《第一の実施形態》
以下、本発明による組電池の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、組電池の構成要素として用いられる円筒形二次電池の形態を示す拡大断面図である。
円筒形二次電池1は、底部を有し、上部が開口された円筒形の電池缶2および電池缶2の上部を封口するハット型の電池蓋3で構成される電池容器4を有する。電池容器4の内部には、以下に説明する発電用の各構成部材が収容され、非水電解液5が注入されている。
円筒形の電池缶2には、上端側に設けられた開口部2b側に電池缶2の内側に突き出した溝2aが形成されている。
電池缶2の内部には、発電要素10が配置されている。発電要素10は、軸方向に沿う中空部を有する細長い円筒形の軸芯15と、軸芯15の周囲に捲回された正極電極11および負極電極12とを備える。円筒形状の軸芯15の中空部は、軸方向(図面の上下方向)で軸方向に垂直な面の断面形状が異なる。中空部の上方での断面形状は平行部と曲線部で形成されるトラック形状をしている。中空部の下方での断面形状は上方の平行部の幅よりも小さい径の円形である。この上方の中空部15aに円筒状の正極集電リング27が圧入されている。正極集電リング27は、円盤状の基部27aと、この基部27aの内周部において軸芯15側に向かって突出し、軸芯15の内面に圧入される下部筒部27bと、外周縁において電池蓋3側に突き出す上部筒部27cとを有する。正極集電リング27はこの下部筒部27bにより軸芯15の上端部に固定、支持されている。
正極電極11の正極タブ16は、正極集電リング27の上部筒部27cに溶接されている。正極集電リング27は例えばアルミニウム系金属により形成され、上部筒部27cの外周には、正極電極11の正極タブ16および押え部材28が溶接されている。多数の正極タブ16は、正極集電リング27の上部筒部27cの外周に密着させておき、正極タブ16の外周に押え部材28をリング状に巻き付けて仮固定し、この状態で超音波溶接により接合される。
軸芯15の下端部の外周には、外径が径小とされた段部15bが形成され、この段部15bに負極集電リング21が圧入されて固定されている。負極集電リング21は、例えば、銅系金属により形成され、円盤状の基部21aに軸芯15の段部15bに圧入される開口部21bが形成され、外周縁に、電池缶2の底部側に向かって突き出す外周筒部21cが形成されている。負極集電リング21の基部21aには、軸芯15の中空軸に注液された非水電解液5を発電要素10に浸透させるための開口部21d(図2参照)が形成されている。
負極電極12の負極タブ17は、負極集電リング21の外周筒部21cに接合される。
負極集電リング21の外周筒部21cの外周には、負極電極12の負極タブ17および押え部材22が溶接されている。多数の負極タブ17を、負極集電リング21の外周筒部21cの外周に密着させておき、負極タブ17の外周に押え部材22をリング状に巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。負極集電リング21の基部21aには、接続リード50が、抵抗溶接、或いはレーザ溶接等により接合されている。
多数の正極タブ16は、正極集電リング27に溶接され、多数の負極タブ17が負極集電リング21に溶接されることにより、正極集電リング27、負極集電リング21および発電要素10が一体的にユニット化された発電ユニット20が構成される。電池缶2の内部には、非水電解液5が所定量注入されている。非水電解液5の一例として、リチウム塩がカーボネート系溶媒に溶解した溶液が上げられる。
図2は円筒形二次電池1の分解斜視図である。
円筒形状の軸芯15の中空部の上方には、円筒状の正極集電リング27が圧入されている。正極集電リング27は、例えば、アルミニウム系金属により形成されている。正極集電リング27の基部27aには、電池内部で発生するガスを放出するための開口部27dが形成されている。正極集電リング27に形成された開口部27eは、リード50を電池缶2に溶接するための電極棒(図示せず)を挿通するためのものである。電極棒を正極集電リング27に形成された開口部27eから軸芯15の中空部に差し込み、その先端部でリード50を電池缶2の缶底部2cの内面に押し付けて抵抗溶接を行う。これにより発電ユニット20は電池缶2の缶底部2cに固定される。また、負極集電リング21に接続されている電池缶2の底面は一方の出力端子として作用し、発電要素10に蓄電された電力を電池缶2から取り出すことができる。正極集電リング27の基部27aの上面には、複数のアルミニウム箔が積層されて構成されたフレキシブルな接続部材33が、その一端部を溶接されて接合されている。
正極集電リング27の上部筒部27c上には、電池蓋ユニット30が配置されている。
電池蓋ユニット30は、リング形状をした絶縁板34、絶縁板34に設けられた開口部34aに嵌入された接続板35、接続板35に溶接されたダイアフラム37およびダイアフラム37に、かしめと溶接により固定された電池蓋3により構成される。
絶縁板34は、円形の開口部34aを有する絶縁性樹脂材料からなるリング形状を有し、正極集電リング27の上部筒部27c上に載置されている。
絶縁板34は、開口部34aおよび下方に突出する側部34bを有している。絶縁板34の開口部34a内には接続板35が嵌合されている。接続板35の下面には、接続部材33の他端部が溶接されて接合されている。
