JP2015163595A - 電荷移動錯体およびその結晶、その結晶の製造方法、電界効果トランジスタ、並びに、光電変換素子 - Google Patents

電荷移動錯体およびその結晶、その結晶の製造方法、電界効果トランジスタ、並びに、光電変換素子 Download PDF

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達生 長谷川
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潤也 堤
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寿一 山田
悟志 松岡
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悟志 松岡
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雄一 貞光
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Abstract

【課題】2次元的な結晶成長様式を有し、均質な薄膜を容易に形成可能であり、かつ優れた半導体特性を発現することが期待できる電荷移動錯体等を提供する。【解決手段】電荷移動錯体は、電子供与性の有機分子(1・3)と電子受容性の有機分子(2)とからなり、電子供与性の有機分子(1・3)および電子受容性の有機分子(2)の少なくとも一方が、ハロゲン原子で置換されていてもよい、炭化水素側鎖、炭化水素オキシ側鎖、および炭化水素チオ側鎖からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素含有側鎖を有し、結晶状態であるときに、電子供与性の有機分子(1・3)および電子受容性の有機分子(2)における炭化水素含有側鎖(3)を除いた部分(1・2)からなる結晶層と、結晶層から外方へ向かって伸びる炭化水素含有側鎖(3)の群とで構成される2次元層状結晶となるものであり、電子供与性の有機分子(1・3)が、カルコゲノフェン誘導体である。【選択図】図1

Description

本発明は、電荷移動錯体およびその結晶、その結晶の製造方法、電界効果トランジスタ、並びに、太陽電池などの光電変換素子に関する。
有機半導体材料には、通常の単一成分系有機半導体の他に、電子供与性の有機分子と電子受容性の有機分子とからなる電荷移動錯体型有機半導体があることが知られている。電荷移動錯体型有機半導体は、電子供与性の有機分子と電子受容性の有機分子との間の電荷移動相互作用により、単一成分系有機半導体にはない優れた半導体特性(高キャリア移動度および狭バンドギャップ)が期待できるため(非特許文献1〜4)、これを用いた有機薄膜デバイスへの応用が模索されている(特許文献1および2)。
しかしながら、通常の電荷移動錯体の結晶は、電子供与性の有機分子と電子受容性の有機分子とが1次元的な分子積層構造(一般的には電子供与性の有機分子と電子受容性の有機分子とが交互に積層した構造)を形成するため、その1次元的な分子積層構造に起因して均質な薄膜の作製が著しく困難なことが、薄膜デバイス化に向けたネックとなっている。
これまでに、作製プロセスの工夫による電荷移動錯体の薄膜化の試み(特許文献3および4)がなされている。
しかしながら、より簡便なプロセスで高均質な電荷移動錯体の薄膜を得るには、電荷移動錯体そのものの性質である1次元的な結晶成長様式を改善する必要があった。
また、特許文献5には、電子供与体と電子受容体とから成る電荷移動錯体で、電子供与体および/または電子受容体に長鎖の置換基を有することにより、これより形成される電荷移動錯体が導電性層と絶縁層との積層構造をとるようにすることが記載されている。
特開2011−29229号公報 特開2008−041728号公報 特開2005−123354号公報 特開2007−142056号公報 特開平5−183175号公報
J.Am.Chem.Soc.、134巻、2340頁、2012年 Phys.Rev.Lett.、105巻、226601頁、2010年 Sci.Techno1.Adv.Mater.、10巻、024314頁、2009年 J.Phys.Soc.Jpn.、75巻、051016頁、2006年
しかしながら、特許文献5の実施例において電子供与体として使用されている3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジン(TMB)や、特許文献5において電子供与体の例として記載されているテトラチオフルバレン(TTF)誘導体は、それ自体が単一成分で高性能の有機半導体として機能するものでないため、これらを用いて得られる電荷移動錯体には優れた半導体特性を発現することが期待できない。
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、2次元的な結晶成長様式を有し、均質な薄膜を容易に形成可能であり、かつ、優れた半導体特性を発現することが期待できる電荷移動錯体およびその結晶、その結晶の製造方法、電界効果トランジスタ、並びに、光電変換素子を提供することにある。
本発明の電荷移動錯体は、前記課題を解決するために、電子供与性の有機分子と電子受容性の有機分子とからなる電荷移動錯体であって、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素側鎖、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素オキシ側鎖、およびハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素チオ側鎖からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素含有側鎖を有し、結晶状態であるときに、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子における前記炭化水素含有側鎖を除いた部分からなる結晶層と、その結晶層から外方へ向かって伸びる前記炭化水素含有側鎖の群とで構成される2次元層状結晶となるものであり、前記電子供与性の有機分子が、カルコゲノフェン誘導体であることを特徴としている。また、本発明の電荷移動錯体の結晶は、前記電荷移動錯体の結晶、すなわち前記電荷移動錯体が結晶状態となったものである。
前記構成の電荷移動錯体およびその結晶は、2次元的な結晶成長様式を有するので、均質な薄膜を容易に形成可能である。これにより、電荷移動錯体の結晶の優れた半導体特性(高キャリア移動度、狭バンドギャップなど)を活かした薄膜デバイスの製造が容易に実現可能になる。例えば、前記構成の電荷移動錯体またはその結晶を光電変換素子用の半導体材料に用いた場合に、狭バンドギャップによる感度向上が可能になると見込まれる。また、前記構成の電荷移動錯体またはその結晶をトランジスタ用半導体材料として用いた場合に、その特性(n型、p型、両極性)を制御することが可能になる。
また、近年開発されたベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンおよびその誘導体に代表されるカルコゲノフェン誘導体は、単一成分で移動度30cm2-1-1を示す高性能の有機半導体として機能する。前記構成の電荷移動錯体またはその結晶は、前記電子供与性の有機分子が単一成分で高性能の有機半導体として機能するカルコゲノフェン誘導体であるので、3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジン(TMB)やテトラチオフルバレン(TTF)誘導体などの電子供与性分子を構成成分とする従来の電荷移動錯体に比べて優れた半導体特性を発現することが期待できる。
本発明の電荷移動錯体の結晶の製造方法は、前記の電荷移動錯体の結晶の製造方法であって、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の双方を含む溶液、または前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の双方を含む気体から、結晶を成長させることを特徴としている。
前記方法によれば、2次元的な結晶成長様式を有する電荷移動錯体を形成できる電子供与性の有機分子および電子受容性の有機分子の組み合わせを用いるので、溶液または気体から結晶を成長させるだけで、均質な電荷移動錯体の結晶の薄膜を容易に作製することができる。
本発明の電界効果トランジスタは、半導体層と、該半導体層に接して互いに離間するように配設されたソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層における前記ソース電極に接する表面と前記ドレイン電極に接する表面との間の領域に対向するように配設されたゲート電極と、前記半導体層とゲート電極との間に配設されたゲート絶縁膜とを備えた電界効果トランジスタであって、前記半導体層が、前記の電荷移動錯体を含むことを特徴としている。
前記構成によれば、2次元的な結晶成長様式を有し、均質な薄膜を容易に形成可能な前記の電荷移動錯体を用いるので、容易に製造できる。また、その特性(n型、p型、両極性)を制御することが可能になる。また、前記構成によれば、従来の電荷移動錯体を用いた電界効果トランジスタに比べて優れた性能の電界効果トランジスタを実現できることが期待できる。
本発明の光電変換素子は、互いに離間するように配設された陰極および陽極と、これら陰極および陽極の間に配設された半導体層からなる発電層とを備えた光電変換素子であって、前記半導体層が、前記の電荷移動錯体を含むことを特徴としている。
前記構成によれば、2次元的な結晶成長様式を有し、均質な薄膜を容易に形成可能な前記の電荷移動錯体を用いるので、容易に製造できる。また、前記構成によれば、狭バンドギャップによる感度向上が可能になると見込まれる。また、前記構成によれば、従来の電荷移動錯体を用いた光電変換素子に比べて優れた性能の光電変換素子を実現できることが期待できる。
本発明によれば、2次元的な結晶成長様式を有し、均質な薄膜を容易に形成可能であり、かつ、優れた半導体特性を発現することが期待できる電荷移動錯体およびその結晶、その結晶の製造方法、電界効果トランジスタ、並びに、光電変換素子を提供できる。
本発明の実施の一形態に係る電荷移動錯体の結晶の1層分の構造を示す斜視図である。 本発明の電界効果トランジスタのいくつかの態様例などを示す概略断面図であり、(a)はボトムコンタクト−ボトムゲート型電界効果トランジスタの態様例を示す概略断面図であり、(b)はトップコンタクト−ボトムゲート型電界効果トランジスタの態様例を示す概略断面図であり、(c)はトップコンタクト−トップゲート型電界効果トランジスタの態様例を示す概略断面図であり、(d)はトップ&ボトムコンタクト−ボトムゲート型電界効果トランジスタの態様例を示す概略断面図であり、(e)は静電誘導トランジスタの態様例を示す概略断面図であり、(f)はボトムコンタクト−トップゲート型電界効果トランジスタの態様例を示す概略断面図である。 本発明の電界効果トランジスタの一態様例としてのトップコンタクト−ボトムゲート型電界効果トランジスタの製造方法を説明するための説明図であり、(a)〜(f)は上記製造方法の各工程を示す概略断面図である。 本発明の実施の一態様に係る光電変換素子の構造を示す概略断面図である。 実施例1〜3の電荷移動錯体の単結晶の光学顕微鏡像を示す図である。 単結晶X線構造解析により解析された実施例1〜3の電荷移動錯体の単結晶の結晶構造を示す図であり、(a)〜(c)は3つの異なる方向の投影図である。 実施例1の電荷移動錯体の単結晶の表面の原子間力顕微鏡像を示す図である。 図7の単結晶の表面の原子間力顕微鏡像を図7の白線で切断した断面における表面の高さおよび位置を示すグラフである。 実施例1〜3の電荷移動錯体の単結晶の偏光吸収スペクトルを示すグラフである。 分子軌道計算により求めた実施例1の電荷移動錯体の電子構造を示す図である。 実施例4の電界効果トランジスタの模式図である。 実施例4の電界効果トランジスタの光学顕微鏡像である。 実施例4の電界効果トランジスタのソース・ドレイン間電流−ゲート電圧特性(輸送特性)を示すグラフである。 実施例5の電界効果トランジスタのソース・ドレイン間電流−ゲート電圧特性を示すグラフである。 実施例6の電界効果トランジスタのソース・ドレイン間電流−ゲート電圧特性を示すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
〔電荷移動錯体およびその結晶〕
本発明の電荷移動錯体は、電子供与性の有機分子と電子受容性の有機分子とからなる電荷移動錯体であって、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が、ハロゲン原子で置換されていてもよいハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素側鎖、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素オキシ側鎖、およびハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素チオ側鎖からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素含有側鎖を有し、結晶状態であるときに、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子における前記炭化水素含有側鎖を除いた部分からなる結晶層と、その結晶層から外方へ向かって伸びる前記炭化水素含有側鎖の群とで構成される2次元層状結晶となるものであり、前記電子供与性の有機分子がカルコゲノフェン誘導体である。また、本発明の電荷移動錯体の結晶は、前記電荷移動錯体の結晶、すなわち前記電荷移動錯体が前記2次元層状構造の結晶状態となったものである。
前記2次元層状構造は、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が有する前記炭化水素含有側鎖が、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子における前記炭化水素含有側鎖を除いた部分が積層した構造を複数の層に分離することによって形成されると考えられる。なお、本発明の電荷移動錯体は、必ずしも結晶状態でなくともよく、溶液状態などであってもよい。
本発明の電荷移動錯体の結晶は、前記電子供与性の有機分子のみが前記炭化水素含有側鎖としての脂肪族炭化水素側鎖を有する場合、図1に示すような結晶構造をとる。すなわち、本発明の実施の一例に係る電荷移動錯体の結晶は、前記炭化水素含有側鎖としての脂肪族炭化水素側鎖を有する電子供与性の有機分子と電子受容性の有機分子とからなるものである。この実施の一形態に係る電荷移動錯体の結晶は、図1に示すように、一方向に電子供与性の有機分子における脂肪族炭化水素側鎖を除いた部分1と電子受容性の有機分子2とが交互に積層し、前記方向に垂直な方向に部分1および電子受容性の有機分子2がそれぞれ別々に積層した構造からなる結晶層と、脂肪族炭化水素側鎖3の群とを備え、前記結晶層が脂肪族炭化水素側鎖3の群で挟まれた2次元層状構造である。この場合、脂肪族炭化水素側鎖3は、結晶層の法線方向から傾斜することによって電子受容性の有機分子2の(結晶層の法線方向の)両側にある空隙の一部を埋めている。
