JP2015166342A - イルベサルタンを含有する錠剤 - Google Patents
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イルベサルタンは綿毛状の物質であり、相対的に実質重量が少なく、密度も非常に小さい。これらの特性は、小さい錠剤の中に多量の薬物を含有せしめ、かつ量の一定性、硬度その他の望ましい錠剤特性を持たせることを困難にしている。またイルベサルタンは望ましくない流動特性を有し、高速での打錠時に粉末の流動性不良や杵や臼の表面への付着を引き起こし、錠剤重量の均一性の保証を困難にしている。加えて、イルベサルタンは水への溶解度が低く、消化管液における錠剤のヌレ、崩壊、迅速かつ完全な薬物の溶出を困難にしている。
安定性に関しては、化学的な安定性の保証、即ち分解物の生成の程度を許容される限度以下に抑制することは当然必要であるが、錠剤からの薬物の溶出速度の遅延を防止することも強く求められる。溶出速度が遅延すれば、薬物の消化管からの吸収性が低下し、医薬品としての有効性が低下するからである。
錠剤からのイルベサルタンの溶出速度を遅延させる最大の要因は水分である。錠剤を高湿度環境下に保存すると、イルベサルタンの溶出速度が遅延する。
出荷後、薬局で開封されるまでの期間については、例えば防湿機能を有した包装容器を使用することにより、水分の影響を排除することが可能である。しかし、防湿包装を施せばコスト高となる。防湿包装なしでも溶出速度が遅延しない錠剤が望ましい。
本発明は、イルベサルタンを高含量含有する錠剤で、初期の溶出特性が優れているのに加えて、錠剤を高湿度環境下に保存した場合においても、錠剤からのイルベサルタンの溶出速度が変化しない錠剤の製造法に関するものである。
しかしこれらの技術はいずれも、イルベサルタンが望ましくない流動特性を有していることから、高速での打錠時に粉末の流動性不良や杵や臼の表面への付着を防止するために抗付着剤を添加しているという特徴を有している。しかし、イルベサルタンを含有する錠剤に抗付着剤を添加すれば、製造初期の錠剤の溶出特性は優れているものの、錠剤の高湿度環境下での保存時に溶出速度が遅延するという問題を引き起こす。
イルベサルタンを高含量含有する錠剤で、錠剤を高湿度環境下に保存した場合に溶出速度が遅延しない錠剤は知られていない。
(1)錠剤の全重量に対して、40.0〜60.0重量%のイルベサルタン及び、30.0〜50.0重量%の希釈剤を含み、二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、タルクから選ばれる抗付着剤を含まない混合末を圧縮成形することによって製造される錠剤。
(2)希釈剤が乳糖水和物、結晶セルロース、無水乳糖、およびマンニトールから選ばれる、前記(1)に記載の錠剤
(3)1.0〜10.0重量%の崩壊剤、1.0〜5.0重量%の結合剤、0.2〜5.0重量%の滑沢剤を含む、前記(2)に記載の錠剤。
(4)崩壊剤がクロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから選ばれ、結合剤がヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、糊化デンプンから選ばれ、滑沢剤がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムから選ばれる、
前記(3)に記載の錠剤
(5)イルベサルタンと希釈剤、崩壊剤、結合剤を含む、湿式造粒によって製造された顆粒を含有する、前記(3)に記載の錠剤。
本発明における含有させない抗付着剤とは、例えば、二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、タルクであり、最も好ましくなくは二酸化ケイ素である。
本は発明の錠剤には、必要に応じて、医薬品添加物として許容される界面活性剤、着色剤を含むことができる。
上記の如くして製造された素錠にフィルムコーティングを施して、フィルムコーティング錠とすることが可能である。フィルムコーティングはフィルムコーティング装置を用いて行われる。フィルム基剤としては、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
200mgのイルベサルタンを含有する1錠400mgの錠剤の調製について説明する。
本発明の錠剤は、表1に示す成分を用いて、湿式高速撹拌造粒法により調製した。 イルベサルタン100g、乳糖水和物64g、結晶セルロース20g、クロスカルメロースナトリウム5gを高速撹拌造粒機(VG−01、パウレック社製)で混合した。別にヒプロメロース4gを水66mLに溶解し、これを高速撹拌造粒機内の混合粉末に添加して毎分370回転で5分間撹拌し、湿式造粒を行った。得られた顆粒を流動層乾燥機(MP−01、パウレック社製)で乾燥し、乾燥した顆粒を粉砕・分級装置(コーミル、パウレック社製)に通して整粒した。
得られた整粒末193gに、クロスカルメロースナトリウム5gとステアリン酸マグネシウム2gを加えて混合機で混合した。混合末をロータリー打錠機(VELA5、菊水製作所製)で圧縮成形して重量400mgの錠剤を得た。
200mgのイルベサルタンを含有する1錠360mgの錠剤の調製について説明する。
本発明の錠剤は、表2に示す成分を用いて、湿式高速撹拌造粒法により調製した。
イルベサルタン100g、乳糖水和物51g、結晶セルロース16g、クロスカルメロースナトリウム4gを高速撹拌造粒機(VG−01、パウレック社製)で混合した。別にヒプロメロース3.2gを水48.8mLに溶解し、これを高速撹拌造粒機内の混合粉末に添加して毎分370回転で5分間撹拌し、湿式造粒を行った。得られた顆粒を流動層乾燥機(MP−01、パウレック社製)で乾燥し、乾燥した顆粒を粉砕・分級装置(コーミル、パウレック社製)に通して整粒した。
