JP2015174140A - アルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品 - Google Patents

アルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品 Download PDF

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Abstract

【課題】切削加工面に鋳巣が現れることを防止すること。
【解決手段】製品形状のキャビティ空間を作り出すように二つの金型(固定金型2及び可動金型4)を型締めする型締め工程(図1)と、キャビティ空間にアルミ合金の溶湯を圧入充填する溶湯充填工程(図2)と、アルミ合金の溶湯が凝固した後、固定金型2及び可動金型4からダイカスト鋳放し製品Aを取り出す製品離型工程(図3)と、を備える。このアルミダイガスト工法において、溶湯充填工程(図2)を、溶湯をキャビティ空間に充填するとき、ダイカスト鋳放し製品Aの下穴23の位置にて、製品外形面よりはみ出した冷却用突出部21を設ける工程とした。
【選択図】図5

Description

本発明は、金型に溶融したアルミ合金を圧入充填するアルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品に関する。
金型に溶融したアルミ合金を圧入充填することにより、高い寸法精度の鋳物を短時間に大量に生産するアルミダイカスト工法は、ガス巻き込みが生じてしまい、切削加工面に鋳巣(ブローホール)が発生するおそれがある(例えば、特許文献1参照)。
また、薄肉部での湯廻り欠陥や引け欠陥を防止することを目的とし、薄肉部の肉厚より小さい高さと幅とを有する凸状を、肉厚以上の間隔をあけて湯流れ方向に沿う方向に複数設けるアルミダイカスト工法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平10−328805号公報 特開平7−144249号公報
しかしながら、例えば、特許文献1に記載されているように、鋳巣の発生を抑える多種多様のアルミダイカスト工法が提案されているが、工法上、鋳巣を皆無にすることは困難である、という問題がある。
また、特許文献2に開示されたアルミダイカスト工法の場合、金型から取り出したダイカスト鋳放し製品に対し、製品に残った凸状のみを取り除く追加加工が必要となり、加工工数が増大する、という問題がある。
特に、金型から取り出したダイカスト鋳放し製品に対し、後工程にてボルト穴等の切削加工を行うと、内部で発生した鋳巣が切削加工面に現れ、油漏れやシール切れなどの不具合を起す。このため、切削加工面に鋳巣のないダイカスト製品が求められている。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、切削加工面に鋳巣が現れることを防止することができるアルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のアルミダイカスト工法は、製品形状のキャビティ空間を作り出すように二つの金型を型締めする型締め工程と、前記キャビティ空間にアルミ合金の溶湯を圧入充填する溶湯充填工程と、前記アルミ合金の溶湯が凝固した後、前記金型から製品を取り出す製品離型工程と、を備える。
このアルミダイガスト工法において、前記溶湯充填工程を、前記溶湯を前記キャビティ空間に圧入充填するとき、前記製品の切削加工予定部位の位置にて、製品外形面よりはみ出した冷却用突出部を設ける工程とした。
上記目的を達成するため、本発明のダイカスト鋳放し製品は、金型からの離型により取り出した製品であるダイカスト鋳放し製品において、
前記製品の切削加工予定部位の位置に、製品外形面よりはみ出し、かつ、切削加工により取り除かれる冷却用突出部を設けた。
よって、溶湯充填工程において、溶湯をキャビティ空間に圧入充填するとき、製品の切削加工予定部位の位置にて、製品外形面よりはみ出した冷却用突出部が設けられる。
すなわち、製品の切削加工予定部位に設けられた冷却用突出部により冷却表面積が拡大されることで、冷却用突出部を含む加工表面が、急激な凝固スピードで冷却される。このため、加工表面の素材密度が高まり鋳巣が存在しても製品の加工表面から内部に追いやられ、加工表面に鋳巣が存在しなくなる。よって、ダイカスト鋳放し製品を切削加工しても、切削加工面に鋳巣が現れることが防止される。