前記電子受容性の有機分子が前記炭化水素含有側鎖を有する場合、前記カルコゲノフェン誘導体として、前記炭化水素含有側鎖を有しないカルコゲノフェン誘導体を用いることができる。前記炭化水素含有側鎖を有しないカルコゲノフェン誘導体としては、例えば、ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンなどのベンゾカルコゲノ[3,2−b]ベンゾカルコゲノフェンおよびその誘導体、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f]チエノ[3,2−b]チオフェンなどのジナフト[2,3−b:2’,3’−f]カルコゲノ[3,2−b]カルコゲノフェンおよびその誘導体、ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンなどの、ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジカルコゲノフェンおよびその誘導体、ベンゾ[1,2−b:3,4−b’:5,6−b”]トリチオフェン部分構造などのベンゾ[1,2−b:3,4−b’:5,6−b”]トリカルコゲノフェン部分構造を2個以上有する多量体化合物、チオフェンオリゴマーなどのカルコゲノフェンオリゴマーおよびその誘導体などが挙げられる。
前記電子受容性の有機分子が前記炭化水素含有側鎖を有しない場合、前記カルコゲノフェン誘導体として、前記炭化水素含有側鎖を有するカルコゲノフェン誘導体が用いられる。前記炭化水素含有側鎖を有するカルコゲノフェン誘導体としては、結晶状態の電荷移動錯体が2次元層状結晶を形成できる限りにおいては特に限定されるものではなく、例えば、前記炭化水素含有側鎖を有しないカルコゲノフェン誘導体として先に挙げた各種の化合物に対して前記炭化水素含有側鎖(特にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素側鎖)を導入したものが挙げられる。
前記炭化水素含有側鎖を有するカルコゲノフェン誘導体としては、前記炭化水素含有側鎖を有するベンゾカルコゲノフェン誘導体が好ましく、下記一般式(1)
(前記式中、R1はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素オキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素チオ基、または水素原子を表し、R2はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素オキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素チオ基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、硫黄原子、セレン原子、またはテルル原子を表す)
で表されるカルコゲノフェン誘導体(ベンゾカルコゲノ[3,2−b]ベンゾカルコゲノフェン誘導体)が特に好ましい。これにより、結晶状態の電荷移動錯体がさらに優れたキャリア移動度の半導体として機能する。前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体については、後段で詳細に説明する。
前記電子供与性の有機分子が前記炭化水素含有側鎖を有する場合、前記電子受容性の有機分子として、前記炭化水素含有側鎖を有しない電子受容性の有機分子を用いることができる。前記炭化水素含有側鎖を有しない電子受容性の有機分子としては、2,3,5,6−テトラシアノベンゾキノン、2,3−ジブロモ−5,6−ジシアノベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、2,3−ジヨード−5,6−ジシアノベンゾキノン、2,3−ジシアノベンゾキノン、p−ブロマニル、p−クロラニル、p−ヨーダニル、p−フルオラニル、2,5−ジクロロベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、クロラニル酸、ブロマニル酸、2,5−ジヒドロキシベンゾキノン、4H,8H−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール−4,8−ジオン(BTDAQ)、p−ベンゾキノン、o−ブロマニル、o−クロラニル、2,3−ジシアノ−5−ニトロナフトキノン、2,3−ジシアノナフトキノン、2,3−ジクロロ−5−ニトロナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,4−ナフトキノン、3,3’,5,5’−テトラブロモジフェノキノン、3,3’,5,5’−テトラクロロジフェノキノン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(テトラフルオロTCNQ)、2,5−ジフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(2,5−ジフルオロTCNQ)、2−フルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(モノフルオロTCNQ)、11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン(TNAP)、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ジヒドロバレレノテトラシアノキノジメタン(ジヒドロバレレノTCNQ)、テトラヒドロバレレノテトラシアノキノジメタン(テトラヒドロバレレノTCNQ)、1,4−ビス(ジシアノメチレン)−1,4−ジヒドロナフタレン(ベンゾTCNQ)、ビス(1,2,5−チアジアゾロ)テトラシアノキノジメタン(BTDA−TCNQ)、11,11,12,12−テトラシアノアントラキノジメタン、テトラニトロビフェノール、ジニトロビフェニル、ピクリン酸、トリニトロベンゼン、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、9−ジシアノメチレン−2,4,5,7−テトラニトロフルオレン、9−ジシアノメチレン−2,4,7−トリニトロフルオレン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレン、2,4,7−トリニトロフルオレンなどが挙げられる。
前記電子供与性の有機分子が前記炭化水素含有側鎖を有しない場合、前記電子受容性の有機分子として、前記炭化水素含有側鎖を有する電子受容性の有機分子が用いられる。前記炭化水素含有側鎖を有する電子受容性の有機分子としては、結晶状態の電荷移動錯体が2次元層状結晶を形成できる限りにおいては特に限定されるものではなく、例えば、2,5−ジエチル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(ジエチルTCNQ)などのような両末端に炭素数2以上の脂肪族炭化水素側鎖を有する電子受容性の有機分子;2,5−ジエトキシ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(ジエトキシTCNQ)などのような両末端に炭素数2以上の脂肪族炭化水素オキシ側鎖を有する電子受容性の有機分子;2−デシル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(デシルTCNQ)などのような一方の末端に炭素数2以上の脂肪族炭化水素側鎖を有する電子受容性の有機分子;2,5−ジクロロ−3,6−ジメチルベンゾキノン、2,5−ジブロモ−3,6−ジメチルベンゾキノン、2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ベンゾキノン(ジュロキノン)、2,5−ジメチル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(ジメチルTCNQ)、2,3,5,6−テトラメチル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(テトラメチルTCNQ)などのような両末端に炭素数1の脂肪族炭化水素側鎖を有する電子受容性の有機分子;2,5−ジメトキシ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(ジメトキシTCNQ)などのような両末端に炭素数1の脂肪族炭化水素オキシ側鎖を有する電子受容性の有機分子;2−トリフルオロメチル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(トリフルオロメチルTCNQ)、2−メチル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(メチルTCNQ)などのような一方の末端にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1の脂肪族炭化水素側鎖を有する電子受容性の有機分子が挙げられる。
前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方は、両末端に前記炭化水素含有側鎖(特に、ハロゲン原子で置換されていてもよい脂肪族炭化水素側鎖、ハロゲン原子で置換されていてもよい脂肪族炭化水素オキシ側鎖、およびハロゲン原子で置換されていてもよい脂肪族炭化水素チオ側鎖からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族炭化水素含有側鎖)を有することが好ましく、両末端に炭素数2以上の炭化水素含有側鎖(特に、炭素数2以上の脂肪族炭化水素含有側鎖)を有することがより好ましい。結晶状態の電荷移動錯体において、一方の末端のみに前記炭化水素含有側鎖を有する有機分子は、その炭化水素含有側鎖が結晶層の一方の面(例えば上面)から外方(例えば上方)へ向かって伸びるように配向するか、その炭化水素含有側鎖が結晶層の他方の面(例えば下面)から外方(例えば下方)へ向かって伸びるように配向するかによって、結晶の構造を大きく変化させる。そのため、一方の末端のみに前記炭化水素含有側鎖を有する有機分子を含む電荷移動錯体の結晶は、有機分子の配向方向が揃わないと、構造欠陥を含み易い。これに対し、両末端に前記炭化水素含有側鎖(特に炭素数2以上の脂肪族炭化水素含有側鎖)を有する有機分子は、対称性が高く、一方の末端の炭化水素含有側鎖が結晶層の一方の面(例えば上面)から外方(例えば上方)へ向かって伸びるように配向するか、その炭化水素含有側鎖が結晶層の他方の面(例えば下面)から外方(例えば下方)へ向かって伸びるように配向するかによって、結晶の構造をほとんど変化させないか、または全く変化させない。そのため、電荷移動錯体の結晶は、有機分子の配向方向が揃わなくとも、構造欠陥を含みにくい。電荷移動錯体の結晶を用いたトランジスタの電気伝導特性は、結晶の構造欠陥の影響を多分に受けるため、電荷移動錯体の結晶が構造欠陥を含みにくくなることは、高いトランジスタ性能を実現する上で有利に働くと期待できる。
前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が両末端に前記炭化水素含有側鎖を有する場合の中でも、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が両末端に同一の炭化水素含有側鎖(特に、炭素数2以上の脂肪族炭化水素含有側鎖)を有することが好ましい。これにより、前記炭化水素含有側鎖を有する有機分子の対称性がより高くなり、電荷移動錯体の結晶が構造欠陥をより含みにくくなる。このことは、より高いトランジスタ性能を実現する上で有利に働くと期待できる。
また、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が、ハロゲン原子で置換されていてもよい脂肪族炭化水素側鎖、ハロゲン原子で置換されていてもよい脂肪族炭化水素オキシ側鎖、およびハロゲン原子で置換されていてもよい脂肪族炭化水素チオ側鎖からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族炭化水素含有側鎖を有することが好ましく、炭素数2以上の脂肪族炭化水素含有側鎖を有することがより好ましく、炭素数4以上の脂肪族炭化水素含有側鎖を有することがさらに好ましい。これにより、結晶状態の電荷移動錯体が2次元層状結晶を形成し易くなる。前記脂肪族炭化水素含有側鎖は、ハロゲン原子で置換されていてもよい脂肪族炭化水素側鎖であることが好ましい。これにより、結晶状態の電荷移動錯体が2次元層状結晶をさらに形成し易くなる。
また、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が有する前記炭化水素含有側鎖の炭素数は、36以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。これにより、結晶状態の電荷移動錯体が2次元層状結晶を形成し易くなる。
なお、本出願書類において、「ハロゲン原子で置換されていてもよい(脂肪族)炭化水素側鎖」とは、環に結合した、ハロゲン原子で置換されていてもよい(脂肪族)炭化水素基を意味し、「ハロゲン原子で置換されていてもよい(脂肪族)炭化水素オキシ側鎖」とは、環に結合した、ハロゲン原子で置換されていてもよい(脂肪族)炭化水素オキシ基を意味し、「ハロゲン原子で置換されていてもよい(脂肪族)炭化水素チオ側鎖」とは、環に結合した、ハロゲン原子で置換されていてもよい(脂肪族)炭化水素チオ基を意味するものとする。また、本出願書類において、「(有機分子が)両末端に・・・側鎖を有する」とは、有機分子が複数の環が縮合または結合した構造を有する場合には、一方の端の環上の任意の位置に結合した側鎖と、他方の端の環上の任意の位置に結合したハロゲン原子で置換されていてもよい側鎖とを有することを意味し、有機分子がただ1つの環を有する場合には、その環に結合した側鎖と、そのメタ位またはパラ位に結合した側鎖とを有することを意味するものとする。
ここで、前記炭化水素含有側鎖の例、すなわち環に結合した、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素オキシ基、およびハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素チオ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素含有基の例としては、後段で一般式(1)中のR1及びR2の例として説明する各種の基が挙げられる。
