JP2015157754A - サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い生産効率でサファイア単結晶を製造することができるサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体を提供する。
【解決手段】相対密度が60%以上であり、閉気孔率が10%以下であり、純度が99.99質量%以上であり、Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量がそれぞれ10ppm以下であり、体積が1cm3以上であるカイロポーラス法によるサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体。形状が円盤1,2、円柱3、角柱4、及び多角板5のいずれかであるサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体。
【選択図】図1

Description

本発明は、サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体に関する。
αアルミナ粉末はサファイア単結晶を製造するための原料として有用である。例えば、αアルミナ粉末を金属モリブデン製のルツボ内に充填し、加熱溶融させたのち、溶融物を引き上げる方法により、サファイア単結晶を製造することができる〔特許文献1〕。
特開平5−97569号公報
しかし、従来のαアルミナ粉末は、サファイア単結晶の生産効率が十分でなかった。
したがって、本発明の課題は、高い生産効率でサファイア単結晶を製造することができるサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体を提供することにある。
本発明者らは、サファイア単結晶の製造に適したαアルミナ原料を開発すべく検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
(1)相対密度が60%以上であり、閉気孔率が10%以下であり、純度が99.99質量%以上であり、Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量がそれぞれ10ppm以下であり、体積が1cm3以上であることを特徴とするカイロポーラス法によるサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体。
(2)形状が円盤、円柱、角柱、および多角板のいずれかである前記(1)に記載のαアルミナ焼結体。
(3)(i)〜(iv)のいずれかである前記(2)に記載のαアルミナ焼結体。
(i):形状が円盤であり、断面の直径が5mm以上500mm以下、厚さが5mm以上500mm未満であり、直径を1としたとき、厚さが0.01以上1未満である。
(ii):形状が円柱であり、断面の直径が5mm以上500mm以下、高さが5mm以上2000mm以下であり、直径を1としたとき、高さが1以上100以下である。
(iii):形状が角柱であり、断面の円相当直径が5mm以上500mm以下、高さが5mm以上2000mm以下であり、円相当直径を1としたとき、高さが1以上100以下である。
(iv):形状が多角板であり、断面の円相当直径が5mm以上500mm以下、厚さが5mm以上500mm未満であり、円相当直径を1としたとき、厚さが0.01以上1未満である。
本発明のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体は、ルツボ内で加熱溶融され、引き上げる方法により、着色やクラックなどの少ない良質なサファイア単結晶を容易に得ることができる。さらに、サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体を、例えば円盤状にして複数個を積層したり、柱状にして複数本を束ねたりして、ルツボ内に仕込むことにより、高い容積効率でサファイア単結晶を製造することができる。
本発明における成形体は、機械的強度が高く、サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体の製造原料に好適に使用される。
