以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(潤滑油基油)
本発明の潤滑油組成物は、尿素アダクト値が4質量%以下、40℃における動粘度が14〜25mm2/s、粘度指数が120以上である第1の潤滑油基油成分、及び、40℃における動粘度が14mm2/s未満である第2の潤滑油基油成分を含有し、潤滑油基油全量基準で、第1の潤滑油基油成分の含有量が10〜99質量%、第2の潤滑油基油成分の含有量が1%〜50質量%である潤滑油基油を含有する。
第1の潤滑油基油成分は、尿素アダクト値、40℃における動粘度及び粘度指数が上記条件を満たすものであれば、鉱油系基油、合成系基油、または両者の混合物のいずれであってもよい。
第1の潤滑油基油成分としては、粘度−温度特性、低温粘度特性および熱伝導性の要求を高水準で両立させることが可能であることから、ノルマルパラフィンを含有する原料油を、尿素アダクト値が4質量%以下、40℃における動粘度が14〜25mm2/s、粘度指数が120以上となるように、水素化分解/水素化異性化することにより得られる鉱油系基油または合成系基油、あるいは両者の混合物が好ましい。
第1の潤滑油基油成分の尿素アダクト値は、粘度−温度特性を損なわずに低温粘度特性を改善し、かつ高い熱伝導性を得る観点から、上述の通り4質量%以下であることが必要であり、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下、最も好ましくは1.5質量%以下である。また、潤滑油基油成分の尿素アダクト値は、0質量%でも良いが、十分な低温粘度特性と、より粘度指数の高い潤滑油基油を得ることができ、また脱ろう条件を緩和して経済性にも優れる点で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上である。
また、第1の潤滑油基油成分の40℃動粘度は、14〜25mm2/sであることが必要であり、好ましくは14.5〜20mm2/s、より好ましくは15〜19mm2/s、さらに好ましくは15〜18mm2/s以下、特に好ましくは15〜17mm2/s、最も好ましくは15〜16.5mm2/sである。ここでいう40℃における動粘度とは、ASTM D−445に規定される40℃での動粘度を示す。第1の潤滑油基油成分の40℃動粘度が25mm2/sを超える場合には、低温粘度特性が悪化し、また十分な省燃費性が得られないおそれがあり、第1の潤滑油基油成分の40℃動粘度が14mm2/s未満の場合は潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油組成物の蒸発損失が大きくなるおそれがある。
第1の潤滑油基油成分の粘度指数は、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるよう、また低粘度であっても蒸発しにくいためには、その値は120以上であることが必要であり、好ましくは125以上、より好ましくは130以上、更に好ましくは135以上、特に好ましくは140以上である。粘度指数の上限については特に制限はなく、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油のような125〜180程度のものや、コンプレックスエステル系基油やHVI−PAO系基油のような150〜250程度のものも使用することができる。ただし、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油については、低温粘度特性を向上するために、180以下であることが好ましく、170以下であることがより好ましく、160以下であることがさらに好ましく、155以下であることが特に好ましい。
第1の潤滑油基油成分の製造には、ノルマルパラフィンを含有する原料油を用いることができる。原料油は、鉱物油又は合成油のいずれであってもよく、あるいはこれらの2種以上の混合物であってもよい。また、原料油中のノルマルパラフィンの含有量は、原料油全量を基準として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、一層好ましくは90質量%、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは97質量%以上である。
ワックス含有原料としては、例えば、ラフィネートのような溶剤精製法に由来するオイル、部分溶剤脱ロウ油、脱瀝油、留出物、減圧ガスオイル、コーカーガスオイル、スラックワックス、フーツ油、フィッシャー−トロプシュ・ワックスなどが挙げられ、これらの中でもスラックワックス及びフィッシャー−トロプシュ・ワックスが好ましい。
スラックワックスは、典型的には溶剤またはプロパン脱ロウによる炭化水素原料に由来する。スラックワックスは残留油を含有し得るが、この残留油は脱油により除去することができる。フーツ油は脱油されたスラックワックスに相当するものである。
また、フィッシャー−トロプシュ・ワックスは、いわゆるフィッシャー−トロプシュ合成法により製造される。
また、溶剤抽出に由来する原料油は、常圧蒸留からの高沸点石油留分を減圧蒸留装置に送り、この装置からの蒸留留分を溶剤抽出することによって得られるものである。減圧蒸留からの残渣は、脱瀝されてもよい。溶剤抽出法においては、よりパラフィニックな成分をラフィネート相に残したまま抽出相に芳香族成分を溶解する。ナフテンは、抽出相とラフィネート相とに分配される。溶剤抽出用の溶剤としては、フェノール、フルフラールおよびN−メチルピロリドンなどが好ましく使用される。溶剤/油比、抽出温度、抽出されるべき留出物と溶剤との接触方法などを制御することによって、抽出相とラフィネート相との分離の程度を制御することができる。さらに原料として、より高い水素化分解能を有する燃料油水素化分解装置を使用し、燃料油水素化分解装置から得られるボトム留分を用いてもよい。
上記の原料油について、得られる被処理物の尿素アダクト値、40℃における動粘度、粘度指数およびT90−T10がそれぞれ上記条件を満たすように、水素化分解/水素化異性化を行う工程を経ることによって、第1の潤滑油基油成分を得ることができる。水素化分解/水素化異性化工程は、得られる被処理物の尿素アダクト値及び粘度指数が上記条件を満たせば特に制限されない。本発明における好ましい水素化分解/水素化異性化工程は、
ノルマルパラフィンを含有する原料油について、水素化処理触媒を用いて水素化処理する第1工程と、
第1工程により得られる被処理物について、水素化脱ロウ触媒を用いて水素化脱ロウする第2工程と、
第2工程により得られる被処理物について、水素化精製触媒を用いて水素化精製する第3工程と
を備える。第3工程後に得られる被処理物については、必要に応じて、蒸留等により所定の成分を分離除去してもよい。
上記の製造方法により得られる第1の潤滑油基油成分においては、尿素アダクト値、40℃粘度及び粘度指数がそれぞれ上記条件を満たせば、その他の性状は特に制限されないが、第1の潤滑油基油成分は以下の条件を更に満たすものであることが好ましい。
第1の潤滑油基油成分の100℃動粘度は、5.0mm2/s以下であることが好ましく、より好ましくは4.5mm2/s以下、さらに好ましくは4.3mm2/s以下、さらに好ましくは4.2mm2/s以下、特に好ましくは4.0mm2/s以下、最も好ましくは3.9mm2/s以下である。一方、当該100℃動粘度は、2.0mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは3.0mm2/s以上、さらに好ましくは3.5mm2/s以上、特に好ましくは3.7mm2/s以上である。ここでいう100℃における動粘度とは、ASTM D−445に規定される100℃での動粘度を示す。潤滑油基油成分の100℃動粘度が5.0mm2/sを超える場合には、低温粘度特性が悪化し、また十分な省燃費性が得られないおそれがあり、2.0mm2/s以下の場合は潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油組成物の蒸発損失が大きくなるおそれがある。
また、第1の潤滑油基油成分の流動点は、潤滑油基油の粘度グレードにもよるが、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−12.5℃以下、更に好ましくは−15℃以下、最も好ましくは−17.5℃以下、特に好ましくは−20℃以下である。流動点が前記上限値を超えると、その潤滑油基油成分を用いた潤滑油全体の低温流動性が低下するおそれがある。また、第1の潤滑油基油成分の流動点は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−40℃以上、更に好ましくは−30℃以上、特に好ましくは−25℃以上である。流動点が前記下限値を下回ると、その潤滑油基油成分を用いた潤滑油全体の粘度指数が低下し、省燃費性を悪化させるおそれがある。なお、本発明でいう流動点とは、JIS K 2269−1987に準拠して測定された流動点を意味する。
