコポリマー成分に由来する構造の濃度は20mol%以下であることが好ましい。
例えば、ヘリカルキラル高分子(A)が、ポリ乳酸系高分子である場合、ポリ乳酸系高分子中における、乳酸に由来する構造と、乳酸と共重合可能な化合物(コポリマー成分)に由来する構造と、のモル数の合計に対して、コポリマー成分に由来する構造の濃度が20mol%以下であることが好ましい。
ポリ乳酸系高分子は、例えば、特開昭59−096123号公報、及び特開平7−033861号公報に記載されている乳酸を直接脱水縮合して得る方法;米国特許2,668,182号及び4,057,357号等に記載されている乳酸の環状二量体であるラクチドを用いて開環重合させる方法;などにより製造することができる。
さらに、上記各製造方法により得られたポリ乳酸系高分子は、光学純度を95.00%ee以上とするために、例えば、ポリ乳酸をラクチド法で製造する場合、晶析操作により光学純度を95.00%ee以上の光学純度に向上させたラクチドを、重合することが好ましい。
−重量平均分子量−
ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)は、前述のとおり5万〜100万である。
ヘリカルキラル高分子(A)のMwが5万以上であることにより、高分子圧電フィルムの機械的強度が向上する。上記Mwは、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
一方、ヘリカルキラル高分子(A)のMwが100万以下であることにより、成形(例えば押出成形)によって高分子圧電フィルムを得る際の成形性が向上する。上記Mwは、80万以下であることが好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。
また、ヘリカルキラル高分子(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、高分子圧電フィルムの強度の観点から、1.1〜5であることが好ましく、1.2〜4であることがより好ましい。さらに1.4〜3であることが好ましい。
なお、ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用い、下記GPC測定方法により、測定された値を指す。ここで、Mnは、ヘリカルキラル高分子(A)の数平均分子量である。
−GPC測定装置−
Waters社製GPC−100
−カラム−
昭和電工社製、Shodex LF−804
−サンプルの調製−
ヘリカルキラル高分子(A)を40℃で溶媒(例えば、クロロホルム)へ溶解させ、濃度1mg/mLのサンプル溶液を準備する。
−測定条件−
サンプル溶液0.1mlを溶媒〔クロロホルム〕、温度40℃、1ml/分の流速でカラムに導入する。
カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定する。ポリスチレン標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
ヘリカルキラル高分子(A)の例であるポリ乳酸系高分子としては、市販のポリ乳酸を用いることができる。
市販品としては、例えば、PURAC社製のPURASORB(PD、PL)、三井化学社製のLACEA(H−100、H−400)、NatureWorks LLC社製のIngeoTM biopolymer、等が挙げられる。
ヘリカルキラル高分子(A)としてポリ乳酸系高分子を用いるときに、ポリ乳酸系高分子の重量平均分子量(Mw)を5万以上とするためには、ラクチド法、又は直接重合法によりポリ乳酸系高分子を製造することが好ましい。
高分子圧電フィルムは、上述したヘリカルキラル高分子(A)を、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
高分子圧電フィルム中におけるヘリカルキラル高分子(A)の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、圧電定数をより高める観点から、高分子圧電フィルムの全量に対し、80質量%以上が好ましい。
〔安定化剤〕
高分子圧電フィルムは、更に、一分子中に、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200〜60000の安定化剤(B)を含有することが好ましい。これにより、耐湿熱性をより向上させることができる。
安定化剤(B)としては、国際公開第2013/054918号パンフレットの段落0039〜0055に記載された「安定化剤(B)」を用いることができる。
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にカルボジイミド基を含む化合物(カルボジイミド化合物)としては、モノカルボジイミド化合物、ポリカルボジイミド化合物、環状カルボジイミド化合物が挙げられる。
モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、等が好適である。
また、ポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができる。従来のポリカルボジイミドの製造方法(例えば、米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.0rg.Chem.28,2069−2075(1963)、Chemical Review 1981,Vol.81 No.4、p619−621)により、製造されたものを用いることができる。具体的には特許4084953号公報に記載のカルボジイミド化合物を用いることもできる。
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド、等が挙げられる。
環状カルボジイミド化合物は、特開2011−256337号公報に記載の方法などに基づいて合成することができる。
カルボジイミド化合物としては、市販品を用いてもよく、例えば、東京化成製、B2756(商品名)、日清紡ケミカル社製、カルボジライトLA−1、ラインケミー社製、Stabaxol P、Stabaxol P400、Stabaxol I(いずれも商品名)等が挙げられる。
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にイソシアネート基を含む化合物(イソシアネート化合物)としては、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、等が挙げられる。
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にエポキシ基を含む化合物(エポキシ化合物)としては、フェニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
安定化剤(B)の重量平均分子量は、上述のとおり200〜60000であるが、200〜30000がより好ましく、300〜18000がさらに好ましい。
分子量が上記範囲内ならば、安定化剤(B)がより移動しやすくなり、耐湿熱性改良効果がより効果的に奏される。
安定化剤(B)の重量平均分子量は、200〜900であることが特に好ましい。なお、重量平均分子量200〜900は、数平均分子量200〜900とほぼ一致する。また、重量平均分子量200〜900の場合、分子量分布が1.0である場合があり、この場合には、「重量平均分子量200〜900」を、単に「分子量200〜900」と言い換えることもできる。
高分子圧電フィルムが安定化剤(B)を含有する場合、上記高分子圧電フィルムは、安定化剤を1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
高分子圧電フィルムが安定化剤(B)を含む場合、安定化剤(B)の含有量は、ヘリカルキラル高分子(A)100質量部に対し、0.01質量部〜10質量部であることが好ましく、0.01質量部〜5質量部であることがより好ましく、0.1質量部〜3質量部であることがさらに好ましく、0.5質量部〜2質量部であることが特に好ましい。
上記含有量が0.01質量部以上であると、耐湿熱性がより向上する。
また、上記含有量が10質量部以下であると、透明性の低下がより抑制される。
安定化剤(B)の好ましい態様としては、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有し、且つ、数平均分子量が200〜900の安定化剤(B1)と、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を1分子内に2以上有し、且つ、重量平均分子量が1000〜60000の安定化剤(B2)とを併用するという態様が挙げられる。なお、数平均分子量が200〜900の安定化剤(B1)の重量平均分子量は、大凡200〜900であり、安定化剤(B1)の数平均分子量と重量平均分子量とはほぼ同じ値となる。
安定化剤として安定化剤(B1)と安定化剤(B2)とを併用する場合、安定化剤(B1)を多く含むことが透明性向上の観点から好ましい。
具体的には、安定化剤(B1)100質量部に対して、安定化剤(B2)が10質量部〜150質量部の範囲であることが、透明性と耐湿熱性の両立という観点から好ましく、50質量部〜100質量部の範囲であることがより好ましい。
以下、安定化剤(B)の具体例(安定化剤B−1〜B−3)を示す。
以下、上記安定化剤B−1〜B−3について、化合物名、市販品等を示す。
・安定化剤B−1 … 化合物名は、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドである。重量平均分子量(この例では、単なる「分子量」に等しい)は、363である。市販品としては、ラインケミー社製「Stabaxol I」、東京化成社製「B2756」が挙げられる。
・安定化剤B−2 … 化合物名は、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約2000のものとして、日清紡ケミカル社製「カルボジライトLA−1」が挙げられる。
・安定化剤B−3 … 化合物名は、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約3000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P」が挙げられる。また、重量平均分子量20000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P400」が挙げられる。
<その他の成分>
高分子圧電フィルムは、必要に応じ、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の公知の樹脂;シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の公知の無機フィラー;フタロシアニン等の公知の結晶核剤;安定化剤(B)以外の安定化剤;等が挙げられる。
