JP2015174936A - 樹脂組成物、混練物および成形体 - Google Patents

樹脂組成物、混練物および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】機械物性に優れ、機械物性の異方性が低減された成形体および混練物と、成形体を優れた成形性で成形することのできる樹脂組成物とを提供すること。【解決手段】フッ素系樹脂と、酢酸ビニル含有量が60質量%以上であり、構成単位として、CH2CH(OCOCH3)単位を含み、CH2−CR1R2単位を任意的に含むポリ酢酸ビニル系樹脂とを含有する樹脂組成物であり、ポリ酢酸ビニル系樹脂の、フッ素系樹脂およびポリ酢酸ビニル系樹脂の総量に対する含有割合が、10質量%以上であり、樹脂組成物のゲル分率は、10質量%未満である。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、混練物および成形体、詳しくは、樹脂組成物、それから得られる混練物および成形体に関する。
フッ素系樹脂は、耐薬品性、耐熱性、耐候性に優れており、種々の成形体に成形されることが知られている。一方、フッ素系樹脂は、成形性が比較的低いことから、フッ素系樹脂に、それ以外の樹脂を配合することによって、フッ素系樹脂の成形性の向上を図ることが検討されている。
例えば、フッ素系ポリマーと、酢酸ビニル含有量が5〜50重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体とを含有するホットメルト接着組成物が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
また、熱可塑性フッ素含有樹脂5〜95重量%、および、エチレン重合体に酢酸ビニルをグラフト反応条件に付して得られ、全酢酸ビニル含量が5〜70重量%である改質重合体95〜5重量%、からなる熱可塑性フッ素含有樹脂配合組成物が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
さらに、四フッ化エチレン−プロピレン共重合体と、酢酸ビニル含量が50重量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体との混合物を架橋して成る耐熱性樹脂組成物が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。
特開平10−130607号公報 特公平4−20940号公報 特開平3−149250号公報
しかるに、フッ素系樹脂を含有する樹脂組成物から成形された成形体には、優れた機械物性、例えば、優れた引張破断性が要求される場合がある。
しかし、特許文献1に記載のホットメルト接着組成物および特許文献2に記載の熱可塑性フッ素含有樹脂配合組成物では、上記した機械物性が不十分であるという不具合がある。
また、樹脂組成物から押出成形などの成形方法により成形体、例えば、フィルムを連続して成形する場合には、フィルムの流れ方向(MD方向)の引張破断性およびフィルムの幅方向(TD方向)の引張破断性の異方性の低減、すなわち、MD方向の引張破断性とTD方向の引張破断性とが同一あるいは近似すること(換言すれば、優れた等方性)が要求される場合もある。
しかし、特許文献1に記載のホットメルト接着組成物および特許文献2に記載の熱可塑性フッ素含有樹脂配合組成物では、フィルムの異方性を低減させることができないという不具合がある。
また、特許文献3に記載の耐熱性樹脂組成物は、架橋しているため、成形性が低く、そのため、成形体の連続的な生産に不適である。
本発明の目的は、機械物性に優れ、機械物性の異方性が低減された成形体および混練物と、成形体を優れた成形性で成形することのできる樹脂組成物とを提供することにある。
上記した目的を達成するために、本発明の樹脂組成物は、フッ素系樹脂と、酢酸ビニル含有量が60質量%以上であり、構成単位として、下記式で示されるI単位を含み、下記式で示されるII単位を任意的に含み、かつ、前記I単位および前記II単位を含む場合には、前記I単位および前記II単位の結合形式が、下記式(1−1)、式(1−2)、式(2−1)および式(2−2)からなる群から選択されるの少なくともいずれかの式で示される結合形式のみからなるポリ酢酸ビニル系樹脂とを含有する樹脂組成物であり、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂の、前記フッ素系樹脂および前記ポリ酢酸ビニル系樹脂の総量に対する含有割合が、10質量%以上であり、前記樹脂組成物のゲル分率は、10質量%未満であることを特徴としている。
(式中、R1は、水素原子および/またはメチル基を示し、R2は、水素原子、水酸基、アリール基およびアルコキシカルボニル基(COOR)からなる群から選ばれる少なくとも1つを示す。前記式COOR中、R3は、アルキル基を示す。)
(式(1−1)〜(2−2)中、R1およびR2は、上記と同一である。)
また、本発明の樹脂組成物では、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂が、エチレンと酢酸ビニルとを共重合させることにより得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好適である。
また、樹脂組成物では、前記フッ素系樹脂が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂であることが好適である。
また、本発明の混練物は、上記した樹脂組成物を溶融混練することにより得られることを特徴としている。
また、本発明の混練物は、前記フッ素系樹脂および前記ポリ酢酸ビニル系樹脂が互いに相溶する均一相を含有することが好適である。
また、本発明の成形体は、上記した樹脂組成物を成形することにより得られることを特徴としている。
また、本発明の成形体は、押出成形することにより得られることが好適である。
また、本発明の成形体は、前記フッ素系樹脂および前記ポリ酢酸ビニル系樹脂が互いに相溶する均一相を含有することが好適である。
