以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。まずは、図1乃至図8を参照しながら、エンジン1(以下、単にエンジン1という)の全体構造について説明する。なお、以下の説明では、エンジン1の吸気マニホールド3設置側を単にエンジン1の右側と称し、同じくエンジン1の排気マニホールド6設置側を単にエンジン1の左側と称する。
図3乃至図6に示す如く、エンジン1のシリンダヘッド2の右側面には吸気マニホールド3が配置されている。シリンダヘッド2は、エンジン出力軸4(クランク軸)とピストン(図示省略)が内蔵されたシリンダブロック5に上載されている。シリンダヘッド2の左側面に排気マニホールド6が配置されている。シリンダブロック5の前面と後面からエンジン出力軸4の前端と後端を突出させている。
図4乃至図6に示す如く、シリンダブロック5の後面にフライホイルハウジング8を固着している。フライホイルハウジング8内にフライホイル9を設ける。エンジン出力軸4の後端側にフライホイル9を軸支させている。また、空気調和機器としての冷媒圧縮用のコンプレッサ7を備える。フライホイルハウジング8にコンプレッサ7を固着する。フライホイル9を介してエンジン1の動力をコンプレッサ7に伝達するように構成している。
更に、シリンダブロック5の下面にはオイルパン11が配置されている。シリンダブロック5の平坦な底面積よりも、オイルパン11の平坦な上面積を大きく形成している。すなわち、シリンダブロック5の左右側面よりも外側方にオイルパン11の左右側部を突出し、シリンダブロック5の前面よりも前方にオイルパン11の前部を突出し、オイルパン11のオイル貯蔵容積を大きく形成し、オイルパン11に多量のエンジンオイル(図示省略)を貯留して、エンジン1の長時間に亘る連続運転においてエンジンオイルが不足するのを防止するように構成している。
図4乃至図6に示すように、吸気マニホールド3には、再循環用の排気ガスを取込む排気ガス再循環装置15(EGR装置)を配置する。吸気マニホールド3にエアクリーナ16を連結する。エアクリーナ16にて除塵・浄化された外部空気は、吸気マニホールド3に送られ、4気筒エンジン1の各気筒に供給されるように構成している。
また、排気ガス再循環装置15は、エンジン1の再循環排気ガス(排気マニホールド6からのEGRガス)と新気(エアクリーナ16からの外部空気)とを混合させて吸気マニホールド3に供給するEGR本体ケース17と、排気マニホールド6に再循環用の排気ガス冷却手段としてのEGRクーラ18を介して接続する再循環排気ガス管19と、前記再循環排気ガスの吸込み量を調節するEGRバルブ20とを有する。なお、EGR本体ケース17には、新気の吸込み量を調節する吸気スロットルバルブ(図示省略)が内蔵されている。
上記の構成により、再循環排気ガス管19にEGRバルブ20を介してEGR本体ケー
ス17を連通させ、エンジン1から排気マニホールド6に排出した排気ガスの一部が吸気マニホールド3からエンジン1に還流されることによって、エンジン1の燃焼温度が下がり、エンジン1からの窒素酸化物(NOx)の排出量が低減され、且つエンジン1の燃費が向上される。
なお、シリンダブロック5内とラジエータ(図示省略)に冷却水を循環させる冷却水ポンプ21を備える。エンジン1の前面に冷却水ポンプ21を配置する。エンジン出力軸4の前端部にVベルト22等を介して冷却水ポンプ21を連結し、冷却水ポンプ21を駆動する。一方、冷却水ポンプ21には冷却水パイプ23を介してEGRクーラ18を接続する。冷却水ポンプ21から、EGRクーラ18を介して、シリンダブロック5内に冷却水を送り込むように構成している。
図3、図4及び図6に示す如く、エンジン1の各気筒から排出された排気ガスを浄化するための排気ガス浄化装置31(ディーゼル酸化触媒及びスートフィルタ)を備える。シリンダブロック5の側面とオイルパン11の上面に隣接させて排気ガス浄化装置31を配置している。すなわち、シリンダブロック5の側面とオイルパン11の上面との連結部(角隅部)に排気ガス浄化装置31を設置している。オイルパン11の上面左側(排気マニホールド5設置側)に、ブラケット体69を介して排気ガス浄化装置31を支持させている。エンジン1の各気筒から排気マニホールド6に排出された排気ガスは、排気ガス浄化装置31等を経由して、排気管32から外部に放出される。排気ガス浄化装置31によって、エンジン1の排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、粒子状物質(PM)を低減するように構成している。
排気ガス浄化装置31は耐熱金属材料製のDPFケース33を備える。DPFケース33は平面視でエンジン出力軸4と平行に前後方向に長く延びた略円筒形状に構成している。DPFケース33の前後両側(排気ガス移動方向一端側と同他端側)には、排気ガスを取入れる排気ガス入口管34と、排気ガスを排出する排気ガス出口管35とを設けている。
また、排気マニホールド6の後端部に排気継手体6aをダイキャスト加工で一体的に形成する。排気継手体6aに、ベローズ状伸縮管36及びエルボ管37を介して、排気ガス入口管34を接続する。すなわち、排気継手体6aの下面側から伸縮管36を下向きに延設し、伸縮管36の下端側からエルボ鋼管37を前向きに延設し、エルボ鋼管37の前端側に排気ガス入口管34の後端側開口部を締結している。エンジン1の排気マニホールド6に排気ガス入口管34を連通させ、エンジン1の排気ガスをDPFケース33内に導入するように構成している。