無機フィラー及び結晶核剤としては、国際公開第2013/054918号パンフレットの段落0057〜0058に記載された成分を挙げることもできる。
<高分子圧電フィルムの物性>
高分子圧電フィルムは、圧電定数が大きいこと(好ましくは、25℃において応力−電荷法で測定した圧電定数d14が1pC/N以上であること)が好ましい。更に、高分子圧電フィルムは、透明性、縦裂強度(即ち、特定方向についての引裂強さ。以下同じ。)に優れることが好ましい。
〔圧電定数(応力−電荷法)〕
高分子圧電フィルムの圧電定数は、次のようにして測定される値をいう。
まず、高分子圧電フィルムを、高分子圧電フィルムの延伸方向(例えばMD方向)に対して45°なす方向に150mm、45°なす方向に直交する方向に50mmにカットして、矩形の試験片を作製する。次に、昭和真空SIP−600の試験台に得られた試験片をセットし、Alの蒸着厚が約50nmとなるように、試験片の一方の面にAlを蒸着する。次いで試験片の他方の面にも同様にしてAlを蒸着する。以上のようにして、試験片の両面にAlの導電層を形成する。
両面にAlの導電層が形成された150mm×50mmの試験片(高分子圧電フィルム)を、高分子圧電フィルムの延伸方向(例えばMD方向)に対して45°なす方向に120mm、45°なす方向に直交する方向に10mmにカットして、120mm×10mmの矩形のフィルムを切り出す。これを、圧電定数測定用サンプルとする。
得られたサンプルを、チャック間距離70mmとした引張試験機(AND社製、TENSILON RTG−1250)に、弛まないようにセットする。クロスヘッド速度5mm/minで、印加力が4Nと9Nとの間を往復するように周期的に力を加える。このとき印加力に応じてサンプルに発生する電荷量を測定するため、静電容量Qm(F)のコンデンサーをサンプルに並列に接続し、このコンデンサーCm(95nF)の端子間電圧Vmを、バッファアンプを介して測定する。発生電荷量Q(C)は、コンデンサー容量Cmと端子間電圧Vmとの積として計算する。圧電定数d14は下式により計算される。
14=(2×t)/L×Cm・ΔVm/ΔF
t:サンプル厚(m)
L:チャック間距離(m)
Cm:並列接続コンデンサー容量(F)
ΔVm/ΔF:力の変化量に対する、コンデンサー端子間の電圧変化量比
圧電定数は高ければ高いほど、高分子圧電フィルムに印加される電圧に対する前記フィルムの変位が大きくなり、また、逆に高分子圧電フィルムに印加される力に対し発生する電圧が大きくなり、高分子圧電フィルムとしては有用である。
具体的には、25℃における応力−電荷法で測定した圧電定数d14は1pC/N以上が好ましく、3pC/N以上がより好ましく、4pC/N以上がさらに好ましい。また、圧電定数の上限は特に限定されないが、後述する透明性などのバランスの観点からは、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(光学活性高分子)を用いた高分子圧電フィルムでは、50pC/N以下が好ましく、30pC/N以下がより好ましい。
また、同様に、透明性とのバランスの観点からは、共振法で測定した圧電定数d14が15pC/N以下であることが好ましい。
なお、本明細書中において、「MD方向」とはフィルムの流れる方向(Machine Direction)、すなわち、延伸方向であり、「TD方向」とは、前記MD方向と直交し、フィルムの主面と平行な方向(Transverse Direction)である。
〔透明性(内部ヘイズ)〕
高分子圧電フィルムの透明性は、内部ヘイズを測定することにより評価することができる。
高分子圧電フィルムは、可視光線に対する内部ヘイズが5%以下である。更に、高分子圧電フィルムの前記内部ヘイズは、透明性及び縦裂強度をより向上させる観点からは、2.0%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましい。高分子圧電フィルムの前記内部ヘイズの下限値は特に限定はないが、下限値としては、例えば0.01%が挙げられる。
ここで高分子圧電フィルムの内部ヘイズは、高分子圧電フィルムの外表面の形状によるヘイズを除外したヘイズを指す。
高分子圧電フィルムの内部ヘイズは、厚さ0.03mm〜0.05mmの高分子圧電フィルムに対して、JIS−K7105に準拠して、ヘイズ測定機〔(有)東京電色社製、TC−HIII DPK〕を用いて25℃で測定したときの値であり、測定方法の詳細は実施例において詳述する。
〔規格化分子配向MORc〕
規格化分子配向MORcは、ヘリカルキラル高分子(A)の配向の度合いを示す指標である「分子配向度MOR」に基づいて定められる値である。
ここで、分子配向度MOR(Molecular Orientation Ratio)は、以下のようなマイクロ波測定法により測定される。すなわち、高分子圧電フィルム(例えば、フィルム状の高分子圧電材料)を、周知のマイクロ波分子配向度測定装置(マイクロ波透過型分子配向計ともいう)のマイクロ波共振導波管中に、マイクロ波の進行方向に高分子圧電フィルムの面(フィルム面)が垂直になるように配置する。そして、振動方向が一方向に偏ったマイクロ波を試料に連続的に照射した状態で、高分子圧電フィルムをマイクロ波の進行方向と垂直な面内で0〜360°回転させて、試料を透過したマイクロ波強度を測定することにより分子配向度MORを求める。
規格化分子配向MORcは、基準厚さtcを50μmとしたときの分子配向度MORであって、下記式により求めることができる。
MORc=(tc/t)×(MOR−1)+1
(tc:補正したい基準厚さ、t:高分子圧電フィルムの厚さ)
規格化分子配向MORcは、公知の分子配向計、例えば王子計測機器株式会社製マイクロ波方式分子配向計MOA−2012AやMOA−6000等により、4GHzもしくは12GHz近傍の共振周波数で測定することができる。
高分子圧電フィルムは、規格化分子配向MORcが1.0〜15.0であることが好ましく、2.0〜10.0であることがより好ましく、4.0〜10.0であることが更に好ましい。
規格化分子配向MORcが1.0以上であれば、延伸方向に配列する光学活性高分子の分子鎖(例えばポリ乳酸分子鎖)が多く、その結果、配向結晶の生成する率が高くなり、より高い圧電性を発現することが可能となる。
規格化分子配向MORcが15.0以下であれば、縦裂強度が更に向上する。
また、高分子圧電フィルムと中間層との密着性をより向上させる観点からは、規格化分子配向MORcは、7.0以下であることが好ましい。
規格化分子配向MORcは、例えば、高分子圧電フィルムが延伸フィルムである場合には、延伸前の加熱処理条件(加熱温度及び加熱時間)や、延伸条件(延伸温度及び延伸速度)等によって制御されうる。
なお、規格化分子配向MORcは、位相差量(レターデーション)をフィルムの厚さで除した複屈折率Δnに変換することもできる。具体的には、レターデーションは大塚電子株式会社製RETS100を用いて測定することができる。またMORcとΔnとは大凡、直線的な比例関係にあり、かつΔnが0の場合、MORcは1になる。
例えば、ヘリカルキラル高分子(A)がポリ乳酸系高分子であり、かつ、高分子圧電フィルムの複屈折率Δnを測定波長550nmで測定した場合、規格化分子配向MORcの好ましい範囲の下限である2.0は、複屈折率Δn 0.005に変換できる。また、後述する、高分子圧電フィルムの規格化分子配向MORcと結晶化度の積の好ましい範囲の下限である40は、高分子圧電フィルムの複屈折率Δnと結晶化度の積が0.1に変換することができる。
〔結晶化度〕
高分子圧電フィルムの結晶化度は、DSC法によって求められるものである。
本発明にかかる高分子圧電フィルムの結晶化度は、20%〜80%である。結晶化度が20%以上であることにより、高分子圧電フィルムの圧電性が高く維持される。結晶化度が80%以下であることにより、高分子圧電フィルムの透明性が高く維持され、また、結晶化度が80%以下であることにより、延伸時に白化や破断がおきにくいので、高分子圧電フィルムを製造しやすい。
従って、高分子圧電フィルムの結晶化度は20%〜80%であるが、上記結晶化度は、好ましくは25%〜70%であり、より好ましくは30%〜50%である。
〔規格化分子配向MORcと結晶化度との積〕
高分子圧電フィルムの規格化分子配向MORcと結晶化度との積は40〜700であり、好ましくは75〜680、より好ましくは90〜660、さらに好ましくは125〜650、特に好ましくは150〜350である。上記の積が40〜700の範囲にあれば、高分子圧電フィルムの圧電性と透明性とのバランスが良好であり、かつ寸法安定性も高く、後述する圧電素子として好適に用いることができる。
本発明にかかる高分子圧電フィルムでは、例えば、高分子圧電フィルムを製造する際の結晶化及び延伸の条件を調整することにより、上記の積を上記範囲に調整することができる。
〔形状及び膜厚〕
高分子圧電フィルムの形状には特に制限はないが、フィルム形状が好ましい。
また、高分子圧電フィルムの膜厚(例えば、フィルム形状である場合の高分子圧電フィルムの膜厚)には特に制限はないが、10μm〜400μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましく、20μm〜100μmが更に好ましく、20μm〜80μmが特に好ましい。但し、高分子圧電フィルムが複数層からなる多層膜の場合には、上記膜厚は多層膜全体における厚さを表す。
<中間層>
〔材料〕
中間層の材料としては、積層体の光学特性(例えば、透過率、色味、骨見え)を調整できるものであれば、特に限定されるものではなく、屈折率が特定の範囲を逸脱せず、本実施形態の目的を損なわない限りは、従来公知の材料を使用することができる。例えば、金属や金属酸化物等の無機物;樹脂等の有機物;樹脂と金属酸化物微粒子と、を含む有機・無機複合組成物;などが挙げられる。
無機物としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫、酸化アンチモン錫などの金属酸化物が材料として挙げられる。これらのうち、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化インジウム錫、酸化アンチモン錫及び酸化セリウムが好ましく、酸化ジルコニウムが屈折率、電気絶縁性、耐光性などの観点から最も好ましい。これらの無機物は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属としては、例えば、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、In、Sn、W、Ag、Au、Pd、Pt、Sb、Ta及びZrから選ばれる少なくとも一つ、又は、これらの合金が挙げられる。