本発明の樹脂組成物は、フッ素系樹脂と特定のポリ酢酸ビニル系樹脂とを特定の含有割合で含有するので、機械物性およびその異方性が低減された本発明の混練物および成形体を得ることができる。
また、本発明の樹脂組成物は、ゲル分率が特定値未満であるので、成形性に優れる。
図1は、実施例1のフィルムのMD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図2は、実施例2のフィルムのMD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図3は、実施例3のフィルムのMD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図4は、実施例4のフィルムのMD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図5は、実施例5のフィルムのMD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図6は、実施例6のフィルムのMD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図7は、実施例6のフィルムのTD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図8は、実施例7のフィルムのMD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図9は、実施例7のフィルムのTD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図10は、比較例1のフィルムのMD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図11は、比較例1のフィルムのTD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図12は、比較例2のフィルムのMD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図13は、比較例2のフィルムのTD断面のSEM写真の画像処理図を示す。 図14は、比較例3のフィルムのMD断面のSEM写真の画像処理図を示す。
本発明の樹脂組成物は、フッ素系樹脂と、ポリ酢酸ビニル系樹脂とを含有する。
フッ素系樹脂は、分子中にフッ素原子を含む合成高分子(合成樹脂)である。フッ素系樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニルなどの、二重結合を形成する炭素(α−炭素)にフッ素原子が結合するフッ素原子含有ビニルモノマーの1種から得られる単独重合体、例えば、2種以上のフッ素原子含有ビニルモノマーから得られる共重合体などが挙げられる。共重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンなどのα−オレフィン、例えば、パーフルオロブチルエチレンなどのフルオロアルキル基を有するフルオロオレフィン(フルオロアルキル基のアルキル基の炭素数は、例えば、1〜21である。)、例えば、アルキルビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類(アルキルビニルエーテルのアルキル基の炭素数は、例えば、1〜21である。)、例えば、フルオロアルキルメタクリレート、フルオロアルキルアクリレートなどのフルオロ(メタ)アクリレート類、例えば、塩化ビニル、例えば、塩化ビニリデン、例えば、ヘキサフルオロイソブチレン、例えば、ペンタフルオロプロピレンなどの、上記したフッ素原子含有ビニルモノマー以外のビニルモノマーと、上記したフッ素原子含有ビニルモノマーとの共重合体も挙げられる。また、フッ素系樹脂として、例えば、酸無水物などの官能基含有化合物で修飾されたフッ素系樹脂の変性物も挙げられる。
フッ素系樹脂は、単独使用することができ、あるいは、2種以上併用(ブレンド)することもできる。
具体的には、フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などのポリフッ化ビニリデン系樹脂、例えば、ポリフッ化ビニル、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン−パーフルオロアルキルエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのポリテトラフルオロエチレン系樹脂、例えば、ポリヘキサフルオロプロピレンなどのポリヘキサフルオロプロピレン系樹脂、例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体などのクロロフルオロ系樹脂などが挙げられる。
フッ素系樹脂として、加工性や耐熱性を向上させる観点から、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂が挙げられ、より好ましくは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が挙げられる。
フッ素系樹脂として、市販品を用いることができ、具体的には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂として、カイナーシリーズ(アルケマ社製)などが用いられる。
フッ素系樹脂がポリフッ化ビニリデン系樹脂である場合には、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を、好ましくは、全構成単位中に85モル%以上含有する(100モル%である場合を含む)。一方、フッ素系樹脂がポリテトラフルオロエチレン系樹脂である場合には、テトラフルオロエチレンに由来する構成単位を、全構成単位中に、好ましくは、20モル%以上含有する(100モル%である場合を含む)。
フッ素系樹脂がポリフッ化ビニリデン系樹脂である場合には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、温度230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは、例えば、0.03g/10分以上、好ましくは、0.3g/10分以上であり、また、例えば、60g/10分以下、好ましくは、30g/10分以下である。MFRが上記範囲であれば成形加工時に押出機の背圧が高くなり過ぎず、成形体の生産性に優れる。
