本発明のアリールアミン共重合体は、前述した一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で表される構造単位のうち少なくとも2つ以上の構造単位を含むものである。また、これらの構造単位はランダムに共重合していてよい。
すなわち、本発明のアリールアミン重合体は、前述した一般式(1)及び一般式(2)で表される構造単位をそれぞれ2つ以上含むもの、又は一般式(1)及び一般式(3)で表される構造単位をそれぞれ2つ以上含むものが好ましい。
すなわち、本発明のアリールアミン重合体は、前述した一般式(1)及び一般式(2)で表される構造単位を含み、一般式(15)で表される構造単位を含んでいてもよいもの(なお、それぞれの構造単位を少なくとも2つ以上含む)、又は一般式(1)及び一般式(3)で表される構造単位を含み、一般式(15)で表される構造単位を含んでいてもよいもの(なお、それぞれの構造単位を少なくとも2つ以上含む)が好ましい。
また、本発明のアリールアミン重合体は、繰返し構造が一般式(1)及び一般式(2)で表される構造単位のみからなるもの(なお、それぞれの構造単位を少なくとも2つ以上含む)、繰返し構造が一般式(1)及び一般式(3)で表される構造単位のみからなるもの(なお、それぞれの構造単位を少なくとも2つ以上含む)、繰返し構造が一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(15)で表される構造単位のみからなるもの(なお、それぞれの構造単位を少なくとも2つ以上含む)、又は繰返し構造が一般式(1)、一般式(3)、及び一般式(15)で表される構造単位のみからなるもの(なお、それぞれの構造単位を少なくとも2つ以上含む)であることが好ましい。
アリールアミン共重合体の繰返し構造単位である一般式(1)、(2)及び(3)において、Xは、各々独立して、置換基を有していてもよい総炭素数が6〜60のアリール基を表す。
置換基を有していてもよい総炭素数が6〜60のアリール基としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有していてもよい総炭素数が6〜60のフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、ターフェニル基、フェナントラセニル基、ペリレニル基、トリフェニレニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、チエニレニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニレニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジレニル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、9−フェニルカルバゾリル基、アクリジニル基、ベンゾチアゾリル基、キナゾリル基、キノキサリル基、1,6−ナフチリジニル基、又は1,8−ナフチリジニル基等を挙げることができる。これらのうち、アリールアミン共重合体の正孔輸送特性に優れる点で、置換基を有していてもよい総炭素数が6〜60のフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ターフェニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、又は9−フェニルカルバゾリル基が好ましい。
上記の置換基のうち、アリールアミン共重合体の正孔輸送特性に優れる点で、置換基を有していてもよい総炭素数が6〜45のアリール基が好ましく、当該置換基としては、置換基を有していてもよい総炭素数が6〜45のフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、ターフェニル基、フェナントラセニル基、ペリレニル基、トリフェニレニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、チエニレニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニレニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジレニル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、9−フェニルカルバゾリル基、アクリジニル基、ベンゾチアゾリル基、キナゾリル基、キノキサリル基、1,6−ナフチリジニル基、又は1,8−ナフチリジニル基がより好ましく、さらに置換基を有していてもよい総炭素数が6〜45のフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ターフェニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニレニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、又はイソキノリル基、カルバゾリル基、又は9−フェニルカルバゾリル基がより好ましい。
上記の置換基のうち、アリールアミン共重合体の正孔輸送特性に優れる点で、置換基を有していてもよい総炭素数が6〜30のアリール基が好ましく、当該置換基としては、置換基を有していてもよい総炭素数が6〜30のフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、ターフェニル基、フェナントラセニル基、ペリレニル基、トリフェニレニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、チエニレニル基、ベンゾチエニレニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ジベンゾチエニレニル基、ピリジレニル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、9−フェニルカルバゾリル基、アクリジニル基、ベンゾチアゾリル基、キナゾリル基、キノキサリル基、1,6−ナフチリジニル基、又は1,8−ナフチリジニル基がより好ましく、さらに置換基を有していてもよい総炭素数が6〜30のフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ターフェニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニレニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、又はイソキノリル基、カルバゾリル基、又は9−フェニルカルバゾリル基がより好ましい。
なお、前記、アリール基上の置換基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、炭素数3〜18のアルキル基(例えば、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、オクチル基、ベンジル基、又はフェネチル基等)、炭素数1−18のハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3−18のアルコキシ基(例えば、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキサジエニルオキシ基、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数1−18のハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ基等)、フェニル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、又はジベンゾフラニル基等が挙げられる。これらのうち、アリールアミン共重合体の正孔輸送特性に優れる点で、メチル基、エチル基、炭素数3〜18のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3−18のアルコキシ基、フェニル基、トリル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、又はジベンゾフラニル基が好ましい。なお、これらの置換基は、前記アリール基の総炭素数の範囲内であれば、複数有していてもよい。