第1の潤滑油基油成分のヨウ素価は、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.15以下であり、最も好ましくは0.1以下である。また、0.01未満であってもよいが、それに見合うだけの効果が小さい点及び経済性との関係から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.03以上、特に好ましくは0.05以上である。潤滑油基油成分のヨウ素価を0.5以下とすることで、熱・酸化安定性を飛躍的に向上させることができる。なお、本発明でいうヨウ素価とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、ヨウ素価、水酸基価及び不ケン化価」の指示薬滴定法により測定したヨウ素価を意味する。
また、第1の潤滑油基油成分における硫黄分は、特に制限はないが、50質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10質量ppm以下、さらに好ましくは5質量ppm以下、特に好ましくは1質量ppm以下である。硫黄分は50質量ppm以下とすることで、優れた熱・酸化安定性を達成することができる。
第1の潤滑油基油成分の蒸発損失量としては、NOACK蒸発量で、25質量%以下であることが好ましく、21以下であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましい。潤滑油基油成分のNOACK蒸発量が25質量%を超える場合、潤滑油の蒸発損失が大きく、粘度増加等の原因となるため好ましくない。なお、ここでいうNOACK蒸発量とは、ASTM D 5800に準拠して測定される潤滑油の蒸発量を測定したものである。
また、第1の潤滑油基油成分の蒸留性状に関し、その初留点(IBP)は、好ましくは320〜390℃、より好ましくは330〜380℃、更に好ましくは340〜370℃である。また、10%留出温度(T10)は、好ましくは370〜430℃、より好ましくは380〜420℃、更に好ましくは390〜410℃である。また、50%留出点(T50)は、好ましくは400〜470℃、より好ましくは410〜460℃、更に好ましくは420〜450℃である。また、90%留出点(T90)は、好ましくは430〜500℃、より好ましくは440〜490℃、更に好ましくは450〜480℃である。また、終点(FBP)は、好ましくは450〜520℃、より好ましくは460〜510℃、更に好ましくは470〜500℃である。
また、第1の潤滑油基油成分の蒸留性状に関し、T90−T10は、好ましくは30〜90℃、より好ましくは40〜80℃、更に好ましくは50〜70℃である。また、FBP−IBPは、好ましくは90〜150℃、より好ましくは100〜140℃、更に好ましくは110〜130℃である。また、T10−IBPは、好ましくは10〜60℃、より好ましくは20〜50℃、更に好ましくは30〜40℃である。また、FBP−T90は、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜45℃、更に好ましくは15〜35℃である。
第1の潤滑油基油において、IBP、T10、T50、T90、FBP、T90−T10、FBP−IBP、T10−IBP、FBP−T90を上記の好ましい範囲に設定することで、低温粘度の更なる改善と、蒸発損失の更なる低減とが可能となる。なお、T90−T10、FBP−IBP、T10−IBP及びFBP−T90のそれぞれについては、それらの蒸留範囲を狭くしすぎると、潤滑油基油の収率が悪化し、経済性の点で好ましくない。
また、本発明の第1の潤滑油基油の%Cpは、好ましくは80以上、より好ましくは82〜99、更に好ましくは85〜98、特に好ましくは90〜97である。潤滑油基油の%Cpが80未満の場合、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、潤滑油基油の%Cpが99を超えると、添加剤の溶解性が低下する傾向にある。
また、本発明の第1の潤滑油基油の%CNは、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは1〜12、特に好ましくは3〜10である。潤滑油基油の%CNが20を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にある。また、%CNが1未満であると、添加剤の溶解性が低下する傾向にある。
また、本発明の第1の潤滑油基油の%CAは、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.1〜0.5である。潤滑油基油の%CAが0.7を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にある。また、本発明の潤滑油基油の%CAは0であってもよいが、%CAを0.1以上とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
更に、本発明の第1の潤滑油基油における%CPと%CNとの比率は、%CP/%CNが7以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。%CP/%CNが7未満であると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、%CP/%CNは、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましく、25以下であることが特に好ましい。%CP/%CNを200以下とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
なお、本発明でいう%CP、%CN及び%CAとは、それぞれASTM D 3238−85に準拠した方法(n−d−M環分析)により求められる、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率、及び芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率を意味する。つまり、上述した%CP、%CN及び%CAの好ましい範囲は上記方法により求められる値に基づくものであり、例えばナフテン分を含まない潤滑油基油であっても、上記方法により求められる%CNが0を超える値を示すことがある。
本発明の潤滑油組成物においては、第1の潤滑油基油成分として、尿素アダクト値4質量%以下、40℃動粘度14〜25mm2/sおよび粘度指数120以上である潤滑油基油の1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
第1の潤滑油基油成分の含有割合は、潤滑油基油の全量を基準として、10〜99質量%であり、好ましくは30〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%、さらに好ましくは60〜85質量%、最も好ましくは65〜80質量%である。当該含有割合が10質量%未満の場合には、必要とする低温粘度、省燃費性能が得られないおそれがある。
また、本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油の構成成分として、40℃における動粘度が14mm2/s未満である第2の潤滑油基油成分を含有する。
第2の潤滑油基油成分は、40℃における動粘度が14mm2/s未満であれば特に制限されないが、鉱油系基油としては、例えば40℃における動粘度が14mm2/s未満の溶剤精製鉱油、水素化分解鉱油、水素化精製鉱油、溶剤脱ろう基油などが挙げられる。
また、合成系基油としては、40℃における動粘度が14mm2/s未満の、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でも、ポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びそれらの水素化物が挙げられる。
本発明においては、第2の潤滑油基油成分として、以下の要件を満たす潤滑油基油を用いることが特に好ましい。
第2の潤滑油基油成分の40℃における動粘度は、14mm2/s以下であることが必要であり、好ましくは13mm2/s以下、より好ましくは12mm2/s以下、さらに好ましくは11mm2/s以下、特に好ましくは10mm2/s以下である。一方、当該40℃動粘度は、5mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは7mm2/s以上、さらに好ましくは8mm2/s以上、特に好ましくは9mm2/s以上である。40℃における動粘度が5mm2/s未満の場合には、潤滑部位における油膜保持性および蒸発性に問題を生ずるおそれがあるため好ましくない。また40℃における動粘度が14mm2/s以上の場合には第1の潤滑油基油との併用効果が得られない。
