以下、本発明に係る内視鏡及び内視鏡の製造方法の実施形態(以下、「本実施形態」という)について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る内視鏡を用いた内視鏡システムの全体構成図である。図2は、本実施形態の内視鏡の先端部の構成を示す斜視図である。図3は、第1の実施形態に係る内視鏡の先端部の断面図である。図4は、第1の実施形態に係る内視鏡の先端部においてモールド樹脂を除いた部分の構成を示す斜視図である。
図1では、内視鏡11及びビデオプロセッサ19を含む内視鏡システム13の全体構成を斜視図にて示している。図2では、図1に示した内視鏡11の先端部15の構成を斜視図にて示している。図3では、図2に示した先端部15の構成を断面図にて示している。図4では、図2に示した先端部15においてモールド樹脂17を除いた構成を斜視図にて示している。
なお、本明細書において説明に用いる方向については、各図中の方向の記載に従うものとする。ここで、「上」、「下」は、水平面に置かれたビデオプロセッサ19の上と下にそれぞれ対応し、「前(先)」、「後」は、内視鏡本体(以降「内視鏡11」と呼称する)の挿入部21の先端側とプラグ部23の基端側にそれぞれ対応する。
図1に示すように、内視鏡システム13は、医療用の軟性鏡である内視鏡11と、観察対象(ここでは、人体)の内部を撮影して得られた静止画及び動画に対して周知の画像処理等を行うビデオプロセッサ19と、を有して構成される。内視鏡11は、略前後方向に延在し、観察対象の内部に挿入される挿入部21と、挿入部21の後部が接続されるプラグ部23とを備える。
ビデオプロセッサ19は、その前壁25に開口するソケット部27を有している。このソケット部27には、内視鏡11のプラグ部23の後部が挿入され、これにより、内視鏡11はビデオプロセッサ19との間で電力及び各種信号(映像信号、制御信号など)の送受が可能である。
上述した電力及び各種信号は、軟性部29の内部を挿通された伝送ケーブル31(図3参照)を介してプラグ部23から軟性部29に導かれる。先端部15に設けられた撮像素子33が出力した画像データは、伝送ケーブル31を介してプラグ部23からビデオプロセッサ19に送信される。そして、ビデオプロセッサ19は受信した画像データに対して色補正、階調補正等の画像処理を施して、画像処理済みの画像データを表示装置(図示略)に出力する。表示装置は、例えば液晶表示パネル等の表示デバイスを有するモニタ装置であり、内視鏡11によって撮像された被写体の画像を表示する。
図3に示すように、本実施形態に係る内視鏡11は、先端部15に、レンズユニット35と、撮像素子33と、接着用樹脂37と、を有する。レンズユニット35は、鏡筒39にレンズを収容する。撮像素子33は、撮像面41が素子カバーガラス43によって覆われる。撮像素子33の素子カバーガラス43と反対側の面には、静電気対策用のコンデンサ45が取り付けられている。接着用樹脂37は、例えばUV・熱硬化性樹脂によって構成される。この接着用樹脂37は、撮像面41の中心にレンズの光軸を一致させたレンズユニット35を、離間部47を有して素子カバーガラス43に固定する。これにより、レンズユニット35と撮像素子33とが接着用樹脂37によって直接接着され固定される構成となっている。接着用樹脂37は、例えば、最終的な硬度を得るためには熱処理を必要とするが、紫外線照射によってもある程度の硬度まで硬化が進行するタイプの接着剤である。
挿入部21は、プラグ部23に後端を接続された可撓性の軟性部29と、軟性部29の先端に連なる先端部15とを有している。軟性部29は各種の内視鏡検査、内視鏡手術等の方式に対応する適切な長さを有する。先端部15の最大外径は、例えば約1.5mmとする。
図3に示すように、先端部15は、撮像素子33と、レンズ等を含む筒状の鏡筒39を有するとともに、撮像素子33を後端に支持するレンズユニット35と、撮像素子33の後部に実装された回路基板49とを有して構成される。鏡筒39は、例えば金属製であり、鏡筒39に硬質材料を用いることで、先端部15は硬性部を構成する。
伝送ケーブル31は、回路基板49の後部において電気的に接続され、回路基板49の接続部位は封止用のモールド樹脂17にて被覆される。なお、以降の説明において「接着剤」の用語は、固体物の面と面とを接着するために用いる物質という厳密な意味ではなく、2つの物の結合に用いることができる物質、或いは硬化した接着剤が気体及び液体に対する高いバリア性を備えている場合は、封止材としての機能を有する物質という広い意味で用いられる。
鏡筒39には、光学材料(ガラス、樹脂等)により形成された複数(図示例では、3枚)のレンズL1〜L3と、レンズL1及びレンズL2に挟まれた絞り部材51とが互いに光軸LCの方向に密接した状態で組み込まれている。レンズL1、レンズL3は、全周にわたって鏡筒39の内周面に接着剤により固定されている。鏡筒39の前端はレンズL1によって、後端はレンズL3によって密閉(封止)されており、鏡筒39の内部に空気又は水分等が侵入しないよう構成されている。従って、空気等は鏡筒39の一端から他端へと抜けることができない。なお、以降の説明では、レンズL1〜L3を合わせて光学レンズ群LNZと呼称する。
