JP2015166415A - 内燃機・外燃機兼用a重油 - Google Patents
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Abstract
Description
灯油は、硫黄分、窒素分、残留炭素分の含有率が極めて低く、燃焼による環境負荷が小さく優れた内燃機・外燃機兼用の燃料油組成物である。しかしながら、単位体積当りの発熱量が低い欠点を有している。加えて、冬季の寒冷地においては、室内暖房などの灯油需要が多く、安定供給に特段の配慮が必要である。
また、C重油は、A重油より高い発熱量を有するが、高粘度である為、使用時に加温設備が必要であるなど取扱いが不便であり、硫黄分、窒素分、残留炭素分が高く環境負荷が大きい欠点を有している。
一方、A重油は、一般に供給安定性に優れており、且つ、灯油に比較して発熱量が高い長所を有するが、更に高い発熱量が要求される傾向がある。より高い発熱量を有するA重油は、接触分解軽油(LCO)の混合比率の増大により達成できることが知られているが、LCOの混合比率が高い燃料を使用した場合、ディーゼルエンジン等の内燃機使用時に始動不良や白煙発生などの燃焼不良、また、ボイラ等の外燃機使用時に着火不良、煤の発生など燃焼不良が観察されることがある。
より高い発熱量を要求されるA重油について、本発明者らは、これまでに下記の種々の提案を行っている(特許文献1〜4参照)。
このような状況下で、本発明は、A重油(JIS K 2205の1種2号重油;硫黄分2.0質量%以下)に相当する燃料油組成物のうち、従来品のA重油より単位体積当りの発熱量が改善され、燃焼性が良好な内燃機・外燃機兼用のA重油を提供するものである。
本発明は、以下の通りである。
〔1〕 下記(1)〜(6)をいずれも満足する内燃機・外燃機兼用A重油。
(1)密度(15℃)が0.870g/cm3以上
(2)50℃における動粘度が1.8mm2/s以上3.0mm2/s以下
(3)セタン価が次の式で表わされるS値以上及びD値以上
S=25.0×V−30.0
D=2.5×V+34.5
(式中、Vは50℃における動粘度(mm2/s)を示す。)
(4)10%残油の残留炭素分が0.60質量%以下
(5)硫黄分がA重油に対し0.99質量%以下
(6)炭素数9の芳香族成分と炭素数10の芳香族成分の合計含有率がA重油に対し4.5質量%以上、20質量%以下
(イ)蒸留初留点が146℃以上、終点が400℃以下
(ロ)芳香族分含有率が90容量%以上
(ハ)硫黄分含有率が芳香族化合物に対し0.01質量%以下
(ニ)密度(15℃)が0.900g/cm3以上
(ホ)3環以上の芳香族分含有率が芳香族化合物に対し20容量%以下
(ヘ)オレフィン分含有率が芳香族化合物に対し0.3容量%以下
(ト)50℃における動粘度が0.8mm2/s以上2.0mm2/s以下
(チ)ドライスラッジ量が芳香族化合物に対し2.0mg/100mL以下
(リ)10%残油の残留炭素分が2.0質量%以下
[4]前記芳香族化合物が、ナフサ接触改質装置から生成される芳香族留分の内、軽質な留分であるベンゼン、トルエン、キシレン、及び炭素数が9である芳香族成分の一部を分留し(抽出)し、ガソリンの基材や石油化学基材とした後、前記芳香族成分を分留して得られたものである、上記[1]又は[2]に記載の内燃機・外燃機兼用A重油。
(7)引火点が60℃以上
(8)JIS K 2252による石油製品反応試験の結果が中性
(9)流動点が0℃以下
(10)水分含有量がA重油に対し0.3容量%以下
(11)灰分量がA重油に対し0.05質量%以下
(12)ドライスラッジ量がA重油に対し2.0mg/100mL以下
(13)総発熱量が39,100J/cm3以上
(14)炭素数9の芳香族成分の含有率が、A重油に対し1.5質量%以上13質量%以下
(15) 炭素数10の芳香族成分の含有率が、A重油に対し2.5質量%以上8質量%以下
[7]少なくとも、前記芳香族化合物、接触分解軽油(LCO)、直接脱硫軽油(DSGO)、及び直留軽油(LGO)を配合してなる、上記[2]〜[6]のいずれかに記載の内燃機・外燃機兼用A重油。
また、本発明の内燃機・外燃機兼用A重油の高い発熱量及び良好な燃焼性により、冬季の寒冷地において需要が多い灯油及び灯油留分の含有率を低く抑えることが可能となり、冬季の寒冷地において灯油の安定供給に資することが可能となる。
さらに、この内燃機・外燃機兼用A重油を使用することにより、従来より燃料油組成物の消費量の低減が可能となる。
