JP2015170394A - 蓄電デバイス用セパレータとその製造方法、及びそれを用いた蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】蓄電デバイスの性能の向上に寄与できるセパレータとして、エポキシ樹脂組成物を用いた蓄電デバイス用セパレータを提供する。
【解決手段】蓄電デバイス用セパレータであって、エポキシ樹脂で構成された三次元網目状骨格と、セパレータの表面と裏面との間でイオンが移動できるように連通している空孔と、三次元網目状骨格に保持されている多価有機酸と、を備え、多価有機酸は、カルボキシル基を3以上有する、蓄電デバイス用セパレータである。
【選択図】図2
【解決手段】蓄電デバイス用セパレータであって、エポキシ樹脂で構成された三次元網目状骨格と、セパレータの表面と裏面との間でイオンが移動できるように連通している空孔と、三次元網目状骨格に保持されている多価有機酸と、を備え、多価有機酸は、カルボキシル基を3以上有する、蓄電デバイス用セパレータである。
【選択図】図2
Description
本発明は、蓄電デバイス用セパレータとその製造方法、及びそれを用いた蓄電デバイスに関する。
リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ、電解コンデンサ等の蓄電デバイスは、様々な分野で使用されている。これらの蓄電デバイスに用いられるセパレータとしては、様々な膜が使用され、検討されてきている。例えば、非水電解質蓄電デバイス用セパレータとしては、ポリオレフィン多孔質膜が使用されている(例えば、特許文献1)。また、水系電解質蓄電デバイス用セパレータとしては、無機繊維からなる繊維シート(例えば、特許文献2)やポリオレフィン系樹脂を用いた多孔質膜(例えば、特許文献3)が使用されている。電解コンデンサ用セパレータとしては、一般に電解紙が用いられているが、セルロースフィルムを用いることも検討されている(特許文献4)。
蓄電デバイスには性能の向上が求められており、これらのセパレータに対しても蓄電デバイスの性能の向上に寄与することが求められている。
従って、本発明では、蓄電デバイスの性能の向上に寄与できるエポキシ樹脂組成物を用いた蓄電デバイス用セパレータを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
蓄電デバイス用セパレータであって、
エポキシ樹脂で構成された三次元網目状骨格と、
前記セパレータの表面と裏面との間でイオンが移動できるように連通している空孔と、
前記三次元網目状骨格に保持されている多価有機酸と、
を備え、
前記多価有機酸は、カルボキシル基を3以上有する、
蓄電デバイス用セパレータ、を提供する。
蓄電デバイス用セパレータであって、
エポキシ樹脂で構成された三次元網目状骨格と、
前記セパレータの表面と裏面との間でイオンが移動できるように連通している空孔と、
前記三次元網目状骨格に保持されている多価有機酸と、
を備え、
前記多価有機酸は、カルボキシル基を3以上有する、
蓄電デバイス用セパレータ、を提供する。
さらに、本発明は、
エポキシ樹脂多孔質膜を備えた蓄電デバイス用セパレータの製造方法であって、
エポキシ樹脂多孔質膜が得られるように、エポキシ樹脂組成物の硬化体とポロゲンとを含むエポキシ樹脂シートから溶剤を用いて前記ポロゲンを除去して多孔化する多孔化工程と、
カルボキシル基を3以上有する多価有機酸を含有する溶液を前記エポキシ樹脂多孔質膜又は前記エポキシ樹脂シートに接触させる処理工程と、
を具備する、
蓄電デバイス用セパレータの製造方法、を提供する。
エポキシ樹脂多孔質膜を備えた蓄電デバイス用セパレータの製造方法であって、
エポキシ樹脂多孔質膜が得られるように、エポキシ樹脂組成物の硬化体とポロゲンとを含むエポキシ樹脂シートから溶剤を用いて前記ポロゲンを除去して多孔化する多孔化工程と、
カルボキシル基を3以上有する多価有機酸を含有する溶液を前記エポキシ樹脂多孔質膜又は前記エポキシ樹脂シートに接触させる処理工程と、
を具備する、
蓄電デバイス用セパレータの製造方法、を提供する。
別の側面から、本発明は、
二種類の電極と、
前記電極間に配置された本発明のセパレータと、
を備えた、蓄電デバイス、を提供する。
二種類の電極と、
前記電極間に配置された本発明のセパレータと、
を備えた、蓄電デバイス、を提供する。
本発明によれば、蓄電デバイスの性能の向上に寄与できる、エポキシ樹脂組成物を用いた蓄電デバイス用セパレータ及びその製造方法が得られる。また、このセパレータの優れた特性を活かした蓄電デバイスを得ることができる。
以下は、本発明の実施形態を例示する説明であって、本発明を以下の実施形態に制限する趣旨ではない。また、以下において、常温とは、5℃〜35℃の温度範囲を意味する。
蓄電デバイスの例としては、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ等の非水電解質蓄電デバイス、電気二重層キャパシタ等の水系電解質蓄電デバイス、アルミニウム電解コンデンサ等の電解コンデンサが挙げられる。以下では、添付の図面を参照しつつ、本発明の一実施形態である非水電解質蓄電デバイスについて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る非水電解質蓄電デバイス100は、二種類の電極、すなわちカソード2とアノード3、セパレータ4及びケース5を備えている。セパレータ4は、カソード2とアノード3との間に配置されている。カソード2、アノード3及びセパレータ4は、一体的に巻回されて発電要素としての電極群10を構成している。電極群10は、底部を有するケース5に収容されている。蓄電デバイス100は、典型的には、リチウムイオン二次電池である。
本実施形態において、ケース5は円筒の形状を有している。すなわち、蓄電デバイス100は円筒の形状を有している。しかし、蓄電デバイス100の形状は特に限定されない。蓄電デバイス100は、例えば、扁平な角型の形状を有していてもよい。また、電極群10は巻回構造を必須としない。カソード2、セパレータ4及びアノード3が単に積層されることによって、板状の電極群が形成されていてもよい。ケース5は、ステンレス、アルミニウム等の金属で作られている。さらに、電極群10が可撓性を有する材料で作られたケースに入れられていてもよい。可撓性を有する材料は、例えば、アルミニウム箔と、アルミニウム箔の両面に貼り合わされた樹脂フィルムとで構成されている。
蓄電デバイス100は、さらに、カソードリード2a、アノードリード3a、蓋体6、パッキン9及び2つの絶縁板8を備えている。蓋体6は、パッキン9を介してケース5の開口部に固定されている。2つの絶縁板8は、電極群10の上部と下部とにそれぞれ配置されている。カソードリード2aは、カソード2に電気的に接続された一端と、蓋体6に電気的に接続された他端とを有する。アノードリード3aは、アノード3に電気的に接続された一端と、ケース5の底部に電気的に接続された他端とを有する。蓄電デバイス100の内部にはイオン伝導性を有する非水電解質(典型的には非水電解液)が充填されている。非水電解質は、電極群10に含浸されている。これにより、セパレータ4を通じて、カソード2とアノード3との間でイオン(典型的にはリチウムイオン)の移動が可能となっている。
カソード2は、例えば、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうるカソード活物質と、バインダーと、集電体とで構成されうる。例えば、バインダーを含む溶液にカソード活物質を混合して合剤を調製し、この合剤をカソード集電体に塗布及び乾燥させることによってカソード2を作製できる。