また、第2の潤滑油基油成分の粘度指数は、粘度−温度特性の観点から、80以上であることが好ましく、より好ましくは100以上、さらに好ましくは110以上、さらに好ましくは120以上、特に好ましくは128以上、好ましくは150以下、より好ましくは140以下、さらに好ましくは135以下である。粘度指数が80未満の場合には、有効な省エネルギー性能を得られないおそれがあり好ましくない。また、粘度指数を150以下とすることで低温特性に優れた組成物を得ることができる。
また、第2の潤滑油基油成分の100℃における動粘度は、好ましくは3.5mm2/s以下、より好ましくは3.3mm2/s以下、さらに好ましくは3.1mm2/s以下、さらに好ましくは3.0mm2/s以下、特に好ましくは2.9mm2/s以下、最も好ましくは2.8mm2/s以下である。一方、当該40℃動粘度は、好ましくは2mm2/s以上、より好ましくは2.3mm2/s以上、さらに好ましくは2.4mm2/s以上、特に好ましくは2.5mm2/s以上である。潤滑油基油の100℃における動粘度が2mm2/s未満の場合、蒸発損失の点で好ましくない。また、100℃における動粘度が3.5mm2/sを超える場合には、低温粘度特性の改善効果が小さい。
第2の潤滑油基油成分の尿素アダクト値は、粘度−温度特性を損なわずに低温粘度特性を改善する観点から、4質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3.5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2.5質量%以下である。また、第2の潤滑油基油成分の尿素アダクト値は、0質量%でも良いが、十分な低温粘度特性、高い粘度指数および高い引火点の潤滑油基油を得ることができ、また異性化条件を緩和することができ経済性にも優れる点で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上である。
また、第2の潤滑油基油成分の%Cpは、好ましくは70以上、より好ましくは82〜99.9、更に好ましくは85〜98、特に好ましくは90〜97である。第2の潤滑油基油成分の%Cpが70未満の場合、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、第2の潤滑油基油成分の%Cpが99を超えると、添加剤の溶解性が低下する傾向にある。
また、第2の潤滑油基油成分の%CNは、好ましくは30以下、より好ましくは1〜15、更に好ましくは3〜10である。第2の潤滑油基油成分の%CNが30を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にある。また、%CNが1未満であると、添加剤の溶解性が低下する傾向にある。
また、第2の潤滑油基油成分の%CAは、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.1〜0.5である。第2の潤滑油基油成分の%CAが0.7を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にある。また、第2の潤滑油基油成分の%CAは0であってもよいが、%CAを0.1以上とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
更に、第2の潤滑油基油成分における%CPと%CNとの比率は、%CP/%CNが7以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。%CP/%CNが7未満であると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、%CP/%CNは、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましく、25以下であることが特に好ましい。%CP/%CNを200以下とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
また、第2の潤滑油基油成分のヨウ素価は、特に制限はないが、好ましくは6以下であり、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.15以下であり、また、0.01未満であってもよいが、それに見合うだけの効果が小さい点及び経済性との関係から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.05以上である。潤滑油基油のヨウ素価を6以下、特に1以下とすることで、熱・酸化安定性を飛躍的に向上させることができる。
また、第2の潤滑油基油成分における硫黄分の含有量は、熱・酸化安定性の更なる向上及び低硫黄化の点から、硫黄分の含有量が10質量ppm以下であることが好ましく、5質量ppm以下であることがより好ましく、3質量ppm以下であることが更に好ましい。
また、コスト低減の点からは、原料としてスラックワックス等を使用することが好ましく、その場合、得られる第2の潤滑油基油成分中の硫黄分は50質量ppm以下が好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましい。
また、第2の潤滑油基油成分における窒素分の含有量は、特に制限されないが、好ましくは5質量ppm以下、より好ましくは3質量ppm以下、更に好ましくは1質量ppm以下である。窒素分の含有量が5質量ppmを超えると、熱・酸化安定性が低下する傾向にある。
また、第2の潤滑油基油成分の流動点は、好ましくは−25℃以下、より好ましくは−27.5℃以下、更に好ましくは−30℃以下である。流動点が前記上限値を超えると、潤滑油組成物全体の低温流動性が低下する傾向にある。
また、第2の潤滑油基油成分の蒸留性状は、ガスクロマトグラフィー蒸留で、以下の通りであることが好ましい。
第2の潤滑油基油成分の初留点(IBP)は、好ましくは285〜325℃、より好ましくは290〜320℃、更に好ましくは295〜315℃である。また、10%留出温度(T10)は、好ましくは320〜380℃、より好ましくは330〜370℃、更に好ましくは340〜360℃である。また、50%留出点(T50)は、好ましくは375〜415℃、より好ましくは380〜410℃、更に好ましくは385〜405℃である。また、90%留出点(T90)は、好ましくは370〜440℃、より好ましくは380〜430℃、更に好ましくは390〜420℃である。また、終点(FBP)は、好ましくは390〜450℃、より好ましくは400〜440℃、更に好ましくは410〜430℃である。また、T90−T10は、好ましくは25〜85℃、より好ましくは35〜75℃、更に好ましくは45〜65℃である。また、FBP−IBPは、好ましくは70〜150℃、より好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは90〜120℃である。また、T10−IBPは、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜60℃、更に好ましくは30〜50℃である。また、FBP−T90は、好ましくは5〜50℃、より好ましくは10〜45℃、更に好ましくは15〜40℃である。
第2の潤滑油基油成分において、IBP、T10、T50、T90、FBP、T90−T10、FBP−IBP、T10−IBP、FBP−T90を上記の好ましい範囲に設定することで、低温粘度の更なる改善と、蒸発損失の更なる低減とが可能となる。なお、T90−T10、FBP−IBP、T10−IBP及びFBP−T90のそれぞれについては、それらの蒸留範囲を狭くしすぎると、潤滑油基油の収率が悪化し、経済性の点で好ましくない。
本発明において、第2の潤滑油基油成分の含有量は、滑油基油全量を基準として、1質量%〜50質量%、好ましくは10〜48質量%、より好ましくは12〜45質量%、さらに好ましくは15〜40質量%、最も好ましくは18〜36質量%である。当該含有割合が1質量%未満の場合には、必要とする低温粘度、省燃費性能が得られないおそれがあることとなり、また、50質量%を超えると潤滑油の蒸発損失が大きく、粘度増加等の原因となるため好ましくないこととなる。
本発明の潤滑油組成物において、潤滑油基油は第1の潤滑油基油成分と第2の潤滑油基油成分とのみからなるものであってもよいが、第1の潤滑油基油成分及び第2の潤滑油基油成分の各含有量が上記範囲内である限りにおいて、第1の潤滑油基油成分及び第2の潤滑油基油成分以外の潤滑油基油成分をさらに含有してもよい。
