以下、本発明に係る実施例及び実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施例及び各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
基本実施例.
まず、振動情報による脳活性の低下又は増大について以下に説明する。本発明者らは、音としてあるいは非可聴音として印加される振動の周波数帯域の違いによって、脳活性の低下や増大をさまざまな程度に設定できる手法を実験により見出した。本発明の基礎となるこの実験について、以下詳述する。
まず、実験方法について述べる。音源信号は、高周波成分を豊富に含み、所定の自己相関秩序構造(例えば、特許文献7及び9参照。)を備えたインドネシア・バリ島の伝統的なガムラン音楽を、オリジナルに開発した超広帯域録音システムによって収録し、200秒間の録音を使用した。また、振動呈示システムは、図1のバイチャンネルシステム(例えば、特許文献2参照)を用いた。以下で説明する振動呈示システムは、振動発生装置、振動処理装置及び振動呈示装置などを含む。
図1は本発明の実施形態及び実施例において用いるバイチャンネルシステムの構成例を示すブロック図である。図1のバイチャンネルシステムにおいて、例えば80db/octの減衰率を有し、通過周波数帯域リップルが例えば±1dBであるハイパスフィルタ(HPF)またはバンドパスフィルタ(BPF)507a及びローパスフィルタ(LPF)507bを用いて、予め定められたクロスオーバー周波数で、それぞれのステレオ音源信号は可聴域成分と超高周波成分に分離ろ波され、両者は独立に増幅された後、スピーカ509aa,509ab,509ba,509bbを備えたスピーカシステムを介して、それぞれが別々にあるいは同時に呈示された。ここで、スピーカ509aa,509abは例えばツィータ及びスーパーツィータを含む。また、ハイパスフィルタ(HPF)またはバンドパスフィルタ(BPF)507a及びローパスフィルタ(LPF)は、上限下限をさまざまなカットオフ周波数を設定することの可能な周波数可変フィルタとしてもよい。
図1に示すように、インドネシアのバリ島における青銅製の打楽器であるガムラン501を演奏することにより得られる楽器音をマイクロホン502により集音する。マイクロホン502は入力された楽器音をアナログ電気信号に変換し、変換後のアナログ電気信号を前置増幅器503を介してAD変換器504に出力する。AD変換器504は、入力されたアナログ電気信号を、所定のサンプリング周波数でデジタル信号にAD変換して磁気記録部511に出力する。
磁気記録再生装置510は、磁気記録部511と、磁気記録ヘッド512と、磁気再生ヘッド514と、磁気再生部515とを備え、磁気テープ513に対してデジタル信号を記録し、又は磁気テープ513に記録されたデジタル信号を再生して出力するいわゆるデジタル信号レコーダである。ここで、磁気記録再生装置510は、例えば山崎芳男博士により考案された従来技術のDATであって、例えば200kHzまでにわたる周波数範囲で均一な周波数特性を有する。磁気記録部511は、AD変換器504から入力されたデジタル信号に従って搬送波信号を所定のデジタル変調方式で変調し、変調後の信号を磁気記録ヘッド512を用いて、矢印で示される所定の方向516に走行されている磁気テープ513に記録する一方、磁気再生部515は、磁気テープ513に記録された変調信号を磁気再生ヘッド514を用いて再生し、再生された変調信号を上記デジタル変調方式と逆のデジタル復調方式で復調してデジタル信号を取り出す。
再生したデジタル信号データは、DA変換器505によって元のアナログ信号にDA変換された後、再生増幅器506を介して出力され、再生増幅器506からの出力アナログ信号は、スイッチSW1、所定のカットオフ周波数を有するハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタ507a及び電力増幅器508aを介して、スピーカ509aa及び509abに入力されるとともに、スイッチSW2、所定のカットオフ周波数を有するローパスフィルタ507b及び電力増幅器508bを介してスピーカ509ba及び509bbに入力される。
上記スピーカ509aa,509ab,509ba,509bbは、音響的に密閉された遮音室又はそれに準ずる部屋520内に載置され、スピーカ509aa,509ab,509ba,509bbはそれぞれ、入力される信号を空気振動に変換して被測定対象の人間530に対して印加する。
基本実施例では、図1のバイチャンネルシステムを用いて、音源信号を、22kHzの遮断周波数をもつローパスフィルタ(LPF)507bを用いてろ波した、22kHz以下の周波数成分を有する電気信号を空気振動として被験者に印加し、当該被験者の領域脳血流(以下、r−CBFという。)を計測した。また対照条件として、上記空気振動を印加せず、暗騒音のみが存在する場合のr−CBFを計測した(暗騒音条件)。
図2は図1のバイチャンネルシステムを用いて、22kHz以下の周波数成分を有する電気信号を空気振動として被験者に印加したときの頭部の領域脳血流(r−CBF)が暗騒音条件と比較して減少した部位をハッチングで示した投影図であって、図2(a)はサジタル投影図であり、図2(b)はコロナル投影図であり、図2(c)は水平面投影図である。すなわち、図2は、上記の空気振動を印加した場合に、暗騒音条件と比較して、r−CBFが減少した部位を図示したものである。頭頂葉の楔前部における広範な部位でr−CBFの低下が認められる。また左前頭前野の外側部にもr−CBFの低下が認められる。なお、図1において、スイッチSW1をオフとし、スイッチSW2をオンとした。
次に、同じ音源を、遮断周波数を26kHzに設定したローパスフィルタ(LPF)507bを用いてろ波した電気信号を空気振動に変換して被験者に印加した場合に、当該被験者のr−CBFを計測した。
図3は図1のバイチャンネルシステムを用いて、26kHz以下の周波数成分を有する電気信号を空気振動として被験者に印加したときの頭部の領域脳血流(r−CBF)が暗騒音条件と比較して減少した部位をハッチングで示した投影図であって、図3(a)はサジタル投影図であり、図3(b)はコロナル投影図であり、図3(c)は水平面投影図である。すなわち、図3は、上記の空気振動を印加した場合に、暗騒音条件と比較して、r−CBFが減少した部位を図示したものである。26kHz以下の周波数成分を有する空気振動を印加した場合には暗騒音条件と比較して、頭頂葉のごく限定された範囲の領域において血流の低下が認められると同時に、22kHz以下の成分の空気振動を印加した場合には血流減少が認められなかった脳幹、視床及び視床下部などから構成される基幹脳で顕著な血流減少が認められた。なお、図1において、スイッチSW1をオフとし、スイッチSW2をオンとした。
図4は図1のバイチャンネルシステムを用いて、22kHz以下の周波数成分を有する空気振動を印加した場合と、26kHz以下の周波数成分を有する空気振動を印加した場合に生じる、基幹脳の一部である脳幹の血流変化を、暗騒音条件に対するパーセントで示すグラフである。図4から明らかなように、22kHz以下の成分のみを印加した場合には、脳幹の活性は暗騒音条件に比較してほとんど増減しない(+0.02%)のに対して、26kHz以下の成分を印加した場合には、脳幹の活性が3.0%程度低下することが示された。さらに、ローパスフィルタ(LPF)507bの遮断周波数が22kHzの場合と26kHzの場合に、暗騒音条件と比較して、脳幹を含む基幹脳全体の活性がどのように変化するかを、基幹脳の活性を全般的に反映する脳波データから得られる深部脳活性指標(DBA−index)を用いて調べた。
脳波計測には、被験者に対する拘束度を最小限にするためテレメトリ脳波計測システムを用い、国際10−20法に基づく頭皮上12電極(電極名:Fp1,Fp2,F7,Fz,F8,C3,C4,T5,T6,Pz,O1,O2)から、耳朶連結を基準電極として計測した。得られた脳波データは、256Hzのサンプリング周波数でAD変換して記録した。アーチファクトを含む区間を除外した後、電極毎に、1秒ずつオーバーラップさせた2秒間の解析区間について、FFT解析によって0.5Hzの周波数解像度でパワーを求め、その中から10.0Hz〜12.5Hzの帯域成分のパワーの平方根をα2帯域脳波の等価ポテンシャルとして算出した。中心頭頂後頭部の7電極(電極名:C3,C4,T5,T6,Pz,O1,O2)から得られたデータを平均し、「深部脳活性指標(DBA−index)」として求めた。この指標は、先行研究によって、ハイパーソニック・エフェクトの神経基盤と考えられる脳幹、視床及び視床下部を含む脳の基幹的機能を担う部位である基幹脳の神経ネットワーク全体の活性と有意に相関することが示されている(特許文献7及び9参照)。
図5は図1のバイチャンネルシステムを用いて、22kHz以下の周波数成分を有する空気振動を印加した場合と、26kHz以下の周波数成分を有する空気振動を印加した場合における深部脳活性指標(DBA−index)を示すグラフである。図5に示すように、22kHz以下の成分のみを印加した場合には暗騒音条件と比較して、脳波の深部脳活性指標はわずかに増加の傾向を示す(+1.5%)のに対して、26kHz以下の成分を印加した場合には暗騒音条件と比較して、脳波の深部脳活性指標は6.0%の低下を示した。これらの実験結果は、人間に印加する周波数成分が異なることにより、脳内のさまざまな部位に、さまざまなレベルの神経活性を設定しうることを示すものである。特に、この実験では、ローパスフィルタ(LPF)507bの遮断周波数が22kHzから26kHzに上昇し、22kHzから26kHzまでの帯域成分がより強く印加されることにより、人間の美と快の感覚を制御し、生体恒常性を維持する基幹脳の活性が著しく低下することが示された。
以上により、周波数構造の異なる空気振動を印加することにより、脳の異なる部位の活性を変化させることが示された。
次いで、脳のさまざまな部位の中でも、行動制御や適応制御といった脳の基幹的機能をになっている基幹脳に着目して、さまざまな周波数帯域をもった振動情報による基幹脳の活性レベルの低下又は増大について以下に説明する。
基幹脳は、報酬系神経回路の中枢であり、この活性が高まることにより、美と快と感動が生み出されると同時に、感覚が鋭敏化し、覚醒水準が高まってヒューマンエラーを抑制することができる。逆に、基幹脳の活性が低下すると、うつ病、自殺、摂食障害、リストカット、統合失調症などのネガティブ症状、注意欠陥多動性障害、自閉症、アルツハイマー型認知症など、さまざまな疾患の根本原因となることが示されている。
さらに基幹脳は、自律神経系、内分泌系、免疫系の最高中枢を担っており、全身の恒常性を維持して、身体の健康を司る最高司令塔の役割を果たしている。従って基幹脳の活性が上昇すると、NK細胞活性などの免疫力が高まり、アドレナリン、コルチゾールといったストレスホルモンが減少する。これらの全身性効果は、高血圧、糖尿病、高脂血症をはじめとするさまざまなメタボリック症候群に対して治療効果を及ぼすことができる。
したがって、基幹脳の活性を高めることによってこれらの疾患を予防したり治療することが期待されるとともに、基幹脳の活性を低下させることにより、これらの疾患に対する疾患モデルや病態モデルを作成することが可能になる。
そこで、本発明者らは、さまざまな振動情報によって、脳の中のさまざまな部位の活性を、さまざまな程度に低下又は増大させるという原理に基づき、まず脳幹を含む基幹脳の活性レベルに着目して、振動の特定の帯域成分が、基幹脳の活性に対してどのような増加又は減少効果を示すかについて、より詳細な検討を行った。その実験の概要を示す。
実験において、高周波成分を豊富に含み、所定の自己相関秩序構造(例えば、特許文献7及び9参照。)を備えたインドネシア・バリ島の伝統的なガムラン音楽を、オリジナルに開発した超広帯域録音システムによって収録し、そのうち200秒間の録音を音源信号として使用した。また、呈示システムとして、図1のバイチャンネルシステムを用いた。音源信号を、ローパスフィルタ(LPF)507bによって16kHzをカットオフ周波数として、それ以下の周波数成分に帯域制限した可聴域成分(LFC)と、周波数可変フィルタであるハイパスフィルタ(HPF)またはバンドパスフィルタ(BPF)507aによって上限下限ともさまざまなカットオフ周波数を設定し、バンドパスフィルタリング又はハイパスフィルタリングを行った高周波成分(HFC)とに分離した。それぞれの信号を独立に増幅したあと、可聴域成分(LFC)の振動は上記スピーカシステムのスピーカ509ba,509bbによって被験者に呈示し、高周波成分(HFC)の振動は上記スピーカシステムのスピーカ509aa,509abによって被験者に呈示した。上記スピーカシステムは、被験者から2mの位置に設置した。
高周波成分(HFC)の信号の周波数帯域の設定は、16kHzから8kHz毎に96kHzまで、16kHz〜24kHz、24kHz〜32kHz、32kHz〜40kHz、40kHz〜48kHz、48kHz〜56kHz、56kHz〜64kHz、64kHz〜72kHz、72kHz〜80kHz、80kHz〜88kHz、88kHz〜96kHzの計10種類とした。さらに、96kHz〜112kHzの16kHz幅の帯域及び112kHz以上全帯域も設定した。
ここで、高周波成分(HFC)の各周波数帯域すべてについて、サブ実験を構成した。サブ実験では、2つの実験条件を設定してその間の脳活性の違いを比較した。すなわち、条件1(コントロール条件)は16kHz以下の可聴域成分(LFC)の振動のみ呈示し、条件2は16kHz以下の可聴域成分(LFC)の振動呈示と同時に、特定の帯域幅をもつ高周波成分(HFC)の振動を呈示した。この2つの条件の呈示順序は以下の2種類とした。
(A)呈示順序1:条件1−条件2−条件2−条件1の順に呈示し、数分間の休憩後、条件2−条件1−条件1−条件2の順に呈示した。
(B)呈示順序2:条件2−条件1−条件1−条件2の順に呈示し、数分間の休憩後、
条件1−条件2−条件2−条件1の順に呈示した。
すなわち、2つの条件とも計4回呈示した。2種類の呈示順序の振り分け方は被験者間でカウンターバランスをとった。なお、被験者の不快適さを避けるために、温湿度を一定範囲に保ち、まわりの環境に特別に注意を払った。被験者には、計測中、自然に目を開けているよう指示した。
そして、呈示中の脳波を計測した。脳波計測には、被験者に対する拘束度を最小限にするためテレメトリ脳波計測システムを用い、国際10−20法に基づく頭皮上12電極(電極名:Fp1,Fp2,F7,Fz,F8,C3,C4,T5,T6,Pz,O1,O2)から、耳朶連結を基準電極として計測した。得られた脳波データは、256Hzのサンプリング周波数でAD変換して記録した。アーチファクトを含む区間を除外した後、電極毎に、1秒ずつオーバーラップさせた2秒間の解析区間について、FFT解析によって0.5Hzの周波数解像度でパワーを求め、その中から10.0Hz〜12.5Hzの帯域成分のパワーの平方根をα2帯域脳波の等価ポテンシャルとして算出した。中心頭頂後頭部の7電極(電極名:C3,C4,T5,T6,Pz,O1,O2)から得られたデータを平均し、「深部脳活性指標(DBA−index)」として求めた。この指標は、先行研究によって、ハイパーソニック・エフェクトの神経基盤と考えられる脳幹、視床及び視床下部を含む脳の基幹的機能を担う部位である基幹脳の神経ネットワーク全体の活性と有意に相関することが示されている(特許文献7及び9参照)。
脳波の経時データは音呈示に対して明らかな遅延を示すため、各条件の呈示後半100秒間の深部脳活性指標(DBA−index)の平均値を求めた。これらの値は、被験者間のばらつきを取り除くため、被験者毎に全条件を通して平均した値を基準に標準化した。そのうえで、条件2の計4回の平均値と、条件1(コントロール条件)の計4回の平均値との差分を求め、統計検定に付した。なお、被験者は、22名の健康な日本人の男女が参加した。
次いで、図6及び図7を参照して実験結果について述べる。図6は図1のバイチャンネルシステムを用いて、16kHz未満の帯域の空気振動に加えて高周波成分(HFC)の空気振動を印加した場合(条件2)の深部脳活性指標(DBA−index)平均値と、16kHz未満の帯域の空気振動のみを印加した場合(条件1)の深部脳活性指標(DBA−index)平均値との差分を示すグラフである。条件2において追加で印加する高周波成分(HFC)の帯域によって、本実験における聴取条件では、16kHz〜32kHzのネガティブ帯域グループと、32kHz以上のポジティブ帯域グループとに分類し、両者を比較している。また、図7は、16kHz未満の帯域の空気振動に加えて、各分割帯域の高周波成分(HFC)の空気振動を印加した場合(条件2)の深部脳活性指標(DBA−index)平均値と、16kHz未満の帯域の空気振動のみを印加した場合(条件1)の深部脳活性指標(DBA−index)平均値の差分を示すグラフである。この値は、各分割帯域の高周波成分(HFC)の印加によって、基幹脳の神経ネットワークの活性がどれだけ増加あるいは低下するかを示す指標となるため、以後、深部脳活性の変動指標(図において、DBA−indexの差分)と呼ぶ。
上記の方法で求めた深部脳活性指標(DBA−index)を検討したところ、本実験における聴取条件では、32kHz以上の帯域成分をHFCとしたサブ実験(32kHz〜40kHz、40kHz〜48kHz、48kHz〜56kHz、56kHz〜64kHz、64kHz〜72kHz、72kHz〜80kHz、80kHz〜88kHz、88kHz〜96kHz、96kHz〜112kHz、112kHz〜)では、条件2すなわち可聴域成分(LFC)+高周波成分(HFC)を同時に呈示したときの方が、条件1すなわち可聴域成分(LFC)のみを呈示したときに比較して深部脳活性指標(DBA−index)が増大する傾向が見出された。すなわち、可聴域成分(LFC)に高周波成分(HFC)を加えることによって、基幹脳ネットワーク系の活性を上昇させることが確かめられた。これは従来の知見(非特許文献1及び7参照)と整合性のある傾向である。
一方、本実験における聴取条件では、32kHz以下の帯域成分を高周波成分(HFC)としたサブ実験(16kHz〜24kHz、24kHz〜32kHz)では、条件2すなわち可聴域成分(LFC)+高周波成分(HFC)を同時に呈示したときの方が、条件1すなわち可聴域成分(LFC)を単独で呈示したときに比較して深部脳活性指標(DBA−index)が低下する傾向が見出された。すなわち、可聴域成分(LFC)に高周波成分(HFC)を加えることによって、基幹脳ネットワーク系の活性を低下させることが発見された。
そこで、サブ実験を2つのグループに分類した。本実験における聴取条件では、16kHz以上32kHz未満の帯域をネガティブ帯域グループ、32kHz以上の帯域をポジティブ帯域グループとした。そして、深部脳活性の変動指標(DBA−indexの差分)を変数として、ネガティブ帯域グループとポジティブ帯域グループとで2変量t検定を行ったところ、図6から明らかなように、ポジティブ帯域グループの深部脳活性の変動指標(DBA−indexの差分)の方が、ネガティブ帯域グループのそれよりも、有意水準p<0.0001という高い有意性で統計的有意に大きいことが明らかとなった。
次いで、各帯域グループの実験において、基幹脳の活性が増大したといえるか、あるいは低下したといえるのかを確かめるために、各帯域グループの深部脳活性の変動指標(DBA−indexの差分)を指標として1変量t検定を行ったところ、ポジティブ帯域グループ(本実験における聴取条件では高周波成分(HFC)が32kHz以上の帯域)では、有意水準p<0.001という高い有意性で基幹脳の活性が増大したことが示された。一方、ネガティブ帯域グループ(本実験における聴取条件では高周波成分(HFC)が16kHz以上32kHz未満の帯域)では、図6から明らかなように、有意水準p<0.01で統計的有意に基幹脳の活性が低下したことが示された。
さらに、高周波成分(HFC)のうちさらに細かく分割した各帯域毎に1変量t検定を行ったところ、16kHz未満の帯域に加えて24kHz〜32kHzの帯域の振動を呈示した場合に深部脳活性指標(DBA−index)が有意水準p<0.05で有意に低下していることが示された。また、16kHz未満の帯域に加えて80kHz〜88kHzの帯域の振動を呈示した場合、深部脳活性指標(DBA−index)が有意水準p<0.01で有意に増大していることが示された。また、16kHz未満の帯域に加えて88kHz〜96kHzの帯域の振動を呈示した場合、深部脳活性指標(DBA−index)が有意水準p<0.05で有意に増大していることが示された。
これらの帯域は、限定された帯域幅の少ない情報量で効率的にネガティブ効果やポジティブ効果を導くことができると考えられる。
上記の実験結果を踏まえて、以下のように第1、第2及び第3の帯域を定義した。
(A)第1の帯域=可聴域を含む帯域、例えば、20Hzから16kHzの帯域である。
(B)第2の帯域=第1の帯域とともに呈示すると、基幹脳の活性を低下させる効果(ネガティブ効果=ハイパーソニック・ネガティブ・エフェクト)を導く傾向がある帯域、例えば本実験における聴取条件では、16kHzから32kHzの帯域である。
(C)第3の帯域=第1の帯域とともに呈示すると、基幹脳の活性を増大させる効果(ポジティブ効果=ハイパーソニック・ポジティブ・エフェクト)を導く傾向がある帯域。例えば本実験における聴取条件では、32kHz以上、かつ所定の最高周波数までの帯域である。ここで、当該最高周波数は、信号処理回路で処理可能な最大周波数であって、例えば96kHz、112kHz、128kHz、140kHz、152kHz、168kHz、184kHz、192kHzなどの周波数である。
なお、上記に示した各帯域の下限周波数及び上限周波数の値は普遍的に一定のものではなく、振動信号のパワー、振動呈示装置の増幅回路の増幅度、振動呈示装置の数量、振動呈示装置から生体までの距離などを含む、その他さまざまな振動呈示条件あるいは聴取条件によって、変動し得る。
さらに、人間以外の動物の可聴域上限は種によって異なることが知られていることから、可聴域を含む第1の帯域の下限及び上限周波数、ネガティブ効果をもつ第2の帯域の下限周波数及び上限周波数、そして、ポジティブ効果をもつ第3の帯域の下限周波数及び上限周波数も、動物の種毎に、人間を対象とした本実験の聴取条件で同定された周波数とは異なる値を取り得ると考えられる。
以上の結果をまとめて模式的に図示すると、図8のようにあらわせる。図8(a)は第1、第2及び第3の帯域を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図において、第1、第2及び第3の帯域の範囲を示した図であり、図8(b)は上記分割帯域における脳活性の指標(DBA−indexの差分)を示すグラフである。ここで、図8(b)は、実験で設定した各帯域が基幹脳活性に及ぼす効果の方向と大きさとを図示したものである。それぞれ、第1の帯域とともに呈示することによって、第2の帯域において基幹脳活性を低下させる効果(ネガティブ効果)、並びに、第3の帯域において上昇させる効果(ポジティブ効果)の大きさを示している。なお、以下に示す実施形態又は実施例は、上記実験に基づき、具体的に基幹脳の活性を例として述べるが、その原理はその他の脳部位の活性についても応用可能なものである。なお、上述したように図8において各帯域の境界に相当する周波数は、本実験の聴取条件における一例を示したものであり、振動呈示条件又は振動聴取条件、あるいは対象となる動物の種毎に異なる値をとるものと考えられる。
実施形態1:ネガティブ効果.
図9は実施形態1に係る振動処理装置の振動処理方法(ネガティブ効果)を示す図であって、図9(a)は第1及び第2の帯域を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図であり、図9(b)は上記分割帯域における脳活性の指標(DBA−indexの差分)を示す図である。実施形態1に係る振動呈示装置、方法及び空間は、図9に示すように、第1の帯域とともに第2の帯域の振動を呈示することによって、脳活性を低下させる「ネガティブ効果」を導くことを特徴とする。以下、第1の帯域の振動と同時に第2の帯域の振動を呈示することによって、脳活性を低下させるネガティブ効果を導く装置、方法及び空間の例を示す。本実施形態を含む全ての実施形態において、各帯域の境界に相当する周波数は、上記実験の聴取条件における一例を示したものであり、振動呈示条件又は振動聴取条件、あるいは対象となる動物の種毎に異なる値をとるものと考えられる。また全ての実施形態を通じて、振動又は振動信号はその構造的特徴の如何を問わない。すなわち、たとえば正弦波や鋸波、ホワイトノイズのような定常波であってもよいし、所定の自己相関秩序を有する(特許文献9参照)非定常波であってもよいし、それ以外の振動・振動信号又はその複合体であってもよい。また全ての実施形態において、振動を呈示し、生体に印加する際の媒体は気体・液体・固体のいずれか、又はその複合体であってもよい。
図10Aは実施形態1−1に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図10Aにおいて、実施形態1−1に係る振動呈示装置は、振動信号の記録媒体1Aのドライブを含む信号発生装置1と、再生回路2と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。図10Aにおいて、例えばCDの音声信号(周波数20Hz〜22.05kHz)やDVDの音声トラックの音声信号(周波数20Hz〜24kHz)など、もともと振動信号源に第1の帯域と第2の帯域を両方とも含む振動信号を予め記録する記録媒体1Aを信号発生装置1のドライブに挿入して振動発生装置1から振動信号を読み出して再生回路2により再生し、増幅回路3により増幅した後、振動呈示器4により振動に変換して人間を含む動物に呈示することによって、脳活性を低下させるネガティブ効果を導く。なお、信号発生装置1は振動信号源に第1の帯域と第2の帯域を両方とも含む振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体と信号発生装置1、再生回路2の代わりに、放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよいし、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、各実施形態において、信号はデジタル・アナログのいずれであってもよいし、記録媒体はコンピュータにより読み取り可能な媒体、コンピュータを含むドライブ又はそれを含む信号発生装置により読み取り可能な媒体であって、再生回路により再生可能な媒体である。
図10Bは図10Aの変形例であり、振動信号の記録媒体と信号発生装置1、再生回路2の代わりに、例えばシンセサイザーなどの振動信号合成装置1Cによって、第1の帯域と第2の帯域を両方とも含む振動信号を人工的に合成し、増幅回路3により増幅した後、振動呈示器4により振動に変換して人間を含む動物に呈示することによって、ネガティブ効果を導く装置である。なお、振動信号合成装置はサンプリング音源などからの外部入力を用いた形式のものであってもよい。
図10Cも同じく図10Aの変形例であり、その場で演奏する楽器などの振動発生装置又は振動発生源1Dが発する第1の帯域と第2の帯域を両方とも含む振動を、マイクロホンやピックアップなどの信号変換装置2Aを用いて信号化し、増幅回路3により増幅した後、振動呈示器4により振動に変換して人間を含む動物に呈示することによって、ネガティブ効果を導く。振動発生装置又は振動発生源1Dの発生する振動は、生物・無生物の発する有意味又は無意味の音(以下、音声と呼ぶ)や音楽、環境音などを用いてもよい。さらに、発生した振動を信号に変換することなくそのまま振動する気体・液体・固体(以下、振動体と呼ぶ)を介して生体に印加してもよい。
図11Aは実施形態1−2に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図11Aにおいて、実施形態1−2に係る振動呈示装置Aは、振動信号Aの記録媒体11Aに予め記録された振動信号を発生するドライブを含む信号発生装置11と、再生回路12と、ローパスフィルタ13と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。振動呈示装置Bは、振動信号Bの記録媒体21Aに予め記録された振動信号を発生するドライブを含む信号発生装置21と、再生回路22と、バンドパスフィルタ又はイコライザ23と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。図11Aにおいて、各記録媒体11A,21Aは、第1の帯域と第2の帯域の両方の振動信号をそれぞれ予め記録するか、あるいは、同一あるいは別々の振動信号源から抽出して記録している。振動信号Aの記録媒体11Aから信号発生装置11により振動信号を読み出して再生回路12により再生し、ローパスフィルタ13により例えば16kHz以下の第1の帯域信号のみを抽出し、増幅回路3により増幅した後、振動呈示器4により振動に変換して人間を含む動物に呈示する。振動信号Bの記録媒体21Aから信号発生装置21により振動信号を読み出して再生回路22により再生し、バンドパスフィルタ23により例えば16kHz〜32kHzの第2の帯域信号のみを抽出し、増幅回路3により増幅した後、振動呈示器4により振動に変換して人間を含む動物に呈示する。以上説明したように、本実施形態では、第1の帯域を含む振動と、第2の帯域を含む振動とを呈示することにより、生体の脳活性を低下させることができる。ここで、振動信号の記録媒体、信号発生装置及び再生回路の代わりに、図10Bに示した振動信号合成装置1Cや、図10Cに示した楽器や音声、環境音などを発生する振動発生装置又は振動発生源1Dと、マイクロホンやピックアップなどの信号変換装置2Aとの組み合わせを使用してもよいし、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、発生した振動を信号に変換することなくそのまま振動体を介して生体に印加してもよい。
図11Bは図11Aの実施形態1−2の変形例である。振動信号Aから抽出された第1の帯域信号と、振動信号Bから抽出された第2の帯域信号とを、加算器5に出力する。加算器では入力される2つの信号を加算し、増幅回路3により増幅した後、振動呈示器4により振動に変換して人間を含む動物に呈示する。これにより、脳活性を低下させるネガティブ効果を導く。なお、振動発生装置11,21は振動信号源に所定の振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体、信号発生装置及び再生回路の代わりに、振動信号合成装置や、図10Cに示した楽器や音声、環境音などを発生する振動発生装置又は振動発生源1Dとマイクロホンやピックアップなどの信号変換装置との組み合わせを使用してもよいし、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、発生した振動を信号に変換することなくそのまま振動する振動体を介して生体に印加してもよい。
図11A及び図11Bの装置において、第1の帯域の成分を抽出するフィルタはローパスフィルタ13ではなくバンドパスフィルタであってもよいし、振動信号Aにもともと含まれている帯域が第1の帯域のみであれば、フィルタを省略してもよい。また、第2の帯域の成分を抽出するフィルタ23は、振動信号Bにもともと含まれている帯域が例えば32kHzに満たない場合は、バンドパスフィルタ23ではなくハイパスフィルタであってもよいし、振動信号Bにもともと含まれている帯域が第2の帯域のみであれば、フィルタを省略してもよい。あるいは、イコライザによって第2の帯域信号を強調、あるいは第2の帯域以外の帯域信号を減弱してもよい。
次いで、実施形態1に係る振動呈示装置、方法及び空間の作用効果とアプリケーションについて以下に説明する。当該装置からの振動を人間及び動物を含む生体に呈示することにより、脳活性の低下を迅速、非侵襲的、可逆的に導くことが可能になり、薬剤などを用いた手段に比べて安全で効果的に病理状態のモデルをつくり出すことができる。この効果を利用した「病理モデル生成装置」が考えられる。また、被験者を用いた各種実験において、実験によって被験者の脳活性が一時的に上昇した場合に、本実施形態の装置を用いることにより、素早くクールダウンさせ、初期状態に戻すことによって、次の実験を効率よく行うことが可能になる。この効果を利用した「被験者クールダウン装置」が考えられる。さらに、本実施形態の装置を用いることにより、人間を始めとする動物の行動を快又は不快によって強力に制御し、基幹脳に含まれる情動系の活性を低下させて、逃避行動をひきおこすことが可能になる。この効果を利用し、「自動車に装備する音の聴こえないクラクション」「動物駆除装置」への応用が考えられる。また、この効果を利用して、執務空間、居住空間、娯楽空間、公共空間、乗り物などで基幹脳の活性を低下させてクールダウンさせるアプリケーションが考えられる。
実施形態1A:ネガティブ効果の抑止又は軽減.