カソード活物質としては、例えば、リチウムイオン二次電池のカソード活物質として用いられている公知の材料を使用できる。具体的には、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化物、カルコゲン化合物等をカソード活物質として使用できる。リチウム含有遷移金属酸化物としては、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、それらの遷移金属の一部が他の金属で置換された化合物が挙げられる。リチウム含有遷移金属リン酸化物としては、LiFePO4、LiFePO4の遷移金属(Fe)の一部が他の金属で置換された化合物が挙げられる。カルコゲン化合物としては、二硫化チタン、二硫化モリブデンが挙げられる。
バインダーとしては、公知の樹脂を使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフロロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンターポリマー等の炭化水素系樹脂、それらの混合物をバインダーとして使用できる。導電助剤として、カーボンブラック等の導電性粉末がカソード2に含まれていてもよい。
カソード集電体としては、耐酸化性に優れた金属材料、例えば箔状又はメッシュ状に加工されたアルミニウムが好適に用いられる。
アノード3は、例えば、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうるアノード活物質と、バインダーと、集電体とで構成されうる。アノード3も、カソード2と同様の方法で作製できる。カソード2で用いたバインダーと同様のものをアノード3に使用できる。
アノード活物質としては、例えば、リチウムイオン二次電池のアノード活物質として用いられている公知の材料を使用できる。具体的には、炭素系活物質、リチウムと合金を形成しうる合金系活物質、リチウムチタン複合酸化物(例えばLi4Ti5O12)等をアノード活物質として使用できる。炭素系活物質としては、コークス、ピッチ、フェノール樹脂、ポリイミド、セルロース等の焼成体、人造黒鉛、天然黒鉛等が挙げられる。合金系活物質としては、アルミニウム、スズ、スズ化合物、シリコン、シリコン化合物等が挙げられる。
アノード集電体としては、例えば、還元安定性に優れた金属材料、例えば箔状又はメッシュ状に加工された銅又は銅合金が好適に用いられる。リチウムチタン複合酸化物等の高電位アノード活物質を用いる場合には、箔状又はメッシュ状に加工されたアルミニウムもアノード集電体として使用できる。
非水電解液は、典型的には、非水溶媒及び電解質を含んでいる。具体的には、例えば、リチウム塩(電解質)を非水溶媒に溶解させた電解液を好適に使用できる。また、非水電解液を含むゲル電解質、リチウム塩をポリエチレンオキシド等のポリマーに溶解及び分解させた固体電解質等も非水電解質として使用できる。リチウム塩としては、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、トリフロロスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)等が挙げられる。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、これらの混合物等が挙げられる。
次に、セパレータ4について詳しく説明する。
本実施形態において、セパレータ4は、三次元網目状骨格と、空孔とを備えたエポキシ樹脂多孔質膜を備えている。セパレータ4の表面と裏面との間でイオンが移動できるように、つまり、カソード2とアノード3との間をイオンが移動できるように、隣り合う空孔は互いに連通していてもよい。
本実施形態において、三次元網目状骨格には、カルボキシル基を3以上有する多価有機酸が保持されている。多価有機酸は、2以上の酸性基を有する有機酸を意味するが、本実施形態においては3以上のカルボキシル基を有する。多価有機酸の具体例としては、クエン酸、イソクエン酸、トリメリット酸等のカルボキシル基を3有する多価有機酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸等のカルボキシル基を4有する多価有機酸等が挙げられる。架橋の安定性等の観点からは、カルボキシル基を3〜4有する多価有機酸が望ましい。入手及び取り扱いの容易さの観点からは、クエン酸及びイソクエン酸が好ましい。
多価有機酸の含有量は、エポキシ樹脂多孔質膜の重量に対し、1〜30重量%が好ましく、3〜25重量%がより好ましく、3〜20重量%が特に好ましい。多価有機酸の含有量が少なすぎると、架橋の効果が十分に得られないことがある。多価有機酸の含有量が多くなりすぎると、エポキシ樹脂多孔質膜が硬く脆くなることがある。
多価有機酸を有するエポキシ樹脂多孔質膜を用いたセパレータは、非水電解質蓄電デバイスの特性の向上に寄与する。この理由は以下のように考えられる。
官能基の相互に作用しうる電気的な引力により、エポキシ樹脂に含まれるアミノ基の周囲に、多価有機酸のカルボキシル基が引き寄せられると考えられる。多価有機酸は3以上のカルボキシル基を有しているため、本実施形態のエポキシ樹脂多孔質膜は、多価有機酸を介してアミノ基が相互に結びついた架橋構造を有すると考えられる。
非水電解質蓄電デバイスでは、充放電により、アノード及びカソードは膨張及び収縮を繰り返す。それゆえ、電極に挟まれて設置されるセパレータは、電極から圧力及び摩擦を繰り返し受け、孔閉塞ないし孔縮小が生じやすくなる。しかし、多価有機酸を介した架橋構造を有するエポキシ樹脂多孔質膜は、架橋密度が増加したエポキシ樹脂多孔質膜と同様、形状安定性が改善されたものとなり、電極から受ける負荷に対する耐性が向上している。その結果、セパレータの孔閉塞ないし孔縮小が生じにくくなり、非水電解質蓄電デバイスの性能が向上する。
エポキシ樹脂多孔質膜の強度、より具体的には膜の硬さは、例えば動的粘弾性測定によって得られるtanδ(損失正接)又はTg(ガラス転移温度)の値を用いて、評価することができる。tanδは損失弾性率/貯蔵弾性率であって、エネルギー吸収性の指標となる。従って、ポリマー鎖の熱運動が制限された「硬い」エポキシ樹脂多孔質膜は、相対的に低いtanδの値を有する。また、ポリマー鎖の熱運動が制限されたエポキシ樹脂多孔質膜は、Tgが相対的に高くなる。
エポキシ樹脂多孔質膜中の多価有機酸は赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)を測定することにより確認することができる。
図2として、エポキシ樹脂多孔質膜のIRスペクトルの変化の一例を示す。この例は、多価有機酸(クエン酸)を含むエポキシ樹脂多孔質膜と、多価有機酸を含まないエポキシ樹脂多孔質膜との相違を示すものであり、それぞれ後述する比較例1及び実施例1の製法により作製したサンプルから得られたものである。
図2において、多価有機酸を含まないエポキシ樹脂多孔質膜は、IRスペクトルの3000〜3700cm-1付近に水酸基(OH基)による吸収に由来する吸収ピークを示す。このOH基に由来する吸収の強度は、多価有機酸のカルボキシル基とエポキシ樹脂のOH基とが反応した場合、カルボン酸エステル結合が形成されることによって低下する。しかし、多価有機酸としてクエン酸を用いたエポキシ樹脂多孔質膜においては、IRスペクトルの3000〜3700cm-1付近のOH基に由来する吸収の低下は観察されない。
他方、本実施形態の多価有機酸を含むエポキシ樹脂多孔質膜のIRスペクトルは、1716cm-1付近にクエン酸の有するカルボキシル基のC=O結合による吸収に由来する吸収ピークを有する。従って、クエン酸はエポキシ樹脂多孔質膜中に含有されているが、カルボン酸エステル結合は形成されていないものと考えられる。
