以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の潤滑油組成物において用いられる潤滑油基油は、特に限定されないが、具体的には例えば、原油を常圧蒸留および/または減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理のうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、あるいはノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油などのうち、100℃における動粘度、%Cp、含有硫黄濃度が上記条件を満たす基油が使用できる。
本発明に係る潤滑油基油の好ましい例としては、以下に示す基油(1)〜(8)を原料とし、この原料油および/またはこの原料油から回収された潤滑油留分を、所定の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる基油を挙げることができる。
(1)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留による留出油
(2)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(3)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)
(4)基油(1)〜(3)から選ばれる1種または2種以上の混合油および/または当該混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油
(5)基油(1)〜(4)から選ばれる2種以上の混合油
(6)基油(1)、(2)、(3)、(4)または(5)の脱れき油(DAO)
(7)基油(6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(8)基油(1)〜(7)から選ばれる2種以上の混合油。
なお、上記所定の精製方法としては、水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製;フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製;溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう;酸性白土や活性白土などによる白土精製;硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸またはアルカリ)洗浄などが好ましい。本発明では、これらの精製方法のうちの1種を単独で行ってもよく、2種以上を組み合わせて行ってもよい。また、2種以上の精製方法を組み合わせる場合、その順序は特に制限されず、適宜選定することができる。
更に、本発明に係る潤滑油基油としては、上記基油(1)〜(8)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分について所定の処理を行うことにより得られる下記基油(9)または(10)が特に好ましい。
(9)上記基油(1)〜(8)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油
(10)上記基油(1)〜(8)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分を水素化異性化し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または、当該脱ろう処理をしたあとに蒸留することによって得られる水素化異性化鉱油。
本発明に係る潤滑油基油の100℃における動粘度は、2.0〜12mm2/sであることが必要である。100℃における動粘度の上限値は好ましくは10mm2/s以下、より好ましくは8.0mm2/s以下、さらに好ましくは7.0mm2/s以下、特に好ましくは6.0mm2/s以下、最も好ましくは5.0mm2/s以下である。一方、100℃における動粘度の下限値は、好ましくは2.2mm2/s以上、より好ましくは2.4mm2/s以上、さらに好ましくは2.6mm2/s以上、特に好ましくは2.8mm2/s以上、最も好ましくは3.0mm2/s以上である。潤滑油基油成分の100℃動粘度が12mm2/sを超える場合には、低温粘度特性が悪化し、また十分な省燃費性が得られないおそれがあり、2.0mm2/s以下の場合は潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油組成物の蒸発損失が大きくなるおそれがある。
また、本発明の潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは50mm2/s以下、より好ましくは45mm2/s以下、さらに好ましくは40mm2/s以下、特に好ましくは35mm2/s以下、最も好ましくは30mm2/s以下である。一方、当該40℃動粘度は、このましくは6.0mm2/s以上、より好ましくは7.0mm2/s以上、さらに好ましくは8.0mm2/s以上、特に好ましくは9.0mm2/s以上、最も好ましくは10mm2/s以上である。潤滑油基油成分の40℃動粘度が50mm2/sを超える場合には、低温粘度特性が悪化し、また十分な省燃費性が得られないおそれがあり、6.0mm2/s以下の場合は潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油組成物の蒸発損失が大きくなるおそれがある。また、本発明においては、40℃における動粘度が下記の範囲にある潤滑油留分を蒸留等により分取し、使用することが好ましい。