一方、フッ素系樹脂がポリテトラフルオロエチレン系樹脂である場合には、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂がテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン−パーフルオロアルキルエチレン共重合体などであれば温度297℃、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂がポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などであれば温度372℃で、荷重49NにおけるMFRは、いずれも、例えば、0.03g/10分以上、好ましくは、0.3g/10分以上であり、また、例えば、60g/10分以下、好ましくは、30g/10分以下である。MFRが上記範囲であれば成形加工時に押出機の背圧が高くなり過ぎず、成形体の生産性に優れる。
フッ素系樹脂のMFRは、JIS K6935−2(1999年)に準拠して測定される。
フッ素系樹脂の融点は、例えば、100℃以上、好ましくは、150℃以上であり、また、例えば、350℃以下、好ましくは、300℃以下である。フッ素系樹脂の融点は、JIS K6935−2(1999年)に準拠して測定される。
フッ素系樹脂の、フッ素系樹脂およびポリ酢酸ビニル系樹脂の総量に対する含有割合は、90質量%以下であり、好ましくは、85質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、75質量%以下であり、また、例えば、0質量%を超過し、好ましくは、25質量%以上、より好ましくは、40質量%以上である。
ポリ酢酸ビニル系樹脂は、構成単位として、下記式で示されるI単位を含み、下記式で示されるII単位を任意的に含む。
(式中、R1は、水素原子および/またはメチル基を示し、R2は、水素原子、水酸基、アリール基およびアルコキシカルボニル基(COOR)からなる群から選ばれる少なくとも1つを示す。式COOR中、R3は、アルキル基を示す。)
II単位中、R1は、好ましくは、水素原子である。
II単位中、R2で示されるアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチルなどの、炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。好ましくは、フェニル基が挙げられる。
II単位中、R2で示されるアルコキシカルボニル基(COOR)中、R3は、例えば、メチル、エチル、プロピルなどの炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくは、メチルである。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル(COOCH)などが挙げられる。
II単位中、R2として、好ましくは、水素原子が挙げられる。
ポリ酢酸ビニル系樹脂は、構成単位として、上記したI単位のみを含む場合(具体的には、ポリ酢酸ビニル系樹脂が構成単位としてII単位を含まない場合)には、酢酸ビニルを単独重合させることにより得られる単独重合体である。
一方、ポリ酢酸ビニル系樹脂は、構成単位として、I単位およびII単位の両単位を含む場合には、酢酸ビニルと、II単位を形成可能なビニルモノマーとの共重合体である。
ビニルモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン、例えば、スチレンなどの芳香族系ビニルモノマー、例えば、ビニルアルコールなどの水酸基含有ビニルモノマー、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。ビニルモノマーとして、好ましくは、α−オレフィン、より好ましくは、エチレンが挙げられる。
ポリ酢酸ビニル系樹脂は、構成単位として、I単位およびII単位の両単位を含む場合には、I単位およびII単位に対するI単位のモル分率は、例えば、33モル%以上、好ましくは、50モル%以上であり、また、例えば、95モル%以下、好ましくは、90モル%以下である。一方、I単位およびII単位に対するII単位のモル分率は、例えば、67モル%以下、好ましくは、50モル%以下であり、また、例えば、5モル%以上、好ましくは、10モル%以上である。
ポリ酢酸ビニル系樹脂は、構成単位として、I単位およびII単位を含む場合には、I単位およびII単位の結合形式が、下記式(1−1)、式(1−2)、式(2−1)および式(2−2)からなる群から選択される少なくともいずれかの式で示される結合形式のみからなる。
(式(1−1)〜(2−2)中、R1およびR2は、上記と同一である。)
換言すれば、ポリ酢酸ビニル系樹脂が構成単位としてI単位およびII単位の両単位を含む場合には、ポリ酢酸ビニル系樹脂は、下記式(3)および/または式(4)で示されるグラフト構造を有しない。
(式(3)および(4)中、X1および/またはX2は、水素原子、または、−[CHCH(OCOCH)]−を示す。X1およびX2のいずれか一方は、必ず−[CHCH(OCOCH)]−である。Rは、上記したR1またはR2である。pは、1以上の整数である。)
従って、ポリ酢酸ビニル系樹脂は、構成単位としてI単位およびII単位の両単位を含む場合には、式(1−1)〜(2−2)におけるI単位およびII単位から直鎖状に形成される。よって、そのようなポリ酢酸ビニル系樹脂から成形される成形体は、耐破断性に優れる。
つまり、ポリ酢酸ビニル系樹脂は、上記した酢酸ビニルの単独重合体であるか、あるいは、酢酸ビニルとCH=CRとをランダム共重合またはブロック共重合させることにより得られる共重合体である。
単独重合体としては、例えば、ポリ酢酸ビニルが挙げられる。