また、第1の潤滑油基油成分及び第2の潤滑油基油成分を含む潤滑油基油の蒸留性状に関し、その初留点は好ましくは370℃℃以下、より好ましくは350℃以下、さらに好ましくは340℃以下、特に好ましくは330℃以下であり、好ましくは260℃以上、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは300℃以上である。また、当該潤滑油基油の10%留出温度は好ましくは400℃以下、より好ましくは390℃以下、さらに好ましくは380℃以下であり、好ましくは320℃以上、より好ましくは340℃以上、さらに好ましくは360℃以上である。また、当該潤滑油基油の90%留出温度が好ましくは430℃以上、より好ましくは435℃以上、さらに好ましくは440℃以上であり、好ましくは480℃以下、より好ましくは470℃以下、さらに好ましくは460℃以下である。また、当該潤滑油基油の終点(FBP)は、好ましくは440〜520℃、より好ましくは460〜500℃、更に好ましくは470〜490℃である。また、当該潤滑油基油の90%留出温度と10%留出温度との差が50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、特に好ましくは75℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは85℃以下である。また、当該潤滑油基油のFBP−IBPは、好ましくは135〜200℃、より好ましくは140〜180℃、更に好ましくは150〜170℃である。また、T10−IBPは、好ましくは20〜100℃、より好ましくは40〜90℃、更に好ましくは50〜80℃である。また、FBP−T90は、好ましくは5〜50℃、より好ましくは10〜40℃、更に好ましくは15〜35℃である。当該潤滑油基油において、IBP、T10、T50、T90、FBP、T90−T10、FBP−IBP、T10−IBP、FBP−T90を上記の好ましい範囲に設定することで、低温粘度の更なる改善と、蒸発損失の更なる低減とが可能となる。
また、当該潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは20mm2/s以下、より好ましくは16mm2/s以下、さらに好ましくは15mm2/s以下、さらに好ましくは14mm2/s以下であり、好ましくは8mm2/s以上、より好ましくは10mm2/s以上、さらに好ましくは12mm2/s以上である。さらに、当該潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは4.5mm2/s以下、より好ましくは3.8mm2/s以下、さらに好ましくは3.7mm2/s以下、さらに好ましくは3.6mm2/s以下であり、好ましくは2.3mm2/s以上、より好ましくは2.8mm2/s以上、さらに好ましくは3.3mm2/s以上である。当該潤滑油基油の動粘度を上記範囲とすることで、蒸発損失と低温粘度特性とのバランスにより優れた基油を得ることができる。
また、当該潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは100以上であり、より好ましくは120以上、さらに好ましくは130以上、特に好ましくは135以上であり、好ましくは170以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは140以下である。粘度指数を上記範囲とすることで粘度−温度特性に優れた基油を得ることができるとともに、粘度指数が格別に高く、低温粘度特性にも格別に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
また、当該潤滑油基油のNOACK蒸発量は、低温粘度特性と蒸発損失にバランスよく優れた潤滑油組成物を得るために、好ましくは10質量%以上、より好ましくは16質量%以上、さらに好ましくは18質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは21質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、特に好ましくは23質量%以下である。特に、当該潤滑油基油のNOACK蒸発量を21〜23質量%とし、粘度指数向上剤やその他の潤滑油添加剤を10質量%以上配合することで、低温粘度特性と蒸発損失のバランスに優れ、高粘度指数であり、100℃におけるHTHS粘度を低下させ、省燃費性に優れた潤滑油組成物を得ることが可能となる。
また、当該潤滑油基油の100℃における動粘度(kv100)に対するT10の比kv100/T10(単位:mm2s−1/℃)は、好ましくは0.007〜0.015、より好ましくは0.008〜0.0095である。また、当該潤滑油基油の100℃における動粘度(kv100)に対するT50の比kv100/T50(単位:mm2s−1/℃)は、好ましくは0.006〜0.009、より好ましくは0.007〜0.0085である。kv100/T10およびkv100/T50がそれぞれ上記下限値未満の場合、潤滑油基油の収率が悪化する傾向にあり、また、経済性の点で好ましくない、また、上記上限値を超えると得られる粘度指数のわりに潤滑油組成物の蒸発性が大きくなる傾向にある。
なお、当該潤滑油基油の尿素アダクト値、%CP、%CA、%CN、%CP/%CNの値、硫黄分、窒素分については、上述の第1の潤滑油基油成分、第2の潤滑油基油成分におけるそれらの値あるいはその他の配合可能な潤滑油基油成分並びにそれらの含有割合に応じて決まるが、上述の第1の潤滑油基油成分、第2の潤滑油基油成分におけるそれぞれの好ましい範囲であることが望ましい。
また、本発明の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤を含有する。本発明の潤滑油組成物に含まれる粘度指数向上剤は特に制限はなく、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、オレフィンコポリマー系粘度指数向上剤、スチレンージエン共重合体系粘度指数向上剤等、公知の粘度指数向上剤を使用することができ、これらは非分散型あるいは分散型のいずれであっても良いが、非分散型であることがより好ましい。これらの中でも、粘度指数向上効果が高く、粘度−温度特性、低温粘度特性に優れる潤滑油組成物を得やすい点で、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることが好ましく、非分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることがより好ましい。
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤のPSSI(パーマネントシアスタビリティインデックス)は、好ましくは40以下、より好ましくは5〜40、さらに好ましくは10〜35、一層好ましくは15〜30、特に好ましくは20〜25である。PSSIが40を超える場合にはせん断安定性が悪くなるおそれがある。また、PSSIが5未満の場合には粘度指数向上効果が小さく、省燃費性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがある。
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量(MW)は、5,000以上であることが好ましく、より好ましくは50,000以上であり、さらに好ましくは100,000以上であり、特に好ましくは200,000以上であり、最も好ましくは300,000以上である。また、1,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは700,000以下であり、さらに好ましくは600,000以下であり、特に好ましくは500,000以下である。重量平均分子量が5,000未満の場合には粘度指数向上効果が小さく省燃費性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがあり、重量平均分子量が1,000,000を超える場合にはせん断安定性や基油への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
また、本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量と数平均分子量の比(MW/Mn)は0.5〜5.0であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.5、更に好ましくは1.5〜3、特に好ましくは1.7〜2.5である。重量平均分子量と数平均分子量の比が0.5以下もしくは5.0以上となると、基油への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるだけでなく、粘度温度特性が悪化し、省燃費性が悪化するおそれがある。