本発明の潤滑油基油の粘度指数は、120以上であることが好ましく、より好ましくは130以上、さらに好ましくは135以上、特に好ましくは140以上である。粘度指数が前記下限値未満であると、粘度−温度特性および熱・酸化安定性、揮発防止性が悪化するだけでなく、摩擦係数が上昇する傾向にあり、また、摩耗防止性が低下する傾向にある。
また、本発明の潤滑油基油の15℃における密度(ρ15)は、潤滑油基油成分の粘度グレードによるが、下記式(1)で表されるρの値以下であること、すなわちρ15≦ρであることが好ましい。
ρ=0.0025×V100+0.816 (1)
[式中、V100は潤滑油基油成分の100℃における動粘度(mm2/s)を示す。]
なお、ρ15>ρとなる場合、粘度−温度特性および熱・酸化安定性、更には揮発防止性および低温粘度特性が低下する傾向にあり、省燃費性を悪化させるおそれがある。また、潤滑油基油成分に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下するおそれがある。
具体的には、本発明の潤滑油基油の15℃における密度(ρ15)は、好ましくは0.860以下、より好ましくは0.850以下、さらに好ましくは0.840以下、特に好ましくは0.822以下である。
なお、本発明でいう15℃における密度とは、JIS K 2249−1995に準拠して15℃において測定された密度を意味する。
また、本発明の潤滑油基油の流動点は、潤滑油基油の粘度グレードにもよるが、例えば、上記潤滑油基油(I)および(IV)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−12.5℃以下、更に好ましくは−15℃以下である。また、上記潤滑油基油(II)および(V)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−15℃以下、更に好ましくは−17.5℃以下である。また、上記潤滑油基油(III)および(VI)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−12.5℃以下、更に好ましくは−15℃以下である。流動点が前記上限値を超えると、その潤滑油基油を用いた潤滑油全体の低温流動性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう流動点とは、JIS K 2269−1987に準拠して測定された流動点を意味する。
また、本発明の潤滑油基油のアニリン点(AP(℃))は、潤滑油基油の粘度グレードによるが、下記式(2)で表されるAの値以上であること、すなわちAP≧Aであることが好ましい。
A=4.3×V100+100 (2)
[式中、V100は潤滑油基油の100℃における動粘度(mm2/s)を示す。]
なお、AP<Aとなる場合、粘度−温度特性および熱・酸化安定性、更には揮発防止性および低温粘度特性が低下する傾向にあり、また、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
例えば、上記潤滑油基油(I)および(IV)のAPは、好ましくは108℃以上、より好ましくは110℃以上である。また、上記潤滑油基油(II)および(V)のAPは、好ましくは113℃以上、より好ましくは119℃以上である。また、上記潤滑油基油(III)および(VI)のAPは、好ましくは125℃以上、より好ましくは128℃以上である。なお、本発明でいうアニリン点とは、JIS K 2256−1985に準拠して測定されたアニリン点を意味する。
本発明の潤滑油基油のヨウ素価は、好ましくは3以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1以下、特に好ましくは0.9以下であり、最も好ましくは0.8以下である。また、0.01未満であってもよいが、それに見合うだけの効果が小さい点および経済性との関係から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.03以上、特に好ましくは0.05以上である。潤滑油基油成分のヨウ素価を3以下とすることで、熱・酸化安定性を飛躍的に向上させることができる。なお、本発明でいうヨウ素価とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、ヨウ素価、水酸基価および不ケン化価」の指示薬滴定法により測定したヨウ素価を意味する。
また、本発明の潤滑油基油における硫黄分の含有量は、熱・酸化安定性の更なる向上および低硫黄化の点から、硫黄分の含有量が100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、5質量ppm以下であることが特に好ましい。
また、本発明の潤滑油基油における窒素分の含有量は、特に制限されないが、好ましくは7質量ppm以下、より好ましくは5質量ppm以下、更に好ましくは3質量ppm以下である。窒素分の含有量が5質量ppmを超えると、熱・酸化安定性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう窒素分とは、JIS K 2609−1990に準拠して測定される窒素分を意味する。
また、本発明の潤滑油基油の%Cpは、90以上であることが必要である。潤滑油基油の%Cpが上記下限値未満の場合、粘度−温度特性、熱・酸化安定性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、潤滑油基油の%Cpが上記上限値を超えると、低温流動性が悪化すると共に添加剤の溶解性が低下する傾向にある。