更に、金型部品に冷却機構を設けるのではなく、充填するアルミ合金自体を冷却部品として活用できるようにしたので、コスト削減及び冷却の応答性改善が達成される。
この結果、切削加工面に鋳巣が現れることを防止することができると共に、コスト削減及び冷却の応答性改善を達成することができる。
実施例1のアルミダイカスト工法のうち型締め工程を示す型締め工程説明図である。 実施例1のアルミダイカスト工法のうち溶湯充填工程を示す溶湯充填工程説明図である。 実施例1のアルミダイカスト工法のうち製品離型工程を示す製品離型工程説明図である。 実施例1の溶湯充填工程において隙間溝を鋳抜きピン側に形成して冷却用突出部を設ける鋳抜きピンの部分を示す要部断面図である。 実施例1のアルミダイカスト工法によるダイカスト鋳放し製品のボルト穴加工部分を示す鋳放し製品断面図である。 実施例1のダイカスト鋳放し製品の冷却用突出部を示す図5のE部拡大断面図である。 実施例1のアルミダイカスト工法によるダイカスト鋳放し製品に対しネジ加工を施した後のダイカスト製品を示すダイカスト製品断面図である。 比較例の溶湯充填工程における冷却用突出部を設ける鋳抜きピンの部分を示す要部断面図である。 比較例のアルミダイカスト工法における鋳巣の生成作用を示す鋳巣生成作用説明図である。 実施例1のアルミダイカスト工法における鋳巣の生成作用を示す鋳巣生成作用説明図である。 溶湯充填工程において隙間溝を固定金型側に形成して冷却用突出部を設ける鋳抜きピンの部分を示す要部断面図である。
以下、本発明のアルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
以下、実施例1のアルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品Aを、「アルミダイカスト工法」、「ダイカスト鋳放し製品の詳細構成」、「ダイカスト製品の構成」、「比較例の工法における課題」、「実施例1の工法における作用」、「実施例1の工法及び製品の特徴作用」に分けて説明する。
[アルミダイカスト工法]
まず、図1〜図3に基づき、変速機のトランスミッションケースの製造に適用された実施例1のアルミダイカスト工法を説明する。
アルミダイカスト工法に用いられるダイカストマシンの概略構成を説明する。ダイカストマシンは、図1〜図3に示すように、固定金型ベース1に固定された固定金型2(金型)と、可動金型ベース3に固定され、固定金型2の合わせ面に対し垂直な方向に往復移動可能に設けられた可動金型4(金型)と、を備えている。
前記固定金型ベース1及び固定金型2には、キャビティ5と、鋳抜きピン6と、鋳込みシリンダ7と、溶湯注入穴8と、鋳込みピストン9と、鋳込み口10(ビスケット)と、湯道11(ランナー)と、湯口12(ゲート)と、を有する。キャビティ5は、固定金型2の製品部分にあたる彫り込み面(空間)をいう。鋳抜きピン6は、固定金型2に設けられ、固定金型2の製品部分に突出し、製品のネジ穴加工位置に、予め加工前の下穴23(切削加工予定部位)を形成しておくための部材である。鋳込みシリンダ7は、固定金型ベース1及び固定金型2に設けられる。
前記可動金型ベース3及び可動金型4には、可動金型4の製品部分にあたる突出面によるキャビティ5’と、凝固した製品を離型するときに製品を押し出す押し出し板13及び押し出しピン14と、を有する。なお、図1〜図3において、先走りの汚れた溶湯等を引き込むための湯溜まり(オーバーフロー)、金型キャビティ内のガスを抜くために金型表面に彫り込まれたエアーベントの図示は省略している。
前記アルミダイカスト工法は、ダイカスト鋳放し製品Aの製造工程として、型締め工程(図1)と、溶湯充填工程(図2)と、製品離型工程(図3)と、を有する。
前記型締め工程は、図1に示すように、製品形状のキャビティ空間を作り出すように二つの金型(固定金型2と可動金型4)を型締めする工程である。すなわち、キャビティ5,5’に離型剤を塗布し、図1の実線位置から仮想線位置まで図1の矢印F方向に可動金型4を固定金型2に向かって移動させる。