接続板35は、アルミニウム系金属で形成され、中央部を除くほぼ全体が均一でかつ、中央側が少々低い位置に撓んだ、ほぼ皿形状を有している。接続板35の中心には、薄肉でドーム形状に形成された突起部35aが形成されており、突起部35aの周囲には、複数の開口部35bが形成されている。開口部35bは、電池内部に発生するガスを放出する機能を有している。接続板35の突起部35aはダイアフラム37の中央部の底面に抵抗溶接または摩擦攪拌接合により接合されている。ダイアフラム37はアルミニウム系金属で形成され、ダイアフラム37の中心部を中心とする円形の切込み37aを有する。切込み37aはプレスにより上面側をV字形状に押し潰して、残部を薄肉にしたものである。ダイアフラム37は、電池の安全性確保のために設けられており、電池の内圧が上昇すると、切込み37aにおいて開裂し、内部のガスを放出する機能を有する。
ダイアフラム37は周縁部において電池蓋3の周縁部を固定している。ダイアフラム37は図2に図示されるように、当初、周縁部に電池蓋3側に向かって垂直に起立する側壁37bを有している。この側壁37b内に電池蓋3を収容し、かしめ加工により、側壁37bを電池蓋3の上面側に屈曲して固定する。
電池蓋3は、炭素鋼等の鉄で形成され、表裏両面にニッケルめっきが施されており、ダイアフラム37に接触する円盤状の周縁部3aと、この周縁部3aから上方に突出す筒部3bを有するハット型を有する。筒部3bには開口部3cが形成されている。この開口部3cは、電池内部に発生するガス圧によりダイアフラム37が開裂した際、ガスを電池外部に放出するためのものである。電池蓋3は一方の電力出力端として作用し、電池蓋3から蓄電された電力を取り出すことができる。
ダイアフラム37と電池蓋3とのかしめ部を覆う絶縁部材からなるガスケット43が設けられている。ガスケット43は、ゴムで形成されており、限定する意図ではないが、1つの好ましい材料の例として、フッ素系樹脂をあげることができる。
ガスケット43は、リング状の基部43aの周側縁に、上部方向に向けてほぼ垂直に起立して形成された外周壁部43bを有する形状を有している。
そして、プレス等により、電池缶2と共にガスケット43の外周壁部43bを屈曲して基部43aと外周壁部43bにより、ダイアフラム37と電池蓋3を軸方向に圧接するようにかしめ加工される。これにより、電池蓋3、ダイアフラム37、絶縁板34および接続板35が一体に形成された電池蓋ユニット30がガスケット43を介して電池缶2に固定されると共に、絶縁板34が発電ユニット20の正極集電リング27に当接し、発電ユニット20を電池缶2の缶底側に押しつけている。
図3は、発電要素10の構造の詳細を示すための分解断面斜視図である。
発電要素10は、軸芯15の周囲に、正極電極11、負極電極12、および第1、第2のセパレータ13、14が捲回された構造を有する。
軸芯15は、例えば、PP(ポリプロピレン)のような絶縁材により形成され、中空円筒形状を有する。軸芯15には、第1のセパレータ13、負極電極12、第2のセパレータ14および正極電極11が、順に積層され、捲回されている。最内周の負極電極12の内側には第1のセパレータ13および第2のセパレータ14が数周(図3では、1周)捲回されている。第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、絶縁性の多孔質体で形成されている。
最内周(軸芯側)では、負極電極12の捲き始めが正極電極11の捲き始めよりも周方向に延出している。また、最外周(電池缶側)では負極電極12が正極電極11よりも外周側に捲回されており、負極電極12の捲き終わりが正極電極11の捲き終わりよりも周方向に延出されている。最外周の負極電極12の外周に第2のセパレータ14が捲回されている。最外周の第2のセパレータ14の終端が接着テープ19で止められる。尚、最外周で第1のセパレータ13および第2のセパレータ14が数回、捲回された後、接着テープ19で止められることもある。
正極電極11は、アルミニウム箔により形成され長尺な形状を有し、正極金属箔11aと、この正極金属箔11aの両面に正極合剤が塗布された正極合剤層11bを有する。正極金属箔11aの長手方向に延在する上方側の側縁は、正極合剤が塗布されず正極金属箔11aが露出した正極箔露出部11cとなっている。この正極箔露出部11cには、軸芯15の軸に沿って上方に突き出す多数の正極タブ16が等間隔に一体的に形成されている。
正極合剤は正極活物質と、正極導電材と、正極バインダとからなる。正極活物質として、コバルト、マンガン、ニッケル等のリチウム酸化物が挙げられる。
正極バインダとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ素ゴムなどが挙げられる。
正極合剤を正極金属箔11aに塗布する方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法、等が挙げられる。正極合剤に分散溶液を混練したスラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、プレスし、裁断する。正極合剤の塗布厚さの一例としては片側約40μmである。正極金属箔11aを裁断する際、正極タブ16を一体的に形成する。すべての正極タブ16の長さは、ほぼ同じである。
負極電極12は、銅箔により形成され長尺な形状を有する負極金属箔12aと、この負極金属箔12aの両面に負極合剤が塗布された負極合剤層12bとを有する。負極金属箔12aの長手方向に延在する下方側の側縁は、負極合剤が塗布されず銅箔が露出した負極箔露出部12cとなっている。この負極箔露出部12cには、軸芯15の軸に沿って正極タブ16とは反対方向に延出された、多数の負極タブ17が等間隔に一体的に形成されている。
負極合剤は、負極活物質と、負極バインダと、増粘剤とからなる。負極活物質としては、黒鉛炭素が挙げられる。
負極合剤を負極金属箔12aに塗布する方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法等が挙げられる。
