以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両ドア1が取付けられた車両Vを示す図である。車両ドア1は、車両Vの右側面の前方側、すなわち右ハンドル車の運転席側に取付けられる。しかしながら、他の部位に取付けられた車両ドアに本発明を適用することができる。
図1に示すように、車体Bの側面に乗降用の開口OPが形成される。開口OPの前方縁FEに上下方向に間隔を開けて、車両ドア1の構成部品である2つのドアヒンジ(上側ドアヒンジ5a,下側ドアヒンジ5b)が取付けられる。上側ドアヒンジ5aは下側ドアヒンジ5bの上方に設けられる。上側ドアヒンジ5aのヒンジ軸(ヒンジピン)及び下側ドアヒンジ5bのヒンジ軸(ヒンジピン)は共に上下方向に沿って延びている。車両ドア1は、上側ドアヒンジ5a及び下側ドアヒンジ5bを介して、開口OPを開閉可能であり且つヒンジ軸周りを揺動可能であるように、車体Bに取付けられる。なお、厳密に言えば、上側ドアヒンジ5aのヒンジ軸及び下側ドアヒンジ5bのヒンジ軸は、上下方向に対して僅かに傾いている。
図2は、車体Bに取付けられた車両ドア1の側面図である。図1及び図2に示すように、車両ドア1内にドアロック装置DLが配設される。ドアロック装置DLは、車両ドア1を車体に係止するための装置である。ドアロック装置DLは、車両ドア1を閉じる際に開口OPの後方縁REに設けられたストライカSTに係合する。ドアロック装置DLがストライカSTに係合することにより車両ドア1が車体Bに係止されるとともに開口OPが閉鎖される。
車両ドア1を構成する部品のうち最も外側にアウタパネル8が配設される。このアウタパネル8にアウトサイドドアハンドルDHが取付けられる。アウトサイドドアハンドルDHを操作することにより、ドアロック装置DLとストライカSTとの係合が解除される。このため車両ドア1を開くことができる。
図3は車両ドア1を外方側から見た斜視図、図4は車両ドア1を内方側から見た斜視図である。図3、図4において、アウタパネル8は省略されている。
図3及び図4に示すように、車両ドア1は、インナパネル2と、インパクトビーム3と、外部補強部材としてのアウタリインフォースメント4と、ドアヒンジ(上側ドアヒンジ5a,下側ドアヒンジ5b)を有する。アウタリインフォースメント4はインナパネル2よりも外方に配設される。インパクトビーム3は側突時の衝撃を吸収する部材であり、インナパネル2とアウタリインフォースメント4との間に配設される。
図5乃至図7はインナパネル2を示す図であり、図5は外方側から見たインナパネル2の側面図、図6はインナパネル2の平面図、図7はインナパネル2の後面図である。図5において、右方向が前方(車両前方)であり左方向が後方(車両後方)である。「前方」は、車両の後部から前部に向かう方向を意味し、「後方」は、車両の前部から後部に向かう方向を意味する。図5に示すように、インナパネル2は、本体部21と、本体部21の上部に設けられた枠部22とを有する。インナパネル2は、炭素繊維が含有された熱可塑性樹脂(熱可塑性炭素繊維強化樹脂)を射出成形することにより形成される。すなわち本実施形態においては車両ドア1の構成部品として繊維強化樹脂製のインナパネルが用いられる。
本体部21は図5に示すように側面視にて略矩形形状をなし、その中央に大きな孔21cが形成される。また、枠部22は立柱部221及び上部222とを有する。立柱部221は本体部21の上端の後方側から上方に向かって立設される。上部222は、立柱部221の上端と本体部21の上端の前方側とを結ぶように湾曲して形成される。立柱部221、上部222及び本体部21の上端辺によって囲まれた空間Sは、ウィンドウガラスによって塞がれる。
本体部21は、外方を向いた外側面21a及び内方を向いた内側面21b(図6、図7参照)を有する。本実施形態において、「外方」は、車両の幅方向であって車内側から車外側に向かう方向を意味し、「内方」は、車両の幅方向であって車外側から車内側に向かう方向を意味する。
