JP2015167977A - スカーフ装置における鋼材の予熱むら検知方法 - Google Patents

スカーフ装置における鋼材の予熱むら検知方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼材の幅方向の予熱むらを予熱時に簡単に検知することができるスカーフ装置における鋼材の予熱むら検知方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る鋼材Wの予熱むら検知方法は、スカーフ装置1の火口3に対向する鋼材Wの表面を撮像する撮像手段8で撮像された画像にて鋼材Wの幅方向に2つ以上の領域に分割された測定領域iを設定し、各測定領域iにて鋼材Wの表面輝度の平均値の時間変化を測定すると共に鋼材Wの表面輝度が閾値を越えたときの時間Tを測定し、鋼材Wの表面輝度が閾値を越えた時間Tとスカーフ装置1に対して予熱終了の指示を出した予熱終了時間Tとの差である溶融持続時間Tyiを各測定領域iで算出し、各測定領域iの溶融持続時間Tyiと当該各測定領域iの溶融持続時間Tyiのうち最も大きい値Tyi−maxとの比が閾値以下となる場合鋼材Wの予熱むらが発生したと判断することで、鋼材Wの予熱むらを検知する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼材の表面に生じる欠陥を溶削するスカーフ装置における鋼材の予熱むらを検知する方法に関する。
分塊圧延又は連続鋳造されたスラブ、ブルーム、ビレット等の鋼材の表面には、脱炭層や表面疵といった有害な表面欠陥が存在する。これらの欠陥は、後工程にて加工された後においても消失することなく残存し、製品とされる鋼材に表面欠陥が発生することとなり、鋼材の表面品質を悪化させる場合がある。
鋼材の表面に存在する有害欠陥を分塊工程で除去する設備として、鋼材の表面に燃焼ガスと酸素を吹き付け、この鋼材の表面を一定の深さまで溶削するためのスカーフ装置(ホットスカーフ)が用いられている。
スカーフ装置では、搬送方向の鋼材に対して、燃料と酸素で形成される予熱火炎を火口より照射して予熱し、鋼材の表面を溶融させて一定量の湯だまりを形成させている。そして、一定量の湯だまりを形成させた後、予熱火炎の出力を低下させて溶削酸素流量を増加させる。このとき、増加した酸素による酸化熱で鋼材の表面を溶融すると共に、酸素噴流により鋼材の表面から溶融酸化鉄を吹き飛ばして連続的に溶削する。
このようなスカーフ装置を用いて、鋼材の表面を溶削するに際しては、鋼材の表面品質に影響する溶削のばらつき(鋼材の予熱むら)が生じることがある。
溶削時のばらつきは、鋼材の表面に吹き付ける溶削酸素流量のばらつきの影響が大きいが、「予熱時における鋼材の表面温度のむら」や「予熱時における鋼材の表面の溶融深さのむら」にも起因するといわれている。
例えば、予熱時における鋼材の表面温度のむらの原因は、スカーフ装置に備えられた火口の酸素ノズル及び燃料ノズルの磨耗や表面酸化などの経時変化により、各供給ノズル(火口)の孔径が変化する(孔が塞がってしまう)などといった変化がおこり、各供給ノズルの燃焼条件が異なってしまうことである。
このようなスカーフ装置における鋼材の予熱むらを検知する技術としては、例えば、特許文献1〜特許文献3に示すような技術が挙げられる。
特許文献1には、鋼鋳片を予熱する予熱ステップと、前記予熱ステップに引き続いて実行される溶削ステップとを含む溶削装置を用いた鋼鋳片の溶削方法であって、前記予熱ステップでは、プロパンガスに対する酸素ガスの流量比率が5.0±0.5の範囲である燃焼ガスを火口から噴射して、鋼鋳片に溶融部を形成する溶削装置を用いた鋼鋳片の溶削方法が開示されている。
