以下に、本願発明を具体化した実施形態を、作業車両としてのバックホウに搭載されるハイブリッド式エンジン装置に適用した場合の図面に基づいて説明する。
(1).バックホウの概要
図1を参照しながら、バックホウ1の概要について説明する。作業車両の一例であるバックホウ1は、左右一対の走行クローラ3(図1では左側のみ示す)を有するクローラ式の走行装置2と、走行装置2上に設けられた旋回台4(機体)とを備えている。旋回台4は、旋回モータ9(図2参照)にて、360°の全方位にわたって水平旋回可能に構成されている。走行装置2の前部には、昇降回動可能に装着された排土板5と、排土板5を昇降回動させる排土板シリンダ26(図2参照)とを備えている。
旋回台4には、操縦部としてのキャビン6及びエンジン7等が搭載されている。旋回台4の前部には、掘削作業のためのブーム11、アーム12及びバケット13を有する作業部10が設けられている。図示は省略するが、キャビン6の内部には、オペレータが着座する操縦座席、エンジン7の出力回転速度を設定保持するスロットルレバー、旋回操作レバー、アーム操作レバー、バケット操作スイッチ及びブーム操作レバー等が配置されている。
作業部10の構成要素であるブーム11は、先端側を前向きに突き出して側面視く字状に屈曲した形状に形成されている。ブーム11の基端部は、旋回台4の前部に取り付けられたブームブラケット14に、横向きのブーム軸15を回動中心として首振り回動可能に枢着されている。ブーム11の内面(前面)側には、これを上下に首振り回動させるための片ロッド複動形のブームシリンダ16が配置されている。ブームシリンダ16のシリンダ側端部は、ブームブラケット14の前端部に回動可能に枢支されている。ブームシリンダ16のロッド側端部は、ブーム11における屈曲部の前面側(凹み側)に固定された前ブラケット17に回動可能に枢支されている。
ブーム11の先端部には、長手角筒状のアーム12の基端部が、横向きのアーム軸19を回動中心として首振り回動可能に枢着されている。ブーム11の上面前部側には、アーム12を首振り回動させるための片ロッド複動形のアームシリンダ20が配置されている。アームシリンダ20のシリンダ側端部は、ブーム11における屈曲部の背面側(突出側)に固定された後ブラケット18に回動可能に枢支されている。アームシリンダ20のロッド側端部は、アーム12の基端側外面(前面)に固着されたアームブラケット21に回動可能に枢支されている。
アーム12の先端部には、掘削用アタッチメントとしてのバケット13が、横向きのバケット軸22を中心にして掬い込み回動可能に枢着されている。アーム12の外面(前面)側には、バケット13を掬い込み回動させるための片ロッド複動形のバケットシリンダ23が配置されている。バケットシリンダ23のシリンダ側端部は、アームブラケット21に回動可能に枢支されている。バケットシリンダ23のロッド側端部は、連結リンク24及び中継ロッド25を介してバケット13に回動可能に枢支されている。
旋回台4とブームブラケット14との間には、作業部10を左右回動させるためのスイングシリンダ27(図2参照)が設けられている。各走行クローラ3を周回駆動させる駆動スプロケット28には、それぞれ走行油圧モータ29が連動連結されている。このため、左右の走行クローラ3は、それぞれ独立して前進回転及び後進回転可能になっている。すなわち、一方の走行油圧モータ29の回転速度を他方の走行油圧モータ29の回転速度より速めることによって、バックホウ1は左又は右に旋回し、両走行油圧モータ29を互いに逆向きに同じ回転速度で駆動させることによって、バックホウ1は信地旋回(スピンターン)することになる。
(2).バックホウの油圧回路構造
次に、図2を参照しながら、バックホウ1の油圧回路構造について説明する。図2に示すバックホウ1の油圧回路40においては、油圧アクチュエータを構成する排土板シリンダ26、バケットシリンダ23、アームシリンダ20、旋回モータ9、両走行油圧モータ29、並びにスイングシリンダ27が、各々ロードセンシングバルブからなる動作切換弁41,42,43,44,45,46,47を介して、可変容量形の第1油圧ポンプ48に接続されている。第1油圧ポンプ48の斜板48aに連結された第1調整シリンダ49の伸縮動作にて、斜板48aの傾斜角度を変更することにより、第1油圧ポンプ48からの作動油の吐出量を変更するように構成されている。第1調整シリンダ49は、第1油圧ポンプ48の吐出圧を検知して各油圧アクチュエータ9,20,23,26,27,29に必要な作動油量に応じて伸縮作動するように構成されている。このため、各油圧アクチュエータ9,20,23,26,27,29には必要な作動油量が適宜供給される。
また、同じく油圧アクチュエータの一例であるブームシリンダ16は、切換弁機構50を介して、可変容量形の第2油圧ポンプ51に接続されている。第2油圧ポンプ51の斜板51aに連結された第2調整シリンダ52の伸縮動作にて、斜板51aの傾斜角度を変更することにより、第2油圧ポンプ51からの作動油の吐出量を変更するように構成されている。第2調整シリンダ52は、切換弁機構50の一次側及び二次側の圧力を検知して、ブームシリンダ16に掛かる駆動負荷の大小に拘らず、第2油圧ポンプ51から略一定の作動油量をブームシリンダ16に供給保持するように伸縮作動する構成になっている。
第2油圧ポンプ51の吐出側とブームシリンダ16のロッド室側との間は、ロッド側配管53にて連通接続されている。ブームシリンダ16のボトム室側と、第2油圧ポンプ51の吸入側との間は、ボトム側配管54にて連通接続されている。すなわち、ブームシリンダ16と第2油圧ポンプ51とは、ロッド側配管53及びボトム側配管54にて閉ループ状に接続されている。ロッド側配管53とボトム側配管54との間には切換弁機構50を介在させている。かかる構成によって、ブームシリンダ16を縮小させた場合に、作動油の戻りを第1油圧ポンプ48の吸入側に直接導入してブーム運動エネルギーの回生を行い、エネルギー損失をできるだけ小さいものにしている。