図12Aは実施形態1Aに係る振動呈示装置及び振動減弱装置を含む振動処理装置の振動処理方法(ネガティブ効果の抑止又は軽減)を示す図であって、図12A(a)は第1及び第2の帯域を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図であり、図12A(b)は上記分割帯域における脳活性の指標(DBA−indexの差分)を示す図である。実施形態1Aに係る振動呈示装置、方法及び空間は、図12Aに示すように、第2の帯域の振動又は振動信号、あるいはその両者を除去あるいは減弱することによって、脳活性を低下させるネガティブ効果を抑止又は軽減することを特徴とする。
図12Bは実施形態1A−1に係る振動呈示装置(ネガティブ効果の抑止又は軽減)の構成を示すブロック図である。図12Bにおいて、実施形態1A−1に係る振動呈示装置は、第2の帯域を含む振動信号の記録媒体11Bのドライブを含む信号発生装置11と、再生回路12と、バンドエリミネートフィルタ(又はイコライザ)13Aと、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。図12Bにおいて、振動源に第2の帯域を含む振動信号の記録媒体11Bから信号発生装置11により信号を読み出して再生回路12により再生し、そのうちバンドエリミネートフィルタ(又はイコライザ)13Aにより第2の帯域の振動成分のみを除去又は減弱した後、増幅回路3により増幅し、振動呈示器4により振動に変換して人間などの生体に呈示することによって、脳活性の低下を抑止又は軽減し、あるいは逆に増強する効果を導く。なお、信号発生装置11は振動信号源の上記帯域の振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体11B、信号発生装置11及び再生回路12の代わりに、振動信号合成装置や、音声・音楽・環境音などの振動を発生する振動発生装置又は振動発生源とマイクロホンやピックアップなどの信号変換装置との組み合わせを使用してもよいし、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。
図12Cは図12Bの実施形態1A−1の変形例の構成を示すブロック図である。図12Cの振動呈示装置は、図12Bの振動呈示装置に比較して、バンドエリミネートフィルタ13Aを、バンドパスフィルタ17,位相反転回路16、加算器5に置き換えたものである。この場合において、第1、第2及び第3の帯域信号を含む振動信号に含まれる、ネガティブ効果を導く第2の周波数帯域成分をもった振動信号をバンドパスフィルタ17により抽出した後、位相反転回路16により位相反転して元の振動信号に加算することにより、元の振動信号に含まれる第2の帯域成分を相殺して減弱することによって、脳活性の低下を抑止又は軽減する効果を導く。
図12Dは実施形態1A−2に係る振動減弱装置(ネガティブ効果の抑止又は軽減)を含む振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図12Dにおいて、実施形態1A−2に係る振動呈示装置は、その空間に存在する振動をマイクロホンなどの信号検出器で検出して振動信号に変換する信号変換装置15と、位相反転回路16と、バンドパスフィルタ(又はイコライザ)17と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。空間に存在する空気振動に含まれる、ネガティブ効果を導く第2の周波数帯域成分の逆相成分をもった振動を同一空間にさらに印加することによって、空間に存在する第2の帯域成分をリアルタイムで相殺して減弱することによって、脳活性の低下を抑止又は軽減する効果を導く。ここで、空間に存在する空気振動は、オーディオシステムや楽器のように何らかの振動発生装置によって発生された振動でもよいし、環境音のように空間に存在する何らかの振動発生源が発生する振動でもよい。また、図12Dにおいて、位相反転回路16とバンドパスフィルタ17の順序は逆でもよい。
また、図12Dにおいて、バンドパスフィルタ(又はイコライザ)17に入力される振動信号は、空間に存在する振動をマイクロホンやピックアップなどの振動検出器を含む信号変換装置15によって振動信号に変換されたもの以外にも、例えばCDやDVD、Blu−ray(登録商標)や固形メモリのパッケージメディアを含む記録媒体から読み出された振動信号や、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。
図12Dにおいては、空間に存在する振動に対して、第2の帯域の振動を逆相振動で打ち消して減弱させているが、本発明はこれに限らず、以下の変形例では、振動呈示装置において、空間に存在する振動の振動信号に対して、第2の帯域の振動信号を用いて逆相振動で打ち消して減弱させてもよい。
図12Eは図12Dの実施形態1A−2の変形例の構成を示すブロック図である。図12Eにおいて、振動呈示装置は、その空間に存在する振動をマイクロホンなどの信号検出器で検出して振動信号に変換する信号変換装置15と、第2の帯域を抽出するバンドパスフィルタ17と、位相反転回路16と、加算器5と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。図12Eにおいては、空間に存在する空気振動に含まれる、ネガティブ効果を導く第2の周波数帯域成分の振動信号をバンドパスフィルタ17により抽出した後、位相反転回路16により位相反転して元の空気振動の振動信号に加算することにより、空間に存在する第2の帯域成分をリアルタイムで相殺して減弱した振動信号を発生し、それを空間に振動として呈示することによって、脳活性の低下を抑止又は軽減する効果を導く。
以上の実施形態1Aのほかに、空気中を伝播する空気振動に対してアコースティック処理をほどこすことによって、ネガティブ効果をもつ帯域を除去又は減弱するさまざまな振動減弱装置を含む振動処理装置又は振動呈示装置が考えられる。原理によって、以下のごとく大きく2種類に分類できる。
(A)吸収装置:空気振動が物質中を透過する際に、特定の帯域の振動が選択的に吸収されることを利用して、ネガティブ効果をもつ第2の帯域の振動成分を除去もしくは制限又は減弱させる装置。
(B)反射装置:空気振動が物質に衝突し反射する際に、特定の帯域の振動を選択的に反射することを利用して、ネガティブ効果をもつ第2の帯域の振動成分を除去もしくは制限又は減弱させる装置。
以下、本実施形態に係る振動呈示装置、方法及び空間の作用効果とアプリケーションについて以下に説明する。現代社会に蔓延する交通騒音や電子機器の発する人工音も含めた音環境、現在広く用いられているCDやDVDなどの音響デジタルメディアに記録された信号、あるいは放送又は通信によって配信又は伝送される音声又は音楽信号やその再生音等は、記録再生可能な周波数帯域が、可聴域成分である上記第1の帯域と、ネガティブ効果を有する上記第2の帯域のうちの一部に限定されているものが大部分である。また規格上第3の帯域までをも含みうるハイレゾリューション配信やドルビーTrueHD方式などの超広帯域規格を採用したBlu−ray(登録商標)Discなどにおいても、そのコンテンツには実質的にポジティブ効果を有する第3の帯域の振動信号がほとんど含まれていない場合、すなわちネガティブ効果を有する第2の帯域までに振動信号成分が限定されている場合が少なくない。さらに重大なことに、たとえポジティブ効果を有する第3の帯域の振動信号成分を含んでいるコンテンツであったとしても、それはネガティブ効果を有する第2の帯域を含んでおり、第2の帯域の振動が再生され得る。従って、そうした音響デジタルメディアが再生する音に長時間曝露すると、脳活性が低下して、重大な病的状態を引き起こす危険性をもっている。そこで、本実施形態の装置、方法及び空間を用いることにより、ネガティブ効果をもつ第2の帯域の振動を除去又は減弱して呈示することによって、ネガティブ効果を抑止又は軽減し、脳活性低下を回避することが可能となる。これによって従来の音響デジタルメディアがもっている脳活性低下の危険性を回避することにより、快感を高め、脳活性の低下に起因するさまざまな病理を予防する電子機器、音響機器、通信機器、放送機器などを提供することが可能になる。
実施形態2:強力なポジティブ効果.
図13は実施形態2に係る振動処理装置の振動処理方法(強力なポジティブ効果)を示す図であって、図13(a)は第1及び第3の帯域を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図であり、図13(b)は上記分割帯域における脳活性の指標(DBA−indexの差分)を示す図である。実施形態2に係る振動呈示装置、方法及び空間は、図13に示すように、ネガティブ効果をもつ第2の帯域の振動を呈示せず(すなわち、振動の呈示を禁止又は制限し)、ポジティブ効果をもつ第3の帯域又はその一部を呈示することによって、脳活性を強力に増強させる「強力なポジティブ効果」を導くことを特徴とする。以下では、第1の帯域及び第3の帯域を含み、第2の帯域を含まない振動を呈示することによって、脳活性を強力に増強するポジティブ効果を導く装置、方法及び空間の例を示す。なお、振動の呈示を制限する場合は、例えば、複数の帯域通過フィルタを備え、所定の帯域毎のレベルを調整するイコライザを用いてそのレベルを低下又は減弱することができる。また、図13において各帯域の境界に相当する周波数は、本実験の聴取条件における一例を示したものであり、振動呈示条件又は振動聴取条件、あるいは対象となる動物の種毎に異なる値をとるものと考えられる。
図14Aは実施形態2−1に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図14Aにおいて、実施形態2−1に係る振動呈示装置は、振動信号の記録媒体1aAのドライブを含む信号発生装置1aと、再生回路2と、バンドエリミネートフィルタ又はイコライザ6と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。図14Aにおいて、例えばBlu−ray(登録商標)Discの音声トラックの音声信号(ドルビーTrue HD方式での記録の場合、周波数は96kHzまでを含む。)など、もともと振動源に第1の帯域、第2の帯域、第3の帯域すべてを含む振動信号の記録媒体1aAから信号発生装置1aにより信号を読み出して再生回路2により再生し、そのうちバンドエリミネートフィルタ(又はイコライザ)6により第2の帯域の振動成分のみを除去又は制限し、あるいは第3の帯域の振動成分を増強した後、増幅回路3により増幅し、振動呈示器4により振動に変換して人間などの生体に呈示することによって、脳活性を強力に増強するポジティブ効果を導く。なお、信号発生装置1aは振動信号源として上記帯域の振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体、信号発生装置及び再生回路の代わりに、振動信号合成装置や、図10Cに示した音声・音楽・環境音などを発生する振動発生装置又は振動発生源とマイクロホンやピックアップなどの信号変換装置との組み合わせを使用してもよいし、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、振動発生装置が出力する振動を信号に変換せずそのまま生体に印加してもよい。
図14Bは実施形態2−2に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図14Bにおいて、振動信号の記録媒体1bAのドライブを含む信号発生装置1bと、再生回路2と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。図14Bの装置は、図10Aの装置に比較して、第1の帯域及び第2の帯域を含む振動信号の記録媒体1aA1及び信号発生装置1aに代えて、第1の帯域及び第3の帯域を含む振動信号の記録媒体1bA及び信号発生装置1bを備えたことを特徴としている。信号発生装置は振動信号源の上記帯域の振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体、信号発生装置及び再生回路の代わりに、第1の帯域及び第3の帯域を含む振動信号を合成する振動信号合成装置や、第1の帯域及び第3の帯域を含む振動を発生させる図10Cに示した音声・音楽・環境音などの振動を発生する振動発生装置又は振動発生源とマイクロホンやピックアップなどの信号変換装置との組み合わせを使用してもよいし、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、振動発生装置が出力する振動を信号に変換せずそのまま生体に印加してもよい。
図15Aは実施形態2−3に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図15Aにおいて、振動呈示装置Aは、振動信号Aの記録媒体11Aのドライブを含む信号発生装置11と、再生回路12と、ローパスフィルタ13と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。振動呈示装置Bは、振動信号Bの記録媒体21Aのドライブを含む信号発生装置21と、再生回路22と、バンドパスフィルタ又はイコライザ33と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。図15Aの装置は、図11Aの装置に比較して、第2の帯域成分のみを通過させるバンドパスフィルタ23に代えて第3の帯域成分のみを通過させるバンドパスフィルタ又はイコライザ33を備えたことを特徴としている。本実施形態では、第1の帯域を含む振動と、第3の帯域を含む振動とを呈示することにより、生体の脳活性を増大させることができる。信号発生装置は上記帯域の振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体、信号発生装置及び再生回路の代わりに、振動信号合成装置や、図10Cに示した音声・音楽・環境音などの振動を発生する振動発生装置又は振動発生源とマイクロホンやピックアップなどの信号変換装置との組み合わせを使用してもよいし、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、振動発生装置が出力する振動を信号に変換せずそのまま生体に印加してもよい。
図15Bは図15Aの実施形態2−3の変形例である。図15Bにおいて、信号発生装置11、21は、第1の帯域と第3の帯域の両方の振動信号をそれぞれ発生するか、あるいは、同一あるいは別々の振動信号源から抽出して記憶している。これらの各振動信号を読み出して再生しかつろ波した後、加算し、振動に変換して呈示することによって、脳活性を強力に増強するポジティブ効果を導く。振動信号Aからローパスフィルタ13によって、例えば16kHz以下の第1の帯域の成分を抽出し、振動信号Bからバンドパスフィルタ又はイコライザ33によって、例えば48kHz〜96kHzの第3の帯域の成分を抽出する。そして、両者を加算し、増幅したのち、振動に変換して呈示する。なお、信号発生装置は振動信号源の上記帯域の振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体、信号発生装置及び再生回路の代わりに、振動信号合成装置や、音声・音楽・環境音などの振動を発生する振動発生装置又は振動発生源とマイクロホンやピックアップなどの信号変換装置との組み合わせを使用してもよいし、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、振動発生装置が出力する振動を信号に変換せずそのまま生体に印加してもよい。
本実施形態において、第1の帯域の成分を抽出するフィルタはローパスフィルタ13ではなくバンドパスフィルタであってもよいし、振動信号Aにもともと含まれている帯域が第1の帯域のみであれば、フィルタを省略してもよい。また、第3の帯域の成分を抽出するフィルタは、バンドパスフィルタ33ではなくハイパスフィルタであってもよいし、振動信号Bにもともと含まれている帯域が第3の帯域のみであれば、フィルタを省略してもよい。あるいは、イコライザによって第3の帯域信号を強調、あるいは第3の帯域以外の帯域信号を減弱してもよい。
次いで、実施形態2に係る装置、方法及び空間の作用効果とアプリケーションについて以下に説明する。この装置を用いることにより、脳活性を強力に増大させることが可能になる。このことにより、脳活性を低下させるなんらかのネガティブな要因が存在した場合に、これを取り除き、安全性を確保する効果をもつ。また、快適感や美的感受性を増す効果をもつ。この効果を利用して、居住空間や執務空間、娯楽空間、公共空間、乗り物などの快適性を向上させるアプリケーションが考えられる。また、美術館やコンサートホールなどで、芸術作品の表現効果を増大させる手段への応用が考えられる。また、不快感やイライラ感や怒りの感情などを緩和する効果をもつ。この効果を利用して、近年深刻な問題となっている、駅など公共空間における口論や暴力などのトラブルに対して、この装置を用いることにより、脳活性が低下した状態から増大方向に転じて、トラブルを回避する手段への応用が考えられる。
実施形態3:帯域の組み合わせ.
実施形態3に係る振動処理装置、方法及び空間は、脳活性の低下を導く「ネガティブ効果」をもつ第2の帯域の振動に、脳活性の上昇を導く「ポジティブ効果」をもつ帯域の振動を組み合わせて呈示することによって、脳活性の低下を導くネガティブ効果をうち消すことをはじめ、脳活性レベルの低下又は増大の度合いを任意に制御することを特徴とする。
図16は実施形態3−1に係る振動処理装置の振動処理方法(帯域組み合わせであって、脳活性を実質的に一定に保持する呈示方法)を示す図であって、図16(a)は第1、第2及び第3の帯域を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図であり、図16(b)は上記分割帯域における脳活性の指標(DBA−indexの差分)を示す図であり、図16(c)は上記振動呈示方法の呈示条件の時間的推移を示す図である。実施形態3−1に係る振動処理装置、方法及び空間は、第1の帯域と第2の帯域を含む振動に、第3の帯域を含む振動を組み合わせて呈示することによってネガティブ効果を打ち消し脳活性をおおよそ実質的に一定に保持することを特徴とする。
図16に示すように、第1の帯域(例えば20Hz〜16kHz)と、第2の帯域(例えば16kHz〜32kHz)と、第3の帯域の一部(例えば48kHz〜64kHz)の振動を、例えば5分毎に5分間、断続的に呈示する。この方法は、何らかの理由で除去することが困難なネガティブ効果をもつ第2の帯域の振動と同時に、ポジティブ効果をもつ第3の帯域を含む振動を組み合わせて呈示することにより、第2の帯域のネガティブ効果をうち消すことができ、脳活性をおおよそ実質的に一定のレベルに保持することができる。なお、図16において各帯域の境界に相当する周波数は、本実験の聴取条件における一例を示したものであり、振動呈示条件又は振動聴取条件、あるいは対象となる動物の種毎に異なる値をとるものと考えられる。
図17は実施形態3−2に係る振動処理装置の振動処理方法(帯域組み合わせであって、微弱な脳活性増大を導く呈示方法)を示す図であって、図17(a)は第1、第2及び第3の帯域を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図であり、図17(b)は上記分割帯域における脳活性の指標(DBA−indexの差分)を示す図であり、図17(c)は上記振動呈示方法の呈示条件の時間的推移を示す図である。実施形態3−2に係る振動処理装置、方法及び空間は、微弱な脳活性増大を導くことを特徴としている。
図17に示すように、第1の帯域(例えば20Hz〜16kHz)と、第2の帯域の一部(例えば16kHz〜24kHz)の振動に加えて、第3の帯域の一部(例えば48kHz〜72kHz)の振動を、例えば20分間連続して呈示する。この方法は、弱いネガティブ効果をもつ狭い第2の帯域と、やや強いポジティブ効果をもつ広い第3の帯域を含む振動を同時に呈示するため、なんらかの理由で除去することが困難な第2の帯域のネガティブ効果をうち消し、さらに微弱な脳活性増大を導くことができる。なお、図17において各帯域の境界に相当する周波数は、本実験の聴取条件における一例を示したものであり、振動呈示条件又は振動聴取条件、あるいは対象となる動物の種毎に異なる値をとるものと考えられる。
図18は、実施形態3−3に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図18において、振動呈示装置は、第1の帯域、第2の帯域、第3の帯域をそれぞれ含む3つの振動信号の記録媒体1cA,1dA,1eAのドライブを含む信号発生装置1c,1d,1eと、再生回路2c,2d,2eと、加算器(あるいは加算レベルを調整できるミクシング回路)5と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。ここで、信号発生装置1c,1d,1eは上記帯域の振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体1cA,1dA,1eA、信号発生装置1c,1d,1e及び再生回路2c,2d,2eの代わりに、振動信号合成装置や、音声・音楽・環境音などの振動を発生する振動発生装置又は振動発生源とマイクロホンやピックアップなどの信号変換装置との組み合わせを使用してもよいし、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、振動発生装置が出力する振動を信号に変換せずそのまま生体に印加してもよい。
図19は、実施形態3−4に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図19において、振動呈示装置は、第1の帯域及び第2の帯域を含む振動信号の記録媒体1fAのドライブを含む信号再生回路1fと、第3の帯域を含む振動信号の記録媒体1gAのドライブを含む信号発生装置1gと、再生回路2f,2gと、加算器(あるいは加算レベルを調整できるミクシング回路)5と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。ここで、信号発生装置1f,1gは振動信号源の上記帯域の振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体1fA,1gA、信号発生装置1f,1g及び再生回路2f,2gの代わりに、振動信号を合成する振動信号合成装置や、音声・音楽・環境音などの振動を発生する振動発生装置又は振動発生源とマイクロホンやピックアップなどの信号変換装置との組み合わせを使用してもよいし、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、振動発生装置が出力する振動を信号に変換せずそのまま生体に印加してもよい。
図20は、実施形態3−5に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図20において、振動呈示装置は、第1の帯域、第2の帯域及び第3の帯域のそれぞれを含む振動信号の記録媒体1hAのドライブを含む信号発生装置1hと、再生回路2hと、帯域成分のバランスを変更するイコライザ(又はフィルタ)18と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。イコライザ(又はフィルタ)18によって、第1、第2、第3の帯域の強度のバランスを変更することが可能である。なお、イコライザ(又はフィルタ)18を用いずに、振動信号の記録媒体に、第1、第2、第3の帯域の振動があらかじめ所定のバランスで記録されたものを用いてもよい。信号発生装置1hは振動信号源の上記帯域の振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体1hA、信号発生装置1h及び再生回路2hの代わりに、振動信号を合成する振動信号合成装置や、音声・音楽・環境音などの振動を発生する振動発生装置又は振動発生源とマイクロホンやピックアップなどの信号変換装置との組み合わせを使用してもよいし、放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、振動発生装置が出力する振動を信号に変換せずそのまま生体に印加してもよい。
上記各実施形態については、第1、第2、第3の帯域を同一の振動呈示装置から呈示する形態を示したが、それらは別々に呈示されてもよい。また、第1、第2、第3のそれぞれの帯域成分は、空間に存在する音であってもよい。すなわち、空間に環境音として存在する音について、例えば第1の帯域と第2の帯域が優勢である場合、別の振動発生装置から第3の帯域を含む振動を呈示し、空間内でアコースティックに合わせて呈示することによって、脳活性の低下を軽減したり、脳活性の増大を導く効果をもたらすものでもよい。
以下、本実施形態に係る振動呈示装置、方法及び空間の作用効果とアプリケーションについて以下に説明する。前述したように、現代社会に蔓延する交通騒音や電子機器の発する人工音も含めた音環境、現在広く用いられているCDやDVDなどの音響デジタルメディアに記録された信号、あるいは放送又は通信によって配信又は伝送される音声又は音楽信号やその再生音等は、記録再生可能な周波数帯域が、可聴域成分である上記第1の帯域と、ネガティブ効果を有する上記第2の帯域のうちの一部に限定されているものが大部分である。また規格上第3の帯域までをも含みうるハイレゾリューション配信やドルビーTrueHD方式などの超広帯域規格を採用したBlu−ray(登録商標)Discなどにおいても、そのコンテンツには実質的にポジティブ効果を有する第3の帯域の振動信号がほとんど含まれていない場合、すなわちネガティブ効果を有する第2の帯域までに振動信号成分が限定されている場合が少なくない。さらに重大なことに、たとえポジティブ効果を有する第3の帯域の振動信号成分を含んでいるコンテンツであったとしても、それはネガティブ効果を有する第2の帯域を含んでおり、第2の帯域の振動が排除されずに再生される。従って、そうした音響デジタルメディアが再生する音に長時間曝露すると、脳活性が低下して、重大な病的状態を引き起こす危険性をもっている。しかも、第2の帯域を除去することが困難な場合も多い。そこで、本実施形態の装置、方法及び空間を用いることにより、ポジティブ効果をもつ第3の帯域の振動を組み合わせて呈示することによって、ネガティブ効果を打ち消し、脳活性低下を回避することが可能となる。さらには第3の帯域の振動をより強調することによって、脳活性を上昇させることができる。これによって従来の音響デジタルメディアがもっている脳活性低下の危険性を回避することにより、快感を高め、脳活性の低下に起因するさまざまな病理を予防する電子機器、音響機器、通信機器、放送機器などを提供することが可能になる。
次いで、望ましい脳活性状態を導かないオリジナル振動信号に対して脳活性の増大又は低下を導くことができる振動を補完する装置に関する実施形態について以下説明する。
図21は実施形態3−6に係る、望ましい脳活性状態を導かないオリジナル振動信号に対して脳活性の増大又は低下を導くことができる振動信号を加算することにより、基幹脳活性化効果を導くことができる出力信号を発生する装置のブロック図である。なお、各振動信号は、例えば振動信号記憶装置とその再生回路によって発生する。図21において、各振動信号を増幅回路581,582により増幅した後、加算器583により加算する。この装置によって、例えばピアノ音のように第3の帯域の振動信号を含まず基幹脳活性化効果を導かない振動信号がオリジナル信号として入力されたとしても、第3の帯域の振動信号を含む振動信号を補完することによって、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を出力することができる。これにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
図22は図21の装置の変形例を示すブロック図である。図22において、望ましい脳活性状態を導かないオリジナル振動信号と、脳活性の増大又は低下を導くことのできる振動信号とを加算器583により加算し、同一の増幅回路584に入力することにより、脳活性の増大又は低下を導くことのできる出力信号を得る。
図23〜図25に具体的な応用例を示す。現在、パッケージメディアや放送・通信などを介した音楽・音声などの振動信号の伝送・配信には、第3の帯域の振動信号を記録することができないデジタルフォーマットや、同様に第3の帯域の振動信号を記録することのできない帯域幅しかもたないアナログ方式が非常に多く用いられている。また、規格上第3の帯域の振動信号を含みうる場合も実際のコンテンツには第3の帯域の振動信号が十分に含まれていない場合が少なくない。これらの方式によって記録されたり伝送された振動信号を再生した振動では、基幹脳活性化効果を導くことができない。本発明装置を用いることにより、現在の社会に広く普及した上記既存方式によって蓄積されたり伝送・配信される基幹脳活性化効果を導かないコンテンツを活用して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動を人間に印加することが可能になる。