負極合剤に分散溶媒を混練したスラリを、厚さ10μmの圧延銅箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、裁断する。負極合剤の塗布厚さの一例としては片側約40μmである。負極金属箔12aをプレスにより裁断する際、負極タブ17を一体的に形成する。すべての負極タブ17の長さは、ほぼ同じである。
第1、第2のセパレータ13、14の幅は、負極電極12の負極合剤層12bの幅よりも大きい。負極電極12の負極合剤層12bの幅は、正極電極11の正極合剤層11bの幅よりも大きい。負極合剤層12bの幅および長さを正極合剤層11bの幅および長さよりも大きくして、正極合剤層11bの全領域を負極合剤層12bで覆う構造とされている。リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質であるリチウムがイオン化してセパレータを浸透し、負極活物質に吸蔵される。この場合、負極側に負極活物質が形成されておらず負極金属箔12aが表出していると負極金属箔12aにリチウムが析出し、内部短絡を発生する原因となる。上記の如く、正極合剤層11bの全領域を負極合剤層12bで覆うことにより、このようなリチウム析出に伴う内部短絡を防止することができる。
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、それぞれ、例えば、厚さ40μmのポリエチレン製多孔膜で形成されている。
図4は以上のプロセスで製造された円筒形二次電池1を用いて組電池を構成した際の、2つの円筒形二次電池1A、及び1Bの接続を示す平面図である。図4に示すようにバスバー60で接続して組電池を製造する。組電池は、複数の円筒形二次電池1を用意し、おのおのが直列に接続されるように、例えば円筒形二次電池1Aの正極側と円筒形二次電池1Bの負極側とがバスバー60で接続される。
本発明においては、円筒形二次電池1Aの電池蓋3の筒部3bとバスバー60の一方の端部をバスバー接合部61Aで接続し、円筒形二次電池1Bの電池缶2の缶底部2cの面とバスバー60の他方の端部をバスバー接合部61Bで接合する。この接合には、アーク溶接、レーザ溶接などの方法を用いることができる。なお、図4ではバスバー接合部61A及び61Bはそれぞれ2点設けた構成となっているが、1点または3点以上の多点であっても良い。
図5に円筒形二次電池1Bの缶底付近の部分拡大鳥瞰図を示す。図5に示すように、本発明の特徴となる樹脂部材77は、缶底部2cとバスバー60の対向する面の間に設置される。樹脂部材77は電池缶2の外側の缶底部2cとバスバー60の双方に接しており、缶底接合部62で発生した熱を吸収する吸熱効果、および缶底接合部62で発生した熱をバスバー60に伝える伝熱効果を持っている。
以下、樹脂部材77を缶底部2cとバスバー60の対向する面の間に設置する方法を詳細に説明する。
図6(a)は、図5の負極缶底付近のA−A断面図、図6(b)は電池缶2の円筒軸方向から缶底部2cを見た拡大図である。図6(a)に示すように図5のA−A断面方向から樹脂部材77を見ると、樹脂部材77は電池缶2の外側の缶底部2cとバスバー60の対向する面に挟まれ、両者に接触して配置されている。また、リード50と電池缶2の内側の缶底部2cとは互いに溶接され、缶底接合部62を形成している。
図6(b)より、バスバー接合部61B、缶底接合部62(缶底接合部62が円筒形の電池缶2の円筒軸方向に射影された領域)、及び樹脂部材77の位置関係がわかる。本実施形態では、樹脂部材77(図6(b)中の一点鎖で示した部位)が缶底接合部62を覆うように配置されている。
缶底接合部62で発生する熱は、通電時に缶底接合部62への電流集中で発生するジュール熱によるものである。またバスバー60は、2箇所以上で電池缶2の缶底部2cとの溶接部を有することが多く、例えば図6(b)で示す構造では、電流は左側のバスバー接合部61Bと右側のバスバー接合部61Bに分流する。そのため、電流集中の程度は、缶底接合部62の一箇所がもっとも激しくなる。従って、最高温度を示す位置も缶底接合部62の近傍となる。また、仮にバスバー接合部61Bが一箇所であったとしても、電池缶2に使用される材料の関係上、缶底接合部62が高抵抗部として形成され、缶底接合部62への電流集中によるジュール発熱は、バスバー接合部61Bよりも大きく、この最も発熱する部位は缶底接合部62となる。
以上の理由より、本発明では、最高温度を示す缶底接合部62の近傍、かつ、電池缶2の外側の缶底部2cに接するように熱伝導率が大きい樹脂部材77を配置した。このようにバスバー60に熱伝導率の高い複合材料である樹脂部材77が接触するように配置することにより、銅製など熱伝導率のさらに高いバスバー60を介して、缶底接合部62で発生したジュール熱を電池外へ逃がすことが可能となる。
また、本実施形態では放熱効果を最大限に引き出すために、樹脂部材77が缶底接合部62を覆って配置され、かつ2つのバスバー接合部61Bで挟まれる領域に位置するように設置されている。このように樹脂部材77を配置することによって、樹脂部材77が無い場合と比較して樹脂部材77を介した伝熱経路が増設されているため、熱が発生する缶底接合部62からバスバー60への伝熱経路が増え、放熱性が向上する。
なお、図6(b)では缶底接合部62の全てを樹脂部材77で覆うように位置しているが、缶底接合部62と樹脂部材77との重なり割合については後に詳細に説明する。また、図11及び図12でも説明するが、樹脂部材77が電池缶2の缶底部2cとバスバー60の両方に接していれば、重なり割合が0であったとしても、缶底接合部62近傍の温度上昇を抑制する効果はある。これは樹脂部材77がない場合には、缶底接合部62で発生した熱がバスバー接合部61Bからしかバスバー60へ伝熱されないが、樹脂部材77がある場合には、電池缶2の缶底部2cからバスバー60への伝熱経路が樹脂部材77を介した伝熱経路分増加することに起因する。