本体部21の外側面21aに複数のリブが立設される。複数のリブは、図5に示す側面方向から見て斜め方向、つまり、後方から前方に向かうにつれて上下位置が直線的に変化するような方向、に延設される複数のリブ211を含む。このような斜め方向に延設された複数のリブ211によってインナパネル2が補強される。複数のリブ211は、「トラス構造」をなす。すなわち、複数のリブ211が外側面21aにトラス状に配設されている。「トラス状」とは、インナパネル2に作用する外力を軸方向に沿って受けるようなリブ211の配置の態様を意味する。
また、本体部21の外側面21aに、一対のガイドレール部(前側ガイドレール部212a及び後側ガイドレール部212b)が形成される。一対のガイドレール部は、本体部21の上端から下端側に向かって斜め前方に延設される。前側ガイドレール212aは後側ガイドレール部212bよりも前方に設けられる。一対のガイドレール部(前側ガイドレール部212a及び後側ガイドレール部212b)は互いに平行である。
また、本体部21の外側面21aに、第1前側プーリ213a、第2前側プーリ213b、第1後側プーリ214a、第2後側プーリ214bが回転可能に軸支される。さらに、外側面21aにドラム215が取付けられる。第1前側プーリ213aは前側ガイドレール部212aの上端部付近に設けられ、第2前側プーリ213bは前側ガイドレール部212aの下端部付近に設けられる。第1後側プーリ214aは後側ガイドレール部212bの上端部付近に設けられ、第2後側プーリ214bは後側ガイドレール部212bの下端部付近に設けられる。ドラム215は、本体部21の中央に形成されている孔21cの前方縁と前側ガイドレール部212aとの間の部分に設けられる。
前側ガイドレール部212a及び後側ガイドレール部212bは、ウィンドウガラスの昇降をガイドするための部品であり、すなわちウィンドウレギュレータ装置の構成部品である。図8は、ウィンドウレギュレータ装置WRの主な構成を示す図である。図8に示すように、ウィンドウレギュレータ装置WRは、前側ガイドレール部212a、後側ガイドレール部212b、第1前側プーリ213a、第2前側プーリ213b、第1後側プーリ214a、第2後側プーリ214b、ドラム215、前側嵌合部216a、後側嵌合部216b、第1ケーブルC1、第2ケーブルC2、第3ケーブルC3、及び、図示しない駆動装置を備える。
前側ガイドレール部212aに前側嵌合部216aが嵌合し、後側ガイドレール部212bに後側嵌合部216bが嵌合する。前側嵌合部216aは前側ガイドレール部212aの長手方向に沿って移動可能であるように前側ガイドレール部212aに嵌合する。後側嵌合部216bは後側ガイドレール部212bの長手方向に沿って移動可能であるように後側ガイドレール部212bに嵌合する。前側嵌合部216a及び後側嵌合部216bにウィンドウガラスWの下端辺が固定される。
第1ケーブルC1は、その一方端にてドラム215に係止され、その他方端にて前側嵌合部216aに係止され、その中間部分にて第2前側プーリ213bに巻かれる。第2ケーブルC2は、その一方端にてドラム215に係止され、その他方端にて後側嵌合部216bに係止され、その中間部分にて第1後側プーリ214aに巻かれる。第3ケーブルC3は、その一方端にて前側嵌合部216aに係止され、その他方端にて後側嵌合部216bに係止され、その中間部分にて第1前側プーリ213a及び第2後側プーリ214bに巻かれる。
図示しない駆動装置の駆動によってドラム215が一方向に回転したときに、第1ケーブルC1がドラム215に巻き取られるととも第2ケーブルC2がドラム215から繰り出される。このため前側嵌合部216a及び後側嵌合部216bがそれぞれガイドレール部212a,212bの長手方向に沿って同時に下方移動する。その結果、ウィンドウガラスWが下降する。一方、ドラム215が他方向に回転したときに、第2ケーブルC2がドラム215に巻き取られるとともに第1ケーブルC1がドラム215から繰り出される。このため前側嵌合部216a及び後側嵌合部216bがそれぞれガイドレール部212a,212bの長手方向に沿って同時に上方移動する。その結果、ウィンドウガラスWが上昇する。ウィンドウガラスWが上昇することによって、インナパネル2に形成された空間Sが塞がれる。