鏡筒39を構成する金属材料として、例えばニッケルが用いられる。ニッケルは、剛性率が比較的高くかつ耐食性も高く、先端部15を構成する材料として適している。ニッケルに代えて例えば銅ニッケル合金を用いてもよい。銅ニッケル合金も高い耐食性を有しており、先端部15を構成する材料として適している。また、鏡筒39を構成する金属材料としては、好ましくは、電鋳(電気めっき)によって製造が可能な材料を選択する。ここで、電鋳を利用する理由は、電鋳によって製造される部材の寸法精度は1μm未満(いわゆるサブミクロン精度)と極めて高く、さらに多数の部材を製造した際のばらつきも小さいからである。後に説明するように、鏡筒39は極めて小さな部材であり、内外径寸法の誤差は内視鏡11の光学性能(画質)に影響を与える。鏡筒39を例えばニッケル電鋳管により構成することで、小径にもかかわらず高い寸法精度を確保して高画質な画像を撮像することが可能な内視鏡11が得られる。
図3、図4に示すように、撮像素子33は、例えば前後方向から見て正方形形状をなす小型のCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)の撮像デバイスにより構成される。外部から入射した光は、鏡筒内の光学レンズ群LNZによって撮像素子33の撮像面41に結像する。撮像素子33の後部(背面側)に実装された回路基板49は、後方から見て撮像素子33よりもやや小さい外形を有している。撮像素子33は、例えば背面にLGA(Land grid array)を備えており、回路基板49に形成された電極パターンと電気的に接続される。
また、図2に示すように、内視鏡11は、撮像素子33の全体と、レンズユニット35の撮像素子33側の少なくとも一部分とがモールド樹脂17によって覆われる。
次に、内視鏡11の構成を一部変更した変形例を他の実施形態として説明する。
図5は、第2の実施形態に係る内視鏡の先端部の構成を示す斜視図である。第2の実施形態では、図3及び図4に示した内視鏡の先端部15の構成の第1変形例を示す。
第2の実施形態の内視鏡は、図5に示すように、撮像素子33の四隅に、強度を向上させるため、接着用樹脂37を追加して設けている。この場合、レンズユニット35の後端に撮像素子33を位置合わせした後、撮像素子33と当接したレンズユニット35の後端部位のうち、撮像素子33の角部と対向する4つの部位に、接着用樹脂37を塗布する(図5では、4カ所のうち3カ所が描かれている)。この状態において、接着用樹脂37の塗布部分は露出しており、紫外線照射によって接着用樹脂37は数秒程度の短時間で硬化することから、工程に要する時間を短縮することができる。第1変形例の構成によれば、撮像素子33とレンズユニット35との接着部の強度を高められる。
図6は、内視鏡の先端部の他の変形例として第3及び第4の実施形態を示す図であり、図6(A)は第3の実施形態に係る離間部に接着用樹脂が充填された構成の断面図、図6(B)は第4の実施形態に係る離間部に空気層が設けられた構成の断面図である。第3の実施形態は内視鏡の先端部の構成の第2変形例、第4の実施形態は内視鏡の先端部の構成の第3変形例をそれぞれ示す。
第3の実施形態(第2変形例)の内視鏡は、図6(A)に示すように、レンズユニット35と素子カバーガラス43との間の離間部47に、接着用樹脂37が充填された構成としている。図示例のように、レンズL3の撮像側の最終面が、素子カバーガラス43との対向面に凹面を有するものである場合、素子カバーガラス43の平面とレンズL3の凹面との間に、例えば透明などの透光性を有する接着用樹脂37を充填する。この場合、レンズL3の第2面L3R2のレンズ周縁のコバ部55と素子カバーガラス43との距離は、例えば0〜100μmとする。第2変形例の構成では、接着用樹脂37を充填することで、接着部分の強度をさらに向上できる。なお、素子カバーガラス43との対向面である、レンズL3の撮像側の最終面は、凸面を有してもよい。凸面の場合、レンズL3の第2面L3R2の中心部と素子カバーガラス43との距離は、例えば0〜100μmとする。
第4の実施形態(第3変形例)の内視鏡は、図6(B)に示すように、レンズユニット35と素子カバーガラス43との間の離間部47に、空気層53を設けた構成としている。図示例のように、レンズL3の撮像側の最終面が、素子カバーガラス43との対向面に凹面を有するものである場合、素子カバーガラス43の平面とレンズL3の凹面との間に、接着用樹脂37を充填せずに空気層53を形成する。またこの場合、レンズL3の第2面L3R2のレンズ周縁のコバ部55と素子カバーガラス43との距離は、例えば0〜100μmとする。第4の実施形態の構成では、空気層53を設けることで、レンズユニット35の撮像側の最終面における屈折率差が大きくなるので、レンズ設計の自由度が高まる。
図7は、第5の実施形態に係る内視鏡の先端部の構成を示す図であり、図7(A)は先端部の断面図、(B)は(A)の要部拡大図である。第5の実施形態は内視鏡の先端部の構成の第4変形例を示す。
第5の実施形態(第4変形例)の内視鏡は、レンズユニット35のレンズL3の撮像側の最終面がフラットに形成された構成としている。図示例のように、レンズL3の撮像側の最終面を平面で構成した場合、レンズユニット35と素子カバーガラス43とを所定距離だけ離して対向させ、外周部に接着用樹脂37を盛り上げて塗布し、レンズユニット35と素子カバーガラス43とを接着固定する。ここで、レンズユニット35と素子カバーガラス43との間の離間部47の距離は、光学設計の差異によって例えば10〜40μmとする。
図8は、第6の実施形態に係る内視鏡の先端部の構成を示す断面図である。第6の実施形態は内視鏡の先端部の構成の第5変形例を示す。
第6の実施形態(第5変形例)の内視鏡は、レンズユニット35のレンズL3の他の構成例を示すものである。レンズユニット35は、被写体側から撮像側に向かって順に、レンズL1の第1面L1R1が凹面、第2面L1R2が平面、レンズL2の第1面L2R1が平面、第2面L2R2が凸面、最終レンズであるレンズL3の第1面L3R1が凹面、最終面である第2面L3R2が凸面を有して構成される。