特許文献2には、先端形状が不定の鋼片表面を予熱してその表面に湯溜りを生成させ、前記鋼片を搬送しつつこれに火炎を吹付けて鋼片表面の欠陥を溶削するホットスカーフィングの制御装置において、鋼片の先端形状及び予熱により生じた湯溜りの広さ、並びに溶削後の鋼片の表面状態を画像化する手段と、画像化された鋼片の先端形状に基づき溶削開始位置を決定する手段と、画像化された湯溜りの広さに基づき予熱完了か否かを判定する手段と、画像化された溶削後の鋼片の表面状態に基づき溶削の良否を判定する手段と、前記鋼片の溶削開始位置が火口と対向するよう鋼片を位置決めし、また溶削中は、所定速度で鋼片を搬送させるテーブルの駆動制御部と、鋼片の周囲夫々と対応する火口を有し、鋼片の予熱中、又は溶削中に燃焼の程度を調整する火口ユニット制御部と、前記溶削の良否を判定する手段が溶削不良と判定した場合に警報を発する警報部とを備えたホートスカーフィング制御装置が開示されている。
特許文献3には、鋼片の表面欠陥を溶削手入れするホットスカーフィング設備において、スカーフィング設備の入側近傍に設置したCCDカメラと、該CCDカメラによる映像を画像処理して溶削開始位置を決定すると共に、予熱開始から予熱完了までの時間を計測し出力する画像処理部と、該画像処理部から入力される溶削開始位置に基づいて、鋼片搬送用テーブルローラーを制御してスカーフィング設備の火口直下に溶削開始位置をセット
すると共に、予熱開始から予熱完了までの時間に基づいて予め設定された当該鋼片の溶削条件を補正し、溶削量を制御する溶削量自動制御部とからなるホットスカーフィングの溶削量自動制御装置が開示されている。
特開2009−233689号公報 特許2590666号公報 特開平7−164143号公報
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に示すようなスカーフ装置における鋼材の予熱むらを検知する技術を用いても、以下に述べるような難点が存在する。
すなわち、特許文献1は、スカーフ装置に備えられた火口から噴射される火炎における燃料の流量と酸素の流量を規定して、鋼材の予熱深さを一定に制御しているが、火口のノズル径が個々に変化した場合、ノズル全体での酸素比を一定にすることは可能であるが、局所的な酸素比、つまり各供給ノズルにおける酸素比を一定することはできないため、鋼材の予熱むらが生じる虞がある。
一方、特許文献2及び特許文献3は、鋼材の各面に対向させたCCDカメラにより、予熱開始後形成された鋼材の湯たまり部分の面積により予熱完了を判断し、予熱時間に応じた溶削速度(鋼材送り速度)を補正したり、溶削後の鋼材の表面状態に基づき溶削良否を判断したりして、「鋼材の搬送方向(長手方向)の予熱むら」を制御しているが、「鋼材の幅方向の予熱むら」を制御(検知)することはできない。
つまり、特許文献1〜特許文献3は、火口から噴射される火炎の燃料量や酸素量の調整や搬送速度の調整により溶融深さを制御しているが、鋼材の幅方向の予熱むらの制御(検知)までは行っていない。
また、実際の溶削工程では、各酸素供給ノズルから供給される酸素、及び燃料供給ノズルから供給される燃料をそれぞれ制御することができるが、複数配備されている個々の供給ノズルでの酸素及び燃料の制御はできないため、鋼材の幅方向の予熱むらを、個別に調整することができない。そのため、鋼材の幅方向の予熱むらを検知する必要がある。鋼材の幅方向の予熱むらを検知しなければ、鋼材の表面品質に悪影響を及ぼす虞がある。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、鋼材の幅方向の予熱むらを予熱時に簡単に検知することができるスカーフ装置における鋼材の予熱むら検知方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明におけるスカーフ装置における鋼材の予熱むら検知方法は、スカーフ装置に備えられた火口に対向する鋼材の表面を撮像する撮像手段を配備しておき、以下のステップを行うことで、前記スカーフ装置で溶削される前記鋼材の予熱むらを検知することを特徴とするスカーフ装置における鋼材の予熱むらの検知方法。
(1)前記撮像手段にて撮像された画像にて、前記鋼材の幅方向に2つ以上の領域に分割された測定領域iを設定するステップ。