また、図5に示すように、本体部21の外側面21aの後方端部にはドアロック取付凹部217が形成される。ドアロック取付凹部217にドアロック装置DLが配設される。ドアロック装置DLは、ドアロック取付凹部217に配設されるとともにインナパネル2に固定される。
さらに、本体部21の外側面21aの前方端部に、2つの上側ヒンジ取付孔218a,218b、及び、2つの下側ヒンジ取付孔219a,219bが形成される。上側ヒンジ取付孔218a,218bは、下側ヒンジ取付孔219a,219bよりも上方に形成される。2つの上側ヒンジ取付孔218a,218bは前後方向に間隔を開けて設けられる。同様に、2つの下側ヒンジ取付孔219a,219bも前後方向に間隔を開けて設けられる。
図9乃至図11は、アウタリインフォースメント4を示す図であり、図9は外方側から見たアウタリインフォースメント4の側面図、図10はアウタリインフォースメント4の平面図、図11はアウタリインフォースメント4の後面図である。図9において、右方向が前方であり左方向が後方である。アウタリインフォースメント4は、インナパネル2の補強部材及び車両ドア1の補強部材としての役割を果たす。本実施形態に係るアウタリインフォースメント4は、炭素繊維が含有された熱可塑性樹脂(熱可塑性炭素繊維強化樹脂)を射出成形することにより形成される。すなわち本実施形態においては車両ドアの構成部品として繊維強化樹脂製のアウタリインフォースメントが用いられる。
アウタリインフォースメント4は、外方を向く外側面4aおよびその反対側の内方を向く内側面4b(図10、図11参照)を有する。内側面4bがインナパネル2の本体部21の外側面21aに対面するように、アウタリインフォースメント4がインナパネル2よりも外方に配設される。アウタリインフォースメント4はインナパネル2に結合される。
図9に示すように、アウタリインフォースメント4は、後側補強部41(第1補強部)と、ベルトライン補強部42(第2補強部)と、前側補強部43(第3補強部)とを有する。後側補強部41はアウタリインフォースメント4の後方部分を形成する。ベルトライン補強部42は、後側補強部41に連続して形成されているとともに、後側補強部41から前方に向かって前後方向に延設される。前側補強部43はアウタリインフォースメント4の前方部分を形成する。前側補強部43は、ベルトライン補強部42に連続して形成されるとともに下方に向かって上下方向に延設される。このように構成されるアウタリインフォースメント4は、図9に示すように側面視にて略L字形状をなす。
後側補強部41は、インナパネル2の本体部21の後端側に形成されたドアロック取付凹部217に対面する。なお、アウタリインフォースメント4は、図11に良く示すように、後側補強部41から内方に延設されたドアロック取付ブラケット45を有する。このドアロック取付ブラケット45に、インナパネル2のドアロック取付凹部217に配設されたドアロック装置DLが組み付けられる。従って、ドアロック取付ブラケット45及びドアロック装置DLを介してアウタリインフォースメント4がインナパネル2に結合される。後側補強部41は、特に車両ドア1が閉じている場合に、インナパネル2の本体部21のうちドアロック装置DLが取付けられている付近、すなわちドアロック取付凹部217付近を補強する。
また、前側補強部43は、インナパネル2の本体部21の前方側に形成された上側ヒンジ取付孔218a,218b、及び、下側ヒンジ取付孔219a,219bに対面する。前側補強部43は、特に車両ドア1が開いている場合に、インナパネル2の本体部21のうち上側ヒンジ取付孔218a,218b、及び下側ヒンジ取付孔219a,219b付近を補強する。さらに、後側補強部41と前側補強部43との間のベルトライン補強部42が、インナパネル2の本体部21のうちベルトライン付近、すなわち孔21cの上部付近に対面する。ベルトライン補強部42は、特に車両ドア1への側突時における車両ドア1のベルトライン付近を補強する。