共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−酢酸ビニル共重合体などのα−オレフィン−酢酸ビニル共重合体、例えば、スチレン−酢酸ビニル共重合体、例えば、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの部分けん化物)、例えば、アクリル酸メチル−酢酸ビニル共重合体、メタクリル酸メチル−酢酸ビニル共重合体などの(メタ)アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
ポリ酢酸ビニル系樹脂として、引張破断性の向上の観点から、好ましくは、共重合体、より好ましくは、α−オレフィン−酢酸ビニル共重合体、さらに好ましくは、エチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとをランダム共重合またはブロック共重合させることにより得られる共重合体である。
ポリ酢酸ビニル系樹脂のムーニー粘度は、中心値として、例えば、25ML(1+4)100℃以上、好ましくは、成形性を向上させる観点から、28ML(1+4)100℃以上であり、また、例えば、40ML(1+4)100℃以下、好ましくは、成形性を向上させる観点から、35ML(1+4)100℃以下である。ムーニー粘度は、ASTM D 1464に準拠して測定される。
また、ポリ酢酸ビニル系樹脂の平均分子量は、ポリ酢酸ビニル系樹脂のムーニー粘度が上記した範囲となるように、適宜設定される。
ポリ酢酸ビニル系樹脂は、同一種類を単独使用、あるいは、複数種類を併用することもできる。
ポリ酢酸ビニル系樹脂として、市販品を用いることができ、具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体として、レバプレンシリーズ(ランクセス社製)などが用いられる。
ポリ酢酸ビニル系樹脂における酢酸ビニル含有量は、60質量%以上であり、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、70質量%を超過し、さらに好ましくは、75質量%以上、とりわけ好ましくは、80質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下(つまり、ポリ酢酸ビニル系樹脂がポリ酢酸ビニルである場合を含む)、好ましくは、100質量%未満、より好ましくは、95質量%以下、さらに好ましくは、90質量%以下、とりわけ好ましくは、90質量%未満、最も好ましくは、85質量%以下である。
酢酸ビニル含有量は、JIS K 7192に準拠して測定される。
酢酸ビニル含有量が60質量%未満であれば、引張破断性の異方性を低減することができない。一方、酢酸ビニル含有量が60質量%以上であれば、引張破断性の異方性を低減することができる。
さらに、酢酸ビニル含有量が70質量%を超過し、さらには、75質量%以上、とりわけ、80質量%以上である場合には、引張破断性の異方性を低減することができるとともに、樹脂組成物からなる混練物および成形体が、フッ素系樹脂およびポリ酢酸ビニル系樹脂の均一相(後述、図1〜5参照)を含むことができる。混練物および成形体は、均一相を含むと、1つのガラス転移温度を有することができ、また、透明性に優れる。
また、酢酸ビニル含有量が、100質量%未満、さらに、95質量%以下、とりわけ、90質量%以下、とりわけ好ましくは、90質量%未満である場合には、引張破断性を向上させることができる。
特に、酢酸ビニル含有量が、70質量%を超過し、さらには、75質量%以上、とりわけ、80質量%以上であり、かつ、90質量%未満、さらには、85質量%以下である場合には、引張破断性を向上させることができるとともに、引張破断性の異方性を低減することができる。さらに、混練物および成形体が上記した均一相を含むことができる。
ポリ酢酸ビニル系樹脂の、フッ素系樹脂およびポリ酢酸ビニル系樹脂の総量に対する含有割合は、10質量%以上であり、例えば、15質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、25質量%以上であり、また、例えば、100質量%未満、好ましくは、75質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。
ポリ酢酸ビニル系樹脂の含有割合が10質量%未満であれば、樹脂組成物から成形される成形体の引張破断性を向上させることができない。一方、ポリ酢酸ビニル系樹脂の含有割合が10質量%以上であれば、成形体の引張破断性を向上でき、さらに、引張破断性の異方性を十分に低減させることができる。
また、ポリ酢酸ビニル系樹脂の含有割合が20質量%以上、さらには、25質量%以上であれば、成形体の引張破断性を向上させることができる。
他方、ポリ酢酸ビニル系樹脂の含有割合が75質量%以下、さらには、60質量%以下である場合には、樹脂組成物は、優れた耐熱性を保持することができる。
なお、樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、フッ素系樹脂およびポリ酢酸ビニル系樹脂の以外の、他の樹脂を適宜の含有割合で含有することもできる。他の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、アクリル系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂などが挙げられる。他の樹脂として、好ましくは、フッ素系樹脂がポリフッ化ビニリデン系樹脂である場合には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂との相溶性を向上させる観点から、アクリル系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂が挙げられる。