金属酸化物、金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化タンタル、又はこれらの複合酸化物が挙げられる。これらの金属酸化物、金属酸化物微粒子は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属酸化物微粒子の平均一次粒径としては、透明性の観点から1nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上300nm以下がより好ましく、10nm以上200nm以下が更に好ましい。500nm以下であることで可視光の散乱が抑制され、1nm以上であることで微粒子の二次凝集が抑制され、透明性の維持の観点から望ましい。
樹脂(有機物)としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系化合物、メタクリル系化合物、ビニル系化合物、アリル系化合物、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物、エポキシド系化合物、グリシジル系化合物、オキセタン系化合物、メラミン系化合物、セルロース系化合物、エステル系化合物、シラン系化合物、シリコーン系化合物、シロキサン系化合物、シリカ−アクリルハイブリット化合物、及びシリカ−エポキシハイブリット化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
樹脂としては温度や活性エネルギー線で硬化させることで得られる硬化物を利用することもできる。
中間層の形成方法は特に限定されず、例えば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着(CVD)法、めっき法などのドライコーティング法、ウェットコーティング法などを採用することができる。これらの中では、層の厚みの制御が容易であるという観点から蒸着法およびスパッタリング法が好ましい。
〔屈折率〕
中間層の屈折率n1は、透過率の低下及び呈色を抑制する観点から、1.50〜1.95が好ましく、1.55〜1.65がより好ましく、1.57〜1.61がさらに好ましい。
また、中間層の屈折率n1は、透過率の低下及び呈色を抑制する観点から、透明導電層の屈折率n2よりも小さい、すなわち、n1<n2を満たすことが好ましい。
中間層の屈折率n1を上記範囲とするための手段としては、中間層中に含まれる材料(金属、金属酸化物、樹脂、金属酸化物微粒子、添加剤等)の種類や比率を選択する方法;中間層の製造条件(温度、時間、圧力等)を選択する方法;等が挙げられる。
〔屈折率の測定方法〕
中間層の屈折率n1の測定方法は実施例において詳述する。
〔膜厚〕
中間層の膜厚d1は、透過率の低下及び呈色を抑制する観点から、5nm〜500nmが好ましく、60nm〜150nmがより好ましい。
中間層の膜厚d1は、以下のように測定する。中間層を含む積層体を1mm×10mmの大きさに切り出し、電子顕微鏡用エポキシ樹脂に包埋する。これをウルトラミクロトームの試料ホルダに固定し、包埋した試料片の短辺に平行な断面薄切片を作製する。次いで、この切片の薄膜の著しい損傷がない部位において、透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM−2010)を用い、加速電圧200kV、明視野で観察倍率1万倍にて写真撮影を行って得られた写真から膜厚を求める。
尚、中間層は、複数層設けてもよい。その場合、中間層の膜厚は、中間層の総厚とする。また、中間層を複数層設ける場合、中間層の屈折率n1は、それぞれが異なる値であってもよい。
〔形成方法〕
中間層を形成する方法としては、従来一般的に用いられていた公知の方法が適宜使用できるが、例えばウェットコート法が挙げられる。例えば中間層を形成するための材料(金属酸化物微粒子、硬化性樹脂、添加剤、溶剤等)が分散または溶解されたコート液(中間層用塗工液)を塗布することで、中間層が形成される。
ウェットコート法としては、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビアコート法が挙げられる。
さらに必要に応じて、上記の通り塗布された前記材料(硬化性樹脂等)に対して乾燥により溶剤を揮発させたり、熱や活性エネルギー線(紫外線、電子線、放射線等)照射により硬化性樹脂を硬化させてもよい。
尚、中間層に含まれる材料としては、上記硬化性樹脂の中でも、活性エネルギー線(紫外線、電子線、放射線等)照射により硬化された活性エネルギー線硬化樹脂が好ましい。活性エネルギー線硬化樹脂を含むことで、製造効率が向上し、また中間層形成によって生じる圧電体の性能低下をより抑制することができる。
尚、高分子圧電フィルム表面と中間層との密着性や、高分子圧電フィルム表面への中間層塗工性を更に向上させる観点から、コロナ処理やイトロ処理、オゾン処理、プラズマ処理などによって高分子圧電フィルム表面を処理することもできる。
また、高分子圧電フィルムの表面に異なる材料をコーティングすることで密着性や塗工性を改善することもできる。このような材料として、金属や金属酸化物等の無機物;樹脂等の有機物;樹脂と金属酸化物微粒子と、を含む有機・無機複合組成物;などが挙げられる。樹脂としては温度や活性エネルギー線で硬化させることで得られる硬化物を利用することもできる。
<透明導電層>
〔材料〕
透明導電層の材料としては、金属膜や導電性金属酸化物膜、導電性高分子膜、金属または導電性金属酸化物を含む樹脂等の導電性組成物等、導通を示すものであれば、特に限定されるものではないが、透過率の低下及び呈色を抑制する観点から、例えば、酸化インジウム−スズ、インジウム酸化物、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−亜鉛等を用いることが好ましい。尚、これらの酸化物は、金属等のドーパントがドープされていてもよく、結晶状態でも非晶状態でもよい。また銀ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、グラフェンや、それらを含む樹脂組成物を用いることもできる。
このような透明導電層の表面抵抗としては、デバイスの消費電力の観点から2000Ω/sq以下が好ましく、1000Ω/sqがより好ましく、500Ω/sq以下がさらに好ましく、200Ω/sq以下が特に好ましい。
〔屈折率〕
透明導電層の屈折率n2は、透過率の低下及び呈色を抑制する観点から、1.85〜2.35が好ましく、1.85〜2.10がより好ましい。
また、透明導電層の屈折率n2は、上述したように、中間層の屈折率n1よりも大きい、すなわち、n1<n2を満たすことが好ましい。
透明導電層の屈折率n2を上記範囲とするための手段としては、透明導電層の材料を選択する方法;形成条件(温度、時間、圧力等)を選択する方法;アニール処理の条件(温度、時間、圧力等)を選択する方法;等が挙げられる。
〔屈折率の測定方法〕
透明導電層の屈折率n2は実施例において詳述する。
〔膜厚〕
透明導電層の膜厚d2は、透過率の低下及び呈色を抑制する観点から、5nm〜200nmが好ましく、10nm〜60nmがより好ましい。
尚、透明導電層の膜厚d2は、前記中間層の膜厚d1の測定方法に準拠した方法で測定する。
〔形成方法〕
透明導電層を形成する方法としては、従来一般的に用いられていた公知の方法が適宜使用できるが、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法、電子線蒸着法、ゾル−ゲル法、ウェットコーティング法が挙げられる。
<第1の硬化樹脂層>
本発明の積層体は、中間層と高分子圧電フィルムの密着性を改善する観点や、高分子圧電フィルムの傷付き防止の観点、高分子圧電フィルムのブロッキングを防止する観点、熱収縮率を低下させる観点から、高分子圧電フィルムと中間層との間および/もしくは中間層を形成していない高分子圧電フィルムの主面に硬化樹脂層(以下、「第1の硬化樹脂層」と称することもある)を有することが好ましい。
〔材料〕
硬化樹脂層の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル系化合物、メタクリル系化合物、ビニル系化合物、アリル系化合物、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物、エポキシド系化合物、グリシジル系化合物、オキセタン系化合物、メラミン系化合物、セルロース系化合物、エステル系化合物、シラン系化合物、シリコーン系化合物、シロキサン系化合物、シリカ−アクリルハイブリット化合物、及びシリカ−エポキシハイブリット化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料(硬化性樹脂)を含むことが好ましい。
これらの中でも、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、シラン系化合物がより好ましい。
また、硬化樹脂層が必要な機能を発現するために、各種の添加剤を含んでも良い。添加剤としては無機フィラーや、低分子や高分子といった有機物でも良い。無機フィラーの平均一次粒径としては、透明性の観点から1nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上300nm以下がより好ましく、10nm以上200nm以下が更に好ましい。500nm以下であることで可視光の散乱が抑制され、1nm以上であることで無機フィラーの二次凝集が抑制され、透明性の維持の観点から望ましい。
〔屈折率〕
硬化樹脂層の屈折率は、透過率の低下を抑制する観点から、1.45〜1.55が好ましく、1.46〜1.52がより好ましい。
硬化樹脂層の屈折率を上記範囲とするための手段としては、硬化樹脂層中に含まれる材料(硬化性樹脂、添加剤等)の比率を選択する方法;硬化性樹脂の硬化条件(温度、時間等)を選択する方法;等が挙げられる
〔屈折率の測定方法〕
硬化樹脂層の屈折率は実施例において詳述する。
〔膜厚〕
硬化樹脂層の膜厚は、特に限定されるものではないが、0.01μm〜10μmの範囲が好ましい。
厚さが0.01μm以上であることにより、例えば硬化樹脂層が後述するハードコート層などの機能を発現する。
一方、厚さが10μm以下であることにより、積層体において電極(透明導電層)を設けた際に電極により大きな電荷が発生する。
上記厚さの上限値は、より好ましくは6μm以下であり、更に好ましくは3μm以下である。また、下限値はより好ましくは0.2μm以上であり、更に好ましくは0.3μm以上である。
但し、硬化樹脂層(第1の硬化樹脂層)が複数の機能層からなる多層膜の場合には、上記厚さは多層膜全体における厚さを表す。また、硬化樹脂層は高分子圧電フィルムの両面にあってもよい。また、硬化樹脂層の屈折率は、それぞれが異なる値であってもよい。
尚、硬化樹脂層の膜厚は、ニコン社製デジタル測長機DIGIMICRO STAND MS−11Cを用いて以下の式により決定される。
式 d=dt−dp
dt:高分子圧電フィルムに硬化樹脂層を形成した積層体の10箇所の平均厚み
dp:硬化樹脂層形成前または硬化樹脂層を除去した後の高分子圧電フィルム10箇所の平均厚み