更に、DPFケース33の前面側に排気ガス出口管35の後端側を連結している。排気ガス出口管35前端側の出口に、排気管32を介して、消音器38とテールパイプ39を接続させる(図1参照)。実施形態の排気ガス浄化装置31は、排気ガス中の粒子状物質等を捕集するためのものであり、DPFケース33内に、例えば白金等のディーゼル酸化触媒とスートフィルタとを直列に並べて収容している。実施形態では、DPFケース33内のうち排気上流側にディーゼル酸化触媒を配置し、排気下流側にスートフィルタを配置している。スートフィルタは、多孔質な(ろ過可能な)隔壁にて区画された多数のセルを有するハニカム構造になっている。上記の構成により、エンジン1からの排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の含有量、排気ガス中の粒子状物質(PM)が低減される。
なお、排気ガス出口管35の出口には、排気管32が金属製締結バンドにて着脱可能に連結される。図1に示す如く、例えば貨物輸送用のコンテナ52の前側にエンジンルーム
56を形成した場合、メンテナンス用ドア57と反対側にあるコンテナ52外壁側に排気ガス浄化装置31が配置される。また、エンジンルーム56内にエンジン1を設置した後、コンテナ52外壁と排気ガス浄化装置31間の狭小空間で、排気ガス出口管35の出口に排気管32を連結させる作業を行う必要がある。しかし、ボルト締結用のスパナ等の工具を使用することなく、締結バンド29で排気ガス出口管35に排気管32を簡単に連結できるから、前記狭小空間での排気管32連結作業を円滑に実行できる。
次に、図5、図7及び図9を参照しながら、エンジン1の燃料系統構造を説明する。図5、図7及び図9に示す如く、エンジン1に設けた4気筒分の各インジェクタ41に、コモンレール式燃料噴射装置49(燃料ポンプ42及びコモンレール43)を介して、燃料タンク48を接続する。各インジェクタ41は、電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ50を有する。シリンダヘッド2の右側面にコモンレール43を固着し、吸気マニホールド3の下方側に近接させてコモンレール43を配置し、吸気マニホールド3及び排気ガス再循環装置15に近接させてコモンレール43を設けている。
図5、図7及び図9に示す如く、燃料ポンプ42の吸入側には、燃料フィルタ44及び低圧管45を介して燃料タンク48が接続される。燃料タンク48内の燃料が燃料フィルタ44及び低圧管45を介して燃料ポンプ42に吸込まれる。一方、燃料ポンプ42の吐出側には、高圧管46を介してコモンレール43が接続される。円筒状のコモンレール43の長手方向の中間に高圧管46を連結している。また、コモンレール43には、4本の燃料噴射管47を介して4気筒分の各インジェクタ41がそれぞれ接続されている。円筒状のコモンレール43の長手方向に4気筒分の燃料噴射管47の端部をそれぞれ連結している。
上記の構成により、燃料タンク48の燃料が燃料ポンプ42によってコモンレール43に圧送され、高圧の燃料がコモンレール43に蓄えられる。各インジェクタ41の燃料噴射バルブ50がそれぞれ開閉制御されることによって、コモンレール43内の高圧の燃料が各インジェクタ41からエンジン1の各気筒に噴射される。すなわち、各インジェクタ41の燃料噴射バルブ50を電子制御することによって、各インジェクタ41から供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)を高精度にコントロールできる。従って、エンジン1から排出される窒素酸化物(NOx)を低減できる。エンジン1の騒音振動を低減できる。
なお、燃料ポンプ42はエンジン出力軸4で駆動される。燃料タンク48に燃料戻り管66を介して燃料ポンプ42を接続する。円筒状のコモンレール43の長手方向の端部に、コモンレール43内の燃料の圧力を制限する戻り管コネクタ67を介して、コモンレール戻り管68を接続している。すなわち、燃料ポンプ42及びコモンレール43の余剰燃料は、燃料戻り管66及びコモンレール戻り管68を介して燃料タンク48に回収される。
次に、図1及び図2を参照して、エンジン1の使用例を説明する。図1及び図2に示す如く、トラクタ(図示省略)で牽引するトレーラ車体51に、冷凍貨物等を輸送する四角箱型の貨物輸送用のコンテナ52を搭載する。トレーラ車体51は、収納可能な前部支脚体53と後車輪54とで水平に支持され、一定場所に保管される一方、前部支脚体53を収納して、トラクタの後部にトレーラ車体51の前部を連結し、トラクタにてトレーラ車体51を牽引するように構成している。
また、コンテナ52の前面部に空気調和機器用の空調ハウジング55を設ける。該コンテナ52内の温度をコントロールする空気調和機器(図示省略)が空調ハウジング55に内設される。空調ハウジング55の下方にエンジンルーム56を形成する。エンジン1と