図23は実施形態3−6に係る、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動に対して基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を加算する振動補完装置を含む振動処理装置の例を示す斜視図である。すなわち、音楽CDの信号など、第3の帯域を含む超高周波成分を記録することができず基幹脳活性化効果を導くことができないデジタルフォーマットの信号をオリジナル振動信号とし、それに対して基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を加算する振動補完装置の例である。この振動補完装置611は、CDプレーヤ610内に内装されており、少なくとも第3の帯域の振動信号を含む振動信号を記録した固形メモリなど各種の記憶装置を内蔵している。この振動補完装置は、CDから読み取られた第3の帯域の振動信号が含まれていないオリジナル振動信号に対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を記憶装置から読み出して加算した上で、CDプレーヤ610から振動信号を出力する。出力された振動信号は、増幅器612を介してスピーカ613などにより空気振動に変換される。このとき変換された空気振動は、基幹脳活性化効果を導くことができる振動となっている。上記の振動補完装置は、CDプレーヤ内蔵型の例を示したが、外付け型でもよい。また、ここではあらかじめ設定された基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を用いて補完する例を示したが、使用者が複数の候補のなかから選択した基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を用いて補完することもできる。なお、ここでは脳活性を増大する例を述べているが、第2の帯域の振動信号を補完して脳活性を低下させることも可能である。
なお、この振動補完装置の対象となるオリジナル振動信号としては、上記のCD以外に、DVDビデオ、DVDオーディオ、ブルーレイディスク、ハードディスクなどの記憶媒体に第3の帯域の振動信号を記録することのできないデジタルフォーマットで記録された振動信号、及び例えばVRシステムやテーマパークのアトラクションシステム、ゲーム機、ゲームソフトなど第3の帯域の振動信号を記録再生することのできないフォーマットを用いた機器で使用される振動信号、電話やTV会議システム、無線機など第3の帯域の振動信号を伝達することのできないフォーマットを用いた放送・通信などを介して伝送・配信された振動信号、さらに第3の帯域の振動信号を変換・伝送することのできない装置を用いて固体・液体・気体などの振動をトランスデューサによって電気変動に変換した振動信号などが対象となる。また、上記のような記憶媒体に第3の帯域の振動信号を記録できるフォーマットで記録された振動信号であっても、さらに、第3の帯域の振動信号を変換・伝送できる装置を用いて固体・液体・気体などの振動をトランスデューサによって電気変動に変換した振動信号であっても、その振動が第3の帯域の振動をじゅうぶんに含んでおらず基幹脳活性化効果を導かない場合は、この振動補完装置の対象となる。
この装置を用いることにより、第3の帯域の振動信号を記録することができず基幹脳活性化効果を導くことができないデジタルフォーマットの振動信号を記録した、既存の膨大なコンテンツを活用して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動を人間に印加することが可能になる。また、今後もひきつづき生産されることが予想される、第3の帯域の振動信号を記録できるハイレゾリューション・オーディオなどのフォーマットを活用しつつも第3の帯域の振動信号をじゅうぶんに含まないが故に基幹脳活性化効果を導かない振動信号で構成されたコンテンツを活用して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動を形成し人間に印加することが可能になる。
図24は実施形態3−6に係る、携帯型プレーヤなどから出力される基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動に基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を加算する振動補完装置の例を示す斜視図である。図24において、携帯型プレーヤ620の信号など、第3の帯域の振動信号を記録することができず基幹脳活性化効果を導くことができないデジタルフォーマットの信号をオリジナル振動信号とし、それに対して少なくとも第3の帯域の振動信号を含み基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を加算する振動補完装置621の例を示す。この振動補完装置621は、携帯型プレーヤ620内に内装されており、少なくとも第3の帯域の振動信号を含む振動信号を記録した固形メモリなどの記憶装置を内蔵している。この振動補完装置621は、携帯型プレーヤ620の固形メモリなどから読み取られた第3の帯域の振動信号が含まれていない振動信号に対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を記憶装置から読み出して加算した上で、携帯型プレーヤから振動信号を出力する機能をもつ。加算された信号は、ヘッドホン、イヤホン等622や身体表面に振動を印加する装置622などにより人間623に印加される。このとき印加される振動は、基幹脳活性化効果を導くことができる振動となっている。上記の振動補完装置620は、携帯型プレーヤ内蔵型の例を示したが、外付け型でもよいし、補完する第3の帯域の振動信号を外部機器から入力されたり、放送・通信を介して受信したりしてもよい。なお、ここでは脳活性を増大する例を述べているが、第2の帯域の振動信号を補完して脳活性を低下させることも可能である。
なお、この振動補完装置620の対象となるオリジナル振動信号としては、固形メモリなど各種記録媒体に第3の帯域の振動信号を記録することのできないデジタルフォーマットで記録された音楽などの信号のほか、現行のワンセグなどのデジタル放送や通信によって伝送・配信される第3の帯域の振動信号を記録することのできないフォーマットの信号、さらに、第3の帯域の振動信号を記録再生できるフォーマットを用いつつもそのコンテンツに第3の帯域の振動信号がじゅうぶんに含まれていない信号などが対象となる。
この実施例に係る装置を使うことにより、既存の携帯型プレーヤなどに使用される、第3の帯域の振動信号を記録することができず基幹脳活性化効果を導くことができないデジタルフォーマットの音楽などのコンテンツを活用して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動を人間に印加することが可能になる。
図25は実施形態3−6に係る、放送受信機器などから出力される基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を加算する振動補完装置の例を示す斜視図である。図25において、テレビジョン受像機630などの放送受信機器の信号など、第3の帯域の振動信号を含まず基幹脳活性化効果を導くことができないフォーマットで伝送される振動信号をオリジナル振動信号とし、それに対して基幹脳活性化効果を導くことができる第3の帯域の振動信号を含む振動信号を加算する振動補完装置の例を示す。この振動補完装置631は、テレビジョン受像機630などの放送受信機器内に内装されており、第3の帯域の振動信号を含む振動信号を記録した固形メモリなどの記憶装置を内蔵している。この振動補完装置631は、受信された第3の帯域の振動信号が含まれていない振動信号に対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を記憶装置から読み出して加算した上で、振動信号を出力する機能をもつ。加算された信号は、放送受信機器に付属されたスピーカ632などによって空気振動に変換される。このとき変換された空気振動は、基幹脳活性化効果を導くことができる振動となっている。上記の振動補完装置631は、内蔵型の例を示したが、外付け型でもよいし、補完する第3の帯域の振動信号を外部機器から入力されたり、放送・通信を介して受信したりしてもよい。また、記憶された信号を自動的に補完することもできるし、使用者が好みの振動信号を選択して補完することもできる。なお、ここでは脳活性を増大する例を述べているが、第2の帯域の振動信号を補完して脳活性を低下させることも可能である。
なお、この振動補完装置の対象となるオリジナル振動信号としては、現行の地上波デジタル放送、BSデジタル放送、アナログTV放送、AMラジオ放送、FMラジオ放送、インターネットなどの通信、電話回線、無線通信、インカム、インターホンなどによって伝送・配信される第3の帯域の振動信号を伝送することのできないデジタルフォーマット、アナログフォーマットの信号や、第3の帯域の振動信号を記録再生できるハイレゾリューション・オーディオなどのフォーマットを用いつつもそのコンテンツに第3の帯域の振動信号が十分に含まれていない信号などが対象となる。
本実施例に係る装置を用いることにより、既存の放送などによって伝送される振動信号を活用して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動を人間に印加することが可能になる。
次いで、既存の帯域伸長と組み合わせた振動補完装置に対応する実施例について以下説明する。
近年、可聴域を超える超高周波成分が欠落した振動信号に対して超高周波成分を補う1つの手法として、さまざまな帯域伸長法が提案されている。しかし、伸長結果の帯域が第2の帯域にとどまっていたり、第3の帯域の振動信号を十分に含んでいない例が少なくない。
この問題に対して、本実施例では、第3の帯域の振動信号を補完することによって、帯域伸長された振動信号の安全性を高めることはもとより、基幹脳ネットワークの活性化を導き、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上する効果が得られる。
図26は実施形態3−6に係る、既存技術の帯域伸長手段と、基幹脳活性化効果を導くことができる振動の加算手段とを併用する振動補完装置の例を示すブロック図である。図26において、超高周波成分を有さず基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対する再生回路641及び帯域伸張回路(一般に帯域拡張回路ともいう)642と、その信号に対して基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号に対する再生回路643と、これらの振動信号を加算する加算器644とを備えて構成される。
ここで、超高周波成分を有さず基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して、既存の帯域伸張回路642(例えば、特許文献6及び7参照)を用いることにより、人間の可聴周波数上限である20kHz以上の帯域まで伸張したもののじゅうぶんに第3の帯域の振動信号を含んでいない信号に対して、第3の帯域の振動信号を含む振動信号を加算器644により加算することにより、基幹脳活性化効果を導くことができる出力信号を発生する装置の例を示す。これにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る報酬系及び全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢を含む基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上する効果が得られる。
次いで、ハイパスフィルタを組み込んだ振動補完装置の実施例について以下説明する。
図27は実施形態3−6に係る、オリジナル振動信号に対して基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号の超高周波成分を抽出した信号を加算することにより基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を出力信号として発生する振動補完装置の例を示すブロック図である。図27において、ハイパスフィルタ645によってろ波することにより第3の帯域の振動信号のみを抽出した信号を、第3の帯域の振動信号を有さず基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して加算器644により加算することにより、上記性質の条件を満たす成分を補完し、その結果として基幹脳活性化効果を導くことができる出力信号を発生する。そこに加算する第3の帯域の振動信号に可聴域成分が含まれていないので、例えばオリジナル信号が音楽であった場合、両者が干渉してオリジナル振動を音楽として受容することが困難になるといった事態は発生しない。すなわち、オリジナル振動の可聴域成分の受容を妨げることなく、基幹脳活性化効果を導くことが可能になる。なお、ハイパスフィルタ645は、バンドパスフィルタであってもよい。またオリジナル振動信号に対して、図26の既存の帯域伸長回路を併用しても良い。なお、ここでは脳活性を増大する例を述べているが、第2の帯域の振動信号を補完して脳活性を低下させることも可能である。
次いで、実施形態3−7の応用例を示す。
図28は、テレビ放送において、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を伝送することによって、テレビ音声を再生するスピーカから基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を視聴者に印加し、視聴者の美的感受性を高め、テレビ画像質を高め、より快く美しく感動的に受容させることができる装置の例である。
放送する音源そのものが第3の帯域の振動信号を含み基幹脳活性化効果を導くことができる振動である場合、現在のテレビ放送の音声規格では第3の帯域の振動信号を含むことができず伝送できないが、音声規格の広帯域化を実現することによってこの効果をもたせたテレビ信号を伝送可能になる。またハイレゾリューション配信のように高速大容量のインターネット通信などを用いて伝送してもよい。
また、放送する音源が基幹脳活性化効果を導くことができない振動である場合、放送局で編集する際に、実施形態3−6で述べた各種の補完装置及び補完方法によって基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を補完してから伝送することによって、報酬系神経回路を活性化し、受容者の美的感受性を増強し、快さ、美しさ、感動を高め、受容される画質の向上を実現することもできる。その場合も、現在のテレビ放送の音声規格では超高周波成分を含むことができず伝送できないが、音声規格の広帯域化を実現することにより伝送可能になる。また、ハイレゾリューション配信のように高速大容量のインターネット通信などを用いて伝送してもよい。
さらに、現行のデジタルテレビなど放送端末機器に伝送された振動信号が、第3の帯域の振動信号を含まず基幹脳活性化効果を導くことができない振動信号である場合、実施形態3−6で述べた各種の装置及び方法によって、基幹脳活性化効果を導くことができる振動を端末機器において補完して再生してもよい。それによって、報酬系神経回路を活性化し、受容者の美的感受性を増強し、受容される画質感の向上を実現し、快さ、美しさ、感動を高めることもできる。なお、ここでは第3の帯域の振動を補完して脳活性を増大する例を述べているが、第2の帯域の振動信号を補完して脳活性を低下させることも可能である。たとえばコンテンツの内容進行にあわせて脳活性を時間的に増大あるいは低下させる演出に活用することもできる。
この装置は、現行の地上波デジタル放送(ワンセグを含む。)、BSデジタル放送、アナログTV放送、インターネットなどの通信によって伝送・配信される映像・音声コンテンツなども対象となる。
図29は図28の変形例にかかる、振動補完装置の例を示すブロック図である。図29において、複数のAV装置(映像及び/又は音声の再生、記録、表示装置)614がインターネットなどのネットワーク615に接続され、当該ネットワーク615にサーバ装置616が接続されている。図28の実施例では、端末側のAV装置614で補完装置を備えているが、図29に示すように、ネットワーク615上のサーバ装置616などのネットワーク機器に補完装置を備えてもよい。
その他の応用例を示す。以下は、異なる感覚情報の品質が技術的制約によりトレードオフの関係によって二律背反状態に陥っている問題を解決するものではなく、複数の感覚系に働きかける複合感覚情報発生手段において、生体に印加された振動が基幹脳を活性化することを通じて、人間における快と美と感動の発生を一元的包括的に司る機能をもった報酬系の活性化効果を導くことに着目した、より積極的な応用例である。例えば、劇場における舞踊公演において、観客が聴取する音楽の振動を第3の帯域の振動を十分に含ませることによって基幹脳活性化効果を導くことのできる振動として構成することにより、観客の美的感受性を高め、舞踊をより美しく快く感じさせることができる。この例は、そのほかのライブパフォーマンス、美術館、博物館、画廊、宝飾店、ブティック、化粧品売り場などにも応用できる。
その他の感覚への応用例として、例えば、ミュージック・レストランにおいて、客が聴取する音楽を基幹脳活性化効果を導くことのできる振動として構成することにより、客の味覚感受性を高め、料理をよりおいしく感じさせる。この例は、喫茶店、食堂、バーなどにも応用できる。
また、ミュージック・スパなどにおける入浴・マッサージと音楽において、客が受容する音楽を基幹脳活性化効果を導くことのできるハイパーソニック・サウンドとして構成することにより、客の体性感覚の感受性を高め、より快く入浴やマッサージを体感することができる。
さらに、鉄道、車、飛行機、船舶、ロケット等の乗り物において、乗客又は乗務員が受容する音を、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動として構成することにより、乗客又は乗務員の体性感覚の好感度を高め、快適な乗り心地を体感させることができる。
また、ミュージック・アロマ・セラピーなどにおける香りと音楽において、客が受容する音楽を基幹脳活性化効果を導くことのできる振動として構成することにより、客の嗅覚の感受性を高め、より快い香りを感じさせ、高いヒーリング効果を導くことができる。
以上説明したように、聴覚以外の視覚、味覚、体性感覚及び嗅覚のうちの少なくとも1つに対して所定の情報を人間に印加しながら、第1及び第3の帯域の振動を当該人間に印加することにより、当該人間におけるあらゆる快と美と感動の反応の発生を一元的包括的に司る脳機能部位である報酬系神経回路を含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化し、それによって、聴覚以外からの感覚入力に対する美的感受性をも増強し、聴覚以外の感覚情報の表現効果を高めることができる。
上記の実施形態3−1〜3−7において、これらの装置、方法及び空間を人間及び動物に用いて帯域の配合又は組み合わせを変化させることにより、さまざまな程度に脳活性を増大又は低下させることができる(さじ加減の調整が可能になる)。これを病理状態のモデルやその治療モデルに応用した場合、さまざまな状態の病理モデル又は治療モデルをつくり出すことが可能になる。これを応用した「病理モデル又は治療モデル生成装置」が考えられる。また、帯域の配合を変化させることによって、強力な脳活性の上昇から微弱な脳活性の上昇までさまざまな程度に制御できることを応用して、病態の程度に合わせて適切な効果を導く、副作用の生じる危険が少ない安全な治療薬としての応用ができる。いわゆる薬の「さじかげん」と同じような微調整をすることが可能となる。
また、具体的な応用例として、鎮痛作用、睡眠誘導作用、抗不安作用などが考えられる。さらに、この方法を活用することによって、脳活性の低下により被験者に何らかのマイナスの影響を与える恐れがある実験を行う場合でも、それに先行してポジティブ効果を導く周波数帯域の振動を呈示しておき、被験者の脳活性のベースラインを上昇させた状態で実験を実施すれば、万一相対的にマイナスの影響を与えたとしても、脳活性のレベルを心身に悪影響を及ぼさないある一定の水準に維持することが可能になるため、健康面における実害を導くことなく、安全性を確保しつつ実験を実施できるという利点がある。この効果を利用した「被験者の安全装置」としての応用例が考えられる。また、この効果を利用して、居住空間や執務空間、娯楽空間、公共空間、乗り物などでさまざまな程度に脳活性を増大又は低下させ、状況に合わせて適切な効果を導くアプリケーションが考えられる。
実施形態4:ネガティブ及びポジティブ強度変化.
図30は実施形態4に係る振動処理装置の振動処理方法(強度変化を行う呈示方法)を示す図であって、図30(a)は第1、第2及び第3の帯域を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図であり、図30(b)は上記分割帯域における脳活性の指標(DBA−indexの差分)を示す図である。実施形態4に係る振動処理装置、方法及び空間は、図30に示すように、「ネガティブ効果」をもつ帯域の振動の強度を減弱又は増強することによって、あるいは「ポジティブ効果」をもつ帯域の振動の強度を増強又は減弱することによって、あるいはそれらの組み合わせによって、脳活性の増大又は低下の度合いを任意に制御することを特徴とする。その中でも特に応用の有効性が高いものとして、ネガティブ効果をもつ帯域を除去又は減弱させることによって脳活性の低下を防止する手段を含む。なお、図30において各帯域の境界に相当する周波数は、本実験の聴取条件における一例を示したものであり、振動呈示条件又は振動聴取条件、あるいは対象となる動物の種毎に異なる値をとるものと考えられる。
図31は実施形態4−1に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図31において、実施形態4−1に係る振動呈示装置は、振動信号の記録媒体1aAのドライブを含む信号発生装置1aと、再生回路2と、コントローラ50により制御されるプロセッシングイコライザ60と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。ここで、プロセッシングイコライザ60は、ローパスフィルタ61と、バンドパスフィルタ62と、ハイパスフィルタ63と、レベル調整回路64と、加算器66とを備えて構成される。当該実施形態では、信号処理によって、ネガティブ効果をもつ帯域を除去又は減弱し、ポジティブ効果をもつ帯域を増強させる振動呈示装置のシステムの例を示す。なお、信号発生装置は振動信号源の上記帯域の振動信号を予め記憶するメモリを内蔵して当該振動信号を発生してもよい。また、振動信号の記録媒体、信号発生装置及び再生回路の代わりに、振動信号合成装置や、音声・音楽・環境音などの振動を発生する振動発生装置又は振動発生源とマイクロホンやピックアップなどの信号変換装置との組み合わせを使用してもよいし、デジタル放送やハイレゾリューション配信の音声信号など放送・通信された信号を有線・無線で受信してもよく、外部機器から入力された信号を用いてもよい。さらに、振動発生装置が出力する振動を信号に変換せず、吸音材などにより特定の帯域を除去又は減弱し、共鳴装置などにより特定の帯域を増強させてもよい。
図31において、コントローラ50は各レベル調整回路64の減衰あるいは増幅度を制御する。振動信号の記録媒体1aAから信号発生装置1aにより読み出された第1、第2及び第3の帯域を含む振動信号から、「ネガティブ効果」をもつ第2の帯域(例えば16kHz〜32kHz)の成分をバンドパスフィルタ62で抽出してレベル調整回路64で減弱させるとともに、「ポジティブ効果」をもつ第3の帯域(例えば32kHz〜)の成分をハイパスフィルタ63で抽出し、レベル調整回路64で増強させ、これらをローパスフィルタ61で抽出した第1の帯域の成分と加算器66により加算して得られた信号を増幅回路3により増幅した後、振動呈示器4により振動に変換して呈示する。
また本実施形態において、第1の帯域の成分を抽出するフィルタはローパスフィルタ61ではなくバンドパスフィルタであってもよく、第2の帯域の成分を抽出するフィルタはバンドパスフィルタ62ではなくハイパスフィルタでもよい。また、第3の帯域の成分を抽出するフィルタは、ハイパスフィルタ63ではなくバンドパスフィルタであってもよい。
本実施形態に係るシステムの変形例として、第1、第2の帯域のみを含む振動信号から、第2の帯域のみを除外又は減弱させる装置であってもよい。また、別の変形例として、第1、第3の帯域のみを含む振動信号について、第3の帯域のみを増強させる装置であってもよい。さらに、バンドパスフィルタ62及びレベル調整回路64の組み合わせ回路に代えて、例えば、第2の帯域(例えば16kHz〜32kHz)を減弱させるバンドエリミネートフィルタなどのフィルタ装置を用いてもよい。なお本実施形態を用いて、レベル調整を逆方向に行い、ネガティブ効果をもつ帯域を増強し、ポジティブ効果をもつ帯域を除去又は減弱させることもできる。
図32は実施形態4−2に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。図32の装置は、図31の変形例として第1、第2、第3のそれぞれの帯域ごとに音源がある場合である。図32において、実施形態4−2に係る振動呈示装置は、振動信号の記録媒体1cA,1dA,1eAのドライブを含む信号発生装置1c,1d,1eと、再生回路2c,2d,2eと、コントローラ50により制御されるプロセッシングイコライザ60Aと、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。ここで、プロセッシングイコライザ60Aは、レベル調整回路64と加算器66とを備えて構成される。なお、コントローラ50はレベル調整回路64の減衰あるいは増幅度を制御する。
図32において、振動信号の記録媒体1cAから信号発生装置1cにより読み出された第1の帯域の振動信号を再生回路1cにより再生して加算器66に入力する。また、振動信号の記録媒体1dAから信号発生装置1dにより読み出された「ネガティブ効果」をもつ第2の帯域(例えば16kHz〜32kHz)の振動信号を再生回路1dにより再生してレベル調整回路64で遮断、あるいは減弱、増強させて加算器66に入力する。また、振動信号の記録媒体1eから信号発生装置1eにより読み出された「ポジティブ効果」をもつ第3の帯域(例えば32kHz〜)の成分を再生回路1eにより再生した後、レベル調整回路64で遮断、あるいは減弱、増強させて加算器66に入力する。加算器66は入力される3つの信号を加算して加算結果の信号を増幅回路3により増幅した後、振動呈示器4により振動に変換して呈示する。これにより、第2の帯域あるいは第3の帯域を含まない振動信号に対して、第2の帯域あるいは第3の帯域の振動信号をレベル調節をしたうえで付加し、脳活性の増大又は低下の度合いを任意に制御することが可能になる。なお、図32ではプロセッシングイコライザ60Aにおいて、加算器66で各帯域の振動信号が加算される例を示したが、加算器66を介さず、各帯域毎に独立した増幅回路と振動呈示装置をもっていてもよい。
以上の実施形態のほかに、空気中を伝播する空気振動に対してアコースティック処理をほどこすことによって、ネガティブ効果をもつ帯域を除去又は減弱し、ポジティブ効果をもつ帯域を増強させるさまざまな装置が考えられる。原理によって、以下のごとく大きく3種類に分類できる。
(A)吸収装置:空気振動が物質中を透過する際に、特定の帯域の振動が選択的に吸収されることを利用して、ネガティブ効果をもつ第2の帯域の振動成分を減弱させる装置。
(B)反射装置:空気振動が物質に衝突し反射する際に、特定の帯域の振動を選択的に反射することを利用して、ネガティブ効果をもつ第2の帯域の振動成分を除去し、ポジティブ効果をもつ第3の帯域の振動成分を増強させる装置。
(C)共鳴装置:空気振動が室内の壁などで共鳴する際に、特定の帯域の振動が選択的に共鳴することを利用して、ポジティブ効果をもつ第3の帯域の振動成分を増強させる装置。
次いで、本実施形態に関わる装置、方法及び空間の作用効果とアプリケーションについて以下に説明する。
本実施形態の中でも特に、ネガティブ効果をもつ第2の帯域を除去又は減弱させることによって脳活性の低下をふせぐとともに、ポジティブ効果をもつ第3の帯域を増強することによって脳活性を増強させる手段は、きわめて重要かつ有効な効果と応用が考えられる。
現代社会に蔓延する交通騒音や電子機器の発する人工音も含めた音環境、CDなどのメディアに記録された信号、あるいは放送又は通信によって配信又は伝送される音声又は音楽信号やその再生音等は、ネガティブな効果を導く帯域を高い割合で含んでいることが多く、現代人の脳活性を低下させ現代病の原因ともなり得る。これらに対して、ネガティブな帯域の振動を除去又は減衰させることによって、負の影響を取り除き安全性を確保する効果を得ることができる。さらに、ポジティブ効果をもつ第3の帯域を増強あるいは付加し、基幹脳活性を増強させる手段を合わせもつことにより、快適感や美的感受性を増す効果をもつ。これによって、音楽をはじめ芸術作品やホール・イベント空間などでの実演・展示・上映などに対する快と美と感動の反応を高め、表現効果を増大させる効果的な手段としての応用、居住空間、執務空間、娯楽空間、公共空間、乗り物等を快適化する効果的な手段としての応用など、さまざまな応用展開が可能である。
さらに、電子機器をはじめ以下のようなさまざまな応用例が考えられる。
(a)AVシステムへの応用:ネガティブ帯域減弱装置・ポジティブ帯域増強あるいは付加装置を内蔵したプレーヤ、エフェクタ、ミキサ、アンプ、スピーカ、コンポなど。ネガティブ帯域減弱装置・ポジティブ帯域増強あるいは付加装置を内蔵したビデオデッキ、チューナー、ディスプレイ、TVなど。ネガティブ帯域減弱装置・ポジティブ帯域増強あるいは付加装置を内蔵したコンピュータ。
(b)携帯機器・携帯電子機器への応用:ネガティブ帯域減弱装置・ポジティブ帯域増強あるいは付加装置を内蔵した携帯メディアプレーヤ、携帯電話、スマートホン、携帯情報機器など。イヤホン内蔵型、ケーブル埋め込み型ネガティブ帯域減弱装置・ポジティブ帯域増強あるいは付加装置。
(c)このほかにネガティブ効果減弱又はポジティブ効果増強あるいは付加装置の適用先の例として、衣類、帽子、装身具、化粧品、寝具、カーテン、風呂、トイレ、部屋の壁面・天井面・床面・柱、什器、置物、インテリア、エクステリア、乗り物の内装、車体やタイヤ、建築物の外装又は内装や、耳栓、補聴器などが考えられる。
実施形態5:帯域シフト.
