JP2015151334A - 血清調製方法および器具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 採血場所と血清調製場所とが離れている状況に適した血清の調製方法、および、血清調製用の血液を長時間運搬する方法を提供する。【解決手段】 全血と赤血球保存剤とを混合するステップ、および、前記ステップで得た全血と赤血球保存剤との混合物において血液凝固反応を生じさせるステップを含む、血清を調製する方法、赤血球保存剤を含有する採血容器と、該採血容器と気密に連結された血清貯蔵容器とを含む血清分離器具、対象から採取した全血と赤血球保存剤との混合物を、該混合物において血液凝固反応を生じさせながら運搬するステップを含む、血清調製用全血を運搬する方法、前記血清分離器具を収容する第一の収容部と、対象から採取した細胞を収容する容器を収容する第二の収容部とを含む、細胞培養物製造材料の運搬容器。【選択図】 なし

Description

本発明は、血清を分離する方法、血清を分離するための器具、自己血清調製用血液の運搬方法および運搬容器などに関する。
近年、損傷した組織等の修復のために、種々の細胞を移植する試みが行われている。例えば、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患により損傷した心筋組織の修復のために、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、間葉系幹細胞、心臓幹細胞、ES細胞等の利用が試みられている(非特許文献1)。
このような試みの一環として、スキャフォールドを利用して形成した細胞構造物や、細胞をシート状に形成したシート状細胞培養物が開発されてきた(特許文献1)。
シート状細胞培養物の治療への応用については、火傷などによる皮膚損傷に対する培養表皮シートの利用、角膜損傷に対する角膜上皮シート状細胞培養物の利用、食道ガン内視鏡的切除に対する口腔粘膜シート状細胞培養物の利用などの検討が進められている。
こうした医療用の細胞培養物の製造には、細胞の生存などのために、種々の有用な成分をバランスよく含む血清を用いることが多い。細胞培養物の製造に用いられた血清は、細胞培養物を対象の体内に適用する際に一緒に体内に入るため、対象に対する影響の少ない、当該対象由来の自己血清であることが望ましい。しかしながら、自己血清の原料となる血液を対象から採取する医療施設には、臨床検査用に血清を分離する程度の設備しか設けられていないことが多い。このような設備では医療用細胞培養物の製造に十分な量の血清を調製することは困難であり、また、エンドトキシンなどの有害物質が混入するリスクもあるため、高い安全性が要求される医療用細胞培養物の製造に用いる自己血清の調製に適しているとはいえない。したがって、医療用細胞培養物の製造に用いる自己血清の調製は、所定の基準に適合した、医療用細胞培養物の製造施設で行うことが望ましい。ところが、このような製造施設は血液を採取する医療施設の近くに位置しているとは限らず、血液を長時間輸送せざるを得ない場合があるが、採血場所と血清調製場所とが離れている状況に適した血清の調製方法も、血清調製用の血液を長時間運搬する方法もこれまで知られていなかった。
特表2007-528755号公報
Haraguchi et al., Stem Cells Transl Med. 2012 Feb;1(2):136-41
本発明の目的は、血液採取場所と血清調製場所とが離れている場合に適した血清の調製方法、および、血清調製用の血液を長時間運搬する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進める中、対象から採取した全血を、赤血球保存液と混合した状態で運搬することで、溶血などのない良質の血清を調製することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)全血と赤血球保存剤とを混合するステップ、および
前記ステップで得た全血と赤血球保存剤との混合物において血液凝固反応を生じさせるステップ、
を含む、血清を調製する方法。
(2)赤血球保存剤が、糖アルコールおよび/または二糖類と、グルコースと、アデニンおよび/またはイノシンと、塩化ナトリウムと、抗凝固剤とを含む、(1)に記載の方法。
(3)血液凝固反応が12〜120時間の間に行われる、(1)または(2)に記載の方法。
(4)血液凝固反応が、混合物の温度調節により制御される、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)血液凝固反応が、混合物を採血場所から血清調製場所へ運搬中に行われる、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6)赤血球保存剤を含有する採血容器と、該採血容器と気密に連結された血清貯蔵容器とを備えた、血清分離器具。
(7)第一の対象から採取した全血と赤血球保存剤とを混合するステップ、
前記ステップで得た全血と赤血球保存剤との混合物において血液凝固反応を生じさせるステップ、
前記混合物から血清を回収するステップ、および
第二の対象から採取した細胞を、前記回収した血清の存在下でインキュベートするステップ
を含む、医療用細胞培養物の製造方法。
(8)(7)に記載の方法で製造された医療用細胞培養物。
(9)対象において疾患を処置する方法であって、(8)に記載の細胞培養物の有効量をそれを必要とする対象に投与するステップを含む、前記方法 。
(10)対象から採取した血清調製用全血を運搬する方法であって、前記全血と赤血球保存剤との混合物を、該混合物において血液凝固反応を生じさせながら運搬するステップを含む、前記方法。
(11)運搬するステップにおいて、全血が、対象から採取した、医療用細胞培養物の材料となる細胞と一緒に運搬される、(10)に記載の方法。
(12)(6)に記載の血清分離器具を収容する第一の収容部と、対象から採取した細胞を収容する容器を収容する第二の収容部とを備えた、細胞培養物製造材料の運搬容器。
本発明の血清調製方法により、採血場所から血清調製場所への運搬時間を有効に活用して、医療用細胞培養物の製造に適した良質の血清を調製することができるため、医療用細胞培養物の効率的な製造が可能となり、医療用細胞培養物を用いた再生医療などへの多大な貢献が期待できる。
また、本発明の運搬方法により、自己血清調製用の血液と、医療用細胞培養物製造用の細胞や組織とが一緒に運搬されるため、他の対象の血液が誤って細胞・組織と組み合わされるリスクが低減し、対象からの採取物の管理が容易となる。さらに、本発明の運搬方法において専用の運搬容器を用いることにより、これらの効果をより一層高めることができる。
図1は、本発明の血清分離器具の一態様を示した図である。 図2は、本発明の運搬容器の一態様を示した図である。
本明細書において別様に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本明細書中で参照する全ての特許、出願、公開された出願および他の出版物は、その全体を参照により本明細書に援用する。