したがって、Xとしては、有機電界発光素子としての発光特性、及び耐久性の点から、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ターフェニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニレニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、9−フェニルカルバゾリル基(これらの置換基は、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、メトキシ基、フェニル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基で置換されていてもよい)が好ましい。
これらのうち、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、キノリル基、又はカルバゾリル基(これらの置換基は、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、又はメトキシ基で置換されていてもよい)であることがより好ましい。
本発明のアリールアミン共重合体において、Ar1は炭素数1〜6の置換基を有していてもよい炭素数6〜60の二価芳香族炭化水素基を表す。
前記炭素数1〜6の置換基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキサジエニルオキシ基、フェネチルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジル基等が挙げられる。
炭素数6〜60の二価芳香族炭化水素基としては、特に限定するものではないが、例えば、フェニレン基(例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基)、ビフェニリレン基、フルオレンジイル基、ナフタレンジル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基、ターフェニレン基、フェナントラセンジイル基、ペリレンジイル基、又はトリフェニレンジイル基等を挙げることができる。
好ましくは、炭素数6〜30の二価芳香族炭化水素基であり、当該置換基としては、特に限定するものではないが、例えば、フェニレン基、ビフェニリレン基、フルオレンジイル基、ナフタレンジル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基、ターフェニレン基、フェナントラセンジイル基、ペリレンジイル基、又はトリフェニレンジイル基等を挙げることができる。
Ar1としては、有機電界発光素子としての発光特性、及び耐久性の点から、フェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニルジイル基(これらの置換基は、メチル基、メトキシ基、又はフェニル基で置換されていてもよい)で有ることが好ましく、o−フェニレン基、m−フェニレン基、又はp−フェニレン基であることがより好ましい。
また、共重合体の末端については、有機電界発光素子としての発光特性、及び耐久性の点から、下記一般式(5)で表される置換基であることが好ましい。
(式中、Ar
4は、置換基を有していてもよい総炭素数が6〜60のアリール基を表す。)
Ar
4で示される置換基を有していてもよい総炭素数が6〜60のアリール基については、Xで示した置換基を有していてもよい総炭素数が6〜60のアリール基と同じ置換基を例示することができる。
Ar4については、アリールアミン共重合体の製造効率に優れる点で、各々独立して、フェニル基(当該フェニル基は、各々独立して、メチル基、エチル基、炭素数3〜18のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3〜18のアルコキシ基からなる群より選ばれる1種以上の置換基を有していてもよい)であることが好ましく、各々独立して、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、又はフェニル基であることがより好ましい。
本発明のアリールアミン共重合体において、一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰返し構造単位の存在比率は、正孔輸送性の観点から構成モル比{(1)/[(1)+(2)+(3)]}が、0.10〜0.80であることが好ましく、0.30〜0.80であることがより好ましい。
本発明のアリールアミン共重合体において、一般式(1)、(2)、(3)及び(15)で表される繰返し構造単位の存在比率は、正孔輸送性の観点から構成モル比{(1)/[(1)+(2)+(3)+(15)]}が、0.10〜0.80であることが好ましく、0.30〜0.80であることがより好ましい。
本発明のアリールアミン共重合体において、一般式(1)で表される繰返し構造単位の、好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定するものではない。
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜18のアルキル基(例えば、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、オクチル基、ベンジル基、又はフェネチル基等)、炭素数1−18のハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3−18のアルコキシ基(例えば、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキサジエニルオキシ基、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等)、又は炭素数1−18のハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ基等)を表わす。)
本発明のアリールアミン共重合体において、一般式(2)で表される繰返し単位の、好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定するものではない。
(式中、R
5及びR
6は各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜18のアルキル基(例えば、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、オクチル基、ベンジル基、又はフェネチル基等)、炭素数1−18のハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3−18のアルコキシ基(例えば、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキサジエニルオキシ基、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等)、又は炭素数1−18のハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ基等)を表わす。)