凸面であるレンズL3の第2面L3R2と素子カバーガラス43との間の離間部47は、接着用樹脂37が充填されている。この接着用樹脂37によって、レンズユニット35と撮像素子33とが直接接着されて固定される。接着用樹脂37は、透明の接着樹脂材料により構成され、接着用樹脂37の屈折率をnad、レンズL3の屈折率をn3とすると、例えば|n3−nad|>0.01の関係を満たすものを用いる。すなわち、撮像側の端部のレンズL3の屈折率n3に対して、接着用樹脂37の屈折率nadはできるだけ大きな屈折率差があるもの、具体的には、例えば0.01より大きい差を有するものとするのが好ましい。例えば、レンズL3の屈折率n3を1.55とした場合、接着用樹脂37として屈折率nadが1.52のものを用いる。なお、屈折率差が確保できれば、レンズL3の屈折率n3と接着用樹脂37の屈折率nadとの大小関係が逆になるものであってもよい。
また、レンズL3の第2面L3R2と撮像素子33の撮像面41との間の離間部47の間隔は、第2面L3R2の凸面中心部の突出した部分において、例えば0〜100μmとする。すなわち、第2面L3R2の中心部と撮像面41とが当接した状態から100μm離間した状態までの寸法範囲とする。これにより、レンズユニット35と撮像素子33との光軸方向の距離を0〜100μmの範囲で調整してフォーカス位置調整(ピント合わせ)を行い、容易に組み付けることができる。
また、レンズユニット35の撮像側の少なくとも一部、撮像素子33の外周部、及び伝送ケーブル31の先端側接続部近傍は、封止用の樹脂部材として、例えば黒色などの遮光性を有するモールド樹脂17によって封止されている。レンズユニット35と撮像素子33との接続固定部位は、被写体像の光線を透過する透明材料などの透光性を有する接着用樹脂37の外周部に、黒色などの遮光性を有するモールド樹脂17を設けて被覆する二重構造としている。
第6の実施形態では、レンズL3と接着用樹脂37の屈折率差を0.01より大きくすることにより、レンズL3の第2面L3R2における屈折効果が大きくなる。これにより、光学レンズ群LNZの撮像側の最終面であるレンズL3の第2面L3R2を有効に機能させて屈折力を得ることができ、光学レンズ群LNZにおいて使用可能な光学面数が増加する。この結果、光学レンズ群LNZの光学性能(解像度、色収差、歪など)に関して、必要な光学性能を得るためのレンズ枚数を削減でき、小型化及びコスト低減を図ることができる。また、レンズL3の第2面L3R2を凸面とし、曲面において接着用樹脂37により接着することによって、接着用樹脂37の接触面積が大きくなり、接着強度を向上できる。また、透光性の接着用樹脂37と遮光性のモールド樹脂17との二重構造とすることによって、内視鏡先端部の耐久性及び強度を向上できる。また、離間部47の間隔をレンズL3の中心部にて0〜100μmとすることによって、レンズユニット35の各部品の光軸方向の厚み寸法公差、及びレンズユニット35と撮像素子33との組み付け寸法公差を緩和できるため、組立性を向上でき、また部品コストも低減できる。
図9は、第7の実施形態に係る内視鏡の先端部の構成を示す断面図である。第7の実施形態は内視鏡の先端部の構成の第6変形例を示す。
第7の実施形態(第6変形例)の内視鏡は、レンズユニット35のレンズL3のさらに他の構成例を示すものである。レンズユニット35は、被写体側から撮像側に向かって順に、レンズL1の第1面L1R1が凹面、第2面L1R2が平面、レンズL2の第1面L2R1が平面、第2面L2R2が凸面、最終レンズであるレンズL3の第1面L3R1が凸面、最終面である第2面L3R2が凹面を有して構成される。すなわち、図8に示した第6の実施形態とはレンズL3の凹凸が逆になっている構成例である。ここでは、第6の実施形態と構成が異なる部分についてのみ説明する。
凹面であるレンズL3の第2面L3R2と素子カバーガラス43との間の離間部47は、接着用樹脂37が充填されている。離間部47の間隔は、第2面L3R2の凹面周辺部、すなわち第2面L3R2のレンズ周縁のコバ部において、例えば0〜100μmとする。すなわち、第2面L3R2の周辺部と撮像面41とが当接した状態から100μm離間した状態までの寸法範囲とする。
第7の実施形態によれば、第6の実施形態と同様に、レンズL3と接着用樹脂37の屈折率差を0.01より大きくすることにより、必要な光学性能を得るためのレンズ枚数を削減でき、小型化及びコスト低減を図ることができる。また、レンズL3の第2面L3R2を凹面とし、曲面において接着用樹脂37により接着することによって、接着用樹脂37の接触面積が大きくなり、接着強度を向上できる。また、離間部47の間隔をレンズL3の周辺部にて0〜100μmとすることによって、レンズユニット35の光軸方向の厚み寸法公差、及びレンズユニット35と撮像素子33との組み付け寸法公差を緩和できるため、組立性を向上でき、また部品コストも低減できる。
なお、図8に示した第6の実施形態、図9に示した第7の実施形態において、図6(B)に示した第4の実施形態と同様に、レンズL3の周辺部のみを接着用樹脂にて接着してレンズ中央部分に空気層を設ける構成としてもよい。この場合は、接着用樹脂の屈折率に関係なく、レンズL3の第2面L3R2において十分な屈折力を得ることができる。
ここで、本実施形態の内視鏡の寸法の一例を示す。なお、以下に示す数値は一つの具体例を示すものであり、用途、使用環境等に応じて種々の例が考えられる。