本発明の一側面は、全血と赤血球保存剤とを混合するステップ、および、前記ステップで得た全血と赤血球保存剤との混合物において血液凝固反応を生じさせるステップを含む、血清を調製する方法(以下、「血清調製方法」と略す場合もある)に関する。
本発明において、赤血球保存剤は、全血から分離された赤血球成分を含む液(例えば、濃厚赤血球液等)に添加して赤血球の保存時間を延長し得る任意の剤を指すが、糖アルコールおよび/または二糖類と、グルコースと、アデニンおよび/またはイノシンと、塩化ナトリウムとを含むものが好ましい。糖アルコールとしては、限定されずに、例えば、マンニトール、ソルビトール、マルチトールなどが挙げられる。二糖類としては、限定されずに、例えば、ラクトース、スクロース、マルトースなどが挙げられる。本発明における赤血球保存剤は、上記成分のほか、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム等)、ヘパリン等の抗凝固剤、クエン酸等のpH調整剤、リン酸二水素ナトリウム等のATP産生促進剤などの成分を含んでいてもよい。本発明における赤血球保存剤に含まれる糖類はD体であってもL体であってもよいが、D体が好ましい。本発明における赤血球保存剤は、上記成分を液体溶媒に溶解して液状の赤血球保存液としてもよい。液体溶媒は、典型的には水であるが、赤血球に悪影響を与えない他の溶媒であってもよい。
本発明における赤血球保存剤がクエン酸塩等の抗凝固剤を含む場合、同成分を凝固遅延量で含むことが好ましい。ここで、凝固遅延量は、ACD液やCPD液といった血液保存液などにおけるような凝固が完全に抑制される量より少なく、ある程度の時間放置すれば血液凝固が起こり、血清が形成される量である。本発明における凝固遅延量の非限定例としては、例えばクエン酸ナトリウムを全血と混合したときの最終濃度として、好ましくは0.0003〜0.3w/v%、より好ましくは0.001〜0.1w/v%、さらに好ましくは0.003〜0.06w/v%、特に好ましくは0.007〜0.03w/v%である。凝固遅延量の抗凝固剤を含むことで、血餅の形成が遅延し、血餅が早期に形成された場合に、運搬時の衝撃などにより血餅が容器の内壁に衝突するなどして血餅を形成する血球が破壊され、血球内の成分が血清に混入することを防ぐことができる。
本発明における赤血球保存剤のより好ましい態様は、マンニトール、アデニン、グルコース、塩化ナトリウムおよび水を含む。かかる赤血球保存剤として、限定されずに、例えば、MAP液(水中、D−マンニトール 1.457w/v%、アデニン 0.014w/v%、リン酸二水素ナトリウム 0.094w/v%、クエン酸ナトリウム水和物0.150w/v%、クエン酸水和物 0.020w/v%、グルコース 0.721w/v%、塩化ナトリウム 0.497w/v%)、SAG−M(水1L中、塩化ナトリウム 8.77g、無水グルコース 8.2g、アデニン 0.169g、マンニトール 5.25g)、Adsol(R)(AS−1)(水1L中、塩化ナトリウム 9.0g、グルコース一水和物 22.0g、アデニン 0.27g、マンニトール 7.5g)、OPTISOL(R)(AS−5)(水111mL中、塩化ナトリウム 974mg、グルコース一水和物 1.0g、アデニン 33.3mg、マンニトール 586mg)、PAGGSM(水中、マンニトール 55mM、アデニン 1.4mM、グアノシン 1.4mM、リン酸二水素ナトリウム 8mM、リン酸水素二ナトリウム 16mM、グルコース 47mM、塩化ナトリウム 72mM)、RAS2などの既知の製品を用いてもよいが、上記成分を含み、かつ、赤血球保護効果のある他の組成の赤血球保存剤を適宜調製して用いてもよい。上記製品は、全血から分離された赤血球成分を含む液(例えば、濃厚赤血球液等)に添加することを意図したものであり、全血に添加することを想定したものではない。また、本発明における赤血球保存剤として、Nutricel(R)(AS−3)、SAGP−maltose、Erythrosol−4などの他の既知の赤血球保存剤を用いてもよい。
本発明における赤血球保存剤は、好ましくは、抗凝固量以上の抗凝固剤を含まない。ここで、抗凝固量とは、ACD液やCPD液といった血液保存液などに含まれるクエン酸ナトリウムの量に相当する、血液凝固反応が完全に抑制される量を指す。ACD液を全血と混合したときのクエン酸ナトリウムの最終濃度は0.33w/v%であり、ACD液を全血と混合したときのクエン酸ナトリウムの最終濃度は約0.37w/v%である。したがって、本発明における好ましい赤血球保存剤は、抗凝固剤を含まないか、抗凝固剤を含んだとしても、上記のような抗凝固量以上の量は含まない。
全血と赤血球保存剤との混合は、全血に含まれる血球成分を損傷しない任意の手法により行うことができる。かかる手法としては、例えば、全血を収容した容器(例えば採血容器)に赤血球保存剤を添加し静かに混和する手法や、赤血球保存剤を含む容器(例えば採血容器)に全血を注入し静かに混和する手法などが挙げられる。
血液凝固反応は、全血と赤血球保存剤との混合物を所定の時間放置して生じさせることができる。血液凝固反応が行われる時間は特に限定されないが、例えば、12〜120時間、18〜96時間、24〜72時間などであってもよい。また、混合物を冷却することによって反応を抑制することができるため、冷却のタイミング、冷却時間および/または冷却速度を調節することで、血液凝固反応の進行を制御することが可能である。冷却は、典型的には、混合物を約2〜8℃で冷蔵することにより行う。
血液凝固反応を生じさせるステップは、全血を採血場所から血清調製場所へ運搬中に行うことができる。血液凝固反応による血清の生成にはある程度の時間を要するが、この過程を採血場所から血清調製場所への運搬中に行うことで、血清調製場所において血液凝固反応を行う手間を省くことができ、時間のロスを大幅に低減することが可能となる。
血液凝固反応が終了した混合物においては、血餅と血清が分離しており、ここから血清を回収することができる。したがって、本発明の血清調製方法は、前記混合物から血清を回収するステップをさらに含んでもよい。血清の回収は、例えば、分離した血清部分をそのまま他の容器に移すことや、遠心処理により血餅を沈殿させ、上清として得られる血清を他の容器に移すこと、混合物中の血餅をフィルターで除去し、ろ液として得られる血清を他の容器に移すこと、さらには他の既知の血清回収方法などにより行うことができる。微生物などの混入を防ぐため、回収した血清の他の容器への移動は無菌的に行うことが好ましい。また、エンドトキシンなどの不純物の混入を防ぐため、回収した血清の他の容器への移動は液密および/または気密に行うことが好ましい。回収した血清の他の容器に液密および/または気密に移動する手法としては、限定されずに、例えば、下記に詳述する本発明の血清分離器具などの、気密に連結した少なくとも2つの容器の1つに全血と赤血球保存剤との混合物を入れて血清を生成し、分離した血清を連結部分を介して別の容器に移すことが挙げられる。