図12は、本実施形態に係る車両ドア1を前後方向に垂直な平面で切断した部分断面図である。図12に示すように、車両ドア1は、最も内側に配設されたインナパネル2と、インナパネル2よりも外方に配設されたアウタリインフォースメント4と、アウタリインフォースメント4よりも外方に配設されたアウタパネル8とを備える。アウタパネル8が最も外側に配設される。アウタパネル8の内壁面とアウタリインフォースメント4の外側面4aが対面する。インナパネル2とアウタリインフォースメント4との間にウィンドウガラスWが配置する。
また、アウタリインフォースメント4の外側面4a及び内側面4b、すなわちアウタリインフォースメント4の両側面に、複数のリブ44が形成される。なお、図12からわかるように、インナパネル2の本体部21の外側面21a及び内側面21bにも複数のリブ211が形成されている。
図9に示すように、アウタリインフォースメント4の外側面4a(及び内側面4b)に設けられている複数のリブ44は、後方から前方に向かうにつれて上下位置が直線的に変化するような方向、に延設される。このような斜め方向に延設された複数のリブ44によってアウタリインフォースメント4が補強される。複数のリブ44は、「トラス構造」をなす。すなわち、複数のリブ44が、アウタリインフォースメント4の外側面4a及び内側面4bにトラス状に配設されている。
また、図12に示すように、アウタリインフォースメント4の内側面4bに形成される複数のリブ44の配設位置は、アウタリインフォースメント4の外側面4aに形成される複数のリブ44の配設位置に一致する。従って、複数のリブ44が、アウタリインフォースメント4の内側面4b側から外側面4a側に向かって貫通するように設けられる。同様に、インナパネル2の本体部21の内側面21bに形成される複数のリブ211の配設位置は、インナパネル2の本体部21の外側面21aに形成される複数のリブ211の配設位置に一致する。従って、複数のリブ211が、インナパネル2の本体部21の内側面21b側から外側面21a側に向かって貫通するように設けられる。
また、図9に示すように、アウタリインフォースメント4の後側補強部41に、一対のハンドル取付孔49,49が形成される。一対のハンドル取付孔49,49には、車両のアウトサイドドアハンドルDH(図2参照)が取付けられる。すなわち、本実施形態に係るアウタリインフォースメント4が、アウトサイドドアハンドルDHの支持部(フレーム部)を兼用する。
また、アウタリインフォースメント4の前側補強部43は、上下方向に間隔を開けて設けられた一対のヒンジ固定部(上側ヒンジ固定部46a、下側ヒンジ固定部46b)を有する。上側ヒンジ固定部46aは下側ヒンジ固定部46bの上方に形成される。上側ヒンジ固定部46aはインナパネル2の本体部21に形成された一対の上側ヒンジ取付孔218a,218bの付近の部位に外方から対面する。下側ヒンジ固定部46bは本体部21に形成された一対の下側ヒンジ取付孔219a,219bの付近の部位に外方から対面する。上側ヒンジ固定部46aに上側ドアヒンジ5aが固定され、下側ヒンジ固定部46bに下側ドアヒンジ5bが固定される。上側ドアヒンジ5a及び下側ドアヒンジ5bにより、インナパネル2とアウタリインフォースメント4が共締めされる。
図13は、上側ドアヒンジ5aが上側ヒンジ固定部46aに固定された状態を外方側から示す図であり、図14は、上側ドアヒンジ5aが上側ヒンジ固定部46aに取付けられた状態を内方側から示す図である。また、図15は、上側ドアヒンジ5aを通過するように上下方向に垂直な平面で車両ドア1を切断した場合における、車両ドア1の部分断面図である。