電子供与性の有機分子と電子受容性の有機分子とからなり、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が前記炭化水素含有側鎖を有する電荷移動錯体であっても、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子における前記炭化水素含有側鎖を除いた部分の、長手方向の分子長の差が大きい場合(具体的には、電子供与性の有機分子が2,7−ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンであり、電子受容性の有機分子がp−クロラニルである場合)には、前述したように2次元層状結晶を形成しないことが確認されている。そのため、結晶状態の電荷移動錯体が2次元層状結晶を形成し易くなるように、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子における前記炭化水素含有側鎖を除いた部分の、長手方向の分子長の差は、小さいことが好ましく、具体的には、0.3nm以下であることが好ましく、0.1nm以下であることがより好ましい。なお、本出願書類において、「長手方向の分子長」は、X線結晶構造解析から得られた分子構造について、分子の長手方向に最も離れた両末端の2原子間の距離から求めた値を指すものとする。
〔一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体〕
次に、前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体について、以下に詳細に説明する。
前記一般式(1)中のR1はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素オキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素チオ基、または水素原子を表し、前記一般式(1)中のR2はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素オキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素チオ基を表す。
前記一般式(1)中のR1は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素オキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素チオ基であることが好ましい。これにより、前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体が両末端に炭化水素含有側鎖を有するものとなるため、電荷移動錯体の結晶が構造欠陥を含みにくくなり、電荷移動錯体の結晶を用いた高い性能のトランジスタを実現する上で有利に働くと期待できる。
前記一般式(1)中のR1およびR2は同一の置換基(特に炭素数2以上の脂肪族炭化水素含有基)であることが好ましい。これにより、前記炭化水素含有側鎖を有する有機分子の対称性がより高くなり、電荷移動錯体の結晶が構造欠陥をより含みにくくなる。このことは、より高いトランジスタ性能を実現する上で有利に働くと期待できる。
前記一般式(1)中のR1およびR2の少なくとも一方は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の脂肪族炭化水素オキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の脂肪族炭化水素チオ基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。これにより、結晶状態の電荷移動錯体が2次元層状結晶をさらに形成し易くなる。
前記炭化水素基は、炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜36の芳香族炭化水素基であるが、炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基は、飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖、または環状の脂肪族炭化水素基である。すなわち、前記脂肪族炭化水素基は、直鎖の飽和脂肪族炭化水素基、分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素基、環状の飽和脂肪族炭化水素基、直鎖の不飽和脂肪族炭化水素基、分岐鎖の不飽和脂肪族炭化水素基、または環状の不飽和脂肪族炭化水素基である。前記脂肪族炭化水素基は、好ましくは直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは直鎖の脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは直鎖の飽和脂肪族炭化水素基(直鎖のアルキル基)である。
前記脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜36であればよいが、好ましくは2〜24であり、より好ましくは4〜20である。前記脂肪族炭化水素基の炭素数がこれら数値範囲の下限以上である場合、結晶状態の電荷移動錯体が2次元層状結晶を形成し易くなる。また、前記脂肪族炭化水素基の炭素数がこれら数値範囲の下限以上である場合、有機溶媒に対する前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体の溶解性をより高くすることができる。したがって、一般式(1)のカルコゲノフェン誘導体を有機溶媒に溶解させた溶液を用いて電荷移動錯体を容易に製造することができる。前記脂肪族炭化水素基の炭素数がこれら数値範囲の上限以下である場合、有機溶媒に対する前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体の溶解性をより高くすることができる。したがって、一般式(1)のカルコゲノフェン誘導体を有機溶媒に溶解させた溶液を用いて電荷移動錯体を容易に製造することができる。
前記直鎖の飽和脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、n−ペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、n−オクタコシル基、n−ノナコシル基、n−トリアコンチル基、n−ドトリアコンチル基、n−ヘキサトリアコンチル基等が挙げられる。
前記分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素基の例としては、iso−プロピル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、iso−ペンチル基、t−ペンチル基、sec−ペンチル基、iso−ヘキシル基、sec−ヘプチル基、sec−ノニル基、5−(n−ペンチル)デシル基等が挙げられる。
前記環状の飽和脂肪族炭化水素基の例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
前記脂肪族炭化水素基には、飽和脂肪族炭化水素基、すなわちアルキル基と、不飽和脂肪族炭化水素基とが含まれる。前記不飽和脂肪族炭化水素基には、炭素−炭素二重結合を含むアルケニル基と、炭素−炭素三重結合を含むアルキニル基とが含まれる。前記不飽和脂肪族炭化水素基には、これらが組み合わされたもの、すなわち脂肪族炭化水素基中の一部に炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合を同時に含む場合も含まれる。前記脂肪族炭化水素基は、好ましくはアルキル基またはアルキニル基であり、より好ましくはアルキル基である。
前記直鎖の不飽和脂肪族炭化水素基の例としては、ビニル基、アリル基、エイコサジエニル基(例えば11,14−エイコサジエニル基)、4−ペンテニル基等の直鎖のアルケニル基;1−プロピニル基、1−ヘキシニル基、1−オクチニル基、1−デシニル基、1−ウンデシニル基、1−ドデシニル基、1−テトラデシニル基、1−ヘキサデシニル基、1−ノナデシニル基等の直鎖のアルキニル基が挙げられる。
前記分岐鎖の不飽和脂肪族炭化水素基の例としては、ゲラニル基(トランス−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−イル基)、ファルネシル基(トランス,トランス−3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−イル基)等の分岐鎖のアルケニル基等が挙げられる。
前記一般式(1)中のR1またはR2が不飽和脂肪族炭化水素基である場合、その不飽和脂肪族炭化水素基中の不飽和炭素−炭素結合が(R1またはR2が置換した)ベンゼン環と共役する位置に存在すること、すなわち不飽和炭素−炭素結合の一方の炭素原子が該ベンゼン環に直結していることが好ましい。この場合も、前記と同様に、前記不飽和脂肪族炭化水素基として、アルケニル基よりもアルキニル基の方がより好ましい。
前記炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基(無置換の炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基)、特に炭素数1〜36の無置換の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)であることが好ましいが、ハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素基、すなわちハロゲン置換脂肪族炭化水素基であってもよい。前記ハロゲン置換脂肪族炭化水素基とは、前記脂肪族炭化水素基の任意の位置の水素原子が、任意の数かつ任意の種類のハロゲン原子で置換されているものを意味する。
前記ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子、塩素原子、または臭素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子または臭素原子である。
前記ハロゲン置換脂肪族炭化水素基の例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、n−パーフルオロプロピル基、n−パーフルオロブチル基、n−パーフルオロペンチル基、n−パーフルオロオクチル基、n−パーフルオロデシル基、n−(ドデカフルオロ)−6−ヨードヘキシル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の炭素数は、6〜36であればよいが、好ましくは6〜24であり、より好ましくは6〜20である。これにより、結晶状態の電荷移動錯体が2次元層状結晶を形成し易くなる。
前記の炭素数6〜36の芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基(Ph)、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、p−トリル基、ベンジル基、これらの基の任意の位置の水素原子が、任意の数かつ任意の種類の前記ハロゲン原子で置換されているなどが挙げられる。
前記のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素オキシ基としては、前記のハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基の例として挙げた各種の基にオキシ基が結合してなる基が挙げられる。
前記のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素チオ基としては、前記のハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基の例として挙げた各種の基にチオ基が結合してなる基が挙げられる。
前記一般式(1)中のX1及びX2はそれぞれ独立に、硫黄原子、セレン原子、またはテルル原子を表すが、好ましくは硫黄原子またはセレン原子であり、より好ましくは硫黄原子である。
前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体の具体例を、以下の表1〜11に示す。
〔一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体の製造方法〕
前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体は、例えば、K. Takimiya, et al., J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, pp 3044-3050に記載の公知の方法により合成することができる。また、前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体は、例えば国際公開第2006/077888号に記載の方法に準じて得ることもできる。
例えば、下記一般式(2)
(上記式中、Yはハロゲン原子を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、硫黄原子、セレン原子、またはテルル原子を表す)
で表される化合物、例えば前記一般式(2)においてYがヨウ素原子である化合物を原料として、この化合物にアセチレン誘導体を作用させてカップリング反応を行うことにより、下記一般式(3)
(上記式中、R3及びR4はそれぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜34の脂肪族炭化水素基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、硫黄原子、セレン原子、またはテルル原子を表す)
で表される化合物を得ることができる。前記一般式(3)で表される化合物は、前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体のうちで、R1またはR2がベンゼン環と共役する位置に炭素−炭素三重結合を有する炭素数3以上のアルキニル基(ただしハロゲン原子で置換されていてもよい)である場合に相当する。したがって、この場合の一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体は、前記カップリング反応により得ることができる。
さらに、得られた一般式(3)で表される化合物を定法により還元(水素付加)することにより、前記一般式(1)においてR1またはR2がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3以上のアルケニル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3以上の飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基)である化合物が得られる。
前記一般式(3)で表される化合物の還元反応の条件、例えば還元反応に用いる反応試薬の種類及び量、及び反応溶媒、及びこれらの組合せを適宜選択すれば、還元反応を炭素−炭素三重結合が炭素−炭素二重結合となるまで進行させた状態で止めることも、還元反応を炭素−炭素三重結合を含む脂肪族炭化水素基が飽和脂肪族炭化水素基となるまで進行させることも可能である。