本発明の別の側面は、赤血球保存剤を含有する採血容器と、該採血容器と気密に連結された血清貯蔵容器とを備えた、血清分離器具に関する。
本発明における採血容器および血清貯蔵容器は、血液の収容が可能なものであれば特に限定されず、例えば、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの軟質熱可塑性樹脂、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレンなどで形成されたものを用いることができる。形態も、材質に応じて、バッグ、チューブなど種々のものを用いることができる。例えば、軟質熱可塑性樹脂はバッグ型の容器に、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレンは、チューブ型の容器にそれぞれ適している。
採血容器と血清貯蔵容器との連結は、気密な連結が達成されれば特に限定されず、例えば、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂などで形成された連結手段、例えば、連結チューブや連結具などを介して行うことができる。血清貯蔵容器またはこれと採血容器とを連結する連結手段には、血清を血清貯蔵容器に移した後に採血容器に残存する血餅成分が、血清貯蔵容器に混入することや、逆に血清貯蔵容器に貯蔵された血清が採血容器に逆流することなどを防ぐためのクレンメ、クリップ、活栓などの閉止装置が備えられていてもよい。
採血容器に含まれる赤血球保存剤の成分や種類などについては、血清調製方法に関して上記したとおりである。赤血球保存剤の含量は、採血容器に採取しようとする血液の量に応じて異なるが、例えば、採血予定量の10〜50v/v%、15〜40v/v%、20〜30v/v%、23〜25v/v%などとすることができる。より具体的には、例えば、採血予定量が200mLの場合は、赤血球保存剤を50mL、採血予定量が400mLの場合は、赤血球保存剤を95mL、採血容器に入れることができる。
採血容器には、採血針が連結されていてもよい。採血針は、採血容器と液密および/または気密に連結していることが好ましく、限定されず、例えば、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂などで形成された血液導入用連結手段、例えば、採血チューブなどを介して連結していてもよい。
本発明の血清分離器具は、本発明の血清調製方法に用いることができる。具体的には、例えば、対象から採取した血液を、赤血球保存剤を含む採血容器に入れ、同容器内で混合し、血液凝固反応を生じさせ、生成された血清を、採血容器に連結された血清貯蔵容器に移すことにより、血清を調製することができる。
本発明の血清分離器具の具体的な一態様を図1に示す。血清分離器具1は、採血容器(採血バッグ)11と血清貯蔵容器(血清バッグ)12とを備えている。血液導入用連結手段(採血チューブ)15の一端には採血針14が接続され、他端は採血バッグ11に接続されている。採血針14はキャップ18により被覆されていてもよい。採血容器11は、血清流通用連結手段(連結チューブ)13を介して血清バッグ12に接続されている。採血バッグ11および/または血清バッグ12には、必要に応じて1個または2個以上の混注ポート16および/または連通可能な流路閉鎖手段17が備えられている。混注ポートや連通可能な流路閉鎖手段は、例えば、特開昭62-258322等に記載されているものを利用することができる。採血バッグ11には、予定採血量に応じた量の赤血球保存剤が含まれている。
図1の血清分離器具は、以下のように使用することができる。採血を開始し、採血チューブ15から採血バッグ11に血液を導入する。採血中、流入した血液を、採血バッグ11に含まれる赤血球保存剤と混合するため、採血バッグ11を定期的に緩やかに揺動する。採血が完了したら、採血バッグ11を転倒して血液と赤血球保存剤を丁寧に混和する。その後、採血バッグ11内で血清を生成させる。必要に応じて採血バッグ11を冷却し血清生成時間を調節してもよい。血清が生成されたら、採血バッグ11を遠心して血清を分離し、分離された血清を連結チューブ13を介して血清バッグ12に移す。血清を血清バッグ12に移し終わったら、連結チューブ13をヒートシールやクレンメなどにより閉鎖し、血清の逆流や血液バッグ11に残存する成分の混入を防止する。
当該態様は本発明の血清分離器具の一例にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。また、本発明において、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意の他の構成と置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
本発明の別の側面は、第一の対象から採取した全血と赤血球保存剤とを混合するステップ、前記ステップで得た全血と赤血球保存剤との混合物において血液凝固反応を生じさせるステップ、前記混合物から血清を回収するステップ、および第二の対象から採取した細胞を、前記回収した血清の存在下でインキュベートするステップを含む、医療用細胞培養物の製造方法(以下、「製造方法」と略す場合もある)、および、当該製造方法によって製造された医療用細胞培養物(以下、「細胞培養物」と略す場合がある)に関する。
本発明の製造方法における、全血と赤血球保存剤とを混合するステップ、血液凝固反応を生じさせるステップおよび血清を回収するステップについては、本発明の血清調製方法に関して上記したとおりである。
本発明において、用語「対象」は、任意の生物個体、好ましくは細胞培養物による治療が可能な多細胞生物、より好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、げっ歯目動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなど)、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウサギなど)、さらに好ましくはヒトの個体を意味する。
本発明において、全血を採取する「第一の対象」と、細胞を採取する「第二の対象」は同一であっても異なっていてもよい。第一の対象と第二の対象が異なる場合、第一の対象と第二の対象は、同じ生物種(同種)であっても、異なる生物種(異種)であってもよい。本発明においては、製造された細胞培養物を医療用途に供する観点から、第一の対象と第二の対象は同種であることが好ましく、同一であることがさらに好ましい。
本発明において「医療用」とは、医療用途、限定されずに例えば、疾患の処置、移植医療、再生医療などの用途に使用されることを意味する。したがって、本発明の「医療用細胞培養物」は、医療製品に求められる種々の基準、例えば、製造工程由来不純物に関する基準などを満たすものである。かかる基準としては、例えば、行政当局によって定められたものが挙げられる。医療は、ヒト医療および獣医療の両方を含む。