〔硬化樹脂層の種類(用途)〕
硬化樹脂層としては、様々な機能層が挙げられる。機能層として、例えば、易接着層、ハードコート層、アンチリフレクション層、アンチグレア層、易滑層、アンチブロック層、保護層、接着層、粘着層、帯電防止層、放熱層、紫外線吸収層、アンチニュートンリング層、光散乱層、偏光層、ガスバリア層、色相調整層などが挙げられる。また、機能層としては、これらの機能のうちの2つ以上を兼ね備えた層であってもよい。これらの中でも、透過率の低下及び呈色を抑制する観点から、易接着層、ハードコート層、帯電防止層、及びアンチブロック層の少なくとも1つが好ましい。
高分子圧電フィルムの両方の主面に第1の硬化樹脂層を備える場合は、2つの第1の硬化樹脂層は同じ機能層であっても、異なる機能層であっても良い。
また、硬化樹脂層を形成することにより、高分子圧電フィルム表面のダイラインや打痕などの欠陥が埋められ、外観が向上するという効果もある。この場合は高分子圧電フィルムと硬化樹脂層との屈折率差が小さいほど高分子圧電フィルムと硬化樹脂層と界面の反射が低減し、より外観が向上する。
〔形成方法〕
硬化樹脂層を形成する方法としては、従来一般的に用いられていた公知の方法が適宜使用できるが、例えばウェットコート法が挙げられる。例えば、硬化樹脂層を形成するための材料(硬化性樹脂、添加剤、溶剤等)が分散または溶解されたコート液を塗布することで、硬化樹脂層が形成される。
さらに必要に応じて、上記の通り塗布された前記材料(硬化性樹脂等)に対して乾燥により溶剤を揮発させたり、熱や活性エネルギー線(紫外線、電子線、放射線等)照射により硬化性樹脂を硬化させる。
尚、硬化樹脂層に含まれる材料としては、上記硬化性樹脂の中でも、活性エネルギー線(紫外線、電子線、放射線等)照射により硬化された活性エネルギー線硬化樹脂が好ましい。活性エネルギー線硬化樹脂を含むことで、製造効率が向上し、また硬化樹脂層の形成によって生じる高分子圧電フィルムの性能低下をより抑制することができる。
また、上記硬化樹脂層は、架橋密度を高める観点から、三次元架橋構造を有する三次元架橋樹脂を含むことが好ましい。
三次元架橋構造を有する硬化物を作製する手段としては、硬化性樹脂として重合性官能基を3つ以上有するモノマー(3官能以上のモノマー)を用いる方法、重合性官能基を3つ以上有する架橋剤(3官能以上の架橋剤)を用いる方法等が挙げられ、また架橋剤として有機過酸化物などの架橋剤を用いる方法も挙げられる。尚、これらの手段を複数組み合わせて用いてもよい。
3官能以上のモノマーとしては、例えば、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル化合物や、1分子中に3つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物等が挙げられる。
本明細書中において、「(メタ)アクリル基」とは、アクリル基及びメタクリル基の少なくとも一方を表す。
また、「1分子中に3つ以上の(メタ)アクリル基を有する」とは、1分子中にアクリル基及びメタクリル基の少なくとも一方を有し、かつ、1分子中におけるアクリル基及びメタクリル基の総数が3つ以上であることを指す。
ここで、硬化樹脂層に含まれる材料が三次元架橋構造を有する硬化物であるか否かを確認する方法としては、ゲル分率を測定する方法が挙げられる。
具体的には、硬化樹脂層を溶剤に24時間浸漬した後の不溶分からゲル分率を導くことができる。特に溶剤が水などの親水性の溶媒でも、トルエンのような親油性の溶媒でも、ゲル分率が一定以上のものが三次元架橋構造を有すると推定することができる。
ウェットコート法による硬化樹脂層の用途としては、前記に列挙した何れの層にも適用が可能である。ウェットコート法の場合、コート液を高分子圧電フィルムの延伸前原反に塗工した後に高分子圧電フィルムを延伸しても、高分子圧電フィルム原反を延伸後にコート液を塗布してもよい。
ウェットコート法による硬化樹脂層の(1層の)厚さとしては、数十nm〜10μmの範囲が好ましい。
また硬化樹脂層にはその目的に応じて屈折率調整剤や紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤などの各種有機物、無機物を添加することもできる。
尚、高分子圧電フィルム表面と硬化樹脂層との密着性や、高分子圧電フィルム表面への塗工性を向上させる観点から、コロナ処理やイトロ処理、オゾン処理、プラズマ処理などによって高分子圧電フィルム表面を処理することもできる。
〔比誘電率〕
また、硬化樹脂層の比誘電率は1.5以上であることが好ましく、更には2.0以上20000以下がより好ましく、2.5以上10000以下が更に好ましい。
比誘電率が上記範囲であることにより、積層体における硬化樹脂層上に更に中間層を介して電極(透明導電層)を設けた際に電極により大きな電荷が発生する。
尚、硬化樹脂層の比誘電率は、以下の方法により測定される。
高分子圧電フィルムの片面に硬化樹脂層を形成した後、昭和真空SIP−600を用いて高分子圧電フィルムと硬化樹脂層との積層体の両面に約50nmのAlを蒸着する。この積層体より50mm×50mmのフィルムを切り出す。この試験片をHEWLETT PACKARD社製LCR METER 4284Aに接続して静電容量Cを測定し、以下の式で硬化樹脂層の比誘電率εcを計算する。
εc=(C×d×2.7)/(ε×2.7×S−C×dp)
d:硬化樹脂層厚さ、ε:真空誘電率、S:試験片面積、dp:高分子圧電フィルムの厚さ
〔硬化樹脂層の内部ヘイズ〕
また、硬化樹脂層の内部ヘイズは、10%以下であることが好ましく、更には0.0%以上5%以下がより好ましく、0.01%以上2%以下が更に好ましい。
内部ヘイズが上記範囲であることにより、優れた透明性が発揮され、例えばタッチパネル等として有効に利用し得る。
尚、硬化樹脂層の内部ヘイズHcは、以下の式により計算される。
Hc=H−Hp
H:高分子圧電フィルムと硬化樹脂層との積層体の内部ヘイズ
Hp:硬化樹脂層形成前または硬化樹脂層を除去した後の高分子圧電フィルムの内部ヘイズ
尚、高分子圧電フィルムの内部ヘイズの測定方法は前述の通りである。積層体の内部ヘイズも、高分子圧電フィルムの内部ヘイズと同様の方法によって測定する。
≪積層体≫
また、本発明の積層体は、高分子圧電フィルムと、中間層と、透明導電層と、をこの順に有し、さらに、高分子圧電フィルムからみて中間層とは反対側に、粘着層と、剥離可能な離型フィルムと、をこの順に有していてもよい。尚、積層体は、高分子圧電フィルムと中間層との間に第1の硬化樹脂層を有していてもよい。
<粘着層>
〔材料〕
粘着層は、粘着性を有する層である。粘着層としては両面をセパレータでラミネートしてある両面テープ(OCA;Optical Clear Adhensive)の粘着層を用いることができる。
また、上記粘着層は、溶剤系、無溶剤系、水系などの粘着コート液、UV硬化型OCR(Optical Clear Resin)、ホットメルト接着剤、などを用いて形成することもできる。
OCAとしては、光学用透明粘着シートLUCIACSシリーズ(日東電工株式会社製)や高透明両面テープ5400Aシリーズ(積水化学工業株式会社製)、光学粘着シートOpteriaシリーズ(リンテック株式会社製)、高透明性接着剤転写テープシリーズ(住友スリーエム株式会社製)、SANCUARYシリーズ(株式会社サンエー化研製)などが挙げられる。
粘着コート液としては、SKダインシリーズ(綜研化学株式会社製)、ファインタックシリーズ(DIC株式会社製)、ボンコートシリーズ、LKGシリーズ(藤倉化成株式会社製)、コーポニールシリーズ(日本合成化学工業株式会社製)などが挙げられる。
粘着層としては、高分子圧電フィルムの加熱を防ぐ観点から、OCAの粘着層、OCRを用いて形成された粘着層、高分子圧電フィルム以外の部材に粘着コート液を塗布して形成した粘着層、高分子圧電フィルム以外の部材にホットメルト接着剤を使用して形成した粘着層が好ましい。
粘着層の材料としては、特に限定されるものではないが、樹脂を含むことが好ましい。
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン−エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、水性高分子-イソシアネート系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、臭素樹脂、デンプン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
〔膜厚〕
粘着層の膜厚は、特に限定されるものではないが、粘着層の密着力の維持と透過率の低下を抑制する観点から、厚みを5μm以上、好ましくは7〜100μm、より好ましくは7〜60μm、さらに好ましくは10〜30μmの範囲が好ましい。
粘着層の膜厚dは、ニコン社製デジタル測長機DIGIMICRO STAND MS−11Cを用いて以下の式により決定される。
式 d=dt−dp
dt:粘着層を有する積層体10箇所の平均厚さ
dp:粘着層形成前または粘着層を除去した後の積層体10箇所の平均厚さ
〔粘着層の酸価〕
粘着層の酸価は、密着力及び積層体の湿熱環境下での劣化を抑制する観点から、0.01mgKOH/g〜10mgKOH/gが好ましく、0.05mgKOH/g〜5mgKOH/gがより好ましく、0.1mgKOH/g〜1mgKOH/gがさらに好ましい。粘着層の酸価を、0.01mgKOH/g〜10mgKOH/gとすることで、高分子圧電フィルムの安定性(特に、耐湿熱性)を保ちつつ、かつ、高分子圧電フィルムと酸価を有する層との密着力を高めることができる。
本発明の積層体において、粘着層の酸価は、粘着層1g中の遊離酸を中和するのに要するKOHの量(mg)を指す。このKOHの量(mg)は、溶媒に溶解又は膨潤させた粘着層を、フェノールフタレインを指示薬として0.005M KOH(水酸化カリウム)エタノール溶液によって滴定することにより測定される。
<剥離可能な離型フィルム>
〔材料〕
剥離可能な離型フィルムの材料としては、離型性(剥離性)を有する材料が好適に用いられる。離型フィルムは、単独のフィルムであってもよく、複数層からなる多層フィルムであってもよい。離型フィルムが、複数層からなる多層フィルムである場合、離型フィルムは、離型性を有する材料が粘着層と対向する面に設けられた構造に形成されていることが好ましい。この場合、離型フィルムは、基材と離型性を有する材料とを含む構造に形成されていてもよい。
離型性を有する材料としては、例えば、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、スチレン(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル等のビニル樹脂;等が挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ワックス樹脂等が挙げられる。