なお、ここでいう重量平均分子量及び数平均分子量とは、ウォーターズ製の150−C ALC/GPC装置に東ソー製のGMHHR−M(7.8mmID×30cm)のカラムを2本直列に使用し、溶媒としてはテトラヒドロフラン、温度23℃、流速1mL/分、試料濃度1質量%、試料注入量75μL、検出器示差屈折率計(RI)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量及び数平均分子量のことである。
また、本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量とPSSIの比(MW/PSSI)は、特に制限はないが、好ましくは1×104以上、より好ましくは1.2×104以上、さらに好ましくは1.4×104以上、さらに好ましくは1.5×104以上、特に好ましくは1.7×104以上、最も好ましくは1.9×104以上であり、好ましくは4×104以下である。MW/PSSIが1×104以上の粘度指数向上剤を用いることで、低温粘度特性に優れるとともに、100℃におけるHTHS粘度を一層下げることができるため、省燃費性に格別に優れた組成物を得ることができる。
また、本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、上記したようなものであれば、その構造に特に制限はなく、後述する一般式(1)〜(4)で表されるモノマーから選ばれる1種又は2種以上を重合させて得られたポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を使用することができる。
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、これらの中でも、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位の1種または2種以上を、0.5〜70モル%含有するものであることがさらに好ましい。
[式(1)中、R
1は水素又はメチル基を示し、R
2は炭素数16以上の直鎖状又は分枝状の炭化水素基を示す。]
式(1)で示す構造単位中のR2は、上述の通り炭素数16以上の直鎖状又は分枝状の炭化水素基であり、好ましくは炭素数18以上の直鎖状又は分枝状の炭化水素であり、さらに好ましくは炭素数20以上の直鎖状又は分枝状の炭化水素であり、より好ましくは炭素数20以上の分枝状炭化水素基である。また、R2で表される炭化水素基の上限は特に制限されないが、炭素数500以下の直鎖状又は分枝状の炭化水素基であることが好ましい。より好ましくは50以下の直鎖状又は分枝状の炭化水素であり、さらに好ましくは30以下の直鎖状又は分枝状の炭化水素であり、特に好ましくは30以下の分枝状の炭化水素であり、最も好ましくは25以下の分枝状の炭化水素である。
また、本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤において、ポリマー中の一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位の割合は、上述の通り0.5〜70モル%であるが、好ましくは60モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下であり、さらに好ましくは40モル%以下であり、特に好ましくは30モル%以下である。また、好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは3モル%以上であり、さらに好ましくは5モル%以上であり、特に好ましくは10モル%以上である。70モル%を超える場合は粘度温度特性の向上効果や低温粘度特性に劣るおそれがあり、0.5モル%を下回る場合は粘度温度特性の向上効果に劣るおそれがある。
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位以外に任意の(メタ)アクリレート構造単位もしくは任意のオレフィン等を共重合させることによって得ることができる。
一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位と組み合わせるモノマーは任意であるが、例えば下記一般式(2)で表されるモノマー(以下、「モノマー(M−1)」という。)が好適である。モノマー(M−1)との共重合体は、いわゆる非分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤である。
[上記一般式(2)中、R
3は水素原子又はメチル基を示し、R
4は炭素数1〜15の直鎖状又は分枝状の炭化水素基を示す。]
また、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位と組み合わせるその他のモノマーとしては、下記一般式(3)で表されるモノマー(以下、「モノマー(M−2)」という。)及び下記一般式(4)で表されるモノマー(以下、「モノマー(M−3)」という)から選ばれる1種又は2種以上が好適である。モノマー(M−3)及び/又は(M−4)との共重合体は、いわゆる分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤である。なお、当該分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、構成モノマーとしてモノマー(M−1)をさらに含んでいてもよい。
[上記一般式(3)中、R
5は水素原子又はメチル基を示し、R
6は炭素数1〜18のアルキレン基を示し、E
1は窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示し、aは0又は1を示す。]
R6で表される炭素数1〜18のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、及びオクタデシレン基(これらアルキレン基は直鎖状でも分枝状でもよい。)等が例示できる。
また、E1で表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、及びピラジノ基等が例示できる。
[上記一般式(4)中、R
7は水素原子又はメチル基を示し、E
2は窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示す。]
E2で表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、及びピラジノ基等が例示できる。
モノマー(M−2)、(M−3)の好ましい例としては、具体的には、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン及びこれらの混合物等が例示できる。
また、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位とモノマー(M−1)〜(M−3)との共重合体の共重合モル比については特に制限はないが、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位:モノマー(M−1)〜(M−3)=0.5:99.5〜70:30程度が好ましく、より好ましくは5:90〜50:50、さらに好ましくは20:80〜40:60である。
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の製造法は任意であるが、例えば、ベンゾイルパーオキシド等の重合開始剤の存在下で、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位とモノマー(M−1)〜(M−3)の混合物をラジカル溶液重合させることにより容易に得ることができる。
本発明における粘度指数向上剤の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜40質量%、更に好ましくは1〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。粘度指数向上剤の含有量が0.1質量%より少なくなると、粘度指数向上効果や製品粘度の低減効果が小さくなることから、省燃費性の向上が図れなくなるおそれがある。また、50質量%よりも多くなると、製品コストが大幅に上昇すると共に、基油粘度を低下させる必要が出てくることから、厳しい潤滑条件(高温高せん断条件)における潤滑性能を低下させ、摩耗や焼き付き、疲労破壊等の不具合が発生原因となることが懸念される。
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油全量基準で、第1の潤滑油基油成分の含有量が10〜99質量%、第2の潤滑油基油成分の含有量が1〜50質量%となるように、また、得られる潤滑油組成物の100℃における動粘度が4〜12mm2/s、粘度指数が200〜350となるように、第1の潤滑油基油成分と、第2の潤滑油基油成分と、粘度指数向上剤と、を混合することによって得られる。なお、粘度指数向上剤は、予め第1の潤滑油基油成分又は第2の潤滑油基油成分の一方と混合した後に、他方と混合してもよく、あるいは、第1の潤滑油基油成分及び第2の潤滑油基油成分を含有する混合基油と粘度指数向上剤とを混合してもよい。