、前記空気調和機器の一部であるコンプレッサ7を、エンジンルーム56内に設置する。エンジン1によってコンプレッサ7を作動し、コンプレッサ7で空気調和機器の冷媒を圧縮することにより、コンテナ52内の温度を、冷凍貨物の保存に適した保冷温度(例えば−20℃程度)に保持するように構成する。なお、図1に示す如く、燃料フィルタ44は、エンジン1が設置される空調ハウジング55の機枠58側に燃料フィルタ44を配置させ、エンジンルーム56の上部に燃料フィルタ44を支持させ、エンジン1の燃料ポンプ42に燃料フィルタ44を接続させるように構成している。
図1及び図2に示す如く、エンジンルーム56の前面部にメンテナンス用ドア57を開閉可能に設ける。ドア57を開放作動させることによって、エンジンルーム56の前面が前方に向けて開放されるように構成する。また、コンテナ52の左側方向にエンジン1の正面を向け、コンテナ52の正面に向かってエンジンルーム56の右側にエンジン1を配置し、エンジンルーム56の左側にコンプレッサ7を配置する。すなわち、前記エンジンルーム56の前面開口に、エンジン1の右側面とコンプレッサ7の右側面を対向させるように構成する。
更に、図1及び図2に示す如く、エンジン1の右側には吸気マニホールド3を配置している。エンジン1の吸気マニホールド3設置側に、排気ガス再循環バルブとしてのEGRバルブ20とコモンレール43とを配置すると共に、吸気マニホールド3設置側に隣接するエンジン1の側面に、再循環用排気ガスを冷却するEGRクーラ18を設け、エンジン1を収容したエンジンルーム56のメンテナンス用ドア57に、エンジン1の吸気マニホールド3設置側を対面させている。
また、エンジン1の吸気マニホールド3設置側において、オイルパン11上面の給油口を閉塞するエンジンオイル用給油蓋61と、エンジンオイル濾過用のオイルフィルタ62と、エンジン1始動用のスタータ63と、燃料ポンプ42とを設ける。一方、エンジン1の上面に各インジェクタ41を配置している。なお、オイルパン11の側面のうち、吸気マニホールド3設置側の側面下部に、オイルパン11内のオイルを抜取るためのドレンキャップ64を設けている。
上記の構成により、トレーラ車体51前部に居る作業者は、EGRバルブ20、コモンレール43及びEGRクーラ18の保守点検作業等をエンジンルーム56の前面開口側から実行できる。一方、エンジンオイル用給油蓋61を開閉する給油口へのエンジンオイル給油作業、オイルフィルタ62の交換作業、スタータ63、燃料ポンプ42及び各インジェクタ41等の保守点検作業も前記と同様に、エンジンルーム56の前面開口側から実行できる。
次に、図10を参照しながら、エンジン1からコンプレッサ7への動力伝達系統について説明する。エンジン1から突出したエンジン出力軸4にはフライホイル9を直結させている。フライホイル9には、動力継断用の主クラッチ10を介して主動軸70が連結されている。主動軸70には、動力配分機構71からなる動力配分機構71を介して、主動軸70と直列状に延びる駆動軸72が動力伝達可能に連結されている。駆動軸72はコンプレッサ7に動力伝達可能に連結している。コンプレッサ7は駆動軸72の回転によって駆動するように構成されている。動力配分機構71には、駆動力合成用の切換クラッチ機構73を介して、電動モータとしてのモータジェネレータ74が動力伝達可能に連結されている。モータジェネレータ74は、インバータコンバータ75を介して、蓄電手段としてのバッテリ76に電気的に接続されている。バッテリ76には残量検出器79を接続している。残量検出器79は、バッテリ残量SCを経時的に検出しながら、検出結果をECU101(詳細は後述する)に出力する。
なお、バッテリ76には、コンバータ78を介してエンジン1に設けたオルタネータ24を電気的に接続している。バッテリ76は、エンジン1の駆動によってオルタネータ24から充電可能になっている。動力配分機構71、切換クラッチ機構73及びモータジェネレータ74は、エンジン1のフライホイルハウジング8とコンプレッサ7とをつなぐ駆動ケース25(図5〜図8参照)内に収容されている。
動力配分機構71は基本的に、主動軸60とポンプ軸62とをつなぐ遊星ギヤ機構によって構成している。動力配分機構71(遊星ギヤ機構)は、主動軸70の先端側に固着されたサンギヤ83と、サンギヤ83に噛み合う複数の遊星ギヤ84と、遊星ギヤ84群に噛み合うリングギヤ85と、遊星ギヤ84群を同一円周上に回転可能に配置するキャリヤ86とを備えている。リングギヤ85は、その内周面の内歯を複数の遊星ギヤ84に噛み合わせた状態で主動軸70に同心状に配置され、且つ、キャリヤ86の外側面から突出した駆動軸72に回転可能に被嵌されている。また、主動軸70のうち遊星ギヤ機構81より上流側には、カウンタ発電ギヤ82を固着している。
一方、モータジェネレータ74から突出した入出力軸87は、主動軸70及び駆動軸72と平行状に延びていて、入出力軸87に切換クラッチ機構73が関連付けて設けられている。すなわち、入出力軸87には、カウンタ発電ギヤ82に噛み合う強制発電ギヤ88と、リングギヤ85の外周面に形成された外歯に噛み合うアシストギヤ89とが回転可能に軸支されている。また、入出力軸87には、クラッチシリンダ77によって継断動作可能な強制発電クラッチ90及びアシストクラッチ91も設けられている。クラッチシリンダ77のロッド側には、シフトアーム92を介してクラッチシフタ93が連結されている。クラッチシリンダ77の駆動に基づくクラッチシフタ93の動作で強制発電クラッチ90又はアシストクラッチ91を動力接続状態にすることによって、入出力軸87に強制発電ギヤ88又はアシストギヤ89が一体回転するように連結される。