離型フィルムは、これらの単独のフィルムであってもよく、複数層からなる多層フィルムであってもよい。この場合、離型フィルムは、離型性を有する材料が粘着層と対向する面に設けられた構造に形成されていることが好ましい。中でも、粘着層との剥離性をより向上させる点から、粘着層と対向する面に設ける離型性を有する材料は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アルキッド樹脂、ワックス樹脂を用いることがより好ましく、シリコーン樹脂を用いることがさらに好ましい。
シリコーン樹脂としては、例えば、両末端シラノール官能性ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサン又はメチルメトキシシロキサンとを有機錫系触媒の存在下で反応させたもの(熱縮合反応型);分子鎖両末端又は両末端及び側鎖にビニル基を有するメチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとを白金系触媒の存在下で反応させたもの(熱付加反応型);アルケニル基とメルカプト基を含有するシロキサンに光重合剤を加えたもの(紫外線硬化型(ラジカル付加型));熱付加反応型と同じ白金系触媒を用いたもの(紫外線硬化型(ヒドロシリル型));(メタ)アクリル基を含有するシロキサンに光重合剤を加えたもの(紫外線硬化型(ラジカル重合型));エポキシ基を含有するシロキサンにオニウム塩光開始剤を添加したもの(紫外線硬化型(カチオン重合型));ラジカル重合性基含有シロキサン(電子線硬化型、但し官能基はなくてもよく、また光開始剤がなくてもよい);が挙げられる。また、シリコーン樹脂の形態は、溶剤型、エマルジョン型、無溶剤型等の中から適宜選択して用いることができる。
〔基材〕
離型フィルムが基材と離型性を有する材料とを含む構造に形成されている場合、基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、トリアセチルセルロース、セロハン、レーヨン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、若しくはポリスルホン等の樹脂が挙げられ、これらの一軸又は二軸延伸フィルム;不織布;発泡体等が挙げられる。また、基材としては、ガラス;金属箔;セラミック;紙等の中から選択することもできる。
〔その他の材料〕
離型フィルムには、粘着層と対向する面以外の層に、必要に応じて、帯電防止剤、オリゴマー移行抑制剤、平滑化剤、易接着剤等のその他の材料を含む層を設けてもよい。例えば、離型フィルムが基材と離型性を有する材料とを含む構造に形成される場合には、基材と離型性を有する材料とが互いに対向する面、及び基材の離型性を有する材料と対向する面と反対側の面のいずれか一方、または両方の面に、上記のその他の材料を含む層を設けることができる。
〔膜厚〕
離型フィルムの膜厚は、特に限定されるものではないが、離型のしやすさ及びハンドリングの観点から、5μm以上の範囲が好ましく、10μm〜100μmの範囲がより好ましく、20μm〜80μmの範囲が更に好ましく、30μm〜80μmの範囲が特に好ましい。
〔離型フィルムの剥離可能性(離型性)〕
離型フィルムを剥離可能にするためには、粘着層と高分子圧電フィルムとの粘着力が粘着層と離型フィルムとの粘着力よりも大きいことが好ましい。
〔形成方法〕
離型フィルムを形成する方法としては、従来一般的に用いられていた公知の方法が適宜使用できる。例えば、離型フィルムは、離型フィルムを形成する樹脂を製膜機により押出製膜することで形成されてもよい。離型フィルムが、複数層からなる多層フィルムである場合には、製膜した各々の離型フィルムを接着剤により多層に形成してもよく、多層製膜機により共押出製膜して多層に形成してもよい。
また、離型フィルムが基材と離型性を有する材料とを含む構造に形成された複数層からなる多層フィルムである場合、製膜した基材と、製膜した離型性を有する材料とを接着剤により多層に形成してもよく、製膜した基材上に離型性を有する材料を押出製膜して多層に形成してもよく、または基材を構成する材料と、離型性を有する材料とを多層製膜機により共押出製膜して多層に形成してもよい。
さらに、ウェットコート法により形成してもよい。例えば、離型フィルムをウェットコート法で形成する場合、離型フィルムを形成するための材料(樹脂、添加剤等)が分散または溶解されたコート液(離型フィルム用塗工液)を粘着層上に塗布することで形成させることができる。また、離型フィルムが基材と離型性を有する材料とを含む構造に形成された複数層からなる多層フィルムである場合、離型フィルム用塗工液を基材上に塗布することで形成させることができる。
離型性を有する材料をウェットコート法により形成する場合、上記離型性を有する材料を溶液又はエマルション液等の塗布液とし、これをロールコーター、コンマコーター、ダイコーター、メイヤーバーコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター等の公知の方法で粘着層上、又は基材上に塗布・乾燥することで形成してもよい。
なお、離型フィルムが、複数層からなる多層フィルムである場合には、離型フィルムの粘着層と対向する面と反対側の面、又は離型フィルムの粘着層と対向する面と反対側の面に接する基材等に、コロナ放電処理、フレーム処理、オゾン処理等の表面活性化処理、あるいはアンカー処理剤を用いたアンカーコーティング処理を施してもよい。これらのような処理によって多層フィルムの密着性が向上するため、粘着層との離型性より向上させることができる。
<第2の硬化樹脂層>
本発明の積層体は、高分子圧電フィルムと粘着層との間に硬化樹脂層(以下、「第2の硬化樹脂層」と称することもある)を有していてもよい。
第2の硬化樹脂層の特性(材料、種類(用途)、屈折率、膜厚等)は、第1の硬化樹脂層と同様であってもよく、異なっていてもよい。また、第2の硬化樹脂層は、第1の硬化樹脂層と同様の方法で形成することができる。
≪積層体≫
また、本発明の積層体は、高分子圧電フィルムと、中間層と、透明導電層と、をこの順に有し、さらに、高分子圧電フィルムからみて中間層とは反対側に、剥離可能な保護フィルムを有していてもよい。尚、積層体は、高分子圧電フィルムと中間層との間に第1の硬化樹脂層を有していてもよい。
<剥離可能な保護フィルム>
保護フィルムは、例えば、基材と、基材の一方の主面上に積層された粘着層とを有するフィルムが挙げられる。なお、保護フィルムは、基材の単層構成としてもよい。この場合、保護フィルムは、例えば、静電的に、又は保護フィルム自体の粘着性により高分子圧電フィルム又は後述する第3の硬化樹脂層の面に配置される。
〔材料〕
基材の材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合樹脂、環状ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリブテン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、アセチルセルロース樹脂等が挙げられる。
尚、基材は、これら樹脂の層の多層体であってもよい。
粘着層の材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤(例えばポリエチレンオリゴマー粘着剤等)、セルロース系粘着剤(例えば糊等)、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、等が挙げられる。これらの中でも、粘着層の材料としては、耐湿性及び粘着性の観点から、EVA系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着が好ましく、EVA系粘着剤がより好ましい。
ここで、アクリル系粘着剤の粘着性ポリマーとしては、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピルなどのアルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸エステルと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの官能基含有不飽和単量体とを含む単量体混合物の共重合物が好適に挙げられる。
ゴム系粘着剤の粘着性ポリマーとしては、例えば、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレン系ブロック共重合体、天然ゴム等が好適に挙げられる。
〔特性〕
保護フィルムの粘着力(保護フィルムを貼り合せる対象物(高分子圧電フィルム又は後述する第3の硬化樹脂層)に対する保護フィルムの粘着力)は、0.01N/50mm〜1.5N/50mmが好ましく、0.02N/50mm〜1.0N/50mmがより好ましい。保護フィルムの粘着力を上記範囲とすると、積層体からの保護フィルムの剥れを抑制すると共に、保護フィルムを剥離するときに容易な保護フィルムの剥離が実現され易くなる。
なお、保護フィルムの粘着力は、保護フィルムを有する積層体から保護フィルムを引っ張り試験機にて300mm/分の速度で180°方向に引っ張ることにより測定される値である。
〔膜厚〕
保護フィルムの膜厚は、特に限定されるものではないが、保護機能を高める観点から、厚みを5μm以上の範囲が好ましく、10μm〜100μmの範囲がより好ましく、20μm〜80μmが更に好ましく、30μm〜50μmの範囲が特に好ましい。
ここで、基材の膜厚は、9μm〜99μmの範囲が好ましく、19μm〜79μmの範囲がより好ましく、29μm〜49μmの範囲が更に好ましい。一方、粘着層の膜厚は、1μm〜20μmの範囲が好ましく、3μm〜10μmの範囲がより好ましい。
〔形成方法〕
保護フィルムを形成する方法としては、従来一般的に用いられていた公知の方法が適宜使用できる。例えば、保護フィルムは、保護フィルムを形成する樹脂を製膜機により押出製膜することで形成される。また、ウェットコート法により形成してもよい。保護フィルムをウェットコート法で形成する場合は、保護フィルムを形成するための材料(樹脂、添加剤等)が分散または溶解されたコート液(保護フィルム用塗工液)を高分子圧電フィルム上に塗布することで形成される。
具体的には、基材となる材料と粘着層となる材料とを多層製膜機により押出製膜して、保護フィルムを形成する。
尚、保護フィルムの離型性(剥離性)を向上させる観点から、コロナ処理やイトロ処理、オゾン処理、プラズマ処理などによって保護フィルムの表面を処理することもできる。
保護フィルムの市販品としては、例えば、株式会社サンエー化研のPACシリーズ、積水化学工業株式会社の622シリーズ、大王加工紙工業株式会社のFMシリーズ、株式会社スミロンのVシリーズ等が挙げられる。
<第3の硬化樹脂層>
本発明の積層体は、さらに高分子圧電フィルムと剥離可能な保護フィルムとの間に硬化樹脂層(以下、「第3の硬化樹脂層」と称することもある)を有していてもよい。