本発明の製造方法における細胞は、医療用途に使用される任意の種類のものを包含する。かかる細胞としては、限定されずに、例えば、血液疾患などの治療に用いる造血幹細胞、免疫療法などに用いるリンパ球、樹状細胞などの免疫細胞、シート状細胞培養物を形成し得る細胞、例えば、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞など)、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のものなど)、心筋細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞(例えば、口腔粘膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞など)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞など)、肝細胞(例えば、肝実質細胞など)、膵細胞(例えば、膵島細胞など)、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞等が挙げられる。
本発明の製造方法におけるインキュベートするステップは、細胞培養物の製造に適した任意の条件で行うことができる。インキュベーションに使用する回収した血清の量は、細胞培養物の製造に適する限り特に限定されないが、インキュベーションが、培地などの液体媒体中で行われる場合は、終濃度が例えば、1〜50v/v%、5〜40v/v%、10〜30v/v%などとなるように液体媒体に添加することができる。
インキュベートする細胞は1種類のみであってもよいが、2種類以上の細胞を用いることもできる。本発明の好ましい態様において、細胞培養物を形成する細胞が2種類以上ある場合、最も多い細胞の比率(純度)は、細胞培養物製造終了時において、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。インキュベートする細胞は、対象から採取した細胞をそのまま使用してもよいが、インキュベートする前および/または後に、必要に応じて、増殖、凍結・解凍、純化、分化などの処理を施してもよい。また、対象から採取した細胞は、対象から採取した組織から分離した細胞を含む。
本発明における細胞培養物は、細胞懸濁液や細胞構造体などの、医療用途に適した種々の形態をとることができる。細胞構造体は、シート状、柱状、塊状、栓状などの種々の形状であってよい。本発明においては、治療効果の高さなどの観点から、シート状の細胞構造体、すなわち、シート状細胞培養物が好ましい。「シート状細胞培養物」は、細胞が互いに連結してシート状になったものをいい、典型的には1の細胞層からなるものであるが、2以上の細胞層から構成されるものも含む。細胞同士は、直接(接着分子などの細胞要素を介するものを含む)および/または介在物質を介して、互いに連結していてもよい。介在物質としては、細胞同士を少なくとも物理的(機械的)に連結し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスなどが挙げられる。介在物質は、好ましくは細胞由来のもの、特に、細胞培養物を構成する細胞に由来するものである。細胞は少なくとも物理的(機械的)に連結されるが、さらに機能的、例えば、化学的、電気的に連結されてもよい。
本発明の細胞培養物はスキャフォールド(支持体)を含んでも含まなくてもよいが、生体適合性や治療効果の高さなどの観点から、スキャフォールド(支持体)を含まないことが好ましい。スキャフォールドは、その表面上および/またはその内部に細胞を付着させ、細胞培養物の物理的一体性を維持するために当該技術分野において用いられることがあり、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)製の膜等が知られているが、本発明の好ましい細胞培養物は、かかるスキャフォールドがなくともその物理的一体性を維持することができるものである。また、本発明の細胞培養物は、好ましくは、細胞培養物を構成する細胞由来の物質のみからなり、それら以外の物質を含まない。
本発明の細胞培養物は、種々の疾患、特に組織の異常に関連する疾患の処置に有用である。したがって、一態様において、本発明の細胞培養物は、組織の異常に関連する疾患の処置に用いるためのものである。処置の対象となる組織としては、限定されずに、例えば、心筋、角膜、網膜、食道、皮膚、関節、軟骨、肝臓、膵臓、歯肉、腎臓、甲状腺、骨格筋、中耳、骨髄などが挙げられる。また、処置の対象となる疾患としては、限定されずに、例えば、心疾患(例えば、心筋傷害(心筋梗塞、心外傷)、心筋症など)、角膜疾患(例えば、角膜上皮幹細胞疲弊症、角膜損傷(熱・化学腐食)、角膜潰瘍、角膜混濁、角膜穿孔、角膜瘢痕、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡など)、網膜疾患(例えば、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症など)、食道疾患(例えば、食道手術後(例えば、食道ガンの除去手術後など)の食道の炎症・狭窄の予防など)、皮膚疾患(例えば、皮膚損傷(外傷、熱傷)など)、関節疾患(例えば、変形性関節炎など)、軟骨疾患(例えば、軟骨の損傷など)、肝疾患(例えば、慢性肝疾患など)、膵臓疾患(例えば、糖尿病など)、歯科疾患(例えば、歯周病など)、腎臓疾患(例えば、腎不全、腎性貧血、腎性骨異栄養症など)、甲状腺疾患(例えば、甲状腺機能低下症など)、筋疾患(例えば、筋損傷、筋炎など)、中耳疾患(例えば、中耳炎など)、骨髄疾患(例えば、白血病、再生不良性貧血、免疫不全疾患など)が挙げられる。
本発明の細胞培養物が上記疾患に有用であることは、例えば、特許文献1、非特許文献1、Arauchi et al., Tissue Eng Part A. 2009 Dec;15(12):3943-9、Ito et al., Tissue Eng. 2005 Mar-Apr;11(3-4):489-96、Yaji et al., Biomaterials. 2009 Feb;30(5):797-803、Yaguchi et al., Acta Otolaryngol. 2007 Oct;127(10):1038-44、Watanabe et al., Transplantation. 2011 Apr 15;91(7):700-6、Shimizu et al., Biomaterials. 2009 Oct;30(30):5943-9、Ebihara et al., Biomaterials. 2012 May;33(15):3846-51、Takagi et al., World J Gastroenterol. 2012 Oct 7;18(37):5145-50などに記載されている。