強制発電クラッチ90を動力接続状態にした場合は、主動軸70の回転動力が、カウンタ発電ギヤ82及び強制発電ギヤ88を介して入出力軸87に分岐して伝達され、かかる入出力軸87の回転動力によってモータジェネレータ74が発電機として機能し、インバータコンバータ75経由でバッテリ76が充電される。動力配分機構71ひいては駆動軸72には、主動軸70の回転動力(エンジン1の駆動力)が伝達される。この場合、エンジン1には、コンプレッサ7を駆動させる負荷と、モータジェネレータ74の駆動にてバッテリ76を充電する負荷とがかかることになる。
アシストクラッチ91を動力接続状態にした場合は通常、エンジン1の駆動による主動軸70の回転動力が動力配分機構71を介して駆動軸72に伝達される。ここで、コンプレッサ7の駆動負荷に対して主動軸70の回転動力(エンジン負荷)が大きく、余分なエンジン負荷が存在する場合は、かかる余分な回転動力がサンギヤ83及び遊星ギヤ84群を介してリングギヤ85に伝達され、リングギヤ85からアシストギヤ89を経由して入出力軸87に伝達される。そして、入出力軸87の回転動力によってモータジェネレータ74が発電機として機能し、インバータコンバータ75経由でバッテリ76が充電されることになる。
また、アシストクラッチ91を動力接続状態にし、バッテリ76の電力を利用してモータジェネレータ74を電動機として駆動させると、エンジン1の駆動による主動軸70の回転動力とは別に、モータジェネレータ74の駆動にて入出力軸87が回転駆動し、入出力軸87の回転動力がアシストギヤ89からリングギヤ85に伝達される。従って、動力配分機構71に、主動軸70の回転動力と入出力軸87の回転動力とが伝達され、これらの合成動力が駆動軸72に伝達される。例えばコールドスタート(低温始動)時の低温噴射モードから通常噴射モードへの切換の際(エンジン回転速度の急低下時)には、モータ
ジェネレータ74を電動機として駆動させ、駆動力の不足分が補填される(エンジン1をアシストする)。
強制発電クラッチ90及びアシストクラッチ91を動力遮断状態(中立)にすれば、モータジェネレータ74は動力の授受に寄与せず、動力配分機構71ひいては駆動軸72は、主動軸70の回転動力(エンジン1の駆動力)だけで回転駆動する。エンジン1が駆動している間は、オルタネータ24の発電機作用によってコンバータ78経由で常時バッテリ76が充電される。
次に、図9を参照しながら、コモンレール式燃料噴射装置49を作動させる構造の詳細について説明する。図9に示す如く、エンジン1における各気筒の燃料噴射バルブ50を作動させるECU101を備えている。詳細は図示しないが、ECU101は、各種演算処理や制御を実行するCPUのほか、制御プログラムやデータを記憶させるEEPROMやフラッシュメモリ等の記憶手段、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるRAM、入出力インターフェイス等を備えており、エンジン1又はその近傍に配置されている。
ECU101の入力側には、少なくともコモンレール43内の燃料圧力を検出するレール圧センサ102と、燃料供給ポンプ42を回転又は停止させる電磁クラッチ103と、エンジン1の回転速度(主動軸70のカムシャフト位置)を検出するエンジン回転速度センサ104と、インジェクタ41の燃料噴射回数(1行程の燃料噴射期間中の燃料噴射回数)を検出及び設定する噴射設定器105と、スロットルレバー又はアクセルペダルといったアクセル操作具(図示省略)の操作位置を検出するスロットル位置センサ106と、吸気マニホールド3の吸気温度を検出する吸気温度センサ108と、エンジン1の冷却水温度を検出する冷却水温度センサ109と、上流側排気圧センサ111a及び下流側排気圧センサ111bからなる差圧センサ111と、バッテリ残量SCを検出する残量検出器79とが接続されている。
ECU101の出力側には、少なくとも4気筒分の各燃料噴射バルブ50の電磁ソレノイドがそれぞれ接続されている。すなわち、ECU101からの指令に基づき、コモンレール43に蓄えた高圧燃料が燃料噴射圧力、噴射時期及び噴射期間等を制御しながら、1行程中に複数回に分けて燃料噴射バルブ50から噴射されることによって、窒素酸化物(NOx)の発生を抑えると共に、スートや二酸化炭素等の発生も低減した完全燃焼を実行し、燃費を向上させるように構成されている。ECU101の出力側には、切換クラッチ機構73のクラッチシリンダ77に作動油を供給するための切換クラッチ電磁弁110、インバータコンバータ75及びコンバータ78も接続されている。