(a)は、本発明の一実施形態に係る円盤形状のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体を示す斜視図であり、(b)は、図1(a)に係るαアルミナ焼結体を複数分割したサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体を示す斜視図であり、(c)は、本発明の他の実施形態に係る円柱形状のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体を示す斜視図であり、(d)は、本発明のさらに他の実施形態に係る角柱形状のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体を示す斜視図であり、(e)は、本発明のさらに他の実施形態に係る多角板形状のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体を示す斜視図である。
[サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体]
本発明のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体(以下、単にαアルミナ焼結体という場合がある)は、所定の相対密度、閉気孔率、純度、さらにSi、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量、並びに体積を有する。
αアルミナ焼結体は、相対密度が60%以上であり、好ましくは65%以上95%以下であるのがよい。相対密度が上記範囲内であると、サファイア単結晶の製造において、高い容積効率を示す。相対密度とは、焼結体の密度をαアルミナ理論焼結密度で除し、100を掛けた値である。
αアルミナ焼結体は、閉気孔率が10%以下であり、好ましくは8%以下、より好ましくは0%以上4%以下である。閉気孔率が上記範囲内であると、サファイア単結晶の製造過程で閉気孔などに取り込まれる水分が少なく、αアルミナ焼結体を加熱溶融させたときに、これらの水分によりルツボが酸化させるおそれがなく、さらにサファイア単結晶に形成されるボイドの数も少なくなる。閉気孔率とは、αアルミナ焼結体自身の体積と閉気孔体積と開気孔体積との合計体積のうち、閉気孔体積の占める割合である。
αアルミナ焼結体は、純度が99.99質量%以上である。純度が上記範囲内であると着色やクラック、泡などの少ない良質なサファイア単結晶が得られる。
αアルミナ焼結体は、Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量がそれぞれ10ppm以下であり、好ましくは、Siは8ppm以下、Naは5ppm以下、Caは1ppm以下、Feは8ppm以下、Cuは1ppm以下、およびMgは1ppm以下の含有量であるのがよく、理想的にはこれらの元素は含有しないのが望ましい。それぞれの含有量が上記範囲内であると、着色やクラック、泡などの少ない良質なサファイア単結晶が得られる。
αアルミナ焼結体は、体積が1cm3以上であり、好ましくは5cm3以上である。αアルミナ焼結体の体積の上限は、サファイア単結晶製造用のルツボに制限され、通常、体積の上限は200000cm3以下である。
αアルミナ焼結体は、通常、形状が円盤、円柱、角柱、および多角板のいずれかであるのが好ましい。αアルミナ焼結体を上記いずれかの形状とすれば、複数個のαアルミナ焼結体を積層したり、束ねたりして、ルツボ内に仕込むことにより、高い容積効率かつ高い伝熱効率でサファイア単結晶を製造することができる。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る円盤形状のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体1を示す斜視図であり、図1(b)は、αアルミナ焼結体1を複数分割したサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体2を示す斜視図である。
図1(a)に示すように、形状が円盤であるαアルミナ焼結体1の大きさは、断面の直径が5mm以上500mm以下、厚さが5mm以上500mm未満であり、直径を1としたとき、厚さが0.01以上1未満であるのがよい。このような条件を満たすαアルミナ焼結体1としては、例えば、表1に示すαアルミナ焼結体1a〜1hなどが挙げられる。
Figure 2015157754
また、図1(b)に示すように、αアルミナ焼結体1を複数分割してαアルミナ焼結体2としてもよい。このように分割することで、αアルミナ焼結体をルツボへ仕込む際の取り扱いが容易となる。
図1(c)は、本発明の他の実施形態に係る円柱形状のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体3を示す斜視図である。
図1(c)に示すように、形状が円柱であるαアルミナ焼結体3の大きさは、断面の直径が5mm以上500mm以下、高さが5mm以上2000mm以下であり、直径を1としたとき、高さが1以上100以下であるのがよい。このような条件を満たすαアルミナ焼結体3としては、例えば、表2に示すαアルミナ焼結体3a〜3hなどが挙げられる。