ロッド側配管53及びボトム側配管54において、ブームシリンダ16と切換弁機構50との間は、余剰油排出弁55を介して作動油タンク56に接続されている。余剰油排出弁55は、方向切換弁50は、ブームシリンダ16における両油室の受圧面積差等に起因して、一方の油室から流出する作動油量が他方の油室に流入する作動油量より多い場合の余剰分を排出するためのものである。また、ブームシリンダ16を伸長させる場合は、吸入すべき作動油量が不足するときがあるので、ボトム側配管54のうち第2油圧ポンプ51と切換弁機構50との間に、チェック弁57を介して作動油タンク56を連通接続させ、第2油圧ポンプ51の自吸力にて不足分の作動油を補給可能にしている。
エンジン7から突出した出力軸31にはフライホイル32を直結させており、フライホイル32には動力継断用の主クラッチ33を介して主動軸60が連結されている(図9参照)。主動軸60には、遊星ギヤ機構81からなる動力配分機構61を介して、主動軸60と直列状に延びるポンプ軸62が動力伝達可能に連結されている。ポンプ軸62は第1及び第2油圧ポンプ48,51の両方を貫通している。第1及び第2油圧ポンプ48,51はポンプ軸62の回転にて駆動するように構成されている。すなわち、第1及び第2油圧ポンプ48,51を駆動させる回転軸(ポンプ軸62)は共通する1本の軸からなっている。動力配分機構61には、これに対する動力伝達方向を切り換えるための切換クラッチ機構63を介して、発電機及び電動機として機能するモータジェネレータ64が動力伝達可能に連結されている。モータジェネレータ64は、インバータコンバータ65を介して、蓄電部材としてのバッテリ66に電気的に接続されている。つまり、実施形態のバックホウ1は、発電機及び電動機として機能するモータジェネレータ63と、油圧アクチュエータ9,16,20,23,26,27,29を駆動させる油圧ポンプ48,51とを、エンジン7に動力伝達可能に連結したハイブリッド式エンジン装置を備えている。
(3).エンジン及びその周辺の構造
次に、図3〜図9を参照しながら、エンジン及びその周辺の構造を説明する。エンジン7は4気筒型のディーゼルエンジンであり、上面にシリンダヘッド72が締結されたシリンダブロック75を備えている。シリンダヘッド72の一側面には吸気マニホールド73が接続されており、他側面には排気マニホールド71が接続されている。すなわち、エンジン7において出力軸31に沿う両側面に、吸気マニホールド73と排気マニホールド71とが振り分けて配置されている。シリンダヘッド72の上面にヘッドカバー78が配置されている。エンジン7において出力軸31と交差する一側面、具体的にはシリンダブロック75の一側面に冷却ファン79が設けられている。
シリンダブロック75の他側面には前述したフライホイル32が設けられている。シリンダブロック75の他側面にフライホイルハウジング30が設けられている。フライホイルハウジング30内にフライホイル32が配置されている。出力軸31にフライホイル32を軸支している。作業車両の作動部に出力軸31を介してエンジン71の駆動力を取り出すように構成している。また、シリンダブロック75の下面にはオイルパン132が配置されている。オイルパン132内の潤滑油は、シリンダブロック75の側面に配置されたオイルフィルタ133を介して、エンジン7の各潤滑部に供給される。
シリンダブロック75の側面のうち吸気マニホールド73の下方には、エンジン7の各気筒に燃料を供給するコモンレールシステム117が設けられている。吸気マニホールド73の吸気上流側にEGR装置140(排気ガス再循環装置)を介してエアクリーナ(図示省略)が接続されている。
図5、図6及び図8に示すように、エンジン7における4気筒分の各インジェクタ115に、コモンレールシステム117及び燃料供給ポンプ116を介して、燃料タンク118が接続される。各インジェクタ115は電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ119を備えている。コモンレールシステム117は円筒状のコモンレール120を備えている。燃料供給ポンプ116の吸入側には、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料タンク118が接続されている。燃料タンク118内の燃料が燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料供給ポンプ116に吸い込まれる。実施形態の燃料供給ポンプ116は吸気マニホールド73の近傍に配置されている。一方、燃料供給ポンプ116の吐出側には、高圧管123を介してコモンレール120が接続されている。また、コモンレール120には、4本の燃料噴射管126を介して4気筒分の各インジェクタ115がそれぞれ接続されている。
上記の構成において、燃料タンク118の燃料は燃料供給ポンプ116によってコモンレール120に圧送され、高圧の燃料がコモンレール120に蓄えられる。各燃料噴射バルブ119がそれぞれ開閉制御されることによって、コモンレール120内の高圧の燃料が各インジェクタ115からエンジン7の各気筒に噴射される。すなわち、各燃料噴射バルブ119を電子制御することによって、各インジェクタ115から供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。従って、エンジン7の窒素酸化物(NOx)を低減できると共に、エンジン7の騒音振動を低減できる。
なお、図8に示すように、燃料タンク118には、燃料戻り管129を介して燃料供給ポンプ116が接続されている。円筒状のコモンレール120の長手方向の端部に、コモンレール120内の燃料の圧力を制限する戻り管コネクタ130を介して、コモンレール戻り管131が接続されている。すなわち、燃料供給ポンプ116の余剰燃料とコモンレール120の余剰燃料とが、燃料戻り管129及びコモンレール戻り管131を介して、燃料タンク118に回収されることになる。