本発明は、下記(1)〜(6)で規定する組成、性状をいずれも満足する内燃機・外燃機兼用A重油(以下、「本発明のA重油」ということがある)に関し、特に、下記(イ)〜(ニ)で規定された組成、性状をいずれも満足する芳香族化合物(以下、「本発明における芳香族化合物」という)を1容量%以上26容量%以下含有する内燃機・外燃機兼用A重油に関する。
本発明のA重油
(1)密度(15℃)が0.870g/cm3以上
(2)50℃における動粘度が1.8mm2/s以上3.0mm2/s以下
(3)セタン価が次の式で表わされるS値以上及びD値以上
S=25.0×V−30.0
D=2.5×V+34.5
(式中、Vは50℃における動粘度(mm2/s)を示す。)
(4)10%残油の残留炭素分が0.60質量%以下
(5)硫黄分がA重油に対し0.99質量%以下
(6)炭素数9の芳香族成分と炭素数10の芳香族成分の合計含有率がA重油に対し4.5質量%以上20質量%以下
(イ)蒸留初留点が146℃以上、終点が400℃以下
(ロ)芳香族分含有率が90容量%以上
(ハ)硫黄分含有率が芳香族化合物に対し0.01質量%以下
(ニ)密度(15℃)が0.900g/cm3以上
(内燃機・外燃機兼用A重油の性状、組成)
本発明の内燃機・外燃機兼用A重油は、以下の(1)〜(6)で規定された組成、性状をいずれも満足する。
(1)密度
本発明のA重油の密度は、A重油の発熱量改善効果を確保する観点から、15℃で0.870g/cm3以上、好ましくは0.872g/cm3以上、更に好ましくは0.874 g/cm3以上である。
A重油の密度は、JIS K 2249(原油及び石油製品−密度の求め方−)に準て測定することができる。
本発明のA重油の動粘度は、50℃で1.8mm2/s以上3.0mm2/s以下である。すなわち、その下限値は、A重油用のポンプ、流量計の適切な仕様範囲を維持するため、また、一部の油圧噴霧式バーナを搭載した外燃機では、A重油の動粘度低下により燃料油の時間当たりの噴霧量が減少し、燃焼空気量の調整が必要となるため、50℃で1.8mm2/s、好ましくは1.9mm2/sである。その上限値は、一部の外燃機や内燃機では、A重油の動粘度上昇により燃焼性が悪化することから、燃焼性を維持する(一酸化炭素や煤の発生を抑制し、及び、着火性を良好に維持する)ため、また、一部の油圧噴霧式バーナを搭載した外燃機では、本発明のA重油の動粘度上昇により燃料油の時間当たりの噴霧量が増加し、燃焼空気量の調整が必要となるため、50℃で3.0mm2/s、好ましくは2.8mm2/s、更に好ましくは2.6mm2/sである。
上記動粘度は、JIS K 2283(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定することができる。
本発明のA重油のセタン価は、外燃機における燃焼性を維持する観点から下記式で表わされるS値以上、かつ内燃機における燃焼性を維持する観点から下記式で表わされるD値以上であり、好ましくは下記式で表わされるS値及びD値以上且つ40以上である。
S=25.0×V−30.0
D=2.5×V+34.5
(式中、Vは50℃における動粘度(mm2/s)を示す。)
上記セタン価は、JIS K 2280に準じて測定することができる。
本発明のA重油における10%残油の残留炭素分は、A重油の燃焼性維持、特に燃焼不良による煤発生の抑制、貯蔵安定性の維持(長期間貯蔵時のスラッジ生成の抑制)の観点から、0.60質量%以下、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下である。なお、税法上の観点から、その値は上記値以下、かつ0.2質量%超であることが好ましい。
上記10%残油の残留炭素分は、JIS K 2270(原油及び石油製品−残留炭素分試験方法−)に準じて測定することができる。
本発明のA重油中の硫黄分含有率は、排ガス中の硫黄酸化物による環境負荷を低減し、排ガスの酸露点低下抑制による煙道腐食を抑制する観点から、A重油に対し0.99質量%以下、好ましくは、0.94質量%以下、さらに好ましくは0.89質量%以下である。
上記硫黄分含有率は、JIS K 2541(原油及び石油製品−硫黄分試験方法−)に準じて測定することができる。
本発明のA重油中における、炭素数9の芳香族成分及び炭素数10の芳香族成分の合計(C9芳香族+C10芳香族)含有率は、A重油に対して4.5質量%以上、20質量%以下である。すなわち、A重油の発熱量の改善効果、A重油中の灯油留分の混合比率低減効果を維持し、A重油の取扱い上の安全性(引火点)を維持し、さらにA重油のドライスラッジの生成を抑制する観点から、その下限値は、A重油に対し4.5質量%、好ましくは5.5質量%、更に好ましくは6.5質量%である。また、本発明のA重油の性状維持、及び、大きな組成変化に伴う安定性低下を抑制する観点から、その上限値は、A重油に対し20質量%、好ましくは19質量%、更に好ましくは18質量%である。