Figure 2015157754
図1(d)は、本発明のさらに他の実施形態に係る角柱形状のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体4を示す斜視図である。
図1(d)に示すように、形状が角柱であるαアルミナ焼結体4の大きさは、断面の円相当直径が5mm以上500mm以下、高さが5mm以上2000mm以下であり、円相当直径を1としたとき、高さが1以上100以下であるのがよい。このような条件を満たすαアルミナ焼結体4としては、例えば、表3に示すαアルミナ焼結体4a〜4hなどが挙げられる。
ここで、断面の円相当直径とは、断面積と同一面積を有する円の直径である(以下、同じ)。
Figure 2015157754
図1(e)は、本発明のさらに他の実施形態に係る多角板形状のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体5を示す斜視図である。
図1(e)に示すように、形状が多角板であるαアルミナ焼結体5の大きさは、断面の円相当直径が5mm以上500mm以下、厚さが5mm以上500mm未満であり、円相当直径を1としたとき、厚さが0.01以上1未満であるのがよい。このような条件を満たすαアルミナ焼結体5としては、例えば、表4に示すαアルミナ焼結体5a〜5hなどが挙げられる。
Figure 2015157754
サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体を加熱溶融したのち冷却することにより、容易に単結晶化させたサファイア単結晶を製造することができる。
また、サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体をサファイア単結晶製造用アルミナ原料として用いることで、着色やクラックなどの少ない良質なサファイア単結晶が得られる。
さらに、サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体は、例えば円盤状にして複数個積層したり、棒状にして複数本束ねたりして、ルツボ内に仕込むことにより、高い容積効率かつ高い伝熱効率でサファイア単結晶を製造することができる。
サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体は、例えばEFG法、チョクラルスキー法、カイロポーラス法などのサファイア単結晶成長方法の原料として使用することができ、好ましくは高い容積効率でルツボ内に充填する必要があるチョクラルスキー法、カイロポーラス法などに用いられる。
[サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体の製造方法]
本発明のαアルミナ焼結体は、例えば、工程(a)、(b)及び(c)を有する方法により製造できる。
工程(a) αアルミナ(以下、αアルミナ粉末という場合がある)とαアルミナ前駆物質を所定割合で混合して混合物を得る。
工程(b) 得られた混合物を成形して成形体を得る。
工程(c) 得られた成形体を焼成してαアルミナ焼結体を得る。
αアルミナ粉末とαアルミナ前駆物質を後述する割合で混合することで、焼成炉への導入時および焼成炉内での焼成時に破損することのない充分な機械的強度を付与することができる。
(αアルミナ粉末)
αアルミナ粉末としては、例えば純度99.99重量%以上の高純度であり、水分量が0.5%未満であり、BET比表面積が好ましくは1m2/g以上20m2/g以下、さらに好ましくは1m2/g以上10m2/g以下であり、平均粒子径が好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上1.0μm以下であり、Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量が好ましくはそれぞれ10ppm以下、さらに好ましくはSiは8ppm以下、Naは5ppm以下、Caは1ppm以下、Feは8ppm以下、Cuは1ppm以下、およびMgは1ppm以下の含有量であるのがよく、理想的にはこれらの元素は含有しないのが望ましい。純度が上記範囲内であると、本願発明で規定する純度のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体が得られやすい。水分量が上記範囲外であると、前記した相対密度のαアルミナ焼結体が得られにくくなる。BET比表面積が上記範囲外であると、前記した相対密度のαアルミナ焼結体が得られにくくなる。平均粒子径が0.1μm未満では、得られるサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体の相対密度の更なる向上がなく、αアルミナ粉末の調製(粉砕工程など)にエネルギーを要する。また平均粒子径が5.0μmを越えると、本願発明で規定する相対密度のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体が得られにくい。Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量が上記範囲内であると、前記含有量であるαアルミナ焼結体が得られる。