一例として、レンズユニット35は、前後方向にS=1.4mmの長さを有するものとする。また、鏡筒39の断面は、外径がD=1.00mmの円形をなしており、その内径はd=0.90mmの円形とする。この場合、鏡筒39の径方向における厚みは、(D−d)/2=50μmとなる。また、撮像素子33は、前面視において一辺の長さT=1.00mmの正方形形状をなし、その中央部にはこれも前面視において正方形形状をなす撮像面41が設けられるものとする。
ここで、鏡筒39の外周(外径=D)をなす円は、撮像素子33が構成する正方形に略内接し、かつ撮像面41が構成する正方形に外接する関係としている。そして、撮像面41の中央(撮像面41の対角線の交点)、レンズユニット35の中央(レンズユニット35の内周がなす円の中心)、鏡筒39の中央(鏡筒39の外周がなす円の中心)の位置は一致しており、ここを光軸LCが貫通する。より正確には、撮像面41の中央を貫通する法線が光軸LCであって、この光軸LCがレンズユニット35の中央を貫通するように、レンズユニット35が撮像素子33に対して位置合わせされている。
次に、第1〜第7の実施形態におけるレンズユニット35の各レンズL1、L2、L3のコーティングについて説明する。
レンズの表面は、光量の低下やフレアゴーストの発生を防ぐために、単層や複層の薄膜が蒸着される。薄膜の材質としては、酸化チタン(TiO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの金属酸化物や、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)などの金属や、酸化ケイ素(SiO2)、炭化ケイ素(SiC)、ケイ素(Si)、フッ化マグネシウム(MgF2)などが用いられる。また、一般的に、単層の場合や複層の場合の最表層には、最表面の防汚効果を求めてフッ化マグネシウムが使用される。しかし、第1〜第7の実施形態では最終レンズであるレンズL3の最終面である第2面L3R2が接着用樹脂37によって撮像素子33に固定されるが、フッ化マグネシウムが最表面にコーティングされると接着強度が著しく低下する。そのため、レンズL3の第2面L3R2の最表面にはフッ化マグネシウム以外の、金属酸化物や金属や酸化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ素などを使用することが望ましい。
また、無機材料と有機材料とを化学的に結合する働きがあるトリメチルシラン(C3H10Si)などのシランカップリング剤をレンズL3の第2面L3R2の最表面に使用することによって、無機材料であるレンズL3と有機材料である接着用樹脂37との接着強度を高めてもよい。
次に、上記構成を有する本実施形態の内視鏡11の製造方法(先端部15の製造工程)を説明する。
図10は、内視鏡の製造方法の第1例を説明する図であり、図10(A)は位置調整治具の構成図、図10(B)はレンズユニットと撮像素子の固定時の側面図、図10(C)はXY方向の位置合わせ時の映像説明図、図10(D)はZ方向の位置合わせ時の映像説明図である。なお、ここでは、XY方向とは図1に示した左右上下方向、Z方向とは図1に示した前後方向を言う。
内視鏡の製造方法の第1例では、位置調整治具57を用いて、レンズユニット35の後端を撮像素子33によって塞ぐように固定する。位置調整治具57は、センサ支持部59と、第1XYZステージ61と、レンズユニット支持部63と、第2XYZステージ65と、平面台67と、テストチャート69と、を備える。
センサ支持部59は、撮像素子33の下面を支持する。第1XYZステージ61は、センサ支持部59を保持して前後左右及び上下方向に位置調整が可能となる(マイクロステージを用いることが望ましい)。レンズユニット支持部63は、レンズユニット35を両側面から水平に支持する。第2XYZステージ65は、レンズユニット支持部63を保持して前後左右及び上下方向に位置調整が可能となる。テストチャート69は、レンズユニット35の被写体となり、撮像されることによって被写体像のケラレ、及びピントが参照可能となるパターンを有する。平面台67は、テストチャート69と、センサ支持部59及びレンズユニット支持部63を共通に支持する。
先端部15の組立は、上記の位置調整治具57が使用され、基本的には作業者による顕微鏡を用いた手作業で行われる。
まず、予めレンズユニット35と撮像素子33との少なくとも一方に、接着用樹脂37を塗布する。そして、レンズユニット35を支持し、第1XYZステージ61に支持した撮像素子33を移動させながら、撮像素子33で撮像した画像を参照して、レンズユニット35の光軸と撮像素子33の撮像面41の中心とを位置合わせする。具体的には、例えば図10(C)に示すように、鏡筒39及びレンズL3の中心と映像中心71とを位置合わせする。撮像素子33の映像は、撮像素子33の端子にプローブ(図示略)を当てて画像信号を取り出し、表示装置(図示略)に画像表示することにより得る。
次いで、レンズユニット35と撮像素子33との光軸に沿う方向を位置合わせする。この位置合わせの工程では、レンズユニット35の前後方向の位置を調整することで、図10(D)に示すように、テストチャート69からの入射光を撮像素子33の撮像面41に合焦させる。すなわち、図10(B)に示すように、レンズユニット35の位置を光軸LC方向に調整することでピント合わせを行う。
レンズユニット35の位置調整時には、伝送ケーブル31と回路基板49とは、接続されていなくても、接続されていても、いずれでもよい。伝送ケーブル31と回路基板49とが接続されていない場合、上記のように、撮像素子33の端子にプローブを当てて画像信号を取り出し、テスト用の被写体画像を表示装置に表示する。