なお、樹脂組成物には、上記した樹脂(フッ素系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂および他の樹脂)の他に、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜の添加割合で添加することができる。添加剤は、成形加工性、生産性および成形体の諸物性を改良−調整する目的で添加され、例えば、耳などのトリミングロスなどから発生するリサイクル樹脂、例えば、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウムなどの無機粒子、例えば、酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料、さらには、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤などが挙げられる。
一方、上記した添加剤として、架橋剤は樹脂組成物の成形性を低下させるおそれがあるので、樹脂組成物は架橋剤を含有しないことが好ましい。但し、樹脂組成物は、実質的に架橋しない程度、詳しくは、樹脂組成物の後述するゲル分率が特定値未満となるように、極めて微量の架橋剤を含有することができる。
樹脂組成物が架橋剤を含有すれば、成形体の連続的な生産が困難となる場合があり、また、1次成形により、架橋された成形体を、2次成形に供することが困難となる場合がある。
一方、この樹脂組成物は、架橋剤を含有しない場合には、成形体の連続的な生産が容易であり、また、1次成形された成形体を、2次成形に容易に供することができる。
そして、樹脂組成物は、上記したフッ素系樹脂およびポリ酢酸ビニル系樹脂、ならびに、必要により、他の樹脂および添加剤を、上記した含有割合で配合することにより、調製される。
具体的には、樹脂組成物の各成分を配合して、それらを溶融混練することにより、混練物を調製する。その後、混練物を成形することにより、成形体を得る。溶融混練の温度は、例えば、100℃以上、好ましくは、150℃以上であり、また、例えば、350℃以下、好ましくは、300℃以下である。
あるいは、樹脂組成物の各成分を配合して溶融混練しながら、混練物の成形体を一度に成形することもできる。
樹脂組成物から混練物および/または成形体を成形するには、例えば、押出成形機、射出成形機、ブロー成形機、圧縮プレス、カレンダーロールなどの成形機が用いられ、好ましくは、混練物を成形体に連続して成形できる観点から、押出成形機が用いられる。
押出成形機は、例えば、押出機と、押出機の流れ方向下流側に設けられる成形機と、成形機の下流側に必要により設けられるキャスト機とを備える。押出機は、樹脂組成物を加熱して溶融混練できるように構成されており、例えば、単軸押出機、二軸押出機などが挙げられる。成形機は、押出機により溶融混練された混練物を所定形状に成形できるように構成されており、例えば、Tダイ、丸ダイ、ストランドダイなどの口金が挙げられる。キャスト機は、成形体をフィルムに成形する場合には、成形機により成形されたフィルムを冷却および固化しながら、さらに所望の形状および寸法(厚み)に調整できるように構成されており、例えば、キャストロールなどが挙げられる。キャスト機における冷却および固化の温度は、フッ素系樹脂の融点などに応じて、適宜設定される。
成形体としては、例えば、フィルム(シート)、ペレット、ブロックなどが挙げられ、好ましくは、フィルムが挙げられる。樹脂組成物がフィルムとして成形される場合には、フィルムの厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、20μm以上、とりわけ好ましくは、50μm以上、最も好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、10000μm以下、好ましくは、5000μm以下、より好ましくは、1000μm以下、さらに好ましくは、500μm以下である。
混練物および成形体は、ポリ酢酸ビニル系樹脂における酢酸ビニル含有量が70質量%を超過し、さらには、75質量%以上、とりわけ、80質量%以上である場合には、例えば、図1〜図5が参照されるように、フッ素系樹脂およびポリ酢酸ビニル系樹脂が互いに相溶する均一相を含有する。
具体的には、樹脂組成物は、酢酸ビニル含有量が70質量%を超過し、さらには、75質量%以上、とりわけ、80質量%以上であって、フッ素系樹脂およびポリ酢酸ビニル系樹脂からなる場合(つまり、他の樹脂を含有しない場合)には、図1〜図5が参照されるように、混練物および成形体は、上記した均一相のみからなる。そのため、混練物および成形体は、1つのガラス転移温度を有するとともに、透明性に優れる。その結果、混練物および成形体は、光学特性に優れる。
なお、樹脂組成物は、酢酸ビニル含有量が70質量%を超過し、さらには、75質量%以上、とりわけ、80質量%以上であって、フッ素系樹脂およびポリ酢酸ビニル系樹脂と、それらに対して非相溶である他の樹脂(例えば、ポリエステル系樹脂など)とを含有する場合には、図示しないが、上記した均一相(第1相)と、他の樹脂からなる第2相とを含む。
一方、ポリ酢酸ビニル系樹脂における酢酸ビニル含有量が75質量%未満、60質量%以上である場合には、図6〜図9が参照されるように、フッ素系樹脂からなるフッ素系樹脂相(1)と、フッ素系樹脂相(1)に対して非相溶であり、ポリ酢酸ビニル系樹脂からなるポリ酢酸ビニル系樹脂相(2)とを有する。この場合に、混練物および成形体には、フッ素系樹脂相(1)およびポリ酢酸ビニル系樹脂相(2)からなり、両相が連続相となる二相構造(海島構造)が形成される。そのため、混練物および成形体は、2つのガラス転移温度を有するとともに、透明性が低下する。
そして、このようにして樹脂組成物から成形された成形体は、樹脂組成物が架橋剤を含有しないことから、混練物および成形体は、架橋構造を含まず、そのため、ゲル分率を低減させることができる。
具体的には、混練物および成形体のゲル分率は、10質量%未満であり、好ましくは、5質量%未満、より好ましくは、3質量%未満、さらに好ましくは、1質量%未満であり、また、0質量%以上である。ゲル分率が、上記した上限以上であれば、成形体の成形性が低下する。ゲル分率の測定方法は、後の実施例で記載される。
そして、上記した樹脂組成物は、フッ素系樹脂と特定のポリ酢酸ビニル系樹脂とを特定の含有割合で含有するので、機械物性およびその異方性、とりわけ、引張破断性およびその異方性が低減された混練物および成形体を得ることができる。