本発明のアリールアミン共重合体において、一般式(3)で表される繰返し単位の、好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定するものではない。
(式中、R
7及びR
8は各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜18のアルキル基(例えば、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、オクチル基、ベンジル基、又はフェネチル基等)、炭素数1−18のハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3−18のアルコキシ基(例えば、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキサジエニルオキシ基、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等)、又は炭素数1−18のハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ基等)を表わす。)
なお、R
1〜R
8は、ポリマーの製造効率に優れる点で、各々独立して、水素原子メチル基、エチル基、又は炭素数3〜8のアルキル基であることが好ましく、各々独立して、水素原子、メチル基、ブチル基、オクチル基、又はドデシル基であることがより好ましい。
次に本発明のアリールアミン共重合体の製造方法について説明する。
本発明のアリールアミン共重合体は特に限定するものではないが、下記一般式(9)、(10)及び(11)で表されるハロゲン化合物のうち少なくとも2種以上と、下記一般式(12)で表される一級アミン化合物を原料に、電子供与性配位子及びパラジウム化合物からなる反応触媒並びに塩基の存在下、重合させることによって合成できる。
(式中、Xは、各々独立して、置換基を有していてもよい総炭素数が6〜60のアリール基を表す。Y
1、Y
2及びY
3は、各々独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
本発明の、好ましいアリールアミン共重合体は特に限定するものではないが、パラジウム化合物及び電子供与性配位子からなる反応触媒及び塩基の存在下、下記一般式(9)、(10)、及び(11)で表されるハロゲン化合物のうち少なくとも2種の化合物と下記一般式(12)で表されるアミン化合物を一段階又は二段階以上で反応させる、又は下記一般式(9)、(10)、及び(11)で表されるハロゲン化合物のうち少なくとも2種の化合物及び一般式(12−3)で表されるハロゲン化合物と下記一般式(12)で表されるアミン化合物を一段階又は二段階以上で反応させる、ことによって製造できる。
(式中、Xは、各々独立して、置換基を有していてもよい総炭素数が6〜60のアリール基を表す。Y
1、Y
2、Y
3及びY
5は、各々独立して、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。Ar
1は炭素数1〜6の置換基を有していてもよい炭素数6〜60の二価芳香族炭化水素基を表す。)
一般式(9)、一般式(12)における置換基Xは、一般式(1)、(2)及び(3)におけるXと同義である。
一般式(12−3)におけるAr1は、一般式(15)におけるAr1と同義である。
本重合反応により得られる共重合体の末端は、はハロゲン化合物(上記一般式(9)、(10)、(11)、一般式(12−3)で表される化合物)と、アミン化合物(一般式(12)で表される化合物)の仕込みモノマー比率、により、二級アミノ基、ハロゲン基、又は二級アミノ基とハロゲン基の両方である。
本発明におけるアリールアミン共重合体は、上記のような重合末端が二級アミノ基、ハロゲン基、又は二級アミノ基とハロゲン基の両方であってもよい。また下記に示すように、本発明におけるアリールアミン共重合体は、末端の二級アミノ基及びハロゲン基を、反応によってアリール基等で保護したものであってもよい。
保護化工程は、電子供与性配位子及びパラジウム化合物からなる反応触媒並びに塩基の存在下、下記一般式(9)、(10)、及び(11)で表されるハロゲン化合物のうち少なくとも2種の化合物と下記一般式(12)で表されるアミン化合物の重合反応で得られたアリールアミン重合体、又は下記一般式(9)、(10)、及び(11)で表されるハロゲン化合物のうち少なくとも2種の化合物及び一般式(12−3)で表されるハロゲン化合物と下記一般式(12)で表されるアミン化合物の重合反応で得られたアリールアミン共重合体と、下記一般式(13)で表される芳香族ハロゲン化合物、下記一般式(14)で表される芳香族アミン化合物、又はそれらの両方との反応によって行われる。
(式中、Ar
4は、上記一般式(5)におけるAr
4と同じ定義である。Y
4は、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
(式中、Ar
4は、各々独立して、上記一般式(5)におけるAr
4と同じ定義である。)
なお、保護化工程は、重合工程に引き続きワンポットで行なってもよいし、一旦、重合工程の生成物であるアリールアミン共重合体を単離した後、別途、電子供与性配位子及びパラジウム化合物からなる反応触媒及び塩基の存在下行なってもよい。
保護化工程において、一般式(13)で表される芳香族ハロゲン化合物と一般式(14)で表される芳香族アミン化合物を同時に用いて反応を行うことも可能であるが、保護化工程の反応効率の点においては、芳香族ハロゲン化合物による反応と、芳香族アミン化合物による反応は、それぞれ別々に行うことが好ましい。また、別々に反応を行う場合、芳香族ハロゲン化合物を用いる反応と芳香族アミン化合物を用いる反応はどちらを先に行ってもよい。
なお、保護化工程において、芳香族ハロゲン化合物を用いる反応と芳香族アミン化合物を用いる反応は、ワンポットで連続的に行うこともできるし、一方の反応後、反応施生物を単離して別バッチで他方の反応を行うこともできる。
一般式(13)で表される芳香族ハロゲン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有してもよいブロモベンゼン類[具体的には、ブロモベンゼン、2−ブロモトルエン、3−ブロモトルエン、4−ブロモトルエン、2−ブロモ−m−キシレン、2−ブロモ−p−キシレン、3−ブロモ−o−キシレン、4−ブロモ−o−キシレン、4−ブロモ−m−キシレン、5−ブロモ−m−キシレン、1−ブロモ−2−エチルベンゼン、1−ブロモ−4−エチルベンゼン、1−ブロモ−4−プロピルベンゼン、1−ブロモ−4−n−ブチルベンゼン、1−ブロモ−4−tert−ブチルベンゼン、1−ブロモ−5−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−ブロモアニソール、3−ブロモアニソール、4−ブロモアニソール、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレン、2−ブロモビフェニル、3−ブロモビフェニル、4−ブロモビフェニル、9−ブロモアントラセン、9−ブロモフェナンスレン、N−メチル−3−ブロモカルバゾール、N−エチル−3−ブロモカルバゾール、N−プロピル−3−ブロモカルバゾール、N−ブチル−3−ブロモカルバゾール、2−ブロモフルオレン、2−ブロモ−9,9−ジメチルフルオレン、2−ブロモ−9,9−ジエチルフルオレン、2−ブロモ−9,9−ジイソプロピルフルオレン、2−ブロモ−9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、2−ブロモ−9,9−ジ−tert−ブチルフルオレン、2−ブロモ−9,9−ジ−sec−ブチルフルオレン、2−ブロモ−9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン、2−ブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、2−ブロモジベンゾチオフェン、2−ブロモジベンゾフラン等]、置換基を有してもよいクロロベンゼン類[具体的には、クロロベンゼン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、2−クロロ−m−キシレン、2−クロロ−p−キシレン、3−クロロ−o−キシレン、4−クロロ−o−キシレン、4−クロロ−m−キシレン、5−クロロ−m−キシレン、1−クロロ−2−エチルベンゼン、1−クロロ−4−エチルベンゼン、1−クロロ−4−プロピルベンゼン、1−クロロ−4−n−ブチルベンゼン、1−クロロ−4−tert−ブチルベンゼン、1−クロロ−5−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−クロロアニソール、3−クロロアニソール、4−クロロアニソール、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレン、2−クロロビフェニル、3−クロロビフェニル、4−クロロビフェニル、9−クロロアントラセン、9−クロロフェナンスレン、N−メチル−3−クロロカルバゾール、N−エチル−3−クロロカルバゾール、N−プロピル−3−クロロカルバゾール、N−ブチル−3−クロロカルバゾール、2−クロロフルオレン、2−クロロ−9,9−ジメチルフルオレン、2−クロロ−9,9−ジエチルフルオレン、2−クロロ−9,9−ジイソプロピルフルオレン、2−クロロ−9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、2−クロロ−9,9−ジ−tert−ブチルフルオレン、2−クロロ−9,9−ジ−sec−ブチルフルオレン、2−クロロ−9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン、2−クロロ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、2−クロロジベンゾチオフェン、2−クロロジベンゾフラン等]、及び、置換基を有してもよいヨードベンゼン類[具体的には、ヨードベンゼン、2−ヨードトルエン、3−ヨードトルエン、4−ヨードトルエン、2−ヨード−m−キシレン、2−ヨード−p−キシレン、3−ヨード−o−キシレン、4−ヨード−o−キシレン、4−ヨード−m−キシレン、5−ヨード−m−キシレン、1−ヨード−2−エチルベンゼン、1−ヨード−4−エチルベンゼン、1−ヨード−4−プロピルベンゼン、1−ヨード−4−n−ブチルベンゼン、1−ヨード−4−tert−ブチルベンゼン、1−ヨード−5−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−ヨードアニソール、3−ヨードアニソール、4−ヨードアニソール、1−ヨードナフタレン、2−ヨードナフタレン、2−ヨードビフェニル、3−ヨードビフェニル、4−ヨードビフェニル、9−ヨードアントラセン、9−ヨードフェナンスレン、N−メチル−3−ヨードカルバゾール、N−エチル−3−ヨードカルバゾール、N−プロピル−3−ヨードカルバゾール、N−ブチル−3−ヨードカルバゾール、2−ヨードフルオレン、2−ヨード−9,9−ジメチルフルオレン、2−ヨード−9,9−ジエチルフルオレン、2−ヨード−9,9−ジイソプロピルフルオレン、2−ヨード−9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、2−ヨード−9,9−ジ−tert−ブチルフルオレン、2−ヨード−9,9−ジ−sec−ブチルフルオレン、2−ヨード−9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン、2−ヨード−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、2−ヨードジベンゾチオフェン、2−ヨードジベンゾフラン等]が挙げられる。
上記一般式(14)で表される芳香族アミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ジフェニルアミン、ジ−p−トリルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、又はN−フェニル−2−ナフチルアミン等が挙げられる。
重合工程及び保護化工程は、いずれも、電子供与性配位子及びパラジウム化合物からなる反応触媒並びに塩基の存在下に行われることを特徴とし、それらの反応条件については、特に限定するものではないが、いずれも以下に示すものを用いることができる。
パラジウム化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、4価のパラジウム化合物類[具体的には、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等)、2価のパラジウム化合物類(例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウム(II)トリフルオロアセテート等]、及び0価のパラジウム化合物類[具体的には、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等]が挙げられる。
電子供与性配位子としては、特に限定するものではないが、パラジウムに配位可能なものであればよく、例えば、トリアルキルホスフィン類、アリールホスフィン類、カルベン系配位子等が挙げられる。
トリアルキルホスフィン類としては、特に限定するものではないが、例えば、トリエチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−sec−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン等が挙げられる。これらのうち触媒として特に高い反応活性を有することから、トリ−tert−ブチルホスフィンを使用することが好ましい。
アリールホスフィン類としては、特に限定するものではないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、トリメシチルホスフィン、ジフェニルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノプロパン、ジフェニルホスフィノフェロセン等が挙げられる。
カルベン系配位子としては、例えば、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン塩酸塩等が挙げられる。
電子供与性配位子及びパラジウム化合物からなる反応触媒における電子供与性配位子の使用量は、特に限定するものではないが、パラジウム化合物中のパラジウム原子1モルに対して通常0.01〜10000倍モルの範囲で使用すればよく、高価なトリアルキルホスフィン類、アリールホスフィン類、カルベン系配位子を使用することから、パラジウム化合物中のパラジウム原子1モルに対して0.1〜10倍モルの範囲が好ましい。
重合工程における電子供与性配位子及びパラジウム化合物からなる反応触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、原料化合物(9)、(10)及び(11)のハロゲン原子の合計モル量に対して、1モルあたりパラジウム原子換算で通常0.0000001〜0.20倍モルの範囲であることが好ましい。このうち、触媒活性の点、及び高価なパラジウム化合物を使用する点から、通常0.00001〜0.05倍モルの範囲であることがより好ましい。