一方、撮像素子33に伝送ケーブル31が接続されている場合には、撮像素子33の出力を上述したビデオプロセッサ19により処理して、表示装置に表示させることが可能である。被写体として所定のテストチャート69(例えば、解像度チャート)を用いることで、レンズユニット35の位置調整が容易となり、位置合わせの工程に要する時間を短縮することができる。
レンズユニット35と撮像素子33との位置調整が完了した段階では、レンズユニット35と、撮像素子33との間から接着用樹脂37が若干露出していることが望ましい。接着用樹脂37の量が不足している場合は、レンズユニット35と撮像素子33との間に接着用樹脂37を注入する。注入された接着用樹脂37は、毛細管現象によって、レンズユニット35と撮像素子33との間に充填される。
レンズユニット35の後端に撮像素子33を位置合わせした後、紫外線照射を行って接着用樹脂37を硬化させ、接着用樹脂37にてレンズユニット35と撮像素子33を仮固定する。紫外線照射は、レンズユニット35と撮像素子33の相対的な前後位置を維持した状態で、露出している接着用樹脂37に対して行う。この紫外線照射による接着用樹脂37の硬化によって、レンズユニット35の後端近傍で撮像素子33が仮固定される。紫外線照射によって接着用樹脂37は数秒程度の短時間で硬化することから、工程に要する時間を短縮できる。仮固定されたレンズユニット35と撮像素子33は、位置調整治具57から取り外される。
その後、熱処理により接着用樹脂37をさらに硬化させ、接着用樹脂37にてレンズユニット35と撮像素子33を本固定する。この熱処理による接着用樹脂37の硬化によって、レンズユニット35と撮像素子33とが強く固定される。
次いで、先端部15には、モールド樹脂17によってレンズユニット35の後部と撮像素子33とを覆うモールド処理を施す。モールド処理の工程では、レンズユニット35に対して、少なくとも、レンズユニット35の後端よりも後方に位置する撮像素子33、回路基板49及び伝送ケーブル31の先端(撮像素子33との電気的な接続部位)を覆うように、モールド樹脂17を塗布して固着させ、封止部を構成する。
このとき、モールド樹脂17は撮像素子33の前面を越えて、レンズユニット35の後端をも覆うように塗布することで、離間部47が確実に閉塞される。ここで用いられるモールド樹脂17は、少なくとも撮像素子33、回路基板49、伝送ケーブル31の先端、隙間を覆い尽くせる程度の高い粘度を備えており、撮像素子33より後方及び離間部47から、先端部15の内部に水分の侵入を阻止する封止を主目的として塗布されるものである。
また、モールド樹脂17を用いて図示する形状を容易に作り出すために、樹脂型を用いて封止部を形成してもよい。この場合、予め樹脂型(図示略)をレンズユニット35の後端から伝送ケーブル31の先端まで覆うように配置しておき、ここにモールド樹脂17を流し込み、硬化させ、樹脂型を取り外す。
モールド樹脂17としては、種々の周知の接着剤を用いることができるが、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの熱硬化性樹脂による接着剤を用いるとよい。さらに、これらの樹脂にカーボン粒子を含有させた黒色系の樹脂を採用することが望ましい。これにより、外部からの迷光が撮像素子33の撮像面41に入射することを防止できる。
この後、先端部15を60℃〜80℃の環境下に30分間程度置き、これによって撮像素子33、回路基板49、伝送ケーブル31の先端、及び離間部47を被覆するモールド樹脂17を完全に硬化させる。モールドの処理の工程が終了すると、内視鏡11の先端部15の組立が完了する。
図11は、内視鏡の製造方法の第2例を説明する図であり、図11(A)はカメラ付位置調整治具の構成図、図11(B)はレンズユニットと撮像素子の固定時の側面図、図11(C)は第2カメラを用いた位置合わせ時の映像説明図、図11(D)は第1カメラを用いた位置合わせ時の映像説明図、図11(E)はZ方向の位置合わせ時の映像説明図である。なお、図10に示した部材と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第1例と同様、XY方向とは図1に示した左右上下方向、Z方向とは図1に示した前後方向を言う。
内視鏡の製造方法の第2例では、カメラ付位置調整治具73を用いて、レンズユニット35の後端を撮像素子33によって塞ぐように固定する。カメラ付位置調整治具73には、撮像素子33を前方から観察する第1の動画カメラ付き顕微鏡(以降、「第1カメラ77」と呼称する)、及びレンズユニット35を後方から観察する第2の動画カメラ付き顕微鏡(以降、「第2カメラ75」と呼称する)が含まれる。
第1カメラ77と第2カメラ75とは一体に構成されて左右(或いは上下、前後)を同時に撮影可能な構成を有する。以降、この一体構成のカメラを「左右カメラ79」と呼称する。第1カメラ77及び第2カメラ75は、それぞれの光軸が極めて高精度に合わせ込まれた状態で撮影方向が180度異なっている。左右カメラ79は第2XYZステージ65に取り付けられて、カメラ付位置調整治具73のセンサ支持部59とレンズユニット支持部63との間に配置される。センサ支持部59は、第1XYZステージ61に支持される。第1XYZステージ61、第2XYZステージ65、レンズユニット支持部63は、平面台67に設けられる。平面台67には、テストチャート69が取り付けられる。