第3の硬化樹脂層の特性(材料、種類(用途)、屈折率、膜厚等)は、第1の硬化樹脂層と同様であってもよく、異なっていてもよい。また、第3の硬化樹脂層は、第1の硬化樹脂層と同様の方法で形成することができる。
〔第1の態様〕
図1Aに、本発明の積層体の第1態様の断面図を示す。第1態様の積層体100は、高分子圧電フィルム10と、中間層12と、透明導電層としての電極パターン14と、をこの順に有する。また、高分子圧電フィルム10と中間層12との間に第1の硬化樹脂層(不図示)を有していてもよい。
第1態様の積層体は、上記構成を有することにより、透明導電層を設けることによる透過率の低下が抑制され、透明導電層を設けることによる呈色が抑制される。
〔第2の態様〕
図1Bに、本発明の積層体の第2態様の断面図を示す。第2態様の積層体101は、高分子圧電フィルム10と、中間層12Aと、透明導電層としての電極パターン14Aと、をこの順に有し、さらに高分子圧電フィルム10からみて中間層12Aとは反対側に、中間層12Bと、透明導電層としての電極パターン14Bと、をこの順に有する。また、高分子圧電フィルム10と中間層12Aとの間および/もしくは高分子圧電フィルム10と中間層12Bとの間に第1の硬化樹脂層(不図示)を有していてもよい。
第2の態様の積層体は、上記構成を有することにより、透明導電層を設けることによる透過率の低下が抑制され、透明導電層を設けることによる呈色が抑制される。
〔第3の態様〕
図2に、本発明の積層体の第3の態様の断面図を示す。第3の態様の積層体102は、第1態様の積層体100に対し、さらに、高分子圧電フィルム10からみて中間層12とは反対側に、粘着層16と、剥離可能な離型フィルム18と、をこの順に有する。また、高分子圧電フィルム10と中間層12との間に第1の硬化樹脂層(不図示)を有していてもよく、高分子圧電フィルム10と粘着層16との間に第2の硬化樹脂層(不図示)を有していてもよい。
第3の態様の積層体は、上記構成を有することにより、透明導電層を設けることによる透過率の低下が抑制され、透明導電層を設けることによる呈色が抑制される。
〔第4の態様〕
図3に、本発明の積層体の第4の態様の断面図を示す。第4の態様の積層体104は、第1態様の積層体100に対し、さらに、高分子圧電フィルム10からみて中間層12とは反対側に、剥離可能な保護フィルム20を有する。また、高分子圧電フィルム10と中間層12との間に第1の硬化樹脂層(不図示)を有していてもよく、高分子圧電フィルム10と剥離可能な保護フィルム20との間に第3の硬化樹脂層(不図示)を有していてもよい。
第4の態様の積層体は、上記構成を有することにより、透明導電層を設けることによる透過率の低下が抑制され、透明導電層を設けることによる呈色が抑制される。
<積層体の物性>
〔熱寸法安定性(熱収縮率)〕
本発明の積層体において、150℃で30分間加熱したときの熱収縮率は、MD方向、TD方向共に2.0%以下であることが好ましい。
積層体は、形成された透明導電層を結晶化させる工程や、積層体をデバイスとして利用する際の透明導電層と外部回路との接続工程等で、積層体の全体や一部が加熱される場合があるが、熱収縮率が大きい場合、形成された透明電極層の破損やパターンズレ、引出電極との接続不良、積層体の変形が発生する可能性があるため、熱収縮率が低い方が好ましい。
積層体の熱寸法安定性は、150℃で、30分間処理したときの熱収縮率を、MD方向、TD方向でそれぞれ測定し、その熱収縮率で評価される。具体的には、以下の方法により、積層体の熱収縮率を算出する。
積層体の熱収縮率は、MD方向に100mm×TD方向に100mmの正方形に切り出したサンプル片を、150℃のオーブンに30分静置し、オーブンから取り出した後、室温にてサンプル片のMD方向およびTD方向の寸法を測定する。測定した値を使用し、以下の計算式から熱収縮率を算出する。
熱収縮率=100×(オーブンに静置する前のサンプル片の寸法−オーブンに静置後、室温で測定したサンプル片の寸法)/オーブンに静置する前のサンプル片の寸法
<積層体の用途>
本発明の積層体は、スピーカー、ヘッドホン、タッチパネル、リモートコントローラー、マイクロホン、水中マイクロホン、超音波トランスデューサ、超音波応用計測器、圧電振動子、機械的フィルター、圧電トランス、遅延装置、センサー、加速度センサー、衝撃センサー、振動センサー、感圧センサー、触覚センサー、電界センサー、音圧センサー、ディスプレイ、ファン、ポンプ、可変焦点ミラー、遮音材料、防音材料、キーボード、音響機器、情報処理機、計測機器、医用機器などの種々の分野で利用することができる。
また、本発明の積層体は、表示装置と組み合わせたタッチパネルとして用いることもできる。表示装置としては、例えば、液晶パネル、有機ELパネルなどを用いることもできる。
また、本発明の積層体は、感圧センサーとして、他方式のタッチパネル(位置検出部材)と組み合わせて用いることもできる。位置検出部材の検出方式としては抗膜方式、静電容量方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式等が挙げられる。
また、積層体を繰り返し重ね、積層圧電素子として用いることもできる。例としては積層体を繰り返し重ね、最後に電極(透明導電層)で覆われていない積層体の面を電極で覆ったものが挙げられる。
また積層圧電素子に複数の積層体における高分子圧電フィルムが含まれる場合は、ある層の高分子圧電フィルムに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の光学活性がL体ならば、他の層の高分子圧電フィルムに含まれるヘリカルキラル高分子(A)はL体であってもD体であってもよい。高分子圧電フィルムの配置は圧電素子の用途に応じて適宜調整することができる。
例えば、L体のヘリカルキラル高分子(A)を主たる成分として含む高分子圧電フィルムの第1の層が電極を介してL体のヘリカルキラル高分子(A)を主たる成分として含む第2の高分子圧電フィルムと積層される場合は、第1の高分子圧電フィルムの一軸延伸方向(主たる延伸方向)を、第2の高分子圧電フィルムの一軸延伸方向(主たる延伸方向)と交差、好ましくは直交させると、第1の高分子圧電フィルムと第2の高分子圧電フィルムの変位の向きを揃えることができ、積層圧電素子全体としての圧電性が高まるので好ましい。
一方、L体のヘリカルキラル高分子(A)を主たる成分として含む高分子圧電フィルムの第1の層が電極を介してD体のヘリカルキラル高分子(A)を主たる成分として含む第2の高分子圧電フィルムと積層される場合は、第1の高分子圧電フィルムの一軸延伸方向(主たる延伸方向)を、第2の高分子圧電フィルムの一軸延伸方向(主たる延伸方向)と略平行となるように配置すると第1の高分子圧電フィルムと第2の高分子圧電フィルムの変位の向きを揃えることができ、積層圧電素子全体としての圧電性が高まるので好ましい。
特に電極(透明導電層)は、透明性を備えることが好ましい。ここで、電極について、透明性があるとは、具体的には、内部ヘイズが20%以下、全光線透過率が80%以上であることをいう。
本発明の積層体を用いた前記圧電素子は、スピーカーやタッチパネル等、上述の種々の圧電デバイスに応用することができる。特に、透明性のある電極を備えた圧電素子は、スピーカー、タッチパネル、アクチュエータ等への応用に好適である。
<積層体の製造方法>
積層体の製造方法の一例として、高分子圧電フィルムと、中間層と、透明導電層と、をこの順に有する積層体の製造方法について説明する。
まず、高分子圧電フィルムを製造する。高分子圧電フィルムを製造する方法としては、例えば、既述の光学活性高分子を含む非晶状態のシートに対して結晶化及び延伸(いずれが先であってもよい)を施す方法が挙げられる。
また、非晶状態のシートとは、光学活性高分子(ヘリカルキラル高分子(A))単体又は光学活性高分子を含む混合物を、光学活性高分子の融点Tm以上の温度に加熱し、その後、急冷して得られたシートを示す。急冷する温度としては、例えば、50℃が挙げられる。
高分子圧電フィルムを製造する方法において、高分子圧電フィルム(または非晶状態のシート)の原料としては、前記光学活性高分子(ポリ乳酸系高分子など)を1種単独で用いてもよいし、既述の光学活性高分子(ポリ乳酸系高分子など)の2種以上の混合物、または、既述の光学活性高分子の少なくとも1種とその他の成分の少なくとも1種との混合物を用いてもよい。
上述の混合物は、溶融混練して得られた混合物であることが好ましい。
具体的には、例えば、光学活性高分子を混合する場合や、1種類以上の光学活性高分子にその他の成分(例えば上述の無機フィラーや結晶核剤)を混合する場合は、混合する光学活性高分子を(必要に応じその他の成分とともに)、溶融混練機〔東洋精機社製、ラボプラストミキサー〕を用い、ミキサー回転数30rpm〜70rpm、180℃〜250℃の条件で、5分〜20分間溶融混練することで、複数種の光学活性高分子のブレンド体や光学活性高分子と無機フィラーなどの他の成分とのブレンド体を得ることができる。
また、高分子圧電フィルムは、光学活性高分子を含むシート(好ましくは非晶状態のシート)を主として1軸方向に延伸する工程と、アニール処理工程と、をこの順で含む製造方法によっても製造できる。
また、高分子圧電フィルムは、高分子圧電フィルムと中間層との密着力をより向上させ、かつ、高分子圧電フィルムの耐湿熱性及び引裂強さをより向上させる観点から、高分子圧電フィルムに含まれる高分子のアクリル末端の比率を調整してもよい。
具体的には、高分子圧電フィルムは、20mgの前記高分子圧電フィルムを0.6mLの重水素化クロロホルムに溶解させた溶液についてH−NMRスペクトルを測定し、測定されたH−NMRスペクトルに基づき、下記式(X)により、前記高分子圧電フィルムに含まれる高分子のアクリル末端の比率を求めたときに、前記高分子のアクリル末端の比率が、2.0×10−5〜10.0×10−5であってもよい。
前記高分子のアクリル末端の比率 = 前記高分子のアクリル末端に由来するピークの積分値/前記高分子の主鎖中のメチンに由来するピークの積分値 ・・・ 式(X)
また、高分子圧電フィルムは、色相を調整するために、着色剤を少なくとも1種含有していてもよい。着色剤として、例えば、黄色味を補正するためのブルーイング剤が挙げられる。
次に、高分子圧電フィルム上に中間層を形成する。中間層は、例えば、金属酸化物微粒子と、硬化性樹脂とを含む材料が分散または溶解されたコート液(中間層用塗工液)を高分子圧電フィルムに塗布する工程と、必要に応じてコート液を乾燥する工程と、コート液を熱や活性エネルギー線(紫外線、電子線、放射線等)照射により硬化する工程とを経て、形成することができる。
次に、中間層上に透明導電層を形成する。