図33は実施形態5に係る振動処理装置の振動処理方法(帯域シフトを用いる呈示方法)を示す図であって、図33(a)は第1、第2及び第3を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図であり、図33(b)は上記分割帯域における基幹脳活性変化の指標(DBA−indexの差分)を示す図である。実施形態5に係る振動呈示装置、方法及び空間は、図33に示すように、「ネガティブ効果」をもつ帯域の振動信号を「ポジティブ効果」をもつ帯域に変換することによって、効果的に脳活性の増大を導くことを特徴とする。
本実施形態は、既存の帯域補完方式(例えば、寅市和男教授のフルーエンシー理論、山本裕教授のサンプル値制御理論、FIDELIX社中川伸氏のハーモネーター方式、単なるスローロールオフフィルタの特性を活用した方式など)を含むあらゆる帯域補完方式を用いて実施できるが、以下に、具体例をいくつか示す。
図34Aは実施形態5−1に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図であり、図34Bは図34Aの帯域シフト回路83の詳細構成を示すブロック図である。実施形態5−1に係る振動呈示装置は、FFT(Fast Fourier Transform)演算と逆FFT演算を組み合わせることによって、第2の帯域(例えば16kHz〜32kHz)の振動信号を、第3の帯域(例えば32kHz〜)の振動信号へとシフトすることを特徴としている。すなわち、第1の帯域の成分とポジティブ効果をもたらす第3の帯域の成分が存在し、ネガティブ効果をもたらす第2の帯域の成分が存在しないという効果的に脳活性の増大を導くスペクトル構成を必然的にとるという特徴がある。これは、従来既存の帯域補完方式(例えば、寅市和男教授のフルーエンシー理論、山本裕教授のサンプル値制御理論、FIDELIX社中川伸氏のハーモネーター方式、単なるスローロールオフフィルタの特性を活用した方式など)が、低いサンプリングレートで失われた高周波帯域のスペクトル構造や波形の連続性の復元や補完を目指しているのと大きく異なる特徴を持つ。さらにこれら既存の方式の実装では、CDやDVDなど44.1kHz〜48kHzPCM信号を補完を行う際、記録再生可能な帯域の2倍、すなわち44.1kHz〜48kHzまでの帯域に補完し伸長している場合が多い。こうして得られた帯域成分は第1の帯域と第2の帯域が主で第3の帯域はわずかしか含まず、スペクトル構造や波形の連続性の再現が不十分であるばかりでなく、脳活性の低下を導く危険性がきわめて大きいという弊害を持つ。図34Aにおいて、当該振動呈示装置は、第1の帯域の成分を抽出するローパスフィルタ(LPF)81と、第2の帯域の成分を抽出するハイパスフィルタ(HPF)82と、FFT及び逆FFTによる帯域シフト回路83と、加算器84と、振動呈示器4とを備えて構成される。
CDやDVDなどの記録メディアに記録された信号、もしくは放送又は通信によって配信又は伝送される伝送信号の多くは、技術的制約を含むさまざまな制約から帯域制限されており、第1の帯域と第2の帯域の一部しか含まない場合が多くある。このシステムでは、こうした、第1の帯域と第2の帯域の一部しか含まない振動信号を振動源とする。
図34Aにおいて、第1及び第2の帯域信号を含む信号からローパスフィルタ81により第1の帯域信号を抽出して加算器84に入力するとともに、第1及び第2の帯域信号を含む信号からハイパスフィルタ82により第2の帯域信号を抽出し、帯域シフト回路83により第2の帯域信号を第3の帯域信号に帯域シフトした後、加算器84に入力する。加算器84は入力された2つの信号を加算して振動呈示器4に出力する。
図34Bにおいて、帯域シフト回路83は、FFT回路85と、逆FFT回路86とを備えて構成される。FFT回路85は、第2の帯域を含む振動信号についてFFT演算を行って位相情報を保持したパワースペクトルを得る。そのパワースペクトルデータのうち、例えば16kHz〜32kHzの帯域(例えば100Hz毎に分割)のデータを例えば80kHz〜96kHzの帯域(例えば100Hz毎に分割)に移動し、その後、逆FFT回路86により逆FFT演算を行うことによって、第3の帯域を含む振動信号を得て、その後、図34Aの加算器84により第1の帯域を含む振動信号を得て呈示する。また入力信号がPCM96kHz以上のサンプリング周波数をもち第1、第2、第3の帯域成分を含む場合には、16kHz以上の第2、第3の帯域成分全体を、例えば32kHz以上の帯域成分に並行にシフトしてもよく、あるいは記録されている第3の帯域成分はシフトせず、例えば16kHz〜32kHzの第2の帯域成分のみを、記録されている帯域より高い(PCM96kHzの場合48kHz以上の)帯域にシフトしてもよい。
図35Aは実施形態5−2に係る振動呈示装置で用いるエンコーダ装置80の構成を示すブロック図であり、図35Bは図35Aの帯域シフト回路83Aの詳細構成を示すブロック図である。図35A及び図35Bの装置は、図34A及び図34Bの変形例であって、第3の帯域を含む振動源を放送又は通信によって配信又は伝送する場合に、技術的制約から第1及び第2の帯域内でしか配信又は伝送不可能な状況において、脳活性の低下を導く効果を持つ第2の帯域のオリジナル信号成分は破棄し、第3の帯域を含む信号を空いた第2の帯域に変換して配信又は伝送し、受信者の端末で再び第3の帯域に復元して再生する手段を示す。元の振動源は第3の帯域も含む広帯域の振動信号であったとしても(あるいは帯域伸長補完をして、もともと存在しなかった第3の帯域の振動信号を合成したとしても)、例えばデジタルテレビ放送の音声など、収録、編集、配信又は伝送の段階で帯域制限され、聴取者は第3の帯域を受信することができない場合がある。こうした場合にきわめて有効な配信又は伝送システムであるとともに、ここで受信者が享受する振動信号は第1の帯域の成分とポジティブ効果をもたらす第3の帯域の成分が存在し、ネガティブ効果をもたらす第2の帯域の成分が存在しないという効果的に脳活性の増大を導くスペクトル構成を必然的にとるという特徴がある。
図35Aにおいて、エンコーダ装置80は、AD変換器(ADC)85と、第1の帯域信号を抽出するローパスフィルタ(LPF)81と、ダウンサンプリング回路87と、第3の帯域信号を抽出するハイパスフィルタ(HPF)82Aと、FFT及び逆FFTによる帯域シフト回路83Aと、ダウンサンプリング回路88と、加算器84と、信号伝送装置89とを備えて構成される。図35Bにおいて、帯域シフト回路83Aは、FFT回路85Aと、加算器86Bと、逆FFT回路86Aとを備えて構成される。エンコーダ装置80は、FFT演算と逆FFT演算を組み合わせることによって、第3の帯域の信号を第2の帯域に変換する帯域変換回路を含む。ここで変換生成された第2の帯域の信号は、詳細後述するデコーダ装置などを用いて、伝送後に受信機側で第3の帯域の信号に復元することが可能である。
図35Aにおいて、放送局など配信側のエンコーダ装置80では、まず、第1、第2及び第3のすべての帯域の振動を含むオリジナルの信号(あるいは帯域伸長した信号)を、AD変換器85によりサンプリング周波数192kHzでPCM信号に符号化する。当該PCM信号から第1の帯域信号のみをローパスフィルタ81により抽出した後、ダウンサンプリング回路87により48kHzPCM信号にダウンサンプリングし、加算器84に出力する。一方、当該PCM信号から第3の帯域信号のみをハイパスフィルタ82Aにより抽出した後、帯域シフト回路83Aにより第2の帯域信号に帯域変換し、ダウンサンプリング回路88により48kHzPCM信号にダウンサンプリングし、加算器84に出力する。加算器84は入力される2つのPCM信号を加算して48kHzのPCM振動信号を得て、放送メディア又はパッケージメディアなどの信号伝送装置89を介して信号伝送する。
図35Bの帯域シフト回路83Aでは、第3の帯域信号を含む振動信号の帯域全体をFFT回路85Aにより、例えばBIN幅100HzのFFT演算を行い、位相情報を含むパワースペクトルデータを得る。当該データから、第2の帯域(例えば16kHz〜32kHz)のパワースペクトルデータを廃棄するとともに、第3の帯域のうち例えば64kHz〜96kHz(32kHz帯域幅)のパワースペクトルデータについて、4つのBIN幅(すなわち400Hz幅)のデータを平均して、それを16〜24kHz(8kHz帯域幅)におけるBIN幅100Hzに相当するものと見なすことにより、64〜96kHz(32kHz帯域幅、BIN幅400Hz)のデータを、16〜24kHzの8kHz帯域幅におさめることが可能になる。こうして移動した16〜24kHz(8kHz帯域)の成分について加算器86Bにより加算した後、加算結果の成分について逆FFT回路86Aにより逆FFT演算を行う。これにより、16kHz未満の第1の帯域のスペクトルデータとあわせて24kHz以下のパワースペクトルを得る。そして、ここで得られたパワースペクトルデータのうち、24kHz以下の成分をサンプリング周波数48kHzで逆FFTすることによって、サンプリング周波数48kHzのPCMデータ信号を得る。このPCMデータ信号は、信号伝送装置89に出力され、従来のデジタルテレビ放送などの音声規格内で伝送やさまざまな処理を加えることが可能である。このように変換したPCMデータ信号を、配信又は伝送し、聴取者の元に届ける。
図36Aは実施形態5−2に係る振動呈示装置で用いるデコーダ装置90の構成を示すブロック図であり、図36Bは図36Aの帯域シフト回路93の詳細構成を示すブロック図である。図36Aにおいて、デコーダ装置90は、第1の帯域信号を抽出するローパスフィルタ(LPF)91と、48kHzPCM信号からアナログ信号にDA変換するDA変換器94と、第2の帯域信号を抽出するハイパスフィルタ(HPF)92と、FFT及び逆FFTによる帯域シフト回路93と、192kHzPCM信号からアナログ信号にDA変換するDA変換器95と、加算器96と、振動呈示器4とを備えて構成される。図36Bにおいて、帯域シフト回路93は、FFT回路97と、逆FFT回路98とを備えて構成される。聴取者の元に届いた48kHzPCMデータ信号は、これに対して、図36A及び図36Bのエンコーダ装置80の処理とは逆の処理を実行することにより、48kHzPCMデータ信号中に含まれる第2の帯域の信号を第3の帯域にシフトすることができる。当該実施形態では、振動信号の配信・伝送について述べたが、帯域幅の狭いメディアに記録をとる場合などに適用することもできる。
図37Aは実施形態5−3に係る振動呈示装置で用いるデコーダ装置90Aの構成を示すブロック図である。また、図37Bは図37Aのアップサンプリング回路101の動作を示す図であり、図37B(a)は伝送用48kHzPCM信号の時系列データを示す図であり、図37B(b)はアップサンプリング方法の例1に係る過去の4点のサンプリング値を4倍速で4回繰り返した信号の時系列データを示す図であり、図37B(c)はアップサンプリング方法の例2に係る直前の4点のサンプリング値を4倍速で再生した信号の時系列データを示す図である。実施形態5−3に係る振動呈示装置で用いるデコーダ装置90Aは、第2の帯域の振動信号の一定時間のデータを4倍速再生を繰り返すことで時間的欠落を補うことによって、第3の帯域の振動信号を生成することを特徴とする。
図37Aにおいて、デコーダ装置90Aは、図36Aのデコーダ装置90と比較して、FFT及び逆FFTによる帯域シフト回路93に代えて、4倍速繰り返し再生補完で192kHzPCM信号にアップサンプリングするアップサンプリング回路101を備えたことを特徴とする。
図37Aのデコーダ装置90Aにおいて、まず、48kHzサンプリングのPCMデータ信号をローパスフィルタ91とハイパスフィルタ92とによってそれぞれ16kHz未満の第1の帯域の信号と16kHz〜24kHzの第2の帯域の信号に分離する。第2の帯域の信号を4倍速で繰り返し再生することによって、64kHz〜96kHz帯域の192kHzサンプリングのPCMデータ信号を得ることができる。これはすなわち第3の帯域である。これをDA変換器95によりDA変換した信号と、当初分離した第1の帯域をDA変換器94によりDA変換した信号とを加算器96によりミクシング(加算)することによって、第1及び第3の帯域信号を含み、第2の帯域信号を含まない振動信号を得ることができ、振動呈示器4により呈示する。
上記のうち4倍速で繰り返し再生するアルゴリズムの2例について図37Bに示す。図37B(a)に受信した48kHzサンプリングのPCM信号列を示す。第1のアルゴリズムは、図37B(b)に示すように、過去に受信した4点のサンプリング値からなる信号列を4倍速で4回繰り返し出力し、続いて、出力している間に受信した4点のサンプリング値から信号列を形成し、これを同様に4倍速で4回繰り返し出力する。この手続きを受信信号が終了するまで繰り返す。第2のアルゴリズムは、図37B(c)に示すように、直前に受信した4点のサンプリング値からなる信号列を4倍速で出力し、続いて、信号列の先頭の値を捨て、その間に受信した新しいサンプリング値を信号列の最末尾に追加して、その信号列を4倍速で出力する。この手続きを受信信号が終了するまで繰り返す。
図38Aは実施形態5−4に係る振動呈示装置で用いるエンコーダ装置80Aの構成を示すブロック図であり、図38Bは実施形態5−4に係る振動呈示装置で用いるデコーダ装置90Bの構成を示すブロック図である。また、図38Cは図38Aのエンコーダ装置80Aで実行される1/4間引きによる圧縮収納と、図38Bのデコーダ装置90Bで実行されるその復号化処理を示す図であって、図38C(a)はオリジナルの第3の帯域成分の信号の時系列データであり、図38(b)エンコーダ装置80Aでエンコードされたエンコード信号の時系列データあり、図38(c)はデコーダ装置90Bでデコードされたデコード信号の時系列データである。本実施形態は、図37A及び図37Bの変形例として、第3の帯域を含む振動源を放送又は通信によって配信又は伝送する場合に、技術的制約から第1及び第2の帯域内でしか配信又は伝送不可能な状況において、第3の帯域を含む信号を第2の帯域に変換して配信又は伝送し、受信者の端末装置で再び第3の帯域に復元して再生することを特徴とする。
図38Aにおいて、エンコーダ装置80Aは、AD変換器85と、第1の帯域を抽出するローパスフィルタ81と、48kHzPCM信号にダウンサンプリングするダウンサンプリング回路87と、第3の帯域を抽出するハイパスフィルタ82Aと、1/4間引きで48kHzPCM信号にダウンサンプリングするダウンサンプリング回路102と、加算器84と、信号伝送装置89とを備えて構成される。当該エンコーダ装置80Aでは、ダウンサンプリングによって、第3の帯域の信号を第2の帯域に変換する帯域変換回路を含む。ここで、帯域変換生成された第2の帯域の信号は、前述又は後述する手段などを用いて、伝送後に受信機側で第3の帯域の信号に復元することが可能である。
図38Aにおいて、放送局など配信側のエンコーダ装置80Aで、まず、広帯域の振動を含むオリジナルの信号(あるいは帯域伸長した信号)を、AD変換器85により192kHzサンプリングでPCMに符号化し、ここからローパスフィルタ81とハイパスフィルタ82Aとによってそれぞれ16kHz未満の第1の帯域と64kHz以上の第3の帯域とを抽出する。16kHz〜64kHzの振動信号はこのあとの処理では用いない。得られた第1の帯域の振動信号をダウンサンプリング回路87によりサンプリング周波数48kHzでダウンサンプリングした信号と、第3の帯域の振動信号をダウンサンプリング回路102により1/4に間引きしてサンプリング周波数48kHzでダウンサンプリングした信号とを加算器84により加算し、48kHzサンプリングPCM振動信号の出力を得る。これを信号伝送装置89により伝送し又は放送メディア、パッケージメディアへの記録に用いることができる。
図38Bにおいて、デコーダ装置90Bは、第1の帯域を抽出するローパスフィルタ91と、48kHzPCM信号からアナログ信号にDA変換するDA変換器104と、第2の帯域を抽出するハイパスフィルタ92と、4倍速繰り返し再生符号化で192kHzPCM信号にアップサンプリングするアップサンプリング回路103と、192kHzPCM信号からアナログ信号にDA変換するDA変換器105と、加算器96とを備えて構成される。すなわち、デコーダ装置90Bは、聴取者の元に届いた48kHzPCMデータ信号から、これを高速再生することによって、第1及び第3の帯域信号を含み、第2の帯域の振動信号を含まない振動信号を擬似的に復元して生成する帯域変換回路を含む。
図38Bのデコーダ装置90Bにおいて、48kHzサンプリングのPCMデータ信号をローパスフィルタ91とハイパスフィルタ92とによってそれぞれ16kHz未満の第1の帯域の信号と16kHz〜24kHzの第2の帯域の信号に分離する。第2の帯域の信号をアップサンプリング回路103により4倍速で繰り返し再生することによって、64kHz〜96kHz帯域の192kHzPCMデータ信号を得ることができる。これはすなわち第3の帯域である。これをDA変換器105によりDA変換した信号と当初分離した第1の帯域をDA変換した信号とを加算器96によりミクシング(加算)することによって、第1及び第3の帯域信号を含み、第2の帯域信号を含まない振動信号を得ることができ、振動呈示器4により呈示する。
図38Cに、図38Aのエンコード装置80Aの符号化において、第3の帯域成分を1/4に間引きする部分のアルゴリズムと、図38Bのデコーダ装置90Bの復号化において、4倍速再生を繰り返す部分のアルゴリズムの例を示す。図38C(a)にオリジナルの第3の帯域成分の信号列を示す。この信号列は、図38Aに示すエンコーダ装置80Aによって、図38C(b)に示すように、1/4に間引きされ第2の帯域にシフトしたエンコード信号となる。図38Bに示すデコーダ装置90Bによって、受信した4点のサンプリング値からなる信号列を4倍速で4回繰り返し出力し、続いて、出力している間に受信した4点のサンプリング値から信号列を形成し、これを同様に4倍速で4回繰り返し出力する。この手続きを受信信号が終了するまで繰り返す。以上によって、オリジナルの第3の帯域成分が擬似的に再現される。当該実施形態では、振動信号の配信・伝送について述べたが、帯域幅の狭いメディア(信号記録媒体)に記録をとる場合などに適用することもできる。
なお、アップサンプリング回路103の処理において、図38C(c)に示したアルゴリズムを用いてもよいし、他の方法でもよい。
本実施形態によれば、こうして、第1の帯域と「ポジティブ効果」をもつ第3の帯域とを含む振動が、聴取者の端末装置で再生されることになる。
次いで、本実施形態に係る装置、方法及び空間の作用効果とアプリケーションについて以下に説明する。
本実施形態においては、記録メディア(信号記録媒体)に記録された信号、もしくは放送又は通信によって配信又は伝送される信号の多くは、サンプリング周波数の規格や、通信速度の制約など、さまざまな技術的制約などから帯域制限されており、そのため必然的に、ネガティブ効果をもつ第2の帯域を相対的に多く含み、ポジティブ効果を持つ第3の帯域は存在しないことになる。これを帯域拡張し第3の帯域まで伝えるためには、規格の見直しやハードウェアの見直しなどが必要となり、多大なコストや負担を社会全体に求めることになる。しかし、ここで示した例を応用すれば、情報量を増やさずに、帯域だけをシフトすることにより、きわめて効率的に、「ネガティブ効果」から「ポジティブ効果」への逆転をはかることが可能となる。なお、情報量を増やさないためハードウェア規格の抜本的な変更が必要なく、現状のメディアや放送又は通信回線をほぼそのまま活用することができ、コストも抑えることができる。また、この装置は、オーディオ装置、テレビ、ラジオ、パソコン、携帯電話、携帯型音楽プレーヤ、公共空間等の音声BGM伝達システムなど、さまざまな音声再生装置に応用可能である。これによって、居住空間、執務空間、娯楽空間、公共空間、乗り物等を快適化する効果的な手段としての応用など、さまざまな応用展開が可能である。
実施形態6:切り替え呈示.
図39は実施形態6−1に係る振動処理装置の振動処理方法(脳活性低下から増大への急激な変化を導く呈示方法)を示す図であって、図39(a)は第1、第2及び第3を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図であり、図39(b)は上記分割帯域における脳活性の指標(DBA−indexの差分)を示す図であり、図39(c)は上記振動呈示方法の呈示条件の時間的推移を示す図である。本実施形態に係る振動呈示装置、方法及び空間は、図39に示すように、「ネガティブ効果」をもつ帯域と「ポジティブ効果」をもつ帯域とを時間的に切り替えて呈示することによって、脳活性を時間的に任意に変化させることを特徴とする。
図39では、脳活性低下から増大への急激な変化を導く呈示方法の例を示す。図39において、まず、第1の帯域(例えば〜16kHz)+第2の帯域(例えば16kHz〜32kHz)の振動を3分間呈示する。続いて、時間をおかず、第1の帯域(例えば〜16kHz)+第3の帯域(例えば32kHz〜96kHz)の振動を3分間呈示する。このような呈示方法によって、まず脳活性を低下させ、引き続いて脳活性を急激に増大させるように制御することが可能になる。
図40は実施形態6−2に係る振動呈示装置の振動呈示方法(脳活性増大からから低下への緩やかな変化を導く呈示方法)を示す図であって、図40(a)は第1、第2及び第3を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図であり、図40(b)は上記分割帯域における脳活性の指標(DBA−indexの差分)を示す図であり、図40(c)は上記振動呈示方法の呈示条件の時間的推移を示す図である。
図40では、脳活性増大からから低下への緩やかな変化を導く呈示方法の例を示す。まず、第1の帯域(例えば〜16kHz)+第3の帯域の一部(例えば32kHz〜64kHz)の振動を呈示する。途中10分経過したところで、第2の帯域の一部(例えば16kHz〜24kHz)の振動を呈示開始し、さらに10分経過したところで上記第3の帯域の一部の呈示を停止する。そして、さらに10分間、上記第1の帯域+上記第2の帯域の一部を呈示する。このように、帯域幅の切り替えを劇的に行うのではなく、それぞれの呈示時間をオーバーラップさせることによって、脳活性の変化をきわめて緩やかに導くことが可能になる。
次いで、本実施形態に係る装置、方法及び空間の作用効果とアプリケーションについて以下に説明する。
本実施形態によれば、ネガティブ効果を導く特定の周波数帯域の振動を健常被験者に呈示することによって、数分以内で脳活性を下降させることができ、病理状態のモデルとすることができる。しかもその後、ポジティブ効果を導く別の周波数帯域の振動を呈示すれば、数分以内に活性を逆転させ上昇に転じさせることができる。同一の被験者で、病理的状態と心身の調子が向上した状態とを短時間の間に実現することも可能であるので、安全で効果的な病理状態のモデルやその治療モデルをつくり出すことができる。また、この効果を利用して、居住空間や執務空間、娯楽空間、公共空間、乗り物などで数分以内に脳活性の増大又は低下を切り替えて導くことができ、状況に合わせて適切な効果を導くアプリケーションが考えられる。
また、この効果を利用して、芸術作品やそれを上演するホール・劇場空間等の娯楽空間において、表現効果を増大させる応用が考えられる。すなわち、映画や演劇をはじめとしてストーリー展開をもつ芸術作品において、例えば苦しみや悲しみを強調したい場面では「ネガティブ効果」をもつ帯域を安全なレベルで呈示して視聴者の脳活性を少し低下させて効果を高め、例えば快と美と感動を強調したい場面では「ポジティブ効果」をもつ帯域を強力に呈示して視聴者の脳活性を上昇させ、美と快と感動の効果を高めることが考えられる。
このように時間の進行にあわせて帯域を変化させた音を、映画であればサウンドトラックに予め録音しておくことができるし、ミュージカルなどにおいて生演奏で音楽をつける場合であっても、帯域調整の時間的進行をスコアに記録しておくことによって、例えばPAシステムのイコライザの操作者が、スコアを見ながら操作することができる。
実施形態7.
図41は実施形態7に係る振動モニタ装置402のブロック図である。この振動モニタ装置402は、振動呈示器401から呈示される超高周波振動を超高周波振動センサー403によって電気信号に変換し、その信号に基づいて、超高周波振動呈示状態表示装置404により超高周波振動の呈示状態を聴取者などが認識できる視覚・聴覚・触覚などを含む感覚刺激に変換して表示する。又は、超高周波振動が予め設定した範囲を逸脱した場合に、警報を発する。超高周波振動センサー403には、超広帯域コンデンサーマイクロホン、圧電素子、MEMS素子などや、光学的な反射や干渉を利用した非接触振動検知装置などを用いることができる。特に、圧電素子やMEMS素子は、安価でかつラフな扱いに耐えるという特長をもつことから、高価で耐久性や耐候性に劣る超広帯域コンデンサーマイクロホンの欠点を補うことも期待される。
図42は上記振動呈示器401に付属する実施形態7−1に係る超高周波モニタ装置402の動作を示す模式図である。振動呈示器401において、第2の帯域の振動の大部分及び第3の帯域の振動は人間には知覚できない超高周波振動なので、第2及び第3の帯域の振動が設定した呈示方法で呈示され生体に印加されているか否か、さらには振動呈示器401が正常に動作しているか否かを、振動を印加される者やシステム管理者などが判別することは難しい。そのため、例えば振動呈示器401の故障などにより、脳の活性が予め設定したのとは異なるように上昇あるいは下降したり、あるいは予め設定したレベルとは異なるレベルに設定される危険性をもっている。そこで、実施形態7−1に係る超高周波振動モニタ装置402は、振動呈示器401から呈示される超高周波振動を振動信号に変換し、得られる振動信号における第2の帯域あるいは第3の帯域の振動成分の強度やその変動状態などを視覚・聴覚・触覚・振動覚を含む人間が認識することが可能な感覚信号として変換して表示し、あるいはそれらの情報を記録媒体に記録する機能を有することにより、振動呈示器401から呈示される超高周波振動の呈示状態をモニタすることを可能にする。また、上記振動呈示器401の実際の動作状態が、予め設定した振動状態を実現しているかどうかを判別し、設定した振動状態と実際の振動状態とが異なる場合には、警告信号で利用者又はシステム管理者に知らせる機能や、振動呈示器401にフィードバック制御信号を送出する機能を有することを特徴とする。これにより、例えば、第2の帯域の振動が設定された範囲のレベル以上の強さで呈示されていることが検知された場合や、第3の帯域の振動が設定された範囲のレベルに比べて微弱であることが検知された場合に、そのネガティブ効果を避けるためのリアクションを起こすことなどができる。
図43Aは、実施形態7−1の振動呈示装置において、超高周波振動を呈示する振動呈示器411及び超高周波振動センサー412を互いに近接配置した装置の実装例を示した図であり、図43Bは図43AのA−A’線についての縦断面図である。超高周波圧電素子の1つは超高周波空気振動を発生する振動呈示器411として使用し、もう1つを振動呈示装置が発生する超高周波振動を電気信号化する超高周波振動センサー412として使用する。これら2つの素子を近接配置することにより、振動呈示器411によって呈示された振動が、超高周波振動センサー412に伝えられる。図44に、上記構成の振動呈示器411及び超高周波振動センサー412を含む装置を用いて、振動呈示器411で発生した超広帯域ホワイトノイズの振動を超高周波振動センサー412で電気信号化したときの周波数特性を示す。この振動呈示器411及び超高周波振動センサー412を含む装置は200kHzに及ぶ周波数特性を有し、また40kHz近辺に大きなディップをもつものの第2の帯域並びに第3の帯域についておおむね20〜30dBのS/N比で信号を検知しており、この実施形態の有効性を示している。
図45A、図45B及び図45Cは図43A及び図43Bの変形例であって、図45Aは振動呈示器411と超高周波振動センサー412を隣接して配置する例を示し、図45Bは単一の圧電素子モジュール430内に振動呈示器411と超高周波振動センサー412とを複合配置する例を示し、図45Cは多層構造の圧電素子を振動呈示器411として利用する層と超高周波振動センサー412として利用する層として使い分けることによって1つのモジュール430で振動呈示器411と超高周波振動センサーの4122つの機能を実現する例を示している。
図46は、図43A及び図43Bの装置を超高周波振動センサー内蔵のスピーカシステムとして構成した場合の回路図である。スピーカシステムが内蔵する振動呈示器411に、超高周波振動センサー412を機械的に接合することにより構成される。超高周波振動センサーから得られた信号振動は、超高周波振動呈示状態表示装置に送り出される。図46において、414a,414bは帯域分割を行うネットワーク回路であり、411aは超高周波の振動呈示装置である。
図47は、図46の装置に接続できる超高周波振動呈示状態表示装置の回路図である。図46の超高周波振動センサーから入力された超高周波振動信号は、コンデンサ421で直流成分を遮断されたうえで増幅回路422によって増幅され、ハイパスフィルタ(HPF)423で第3の帯域の振動信号が抽出されて、第3の帯域の振動呈示状態表示用発光ダイオード431がその強度に応じて明るさを変えて点灯される。また同様に、バンドパスフィルタ(BPF)424で第2の帯域の振動信号が抽出されて第2の帯域の振動呈示状態表示用発光ダイオード433がその強度に応じて明るさを変えて点灯される。これにより、音として聴こえない第2の帯域や第3の帯域の振動が空気振動として呈示されている状態を視覚的に確認し、適正な呈示状態にあるか否かを判断することが可能になる。また、ここでは単純に強度に応じて連続的に明るさを変化させる例を示したが、振動呈示状態をより明解に区別するために、振動の強度に応じて段階的に明るさを変化させたり、棒グラフ状に配列したLEDの点灯する個数を変化させるレベルメーターとして表示してもよい。あるいは、予め指定した閾値をそれぞれの帯域の振動強度が上回ると点灯して下回ると消灯する、あるいはその逆に下回ると点灯して上回ると消灯する、といった表示手段をとってもよいし、指定されたある範囲では消灯しているが、その範囲を超えると点灯し、下回ると点滅するなどの表示手段をとってもよい。あるいは、振動呈示状態に生じる短時間の変化を反映して頻繁に表示内容が変化することを避けるために、予め定めた時定数をもった積分回路を組み込んだ表示手段をとってもよい。さらに、LEDを用いるのではなく、例えば振動強度に応じて針の角度が変化するタイプのアナログ式レベルメーターを用いてもよいし、振動強度を数値化した者をデジタル表示しても良い。また、ここでは振動状態を視覚情報として表示する例を示したが、聴覚的に音声や機械音などの警報として表示したり、触覚的にバイブレーションで表示したり、あるいは他の感覚信号を介して表示してもよい。
図48は、上記振動呈示装置に接合された振動モニタ装置において、超高周波振動呈示状態表示装置に電力を供給する方法として、外部電源を使わずに振動信号や光発電などを活用して供給する2つの変形例(a)、(b)を示すブロック図である。図48(a)において、上記振動呈示装置に入力される増幅された振動信号を分岐して、これを整流器416に通して直流成分のみにし、さらに定電圧モジュール417に通して一定の電圧とし、これを蓄電池418に保存する。ここに保存された電力を用いて超高周波振動呈示状態表示装置415を駆動する。これにより、振動モニタ装置に電源供給を行うためのケーブル敷設を別途行う必要や、バッテリ駆動の場合にはバッテリ交換を行う必要がなくなり、設置工事のコストやメンテナンスのコスト・頻度を低減することができる。電力供給の手段としては、太陽光発電システムなどを用いてもよい。また、ここで得られた電力は超高周波振動呈示状態表示装置415を駆動する以外の用途に用いてもよい。さらに、図48(b)に示すように、超高周波振動センサー412の出力信号から電源を得るように構成してもよい。
図49は実施形態7−2に係る超高周波振動モニタ装置のブロック図である。この振動モニタ装置は、超高周波振動センサー412及び超高周波振動呈示状態表示装置415に加えて、振動呈示装置動作状態判定装置441及び超高周波振動呈示状態記録装置442を備えたことを特徴としている。超高周波振動センサー412で電気信号化された振動信号は、実施形態7−1と同様に超高周波振動呈示状態表示装置415に入力されて処理されるとともに、振動呈示装置動作状態判定装置441に入力される。振動呈示装置動作状態判定装置441には、振動呈示器401の振動呈示器411に入力される振動信号が分岐されて、別途入力される。振動呈示装置動作状態判定装置441は、振動呈示器401から入力された元の振動信号をリファレンスとして、超高周波振動センサー412から入力された振動信号を評価し、振動呈示器401の動作状態が適正であるか、すなわち、第2の帯域や第3の帯域、あるいはその一部の帯域などの振動が設定したレベルで呈示されているか否かを判定する。そして、その結果を外部装置である振動呈示装置フィードバック装置や警告信号出力装置などに出力する。超高周波振動呈示状態記録装置442は、超高周波振動モニタ装置内の各装置の処理結果を記録する。振動呈示装置動作状態判定装置441は、超高周波振動呈示状態記録装置442に記録された履歴を参照して、長期的な状態評価を行うこともできる。
図50は、実施形態7−2に係る超高周波振動モニタ装置を内蔵する振動呈示装置を、スピーカシステムとして構成した場合のアプリケーション例を示すブロック図である。スピーカシステム以外にもテレビ受信機やコンピュータなどの音声信号を発する電子機器、エアコンや冷蔵庫などの騒音・駆動音を発する電子機器、音声・BGMを伝達する拡声放送電子設備などに用いてもよい。超高周波振動モニタ装置はスピーカシステム本体に組み込んでもよいし、超音波振動センサーにより得られた振動信号を有線、無線、赤外線などの方法によりスピーカシステムの外部へ伝送して別装置で処理してもよい。振動呈示装置の要素のうち、振動呈示装置以外の一部あるいは全部を内蔵してもよい。なお、443は電源であり、451は超高周波振動センサー451であり、452は超高周波振動呈示装置であり、453は中域振動呈示装置であり、454は低域振動呈示装置である。
図51は、実施形態7−2に係る超高周波振動モニタ装置を内蔵する振動呈示器401を、携帯電話として構成した場合のアプリケーション例を示すブロック図である。電話機以外にもスマートホン、携帯情報端末、携帯型プレーヤ、携帯ラジオ、携帯テレビ、ゲーム機器などの携帯型電子機器やそれに付属するヘッドホン、ケーブル等に内蔵してもよく、装身具や帽子、眼鏡など身につける小物や衣類に内蔵してもよい。こうした小型の機器の場合、ポケットにいれているときなどには視覚的な表示を行っても聴取者の目にはいらないので、バイブレーションや音声や機械音による表示や警告信号の出力を行う手段をあわせて組み込むことも可能である。超高周波振動モニタ装置は携帯電話をはじめとする携帯型電子機器などの本体に組み込んでもよいし、超音波振動センサーにより得られた振動信号を有線、無線、赤外線などの方法により携帯電話の外部へ伝送して別装置で処理してもよい。振動信号はデータ配信などの手段で外部から得てもよい。
次いで、本実施形態の作用効果とアプリケーションについて以下に説明する。
本実施形態によれば、振動呈示装置に必須であるにもかかわらず人間の耳に聴こえない可聴域を超える成分を含む第2の帯域あるいは第3の帯域の振動成分が、予め設定したレベルで実際に呈示されているかどうかをモニタすることが可能になる。また、そのモニタにあたって、振動呈示装置に超高周波振動センサーを内蔵させたり、あるいは振動を呈示される人間の近く、例えば装身具や調度品やリモコンや携帯電話などにセンサーを内蔵させることによって、より精度高く、確実に振動状態をモニタすることが可能になる。さらに、振動信号そのものを用いて電源供給することによってシステムの独立性を高め、メンテナンスフリーに近づけることも可能になる。この超高周波振動モニタ装置で得られた振動状態や警告信号は、聴取者やシステム管理者に発光ダイオードなどで表示して視覚的に、あるいはバイブレーションや音声などで伝達して、振動呈示装置の動作状態をリアルタイムに把握し、不具合を発見することに利用できるほか、振動呈示装置の動作状態フィードバックに用いることなどができる。
実施形態8.