(2)前記設定された各測定領域iにて、前記鋼材の表面輝度の平均値を算出して、当該平均値の時間変化を測定すると共に、前記鋼材の表面輝度が所定の閾値を越えたときの時間Tを測定するステップ。
(3)前記鋼材の表面輝度が所定の閾値を越えた時間Tと、前記スカーフ装置に対して予熱を終了する指示を出した時間である予熱終了時間Tとの差である溶融持続時間Tyiを、前記各測定領域iで算出するステップ。
(4)前記各測定領域iで算出された溶融持続時間Tyiと、当該各測定領域iで算出された溶融持続時間Tyiのうち、最も大きい値Tyi−maxとの比が、所定の閾値以下となる場合、前記鋼材の予熱むらが発生したと判断するステップ。
本発明のスカーフ装置における鋼材の予熱むら検知方法によれば、鋼材の幅方向の予熱むらを予熱時に簡単に検知することができる。
本発明の鋼材の予熱むら検知方法に用いられるホットスカーフ装置を模式的に示した図である。 撮像手段にて撮像された鋼材の表面画像を、鋼材の幅方向に2つ以上に分割して測定領域iを設定する方法を示した図である。 各測定領域iにおける鋼材の表面輝度の平均値の時間変化を示した図である。 各測定領域iで算出された溶融持続時間Tyiと、各測定領域iで算出された溶融持続時間Tyiのうち、最も大きい値Tyi−maxとを比較して、鋼材の予熱むらが発生したと判断する方法を示した図である。 予熱むらがあった場合における各測定領域iでの輝度値の時間変化を示した図である。 予熱むらがない場合における各測定領域iでの輝度値の時間変化を示した図である。 予熱時の溶融深さむらと予熱むらの関係を示した図である。 溶融持続時間と予熱時間と溶融深さとの関係を示した図である。
以下、本発明に係るスカーフ装置における鋼材の予熱むら検知方法を、図面に基づき詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態に開示内容だけに限定されるものではない。
まず、本発明の鋼材Wの予熱むら検知方法に用いられるスカーフ装置1(ホットスカーフ)について、図を基に説明する。図1は、スカーフ装置1を模式的に示した図である。
スカーフ装置1は、搬送方向の鋼材Wに対して、燃料と酸素で形成される予熱火炎を火口3より照射して予熱し、鋼材Wの表面を溶融させて一定量の湯だまりを形成させている。そして、一定量の湯だまりを形成させた後、予熱火炎の出力を低下させて溶削酸素流量を増加させる。このとき、増加した酸素による酸化熱で鋼材Wの表面を溶融すると共に、酸素噴流により鋼材Wの表面から溶融酸化鉄を吹き飛ばして連続的に溶削するものである。
図1に示すように、スカーフ装置1は、スラブ、ブルーム、ビレット等の鋼材Wを搬送する搬送ローラ10(搬送路)上に配備されるものであって、鋼材Wの各面(例えば、上下左右の4面)にそれぞれ対応して上部火口ユニット、下部火口ユニット2、左部火口ユニット、右部火口ユニットが配設されている。なお、本実施形態においては、下部火口ユニット2のみを図1に記載している。
各火口ユニットは、鋼材Wの表面側に開口し、且つその開口から火炎を噴射する複数のノズルを有する火口3と、パイロットバーナ4を備えており、火口3に設置されたノズルは、鋼材Wの幅方向に複数個配置されている(例えば、鋼材Wの幅方向に30個配置)。
火口3には、鋼材Wの表面を溶削するための酸素を供給する溶削酸素供給ノズル5と、プロパンガスなどの燃料を供給する燃料供給ノズル6と、鋼材Wを予熱するための酸素を供給する予熱酸素供給ノズル7とを有していて、溶削酸素供給ノズル5と予熱酸素供給ノズル7とが燃料供給ノズル6を挟むように配置されている。
溶削酸素供給ノズル5の配管系統には、火口3へ流れる溶削酸素の流量を遮断・調整するために、酸素を遮断する溶削酸素供給弁5aと、火口3へ流れる溶削酸素の圧力を測定する圧力計5bと、火口3へ流れる溶削酸素の圧力を調整するための圧力調整弁5cが設けられている。
燃料供給ノズル6の配管系統には、火口3へ流れるプロパンなどの燃料の流量を遮断・
調整するために、燃料を遮断する燃料供給弁6aと、火口3へ流れる燃料の圧力を測定する圧力計6bと、火口3へ流れる燃料の圧力を調整するための圧力調整弁6cが設けられている。