前記溶湯充填工程は、図2に示すように、キャビティ空間にアルミ合金の溶湯を圧入充填する工程である。すなわち、鋳込みシリンダ7の溶湯注入穴8からアルミ合金の溶湯を流し込み、鋳込みピストン9により押し込むことで、鋳込み口10→湯道11→湯口12を経過し、圧力を加えた溶湯をキャビティ空間に充填する。この溶湯充填工程において、溶湯をキャビティ空間に充填するとき、ダイカスト鋳放し製品Aの下穴23(切削加工予定部位)の位置にて、製品外形面よりはみ出した冷却用突出部21(図5)を設ける。
前記製品離型工程は、図3に示すように、650℃〜700℃の溶湯を約200℃まで冷却し、アルミ合金の溶湯が凝固するのを待った後、固定金型2と可動金型4からダイカスト鋳放し製品Aを取り出す工程である。すなわち、鋳込みピストン9と押し出しピン14を突出させることにより、固定金型2と可動金型4のキャビティ空間からダイカスト鋳放し製品Aを離型させる。
[ダイカスト鋳放し製品の詳細構成]
次に、図4〜図6に基づき、実施例1におけるダイカスト鋳放し製品Aの詳細構成を説明する。
上記アルミダイカスト工法において、図4に示すように、固定金型2に、ダイカスト鋳放し製品Aに鋳抜きにより有底穴形状の下穴23を作り出す鋳抜きピン6を設ける。そして、鋳抜きピン6と固定金型2の間に、溶湯が入り込むのに十分な隙間幅を持つ隙間溝22を形成する。
前記鋳抜きピン6は、図4に示すように、固定金型2のピン固定穴2aに固定されるピン基部6aと、固定金型2のピン穴2bに挿通されるピン挿着部6bと、キャビティ5から突出して設けられるピン先端部6cと、を有する。そして、鋳抜きピン6の軸芯位置には、ピン基部6a及びピン挿着部6bを経過し、ピン先端部6cの途中位置まで貫通し、冷却水が注入される冷却水穴6dを有する。
前記隙間溝22は、鋳抜きピン6のうち、ピン挿着部6bとピン先端部6cとの境界部分にピンテーパ面6eを設けることで、鋳抜きピン6と円筒形状によるピン穴2bとの間に形成される。なお、固定金型2のピン穴2bと、ピンテーパ面6e以外のピン挿着部6bとの隙間tは、溶湯の流動が停止し、鋳バリが出ない0.2mm以下の隙間tに寸法管理されている。そして、溶湯充填工程において、隙間溝22に入り込んだ溶湯が凝固することにより意図的に形成される円環状に突出した鋳バリにより、ダイカスト鋳放し製品Aに冷却用突出部21が設けられる。つまり、冷却用突出部21は、溶湯充填工程において形成される強制冷却バリと言い換えることができる。
ここで、金型の隙間tが、0.2mm以下は、鋳バリが出ない理由を説明する。
アルミダイカスト工法におけるエアーベント(ガス抜き)は、様々な文献により、一般的に、0.1mm〜0.2mmが推奨されています。このエアーベントは、ガスのみを通過させて、アルミ合金による溶湯の流動を止める役割をしている。つまり、金型の隙間tを0.2mm以下に規定すると、アルミ合金による溶湯の流動が止まり、鋳バリが出ないことになる。
このように、固定金型2と可動金型4からの離型により取り出した製品であるダイカスト鋳放し製品Aは、図5に示すように、下穴23(切削加工予定部位)の位置に、製品外形面よりはみ出し、かつ、切削加工により取り除かれる冷却用突出部21を設けたものとされる。
次に、ダイカスト鋳放し製品Aの冷却用突出部21の詳しい形状規定について、図6に基づき説明する。
(a) 冷却用突出部21のダイカスト鋳放し製品Aとの連結部の厚みDは、ダイカスト鋳放し製品Aの下穴23の加工表面から加工により切削される深さD’と同等の厚みとされる。
(b) 冷却用突出部21は、下穴23の最外周加工表面のうち、全加工表面域に亘って設けられる。実施例1の場合、図5に示すように、ダイカスト鋳放し製品Aに、ボルト穴が加工される下穴23の周りを取り囲むように、円環状に突出する冷却用突出部21が設けられる。
(c) 冷却用突出部21は、該突出部21の底面が製品と連結されている面から外側に延出され、延出先端部に向かって徐々に断面積が小さくなるように形成される。実施例1の場合、図6に示すように、断面三角による先細り形状とされる。そして、冷却用突出部21の底面の厚みDは、0.3mm以上で略1mm以下の範囲で設定され、底面に対峙する頂点部dの厚みは、0.2mm以下に形成される。
(d) 冷却用突出部21の底面と垂直な線分との成す角度θは、固定金型2の抜き勾配以上に設定される。実施例1での冷却用突出部21の底面と垂直な線分との成す角度θは、固定金型2の抜き勾配の大きさと同等のθ=略1.5°に設定される。
