JP2015172036A - 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法 - Google Patents

1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 過剰な塩素化剤、反応溶媒、触媒を使用せずに安全で且つ環境への影響を配慮した製法で1,4−シクロヘキサンカルボン酸ジクロリドを製造する。【解決手段】 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と塩化チオニルを混合して1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを生成させる反応において、前バッチの反応液を使用して無溶媒で反応を実施する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法に関し、特に、過剰な塩素化剤、反応溶媒、触媒を使用せずに工業的に安全かつ環境に配慮した1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法に関する。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドは合成樹脂用モノマー、樹脂添加剤原料、医薬中間体として使用される。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法としては、1,4‐シクロヘキサンジカルボン酸にホスゲン、塩化オキサリル、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル等の塩素化剤を用いて酸クロライド化させ、蒸留操作等によって精製する方法が一般的である。
具体的な反応方法としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に無溶媒で塩素化剤を作用させる方法、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に溶媒存在下、塩素化剤を作用させる方法、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に無溶媒または溶媒を使用し、触媒存在下で塩素化剤を作用させる方法などがある。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に無溶媒で塩素化剤として塩化チオニルを作用させる場合、粉末の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に所定量の塩化チオニルを一括で全量仕込む方法が一般的である(例えば特許文献1参照)。しかしながらその方法では、酸クロライド化の反応を制御することが困難となり、副生する塩化水素ガスや亜硫酸ガスの発生を制御できないため工業的規模で生産した場合、危険を伴う。また、反応途中に系内に残っている塩化チオニルは塩化水素ガスや亜硫酸ガスと同伴して系外に逃げやすい傾向にあるため、系内に塩化チオニルが大量に残った状態で塩化水素ガスや亜硫酸ガスの発生量を制御できない場合は、酸クロライド化に必要な塩化チオニルの量が系内で不足する原因となる。そのため系外に逃げた塩化チオニルを回収するために冷却トラップを設置するか、必要量以上の塩化チオニルを系内に仕込んでおく等の対策が必要である。しかし冷却トラップを設置した場合、回収した塩化チオニルを系内に戻す作業が必要となる。また、必要量以上の塩化チオニルを系内に仕込んだ場合、反応に使われなかった過剰分の塩化チオニルは最終的に廃棄物となってしまい、経済性および環境面で問題がある。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸にトルエンやベンゼン等の溶媒存在下、塩素化剤を作用させる方法では、無溶媒系と比較すると反応初期から系内の攪拌が可能であるため、塩素化剤を滴下又は分割して添加することができ、酸クロライド化の反応を制御することが可能である(例えば特許文献2参照)。しかしながら工業的規模で実施する場合、使用した溶媒の廃棄またはリサイクルをおこなう必要があるため、コストと環境面から問題がある。また、溶媒使用により原料の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の使用量が減るため生産性が低下する点や、品質面においても残留溶媒の管理が必要となる点に問題がある。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に無溶媒または溶媒を使用し、触媒存在下で塩素化剤を作用させる方法(例えば特許文献3参照)では、触媒として使用されるジメチルホルムアミド等の含窒素化合物の有害性の問題がある。今後一層、触媒として使用されるジメチルホルムアミド等の含窒素化合物の規制が強化されると思われる。また、品質面においても生産した1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド中に、触媒として使用されるジメチルホルムアミド等の含窒素化合物が残存する可能性がある。
このような背景から、過剰な塩素化剤や反応溶媒、触媒を使用せずに安全で且つ環境への影響を配慮した1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法が望まれていた。
特開2003−113261号公報 特開1989−299258号公報 特開2009−091415号公報
従来は、過剰な塩素化剤や反応溶媒、触媒を使用しない、安全で且つ環境への影響を配慮した1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法は確立されておらず、その効率的な工業的製造法の創出が強く望まれていた。
本発明の目的は、過剰な塩素化剤や反応溶媒、触媒を使用せず、安全で且つ環境への影響を配慮した1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法を提供することにある。
本発明者らは前記課題を解決する方法について誠意検討した結果、過剰な塩素化剤、反応溶媒、触媒を使用せずに安全で且つ環境への影響を配慮した1,4−シクロヘキサンカルボン酸ジクロリドの製造方法を見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と塩化チオニルを混合して1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを生成させる反応において、前バッチの反応液を使用して無溶媒で反応を実施する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法である。