なお、純度、水分量、BET比表面積および平均粒子径は、例えば、実施例に記載の評価方法によって測定することができる。
αアルミナ粉末の製造方法としては、例えば、アルミニウムアルコキシド法で製造された水酸化アルミニウムを焼成する方法;有機アルミニウムを使って、合成する方法;その原料に遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ粉末を、塩化水素を含有する雰囲気ガス中にて焼成する方法;特開2010−150090号公報、特開2008−100903号公報、特開2002−047009号公報、特開2001−354413号公報などに記載の方法などが挙げられる。
アルミニウムアルコキシド法としては、例えば、アルミニウムアルコキシドを加水分解してスラリー状、ゾル状、ゲル状の水酸化アルミニウムを得、それを乾燥させることにより乾燥粉末状の水酸化アルミニウムを得る方法などが挙げられる。
アルミニウムアルコキシド法により得られた乾燥粉末状の水酸化アルミニウムを焼成することにより、目的のαアルミナ粉末を得ることができる。
水酸化アルミニウムの焼成は通常、焼成容器に充填して行われる。
焼成容器としては、例えば鞘などが挙げられる。
また焼成容器の材質は、得られるαアルミナ粉末の汚染防止の観点からアルミナであることが好ましく、特に高純度のαアルミナであるのがよい。
水酸化アルミニウムの焼成に用いる焼成炉としては、例えば、トンネルキルン、回分式通気流型箱型焼成炉、回分式並行流型箱型焼成炉などに代表される材料静置型焼成炉;ロータリーキルンなどが挙げられる。
水酸化アルミニウムの焼成温度、焼成温度までの昇温速度及び焼成時間は、上述のように目的とする物性を有するαアルミナとなるように適宜選定する。
水酸化アルミニウムの焼成温度は1100℃以上1450℃以下、好ましくは1200℃以上1350℃以下、この焼成温度まで昇温するときの昇温速度は、通常30℃/時間以上500℃/時間以下、水酸化アルミニウムの焼成時間は、通常0.5時間以上24時間以内、好ましくは1時間以上10時間以内である。
水酸化アルミニウムの焼成は、例えば大気雰囲気中の他、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で焼成してもよく、プロパンガスなどの燃焼によって焼成するガス炉のように、水蒸気分圧が高い雰囲気中で焼成しても良い。
得られたαアルミナ粉末は、場合によっては平均粒子径が10μmを超えた状態で、凝集しているため、その場合は粉砕することが好ましい。
αアルミナ粉末の粉砕方法としては、例えば振動ミル、ボールミル、ジェットミルなどの公知の装置を用いて行うことができ、乾式状態で粉砕する方法、及び、湿式状態で粉砕する方法のいずれも採用することが出来るが、純度を維持しながら、粗大な凝集粒子を含まず、前述のαアルミナ粉末の物性を達成するためには、純度を維持しながら粉砕する方法としては、ジェットミルによる粉砕が好ましい方法として挙げられる。
なお、αアルミナ粉末の平均粒子径は、例えば、実施例に記載の評価方法によって測定することができる。
粉砕装置は、得られるαアルミナ粉末の汚染が少ない点で、αアルミナと接する面が高純度のαアルミナの材質で構成されているか、あるいは樹脂ライニングされていることが好ましい。
媒体撹拌ミルなどを用いて粉砕する場合は、これに用いられる粉砕媒体も、高純度のαアルミナの材質で構成されていることが好ましい。
(αアルミナ前駆物質)
αアルミナ前駆物質は、焼成することによりαアルミナに転移し得る化合物であり、例えば水酸化アルミニウム、遷移アルミナなどの粉末が挙げられ、水酸化アルミニウムおよび遷移アルミナからなる群より選ばれる少なくとも1つであるのが好ましい。
水酸化アルミニウムとしては、例えばギブサイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型、バイヤライト型、ノルストランダイド型、ダイアスポア型などのような結晶質の水酸化アルミニウムのほか、非晶質の水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