また、本発明の潤滑油基油の%CAは、2以下であることが必要であり、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1以下、特に好ましくは0.8以下、最も好ましくは0.5以下である。潤滑油基油の%CAが上記上限値を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性が低下する傾向にある。
また、本発明の潤滑油基油の%CNは、好ましくは30以下、より好ましくは4〜25、更に好ましくは5〜13、特に好ましくは5〜8である。潤滑油基油の%CNが上記上限値を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性および摩擦特性が低下する傾向にある。また、%CNが上記下限値未満であると、添加剤の溶解性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう「%CN」とは、ASTM D 3238−85に準拠した方法(n−d−M環分析)により求められる、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率を意味する。
また、本発明の潤滑油基油における飽和分の含有量は、100℃における動粘度ならびに%Cpおよび%CAが上記条件を満たしていれば特に制限されないが、潤滑油基油全量を基準として、好ましくは90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上であり、また、当該飽和分に占める環状飽和分の割合は、好ましくは40質量%以下であり、好ましくは35質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは21質量%以下である。また、当該飽和分に占める環状飽和分の割合は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。飽和分の含有量および当該飽和分に占める環状飽和分の割合がそれぞれ上記条件を満たすことにより、粘度−温度特性および熱・酸化安定性を向上することができ、また、当該潤滑油基油に添加剤が配合された場合には、当該添加剤を潤滑油基油中に十分に安定的に溶解保持しつつ、当該添加剤の機能をより高水準で発現させることができる。更に、本発明によれば、潤滑油基油自体の摩擦特性を改善することができ、その結果、摩擦低減効果の向上、ひいては省エネルギー性の向上を達成することができる。
なお、本発明でいう飽和分とは、前記ASTM D 2007−93に記載された方法により測定される。
また、本発明の潤滑油基油における芳香族分は、100℃における動粘度、%Cpおよび%CAが上記条件を満たしていれば特に制限されないが、潤滑油基油全量を基準として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であり、また、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上である。芳香族分の含有量が上記上限値を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性および摩擦特性、更には揮発防止性および低温粘度特性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、第2の潤滑油基油は芳香族分を含有しないものであってもよいが、芳香族分の含有量を上記下限値以上とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
なお、本発明でいう芳香族分とは、ASTM D 2007−93に準拠して測定された値を意味する。
また、合成系基油としては、100℃における動粘度が上記条件を満たしていない、ポリα−オレフィンまたはその水素化物、イソブテンオリゴマーまたはその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でも、ポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)およびそれらの水素化物が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物においては、上記潤滑油基油として一種の潤滑油基油を単独で用いてもよく、また、2種以上の潤滑油基油を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の潤滑油基油として100℃における動粘度が2.0〜12mm2/s、%Cpが90以上、硫黄分が100質量ppm以下である潤滑油基油と他の潤滑油基油とを併用する場合、それらの混合基油中に占める前者の潤滑油基油の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
本発明に係る粘度指数向上剤は、重量平均分子量5,000〜1,000,000万で、かつ粘度/油膜厚さ比が0.2以下のものである。
本発明に係る粘度指数向上剤は、重量平均分子量および粘度/油膜厚さ比に関する上記の条件を満たす限りにおいては、化合物の形態は任意である。具体的な化合物としては、非分散型または分散型ポリ(メタ)アクリレート、スチレン−ジエン水素化共重合体、非分散型または分散型エチレン−α−オレフィン共重合体またはその水素化物、ポリイソブチレンまたはその水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、ポリアルキルスチレンおよび(メタ)アクリレート−オレフィン共重合体またはこれらの混合物等を挙げることができる。