(e) 冷却用突出部21の高さXは、加工深さや下穴径等により適切な寸法(例えば、3mm〜5mm)に設定される。
[ダイカスト製品の構成]
次に、図7に基づき、実施例1のアルミダイカスト工法によるダイカスト製品Bの構成を説明する。
前記ダイカスト鋳放し製品Aに対して、ネジ穴と端面の同時切削加工を施した後、ネジ切り加工を施し、さらに、テーパ面加工(面取り加工)を施すことで、ダイカスト製品Bとなる。
つまり、最終的なダイカスト製品Bには、図7に示すように、同時切削加工によるネジ穴31及び加工端面32と、雌ネジ部33と、Oリングを介装してボルトを螺合するシールテーパ面34と、を有する。そして、ダイカスト製品Bとしては、シールテーパ面34に所定の径以上の鋳巣が存在しないことが要求される。
[比較例の工法における課題]
次に、図8及び図9に基づき、比較例のアルミダイカスト工法でダイカスト製品を製造する際の課題を説明する。
アルミダイカスト工法において、図8に示すように、固定金型に、ダイカスト鋳放し製品に鋳抜き形状としての下穴(有底穴)を作り出す鋳抜きピンを設け、鋳抜きピンと固定金型の間を、溶湯が入り込まないように隙間管理したものを比較例とする。
この比較例の場合、溶湯充填工程において、溶湯充填後、溶湯が凝固する凝固スピードが遅いため、内部組織が粗くなり、図9に示すように、鋳物表面のすぐ内側部分にガス巻き込みによる鋳巣(ブローホール)が発生する。
このように、鋳物表面のすぐ内側部分に鋳巣が発生したダイカスト鋳放し製品を、切削加工してダイカスト製品にすると、切削加工面に鋳巣が現れてしまう。この鋳巣がシール面に発生すると、シール切れによる油漏れなどの不具合を起すため、鋳巣のないダイカスト製品が求められている。この鋳巣防止には、金型にアルミの凝固収縮を利用した手法が多種多様あるがいずれもコスト増、冷却応答性の遅れ等により、十分な対応が出来ていない。
[実施例1の工法における作用]
次に、図10に基づき、実施例1のアルミダイカスト工法でダイカスト製品を製造する際の作用を説明する。
実施例1では、溶湯充填工程において、溶湯をキャビティ空間に圧入充填するとき、ダイカスト鋳放し製品Aの下穴23の位置にて、製品外形面よりはみ出した冷却用突出部21を設けるアルミダイカスト工法を採用した。
すなわち、溶湯充填工程製品Aの下穴23の部位に設けられた冷却用突出部21により冷却表面積が拡大されピン挿入部に接触する部分が広くなることで、冷却用突出部21を含む加工表面が、急激な凝固スピードで冷却される。このため、加工表面側の素材から内部に向かって順次素材密度が高まり鋳巣が存在しても製品の加工表面から内部に追いやられ、加工表面に鋳巣が存在しなくなる。
その理由を説明すると、アルミダイカストは、凝固スピードにより内部組織が大きく変化する。つまり、凝固スピードが速ければ速いほど、図10に示すように、組織が緻密となり“鋳巣”が発生しない性質がある。つまり、内部組織が緻密であるチル層の厚みが厚くなる。加えて、凝固スピードが速い場合、“鋳巣”は、凝固スピードが遅い内部へ移動する性質がある。
これに対し、切削加工予定部位である下穴23の位置に冷却用突出部21を設けると、薄板である冷却用突出部21の凝固が、下穴23の凝固を促進させ、凝固スピードが大幅にアップする。一般的に、溶湯の凝固時間は、(肉厚2×0.01)の式で算出される。上記比較例のように、冷却用突出部21が無く、肉厚3mmの部位は、凝固時間が0.153秒となる。一方、実施例1のように、冷却用突出部21が存在し、その肉厚が0.5mmの場合は、凝固時間が0.00425秒となり、比較例に比べ、36倍のスピードで凝固することになる。
この凝固スピードのアップにより、面取り加工等を行っても、内部組織が緻密であり、かつ、“鋳巣”が無いチル層を削り取ることになり、“鋳巣”を面取り加工面等の切削加工予定部位に発生させない。すなわち、ダイカスト鋳放し製品Aを切削加工しても、切削加工面に鋳巣が現れることが防止される。
更に、金型部品に対し、特に新たな冷却機構を設けるのではなく、充填するアルミ合金自体を充填時の溶湯状態で隙間溝にも同時に充填した冷却部品として活用できるようにしたので、コスト削減及び導電率の良いアルミが該隙間に完全に充填されるので応答性改善が達成される。この結果、切削加工面に鋳巣が現れることを防止することができると共に、コスト削減及び冷却の応答性改善を達成することができる。