上記芳香族成分の合計含有率は、JIS K 2536−2(石油製品−成分試験方法;ガスクロマトグラフによる全成分の求め方−)に準じて測定することができる。
(7)引火点
本発明のA重油の引火点は、取扱上の安全性確保の観点から、60℃以上であることが好ましい。
引火点は、JIS K 2265(原油及び石油製品−引火点試験方法−)に準じて測定することができる。
本発明のA重油は、燃料油タンク、配管、ディーゼルエンジン及び装備しているポンプ等の補機の腐食を防止する観点から、JIS K 2252による石油製品反応試験の結果が中性であることが好ましい。
本発明のA重油の流動点は、冬季の寒冷地での使用におけるA重油の流動性を維持する観点から、好ましくは0℃以下であり、更に好ましくは−5.0℃以下である。
A重油の流動点は、JIS K 2269(原油及び石油製品の流動点並びに曇り点試験方法)に準じて測定することができる。
本発明のA重油中における水分含有率は、貯蔵安定性の低下(アスファルテンと水のエマルジョンによるスラッジ生成)、燃料油の発熱量の低下抑制(水分蒸発のよる発熱量低下抑制)の観点から、A重油に対し0.3容量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.1容量%以下である。
A重油中における水分含有率は、JIS K 2275(原油及び石油製品−水分試験方法−)に準じて測定することができる。
本発明のA重油中の灰分量としては、バーナチップの摩耗抑制、燃焼室内、ディーゼルエンジン内の灰分付着による腐食や伝熱不良を抑制する観点から、A重油に対し0.05質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.001質量%以下である。
A重油中の灰分は、JIS K 2272(原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法)に準じて測定することができる。
本発明のA重油中におけるドライスラッジの量は、A重油のフィルター通油性を維持する観点から、A重油に対し好ましくは2.0mg/100mL以下、更に好ましくは1.0mg/100mL以下である。
上記ドライスラッジ量は、全漁連A重油ドライスラッジ測定法(海洋水産エンジニアリング2013年7月号p.105記載の方法)に準じて測定することができる。
本発明のA重油の総発熱量は、本発明の効果を有効に奏する観点、すなわち、A重油中の灯油留分の混合比率低減効果を維持する観点から、容器当りの総発熱量で、好ましくは39,100J/cm3以上、更に好ましくは39,200J/cm3以上である。
A重油の容器当りの総発熱量は、JIS K 2279(原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法−)に準じて測定、評価することができる。
本発明のA重油中における炭素数9の芳香族成分(C9芳香族)の含有率は、A重油に対し、好ましくは1.5質量%以上、13質量%以下である。すなわち、A重油の発熱量の改善効果、A重油中の灯油留分の混合比率低減効果を維持し、さらにA重油中におけるドライスラッジの生成を抑制する観点から、その下限値は、A重油に対し、好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは2.0質量%である。また、本発明のA重油の性状を維持し、及び大きな組成変化に伴う安定性低下を抑制し、A重油の取扱い上の安全性(引火点)を維持する観点から、その上限値は、A重油に対し、好ましくは13質量%、さらに好ましくは11質量%である。
上記炭素数9の芳香族成分の含有率は、JIS K 2536−2(石油製品−成分試験方法;ガスクロマトグラフによる全成分の求め方−)に準じて測定することができる。
本発明のA重油中における炭素数10の芳香族成分(C10芳香族)の含有率は、A重油に対し、好ましくは2.5質量%以上、8.0質量%以下である。すなわち、A重油の発熱量の改善効果、A重油中の灯油留分の混合比率低減効果を維持し、さらにA重油中のドライスラッジの生成を抑制する観点から、その下限値は、A重油に対し、好ましくは2.5質量%、さらに好ましくは3.0質量%である。また、本発明のA重油の性状維持、及び、大きな組成変化に伴う安定性低下を抑制する観点から、その上限値は、A重油に対し、好ましくは8.0質量%、さらに好ましくは7.5質量%である。