本発明に係る粘度指数向上剤の重量平均分子量(MW)は、5,000以上であることが必要であり、好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは20,000以上であり、特に好ましくは50,000以上である。また、1,000,000以下であることが必要であり、好ましくは500,000以下であり、さらに好ましくは200,000以下であり、特に好ましくは100,000以下である。重量平均分子量が5,000未満の場合には潤滑油基油に溶解させた場合の粘度指数向上効果が小さく省燃費性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがあり、重量平均分子量が1,000,000を超える場合にはせん断安定性や潤滑油基油への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
本発明に係る粘度指数向上剤の粘度/油膜厚さ比は0.2以下であることが必要であり、好ましくは0.19以下であり、さらに好ましくは0.185以下であり、特に好ましくは0.18以下である。粘度/油膜厚さ比を小さくすることは、150℃におけるHTHS粘度を同値に調整した潤滑油組成物において油膜厚さを薄くすることなく動粘度を低くできることを意味する。粘度/油膜厚さ比が0.2を超える場合には、粘性抵抗を抑えるために動粘度を低くすることができないため、モータリング摩擦トルク試験において摩擦トルクを低く抑えることができないおそれがある。
本発明に係る粘度指数向上剤は、100℃におけるHTHS粘度の増粘指数ΔHTHS100と150℃におけるHTHS粘度の増粘指数ΔHTHS150との比ΔHTHS100/ΔHTHS150が0.5〜1.5であることが好ましい。上限はより好ましくは1.45以下、さらに好ましくは1.4以下、特に好ましくは1.35以下であり、下限はより好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.8以上である。ΔHTHS100/ΔHTHS150が0.5未満の場合には、粘度の増加効果や溶解性が小さくコストが上昇するおそれがあり、1.5を超える場合には、粘度温度特性の向上効果や低温粘度特性に劣るおそれがある。
本発明に係る粘度指数向上剤として用いることのできるポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤(ここで言うポリ(メタ)アクリレート系とは、ポリアクリレート系化合物及びポリメタクリレート系化合物の総称)は、好ましくは、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリレートモノマー(以下、「モノマーM−1」という。)を含む重合性モノマーの重合体である。
[一般式(3)中、R
1は水素またはメチル基を示し、R
2は炭素数1〜200の直鎖状または分枝状の炭化水素基を示す。]
一般式(3)で表されるモノマーの1種の単独重合体または2種以上の共重合により得られるポリ(メタ)アクリレート系化合物はいわゆる非分散型ポリ(メタ)アクリレートであるが、本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系化合物は、一般式(5)で表されるモノマーと、下記一般式(4)および(5)から選ばれる1種以上のモノマー(以下、それぞれ「モノマーM−2」および「モノマーM−3」という。)を共重合させたいわゆる分散型ポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
[一般式(4)中、R
3は水素原子またはメチル基を示し、R
4は炭素数1〜18のアルキレン基を示し、E
1は窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基または複素環残基を示し、aは0または1を示す。]
[一般式(5)中、R
5は水素原子またはメチル基を示し、E
2は窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基または複素環残基を示す。
E1およびE2で表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、およびピラジノ基等が例示できる。
モノマーM−2、モノマーM−3の好ましい例としては、具体的には、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン及びこれらの混合物等が例示できる。
モノマーM−1とモノマーM−2〜M−3との共重合体の共重合モル比については特に制限はないが、M−1:M−2〜M−3=99:1〜80:20程度が好ましく、より好ましくは98:2〜85:15、さらに好ましくは95:5〜90:10である。
本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系化合物の重量平均分子量(MW)は、5,000以上であることが好ましく、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは20,000以上であり、特に好ましくは50,000以上である。また、700,000以下であることが好ましく、より好ましくは500,000以下であり、さらに好ましくは200,000以下であり、特に好ましくは100,000以下である。重量平均分子量が5,000未満の場合には潤滑油基油に溶解させた場合の粘度指数向上効果が小さく省燃費性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがあり、重量平均分子量が1,000,000を超える場合にはせん断安定性や潤滑油基油への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