図5及び図9に示すように、フライホイルハウジング30には、発電機及び電動機として機能するモータジェネレータ64が取り付けられている。詳細は後述するが、モータジェネレータ64から突出した入出力軸87には、フライホイル32のホイルギヤ82に噛み合う強制発電ギヤ88が回転可能に軸支されている。そして、モータジェネレータ64は、切換クラッチ機構63を介して動力配分機構61に動力伝達可能に連結されていると共に、インバータコンバータ65を介して、蓄電部材としてのバッテリ66に電気的に接続されている(図2参照)。バッテリ66には残量検出器69を接続している。残量検出器69は、バッテリ残量を経時的に検出しながら、検出結果をECU101(詳細は後述する)に出力する。なお、モータジェネレータ64は、エンジン始動用のスタータとしての機能も兼ね備えている。エンジン7を始動させる際は、モータジェネレータ64の駆動力でフライホイル32のホイルギヤ82を回転させることによって、出力軸31が回転開始する(いわゆるクランキングが実行される)。
シリンダヘッド75において冷却ファン79のある方の側面には、冷却水ポンプ135が冷却ファン9のファン軸と同軸状に配置されている。エンジン7において吸気マニホールド73のある方の側面には、エンジン7の駆動力で発電する発電機としてのオルタネータ137が設けられている。出力軸31の回転によって、冷却ファン駆動用Vベルト136を介して、冷却ファン79と共に冷却水ポンプ135及びオルタネータ137が駆動する。作業車両に搭載されるラジエータ(図示省略)内の冷却水が、冷却水ポンプ135の駆動によって、シリンダブロック75及びシリンダヘッド72に供給され、エンジン7を冷却する。
オルタネータ137は、コンバータ68を介してモータジェネレータ64とは別にバッテリ66に電気的に接続されている。バッテリ66は、モータジェネレータ64とオルタネータ137との両方から充電可能になっている。モータジェネレータ64とオルタネータ137とは両方共エンジン7に組み付けられてユニット化されている。このように構成すると、エンジンとは別体のモータジェネレータを備えた従来のハイブリッド式エンジン装置に比較して、ハイブリッド式エンジン装置全体で大幅なコンパクト化を図れる。ひいては、これを搭載する作業車両のコンパクト化にも貢献する。発電専用のオルタネータ23もモータジェネレータ64とは別に存在するため、バッテリ残量を気にすることなく、エンジン7の駆動力に対してモータジェネレータ64の駆動力を補助力として確実に付与できる。エンジン7の出力特性に対してモータジェネレータ64の補助力を的確に付与して、状況に応じた最適な出力特性を得ることが可能になる。
図5〜図7に示すように、吸気マニホールド73の入口部にEGR装置140(排気ガス再循環装置)を連結している。EGR装置140は主としてエンジン7において吸気マニホールド73のある側に配置されている。エアクリーナに吸い込まれた新気(外部空気)は除塵及び浄化されたのち、EGR装置140を介して吸気マニホールド73に送られ、エンジン7の各気筒に供給される。
EGR装置140は、エンジン7の排気ガスの一部(EGRガス)と新気とを混合させて吸気マニホールド73に供給するEGR本体ケース141と、EGR本体ケース141をエアクリーナに連通させる吸気スロットル部材142と、排気マニホールド75にEGRクーラ143を介して接続される再循環排気ガス管144と、再循環排気ガス管144にEGR本体ケース141を連通させるEGRバルブ部材145とを備えている。
すなわち、吸気マニホールド73には、EGR本体ケース141を介して吸気スロットル部材142が連結されている。EGR本体ケース141には、再循環排気ガス管144の出口側を接続する。再循環排気ガス管144の入口側は、EGRクーラ143を介して排気マニホールド71に接続する。EGRバルブ部材145内のEGR弁開度を調節することによって、EGR本体ケース141へのEGRガスの供給量が調節される。なお、EGR本体ケース141は、吸気マニホールド73に着脱可能にボルト締結される。
上記の構成において、エアクリーナから吸気スロットル部材142を介してEGR本体ケース141内に新気を供給する一方、排気マニホールド71からEGR本体ケース141内にEGRガスを供給する。エアクリーナからの新気と排気マニホールド71からのEGRガスとがEGR本体ケース141内で混合され、混合ガスとして吸気マニホールド73に供給される。エンジン7から排気マニホールド71に排出された排気ガスの一部を吸気マニホールド73からエンジン7に還流することによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が低下し、エンジン7からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減する。
排気マニホールド71の排気下流側に接続された排気管77には、排気ガス浄化装置としてのディーゼルパティキュレートフィルタ150(以下、DPFという)が接続されている。各気筒から排気マニホールド71に排出された排気ガスは、排気管77及びDPF150を経由して浄化処理をされてから外部に放出される。
DPF150は、排気ガス中の粒子状物質(以下、PMという)等を捕集するためのものである。実施形態のDPF150は、耐熱金属材料製のケーシング151内にある略筒型のフィルタケース152に、例えば白金等のディーゼル酸化触媒153とスートフィルタ154とを直列に並べて収容したものである。実施形態では、フィルタケース152内のうち排気上流側にディーゼル酸化触媒153が配置され、排気下流側にスートフィルタ154が配置されている。スートフィルタ154は、多孔質な(ろ過可能な)隔壁にて区画された多数のセルを有するハニカム構造になっている。