得られた整粒末174.2gに、クロスカルメロースナトリウム4gとステアリン酸マグネシウム1.8gを加えて混合機で混合した。混合末をロータリー打錠機(VELA5、菊水製作所製)で圧縮成形して重量360mgの錠剤を得た。
200mgのイルベサルタンを含有する1錠360mgの錠剤の調製について説明する。
本発明の錠剤は、表2に示す成分を用いて、湿式高速撹拌造粒法により調製した。
イルベサルタン100g、乳糖水和物44g、結晶セルロース20g、クロスカルメロースナトリウム5gを高速撹拌造粒機(VG−01、パウレック社製)で混合した。別にヒプロメロース4gを水58.5mLに溶解し、これを高速撹拌造粒機内の混合粉末に添加して毎分370回転で5分間撹拌し、湿式造粒を行った。得られた顆粒を流動層乾燥機(MP−01、パウレック社製)で乾燥し、乾燥した顆粒を粉砕・分級装置(コーミル、パウレック社製)に通して整粒した。
得られた整粒末173gに、クロスカルメロースナトリウム5gとステアリン酸マグネシウム2gを加えて混合機で混合した。混合末をロータリー打錠機(VELA5、菊水製作所製)で圧縮成形して重量360mgの錠剤を得た。
錠剤は、表1に示す組成物を用いて、湿式高速撹拌造粒法により調製した。
イルベサルタン100g、乳糖水和物63g、結晶セルロース20g、クロスカルメロースナトリウム5gを高速撹拌造粒機(VG−01、パウレック社製)で混合した。別にヒプロメロース4gを水66mLに溶解し、これを高速撹拌造粒機内の混合粉末に添加して毎分370回転で5分間撹拌し、湿式造粒を行った。得られた顆粒を流動層乾燥機(MP−01、パウレック社製)で乾燥し、乾燥した顆粒を粉砕・分級装置(コーミル、パウレック社製)に通して整粒した。
得られた整粒末192gに、クロスカルメロースナトリウム5gと抗付着剤としての二酸化ケイ素1g及びステアリン酸マグネシウム2gを加えて混合機で混合した。混合末をロータリー打錠機(VELA5、菊水製作所製)で圧縮成形して重量400mgの錠剤を得た。
錠剤は、表2に示す組成物を用いて、湿式高速撹拌造粒法により調製した。
イルベサルタン100g、乳糖水和物64g、結晶セルロース20g、クロスカルメロースナトリウム5gを高速撹拌造粒機(VG−01、パウレック社製)で混合した。別にヒプロメロース4gを水66mLに溶解し、これを高速撹拌造粒機内の混合粉末に添加して毎分370回転で5分間撹拌し、湿式造粒を行った。得られた顆粒を流動層乾燥機(MP−01、パウレック社製)で乾燥し、乾燥した顆粒を粉砕・分級装置(コーミル、パウレック社製)に通して整粒した。
得られた整粒末193gに、クロスカルメロースナトリウム5gとステアリン酸マグネシウム2gを加えて混合機で混合した。混合末をロータリー打錠機(VELA5、菊水製作所製)で圧縮成形して重量400mgの錠剤を得た。
実施例1で製造した錠剤および比較例1で製造した錠剤について、平均重量、重量ばらつき(CV値)、および硬度を測定した。硬度は錠剤硬度計を用いて測定した。結果を表3に示す。いずれの錠剤も優れた均一性と十分な強度を有していた。
さらに、実施例1で製造した錠剤および比較例1で製造した錠剤について、錠剤からのイルベサルタンの溶出速度を測定した。また、それぞれの錠剤を温度60℃相対湿度75%の環境下において2週間無包装状態で保存した錠剤についても、イルベサルタンの溶出速度を測定した。溶出速度の測定は、日本薬局方の溶出試験機(パドル法)を用い、37℃の日局1液900mL中に錠剤1錠を投入し、パドルを50rpm回転速度で回転せしめて測定した。溶出したイルベサルタンの量はUV吸収法で測定した。
溶出速度の測定結果を表4に示す。いずれの錠剤も製造直後はイルベサルタンが速やかに溶出するが、温度60℃相対湿度75%で2週間保存すると、実施例1の錠剤は溶出速度は変化しないが、比較例1の錠剤は溶出速度が遅延する。本発明の錠剤はイルベサルタンの溶出速度の安定性に優れた錠剤であることが明らかになった。
実施例2、3で製造した錠剤および比較例2で製造した錠剤について、錠剤からのイルベサルタンの溶出速度を測定した。溶出速度の測定は、日本薬局方の溶出試験機(パドル法)を用い、37℃の日局2液900mL中に錠剤1錠を投入し、パドルを50rpm回転速度で回転せしめて測定した。溶出したイルベサルタンの量はUV吸収法で測定した。溶出速度の測定結果を表5に示す。いずれの錠剤も、1錠当りの全重量の違いに関わらず、製造直後はイルベサルタンが同程度速やかに溶出した。
Claims (5)
- 錠剤の全重量に対して、40.0〜60.0重量%のイルベサルタン及び、30.0〜50.0重量%の希釈剤を含み、二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、タルクから選ばれる抗付着剤を含まない混合末を圧縮成形することによって製造される錠剤。
- 希釈剤が乳糖水和物、結晶セルロース、無水乳糖、およびマンニトールから選ばれる、請求項1に記載の錠剤
- 1.0〜10.0重量%の崩壊剤、1.0〜5.0重量%の結合剤、0.2〜5.0重量%の滑沢剤を含む、請求項2に記載の錠剤。
- 崩壊剤がクロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから選ばれ、結合剤がヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、糊化デンプンから選ばれ、滑沢剤がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムから選ばれる、請求項3に記載の錠剤
- イルベサルタンと希釈剤、崩壊剤、結合剤を含む、湿式造粒によって製造された顆粒を含有する、請求項4に記載の錠剤。
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