図13及び図15に示すように、上側ドアヒンジ5aは、第1アーム51と、第2アーム52と、ヒンジピン53(図15参照)を備える。第1アーム51及び第2アーム52は、それぞれの一方端にてヒンジピン53に揺動可能に連結される。従って、第1アーム51及び第2アーム52は、互いにヒンジ軸(ヒンジピン53)周りを揺動可能に接続される。第1アーム51及び第2アーム52は、ヒンジピン53の軸方向に直交する方向に延びるように長細く形成される。第1アーム51には2つの挿通孔51a,51bがその長手方向に間隔を開けて形成される。同様に、第2アーム52には2つの挿通孔52a,52bがその長手方向に間隔を開けて形成される。つまり、挿通孔51a,51bは、ヒンジピン53の軸方向(上下方向)に直交する方向に間隔を開けて形成されており、同様に、挿通孔52a,52bも、ヒンジピン53の軸方向(上下方向)に直交する方向に間隔を開けて形成される。第1アーム51は、車体Bに形成された乗降用の開口OPの前方縁FEに載置される。前方縁FEに載置された第1アーム51の挿通孔51a,51bに締結部材が差し込まれる。差し込まれた締結部材を前方縁FEに固定することにより、第1アーム51が車体Bに取付けられる。
上側ドアヒンジ5aの第2アーム52が、アウタリインフォースメント4の上側ヒンジ固定部46aに固定される。図13に示すように、上側ヒンジ固定部46aは、前側補強部43の前方端から後方に延びるように細長く形成される。上側ヒンジ固定部46aには、図15に示すように、アウタリインフォースメント4(前側補強部43)の外側面4aの前端から後方に延びた底壁48と、底壁48の縁部分から外方に立設した側壁47とが形成される。底壁48上に第2アーム52が載置される。このとき第2アーム52に形成された挿通孔52a,52bが前後方向に間隔を開けて配列するように、第2アーム52が底壁48上に載置される。
図15に示すように、底壁48に2つの上側ヒンジ取付孔48a,48bが前後方向に沿って(すなわち前後方向に間隔を開けて)形成される。2つの上側ヒンジ取付孔48a,48bは、インナパネル2の本体部21の前方部分に前後方向に間隔を開けて形成された上側ヒンジ取付孔218a,218bにそれぞれ同心的に重ね合わされる。また、底壁48に載置された第2アーム52の挿通孔52a,52bは、前後方向に沿って(すなわち前後方向に間隔を開けて)配列するように、底壁48に形成された2つの上側ヒンジ取付孔48a,48bにそれぞれ同心的に重ね合わされる。重ね合わされたこれらの孔にボルト部材BT、BTが差し込まれる。そして、ボルト部材BT、BTがナット部材NT、NTによって締め付けられることにより、上側ドアヒンジ5a(第2アーム52)がインナパネル2及びアウタリインフォースメント4に固定される。なお、下側ドアヒンジ5bの構造は上側ドアヒンジ5aの構造と同一であり、下側ドアヒンジ5bのインナパネル2及びアウタリインフォースメント4への固定構造は、上側ドアヒンジ5aのインナパネル2及びアウタリインフォースメント4への固定構造と同一である。従って、下側ドアヒンジ5bの構造及び下側ドアヒンジ5bのインナパネル2及びアウタリインフォースメント4への固定構造についての説明は省略する。
このように、上側ドアヒンジ5aの第2アーム52及び下側ドアヒンジ5bの第2アーム52は、アウタリインフォースメント4の上側ヒンジ固定部46a及び下側ヒンジ固定部46bを介してインナパネル2の上側ヒンジ取付孔218a,218b及び下側ヒンジ取付孔219a,219bに取付けられる。よって、上側ドアヒンジ5a及び下側ドアヒンジ5bを介して車両ドア1(インナパネル2及びアウタリインフォースメント4)が車体Bに揺動可能に取付けられる。
本実施形態に係る車両ドア1は、上述したように、熱可塑性炭素繊維強化樹脂製のインナパネル2と、熱可塑性炭素繊維強化樹脂製のアウタリインフォースメント4とを備える。インナパネル2とアウタリインフォースメント4が金属よりも軽い樹脂で形成されているため、車両ドア1の重量を十分に低減させることができる。また、使用する樹脂は熱可塑性であり、熱硬化性樹脂に比較して安い。従って、熱硬化性樹脂を使用して車両ドアを製造する場合と比較して、安価である。なお、インナパネル2及びアウタリインフォースメント4を、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)、或いは、スーパーエンジニアリングプラスチックによって形成してもよい。