ケーシング151の一側部には、排気管77の排気下流側に連通する排気導入口155が設けられている。ケーシング151の一端部は第1底板156にて塞がれ、フィルタケース152のうち第1底板156に臨む一端部は第2底板157にて塞がれている。ケーシング151とフィルタケース152との間の環状隙間、並びに両底板156,157間の隙間には、ガラスウールのような断熱材158がディーゼル酸化触媒153及びスートフィルタ154の周囲を囲うように充填されている。ケーシング151の他側部は2枚の蓋板159,160にて塞がれていて、これら両蓋板159,160を略筒型の排気排出口161が貫通している。また、両蓋板159,160の間は、フィルタケース152内に複数の連通管162を介して連通する共鳴室163になっている。
ケーシング151の一側部に形成された排気導入口155には排気ガス導入管165が挿入されている。排気ガス導入管165の先端は、ケーシング151を横断して排気導入口155と反対側の側面に突出している。排気ガス導入管165の外周面には、フィルタケース152に向けて開口する複数の連通穴166が形成されている。排気ガス導入管165のうち排気導入口155と反対側の側面に突出する部分は、これに着脱可能に螺着された蓋体167にて塞がれている。
DPF150には、詰まり推定部材の一例として、スートフィルタ154の詰まり状態を推定する差圧センサ168が設けられている。実施形態の差圧センサ168は、DPF150内におけるスートフィルタ154を挟んだ上流側及び下流側間の圧力差を検出するものである。差圧センサ168で検出された圧力差ΔPからDPF150内のPM堆積量を推定し、当該推定結果が所定値(例えば8g/l)以上であれば、モータジェネレータ64の発電機作用による負荷を利用してエンジン負荷を増大させ、DPF150(スートフィルタ154)の再生制御が実行される。エンジン7の駆動状態(回転速度や負荷の状態)に拘らず、排気ガス温度を再生可能温度以上に上昇させてPMを酸化除去できる。DPF150(スートフィルタ154)のPM捕集能力を強制的に回復できる。実施形態では、排気ガス導入管165の蓋体167に、差圧センサ168を構成する上流側排気圧センサ168aが装着され、スートフィルタ154と共鳴室163との間に、下流側排気圧センサ168bが装着されている。
なお、スートフィルタ154の詰まり状態を推定するのは、差圧センサ168に限らず、DPF150内におけるスートフィルタ154上流側の圧力を検出する排気圧センサであってもよい。排気圧センサを採用した場合は、スートフィルタ154にスート(すす)が堆積していないとき(新品時)のスートフィルタ154上流側の圧力(基準圧力)と、排気圧センサにて検出された現在の圧力とを比較することによって、DPF150(スートフィルタ154)の詰まり状態を推定することになる。
上記の構成において、エンジン7からの排気ガスは、排気導入口155を介して排気ガス導入管165に入り、排気ガス導入管165に形成された各連通穴166からフィルタケース152内に噴出し、フィルタケース152内の広い領域に分散したのち、ディーゼル酸化触媒153からスートフィルタ154の順に通過して浄化処理される。排気ガス中のPMは、この段階でスートフィルタ154における各セル間の多孔質な仕切り壁を通り抜けできずに捕集される。その後、ディーゼル酸化触媒153及びスートフィルタ154を通過した排気ガスが排気排出口161から放出される。
排気ガスがDPF150を通過する際に、排気ガス温度が再生可能温度(例えば約300℃)を超えていれば、ディーゼル酸化触媒153の作用にて、排気ガス中のNO(一酸化窒素)が不安定なNO2(二酸化窒素)に酸化する。そして、NO2がNOに戻る際に放出するO(酸素)にて、スートフィルタ154に堆積したPMが酸化除去されることにより、スートフィルタ154のPM捕集能力が回復(スートフィルタ154が再生)することになる。
図8に示す如く、エンジン7における各気筒の燃料噴射バルブ119を作動させるECU101を備えている。詳細は図示しないが、ECU101は、各種演算処理や制御を実行するCPUの他、制御プログラムやデータを記憶させるEEPROMやフラッシュメモリといった記憶手段、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるRAM、入出力インターフェイス等を備えており、エンジン7又はその近傍に配置されている。
ECU101の入力側には、少なくともコモンレール120内の燃料圧力を検出するレール圧センサ102と、燃料供給ポンプ116を回転又は停止させる電磁クラッチ103と、エンジン7の回転速度(主動軸60のカムシャフト位置)を検出するエンジン回転速度センサ104と、インジェクタ115の燃料噴射回数(1行程の燃料噴射期間中の燃料噴射回数)を検出及び設定する噴射設定器105と、スロットルレバー又はアクセルペダルといったアクセル操作具(図示省略)の操作位置を検出するスロットル位置センサ106と、吸気マニホールド73の吸気温度を検出する吸気温度センサ108と、エンジン7の冷却水温度を検出する冷却水温度センサ109と、上流側排気圧センサ168a及び下流側排気圧センサ168bからなる差圧センサ168と、残量検出器69とが接続されている。ECU101の入力側には、各油圧アクチュエータ9,16,20,23,26,27,29の駆動負荷を検出する駆動負荷検出部材としての油圧センサ169,170も接続されている。なお、この場合の駆動負荷は、各油圧アクチュエータ9,16,20,23,26,27,29に作動油を供給する第1及び第2油圧ポンプ48,51の負荷としている。第1油圧センサ169は第1油圧ポンプ48からの作動油圧を検出し、第2油圧センサ170は第2油圧ポンプ51からの作動油圧を検出する。