カメラ付位置調整治具73において、第1XYZステージ61によって支持されたセンサ支持部59とレンズユニット支持部63との平行度は予め調整され高精度に合わせ込まれている。なお、撮像素子33の装着にあたり、撮像素子33の底面はセンサ支持部59に仮止めされている。仮止めを行う方法として、例えばセンサ支持部59に多数の微細孔を設けて、この微細孔を真空ポンプに接続して撮像素子33を真空吸着するとよい。
先端部15の組立は、上記のカメラ付位置調整治具73が使用され、基本的には作業者による顕微鏡を用いた手作業で行われる。まず、予めレンズユニット35と撮像素子33との少なくとも一方に、接着用樹脂37を塗布する。
そして、図11(A)に示すように、光軸が一致する第1カメラ77及び第2カメラ75を備える左右カメラ79を撮像素子33とレンズユニット35との間に配置する。続いて、図11(D)に示すように、第1カメラ77により撮像した映像を参照して撮像素子33の撮像面41の中心を映像中心71に移動させる。そして、図11(C)に示すように、第2カメラ75により撮像した映像を参照してレンズユニット35の中心を映像中心71に移動させる。その後、図11(B)に示すように、左右カメラ79を退避させた後に、図11(E)に示すように、撮像素子33により撮像した映像を参照してレンズユニット35と撮像素子33との光軸に沿う方向の距離を調整する。
位置合わせの工程において、第2カメラ75によりレンズユニット35の後端を撮影した映像を参照して第2XYZステージ65の位置を調整することで、左右カメラ79(正確には左右カメラ79の光軸)をレンズユニット35の中心(径方向の中央位置)に合わせる。第1カメラ77により撮像した映像を参照して第1XYZステージ61の左右位置を調節し、センサ支持部59に支持された撮像素子33の撮像面41の中心を画面上のXY座標の中心、つまりレンズユニット35の中心位置に移動させる。これにより、撮像素子33の撮像面41の中心、つまり光軸LCが固体によってばらついていても、レンズユニット35と撮像素子33とを光軸LCを基準として位置合わせすることができる。
そして、センサ支持部59とレンズユニット支持部63との間から左右カメラ79を退避させ、第1XYZステージ61の前後位置を調節し、センサ支持部59に支持された撮像素子33をレンズユニット35の後端に当接させる。
以上の作業によって、レンズユニット35の後端に撮像素子33を位置合わせした後、第1例と同様、接着用樹脂37の露出している塗布部分に紫外線照射を行って接着用樹脂37を硬化させ、接着用樹脂37にてレンズユニット35と撮像素子33を仮固定する。このようにして、レンズユニット35の後端に撮像素子33が位置合わせの後に装着される。
その後、第1例と同様、熱処理により接着用樹脂37にてレンズユニット35と撮像素子33を本固定する。次いで、第1例と同様、モールド処理を行い、内視鏡11の先端部15の組立を完了する。
次に、上記の構成を有する本実施形態の内視鏡11の作用を説明する。
本実施形態に係る内視鏡11では、レンズユニット35と撮像素子33とが、接着用樹脂37によって所定距離保持した状態で固定される。固定されたレンズユニット35と撮像素子33とは、レンズユニット35の光軸と、撮像面41の中心とが位置合わせされている。また、レンズユニット35と撮像素子33との距離は、レンズユニット35を通る被写体からの入射光が、撮像素子33の撮像面41に合焦する距離で位置合わせされている。レンズユニット35と撮像素子33とは、位置合わせされた後に固定されている。
固定されたレンズユニット35と撮像素子33との間には、離間部47が形成される。この離間部47は、レンズユニット35と撮像素子33とが、相対的に位置合わせされ、相互が接着用樹脂37によって固定されることで、形状が定まる。すなわち、離間部47は、レンズユニット35と撮像素子33との位置合わせ用の調整ギャップとなっている。この調整ギャップは、無くなることはない。上述した寸法の具体例では、少なくとも30μm程度から100μm程度までの間で調整が行われる。この際の公差は±20μmとなる。従って、この場合の最小の調整ギャップは、10μmで残存することになる。
内視鏡11では、離間部47が調整ギャップとなってレンズユニット35と撮像素子33の位置合わせが完了した後、この離間部47が接着用樹脂37の固定スペースに利用される。これにより、レンズユニット35と撮像素子33とを直接に固定可能としている。これにより、従来必要であった、レンズユニット35を撮像素子33に固定するためのフレーム又はホルダ等の介装部材が不要となっている。また、フレーム又はホルダ等を省略できるため、部品点数が削減されて固定構造が簡素になる。これにより、内視鏡11の先端部15を小径化することができ、更なる細径化を図る場合であっても、最小限の寸法で構成できる。また、部品コストを削減できる。さらに、レンズユニット35と撮像素子33とを固定する際の介在部品が少ないので、位置合わせ及び固定にかかる作業に必要な作業工数を削減でき、かつ高精度な位置合わせが容易に可能となる。また、製造コストを低減できるとともに、生産性を向上させることができる。
また、内視鏡11では、撮像素子33の全体がモールド樹脂17によって覆われる。より具体的には、モールド樹脂17は、撮像素子33に接続される伝送ケーブル31の外被も覆う。モールド樹脂17は、少なくともレンズユニット35の一部分(撮像素子33との隣接部分)も覆う。「少なくとも」とは、モールド樹脂17が、鏡筒39の外周全体を覆ってもよいという意味である。モールド樹脂17は、撮像素子33とレンズユニット35とを覆うことで、その間の離間部47も連続して覆う。従って、モールド樹脂17は、撮像素子33とレンズユニット35とに渡って連続して成形されることで、撮像素子33とレンズユニット35との固定強度の増大に寄与する。また、モールド樹脂17は、離間部47の気密性、水密性、遮光性も高める。さらに、モールド樹脂17は、ライトガイド用の光ファイバが埋入された際の遮光性も高める。