保護化工程における電子供与性配位子及びパラジウム化合物からなる反応触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、一般式(13)で表される芳香族ハロゲン化合物、又重合工程で得られたアリールアミン共重合体のハロゲン原子1モルに対し、パラジウム原子換算で通常0.0000001〜0.20倍モルの範囲であることが好ましい。このうち、触媒活性の点、及び高価なパラジウム化合物を使用する点から、通常0.00001〜0.10倍モルの範囲であることがより好ましい。
重合工程及び保護化工程における電子供与性配位子及びパラジウム化合物からなる反応触媒の添加方法としては、特に限定するものではないが、重合工程又は保護化工程の反応系にパラジウム化合物及び配位子、並びにその他成分をそれぞれ単独に加えても良いし、予めこれら触媒構成成分を混合してパラジウム錯体の形態に調製したものを添加してもよい。
重合工程及び保護化工程に用いる塩基としては、特に限定するものではないが、例えば、アルカリ金属(具体的には、ナトリウム、カリウム等)の水酸化物、炭酸塩、アルコキシド等の無機塩基、又は三級アミン等の有機塩基が挙げられる。これらのうち、好ましくはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシドであり、それらは反応系にそのまま加えることもできるし、アルカリ金属、水素化アルカリ金属又は水酸化アルカリ金属とアルコールを反応系に供して、その場で調製することもできる。より好ましくは、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属3級アルコキシドを反応系にそのまま加える方法である。
重合工程における塩基の使用量は、特に限定するものではないが、特に限定されるものではないが、原料化合物(9)、(10)及び(11)のハロゲン原子の合計モル量に対して、1モルあたり1〜1000倍モルの範囲から選ばれる。このうち、反応終了後の後処理操作を考慮すれば、1〜20倍モルの範囲がより好ましい。
保護化工程における塩基の使用量は、特に限定するものではないが、通常、一般式(13)で表される芳香族ハロゲン化合物のハロゲン原子1モルに対して1〜1000倍モルの範囲、好ましくは1〜20倍モルの範囲、又は重合工程で得られるアリールアミン共重合体のハロゲン原子1モルに対して1〜100000倍モルの範囲、好ましくは1〜1000倍モルの範囲から選ばれる。
重合工程及び保護化工程は、いずれも通常は不活性溶媒存在下で実施することが好ましい。使用する溶媒としては、本反応を著しく阻害しない溶媒であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホトリアミド等を挙げることができる。これらのうち、好ましくはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒である。
重合工程及び保護化工程は、いずれも好ましくは常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施するが、例え加圧条件であっても実施することは可能である。
重合工程及び保護化工程における反応温度は、いずれも経済的に許容できる速度で反応が進行する温度であれば特に限定するものではないが、通常20〜300℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは100〜150℃の範囲である。
重合工程及び保護化工程における反応時間は、いずれも製造するアリールアミン共重合体の種類及び濃度、電子供与性配位子及びパラジウム化合物からなる反応触媒の種類及び濃度、並びに反応温度等により一定ではないため特に限定するものではないが、多くの場合、数分〜72時間の範囲から選択すればよい。好ましくは24時間未満である。
重合工程及び保護化工程によって製造されたアリールアミン共重合体は、再沈殿等により未反応の低分子量化合物等から分離し、精製することが好ましい。また、電子供与性配位子、パラジウム化合物、未反応の低分子量化合物等の不純物の除去のためにシリカゲルや活性アルミナ等による吸着処理を行うことが好ましい。
本発明のアリールアミン共重合体は、電界効果トランジスタ、光機能素子、色素増感太陽電池、有機EL素子等の電子素子における導電性高分子材料として使用される。特に、有機EL素子の正孔輸送材料、発光材料及びバッファー材料として極めて有用である。
本願のアリールアミン共重合体は、正孔輸送材料特性に優れる点で、ポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜300,000の範囲であることが好ましく、20,000〜200,000の範囲であることがより好ましい。
本願のアリールアミン共重合体において、アリールアミン共重合体に含まれる一般式(1)で表される繰返し構造単位、一般式(2)で表される繰返し構造単位、一般式(3)で表される繰返し構造単位、及び一般式(15)で表される繰返し構造単位からなる群より選ばれる構造単位については、それぞれ少なくとも2つずつ以上有することを必須とし、正孔輸送材料特性に優れる点で、それぞれ4つ以上有するものが好ましく、それぞれ10以上有するものが好ましい。ここで、繰返し構造単位の数については、反応時の材料使用量及び標準ポリスチレン換算の重量平均分子量から見積もるものとする。
また、本発明のアリールアミン重合体における繰返し構造の数については、有機電界発光素子としての発光特性、及び耐久性の点から、トータルで5以上であることが好ましく、トータルで10以上であることがより好ましく、トータルで20以上であることがさらに好ましい。
本発明のアリールアミン共重合体は、電界効果トランジスタ、光機能素子、色素増感太陽電池、有機EL素子等の電子素子における導電性高分子材料として使用される。特に、有機EL素子の正孔輸送材料、発光材料及びバッファー材料として極めて有用である。
本発明の有機EL素子は、本発明のアリールアミン共重合体を含有する有機層を備えていれば、素子構造は特に限定されない。また、有機EL素子を作製するために組み合わせる材料としては、従来公知のものであれば、特に限定するものではない。
本発明のアリールアミン共重合体は、溶解性に優れることから、例えば、これら材料の溶液、混合液、または溶融液を使用して、スピンコーティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロールコート法等の従来公知の塗布方法によって、前記素子を簡便に作製することが出来る。また、インクジェット法、ラングミュアーブロジェット法等によっても容易に作製することが出来る。
本発明の効果が得られる有機EL素子の基本的な構造としては、基板、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び陰極を含む。
有機EL素子の陽極及び陰極は、電気的な導体を介して電源に接続されている。陽極と陰極との間に電位を加えることにより、有機EL素子は作動する。
正孔は陽極から有機EL素子内に注入され、電子は陰極で有機EL素子内に注入される。
有機EL素子は典型的には基板に被せられ、陽極又は陰極は基板と接触することができる。基板と接触する電極は便宜上、下側電極と呼ばれる。一般的には、下側電極は陽極であるが、本発明の有機EL素子においては、そのような形態に限定されるものではない。
基板は、意図される発光方向に応じて、光透過性又は不透明であってもよい。光透過特性は、基板を通してエレクトロルミネッセンス発光により確認できる。一般的には、透明ガラス又はプラスチックがこのような場合に基板として採用される。基板は、多重の材料層を含む複合構造であってもよい。
エレクトロルミネッセンス発光を、陽極を通して確認する場合、陽極は当該発光を通すか又は実質的に通すもので形成される。