IRスペクトルの吸光度比から多価有機酸の含有量を定量することが可能である。例えば、多価有機酸としてクエン酸を用いる場合には、830cm-1(フェニル基)における吸収強度に対する1716cm-1(カルボキシル基)における吸収強度の比によって、クエン酸の含有量を定量することが可能である。この吸収強度の比と、多価有機酸(クエン酸)処理前後でのエポキシ樹脂組成物の重量変化との関係を予め用意することによって、多価有機酸(クエン酸)の含有量をインラインで予想することが可能となる。
セパレータ4は、例えば、5〜50μmの範囲の厚さを有する。セパレータ4が厚すぎると、カソード2とアノード3との間のイオンの移動が困難となる。5μm未満の厚さのセパレータ4を製造することは不可能ではないが、蓄電デバイス100の信頼性を確保するうえで、5μm以上、特に10μm以上の厚さが好ましい。
セパレータ4は、例えば、20〜80%の範囲の空孔率を有していてもよい。また、0.02〜1μm、特に0.2〜0.4μmの範囲の平均孔径を有してもよい。空孔率及び平均孔径がこのような範囲に調節されていると、セパレータ4は、必要とされる機能を十分に発揮しうる。
なお、平均孔径は、水銀圧入法による他、走査型電子顕微鏡でセパレータ4の断面を観察して求めることができる。具体的には、視野幅60μm、かつ表面から所定の深さ(例えば、セパレータ4の厚さの1/5〜1/100)までの範囲内に存在する空孔のそれぞれについて、画像処理を行って孔径を求め、それらの平均値を平均孔径として求めることができる。画像処理は、例えば、フリーソフト「Image J」又はAdobe社製「Photoshop」を使用して行える。
また、セパレータ4は、例えば1〜1000秒/100cm3、特に10〜1000秒/100cm3の範囲の通気度(ガーレー値)を有していてもよい。セパレータ4がこのような範囲に通気度を有していることにより、カソード2とアノード3との間をイオンが容易に移動しうる。通気度は、日本工業規格(JIS)P8117に規定された方法に従って測定できる。
エポキシ樹脂多孔質膜は、例えば、下記(a)(b)及び(c)のいずれかの方法で製造することができる。方法(a)及び(b)は、エポキシ樹脂組成物をシート状に成形した後で硬化工程を実施する点で共通している。方法(c)は、エポキシ樹脂のブロック状の硬化体を作り、その硬化体をシート状に成形することを特徴としている。
方法(a)
エポキシ樹脂組成物のシート状成形体が得られるように、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布する。その後、エポキシ樹脂組成物のシート状成形体を加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、得られたエポキシ樹脂シートからポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。基板の種類は特に限定されず、プラスチック基板、ガラス基板、金属板等を基板として使用できる。
エポキシ樹脂組成物のシート状成形体が得られるように、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布する。その後、エポキシ樹脂組成物のシート状成形体を加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、得られたエポキシ樹脂シートからポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。基板の種類は特に限定されず、プラスチック基板、ガラス基板、金属板等を基板として使用できる。
方法(b)
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布する。その後、塗布したエポキシ樹脂組成物の上に別の基板を被せてサンドイッチ構造体を作製する。なお、基板と基板との間に一定の間隔を確保するために、基板の四隅にスペーサー(例えば、両面テープ)を設けてもよい。次に、サンドイッチ構造体を加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、得られたエポキシ樹脂シートを取り出し、ポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。基板の種類は特に制限されず、プラスチック基板、ガラス基板、金属板等を基板として使用できる。特に、ガラス基板を好適に使用できる。
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布する。その後、塗布したエポキシ樹脂組成物の上に別の基板を被せてサンドイッチ構造体を作製する。なお、基板と基板との間に一定の間隔を確保するために、基板の四隅にスペーサー(例えば、両面テープ)を設けてもよい。次に、サンドイッチ構造体を加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、得られたエポキシ樹脂シートを取り出し、ポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。基板の種類は特に制限されず、プラスチック基板、ガラス基板、金属板等を基板として使用できる。特に、ガラス基板を好適に使用できる。
方法(c)
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を所定形状の容器内に充填する。その後、エポキシ樹脂を三次元架橋させることによって、円筒状又は円柱状のエポキシ樹脂組成物の硬化体を作製する。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、エポキシ樹脂組成物の硬化体を円筒軸又は円柱軸を中心に回転させながら、硬化体の表層部を所定の厚さに切削して長尺状のエポキシ樹脂シートを作製する。そして、エポキシ樹脂シートに含まれたポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を所定形状の容器内に充填する。その後、エポキシ樹脂を三次元架橋させることによって、円筒状又は円柱状のエポキシ樹脂組成物の硬化体を作製する。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、エポキシ樹脂組成物の硬化体を円筒軸又は円柱軸を中心に回転させながら、硬化体の表層部を所定の厚さに切削して長尺状のエポキシ樹脂シートを作製する。そして、エポキシ樹脂シートに含まれたポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。
以下、方法(c)を例として取り上げつつ、エポキシ樹脂多孔質膜の製造方法についてさらに詳細に説明する。なお、エポキシ樹脂組成物を調製する工程、エポキシ樹脂を硬化させる工程、ポロゲンを除去する工程等は、各方法に共通している。また、使用できる材料も各方法に共通である。
方法(c)によれば、エポキシ樹脂多孔質膜は、以下の主要な工程を経て製造されうる。
(i)エポキシ樹脂組成物を調製する。
(ii)エポキシ樹脂組成物の硬化体をシート状に成形する。
(iii)エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去する。
(i)エポキシ樹脂組成物を調製する。
(ii)エポキシ樹脂組成物の硬化体をシート状に成形する。