予熱酸素供給ノズル7の配管系統には、火口3へ流れる予熱酸素の流量を調整するために、酸素を遮断する予熱酸素供給弁7aと、火口3へ流れる予熱酸素の圧力を測定する圧力計7bと、火口3へ流れる予熱酸素の圧力を調整するための圧力調整弁7cが設けられている。
上記したスカーフ装置1を用いて、鋼材Wを予熱(溶削)するにあたっては、搬送ローラ10にて搬送される鋼材Wの表面に対して、各供給ノズル5,6,7から供給された溶削酸素、燃料、予熱酸素を、鋼材Wの表面に対向する位置に配備された火口3先端より噴射する。
このとき、溶削酸素及び予熱酸素は、各酸素供給ノズル5,7の配管系統に配備された酸素供給弁5a,7aと圧力調整弁5c,7cにより、一定の圧力に設定されている。また燃料は、燃料供給ノズル6の配管系統に配備された燃料供給弁6aと圧力調整弁6cにより、一定の流量(着火のための量)に設定されている。
そして、溶削酸素、燃料、予熱酸素が供給されている火口3に配備されたパイロットバーナ4を点火し、火炎を形成する。鋼材Wが搬送ローラ10にて火口3が配備された位置まで搬送されると、燃料供給弁6aと各酸素供給弁5a,7aを開いて予熱火炎を形成し、火口3から予熱火炎を噴射して鋼材Wの表面を溶削する。すなわち、鋼材Wを予熱する。
鋼材Wの予熱中に、鋼材Wの温度が上昇すると共に、鋼材Wの表面に溶融浴(湯だまり)が形成されたことを確認すると、スカーフ装置1に対して、鋼材Wの予熱を終了する指示を出す(後述する予熱終了時間T)。この後、燃料供給弁6aを徐々に閉じて行くと共に溶削酸素供給弁5aを徐々に開きながら、鋼材Wの溶削を行う。
そして、火口3から噴射される溶削火炎が鋼材Wの後端を溶削し終えると、燃料供給弁6a、溶削酸素供給弁5a及び予熱酸素供給弁7aを閉じ、鋼材Wの表面の溶削を終了する。
このようなスカーフ装置1を用いて、鋼材Wの表面を溶削するに際しては、鋼材Wの表面品質に影響する溶削のばらつき(鋼材Wの予熱むら)が生じることがある。
そこで、本願発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すスカーフ装置1における鋼材Wの予熱むら検知方法を知見するに至った。
本発明の鋼材Wのスカーフ装置1における鋼材Wの予熱むら検知方法は、スカーフ装置1に備えられた火口3に対向する鋼材Wの表面を撮像する撮像手段8を配備し、その撮像手段8にて撮像された画像を用いて、鋼材Wの予熱むらの検知を行っている。
図2に示すように、本実施形態では、鋼材Wの下表面側に撮像手段8(例えば、CCDカメラ)を設置して、搬送された鋼材Wの下表面を測定するようにしている。
なお、撮像手段8を鋼材Wの下表面側にのみ配備しているが、撮像手段8を鋼材Wの上表面側、及び鋼材Wの両側面側に配備して、鋼材Wの各表面を測定するようにしてもよい。つまり、鋼材Wの4つ面側全てに撮像手段8を配備して、鋼材Wの各表面を測定するようにしてもよい。
また、撮像手段8の配備位置についても、鋼材Wの各表面を明確に撮像できる箇所であれば、いずれの位置に配備してもよい。
本発明に係る鋼材Wの予熱むら検知方法は、具体的に以下のステップを行うことで、スカーフ装置1で溶削される前記鋼材Wの予熱むらを検知する。
(1)撮像手段8にて撮像された画像にて、鋼材Wの幅方向に2つ以上の領域に分割された測定領域iを設定するステップ。
(2)設定された各測定領域iにて、鋼材Wの表面輝度の平均値を算出して、当該平均値の時間変化を測定すると共に、鋼材Wの表面輝度が所定の閾値を越えたときの時間Tを測定するステップ。
(3)鋼材Wの表面輝度が所定の閾値を越えた時間Tと、スカーフ装置1に対して予
熱を終了する指示を出した時間である予熱終了時間Tとの差である溶融持続時間Tyiを、各測定領域iで算出するステップ。
(4)各測定領域iで算出された溶融持続時間Tyiと、当該各測定領域iで算出された溶融持続時間Tyiのうち、最も大きい値Tyi−maxとの比が、所定の閾値以下となる場合、鋼材Wの予熱むらが発生したと判断するステップ。