差圧センサ111は、詰まり推定部材の一例として、排気ガス浄化装置31内の詰まり状態を推定するものであり、実施形態では、排気ガス浄化装置31内のスートフィルタを挟んだ上流側及び下流側間の圧力差を検出する。差圧センサ111で検出した圧力差ΔPから排気ガス浄化装置31内の粒子状物質堆積量を推定し、当該推定結果が所定値(例えば8g/l)以上であれば、例えばコモンレール式燃料噴射装置49でポスト噴射を実行し排気ガス浄化装置31内に燃料を供給して燃焼させることによって、排気ガス浄化装置31の再生制御が実行される。エンジン1の駆動状態(回転速度や負荷の状態)に拘らず、排気ガス温度を再生可能温度以上に上昇させて粒子状物質を酸化除去できる。排気ガス浄化装置31の粒子状物質捕集能力を強制的に回復できる。実施形態では、排気ガス浄化装置31の排気上流側に上流側排気圧センサ111aを装着し、排気ガス浄化装置31の排気下流側に下流側排気圧センサ111bを装着している。
ECU101は、詰まり推定部材の一例として、エンジン7の駆動履歴(累積運転時間といってもよい)を随時計測する。エンジン7の駆動履歴が予め設定された所定値(例え
ば100時間程度)を経過した場合に、例えばコモンレール式燃料噴射装置49でポスト噴射を実行し排気ガス浄化装置31内に燃料を供給して燃焼させることによって、排気ガス浄化装置31の再生制御が実行される(再生噴射モード)。前記所定値は例えばECU101に設けられた記憶手段(フラッシュメモリやEEPROM)に予め記憶させている。このため、エンジン1の駆動履歴を目安にするという簡単な制御で、排気ガス浄化装置31の粒子状物質捕集能力を回復できる。
コモンレール式燃料噴射装置49は複数の噴射制御モードを実行可能である。実施形態の噴射制御モードとしては、コールドスタート(低温始動)時に燃料噴射量を増量させる低温噴射モードと、暖機運転完了後の通常噴射モードと、ポスト噴射によって排気ガス浄化装置31内に燃料を供給して燃焼させ、排気ガス浄化装置31を再生させる再生噴射モードとの3種類がある。これら各モードはECU101の指令に基づき実行される。
ECU101の記憶手段には、エンジン1の回転速度NとトルクT(負荷)との関係を示す出力特性マップM(図11参照)を予め記憶させている。また、記憶手段には、噴射制御モード切換時のエンジン1の駆動変化とモータジェネレータ74の補助駆動力との関係を示す補助駆動力パターンとして、基準アシスト量マップM1及びアシスト補正率マップM2(図12参照)も予め記憶させている。これら各マップM,M1,M2は実験等で求められる。基準アシスト量マップM1及びアシスト補正率マップM2は、コモンレール式燃料噴射装置49での噴射制御モードの切換時に実行されるアシスト制御の際に用いられる。なお、基準アシスト量マップM1等の補助駆動力パターンとしては、実施形態のマップ形式に限らず、例えば関数表形式のものでもよい。
図11に示す出力特性マップMでは、回転速度Nを横軸に、トルクTを縦軸に採っている。出力特性マップMは、上向き凸に描かれた実線Tmxで囲まれた領域である。実線Tmxは、各回転速度Nに対する最大トルクを表したエンジン1固有の最大トルクカーブである。図11に示すように、出力特性マップMは、排気ガス温度が再生境界温度(約300℃程度)の場合での回転速度NとトルクTとの関係を表した境界ラインBLによって上下に分断される。境界ラインBLを挟んで上側の領域は、排気ガス浄化装置31内に堆積した粒子状物質を酸化除去できる(酸化触媒53の酸化作用が働く)再生可能領域であり、下側の領域は、粒子状物質が酸化除去されずに排気ガス浄化装置31内に堆積する再生不能領域である。
実施形態では、エンジン回転速度Nを2種類の回転速度N#1,N#2だけに限定するように、ECU101によってエンジン1の駆動が制御される。ECU101には、エンジン1の回転速度Nを低速側の中間回転速度N#1及び高速側の定格回転速度N#2のうちいずれかに維持するように初期設定している。コンテナ52で冷凍貨物を輸送する場合、コンテナ52内の温度が保冷温度に降下するまでの間は、エンジン1を定格回転速度N#2にて高速一定回転させ、コンテナ52内の温度を短時間で保冷温度まで降下させる(コールドスタート時の低温噴射モード)。そして、コンテナ52内の温度が保冷温度まで降下したとき、エンジン1を中間回転速度N#1にて低速一定回転させ、貨物輸送用コンテナ52内の温度を保冷温度に維持する(通常噴射モード)ように構成している。
ECU101は基本的に、エンジン回転速度センサ104で検出される回転速度Nと各インジェクタ41の噴射圧・噴射期間とからトルクTを求めて、トルクTと出力特性マップMとを用いて目標燃料噴射量を演算し、演算結果に基づきコモンレール式燃料噴射装置49を作動させるという燃料噴射制御を実行する。ここで、燃料噴射量は、各燃料噴射バルブ50の開弁期間を調節して、各インジェクタ41への噴射期間を変更することによって調節される。
また、ECU101は、コモンレール式燃料噴射装置49での噴射制御モードの切換時に、バッテリ76の電力でモータジェネレータ74を電動機として駆動させ、モータジェネレータ74の補助駆動力によってエンジン1の駆動力を補助するアシスト制御を実行する。アシスト制御時におけるモータジェネレータ74の補助駆動力量は、基準アシスト量マップM1及びアシスト補正率マップM2から求められる。