また、図6(b)に示す通り、本実施形態ではバスバー接合部61Bを2箇所有し、缶底接合部62が円筒形の電池缶2の円筒軸方向に射影された領域が2つのバスバー接合部61Bの間に配置され、さらに缶底接合部62が円筒形の電池缶2の円筒軸方向に射影された領域が2つのバスバー接合部61Bよりも電池缶2の缶底部2cの径方向中心部に近い領域にある。このような構造をとることによって、缶底接合部62とそれぞれのバスバー接合部61Bとの距離が極端に変わることがなくなり、それぞれのバスバー溶接部61Bへバランス良く伝熱させることができる。従って、樹脂部材77を使用した伝熱だけでなく、バスバー溶接部61Bを利用した放熱もバランスよく行うことが出来る。なお、本実施形態ではバスバー溶接部61Bを2点としたが、当然3点以上であっても、缶底接合部62が円筒形の電池缶2の円筒軸方向に射影された領域が各バスバー接合部61Bよりも電池缶2の缶底部2cの径方向中心部に近い領域になるように配置することによって、同様の効果を得ることが出来る。
続いて図6(a)及び(b)に示す構造の組電池の作成手順について説明する。図7は図6(a)及び(b)に示す位置に樹脂部材77を配置するための作成手順を示す図である。
図7(a)は樹脂部材77を電池缶2の缶底部2cとバスバー60との間に配置する前の図であり、図7(b)は樹脂部材77を電池缶2の缶底部2cとバスバー60との間に配置した後の図である。
はじめに、図7(a)の上矢印で示すように、樹脂部材77がバスバー60の所定の位置、例えば、図6(b)で示した位置に接着、あるいは、塗布でセットされる。本実施形態では、樹脂部材77はフィルムを用い、バスバー60側の面に接着層を設け、接着により、樹脂部材77をバスバー60の所定の位置にセットした。このときの一例として樹脂部材77は、直径6mm、厚さ0.2mmの形状になるようにした。なお、このとき樹脂部材77とバスバー60との間には放熱性グリースを配置してもよい。放熱性グリースを配置することによって、樹脂部材77とバスバー60との密着性を向上させ、接触を確実に取ることができ、放熱性が向上する。放熱性グリースの材料としては、シリコングリースなどが挙げられる。
そして、バスバー60と樹脂部材77とを接着させた後、図7(a)の下矢印で示すように缶底部2cの外側とバスバー60とを当接させる。なお、バスバー60には、バスバー接合時に樹脂部材77が缶底部2cに接するように、高さ0.2mmよりわずかに低い突起63が設けられている。
そして、最後に突起部63と缶底部2cの外側とを溶接してバスバー接合部61Bを形成し、図7(b)に示すような組電池を作成する。
なお、本実施形態で樹脂部材77を配置するその他の例としては、上述したように樹脂部材77を塗布で設置する場合がある。この場合には、素材を有機溶媒等で溶解し、塗料を作製し、この塗料をバスバー60に塗布後、バスバー60と缶底部2cとの接合を行えばよい。
樹脂部材77の材質については、詳細は後述するが、熱可塑性、または、熱硬化性の樹脂をマトリックス、セラミックスをフィラーとし、熱伝導率が樹脂より大きい複合材料を用いるのが好ましい。一方で、樹脂部材77は、電流経路に接して設置されるため、絶縁性を有している必要がある。そのため、前述したように、マトリックスが熱可塑性、または、熱硬化性の樹脂は好適である。なお、フィラーもセラミックスであるため、複合材料としたときも、絶縁性に懸念はない。
続いて、樹脂部材77に使用する複合材料の詳細を説明する。図8は、樹脂部材77を構成する複合材料を示す概念図である。樹脂部材77は、絶縁性を有する樹脂からなるマトリックス115中に、絶縁性を有するフィラー116が分散された複合材料からなる。
マトリックス115は、熱可塑性、または、熱硬化性の樹脂から選ばれる。具体的なマトリックス115の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩化ビニリデン樹脂(PVdC)、ポリビニルアルコール、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ−4−メチルペンテン−1からなる群から選ばれるいずれか1種類以上の樹脂を用いることができる。なお、上記した複数種類の樹脂のうちで2種類以上の樹脂の共重合体、または2種類以上の混合物をマトリックス115として選ぶこともできる。
缶底接合部62で発生した熱は、電池缶2の缶底部2cと樹脂部材77との当接面を介して樹脂部材77に伝わる。樹脂部材77に伝わった熱は、主に二つの物理現象によって吸収または伝熱されることになる。一つは、樹脂部材77の相変化に必要となる潜熱として利用される現象であり、もう一つは樹脂部材77からバスバー77への伝熱を利用して放熱する現象である。本発明では、急激に熱が発生した場合には潜熱として熱を消費し、定常的な状態になってからは樹脂部材77を介してバスバー60に熱を伝達させ放熱するという現象を利用して、缶底接合部62周辺の温度上昇を抑制している。
ここでは伝熱の原理について詳細に説明する。缶底接合部62で発生した熱は樹脂部材77内において、電池缶2の円筒軸方向に伝わり、マトリックス115の全体の温度が上昇する。それに伴い、熱は、バスバー60と樹脂部材77の当接面を介して、バスバー60に伝わり、外気などの電池外へ熱が放出され、缶底接合部62周辺の温度上昇を抑制することが可能となる。
しかしながら、上記したマトリックス115を構成する樹脂だけでは、熱伝導率が低い場合がある。例えば、低密度ポリエチレンの熱伝導率は、0.33W/(m・K)程度、高密度ポチエチレンの熱伝導率は、0.46〜0.50W/(m・K)程度である。このため、樹脂のみで樹脂部材77を構成すると、より大電流の出力が求められた場合に缶底接合部62周辺の温度上昇を抑制する機能が十分でない可能性もある。