透明導電層は、公知の方法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法、電子線蒸着法、ゾル−ゲル法、ウェットコート法等)により中間層上に透明導電層を形成した後、パターン形成手段(マスキング、リソグラフィ等)を用いて、透明導電層の一部を酸やアルカリでエッチングして形成することができる。また、中間層の一部をパターンマスクやメンディングテープ等でマスキングした上で、公知の方法で中間層の一部に透明導電層を形成しても形成することができる。また、パートコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法などにより、透明導電層の材料を含む組成物を、中間層に部分的に適用しても形成することができる。
尚、積層体が、高分子圧電フィルムからみて中間層とは反対側に、粘着層と剥離可能な離型フィルムとをこの順に有する場合、又は、高分子圧電フィルムからみて中間層とは反対側に、剥離可能な保護フィルムを有する場合、粘着層、剥離可能な離型フィルム及び剥離可能な保護フィルムはそれぞれ上述の方法で形成することができる。第1〜第3の硬化樹脂層についても同様である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<高分子圧電フィルムの作製>
ヘリカルキラル高分子(A)として、NatureWorks LLC社製のポリ乳酸系高分子(品名:IngeoTM biopolymer、銘柄:4032D、重量平均分子量Mw:20万、融点(Tm):166℃、ガラス転移温度(Tg):57℃〜60℃)を、原料として用意した。
作製した原料を押出成形機ホッパーに入れて、220℃〜230℃に加熱しながらTダイから押し出し、55℃のキャストロールに0.5分間接触させて、厚さ150μmの予備結晶化シートを製膜した(予備結晶化工程)。予備結晶化シートの結晶化度を測定したところ5.63%であった。
得られた予備結晶化シートを70℃に加熱しながらロールツーロールで、延伸速度1650mm/分で延伸を開始し、3.3倍までMD方向に一軸延伸した(延伸工程)。得られたフィルムの厚さは0.05mm(50μm)であった。
その後、一軸延伸したフィルムを、ロールツーロールで、130℃に加熱したロール上に60秒間接触させアニール処理し、高分子圧電フィルムを作製した(アニール処理工程)。
<ヘリカルキラル高分子(A)の物性測定>
上記ヘリカルキラル高分子(A)について、以下の方法で光学純度を測定した。また、既述の方法で重量平均分子量及び分子量分布を測定した。結果を表1に示す。
〔光学純度〕
上記高分子圧電フィルムに含まれるヘリカルキラル高分子(A)(ポリ乳酸)の光学純度を、以下のようにして測定した。
まず、50mLの三角フラスコに1.0gのサンプル(上記高分子圧電フィルム)を秤り込み、ここに、IPA(イソプロピルアルコール)2.5mL及び5.0mol/L水酸化ナトリウム溶液5mLを加え、サンプル溶液とした。
次に、このサンプル溶液が入った三角フラスコを温度40℃の水浴に入れ、ポリ乳酸が完全に加水分解するまで、約5時間攪拌した。
上記約5時間の撹拌後のサンプル溶液を室温まで冷却した後、1.0mol/L塩酸溶液を20mL加えて中和し、三角フラスコを密栓してよくかき混ぜた。
次に、上記でかき混ぜたサンプル溶液の1.0mLを25mLのメスフラスコに取り分け、ここに下記組成の移動相を加え、25mLのHPLC試料溶液1を得た。
得られたHPLC試料溶液1をHPLC装置に5μL注入し、下記HPLC測定条件にてHPLC測定を行った。得られた測定結果から、ポリ乳酸のD体に由来するピークの面積とポリ乳酸のL体に由来するピークの面積とを求め、L体の量とD体の量とを算出した。得られた結果に基づき、光学純度(%ee)を求めた。
その結果、光学純度は、97.0%eeであった。なお、下記表1において、「LA」はポリ乳酸を表す。
−HPLC測定条件−
・カラム
光学分割カラム、(株)住化分析センター製 SUMICHIRAL OA5000
・HPLC装置
日本分光社製 液体クロマトグラフィ
・カラム温度
25℃
・移動相の組成
1.0mM−硫酸銅(II)緩衝液/IPA=98/2(V/V)
(この移動相において、硫酸銅(II)、IPA、及び水の比率は、硫酸銅(II)/IPA/水=156.4mg/20mL/980mLである。)
・移動相流量
1.0mL/分
・検出器
紫外線検出器(UV254nm)
<高分子圧電フィルムの物性測定>
上記高分子圧電フィルムについて、以下の方法で、融点Tm、結晶化度及び内部ヘイズを測定した。また、既述の方法で圧電定数(応力−電荷法)及び規格化分子配向MORcを測定した。結果を表1に示す。
〔融点Tm及び結晶化度〕
高分子圧電フィルムを10mg正確に秤量し、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC−1)を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定し、融解吸熱曲線を得た。得られた融解吸熱曲線から、融点Tm及び結晶化度を得た。
〔内部ヘイズ〕
以下の方法により、高分子圧電フィルムの内部ヘイズ(以下、内部ヘイズ(H1)ともいう)を得た。
まず、ガラス板2枚の間に、シリコンオイル(信越化学工業株式会社製信越シリコーン(商標)、型番:KF96−100CS)のみを挟んだ積層体を準備し、この積層体の厚さ方向のヘイズ(以下、ヘイズ(H2)とする)を測定した。
次に、上記のガラス板2枚の間に、シリコンオイルで表面を均一に塗らした上記高分子圧電フィルムを挟んだ積層体を準備し、この積層体の厚さ方向のヘイズ(以下、ヘイズ(H3)とする)を測定した。
次に、下記式のようにこれらの差をとることにより、高分子圧電フィルムの内部ヘイズ(H1)を得た。
内部ヘイズ(H1)=ヘイズ(H3)−ヘイズ(H2)
ここで、ヘイズ(H2)及びヘイズ(H3)の測定は、それぞれ、下記測定条件下で下記装置を用いて行った。
測定装置:東京電色社製、HAZE METER TC−HIIIDPK
試料サイズ:幅30mm×長さ30mm
測定条件:JIS−K7105に準拠
測定温度:室温(25℃)
〔実施例1〕
固形分として、平均粒子径が0.02μmの酸化ジルコニウム微粒子を25質量部、ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製、紫光UV7600B)75質量部及び光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式社製、IRGACURE 184)5質量部を、メチルエチルケトンで上記固形分が10質量%になるように混合し、中間層用塗工液を調製した。
酸化ジルコニウム微粒子としては、酸化ジルコニウム微粒子の分散液(シーアイ化成株式会社製ZRMEK25%−F47)を使用し、固形分が上記質量部になるように分散液を混合した。
上記方法により作製した高分子圧電フィルムに、上記中間層用塗工液をワイヤーバーで塗布し、60℃にて5分間乾燥後、メタルハライドランプで積算光量400mJ/cmの紫外線を照射することで中間層を形成した。中間層の膜厚d1は100nm、屈折率n1は1.55であった。
さらに中間層面の一部をメンディングテープでマスキングした上で、中間層面に対し酸化スズを36質量%含有した酸化インジウムをターゲットとしてスパッタリングを行った。その後、マスキングを剥がし、透明導電層を有する箇所と透明導電層を有しない箇所を形成し、透明導電層からなる電極パターンを得た。これにより、中間層面の一部に実厚み15nm、屈折率1.95の酸化インジウム錫(ITO)を透明導電層として形成した。 以上により、高分子圧電フィルムと、中間層と、透明導電層と、をこの順に有する積層体を得た。なお、中間層の屈折率n1及び膜厚d1、透明導電層の屈折率n2及び膜厚d2は、それぞれ以下の方法で測定した。実施例2〜6、比較例1の屈折率及び膜厚の測定方法も同様である。結果を表2に示す。
−屈折率の測定方法(中間層)−
(1)屈折率1.63のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績株式会社製)上に、ディップコーター(杉山元理化学機器株式会社製)により、各中間層用塗工液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜500nm程度になるように層の厚さを調製して塗布した。
(2)60℃にて5分間乾燥後、メタルハライドランプで積算光量400mJ/cmの紫外線を照射することで硬化した。硬化後のPETフィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(商品名「FE−3000」、大塚電子株式会社製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn−Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長550nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ+b/λ+c (式1)
−屈折率の測定方法(透明導電層)−
透明導電層の屈折率n2は、前記中間層の屈折率n1の測定方法と同様の方法によって測定した。
−膜厚の測定方法(中間層)−
中間層の膜厚d1は、以下のように測定した。中間層を含む積層体を1mm×10mmの大きさに切り出し、電子顕微鏡用エポキシ樹脂に包埋した。これをウルトラミクロトームの試料ホルダに固定し、包埋した試料片の短辺に平行な断面薄切片を作製した。次いで、この切片の薄膜の著しい損傷がない部位において、透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM−2010)を用い、加速電圧200kV、明視野で観察倍率1万倍にて写真撮影を行って得られた写真から膜厚を求めた。
−膜厚の測定方法(透明導電層)−
透明導電層の膜厚d2は、以下のように測定した。透明導電層を含む積層体を1mm×10mmの大きさに切り出し、電子顕微鏡用エポキシ樹脂に包埋した。これをウルトラミクロトームの試料ホルダに固定し、包埋した試料片の短辺に平行な断面薄切片を作製した。次いで、この切片の薄膜の著しい損傷がない部位において、透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM−2010)を用い、加速電圧200kV、明視野で観察倍率1万倍にて写真撮影を行って得られた写真から膜厚を求めた。
〔実施例2〕
中間層用塗工液の、平均粒子径が0.02μmの酸化ジルコニウム微粒子の量を58質量部、ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製、紫光UV7600B)の量を42質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。中間層の膜厚d1は100nm、屈折率n1は1.60であった。
〔実施例3〕
中間層用塗工液の、平均粒子径が0.02μmの酸化ジルコニウム微粒子の量を67質量部、ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製、紫光UV7600B)の量を33質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。中間層の膜厚d1は100nm、屈折率n1は1.65であった。