具体的には、樹脂組成物を押出成形によりフィルムに成形する場合には、フィルムのMD方向およびTD方向の引張破断伸度は、それぞれ、例えば、200%以上、好ましくは、400%以上、より好ましくは、500%以上、さらに好ましくは、600%以上であり、また、例えば、2000%以下である。引張破断伸度が上記した下限以上であれば、引張破断性に優れる。引張破断伸度の測定方法は、後の実施例で詳述される。
このようなフィルムでは、引張破断性の異方性が、低減されている。すなわち、フィルムのMD方向の引張破断性とTD方向の引張破断性とが同一あるいは近似する。つまり、フィルムの引張破断性の等方性に優れる。
具体的には、フィルムのMD方向の引張破断伸度の、フィルムのTD方向の引張破断伸度に対する比(MD方向の引張破断伸度/TD方向の引張破断伸度)は、例えば、0.5以上、好ましくは、0.8以上であり、また、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下である。なお、上記した比は、1に近ければ、より異方性が低減され、つまり、等方性に優れる。
そのため、このような成形体は、機械物性、とりわけ、引張破断性に優れ、かつ、その異方性が低減されていること(等方性に優れること)が要求される分野、具体的には、被覆部材、パッキング部材、摺動部材などとして好適に用いられる。
成形体の全光線透過率は、成形体が厚み200μmのフィルムである場合には、例えば、70%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上であり、また、例えば、100%以下である。全光線透過率が上記下限以上であれば、成形体は、透明性に優れる。そのため、そのような成形体は、光学用途や包装用途、具体的は、成形体を介した視認性が求められる用途などに好適に用いられる。全光線透過率の測定方法は、後の実施例で詳述される。
さらに、上記した樹脂組成物から成形される成形体のゲル分率は、特定値未満であるので、樹脂組成物は、成形性に優れる。そのため、樹脂組成物から連続的に成形体を成形することできる押出成形になどよって、成形体の製造効率を向上させることができる。
さらに、樹脂組成物は、架橋剤を含有しないので、成形体を製造した後に、架橋する必要がなく、そのため、成形体の製造工程を簡略化することができる。
以下に、実施例および比較例を示し、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、以下に示す実施例の数値は、上記した実施形態において記載され、対応する数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
さらに、以下の各実施例および各比較例で用いた原材料の詳細は以下の通りである。
(フッ素系樹脂)
・A−1:ポリフッ化ビニリデン(製品名:カイナー710、アルケマ社製、融点:170℃、MFR:9g/10分(温度230℃、荷重2.16kg))
(ポリ酢酸ビニル系樹脂)
・B−1:エチレン−酢酸ビニル共重合体(製品名:レバプレン800HV、ランクセス社製、酢酸ビニル含有量:80質量%、ムーニー粘度:28±6ML(1+4)100℃)
・B−2:エチレン−酢酸ビニル共重合体(製品名:レバプレン900HV、ランクセス社製、酢酸ビニル含有量:90質量%、ムーニー粘度:38±6ML(1+4)100℃)
・B−3:エチレン−酢酸ビニル共重合体(製品名:レバプレン700HV、ランクセス社製、酢酸ビニル含有量:70質量%、ムーニー粘度:27±4ML(1+4)100℃)
・B−4:エチレン−酢酸ビニル共重合体(製品名:レバプレン600HV、ランクセス社製、酢酸ビニル含有量:60質量%、ムーニー粘度:27±4ML(1+4)100℃)
・B−5:エチレン−酢酸ビニル共重合体(製品名:エバフレックスEV45LX、三井・デュポンポリケミカル社製、酢酸ビニル含有量:46質量%)
・B−6:エチレン−酢酸ビニル共重合体(製品名:エバフレックスEV270、三井・デュポンポリケミカル社製、酢酸ビニル含有量:28質量%)
[フィルムの成形]
(実施例1)
フッ素系樹脂(A−1)を70質量%、ポリ酢酸ビニル系樹脂(B−1)を30質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイでフィルム状に成形(賦形)した後、100℃に設定したキャストロールで冷却固化し、厚み200μmのフィルムを得た。
(実施例2)
実施例1のフッ素系樹脂(A−1)を85質量%、ポリ酢酸ビニル系樹脂(B−1)を15質量%の割合に変更した以外は、実施例1と同一の条件で処理して、厚み200μmのフィルムを得た。
(実施例3)
実施例1のフッ素系樹脂(A−1)を55質量%、ポリ酢酸ビニル系樹脂(B−1)を45質量%の割合に変更した以外は、実施例1と同一の条件で処理して、厚み200μmのフィルムを得た。
(実施例4)
実施例1のフッ素系樹脂(A−1)を40質量%、ポリ酢酸ビニル系樹脂(B−1)を60質量%の割合に変更した以外は、実施例1と同一の条件で処理して、厚み200μmのフィルムを得た。
(実施例5)
実施例1のポリ酢酸ビニル系樹脂(B−1)をポリ酢酸ビニル系樹脂(B−2)に変更した以外は、実施例1と同一の条件で処理して、厚み200μmのフィルムを得た。
(実施例6)
実施例1のポリ酢酸ビニル系樹脂(B−1)をポリ酢酸ビニル系樹脂(B−3)に変更した以外は、実施例1と同一の条件で処理して、厚み200μmのフィルムを得た。
(実施例7)
実施例1のポリ酢酸ビニル系樹脂(B−1)をポリ酢酸ビニル系樹脂(B−4)に変更した以外は、実施例1と同一の条件で処理して、厚み200μmのフィルムを得た。
(比較例1)
実施例1のポリ酢酸ビニル系樹脂(B−1)をポリ酢酸ビニル系樹脂(B−5)に変更した以外は、実施例1と同一の条件で処理して、厚み200μmのフィルムを得た。
(比較例2)
実施例1のポリ酢酸ビニル系樹脂(B−1)をポリ酢酸ビニル系樹脂(B−6)に変更した以外は、実施例1と同一の条件で処理して、厚み200μmのフィルムを得た。
(比較例3)
実施例1のフッ素系樹脂(A−1)を95質量%、ポリ酢酸ビニル系樹脂(B−1)を5質量%の割合に変更した以外は、実施例1と同一の条件で処理して、厚み200μmのフィルムを得た。