そこで、マトリックス115を構成する樹脂よりも高い熱伝導率を有し、かつ、絶縁性を有するフィラー116を所定量含有させる方法がある。この方法により、樹脂部材77の熱伝導率を高めることが可能となる。樹脂部材77の熱伝導率を高めることで、缶底接合部62で発生した熱を樹脂部材77に効果的に伝えることができ、さらには、その熱を十分にバスバー60へ伝えることができる。そのため、より放熱の効果を顕著に発現することができる。
フィラー116には、高い熱伝導率および高い絶縁性を有するセラミックスを含有させることができる。具体的な材料として、例えば、熱伝導率が270W/(m・K)程度の炭化ケイ素、熱伝導率が110W/(m・K)程度の窒化ホウ素、熱伝導率が30〜80W/(m・K)程度の窒化ケイ素、および、熱伝導率が40W/(m・K)程度のマグネシア、熱伝導率が200W/(m・K)程度の窒化アルミニウムからなる群から選ばれる1種類以上のフィラー116を含有させることができる。
また、樹脂部材77の熱伝導率を高めるためにマトリックス115中にフィラー116を配合すると、体積分率の増加に応じて熱伝導率が増加するが、フィラー116の体積分率は、パーコレーション閾値以上に設定することが好ましい。
パーコレーション閾値とは、パーコレーションと呼ばれる現象が起きるときの体積分率である。パーコレーションとは、導電性フィラーの体積分率がパーコレーション閾値以上で凝集し、系全体を連なるクラスターが形成されて導電性が発現する現象である。パーコレーション閾値は、マトリックスを構成する樹脂の種類およびフィラー116の種類や粒子の形状、混練方法などによって決まり、おおよそ5%〜30%程度である。このため、フィラー116は、30%程度以上の体積分率でマトリックス115中に分散されていることが好ましい。
なお、フィラー116の含有量を増加させるほど、熱伝導率を高めることができるが、フィラー116の体積分率が大きくなりすぎると、材料が脆性的になってしまう。そのため、機械的形状保持能力を考慮すると、フィラー116の体積分率は50%未満とすることが好ましい。換言すれば、マトリックス115の体積分率を50%以上とすることが好ましい。
また、本実施形態では粒子形状のフィラー116を用いたが、フィラー116には針状、円盤状、短繊維状などの形状を用いても良く、またこれらの形状のものを複数組み合わせたフィラーとしても良い。
このように、樹脂部材77を樹脂とフィラーの複合材料にすることによって熱伝導率が高まると、樹脂部材77が少量であったとしても素早く放熱させることができる。そのため、樹脂部材77の使用量を抑制することが可能となる。また、樹脂部材77の使用量を低減できることによって、製造装置およびプロセスも簡単になるため、低コストで組電池を作成することが可能となる。
続いて図9を用いて缶底接合部62と樹脂部材77との重なり割合について説明する。
図9は、缶底接合部62を円筒形の電池缶2の円筒軸方向に射影した領域72と、樹脂部材77との重なりを示す図である。上述したように領域72は、缶底接合部62が円筒缶軸方向を表す方向ベクトルで定義される方向へ射影された領域で定義される。また、本発明では領域72の面積をS0、領域72と樹脂部材77との重なり部73の重なり面積をSと定義した。なお、図9に示すように両者の射影を例えば概念的に円形で表すと、重なり面積Sは、斜線の部分の面積となる。
続いて、SをS0で除した値を、缶底接合部62が円筒形の電池缶2の円筒軸方向に射影された領域72と樹脂部材77との「重なり割合」と定義し、重なり割合を横軸に、缶底接合部62周辺の最大温度上昇を縦軸にプロットしたものを図10に示す。なお、ここで言う最大温度上昇とは、通電開始温度から最大温度が何度高いかを示す量で、例えば、缶底接合部62周辺の最大温度が100度、通電開始温度が25度の場合、最大温度上昇は75度となる。
計算条件は、非定常有限要素熱解析を用い、図5に示すような外形のモデルを作製し、通電電流300A、5秒後の最大温度上昇を観察することで、本発明の効果を検証した。
物質表面の熱伝達係数は、10W/(m2・K)とした。また、計算で使用した樹脂部材77の熱伝導率はそれぞれ、0.1W/(m・K)、0.5W/(m・K)、1.0W/(m・K)、2.0W/(m・K)、5.0W/(m・K)、7.5W/(m・K)、10.0W/(m・K)、20.0W/(m・K)、50.0W/(m・K)、100.0W/(m・K)とした。なお、本発明を用いない場合の最大温度上昇は約62.5度であり、図10中に点線で示してある。
図10に示したデータから、いずれの熱伝導率の材料を用いたとしても、重なり割合が大きくなるほど最大上昇温度が低下することが分かる。また、熱伝導率が大きくなるほど最大上昇温度も低下する。従って、本発明の効果を最大限に発揮するには、重なり割合を大きくし、かつ樹脂部材77に熱伝導率が大きい材料を用いることが必要になる。
続いて、熱伝導率の下限値を検討するために、重なり割合を一定とした場合の熱伝導率の影響について考察した。図11は、縦軸を缶底接合部62周辺の最大上昇温度を、横軸に熱伝導率を取り、各重なり割合でのデータをプロットしたものである。なお、図中の点線は樹脂部材77を配置しなかった場合の最大上昇温度(62.5度)を示すものである。このデータより、熱伝導率0.1W/(m・K)であっても微小な温度抑制効果はあるが、より大きな効果が見えるのは、熱伝導率0.5W/(m・K)以上であることがわかる(図11中の一点鎖参照。)。また樹脂部材77を全く配置しない場合と比較して、重なり割合によらず温度抑制効果が2度以上であるのは5W/(m・K)以上であることが分かる。従って、熱伝導率0.1W/(m・K)でも微小な温度抑制効果はあり(定常的な放熱効果は小さいが、急激な熱が発生した場合に潜熱として熱を吸収出来るため、温度の抑制効果はある。)、より大きな最大上昇温度の抑制が見込めるのは樹脂部材77の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上であり、重なり割合が小さかったとしても十分な効果が見込めるのは樹脂部材77の熱伝導率が5.0W/(m・K)以上であることが分かった。