ECU101の出力側には、少なくとも4気筒分の各燃料噴射バルブ119の電磁ソレノイドがそれぞれ接続されている。すなわち、ECU101からの指令に基づき、コモンレール120に蓄えた高圧燃料が燃料噴射圧力、噴射時期及び噴射期間等を制御しながら、1行程中に複数回に分けて燃料噴射バルブ119から噴射されることによって、窒素酸化物(NOx)の発生を抑えると共に、スートや二酸化炭素等の発生も低減した完全燃焼を実行し、燃費を向上させるように構成されている。ECU101の出力側には、切換クラッチ機構63のクラッチシリンダ67(図9参照)に作動油を供給するための切換クラッチ電磁弁110、インバータコンバータ65及びコンバータ68も接続されている。
ECU101は、詰まり推定部材の一例として、エンジン7の駆動履歴(累積運転時間といってもよい)を随時計測する。エンジン7の駆動履歴が予め設定された所定値(例えば100時間程度)を経過した場合に、モータジェネレータ64を発電機として駆動させてエンジン負荷を増大させ、スートフィルタ154の再生制御が実行される。前記所定値は例えばECU101に設けられた記憶手段(フラッシュメモリやEEPROM)に予め記憶させている。このため、エンジン7の駆動履歴を目安にするという簡単な制御で、DPF150(スートフィルタ154)のPM捕集能力を回復できる。
ECU101の記憶手段には、エンジン7の回転速度NとトルクT(負荷)との関係を示す出力特性マップPM(図10参照)を予め記憶させている。記憶手段には、エンジン負荷とバッテリ残量とDPF150の再生要否との関係を示す複数の制御パターンとしてのモードマップMM(図11参照)も予め記憶させている。この種のマップPM,MMは実験等で求められる。なお、モードマップMM等の制御パターンとしては、実施形態のようなマップ形式に限らず、例えば関数表形式のものでもよい。
図10に示す出力特性マップPMでは、回転速度Nを横軸に、トルクTを縦軸に採っている。出力特性マップPMは、上向き凸に描かれた実線Tmxで囲まれた領域である。実線Tmxは、各回転速度Nに対する最大トルクを表した最大トルク線である。図10に示すように、出力特性マップPMは、排気ガス温度が再生境界温度(約300℃程度)の場合での回転速度NとトルクTとの関係を表した境界ラインBLによって上下に分断される。境界ラインBLを挟んで上側の領域は、DPF150(スートフィルタ154)に堆積したPMを酸化除去できる(酸化触媒53の酸化作用が働く)再生可能領域であり、下側の領域は、PMが酸化除去されずにDPF150(スートフィルタ154)に堆積する再生不能領域である。
低速回転域(回転速度Nが低速な図10左側の領域)に描いた二点鎖線Tmodは、黒煙及びノッキング発生を防止してエンジンストールを回避する目的で、低速回転域での最大トルクを引き上げたと仮定した場合の補正トルク線である。補正トルク線Tmodに関する低速時負荷制御(図13参照)の態様については後述する。
図11に示す各モードマップMMでは、エンジン負荷率LFを横軸に、バッテリ残量SCを縦軸に採っている。実施形態のモードマップMMは3種類あり、DPF150再生をしない通常時に対応した図11(a)の通常時マップMM1、DPF150の再生直前時に対応した図11(b)の再生直前時マップMM2、及びDPF150の再生時に対応した図11(c)の再生時マップMM3とからなっている。ここで、エンジン負荷率LFは、任意の回転速度Nでの最大トルクT(最大エンジン負荷)に対する比率のことをいう。また、再生直前時とは、PM堆積量がDPF150の再生を要する所定値(例えば8g/l)に近いときを意味している。実施形態では、差圧センサ168の検出結果である圧力差ΔPから推定したDPF150内のPM堆積量が例えば6g/l以上8g/l未満の場合を再生直前時として規定している。
図11(a)の通常時マップMM1や図11(b)の再生直前時マップMM2では、図面下側がモータジェネレータ64を発電機として機能させる充電モードの領域になっていて、図面上側がモータジェネレータ64を電動機として機能させるアシストモードの領域になっている。充電モードにもアシストモードにも含まれない空白の領域は、モータジェネレータ64が動力の授受に寄与せず、エンジン7の駆動力だけで油圧ポンプ48,51等を作動させるエンジン単独モードの領域である。通常時マップMM1と再生直前時マップMM2とを比較すると、再生直前時マップMM2の充電モードの領域は通常時マップMM1のそれよりもバッテリ残量SCがゼロ(完全放電状態)に近い側で大幅に狭く設定されている。つまり、再生直前時マップMM2ではバッテリ残量SCがかなり少ない状態(例えば15%以下等)でなければ充電モードを選択しない。アシストモードの領域も再生直前時マップMM2の方が通常時マップMM1よりも広く設定されている。このように構成すると、DPF150の再生直前時には積極的に電力を消費できる。このため、その後の再生動作に際して、モータジェネレータ64を発電機として駆動させる時間を十分に確保できる。
図11(c)の再生時マップMM3では、充電モードの領域を略L字状に設定していて、エンジン負荷率LFの低い領域を充電モードの領域で占めている。また、図11(c)の再生時マップMM3では、図面左端の逆三角形の狭い領域をアシストモードの領域に設定している。このように再生時マップMM3において、エンジン負荷率LFの低い領域を充電モードの領域で占める設定にすると、エンジン負荷が低い状態であっても、モータジェネレータ64の発電機作用によって、エンジン負荷を増大させて排気ガスを昇温できるだけでなく積極的にバッテリ66に充電できる。
ECU101は基本的に、エンジン回転速度センサ104で検出される回転速度Nとスロットル位置センサ106で検出されるスロットル位置とからトルクTを求めて、トルクTと出力特性マップPMとを用いて目標燃料噴射量を演算し、演算結果に基づきコモンレールシステム117を作動させるという燃料噴射制御を実行する。ここで、燃料噴射量は、各燃料噴射バルブ119の開弁期間を調節して、各インジェクタ115への噴射期間を変更することによって調節される。