また、インナパネル2の本体部21は、外方を向く外側面21a及び内方を向く内側面21bを有する。インナパネル2の本体部21の前方部位に、上側ヒンジ取付孔218a,218b(ヒンジ取付部)と下側ヒンジ取付孔219a,219b(ヒンジ取付部)が、上下方向に間隔を開けて形成される。上側ヒンジ取付孔218a,218bに上側ヒンジ5aが取付けられ、下側ヒンジ取付孔219a,219bに下側ヒンジ5bが取付けられる。また、インナパネル2の本体部21の後方部位にドアロック取付凹部217(ドアロック取付部)が形成される。ドアロック取付凹部217にドアロック装置DLが取付けられる。
また、アウタリインフォースメント4は、インナパネル2よりも外方に配設される。アウタリインフォースメント4は、外方を向く外側面4a及び内方を向く内側面4bを有し、インナパネル2に結合される。アウタリインフォースメント4は、後側補強部41(第1補強部)と、ベルトライン補強部42(第2補強部)と、前側補強部43(第3補強部)と、を備える。後側補強部41はアウタリインフォースメント4の後方部分を形成するとともにドアロック取付凹部217に対面する。ベルトライン補強部42は後側補強部41に連続して形成されるとともに後側補強部41から前方に向かって延設され、インナパネル2のベルトライン部に対面する。前側補強部43はベルトライン補強部42に連続して形成されてアウタリインフォースメント4の前方部分を形成するとともに、インナパネル2の本体部21の前方部位に形成された上側ヒンジ取付孔218a,218bの付近の部位及び下側ヒンジ取付孔219a,219bの付近の部位に対面するように上下方向に延設される。
本実施形態によれば、アウタリインフォースメント4の後側補強部41によって、インナパネル2のうちドアロック取付凹部217付近が補強される。ベルトライン補強部42によって、車両ドア1のベルトライン付近が補強される。前側補強部43によって、インナパネル2のうち上側ヒンジ取付孔218a,218b及び下側ヒンジ取付孔219a,219bが形成されている付近が補強される。
一般に、車両ドアのインナパネルのうちドアロック装置が取付けられている付近には、車両ドアが閉められているときに大きな応力が作用する。また、インナパネルの車体への取付部分(ヒンジが取付けられている部分)には、車両ドアが開かれているときに大きな応力が作用する。さらに、車両ドアのベルトライン付近には、車両ドアに外方から衝撃力が加えられたとき(側突時)に大きな応力が作用する。
本実施形態に係るアウタリインフォースメント4は、上記した各応力に対してインナパネル2を補強する。このため車両ドア1の剛性を高めることができる。また、上記した応力の集中箇所(ドアロック取付凹部217付近、ベルトライン付近、上側ヒンジ取付孔218a,218b付近及び下側ヒンジ取付孔219a,219b付近)を繋ぐようにアウタリインフォースメント4が形成されているため、それぞれの応力集中箇所に個々に補強部材を配設した場合に比べ、応力がより分散する。その結果、車両ドアの剛性がより高められる。また、それぞれの応力集中箇所に個々に補強部材を配設する場合に比べて車両ドアの組み付け工数及び製造コストを低減できる。
また、本実施形態に係るアウタリインフォースメント4の形状は略L字形状であり、前方側が後方側に比べて大きく、且つ、インナパネル2の本体部21に形成された上側ヒンジ取付孔218a,218b及び下側ヒンジ取付孔219a,219bを覆っている。このような形状のアウタリインフォースメント4を用いて車両ドアを製造した場合、車両ドアの剛性を表す指標である「ドア下がり量」を低減できる。
また、本実施形態のアウタリインフォースメント4に複数のリブ44がトラス状に配設されている。トラス状に配設された複数のリブ44によってアウタリインフォースメント4の剛性が高められる結果、車両ドアの剛性も高められる。また、本実施形態のインナパネル2の本体部21に複数のリブ211がトラス状に配設されている。トラス状に配設された複数のリブ211によってインナパネル2の剛性が高められる結果、車両ドア1の剛性も高められる。このようにして車両ドア1の剛性が高められる結果、車両ドアの剛性を表す指標としての「ドア下がり量」、及び、「ドア過開き量」を共に低減することができる。