(iii)エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去する。
まず、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲン(細孔形成剤)を含むエポキシ樹脂組成物を調製する。具体的には、エポキシ樹脂及び硬化剤をポロゲンに溶解させて均一な溶液を調製する。
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び非芳香族エポキシ樹脂のいずれも使用可能である。芳香族エポキシ樹脂としては、ポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン環を含むエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂、複素芳香環(例えば、トリアジン環)を含むエポキシ樹脂等が挙げられる。ポリフェニルベースエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベースエポキシ樹脂等が挙げられる。非芳香族エポキシ樹脂としては、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フルオレン環を含むエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好適であり、これらの中でも6000以下のエポキシ当量を有するものを好適に使用できる。これらのエポキシ樹脂を使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できるとともに、エポキシ樹脂多孔質膜に優れた耐薬品性及び高い強度を付与できる。
非水電解質蓄電デバイス用セパレータとして用いるエポキシ樹脂としては、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましい。
本発明の一実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含み、例えばグリシジルアミン型エポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フルオレン環を含むエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つのエポキシ樹脂とを含む。このエポキシ樹脂組成物から得られたセパレータは、非水電解質蓄電デバイスの特性の向上に寄与する。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、アミン化合物のアミノ基の水素原子がグリシジル基で置換された構造を有するエポキシ樹脂であり、グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、特に高い架橋性の観点から2個以上のジグリシジルアミノ基を有することが好ましい。このようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社から商品名「TETRAD(登録商標)−C」として市販されている)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(三菱ガス化学株式会社から商品名「TETRAD(登録商標)−X」として市販されている)等の2個のジグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂を使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できるとともに、硬化後の架橋密度が向上し、エポキシ樹脂多孔質膜に高い強度と耐熱性及び耐薬品性を付与できる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化剤としては、芳香族硬化剤及び非芳香族硬化剤のいずれも使用可能である。芳香族硬化剤としては、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン)、芳香族酸無水物(例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸)、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、複素芳香環を含むアミン(例えば、トリアジン環を含むアミン)等が挙げられる。非芳香族硬化剤としては、脂肪族アミン類(例えば、エチレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン(1,6−ジアミノヘキサン)、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン)、脂環族アミン類(例えば、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、これらの変性品)、ポリアミン類とダイマー酸とを含む脂肪族ポリアミドアミン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、分子内に一級アミンを2個以上有する硬化剤を好適に使用できる。具体的には、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリメチレンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,4−ブチレンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、からなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。これらの硬化剤を使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できるとともに、エポキシ樹脂多孔質膜に高い強度及び適切な弾性を付与できる。得られるエポキシ樹脂多孔質膜の架橋密度の高さ、より高い化学的安定性、並びに入手及び取り扱いの容易さから1,6−ヘキサンジアミンが好ましい。
エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせとしては、芳香族エポキシ樹脂と脂肪族アミン硬化剤との組み合わせ、芳香族エポキシ樹脂と脂環族アミン硬化剤との組み合わせ、又は脂環族エポキシ樹脂と芳香族アミン硬化剤との組み合わせが好ましい。これらの組み合わせにより、エポキシ樹脂多孔質膜に優れた耐熱性を付与できる。
ポロゲンは、エポキシ樹脂及び硬化剤を溶かすことができる溶剤でありうる。ポロゲンは、また、エポキシ樹脂と硬化剤とが重合した後、反応誘起相分離を生じさせることができる溶剤として使用される。具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンジメチルエーテル等のエーテル類をポロゲンとして使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、分子量600以下のポリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル及びポリオキシエチレンジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。特に、分子量200以下のポリエチレングリコール、分子量500以下のポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。これらのポロゲンを使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、個々のエポキシ樹脂又は硬化剤と常温で不溶又は難溶であっても、エポキシ樹脂と硬化剤との反応物が可溶となる溶剤についてはポロゲンとして使用可能である。このようなポロゲンとしては、例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート5058」)が挙げられる。