図52は実施形態8に係る振動処理装置の脳活性設定方法(分割帯域毎のレベルを調整するフィードバック機能を有する呈示方法)を示す図であって、図52(a)は第1、第2及び第3を有する振動信号についての、上記分割帯域の呈示振動のパワースペクトルの模式図であり、図52(b)は上記分割帯域における脳活性の指標(DBA−indexの差分)を示す図である。本実施形態に係る振動呈示装置、方法及び空間は、図52に示すように、聴取者200の基幹脳200cの脳活性又はその他の指標をモニタし、その情報に基づいて、聴取者200に呈示する振動の周波数帯域毎のレベルを調整するフィードバック機構を備えていることを特徴とする。以下に、フィードバックの手掛かりとする指標によって分類した2つの実施形態を示す。すなわち、(A)脳活性指標又はその他の生理指標に基づくシステム、(B)定量的計測指標(行動データなど)に基づくシステムである。
まず、(A)脳活性指標又はその他の生理指標に基づくフィードバックシステムについて以下に説明する。
図53は実施形態8−1に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。実施形態8−1に係る振動呈示装置、方法及び空間は、図53に示すように、脳波計測に基づく深部脳活性指標(DBA−index)を指標とするフィードバックシステムを備えたことを特徴とする。図53において、脳波信号検出及び無線送信装置201は振動聴取者200の頭部200aの帽子200bに収容され、振動聴取者200の脳波を計測して脳波信号を含む無線信号をアンテナ201aを介して、脳波信号無線受信装置202に例えば無線通信手段で無線送信する。脳波信号無線受信装置202はアンテナ202aを用いて脳波信号を含む無線信号を無線受信して、脳波信号を復調してアクティブプロセシングイコライザ204に出力する。アクティブプロセッシングイコライザ204は、測定された脳波信号からリアルタイムに聴取者の深部脳活性指標(DBA−index)を計算し、例えば入力部(図示せず。)を用いて設定された後コントローラ204aから入力される脳活性指標目標値や信号レベルの増減幅などの条件設定に基づいて、振動信号の記録媒体1aAから信号発生装置1aにより読み出された後再生回路2によって再生される振動信号(少なくとも第1、第2及び第3の帯域信号を含む。)により現在呈示中の振動の各帯域のレベルから次に呈示するべき振動の各帯域のレベルを計算し、再生回路2から入力される振動信号に対してイコライザ処理を行う。イコライザ処理後の振動信号は増幅回路205により増幅された後、振動呈示装置206により聴取者200に対して呈示される。なお、本装置は脳波信号や脳活性状態を表示する手段をもっていてもよいし、コントローラ204aの入力部を介してオペレータがフィードバック内容を直接コントロールできる機能を有してもよい。
図54は実施形態8−2に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。実施形態8−2に係る振動呈示装置、方法及び空間は、PET計測に基づく領域脳血流量を指標とする例えば数分間以上の時間にわたる脳活性状態を総合的に判定してフィードバックするシステムを備えたことを特徴とする。図54において、PET信号解析装置207は、聴取者200の頭部200aに載置された帽子型PET(陽電子放出型断層撮影)装置201Aによって得られたPET信号から、PET信号解析装置207により聴取者の脳の各部位の領域脳血流量を解析してそれを示す制御信号をアクティブプロセッシングイコライザ204に出力する。アクティブプロセシングイコライザ204は、コントローラ204aから入力される設定に基づいて、基幹脳の領域脳血流量と、現在呈示中の振動の各帯域のレベルとから、次に呈示するべき振動の各帯域のレベルを計算し、元の信号に対するイコライザ量を割り出し、振動信号の記録媒体1aAから信号発生装置1aにより読み出された後再生回路2によって再生される振動信号(少なくとも第1、第2及び第3の帯域信号を含む。)に対してイコライザ処理を行う。ここで、具体的なアクティブプロセシングイコライザ処理の例は上記図53に係る処理例と同様である。イコライザ処理後の振動信号は増幅回路205により増幅された後、振動呈示装置206により聴取者200に対して呈示される。なお、本装置は脳波信号や脳活性状態を表示する手段をもっていてもよいし、コントローラ204aの入力部を介してオペレータがフィードバック内容を直接コントロールできる機能を有してもよい。
なお、上記以外の生理指標を用いて、フィードバックシステムを作成することが可能である。例えば、MRI(磁気共鳴画像撮像装置)やNIRS(近赤外線分光法)による脳血流、脳磁図、皮膚抵抗値、精神性発汗量、唾液中のストレス指標、血中の生理活性物質濃度、血圧、心拍、皮膚温度などが考えられる。
図55は図53のアクティブプロセッシングイコライザ204又は図54のアクティブプロセッシングイコライザ204により実行される脳活性指標を目標値に近づかせるためのアクティブプロセッシングイコライザ処理を示すフローチャートである。
図55において、まず、ステップS1において、例えばキーボードなどの入力部(図示せず。)を有するコントローラ204aから(a)脳活性指標の目標値と、(b)例えば+1dBなどの音圧増強幅と、(v)例えば−1dBなどの音圧低減幅と、(d)音圧最大値(イコライザ処理において設定される音圧最大値であり、以下同様である。)を入力して初期設定する。次いで、ステップS2では、脳波信号(図54ではPET信号)を受信し、ステップS3において受信した脳波信号に基づいて上述した方法で脳活性指標を算出する。ステップS4では、算出した脳活性指標を上記設定した目標値と比較し、脳活性指標=目標値であればステップS5に進み、脳活性指標<目標値であればステップS6に進み、脳活性指標>目標値であればステップS7に進む。ステップS5では、「調節無し」をフィードバック処理内容として設定し、ステップS8に進む。また、ステップS6では、「第2の帯域を上記設定された低減幅で低減し、音圧最大値を超えない範囲で第3の帯域を上記設定された増強幅で増強する」をフィードバック処理内容として設定し、ステップS8に進む。さらに、ステップS7では、「音圧最大値を超えない範囲で第2の帯域を増強し、第3の帯域を低減する」をフィードバック処理内容として設定し、ステップS8に進む。ステップS8では、設定されたフィードバック処理内容に基づいてイコライザ処理を実行し、ステップS9では例えば数十秒間一定時間休止し、ステップS2に戻る。
図55のアクティブプロセッシングイコライザ処理では、予め設定した脳活性指標の目標値と比較して計測された脳活性指標が高い場合には、人間に印加する空気振動の第2の帯域の成分を増強させる、又は、あるいは同時に、第3の帯域の成分を減弱させる。これによって脳活性を低下させることが可能になる。逆に予め設定した脳活性指標の目標値よりも計測された脳活性指標の方が低い場合には、人間に印加する空気振動の第3の帯域成分を増強させる、又は、あるいは同時に、第2の帯域の成分を減弱させる。これによって脳活性を増強させることが可能になる。従って、本実施形態に係る装置を用いて脳活性指標を計測しながら空気振動を印加することにより、予め定めた脳活性に制御されるように、印加される空気振動の成分を調整することが可能になる。
図56は実施形態8−3に係る音構造情報によるフィードバック制御機構を備えた高周波モニタリングシステムの実施例を示すブロック図であり、図57は図56の高周波モニタリングシステムの詳細構成を示すブロック図である。図58〜図60は図56の高周波モニタリングシステムの詳細処理を示すフローチャートである。
本実施形態は、音構造情報モニタリングおよびフィードバックシステムに関するもので、超知覚振動の発生状況を確認し、音響構造の解析結果を、超知覚振動再生装置2950にフィードバックして、可聴域および超知覚領域の振動再生レベルの調整を行うことを目的とするもので、PET計測装置2010Aにより被験者2012がPET計測されるPET計測室2001の超知覚振動発生装置2950などの近傍に設置し、周囲環境音を収録するマイクロホン2911と、収録したデータの音響構造を解析する解析装置2913等およびその解析結果を示すモニタ装置2915から成る。モニタ装置2915は、たとえば周波数構造の平均を見るFFTスペクトル、周波数構造の時間的変化を視覚的に示す最大エントロピースペクトルアレイ、音構造の複雑さの指標となるMEスペクトル一階微分累積変化量および一階微分累積変化量などを表示する。これによって、聴取者および利用者は、知覚不可能な超知覚振動の構造を確認することが可能となる。このことは、超知覚振動の発生に不具合があった場合の脳血流低下など負の影響が発生することを未然に防ぐことの助けとなる。また、可聴域内の音楽や環境音や放送音や音声などと、超知覚振動とが同時に存在することによるハイパーソニック・エフェクトを安定的に享受することの助けとなる。
図56において、再生装置2950には、マイクロホン2911及びマイクロホンアンプ2912にてなる音信号入力装置2910と、音構造情報解析装置2913と、危険度判定装置2914と、自己診断装置2917と、自己修復装置2918と、警報発生器2916と、解析結果モニタ装置2915とを備える。図57において、音信号はマイクロホン2911により電気信号に変換された後、マイクロホンアンプ2912を介して音構造情報解析装置2913に入力される。音構造情報解析装置2913は入力される音の音構造情報を解析して、たとえば第2の帯域、第3の帯域のパワーを算出して、その解析結果を危険度判定装置2914及び解析結果モニタ装置2915に出力する。危険度判定装置2914は入力される音情報の解析結果に基づいて危険度を判定し、その判定結果を警報発生器2916、自己診断装置2917及び自己修復装置2918に出力する。これらの具体的な処理について、図58〜図60を参照して以下に説明する。
図58の処理は音構造情報解析装置2913及び危険度判定装置2914により実行される。図58において、FFT(Fast Fourier Transform)解析処理(S2010)が実行されて、パワー検出(S2011)、成分パワーバランス検出(S2012)、ピークノイズ検出(S2018)及びスペクトル包絡線検出(S2019)が実行される。パワー検出(S2011)においては、第2の帯域のパワー(S2013)が所定のしきい値の範囲外か否かが判断されて危険度(S2030)が判定され、第3の帯域のパワー(S2014)が所定のしきい値の範囲外か否かが判断されて危険度(S2030)が判定される。また、成分パワーバランス検出(S2012)においては、第1の帯域と第2の帯域のバランス(成分比)が所定のしきい値の範囲外か否かが判断されて危険度(S2030)が判定され、第1の帯域と第3の帯域のバランス(成分比)が所定のしきい値の範囲外か否かが判断されて危険度(S2030)が判定され、第1の帯域と第2の帯域と第3の帯域のバランス(成分比)が所定のしきい値の範囲外か否かが判断されて危険度(S2030)が判定される。さらに、ピークノイズ検出(S2018)においては、ピークの強さが所定のレベルを超えるような過度ではないか否かが判断されて危険度(S2030)が判定される。またさらに、スペクトル包絡線検出(S2019)においては、予め格納された自然な形状ではない、不自然な形状でないか否かが判断されて危険度(S2030)が判定される。さらには、MESAM解析処理(S2020)が実行されて、複雑性の解析処理(S2021)が実行され、所定のリファレンスとの乖離度が所定のしきい値を超えているか否かが判断されて危険度(S2030)が判定される。図76の処理では、複数の判定に基づいて危険度を判定している。
図59において、危険と判定したとき(S2030)、警報処理(S2031)では、警報を発生し(S2032)インジケータを点滅する(S2033)。また、自己診断処理(S2034)では、ホワイトノイズである基準信号をマイクロホン2911を介して入力し(S2035)、出力された音信号のスペクトルを所定の基準スペクトルと比較し、これに基づいて修復方針を判断し(S2037)、以下の自己修復処理(S2040)を実行する。また、危険と判定したとき(S2030)以下の自己修復処理(S2040)を実行してもよい。自己修復処理では、第2の帯域を呈示するスーパーツィータ871の信号レベルを所定のレベルだけ下げ、又は第3の帯域を呈示するスーパーツィータ871の信号レベルを所定のレベルだけ上げ(S2041)、イコライザ回路により第2の帯域を所定のレベルだけ減弱し、又は第3の帯域を所定のレベルだけ増強し(S2042)、第3の帯域を呈示する予備のスーパーツィータ871の電源をオンする(S2043)。このような自己修復処理を実行した後、危険度判定装置2914にフィードバックし、再度危険度の判定を行う。
図60では、音信号の入力に関連した処理とその計算及び表示処理に関するものを示す。音信号を入力し(S2050)、所定の解析パラメータを入力し(S2051)、MESAM計算処理(S2052)とその表示処理(S2053)を実行する。また、フラクタル次元解析処理(S2054)を実行してその表示処理を行う。さらに、MESAM計算処理(S2052)では、以下の種々の計算処理を実行する。
(1)全帯域の最大エントロピースペクトルの1階微分及び2階微分の累積変化量の計算処理(S2055)を実行してその表示処理を行う。
(2)帯域別の最大エントロピースペクトルの1階微分及び2階微分の累積変化量(第1の帯域、第2の帯域、第3の帯域)の計算処理(S2056)を実行してその表示処理を行う。
(3)1階微分及び2階微分の累積変化スペクトルアレイの計算処理(S2057)を実行してその表示処理を行う。
(4)自己回帰係数を応用した複雑性指標の計算処理(S2058)を実行してその表示処理を行う。
図61は実施形態8−4に係る脳深部活性化情報によるフィードバック制御機構を備えた高周波モニタリングシステムの実施例を示すブロック図であり、図62は図61の高周波モニタリングシステムの詳細構成を示すブロック図である。図61及び図62は、脳深部活性化情報モニタリング及びフィードバックシステムの実施形態を示す。本実施形態では、脳深部活性化の状況を確認し、その結果を、振動再生装置2950にフィードバックして、可聴域である第1の帯域及び第2、第3の帯域の振動再生レベルの調整を行うことを目的とするもので、PET計測室2001の被験者2012の近傍などに設置し、周囲環境音を収録するマイクロホン2911を含む音入力装置2910と、脳深部活性化指標を導出する脳波導出装置2920と、脳深部活性化指標を解析する脳深部活性化情報解析及びイメージング装置2940と、その解析結果を示す音構造情報解析及びモニタ装置2930と、それを再生装置2950にフィードバックする装置から成る。これによって、脳血流低下など負の影響であるハイパーソニック・ネガティブ・エフェクトが発生することを未然に防ぐことの助けとなる。もしくはハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを安定的に享受することの助けとなる。
図62において、再生装置2950により再生される音信号はマイクロホン2911により電気信号に変換された後、増幅器2912を介して音構造情報解析及びモニタ装置2930の音構造情報解析部2913aに入力される。音構造情報解析部2913aは入力される再生音信号の音構造情報を解析した後、その音構造を音構造モニタ装置2931に表示する。また、脳波導出装置2920により導出された脳深部活性化指標の情報は送信機2921により送信された後、受信機2922に受信され、脳深部活性化情報解析及びイメージング装置2940の脳深部活性化解析部941に入力される。脳深部活性化解析部2941は、入力される脳深部活性化指標の情報を解析してその解析結果を脳深部活性化表示モニタ2942に表示するとともに、その情報をフィードバック部2943を介して再生装置2950にフォードバックする。これにより、脳深部活性化指標の情報の解析結果に基づいて再生装置2950の再生パラメータを制御することより、脳血流低下など負の影響であるハイパーソニック・ネガティブ・エフェクトが発生することを未然に防止することができる。
図63は実施形態8−5に係る、振動の周波数特性についての判定結果を用いて振動発生装置にフィードバックして振動発生設定の調整を行う振動モニタリングシステム4500の実施例を示す斜視図であり、図64は図63の振動モニタリングシステム4500の詳細構成を示すブロック図である。
図63に図示した振動モニタリングシステム4500は、振動発生装置4501と、マイクロホン4911及びマイクロホンアンプ4912によって構成される振動信号入力装置4502と、振動判別装置4503と、判別結果に基づく制御信号発生装置4504と、警報発生器4506と、振動補完装置4507と、判別結果モニタ装置4505とを備えて構成される。図63において、振動発生装置4501から発生された実際の振動が、振動信号入力装置4502により電気信号に変換された後、振動判別装置4503に入力される。振動判別装置4503は、特許文献9に開示されたように、入力された振動信号が基幹脳活性化効果を導くことができる振動の条件を備えているか否かを判別し、その判別結果を、判別結果に基づく制御信号発生装置4504及び判別結果モニタ装置4505に出力する。判別結果に基づく制御信号発生装置4504は、「入力される振動信号が基幹脳活性化効果を導くことができる振動の条件を備えていない、すなわち入力される振動信号が基幹脳活性化効果を導くことができない」と判別された場合、警報発生器4506に制御信号を出力し、警報を発生させ、かつ/あるいは、振動補完装置4507に制御信号を出力し、第3の帯域を含む振動信号を発生させ、当該発生された信号を振動発生装置4501の信号に加算して加算信号を発生する。判別結果モニタ装置4505は、判別結果を表示する。
このような振動モニタリングシステム4500によって、聴取者は、現在聴取している振動が基幹脳活性化効果を導くことができる振動の条件を備えているかどうか確認することが可能にとなるとともに、条件を備えていない場合にも、基幹脳活性化効果を導く振動を受容することが可能になり、基幹脳活性低下によるハイパーソニック・ネガティブ・エフェクトを防ぎ安全性を確保できることはもとより、基幹脳ネットワーク系を活性化させることを通じて、心身の状態を改善向上させる積極的な効果であるハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトが得られる。
次いで、本実施形態に係る装置、方法及び空間の作用効果とアプリケーションについて以下に説明する。
実施形態1〜7では、予め定められたプロトコルに従って、印加する振動の各帯域成分のレベルを決めるため、1人1人の脳活性の違いや、振動を印加するときの状況に応じて最適化することができない。これに対して、本実施形態では、印加する人間の脳活性をモニタすることによって、あるいは、脳活性から影響を受ける自律神経系の生理指標をモニタすることなどによって、振動の各帯域のレベルを調整し最適化することができる。また、これを応用したさまざまなアプリケーションが考えられる。例えば、オーダーメードのセラピーや、患者一人一人に合わせた振動療法など、医療応用が考えられる。乗り物の運転者の脳活性をモニタして覚醒度をコントロールする覚醒度制御装置も有用である。
次いで、(B)定量的計測指標に基づくフィードバックシステムについて以下に説明する。
基幹脳の中には、快又は不快といった情動反応に基づいて行動を制御する報酬系神経回路が集中している。すなわち、何らかの刺激(例えば今回の場合は空気振動)によって基幹脳の活性が高くなると、報酬系神経回路が活性化し、快感が発生するため、動物はそうした刺激をより多く受容するため、そうした刺激に近づく接近行動をとる。逆に、空気振動を含む何らかの刺激によって基幹脳の活性が低下すると、報酬系神経回路の活性が低下し、快感が損なわれるため、動物はそうした刺激をできるだけ受容しないよう、刺激から遠ざかり逃げるような逃避行動をとる。
本実施形態では、こうした動物の行動原理を応用したアプリケーションとして、図65に、イベント会場や商業施設などにおけるある領域の観客や顧客の人数を計測し、それを指標として観客や顧客を誘導するフィードバックシステムを示す。図65は実施形態8−6に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図であり、図66はある領域内に集客するとともに観客人数をある範囲内に調整するための、図65の人数解析及び振動制御装置230によって実行されるフィードバック指示内容を生成する処理を示すフローチャートである。
図65において、イベント会場210に設置したビデオカメラ211によって、観客の行動をモニタし、人数解析及び振動制御装置230で当該イベント会場210内の担当領域の観客人数を解析する。人数解析及び振動制御装置230では、視野内の人数カウント装置231によりビデオカメラ211の視野内にいる観客人数をカウントし、その計数値は誘導すべき効果判定装置233に入力され、誘導すべき効果判定装置233は当該カウント数に基づいて誘導すべき効果を判定する。その判定結果は帯域別振動パワー計算装置234に入力され、判定結果に基づいて帯域別振動パワーが計算されてその計算結果を示す制御信号がフィードバック型振動呈示装置220内のイコライザに入力されて、イベント会場210に呈示される振動の周波数特性が制御される。ここで、人数解析及び振動制御装置230の判定条件などは、コントローラ230Aの入力部によって入力され、コントローラ230Aから直接にフィードバック内容をコントロールすることもできる。また、フィードバック型振動呈示装置220は、図31の実施形態と同様に、振動信号の記録媒体1aAのドライブを含む信号発生装置1aと、再生回路2と、プロセッシングイコライザ60と、コントローラ50と、増幅回路3と、振動呈示器4とを備えて構成される。コントローラ50は、フィードバック内容を調整し、直接プロセッシングイコライザ60をコントロールする場合に用いる。
図66の処理において、まず、ステップS11では、例えばキーボードなどを有するコントローラ230Aから(a)人数の上限値及び下限値と、(b)例えば+1dBなどの音圧増強幅と、(v)例えば−1dBなどの音圧低減幅と、(d)音圧最大値とを入力して初期設定する。次いで、ステップS12では、視野内に存在する観客人数を計測する。そして、ステップS14において、観客人数を人数上限値及び下限値と比較し、下限値<観客人数<上限値であれば、ステップS15に進み、観客人数≦下限値であれば、ステップS16に進み、観客人数≧上限値であれば、ステップS17に進む。ステップS15では、「調節無し」をフィードバック処理内容として設定し、ステップS18に進む。また、ステップS16では、「第2の帯域を上記設定された低減幅で低減し、音圧最大値を超えない範囲で第3の帯域を上記設定された増強幅で増強する」をフィードバック指示内容として設定し、ステップS18に進む。さらに、ステップS17では、「音圧最大値を超えない範囲で第2の帯域を増強し、第3の帯域を低減する」をフィードバック指示内容として設定し、ステップS18に進む。ステップS18では、設定されたフィードバック指示内容を、フィードバック型振動呈示装置220内のプロセッシングイコライザ60に制御信号として出力し、ステップS19では例えば数十秒間一定時間休止し、ステップS12に戻る。
以上のように構成されたフィードバックシステムでは、例えば、ある領域の集客数が予め設定した人数下限値を下回っている場合には(図66のステップS14でステップS16にフロー移行)、その領域から外に観客が出て行かないように、また周辺領域から観客を誘導するように、すなわちポジティブ効果をもつ第3の帯域が相対的に強くなるように帯域別の振動パワーの調整内容を設定する。これによって基幹脳の活性が高まり、快適感が上昇し、刺激に近づこうとする接近行動が誘発されるため、当該の領域に観客が自発的に集まるように誘導することが可能になる。逆に、集客数が予め設定した上限値を超え、観客が密集して危険と判断された場合には(図66のステップS14でステップS17にフロー移行)、その領域から外に観客を誘導するように、すなわちネガティブ効果をもつ第2の帯域が相対的に強くなるように帯域別の振動パワーの調整内容を設定する。これによって基幹脳の活性が低下し、快適感が減少し、刺激から遠ざかる逃避行動が誘発され、当該の領域から観客が自発的に出て行くよう誘導することが可能になる。
これを受けて、各領域に設置された図65のフィードバック型振動呈示装置220に内蔵されたプロセッシングイコライザ60がイコライザ処理を行い、得られた振動信号を振動呈示器4が振動に変換してイベント会場に呈示する。フィードバックによる振動呈示の強度が細かく変更され又は発振しないように、例えば数十秒間の間隔をおいて、次の解析並びにフィードバック指示内容の生成を行う。これによって、フィードバック型振動呈示装置220によってイベント会場における人数分布の偏りをある範囲内に調整することが可能になる。
以上の実施形態においては、人間の人数を解析対象としているが、本発明はこれに限らず、他の動物を含む生体の個体数を解析するように構成してもよい。
次いで、実施形態8−7では、実施形態8−6に係る振動呈示装置を複数連携させて、複数領域間で観客数を制御する振動呈示装置、方法及び空間について述べる。図67は実施形態8−7に係る振動呈示装置の構成を示すブロック図である。実施形態8−7に係る振動呈示装置は、イベント会場210を複数の領域210A,210B,210Cに分割して各領域210A,210B,210Cにおける観客数を計測し、それを指標として観客を誘導するフィードバックシステムを備えたことを特徴とする。すなわち、前述の図65の装置は、イベント会場210のなかのある一領域で独立に人間個体密度解析及び振動制御を行う装置例だが、図67の装置は、複数の領域210A,210B,210Cにわたって多次元的に制御を行う例である。また、図68Aは、観客数分布を平均化する場合に、図67の多次元人数解析及び振動制御装置230Bによって実行されるフィードバック指示内容を生成する処理を示すフローチャートであり、図68Bは図68Aの制御情報生成処理(S26,S27,S28)を示すフローチャートである。
図67において、領域210Aにはビデオカメラ211A及びフィードバック型振動呈示装置220Aが設けられ、これらは全体を制御する多次元人数解析及び振動制御装置230Bに接続される。また、領域210Bにはビデオカメラ211B及びフィードバック型振動呈示装置220Bが設けられ、これらは全体を制御する多次元人数解析及び振動制御装置230Bに接続される。さらに、領域210Cにはビデオカメラ211C及びフィードバック型振動呈示装置220Cが設けられ、これらは全体を制御する多次元人数解析及び振動制御装置230Bに接続される。なお、各ビデオカメラ211A,211B,211C及び各フィードバック型振動呈示装置220A,220B,220Cはそれぞれ実施形態8−6と同様に構成される。また、多次元人数解析及び振動制御装置230Bは図68A及び図68Bの処理を実行する。
図68Aの処理において、まず、ステップS21では、例えばキーボードなどの入力部を有するコントローラ230Aから(a)人数の上限値及び下限値と、(b)例えば+1dBなどの音圧増強幅と、(v)例えば−1dBなどの音圧低減幅と、(d)音圧最大値とを入力して初期設定する。次いで、ステップS22において領域210Aにいる観客の人数を計測し、ステップS23において領域210Bにいる観客の人数を計測し、ステップS24において領域210Cにいる観客の人数を計測し、ステップS25において観客人数の平均値を算出する。さらに、ステップS26において領域210Aについて制御信号生成処理(図68B)を実行し、ステップS27において領域210Bについて制御信号生成処理(図68B)を実行し、ステップS28において領域210Cについて制御信号生成処理(図68B)を実行する。そして、ステップS29では例えば数十秒間一定時間休止し、ステップS22に戻る。
図68Bのサブルーチン処理において、まず、ステップS31において指定領域の観客人数を人数の上限値及び下限値と比較し、下限値<観客人数<上限値であれば、ステップS32に進み、指定領域の観客人数を平均人数と比較する。ステップS31で観客人数≦下限値であればステップS34に進み、観客人数≧上限値であればステップS35に進む。また、ステップS32で観客人数=平均人数であればステップS33に進み、観客人数<平均人数であればステップS34に進み、観客人数>平均人数であればステップS35に進む。ステップS33では、「調節無し」をフィードバック指示内容として設定し、ステップS36に進む。また、ステップS34では、「第2の帯域を上記設定された低減幅で低減し、音圧最大値を超えない範囲で第3の帯域を上記設定された増強幅で増強する」をフィードバック指示内容として設定し、ステップS36に進む。さらに、ステップS35では、「音圧最大値を超えない範囲で第2の帯域を増強し、第3の帯域を低減する」をフィードバック指示内容として設定し、ステップS36に進む。ステップS36では、設定されたフィードバック指示内容を、指定領域のフィードバック型振動呈示装置(220A,220B,220Cのうちの1つ)内のプロセッシングイコライザ60に制御信号として出力し、元のメインルーチンに戻る。
以上のように構成された本実施形態では、イベント会場210の各領域210A,210B,210Cに設置したビデオカメラ211A,211B,211Cによって、観客の行動をモニタし、多次元人数解析及び振動制御装置230Bは、各ビデオカメラ211A,211B,211Cの視野内にいる観客の人数をカウントし、平均人数を算出した後(図68AのステップS22〜S25)各領域210A,210B,210Cの観客人数について、予め設定した人数上限値及び下限値と比較して判定を行う(図68BのステップS31)。観客人数が下限値よりも低い場合は(ステップS31からステップS34にフロー移行)、その領域から外に観客が出て行かないように、また周辺領域から観客を誘導するように、すなわち基幹脳活性を高めるポジティブ効果をもつ第3の帯域が相対的に強くなるように帯域別の振動パワーの調整内容を設定する(ステップS34)。また、観客人数が上限値よりも高い場合は(ステップS31からステップS35にフロー移行)、その領域から外に観客を誘導するように、すなわち基幹脳活性を低下させるネガティブ効果をもつ第2の帯域が相対的に強くなるように帯域別の振動パワーの調整内容を設定する(ステップS35)。観客人数が下限値と上限値との間の場合は(ステップS32からステップS33にフロー移行)、観客人数の領域間平均値と比較して、それより低い場合は(ステップS32からステップS34にフロー移行)、その領域から外に観客が出て行かないように、また周辺領域から観客を誘導するように、ポジティブ効果をもつ第3の帯域が相対的に強くなるように帯域別の振動パワーの調整内容を設定する(ステップS34)。また、観客人数の領域間平均値よりも高い場合は(ステップS32からステップS35にフロー移行)、その領域から外に観客を誘導するように、すなわちネガティブ効果をもつ第2の帯域が相対的に強くなるように帯域別の振動パワーの調整内容を設定する(ステップS35)。その領域の観客人数と観客人数の領域間平均値が等しい場合は(ステップS32からステップS33にフロー移行)、帯域別の振動パワーの調整を行わない(ステップS33)。