図12(a)に示すように、基準アシスト量マップM1では、エンジン1の出力特性のうちエンジン負荷率LFの目標値LFtと実測値LFiとの差ΔLF(=LFt−LFi、以後、負荷率差ΔLFという)を横軸に、モータジェネレータ74の基準アシスト量Atを縦軸に採っている。ここで、エンジン負荷率LFは、任意のエンジン回転速度Nでの最大トルクT(最大エンジン負荷)に対する比率のことをいう。負荷率差ΔLFと基準アシスト量Atとの関係は、原点を通り且つ正の傾きを持つ一次直線で表される。すなわち、負荷率差ΔLFと基準アシスト量Atとは、負荷率差ΔLFが大きいほど基準アシスト量Atが増大するという関係になっている。
なお、基準アシスト量マップM1の横軸は、負荷率差ΔLFに限らず、エンジン回転速度の目標値と実測値の差や、燃料噴射量の目標値と実測値との差等であってもよい。また、基準アシスト量マップM1に替えて、エンジン負荷とエンジン回転速度との関係を示す負荷マップから、基準アシスト量Atを算出するようにしてもよい。
図12(b)に示すアシスト補正率マップM2は、基準アシスト量Atに乗ずるアシスト補正率α(補正係数)を求めるためのものである。アシスト制御に際してECU101は、基準アシスト量Atにアシスト補正率αを乗じて得られた補正アシスト量Ac(=α×At)を出力するようにモータジェネレータ74を電動機として駆動させる。図12(b)のアシスト補正率マップM2では、残量検出器79で検出されるバッテリ残量SCを横軸に、アシスト補正率αを縦軸に採っている。バッテリ残量SCとアシスト補正率αとの関係は、切片が負の値で且つ正の傾きを持つ一次直線で表される。つまり、バッテリ残量SCが閾値SCl(所定値)以下であればアシスト補正率αがゼロとなるような正の傾きを持つ一次直線で表される。バッテリ残量SCが多いほどアシスト補正率αが増大するという関係になっている。従って、バッテリ残量SCが閾値SCl以下であれば補正アシスト量Acはゼロとなり、アシスト制御は実行されない。バッテリ残量SC(バッテリ76の充電状態)に配慮しながらアシスト制御を実行でき、アシスト制御起因のバッテリ上がりを防止できる。
次に、図13のフローチャートを参照しながら、コモンレール式燃料噴射装置49での噴射制御モードの切換時に実行されるアシスト制御の態様について説明する。ECU101は前述の通り、バッテリ76の電力でモータジェネレータ74を電動機として駆動させ、モータジェネレータ74の補助駆動力によってエンジン1の駆動力を補助するアシスト制御を実行する。
この場合、図13に示すように、ECU101は、現在実行中の噴射制御モードが何であるか(低温、通常、再生噴射モードのいずれであるか)を判別する(S01)。低温噴射モード又は再生噴射モードを実行中の場合に(S01:低温又は再生)、その後通常噴射モードに切り換わったら(S02:YES)、エンジン回転速度Nと各インジェクタ41の噴射圧・噴射期間とを読み込み(S03)、これらから目標トルクTtを求め(S04)、エンジン回転速度N、目標トルクTt及び出力特性マップMとから、エンジン負荷率LFの目標値LFtを算出する(S05)。そして、燃料噴射直後のレール圧センサ102の検出値(コモンレール43の圧力降下量)を読み込んで(S06)、実測燃料噴射量ひいては実測トルクTiを求め(S07)、エンジン回転速度N、実測トルクTi及び出力特性マップMとから、エンジン負荷率LFの実測値LFiを算出する(S08)。そ
れから、目標値LFtと実測値LFiとから負荷率差ΔLFを算出する(S09)。
次いで、基準アシスト量マップM1及びアシスト補正率マップM2と、残量検出器79で検出したバッテリ残量SCを読み込んで(S10)、これら両マップM1,M2、負荷率ΔLF及びバッテリ残量SCから、基準アシスト量Atとアシスト補正率αとを求め(S11)、基準アシスト量Atとアシスト補正率αとから補正アシスト量Ac(=α×At)を算出する(S12)。そして、クラッチシリンダ77を作動させてアシストクラッチ91を動力接続状態とし(S13)、補正アシスト量Ac(=α×At)を出力するようにモータジェネレータ74を電動機として駆動させる(S14)。このため、エンジン1の駆動力の低下分をモータジェネレータ74の補助駆動力によって補填でき、通常噴射モードへの切換に伴うコンプレッサ7の回転速度の急激な低下を防止して、コンプレッサ7を安定的に稼働できる。その後、冷却水温度センサ109の検出値を読み込んで、エンジン1の冷却水温度が暖気運転完了を示す温度に達しているか、通常噴射モードに切り換わってから所定時間が経過していれば(S15:YES)、クラッチシリンダ77を作動させてアシストクラッチ91を動力遮断状態とし、モータジェネレータ74の駆動を停止させるのである(S16)。
上記の記載並びに図10〜図13から明らかなように、エンジン1と、エンジン1に燃料を噴射する燃料噴射装置49と、モータジェネレータ74と、モータジェネレータ74に繋がるバッテリ76とを備え、燃料噴射装置49が複数の噴射制御モードを実行可能であるエンジン装置において、燃料噴射装置49での噴射制御モードの切換に伴ってバッテリ76の電力でモータジェネレータ74を(電動機として)駆動させ、モータジェネレータ74の補助駆動力によってエンジン1の駆動力を補助するように構成しているから、噴射制御モードの切換に連動して、エンジン1の駆動力の低下分をモータジェネレータ74の補助駆動力によって補填できる。従って、エンジン1で駆動する駆動対象(例えばコンプレッサ7等)の回転速度変動を防止でき、駆動対象(例えばコンプレッサ7等)を安定的に稼働できる。噴射制御モードの切換によるエンジン1の駆動状態の遷移をスムーズに行える。