エポキシ樹脂多孔質膜の空孔率、平均孔径及び孔径分布は、原料の種類、原料の配合比率及び反応条件(例えば、反応誘起相分離時における加熱温度及び加熱時間)に応じて変化する。そのため、目的とする空孔率、平均孔径、孔径分布を得るために、最適な条件を選択することが好ましい。また、相分離時におけるエポキシ樹脂架橋体の分子量、分子量分布、溶液の粘度、架橋反応速度等を制御することにより、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの共連続構造を特定の状態で固定し、安定した多孔質構造を得ることができる。
エポキシ樹脂に対する硬化剤の配合比率は、例えば、エポキシ基1当量に対して硬化剤当量が0.6〜1.5であり、好ましくは0.7〜1.4であり、より好ましくは0.7〜1.2であり、特に好ましくは0.8〜1.1である。適切な硬化剤当量は、エポキシ樹脂多孔質膜の耐熱性、化学的耐久性、力学特性等の特性の向上に寄与する。
硬化剤の他に、目的とする多孔質構造を得るために、溶液中に硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の3級アミン、2−フェノール−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェノール−4,5−ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンの総重量に対して、一般には、40〜80重量%のポロゲンを使用することができる。適切な量のポロゲンを使用することにより、所望の空孔率、平均孔径及び通気度を有するエポキシ樹脂多孔質膜を形成しうる。
エポキシ樹脂多孔質膜の平均孔径を所望の範囲に調節する方法の1つとして、エポキシ当量の異なる2種以上のエポキシ樹脂を混合して用いる方法が挙げられる。その際、エポキシ当量の差は100以上であることが好ましく、常温で液状のエポキシ樹脂と常温で固形のエポキシ樹脂とを混合して用いる場合もある。
次に、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含む溶液からエポキシ樹脂組成物の硬化体を作製する。具体的には、溶液を容器に充填し、必要に応じて加熱する。エポキシ樹脂を三次元架橋させることによって、所定の形状を有する硬化体が得られる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとが相分離することにより、共連続構造が形成される。
硬化体の形状は特に限定されない。円柱状又は円筒状の容器を使用すれば、円筒又は円柱の形状を有する硬化体を得ることができる。硬化体が円筒又は円柱の形状を有していると切削工程を実施しやすい。
硬化体の寸法は特に限定されない。硬化体が円筒又は円柱の形状を有している場合、エポキシ樹脂多孔質膜の製造効率の観点から、硬化体の直径は、例えば20cm以上であり、好ましくは30〜150cmである。硬化体の長さ(軸方向)も、得るべきエポキシ樹脂多孔質膜の寸法を考慮して適宜設定することができる。硬化体の長さは、例えば20〜200cmであり、取扱いやすさの観点から20〜150cmであることが好ましく、20〜120cmであることがより好ましい。
次に、硬化体をシート状に成形する。円筒又は円柱の形状を有する硬化体は、以下の方法でシート状に成形されうる。具体的には、硬化体をシャフトに取り付け、長尺の形状を有するエポキシ樹脂シートが得られるように、切削刃(スライサー)を用いて、硬化体の側面の表層部を所定の厚さで切削(スライス)する。詳細には、硬化体の円筒軸O(又は円柱軸)を中心として、切削刃に対して硬化体を相対的に回転させながら硬化体の表層部を切削する。この方法によれば、効率的にエポキシ樹脂シートを作製することができる。
硬化体を切削するときのライン速度は、例えば2〜70m/minの範囲にある。エポキシ樹脂シートの厚さは、エポキシ樹脂多孔質膜の目標厚さ(5〜50μm)に応じて決定される。ポロゲンを除去して乾燥させると厚さが若干減少するので、エポキシ樹脂シートは、通常、エポキシ樹脂多孔質膜の目標厚さよりも若干厚い。エポキシ樹脂シートの長さは特に限定されないが、エポキシ樹脂シートの製造効率の観点から、例えば100m以上であり、好ましくは1000m以上である。
さらに、エポキシ樹脂シートからポロゲンを抽出し、除去する(多孔化工程)。具体的には、溶剤にエポキシ樹脂シートを浸漬することによって、エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去することが好ましい。これにより、エポキシ樹脂多孔質膜が得られる。溶剤としては、環境に対する負荷が大きくないハロゲンフリーの溶剤が好ましい。
エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去するためのハロゲンフリーの溶剤として、水、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)及びTHF(テトラヒドロフラン)からなる群より選ばれる少なくとも1つをポロゲンの種類に応じて使用できる。また、水、二酸化炭素等の超臨界流体もポロゲンを除去するための溶剤として使用できる。エポキシ樹脂シートからポロゲンを積極的に除去するために、超音波洗浄を行ってもよく、また、溶剤を加熱して用いてもよい。
ポロゲンを除去するための洗浄装置も特に限定されず、公知の洗浄装置を使用できる。エポキシ樹脂シートを溶剤に浸漬することによってポロゲンを除去する場合には、洗浄槽を複数備えた多段洗浄装置を好適に使用できる。洗浄の段数としては、3段以上がより好ましい。また、カウンターフローを利用することによって、実質的に多段洗浄を行ってもよい。さらに、各段の洗浄で、溶剤の温度を変えたり、溶剤の種類を変えたりしてもよい。
ポロゲンを除去した後、エポキシ樹脂多孔質膜の乾燥処理を行う。乾燥条件は特に限定されず、温度は通常40〜120℃程度であり、50〜100℃程度が好ましく、乾燥時間は10秒〜5分程度である。乾燥処理には、テンター方式、フローティング方式、ロール方式、ベルト方式等の公知のシート乾燥方法を採用した乾燥装置を使用できる。複数の乾燥方法を組み合わせてもよい。ただし、引き続き多価有機酸を用いてエポキシ樹脂多孔質膜の処理を行う場合には、この乾燥工程は省略してもよい。
多価有機酸を用いたエポキシ樹脂多孔質膜の処理を行う工程(以下、多価有機酸処理工程)では、少なくとも1つの多価有機酸を処理剤として使用できる。処理工程は、ポロゲンを除去する多孔化工程の前後いずれに実施してもよい。処理工程は、多孔化工程との併合工程として実施することもできる。すなわち、処理工程と多孔化工程との関係は、以下の1)〜3)のとおりとなる。
1)処理工程は多孔化工程の前に実施することができる。この場合は、多孔化される前のエポキシ樹脂組成物の硬化体とポロゲンとを含むエポキシ樹脂シートが処理の対象となる。
2)処理工程は多孔化工程の後に実施することができる。この場合は、エポキシ樹脂多孔質膜が処理の対象となる。
3)処理工程は多孔化工程との併合工程として実施することができる。この場合は、1つにまとめられた併合工程において、上記処理剤とポロゲンを除去するための溶剤とを含む処理液が用いられる。