測定領域iを設定するステップ(1)では、図2に示すように、撮像手段8で撮像された画像を鋼材Wの幅方向に、例えば6つ以上の領域に分割する。図2に示す右図の上(搬送方向を向いた鋼材Wの下表面に向かって左側)から順に、分割した複数の測定領域iを測定領域1〜測定領域6とする。
鋼材Wの表面輝度を測定するステップ(2)では、図3に示すように、(1)のステップで設定した測定領域1〜測定領域6内における鋼材Wの表面輝度の平均値を算出する。そして、算出した鋼材Wの表面輝度が所定の閾値を越えたときの時間Tを測定する。
例えば、図3に示す測定領域1では、鋼材Wの表面輝度が所定の閾値を越えたときの時間はTi1である。また、測定領域3では、鋼材Wの表面輝度が所定の閾値を越えたときの時間はTi3である。また、測定領域4では、鋼材Wの表面輝度が所定の閾値を越えたときの時間はTi4である。
図3からわかるように、鋼材Wの表面輝度が所定の閾値を越える時間Tは、測定領域1〜測定領域6ごとに異なるものである。
測定領域1〜測定領域6の溶融持続時間Tyiを算出するステップ(3)では、(2)のステップで測定した鋼材Wの表面輝度が所定の閾値を越えたときの時間Tと、鋼材Wが所定の予熱状況となったときに、その鋼材Wの予熱を終了する予熱終了時間Tとの差を、各測定領域1〜測定領域6で算出する。この時間差T−Tは、鋼材Wの表面を溶削している時間とされ、溶融持続時間Tyiと設定される。なお、予熱終了時間Tは、処理装置9での画像処理の結果から判るものではなく、オペレータが予め設定するなどして外部から付与される値(時間)である。
例えば、図3に示すように、測定領域1の溶融持続時間はTyi1であり、測定領域3の溶融持続時間はTyi1であり、測定領域4の溶融持続時間はTyi4である。
図3からわかるように、測定領域1〜測定領域6ごとに、溶融持続時間Tyiは異なるものである。
鋼材Wの予熱むらを判断するステップ(4)では、(3)のステップで算出された各測定領域1〜測定領域6の溶融持続時間Tyi1〜Tyi6のうち、最も大きい値をTyi−maxとする。
図4に示すように、時間差T−Tが最も大きい測定領域1の溶融持続時間Tyi1を、測定領域1〜測定領域6における溶融持続時間の最大値Tyi−maxと設定する。なお、測定領域1での鋼材Wの溶融状況を、基準とする(◎印)。
そして、溶融持続時間の最大値Tyi−maxと、各測定領域1〜測定領域6で算出された溶融持続時間Tyi1〜Tyi6との比を算出する。算出した比(Tyi−max/Tyi)が、所定の閾値以下(例えば、0.8以下)となる場合、鋼材Wの予熱むらが発生したと判断する。なお、所定の閾値に関しては、鋼材Wの製造状況によって異なるものであり、閾値0.8(鋼材Wの表面が80%以上溶融されている状況)以下は一例である。
例えば、図4に示すように、測定領域3の溶融持続時間Tyi3と、溶融持続時間の最大値Tyi−maxを比較する(Tyi−max/Tyi3)と、測定領域3の溶融持続時間Tyi3と、溶融持続時間の最大値Tyi−maxの比は、0.8と算出され、鋼材Wの表面が溶融されていると確認できる(○印)。
一方、測定領域4の溶融持続時間Tyi4と、溶融持続時間の最大値Tyi−maxを比較する(Tyi−max/Tyi4)と、測定領域4の溶融持続時間Tyi4と、溶融持続時間の最大値Tyi−maxの比は、0.5と算出され、鋼材Wの表面が溶融されていないと確認できる(×印)。
このように、溶融持続時間の最大値Tyi−maxと、各測定領域1〜測定領域6で算
出された溶融持続時間Tyi1〜Tyi6とを比較することで、簡便に鋼材Wの予熱むらを検出することができる。
[実験例]
次に、本発明の鋼材Wのスカーフ装置1における鋼材Wの予熱むら検知方法の実験例について、説明する。
本実験例で用いるスカーフ装置1に配備された火口3は、予熱酸素供給ノズル、燃料供給ノズル、及び溶削酸素供給ノズル5が幅方向に30個備えられている。