本発明において使用される一般的な透明アノード(陽極)材料は、特に限定するものではないが、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、又は酸化錫等が挙げられる。その他の金属酸化物、例えばアルミニウム又はインジウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム−インジウム酸化物、又はニッケル−タングステン酸化物も使用可能である。これらの酸化物に加えて、金属窒化物である、例えば窒化ガリウム、金属セレン化物である、例えばセレン化亜鉛、又は金属硫化物である、例えば硫化亜鉛を陽極として使用することができる。
陽極は、プラズマ蒸着されたフルオロカーボンで改質することができる。陰極を通してだけエレクトロルミネッセンス発光が確認される場合、陽極の透過特性は重要ではなく、透明、不透明又は反射性の任意の導電性材料を使用することができる。この用途のための導体の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等が挙げられる。
陽極と正孔輸送層との間には、正孔注入層を設けることができる。正孔注入材料は、後に続く、有機層の膜形成特性を改善し、正孔輸送層内に正孔を注入するのを容易にするのに役立つ。
正孔注入層内で使用するのに適した材料の一例としては、正孔注入層内で使用するのに適した材料の一例としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体が挙げられ、好ましくはポリチオフェン誘導体が挙げられる。
有機EL素子の正孔輸送層は、本発明のアリールアミン共重合体が好ましく用いられる。なお、正孔輸送層には、本発明のアリールアミン共重合体以外に1種以上の正孔輸送化合物、例えば芳香族第三アミン、を含有させることもできる。芳香族第三アミンとは、1つ以上の三価の窒素原子を含有する化合物であることを意味し、この三価の窒素原子は炭素原子だけに結合しており、これらの炭素原子の1つ以上は芳香族環を形成している。具体的には、芳香族第三アミンは、アリールアミン、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、又は高分子アリールアミンが挙げられ、より具体的には、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、NPD(N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)、α−NPD(N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)、TPBi(1,3,5−トリス(1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン)、又はTPD(N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)等が挙げられる。
正孔注入層と正孔輸送層の間に、電荷発生層としてジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN)を含む層を設けてもよい。
有機EL素子の発光層は、燐光材料又は蛍光材料を含み、この領域で電子・正孔対が再結合された結果として発光を生ずる。
発光層は、低分子及びポリマー双方を含む単一材料から成っていてもよいが、より一般的には、ゲスト化合物でドーピングされたホスト材料から成っており、発光は主としてドーパントから生じ、任意の色を有することができる。
発光層のホスト材料としては、例えば、ビフェニル基、フルオレニル基、トリフェニルシリル基、カルバゾール基、ピレニル基、又はアントラニル基を有する化合物が挙げられる。例えば、DPVBi(4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)−1,1’−ビフェニル)、BCzVBi(4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)1,1’−ビフェニル)、TBADN(2−ターシャルブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン)、ADN(9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン)、CBP(4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル)、CDBP(4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2’−ジメチルビフェニル)、又は9,10−ビス(ビフェニル)アントラセン等が挙げられる。
発光層内のホスト材料としては、下記に定義する電子輸送材料、上記に定義する正孔輸送材料、正孔・電子再結合を助ける(サポート)別の材料、又はこれら材料の組み合わせであってもよい。
蛍光ドーパントの一例としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム又はチアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物等が挙げられる。
燐光ドーパントの一例としては、イリジウム、白金、パラジウム、オスミウム等の遷移金属の有機金属錯体が挙げられる。
ドーパントの一例として、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム))、DPAVBi(4,4’−ビス[4−(ジ−パラ−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)、ペリレン、Ir(PPy)3(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)、又はFlrPic(ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)イリジウム(III)等が挙げられる。
電子輸送性材料としては、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、土類金属錯体等が挙げられる。アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、又は土類金属錯体としては、例えば、8−ヒドロキシキノリナートリチウム(Liq)、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)−1−ナフトラートアルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)−2−ナフトラートガリウム等が挙げられる。
発光層と電子輸送層との間に、キャリアバランスを改善させる目的で、正孔阻止層を設けてもよい。正孔素子層として望ましい化合物は、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)、Bphen(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)、BAlq(ビス(2−メチル−8−キノリノラート)−4−(フェニルフェノラート)アルミニウム)、又はビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム)等が挙げられる。
本発明の有機EL素子においては、電子注入性を向上させ、素子特性(例えば、発光効率、定電圧駆動、又は高耐久性)を向上させる目的で、電子注入層を設けてもよい。