遷移アルミナとしては、例えば結晶相がγ相、χ相、θ相、ρ相、κ相などであるγアルミナ、χアルミナ、θアルミナ、ρアルミナ、κアルミナなどが挙げられる。
以下、αアルミナ前駆物質として、γアルミナ粉末を使用した場合を例として説明する。
γアルミナ粉末としては、例えば純度99.99重量%以上の高純度であり、水分量が0.5%以上、好ましくは1%以上4%以下であり、BET比表面積が50m2/g以上、好ましくは100m2/g以上250m2/g以下であり、平均粒子径が好ましくは0.1μm以上10.0μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上5.0μm以下であり、Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量がそれぞれ10ppm以下、好ましくはSiは8ppm以下、Naは5ppm以下、Caは1ppm以下、Feは8ppm以下、Cuは1ppm以下、およびMgは1ppm以下の含有量であるのがよく、理想的にはこれらの元素は含有しないのが望ましい。純度が上記範囲内であると、本願発明で規定する純度のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体が得られやすい。水分量が上記範囲外であると、前記した相対密度のαアルミナ焼結体が得られにくくなる。BET比表面積が上記範囲外であると、前記した相対密度のαアルミナ焼結体が得られにくくなる。平均粒子径が0.1μm未満であると、工業的にγアルミナ粉末の製造が困難であり、また平均粒子径が10.0μmを越えると、本願発明で規定する相対密度のサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体が得られにくい。Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量が上記範囲内であると、前記含有量であるαアルミナ焼結体が得られる。
なお、純度、水分量、BET比表面積、平均粒子径は、上述したαアルミナ粉末の物性の測定方法と同様にして測定することができる。
γアルミナ粉末の製造方法は、例えば、アルミニウムアルコキシド法で製造することが出来、上述のαアルミナ粉末の製造過程で得られる乾燥粉末状の水酸化アルミニウムを焼成することにより、目的のγアルミナ粉末を得ることができる。
γアルミナ粉末を製造するための水酸化アルミニウム(以下、水酸化アルミニウム(A)という)の焼成は通常、焼成容器に充填して行われる。
焼成容器としては、例えば鞘などが挙げられる。
また焼成容器の材質は、得られるγアルミナ粉末の汚染防止の観点からアルミナであることが好ましく、特に高純度のαアルミナであるのがよい。
水酸化アルミニウム(A)の焼成に用いる焼成炉としては、例えば、トンネルキルン、回分式通気流型箱型焼成炉、回分式並行流型箱型焼成炉などに代表される材料静置型焼成炉;ロータリーキルンなども挙げられる。
水酸化アルミニウム(A)の焼成温度、焼成温度までの昇温速度及び焼成時間は、上述のように目的とする物性を有するγアルミナとなるように適宜選定する。
水酸化アルミニウム(A)の焼成温度は、600℃以上1000℃以下、好ましくは700℃以上900℃以下であり、この焼成温度まで昇温するときの昇温速度は、通常30℃/時間以上500℃/時間以下、水酸化アルミニウム(A)の焼成時間は、通常0.5時間以上24時間以内、好ましくは1時間以上10時間以内である。
水酸化アルミニウム(A)の焼成は、例えば大気雰囲気中の他、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で焼成してもよく、プロパンガスなどの燃焼によって焼成するガス炉のように、水蒸気分圧が高い雰囲気中で焼成しても良い。
得られたγアルミナ粉末は、場合によっては平均粒子径が10μmを超えた状態で、凝集しているため、その場合は粉砕することが好ましい。
γアルミナ粉末の粉砕方法としては、特に限定されず、例えば、振動ミル、ボールミル、ジェットミルなどの公知の装置を用いて行うことができ、乾式状態で粉砕する方法、及び、湿式状態で粉砕する方法のいずれも採用することが出来るが、純度を維持しながら、粗大な凝集粒子を含まず、前述のγアルミナ粉末の物性を達成するためには、純度を維持しながら粉砕する方法としては、ジェットミルによる粉砕が好ましい方法として挙げられる。