本発明の細胞培養物は、処置の対象となる組織に適用し、これを修復、再生するために使用することもできるが、ホルモンなどの生理活性物質の給源として、処置の対象となる組織以外の部位(例えば、皮下組織など)に移植することもできる(例えば、Arauchi et al., Tissue Eng Part A. 2009 Dec;15(12):3943-9、Shimizu et al., Biomaterials. 2009 Oct;30(30):5943-9など)。また、本発明のシート状細胞培養物を注射可能な大きさに断片化し、これを処置が必要な部位に注射することもできる(Wang et al., Cardiovasc Res. 2008 Feb 1;77(3):515-24)。
本発明の細胞培養物は、種々の追加成分、例えば、薬学的に許容し得る担体や、細胞培養物の生存性、生着性および/または機能などを高める成分、対象疾患の処置に有用な他の有効成分などをさらに含んでいてもよい。かかる追加成分としては、既知の任意のものを使用することができ、当業者はこれらの追加成分について精通している。また、本発明の細胞培養物は、細胞培養物の生存性、生着性および/または機能などを高める成分や、対象疾患の処置に有用な他の有効成分などと併用することができる。
本発明の細胞培養物は、本発明の血清調製方法で調製した血清を用いて、既知の任意の方法により製造することができる。例えば、シート状細胞培養物の製造方法は、特許文献1、特開2010-081829、特開2010-226962、特開2010-226991、特開2011-110368、特開2011-115058、特開2011-172925などに記載されている。
本発明の製造方法の特に好ましい態様は、以下のステップを含む:
(1)対象から採取した全血と赤血球保存剤とを混合するステップ、
(2)前記ステップで得た全血と赤血球保存剤との混合物において血液凝固反応を生じさせるステップ、
(3)前記混合物から血清を回収するステップ、
(4)前記対象から採取した細胞を凍結するステップ、
(5)凍結した細胞を解凍するステップ、
(6)ステップ(5)で解凍した細胞を用いて、ステップ(3)で回収した血清の存在下でシート状細胞培養物を形成するステップ、
(7)形成されたシート状細胞培養物を回収するステップ。
(1)〜(3)のステップについては、すでに上記したとおりである。また、本態様において、全血を採取する対象と、細胞を採取する対象は同一である。
ステップ(4)は、既知の任意の手法により行うことができる。かかる手法としては、限定されずに、例えば、容器内の細胞を、凍結手段、例えば、フリーザー、ディープフリーザー、低温の媒体(例えば、液体窒素等)に供することなどが挙げられる。凍結手段の温度は、容器内の細胞集団の一部、好ましくは全体を凍結させ得る温度であれば特に限定されないが、典型的には0℃以下、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−40℃以下、さらに好ましくは−80℃以下である。また、凍結操作における冷却速度は、凍結解凍後の細胞の生存率や機能を大きく損なうものでなければ特に限定されないが、典型的には4℃から冷却を始めて−80℃に達するまで1〜5時間、好ましくは2〜4時間、特に約3時間かける程度の冷却速度である。具体的には、例えば、0.46℃/分の速度で冷却することができる。かかる冷却速度は、所望の温度に設定した凍結手段に、細胞を含む容器を直接、または、凍結処理容器に収容して供することにより達成することができる。凍結処理容器は、容器内の温度の下降速度を所定の速度に制御する機能を有していてもよい。かかる凍結処理容器としては、既知の任意のもの、例えば、BICELL(R)(日本フリーザー)などを用いることができる。
凍結操作は、細胞を培養液や生理緩衝液などに浸漬させたまま行ってもよいが、細胞を凍結・解凍操作から保護するための凍結保護剤を培養液に加えたり、培養液を凍結保護剤を含む凍結保存液と置換するなどの処理を施したうえで行ってもよい。したがって、本発明の製造方法は、培養液に凍結保護剤を添加するステップ、または、培養液を凍結保存液に置換するステップをさらに含んでもよい。培養液を凍結保存液に置換する場合、凍結時に細胞が浸漬している液に有効濃度の凍結保護剤が含まれていれば、培養液を実質的に全て除去してから凍結保存液を添加しても、培養液を一部残したまま凍結保存液を添加してもよい。ここで、「有効濃度」とは、凍結保護剤が、毒性を示すことなく、凍結保護効果、例えば、凍結保護剤を用いない場合と比べた、凍結解凍後の細胞の生存率、活力、機能などの低下抑制効果を示す濃度を意味する。かかる濃度は当業者に知られているか、ルーチンの実験などにより適宜決定することができる。
凍結保護剤は、細胞に対して凍結保護作用を示すものであれば特に限定されずに、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、セリシン、プロパンジオール、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルデンプン、コンドロイチン硫酸、ポリエチレングリコール、ホルムアミド、アセトアミド、アドニトール、ペルセイトール、ラフィノース、ラクトース、トレハロース、スクロース、マンニトールなどを含む。凍結保護剤は、単独で用いても、2種または3種以上を組み合わせて用いてもよい。
培養液への凍結保護剤の添加濃度、または、凍結保存液中の凍結保護剤の濃度は、上記で定義した有効濃度であれば特に限定されず、典型的には、例えば、培養液または凍結保存液全体に対して2〜20%(v/v)である。しかしながら、この濃度範囲からは外れるが、それぞれの凍結保護剤について知られているか、実験的に決定した代替的な使用濃度を採用することもでき、かかる濃度も本発明の範囲内である。
ステップ(5)は、既知の任意の細胞解凍手法により行うことができ、典型的には、例えば、凍結した細胞を、解凍手段、例えば、凍結温度より高い温度の固形、液状もしくはガス状の媒体(例えば、水)、ウォーターバス、インキュベーター、恒温器などに供したり、または、凍結した細胞を、凍結温度より高い温度の媒体(例えば、培養液)で浸漬することにより達成されるが、これに限定されない。解凍手段または浸漬媒体の温度は、細胞を所望の時間内に解凍できる温度であれば特に限定されないが、典型的には4〜50℃、好ましくは30℃〜40℃、より好ましくは36〜38℃である。また、解凍時間は、解凍後の細胞の生存率や機能を大きく損なうものでなければ特に限定されないが、典型的には2分以内であり、特に20秒以内とすることで生存率の低下を大幅に抑制することができる。解凍時間は、例えば、解凍手段または浸漬媒体の温度、凍結時の培養液または凍結保存液の容量もしくは組成などを変化させて調節することができる。