[実施例1の工法及び製品の特徴作用]
次に、実施例1のアルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品Aの他の特徴作用を説明する。
実施例1では、固定金型2に、ダイカスト鋳放し製品Aに鋳抜き形状を作り出す鋳抜きピン6を設け、鋳抜きピン6と固定金型2の間に、溶湯が入り込む隙間幅を持つ隙間溝22を形成する。そして、冷却用突出部21を、隙間溝22に入り込んだ溶湯が凝固することにより意図的に形成される鋳バリとする構成とした。
この構成により、工法に供する部品点数を増大させることなく、鋳抜きピン6と固定金型2の隙間溝22の寸法管理により意図的に形成した鋳バリにより、容易に冷却用突出部21を設けることができる。
実施例1では、冷却用突出部21のダイカスト鋳放し製品Aとの連結部の厚みDを、ダイカスト鋳放し製品Aの下穴23の加工表面から加工により切削される深さD’と同等の厚みとする構成とした。
この構成により、ダイカスト鋳放し製品Aを切削加工するとき、冷却用突出部21が削除されるので、別の追加工程で冷却用突出部21を削除する手間を省くことができる。
実施例1では、冷却用突出部21を、下穴23の最外周加工表面のうち、全加工表面域に亘って設ける構成とした。
この構成により、下穴23の全周に亘って均等に凝固スピードがアップすることで、全加工表面域を急速に冷却させ、鋳巣の無い緻密な組織とすることができる。
実施例1では、冷却用突出部21を、該突出部21の底面がダイカスト鋳放し製品Aと連結されている面から外側に延出され、延出先端部に向かって徐々に断面積が小さくなるように形成する構成とした。
この構成により、アルミ合金の溶湯充填を促しながら、冷却用突出部21を形成することができ、エアーベント領域迄の区間で溶湯の充填を規定の位置で止める事ができるので、余分なコスト作業工程を増やすことなく対応することができる。
実施例1では、冷却用突出部21の底面と垂直な線分との成す角度θを、固定金型2の抜き勾配以上に設定する構成とした。
この構成により、アルミダイカスト工法において、新たな工程増加をせずに、従来通りの工程による手順にて冷却用突出部21を形成することができる。
実施例1では、冷却用突出部21の底面の厚みDを、0.3mm以上で略1mm以下の範囲で設定した構成とした。
この構成により、エアーベント領域以上の隙間であり、アルミ合金による溶湯の充填時に確実に冷却用突出部21を成形することができる。
実施例1では、冷却用突出部21の底面に対峙する頂点部の厚みdを、略0.2mmに形成する構成とした。
この構成により、冷却用突出部21の先端部にまで確実にアルミ合金による溶湯を充填でき、更にエアーベント領域内の値に設定する事で充填領域の境界が明確となり必要以上の溶湯の流出を防ぐことができる。
実施例1では、冷却用突出部21の底面と垂直な線分との成す角度θを、固定金型2の抜き勾配の大きさと同等のθ=略1.5°に設定する構成とした。
この構成により、通常の抜き勾配で対応でき、特殊な金型に設計し直すこともないので、設計的な信頼性を確保することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1のアルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品Aにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 製品形状のキャビティ空間を作り出すように二つの金型(固定金型2、可動金型4)を型締めする型締め工程(図1)と、
キャビティ空間にアルミ合金の溶湯を圧入充填する溶湯充填工程(図2)と、
アルミ合金の溶湯が凝固した後、金型(固定金型2、可動金型4)から製品(ダイカスト鋳放し製品A)を取り出す製品離型工程(図3)と、
を備えるアルミダイガスト工法において、
溶湯充填工程(図2)を、溶湯をキャビティ空間に充填するとき、製品(ダイカスト鋳放し製品A)の切削加工予定部位(下穴23)の位置にて、製品外形面よりはみ出した冷却用突出部21を設ける工程とした。
このため、コスト削減と共に、冷却の応答性改善を達成するので切削加工面に鋳巣が現れることを防止するアルミダイカスト工法を提供することができる。