他方で、熱伝導率の上限値を検討するために、図10の各熱伝導率のデータを直線でフィッティングし、その直線の傾きを求めた。この傾きは、缶底接合部62周辺の最大温度上昇を抑制する性能がどれほどのものかを示すパラメータとなる。その傾きを縦軸に、熱伝導率を横軸にとったグラフを図12に示す。重なり割合の影響が考慮される本データでは、樹脂部材77の熱伝導率が0.1W/(m・K)であったとしても、傾きの値が負であるため放熱効果があることが分かる。また、樹脂部材77の熱伝導率は10.0W/(m・K)までは傾きは減少していくが、熱伝導率が10.0W/(m・K)を越えるとほぼ一定の値に落ち着くことが分かる。これは、樹脂部材77の熱伝導率が上昇しても、他の要素によって放熱が律速されるためであると考えられる。従って、本実施形態では熱伝導率が100.0W/(m・K)までのデータが記載されているが、当然100.0W/(m・K)以上であったとしても同等の効果を得ることができるということがわかる。
さらに、重なり割合が0であった場合の缶底接合部62の最大温度上昇を検討するために、図10の各熱伝導率のデータを直線でフィッティングし、その切片の値を求めた。この切片の値は、電池缶2の外側の缶底部2cとバスバー60との間に樹脂部材77が配置された場合であって、かつ重なり割合が0である場合の最大上昇温度を示すデータとなる。切片の値を縦軸に、熱伝導率を横軸にとったグラフを図13に示す。なお、図中の点線は樹脂部材77を配置しなかった場合の最大上昇温度(62.5度)を示すものである。
上述したデータと同様、熱伝導率0.1W/(m・K)でも微小な温度抑制効果があることがわかった。一方で、重なり割合が0の場合で最大上昇温度の抑制効果がより目に見えるのは、熱伝導率0.5W/(m・K)以上であることがわかる(図13中の一点鎖参照。)。
以上のことより、熱伝導率0.1W/(m・K)でも微小な温度抑制効果はあり、より大きな放熱効果が見えるのは樹脂部材77の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上であることが分かった。また、さらに効果を大きくするためには樹脂部材77の熱伝導率が5.0W/(m・K)以上が好ましく、放熱効果を最大限発揮するには樹脂部材77の熱伝導率が10.0W/(m・K)以上であることが好ましいことが分かった。一方で上限値については本実施形態で100.0W/(m・K)としたが、図12のデータよりそれよりも大きな値を取ったとしても同等の効果を得られることが分かった。
図13で説明したように重なり割合が0であったとしても放熱効果があることは分かった。しかし、より効果が大きくなる重なり割合について考察するため、再度図11のデータを分析する。図11より、樹脂部材77の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上の場合(図11の一点鎖参照。)には、重なり割合が0.1以上であれば目に見えて最大上昇温度の抑制がされていることが分かる。また、樹脂部材77の熱伝導率を0.5W/(m・K)(フィラー116を混ぜない場合を想定)以上として、缶底接合部62周辺の最大上昇温度を2度以上抑制しようとすると、重なり割合が0.45以上必要なことが分かる。
従って、樹脂部材77の重なり割合は0.1以上であれば微小ではあるが効果があり、より大きな放熱効果が見えるのは樹脂部材77の重なり割合が0.45以上の場合であることがわかった。なお、重なり割合の上限は1であることは言うまでもない。
以上、本実施形態の作用効果についてまとめる。
本実施形態の組電池では、外側の缶底部2cとバスバー60との間に樹脂部材77が配置され、樹脂部材77が外側の缶底部2c、及びバスバー60のそれぞれに接するように配置されている。このような構造にすることによって、缶底接合部62で発生した熱がバスバー接合部61Bからバスバー60に伝わる伝熱経路の他に、熱が缶底部2cから樹脂部材77を介してバスバー60に伝わる伝熱経路を作ることが出来る。従って、缶底接合部62の周辺の温度上昇を抑制することが可能になる。
また、本実施形態の組電池では、外側の缶底部2cとバスバー60との間に配置された樹脂部材77が、缶底接合部62を円筒形の電池缶2の円筒軸方向に射影した領域72と重なるように配置されている。このような構造にすることによって、缶底接合部62で発生した熱を即座に樹脂部材77へ伝えることが可能となる。従って、缶底接合部62の周辺の温度上昇をさらに抑制することが可能になる。
また、本実施形態の組電池では、缶底接合部62が円筒形の電池缶2の円筒軸方向に射影された領域72と樹脂部材77との重なり面積が、缶底接合部62が円筒形の電池缶2の円筒軸方向に射影された領域72の面積の0.45以上1以下になっている。このような構造にすることによって、熱の発生源である缶底接合部62で発生した熱をより効率良くバスバー60に伝えることが可能となる。従って、缶底接合部62の周辺の温度上昇をさらに抑制することが可能になる。