本発明によれば、最終的に廃棄物となる過剰な塩素化剤、反応溶媒、触媒を使用しないので、環境に優しいプロセスである。また、本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法は、反応溶媒や触媒由来の不純物を含まない高純度の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを安全に工業的規模で連続生産することができる。
本発明は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と塩化チオニルを混合して1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを生成させる反応において、前バッチの反応液を使用して無溶媒で反応を実施する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法である。
本発明を具体的に述べる。
本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法では、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と塩化チオニルを反応させる。
本発明では、前バッチの反応液を必要とするため、ファーストバッチであること等の理由から前バッチの反応液が無い場合は、従来の方法で反応液を合成する必要がある。すなわち、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に対して、塩化チオニルを好ましくは2.0〜3.0mol倍、より好ましくは2.0〜2.3mol倍の量を一括で全量仕込み、反応させることで1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの反応液を得る。このとき未反応の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸や中間体の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノクロリドが残る場合がある。
前バッチの反応液が無い場合は、例えば、上記の方法で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの反応液を得て、これを前バッチの反応液として使用する。
本発明において、前バッチとは、現在のバッチより前のバッチで得られた反応液である。例えば、3段階のバッチがあり、2バッチ目の反応で、1バッチ目の反応液を使用する場合は、1バッチ目の反応液は、前バッチの反応液である。3バッチ目の反応で、2バッチ目の反応液を使用する場合も、前バッチの反応液である。さらに、3バッチ目の反応で、1バッチ目の反応液を使用する場合も、前バッチの反応液である。
本発明において、使用する前バッチの反応液量は、仕込む1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に対して、好ましくは、0.1〜3.0wt倍、より好ましくは、0.3〜1.0wt倍である。この工程では粉末の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と前バッチの反応液を混合し、あらかじめスラリー状にしておくことで反応初期から系内の攪拌を可能にしておくことが好ましい。
本発明の反応工程で使用する塩化チオニルは、好ましくは、滴下又は分割して反応系内に仕込まれる。塩化チオニルの量は、前バッチの反応液に混合された1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に対して、好ましくは、2.0〜3.0mol倍、より好ましくは2.0〜2.3mol倍である。
本発明の反応工程で生成した反応液は、好ましくは、一部抜き出される。抜き出された反応液は、原料の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と混合することが好ましい。抜き出された反応液と、原料の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と混合することによって得られるスラリー液は、好ましくは、塩化チオニルによって酸クロライド化される。
本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法では、好ましくは、前バッチの反応液が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と塩化チオニルを混合して1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを生成させる反応において、それより前のバッチの反応液を使用して無溶媒で反応を実施する。
本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法では、より好ましくは、反応工程において前バッチで得られた反応液の一部を使用する操作を繰り返すことにより、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの反応液を連続的に生産する。
本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法では、好ましくは、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と塩化チオニルを混合して1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを生成させる反応において、触媒を使用しない。
本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法では、好ましくは、抜き出した後に残った反応液は、反応中に生成した塩化水素ガスや亜硫酸ガスを含んでおり、それらは濃縮操作によって除去される。濃縮液は、好ましくは、蒸留又は濾過により精製される。