前記一般式(2)で表される化合物とエチレン誘導体とのカップリング反応も、前記一般式(2)で表される化合物とアセチレン誘導体とのカップリング反応と同様に進行する。この場合には、前記一般式(3)における炭素−炭素三重結合を炭素−炭素二重結合に置き換えたアルケニル化合物が得られる。このアルケニル化合物は、前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体のうちで、R1またはR2がベンゼン環と共役する位置に炭素−炭素二重結合を有する炭素数3以上のアルケニル基(ただしハロゲン原子で置換されていてもよい)である場合に相当する。したがって、この場合の一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体は、前記カップリング反応により得ることができる。
なお、前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体のうちで、R1が水素原子であり、R2がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基であるものは、J.Am.Chem.Soc.、134巻、16548頁、2012年に記載の公知の方法により合成することができる。
前記一般式(1)で表されるカルコゲノフェン誘導体の精製方法としては、特に限定されず、再結晶、カラムクロマトグラフィー、及び真空昇華精製等の公知の方法が採用でき、必要に応じてこれらの方法を組合わせて用いてもよい。
〔電荷移動錯体の結晶の製造方法〕
本発明の電荷移動錯体の結晶の製造方法は、前記の電荷移動錯体の結晶の製造方法であって、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の双方を含む溶液、または前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の双方を含む気体から、結晶を成長させる方法である。
前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の双方を含む溶液から結晶を成長させる方法としては、例えば、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の双方を加熱条件下で有機溶媒(例えばアセトニトリル)中に溶解させて飽和溶液を作製し、この飽和溶液を徐冷して過飽和状態にする方法を用いることができる。
前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の双方を含む気体から、結晶を成長させる方法としては、例えば、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の双方を同じ容器内に入れて共昇華させる方法を用いることができる。
他の電荷移動錯体の結晶の製造方法としては、例えば拡散法が挙げられる。また、電荷移動錯体の結晶の薄膜を形成できる、電荷移動錯体の結晶の製造方法としては、例えば、真空蒸着法、キャスト法、インクジェット法、スタンプ法、電着法、化学吸着法、粉末圧着法などが挙げられる。
〔有機半導体デバイス及びその製造方法〕
本発明の電荷移動錯体をエレクトロニクス用途の有機半導体として用いて、有機半導体デバイスを作製することができる。有機半導体デバイスは、本発明の電荷移動錯体を含む薄膜を形成する工程を含む製造方法によって製造することができる。有機半導体デバイスの製造において、電荷移動錯体を含む薄膜の形成方法には、前述した電荷移動錯体の結晶の薄膜の形成方法として説明した方法のいずれも採用することができる。
前記有機半導体デバイスとしては、例えば、有機電界効果トランジスタなどの有機トランジスタ、太陽電池デバイスなどの光電変換素子、有機ELデバイス、有機発光トランジスタデバイス、有機半導体レーザーデバイスなどが挙げられる。これらについて詳細に説明する。
(有機トランジスタ)
まず、本発明の電荷移動錯体を用いた有機トランジスタについて詳しく説明する。
本発明の電荷移動錯体を用いた有機トランジスタは、本発明の電荷移動錯体を含む少なくとも1つの半導体層(チャネル形成層)と、該半導体層に接して互いに離間するように配設された2つの電極、すなわち、ソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層におけるソース電極に接する表面とドレイン電極に接する表面との間の領域(チャンネル領域)に対向するように配設されたゲート電極と呼ばれるもう一つの電極とを備え、ソース電極及びドレイン電極間に流れる電流を、ゲート電極に印加する電圧によって制御するものである。
一般に、有機トランジスタとして、ゲート電極がゲート絶縁膜で半導体層と絶縁されている構造(Metal−InsuIator−Semiconductor;MIS構造)の有機トランジスタがよく用いられる。MIS構造のうちで絶縁膜に金属酸化膜を用いるものはMOS(Metal−Oxide−Semiconductor)構造と呼ばれる。他の構造の有機トランジスタとしては、半導体層に対してショットキー障壁を介してゲート電極が形成されている構造(Metal−Semiconductor;MES構造)もあるが、有機半導体を用いた有機トランジスタの場合、MIS構造がよく用いられる。
本発明の電界効果トランジスタは、MIS構造の有機トランジスタであり、本発明の電荷移動錯体を含む半導体層と、該半導体層に接して互いに離間するように配設されたソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層における前記ソース電極に接する表面と前記ドレイン電極に接する表面との間の領域に対向するように配設されたゲート電極と、前記半導体層とゲート電極との間に配設されたゲート絶縁膜とを備えている。
以下、図2を用いて本発明の電荷移動錯体を用いた有機トランジスタについてより詳細に説明する。
図2(a)〜図2(d)及び図2(f)に、本発明の電界効果トランジスタのいくつかの態様例の概略断面図を示す。図2(a)〜図2(d)及び図2(f)に示す各態様例の電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fは、ソース電極11、本発明の電荷移動錯体を含む少なくとも1つの半導体層12、ドレイン電極13、ゲート絶縁膜14、ゲート電極15、および基板16を備えている。
本発明の電荷移動錯体を用いた電界効果トランジスタ以外の有機トランジスタの態様例としての静電誘導トランジスタ(SIT)の態様例の概略断面図を図2(e)に示す。図2(e)に示す静電誘導トランジスタ10Eは、ソース電極11、本発明の電荷移動錯体を含む少なくとも1つの半導体層12、ドレイン電極13、およびゲート電極15を備えている。
なお、トランジスタ10A〜10Fにおける半導体層12、ゲート絶縁膜14、及び電極11,13,15の配置は、トランジスタ10A〜10Fの用途により適宜選択できる。
電界効果トランジスタ10A〜10D及び10Fは、基板16、ソース電極11、及びドレイン電極13と平行な方向に電流が流れるので、横型トランジスタと呼ばれる。電界効果トランジスタ10A及び電界効果トランジスタ10Fは、半導体層12の下面(基板16に近い側の面)上にソース電極11及びドレイン電極13が配置された構造となっており、この構造はボトムコンタクト構造と呼ばれる。電界効果トランジスタ10B及び電界効果トランジスタ10Cは、半導体層12の上面(基板16から遠い側の面)上にソース電極11及びドレイン電極13が配置された構造となっており、この構造はトップコンタクト構造と呼ばれる。電界効果トランジスタ10Dは、ソース電極11及びドレイン電極13の一方が半導体層12の上面上に配置され、他方が半導体層12の下面上に配設された構造となっており、この構造はトップ&ボトムコンタクト構造と呼ばれる。
電界効果トランジスタ10A、電界効果トランジスタ10B、及び電界効果トランジスタ10Dは、半導体層12の下側(基板16に近い側)にゲート電極15が配置された構造となっており、この構造はボトムゲート構造と呼ばれる。ボトムゲート構造では、単一の導電性基板(例えばシリコンウェハー)がゲート電極15と基板16とを兼ねてもよい。電界効果トランジスタ10C及び電界効果トランジスタ10Fは、半導体層12の上側(基板16から遠い側)にゲート電極15が配置された構造となっており、この構造はトップゲート構造と呼ばれる。
電界効果トランジスタ10Aは、ボトムコンタクト−ボトムゲート型電界効果トランジスタと呼ばれるものである。電界効果トランジスタ10Aは、基板16と、基板16の上面上に配設されたゲート電極15と、ゲート電極15の上面上に配設されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14の上面の一端部上に配設されたソース電極11と、ゲート絶縁膜14の上面の他端部上に配設されたドレイン電極13と、ゲート絶縁膜14の上面の中央部(両端部を除く部分)、ソース電極11の上面の一部、及びドレイン電極13の上面の一部の上に配設された半導体層12とを備えている。
電界効果トランジスタ10Bは、トップコンタクト−ボトムゲート型電界効果トランジスタと呼ばれるものである。電界効果トランジスタ10Bは、基板16と、基板16の上面上に配設されたゲート電極15と、ゲート電極15の上面上に配設されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14の上面上に配設された半導体層12と、半導体層12の上面の一部の上に互いに離間するように配設されたソース電極11及びドレイン電極13とを備えている。
電界効果トランジスタ10Cは、トップコンタクト−トップゲート型電界効果トランジスタと呼ばれるものである。電界効果トランジスタ10Cは、有機単結晶半導体を用いた電界効果トランジスタによく用いられる構造である。電界効果トランジスタ10Cは、基板16と、基板16の上面上に配設された半導体層12と、半導体層12の上面の一部の上に互いに離間するように配設されたソース電極11及びドレイン電極13と、半導体層12の上面(ただしソース電極11及びドレイン電極13が配設されている部分を除く)、ソース電極11の上面、及びドレイン電極13の上面の上に配設されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に配設されたゲート電極15とを備えている。
電界効果トランジスタ10Dは、トップ&ボトムコンタクト−ボトムゲート型電界効果トランジスタと呼ばれるものである。電界効果トランジスタ10Dは、基板16と、基板16の上面上に配設されたゲート電極15と、ゲート電極15の上面上に配設されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14の上面の一端部上に配設されたソース電極11と、ゲート絶縁膜14の上面(ただしソース電極11が配設されている部分を除く)及びソース電極11の上面の上に配設された半導体層12と、半導体層12の上面におけるソース電極11から遠い側の端部上に配設されたドレイン電極13とを備えている。
静電誘導トランジスタ10Eは、ソース電極11及びドレイン電極13と垂直な方向に電流が流れる、縦型の構造をもつ有機トランジスタの1種である。静電誘導トランジスタ10Eは、互いに平行にかつ離間するように配設されたソース電極11及びドレイン電極13と、ソース電極11及びドレイン電極13の間に挟持されるように配設された半導体層12と、ソース電極11及びドレイン電極13に平行なメッシュ状に半導体層12中に埋め込まれた複数のゲート電極15とを備えている。この静電誘導トランジスタ10Eは、半導体層12中の電流の流れが平面状に広がるので、図2(e)中に矢印で示すように一度に大量のキャリア18がソース電極11側からドレイン電極13側へ移動できる。また、この静電誘導トランジスタ10Eは、ソース電極11及びドレイン電極13が縦方向(半導体層12に垂直な方向)に並ぶように配されているので、ソース電極11とドレイン電極13との間の距離を短くできるため、応答が高速である。従って、この静電誘導トランジスタ10Eは、大電流を流す、あるいは高速のスイッチングを行うなどの用途に好ましく適用できる。なお、図2(e)には、基板を示していないが、通常の場合、静電誘導トランジスタ10Eにおけるソース電極11及びドレイン電極13の外側には、基板16と同様の基板が設けられる。
電界効果トランジスタ10Fは、ボトムコンタクト−トップゲート型電界効果トランジスタと呼ばれるものである。電界効果トランジスタ10Fは、基板16と、基板16の上面の一部の上に互いに離間するように配設されたソース電極11及びドレイン電極13と、基板16の上面(ただしソース電極11及びドレイン電極13が配設されている部分を除く)、ソース電極11の上面、及びドレイン電極13の上面の上に配設された半導体層12と、半導体層12の上面上に配設されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に配設されたゲート電極15とを備えている。
各態様例における各構成要素について説明する。
基板16は、その上に形成される各構成要素が剥離することなく保持できることが必要である。基板16としては、例えば、樹脂板、樹脂フィルム、紙、ガラス板、石英板、セラミック板などの絶縁性基板;金属または合金などからなる導電性基板上にコーティングなどにより絶縁層を形成した基板;樹脂と無機材料との組み合わせなどのような各種組み合わせからなる基板;半導体基板(例えばシリコンウェハー)などの導電性基板などが使用できる。前記樹脂板及び樹脂フィルムを構成する樹脂の例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。基板16として樹脂フィルムまたは紙を用いると、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fに可撓性を持たせることができ、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fがフレキシブルで軽量となり、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fの実用性が向上する。基板の厚みは、通常は1μm〜10mmであり、好ましくは5μm〜5mmである。
ソース電極11、ドレイン電極13、ゲート電極15には、導電性を有する材料が用いられる。前記導電性を有する材料としては、例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、タングステン、タンタル、ニッケル、コバルト、銅、鉄、鉛、錫、チタン、インジウム、パラジウム、モリブデン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、リチウム、カリウム、ナトリウムなどの金属及びそれらを含む合金;InO2、ZnO2、SnO2、ITO(酸化インジウムスズ)などの導電性酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアセチレンなどの導電性高分子化合物;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素などの半導体;カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェンなどの炭素材料などが使用できる。また、導電性高分子化合物や半導体は、ドーピングが施されたものであってもよい。そのドーピングに用いるドーパントとしては、例えば、塩酸、硫酸などの無機酸;スルホン酸などの酸性官能基を有する有機酸;PF5、AsF5、FeCl3などのルイス酸;ヨウ素などのハロゲン;リチウム、ナトリウム、カリウムなどの金属などが挙げられる。ホウ素、リン、砒素などはシリコンなどの無機半導体用のドーパントとしても多用されている。また、前記のドーパント中にカーボンブラックや金属粒子などの粒子を分散した導電性の複合材料も用いられる。
なお、半導体層12と接触するソース電極11及びドレイン電極13には、コンタクト抵抗を低減させるための適切な仕事関数の選択や、表面処理などが大切になる。
また、ソース電極11とドレイン電極13との間の距離(チャネル長)は、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eの特性を決める重要なファクターとなる。該チャネル長は、通常は0.01〜300μmであり、好ましくは0.1〜100μmである。チャネル長が短ければ取り出せる電流量は増えるが、逆にコンタクト抵抗の影響などの短チャネル効果が発生し、制御が困難となるため、適正なチャネル長が必要である。ソース電極11及びドレイン電極13の長さ(チャネル幅)は、通常は10〜10000μmであり、好ましくは100〜5000μmである。また、このチャネル幅は、電極の構造をくし型構造とすることなどにより、さらに長いチャネル幅を形成することが可能であり、必要な電流量やデバイスの構造などにより、適切な長さにする必要がある。
ソース電極11及びドレイン電極13のそれぞれの構造(形)について説明する。ソース電極11とドレイン電極13の構造はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
ボトムコンタクト構造の場合は、一般的にはリソグラフィー法を用いてソース電極11及びドレイン電極13を作製し、また、ソース電極11及びドレイン電極13は直方体に形成することが好ましい。最近は各種印刷方法による印刷精度が向上してきており、インクジェット印刷、グラビア印刷またはスクリーン印刷などの手法を用いて精度よくソース電極11及びドレイン電極13を作製することが可能となってきている。半導体層12上にソース電極11及びドレイン電極13のあるトップコンタクト構造の場合は、シャドウマスクなどを用いて前記導電性を有する材料を蒸着することにより、ソース電極11及びドレイン電極13を作製できる。インクジェット印刷などの手法を用いてソース電極11及びドレイン電極13の電極パターンを直接印刷形成することも可能となってきている。ソース電極11及びドレイン電極13の長さは前記のチャネル幅と同じである。ソース電極11及びドレイン電極13の幅には特に規定は無いが、電気的特性を安定化できる範囲で、デバイスの面積を小さくするためには短い方が好ましい。ソース電極11及びドレイン電極13の幅は、通常は0.1〜1000μmであり、好ましくは0.5〜100μmである。ソース電極11及びドレイン電極13の厚みは、通常は0.1〜1000nmであり、好ましくは1〜500nmであり、より好ましくは5〜200nmである。ソース電極11及びドレイン電極13には、配線が連結されているが、配線もソース電極11及びドレイン電極13とほぼ同様の材料により作製される。
ゲート絶縁膜14としては、絶縁性を有する材料が用いられる。前記絶縁性を有する材料としては、例えば、ポリパラキシリレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などのポリマー及びこれらポリマーの構成単位を2種以上組み合わせた共重合体;二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタルなどの(強誘電性でない)酸化物;SrTiO3、BaTiO3などの強誘電性酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウムなどの窒化物;硫化物、フッ化物などの誘電体などを使用できる。また、前記絶縁性を有する材料として、ポリマー中に前記誘電体(ただし前記ポリマーとは異なる材料)の粒子を分散させた材料も使用できる。前記絶縁性を有する材料としては、リーク電流を少なくするために電気絶縁特性が高いものが好ましく、これにより、ゲート絶縁膜14の膜厚を薄膜化し、絶縁容量を高くすることができ、取り出せる電流を多くすることができる。また半導体の移動度を向上させるためには、ゲート絶縁膜14は、当該ゲート絶縁膜14の表面の表面エネルギーを低下させることができる、凹凸がないスムースな膜であることが好ましい。その為に自己組織化単分子膜のゲート絶縁膜14や、2層構成のゲート絶縁膜14を形成させる場合がある。ゲート絶縁膜14の厚みは、材料によって異なるが、通常は0.1nm〜100μmであり、好ましくは0.5nm〜50μmであり、より好ましくは1nm〜10μmである。
半導体層12は、本発明の電荷移動錯体を含む薄膜である。半導体層12の構造は、本発明の電荷移動錯体の結晶の薄膜からなる層のみを有する単層構造であっても、本発明の電荷移動錯体の結晶の薄膜からなる層を含む複数の層を有する複層構造であってもよいが、前記単層構造であることがより好ましい。
また、半導体層12の厚みは、必要な機能を失わない範囲で、薄いほど好ましい。電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fなどのような横型の有機トランジスタにおいては、半導体層12の厚みが所定以上の厚みを有していれば有機トランジスタの特性は厚みに依存しない一方、半導体層12の厚みが厚くなると漏れ電流が増加してくることが多いため、半導体層12の厚みが適当な範囲内にあることが好ましい。半導体層12の厚みは、半導体層12に必要とされる機能を半導体層12が果たすために、通常は0.1nm〜10μmであり、好ましくは0.5nm〜3μmであり、より好ましくは1nm〜1μmである。
電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eでは、上述した各構成要素の間や、上述した各構成要素の露出した表面に必要に応じて他の層を設けてもよい。例えば、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eにおける半導体層12上に直接または他の層を介して、保護層を形成してもよい。これにより、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eの電気的特性に対する湿度などの外気の影響を小さくして、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eの電気的特性を安定化させることができる。また、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eのオン/オフ比などの電気的特性を向上させることができる。
前記保護層を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリオレフィンなどの各種樹脂;酸化珪素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物;窒化珪素などの窒化物などの誘電体などが好ましく、酸素の透過率、水分の透過率、及び吸水率の小さな樹脂(ポリマー)がより好ましい。前記保護層を構成する材料として、有機ELディスプレイ用に開発されているガスバリア性保護材料も使用できる。保護層の厚みは、その目的に応じて任意の厚みを採用できるが、通常100nm〜1mmである。
また、半導体層12が形成される表面(基板16の表面、ゲート絶縁膜14の表面など)に、半導体層12の形成前に予め表面改質または表面処理を行うことにより、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eの特性を向上させることが可能である。例えば、半導体層12が形成される表面の親水性/疎水性の度合いを調整することにより、その表面に形成される半導体層12の質(例えば、半導体層12を構成する薄膜の膜質や成膜性)を改良することができる。特に、有機半導体材料からなる半導体層12は、分子の配向などのような層の状態によってその特性が大きく変わることがある。そのため、半導体層12が形成される表面への表面処理によって、半導体層12が形成される表面とその表面上に形成される半導体層12との界面部分における分子配向が制御されると共に、半導体層12が形成される基材(基板16やゲート絶縁膜14など)中のトラップ部位が低減され、これにより、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eのキャリア移動度などの特性が改良されるものと考えられる。トラップ部位とは、未処理の基材中に存在する例えば水酸基などの官能基をさす。半導体層12が形成される基材中にこのような官能基が存在すると、電子が該官能基に引き寄せられ、この結果として、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eのキャリア移動度が低下する。従って、半導体層12が形成される基材中のトラップ部位を低減することも、電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eのキャリア移動度などの特性改良には有効な場合が多い。
前記の半導体層12が形成される基材の表面処理としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシランなどによる自己組織化単分子膜処理;ポリマーなどによる表面処理;塩酸、硫酸、酢酸などの酸による酸処理;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどのアルカリによるアルカリ処理;オゾン処理;フッ素化処理;酸素プラズマやアルゴンプラズマなどのプラズマによるプラズマ処理;ラングミュア・ブロジェット膜の形成処理;その他の絶縁体や半導体の薄膜を形成する処理;機械的処理;コロナ放電などの電気的処理;繊維などを利用したラビング処理など、及び、これら処理の組み合わせを挙げることができる。
前記の電界効果トランジスタ10A〜10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eにおいて、基材に各種の層を設ける方法(基板16上にゲート絶縁膜14を設ける方法、ゲート絶縁膜14上に半導体層12を設ける方法など)としては、前記した真空プロセス、溶液プロセスを適宜採用できる。
(有機トランジスタの製造方法)
次に、本発明に係る有機トランジスタの製造方法について、図2(b)に示す態様例のトップコンタクト−ボトムゲート型電界効果トランジスタ10Bを例として、図3に基づき以下に説明する。この製造方法は、前記した電界効果トランジスタ10A,10C,10D,10Fおよび静電誘導トランジスタ10Eなどの他の態様の有機トランジスタにも同様に適用しうるものである。
(1)基板16の用意及び基板16の表面処理
電界効果トランジスタ10Bの製造方法では、まず基板16を用意し(図3(a)参照)、基板16上に必要な各種の層や電極を設けることで電界効果トランジスタ10Bを作製する。基板16としては、前述したものが使用できる。この基板16上に前述の表面処理などを行うことも可能である。基板16の厚みは、必要な機能を妨げない範囲で薄い方が好ましい。基板16の厚みは、基板16を構成する材料によっても異なるが、通常は1μm〜10mmであり、好ましくは5μm〜5mmである。また、必要に応じて、基板16に電極の機能を持たせるようにすることもできる。
(2)ゲート電極15の形成
次に、基板16上にゲート電極15を形成する(図3(b)参照)。ゲート電極を構成する材料としては、前述した材料が用いられる。ゲート電極15を形成する方法としては、各種の方法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、熱転写法、印刷法、ゾルゲル法などが採用できる。ゲート電極15を構成する材料(電極材料)の層を形成する時、またはその層を形成した後に、必要に応じて所望の形状となるよう層をパターニングすることが好ましい。層のパターニングの方法としても、各種の方法を用いうるが、例えば、フォトレジストのパターニングとエッチングとを組み合わせたフォトリソグラフィー法などが挙げられる。また、シャドウマスクを用いた蒸着法:スパッタ法;インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷などの印刷法;マイクロコンタクトプリンティング法などのソフトリソグラフィーの手法;またはこれら手法を複数組み合わせた手法を利用して、層をパターニングすることも可能である。ゲート電極15の厚みは、ゲート電極15を構成する材料によっても異なるが、通常は0.1nm〜10μmであり、好ましくは0.5nm〜5μmであり、より好ましくは1nm〜3μmである。また、単一の導電性基板がゲート電極15と基板16とを兼ねるような場合には、その単一の導電性基板の厚みは、上述したゲート電極15の厚みの範囲より厚くてもよい。
(3)ゲート絶縁膜14の形成
次に、ゲート電極15上にゲート絶縁膜14を形成する(図3(c)参照)。ゲート絶縁膜14を構成する材料としては、前述した材料が用いられる。ゲート絶縁膜14の形成には、各種の方法を用いることができる。ゲート絶縁膜14の形成に用いることができる方法としては、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、キャスト、バーコート、ブレードコーティングなどの塗布法;スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェットなどの印刷法;真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法、化学気相成長(CVD)法などのドライプロセス法などの各種の方法が挙げられる。ゲート絶縁膜14の形成方法として、その他、ゾルゲル法;アルミニウム上にアルマイト形成する方法や、シリコン上に酸化珪素を形成する方法のように金属または半金属の表層を熱酸化法などにより酸化させて酸化物膜を形成する方法なども採用できる。
なお、ゲート絶縁膜14と半導体層12とが接する部分においては、ゲート絶縁膜14と半導体層12との界面で半導体層12を構成する分子を良好に配向させるために、ゲート絶縁膜14に所定の表面処理を行うこともできる。ゲート絶縁膜14の表面処理の手法としては、基板16の表面処理と同様のものを用いることができる。ゲート絶縁膜14の厚みは、ゲート絶縁膜14の電気容量をあげることで、取り出す電気量を増やすことができるため、できるだけ薄いことが好ましい。ただし、ゲート絶縁膜14の厚みが薄いほど、リーク電流が増えるため、ゲート絶縁膜14の厚みは、その機能を損なわない範囲で薄い方が好ましい。ゲート絶縁膜14の厚みは、通常は0.1nm〜100μmであり、好ましくは0.5nm〜50μmであり、より好ましくは5nm〜10μmである。
(4)半導体層12の形成