これを受けて、各領域210A,210B,210Cに設置されたフィードバック型振動呈示装置220A,220B,220Cに内蔵されたプロセッシングイコライザ60がイコライザ処理を行い、得られた振動信号を振動呈示器4が振動に変換してイベント会場210に呈示する。これによって、フィードバック型振動呈示装置220A,220B,220Cによってイベント210における観客分布を平均化する方向で調整することが可能になる。
ここでは、イベント会場内の領域間で観客人数を平均化するよう制御する方法を述べたが、ある領域に観客が集中するように制御することも可能である。さらに、その集中させる対象となる領域をその隣接する領域へと順々に切り替えることによって、観客が順々に領域間を渡り、移動するように制御することも可能である。
以上の実施形態においては、人間の人数を解析しているが、本発明はこれに限らず、人間以外の動物を含む生体の個体数を解析するように構成してもよい。
次いで、本実施形態に係る装置、方法及び空間の作用効果とアプリケーションについて以下に説明する。
イベント会場のような広い空間では、観客ひとりひとりは空間全体を俯瞰することができず、ある領域に観客が集中して混雑したり、その一方ある領域には観客が少なかったりすることが発生する。また主催者がある領域に観客を集中的に集めることを望む場合もある。しかし、従来のような、人や放送・掲示などを用いた誘導システムでは、広い空間全体を見わたして、多くの観客を整然と制御し誘導することは難しい。また、観客は自らの興味に集中していて、アナウンス内容が意識にのぼらないことも少なくない。そこで、本実施形態では、空間全体を見渡しながら、ポジティブな帯域の振動が人を誘引し、ネガティブな帯域の振動が人を回避させる効果を利用して、遠隔でフィードバックを行うため、多くの人間の行動をスムーズに誘導することが可能にする。この実施形態を適用する対象はイベント会場以外にも様々に想定できる。例えば、商業施設や駅構内、祭礼時の神社仏閣などの空間で混雑緩和を行ったり、安全に整然と人々を移動させることに応用できる。
これを応用したアプリケーションは、他にもさまざま考えられる。例えば、工事現場などで安全を確保するために、危険な領域に人が踏み込んだときに、ネガティブ効果をもつ帯域の振動を強力に呈示することによって、行動を誘導するシステムが考えられる。また、コンビニエンス・ストアや喫茶店などで長居する客の退出を誘導するため、1人1人の客の滞在時間を指標とし、ある時間以上滞在している客に対して、ネガティブ効果をもつ帯域の振動を相対的に強く呈示することによって、客の行動を誘導するシステムが考えられる。一方、パチンコ店やゲームセンター等では、出玉の状態をモニタしながら、客の脳活性を上昇させヒートアップさせたり、逆にクールダウンさせるフィードバック装置が考えられる。
また、人間だけでなく、人間以外のさまざまな動物の行動制御にも応用することができる。すなわち、動物が望ましくない場所などに接近した場合に、ネガティブ効果をもつ第2の帯域の成分を第1の帯域の音とともに印加することにより、報酬系神経回路の活性を低下させ、その場所から逃避する行動を誘導する。逆に、動物を望ましい場所へと誘導するために、ポジティブ効果をもつ第3の帯域の成分を第1の帯域の成分とともに印加することにより、報酬系神経回路の活性を上昇させ、目標となる場所に動物を接近させることが可能になる。
例えば、人間や農作物に危害を与える恐れがある動物(クマ、イノシシ、野猿など)に対して、人家や田畑に動物が踏み込んだときに、ネガティブ効果をもつ帯域の振動を強力に呈示することによって、動物の逃避行動を導くシステムが考えられる。これによって、銃撃や捕獲などの大変な労力を払わずとも、動物を追い払うことが可能になると期待できる。また、野良犬、野良猫を誘導して捕らえることにも応用できる。
さらに、放牧動物(牛、馬、羊、アヒルなど)の行動制御にも利用できる。これらの動物の行動を一定範囲内に制限しつつ、自然環境中で放し飼いにすることは、ほどよくしまった肉をもつ動物を育てるうえで有効である。このため、ある範囲内ではポジティブ効果をもつ帯域の振動を与え接近行動を導き、その範囲を踏み越え外に出ようとするとネガティブ効果をもつ帯域の振動を与え逃避行動を導くことによって、動物を一定範囲内で自由に行動させつつ制御するフィードバックシステムが考えられる。これによって、監視人がほとんどいなくても多数の動物を効率よく放牧することが可能になると期待できる。また、ある領域から厩舎のなかなど別の領域に速やかに整然と移動させるための行動誘導にも応用できる。この例は放牧動物に限らず、家畜や動物園などの動物一般に適用可能である。
なお、前述したように、人間以外の動物の可聴域上限は種によって異なることが知られていることから、可聴域を含む第1の帯域の下限及び上限周波数、ネガティブ効果をもつ第2の帯域の下限周波数及び上限周波数、そして、ポジティブ効果をもつ第3の帯域の下限周波数及び上限周波数は、動物の種毎に、人間を対象とした本実験の聴取条件で同定された周波数とは異なる値を取り得ると考えられる。
次に、以上の実施形態及び実施例を応用した、具体的な装置、方法、空間等のアプリケーションの応用例を示す。
まず、身体にきわめて接近して装着するペンダントやブローチなどの装身具を利用することによって、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を効果的に身体表面に印加する振動呈示装置の応用例を示す。図69は、応用例1に係るペンダント型振動呈示装置830p(携帯端末装置に振動呈示装置を設けてもよい。)の斜視図及び断面図である。図69において、ペンダントなどの装身具を利用したペンダント型振動呈示装置830pの使用例を示す。当該振動呈示装置830p内のメモリ(又は受信機もしくは外部入力端子)834から入力された、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波成分を含むがゆえに脳活性を低下又は増大させることのできる振動の信号の超高周波成分をマイクロアンプ833及びトランスデューサ832を通じて振動呈示装置830pにより呈示し、装身具をつけている聴取者340の身体表面に脳活性を低下又は増大させることのできる振動の超高周波成分を印加することを可能にする。一方、第1の帯域を含む可聴域成分は携帯型音楽プレーヤ850からヘッドホン851を介して聴取者340の聴覚系に印加される。このようにして第1の帯域を含む可聴域成分及び第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を印加することにより、聴取者の脳活性を低下又は増大させることができる。
次いで、ブローチなどの装身具を利用することによって、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を効果的に身体表面に印加する振動発生機構の応用例を示す。図70Aは、応用例2に係る、ブローチ(装身具)型振動呈示装置160の正面図であり、図70Bはその右側面図であり、図70Cはその裏面図である。図70A〜図70Cにおいて、ブローチ型振動呈示装置160のおもて面及び裏面に、脳活性を低下又は増大させることのできる振動信号のうち、第2及び/又は第3の帯域の超高周波成分を発生するための複数の超高周波振動発生素子120が埋め込んで設けられる。また、ブローチ型振動呈示装置160の内部に信号再生装置が埋め込んで設けられる。なお、ブローチ型振動呈示装置160の裏面には電池133を挿入してカバーする電池挿入部蓋161とメモリ挿入部蓋162とが設けられ、ブローチ型振動呈示装置160の上部の金具取付部163にはブローチつり下げ用の金具164が連結される。この金具に超高周波振動発生素子を装着してもよい。ブローチ型振動呈示装置160において、脳活性を低下又は増大させることのできる振動の信号データは予め、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性固定メモリ131に格納され、再生時に、固体メモリ131から読み出される脳活性を低下又は増大させることのできる振動の信号データをマイクロアンプ132においてDA変換しかつ電力増幅した後、超高周波振動発生素子120に出力して超高周波振動を発生して放射する。
図71は応用例3に係る振動発生装置の構成例であって、障害物に衝突させながら液体を流すことによって、第1、第2、第3の帯域のいずれかを含む振動あるいはそれらが複合した振動を発生する例を示す斜視図である。図71において振動発生装置は、位置及び突起寸法が可変である突起172などの障害構造物を1つ以上有し、水平面に対して0度をこえ90度以下の角度をつけた位置に設定できる平板170の構造物と、その平板170の上部からその表面に水などの液体を流下させる液流発生装置及びこのシステムに液体を流下させた時に発生する振動を電気信号に変換するトランスデューサ173、174、175から構成される。例えば突起物172を規則的に整然と配置した場合、液流の流路は整然としたものとなり、それぞれの流路に流れる液量も互いに対応する間で均等になって、上記振動は板全面から比較的均質に発生する。一方、図71では、突起物172を不規則に配置することによって、流路が不均質に分布するようになり、それぞれの流路の流量にも変化が生じる。その結果、上記振動の空間分布並びに液中分布に偏りが生じるので、これを活用して振動信号を電気信号に変換する際に効果的なマルチチャンネル収録を行うことが可能になる。また、このとき、電気信号へのトランスデューサをある流路の直近から別の流路の直近に移動させることなどにより、その移動過程で、同じ流路での流量変化では生じえない類のダイナミックな変動を振動信号に加えることができる。ここでは液体の流れを例にとったが、液滴や粒子などを落下させて液体面などに衝突するときに生じる振動を用いてもよい。また液体でなく気体を用い、構造物の中に気流を発生させ、内部構造の間隙を通過する気流により、第1、第2、第3の帯域のいずれかを含む振動あるいはそれらが複合した振動を発生させてもよい。また固体を用いて、金属などの固体片や弦を弾いたり、擦ったり、叩いたりすることにより、第1、第2、第3の帯域のいずれかを含む振動あるいはそれらが複合した振動を発生させてもよい。上記固体の素材は、金属に限らず石、セラミック、プラスチックなどや、木、皮、骨などの生物由来の素材であってもよい。さらに、これらの振動発生装置から発生した空気振動と共鳴することにより、上記空気振動を増幅して発生する機能をもった共鳴箱や共鳴管などの装置を有していてもよい。
次いで、身体を覆う衣服などを利用することによって、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を効果的に身体表面に印加する振動発生機構の応用例を示す。図72Aは応用例4に係る、衣服埋め込み型振動呈示装置の外面図であり、図72Bは図72Aの内面図である。図72A及び図72Bにおいて、シャツ1210の内側の実質的に全面と、外側であって袖部、襟部などに、第2及び/又は第3の帯域を含み脳活性を低下又は増大させることのできる振動の超高周波成分を発生するための多数の超高周波振動発生素子120を設ける。また、信号再生装置1200はシャツ1210の裾部付近に設ける。シャツ1210において、具体的には、非導電性プラスチックで被覆した導電性プラスチック繊維を布地に織り込んで、当該導電性プラスチック繊維の一部を信号再生装置1200と各超高周波振動発生素子120との間の配線として用いる。またピエゾ繊維を織り込んで、これを超高周波振動発生素子としてもよい。以上のように構成されたシャツ1210によれば、多数の超高周波振動発生素子120がシャツ1210に埋め込まれ、超高周波振動が身体全体で発生して、スピーカシステムを用いることなく簡便かつ効果的に超高周波振動を聴取者に印加することができる。このとき、可聴域成分はスピーカやヘッドホンなどによって聴取者に印加される。
次いで、皮膚に密着させることによって、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を効果的に身体表面に印加する振動呈示装置の応用例を示す。図73は、応用例5に係る、身体表面貼付型振動呈示装置の断面図及びブロック図である。すなわち、皮膚密着型超高周波トランスデューサ832aを用いた振動呈示装置832Aの構成であって、振動呈示装置832Aを聴取者812の皮膚に密着させて装着させることによって、空気を介さずに第2及び/又は第3の帯域を含み脳活性を低下又は増大させることのできる振動の超高周波成分を皮膚に伝達させるための装置を示す。振動再生装置832Aにおいて、メモリ834に蓄えられた、あるいは無線や有線により受信し又は外部から入力された脳活性を低下又は増大させることのできる振動信号の超高周波成分を増幅して伝送するマイクロアンプ833を通し有線又は無線で送出し、小型アクチュエータ又は圧電素子などのフィルム状振動呈示装置である皮膚密着型超高周波トランスデューサ832aを絆創膏やサポータなどによって皮膚などの身体表面812bに直接密着固定することで具現化し、脳活性を低下又は増大させることのできる振動の超高周波成分を皮膚に直接伝達する。このとき、可聴域成分はスピーカやヘッドホンなどによって聴取者に印加される。
図74は応用例6に係る、固形の振動発生機構を介することによって、第2及び/又は第3の帯域を含む振動を身体表面及び聴覚系を介して印加する装置の例を示す側面図である。図74の応用例6では、振動信号を、印加する人間4090が座る椅子4091などの中に埋め込まれた圧電素子などの固形の振動発生素子4092を介することによって第2及び/又は第3の帯域を含む振動を発生する例を示す。図74に示したように、振動のうち第2及び/又は第3の帯域を含む振動は身体表面から受容され、また第1の帯域の振動は聴覚系から受容されて、脳活性の増大あるいは低下が導かれる。
図75は応用例7に係るサウナ型振動呈示装置の例を示す斜視図である。図75において、個人用のサウナ型の空間において、第1の帯域をヘッドホン又は頭部が出ている空間でスピーカから空気振動として印加し、第2及び/又は第3の帯域の振動を頭部以外の身体が存在する空間内に設置したスピーカから印加し、両者の作用が加算されることにより、脳活性の増大あるいは低下を導くことのできる振動を呈示する空間の例である。ここで、内部に多数の超高周波トランスデューサ952aを配置したサウナ型超高周波振動呈示装置952に入ることによって、きわめて効果的に身体表面に第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を浴びせることができる。サウナ内部の多数の超高周波トランスデューサ952aは上述の実施形態と同様である。このとき、サウナに入っている聴取者340は、ヘッドホン851などを用いて可聴域周波数である第1の帯域の音を聴取している、あるいはフルレンジスピーカ870Aなどを用いて、頭部を含む気導聴覚系によって、可聴域周波数の音を聴取している。この時、身体表面に印加される第2及び/又は第3の帯域を含む振動が同時に存在することによって効果的に脳活性の増大あるいは低下を実現することができる。
図76は応用例8に係る、空間を構成する壁自体が振動して第2及び/又は第3の帯域を含む振動を発生する空間の例を示す斜視図である。図76において、空間を構成する壁460自体が振動することにより、空間中に、可聴域成分である第1の帯域及び第2及び/又は第3の帯域を含む振動を発生して聴取者461に対して印加するための振動発生空間の例を示す。壁460は電気信号によって駆動されることによって振動してもよく、また空間内又は空間外に設置した固体、液体、気体の振動体が発生する振動が伝播することにより、二次的に振動しても良い。例えば、コンサートホールなどにおいて、ホール空間内で演奏される楽器音や音声・歌声、あるいはPA装置などが発生する音が壁に伝播する際に、上記所定の性質の条件を備えた振動を発生させ、それが観客に印加されることにより、脳活性の増大あるいは低下を導くことができる振動発生空間となる。
次いで、気体、液体、固体などを振動させることによって導かれる、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波帯域で振動する振動状態を有することを特徴する振動体の応用例を以下に示す。図77は、応用例9に係る、人間を取り囲む物体である空気を超高周波帯域で振動させることにより導かれた第2及び/又は第3の帯域を含む振動状態を有することを特徴する振動体の例を示す側面図である。図77において、椅子562に座った聴取者563を取り囲む振動発生空間装置により形成された振動発生空間560内に、例えば第1の帯域しか呈示することが困難なピアノ等の音源561の音などのように可聴域を超える超高周波成分をほとんど含まない振動が発生した場合、本来ならば脳活性の低下又は増大が導かれることはないが、超高周波帯域(聴こえない)で振動状態にある空気が存在することが決定的な要因となって、脳活性の低下又は増大効果を導くことができる。ここで振動体は、空気以外の気体、液体又は固体でもよい。
図78は応用例10に係る、浴槽における振動体の例を示すブロック図である。図78において、浴室などの空間570において、浴場及び浴槽の中に設置した振動発生装置571,572,860から振動を印加することによって、聴取者812の頭部812aを取り囲む空気と、人間の体幹及び四肢を取り囲む水又は湯も、第1の帯域に加えて、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波帯域で振動する振動状態を有することを特徴する振動体に導いている例を示す。ここで、2つの異なる振動体の中に同時に聴取者812が存在しているが、液体又は気体のいずれかが所定の特徴をそなえた振動状態となっている中に、聴取者812が存在していてもよい。
次いで、振動呈示空間を実現する応用例を以下に示す。図79は応用例11に係る、シアター、コンサートホール1430又は講堂などの空間において、観客の至近距離で、第2及び/又は第3の帯域を含み超高周波成分を含むがゆえに脳活性の増大又は低下効果を導くことができる振動を発生させるための振動呈示装置の斜視図である。図79において、1431は舞台であり、1432はワイヤレス振動信号送信機であり、1433はワイヤレス信号受信機及び振動呈示装置であり、1434はペンダント型振動呈示装置であり、1435は天井吊り下げ型振動呈示装置であり、1436は椅子装着型振動呈示装置であり、1437は椅子埋込型振動呈示装置である。すなわち、本応用例に係る超高周波振動呈示装置を、観客の前の座席の背面又は自分自身の座席の中に埋め込む。あるいは、天井から吊り下げて配置してもよいし、壁面や柱から伸ばして配置してもよい。また、観客が身につけるペンダントなどの装身具や衣類に携帯電話や携帯型音楽プレーヤなどに装着して配置してもよい。あるいはワイヤレス振動信号受信機と一体化した超高周波振動呈示装置を観客が身につけて着席するのでもよい。第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動の信号は、舞台1431上から有線又は無線(電磁波、赤外線、LAN、Bluetooth(登録商標)など)によって送り出されてもよいし、メモリなどに記録されそれぞれの振動呈示装置に内蔵されていてもよい。上記のような方法によって、すべての観客が第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を受容することが可能になる。
図80は、可聴域振動成分を再生する携帯型プレーヤと、第2及び/又は第3の帯域を含み、脳活性を低下又は増大させることのできる振動の超高周波成分を複数の人間に同時に印加する振動呈示装置とを組み合わせた空間の応用例12を示す側面図である。例えば、公道、広場、事務所、待合所などの公共空間に設置した超高周波振動再生装置800から、脳活性を低下又は増大させることのできる振動の超高周波成分を再生し、聴取者340の身体表面に印加する。このとき、再生される第2及び/又は第3の帯域を含む音としては聴こえない超高周波振動はすべての聴取者340に共通となる。この条件下で、携帯型音楽プレーヤなどの可聴域振動再生装置900により可聴域振動を再生して例えばヘッドホン900aにより聴く。このとき、各聴取者340は、互いに異なる自分の好みの音楽などを聴いていてよい。
図81は図80の装置の変形例である応用例13を示す側面図である。図81において、振動再生装置800を用いて列車あるいはバス、旅客機の客室などの中で複数の聴取者340に脳活性を低下又は増大させることのできる振動を印加する構成を示す。ここで、客室内などに設置した超高周波振動再生装置800から超高周波振動(第2及び/又は第3の帯域を含む)を再生し、列車内にいる複数の聴取者340の身体表面に印加する。このとき、再生される超高周波振動はすべての聴取者340に共通となる。このとき、列車内にいる複数の聴取者340は携帯型音楽プレーヤや本車両に備え付けられた音楽サービス用ヘッドホンなどの可聴域振動再生装置900を用いて、互いに異なる、自分の好みの可聴周波数振動を聴きながら脳活性の増大又は低下の効果をともに享受することができる。また、携帯型プレーヤなどをもたず、その場に存在する環境音、会話音、演奏音などを聴いていてもよい。
次いで、公共空間などにおいて、共通の可聴音を聴取している複数の人間に対して、個別の第2及び/又は第3の帯域を含む振動を印加する振動呈示空間の例を示す。図82は応用例14に係る、第1の帯域(可聴域成分)の振動及び、第2及び/又は第3の帯域(超高周波成分)を含む振動を発生するシャワー型振動呈示装置を示す斜視図である。図82において、複数のシャワー型振動呈示装置を示す。ここで、複数の人が利用するシャワールーム型設備において、各高周波振動シャワー室955で好みの超高周波振動を浴びることができる。図50において、各超高周波振動シャワールーム955内に配置した第2及び/又は第3の帯域を含む振動の振動呈示装置955aは、メモリに蓄えられた多数の種類の超高周波振動信号の中から、利用者が選ぶ超高周波振動信号を選択して、効果的に身体表面に浴びることができる。このとき、利用者は、一般の可聴音スピーカ870から共通の可聴域音楽や、放送音や、音声などを聴取する。それらの可聴音と、超高周波成分とが同時に存在することによって効果的に脳活性の増大あるいは低下を享受することができる。なお、利用者は共通の可聴音を聴かなくても、携帯型プレーヤなどをもちこんで、個別の好みの可聴音を聴いていてもよい。
図82の応用例14においては、公共空間などに設置した振動呈示装置から脳活性を増大あるいは低下する振動を発生し、複数の人間に印加する振動呈示空間の例を示している。このとき振動呈示装置からは、上記性質の条件を有する振動のうち、人間の可聴域上限である20kHz以上の成分だけを呈示し、振動の印加をうける複数の人間は、互いに異なる自分の好みの音楽などを、例えば携帯型プレーヤなどの可聴域振動発生装置を用いて聴いていてもよい。この場合には、空気中に放射された人間が音として感じることのできない第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波成分と、めいめいが聞いている可聴域振動呈示装置から発生される可聴域成分とが、それぞれの人間のところで加算されることによって、脳活性を増大あるいは低下する振動を発生する。こうした振動呈示空間は、(1)室内・出入口・ロビー・廊下・階段・エスカレータ・エレベータ・ホール・講堂・体育館・競技場・倉庫・工場・店舗・ゲームセンター、パチンコ店等の遊戯施設・駅舎・空港施設などの建造物内空間、(2)車両・列車・船舶・潜水艦・航空機・ロケット・遊具などの乗り物空間、(3)庭・校庭・広場・公園・遊園地・運動場・競技場・建造物屋上・道・橋・農場・森林・浜辺・湖沼河川上・海上・砂漠・草原などの屋外空間、(4)洞窟・トンネル・坑道・地下街などの地下空間、(5)商店街アーケード・駅ホーム・駅コンコース・競技場や競馬場の客席など屋内外の境界にあるセミオープン空間などに設定することが可能である。この振動発生空間により、空間内にいる複数の人間は、それぞれが自由に選択した好みの音楽などを聴きながら、基幹脳発生効果を導くことが可能になる。
図83は応用例15に係る、高速標本化1ビット量子化方式が有する1ビット量子化ノイズを加工することにより基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を発生する装置の例を示すブロック図である。図83は現行のSACD(スーパーオーディオCD)やハードディスク、固形メモリなどに記録された高速標本化1ビット量子化方式によってデジタル化された振動信号が有する1ビット量子化ノイズに対して、自己相関秩序に関する第1の性質又は第2の性質を付与し、基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を発生する。
図83において、SACD695をSACDプレーヤ696のドライブに挿入してその出力信号を例えばカットオフ周波数20kHzのローパスフィルタ697を介して加算器679に出力するとともに、例えばカットオフ周波数50kHzのハイパスフィルタ698、アクティブプロセッシング回路675及び例えばカットオフ周波数20kHzのハイパスフィルタ699を介して加算器679に出力する。加算器679は入力される2つのデジタル信号を加算し、加算結果のデジタル信号を再生回路677に出力する。そして、再生回路677は入力されるデジタル信号をDA変換して出力する。なお、アクティブプロセッシング回路675には、レファレンス振動信号を処理するAD変換器674及び自己相関係数演算器676が接続される。
高速標本化1ビット量子化方式を用いて記録したデジタル信号を再生した場合には、原理的に1ビット量子化ノイズが、標本化周波数及びΔΣ演算次数に依存する特定周波数を中心に、一定の拡がりをもって付随する。その周波数領域は、2.8Mbpsの標本化周波数を採用している現行のSACDコンテンツなどでは、第3の帯域に含まれる50kHz近辺に顕著に発生しており、しかも適切な自己相関秩序を有さないため、基幹脳活性化効果を導かない。そこで、現在はこのノイズを除去するために、SACDプレーヤ内部にローパスフィルタを搭載して約50kHz以上の高周波成分を除去している。
本応用例では、この1ビット量子化ノイズを第3の帯域の超高周波信号材料として活用する。SACD695に記録されたデジタル信号をアナログ変換したものから、前段落記載のローバスフィルタを介さずハイパスフィルタ698によって抽出した1ビット量子化ノイズをアクティブプロセシング回路675に入力するとともに、レファレンス振動信号から求めた自己相関係数セットをアクティブプロセシング回路675に入力して、両者の間で高速畳み込み演算を行い、その演算結果の信号を出力する。この信号を基幹脳活性化効果を導かないSACDコンテンツの再生信号あるいはそれをローパスフィルタ697によってろ波した第1の帯域の可聴域成分に対して加算することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を発生することが可能になる。この装置を用いることにより、従来のSACDコンテンツをはじめとする高速標本化1ビット量子化方式で記録されたコンテンツを再生したときに、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を再生できる。このようにして所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る報酬系と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。なお、上記加算の際には、ディレイ回路を用いることによって加算される2つの振動信号のタイミングを調節し、畳み込み演算に要する時間の遅れを調整するなどしてもよい。図中ではSACD695からの再生信号を対象として記載しているが、これはハードディスク、固形メモリなどのメディア再生信号、ネットワーク伝送・配信された信号などであってもよい。
図84は、応用例16に係る乗り物内の振動呈示装置を示す側面図である。図84において、乗り物内において、可聴域成分とともに第2及び/又は第3の帯域の超高周波振動を含み、脳活性を低下又は増大させることのできる振動の可聴域成分を携帯型プレーヤなどの可聴域振動再生装置から印加し、加えて超高周波成分を空間中に設置したスピーカ、又はシートに埋め込まれた振動呈示装置から印加し、これらが同時に存在することにより、脳活性を低下又は増大させることのできる振動を呈示する空間の例を示す。ここでは、車内各所に設置した超高周波振動呈示装置800a,800b,800c(ここで、800aは頭部用超高周波振動呈示装置であり、800bは背用超高周波振動呈示装置であり、800cは足用超高周波振動呈示装置である。)から超高周波振動を呈示し、車内にいる人の顔、体、背中などの部位に印加する。これらの呈示装置は、同一の振動源を呈示してもよく、また異なる振動源を併用してもよい。このとき、同一車内にいる異なる聴取者340は、携帯型プレーヤなど可聴域振動再生装置900とヘッドホン900aなどを用いて、互いに異なる、自分の好みの可聴音を聴きつつ脳活性の増大又は低下効果を享受することができる。
図85は応用例17に係る公共交通の運転席又は操縦席の振動呈示空間の例を示す側面図である。図85では、公共交通などの運転席又は操縦席において、第1の帯域の振動に加えて第2及び/又は第3の帯域を含む振動を空間内に設置したフルレンジスピーカから操縦者である聴取者340に印加し、あわせてその振動の第2及び/又は第3の帯域成分を含む超高周波成分を座席やブレーキ型操縦装置など各所に埋め込んだ振動発生装置から効果的に印加し、それらが同時に存在することにより、操縦者である聴取者340に脳活性の増大あるいは低下を導くことのできる振動呈示空間を示す。ここで、複数の超高周波振動呈示装置954a〜954dを有する航空機954の操縦席の一部破断外観図で示す。航空機954(航空機のほかに、機関車、列車、船舶、自動車、有人ロケット等の乗り物であってもよい)の操縦室又は操縦席において、多数の超高周波振動呈示装置954a〜954dを配置した状態で操縦をすることによって、身体表面に効果的に超高周波振動を呈示することができる。超高周波振動呈示装置954a〜954dは、上述の実施形態と同様に、振動発生装置によって超高周波振動を発生させることによって、超高周波振動を効果的に身体表面に呈示する。このとき、操縦者である聴取者340は、一般のスピーカやヘッドホンなどを用いて可聴域周波数内にとどまる音楽や放送音や音声などを聴取していても、超高周波振動との相互作用によって効果的に脳活性の増大あるいは低下を実現することができる。これによって、操縦者の心身の健康を促進し、覚醒水準を保ち、ヒューマンエラーを防止して、操縦の安全性を高めることが期待できる。なお、この装置は、操縦室及び操縦席にかぎらず、乗務員室及び乗務員席・客室及び客席に設置してもよい。