また、ECU101は、DPF150の再生要否に基づき3種類のモードマップMMの中から1つを選択し、エンジン負荷(実施形態ではエンジン負荷率LF)及びバッテリ残量SC並びに選択したモードマップMMを用いて、モータジェネレータ64を発電機として機能させる充電モードを行うか、モータジェネレータ64を電動機として機能させるアシストモードを行うかを決定するモード切換制御を実行する。このように制御すると、排気ガス昇温のために、従来のような吸気絞り装置や排気絞り装置を設ける必要がなく、エンジン7関連の部品点数を少なくできる(製造コストの抑制に寄与したり吸排気損失増大による燃費悪化も防止したりできる)ものでありながら、DPF150の再生が必要か否か、更にはバッテリ66の充電状態に応じて的確に、モータジェネレータ64を電動機として駆動させエンジン7の駆動力を補助したり、発電機として駆動させバッテリ66に充電したりできる。
(4).動力配分機構及び切換クラッチ機構の詳細構造
次に、図9を参照しながら、動力配分機構61及び切換クラッチ機構63の詳細構造について説明する。動力配分機構61は、主動軸60とポンプ軸62とをつなぐ遊星ギヤ機構81を備えている。遊星ギヤ機構81は、主動軸60の先端側に固着されたサンギヤ83と、サンギヤ83に噛み合う複数の遊星ギヤ84と、遊星ギヤ84群に噛み合うリングギヤ85と、遊星ギヤ84群を同一円周上に回転可能に配置するキャリヤ86とを備えている。リングギヤ85は、その内周面の内歯を複数の遊星ギヤ84に噛み合わせた状態で主動軸60に同心状に配置され、且つ、キャリヤ86の外側面から突出したポンプ軸62に回転可能に被嵌されている。
一方、モータジェネレータ64から突出した入出力軸87には切換クラッチ機構63が関連付けて設けられている。すなわち、入出力軸87には、フライホイル32のホイルギヤ82に噛み合う強制発電ギヤ88と、リングギヤ85の外周面に形成された外歯に噛み合う中継ギヤ89とが回転可能に軸支されている。また、入出力軸87には、クラッチシリンダ67で継断動作可能な強制発電クラッチ90及び中継クラッチ91も設けられている。クラッチシリンダ67のロッド側には、シフトアーム92を介してクラッチシフタ93が連結されている。クラッチシリンダ67の駆動に基づくクラッチシフタ93の動作にて強制発電クラッチ90又は中継クラッチ91を動力接続状態にすることによって、入出力軸87に強制発電ギヤ88又は中継ギヤ89が一体回転するように連結される。
強制発電クラッチ90を動力接続状態にした場合は、主動軸60の回転動力が、ホイルギヤ82及び強制発電ギヤ88を介して入出力軸87に分岐して伝達され、かかる入出力軸87の回転動力によってモータジェネレータ64が発電機として機能し、インバータコンバータ65経由でバッテリ66が充電される。遊星ギヤ機構81ひいてはポンプ軸62には、主動軸60の回転動力(エンジン7の駆動力)が伝達される。この場合、エンジン7には、第1及び第2油圧ポンプ48,51を駆動させる負荷と、モータジェネレータ64の駆動にてバッテリ66を充電する負荷とがかかることになる。そうすると、モータジェネレータ64の発電機作用に基づく負荷がダミー負荷として作用し、これに伴いエンジン負荷が増大する。そして、第1及び第2油圧ポンプ48,51の駆動維持のためにエンジン出力(燃料噴射量)が増大して、排気ガス温度が上昇する。
その結果、排気ガスがディーゼル酸化触媒153及びスートフィルタ154を通過するに際して、排気ガス温度が再生可能温度を超えることになり、ディーゼル酸化触媒153の作用にて排気ガス中のNOが不安定なNO2に酸化して、NO2がNOに戻る際に放出するO(酸素)にてスートフィルタ154に堆積したPMが酸化除去され、スートフィルタ154のPM捕集能力が回復する(スートフィルタ154が再生する)ことになる。
中継クラッチ91を動力接続状態にした場合は通常、エンジン7の駆動による主動軸60の回転動力が遊星ギヤ機構81を介してポンプ軸62に伝達される。ここで、第1及び第2油圧ポンプ48,51の駆動負荷に対して主動軸60の回転動力(エンジン負荷)が大きく、余分なエンジン負荷が存在する場合は、かかる余分な回転動力がサンギヤ83及び遊星ギヤ84群を介してリングギヤ85に伝達され、リングギヤ85から中継ギヤ89を経由して入出力軸87に伝達される。そして、入出力軸87の回転動力によってモータジェネレータ64が発電機として機能し、インバータコンバータ65経由でバッテリ66が充電されることになる。
中継クラッチ91を動力接続状態にした場合において、バッテリ66の電力を利用してモータジェネレータ64を電動機として駆動させると、エンジン7の駆動による主動軸60の回転動力とは別に、モータジェネレータ64の駆動で入出力軸87が回転駆動し、入出力軸87の回転動力が中継ギヤ89からリングギヤ85に伝達される。従って、遊星ギヤ機構81に、主動軸60の回転動力と入出力軸87の回転動力とが伝達され、これらの合成動力がポンプ軸62に伝達される。すなわち、エンジン7だけで第1及び第2油圧ポンプ48,51の駆動負荷を賄い切れない高負荷時は、モータジェネレータ64を電動機として駆動させ、動力の不足分が補填される(エンジン7の駆動をアシストする)。
なお、両クラッチ90,91を動力遮断状態(中立)にすれば、モータジェネレータ64は動力の授受に寄与せず、遊星ギヤ機構81ひいてはポンプ軸62は、主動軸60の回転動力(エンジン7の駆動力)だけで回転駆動する。また、エンジン7が駆動している間は、オルタネータ137の発電機作用によってコンバータ68経由で常時バッテリ66が充電される。
(5).ハイブリッド式エンジン装置でのモード切換制御の態様