次に、ゲート絶縁膜14上に、有機半導体材料または薄膜形成用組成物を用いて薄膜を形成し、半導体層12を得る(図3(d)参照)。半導体層12を形成するにあたっては、前述した本発明の薄膜の形成方法を用いることができる。この工程では、薄膜(半導体層)が形成される物体(被着物)が図3(c)に示すゲート絶縁膜14であり、薄膜(半導体層)が形成される表面(被着面)がゲート絶縁膜14の上面である。
(5)半導体層12の後処理
このように形成された半導体層12(図3(d)参照)は、後処理によりさらに特性を改良することが可能である。例えば、半導体層12の後処理として熱処理を行うことにより、半導体層12の半導体特性の向上や安定化を図ることができる。この理由は、半導体層12を構成する薄膜の形成時に生じた膜中の歪みが緩和されること、半導体層12中のピンホールなどが低減されること、半導体層12中の配列・配向が制御できると考えらえていることなどによる。したがって、電界効果トランジスタ10Bの製造時には、前記熱処理を行うことが電界効果トランジスタ10Bの特性の向上のためには効果的である。前記熱処理は、半導体層12を形成した後に、半導体層12を含む積層体(ここでは図3(d)に示す積層体)を加熱することによって行う。前記熱処理の温度は、特に制限はないが、通常は室温以上150℃以下であり、好ましくは40〜120℃であり、より好ましくは45〜100℃である。前記熱処理の時間は、特に制限はないが、通常は10秒以上24時間以下であり、好ましくは30秒以上3時間以下である。前記熱処理の雰囲気に関しては、大気中で熱処理を行ってもよいし、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気下で熱処理を行ってもよい。その他、溶媒蒸気によって、半導体層12の形状を制御することなども可能である。
また、半導体層12のその他の後処理方法として、酸素などの酸化性気体、水素などの還元性気体、酸化性液体、あるいは、還元性液体などを用いて半導体層12を処理することにより、酸化あるいは還元による半導体層12の特性変化を誘起することもできる。これは、例えば半導体層12中のキャリア密度の増加あるいは減少の目的で利用できる。
また、ドーピングと呼ばれる手法において、微量のドーパント(元素、原子団、分子、または高分子)を半導体層12に加えることにより、半導体層12の特性を変化させることができる。例えば、酸素などの酸化性気体;水素などの還元性気体;塩酸、硫酸、スルホン酸などの酸;PF5、AsF5、FeCl3などのルイス酸;ヨウ素などのハロゲン;ナトリウム、カリウムなどの金属;テトラチアフルバレン(TTF)やフタロシアニンなどのドナー化合物などのドーパントを半導体層12にドーピングすることができる。これは、半導体層12にガス状態のドーパントを接触させる方法(ドーパントがガスである場合)、溶液状態のドーパントに半導体層12を浸す方法(ドーパントが溶液状態である場合)、電気化学的なドーピング処理をする方法などにより達成できる。これらのドーパントは、必ずしも半導体層12の形成後に添加しなくてもよく、半導体層12の材料(有機半導体材料)の合成時に添加したり、薄膜形成用組成物を用いて半導体層12を形成する場合には、その薄膜形成用組成物に添加したり、半導体層12を形成する工程段階で添加したりしてもよい。また、半導体層12を形成する材料(有機半導体材料)にドーパントを添加して共蒸着したり、半導体層12を形成する時の周囲の雰囲気にドーパントを混合したり(ドーパントを存在させた環境下で半導体層12を形成する)、さらにはドーパントのイオンを真空中で加速して半導体層12に衝突させてドーピングしたりすることも可能である。
これらのドーピングの効果は、キャリア密度の増加あるいは減少による電気伝導度の変化、キャリアの極性の変化(p型、n型)、フェルミ準位の変化などが挙げられる。
(6)ソース電極11及びドレイン電極13の形成
次に、半導体層12上にソース電極11及びドレイン電極13を形成する(図3(e)参照)。ソース電極11及びドレイン電極13の形成方法などは、ゲート電極15の形成方法などに準じたものとすることができる。また、ソース電極11及びドレイン電極13の形成においては、半導体層12との接触抵抗を低減するために、各種の添加剤などを用いることが可能である。
(7)保護層17の形成
上述したソース電極及びドレイン電極13を形成する工程で、電界効果トランジスタ10B(図2(b)参照及び図3(e)参照)が完成するが、必要に応じて、ソース電極11及びドレイン電極13の形成後に、半導体層12の上面における露出している部分、ソース電極11の上面、及びドレイン電極13の上面の上に保護層17を形成してもよい(図3(f)参照)。半導体層12の上面における露出している部分、ソース電極11の上面、及びドレイン電極13の上面の上に保護層17を形成すると、外気の影響を最小限にでき、また、電界効果トランジスタ10Bの電気的特性を安定化できるという利点がある。
保護層17の材料としては、前述のものが使用される。また、保護層17の厚みは、その目的に応じて任意の厚みを採用できるが、通常は100nm〜1mmである。
保護層17を形成する方法としては、各種の方法を採用しうるが、保護層17が樹脂からなる場合には、例えば、樹脂を含有する溶液を塗布した後に乾燥させて樹脂層とする方法;樹脂のモノマーを塗布あるいは蒸着した後に重合させる方法などが挙げられる。樹脂層の形成後に架橋処理を行ってもよい。保護層17が無機物からなる場合には、保護層17を形成する方法として、例えば、スパッタリング法、蒸着法などの真空プロセスによる形成方法;ゾルゲル法などの溶液プロセスによる形成方法なども用いることができる。
有機トランジスタにおいては、半導体層上の他、各構成要素の間にも、必要に応じて保護層を設けることができる。そのような保護層は有機トランジスタの電気的特性の安定化に役立つ場合がある。
本発明の電界効果トランジスタは、メモリー回路デバイス、信号ドライバー回路デバイス、信号処理回路デバイスなどの、デジタルデバイスまたはアナログデバイスとしても利用できる。さらにこれらを組み合わせることにより、ディスプレイや、IC(集積回路)カードや、ICタグなどの作製が可能となる。さらに、本発明の電界効果トランジスタは、化学物質などの外部刺激によりその特性に変化を起こすことができるので、センサーとしての利用も可能である。
(光電変換素子)
本発明の電荷移動錯体は、その半導体特性を利用することにより、光電変換素子に利用可能である。前記光電変換素子としては、太陽電池、固体撮像デバイスであるイメージセンサとして動画や静止画などの映像信号をデジタル信号へ変換する機能を有する電荷結合デバイス(CCD)などが挙げられる。
本発明の光電変換素子は、互いに離間するように配設された陰極および陽極と、これら陰極および陽極の間に配設された本発明の電荷移動錯体を含む半導体層からなる発電層とを備えている。本発明の電荷移動錯体を含む半導体層は、本発明の電荷移動錯体の薄膜のみからなる単層膜であってもよく、本発明の電荷移動錯体の層と他の半導体材料の層とからなる積層膜であってもよく、本発明の電荷移動錯体と他の半導体材料との混合物からなる混合膜であってもよい。
図4に、光電変換素子の態様例(光電変換素子20)の概略断面図を示す。
光電変換素子20は、基板21と、基板21の上面上に形成された正極22と、正極22の上面上に形成された本発明の電荷移動錯体を含む半導体層からなる発電層23と、発電層23の上面上に形成された負極24とを備えている。発電層23は、正極22と負極24との間に挟まれており、光を吸収して電荷を発生および輸送する活性層26を備えている。活性層26は、本発明の電荷移動錯体を含む半導体層である。発電層23は、活性層26のみからなっていてもよいが、図4に示すように、電気特性の改良のために、正孔を捕集する正極22と活性層26との間に、電子をブロックして正孔のみ伝導するp型半導体層からなる電極界面層25が設けられ、電子を捕集する負極24と活性層26との間に、正孔をブロックして電子のみ伝導するn型半導体層からなる電極界面層27が設けられていることが好ましい。
基板21は、正極22、発電層23、および負極24を支持するためのものである。任意の材料により形成することが可能である。基板21の材料の例を挙げると、ガラス、サファイア、チタニアなどの無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネンなどの有機材料;紙、合成紙などの紙材料;ステンレス、チタン、アルミニウムなどの金属に、絶縁性を付与するために表面をコート或いはラミネートしたものなどの複合材料などが挙げられる。なお、基板21の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、基板21の形状及び寸法は、制限なく、任意に設定することができる。
正極22および負極24は、導電性を有する任意の材料により形成することが可能である。正極22および負極24の材料の例を挙げると、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウムなどの金属またはそれらの合金;酸化インジウムや酸化錫などの金属酸化物、あるいはその合金(ITO);ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性高分子;前記導電性高分子にドーパント(塩酸、硫酸、スルホン酸などの酸;FeCl3などのルイス酸;ヨウ素などのハロゲン;ナトリウム、カリウムなどの金属など)を添加したもの;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブなどの導電性粒子をポリマーバインダーなどのマトリクスに分散した導電性の複合材料などが挙げられる。なお、正極22および負極24の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
光電変換素子において、正極22および負極24は、基板21上に少なくとも一対(少なくとも2個)設けられている。この少なくとも一対の正極22および負極24の間に活性層26が設けられている。正極22および負極24のうち、少なくとも一方は透明電極(即ち、発電層23が吸収する光を透過させる)である。透明電極の材料を挙げると、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの酸化物;透明金属薄膜などが挙げられる。また、透明電極の光透過率は、制限は無いが、光電変換素子の発電効率を考慮すると、80%以上であることが好ましい。なお、光透過率は、通常の分光光度計で測定可能できる。
正極22および負極24は、活性層26内に生じた正孔及び電子を捕集して光起電力を生じさせる機能を有するものである。したがって、正極22および負極24の材料としては、正孔及び電子を捕集するのに適した材料を用いることが好ましい。正孔の捕集に適した正極22の材料を挙げると、例えば、金(Au)、酸化インジウムスズ(ITO)などのような高い仕事関数を有する材料が挙げられる。一方、電子の捕集に適した負極24の材料を挙げると、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)などのような低い仕事関数を有する材料が挙げられる。
なお、正極22および負極24の形成方法に制限はない。正極22および負極24は、例えば、真空蒸着、スパッタなどのドライプロセスにより形成することができる。また、正極22および負極24は、例えば、導電性インクなどを用いたウェットプロセスにより形成することもできる。この際、前記導電性インクとしては、任意のものを使用することができ、例えば、導電性高分子、金属粒子分散液などを用いることができる。
活性層26は、通常は、p型半導体とn型半導体との2種以上の半導体を有してなる層である。この活性層26は、単一の層のみによって構成されていてもよく、2つ以上の層によって構成されていてもよい。また、活性層26には、本発明の効果を著しく損なわない限り、活性以外の成分を含有していてもよい。活性層26を構成する半導体は、本発明の電荷移動錯体を含んでいる。本発明の電荷移動錯体は、両極性半導体やn型半導体として機能しうることから、活性層26を構成するp型半導体としても、活性層26を構成するn型半導体としても使用できる。すなわち、活性層26は、例えば、p型半導体として機能する本発明の電荷移動錯体と(本発明の電荷移動錯体でない)n型半導体とで構成された活性層、n型半導体として機能する本発明の電荷移動錯体と(本発明の電荷移動錯体でない)p型半導体とで構成された活性層、p型半導体として機能する本発明の電荷移動錯体とn型半導体として機能する本発明の電荷移動錯体とで構成された活性層などとすることができる。
単一の層に2種以上の半導体を含む場合、使用する2種以上の半導体の比率に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、例えば2種の半導体を使用する場合、その2種の半導体の使用比率は、「一方の半導体/他方の半導体」で表わされる体積比で、通常は1/99以上であり、好ましくは5/95以上であり、より好ましくは10/90以上である。また、前記体積比は、通常は99/1以下であり、好ましくは95/5以下であり、より好ましくは90/10以下である。特に前記2種の半導体がp型半導体およびn型半導体である場合、それぞれの相が連続相になるためには両者の体積が極端に違わない方が好ましく、このため、前記体積比は、更に好ましくは30/70以上、特に好ましくは40/60以上であり、また、更に好ましくは70/30以下、特に好ましくは60/40以下である。
活性層26の具体的な構成は、その光電変換素子のタイプにより様々である。活性層26の構成の例を挙げると、バルクヘテロ接合型、積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型、ハイブリッド型などが挙げられる。
バルクヘテロ接合型は、単一の層内に、p型半導体とn型半導体とを含んで構成されている。そして、p型の半導体とn型の半導体とが相分離した構造となっていて、当該相の界面でキャリア分離が起こり、各相において正電荷(正孔)と負電荷(電子)とが正極22および負極24まで輸送されるものである。
なお、バルクヘテロ接合型の活性層26において、その相分離構造は、光吸収過程、励起子の拡散過程、励起子の解離(キャリア分離)過程、キャリア輸送過程などに対する影響がある。したがって、相分離構造を最適化することにより、良好な発光効率を実現することができるものと考えられる。
前記積層型(ヘテロpn接合型)は、活性層26が2以上の層から構成されていて、少なくとも一つの層がp型半導体により形成され、他の層がn型半導体により形成されているものである。そして、当該p型半導体からなる層とn型半導体からなる層との境界にはp型半導体とn型半導体との相界面が形成されて、当該相界面でキャリア分離が起こるようになっている。
また、バルクヘテロ接合型と積層型とを組み合わせることも可能である。例えば、活性層26を2以上の層から構成すると共に、そのうちの少なくとも一層にp型の半導体とn型半導体とを含有させ、当該p型半導体とn型半導体とが相分離するように構成することも可能である。この場合、積層した層間に形成される相界面と、p型半導体とn型半導体との両方を含む相内における相界面との両方でキャリア分離が生じるようになっている。あるいは、この場合、例えば積層した層間において一方のキャリアをブロックして、電気取り出し効率を向上させることも期待できる。