なお、本発明の潤滑油組成物は、前記した本発明に係る粘度指数向上剤のほか、通常の一般的な非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体を、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等をさらに含有してもよい。
本発明の潤滑油組成物には、さらにその性能を向上させるために、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、摩擦調整剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤(又は極圧剤)、腐食防止剤、防錆剤、流動点降下剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等の添加剤等を挙げることができる。
例えば、本発明の潤滑油組成物においては、省燃費性能を高めるために、有機モリブデン化合物及び無灰摩擦調整剤から選ばれる摩擦調整剤をさらに含有させることができる。
本発明で用いる有機モリブデン化合物としては、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオカーバメート等の硫黄を含有する有機モリブデン化合物が挙げられる。
好ましいモリブデンジチオカーバメートとしては、具体的には、硫化モリブデンジエチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジプロピルジチオカーバメート、硫化モリブデンジブチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジペンチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジヘキシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジオクチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジデシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジドデシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジ(ブチルフェニル)ジチオカーバメート、硫化モリブデンジ(ノニルフェニル)ジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジエチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジプロピルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジブチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジペンチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジヘキシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジオクチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジデシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジドデシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジ(ブチルフェニル)ジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジ(ノニルフェニル)ジチオカーバメート(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また、アルキルフェニル基のアルキル基の結合位置は任意である)、及びこれらの混合物等が例示できる。なお、これらモリブデンジチオカーバメートとしては、1分子中に異なる炭素数及び/または構造の炭化水素基を有する化合物も、好ましく用いることができる。
また、これら以外の硫黄を含有する有機モリブデン化合物としては、モリブデン化合物(例えば、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等の酸化モリブデン、オルトモリブデン酸、パラモリブデン酸、(ポリ)硫化モリブデン酸等のモリブデン酸、これらモリブデン酸の金属塩、アンモニウム塩等のモリブデン酸塩、二硫化モリブデン、三硫化モリブデン、五硫化モリブデン、ポリ硫化モリブデン等の硫化モリブデン、硫化モリブデン酸、硫化モリブデン酸の金属塩又はアミン塩、塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン等)と、硫黄含有有機化合物(例えば、アルキル(チオ)キサンテート、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、チオカーボネート、テトラハイドロカルビルチウラムジスルフィド、ビス(ジ(チオ)ハイドロカルビルジチオホスホネート)ジスルフィド、有機(ポリ)サルファイド、硫化エステル等)あるいはその他の有機化合物との錯体等、あるいは、上記硫化モリブデン、硫化モリブデン酸等の硫黄含有モリブデン化合物とアルケニルコハク酸イミドとの錯体等を挙げることができる。
また、有機モリブデン化合物としては、構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物を用いることができる。
構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物としては、具体的には、モリブデン−アミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩などが挙げられ、中でも、モリブデン−アミン錯体、有機酸のモリブデン塩及びアルコールのモリブデン塩が好ましい。
本発明の潤滑油組成物において、有機モリブデン化合物を用いる場合、その含有量は特に制限されないが、組成物全量を基準として、モリブデン元素換算で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、また、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下、特に好ましくは0.08質量%以下である。その含有量が0.001質量%未満の場合、潤滑油組成物の熱・酸化安定性が不十分となり、特に、長期間に渡って優れた清浄性を維持させることができなくなる傾向にある。一方、含有量が0.2質量%を超える場合、含有量に見合う効果が得られず、また、潤滑油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。
本発明で用いられる無灰摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、エーテル化合物、ウレア化合物、ヒドラジド化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤等が挙げられる。
また下記一般式(5)および(6)で表される窒素含有化合物及びその酸変性誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物や、国際公開第2005/037967号パンフレットに例示されている各種無灰摩擦調整剤が挙げられる。
一般式(5)において、R
8は炭素数1〜30の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基、好ましくは炭素数10〜30の炭化水素基又は機能性を有する炭素数10〜30の炭化水素基、より好ましくは炭素数12〜20のアルキル基、アルケニル基又は機能性を有する炭化水素基、特に好ましくは炭素数12〜20のアルケニル基であり、R
9及びR
10は、それぞれ個別に、炭素数1〜30の炭化水素基、機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基又は水素、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、機能性を有する炭素数1〜10の炭化水素基又は水素、さらに好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基又は水素、より好ましくは水素であり、Xは酸素又は硫黄、好ましくは酸素を示す。