粉砕装置は、得られるγアルミナ粉末の汚染が少ない点で、γアルミナと接する面が高純度のαアルミナの材質で構成されているか、あるいは樹脂ライニングされていることが好ましい。媒体撹拌ミルなどを用いて粉砕する場合、これに用いられる粉砕媒体も、高純度のαアルミナの材質で構成されていることが好ましい。
αアルミナ前駆物質として、γアルミナ粉末以外の遷移アルミナ(例えば、δアルミナ、θアルミナ)を用いる場合も、焼成温度、焼成温度までの昇温速度、焼成時間及び焼成雰囲気を適宜調節することにより遷移アルミナを調製できる。
(混合物)
αアルミナ粉末100重量部と、γアルミナ粉末1重量部以上20重量部以下、好ましくは1重量部以上10重量部以下、より好ましくは1重量部以上5重量部以下とを混合する。γアルミナ粉末の量が1重量部未満では、混合物を成形した後の成形体の強度が不十分になり、接触や衝撃などで容易に成形体の形状が崩れてしまい、本願発明で規定する体積のαアルミナ焼結体が得られないことがある。また、γアルミナ粉末の量が20重量部を超えると、本願発明で規定する相対密度のαアルミナ焼結体が得られないことがある。
αアルミナ粉末とγアルミナ粉末を混合する方法としては、例えば、水などの溶媒を加えることなく乾燥状態で混合する乾式混合する方法であってもよいし、水などの溶媒を加えて湿潤状態で混合する湿式混合する方法であってもよい。
乾式混合により混合するには、例えば、ドラムミキサー、V型混合機、振動撹拌機、遊星ミル、ボールミルなどを用いた方法を採用することができる。
湿式混合により混合するには、例えば、ボールミルや混合ミキサー、超音波を照射する方法などを採用できるが、不純物の汚染が少ない点で超音波を照射する方法が好ましい。
湿式混合に使用される溶媒としては通常、水が用いられるが、αアルミナ粉末とγアルミナ粉末の分散性をよくするために、分散剤を添加してもよい。
添加する分散剤は、高純度のアルミナを維持する目的から、成形体の焼成により揮発して、不純物としてαアルミナ焼結体中に残存しないよう、例えばポリアクリル酸アンモニウム塩などの高分子系分散剤が好ましい。
湿式混合する場合は、通常、得られたスラリーを乾燥させるが、乾燥させる方法としては、例えば、定置乾燥、流動層乾燥などで乾燥させてもよいし、噴霧乾燥などにより顆粒状にして乾燥させてもよい。
噴霧乾燥は、例えばαアルミナ粉末とγアルミナ粉末との混合スラリーをノズルから噴霧して液滴とし、気流中で乾燥させることにより行われ、これにより、液滴として噴霧されたスラリー中の水分が蒸発し、αアルミナとγアルミナの混合物顆粒が得られる。
混合物顆粒の粒子径は、通常20μm以上200μm以下程度である。粒子径は、例えばノズルから噴霧される際の液滴径、スラリー中の水分量などによりコントロールすることができる。
(成形体)
成形体は、上述のようにして得られた混合物をプレス成形、打錠成形、冷間静水圧成形(CIP)、熱間静水圧成形(HIP)などの加圧成形法などで成形して得られる。
成形する際の成形圧は、所定の機械的強度の成形体が容易に得られる点で、通常20MPa以上400MPa以下、好ましくは50MPa以上200MPa以下である。成形圧が20MPa未満では、得られる成形体の機械的強度が低く、焼成炉への導入時や焼成炉内での焼成時に成形体が破損しやすくなるため好ましくない。また、400MPaを超える成形圧は、工業的に達成が困難であり、好ましくない。
得られた成形体の形状は、通常、円盤、円柱、多角板、および角柱のいずれかであるが、サファイア単結晶を引上げるのに用いる坩堝に近い形状、大きさに、成形体を切削加工してもよい。
成形に用いられる鋳型は、得られる成形体の汚染が少ない点で、混合物と接する面が高純度のαアルミナ製であるか、ゴム製であるか、あるいは樹脂ライニングされていることが好ましい。
(焼結体)
焼結体は、上記のようにして得られた成形体を焼成して得られる。
成形体の焼成温度は、本願発明で規定する純度、閉気孔率および相対密度のαアルミナ焼結体が容易に得られる点で、通常1200℃以上1700℃以下、好ましくは1300℃以上1600℃以下である。焼成温度が1700℃を越える場合では、成形体の焼結が過度に進行し本願発明で規定する閉気孔率のαアルミナ焼結体が得られないことがあり、焼成炉からの不純物汚染なども起こり易い。また、焼成温度が1200℃未満では、γアルミナ粉末のα化が不十分であったり、得られるαアルミナ焼結体の強度が不十分で、接触や衝撃などでαアルミナ焼結体の形状が崩れてしまい、本願発明で規定する体積のαアルミナ焼結体を得られないことがある。
成形体の焼成温度までの昇温速度は、例えば、30℃/時間以上500℃/時間以下であるのがよい。昇温速度が30℃/時間未満にしても、得られるαアルミナ焼結体の相対密度は変わらず、焼成に多大なエネルギーを要するだけであり、好ましくない。昇温速度が500℃/時間を越えると、αアルミナ焼結体の割れやクラックなどが発生しやすくなり、前記体積のαアルミナ焼結体が得られにくくなるおそれがある。