2)処理工程は多孔化工程の後に実施することができる。この場合は、エポキシ樹脂多孔質膜が処理の対象となる。
3)処理工程は多孔化工程との併合工程として実施することができる。この場合は、1つにまとめられた併合工程において、上記処理剤とポロゲンを除去するための溶剤とを含む処理液が用いられる。
多価有機酸処理は、処理剤を含む処理液にエポキシ樹脂多孔質膜又は多孔化する前のエポキシ樹脂シートを接触させること、具体的には(ア)処理液にエポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートを浸漬させる、又は(イ)処理液をエポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートに塗布又は噴霧する、ことにより実施することができる。処理液に含まれる溶媒としては、水、メタノール又はこれらの混合溶媒が好適であるが、これに限らず、処理剤の種類によっては、溶媒としてトルエン、若しくは酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール等の極性溶媒、又はこれらの混合溶媒等を用いてもよい。また、処理剤が処理温度で液体である場合は、その液体をそのまま処理液として用いることも可能である。即ち、処理液としては、液体である処理剤又は処理剤を含む溶液を用いることができる。処理液は、多価有機酸を0.1mmol/L〜5mol/L含有することが好ましく、1mmol/L〜1mol/L含有することがより好ましい。多価有機酸の濃度が大きすぎると、処理後のエポキシ樹脂多孔質膜に残存する過剰の多価有機酸を除去するのが困難になり、エポキシ樹脂多孔質膜の洗浄に要する時間が長くなることがある。
処理液の塗布又は噴霧による処理は、処理液の蒸発を考慮する必要がないために処理液の濃度調整が不要であるとともに処理液の必要量を見積もりやすいこと、吐出口の温度を調整すれば容易に処理液の温度を制御できること等の理由から、量産に適している。
処理液は、常温でエポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートに接触させれば足りるが、必要に応じて、常温を超える温度にまで加熱してもよい。この場合の加熱温度は、用いる溶媒の種類にもよるが、例えば常温を超え120℃の範囲、特に常温を超え100℃の範囲である。また、処理時間は、エポキシ樹脂多孔質膜等の表面に処理剤が十分行き渡る時間とすればよいが、浸漬又は塗布による場合は、例えば常温では10秒間〜30分間、常温を超えた温度域では1秒間〜5分間が適切である。
処理液との接触の後、必要に応じてエポキシ樹脂多孔質膜を加熱してもよい。
エポキシ樹脂組成物中の多価有機酸の付加量は、多価有機酸の濃度、処理温度、処理時間によって調製することが可能である。
膜中に存在する過剰の多価有機酸を除去するために、必要に応じてエポキシ樹脂多孔質膜を洗浄してもよく、この場合さらに乾燥処理が実施される。洗浄のための溶剤としては、水が適しているが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、これらの混合溶媒、これらと水との混合溶媒等を用いてもよい。洗浄及び乾燥のための装置並びに温度については、ポロゲンの洗浄及び乾燥について上述した装置及び温度を適用することができる。なお、三次元網目状骨格に保持された多価有機酸は、電気的な引力によりアミノ基と結合しているため、上記のような水等を用いた洗浄では除去されにくい。
上記1)によれば、ポロゲンを除去する多孔化工程においてポロゲンとともに処理剤を除去することができる。このため、処理剤を除去するための洗浄を追加して実施する必要がない。また、上記3)によれば、処理剤による処理工程を多孔化工程と別の工程として実施する必要がない。従って、上記1)及び3)は製造効率上、上記2)よりも有利である。
上記1)〜3)のいずれを採用する場合でも、本実施形態では、多孔化工程及び処理工程の前に、エポキシ樹脂シートを得るための工程として、
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を調製する工程と、
エポキシ樹脂シートが得られるように、エポキシ樹脂組成物の硬化体をシート状に成形する又はエポキシ樹脂組成物のシート状成形体を硬化させる工程と、が実施されることは上述したとおりである。
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を調製する工程と、
エポキシ樹脂シートが得られるように、エポキシ樹脂組成物の硬化体をシート状に成形する又はエポキシ樹脂組成物のシート状成形体を硬化させる工程と、が実施されることは上述したとおりである。
なお、セパレータ4は、エポキシ樹脂多孔質膜のみで構成されていてもよいし、エポキシ樹脂多孔質膜と他の多孔質材料との積層体で構成されていてもよい。他の多孔質材料としては、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン多孔質膜等のポリオレフィン多孔質膜、セルロース多孔質膜、フッ素樹脂多孔質膜等が挙げられる。他の多孔質材料は、エポキシ樹脂多孔質膜の片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
同様に、セパレータ4は、エポキシ樹脂多孔質膜と補強材との積層体で構成されていてもよい。補強材としては、織布、不織布等が挙げられる。補強材は、エポキシ樹脂多孔質膜の片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
別の実施形態として、本発明のエポキシ樹脂多孔質膜を備えた蓄電デバイス用セパレータを水系電解質蓄電デバイス用セパレータとして用いる。また、この水系電解質蓄電デバイス用セパレータを備えた、水系電解質蓄電デバイスを形成できる。具体的には、正極と、負極と、正極と負極との間に配置された、本実施形態のセパレータと、セパレータに含浸した水系電解液と、を備えた、水系電解質蓄電デバイスを形成できる。水系電解質蓄電デバイスの具体例としては、例えば電気二重層キャパシタである。
さらに別の実施形態として、本発明のエポキシ樹脂多孔質膜を備えた蓄電デバイス用セパレータを電解コンデンサ用セパレータとして用いる。また、この電解コンデンサ用セパレータを備えた、電解コンデンサを形成できる。具体的には、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に-配置された、本実施形態のセパレータと、セパレータに含浸した電解液と、を備えた、電解コンデンサである。電解コンデンサは、例えばアルミニウム電解コンデンサである。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、RO水は逆浸透膜を用いて処理して得た純水を意味する。特性の評価方法は以下のとおりとした。
[動的粘弾性測定]
セパレータを横10mm縦50mmに裁断し、動的粘弾性測定装置(DMS6100、セイコーインスツル株式会社)を用いて評価した。チャック間距離を15mmに設定し、5℃/minの昇温速度で、300℃まで加熱した。測定周波数は10Hzであった。得られたtanδ(損失正接)曲線(横軸に温度、縦軸にtanδ)において、tanδ値が最大値の時の温度を「Tg(ガラス転移温度)」、その時のtanδ値を「tanδ高さ」、とした。
セパレータを横10mm縦50mmに裁断し、動的粘弾性測定装置(DMS6100、セイコーインスツル株式会社)を用いて評価した。チャック間距離を15mmに設定し、5℃/minの昇温速度で、300℃まで加熱した。測定周波数は10Hzであった。得られたtanδ(損失正接)曲線(横軸に温度、縦軸にtanδ)において、tanδ値が最大値の時の温度を「Tg(ガラス転移温度)」、その時のtanδ値を「tanδ高さ」、とした。