また、噴射制御モード切換時のエンジン1の駆動変化と補助駆動力との関係を示す補助駆動力パターンである基準アシスト量マップM1及びアシスト補正率マップM2に基づき、モータジェネレータ74を(電動機として)駆動させるから、噴射制御モードの切換の際に、基準アシスト量マップM1及びアシスト補正率マップM2を用いてエンジン1の駆動状態の遷移をより的確に実行できる。
更に、バッテリ残量SCに対応した補正係数であるアシスト補正率αを用いて補助駆動力を補正し、前記補正した補助駆動力を出力するようにモータジェネレータ74を(電動機として)駆動させ、アシスト補正率αはバッテリ残量SCに比例し、バッテリ残量SCが所定値SCl以下であればアシスト補正率αをゼロに設定するから、バッテリ残量SCを考慮した上で、基準アシスト量マップM1及びアシスト補正率マップM2を用いてエンジン1の駆動状態の遷移を効率よく実行できる。
次に、図14及び図15のフローチャートを参照しながら、失火防止のためのモータジェネレータ切換制御の態様について説明する。実施形態のECU101は、基準変動幅W0を超えてエンジン出力(この場合はエンジン回転速度N)の変動する変動時間ΔTが判定時間ΔT0以上であれば、モータジェネレータ74の駆動を開始するモータジェネレータ切換制御を実行する。モータジェネレータ切換制御では、モータジェネレータ74の駆動中において、エンジン回転速度Nが目標変動幅Wtより上側の値になるとモータジェネレータ74を発電機として駆動させ、エンジン回転速度Nが目標変動幅Wtよりも下側の値になるとモータジェネレータ74を電動機として駆動させる。変動時間ΔT、判定時間
ΔT0、基準変動幅W0及び目標変動幅Wtは、ECU101の記憶手段に予め記憶させている。
この場合、図15に示すように、ECU101は、エンジン回転速度Nを適宜時間毎に読み込み(S21)、当該エンジン回転速度Nが基準変動幅W0の上限値又は下限値を超えていれば(S22:YES)、ECU101に設けたタイマーによって変動時間ΔTのカウントを開始する(S23)。次いで、判定時間ΔT0以上の変動時間ΔTが経過しても、その後に読み込んだエンジン回転速度Nが基準変動幅W0の上限値又は下限値を超えていれば(S24:YES)、エンジン回転速度Nが目標変動幅Wtよりも上側若しくは下側の値かを判別する(S25)。ここで、目標変動幅Wtは基準変動幅W0と同じであってもよいし異なっていてもよい。
エンジン回転速度Nが目標変動幅Wtよりも上側の値であれば(S25:上側)、クラッチシリンダ77を作動させて強制発電クラッチ90を動力接続状態とし、モータジェネレータ74を発電機として駆動させる(S26)、そうすると、モータジェネレータ74の発電機作用によってインバータコンバータ75経由でバッテリ76が充電される。モータジェネレータ74の発電機作用による負荷がエンジン1に作用し、エンジン回転速度Nを低下させる(安定化させる)。その結果、図14(a)における上向き凸のハッチング領域が目標変動幅Wtの上側の線を下向きに超えて、エンジン回転速度Nが目標変動幅Wt内に収まることになる(図14(b)参照)。
エンジン回転速度Nが目標変動幅Wtよりも下側の値であれば(S25:下側)、クラッチシリンダ77を作動させてアシストクラッチ91を動力接続状態とし、バッテリ76の電力でモータジェネレータ74を電動機として駆動させる(S27)、そうすると、エンジン1の駆動力の低下分がモータジェネレータ74の補助駆動力によって補填され、エンジン1で駆動するコンプレッサ7の回転速度変動を防止でき、コンプレッサ7を安定的に稼働できる。図14(a)における下向き凸のハッチング領域が目標変動幅Wtの下側の線を上向きに超えて、エンジン回転速度Nが目標変動幅Wt内に収まることになる(図14(b)参照)。
その後再び、エンジン回転速度Nを適宜時間毎に読み込み(S28)、当該エンジン回転速度Nが目標変動幅Wt内にあれば(S29:YES)、ECU101に設けたタイマーによって変動時間ΔTのカウントを開始する(S30)。次いで、復帰時間ΔT1以上の変動時間が経過しても、その後に読み込んだエンジン回転速度Nが目標変動幅Wt内にあれば(S31:YES)、強制発電クラッチ90及びアシストクラッチ91を動力遮断状態(中立)にし、エンジン1の駆動力だけでコンプレッサ7を回転駆動させ、モータジェネレータ切換制御を終了するのである。なお、エンジン回転速度Nが目標変動幅Wt内に収まったか否かは、エンジン回転速度Nの変化からだけでなく、エンジン1の冷却水温度、雰囲気温度と冷却水温度とのマップ、エンジン負荷の変化又は燃料噴射量の変化から判別するようにしてもよい。
上記の記載並びに図10、図14及び図15から明らかなように、エンジン1と、発電機及び電動機として機能するモータジェネレータ74と、モータジェネレータ74に繋がるバッテリ76とを備え、バッテリ76の電力によるモータジェネレータ74の電動機作用でエンジン1の駆動力を補助可能であり、且つ、エンジン1の駆動力によるモータジェネレータ74の発電機作用でバッテリ76に充電可能に構成しているエンジン装置において、基準変動幅W0を超えてエンジン出力(エンジン回転速度N)の変動する変動時間ΔTが判定時間ΔT0以上であれば、モータジェネレータ74の駆動を開始するように構成しているから、コールドスタート時や標高の高い高地での駆動時、又は低セタン価の燃料使用時に、燃焼状態が不安定になったとしても、モータジェネレータ74の駆動力を補助