電子注入層として望ましい化合物としては、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等が挙げられる。また、上記に記した金属錯体やアルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、希土類酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物、希土類ハロゲン化物、SiO2、AlO、SiN、SiON、AlON、GeO、LiO、LiON、TiO、TiON、TaO、TaON、TaN、Cなどの各種酸化物、窒化物、及び酸化窒化物のような無機化合物等も使用できる。
発光が陽極を通してのみ確認される場合、本発明において使用される陰極は、任意の導電性材料から形成することができる。望ましい陰極材料としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
ポリマー分子量:THF系GPC[HLC−8220(東ソー社製)。カラムはTSKgel−SuperHM−N、及びTSKgel−SuperH2000(いずれも東ソー社製)を連結した。]にて、合成したポリマーの分子量測定を行った。分子量は標準ポリスチレン換算で示した。
ガラス転位温度:DSC200F3(ネッチ社製)を用いて測定した。
HOMO準位:大気中光電子分光装置測定装置AC−3(理研計器株式会社製)を用いて測定した。
LUMO準位:UV−vis吸収スペクトルの吸収端からエネルギーギャップ(Eg)を算出し、HOMOから差し引くことで求めた。
T1準位の測定:蛍光光度計(日立製作所製)を用いて燐光スペクトルを測定して算出した。
元素分析:全自動元素分析装置2400II(パーキンエルマー社製)を用いて分析した。
有機EL素子評価:作製した素子について、直流電流を印加した際の物性を、LUMINANCE METER BM−9(TOPCON社製)の輝度計を用いて評価した。
実施例1
冷却管、温度計を装着した50mL三つ口丸底フラスコに、室温下、窒素雰囲気下で3,6−ジブロモ−9−フェニルカルバゾール 0.80g(1.08mmol)、2,7−ジブロモジベンゾチオフェン 0.68g(1.99mmol)、4−ブチルアニリン 0.60g(3.99mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 1.53g(16.0mmol)及びo−キシレン 17.5gを混合した。反応容器内部に窒素を約20分間流通させた後、この混合液に予め窒素雰囲気下で調製したトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム 36.5mg(3.99μmol)及びトリ−tert−ブチルホスフィン 48.4mg(239μmol)のo−キシレン(3.0mL)溶液を追加した。次いで、温度120℃で19時間攪拌した。次いで、得られた反応液にブロモベンゼン 313mg(1.99mmol)を添加し、120℃で更に3時間攪拌した。その後、更にジフェニルアミン 0.68g(3.99mmol)を添加し、120℃更に3時間攪拌した。次いで、この反応混合物を約60℃まで冷却した後、水 2gを添加し、1時間攪拌した。次いで、得られた反応混合物について、90%アセトン水溶液(200mL)の攪拌溶液の中へゆっくり加えた。析出した固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した後、減圧乾燥し黄色粉末状のアリールアミン共重合体A 0.62gを得た(41%)。
得られたアリールアミン共重合体Aは、ポリスチレン換算で重量平均分子量39,000及び数平均分子量16,000(分散度2.4)であった。
ガラス転移温度は242℃であった。
HOMO準位は5.06eV、LUMO準位は1.80eV、T1準位は2.49eVであった。
元素分析の測定結果を表1に示す。
理論値は、理論的にすべての原料が反応して得られるポリマー構造に基づいて算出した。
実施例2
実施例1において2,7−ジブロモジベンゾチオフェン 0.68g(1.99mmol)の変わりに2,7−ジブロモジベンゾフラン 0.65g(1.99mmol)を使用した以外は同様の操作を行ない0.74gのアリールアミン共重合体Bを得た。
得られたアリールアミン共重合体Bは、ポリスチレン換算で重量平均分子量82,000及び数平均分子量18,000(分散度4.6)であった。
ガラス転移温度は252℃であった。
HOMO準位は5.10eV、LUMO準位は1.70eV、T1準位は2.48eVであった。
元素分析の測定結果を表2に示す。
理論値は、理論的にすべての原料が反応して得られるポリマー構造に基づいて算出した。
実施例3
実施例1において3,6−ジブロモ−9−フェニルカルバゾールの仕込み量を 0.96g(2.39mmol)に変更した。また、2,7−ジブロモジベンゾチオフェン 0.68g(1.99mmol)の代わりに2,7−ジブロモジベンゾフラン 0.52g(1.60mmol)を使用した以外は同様の操作を行ない0.60gのアリールアミン共重合体Cを得た。
得られたアリールアミン共重合体Cは、ポリスチレン換算で重量平均分子量75,000及び数平均分子量19,000(分散度3.9)であった。
ガラス転移温度は255℃であった。
HOMO準位は5.15eV、LUMO準位は1.73eV、T1準位は2.49eVであった。
元素分析の測定結果を3に示す。
理論値は、理論的にすべての原料が反応して得られるポリマー構造に基づいて算出した。
実施例4
実施例1において4−ブチルアニリン 0.60g(3.99mmol)の代わりに4−ビフェニルアミン 0.41g(1.99mmol)と4−オクチルアニリン 0.34g(1.99mmol)を使用した以外は同様の操作を行ない0.73gのアリールアミン共重合体Dを得た。
得られたアリールアミン共重合体Dは、ポリスチレン換算で重量平均分子量23,000及び数平均分子量8,000(分散度2.9)であった。
ガラス転移温度は240℃であった。
HOMO準位は5.13eV、LUMO準位は1.80eV、T1準位は2.47eVであった。
元素分析の測定結果を4に示す。
理論値は、理論的にすべての原料が反応して得られるポリマー構造に基づいて算出した。
実施例5
冷却管、温度計を装着した500mL四つ口丸底フラスコに、室温下、3,6−ジブロモ−9−フェニルカルバゾール 11.0g(27.4mmol)、p−ブチルアニリン 12.3g(82.3mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 6.33g(65.8mmol)及びo−キシレン 140gを仕込んだ。この混合液に、予め窒素雰囲気下で調製した酢酸パラジウム(II) 123mg(0.55mmol)及びトリ−tert−ブチルホスフィン 0.333g(1.65mmol)のo−キシレン(5.0g)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を130℃まで昇温し、130℃で加熱攪拌しながら6時間熟成した。次いで、80℃まで放冷したところで、反応液に純水 200gを加えた後、攪拌しながら室温まで放冷した。次いで、トルエン 100mLを加えて抽出操作を行った。抽出した有機層をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通液後、減圧蒸留によりトルエンを留去し、残渣を得た。トルエンを溶媒とした再結晶操作により精製し、12.5gの化合物(16)を取得した。