一般式(6)において、R11は炭素数1〜30の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基であり、好ましくは炭素数10〜30の炭化水素基又は機能性を有する炭素数10〜30の炭化水素基、より好ましくは炭素数12〜20のアルキル基、アルケニル基又は機能性を有する炭化水素基、特に好ましくは炭素数12〜20のアルケニル基であり、R12 、R13及びR14は、それぞれ個別に、炭素数1〜30の炭化水素基、機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基又は水素、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、機能性を有する炭素数1〜10の炭化水素基又は水素、より好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基又は水素、さらに好ましくは水素を示す。
一般式(6)で表される窒素含有化合物としては、具体的には、炭素数1〜30の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基を有するヒドラジド及びその誘導体である。R11が炭素数1〜30の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基、R12〜R14が水素の場合、炭素数1〜30の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基を有するヒドラジド、R11及びR12〜R14のいずれかが炭素数1〜30の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基であり、R12〜R14の残りが水素である場合、炭素数1〜30の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基を有するN−ヒドロカルビルヒドラジド(ヒドロカルビルは炭化水素基等を示す)である。
本発明の潤滑油組成物において無灰摩擦調整剤を用いる場合、無灰摩擦調整剤の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。無灰摩擦調整剤の含有量が0.01質量%未満であると、その添加による摩擦低減効果が不十分となる傾向にあり、また3質量%を超えると、耐摩耗性添加剤などの効果が阻害されやすく、あるいは添加剤の溶解性が悪化する傾向にある。
本発明においては、有機モリブデン化合物又は無灰摩擦調整剤のいずれか一方のみを用いてもよく、両者を併用してもよいが、無灰摩擦調整剤を用いることがより好ましく、グリセリンオレート等の脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又はオレイルウレア等のウレア系摩擦調整剤を用いることが特に好ましい。
金属系清浄剤としては、アルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属フェネート又はアルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ金属サリシレート又はアルカリ土類金属サリシレート等の正塩、塩基正塩または過塩基性塩などが挙げられる。本発明では、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアルカリ金属又はアルカリ土類金属系清浄剤、特にアルカリ土類金属系清浄剤を好ましく使用することができる。特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく、カルシウム塩がより好ましく用いられる。
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノまたはビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。
摩耗防止剤(または極圧剤)としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。これらの中では硫黄系極圧剤の添加が好ましく、特に硫化油脂が好ましい。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、又はイミダゾール系化合物等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステル等が挙げられる。
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマー等が使用できる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が0.1〜100mm2/s未満のシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、それぞれその含有量は組成物全量基準で、0.01〜10質量%である。
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、4〜12mm2/sであることが必要であり、好ましくは4.5mm2/s以上、より好ましくは5mm2/s以上、特に好ましくは6mm2/s以上、最も好ましくは7mm2/s以上である。また、好ましくは11mm2/s以下、より好ましくは10mm2/s以下、特に好ましくは9mm2/s以下、最も好ましくは8mm2/s以下である。100℃における動粘度が4mm2/s未満の場合には、潤滑性不足を来たすおそれがあり、12mm2/sを超える場合には必要な低温粘度および十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
また、本発明の潤滑油組成物の粘度指数は、200〜300の範囲であることが必要であり、好ましくは210〜300、より好ましくは220〜300、さらに好ましくは240〜300、特に好ましくは250〜300、最も好ましくは260〜300である。本発明の潤滑油組成物の粘度指数が200未満の場合には、HTHS粘度を維持しながら、省燃費性を向上させることが困難となるおそれがあり、さらに−35℃における低温粘度を低減させることが困難となるおそれがある。また、本発明の潤滑油組成物の粘度指数が300以上の場合には、低温流動性が悪化し、更に添加剤の溶解性やシール材料との適合性が不足することによる不具合が発生するおそれがある。
また、本発明の潤滑油組成物は、100℃における動粘度及び粘度指数が上記要件を満たすことに加えて、以下の要件を満たすことが好ましい。
本発明の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、4〜50mm2/sであることが好ましく、好ましくは45mm2/s以下、より好ましくは40mm2/s以下、さらに好ましくは35mm2/s以下、特に好ましくは30mm2/s以下、最も好ましくは27mm2/s以下である。一方、当該40℃動粘度は、5mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは10mm2/s以上、さらに好ましくは15以上、特に好ましくは20以上である。40℃における動粘度が4mm2/s未満の場合には、潤滑性不足を来たすおそれがあり、50mm2/sを超える場合には必要な低温粘度および十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
本発明の潤滑油組成物の100℃におけるHTHS粘度は、6.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは5.5mPa・s以下であり、さらに好ましくは5.3mPa・s以下であり、特に好ましくは5.0mPa・s以下であり、最も好ましくは4.5mPa・s以下である。また、3.0mPa・s以上であることが好ましく、好ましくは3.5mPa・s以上、より好ましくは3.8mPa・s以上、特に好ましくは4.0mPa・s以上、最も好ましくは4.2mPa・s以上である。ここでいう100℃におけるHTHS粘度とは、ASTMD4683に規定される100℃での高温高せん断粘度を示す。100℃におけるHTHS粘度が3.0mPa・s未満の場合には、蒸発性が高く、潤滑性不足を来たすおそれがあり、6.0mPa・sを超える場合には必要な低温粘度および十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