本発明に係る粘度指数向上剤として用いることのできるスチレン−ジエン水素化共重合体は、スチレンとジエンの共重合体を水素化した化合物である。ジエンとしては具体的には、ブタジエン、イソプレン等が使用される。特にスチレンとイソプレンの水素化共重合体であることが好ましい。
スチレン−ジエン水素化共重合体の重量平均分子量(MW)は、5,000以上であることが好ましく、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは15,000以上である。また、100,000以下であることが好ましく、より好ましくは80,000以下であり、さらに好ましくは70,000以下である。重量平均分子量が5,000未満の場合には潤滑油基油に溶解させた場合の粘度指数向上効果が小さく省燃費性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがあり、重量平均分子量が100,000を超える場合にはせん断安定性や潤滑油基油への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
本発明に係る粘度指数向上剤として用いることのできるエチレン−α−オレフィン共重合体またはその水素化物は、エチレンとα−オレフィンの共重合体またはその共重合体を水素化した化合物である。α−オレフィンとしては具体的にプロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が使用される。エチレン−α−オレフィン共重合体は、炭化水素のみからなるいわゆる非分散型のほか、共重合体に窒素含有化合物等の極性化合物を反応させた、いわゆる分散型エチレン−α−オレフィン共重合体も使用することができる。
エチレン−α−オレフィン共重合体またはその水素化物の重量平均分子量(MW)は、5,000以上であることが好ましく、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは30,000以上である。また、500,000以下であることが好ましく、より好ましくは400,000以下であり、さらに好ましくは300,000以下である。重量平均分子量が5,000未満の場合には潤滑油基油に溶解させた場合の粘度指数向上効果が小さく省燃費性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがあり、重量平均分子量が500,000を超える場合にはせん断安定性や潤滑油基油への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
本発明に係る粘度指数向上剤のPSSI(パーマネントシアスタビリティインデックス)は30以下であることが好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは8以下、最も好ましくは6以下である。また、粘度指数向上剤のPSSIの下限は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上である。PSSIが20を超える場合にはせん断安定性が悪化するため、初期の動粘度を高める必要が生じ、省燃費性を悪化させるおそれがある。また、PSSIが1未満の場合には潤滑油基油に溶解させた場合の粘度指数向上効果が小さく、省燃費性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがある。
なお、ここでいう「PSSI」とは、ASTM D 6022−01(StandardPractice for Calculation of Permanent Shear Stability Index)に準拠し、ASTM D 6278−02(TestMetohd for Shear Stability of Polymer Containing Fluids Using a European DieselInjector Apparatus)により測定されたデータに基づき計算された、ポリマーの永久せん断安定性指数(Permanent ShearStability Index)を意味する。
本発明に係る粘度指数向上剤の重量平均分子量とPSSIの比(MW/PSSI)は、好ましくは0.3×104以上、より好ましくは0.5×104以上、更に好ましくは0.7×104以上、特に好ましくは1×104以上である。MW/PSSIが0.3×104未満の場合には、省燃費性や低温始動性すなわち粘度温度特性や低温粘度特性が悪化するおそれがある。
本発明に係る粘度指数向上剤の重量平均分子量(MW)と数平均分子量(MN)の比(MW/MN)は5.0以下であることが好ましく、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.0以下である。また、MW/MNは1.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上、特に好ましくは2.6以上である。MW/MNが4.0以上もしくは1.0以下になると、溶解性と粘度温度特性の向上効果が悪化することにより、十分な貯蔵安定性や、省燃費性が維持できなくなる恐れがある。
本発明では、上記の潤滑油基油に上記特定の要件を満たす粘度指数向上剤、さらには必要に応じて他の添加剤が配合されて本発明の潤滑油組成物が調製されるが、本発明の潤滑油組成物中における粘度指数向上剤の含有量は、組成物全量基準で、0.1〜50.0質量%であることが必要であり、好ましくは0.5〜30.0質量%、より好ましくは1.0〜20.0質量%、さらに好ましくは1.5〜15.0質量%である。含有量が0.1質量%より少ない場合には低温特性が不十分となるおそれがあり、また含有量が50.0質量%を超える場合には組成物のせん断安定性が悪化するおそれがある。