[リチウムイオン二次電池の特性評価]
89重量部のコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製セルシードC−10)、10重量部のアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック)、5重量部のポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製、PVDF、品番KFポリマーL#1120)を混合し、固形分濃度が15重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えてカソード用スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)上に200μmの厚さで塗布した。塗膜を80℃で1時間、120℃で2時間真空乾燥した後、ロールプレスにて加圧した。これにより、100μmの厚さのカソード活物質層を有するカソードを得た。
89重量部のコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製セルシードC−10)、10重量部のアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック)、5重量部のポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製、PVDF、品番KFポリマーL#1120)を混合し、固形分濃度が15重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えてカソード用スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)上に200μmの厚さで塗布した。塗膜を80℃で1時間、120℃で2時間真空乾燥した後、ロールプレスにて加圧した。これにより、100μmの厚さのカソード活物質層を有するカソードを得た。
80重量部のメソカーボンマイクロビーズ(大阪ガスケミカル株式会社製、MCMB6−28)、10重量部のアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック)、10重量部のPVDF(株式会社クレハ製、KFポリマーL#1120)を混合し、固形分濃度が15重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えてアノード用スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmの銅箔(集電体)上に200μmの厚さで塗布した。塗膜を80℃で1時間、120℃で2時間真空乾燥した後、ロールプレスにて加圧した。これにより、100μmの厚さのアノード活物質層を有するアノードを得た。
次に、カソード、アノード及びセパレータを用いて電極群を組み立てた。具体的には、カソード、セパレータ及びアノードを積層し、電極群を得た。セパレータとしては、実施例及び比較例では、それぞれの実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂多孔質膜を、参照例ではポリプロピレン多孔質膜を用いた。電極群をアルミニウムラミネートパッケージに入れた後、パッケージに電解液を注入した。電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを1:3の体積比で含む溶媒にLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させ、ビニレンカーボネートを2重量%含むものを用いた。最後に、パッケージを封口して、リチウムイオン二次電池を得た。
以上により得た各リチウムイオン二次電池について、以下に従って6C/0.5C放電容量維持率を測定した。
[6C/0.5C放電容量維持率]
各電池を、25℃の温度の恒温槽に保持した。まず電圧が4.2Vに到達するまで、0.5CmAに相当する定電流で充電した。電圧が4.2Vに到達した後は、4.2V定電圧で電流値が0.5CmA相当の5%に減衰するまで充電を行った(0.5C充電)。次いで0.5CmAに相当する電流値で電圧が2.75Vに到達するまで放電を行った(0.5C放電)。0.5C充電及び0.5C放電を3回繰り返し、3回目の0.5C放電時の放電容量を0.5C放電容量とした。その後、0.5C充電、6C放電(6CmAに相当する電流値で電圧が2.75Vに到達するまで放電)を行い、6C放電時の放電容量を6C放電容量とした。0.5C放電容量に対する6C放電容量の割合を、6C/0.5C放電容量維持率とした。
各電池を、25℃の温度の恒温槽に保持した。まず電圧が4.2Vに到達するまで、0.5CmAに相当する定電流で充電した。電圧が4.2Vに到達した後は、4.2V定電圧で電流値が0.5CmA相当の5%に減衰するまで充電を行った(0.5C充電)。次いで0.5CmAに相当する電流値で電圧が2.75Vに到達するまで放電を行った(0.5C放電)。0.5C充電及び0.5C放電を3回繰り返し、3回目の0.5C放電時の放電容量を0.5C放電容量とした。その後、0.5C充電、6C放電(6CmAに相当する電流値で電圧が2.75Vに到達するまで放電)を行い、6C放電時の放電容量を6C放電容量とした。0.5C放電容量に対する6C放電容量の割合を、6C/0.5C放電容量維持率とした。
[IRスペクトル]
IRスペクトル(赤外吸収スペクトル)は、透過型FT-IR装置(Nicolet iS5、Thermo Fisher Scientific製)を用いて測定した。検量線は、830cm-1における吸収強度に対する1716cm-1における吸収強度の比に対する多孔質膜の重量増加率に基づいて作製した。この検量線に基づいて、エポキシ樹脂多孔質膜に含まれるクエン酸量を求めた。
IRスペクトル(赤外吸収スペクトル)は、透過型FT-IR装置(Nicolet iS5、Thermo Fisher Scientific製)を用いて測定した。検量線は、830cm-1における吸収強度に対する1716cm-1における吸収強度の比に対する多孔質膜の重量増加率に基づいて作製した。この検量線に基づいて、エポキシ樹脂多孔質膜に含まれるクエン酸量を求めた。
(比較例1)
3Lの円筒形のポリ容器にjER(登録商標)828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製、エポキシ当量184〜194g/eq.)100重量部、TETRAD(登録商標)−C(グリシジルアミン型エポキシ樹脂、三菱ガス化学株式会社製、エポキシ当量95〜110g/eq.)25重量部をポリプロピレングリコール(株式会社ADEKA製、アデカポリエーテルP−400)211.9重量部に溶解させ、エポキシ樹脂/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、このポリ容器に1,6−ジアミノヘキサン22.3重量部を添加し、エポキシ樹脂/アミン/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、遊星撹拌装置(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎(登録商標)」)を用い、約0.7kPaで真空脱泡すると同時に自/公転比率3/4の条件下、公転800rpmの比率で10分間撹拌する手順を2回繰り返した。