本発明の潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度は、3.5mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは3.0mPa・s以下であり、さらに好ましくは2.8mPa・s以下であり、特に好ましくは2.7mPa・s以下である。また、2.0mPa・s以上であることが好ましく、好ましくは2.3mPa・s以上、より好ましくは2.4mPa・s以上、特に好ましくは2.5mPa・s以上、最も好ましくは2.6mPa・s以上である。ここでいう150℃におけるHTHS粘度とは、ASTM ASTM D4683に規定される150℃での高温高せん断粘度を示す。150℃におけるHTHS粘度が2.0mPa・s未満の場合には、蒸発性が高く、潤滑性不足を来たすおそれがあり、3.5mPa・sを超える場合には必要な低温粘度および十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
また、本発明の潤滑油組成物においては、150℃におけるHTHS粘度に対する100℃におけるHTHS粘度の比が下記式(A)で表される条件を満たすことが好ましい。
HTHS(100℃)/HTHS(150℃)≦2.04 (A)
[式中、HTHS(100℃)は100℃におけるHTHS粘度を示し、HTHS(150℃)は150℃におけるHTHS粘度を示す。]
HTHS(100℃)/HTHS(150℃)は、上記の通り2.04以下であることが好ましく、より好ましくは2.00以下、さらに好ましくは1.98以下、一層好ましくは1.80以下、特に好ましくは1.70以下である。HTHS(100℃)/HTHS(150℃)が2.04を超える場合には十分な省燃費性能や低温特性が得られないおそれがある。また、HTHS(100℃)/HTHS(150℃)は、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは1.00以上、特に好ましくは1.30以上である。HTHS(100℃)/HTHS(150℃)が0.50未満の場合には基材の大幅なコストアップや添加剤の溶解性が得られないおそれがある。
本発明の潤滑油組成物は、上記構成を有するため、省燃費性と低蒸発性および低温粘度特性に優れており、ポリ−α−オレフィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油を用いずとも、150℃におけるHTHS粘度を維持しながら、省燃費性とNOACK蒸発量および−35℃以下における低温粘度とを両立させることができ、特に潤滑油の40℃および100℃の動粘度と100℃におけるHTHS粘度を低減し、−35℃におけるCCS粘度、(−40℃におけるMRV粘度)を著しく改善することができる。例えば、本発明の潤滑油組成物によれば、−35℃におけるCCS粘度を2500mPa・s以下、特に2300mPa・s以下とすることができる。また、本発明の潤滑油組成物によれば、−40℃におけるMRV粘度を8000mPa・s以下、特に6000mPa・s以下とすることができる。
本発明の潤滑油組成物の用途は特に制限されないが、省燃費エンジン油、省燃費ガソリンエンジン油、省燃費ディーゼルエンジン油として好適に使用される。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[原料ワックス]
溶剤精製基油を精製する工程において減圧蒸留で分離した留分を、フルフラールで溶剤抽出した後で水素化処理し、次いで、メチルエチルケトン−トルエン混合溶剤で溶剤脱ろうした。溶剤脱ろうの際に除去され、スラックワックスとして得られたワックス分(以下、「WAX1」という)の性状を表1に示す。
WAX1をさらに脱油して得られたワックス分(以下、「WAX2」という。)の性状を表2に示す。
パラフィン含量が95質量%であり、20から80までの炭素数分布を有するFTワックス(以下、「WAX3」という。)を用いたWAX3の性状を表3に示す。
[潤滑油基油の製造]
WAX1、WAX2およびWAX3を原料油とし、水素化処理触媒を用いて水素化処理を行った。このとき、原料油の分解率が5質量%以上かつ、被処理油の硫黄分が10質量ppm以下となるように反応温度および液空間速度を調整した。なお、「原料油の分解率が5質量%以上」とは、被処理油において、原料油の初留点よりも軽質となる留分の割合が原料油全量に対し5質量%以上であることを意味し、ガスクロ蒸留にて確認される。
次に、上記の水素化処理により得られた被処理物について、貴金属含有量0.1〜5重量%に調整されたゼオライト系水素化脱ロウ触媒を用い、315℃〜325℃の温度範囲で水素化脱ロウを行った。
更に、上記の水素化脱ロウにより得られた被処理物(ラフィネート)について、水素化生成触媒を用いて水素化精製を行った。その後蒸留により表4、5に示す組成及び性状を有する潤滑油基油1〜4を得た。また、WVGOを原料とした水素化分解基油として、表5に示す組成及び性状を有する潤滑油基油5及び6を得た。表4、5中、「尿素アダクト物中のノルマルパラフィン由来成分の割合」は、尿素アダクト値の測定の際に得られた尿素アダクト物についてガスクロマトグラフィー分析を実施することによって得られたものである(以下、同様である)。
次に、表4、5の潤滑油基油に、自動車用潤滑油に一般的に用いられているポリメタアクリレート系流動点降下剤(重量平均分子量:約6万)を添加した。流動点降下剤の添加量は、いずれも、組成物全量基準で0.3質量%、0.5質量%および1.0質量%の3条件とした。次に、得られた各潤滑油組成物について、−40℃におけるMRV粘度を測定し、得られた結果を表4、5に示す。
[実施例1〜4、比較例1〜3]
実施例1〜4及び比較例1〜3においては、それぞれ上記の基油1〜5、並びに以下に示す添加剤を用いて、表6、7に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。なお、潤滑油組成物の調製の際には、その150℃におけるHTHS粘度が2.55〜2.65の範囲内となるようにした。得られた潤滑油組成物の性状を表6、7に示す。
(添加剤)
PK:添加剤パッケージ(金属系清浄剤(Caサリシレート Ca量2000ppm)、無灰分散剤(ホウ素化ポリブテニルコハク酸イミド)、酸化防止剤(フェノール系、アミン系)、摩耗防止剤(アルキルリン酸亜鉛 P量800ppm)、エステル系無灰摩擦調整剤、ウレア系無灰摩擦調整剤)、流動点降下剤、消泡剤等を含む)。
MoDTC:モリブデンジチオカーバメート。
VM−1:PSSI=45、MW=40万、Mw/Mn=5.5、Mw/PSSI=0.88×104の分散型ポリメタクリレート系添加剤(ジメチルアミノエチルメタクリレート及びアルキルメタアクリレート混合物(アルキル基:メチル基、炭素数12〜15の直鎖アルキル基)を主構成単位として重合させて得られる共重合体)
VM−2:PSSI=40、MW=30万、Mw/PSSI=0.75×104の分散型ポリメタクリレート系添加剤(ジメチルアミノエチルメタクリレート及びアルキルメタアクリレート混合物(アルキル基:メチル基、炭素数12〜15の直鎖状アルキル基)を主構成単位として重合させて得られる共重合体)
VM−3:PSSI=20、MW=40万、Mw/PSSI=2×104の非分散型ポリメタクリレート系添加剤(アルキルメタアクリレート混合物(アルキル基:メチル基、炭素数12〜15の直鎖アルキル基、炭素数16〜20の直鎖アルキル基)90モル%と、炭素数22の分岐アルキル基を有するアルキルメタアクリレート10モル%とを主構成単位として重合させて得られる共重合体)
[潤滑油組成物の評価]
実施例1〜4及び比較例1〜3の各潤滑油組成物について、40℃又は100℃における動粘度、粘度指数、NOACK蒸発量(1h、250℃)、150℃又は100℃におけるHTHS粘度、並びに−35℃におけるCCS粘度、−40℃におけるMRV粘度を測定した。各物性値の測定は以下の評価方法により行った。得られた結果を表6、7に示す。
(1)動粘度:ASTM D−445
(2)HTHS粘度:ASTM D4683
(3)NOACK蒸発量:ASTM D 5800
(4)CCS粘度:ASTM D5293
(5)MRV粘度:ASTM D3829
表6、7に示したように、実施例1〜4及び比較例1〜3の潤滑油組成物は150℃におけるHTHS粘度が同程度のものであるが、比較例1〜3の潤滑油組成物に比べて、実施例1〜4の潤滑油組成物は、40℃動粘度、100℃動粘度、100℃HTHS粘度およびCCS粘度が低く、低温粘度および粘度温度特性が良好であった。この結果から、本発明の潤滑油組成物が、省燃費性と低温粘度に優れ、ポリ−α−オレフィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油を用いずとも、150℃における高温高せん断粘度を維持しながら、省燃費性と−35℃以下における低温粘度とを両立させることができ、特に潤滑油の40℃および100℃における動粘度を低減し、粘度指数を向上し、−35℃におけるCCS粘度を著しく改善できる潤滑油組成物であることがわかる。