〔実施例4〕
中間層用塗工液の、平均粒子径が0.02μmの酸化ジルコニウム微粒子の量を72質量部、ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製、紫光UV7600B)の量を28質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。中間層の膜厚d1は100nm、屈折率n1は1.70であった。
〔実施例5〕
中間層用塗工液の、平均粒子径が0.02μmの酸化ジルコニウム微粒子の量を58質量部、ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製、紫光UV7600B)の量を42質量部に変更し、ワイヤーバーにより塗工厚みを調整することにより、中間層の膜厚d1を200nmに変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。中間層の屈折率n1は1.60であった。
〔実施例6〕
中間層を形成する前の高分子圧電フィルムの両面に以下の手順で、アンチブロックハードコート層としての第1の硬化樹脂層を形成した後に中間層を形成した以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。中間層の膜厚d1は100nm、屈折率n1は1.60であった。
アンチブロックハードコート層としての第1の硬化樹脂層は、高分子圧電フィルムの主面にアクリル樹脂系塗工液(東洋インキ製、アンチブロックハードコートLIODURAS TYAB−014)をアプリケーターで塗布し、60℃にて5分間乾燥後、メタルハライドランプで積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射することで形成した。第1の硬化樹脂層の膜厚は2μm、屈折率は1.52であった。なお、第1の硬化樹脂層の屈折率及び膜厚は、以下の方法で測定した。
また、得られた積層体について、150℃で30分間加熱したときの熱収縮率を、MD方向(延伸方向)及びTD方向(延伸方向に直交する方向)でそれぞれ測定した結果、MD方向は1.1%、TD方向は0.9%であった。なお、熱収縮率は既述の方法で測定した。
−屈折率の測定方法(第1の硬化樹脂層)−
ガラス板に硬化樹脂層を形成し、アッベ屈折計(アタゴ社製、NAR−4T、Na光源、波長:589nm)によりJIS K 7142に準じて測定した。
−膜厚の測定方法(第1の硬化樹脂層)−
第1の硬化樹脂層の膜厚は、ニコン社製デジタル測長機DIGIMICRO STAND MS−11Cを用いて以下の式により決定される。
式 d=dt−dp
dt:高分子圧電フィルムと硬化樹脂層との積層体10箇所の平均厚さ
dp:硬化樹脂層形成前または硬化樹脂層を除去した後の高分子圧電フィルム10箇所の平均厚さ
〔比較例1〕
中間層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
<積層体の評価>
実施例1〜6及び比較例1で得られた積層体について、下記の方法により内部ヘイズ、全光線透過率差、及びb差を測定した。また、骨見えの評価を行った。結果を表2に示す。
〔内部ヘイズ〕
上述した高分子圧電フィルムの内部ヘイズの測定において、高分子圧電フィルムを実施例1〜6及び比較例1に変更したこと以外は同様の方法で積層体の内部ヘイズを測定した。
〔全光線透過率差〕
積層体のマスキングにより透明導電層が形成されていない箇所及び透明導電層が形成された箇所の全光線透過率を測定し、それぞれの全光線透過率の差の絶対値を全光線透過率差とした。
〔b差〕
積層体のマスキングにより透明導電層が形成されていない箇所及び透明導電層が形成された箇所のbを測定し、それぞれのbの差をb差とした。
は色差計(「SQ−2000」、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。このbは、JIS Z 8729に規定されているLb表色系における値である。尚、b差が小さいほど、透明導電層を設けることによる呈色が抑制されていることを示す。
〔骨見え〕
積層体のマスキングにより透明導電層が形成されていない箇所及び透明導電層が形成された箇所の境界を目視により確認し、以下の基準で判断した。
A:境界が確認できず、電極パターンの骨見えが顕著に抑制されていた
B:境界がほとんど確認できず、骨見えが抑制されていた
C:境界がよく確認でき、骨見えが顕著であった
<表2の説明>
実施例6の第1の硬化樹脂層は、高分子圧電フィルムの両面に設けた。両面の硬化樹脂層の膜厚は各々2μmである。
表2に示すように、本実施例は、比較例に比べ、透明導電層が形成されていない箇所及び透明導電層が形成された箇所における全光線透過率差が小さくなった。
また、本実施例は、b差が小さく、骨見え評価において電極パターンの骨見えが抑制されていた。
この結果、本実施例は、透明導電層を設けることによる透過率の低下が抑制され、透明導電層を設けることによる呈色が抑制されることがわかった。
特に、中間層の屈折率n1が1.55〜1.65の範囲にある実施例1〜3は、中間層の屈折率n1が1.65を超える実施例4に比べ、b差が小さくなることがわかった。
また、中間層の屈折率n1が1.57〜1.61の範囲にある実施例2は、中間層の屈折率n1が1.57未満の実施例1、及び1.61を超える実施例3、4に比べ、b差が顕著に小さくなることがわかった。
以上のことから、本実施例の積層体をタッチパネル等の押圧検出装置に用いれば、ディスプレイの表示画像のコントラストの低下も抑制されることがわかった。
10 高分子圧電フィルム、12,12A,12B 中間層、14,14A,14B 電極パターン、16 粘着層、18 剥離可能な離型フィルム、20 剥離可能な保護フィルム、100,101,102,104 積層体

Claims (20)

  1. 重量平均分子量が5万〜100万である光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、DSC法で得られる結晶化度が20%〜80%であり、かつ、マイクロ波透過型分子配向計で測定される基準厚さを50μmとしたときの規格化分子配向MORcと前記結晶化度との積が40〜700であり、可視光線に対する内部ヘイズが5%以下である高分子圧電フィルムと、
    中間層と、
    透明導電層と、
    をこの順に有する積層体。
  2. 前記中間層の屈折率n1が1.50〜1.95であり、前記中間層の膜厚d1が5nm〜500nmであり、前記透明導電層の屈折率n2が1.85〜2.35であり、前記透明導電層の膜厚d2が5nm〜200nmであり、
    n1<n2
    を満たす請求項1に記載の積層体。
  3. 前記中間層の屈折率n1が1.55〜1.65であり、前記中間層の膜厚d1が60nm〜150nmであり、前記透明導電層の屈折率n2が1.85〜2.10であり、前記透明導電層の膜厚d2が10nm〜60nmである請求項1または請求項2に記載の積層体。
  4. 前記中間層の屈折率n1が1.57〜1.61である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記高分子圧電フィルムと前記中間層との間に硬化樹脂層を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記硬化樹脂層が易接着層、ハードコート層、帯電防止層、及びアンチブロック層の少なくとも1つである請求項5に記載の積層体。
  7. 前記硬化樹脂層が、三次元架橋樹脂であって活性エネルギー線照射により硬化された活性エネルギー線硬化樹脂を含む請求項5または請求項6に記載の積層体。
  8. 前記硬化樹脂層の屈折率が1.45〜1.55である請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の積層体。
  9. 前記硬化樹脂層の屈折率が1.46〜1.52である請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載の積層体。
  10. 150℃で30分間加熱したときの熱収縮率が、MD方向、TD方向共に2.0%以下である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の積層体。
  11. さらに、前記高分子圧電フィルムからみて前記中間層とは反対側に、粘着層と、剥離可能な離型フィルムと、をこの順に有する請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の積層体。
  12. 前記粘着層の酸価が0.01mgKOH/g〜10mgKOH/gである請求項11に記載の積層体。
  13. 前記高分子圧電フィルムと前記粘着層との間に硬化樹脂層を有する請求項11または請求項12に記載の積層体。
  14. さらに、前記高分子圧電フィルムからみて前記中間層とは反対側に、剥離可能な保護フィルムを有する請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の積層体。
  15. 前記高分子圧電フィルムと前記剥離可能な保護フィルムとの間に硬化樹脂層を有する請求項14に記載の積層体。
  16. 前記高分子圧電フィルムは、25℃において応力−電荷法で測定した圧電定数d14が1pC/N以上である請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の積層体。
  17. 前記ヘリカルキラル高分子(A)が、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有するポリ乳酸系高分子である請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の積層体。

  18. 前記ヘリカルキラル高分子(A)は、光学純度が95.00%ee以上である請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載の積層体。
  19. 前記高分子圧電フィルムは、前記ヘリカルキラル高分子(A)の含有量が80質量%以上である請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の積層体。
  20. 前記高分子圧電フィルムが、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200〜60000の安定化剤(B)を、前記ヘリカルキラル高分子(A)100質量部に対して0.01質量部〜10質量部含む請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の積層体。
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