成形体の焼成時間(焼成温度の保持時間)は、γアルミナが十分にα化するに十分な時間であればよく、αアルミナとγアルミナとの量比、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、例えば30分以上24時間以内、好ましくは1時間以上10時間以内である。
成形体の焼成は、大気雰囲気中で行ってもよいし、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また、水蒸気分圧が高い湿潤雰囲気中で行ってもよい。
成形体の焼成は、例えば管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリーハース炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行うことができる。焼成は回分式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
成形体の焼成は通常、成形体を焼成容器に充填して行われる。
焼成容器としては、例えば鞘などが挙げられる。また焼成容器は汚染防止の観点からアルミナ製であることが好ましく、特にαアルミナ製であるのがよい。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
評価方法は下記である。
(1)相対密度
アルキメデス法で焼結密度を測定し、下式で算出した。
相対密度(%)=焼結密度〔g/cm3〕/3.98〔g/cm3;αアルミナ理論焼結密度〕×100
(2)閉気孔率
閉気孔率は粒子密度と細孔容積(開気孔体積)から、下記の式で算出した。細孔容積は試料を120℃で4時間乾燥後、水銀圧入法により細孔半径1μm以下の範囲の細孔容積として求めた。また、粒子密度は、JIS R7222(1997)の真比重測定方法に基づき算出した。
閉気孔体積(cm3/g)=(1/粒子密度)−(1/3.98)
閉気孔率(%)=〔(閉気孔体積)/{(1/3.98)+細孔容積+閉気孔体積}〕×100
(3)体積
アルキメデス法で測定したサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体の焼結密度とサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体1個あたりの重量から、下式で算出した。
体積(cm3/個)=重量〔g/個〕/焼結密度〔g/cm3
(4)不純物濃度、純度
Si、Na、Mg、Cu、Fe、Caの含有量は、固体発光分光法にて測定した。
純度は、サファイア単結晶製造用αアルミナ中に含まれるSiO2,Na2O,MgO,CuO,Fe23,CaOの重量の総和(%)を算出し、これを100から差し引いた。算出式は以下である。
純度(%)=100(%)−不純物の重量の総和(%)
(5)平均粒子径
αアルミナ粉末およびγアルミナ粉末の平均粒子径は、レーザー粒度分布測定装置〔日機装(株)製「マイクロトラック」〕を用いてレーザー回折法により、質量基準で累積百分率50%相当粒子径を平均粒子径として測定した。
(6)比表面積
比表面積は、BET比表面積測定装置〔(株)島津製作所製「2300−PC−1A」〕を用いて窒素吸着法により測定した。
(7)水分量
αアルミナ粉末に吸着している水分量は、JIS H 1901−1977に基づき、試料を110℃で乾燥した後、その減量として測定した。
(8)成形体相対強度
成形体相対強度は、JIS R1601の室温曲げ強さ試験方法に従い3点曲げ強さを測定し、「AKP−3000」(住友化学(株)製、「AKP」は住友化学(株)の登録商標である)の成形体曲げ強さを100として、相対曲げ強さとして算出した。
(9)軽装かさ密度
試料を容積200cm3、深さと内径との比が6:1であるシリンダーに充填した後、その試料重量を測定容器の容積で除して、軽装かさ密度を算出した。
(実施例1)
[αアルミナ粉末の作製]
アルミニウムイソプロポキシドを水で加水分解してスラリー状の水酸化アルミニウムを得、これを乾燥させることにより、軽装かさ密度が0.1g/cm3の乾燥粉末状の水酸化アルミニウムを得た。
さらに、この水酸化アルミニウムを1220℃で4時間保持して焼成し、ジェットミルにて粉砕してαアルミナ粉末を得た。
得られたαアルミナ粉末は、BET比表面積4.5m2/g、水分量0.2%、平均粒子径0.52μm、Si含有量4ppm、Fe含有量4ppm、Cu含有量1ppm、Na含有量2ppm、Mg含有量1ppm、アルミナ純度99.99重量%以上であった。
[γアルミナ粉末の作製]