本発明の潤滑油組成物においては、省燃費性能を高めるために、さらに有機モリブデン化合物および無灰摩擦調整剤から選ばれる摩擦調整剤を含有させることができる。
有機モリブデン化合物としては、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオカーバメート等の硫黄を含有する有機モリブデン化合物が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物において、有機モリブデン化合物を用いる場合、その含有量は特に制限されないが、組成物全量を基準として、モリブデン元素換算で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.02質量%以上であり、また、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下である。その含有量が0.001質量%未満の場合、潤滑油組成物の熱・酸化安定性が不十分となり、特に、長期間に渡って優れた清浄性を維持させることができなくなる傾向にある。一方、含有量が0.2質量%を超える場合、含有量に見合う効果が得られず、また、潤滑油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。
本発明で用いられる無灰摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基または直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤等が挙げられる。また下記一般式(6)および(7)で表される窒素含有化合物およびその酸変性誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物や、国際公開第2005/037967号パンフレットに例示されている各種無灰摩擦調整剤が挙げられる。
[一般式(6)において、R
6は炭素数1〜30の炭化水素基または機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基、好ましくは炭素数10〜30の炭化水素基または機能性を有する炭素数10〜30の炭化水素基、より好ましくは炭素数12〜20のアルキル基、アルケニル基または機能性を有する炭化水素基、特に好ましくは炭素数12〜20のアルケニル基であり、R
7およびR
8は、それぞれ個別に、炭素数1〜30の炭化水素基、機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基または水素、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、機能性を有する炭素数1〜10の炭化水素基または水素、さらに好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基または水素、より好ましくは水素であり、Xは酸素または硫黄、好ましくは酸素を示す。]
[一般式(7)中、R
9は炭素数1〜30の炭化水素基または機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基であり、好ましくは炭素数10〜30の炭化水素基または機能性を有する炭素数10〜30の炭化水素基、より好ましくは炭素数12〜20のアルキル基、アルケニル基または機能性を有する炭化水素基、特に好ましくは炭素数12〜20のアルケニル基であり、R
10 、R
11およびR
12は、それぞれ個別に、炭素数1〜30の炭化水素基、機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基または水素、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、機能性を有する炭素数1〜10の炭化水素基または水素、より好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基または水素、さらに好ましくは水素を示す。]
一般式(7)で表される窒素含有化合物としては、具体的には、炭素数1〜30の炭化水素基または機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基を有するヒドラジドおよびその誘導体である。R9が炭素数1〜30の炭化水素基または機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基、R10〜R12が水素の場合、炭素数1〜30の炭化水素基または機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基を有するヒドラジド、R9およびR10〜R12のいずれかが炭素数1〜30の炭化水素基または機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基であり、R10〜R12の残りが水素である場合、炭素数1〜30の炭化水素基または機能性を有する炭素数1〜30の炭化水素基を有するN−ヒドロカルビルヒドラジド(ヒドロカルビルは炭化水素基等を示す)である。
本発明の潤滑油組成物において無灰摩擦調整剤を用いる場合、無灰摩擦調整剤の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。無灰摩擦調整剤の含有量が0.01質量%未満であると、その添加による摩擦低減効果が不十分となる傾向にあり、また3質量%を超えると、耐摩耗性添加剤などの効果が阻害されやすく、あるいは添加剤の溶解性が悪化する傾向にある。