図2に示すように、本実験例のスカーフ装置1に配備された撮像手段8は、鋼材Wの下表面のほぼ直下に配備されていて、鋼材Wの下表面の予熱位置の幅方向周辺を撮像した。
撮像手段8にて撮像した鋼材Wの下表面の画像を、幅方向に6つの領域に分割し、鋼材Wの表面輝度を測定する測定領域iと設定した。その設定した測定領域iを、搬送方向を向いた鋼材Wの下表面に向かって左側(図2の右側の図では、上側)から順に、測定領域1〜測定領域6と設定した。
なお、鋼材Wの幅方向における測定領域iの分割数Nに関しては、少なくとも2つ以上であって、火口3の幅方向に配備された各供給ノズルの個数n個に対して、n/5とする(N=n/5)。例えば、各供給ノズルが幅方向に30個配備されている場合、測定領域iの分割数Nは6つとなる。すなわち、鋼材Wの幅方向における測定領域iの分割数Nは、火口3の幅方向に配備可能な各供給ノズルの個数に準じるものである。
また、測定領域iの分割数Nが少なくとも2つ以上としているのは、鋼材Wの幅方向左右のばらつきを評価するためである。
次に、設定した測定領域1〜測定領域6における鋼材Wの表面輝度の平均値を算出した。ここで、輝度値を0〜255の256階調とし、処理装置9での画像処理の時間ステップを1秒とした。なお、鋼材Wは熱せられていて自発光しており、ホットスカーフを行う前の鋼材Wの平均輝度は約140となっている。
図5に示すように、溶融開始時の輝度値(約140〜約200)と、輝度値の最大値(255)との差が大きいので、輝度値の最大値を鋼材Wの溶融が開始された閾値とする。なお、配備されている撮像手段8(CCDカメラ)の感度などの性能により、閾値を適切に設定することも可能である。
鋼材Wの表面輝度の平均値が閾値(255)を超えた場合、鋼材Wの溶融が開始されたと判断する。なお、鋼材Wの溶融が開始されたと判断するにあたっては、鋼材Wの表面輝度の時間微分をとり、その傾きが所定の閾値以上となった場合、鋼材Wの溶融が開始されたと判定してもよい。
図5に、予熱むら(溶融むら)があった場合における各測定領域1〜測定領域6での輝度値の時間変化を示し、図6に、予熱むらがない場合における各測定領域1〜測定領域6での輝度値の時間変化を示す。
図5において、測定領域1(基準輝度値:約160)では、予熱開始4秒後に急激に表面輝度の平均値が上昇し、5秒前に閾値(255)に到達していることがわかる。測定領域2(基準輝度値:約160)では、予熱開始4秒〜5秒かけて急激に表面輝度の平均値が上昇するが、その後緩やかに上昇し、6秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。
測定領域3(基準輝度値:約140)では、予熱開始4秒後に表面輝度の平均値が上昇し、6秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。測定領域4(基準輝度値:約155)では、予熱開始4秒〜5秒かけて表面輝度の平均値が緩やか上昇し、その後急激に上昇して、6秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。
測定領域5(基準輝度値:約140)では、予熱開始4秒〜6秒かけて表面輝度の平均値が緩やか上昇し、その後さらに緩やかに上昇して、7秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。測定領域6(基準輝度値:約140)では、予熱開始4秒〜6秒かけて表面輝度の平均値がかなり緩やか上昇し、その後上昇して、7秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。
以上より、各測定領域1〜測定領域6の表面輝度の平均値が、閾値(255)に到達す
るのに時間差が生じている(予熱開始から5〜7秒後)場合、鋼材Wの予熱にむらが生じていることがわかる。