次に、図11及び図12を参照しながら、ハイブリッド式エンジン装置でのモード切換制御の態様について説明する。ECU101は前述の通り、モータジェネレータ64を発電機として機能させる充電モードを行うか、モータジェネレータ64を電動機として機能させるアシストモードを行うかを決定するモード切換制御を実行する。
この場合、図12に示すように、ECU101は、差圧センサ168からの検出結果に基づきDPF150内のPM堆積量を推定する(S01)。PM堆積量(推定結果)が直前値(例えば6g/l)未満であれば(S02:通常)、3種類のモードマップMMの中から図11(a)に示す通常時マップを選択して読み込む(S03)。PM堆積量が直前値(例えば6g/l)以上限界値(例えば8g/l)未満であれば(S02:直前)、図11(b)に示す再生直前時マップMM2を選択して読み込む(S04)。PM堆積量が限界値(例えば8g/l)以上であれば(S02:再生)、図11(c)に示す再生時マップMM3を選択して読み込む(S05)。
3種類のモードマップMMのうちいずれかを選択した後は、エンジン回転速度センサ104の検出値(現時点の回転速度N1)、スロットル位置センサ106の検出値、及び残量検出器69で検出したバッテリ残量SC1を読み込む(S06)。次いで、現時点の回転速度N1とスロットル位置とから現時点のトルクT1を算出し、現時点の回転速度N1及びトルクT1並びに出力特性マップPMを用いて、現時点のエンジン負荷率LF1を算出する(S07)。
それから、先ほど選択したモードマップMMを参照して、エンジン負荷率LF1とバッテリ残量SC1との関係がどのモードの領域に属するかを判別する(S08)。充電モードの領域に属する場合は(S08:充電)、ステップS09に移行し、クラッチシリンダ67を駆動させて強制発電クラッチ90を動力接続状態にし、モータジェネレータ64を発電機として機能させる(充電モードを実行する)。アシストモードに属する場合は(S08:アシスト)、ステップS10に移行し、クラッチシリンダ67を駆動させて中継クラッチ91を動力接続状態にした上で、バッテリ66の電力を利用してモータジェネレータ64を電動機として駆動させる(アシストモードを実行する)。エンジン単独モードに属する場合は(S08:エンジン単独)、ステップS11に移行し、クラッチシリンダ67を駆動させて中継クラッチ91を動力接続状態にするか、又は両クラッチ90,91を動力遮断状態にし、エンジン7の駆動力だけで油圧ポンプ48,51等を作動させる(エンジン単独モードを実行する)。
(6).ハイブリッド式エンジン装置での低速時負荷制御の態様
次に、図13を参照しながら、ハイブリッド式エンジン装置での低速時負荷制御について説明する。ECU101は、実行中のモードに拘らず、エンジン7の低速回転時にエンジン負荷の増大でエンジン回転速度Nが低下する場合に、モータジェネレータ64の電動機作用によってエンジン7の駆動力を補助する低速時負荷制御を実行する。
この場合、図13に示すように、ECU101は、エンジン回転速度センサ104の検出値(現時点の回転速度N2)及びスロットル位置センサ106の検出値を読み込み(S21)、現時点の回転速度N2が所定値以下(低速回転域)であれば(S22:YES)、第1油圧センサ169で検出した第1油圧値S1と、第2油圧センサ122で検出した第2油圧値S2とを適宜時間毎に読み込む(S23)。そして、第1油圧センサ169に関して、先に読み込んだ第1油圧値S1(1)と後に読み込んだ第1油圧値S1(2)とから、第1油圧ポンプ48側の油圧変化率ΔS1を算出すると共に、第2油圧センサ170に関して、先に読み込んだ第2油圧値S2(1)と後に読み込んだ第2油圧値S2(2)とから、第2油圧ポンプ51側の油圧変化率ΔS2を算出する(S24)。
ここで、油圧変化率ΔS1,ΔS2とは、先の油圧値S1(1),S2(1)と後の油圧値S1(2),S2(2)との差を先の油圧値S1(1),S2(1)で割った値の百分率で表したものである。すなわち、ΔS1={S1(1)−S1(2)}/S1(1)×100、ΔS2={S2(1)−S2(2)}/S2(1)×100と表される。
次いで、油圧変化率ΔS1,ΔS2のいずれか少なくとも一方が設定変化率ΔS0(所定値)以上であるか否かを判別する(S25)。なお、設定変化率ΔS0は、ECU101の記憶手段等に予め記憶させている。油圧変化率ΔS1,ΔS2の少なくとも一方が設定変化率ΔS0以上であれば(S25:YES)、エンジン7の低速回転中にエンジン負荷が増大して回転速度Nが低下する状態にあるため、このままでは第1及び第2油圧ポンプ48,51の負荷増大に対してエンジン7の出力トルクが追従できずに不足し、黒煙を排出してノッキングを生じたりエンジンストールを引き起こしたりすることになる。
そこで、この場合は、中継クラッチ91を動力接続状態にした上で、バッテリ66の電力を利用してモータジェネレータ64を電動機として駆動させる(S26)。そうすると、出力特性マップPMでの補正トルク線Tmodと最大トルク線Tmxとの差に相当する補助トルクΔT(トルクの不足分)が補填され(エンジン7の駆動がアシストされ)、エンジン7の低速回転域での燃料噴射量を増大させたのと同様な状態になる。その結果、エンジン7の出力トルクの低下を防止して、トルク不足に起因する回転速度Nの更なる低下をなくし、黒煙及びノッキングの発生を防止できると共に、エンジンストールのおそれを抑制できる。
次いで、現時点の回転速度N3をエンジン回転速度センサ104で検出して読み込み(S27)、現時点の回転速度N3が先の回転速度N2にまで復帰したか否かを判別する(S28)。現時点の回転速度N3が先の回転速度N2にまで復帰していれば(S28:YES)、バッテリ66からモータジェネレータ64に対する電力供給を停止する(S29)。ステップS29では、クラッチシリンダ67を駆動させて両クラッチ90,91を動力遮断状態にしてもよい。実施形態では、例えば油圧等に起因した負荷増大の検出タイミングを第1及び第2油圧ポンプ48,51からの作動油の油圧変化率ΔS1,ΔS2によって把握できる。このため、エンジン7の回転速度Nを基準にして検出タイミングを計る場合よりも素早い判別が可能であり、モータジェネレータ64の補助力付与の要否判別に要する時間を短縮できる。