冷却管、温度計を装着した200mL四つ口丸底フラスコに、室温下、化合物(16) 3.34g(6.22mmol)、p−ブロモクロロベンゼン 1.19g(6.22mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 1.49g(15.5mmol)及びo−キシレン 75gを仕込んだ。この混合液に、予め窒素雰囲気下で調製した酢酸パラジウム(II) 27.9mg(0.12mmol)及びトリ−tert−ブチルホスフィン 75.5mg(0.37mmol)のo−キシレン(5.0g)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を130℃まで昇温し、130℃で加熱攪拌しながら3時間熟成した。次いで、80℃まで放冷したところで、反応液に純水 100gを加えた後、攪拌しながら室温まで放冷した。次いで、トルエン 50mLを加えて抽出操作を行った。抽出した有機層を減圧蒸留によりトルエンを留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分離し、1.94gの化合物(17)を取得した。
冷却管、温度計を装着した100mL四つ口丸底フラスコに、室温下、化合物(17) 1.94g(2.99mmol)、p−ブチルアニリン 0.89g(5.99mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 0.58g(5.99mmol)及びo−キシレン 40gを仕込んだ。この混合液に、予め窒素雰囲気下で調製した酢酸パラジウム(II) 6.7mg(0.03mmol)及びトリ−tert−ブチルホスフィン 18.2mg(0.09mmol)のo−キシレン(3.0g)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を130℃まで昇温し、130℃で加熱攪拌しながら6時間熟成した。次いで、80℃まで放冷したところで、反応液に純水 50gを加えた後、攪拌しながら室温まで放冷した。次いで、トルエン 10mLを加えて抽出操作を行った。抽出した有機層をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通液後、減圧蒸留によりトルエンを留去し、残渣を得た。トルエンを溶媒とした再結晶操作により精製し、1.45gの化合物(18)を取得した。
冷却管、温度計を装着した100mL三つ口丸底フラスコに、室温下、窒素雰囲気下で化合物(18) 1.33g(1.75mmol)、2,7−ジブロモジベンゾフラン 0.57g(1.75mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 0.67g(6.99mmol)及びo−キシレン 24.0gを混合した。反応容器内部に窒素を約20分間流通させた後、この混合液に予め窒素雰囲気下で調製したトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム 16.0mg(17.5μmol)及びトリ−tert−ブチルホスフィン 21.2mg(105μmol)のo−キシレン(3.0mL)溶液を追加した。次いで、温度120℃で16時間攪拌した。次いで、得られた反応液にブロモベンゼン 165mg(1.05mmol)を添加し、120℃で更に3時間攪拌した。その後、更にジフェニルアミン 0.36g(2.10mmol)を添加し、120℃で更に3時間攪拌した。次いで、この反応混合物を約60℃まで冷却した後、水 2gを添加し、1時間攪拌した。次いで、得られた反応混合物について、90%アセトン水溶液(280mL)の攪拌溶液の中へゆっくり加えた。析出した固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した後、減圧乾燥し黄色粉末状のアリールアミン共重合体E 0.61gを得た(38%)。
得られたアリールアミン共重合体Eは、ポリスチレン換算で重量平均分子量32,000及び数平均分子量12,000(分散度2.7)であった。ただし、q+r=1。
ガラス転移温度は221℃であった。
HOMO準位は5.22eV、LUMO準位は2.32eV、T1準位は2.52eVであった。
元素分析の測定結果を表5に示す。
理論値は、理論的にすべての原料が反応して得られるポリマー構造に基づいて算出した。
素子実施例1(素子の作製と評価)
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を積層したガラス基板をアセトンおよび純水による超音波洗浄、イソプロピルアルコールによる沸騰洗浄を行った。さらに紫外線オゾン洗浄を行った。
この基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸(Bayer製、Baytron P CH8000)の懸濁液を、スピンコート法により塗布し、200℃にて1時間乾燥した。その結果、80nmの厚みの正孔注入層が製膜された。
次に、実施例1で取得したアリールアミン共重合体Aの0.5wt%クロロベンゼン溶液をスピンコート法によって塗布し、160℃で3時間乾燥した。その結果、アリールアミン共重合体Aの20nmの正孔輸送層が製膜された。
次いで、真空蒸着装置へ設置後、5×10−4Pa以下になるまで真空ポンプにて排気した。続いて、燐光ドーパント材料であるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)とホスト材料である4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(CBP)を重量比が1:11.5になるように蒸着速度0.25nm/秒で共蒸着し、30nmの発光層とした。
次に、BAlq(ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム)を蒸着速度0.3nm/秒で蒸着し、5nmのエキシトンブロック層とした後、さらにAlq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)を0.3nm/秒で蒸着し、45nmの電子輸送層とした。引続き、電子注入層として沸化リチウムを蒸着速度0.01nm/秒で0.5nm蒸着し、さらにアルミニウムを蒸着速度0.25nm/秒で100nm蒸着して陰極を形成した。窒素雰囲気下、封止用のガラス板をUV硬化樹脂で接着し、評価用の有機EL素子とした。
このように作製した素子に20mA/cm2の電流を印加し、駆動電圧および電流効率を測定した。結果を表5に示す。
素子実施例2(素子の作製と評価)
アリールアミン共重合体Aの代わりに実施例2で合成したアリールアミン共重合体Bを用いた他は、素子実施例1と同様に素子を作製して発光特性を測定した。結果を表に示す。
素子実施例3(素子の作製と評価)
アリールアミン共重合体Aの代わりに実施例3で合成したアリールアミン共重合体Cを用いた他は、素子実施例1と同様に素子を作製して発光特性を測定した。結果を表に示す。
素子実施例4(素子の作製と評価)
アリールアミン共重合体Aの代わりに実施例4で合成したアリールアミン共重合体Dを用いた他は、素子実施例1と同様に素子を作製して発光特性を測定した。結果を表に示す。
素子実施例5(素子の作製と評価)
アリールアミン共重合体Aの代わりに実施例5で合成したアリールアミン共重合体Eを用いた他は、素子実施例1と同様に素子を作製して発光特性を測定した。結果を表に示す。
素子比較例1
素子実施例1において、アリールアミン共重合体Aの代わりにポリ−(N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン)(ADS254BE:アメリカン・ダイ・ソース社製)を用いた他は、素子実施例1と同様に素子を作製して発光特性を測定した。結果を表に示す。
なお、表には、素子実施例1〜素子実施例5の測定結果を、素子比較例1の駆動電圧、発光効率の測定値を100と規格化した相対値で示した。
上記の通り、本発明のアリールアミン共重合体は、従来公知のアリールアミンポリマーに比べて輝度が高く、消費電力の少ない有機EL素子を提供できる。このような本発明の効果は先行技術文献から容易に想到されるものではない。