また、本実施形態の組電池では、樹脂部材77の熱伝導率は0.1W/(m・K)以上、好ましくは0.5W/(m・K)以上、さらに好ましくは5.0W/(m・K)以上、さらに好ましくは10.0W/(m・K)以上であることが好ましい。なお、上限値については特に制限はないが、樹脂部材77の脆性からフィラー116の配合割合を考慮すると100.0W/(m・K)以下が好ましい。このような熱伝導率の樹脂部材77を使用することによって、缶底接合部62で発生した熱を、樹脂部材77を介してバスバー60により伝えることが可能となる。従って、缶底接合部62の周辺の温度上昇をさらに抑制することが可能になる。
また、本実施形態の組電池では、樹脂部材77は樹脂のマトリックス115にセラミックスのフィラー116が分散した構造であり、セラミックスのフィラー116の体積分率は、樹脂部材77の体積分率に対して5%以上50%未満であることが好ましい。セラミックスのフィラー116の体積分率をこのような割合にすることによって、パーコレーションを起こし、伝熱性を向上させつつも、樹脂部材77に十分な強度を持たせることが可能となる。なお、樹脂のマトリックス115には熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を使用することが出来る、セラミックスのフィラー116は、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及びマグネシアからなる群から選ばれる1種以上のものを使用することが出来る。
また、本実施形態の組電池では、樹脂部材77とバスバー60との間に熱伝導グリースを配置しても良い。このような構造にすることによって、樹脂部材77とバスバー60との密着性が良くなり、樹脂部材77からバスバー60への伝熱性が向上する。従って、缶底接合部62の周辺の温度上昇をさらに抑制することが可能になる。
また、本実施形態の組電池では、バスバー60は缶底部2cと接続されるバスバー接合部61Bを少なくとも2箇所以上有し、缶底接合部62が円筒形の電池缶2の円筒軸方向に射影された領域はバスバー接合部61Bよりも電池缶2の缶底部2cの径方向中心部に近い領域にある構造としても良い。このような構造にすることによって、各バスバー溶接部61Bを介した伝熱をバランス良く使用することが可能になる。このような構造にすることによって、バスバー溶接部61Bも効率良く使用して放熱させることができる。従って、缶底接合部62の周辺の温度上昇をさらに抑制することが可能になる。
以上のように、本実施形態で説明した組電池を用いることによって、缶底部2cで発生した熱をうまくバスバー60へ逃がすことが可能となる。そのため、缶底接合部62周辺の温度上昇を抑制し、大電流の通電が可能な組電池を提供することが出来る。
なお、本実施形態では缶底接合部62を1箇所設ける構造としたが、複数箇所設ける構造としても良い。この場合には、領域72のS0は各缶底接合部62が円筒缶軸方向を表す方向ベクトルで定義される方向へ射影された領域の面積の和となる。また、重なり面積Sについても、各缶底接合部62が円筒缶軸方向を表す方向ベクトルで定義される方向へ射影された領域と、樹脂部材77とが重なっている部分の面積の和となる。
また、本実施形態では缶底接合部62の形状及び樹脂部材77の形状は円形としたが、当然四角形状や三角形状等をとしても良いのは言うまでもない。
《第二の実施形態》
続いて、第二の実施形態について説明する。本実施形態が第一の実施形態と異なる点は、バスバーが孔を有し、樹脂部材が当該孔にはめ合わせられている点である。なお、第一の実施形態と同様の構造については、第一の実施形態で用いた図面番号と同様の図面番号を用いている。
図14(a)は、本実施形態の樹脂部材177が配置されている部分の断面図、図14(b)は円筒缶の軸方向から見た図である。図14(a)に示すように断面方向から、本発明の樹脂部材177を見ると、樹脂部材177は缶底部2cとバスバー60の対向する面に挟まれて設置されている。また、缶底接合部62の円筒缶軸方向の外側直上付近のバスバー60に孔64が設けられている。また、例えば、図14(b)に示すように、バスバー接合部61Bが2箇所設けられる場合、本発明の樹脂部材177は、2つのバスバー接合部で挟まれる領域に位置するように配置される。このように樹脂部材177を配置することによって、樹脂部材177が無い場合と比較して樹脂部材177を介した伝熱経路が新たに設けられるため、熱が発生する缶底接合部62からバスバー60への伝熱経路が短くなり、放熱性が向上する。
また、本実施形態では図14(b)に示したように、樹脂部材177は缶底接合部62を覆う位置に配置されている。なお、本実施形態では樹脂部材177の中心位置と缶底接合部62の中心位置がずれて配置されているが、互いの中心位置が一致するように配置されていても良い。
また、本実施形態では孔64の中心位置と樹脂部材177の中心位置が一致するように配置されているが、互いの中心位置が一致していなくても良い。
続いて図15を用いて、本実施形態にかかる組電池の作成手順を説明する。なお、図15(a)はバスバー60の組み付け前、図15(b)はバスバー60の組み付け後を示すである。
まず、はじめに図15(a)に示すように、樹脂部材177がバスバー60に設けられた孔64に挿入され、嵌め合わされる。なお、本実施形態では、樹脂部材177は、最大直径6mm、最大厚さ0.8mm、バスバー60の電池側面と缶底部2cの外側面に挟まれる部分は0.2mmの形状になるようにした。ここでいう樹脂部材177の最大厚さは、図14(a)中に表すT2に対応する。また、この嵌め合わせを行う際、樹脂部材177とバスバー60が接触する部分に放熱性グリースを配置しても良い。放熱性グリースを配置することによって、樹脂部材177とバスバーとの接触をうまくとることができ、放熱性が向上するため、缶底部2cの周辺の温度上昇をより抑制することが可能となる。また、バスバー60には、バスバー接合時、適切に樹脂部材177が缶底部2cに接するように、高さ0.2mmよりわずかに低い突起63が設けられている。