また、内視鏡11では、素子カバーガラス43と、撮像素子側のレンズの光出射面とが接着用樹脂37によって固定される。これにより、レンズユニット35と撮像素子33は、接着用樹脂37によって高強度に固定される。
接着用樹脂37は、透光性を有し、屈折率が空気に近いものが好ましい。接着用樹脂37として、UV・熱硬化性樹脂を用いる場合、外表部分を紫外線照射により硬化できるとともに、紫外線を照射できない充填接着剤の内部を、熱処理によって硬化させることができる。
また、内視鏡11では、素子カバーガラス43に対面するレンズの光出射面が凹面である場合、レンズの周囲の円環端面(コバ部)55が素子カバーガラス43に接着される。この際、レンズの外周、鏡筒39の外周も同時に接着用樹脂37によって固定されてもよい。レンズと撮像素子33との間に、空気層53が設けられることで、レンズの光学的性能を高めることができる。例えば、レンズから空気層53への出射光の屈折率を大きくできる。これにより、解像度を高める、画角を大きくするなどの光学設計が容易になる。その結果、画質が向上する。
本実施形態に係る内視鏡11の第1の製造方法では、位置調整治具57を用いて、撮像素子33の出力を利用してレンズユニット35と撮像素子33の位置合わせを行い、別途、位置合わせ用のカメラ等を用いない。このように、撮像素子33によって得られる映像を直接利用することで、容易に位置調整が可能となる。そして、位置合わせを行ったレンズユニット35と撮像素子33とを直接固定できる。これにより、固定作業の工数を少なくでき、作業時間を短縮できる。また、多部材を介在させない高精度な位置合わせができる。
本実施形態に係る内視鏡11の第2の製造方法では、カメラ付位置調整治具73を用いて、レンズユニット35と撮像素子33とをそれぞれ撮影してレンズユニット35と撮像素子33の位置合わせを行う。これにより、撮像素子33の撮像面41の中心、つまり光軸が固体によってばらついていても、レンズユニット35と撮像素子33とを左右カメラ79の光軸を基準として位置合わせすることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る内視鏡11及び内視鏡11の製造方法によれば、小型化、コスト低減、生産性向上を図ることができる。
本発明に係る実施形態の種々の態様として、以下のものが含まれる。
本発明の一態様の内視鏡は、鏡筒にレンズを収容するレンズユニットと、撮像面が素子カバーガラスによって覆われる撮像素子と、前記撮像面の中心に前記レンズの光軸を一致させた前記レンズユニットを、離間部を有して前記素子カバーガラスに固定する接着用樹脂と、を備える。
この構成によれば、離間部が調整ギャップとなってレンズユニットと撮像素子の位置合わせが完了した後、この離間部が接着用樹脂の固定スペースに利用される。これにより、レンズユニットと撮像素子とを直接に固定可能としている。これにより、従来必要であった、レンズユニットを撮像素子に固定するためのフレーム又はホルダ等の介装部材が不要となっている。また、部品点数が削減されて固定構造が簡素になる。また、介在部品が少ないので、固定作業に必要な作業工数が削減でき、かつ高精度な位置合わせが容易に可能となる。その結果、内視鏡の先端部を小径化することができる。また、製造コストを低減できるとともに、生産性を向上させることができる。
また、本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記撮像素子の全体と、前記レンズユニットの少なくとも一部分とがモールド樹脂によって覆われるものでもよい。
この構成によれば、撮像素子の全体がモールド樹脂によって覆われる。より具体的には、モールド樹脂は、撮像素子に接続される伝送ケーブルの外被も覆う。モールド樹脂は、少なくともレンズユニットの一部分(撮像素子との隣接部分)も覆う。「少なくとも」とは、モールド樹脂が、鏡筒の外周全体を覆ってもよい意味である。モールド樹脂は、撮像素子とレンズユニットとを覆うことで、その間の離間部も連続して覆う。従って、モールド樹脂は、撮像素子とレンズユニットとに渡って連続して成形されることで、撮像素子とレンズユニットとの固定強度の増大に寄与する。また、モールド樹脂は、離間部の気密性、水密性、遮光性も高める。さらに、モールド樹脂は、ライトガイド用の光ファイバが埋入された際の遮光性も高める。
また、本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記離間部に前記接着用樹脂が充填されるものでもよい。
この構成によれば、素子カバーガラスと、撮像素子側のレンズの光出射面とが接着用樹脂によって固定される。これにより、レンズユニットと撮像素子は、接着用樹脂によって高強度に固定される。接着用樹脂は、透光性を有し、屈折率が空気に近いものが用いられる。この場合、接着用樹脂としては、UV・熱硬化性樹脂が好適に用いられる。UV・熱硬化性樹脂によれば、紫外線が照射できない充填接着剤の内部を、熱処理によって硬化させることができる。
また、本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記離間部に前記レンズからの光が通る空気層が設けられるものでもよい。