駆動力として付与でき、エンジン1で駆動するコンプレッサ7の回転速度変動を防止でき、ひいてはエンジン1の駆動の安定化を図れる。このため、失火を未然に防いで、排気エミッションの悪化、燃料消費量の悪化及び燃焼音の増大といった様々な不具合を確実に防止できる。
また、モータジェネレータ74の駆動中において、エンジン出力(エンジン回転速度N)が目標変動幅Wtよりも上側の値になるとモータジェネレータ74を発電機として駆動させ、エンジン出力(エンジン回転速度N)が目標変動幅Wtよりも下側の値になるとモータジェネレータ74を電動機として駆動させるように構成しているから、運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリ76等に回収する回生と、電気エネルギーを運動エネルギーに変換してエンジン1の駆動を補助するアシストとを、前記エンジン1の出力状態に応じてスムーズに切換できる。
次に、図16及び図17のフローチャートを参照しながら、失火防止のためのアシスト及び進角化制御の態様について説明する。エンジン1の失火は一般に、エンジン負荷(トルクT)が低く(図11の再生不能領域にあり)、エンジン1の冷却水温度が低く、コモンレール式燃料噴射装置49の噴射時期の遅い方が起こり易い。このため、単純な燃料噴射量の最適化だけでは確実に失火を防止することが困難である。そこで、実施形態のECU101には、エンジン1のトルクT(負荷)とコモンレール式燃料噴射装置49での噴射時期FITとの関係を示す失火防止マップM3(図16参照)を予め記憶させている。
図16に示すように、失火防止マップM3では、エンジン1のトルクT(負荷)を横軸に、コモンレール式燃料噴射装置49での噴射時期FITを縦軸に採っている。失火防止マップM3の実線FLは、失火境界でのトルクTと噴射時期FITとの関係を表した失火境界ラインである。失火防止マップM3は失火境界ラインFLで上下に分断される。失火境界ラインFLを挟んで上側の領域は失火が発生しない安定領域であり、下側の領域は失火が発生し易い不安定領域である。
実施形態のECU101は、エンジン負荷(トルクT)が所定値以下で且つコモンレール式燃料噴射装置49の噴射時期FITが所定時期より遅い場合、すなわち、トルクTと噴射時期FITとの関係に関するエンジン運転点Qが失火防止マップM3において失火境界ラインFLを挟んで下側の領域にある場合、モータジェネレータ74を電動機として駆動させると共に噴射時期を進角させ、エンジン運転点Qを失火境界ラインFLの上側の領域に移動させるアシスト及び進角化制御を実行する。
この場合、図17に示すように、ECU101は、エンジン回転速度Nと各インジェクタ41の噴射圧・噴射期間・噴射時期FIL1とを読み込み(S41)、これらからトルクT1を求める(S42)。そして、トルクT1と噴射時期FIL1と失火防止マップM3とから現時点のエンジン運転点Q1を算出する(S43)。次いで、現時点のエンジン運転点Q1が失火境界ラインFL上かそれよりも下側の領域にあれば(S44:下側)、クラッチシリンダ77を作動させてアシストクラッチ91を動力接続状態とし、バッテリ76の電力でモータジェネレータ74を電動機として駆動させ、エンジン1の駆動力にモータジェネレータ74の補助駆動力を補填して、コンプレッサ7を駆動させるトルクTをT1からT2にまで軽減する(S45)。そして、コモンレール式燃料噴射装置49での噴射時期FILをFIL1からFIL2にまで進角させ、エンジン運転点QをQ1からQ2にまで、すなわち失火境界ラインFLの上側の領域に移行させるのである(S46)。このように制御すると、モータジェネレータ74の電動機作用とコモンレール式燃料噴射装置49の噴射時期FILの進角化とによって、エンジン1を失火しない条件下で安定的に稼働できる。
上記の記載並びに図10、図16及び図17から明らかなように、エンジン1と、エンジン1に燃料を噴射するコモンレール式燃料噴射装置49と、発電機及び電動機として機能するモータジェネレータ74と、モータジェネレータ74に繋がるバッテリ76とを備え、バッテリ76の電力によるモータジェネレータ74の電動機作用でエンジン1の駆動力を補助可能であり、且つ、エンジン1の駆動力によるモータジェネレータ74の発電機作用でバッテリ76に充電可能に構成しているエンジン装置において、エンジン負荷(トルクT)が所定値以下で且つコモンレール式燃料噴射装置49の噴射時期FILが所定時期より遅い場合は、モータジェネレータ74を電動機として駆動させると共に噴射時期FILを進角させるように構成しているから、モータジェネレータ74の電動機作用とコモンレール式燃料噴射装置49の噴射時期FILの進角化とによって、エンジン1を失火しない条件下で安定的に稼働できる。
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば燃料噴射装置49はコモンレール式に限らず、電子ガバナ式であってもよい。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。