(比較例4)
フッ素系樹脂(A−1)のみを2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイでフィルム状に成形(賦形)した後、100℃に設定したキャストロールで冷却固化し、厚み200μmのフィルムを得た。
[フィルムの評価]
各実施例および各比較例のフィルムの評価方法について詳述する。なお、各実施例および各比較例のフィルムの流れ(引き取り)方向を「MD」方向とし、MD方向および厚み方向に直交する方向を「TD」方向として説明する。
(1)ゲル分率
各実施例および各比較例で得られたフィルムの質量を予め測定し、次いで、フィルムを、質量を予め測定した金網に入れ、次いで、120℃のジメチルホルムアミドに8時間浸漬した。その後、浸漬後の金網(金網内に残存するフィルムの不溶成分を含む)の質量を測定した。その後、フィルムに含まれる不溶成分の質量を算出し、浸漬後の不溶成分の質量の、浸漬前のフィルムの質量に対する百分率(=100×浸漬後の不溶成分の質量/浸漬前のフィルムの質量)をゲル分率として算出した。
(2)引張破断伸度(耐破断性)
各実施例および各比較例で得られたフィルムを幅15mmの短冊状に切り出してサンプルを得、得られたサンプルについて、チャック間40mm、引張速度200mm/minで、MD方向およびTD方向の引張破断伸度を測定した。なお、各方向の引張破断伸度は、JIS K7127(1999年)に準拠して、測定される。
以下の評価基準で、フィルムの耐破断性を評価した。
○:引張破断伸度が200%以上である。
×:引張破断伸度が200%未満である。
(3)耐破断性の異方性
上記した引張強伸度測定で得られた値から、各実施例および各比較例のフィルムにおける、MD方向の引張破断伸度の、TD方向の引張破断伸度に対する比(MD方向の引張破断伸度/TD方向の引張破断伸度)を求め、以下の評価基準で耐破断性の異方性を評価した。
×:比が、0.5未満
○:比が、0.5以上、0.8未満
◎:比が、0.8以上、1.2以下
○:比が、1.2超過、1.5以下
×:比が、1.5超過
(4)全光線透過率測定
各実施例および各比較例で得られたフィルムの全光線透過率測定を実施し、以下の評価基準で透明性を評価した。具体的には、全光線透過率測定では、JIS K7375(2008年)の「プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に準拠した。
◎:全光線透過率が80%以上
○:全光線透過率が80%未満、70%以上
×:全光線透過率が70%未満
(5)ガラス転移温度(Tg)
各実施例および各比較例で得られたフィルムから、TD方向に長い短冊状のサンプル(幅(MD方向長さ)4mm、TD方向長さ35mm)に切り出し、動的粘弾性測定を実施した。動的粘弾性測定は、測定周波数10Hz、測定歪0.1%、チャック間距離25mm、測定温度−100℃から、昇温速度3℃/minで、昇温した。このとき、得られるサンプルの貯蔵弾性率(E´)、および、損失弾性率(E´´)の比から、損失正接(tanδ=E´/E´´)を算出し、そのピークトップ温度を、フィルムのガラス転移温度(Tg)として求めた。
なお、ピークトップが1つ認められる場合には、ガラス転移温度(Tg)を1つ求め、ピークトップが2つ認められる場合には、ガラス転移温度(Tg)を2つ求めた。
(6)走査型電子顕微鏡(SEM)観察
実施例1〜7および比較例1〜3のそれぞれで得られたフィルムの断面のSEM観察した。それらを図1〜図14に示す(表1参照)。
具体的には、実施例1〜5(図1〜5)および比較例3(図14)については、フィルムのMD断面のSEM観察で均一相が確認されたので、TD断面のSEM観察を行った。
一方、実施例6(図6および7)、実施例7(図8および9)、比較例1(図10および11)、および、比較例2(図12および13)については、フィルムのMD断面、および、TD断面の両断面をSEM観察した。
他方、比較例4については、ポリフッ化ビニリデンのみから成形されているため、フィルムのMD断面およびTD断面のいずれについてもSEM観察しなかった。
(7)融解吸熱エンタルピー(ΔHm)
各実施例および各比較例で得られたフィルムの示差走査熱量測定(DSC)を実施した。DSCでは、30℃から200℃まで走査速度10℃/minで昇温した後、200℃で1分間保持し、次いで、200℃から30℃まで走査速度10℃/minで降温した後、30℃で1分間保持し、その後、30℃から200℃まで走査速度10℃/minで再昇温した。再昇温過程における融解吸熱ピークのピーク面積から、融解吸熱エンタルピー(ΔHm)を算出した。
表1には、樹脂組成物の各成分の含有割合(質量%)を記載するとともに、フィルムの評価結果を記載する。また、表1には、特許文献2に記載される第1表の実施例3の処方および結果を参考比較例として転記する。
[考察]
(1) 引張破断伸度および異方性
表1から分かるように、実施例1〜7については、ポリフッ化ビニリデンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、酢酸ビニル含有量が60質量%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ポリフッ化ビニリデンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体の総量に対して10質量%以上含有する。そのため、TD方向およびMD方向の両方向の引張破断伸度が高く、かつ、引張破断伸度の異方性が低減されている。とりわけ、実施例1〜5については、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が70質量%を超過するので、引張破断伸度の異方性が顕著に低減されている。