ステップ(6)は、既知の任意の手法により行うことができる。かかる手法としては、限定されずに、例えば、特許文献1、特開2010-081829、特開2010-226962、特開2010-226991、特開2011-110368、特開2011-115058、特開2011-172925などに記載されたものが挙げられる。シート状細胞培養物を形成するステップは、細胞を培養基材上に播種するステップ、および、播種した細胞をシート化するステップを含んでもよい。
培養基材は、細胞がその上でシート状細胞培養物を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、種々の材質の容器、容器中の固形もしくは半固形の表面などを含む。容器は、培養液などの液体を透過させない構造・材料が好ましい。かかる材料としては、限定することなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ナイロン6,6、ポリビニルアルコール、セルロース、シリコン、ポリスチレン、ガラス、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、金属(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮)等が挙げられる。また、容器は、少なくとも1つの平坦な面を有することが好ましい。かかる容器の例としては、限定することなく、例えば、細胞培養皿、細胞培養ボトルなどが挙げられる。また、容器は、その内部に固形もしくは半固形の表面を有してもよい。固形の表面としては、上記のごとき種々の材料のプレートや容器などが、半固形の表面としては、ゲル、軟質のポリマーマトリックスなどが挙げられる。培養基材は、上記材料を用いて作製してもよいし、市販のものを利用してもよい。好ましい培養基材としては、限定することなく、例えば、シート状細胞培養物の形成に適した、接着性の表面を有する基材が挙げられる。具体的には、親水性の表面を有する基材、例えば、コロナ放電処理したポリスチレン、コラーゲンゲルや親水性ポリマーなどの親水性化合物を該表面にコーティングした基材、さらには、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどの細胞外マトリックスや、カドヘリンファミリー、セレクチンファミリー、インテグリンファミリーなどの細胞接着因子などを表面にコーティングした基材などが挙げられる。また、かかる基材は市販されている(例えば、Corning(R) TC-Treated Culture Dish、Corning製など)。
培養基材は、刺激、例えば、温度や光に応答して物性が変化する材料で表面が被覆されていてもよい。かかる材料としては、限定されずに、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体(例えば、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−エトキシエチルメタクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド等)、N,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体(例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチルメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等)、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体(例えば、1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピペリジン、4−(1−オキソ−2−プロペニル)−モルホリン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピペリジン、4−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−モルホリン等)、またはビニルエーテル誘導体(例えば、メチルビニルエーテル)のホモポリマーまたはコポリマーからなる温度応答性材料、アゾベンゼン基を有する光吸収性高分子、トリフェニルメタンロイコハイドロオキシドのビニル誘導体とアクリルアミド系単量体との共重合体、および、スピロベンゾピランを含むN−イソプロピルアクリルアミドゲル等の光応答性材料などの公知のものを用いることができる(例えば、特開平2-211865、特開2003-33177参照)。これらの材料に所定の刺激を与えることによりその物性、例えば、親水性や疎水性を変化させ、同材料上に付着した細胞培養物の剥離を促進することができる。温度応答性材料で被覆された培養皿は市販されており(例えばUpCell(R)、セルシード製など)、これらを本発明の製造方法に使用することができる。
培養基材は、ステップ(3)で回収した血清でコート(被覆またはコーティング)されていてもよい。血清でコートされた培養基材を用いることにより、より高密度のシート状細胞培養物を形成することができる。「血清でコートされている」とは、培養基材の表面に血清成分が付着している状態を意味する。かかる状態は、限定されずに、例えば、培養基材を血清で処理することにより得ることができる。血清による処理は、血清を培養基材に接触させること、および、必要に応じて所定期間インキュベートすることを含む。
培養基材上でインキュベートする場合、血清は原液で用いても、希釈して用いてもよい。希釈は、任意の媒体、例えば、限定することなく、水、生理食塩水、種々の緩衝液(例えば、PBS、HBSSなど)、種々の液体培地(例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、120、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80−7、DMEM/F12など)等で行うことができる。希釈濃度は、血清成分が培養基材上に付着することができれば特に限定されず、例えば、0.5〜100%(v/v)、好ましくは1〜60%(v/v)、より好ましくは5〜40%(v/v)である。
インキュベート時間も、血清成分が培養基材上に付着することができれば特に限定されず、例えば、1〜72時間、好ましくは4〜48時間、より好ましくは5〜24時間、さらに好ましくは6〜12時間である。インキュベート温度も、血清成分が培養基材上に付着することができれば特に限定されず、例えば、0〜60℃、好ましくは4〜45℃、より好ましくは室温〜40℃である。
インキュベート後に血清を廃棄してもよい。血清の廃棄手法としては、ピペットなどによる吸引や、デカンテーションなどの慣用の液体廃棄手法を用いることができる。本発明の好ましい態様においては、血清廃棄後に、培養基材を無血清洗浄液で洗浄してもよい。無血清洗浄液としては、血清を含まず、培養基材に付着した血清成分に悪影響を与えない液体媒体であれば特に限定されず、例えば、限定することなく、水、生理食塩水、種々の緩衝液(例えば、PBS、HBSSなど)、種々の液体培地(例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、120、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80−7、DMEM/F12など)等で行うことができる。洗浄手法としては、慣用の培養基材洗浄手法、例えば、限定することなく、培養基材上に無血清洗浄液を加えて所定時間(例えば、5〜60秒間)撹拌後、廃棄する手法などを用いることができる。