一方、図6においては、測定領域1(基準輝度値:約160)では、予熱開始3秒〜5秒にかけて急激に表面輝度の平均値が上昇し、その後6秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。測定領域2(基準輝度値:約165)では、予熱開始3秒後に表面輝度の平均値が上昇し、その後6秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。
測定領域3(基準輝度値:約170)では、予熱開始3秒後に表面輝度の平均値がやや緩やかに上昇し、その後6秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。測定領域4(基準輝度値:約170)では、予熱開始4秒に表面輝度の平均値が上昇し、その後6秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。
測定領域5(基準輝度値:約185)では、予熱開始4秒後に表面輝度の平均値が上昇し、その後6秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。測定領域6(基準輝度値:約200)では、予熱開始4秒後に表面輝度の平均値が上昇し、その後6秒後に閾値(255)に到達していることがわかる。
以上より、図6に示す予熱むらがない場合は、予熱開始から6秒後に測定領域1〜測定領域6全てにおいて、閾値(255)に到達していることがわかる。
以上より、各測定領域1〜測定領域6の表面輝度の平均値が、閾値(255)に到達するのに差が生じていない(予熱開始から6秒後)場合、鋼材Wの予熱にむらが生じていないことがわかる。
表1にぞれぞれの条件の溶持続融時間Tyiと、溶融持続時間の最大値Tyi−maxの比率と予熱時の溶融深さの結果を示す。
表1に示すように、予熱(溶融)むらが生じていない場合、溶持続融時間Tyiと溶融持続時間の最大値Tyi−maxとの比が1(100%)となり、鋼材Wの幅方向について確実に溶融されていることがわかる。また、溶融深さについても、予熱むらが生じていない場合は、測定領域1〜測定領域6のいずれにおいてもほぼ同じ深さである。つまり、鋼材Wの表面に凹凸が形成されていないことがわかる。
表1より、予熱時の予熱(溶融)むらの判断を、上記のようにして測定した溶融持続時間Tyiで評価できることがわかる。
次に、予熱時の鋼材Wの予熱むらを検知した後の対応例を、説明する。
例えば、鋼材Wの溶融を開始する時間Tが所定の範囲より外れる場合、溶削酸素及び予熱酸素の設定圧力を高くして、溶融を開始する時間Tを調整し、溶融持続時間Tyiを適正化する。このとき、溶融開始時間Tは、パイロットバーナ4の点火条件の調整により、早くなるように最適化されている。
また、磨耗などによる各供給ノズルの孔径が変化する場合では、溶融開始時間Tが遅くなる方向にずれることが多い。例えば、複数配備されている燃料ノズルのうち、一の燃料ノズルが磨耗などにより孔径が大きくなった場合、一の燃料ノズルの燃料流量が増加して、酸素の供給が不足の状態となる。それに伴い、両隣に配備されている他の燃料ノズルは、前述の一のノズルの影響で燃料流量が低下して、酸素の供給が過剰の状態となる。そのため、個々のノズルを局所的にみると、溶融開始時間Tのバラツキが発生する。
一方で、火口3全体からみると、火口3に配備されているノズルの個数(例えば、30個)が多いため、溶融開始時間Tの実質的な影響は少ないが、局所的に発生した溶融開
始時間Tのバラツキを改善するには、各酸素供給ノズルに供給される酸素の圧力を調整するようにする。
しかし、各酸素供給ノズルに供給される酸素の圧力を調整しても、局所的に発生した溶融開始時間Tのバラツキが小さくできない場合には、火口3の各供給ノズルを取り外して整備する。
以上述べたようにすることで、溶融開始時間Tのバラツキを改善することができ、鋼材Wの予熱むらを簡便に検知することができる。
また、図7に示すように、本発明のスカーフ装置1における鋼材Wの予熱むら検知方法で予熱時における鋼材Wの予熱部の溶融深さを検知することで、当該予熱時における鋼材Wの予熱部の溶融深さむら(鋼材Wの両端部の溶削むら)の影響を受ける鋼材Wの本体部(長手方向中途部)の溶削むらを、評価することができる。