3Lの円筒形のポリ容器にjER(登録商標)828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製、エポキシ当量184〜194g/eq.)100重量部、TETRAD(登録商標)−C(グリシジルアミン型エポキシ樹脂、三菱ガス化学株式会社製、エポキシ当量95〜110g/eq.)25重量部をポリプロピレングリコール(株式会社ADEKA製、アデカポリエーテルP−400)211.9重量部に溶解させ、エポキシ樹脂/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、このポリ容器に1,6−ジアミノヘキサン22.3重量部を添加し、エポキシ樹脂/アミン/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、遊星撹拌装置(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎(登録商標)」)を用い、約0.7kPaで真空脱泡すると同時に自/公転比率3/4の条件下、公転800rpmの比率で10分間撹拌する手順を2回繰り返した。
その後、数日間自然冷却させ、ポリ容器からエポキシ樹脂ブロックを取り出し、切削旋盤装置を用いて20μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。
このエポキシ樹脂シートを、RO水/DMF=1/1(v/v)混合液中で10分間超音波洗浄した後、RO水を用いて10分間超音波洗浄し、その後RO水中に12時間浸漬させてポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃雰囲気下で2時間乾燥させ、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
(比較例2)
比較例1で得られたエポキシ樹脂多孔質膜を、酢酸(和光純薬製、特級99.5%以上)に10分間浸漬させた。その後、この多孔質膜を、エタノールに10分間浸漬し、その後RO水に10分間浸漬させた。その後、80℃雰囲気下で2時間乾燥させ、酢酸浸漬プロセスを経たエポキシ樹脂多孔質膜を得た。
比較例1で得られたエポキシ樹脂多孔質膜を、酢酸(和光純薬製、特級99.5%以上)に10分間浸漬させた。その後、この多孔質膜を、エタノールに10分間浸漬し、その後RO水に10分間浸漬させた。その後、80℃雰囲気下で2時間乾燥させ、酢酸浸漬プロセスを経たエポキシ樹脂多孔質膜を得た。
(実施例1)
比較例1で得られたエポキシ樹脂多孔質膜を、エタノール/RO水=1/1(v/v)混合液中に1分浸漬させた。さらにRO水中に1分間浸漬させ、親水化を行った後、50℃のクエン酸(多価有機酸)のRO水溶液(クエン酸濃度50mmol/L)に1分間浸漬させ、多価有機酸処理を行った。その後、80℃雰囲気下で2時間乾燥させ、多価有機酸で処理したエポキシ樹脂多孔質膜を得た。得られたエポキシ樹脂多孔質膜に対するクエン酸の付着量は17重量%であった。
比較例1で得られたエポキシ樹脂多孔質膜を、エタノール/RO水=1/1(v/v)混合液中に1分浸漬させた。さらにRO水中に1分間浸漬させ、親水化を行った後、50℃のクエン酸(多価有機酸)のRO水溶液(クエン酸濃度50mmol/L)に1分間浸漬させ、多価有機酸処理を行った。その後、80℃雰囲気下で2時間乾燥させ、多価有機酸で処理したエポキシ樹脂多孔質膜を得た。得られたエポキシ樹脂多孔質膜に対するクエン酸の付着量は17重量%であった。
(参照例)
セルガード社製ポリプロピレン多孔質膜CG2400を用いた。
セルガード社製ポリプロピレン多孔質膜CG2400を用いた。
実施例1、比較例1〜2及び参照例の多孔質膜を用いて得られた放電容量維持率の評価結果を表1に、実施例1、比較例1〜2で得られたエポキシ樹脂多孔質膜のTg及びtanδの結果を表2に示す。表2において「tanδ高さ比」は、比較例1の値を1としたtanδ高さの相対比を示す。また、図2に実施例1、図3に比較例2で得られた多孔質膜のIRスペクトルを示す。
比較例2(酢酸処理)で得られたセパレータを用いると、比較例1(多価有機酸処理は未実施)で得られたセパレータよりも放電容量維持率が少し改良された。実施例1(多価有機酸であるクエン酸を使用)で得られたセパレータを用いると、放電容量維持率がさらに向上した。
実施例1(多価有機酸であるクエン酸を使用)のIRスペクトル(図2)では、1716cm-1に吸収ピークが存在した。しかし、比較例2(酢酸処理)のIRスペクトル(図3)では、上記のピークが存在しなかった。
本発明によって提供されるセパレータは、蓄電デバイス用セパレータ、分離ろ過膜、通音膜等に使用できる。例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質蓄電デバイス、電気二重層キャパシタ等の水系電解質蓄電デバイス、アルミニウム電解コンデンサ等の電解コンデンサに好適に使用できる。
2 カソード
3 アノード
4 セパレータ
100 非水電解質電池
3 アノード
4 セパレータ
100 非水電解質電池
Claims (4)
- 蓄電デバイス用セパレータであって、
エポキシ樹脂で構成された三次元網目状骨格と、
前記セパレータの表面と裏面との間でイオンが移動できるように連通している空孔と、
前記三次元網目状骨格に保持されている多価有機酸と、
を備え、
前記多価有機酸は、カルボキシル基を3以上有する、
蓄電デバイス用セパレータ。 - 前記セパレータの厚さが5〜50μmの範囲にある、
請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。 - エポキシ樹脂多孔質膜を備えた蓄電デバイス用セパレータの製造方法であって、
エポキシ樹脂多孔質膜が得られるように、エポキシ樹脂組成物の硬化体とポロゲンとを含むエポキシ樹脂シートから溶剤を用いて前記ポロゲンを除去して多孔化する多孔化工程と、
カルボキシル基を3以上有する多価有機酸を含有する溶液を前記エポキシ樹脂多孔質膜又は前記エポキシ樹脂シートに接触させる処理工程と、
を具備する、
蓄電デバイス用セパレータの製造方法。 - 二種類の電極と、
前記電極間に配置された請求項1又は2に記載のセパレータと、
を備えた、蓄電デバイス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2014042131A JP2015170394A (ja) | 2014-03-04 | 2014-03-04 | 蓄電デバイス用セパレータとその製造方法、及びそれを用いた蓄電デバイス |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020096061A1 (ja) * | 2018-11-09 | 2020-05-14 | 東レ株式会社 | 多孔性ポリオレフィンフィルム、電池用セパレータおよび二次電池 |
CN111682147A (zh) * | 2020-04-30 | 2020-09-18 | 华南师范大学 | 一种同时抑制锂枝晶和穿梭效应的双涂层隔膜及其制备方法 |
JP7400366B2 (ja) | 2018-11-09 | 2023-12-19 | 東レ株式会社 | 多孔性ポリオレフィンフィルム、それを用いた電池用セパレータおよび二次電池 |
-
2014
- 2014-03-04 JP JP2014042131A patent/JP2015170394A/ja active Pending
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