培養基材への細胞の播種は、既知の任意の手法および条件で行うことができる。培養基材への細胞の播種は、例えば、細胞を培養液に懸濁した細胞懸濁液を培養基材(培養容器)に注入することにより行ってもよい。細胞懸濁液の注入には、スポイトやピペットなど、細胞懸濁液の注入操作に適した器具を用いることができる。
播種した細胞をシート化するステップも、既知の任意の手法および条件で行うことができる。かかる手法の非限定例は、例えば、特許文献1、特開2010-081829、特開2010-226962、特開2010-226991、特開2011-110368、特開2011-115058、特開2011-172925などに記載されている。細胞のシート化は、細胞同士が接着分子や、細胞外マトリックスなどの細胞間接着機構を介して互いに接着することにより達成されると考えられている。したがって、播種した細胞をシート化するステップは、例えば、細胞を、細胞間接着を形成する条件下で培養することにより達成することができる。かかる条件は、細胞間接着を形成することができればいかなるものであってもよいが、通常は一般的な細胞培養条件と同様の条件であれば細胞間接着を形成することができる。当業者であれば、播種する細胞の種類に応じて最適な条件を選択することができる。本明細書において、播種した細胞をシート化するための培養を、「シート化培養」と呼ぶ場合もある。
培養に用いる細胞培養液(単に「培養液」もしくは「培地」と呼ぶ場合もある)は、細胞の生存を維持できるものであれば特に限定されないが、典型的には、アミノ酸、ビタミン類、電解質を主成分としたものが利用できる。培養液としては、細胞培養用の基礎培地をベースにしたものを使用してもよい。かかる基礎培地には、限定されずに、例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、120、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80−7、DMEM/F12などが含まれる。これらの基礎培地の多くは市販されており、その組成も公知となっている。
基礎培地は、標準的な組成のまま(例えば、市販されたままの状態で)用いてもよいし、細胞種や細胞条件に応じてその組成を適宜変更してもよい。したがって、本発明に用いる基礎培地は、公知の組成のものに限定されず、1または2以上の成分が追加、除去、増量もしくは減量されたものを含む。
培養液には、ステップ(3)で回収した血清を添加する。血清は、培養液中の終濃度が、1〜50v/v%、好ましくは5〜40v/v%、より好ましくは10〜30v/v%となるように添加する。
細胞の培養は、当該技術分野で通常なされている条件で行うことができる。例えば、典型的な培養条件としては、37℃、5%COでの培養が挙げられる。培養は任意の大きさおよび形状の容器で行うことができる。細胞培養物の大きさや形状は、培養容器の細胞付着面の大きさ・形状を調整すること、または、培養容器の細胞付着面に、所望の大きさ・形状の型枠を設置し、その内部で細胞を培養することなどにより任意に調節することができる。
ステップ(7)におけるシート状細胞培養物の回収は、シート状細胞培養物が少なくとも部分的に、シート構造を保ったまま、足場となっている培養基材から遊離(剥離)できれば特に限定されず、例えば、タンパク質分解酵素(例えばトリプシンなど)による酵素処理および/またはピペッティングなどの機械的処理によって行うことができる。また、細胞を、刺激、例えば、温度や光に応答して物性が変化する材料で表面を被覆した培養基材上で培養して細胞培養物を形成した場合には、所定の刺激を加えることで、非酵素的に遊離することもできる。
本発明の別の側面は、対象において疾患を処置する方法であって、本発明の細胞培養物の有効量をそれ必要とする対象に投与するステップを含む方法(以下、「処置方法」と略す場合もある)に関する。本発明の処置方法の対象となる組織や疾患は、本発明の細胞培養物について上記したとおりである。また、本発明の処置方法においては、細胞培養物の生存性、生着性および/または機能などを高める成分や、対象疾患の処置に有用な他の有効成分などを、本発明の細胞培養物と併用することができる。
本発明の処置方法は、本発明の製造方法に従って細胞培養物を製造するステップをさらに含んでもよい。本発明の処置方法は、細胞培養物を製造するステップの前に、対象から細胞培養物を製造するための全血、細胞または細胞の給源となる組織を採取するステップをさらに含んでもよい。一態様において、全血および/または細胞もしくは細胞の給源となる組織を採取する対象は、細胞培養物の投与を受ける対象と同一の個体である。別の態様において、全血および/または細胞もしくは細胞の給源となる組織を採取する対象は、細胞培養物の投与を受ける対象とは同種の別個体である。別の態様において、全血および/または細胞もしくは細胞の給源となる組織を採取する対象は、細胞培養物の投与を受ける対象とは異種の個体である。
本発明において、対象は健常であっても、何らかの疾患に罹患していてもよいものとするが、疾患の処置が企図される場合には、典型的には当該疾患に罹患しているか、罹患するリスクを有する対象を意味する。
また、用語「処置」は、疾患の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」の用語は、疾患の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、当該疾患発症の予防または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
本発明において、有効量とは、例えば、疾患の発症や再発を抑制し、症状を軽減し、または進行を遅延もしくは停止し得る量(例えば、細胞培養物に含まれる細胞数、細胞培養物のサイズ、重量など)であり、好ましくは、当該疾患の発症および再発を予防し、または当該疾患を治癒する量である。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は、例えば、マウス、ラット、イヌまたはブタなどの実験動物や疾患モデル動物における試験などにより適宜決定することができ、このような試験法は当業者によく知られている。また、処置の対象となる組織病変の大きさは、有効量決定のための重要な指標となり得る。