この構成によれば、素子カバーガラスに対面するレンズの光出射面が凹面である場合、レンズの周囲の円環端面が素子カバーガラスに接着される。この際、レンズの外周、鏡筒の外周も同時に接着用樹脂によって固定されてもよい。レンズと撮像素子との間に、空気層が設けられることで、レンズの光学的性能を高めることができる。例えば、レンズから空気層への出射光の屈折率を大きくできる。これにより、解像度を高めたり、画角を大きくしたりすることができる。その結果、画質が向上する。
また、本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記レンズユニットにおける前記撮像素子側の最終レンズの最終面は、凹面又は凸面を有して構成されるものでもよい。
この構成によれば、レンズユニットの最終面の凹面又は凸面において屈折力を持たせることによって、必要な光学性能を得るためのレンズ枚数を削減でき、小型化及びコスト低減を図れる。また、曲面において接着用樹脂により接着することによって、接着用樹脂の接触面積が大きくなり、接着強度が向上する。
また、本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記最終面と前記素子カバーガラスとの間の前記離間部に前記接着用樹脂が充填され、前記最終レンズの屈折率と前記接着用樹脂の屈折率とが所定値以上の屈折率差を有するものでもよい。
この構成によれば、レンズユニットの最終面の凹面又は凸面を有効に機能させて屈折力を得ることができ、光学レンズ群において使用可能な光学面数が増加するため、必要な光学性能を得るためのレンズ枚数を削減でき、小型化及びコスト低減を図れる。
また、本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記離間部において前記光軸方向に所定範囲の距離を有して前記レンズユニットと前記撮像素子とが接着固定されるものでもよい。
この構成によれば、レンズユニットの各部品の光軸方向の厚み寸法公差、及びレンズユニットと撮像素子との組み付け寸法公差を緩和できるため、組立性を向上でき、また部品コストも低減できる。
また、本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記レンズユニットにおける前記撮像素子側の最終レンズの最終面の最表面は、フッ化マグネシウム以外であるものでもよい。
また、本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記レンズユニットにおける前記撮像素子側の最終レンズの最終面の最表面は、金属酸化物、金属、酸化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ素の何れかであるものでもよい。
この構成によれば、レンズユニットと撮像素子とを接着用樹脂によって固定する場合に、接着強度の低下を抑制できる。
さらに、本発明の一態様の内視鏡の製造方法は、レンズユニットと撮像素子との少なくとも一方にUV・熱硬化性樹脂を塗布し、前記レンズユニットを支持し、XYZステージに支持した前記撮像素子を移動させながら、前記撮像素子により撮像した画像を参照して、前記レンズユニットの光軸と前記撮像素子の撮像面の中心とを位置合わせし、かつ前記レンズユニットと前記撮像素子との前記光軸に沿う方向を位置合わせし、紫外線を照射して前記UV・熱硬化性樹脂にて前記レンズユニットと前記撮像素子を仮固定した後、熱処理により前記UV・熱硬化性樹脂にて前記レンズユニットと前記撮像素子を本固定する。
この方法によれば、撮像素子の出力を利用することで、別途、位置合わせ用のカメラ等を用いない。撮像素子によって得られる映像を直接利用して、容易に位置調整が可能となる。そして、映像を得ることに利用したレンズユニットと撮像素子を直接固定できる。これにより、固定作業の工数を少なくでき、作業時間を短縮できる。多部材を介在させない高精度な位置合わせができる。
また、本発明の一態様の内視鏡の製造方法は、レンズユニットと撮像素子との少なくとも一方にUV・熱硬化性樹脂を塗布し、光軸が一致する第1カメラ及び第2カメラを備える左右カメラを前記撮像素子と前記レンズユニットとの間に配置し、前記第1カメラにより撮像した映像を参照して前記撮像素子の撮像面の中心を画面上の中心に移動させ、前記第2カメラにより撮像した映像を参照して前記レンズユニットの中心を画面上の中心に移動させ、前記左右カメラを退避させた後に前記撮像素子により撮像した映像を参照して前記レンズユニットと前記撮像素子との前記光軸に沿う方向の距離を調整し、紫外線を照射して前記UV・熱硬化性樹脂にて前記レンズユニットと前記撮像素子を仮固定した後、熱処理により前記UV・熱硬化性樹脂にて前記レンズユニットと前記撮像素子を本固定する。
この方法では、第2カメラによりレンズユニットの後端を撮影した映像を参照して左右カメラの位置を調整することで、左右カメラをレンズユニットの中心に合わせる。次に、第1カメラにより撮像した映像を参照して撮像素子の左右位置を調節し、撮像素子の撮像面の中心を画面上のXY座標の中心、つまりレンズユニットの中心位置に移動させる。その後、レンズユニットと撮像素子との間から左右カメラを退避させ、撮像素子の光軸に沿う方向の距離を調節する。XYZ方向の位置合わせが完了したなら、接着用樹脂が紫外線照射によって仮固定される。その後、熱処理によって、UV・熱硬化性樹脂が内部まで硬化され、レンズユニット支持部と撮像素子が本固定される。
この方法によれば、撮像素子の撮像面の中心、つまり光軸が固体によってばらついていても、レンズユニットと撮像素子とを左右カメラの光軸を基準として位置合わせすることができる。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。