上記炭素数10の芳香族成分の含有率は、JIS K 2536−2(石油製品−成分試験方法;ガスクロマトグラフによる全成分の求め方−)に準じて測定することができる。
本発明のA重油は、前記(1)〜(6)で規定する組成、性状を満足すればよいが、好ましくは、以下の(イ)〜(ニ)に規定する組成、性状をいずれも有する本発明における芳香族化合物を配合して得られる。
(イ)蒸留性状
本発明の芳香族化合物としては、蒸留性状として、初留点146℃以上、終点400℃以下のものを使用する。すなわち、本発明のA重油の取扱い上の安全性(引火点等)を維持する観点から、蒸留初留点が好ましくは150℃以上のもの、更に好ましくは160℃以上のものを使用する。蒸留終点としては、本発明のA重油中の重質な芳香族化合物の含有率を低く維持し、貯蔵安定性及び長期間燃焼時の燃焼室、ディーゼルエンジン内のカーボン堆積等を抑制する観点から、好ましくは380℃以下のもの、更に好ましくは360℃以下のものを使用する。
上記蒸留性状は、JIS K 2254(石油製品−蒸留試験方法−)に準じて測定、評価することができる。
本発明の芳香族化合物中の芳香族分含有率は、本発明のA重油の発熱量の改善効果、及び本発明のA重油中の灯油留分の混合比率低減効果を維持する観点から、90容量%以上、好ましくは95%容量%以上、更に好ましくは99容量%以上である。
上記芳香族分含有率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定、評価することができる。具体的には、石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法(JPI−5S−49−2007)を用いる。以下同様である。
本発明の芳香族化合物中の硫黄分含有率は、本発明のA重油中の硫黄分含有率を維持する観点から、芳香族化合物に対し0.01質量%以下、好ましくは、0.005質量%以下、更に好ましくは0.001質量%以下である。
上記硫黄分含有率は、JIS K 2541(原油及び石油製品−硫黄分試験方法−)に準じて測定することができる。
本発明の芳香族化合物の密度は、本発明のA重油の発熱量の改善効果を維持する観点から、15℃で、0.900g/cm3以上、好ましくは0.910g/cm3以上、さらに好ましくは0.915g/cm3以上である。
上記密度は、JIS K 2249(原油及び石油製品−密度の求め方−)に準じて測定することができる。
(ホ)3環以上の芳香族分含有率
本発明の芳香族化合物中における3環以上の芳香族分含有率は、本発明のA重油中の重質な芳香族分の含有率を低く維持し、貯蔵安定性及び長期間燃焼時の燃焼室、ディーゼルエンジン内のカーボン堆積等を抑制する観点から、芳香族化合物に対し、好ましくは20容量%以下、更に好ましくは15容量%以下である。
上記3環以上の芳香族分含有率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定、評価することができる。
本発明の芳香族化合物中におけるオレフィン分含有率は、本発明のA重油の安定性を維持する観点から、芳香族化合物に対し、好ましくは0.3容量%以下、更に好ましくは0.1容量以下である。
上記オレフィン分含有率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定、評価することができる。
本発明における芳香族化合物の動粘度は、本発明のA重油の動粘度を維持し、灯油や灯油留分の代替として本発明のA重油中の灯油、灯油留分の混合比率の低減効果を維持する観点から、50℃で好ましくは0.8mm2/s以上、2.0mm2/s以下、更に好ましくは1.0mm2/s以上、1.5mm2/s以下である。
上記動粘度は、JIS K 2283(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定することができる。
本発明の芳香族化合物中におけるドライスラッジの量は、本発明のA重油のフィルター通油性を維持する観点から、芳香族化合物に対し、好ましくは2.0mg/100mL以下、更に好ましくは1.0mg/100mL以下である。
上記ドライスラッジ量は、全漁連A重油ドライスラッジ測定法(海洋水産エンジニアリング2013年7月号p.105記載の方法)に準じて測定することができる。
本発明の芳香族化合物における10%残油の残留炭素分は、本発明のA重油の燃焼性維持、特に燃焼不良による煤発生の抑制、貯蔵安定性の維持(長期間貯蔵時のスラッジ生成の抑制)の観点から、好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