なお、「ドア下がり量」とは、全開状態の車両ドアの後方端に上方から下方に向けて一定の荷重を作用させたときに車両ドアが下方に変位する量である。また、「ドア過開き量」とは、全開状態の車両ドアにさらに開く方向に向けて一定の荷重を作用させたときに車両ドアがさらに開く方向に変位する量である。「ドア下がり量」及び「ドア過開き量」が小さいほど、車両ドアの剛性が高いことを表す。
このように、本実施形態によれば、アウタリインフォースメント4の形状工夫、及び、インナパネル2及びアウタリインフォースメント4へのトラス状のリブの配索によって、車両ドアの剛性を十分に高めることができる。それ故に、インナパネル及びアウタリインフォースメントを樹脂により成形した場合であっても、車両ドアの剛性に関する要求を満たすことができるとともに、車両ドアの軽量化を図ることができる。
また、インナパネル2の本体部21の両側面(外側面21a及び内側面21b)及びアウタリインフォースメント4の両側面(外側面4a及び内側面4b)に複数のリブ211,44が設けられている。このように両側面にリブを設けることで、インナパネル2及びアウタリインフォースメント4の捩り剛性をも高めることができる。
一般的に、車両ドアの揺動軸方向(ヒンジ軸の軸方向)は、車体に対して厳密に鉛直方向ではなく、鉛直方向から僅かに傾斜している。従って、全開状態の車両ドアに上方から下方に向かって一定の荷重が作用した場合、及び全開状態の車両ドアにさらに車両ドアが開く方向に向かって一定の荷重が作用した場合、車両ドアが捩られる。この点に関し、本実施形態においては、上記したようにインナパネル2及びアウタリインフォースメント4の両側面にリブが形成されているため、捩り剛性が高められている。よって、車両ドアの捩じれ量が低減し、これによりドア下がり量及びドア過開き量をより低減することができる。その結果、車両ドアの剛性をより高めることができる。
また、アウタリインフォースメント4の外側面4aに複数のリブ44を設けることによって、図12に示すように、リブ44の先端面とアウタパネル8の内壁面が対面する。このため複数のリブ44の先端面によりアウタパネル8が内側から支えられ、アウタパネル8の凹みがリブ44によって抑えられる。すなわち、複数のリブ44がアウタパネル8のデントリインフォースメントとしての機能を果たす。換言すれば、アウタリインフォースメント4がデントリインフォースメントを兼用する。その結果、別途、アウタパネル8専用のデントリインフォースメントを設ける必要がない。よって、車両ドアの部品点数を削減することができるとともに、車両ドアの重量の増加が抑えられる。また、アウタパネル8の凹みを防止するためのプレスラインをアウタパネル8の外側面に形成しなくてもよい。よって、プレスラインの形成によるアウタパネル8の意匠性の自由度の減少を抑えることができる。また、複数のリブ44の先端面によって広範囲にアウタパネル8を支えることができるため、より広範囲に亘り、アウタパネル8の凹みを防止することができる。
さらに、本実施形態によれば、アウタリインフォースメント4がアウトサイドドアハンドルDHの支持部(フレーム部)を兼ねているため、車両ドアの構成部品点数を削減することができる。さらに、本実施形態によれば、インナパネル2の本体部21の外側面21aにウィンドウレギュレータ装置WRのガイドレール部(前側ガイドレール部212a、後側ガイドレール部212b)、すなわちウィンドウガラスWの昇降をガイドするためのガイドレール部が形成されているので、別途ガイドレール部を設ける必要がない。そのため車両ドアの構成部品点数を更に削減することができる。