本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法により得られた1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドは、例えば、合成樹脂用モノマー、樹脂添加剤原料、医薬中間体として使用される。
また、本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法では、反応から濃縮までの操作を、例えば、シス体比率が70%以上の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を原料として80℃以上で実施した場合、生成した1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドが熱により異性化され、シス体比率の低下が顕著にあらわれる場合がある。そのため所望の異性体比率で1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを製造するためには、原料の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の異性体比率に加えて、必要に応じて反応温度と反応時間をコントロールすることが好ましい。トランス体を抑制する反応温度は80℃以下が好ましく、50℃以下が特に好ましい。また反応時間が長ければトランス体比率が増加することから、出来るだけ反応時間が短い方が好ましい。反応後は、反応で生成した塩化水素ガスや亜硫酸ガスを減圧除去することが好ましく、その時の温度はトランス体を抑制する80℃以下が好ましく、50℃以下が特に好ましい。
蒸留精製を実施する場合は、熱履歴が短い薄膜蒸留をおこなえばシス体比率の低下を抑制するのに有効であるので、好ましい。さらに反応で塩化水素ガスや亜硫酸ガスなどの酸性ガスが発生するため、ガラス製の薄膜蒸留装置で蒸留することが特に好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの化学純度は、下記の条件に調整したガスクロマトグラフィー(GC)で分析した。
<化学純度分析>
試料はイソプロパノールでエステル化してから分析する。
カラム:InertCap1 0.25mm*60m, 0.4μm
キャリアガス:ヘリウム
INJ:150℃
DET:310℃
昇温プログラム:100℃→(10℃/min)→300℃(10min)計30min
カラム流量:3.65ml/min
線速度:47.4cm/sec
パージ流量:5.0ml/min
スプリット比:20
打ち込み量:1μl
保持時間:シス体 12.6min トランス体 13.0min 。
比較例1
容量200mlの反応容器にスターラーチップを入れ、温度計、コンデンサーを装着し、コンデンサーとアルカリスクラバーの間に冷却トラップを設置した。反応容器にシス体77.6%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸77.5g(0.45mol)と塩化チオニル117.8g(0.99mol)を仕込み、反応温度である50℃に昇温して静置したまま反応を開始させた。反応が徐々に進行して液化してくると系内の攪拌が可能となった。反応開始から2時間後、冷却トラップから塩化チオニルを9.5g回収して反応容器に戻した。さらに反応を2時間おこなった後、冷却トラップから塩化チオニルを1.0g回収して反応容器に戻した。その後、反応時間を延長したが冷却トラップには塩化チオニルは回収されなかった。ガスクロマトグラフィーで塩化チオニル由来のピークが検出されなくなった時点で反応終了とし、その時点で反応中間体である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノクロリド由来のピークがガスクロマトグラフィーで5.3area%検出された。
本方法では塩化チオニルを冷却トラップで回収して再利用したにも関わらず、未反応の反応中間体が多く残る結果となった。
実施例1
温度計、攪拌機、コンデンサーを装着した容量200mlの反応容器に比較例1で取得したシス体比率73.9%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの反応液94.1gとシス体比率が77.6%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸116.2g(0.67mol)を仕込み、系内をスラリー状にした後、50℃に昇温した。攪拌を開始し、そこに塩化チオニル176.7g(1.49mol)を5時間かけて滴下した。滴下終了後も50℃を保ったまま反応を継続して、ガスクロマトグラフィーで塩化チオニル由来のピークが検出されなくなった時点で反応終了とした。その時、反応中間体の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノクロリド由来のピークは1.7area%検出された。その後、反応液の一部を抜き出し、残りの反応液を全量50℃で減圧濃縮して系内に残存する塩化水素ガスと亜硫酸ガスを除去した。得られた濃縮液を208.4g使用し、バス温140℃、減圧度2Torrで薄膜蒸留を実施して目的の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを191.3g取得した。蒸留収率91.8%、化学純度(GC)99.9%、シス体比率67.4%であった。
本方法では比較例1と比べて、塩化チオニルを冷却トラップで回収することなく、反応終了時点で残存する反応中間体の量を減少させることができた。
実施例2
温度計、攪拌機、コンデンサーを装着した容量200mlの反応容器に比較例1と同様の方法で取得したシス体比率75.9%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの反応液52.3gとシス体比率が77.6%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸64.6g(0.38mol)を仕込み、系内をスラリー状にした後、50℃に昇温した。攪拌を開始し、そこに塩化チオニル98.2g(0.83mol)を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後も50℃を保ったまま反応を継続し、途中で塩化チオニルを1.9g(0.02mol)追加して、さらに反応させた。反応の終点は、ガスクロマトグラフィーで反応中間体の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノクロリド由来のピークが0.3area%になった時点とした。その後、反応液を一部抜き出し、残りの反応液を全量50℃で減圧濃縮して系内に残存する塩化チオニルと塩化水素ガスと亜硫酸ガスを除去した。得られた濃縮液を78.8g使用し、バス温140℃、減圧度2Torrで薄膜蒸留を実施して、目的の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを74.9g取得した。蒸留収率95.0%、化学純度(GC)99.9%、シス体比率71.4%であった。