上記10%残油の残留炭素分は、JIS K 2270(原油及び石油製品−残留炭素分試験方法−)に準じて測定することができる。
本発明の芳香族化合物は、上記組成、性状を満たしていればその製造方法、精製方法に特に制限はないが、例えば、ナフサ等を原料として製油所あるいは石油化学工場にて製造、精製される芳香族成分及びその混合物を好適に用いることが出来る。
例えば、石油化学工場において、ナフサの熱分解で副生する分解ガソリンから溶剤抽出装置により回収された芳香族分を蒸留して得られた芳香族成分、製油所あるいは石油化学工場において、ナフサを接触改質して得られた改質ガソリンから蒸留分離と必要に応じて溶剤抽出して得られた芳香族成分等が挙げられるが、ナフサ接触改質装置から生成される改質ガソリンから、軽質な留分であるベンゼン、トルエン、キシレン、及び炭素数が9である芳香族成分の一部等を分留(抽出)して得られる重質の芳香族成分が好ましく使用される。
本発明の芳香族化合物は、本発明のA重油中に、1容量%以上、26容量%以下の割合で配合されることが好ましい。すなわち、その下限値は、本発明のA重油の単位体積当りの発熱量の改善効果を維持する観点から、本発明のA重油に対し、好ましくは1容量%、より好ましくは3容量%、更に好ましくは6容量%であり、その上限値は、本発明のA重油の性状維持、及び大きな組成変化に伴う安定性低下を抑制する観点から、本発明のA重油に対し、好ましくは26容量%、より好ましくは21容量、更に好ましくは16容量%である。
前述の通り、本発明のA重油は、前記本発明の芳香族化合物を配合してなるが、前記組成、性状を満たしていれば、本発明の芳香族化合物以外の基材については特に限定されない。使用しうるその他の基材としては、以下の基材(a)〜(c)を挙げることができ、これらの基材を上記組成、性状を満足するよう適宜配合して本発明のA重油を調製することができる。
・直留灯油留分(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる灯油留分)
・脱硫灯油留分(直留灯油留分を脱硫して得られる灯油留分)
・水素化分解灯油留分(直留軽油留分及び/又は減圧軽油留分を水素化分解して得られる灯油留分)
・直留軽油留分(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる軽油留分)
・減圧軽油留分(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる軽油留分)
・脱硫軽油留分(直留軽油留分を脱硫して得られる軽油留分)
・分解軽油留分(常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を流動接触分解して得られる軽油留分)
・直脱軽油留分(常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫処理して得られる軽油留分)
本発明のA重油においては、軽油引取税の観点より、10%残油の残留炭素分が0.2質量%超となるように、下記の残留炭素源を単独で、もしくは数種類混合して配合することが出来る。
・常圧蒸留残渣油(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる残渣油)
・減圧蒸留残渣油(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる残渣油)
・直脱重油(常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫して得られる重油)
・分解重油(直脱重油を流動接触分解して得られる重油分)
・エキストラクト(潤滑油精製装置から副生される成分)
尚、上記基材のうち、灯油留分に関しては、本発明の効果の観点から、本発明のA重油への配合量はできるだけ少量であることが好ましく、配合しないことがより好ましい。
本発明のA重油には、上述の諸性状を維持しうる範囲で、必要に応じ、低温流動性向上剤、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、燃焼促進剤、清浄剤、スラッジ分散剤、酸化防止剤、防カビ剤などの各種添加剤を適宜選択して配合することができる。また、軽油引取税の観点よりクマリンを配合しても良い。
(1)蒸留性状:JIS K 2254により測定した。
(2)芳香族分含有率:高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
(3)硫黄分含有率:JIS K 2541に準拠して測定した。