また、本実施形態の車両ドア1は、一対のドアヒンジ(上側ドアヒンジ5a、下側ドアヒンジ5b)を備える。一対のドアヒンジ(上側ドアヒンジ5a、下側ドアヒンジ5b)は、第1アーム51と、第2アーム52と、第1アーム51と第2アーム52とをその軸周りに揺動可能に接続するヒンジピン53とを有する。そして、第1アーム51が車体Bに取付けられ、第2アーム52がボルトBTを介してインナパネル2及びアウタリインフォースメント4の双方に締結される。つまり、ドアヒンジによって、インナパネル2とアウタリインフォースメント4が共締めされる。従って、車両ドア1に作用する外部応力がインナパネル2とアウタリインフォースメント4とに分散され、インナパネル2に作用する外部応力及びアウタリインフォースメント4に作用する外部応力がそれぞれ軽減される。その結果、剛性が小さい樹脂製、好ましくは繊維強化樹脂製のインナパネル2及びアウタリインフォースメント4を車両ドア1の構成部品として用いた場合であっても、外部応力によるインナパネル2の変形が防止される。
また、ドアヒンジ(上側ドアヒンジ5a、下側ドアヒンジ5b)がアウタリインフォースメント4とインナパネル2とを固定するため、別途、アウタリインフォースメント4をインナパネル2に固定するための部材を設ける必要がない。そのため車両ドア1の構成部品点数を更に削減することができる。
また、ドアヒンジ(上側ドアヒンジ5a、下側ドアヒンジ5b)の第2アーム52には、ヒンジピン53の軸方向(第1の方向)に直交する方向(第2の方向)に間隔を開けて複数の取付孔52a,52bが形成されている。本実施形態においては、図15に良く示すように、取付孔52a,52bは、ヒンジピン53の軸方向である上下方向に直交する車両前後方向に間隔を開けて形成される。そして、複数の取付孔52a,52bにそれぞれ差し込まれるボルトBT,BTを介して、第2アーム52がインナパネル2及びアウタリインフォースメントの双方に締結される。
このように、ヒンジ軸の軸方向に直交する前後方向に沿った複数の位置で、ドアヒンジの第2アーム52がインナパネル2及びアウタリインフォースメント4に接続されるため、ヒンジピン53の軸方向に平行な第1の方向(上下方向)に外力が加えられたとき、例えば全開状態の車両ドアの後方端に上方から下方に向けて一定の荷重を作用させたとき、に生じる回転モーメントに対するドアヒンジの剛性を高めることができる。これにより、例えば車両ドアの剛性の指標の一つであるドア下がり量を減少させることができる。このように、本実施形態によれば、インナパネル2及びアウタリインフォースメント4へのドアヒンジの取り付け方を工夫することによって、車両ドア1の剛性を向上させることができる。
また、第2アーム52の複数の取付孔52a,52bに差し込まれたボルトBT,BTの挿入方向は、図15に示すように、第1の方向(上下方向)及び第2の方向(前後方向)に直交する第3の方向、すなわち外方から内方に向かう車両幅方向である。第3の方向(車両幅方向)にボルトBT,BTが挿入されることによって、第3の方向に沿って並んで配列されたインナパネル2とアウタリインフォースメント4とを結合することができる。
また、図5に示すように、インナパネル2の本体部21の前方部分と枠部22の上部222の前方部分との接続部分Qに設けられているリブの密度(単位面積当たりのリブの本数)は、その他の部分に設けられているリブの密度よりも高い。したがって、本体部21と枠部22との接続部分の剛性が向上する。このため、車両走行時における吸い出し力によって枠部22が外方に変形することが効果的に防止される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、2つのヒンジによって車両ドア1が車体Bに揺動可能に接続されている例について説明したが、3つ以上のヒンジによって車両ドア1が車体Bに揺動可能に接続されていてもよい。また、トラス状に配設された複数のリブの高さは、本実施形態では概ね15mm程度であるが、補強する程度に応じてリブの高さを任意に設定できる。また、上記実施形態では、車体の側面に形成される乗降用の開口OPを開閉可能な車両ドアについて説明したが、例えばバックドアにも本発明を適用することができる。また、上記実施形態において、アウタリインフォースメント4の外側面4aに設けられるリブ44の先端とアウタパネル8の内壁面との間に挟持されるような態様で、シール部材を設けてもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜変形可能である。