本発明においては、有機モリブデン化合物または無灰摩擦調整剤のいずれか一方のみを用いてもよく、両者を併用してもよいが、有機モリブデン化合物を用いることがより好ましい。
本発明の潤滑油組成物には、さらにその性能を向上させるために、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤(または極圧剤)、腐食防止剤、防錆剤、流動点降下剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等の添加剤等を挙げることができる。
金属系清浄剤としては、アルカリ金属スルホネートまたはアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属フェネートまたはアルカリ土類金属フェネート、およびアルカリ金属サリシレートまたはアルカリ土類金属サリシレート等の正塩、塩基正塩または過塩基性塩などが挙げられる。本発明では、これらからなる群より選ばれる1種または2種以上のアルカリ金属またはアルカリ土類金属系清浄剤、特にアルカリ土類金属系清浄剤を好ましく使用することができる。特にマグネシウム塩および/またはカルシウム塩が好ましく、カルシウム塩がより好ましく用いられる。
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40〜400の直鎖もしくは分枝状のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノまたはビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。
摩耗防止剤(または極圧剤)としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。これらの中では硫黄系極圧剤の添加が好ましく、特に硫化油脂が好ましい。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、またはイミダゾール系化合物等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、または多価アルコールエステル等が挙げられる。
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマー等が使用できる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、またはβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000〜10万mm2/sのシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、それぞれその含有量は組成物全量基準で、0.01〜10質量%である。
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、5.6〜9.0mm2/sであることが好ましく、より好ましくは6.0mm2/s以上、さらに好ましくは6.5mm2/s以上、特に好ましくは7.0mm2/s以上である。また、本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、より好ましくは8.5mm2/s以下、さらに好ましくは8.3mm2/s以下、特に好ましくは8.0mm2/s以下である。100℃における動粘度が5.6mm2/s未満の場合には、潤滑性不足を来たすおそれがあり、9.0mm2/sを超える場合には必要な低温粘度および十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
本発明の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、20〜40mm2/sであることが好ましく、より好ましくは22〜35mm2/s、さらに好ましくは24〜32mm2/sである。40℃における動粘度が20mm2/s未満の場合には、潤滑性不足を来たすおそれがあり、40mm2/sを超える場合には必要な低温粘度および十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
本発明の潤滑油組成物の粘度指数は、150〜350の範囲であることが好ましく、より好ましくは160以上、さらに好ましくは170以上、一層好ましくは180以上である。また、好ましくは300以下であることが好ましく、さらに好ましくは250以下であり、特に好ましくは200以下である。本発明の潤滑油組成物の粘度指数が150未満の場合には、150℃HTHS粘度を維持しながら、省燃費性を向上させることが困難となるおそれがあり、さらに−30℃以下における低温粘度を低減させることが困難となるおそれがある。また、本発明の潤滑油組成物の粘度指数が350以上の場合には、低温流動性が悪化し、更に添加剤の溶解性やシール材料との適合性が不足することによる不具合が発生するおそれがある。
本発明の潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度の下限は、2.6mPa・s以上であることが好ましい。本発明の潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度の上限は、2.9mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2.85mPa・s以下、さらに好ましくは2.8mPa・s以下、特に好ましくは2.7mPa・s以下である。150℃におけるHTHS粘度が2.6mPa・s未満の場合には、潤滑性不足を来たすおそれがあり、2.9mPa・sを超える場合には必要な低温粘度および十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