(4)組成分析:高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った。
(5)動粘度(50℃):JIS K 2283に準拠して測定した。
(6)密度:JIS K 2249に準拠して測定した。
(7)引火点:JIS K 2265に準拠して測定した。
(8)ドライスラッジ:全漁連A重油ドライスラッジ測定法に準拠して測定した。
(9)残留炭素分:JIS K 2270に準拠して測定した。
下記以外の性状、組成は上記の芳香族化合物の評価と同様の方法で行った。
(10)セタン価:JIS K 2280に準拠して測定した。
(11)反応試験:JIS K 2252に準拠して測定した。
(12)流動点:JIS K 2269に準拠して測定した。
(13)水分量:JIS K 2275に準拠して測定した。
(14)灰分量:JIS K 2272に準拠して測定した。
(15)総発熱量:JIS K 2279に準拠して測定した。
(16)C9芳香族、C10芳香族、C9芳香族+C10芳香族:いずれもJIS K 2536−2に準拠して測定した。
重質ナフサを接触改質して得られた改質ガソリンより、ベンゼン、トルエン、及びキシレンを蒸留除去して得られた残渣油を、さらに蒸留して得られた、初留点が168.5℃以上の留分を芳香族化合物とした。
上記の方法で得られた芳香族化合物A、灯油留分、分解軽油(LCO)、直脱軽油(DSGO)、直留軽油(LGO)、及びエキストラクト(各基材の性状、組成を表1に示す)を下記表2及び表3に示す割合で混合し、表2及び表3に示す性状のA重油を作製した。
得られた各A重油について、総発熱量及び燃焼性を下記基準で評価した。結果を表2及び表3に示す。
1.総発熱量
◎;39,200J/cm3以上
○;39,100J/cm3以上39,200J/cm3未満
△;39,100J/cm3未満
(内燃機の燃焼性評価)
(1)評価機種、条件
・評価ディーゼルエンジン;Kubota EA14−NB(単気筒、無過給)
・総排気量;0.624L
・始動方式;セルモーター式
・始動補助装置;オフ
・評価室温及び燃料油温、潤滑油温;2.5±2℃
・始動性;エンジンが起動する迄のセルスタート回数
・燃焼性;セルスタートしてから、継続して10分間、透過式オパシティメータ(司測研ILS−01C)で、排ガス中の白煙濃度を測定し、セルスタート30秒後、1分後、5分後の白煙濃度を計測する。
◎;エンジンがセルスタート1回で始動し、且つ、セルスタート30秒後の白煙濃度(オパシティメータ計測値)が、5分後の2倍以下
○;エンジンがセルスタート1回で始動し、且つ、セルスタート1分後の白煙濃度(オパシティメータ計測値)が、5分後の2倍以下
△;上記以外
なお、5分間の暖機により、排ガス中の白煙濃度が薄くなり目視ではほぼ観察できなくなる。また、5分以降、暖機を継続しても、白煙濃度の計測値はほぼ一定値を示す。
(1)評価機種、条件
・評価機種;ネポン社製ハウスカオンキHK−308
・燃料噴霧圧;9.0kg/cm2
・バンドシャッター開度;排ガス酸素濃度を3.5±0.2%になるように調整
・燃料加熱用バーナ前ヒーター ;オフ
・評価室温及び油温;5〜10℃
・着火性;目視により、着火遅れの有無
・燃焼性;着火後、継続して5分間燃焼した後、バッカラッカスモークテスターで排ガス中の煤濃度(スモークナンバー;SN)を計測
(3)評価基準
◎;着火遅れがなく、SNが2.0以下
○;着火遅れがなく、SNが2.0超、3.0未満
△;上記以外
Claims (2)
- 下記(1)〜(6)をいずれも満足する内燃機・外燃機兼用A重油。
(1)密度(15℃)が0.870g/cm3以上
(2)50℃における動粘度が1.8mm2/s以上3.0mm2/s以下
(3)セタン価が次の式で表されるS値以上及びD値以上
S=25.0×V−30.0
D=2.5×V+34.5
(式中、Vは50℃における動粘度(mm2/s)を示す。)
(4)10%残油の残留炭素分が0.60質量%以下
(5)硫黄分がA重油に対し0.99質量%以下
(6)炭素数9の芳香族成分と炭素数10の芳香族成分との合計含有率がA重油に対し4.5質量%以上20質量%以下 - 下記(イ)〜(ニ)をいずれも満足する芳香族化合物を1容量%以上26容量%以下含有する、請求項1に記載の内燃機・外燃機兼用A重油。
(イ)蒸留初留点が146℃以上、終点が400℃以下
(ロ)芳香族分含有率が90容量%以上
(ハ)硫黄分含有率が芳香族化合物に対し0.01質量%以下
(ニ)密度(15℃)が0.900g/cm3以上
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