前記ショットキー型は、正極22および負極24の近傍にショットキー障壁が形成され、この部分の内部電場でキャリア分離を行なうものである。正極22および負極24としてショットキー障壁を形成するものを用いれば、活性層26は、2種以上の半導体を備えて構成すれば、任意である。ショットキー型における活性層26の具体的な構成は、前記のバルクヘテロ接合型、積層型、および両者を組み合わせた型のいずれを採用することも可能であり、特に高い特性(例えば、変換効率など)が期待できる。
ハイブリッド型は、活性層26に本発明の電荷移動錯体を含む有機半導体を含有させると共に、例えばチタニア、酸化亜鉛などの無機粒子を含有させるものである。これにより、活性層26は、本発明の電荷移動錯体を含む有機半導体と無機粒子との混合膜として構成される。無機粒子は、耐久性に優れており、また、各種ナノ粒子(ナノスケールの粒子)を利用可能である。さらに、無機粒子は、キャリア移動度が大きいものが多く、このため、ハイブリッド型では光電変換素子の高効率化が期待できる。なお、この際に用いる無機粒子に制限は無いが、通常は、ナノ粒子を用いることが好ましい。
活性層26の厚みは、いずれのタイプの活性層26であっても特に制限はないが、光吸収が十分で、光吸収により生じた電荷を失活させないために、通常は5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常は10μm以下、好ましくは5μm以下である。
電極界面層(p型半導体層)25を構成するp型半導体材料としては、活性層26で生成した正孔を効率よく正極22へ輸送できるものが好ましい。そのためには、前記p型半導体材料は、正孔移動度が高いこと、導電率が高いこと、正極との間の正孔注入障壁が小さいこと、活性層26からp型半導体層への正孔注入障壁が小さいこと、などの性質を有することが好ましい。
さらに、電極界面層25を通して活性層26に光を取り込む場合には、前記p型半導体材料として透明なp型半導体材料を用いることが好ましい。通常は光のうちでも可視光を活性層26に取り込むことになるため、前記の透明なp型半導体材料は、電極界面層25を透過する可視光の透過率が、通常は60%以上であり、好ましくは80%以上である。
さらに、光電変換素子の製造コストの抑制、大面積化などを実現するためには、前記p型半導体材料として有機半導体材料を用い、電極界面層25をp型有機半導体層として形成することが好ましい。
このような観点から、前記p型半導体材料の好適な例を挙げると、ポルフィリン化合物またはフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの化合物は、中心金属を有していてもよいし、無金属のものでもよい。ポルフィリン化合物またはフタロシアニン化合物の具体例を挙げると、29H,31H−フタロシアニン、銅(II)フタロシアニン、亜鉛(II)フタロシアニン、チタンフタロシアニンオキシド、銅(II)4,4’,4'',4'''−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物;テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポルフィリンなどのポルフィリン化合物;などが挙げられる。
また、ポルフィリン化合物及びフタロシアニン化合物以外の好ましいp型半導体材料の例としては、正孔輸送性高分子にドーパントを混合した系が挙げられる。この場合、正孔輸送性高分子の例としては、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどが挙げられる。一方、ドーパントの例としては、ヨウ素;ポリ(スチレンスルホン酸)、カンファースルホン酸などの酸;PF5、AsF5、FeCl3などのルイス酸;などが挙げられる。なお、p型半導体材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電極界面層25の厚みは、制限はないが、通常は3nm以上であり、好ましくは10nm以上である。電極界面層25の厚みが薄すぎると、電極界面層25が不均一な層となる可能性がある。また、電極界面層25の厚みは、通常は200nm以下であり、好ましくは100nm以下である。電極界面層25の厚みが厚すぎると、光透過率が低下したり、直列抵抗が増大したりする可能性がある。
一方、電極界面層(n型半導体層)27に求められる役割は、活性層26で光を吸収して生成する励起子(エキシトン)が負極により消光されるのを防ぐことにある。そのためには、電子供与体及び電子受容体が有する光学的ギャップより大きい光学的ギャップを、電極界面層27を構成するn型半導体材料が有することが好ましい。
さらに、電極界面層27を通して活性層26に光を取り込む場合には、電極界面層25と同様に、前記n型半導体材料として透明な材料を用いることが好ましい。
このような観点から、前記n型半導体材料の好適な例を挙げると、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などの電子輸送性を示す有機化合物;TiO2などの無機半導体などが挙げられる。なお、n型半導体材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電極界面層27の厚みは、制限はないが、通常は2nm以上、好ましくは5nm以上であり、また、通常は200nm以下、好ましくは100nm以下である。電極界面層27の厚みをこのような範囲とすることにより、正極22より入射した光が活性層26で吸収されずに透過した場合、負極24で反射されて再び活性層26に戻ることによる光干渉効果を活用することが可能である。
電極界面層25および電極界面層27を、本発明の電荷移動錯体を含む層とすることも可能である。
光電変換素子は、上述した基板21、正極22、負極24、活性層26、電極界面層25および27以外の構成部材を備えていてもよい。例えば、光電変換素子は、外気の影響を最小限にするために、保護膜をさらに備えていてもよい。前記保護層は、例えば、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン−ポリビニルアルコール共重合体などのポリマーからなるポリマー膜;酸化珪素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物からなる無機酸化膜;窒化珪素等の窒化物からなる窒化膜;これら膜の積層膜などにより構成することができる。なお、これらの保護層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、前記の保護膜の形成方法に制限はない。例えば、前記保護膜をポリマー膜とする場合には、前記保護膜の形成方法として、例えば、ポリマー溶液の塗布乾燥による形成方法、モノマーを塗布または蒸着して重合する形成方法などが挙げられる。また、ポリマー膜の形成に際しては、前記形成方法の後にさらに架橋処理を行なったり、ポリマー膜の多層膜を形成したりすることも可能である。一方、保護膜を無機酸化膜や窒化膜などの無機物膜とする場合には、前記保護膜の形成方法として、例えば、スパッタ法、蒸着法などの真空プロセスでの形成方法;ゾルゲル法に代表される溶液プロセスでの形成方法などを用いることができる。
また、前記光電変換素子が太陽電池である場合は、例えば紫外線を透過させない光学フィルタを前記光電変換素子に設けることが好ましい。これは、紫外線は一般に太陽電池の劣化を促進することが多いため、この紫外線を光学フィルタにより遮断することで太陽電池を長寿命化させることができるからである。
(有機ELデバイス)
本発明の電荷移動錯体は、有機ELデバイスにも利用可能である。有機ELデバイスは、固体で自己発光型の大面積カラー表示や照明などの用途に利用できることが注目され、数多くの開発がなされている。有機ELデバイスの構成としては、陰極と陽極からなる対向電極の間に、発光層及び電荷輸送層の2層を有する構造のもの;対向電極の間に積層された電子輸送層、発光層及び正孔輸送層の3層を有する構造のもの;及び3層以上の層を有する構造のものなどが知られており、また発光層が単層であるものなどが知られている。本発明の有機半導体デバイスを、有機ELデバイスとして利用する場合において、本発明の電荷移動錯体を含む薄膜は、前記電荷輸送層、または、電子輸送層として機能し得る。
(有機半導体レーザーデバイスについて)
本発明の電荷移動錯体は、半導体特性を有することから、有機半導体レーザーデバイスへの利用も期待される。すなわち、本発明の電荷移動錯体を用いた有機半導体デバイスに、共振器構造を組み込み、効率的にキャリアを注入して励起状態の密度を十分に高めることができれば、光が増幅されレーザー発振にいたることが期待される。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本願発明者らは、脂肪族炭化水素側鎖を有する有機分子が、高い溶剤可溶性および2次元的な結晶成長様式を示すことに着目し、この有機分子を電荷移動錯体の構成分子とすることで2次元的な結晶成長を示す電荷移動錯体の作製に成功した。
本実施例では、ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)骨格の両末端に脂肪族炭化水素側鎖を導入したカルコゲノフェン誘導体である、以下の構造式
で表される2,7−ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(以下、「C8BTBT」と略記する)を電子供与性の有機分子として使用し、このC8BTBTに以下の構造式
で表される7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(以下、「TCNQ」と略記する)を電子受容性の有機分子として加えることで、電荷移動錯体の結晶(電荷移動錯体型半導体)を作製した。
すなわち、80℃の高温で、C8BTBT6mg(1.3(10-5モル)とTCNQ26mg(1.3(10-4モル)とを合わせてアセトニトリル5ml中に溶解させて飽和溶液を作製し、この飽和溶液を80℃の高温から20℃(室温)まで10℃/hの降温速度で徐冷して過飽和状態にすることにより、薄層状の単結晶を溶液中に生成させた。桐山漏斗で前記溶液から前記単結晶を単離することにより、C8BTBTとTCNQとからなる電荷移動錯体の薄層状の単結晶を得た。
〔実施例2〕
電子受容性の有機分子としてTCNQ26mgに代えて以下の構造式
で表されるTCNQ誘導体である2,5−ジフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(以下、「F2TCNQ」と略記する)26mg(1.1(10-4モル)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、C8BTBTとF2TCNQとからなる電荷移動錯体の薄層状の単結晶を得た。
〔実施例3〕
電子受容性の有機分子としてTCNQ26mgに代えて以下の構造式
で表されるTCNQ誘導体である2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(以下、「F4TCNQ」と略記する)26mg(9.6(10-5モル)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、C8BTBTとF4TCNQとからなる電荷移動錯体の薄層状の単結晶を得た。
以上のように、実施例1〜3では、飽和溶液を徐冷する方法により、C8BTBTと、TCNQ、F2TCNQ、およびF4TCNQの3種のTCNQ類(TCNQまたはその誘導体)とから、C8BTBTとTCNQとからなる電荷移動錯体、C8BTBTとF2TCNQとからなる電荷移動錯体、およびC8BTBTとF4TCNQとからなる電荷移動錯体の3種の電荷移動錯体の薄層状の単結晶を得ることができた。したがって、実施例1〜3では、電荷移動錯体の結晶の均質な薄膜を容易に形成することができた。実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶は、典型的な厚さは数百nm〜数μmと非常に薄く、面方向(厚さ方向に垂直な方向)の長手方向のサイズは数百μm〜数mmであり、面方向の短手方向のサイズは数百μm〜数mmであった(図5の例(実施例1の場合)では、厚さ1μm、面方向の長手方向のサイズは100μm、面方向の短手方向のサイズは2mm)。
〔実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶のX線構造解析〕
実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶の構造を、回転陽極X線管(MoK α線源)とCCD(電荷結合素子)面検出器とを装備したX線回折装置(株式会社リガク製)を用いて解いた。これらの単結晶X線構造解析の結果を図6に示す。図6(a)はb軸方向の投影図であり、図6(b)はa軸方向の投影図であり、図6(c)はc軸方向の投影図である。図6(a)〜(c)において、原点(0)と符号a,b,cとを結ぶ線分はa軸、b軸、c軸を表す。
これらの単結晶X線構造解析の結果から、実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶のいずれも、a軸方向にBTBT骨格(C8BTBTにおけるオクチル基を除いた部分)とTCNQ類とが交互に積層し、b軸方向にBTBT骨格およびTCNQ類がそれぞれ別々に積層した構造からなる結晶層(電荷移動錯体層)と、アルキル側鎖(オクチル基)の群とを備え、前記結晶層がc軸方向からアルキル側鎖の群で挟まれた(結晶層の両面から外方(c軸方向)へ向かってアルキル側鎖の群がそれぞれ伸びた)2次元層状構造を有することが分かった。実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶のいずれも、ab面内に広がる(層方向がab面に平行な)2次元層状構造を有することが分かった。
すなわち、実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶のいずれも、その1層分の構造は、図1に示すように、一方向に電子供与性の有機分子(C8BTBT)における脂肪族炭化水素側鎖を除いた部分1と電子供与性の有機分子2(TCNQ類)とが交互に積層し、前記方向に垂直な方向に部分1および電子供与性の有機分子2がそれぞれ別々に積層した構造からなる結晶層と、脂肪族炭化水素側鎖(オクチル基)3の群とを備え、前記結晶層が脂肪族炭化水素側鎖3の群で挟まれた2次元層状構造であった。
また、これらの単結晶X線構造解析の結果から、実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶のいずれも、前記2次元層状構造が複数積層した構造であり、隣接する2次元層状構造の間の距離(2次元層状構造の1層分の厚み)Tは約1.8nmであることが分かった。