本方法では、塩化チオニルを少量追加することにより反応をほぼ完結させることができた。
実施例3
実施例3では実施例2で取得した反応液を用いて反応をおこなった。
温度計、攪拌機、コンデンサーを装着した容量200mlの反応容器に実施例2により得られた反応液の一部を抜き出したシス体比率74.0%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの反応液48.5gとシス体比率が77.6%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸59.9g(0.35mol)を仕込み、系内をスラリー状にした後、50℃に昇温した。攪拌を開始し、そこに塩化チオニル91.6g(0.77mol)を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後も50℃を保ったまま反応を継続し、途中で塩化チオニルを1.3g(0.01mol)追加して、さらに反応させた。反応の終点は、ガスクロマトグラフィーで反応中間体の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノクロリド由来のピークが0.8area%になった時点とした。その後、反応液を一部抜き出し、残りの反応液を全量50℃で減圧濃縮して系内に残存する塩化チオニルと塩化水素ガスと亜硫酸ガスを除去した。得られた濃縮液を57.0g使用し、バス温140℃、減圧度2Torrで薄膜蒸留を実施して目的の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを53.9g取得した。蒸留収率94.7%、化学純度(GC)99.8%、シス体比率71.5%であった。
実施例4
温度計、攪拌機、コンデンサーを装着した容量200mlの反応容器に実施例3により得られた反応液の一部を抜き出したシス体比率74.4%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの反応液30.0gとシス体比率が77.6%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸45.0g(0.26mol)を仕込み、系内をスラリー状にした後、50℃に昇温した。攪拌を開始し、そこに塩化チオニル68.1g(0.57mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後も50℃を保ったまま反応を継続し、途中で塩化チオニルを0.4g(0.003モル)追加して、さらに反応させた。反応の終点は、ガスクロマトグラフィーで反応中間体の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノクロリド由来のピークが0.9area%になった時点とした。その後、反応液を全量50℃で減圧濃縮して系内に残存する塩化チオニルと塩化水素ガスと亜硫酸ガスを除去した。得られた濃縮液を81.5g使用し、バス温140℃、減圧度2Torrで薄膜蒸留を実施して目的の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを78.1g取得した。蒸留収率95.9%、化学純度(GC)99.9%、シス体比率72.5%であった。
本方法では実施例1〜3と比較して、前バッチの反応液量を1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に対して0.81wt倍から0.67wt倍に減らした。この場合も反応初期から系内の攪拌が可能であり、塩化チオニルを冷却トラップで回収することなく、反応をほぼ完結させることができた。
比較例1、実施例1〜4の反応中間体の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノクロリド由来のピーク比を下表にまとめた。
Figure 2015172036

Claims (5)

  1. 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と塩化チオニルを混合して1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドを生成させる反応において、前バッチの反応液を使用して無溶媒で反応を実施する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法。
  2. 前バッチの反応液が、請求項1に記載の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法で得られた反応液である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法。
  3. 前バッチの反応液の一部を使用する操作を繰り返し、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの連続生産をおこなう請求項1または請求項2に記載の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法。
  4. 触媒を使用せずに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と塩化チオニルを反応させる請求項1〜3のいずれかに記載の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法。
  5. 塩化チオニルの使用量が、前バッチの反応液に混合された1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に対して2.0〜3.0mol倍である請求項1〜4のいずれかに記載の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドの製造方法。
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