図86は、応用例18に係る駅構内など乗り物の乗降場における振動呈示装置962aの実装例を示す外観図である。例えば、録音された発着チャイムや録音アナウンスなどに対しては、構内に設置された拡声装置に振動補完装置961を内蔵することによって、脳活性の増大又は低下効果を導くことができる振動を補完して発生することができる。また、例えば列車の到着音・発車音、駅員が発声するアナウンス、自動販売機の操作音、そのほか環境騒音のように、その場で発生し、激しく音量が変動する脳活性の増大又は低下効果を導かない振動に対しては、構内音検出装置962b及びゲート回路又は電圧制御型増幅器(VCA)を内蔵した検出発生装置962を用いることによって、効果的に振動を補完することができる。ゲート回路は、構内音検出装置962bによって検出された振動のレベルがある一定の値をこえたときにゲート回路のスイッチが開いて基幹脳活性化効果を導くことができる振動を補完し、一定の値をこえないときにはゲート回路のスイッチが閉じて補完しないという作用をもつ。電圧制御型増幅器(VCA)は、構内音検出器によって検出された振動のレベルと強く相関したレベルで、脳活性の増大又は低下効果を導くことのできる振動を補完するという作用をもつ。その結果、たとえば第3の帯域の振動を構内の振動の存在状態に合わせて適切に調整されたレベルで補完することによって、効果的に基幹脳活性低下を抑制するとともに不快感を和らげる効果を発現することができる。また、近年深刻な問題となっている、駅構内における乗客間あるいは乗客と駅員間の口論や暴力などのトラブルに対して、たとえば第2の帯域の振動のレベルを減弱し、第3の帯域の振動を補完することによって、脳活性が低下した状態から増大方向に転じて、イライラ感や怒りの感情を緩和し、トラブルを回避する効果を発現することができる。この効果は、駅構内に限らずさまざまな公共空間でのトラブル回避に応用することができる。
次いで、応用例18の変形例として第3の帯域を含む振動を補完する振動補完装置及び方法の具体例について説明する。
(1)図87に示すように、伝達音(可聴音)と、第3の帯域を含む振動を、もともと決まったバランスでミックスして記録しておき、その信号を忠実な応答性能をもつ拡声装置472を使って再生する。ここで、振動補完装置は、伝達音(可聴音)と、第3の帯域を含む振動とを混合して記録した記録媒体470dを用いて振動信号を再生する振動信号再生装置470と、振動信号増幅器471と、拡声装置472とを備えて構成される。
(2)図88に示すように、伝達音(可聴音)と第3の帯域を含む振動とを、異なる音源によって異なる拡声装置472,472を用いて発生させる。この場合は、伝達音(可聴音)及び第3の帯域を含む振動のそれぞれについて、独立にレベル制御を行うことができる。ここで、振動補完装置は、
(a)伝達音(可聴音)を収集するマイクロホン473と、振動信号増幅器471と、拡声装置472とを含む第1の装置と、
(b)第3の帯域を含む振動信号を記録した記録媒体470dを用いて振動信号を再生する振動信号再生装置470と、振動信号増幅器471と、拡声装置472とを含む第2の装置とを備えて構成される。
(3)上記(2)の変形例であり、図89に示すように、伝達音(可聴音)信号と第3の帯域を含む振動信号とをその場で合成し、ひとつの拡声装置472から発生させる。振動補完装置は、伝達音(可聴音)を収集するマイクロホン473と、第3の帯域を含む振動を記録した記録媒体470dを用いて振動信号を再生する振動信号再生装置470と、振動信号加算調整器474と、振動信号増幅器471と、拡声装置472とを備えて構成される。振動信号加算調整器474は入力される2つの信号の各レベルを調整かつこれら2つの信号を加算して振動信号増幅器471を介して拡声装置472に出力する。
(4)上記(3)にさらに調整機能を付加した例である。図90に示すように、背景雑音(可聴音)をマイクロホン475で収集し、収集した振動信号に基づいて振動計測器476により背景雑音(可聴音)の特徴を計測し、計測したデータを振動信号加算調整器474に入力する。その他の構成は上記(3)の場合の構成を含む。振動信号加算調整器474は、背景雑音(可聴音)の特徴に合わせて、伝達音(可聴音)信号及び第3の帯域を含む振動信号を調整する機能をもつ。調整機能の例として、例えば、背景雑音(可聴音)の騒音レベルが一定の値を超えたら第3の帯域を含む振動をオンにする機能、あるいは、背景雑音(可聴音)の騒音レベルに相関した増幅率で伝達音(可聴音)並びに第3の帯域を含む振動のレベルを増幅する機能、あるいは、背景雑音(可聴音)の周波数特性を解析してその第2の帯域の強度や第3の帯域の強度に基づいて第3の帯域を含む振動を加算する強度を調整する機能などがある。
上記の振動発生装置をさまざまな設置方法で駅構内480に設置した例を図91に示す。図91において、481は柱取り付け型振動発生装置であり、482はアナウンス音など伝達音(可聴音)の信号受信機であり、483は超高周波振動信号受信機であり、484は伝達音(可聴音)を発生させるスピーカ(拡声装置)であり、489は超高周波振動発生装置である。485は超高周波振動信号を保存したメモリ485mを内蔵した天井埋め込み型振動発生装置であり、486は第3の帯域を含む振動を発生する振動発生装置であり、487は伝達音(可聴音)とともに第3の帯域を含む振動を発生させるスピーカ(拡声装置)であり、488は人間である。この振動発生装置は、新設してもよいし、既設の構内拡声システムに追加して組み込んでもよい。また、振動の信号は、有線で外部から入力されてもよいし、無線(電磁波、赤外線、LAN、Bluetooth(登録商標)など)によって外部から伝送された信号を受信してもよい。あるいは、メモリなどに記録されそれぞれの振動発生装置に内蔵されていてもよい。また、振動発生装置の内部で人工的に生成されてもよい。また、拡声装置の筐体全体が振動を発生してもよいし、ケーブルやその被覆、周辺の天井や壁、柱、建築材料等から振動を発生してもよい。
これらの応用例の類似例について以下に述べる。空港内・乗り物内における発着案内・搭乗案内・事故情報・スケジュールの変更等の各種アナウンス、街頭・地下街・イベント会場・遊園地・競技場等における誘導放送、公共施設・工場等の館内放送など、著しい背景騒音を有する空間の中で情報伝達を意図した拡声放送等を行う場合にも応用できる。
また、火災、地震、事故などの災害現場においては、被災者を放送音や拡声音で適切に誘導することが重要であるが、大音量の背景騒音に埋もれて聞こえない危険性があり、その場合、集団パニックをおこしやすいという問題がある。これに対して、空間内に基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を補完することによって、被災者の感覚情報入力に対する感受性を鋭敏化し、被災者を誘導するための音声情報を聞き取りやすくするとともに、報酬系神経回路を活性化して不安感を和らげる。その結果、集団パニックをおこすことなく、被災者を適切に誘導することに役立つ。
さらに、高速道路上あるいは一般道上では、渋滞によって車に乗車している運転者や同乗者がイライラしたり、眠くなるという問題がある。これに対して、車に送信される道路情報の放送とともに、又は独立して、第3の帯域を含む振動信号を伝送する。道路を走行する車両は、道路情報と共に、又は専ら、この振動信号を受信し、あるいは車内に設置した振動信号発生装置をもちいて、受信した信号を空気振動に変換することにより、第3の帯域を含む振動を発生させる。これによって、運転者や同乗者は、覚醒度が高まり、道路情報に対する認識力向上効果や、視覚情報入力に対する認識力や判断力が高まり事故防止効果につながるるとともに、渋滞によるイライラ感が緩和することが期待できる。
同様に、空港、野外及び屋内のイベント会場、病院、学校、図書館等公共施設、コンサートホール、デパート、遊園地等の施設、商店街、駅前広場、公園その他、著しい背景騒音を有する公共空間においても、利用者の誘導など情報伝達を行うことを目的とする放送音が、背景騒音等に埋もれて聞き取りづらい場合がある。これに対して、空間内に基幹脳活性化効果を導くことのできる第3の帯域を含む振動を補完することによって、利用者の感覚情報入力に対する感受性を鋭敏化し、放送音を聞き取りやすくするとともに、報酬系神経回路を活性化して、「うるさい」などの不快感やイライラ感を和らげ、快適性を向上させることができる。
図92は応用例24に係る、測定された「Blu−ray(登録商標)Disc版AKIRAサウンドトラック」を用いて発生させたハイカット音条件とフルレンジ音条件のもとで、聴取者に行わせた音の印象評価の結果を示すグラフと表である。回答に用いた質問紙には、音についての印象を表現する14個の評価語を示し、5段階評価で評価させた。全9名の被験者の回答を用いて分析した。
図92の左図は、各被験者について、フルレンジ音条件のときの音の印象評点から、ハイカット音条件のときの音の印象評点を差し引いた差分を求め、全被験者について平均して、プロットしたものである。この数値は、大きいほど、フルレンジ音条件のときの音の方がよりポジティブに評価されたことを示すもので、「好感度」と定義した。図92の右図は、「好感度」の偏りに有意性があるかどうか、ウイルコクソン(Wilcoxon)の符号付順位和検定によって検定した結果を示す。
その結果、すべての評価語について、フルレンジ音条件のときの音の印象の方が、ハイカット音条件のときよりも好感度が高いという結果になった。特に、「音に感動した」「音質が良い」「音のボリュームがより豊か」「重低音が豊か」「耳あたりよくひびく」「大音量でも音の分離がよくつぶれない」という6項目の評価語は、p<0.05で統計的に有意にポジティブに評価されていた(図92の右図の**印)。また、「音がなめらか」「スピーカの間の音がつながって聴こえる」という2項目の評価語において、p<0.10で高い傾向をもって、ポジティブに評価されていた(図92の右図の*印)。このことは、フルレンジ音条件が、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路を含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、音に対する美的感受性を増強し、快さ、美しさなどの印象をより強めたことを示している。
なお、以上で述べたような振動発生装置を各種施設において使用する際に、第3の帯域を含む振動信号のオン/オフやレベルを、人間の存在や人数によって制御してもよい。すなわち、例えば1人でも入室すれば、赤外線などのセンサーで自動的に感知して振動信号をオンにし、全員退室すれば振動信号をオフにする。あるいは、照明電源と連動させて、照明のオン/オフに合わせて振動信号をもオン/オフするという方法も考えられる。また、カードキーその他の入退室管理システムと連動させる方法もありうる。さらに、入室した人間の人数を自動的にカウントし、人数の増減に合わせて第3の帯域の振動信号のレベルを増減するシステムも考えられる。
また、実施形態に係る振動発生装置を応用することによって、超高周波成分を含まない、あるいは超高周波成分のうち第2の帯域が含まれているために基幹脳活性化効果を導かず、不快感を伴うオリジナル振動に対して、第3の帯域を含み基幹脳活性化効果を導くことができる振動を補完することによって、基幹脳活性低下を含むハイパーソニック・ネガティブ・エフェクトを抑制するとともに不快感を和らげる効果を発現することができる。
このとき、振動を補完する装置とともに、不快感を伴う振動を吸収・除去する装置を組み合わせて用いてもよい。例えば、可聴域の振動を選択的に吸収する振動吸収装置や、既存のアクティブサーボ技術を用いた振動除去装置などを組み合わせることによって、効果的に不快感を和らげることができる。
また、このとき、振動を補完する装置とともに、振動検出装置とゲート装置及び(又は)電圧制御型増幅器(VCA)の回路を併用してもよい。これによって、環境内に存在する不快な音の存在状態やレベルに合わせて、適切なレベルに調整された、基幹脳活性化効果を導くことができる振動を補完することが可能になる。
例えば、駅における列車の到着音・発車音、構内アナウンス音、自動販売機の操作音などの不快感を伴う振動に対して、駅内に振動補完装置を設置して、第3の帯域を含む超高周波成分を含み基幹脳活性化効果を導くことができる振動を加算することによって、基幹脳活性低下を抑制するとともに不快感を和らげる効果を発生させることができる。
図93は、ブルーレイディスクなどの映像音響複合パッケージメディアにおいて、サウンドトラックに入れる音を、可聴域成分(第1の帯域)及び基幹脳活性化効果を導くことのできる超高周波成分(第3の帯域)を含む振動とすることによって、画像表現の感動の増大や画質の向上を導く例である。ブルーレイディスクの映像を視ている視聴者の、映像に対する美的感受性を増強し、快さ、美しさ、感動などを高めることができる。図93の映像及び音響システムは、ディスプレイ852と、ブルーレイディスク853を搭載したブルーレイディスプレーヤ854と、AVアンプ855と、5.1chサラウンドスピーカシステム856とを備えて構成される。また、ブルーレイディスクなどの映像音響複合パッケージメディアのサウンドトラックに記録された振動信号が、超高周波成分を含まなかったり第2の帯域を含んでいて基幹脳活性化効果を導くことができない振動信号である場合には、第2、第3、第4あるいは第1Aの実施形態で述べた各種の装置及び方法などによって、基幹脳活性化効果を導くことができる振動を端末機器において補完して再生する。
以下に、複数の感覚系に総合的に働きかける複合感覚情報の例として、「Blu−ray(登録商標)Disc版AKIRA」を用いて、音が基幹脳活性化効果をもつか否かの違いに伴って生じる映像の印象の違いを評価させた実験の例を示す。
実験に用いた「Blu−ray(登録商標)Disc版AKIRA」の映像は、劇場で公開されたアニメ映画の映像を、ブルーレイディスクの映像トラックに記録したものである。
音は、「Blu−ray(登録商標)Disc版AKIRAサウンドトラック」のために編集されたものである。これまでのAKIRAサウンドトラックは、振動信号が標本化周波数48kHz、量子化ビット数16ビットのデジタルフォーマットでDVDに記録されていたため、標本化周波数の2分の1であるナイキスト周波数24kHz以上の帯域成分を記録することも再生することもできず、従って基幹脳活性化効果を導くことができない。そこで、「DVD版 AKIRAサウンドトラック」用の音声信号をオリジナル振動とし、その信号を帯域伸張するとともに、振動補完装置を含む振動信号発生装置を用いて、基幹脳活性化効果を導くことのできる典型的な振動である熱帯雨林環境音や、そこから抽出した可聴域上限をこえる超高周波成分などを加算して出力信号を合成し、それをブルーレイディスクにサンプリング周波数192kHz、量子化ビット数24ビットのデジタルフォーマットで記録することにより、「Blu−ray(登録商標)Disc版 AKIRAサウンドトラック」の振動信号を作成し、ブルーレイディスクに記録した。この音は、上述したように、第3の帯域の超高周波成分を十分含み、基幹脳活性化効果を導くことができる音となっている。
実験では、常に同一の映像を呈示する一方、音は2条件を切り替えてブラインドホールド下に呈示した。すなわち、それらの一方は「Blu−ray(登録商標)Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号をもとのまま、第3の帯域の超高周波成分を含み基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(フルレンジ音)の状態で再生した音を呈示し、もう一方は、そこから24kHz以上の周波数成分をローパスフィルタによって除外して、第1及び第2の帯域のみを残した基幹脳活性化効果を導くことのできない振動信号(ハイカット音)の状態で再生した音を呈示した。実験はブラインドホールド下に、いずれも全く同一の画像データから再生された映像とともに二種類の音を呈示し比較した。
被験者には、基幹脳活性化効果を導くことができるフルレンジ音条件と、基幹脳活性化効果を導くことができないハイカット音条件のもとで視聴した映像についての、それぞれの印象を質問紙によって回答させた。質問紙には、映像についての印象を表現する12個の評価語を示し、5段階評価で評価させた。全10名の被験者の回答を分析した。
図94は実験結果を示す。左図は、各被験者について、フルレンジ音条件のときの映像の評点から、ハイカット音条件のときの映像の評点を差し引いた差分を求め、全被験者について平均して、プロットしたものである。この数値は、大きいほど、フルレンジ音条件のときの映像の方がよりポジティブに評価されたことを示し、さきに「好感度」と定義したものである。図94の右図は、「好感度」の偏りに有意性があるかどうか、ウイルコクソン(Wilcoxon)の符号付順位和検定によって検定した結果を示す。
その結果、この実験では常に、まったく同一の画像データから完全に同一の条件下で再生された同じ映像を呈示していたにもかかわらず、基幹脳活性化効果をもつフルレンジ音を受容しながら視た映像の方が、その効果をもたないハイカット音を受容しながら視た映像よりも好感度指数が高く、より美しく感動的に受容されていることが明らかとなった。特に、「映像に感動した」「画質が良い」という評価語は、p<0.05で統計的有意にポジティブに評価されていた(図94の右図の**印)。また、「動画の動きが滑らか」「絵の描写が精密」「背景画がリアル」「画面のきめが細かい」「絵のニュアンスが豊か」「画面に奥行を感じる」「色彩が鮮やか」の7項目において、p<0.10で、高い傾向をもってポジティブに評価されていた(図94の右図の*印)。このほか、「画像のコントラストが高くくっきり見える」「観やすい」「色使いが複雑」という評価語についても、ポジティブに評価されていた。
以上のように、「Blu−ray(登録商標)Disc版AKIRA」という映像音響複合パッケージメディアにおいて、同一の画像データから同一条件で再生され、画像それ自体としては何らの違いもない映像が、同時に再生され視聴者に呈示されるサウンドトラックの音が基幹脳活性化効果を導くかどうかの違いによって、互いに画質の違うものとして受容され、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動が呈示された場合に、そうでない音が呈示された場合よりも、視聴者は映像をより高画質で感動的なものと受容することが統計的有意に示された。
以上により先述した発明者らの着想の有効性が実証された。すなわち、発明者らは、人間におけるすべての快と美と感動の反応の発生が、脳の報酬系神経回路によって一元的かつ包括的に司られている実態、及びその報酬系神経回路が基幹脳及び基幹脳ネットワークに含まれている事実、さらにこの基幹脳及び基幹脳ネットワークが第1及び第3の帯域を含む振動の印加によって活性化される現象に注目し、複合感覚情報の中に含まれる音情報に適切な構造をもたせることによってハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導き、受容者の快と美と感動の反応の発生を一元的包括的に司る脳の報酬系神経回路を含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化すると、音に対する美的感受性が増強するのと並行して、聴覚以外からの各種の感覚情報入力に対してもその美的感受性が増強され、快さ、美しさ、感動を高める効果を現すのではないか、という着想を得、これを応用することを構想した。上記の実験結果はまさにその着想が的中したことを裏付けるものとなっていた。
この実験結果によって明瞭に好感度が上昇した「絵の描写が精密」「画面のきめが細かい」「背景画がリアル」という画質評価語は、画像データに費やす情報量を増やし映像を高密度化した時に特徴的に現れる画質向上を示す評価と驚くほど一致している。この評価成績は、画像と同時に呈示する音情報に、基幹脳活性化効果を導く第3の帯域の振動をじゅうぶんに含ませることによって、画像データに配分する情報量を増大させることと同等の効果を導きうる、という驚くべき事実を示している。すなわち、先述のように複数の感覚系に統合的に働きかけるコンテンツにおいては、記録・伝送可能な情報容量や情報伝達速度の制約のために、画質と音質など異なる感覚情報の間でトレードオフの関係に陥り一部の感覚情報にしわよせが生じる結果、その感覚情報のもつ表現効果が低下したり互いを活かそうとして共倒れに陥るという深刻な問題がある。この複合感覚情報発生手段のもつ宿命的な問題に対して、本発明の装置及び方法を用いることによって、絶妙の解決手段を提供しうることを示す。一般的には、コンテンツの画質向上のためには、まず第一に記録可能なデータ容量の増大、さらにデータ圧縮技術・データ伝送技術の開発、再生のためのハードウェアの開発など、膨大な費用と体制を必要とする技術開発を行うことが必要とされる。しかし、本発明装置及び方法を用いることにより、上記のような高度な情報処理関連技術の開発に依存することなく、きわめて現実的な音響技術と手法により画質向上効果を導き、問題解決をはかることが可能になる。
図95は、自動車などの乗り物の外側に振動呈示装置を実装した応用例27を示す斜視図である。近年、ガソリン車にかわり電気自動車(ハイブリッドカー、燃料電池自動車、ソーラーカーなども含む。)の開発が急速に進んでおり、排気がクリーンで環境にやさしいこと、エンジンノイズがないことなど、多くの利点がある。しかし、爆発音を発する内燃エンジンを使わず、騒音の少ないモーターを動力とする電気自動車は、走行音が静かであるために、道路上の歩行者・二輪車運転者・自動車運転者などが、電気自動車の接近に気づきにくくなり、交通事故の危険性が高まるという大きな問題が浮かびあがってきており、早急に対策を講じる必要性に迫られている。また技術革新の結果、自動車全般に騒音レベルは低下してきている。そこで、電気自動車などの自動車490から第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波成分を補完することによって、歩行者等の人間488が自動車490から発生させる音のレベルを車の存在・接近を認識させ安全を確保するのに十分な高さまで上げることができる。図95において、自動車490に振動呈示器491を設けている。これを実現するための振動呈示装置及び音源は、本発明にかかる各実施形態に示した振動呈示装置を応用することができる。また、この振動呈示装置は、車体、タイヤ、窓ガラスなどに予め組み込んでおいてもよいし、外付けで取り付けてもよい。また、可聴音と超高周波振動を含む振動を、単一の振動呈示装置から発生させてもよいし、可聴音と超高周波振動を別々の振動呈示装置から発生させ、それぞれのレベルやバランスを自由に調整可能にしてもよい。さらに、音源は記録媒体に記録されたものでもよいし、放送や通信システムによって伝送されたものでもよい。また振動呈示装置は自動車以外の乗り物など人間488と衝突する危険のあるその他の物体に実装してもよい。
図96は、応用例28に係るスピーカシステムの振動呈示装置370の一例を示す斜視図である。振動源としては、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波成分を含む信号を蓄積しておくメモリ375、及びその信号でスピーカもしくは超高周波振動発生素子を駆動するアンプユニット376及び電源ユニット377等の付帯装置を、スピーカシステムそれ自体に装備する。また、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波成分をスピーカシステム内部で生成する装置を内蔵してもよい。振動発生機構としては、スピーカそのものの振動発生機構を用いて、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させるほかに、下記のような手段もある。スピーカシステム内部に振動発生機能を内蔵し、筐体等そのものを振動させる。あるいは、筐体等に超高周波振動発生素子372,373を装備(埋め込み、貼り付け、巻き付けなど)する。また、筐体等の外側をピエゾプラスチックなどの素材で被覆する。さらに、超高周波振動発生素子372,373を接続して振動を発生させる。また、機器とスピーカシステムを接続するケーブル374に超高周波振動発生素子を装備することもできる。ここで、電源の供給方法は、外部電源から給電してもよいし、電源ユニット377や電池等(一次電池(乾電池)、二次電池(蓄電池)、内蔵燃料電池等)を内蔵してもよい。また、接続した機器から給電する方法として、ファンタム方式すなわち音声ケーブルに直流電源を重ねて給電する方法、USBケーブル等で音声信号伝達と給電を共存させる方法等もある。このほか、ワイヤレス給電機構を装備してもよい。
図97は、応用例29に係る、ヘッドホン型振動呈示装置の正面図である。図97において、ヘッドホン111は、聴取者の両耳を覆うように対向して配置される略円筒形状の1対のヘッドホン筐体111a,111bと、これらのヘッドホン筐体111a,111bを機械的に連結しかつ聴取者の頭部110上に載置するためのヘッドバンド112とから構成される。各ヘッドホン筐体111a,111bの聴取者側の側面には外耳道110aの入り口の回りに密着接触するようにリング形状のイヤーパッド124がヘッドホン筐体111a,111bに設けられ、イヤーパッド124の外周部に脳活性を低下又は増大させることのできる振動のうち超高周波成分を発生する超高周波振動発生素子120が設けられる。また、ヘッドバンド112の聴取者頭部110側の面には、所定の間隔をおいて多数の超高周波振動発生素子120が設けられる。さらに、ヘッドホン筐体111a,111bの外周部やヘッドホンケーブルなどには複数の超高周波振動発生素子120が設けられ、ヘッドホン筐体111a,111bの内側側面であって外耳道110aに対応する箇所に、脳活性を低下又は増大させることのできる振動のうち可聴域成分を発生する可聴域スピーカ121が設けられる。ヘッドホンケーブルなどは、ピエゾプラスチックを素材としてそこから超高周波振動を発生させても、ケーブル自体を振動させる工夫を行ってもよい。各ヘッドホン筐体111a,111bには、信号再生装置の各回路及び素子115,115,117,120,121、並びに超高周波振動発生に必要な電力を供給する小型電池125が配置され、信号再生装置の信号帯域分割回路115の入力端子には信号入力プラグ118が接続され、当該信号入力プラグ118は、所定の信号再生装置に接続される。これらの工夫により、本振動呈示装置は、可聴音を含む振動を聴取者の気道聴覚系に印加しつつ、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を聴取者の身体表面に印加することを可能にする。なお、図97において、可聴域成分と超高周波成分とを別々の振動信号を用いて、別々の振動発生素子から発生させることも可能である。
図98A〜図98Fは、応用例30に係る、携帯電話機1410を利用した振動発生機構の例を示す斜視図である。
A.図98A及び図98Bにおいて、携帯電話機1410本体を利用した振動発生機構の例を示す。
A−(1)携帯電話機1410に振動発生機能(超高周波振動発生メカニズム)を内蔵し、携帯電話機1410(筐体1412、液晶画面、操作ボタン等)を振動させることによって、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、直接あるいは空気振動を介して人間に印加する。
A−(2)携帯電話機1410にもともと装備されているスピーカ1411など音声発生手段に、超高周波振動を忠実に再生する性能をもたせることによって、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、人間に印加する。
A−(3)携帯電話機1410の筐体1412等に、超高周波振動発生素子1414を新たに装備し(表面を覆うシート1413形状のものでもよい。)、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、人間に印加する。
A−(4)携帯電話機1410に超高周波振動発生素子414を接続して、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、人間に印加する。
B.携帯電話機1410と接続して使用するヘッドセット1415を利用した振動発生機構の例を示す。
B−(1)ヘッドセット1415に振動発生機能を内蔵し、ヘッドバンド、マイクアーム、イヤーパッド等を振動させることによって、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、直接あるいは空気振動を介して人間に印加する(図98C)。
B−(2)ヘッドセット1415に超高周波振動発生素子1417を新たに装備し(埋め込み、貼り付け、巻き付けなど)、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、人間に印加する(図98D)。
B−(3)ヘッドセットの外側をピエゾプラスチックなどの素材で被覆1418して、その被覆1418から第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、人間に印加する。
C.携帯電話機1410とヘッドセット1415等を接続するケーブル1416を利用した振動発生機構の例を示す(図98A)。
C−(1)ケーブル1416中の電気信号線を振動させることによって、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、人間に印加する。
C−(2)ケーブルの被覆1418にピエゾプラスチックなどの素材を用い、その被覆から第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、人間に印加する(図98E)。
C−(3)ケーブルの被覆に超高周波振動発生素子1417を埋め込み、そこから第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、人間に印加する。
C−(4)ケーブルの外側に超高周波振動発生素子被覆1418を装備(貼り付け、巻き付けなど)して第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、人間に印加する。
D.そのほか、携帯電話機に付属しているイヤホンマイク、ストラップ、アクセサリ、ソフトケースなどの付属品に超高周波振動発生素子を装備して、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生させ、人間に印加する。
E.図98Fにおいて、携帯電話機1410とは独立に、例えば図98Aの携帯電話機1410の近傍において、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動を発生可能な振動呈示装置1419を別途準備してもよい。
なお、上記A〜Eの振動発生機構を組み合わせてもよい。なお、ここでは、携帯電話機1410とヘッドセット415等を有線で接続する例を示したが、無線(Bluetooth(登録商標)通信、赤外線通信、人体通信など)で接続してもよい。なお、上記の振動発生機構は、その他の携帯型通信機器(無線IP通信・赤外線通信などを用いた情報端末、トランシーバ、インカムなど)、携帯型放送受信機器(ワンセグ受信機など)などにも同様に装備することができる。
次いで、携帯型音楽プレーヤ(iPod(登録商標)、ウォークマン(登録商標)など)、携帯ビデオプレーヤ、携帯ゲーム機などの携帯型機器に、適切な振動発生機構をもたせる例について説明する。具体例として、図99A及び図99Bは、応用例31に係る、iPod(登録商標)などの携帯型音楽プレーヤ1420を利用した振動発生機構の例を示す斜視図である。図99A及び図99Bにおいて、超高周波振動を発生させる具体的な振動発生機構として、図98A〜図98Fと同様に、A.携帯型音楽プレーヤ1420本体(第3の帯域を含む振動の振動信号を保存したメモリ1420mを含む。)を利用した振動発生機構、B.イヤホン1421等を利用した振動発生機構、C.ケーブル1422を利用した振動発生機構、D.その他ストラップ等付属品を利用した振動発生機構、E.携帯型音楽プレーヤ1420とは独立しているが例えばその近傍に載置される振動呈示装置1423(図99B)を利用する手段などがある。また、上記応用例30に係るA〜Eの振動発生機構を組み合わせてもよい。なお、上記の振動発生機構は、携帯ビデオプレーヤ、携帯ゲーム機などにも同様に装備することができる。