本発明の潤滑油組成物の100℃におけるHTHS粘度の下限は、3.0mPa・s以上であることが好ましく、好ましくは3.5mPa・s以上、より好ましくは4.0mPa・s以上、特に好ましくは4.2mPa・s以上、最も好ましくは4.5mPa・s以上である。また、本発明の潤滑油組成物の100℃におけるHTHS粘度の上限は、8.0mPa・s以下であることが好ましく、好ましくは7.5mPa・s以下、より好ましくは7.0mPa・s以下、特に好ましくは6.5mPa・s以下である。100℃における動粘度が3.0mPa・s未満の場合には、潤滑性不足を来たすおそれがあり、8.0mPa・sを超える場合には必要な低温粘度および十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
また、本発明の潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度と100℃におけるHTHS粘度との比(150℃におけるHTHS粘度/100℃におけるHTHS粘度)は、0.43以上であることが好ましく、より好ましくは0.44以上、さらに好ましくは0.45以上、特に好ましくは0.46以上である。当該比が0.43未満であると、粘度温度特性が悪化するため、十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
本発明の潤滑油組成物は、省燃費性と低温粘度に優れ、ポリ−α−オレフィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油を用いずとも、150℃におけるHTHS粘度を一定レベルに維持しながら、燃費向上にとって効果的である、潤滑油の40℃および100℃における動粘度および100℃のHTHS粘度を低減したものである。このような優れた特性を有する本発明の潤滑油組成物は、省燃費ガソリンエンジン油、省燃費ディーゼルエンジン油等の省燃費エンジン油として好適に使用することができる。
以下、実施例および比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[粘度指数向上剤の粘度/油膜厚さ比の算出]
以下に示す粘度指数向上剤PMA−1〜4を、それぞれSKエナジー(株)製YUBASE−4に、各粘度指数向上剤を150℃におけるHTHS粘度が2.3mPa・sとなる量を添加して混合物を調製した。得られた各混合物について、25℃動粘度V25およびすべり速度1.0m/s、最大ヘルツ圧0.51GPa、油温25℃の条件下で測定した油膜厚さT25より粘度/油膜厚さ比V25/T25を求めた。得られた結果を表1に示す。なお、表1には、各混合物の25℃における動粘度V25、40℃における動粘度、100℃における動粘度、粘度指数、100℃におけるHTHS粘度、150℃におけるHTHS粘度、100℃におけるHTHS粘度の増粘指数ΔHTHS100、150℃におけるHTHS粘度の増粘指数ΔHTHS150、およびその比ΔHTHS100/ΔHTHS150を併せて示す。
(粘度指数向上剤)
PMA−1:ポリメタクリレート、MW=380,000、PSSI=27、MW/PSSI=1.4×104
PMA−2:ポリメタクリレート、MW=414,000、R=PSSI=4、MW/PSSI=10.35×104
PMA−3:分散型ポリメタクリレート、MW=78,200、PSSI=30、MW/PSSI=0.3×104
PMA−4:ポリメタクリレート、MW=439,000、PSSI=40、MW/PSSI=1.1×104
(実施例1〜2、比較例1〜2)
実施例1〜2および比較例1〜2においては、上記の粘度指数向上剤PMA−1〜4、ならびに、以下に示す基油および添加剤を用いて潤滑油組成物を調製した。基油Xの性状を表2に、潤滑油組成物の組成を表3に、それぞれ示す。
(基油)
基油X:ワックス異性化により製造されたワックス異性化基油
(その他添加剤)
DI添加剤:性能添加剤パッケージ(金属系清浄剤、無灰分散剤、リン系摩耗防止剤、酸化防止剤、消泡剤等を含む)
[潤滑油組成物の評価]
実施例1〜2および比較例1〜2の各潤滑油組成物について、40℃および100℃における動粘度、粘度指数、100℃および150℃におけるHTHS粘度を測定した。各物性値の測定は以下の評価方法により行った。得られた結果を表3に示す。
(1)動粘度:ASTM D−445
(2)粘度指数:JIS K 2283−1993
(3)HTHS粘度:ASTM D4683
(4)摩擦トルクの評価:モータリングトルク試験において下記条件により評価し、比較例1の組成物を基準として摩擦トルク改善率(%)を算出した。表3中の摩擦トルク改善率の値が大きいことは、摩擦トルクが低いことを意味する。
使用エンジン:2400cc、DOHCローラー型動弁系
回転数:1,000〜3,000rpm
油温:80℃
表3に示したように、粘度/油膜厚さ比V25/T25が0.2以下の粘度指数向上剤PMA−1、2を用いた実施例1〜2の組成物は、V25/T25が0.2を超える粘度指数向上剤PMA−3、4を用いた比較例1〜2の組成物と比べて、150℃におけるHTHS粘度を維持しつつ、40℃における動粘度、100℃における動粘度および100℃におけるHTHS粘度が十分に低いものであり、モータリングトルク試験においては摩擦トルク改善率が著しく高い結果を示した。