一方、比較例1および2については、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が60質量%未満であるため、TD方向の引張破断伸度が低下し、かつ、引張破断伸度の異方性が高い。また、比較例3については、エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有割合が10質量%未満であるので、TD方向およびMD方向の両方向の引張破断伸度が低下し、かつ、引張破断伸度の異方性が高い。さらに、比較例4については、エチレン−酢酸ビニル共重合体が配合されていないので、MD方向およびTD方向の引張破断伸度が低下し、かつ、引張破断伸度の異方性が高い。参考比較例については、エチレン−酢酸ビニル共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体に酢酸ビニルがグラフト重合したグラフト共重合体であるので、引張破断伸度が低下している。
(2) 相溶性(均一相の有無)
実施例1〜5および比較例3については、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が70質量%を超過するので、図1〜5および14から分かるように、ポリフッ化ビニリデンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体が互いに相溶する均一相が観察され、ポリフッ化ビニリデンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体の相溶性に優れる。
一方、実施例6および7は、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が70質量%以下で、かつ、60質量%以上であるので、図6〜9から分かるように、ポリフッ化ビニリデンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体の相溶性が低く、そのため、ポリフッ化ビニリデンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体のそれぞれがフィルム中で分離して、ポリフッ化ビニリデンからなるフッ素系樹脂相(1)、および、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなるポリ酢酸ビニル系樹脂相(2)からなる二相構造を形成する。
(3) 透明性
表1から分かるように、実施例1〜5については、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が70質量%を超過するのに対し、実施例6および7は、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が70質量%以下、かつ、60質量%以上である。そのため、図1〜9が参照されるように、実施例1〜5は、均一相を形成する一方、実施例6および7は、二相構造を形成する。そのため、実施例1〜5は、全光線透過率が、実施例6および7のそれに対して高く、そのため、透明性が向上されている。
(4) ガラス転移温度
表1から分かるように、実施例1〜5については、動的粘弾性測定において、1つのピークトップのみが認められ、そのため、ガラス転移温度(Tg)を1つ有する。
一方、実施例6および7については、動的粘弾性測定において、2つのピークトップが認められ、そのため、ガラス転移温度(Tg)を2つ有する。
(5)成形性(ゲル分率)
表1から分かるように、実施例1〜7については、ゲル分率が10質量%未満である。そのため、実施例1〜7は、成形性に優れる。
(6)融解吸熱エンタルピー(ΔHm)
実施例1〜7のそれぞれにおける融解吸熱エンタルピー(ΔHm)は、(実施例1〜7の組成物に含まれるポリフッ化ビニリデンの割合)と(比較例4のΔHm)の積よりも大きな値を示す。つまり、ポリフッ化ビニリデンにエチレン−酢酸ビニル共重合体を配合した樹脂組成物のΔHmは、ポリフッ化ビニリデン(比較例4)のΔHmに対して、低下せず、そのため、耐熱性に優れること示す。
本発明の樹脂組成物から成形される成形体は、例えば、被覆部材、パッキング部材、摺動部材などに用いられる。

Claims (8)

  1. フッ素系樹脂と、
    酢酸ビニル含有量が60質量%以上であり、構成単位として、下記式で示されるI単位を含み、下記式で示されるII単位を任意的に含み、かつ、前記I単位および前記II単位を含む場合には、前記I単位および前記II単位の結合形式が、下記式(1−1)、式(1−2)、式(2−1)および式(2−2)からなる群から選択される少なくともいずれかの式で示される結合形式のみからなるポリ酢酸ビニル系樹脂と
    を含有する樹脂組成物であり、
    前記ポリ酢酸ビニル系樹脂の、前記フッ素系樹脂および前記ポリ酢酸ビニル系樹脂の総量に対する含有割合が、10質量%以上であり、
    前記樹脂組成物のゲル分率は、10質量%未満であることを特徴とする、樹脂組成物。


    (式中、R1は、水素原子および/またはメチル基を示し、R2は、水素原子、水酸基、アリール基およびアルコキシカルボニル基(COOR)からなる群から選ばれる少なくとも1つを示す。前記式COOR中、R3は、アルキル基を示す。)

    (式(1−1)〜(2−2)中、R1およびR2は、上記と同一である。)
  2. 前記ポリ酢酸ビニル系樹脂が、エチレンと酢酸ビニルとを共重合させることにより得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記フッ素系樹脂が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を溶融混練することにより得られることを特徴とする、混練物。
  5. 前記フッ素系樹脂および前記ポリ酢酸ビニル系樹脂が互いに相溶する均一相を含有することを特徴とする、請求項4に記載の混練物。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形することにより得られることを特徴とする、成形体。
  7. 押出成形することにより得られることを特徴とする、請求項6に記載の成形体。
  8. 前記フッ素系樹脂および前記ポリ酢酸ビニル系樹脂が互いに相溶する均一相を含有することを特徴とする、請求項6または7に記載の成形体。
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