図6(a)において、dは、πスタック距離、すなわちC8BTBTとTCNQ類との距離を表す。πスタック距離dは、実施例1で得られた電荷移動錯体の単結晶では0.337nm、実施例2で得られた電荷移動錯体の単結晶では0.335nm、実施例3で得られた電荷移動錯体の単結晶では0.334nmであった。この距離は、2つの炭素原子のファンデルワールス半径の和(0.34nm)よりも小さいことから、C8BTBTとTCNQ類とからなる電荷移動錯体の結晶はa軸方向に高いキャリア導電性を有するものと期待される。
〔実施例1で得られた電荷移動錯体の単結晶の原子間力顕微鏡測定〕
また、実施例1で得られた電荷移動錯体の単結晶の表面を原子間力顕微鏡(AFM)により測定した。その結果を図7および図8に示す。図7は、単結晶の表面の原子間力顕微鏡像を示す図である。図8は、図7の単結晶の表面の原子間力顕微鏡像を単結晶の表面に垂直な方向に沿って図7の下方の白線で切断した断面における表面の高さ(最も低い高さを0としたときの相対高さ)および位置(図7の下方の白線の左端からの距離)を示すグラフである。
図7および図8の結果より、実施例1で得られた電荷移動錯体の単結晶が、ステップ高さが2nmのステップ&テラス構造を有することが分かった。このステップ&テラス構造のステップ高さ(2nm)は、単結晶X線構造解析から求められた2次元層状構造の1層分の厚み(約1.8nm)に非常によく対応することから、前記の結晶層が結晶表面に平行に配向していることが分かった。また、この結果から、本発明の電荷移動錯体が層状結晶性に起因する2次元的な結晶成長様式を示すことが明らかになった。なお、同様な成長様式は、実施例2および実施例3で得られた電荷移動錯体の単結晶についても同様に見られた。
〔実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶の偏光吸収スペクトル測定〕
実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶について、回折格子と組み合わせたカセグレン型顕微鏡を用いて偏光吸収スペクトルを測定した。図9の上から順に、実施例1で得られた電荷移動錯体(C8BTBT−TCNQ)の単結晶、実施例2で得られた電荷移動錯体(C8BTBT−F2TCNQ)の単結晶、実施例3で得られた電荷移動錯体(C8BTBT−F4TCNQ)の単結晶の偏光吸収スペクトルを示す。各偏光吸収スペクトルの2つの曲線のうち、「//a」と付記した実線の曲線がa軸に平行な方向の偏光の吸収スペクトルであり、「//b」と付記した実線の曲線がb軸に平行な方向の偏光の吸収スペクトルであり、図9の横軸は光子エネルギーである。
これらの結果、実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶の偏光吸収スペクトルは何れも、2.3eV以下の低エネルギー領域に2つの吸収バンドを示し、3.0eV付近の高エネルギー領域にブロードな1つの吸収バンドを示した。前者の2つの吸収バンドは、a軸方向に強く偏光していることから、C8BTBTとTCNQ類との間の分子間電荷移動(CT)励起に相当するものと考えられる。一方、後者の1つの吸収バンドは、b軸方向に強く偏光していることから、分子内励起に相当するものと考えられる。
この吸収バンド端のエネルギーは、電子受容性の有機分子の電子親和力が大きくなるにつれて(TCNQの電子親和力:4.2eV、F2TCNQの電子親和力:4.6eV、F4TCNQの電子親和力:5.1eV)、系統的に低エネルギー側にシフトした(TCNQの吸収バンド端のエネルギー:1.52eV、F2TCNQの吸収バンド端のエネルギー:1.37eV、F4TCNQの吸収バンド端のエネルギー:1.22eV)。この結果は、電子受容性の有機分子の電子親和力をパラメーターとして調整することにより、電荷移動錯体の単結晶のバンドギャップを系統的に制御できることを示している。このような特徴は、幅広い波長領域の光を吸収することが求められる光電変換素子用の半導体材料に電荷移動錯体の結晶を用いた場合に、光電変換素子の感度向上に有利であると期待される。なお、電子受容性の有機分子の電子親和力は、電子受容性の有機分子におけるニトロ基、シアノ基、フルオロ基などの電子吸引性基の数を増やすことにより、増大させることができる。
実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶の偏光吸収スペクトルにおいて観測された2つのCT(分子間電荷移動)吸収バンドは、分子軌道計算により求めたC8BTBTとTCNQとからなる実施例1の電荷移動錯体の電子構造(図10)により理解できる。分子軌道計算は、分子軌道計算プログラム「Gaussian 09」(HPCシステムズ株式会社製)を用いて行った。分子軌道計算においては、計算法として密度汎関数法(B3LYP法)を用い、基底関数として6−31G(d)を用いた。図10に示すように、C8BTBTのHOMO(最高被占軌道)、2nd HOMO(2番目にエネルギーの高い軌道)、および3rd HOMO(3番目にエネルギーの高い軌道)は、TCNQのLUMOよりエネルギー的に上に位置するため、TCNQの分子内遷移よりも低エネルギー側に、CT1,CT2,CT3の3種類のCT吸収が吸収スペクトルに現れるはずである。したがって、実施例1〜3で得られた電荷移動錯体の単結晶の偏光吸収スペクトルの低エネルギー領域に見られた2つの吸収バンドは、それぞれCT1、CT2、CT3のいずれかに帰属できるものと考えられる。
〔実施例4〕
実施例1で得られたC8BTBTとTCNQとからなる電荷移動錯体の薄層状の単結晶を用いて貼り合わせ法により電界効果トランジスタを作製した。
作製した電界効果トランジスタは、図2(a)に示す電界効果トランジスタ10Aと同様のボトムコンタクト−ボトムゲート型電界効果トランジスタである。作製した電界効果トランジスタは、図11および図12に示すように、石英ガラス板36と、石英ガラス板36の上面上に配設されたアルミからなるゲート電極35と、ゲート電極35の上面上に配設されたゲート絶縁膜としての厚み400nmのフッ素系樹脂(製品名「CYTOP(登録商標)CTL−809M」、旭硝子株式会社製)膜34と、フッ素系樹脂膜34の上面上に配設された金からなる厚み30nmのソース電極31およびドレイン電極33と、フッ素系樹脂膜34の上面の一部(並びにソース電極31およびドレイン電極33の上面の一部)の上に配設された半導体層としての、C8BTBTとTCNQとからなる電荷移動錯体の単結晶層32とを備えている。単結晶層32のチャネル長は100μmであり、単結晶層32のチャネル幅は1.0mmである。単結晶層32は、フッ素系樹脂膜34の上面の一部(並びにソース電極31およびドレイン電極33の上面の一部)に対して実施例1で得られた厚み400nmのC8BTBTとTCNQとからなる電荷移動錯体の薄層状の単結晶を貼り付けることにより作製した。
〔実施例5〕
実施例1で得られたC8BTBTとTCNQとからなる電荷移動錯体の薄層状の単結晶に代えて実施例2で得られたC8BTBTとF2TCNQとからなる電荷移動錯体の薄層状の単結晶を用いたこと以外は実施例4と同様にして、電界効果トランジスタを作製した。
〔実施例6〕
実施例1で得られたC8BTBTとTCNQとからなる電荷移動錯体の薄層状の単結晶に代えて実施例3で得られたC8BTBTとF4TCNQとからなる電荷移動錯体の薄層状の単結晶を用いたこと以外は実施例4と同様にして、電界効果トランジスタを作製した。
〔実施例4〜6で得られた電界効果トランジスタの評価〕
実施例4〜6で得られた電界効果トランジスタについて、ソース・ドレイン間電流−ゲート電圧特性(ゲート電圧Vdによる、ソース・ドレイン間電流Isdの変化)を測定した。これらの測定結果をそれぞれ図13〜図15に示す。図13〜図15から、実施例4〜6で得られた電界効果トランジスタは、明瞭な電界効果を示し、トランジスタとして機能することが確認できた。
また、図13〜図15から、電子受容性の有機分子の電子親和力を増大させていくことにより、C8BTBTとTCNQ類とからなる電荷移動錯体のエネルギー準位変化に基づく半導体−電極間のバンドアラインメント変化が起こり、電荷移動錯体の半導体特性が両極性からn型へと系統的に変化する様子が観測された。このような特徴は、p型を示す有機半導体材料が多い中、本発明の電荷移動錯体が、両極性やn型の動作を可能にする貴重なトランジスタ用半導体材料であることを示唆している。
また、実施例4で得られた電界効果トランジスタについて、電子移動度および正孔移動度をソース−ドレイン電圧が100Vの条件で測定したところ、電子移動度が4×10-4cm2-1-1、正孔移動度が4×10-4cm2-1-1であった。実施例5および実施例6で得られた電界効果トランジスタについて、電子移動度をソース−ドレイン電圧が60Vの条件で測定したところ、実施例5で得られた電界効果トランジスタの電子移動度が0.4cm2-1-1、実施例6で得られた電界効果トランジスタの電子移動度が0.1cm2-1-1であった。
1 電子供与性の有機分子における脂肪族炭化水素側鎖を除いた部分
2 電子受容性の有機分子
3 脂肪族炭化水素側鎖
10A 電界効果トランジスタ
10B 電界効果トランジスタ
10C 電界効果トランジスタ
10D 電界効果トランジスタ
10E 静電誘導トランジスタ
10F 電界効果トランジスタ
11 ソース電極
12 半導体層
13 ドレイン電極
14 ゲート絶縁膜
15 ゲート電極
16 基板
17 保護層
18 キャリア
20 光電変換素子
21 基板
22 正極
23 発電層
24 負極
25 電極界面層
26 活性層
27 電極界面層
31 ソース電極
32 単結晶層
33 ドレイン電極
34 フッ素系樹脂膜
35 ゲート電極
36 石英ガラス板

Claims (9)

  1. 電子供与性の有機分子と電子受容性の有機分子とからなる電荷移動錯体であって、
    前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素側鎖、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素オキシ側鎖、およびハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素チオ側鎖からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素含有側鎖を有し、
    結晶状態であるときに、前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子における前記炭化水素含有側鎖を除いた部分からなる結晶層と、その結晶層から外方へ向かって伸びる前記炭化水素含有側鎖の群とで構成される2次元層状結晶となるものであり、
    前記電子供与性の有機分子が、カルコゲノフェン誘導体であることを特徴とする電荷移動錯体。
  2. 前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が、両末端に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素側鎖、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素オキシ側鎖、およびハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素チオ側鎖からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族炭化水素含有側鎖を有することを特徴とする請求項1に記載の電荷移動錯体。
  3. 前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の少なくとも一方が、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族炭化水素側鎖、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族炭化水素オキシ側鎖、およびハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族炭化水素チオ側鎖からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族炭化水素含有側鎖を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電荷移動錯体。
  4. 前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子における前記炭化水素含有側鎖を除いた部分の、長手方向の分子長の差が、0.3nm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電荷移動錯体。
  5. 前記電子供与性の有機分子が、下記一般式(1)
    (前記式中、R1はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素オキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素チオ基、または水素原子を表し、R2はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素オキシ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜36の炭化水素チオ基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、硫黄原子、セレン原子、またはテルル原子を表す)
    で表されるカルコゲノフェン誘導体であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電荷移動錯体。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の電荷移動錯体の結晶。
  7. 請求項6に記載の電荷移動錯体の結晶の製造方法であって、
    前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の双方を含む溶液、または前記電子供与性の有機分子および前記電子受容性の有機分子の双方を含む気体から、結晶を成長させることを特徴とする電荷移動錯体の結晶の製造方法。
  8. 半導体層と、該半導体層に接して互いに離間するように配設されたソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層における前記ソース電極に接する表面と前記ドレイン電極に接する表面との間の領域に対向するように配設されたゲート電極と、前記半導体層とゲート電極との間に配設されたゲート絶縁膜とを備えた電界効果トランジスタであって、
    前記半導体層が、請求項1〜5の何れか1項に記載の電荷移動錯体を含むことを特徴とする電界効果トランジスタ。
  9. 互いに離間するように配設された陰極および陽極と、これら陰極および陽極の間に配設された半導体層からなる発電層とを備えた光電変換素子であって、
    前記半導体層が、請求項1〜5の何れか1項に記載の電荷移動錯体を含むことを特徴とする光電変換素子。
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