なお、最近では、スマートホンやタブレット機器などにみられるように、携帯電話機と携帯プレーヤとが融合するなど、携帯型機器の機能の複合化が進んでいるため、図98A〜図98F及び図99A、図99Bに参照して説明した例の一部あるいは全部を複合的に実施してもよい。さらに実現可能性が高い、より簡便な方法として、従来は携帯型機器の付属品と考えられているイヤホン1421やヘッドセット1415等に、それだけで独立した振動発生機能を与え、何らかの機器に接続するだけで、あるいは単独で、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波成分の振動を発生する機能をもたせる。これにより、携帯電話、携帯型音楽プレーヤ1420をはじめ、可聴音しか発生することができないさまざまな種類の機器を接続したとしても、この応用例で述べるイヤホン1421やヘッドセット1415等さえ接続すれば、聴取者は第2及び/又は第3の帯域を含む振動を受容することが可能になる。振動源としては、第2及び/又は第3の帯域を含む振動信号を蓄積しておくメモリ1425を、イヤホン1421筐体内部あるいはケーブル1422の途中などに装備する。また、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波成分をイヤホン1421内部で人工的に生成する装置を内蔵してもよい。さらに、必要があれば振動信号を増幅するためのマイクロアンプ(図示せず。)を内蔵しておいてもよい。超高周波振動を発生させるための振動発生機構としては、以下のような手段がある。イヤホン1421内に振動発生機能を内蔵し、筐体やイヤーパッド等そのものを振動させる。あるいは、イヤホン1421筐体やイヤーパッド等に超高周波振動発生素子を装備(埋め込み、貼り付け、巻き付けなど)する。また、イヤホン1421筐体やイヤーパッド等の外側をピエゾプラスチックなどの素材で被覆する。また、ケーブル1422を利用する手段として、ケーブル1422中の電気信号線を振動させる、ケーブル1422の被覆にピエゾプラスチックなどの素材を用いる、あるいはケーブルの被覆に超高周波振動発生素子を埋め込む、ケーブル1422の外側に超高周波振動発生素子を装備(貼り付け、巻き付けなど)する。なお、これらの振動発生機構を組み合わせてもよい。また、ヘッドセット1415やヘッドホン等においても、同様の機能をもたせることができる。
図100は応用例32に係る、携帯型プレーヤ3501の外観を示す斜視図である。本実施形態において、少なくとも第3の帯域の超高周波振動信号を含みハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導くことができる信号をHS信号といい、可聴域の周波数を超える周波数成分を含む高解像度(ハイレゾリューション(high−resolution)、又はハイディフィニション(high−definition))信号をHD信号という。また、HS信号、HD信号及び可聴域音信号には、例えば音楽信号、環境音信号、音声信号などを含む。ここで、HS信号及びHD信号はそれぞれ、可聴域音信号を含む場合と含まない場合もあり、それぞれサンプリング周波数で決定される各最大周波数を有する。すなわち、HS信号は、HD信号であって少なくとも第3の帯域を含む振動信号を含む信号であり、HD信号は、第3の帯域を含む振動信号を含まない信号である。
図100において、携帯型プレーヤ3501には、その正面に液晶ディスプレイ3552が設けられるとともに、各表面にそれぞれHS信号を含む信号又は振動を発生する内蔵アクチュエータ3502が設けられる。また、携帯型プレーヤ3501の正面の上側には、可聴域音信号を発生する内蔵スピーカ3508Aが設けられ、その正面の下側には、モニタ用マイクロホン3509が設けられる。また、携帯型プレーヤ3501の下面には2つの接続ジャック(図示せず)が設けられ、1つの接続ジャックに嵌合接続されるプラグ及びケーブル3504を介して例えば首掛けペンダント型の外付アクチュエータ3503が接続され、ここで、ケーブル3504の外側被覆にはケーブル3504に接続されて振動を発生する外付アクチュエータ3504Aが形成される。また、もう1つの接続ジャックに嵌合接続されるプラグ及びケーブル3505を介して、人間であるユーザ3507に装着され可聴域音信号を再生するイヤホン3506が接続され、ここで、ケーブル3505の外側被覆にはケーブル3505の別の芯線に接続されて振動を発生する外付アクチュエータ3505Aが形成される。ここで、アクチュエータ3502〜3505はHS信号又はHD信号の振動を発生してユーザ3507の体表面に対して放射する。
図101は図100の携帯型プレーヤ3501の構成を示すブロック図である。
図101において、HS信号メモリ3512は、少なくとも第3の帯域の超高周波振動信号を含むHS信号のデータを予め記憶し、コントローラ3510からの指示信号に基づいて所定のHS信号を再生してD/A変換器3513に出力する。D/A変換器3513は入力されるHS信号をD/A変換してVCA回路3520に出力する。
携帯電話無線通信回路3514は、携帯電話ネットワークを介して所定のサーバ装置から配信された後アンテナ3514Aを用いて受信した可聴域音信号、HS信号又はHD信号を受信し、復調し、所定の信号処理を実行した後、処理後の信号を、信号レジスタ3516を介してストリーミング信号としてD/A変換器3517を介してVCA回路3520に出力するとともに、低域通過フィルタ3531を介して可聴域音信号のみをミキサ回路3540に出力する。また、携帯電話無線通信回路3514は、受信信号がストリーミング信号ではなくメモリ記憶可能なダウンロード信号の場合は、処理後の信号を、信号メモリ3518に出力して格納し、必要に応じて、コントローラ3510からの指示信号に応答して、その信号を信号メモリ3518から読み出してダウンロード信号としてD/A変換器3519を介してVCA回路3520に出力するとともに、低域通過フィルタ3531を介して可聴域音信号のみをミキサ回路3540に出力する。
WiFi無線通信回路3515は、インターネットなどの所定のネットワークを介して所定のサーバ装置から配信された後アンテナ3515Aを用いて受信した可聴域音信号、HS信号又はHD信号を受信し、復調し、所定の信号処理を実行した後、処理後の信号を、信号レジスタ3516を介してストリーミング信号としてD/A変換器3517を介してVCA回路3520に出力するとともに、低域通過フィルタ3532を介して可聴域音信号のみをミキサ回路3540に出力する。また、WiFi無線通信回路3515は、受信信号がストリーミング信号ではなくメモリ記憶可能なダウンロード信号の場合は、処理後の信号を、信号メモリ3518に出力して格納し、必要に応じて、コントローラ3510からの指示信号に応答して、その信号を信号メモリ3518から読み出してダウンロード信号としてD/A変換器3519を介してVCA回路3520に出力するとともに、低域通過フィルタ3532を介して可聴域音信号のみをミキサ回路3540に出力する。なお、低域通過フィルタ3531,3532は入力信号のうち可聴域音信号のみを低域通過ろ波して出力する。
なお、D/A変換器3513、3517及び3519は例えば
(1)サンプリング周波数192kHzのPCM信号をD/A変換するD/A変換器、
(2)サンプリング周波数2.8MHzのDSD信号をD/A変換するD/A変換器、もしくは
(3)サンプリング周波数5.6MHzのDSDをD/A変換するD/A変換器
などであって、可聴域のみならず、超高周波信号をD/A変換することができる。
また、HD信号及びHS信号の最大周波数は、例えば、88.2kHz、96kHz、100kHz、176.4kHz、192kHz、200kHz、300kHz、352.8kHz、384kHz、500kHz、705.6kHz、768kHz、1MHz、1.4MHz、又は2.8MHz(PCM信号の場合には、いずれも最大周波数であって、サンプリング周波数はこれらの2倍の周波数である。)までの範囲内の1つの周波数である。すなわち、HD信号及びHS信号の最大周波数は、例えば、88.2kHzから2.8MHzまでの1つの周波数である。
さらに、HS信号メモリ3512及び信号メモリ3518は、例えば64ギガバイト以上の大容量のメモリ容量を有し、例えば可聴域音源のデータを含まないHS信号のデータを格納することができる。さらに、信号メモリ3518には、下記のデータを格納することができる。
(1)可聴域音源のデータ、
(2)HS信号を含まないHD信号のデータ、
(3)HS信号を含むHD信号のデータ。
マイクロホン3509は当該携帯型プレーヤ3501の周囲の環境音をモニタして検出し、モニタ信号として信号増幅器3511を介してHS信号レベル検出回路3561に出力する。HS信号レベル検出回路3561は入力されるモニタ信号のうち、HS信号を含む成分を抽出し、当該信号のレベルを検出してコントローラ3510に出力する。具体的には、例えばHS信号特有の周波数の信号レベルを検出する。
VCA回路3520は、入力される各信号を混合し、コントローラ3510からの指示信号に従ってレベル調整を行いかつ増幅して、HS信号判別回路3560に出力するとともに、信号増幅器3524を介して内蔵アクチュエータ3502及び外付アクチュエータ3503,3504,3505に出力する。HS信号判別回路3560は、入力される信号においてHS信号が所定のしきい値レベル以上存在するか否かを判別し、判別結果を示す判別信号をコントローラ3510に出力する。なお、VCA回路3520は入力される各信号の信号レベルを検出してコントローラ3510に出力する。
ミキサ回路3540は、入力される各可聴域音信号を混合して信号増幅器3541を介してイヤホン3506、内蔵スピーカ3508A及び外付スピーカ3508Bに出力する。これにより、可聴域音信号を人間であるユーザ3507の聴覚系の耳に放射してユーザ3507に聞かせることができる。
コントローラ3510には、ユーザ3507が操作指示及び動作指示を入力するためのキーボード3551と、上記各指示結果、HS信号判別結果、HS信号レベル検出結果などの表示データを表示する液晶ディスプレイ3552と、USBインターフェース3553とが接続される。ここで、USBインターフェース3553には、USB外部機器3554が接続可能であって、例えばHS信号、HD信号、可聴域音信号等のデータを格納した不揮発性メモリを備えたUSB外部機器3554を接続し、HS信号、HD信号、可聴域音信号等のデータをUSB外部機器3554からUSBインターフェース3553及びコントローラ3510を介してHS信号メモリ3512又は信号メモリ3518に格納することもできる。
コントローラ3510は、当該携帯型プレーヤ3501内の各回路3514,3515,3512,3518,3520,3540の動作を制御する。ここで、コントローラ3510は、HS信号判別回路3560からの判別信号がHS信号を存在していないことを示すとき、
(1)HS信号メモリ3512に格納されたHS信号のデータを読み出してHS信号を発生してD/A変換器3513を介してVCA回路3520に出力し、もしくは
(2)ダウンロードされた信号としてHS信号のデータが信号メモリ3518に格納されているときに、信号メモリ3518に格納されたHS信号のデータを読み出してHS信号を発生してD/A変換器3519を介してVCA回路3520に出力する。
これにより、例えばイヤホン3506などを用いて可聴域信号音をユーザ3507の聴覚系の耳に放射しながら、VCA回路3520から出力される信号には、常にHS信号が含まれて各アクチュエータ3502〜3505でHS信号の振動を発生させることができる。それ故、当該振動をユーザ3507に呈示して、その脳を活性化することによって精神活動及び身体活性を総合的に高める効果、すなわちハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導くことができる。
また、コントローラ3510は、例えばイヤホン3506などを用いて可聴域信号音をユーザ3507の聴覚系の耳に放射しながら、HS信号レベル検出回路3561からの検出レベルに基づいて、その検出レベルが所定のしきい値よりも小さいとき(上記ハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導くことができない状態のとき)、VCA回路3520に入力されるHS信号のレベルを、上記検出レベルが上記しきい値を超えて増大させるようにVCA回路3520を制御する。これにより、VCA回路3520から出力される信号には、常に所定のしきい値以上のHS信号が含まれて各アクチュエータ3502〜3505でHS信号の振動を発生させることができる。それ故、当該振動をユーザ3507に呈示して、その脳を活性化することによって精神活動及び身体活性を総合的に高める効果、すなわちハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導くことができる。
さらに、コントローラ3510は、VCA回路3520に入力されて混合される各信号のレベルが、例えば実質的に同一になるなど所定のレベル関係になるようにVCA回路520を制御する。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を有する。
(1)例えばイヤホン3506などを用いて可聴域信号音をユーザ3507の聴覚系の耳に放射しながら、ハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導くことができる振動を再生してユーザ3507の体表面に呈示する携帯型プレーヤを提供できる。
(2)HS信号判別回路560によりアクチュエータ3502〜3505により発生させる振動にHS信号が存在するか否かを判別して、存在しないときHS信号メモリ3512に予め格納されたHS信号、もしくは予め配信されてダウンロードして格納されたHS信号のデータを用いて、HS信号の振動を常に発生させるので、ハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導くことができる振動を有効にかつ確実にユーザ3507に対して呈示することができる。
(3)HS信号レベル検出回路3561によりアクチュエータ3502〜3505により実際に発生された環境音内の振動にHS信号の信号レベルが上記しきい値以上であるか否かを判別して、そうでないときHS信号の信号レベルを増大するようにVCA回路3520を制御するので、ハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導くことができる振動を有効にかつ確実にユーザに対して呈示することができる。
以上の応用例32においては、携帯型プレーヤについて説明しているが、本発明はこれに限らず、同様の機能を有する携帯型パーソナルコンピュータ、スマートホンなどの携帯電話機などの携帯型電子機器を構成してもよい。
以上の応用例32においては、可聴域音信号と、HS信号と、HD信号とを発生する携帯型プレーヤについて説明しているが、本発明はこれに限らず、少なくとも可聴域音信号と、HS信号とを発生してもよい。
以上詳述したように、応用例32によれば、可聴域音をユーザの聴覚系の耳に呈示しつつ、ハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導くことができる振動を再生してユーザの体表面に呈示することができる携帯型電子機器を提供することができる。また、上記判別手段又は上記検出手段を備えることにより、可聴域音をユーザの聴覚系の耳に呈示しつつ、ハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導くことができる振動を再生してユーザの体表面に有効にかつ確実にユーザに対して呈示することができる携帯型電子機器を提供するができる。
図102は、応用例33に係る、電子楽器の演奏によって発生される脳活性の増大又は低下効果を導かないオリジナル振動に対して、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波振動信号を加算する振動補完装置を含む電子楽器装置の例を示す斜視図である。現行のデジタルシンセサイザー1444などの電子楽器は超高周波成分を記録再生できないデジタルフォーマットを用いており、従って、その演奏音の振動には超高周波成分が含まれておらず、脳活性の増大又は低下効果を導くことができない。そこで、図102において、振動補完装置は、電子楽器の演奏音の振動信号をオリジナル振動信号とし、それに対して、脳活性を低下又は増大させることのできる振動信号を補完振動源1442から読み出して加算器(図示せず。)によりオリジナル振動信号に加算し、第2及び/又は第3の帯域を含む超高周波成分を含むがゆえに脳活性の増大又は低下効果を導く振動の信号を出力する。この振動補完装置は、図102において電子楽器であるデジタルシンセサイザー1444内に内装されているが、これに限らず外付けされていてもよいし、電子楽器と独立に存在していてもよい。また、上記補完振動源1442は、脳活性を低下又は増大させることのできる振動信号を記録した固形メモリなど各種の記憶装置を内蔵していてもよいし、アナログシンセサイザーなどによって合成される、脳活性を低下又は増大させることのできる振動信号を通信などによって供給するものであってもよい。上記ではデジタルシンセサイザー1444を例にあげたが、これ以外の電子楽器やカラオケシステム等についても、同様にその演奏音の振動信号に、脳活性を低下又は増大させることのできる振動信号を補完することができる。あるいはアコースティック楽器の演奏音の振動をマイクロホンなどで電気信号化し、そこに脳活性を低下又は増大させることのできる振動信号を補完することもできる。さらに、こうした楽器群の演奏や、歌唱などをコンサートホールなどでいったん信号化して再生するいわゆるPA(拡声)においても同様に、振動補完装置によって、脳活性を低下又は増大させることのできる振動信号の補完を実施できる。
従来技術に係る通常の4チャンネルサラウンドのスピーカ配置において前面左側スピーカFLと、後面左側スピーカRLは同じ左側にあるが、ダブルヘリカルマトリックスに配置すると、図103の応用例34のようになる。応用例34に係る図103において、前面左側スピーカFLは左側にあるのに対して後面左側スピーカRLは右側に配置される。これにより、この空間の内側にいる人間はどの4辺方向を向いても、左側の音と右側の音に向き合うことになる。また、5チャンネル分すべての音を聞くことになる。なお、上部中央スピーカUCを加えて、立体感や連続性を実現するのもダブルヘリカルマトリックスの特徴である。
図104は応用例35に係る、ダブルヘリカルマトリックスを二方向に連続して繰り返し配置した場合を示す。図104のスピーカ配置では、この空間の内側にいる人間は、常に左側の音と右側の音に向き合うことになり、5チャンネル分すべての音を聞くことになる。さらに、図104において、左側の音と右側の音は絡み合っており、左側スピーカの並び及び右側スピーカの並びは、それぞれ前面−後面−前面−後面−…を繰り返してらせん状になっている。
次に、6次元連続マトリックス配位法を用いたスピーカの配置について説明する。
従来技術に係る4チャンネルサラウンドのスピーカ配置を、応用例36の図105に示すように、上方に所定の高さまでもち上げる。そして、前面と後面との間に位置する音のチャンネルを追加し、そのスピーカを中央左側スピーカCL及び中央右側スピーカCRとする。なお、これらの中央左側スピーカCL及び中央右側スピーカCRを地面又は地面からわずか上側の高さに配置する。図105のスピーカ配置を本実施例におけるマトリックスという。このとき逆に、FL、FR、RL、RRを地面からわずか上側の高さに、CL、CRを上方に配置する変形配置を用いてもよい。
図105のマトリックスを縦横二方向に連続して繰り返し配置させて場合、応用例37に係る図106のようになる。図106では、どのマトリックスにいても左の音の列と、右の音の列があるので、音場は正常に感じられるように形成される。また、前面の音と後面の音が交互に現れる。さらに、前面の音と後面の音との間をつなぐ中央の音があるため、連続的な空間を感じることができる。
なお、振動のうち可聴域成分についてのみ上記のダブルヘリカルマトリックス配位法、6次元連続マトリックス配位法などを用いて再生し、人間の可聴周波数上限をこえる超高周波成分についてはステレオ再生やモノラル再生を行うことにしてもよい。
次いで、第2及び/又は第3の帯域を含む振動信号を伝送・配信するネットワーク応用に係る実施例を述べる。ネットワークを活用することにより、携帯電話機などの携帯型通信機器や携帯型放送受信機器、iPod(登録商標)などの携帯型音楽プレーヤや携帯ビデオプレーヤ、携帯ゲーム機、あるいはインターネットやLANなどのネットワークに接続できるパソコン、テレビ受像器やそこに接続するビデオデッキなどを始めとするAV機器、電子機器などを用いて、ハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトを導くことができる振動を発生させる装置について、以下に説明する。
現代の社会においては、携帯型通信機器(携帯電話機、無線IP通信・赤外線通信などを用いた情報端末、トランシーバ、インカムなど)や携帯型放送受信機器(ワンセグ受信機など)、携帯型音楽プレーヤ(iPod(登録商標)、ウォークマン(登録商標)など)や携帯ビデオプレーヤ、携帯ゲーム機などが爆発的に普及している。しかも使用頻度が増え長時間にわたって視聴するスタイルが増加している。これらの機器の多くは、人体に極めて接近した状態下で長時間携行・使用されるため、それらが携行者の身体と精神に及ぼす影響は無視できない。ここで問題になるのが、これらの携帯型機器が発生する音声振動は第3の帯域の超高周波成分を含まず可聴域成分のみで構成されるために、通常の暗騒音状態に比して基幹脳の活性を低下させる可能性が高いことである。こうした携帯型機器の使用は、現代人の健康を著しく脅かすばかりでなく、不快感やイライラした感情を導き、アドレナリン濃度上昇などストレス反応を導き、暴力行為や異常行動の引き金をひく危険性が高まるという問題がある。
この問題を解決するため抜本的な方法は、応用例38に係る図107に示すように、当該システムにおいて、第3の帯域を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を適切に発生・送信・伝送・受信し、それらを携帯型機器において実際の振動として発生させることを可能ならしめる機能を、関与するすべての機器にもたせることである。
具体的には、まず、信号送信機380において、音声振動を超高周波帯域まで忠実に振動信号に変換して送信する機能とともに、その振動信号が第3の帯域の超高周波成分を含まない場合、あるいは第2の帯域振動成分を含む場合のために、信号再構成回路382により、適切な信号処理を行うことによって第3の帯域の超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことができる振動の信号に再構成して、信号送信回路383によりその信号を送信する機能をもたせる。
次に、振動信号を伝送するための装置やネットワークにおいて、超高周波帯域まで忠実に伝送する機能をもたせることに加えて、伝送材料となる振動信号が第3の帯域の超高周波成分を含まない場合のために、電話局・放送局などの中継局やネット上のサーバで適切な信号処理を行うことによって、例えば信号再構成回路391において伝送信号を第3の帯域を含む振動信号に再構成する機能をもたせる。このとき、伝送のためのネットワークは広域を対象とした通信・放送だけでなく、家庭内や社内、構内などのある特定の空間や領域におけるLANやユビキタス・ネットワーク、機器間通信などであってもよい。
最後に、携帯型信号受信機400は、信号受信回路401と、信号再構成回路402と、振動発生装置403とを含む。当該携帯型信号受信機400において、伝送されてきた振動信号を忠実に受信し実際の振動に変換する機能に加えて、受信している振動信号が第3の帯域の超高周波成分を含まない場合のために、受信機自体において適切な信号処理を行うことによって第3の帯域を含む振動信号に再構成した上で、その信号を実際の振動に変換し発生させる機能をもたせる。
これらによって、携帯型機器を携行・使用する人間は、第1及び第3の帯域を含む振動を受容することが可能になり、その基幹脳活性の低下を含むハイパーソニック・ネガティブ・エフェクトを防ぎ安全性を確保できることに加え、基幹脳及び基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化させることを通じて、心身の状態を改善向上させる積極的な効果であるハイパーソニック・ポジティブ・エフェクトが得られる。
しかし、振動信号の送信・伝送に関与する機器並びに機能において、上記に述べたような抜本的な問題解決方法を即座に実現することは困難である。そこで、より即効的で実現可能性が高い問題解決方法として、携帯型信号受信機のみに対して、適切な信号処理機能及び振動発生機能をもたせる。これによって、送信・伝送に関わる機器並びに機能に限界があり、超高周波成分が欠乏した可聴域成分のみで構成された振動信号しか受信することができなくとも、携帯型信号受信機において第3の帯域を含む振動を発生させることが可能になる。
携帯型信号受信機に適切な信号処理機能をもたせるための具体的な方法について、以下に述べる。
例えば携帯型信号受信機内に装備したメモリなどに、あらかじめ第3の帯域を含む振動信号を蓄積しておき、受信した可聴音の信号に対して、第3の帯域を含む振動の信号を補完する。補完する信号は、メモリに蓄積されたものを使うだけでなく、携帯型信号受信機の外部から入力あるいは受信してもよいし、携帯型信号受信機の内部で生成してもよい。また、補完する振動信号のレベルは、受信した可聴音のレベルに相関して自動的に変化させることもできるし、携帯型機器の使用者が任意に調整することもできるものとする。
なお、受信した可聴音の信号と、第3の帯域を含む振動の信号とは、同一の振動発生機構により実際の振動を発生させてもよいし、独立した別々の振動発生機構により実際の振動を発生させてもよい。
ネットワークに接続する機器として、ここでは携帯型機器を例にあげて述べたが、本実施例はネットワークに接続できるパソコン、テレビ受像器やそこに接続するビデオデッキなどを始めとする全てのAV機器、電子機器に適用することができる。また、ここでは第3の帯域を含む振動を呈示するための例を述べたが、第2の帯域を含む振動についても同様である。
参考実施例1.
図108は実施形態3で測定された、第1の帯域とともに第2の帯域と第3の帯域の一部を組み合わせて同時に印加したときのPET装置の被験者頭部の実験結果(参考実施例1)の投影図であって、図108(a)はサジタル投影図であり、図108(b)はコロナル投影図であり、図108(c)は水平面投影図である。ここで、参考実施例1では、実施形態3に係る帯域組み合わせの作用効果を裏付ける参考実験データを示す。
参考実施例1では、ガムラン音楽を振動源とし、第1の帯域(本実験では〜16kHz)の振動と第2の帯域(本実験では16kHz〜32kHz)と第3の帯域(本実験では32kHz〜)の振動を同時に被験者に呈示した。その結果、特に振動を呈示しない時に比べて、脳幹や視床などの基幹脳及び聴覚野の脳血流が増大した。この実験で呈示された振動には、脳活性の低下を導く「ネガティブ効果」と脳活性の上昇を導く「ポジティブ効果」の両者が共存していたが、「ポジティブ効果」を導く第3の帯域成分の割合が相対的に多く、そのために脳活性が増大したと考えられる。
参考実施例2.
図109は実施形態4で測定された、行動実験及び脳波実験の結果(参考実施例2)であって、各帯域に対する深部脳活性指標(DBA−index)を示す図である。ここで、参考実施例2では、実施形態4に係るネガティブ・ポジティブ強度変化を裏付ける参考実験データを示す。
参考実施例2では、ガムラン音楽を振動源とし、以下の3種類の振動を被験者に呈示した。
(振動A)第1の帯域(本実験では〜16kHz)と第2の帯域の一部(本実験では16kHz〜22kHz)のみを含む振動。
(振動B)第1の帯域(本実験では〜16kHz)と第2の帯域(本実験では16kHz〜32kHz)と第3の帯域(本実験では32kHz〜)を含む振動。
(振動C)帯域の幅は(振動B)と同じであるが、その中の一部の帯域の信号強度を増強したもの。すなわち、第2の帯域の一部(本実験では22kHz〜32kHz)と第3の帯域(本実験では32kHz〜)の信号を6dB増強して呈示した振動。
本参考実施例2では、それぞれの振動について、被験者に好みのレベルを調整してもらい、最終的な調整結果を「快適聴取レベル」とした。また、被験者の脳波を計測し、深部脳活性指標(DBA−index)を求めた。この結果、情動系神経回路の活性化を反映すると考えられる「快適聴取レベル」と、深部脳活性指標(DBA−index)とが並行して、(振動A)<(振動B)<(振動C)の順で高い値を示した。(振動A)<(振動B)という結果は、「ネガティブ効果」をもつ第2の帯域に比べて、「ポジティブ効果」をもつ第3の帯域の信号の割合が相対的に大きかったためと考えられる。また、(振動B)<(振動C)という結果は、「ネガティブ効果」をもつ第2の帯域がその一部しか増強されなかったのに対し、「ポジティブ効果」をもつ第3の帯域は全帯域が増強されたため、相対的に「ポジティブ効果」がより強く導かれたためと考えることができる。
参考実施例3.
図110は実施形態6で測定された脳波実験結果(参考実施例3)であって、所定値以上のα−EEGの正規化パワーの頭部水平面投影図の時系列変化を示す図である。すなわち、参考実施例3では、切り替え呈示を裏付ける参考実験データを示す。当該実験では、高周波成分を豊富に含み所定の自己相関秩序構造(特許文献7及び9を参照)を備えたガムラン音楽を振動源とし、まず(A)第1の帯域(本実験では〜16kHz)と第2の帯域(本実験では16kHz〜32kHz)と第3の帯域(本実験では32kHz〜)を含む振動を200秒間呈示した。次に、(B)第1の帯域(本実験では〜16kHz)と第2の帯域の一部(本実験では16kHz〜26kHz)を含む振動を200秒間呈示した。そして、図52のごとく、脳の活性を反映する脳波α波の成分を30秒毎にトポグラフ表示した。この結果、図52から明らかなように、(A)で脳活性が上昇した後、それに引き続いて(B)で脳活性が相対的に低下した。なお、Zスコアは、被験者頭部のα2帯域成分強度の相対値である。
変形例.
以上の実施形態及び実施例において、人間などに振動を呈示しているが、動物など人間以外の生体に振動を呈示してもよい。
以上の実施形態、実施例及び応用例については、それらの一部又は全部を組合せて構成してもよい。
以上の実施形態においては、第1の帯域、第2の帯域及び第3の帯域はそれぞれ所定の帯域幅を有する。ここで、第1の帯域を用いているが、本発明はこれに限らず、上記第1の帯域は、20kHz以下の帯域のうちの少なくとも一部であってもよい。また、第2の帯域を用いているが、本発明はこれに限らず、上記第2の帯域は、16kHz〜32kHzの帯域を少なくとも含む帯域であって、16kHzから32kHz、40kHz又は48kHzまでの帯域のうちの少なくとも一部であってもよい。さらに、第3の帯域を用いているが、本発明はこれに限らず、上記第3の帯域は、上記第2の帯域以上の帯域(その帯域の最大周波数は例えば、96kHz又は112kHz〜192kHzなどのうちの1つの周波数であってもよい。)のうちの少なくとも一部であってもよい。