その後、樹脂部材177と一体化されたバスバー60が缶底部2cと当接し、前記突起63の位置でバスバー60と電池缶2の外側の缶底部2cが接合され、図15(b)に示すようにバスバー接合部61Bが形成される。
本実施形態の組電池では、樹脂部材177をバスバー60に設けたし孔64に嵌合している。そのため、強固にバスバーに固定される。従って、第一の実施形態の作用効果に加え、供用中の耐振動性が向上する。
また、本実施形態のように孔64に樹脂部材177が嵌め合わせられることによって、第一の実施形態と比較して樹脂部材177とバスバー60との接触面積を多くとることが可能となる。そのため、第一の実施形態と比較して放熱性が向上する。
《第三の実施形態》
続いて、第三の実施形態について説明する。本実施形態が第二の実施形態と異なる点は、バスバーを缶底に溶接した後に溶融原材料をバスバーの孔に装填・固化し、部材をバスバー及び缶底に接触させる点である。なお、第二の実施形態と同様の構造については、第二の実施形態で用いた図面番号と同様の図面番号を用いている。また、本実施形態で完成される組電池の構造は、図14に示した構造と同様の構造となる。
以下、本実施形態にかかる組電池の作成方法について図16を用いて説明する。なお、図16(a)は樹脂部材177の組み付け前、図16(b)は樹脂部材177の組み付け後を示す図である。
まず、はじめに図16(a)に示すように、孔64を有するバスバー60と缶底部2cを溶接する。なお、バスバー60には樹脂部材177が缶底部2c外側とバスバー60が対向する空間に充填可能なように、高さ約0.2mmの突起63(図16内では不図示)が設けられており、突起63の位置でバスバーと缶底部2cとが接合され、バスバー接合部61Bが形成される。その後、樹脂部材177の溶融した原材料を、バスバー60に開いている孔から前記対向面の空間へ充填する。そして、樹脂部材177がバスバー60及び缶底部2cと密着して固化し、図16(b)に示す構造となる。
本実施形態の組電池では、溶融原材料を装填・固化する方法を使用する。そのため、バスバー60と缶底部2c、双方への当接面への接着力が大きくでき、熱伝導特性が第二の実施形態より優れ、さらに供用中の耐振動性も向上する。
また、バスバー60と缶底部2cとの溶接が完了した後に樹脂部材177を配置することになるため、バスバー60と缶底部2cとの溶接時に発生する熱による樹脂部材177への損傷がなくなる。そのため、樹脂部材177の熱による変性を防ぐことができ、樹脂部材177が本来の放熱性を発現させることができる。
《第四の実施形態》
続いて、第四の実施形態について説明する。本実施形態が第二の実施形態と異なる点は、あらかじめ樹脂部材がバスバーにインサート成型されている点である。なお、第二の実施形態と同様の構造については、第二の実施形態で用いた図面番号と同様の図面番号を用いている。
図17(a)は、本実施形態の樹脂部材277が配置されている部分の断面図、図17(b)は円筒缶軸方向から見た図である。本実施形態で用いる部材277は、バスバー60にあらかじめインサート成型され、一体化されている。図17(a)に示すように断面方向から、本発明の樹脂部材277を見ると、一部が缶底部2cとバスバー60の対向する面に挟まれて設置されており、一部は孔64を貫通してバスバー60の上面を一部覆うような構造となっている。また、缶底接合部62の円筒缶軸方向の外側直上付近に、バスバー60に孔64が設けられた構造となっている。なお、本実施形態では樹脂部材277の中心位置と缶底接合部62の中心位置がずれて配置されているが、互いの中心位置が一致するように配置されていても良い。
また、図17(a)のように、バスバー接合部61Bが2箇所設けられる場合、本発明の樹脂部材277は、2つのバスバー接合部で挟まれる領域に位置するように設置される。このように樹脂部材277を配置することによって、樹脂部材277が無い場合と比較して樹脂部材277を介した伝熱経路が新たに設けられるため、熱が発生する缶底接合部62からバスバー60への伝熱経路が短くなり、放熱性が向上する。
以下、本実施形態にかかる組電池の作成方法について図18を用いて説明する。
まず、はじめに図18(a)に示すように、あらかじめバスバー60の孔64に嵌合するように所定の位置に、樹脂部材277がインサート成形される。樹脂部材277は、最大直径6mm、最大厚さ1.4mm、バスバー60の缶底側と缶底部2cの外側面に挟まれる部分は0.2mmの形状になるようにした。ここでいう樹脂部材277の最大厚さは、図17(a)中に表すT3に対応する。なお、バスバー60には、缶底部2cとバスバー60との接合時に適当に樹脂部材277が缶底部2cに接することが出来るように、高さ0.2mmよりわずかに低い突起63が設けられている。そして、樹脂部材277がインサート成型されたバスバー60が缶底部2cに当接され、突起63の位置でバスバー60と缶底部2cとが接合され、図18(b)に示すようにバスバー接合部61Bが形成される。なお、樹脂部材277を缶底部2cに当接させる際に、樹脂部材277と缶底部2cとの間に放熱性グリースを配置しても良い。放熱性グリースを樹脂部材277と缶底部2cとの間に配置した場合、缶底部2cと樹脂部材277との密着性が向上し、放熱性が向上する。
本実施形態の組電池では、樹脂部材277をバスバーにインサート成形されている。そのため、第二の実施形態よりも、樹脂部材77がさらに強固にバスバーに固定される。また、缶底部2cとの接触も得易く、供用中の耐振動性がさらに向上する。
さらに、樹脂部材277がインサート成形により、バスバー60と一体化するため、製造時の取扱いが易しく、工程のスピードアップを図ることが容易になる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。