例えば、本発明のスカーフ装置1における鋼材Wの予熱むら検知方法で、鋼材Wの予熱部の溶融深さが3.0mmと検知された場合、鋼材Wの本体部の溶削むらが0.4mmとなることがわかる(予熱むらなし)。また、鋼材Wの予熱部の溶融深さが5.0mmと検知された場合、鋼材Wの本体部の溶削むらが1.1mmとなることがわかる(予熱むらあり)。
また、図8に示すように、予熱時における鋼材Wの予熱部の溶融深さは、予熱時間Tと、溶融持続時間Tyiに比例するが、特に溶融持続時間Tyiの方が相関性が高い。例えば、予熱時間Tと鋼材Wの予熱部の溶融深さを比較する場合、溶融開始時間Tにバラツキがあり、その溶融開始時間Tのバラツキにより、溶融深さに大きな差が生じる。
つまり、実際に溶融している時間である溶融持続時間Tyiと、鋼材Wの予熱部の溶融深さとが、相関関係にあることがわかる。
本発明のスカーフ装置1における鋼材Wの予熱むら検知方法を用いることで、鋼材Wの幅方向の予熱むらを予熱時に簡単に検知することができ、且つ溶融深さのばらつきを抑制することができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
例えば、本実施形態では、鋼材Wの幅方向における測定領域iの分割数Nに関して、火口3の幅方向に配備された各供給ノズルの個数n個に対して、n/5としたが、磨耗などによりノズルの孔径が変化しても、当該ノズルの両隣に配備されたノズルの孔径と平均化されるため、幅方向の分割数Nを、各供給ノズルの個数n個に対してn/3としてもよい(N=n/3)。
その理由としては、各供給ノズルのピッチより、各供給ノズル先端と鋼材Wとの間の距離の方が遠く、各供給ノズルの噴流が重なるため、鋼材Wの幅方向における表面の溶削深さ(鋼材Wの溶融深さ)が各供給ノズルごとに異なり、鋼材Wの表面に凹凸形状が形成されるようになるためである。
特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
1 スカーフ装置(溶削装置)
2 下部火口ユニット
3 火口
4 パイロットバーナ
5 溶削酸素供給ノズル
5a 溶削酸素供給弁
5b 圧力計
5c 圧力調整弁
6 燃料供給ノズル
6a 燃料供給弁
6b 圧力計
6c 圧力調整弁
7 予熱酸素供給ノズル
7a 予熱酸素供給弁
7b 圧力計
7c 圧力調整弁
8 撮像手段(CCDカメラ)
9 処理装置
10 搬送ローラ
W 鋼材

Claims (1)

  1. スカーフ装置に備えられた火口に対向する鋼材の表面を撮像する撮像手段を配備しておき、以下のステップを行うことで、前記スカーフ装置で溶削される前記鋼材の予熱むらを検知することを特徴とするスカーフ装置における鋼材の予熱むらの検知方法。
    (1)前記撮像手段にて撮像された画像にて、前記鋼材の幅方向に2つ以上の領域に分割された測定領域iを設定するステップ。
    (2)前記設定された各測定領域iにて、前記鋼材の表面輝度の平均値を算出して、当該平均値の時間変化を測定すると共に、前記鋼材の表面輝度が所定の閾値を越えたときの時間Tを測定するステップ。
    (3)前記鋼材の表面輝度が所定の閾値を越えた時間Tと、前記スカーフ装置に対して予熱を終了する指示を出した時間である予熱終了時間Tとの差である溶融持続時間Tyiを、前記各測定領域iで算出するステップ。
    (4)前記各測定領域iで算出された溶融持続時間Tyiと、当該各測定領域iで算出された溶融持続時間Tyiのうち、最も大きい値Tyi−maxとの比が、所定の閾値以下となる場合、前記鋼材の予熱むらが発生したと判断するステップ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107155289A (zh) * 2016-03-04 2017-09-12 松下知识产权经营株式会社 部件安装装置

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