アルミニウムイソプロポキシドを水で加水分解してスラリー状の水酸化アルミニウムを得、これを乾燥させることにより、軽装かさ密度が0.1g/cm3の乾燥粉末状の水酸化アルミニウムを得た。
さらに、この水酸化アルミニウムを800℃で3時間保持して焼成し、ジェットミルにて粉砕してγアルミナ粉末を得た。
得られたγアルミナ粉末は、BET比表面積154.2m2/g、水分量2%、平均粒子径2.4μm、Si含有量2ppm、Fe含有量4ppm、Cu含有量1ppm、Na含有量2ppm、Mg含有量1ppm、アルミナ純度99.99重量%以上であった。
[焼結体の作製]
αアルミナ粉末とγアルミナ粉末を樹脂製袋内で10分間混合して混合物を得た。γアルミナ粉末の混合量は、得られるαアルミナ焼結体100重量部に対し、2重量部であった。
混合物を内径30mmのゴム製円筒金型に入れ、1t/cm2(98MPa)の静水圧プレスで成形して成形体を得た。
この成形体は、サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体の製造における焼成炉への導入時、および焼成炉内での焼成時に破損することなく十分な機械的強度を有する。
得られた成形体を昇温速度100℃/時間で1350℃まで昇温し、焼成温度1350℃で4時間保持して焼成し、αアルミナ焼結体を得た。
得られたαアルミナ焼結体は、相対密度69%、閉気孔率0%、形状は円柱で、体積6cm3であり、Si含有量6ppm、Na含有量5ppm以下、Mg含有量1ppm以下、Cu含有量1ppm以下、Fe含有量4ppm、Ca含有量1ppm以下であり、アルミナ純度99.99%であった。
このαアルミナ焼結体を多数並べてルツボに充填することで、サファイア単結晶の製造において高い容積効率を示す。
(実施例2)
実施例1の方法と同様に操作することで、αアルミナ粉末とγアルミナ粉末の混合物を得た。
混合物を、内寸が幅5mm、高さ50mm、長さ50mmである金型に入れた他は実施例1と同様にして、角柱に成形して成形体を得た。成形体は、相対強度が142であり、機械的強度に優れた。
この成形体は、サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体の製造における焼成炉への導入時、および焼成炉内での焼成時に破損することなく十分な機械的強度を有する。
得られた成形体を実施例1と同様にして、αアルミナ焼結体が得られる。
このαアルミナ焼結体を多数並べてルツボに充填することで、サファイア単結晶の製造において高い容積効率を示す。
(実施例3)
γアルミナ粉末の量を、得られるαアルミナ焼結体100重量部に対し5重量部と変更した以外は、実施例2と同様に操作し、角柱の成形体を得た。成形体は、相対強度が215であり、強度に優れた。
この成形体は、サファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体製造における焼成炉への導入、および焼成炉内での焼成時に破損することなく十分な機械的強度を有する。
得られた成形体を実施例1と同様にして焼成し、αアルミナ焼結体が得られる。
このαアルミナ焼結体を多数並べてルツボに充填することで、サファイア単結晶の製造において高い容積効率を示す。

Claims (3)

  1. 相対密度が60%以上であり、閉気孔率が10%以下であり、純度が99.99質量%以上であり、Si、Na、Ca、Fe、CuおよびMgの含有量がそれぞれ10ppm以下であり、体積が1cm3以上であることを特徴とするカイロポーラス法によるサファイア単結晶製造用αアルミナ焼結体。
  2. 形状が円盤、円柱、角柱、および多角板のいずれかである請求項1に記載のαアルミナ焼結体。
  3. (i)〜(iv)のいずれかである請求項2に記載のαアルミナ焼結体。
    (i)形状が円盤であり、断面の直径が5mm以上500mm以下、厚さが5mm以上500mm未満であり、直径を1としたとき、厚さが0.01以上1未満である。
    (ii)形状が円柱であり、断面の直径が5mm以上500mm以下、高さが5mm以上2000mm以下であり、直径を1としたとき、高さが1以上100以下である。
    (iii)形状が角柱であり、断面の円相当直径が5mm以上500mm以下、高さが5mm以上2000mm以下であり、円相当直径を1としたとき、高さが1以上100以下である。
    (iv)形状が多角板であり、断面の円相当直径が5mm以上500mm以下、厚さが5mm以上500mm未満であり、円相当直径を1としたとき、厚さが0.01以上1未満である。
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