(7).まとめ
上記の記載並びに図5から明らかなように、エンジン7と、発電機及び電動機として機能するモータジェネレータ64と、前記モータジェネレータ64に繋がるバッテリ66とを備え、前記バッテリ66の電力による前記モータジェネレータ64の電動機作用で前記エンジン7の駆動力を補助可能に構成しているハイブリッド式エンジン装置において、前記モータジェネレータ64とは別に、前記エンジン7によって駆動するオルタネータ137を前記バッテリ66に接続し、前記モータジェネレータ64と前記オルタネータ137との両方から前記バッテリ66に充電可能に構成し、前記モータジェネレータ64と前記オルタネータ137との両方を前記エンジン7に組み付けてユニット化しているから、エンジンとは別体のモータジェネレータを備えた従来のハイブリッド式エンジン装置に比較して、ハイブリッド式エンジン装置全体の大幅なコンパクト化を図れる。ひいては、本願のハイブリッドエンジン装置を搭載する作業車両のコンパクト化にも貢献する。発電専用の前記オルタネータ137も前記モータジェネレータ64とは別に存在するため、バッテリ残量を気にすることなく、前記エンジン7の駆動力に対して前記モータジェネレータ64の駆動力を補助力として確実に付与できる。前記エンジン7の出力特性に対して前記モータジェネレータ64の補助力を的確に付与して、状況に応じた最適な出力特性を得ることが可能になる。
上記の記載並びに図13から明らかなように、前記エンジン7の低速回転時にエンジン負荷の増大でエンジン回転速度Nが低下する場合は、前記モータジェネレータ64の電動機作用によって前記エンジン7の駆動力を補助するように構成しているから、例えば油圧等に起因して前記エンジン7の低速回転時にエンジン負荷が増大したとしても、前記モータジェネレータ64の電動機作用によって前記エンジン7の出力トルクの低下を防止できる。従って、トルク不足に起因するエンジン回転速度Nの更なる低下をなくして、黒煙及びノッキングの発生を防止できると共に、エンジンストールのおそれを抑制できる。
上記の記載並びに図13から明らかなように、前記エンジン7の駆動力にて駆動する油圧源48,51から供給される作動油の油圧変化率ΔS1,ΔS2が所定値ΔS0以上であると、前記モータジェネレータ64の電動機作用によって前記エンジン7の駆動力を補助するように構成しているので、例えば油圧等に起因した負荷増大の検出タイミングを前記油圧源48,51からの作動油の油圧変化率ΔS1,ΔS2によって把握できる。このため、エンジン回転速度Nを基準にして検出タイミングを計る場合よりも素早い判別が可能であり、前記モータジェネレータ64の補助力付与の要否判別に要する時間を短縮できる。
上記の記載並びに図11及び図12から明らかなように、エンジン7と、発電機及び電動機として機能するモータジェネレータ64と、前記モータジェネレータ64に繋がるバッテリ66とを備え、前記バッテリ66の電力による前記モータジェネレータ64の電動機作用で前記エンジン7の駆動力を補助可能であり、且つ、前記エンジン7の駆動力による前記モータジェネレータ64の発電機作用で前記バッテリ66に充電可能に構成しているハイブリッド式エンジン装置において、前記エンジン7からの排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置150を備え、エンジン負荷とバッテリ残量SCと前記排気ガス浄化装置150の再生要否との関係を示す複数の制御パターンMMから選択し、前記選択した制御パターンMMに基づき、前記モータジェネレータ64を電動機として駆動させるアシストモードを選択するか、発電機として駆動させる充電モードを選択するかを決定するから、排気ガス昇温のために、従来のような吸気絞り装置や排気絞り装置を設ける必要がなく、エンジン7関連の部品点数を少なくできる(製造コストの抑制に寄与したり吸排気損失増大による燃費悪化も防止したりできる)ものでありながら、前記排気ガス浄化装置150の再生が必要か否か、更には前記バッテリ66の充電状態に応じて的確に、前記モータジェネレータ64を電動機として駆動させ前記エンジン7の駆動力を補助したり、発電機として駆動させ前記バッテリ66に充電したりできる。
上記の記載並びに図11及び図12から明らかなように、前記排気ガス浄化装置150の再生時に対応した再生時制御パターンMM3では、エンジン負荷が低い領域を前記充電モードの領域で占めているから、エンジン負荷が低い状態であっても、前記モータジェネレータ64の発電機作用によって、エンジン負荷を増大させて排気ガスを昇温できるだけでなく積極的に前記バッテリ66に充電できる。
上記の記載並びに図11及び図12から明らかなように、通常時に対応した通常時制御パターンMM1と、前記排気ガス浄化装置150の再生直前時に対応した直前時制御パターンMM2とでは、前記直前時制御パターンMM2の充電モードの領域を、前記通常時制御パターンMM1のそれよりも前記バッテリ残量SCがゼロに近い側で狭く設定しているから、前記排気ガス浄化装置150の再生直前時には積極的に電力を消費でき、その後の再生動作に際して、前記モータジェネレータ64を発電機として駆動させる時間を十分に確保できる。
(8).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば本願発明を適用するエンジンはディーゼル式のものに限らず、ガスエンジンやガソリンエンジンでもよい。また、バックホウ1に搭載されるエンジンに限らず、農作業機、土木建設等の特殊作業用車両、自動車又は発電機等に搭載されるハイブリッド式エンジン装置にも本願発明を適用できる。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。