(2) 金型(固定金型2、可動金型4)に、製品(ダイカスト鋳放し製品A)に鋳抜き形状を作り出す鋳抜きピン6を設け、
鋳抜きピン6と金型(固定金型2)の間に、溶湯が入り込む隙間幅を持つ隙間溝22を形成し、
冷却用突出部21を、隙間溝22に入り込んだ溶湯が凝固することにより意図的に形成される鋳バリにより設けた。
このため、(1)の効果に加え、工法に供する部品点数を増大させることなく、鋳抜きピン6と金型(固定金型2)の隙間溝22の寸法管理により意図的に形成した鋳バリにより、容易に冷却用突出部21を設けることができる。
(3) 冷却用突出部21の製品(ダイカスト鋳放し製品A)との連結部の厚みDを、製品(ダイカスト鋳放し製品A)の切削加工予定部位(下穴23)の加工表面から加工により切削される深さD’と同等の厚みとした。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、製品(ダイカスト鋳放し製品A)を切削加工するとき、冷却用突出部21が削除されるので、別の追加工程で冷却用突出部21を削除する手間を省くことができる。
(4) 冷却用突出部21を、切削加工予定部位(下穴23)の最外周加工表面のうち、全加工表面域に亘って設けた。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、切削加工予定部位(下穴23)の全周に亘って均等に凝固スピードがアップすることで、全加工表面域を急速に冷却させ、鋳巣の無い緻密な組織とすることができる。
(5) 冷却用突出部21を、該突出部21の底面が製品(ダイカスト鋳放し製品A)と連結されている面から外側に延出され、延出先端部に向かって徐々に断面積が小さくなるように形成した。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、アルミ合金の溶湯充填を促しながら、冷却用突出部21を形成することができ、余分なコスト作業工程を増やすことなく対応することができる。
(6) 冷却用突出部21の底面と垂直な線分との成す角度θを、金型(固定金型2)の抜き勾配以上に設定した。
このため、(5)の効果に加え、アルミダイカスト工法において、新たな工程増加をせずに、従来通りの工程による手順にて冷却用突出部21を形成することができる。
(7) 冷却用突出部21の底面の厚みDを、0.3mm以上で略1mm以下の範囲で設定した。
このため、(5)又は(6)の効果に加え、アルミ合金による溶湯の充填時に確実に冷却用突出部21を成形することができる。
(8) 冷却用突出部21の底面に対峙する頂点部の厚みdを、略0.2mmに形成した。
このため、(7)の効果に加え、冷却用突出部21の先端部にまで確実にアルミ合金による溶湯を充填でき、更に溶湯の充填境界値が明確になり必要以上の溶湯の流出を防ぐことができる。
(9) 冷却用突出部21の底面と垂直な線分との成す角度θを、固定金型2の抜き勾配の大きさと同等のθ=略1.5°に設定した。
このため、(6)〜(8)の効果に加え、通常の抜き勾配で対応でき、特殊な金型に設計し直すこともないので、設計的な信頼性を確保することができる。
(10) 金型(固定金型2、可動金型4)からの離型により取り出した製品であるダイカスト鋳放し製品Aにおいて、
製品(ダイカスト鋳放し製品A)の切削加工予定部位(下穴23)の位置に、製品外形面よりはみ出し、かつ、切削加工により取り除かれる冷却用突出部21を設けた。
このため、切削加工面に鋳巣が現れることを防止すると共に、コスト削減及び冷却の応答性改善を達成するダイカスト鋳放し製品を提供することができる。
以上、本発明のアルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、隙間溝22として、鋳抜きピン6のうち、ピン挿着部6bとピン先端部6cとの境界部分にピンテーパ面6eを設けることで、鋳抜きピン6と円筒形状によるピン穴2bとの間に形成する例を示した。しかし、隙間溝としては、金型にテーパ面を設けることで形成する例であっても良いし、鋳抜きピンと金型の両方にテーパ面を設けることで形成する例であっても良い。例えば、金型にテーパ面を設けることで隙間溝を形成する場合は、図11に示すように、固定金型2のうち、ピン挿着部6bとピン先端部6cとの境界部分に金型テーパ面2eを設けることで、円筒形状による鋳抜きピン6とピン穴2bの金型テーパ面2eとの間に隙間溝22を形成する。
実施例1では、本発明のアルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品Aを、トランスミッションケースに適用する例を示した。しかし、本発明のアルミダイカスト工法及びダイカスト鋳放し製品は、トランスミッションケース以外のアルミダイカスト製品に対しても勿論適用することができる。
A ダイカスト鋳放し製品
1 固定金型ベース
2 固定金型(金型)
2a ピン固定穴
2b ピン穴
3 可動金型ベース
4 可動金型(金型)
5 キャビティ
6 鋳抜きピン
6a ピン基部
6b ピン挿着部
6c ピン先端部
6d 冷却水穴
6e ピンテーパ面
21 冷却用突出部
22 隙間溝
23 下穴(切削加工予定部位)

Claims (10)

  1. 製品形状のキャビティ空間を作り出すように二つの金型を型締めする型締め工程と、
    前記キャビティ空間にアルミ合金の溶湯を圧入充填する溶湯充填工程と、
    前記アルミ合金の溶湯が凝固した後、前記金型から製品を取り出す製品離型工程と、
    を備えるアルミダイガスト工法において、
    前記溶湯充填工程を、前記溶湯を前記キャビティ空間に充填するとき、前記製品の切削加工予定部位の位置にて、製品外形面よりはみ出した冷却用突出部を設ける工程とした
    ことを特徴とするアルミダイカスト工法。
  2. 請求項1に記載されたアルミダイカスト工法において、
    前記金型に、前記製品に鋳抜き形状を作り出す鋳抜きピンを設け、
    前記鋳抜きピンと前記金型の間に、溶湯が入り込む隙間幅を持つ隙間溝を形成し、
    前記冷却用突出部を、前記隙間溝に入り込んだ溶湯が凝固することにより意図的に形成される鋳バリにより設けた
    ことを特徴とするアルミダイカスト工法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載されたアルミダイカスト工法において、
    前記冷却用突出部の前記製品との連結部の厚みを、前記製品の切削加工予定部位の加工表面から加工により切削される深さと同等の厚みとした
    ことを特徴とするアルミダイカスト工法。
  4. 請求項1から3までの何れか一項に記載されたアルミダイカスト工法において、
    前記冷却用突出部を、前記切削加工予定部位の最外周加工表面のうち、全加工表面域に亘って設けた
    ことを特徴とするアルミダイカスト工法。
  5. 請求項1から4までの何れか一項に記載されたアルミダイカスト工法において、
    前記冷却用突出部を、該突出部の底面が前記製品と連結されている面から外側に延出され、延出先端部に向かって徐々に断面積が小さくなるように形成した
    ことを特徴とするアルミダイカスト工法。
  6. 請求項5に記載されたアルミダイカスト工法において、
    前記冷却用突出部の前記底面と垂直な線分との成す角度を、前記金型の抜き勾配以上に設定した
    ことを特徴とするアルミダイカスト工法。
  7. 請求項5又は請求項6に記載されたアルミダイカスト工法において、
    前記冷却用突出部の前記底面の厚みを、0.3mm以上で略1mm以下の範囲で設定した
    ことを特徴とするアルミダイカスト工法。
  8. 請求項7に記載されたアルミダイカスト工法において、
    前記冷却用突出部の前記底面に対峙する頂点部の厚みを、略0.2mmに形成した
    ことを特徴とするアルミダイカスト工法。
  9. 請求項6から8までの何れか一項に記載されたアルミダイカスト工法において、
    前記冷却用突出部の底面と垂直な線分との成す角度を、前記金型の抜き勾配の大きさと同等のθ=略1.5°に設定した
    ことを特徴とするアルミダイカスト工法。
  10. 金型からの離型により取り出した製品であるダイカスト鋳放し製品において、
    前記製品の切削加工予定部位の位置に、製品外形面よりはみ出し、かつ、切削加工により取り除かれる冷却用突出部を設けた
    ことを特徴とするダイカスト鋳放し製品。
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