本発明の細胞培養物は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、動脈内、門脈内、心室内、腹腔内等の種々の経路から投与することができる。シート状細胞培養物の場合は、投与方法として、典型的には組織への直接的な適用が挙げられるが、シート状細胞培養物の断片を用いる場合には、注射による投与が可能な種々の経路、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、局所、動脈内、門脈内、心室内、腹腔内等の経路から投与してもよい。
投与頻度は、典型的には1回の処置につき1回であるが、所望の効果が得られない場合には、複数回投与することも可能である。
本発明の別の側面は、対象から採取した血清調製用全血を運搬する方法であって、前記全血と赤血球保存剤との混合物を、該混合物において血液凝固反応を生じさせながら運搬するステップを含む方法(以下、「運搬方法」と略す場合もある)に関する。本発明の運搬方法においては、運搬するステップにおいて、対象から採取した血清調製用全血を、同一対象から採取した、医療用細胞培養物の材料となる細胞と一緒に運搬することが好ましい。
本発明の運搬方法における、対象、赤血球保存剤、血液凝固反応、医療用細胞培養物および細胞は、本発明の他の側面について上記したとおりである。医療用細胞培養物の材料となる細胞は、単離された状態であっても、対象から採取した組織に含まれた状態であってもよい。後者の場合、運搬されるものは、外見的には、医療用細胞培養物の材料となる細胞を含んだ、対象から採取した組織である。
本発明における運搬には、血液や、細胞、組織などの運搬に適した既知の任意の手法、例えば、徒歩や車両などによる方法を用いることができる。運搬の際には、全血を収容した容器、例えば、本発明の血清分離器具などを専用の運搬容器に収容して運搬することが好ましい。また、全血を医療用細胞培養物の材料となる細胞と一緒に運搬する場合には、全血と細胞とを同じ運搬容器に収容して運搬することが好ましい。
血液凝固反応を抑制するために全血と赤血球保存剤との混合物を冷却する場合は、冷却手段を有する運搬容器や、冷却手段を有する運搬手段、例えば、冷蔵装置を備えた車両などを使用することができる。冷却手段を有する運搬容器としては、例えば、保冷剤を収容したクーラーボックスや、温度調節機能を備えた容器などが挙げられる。
全血を医療用細胞培養物の材料となる細胞と一緒に運搬する場合、全血と細胞とを同じ温度環境に供してもよいが、必要に応じて両者を異なる温度環境に供することもできる。
本発明の運搬方法は、血清調製用の血液の採取場所と、血清調製場所とが離れている場合に特に有用である。また、調製した血清を医療用細胞培養物の製造に使用する場合は、対象から採取した全血を医療用細胞培養物の材料となる細胞と一緒に運搬することにより、血清と細胞培養物の材料となる細胞とを一括して管理することが可能となり、細胞培養物の製造に他の対象の血清を使用するなどのミスが発生するリスクを低減することができるうえ、細胞培養物製造材料の管理を効率化することができる。
本発明の別の側面は、本発明の血清分離器具を収容する第一の収容部と、対象から採取した細胞を収容する容器を収容する第二の収容部とを備えた、細胞培養物製造材料の運搬容器(以下、「運搬容器」と略す場合もある)に関する。
本発明の運搬容器は、典型的には、対象から採取した全血および細胞培養物の材料となる細胞を、全血および細胞の採取場所から、細胞培養物の製造場所へ運搬するために用いる。したがって、本発明の運搬容器は、本発明の運搬方法に有利に用いることができる。
本発明の運搬容器は、血液や細胞の運搬に適した任意の素材で形成されていてもよいが、冷蔵装置などの冷所に収容して運搬することが意図される場合は、熱伝導性の高い素材、例えば、限定されずにアルミニウムなどの金属や金属合金などで形成することができ、一方、運搬容器に備えられた冷却手段で血清分離器具および細胞を収容する容器を冷却することが意図される場合は、断熱性の高い素材で形成することができる。
本発明の運搬容器は、全血や細胞を衝撃から保護するため、収容部に運搬時の衝撃を吸収する緩衝材を備えていてもよい。収容部の緩衝材は、収容する血清分離器具や細胞収容容器に当接するように配置することができる。例えば、血清分離器具が図1に示すような採血バッグを含み、連結チューブなどの接続部が上になるように直立させて収容部に収容する場合は、採血バッグの動揺を抑えるために、採血バッグと収容部内壁との空隙(第一の収容部が、遠心機に装着できる、着脱可能なバケットを備えている場合は、採血バッグとバケット内壁との空隙)などに緩衝材を充填することができる。緩衝材としては、既知の任意のものを使用することができる。
本発明の運搬容器は、自立式で、転倒しにくい構造であることが好ましい。また、収容部は、開閉可能な蓋、扉などの遮蔽部材や、引出し構造により、収容される血清分離器具や細胞収容容器を外部環境から遮蔽可能であることが好ましい。
本発明の運搬容器は、収容部内の温度を制御する温度制御手段を備えていてもよい。温度制御手段は、既知の任意のものを用いてもよいが、収容部内の温度を約2℃〜約37℃の範囲で調節できるものが好ましい。温度制御手段としては、例えば、サーモスタットにより制御されたペルチエ素子を備えた小型の冷却装置などを用いることができる。
本発明の運搬容器は、運搬容器を持ち上げて移動するためのハンドルなどの、運搬操作に有用な種々の構造や部材を備えていてもよい。
本発明の運搬容器において、第一の収容部と第二の収容部とは、一体不可分となっていても、互いに分離可能であってもよい。分離可能な態様において、各収容部は、自立式で、転倒しにくい構造であることが好ましい。分離可能な態様は、第一の収容部と第二の収容部とを一緒に運搬した後、各収容部を異なる場所で利用する場合に有用である。
本発明の運搬容器は、第一の収容部に収容される血清分離器具を、血清分離器具に触れずに遠心機に装着できる構造を有していてもよい。例えば、第一の収容部が、遠心機に装着できる、着脱可能なバケットを備え、血清分離器具を当該バケットに収容する構造を有していてもよい。この場合、第一の収容部は、例えば、バケットを固定するための、バケットの外形に適合した空隙を備えていてもよく、バケットに当接当該空隙の表面にはバケットの動揺を抑制する緩衝材が設けられていてもよい。第一の収容部と第二の収容部とが分離可能な態様においては、第一の収容部が、そのまま遠心機に装着可能な構造を有していてもよい。かかる構造を有することにより、血清分離器具を遠心機に設置する際に血清分離器具を直接把持して操作することがなくなり、血清分離器具内に形成された血餅に加わる衝撃を低減し、溶血などのリスクを抑制することができる。
本発明の運搬容器により、対象から採取した全血と、医療用細胞培養物の材料となる細胞とを一体として扱うことができるため、全血および細胞のいずれか一方の紛失や、細胞培養物の製造に他の対象の血清を使用するなどのミスが発生するリスクを低減することができるうえ、細胞培養物製造材料の管理を効率化することができる。
本発明の運搬容器の具体的な一態様を図2に示す。運搬容器2は、第一の収容部21と第二の収容部22を備えている。第一の収容部21には、血清分離器具1を収容するバケット213が着脱可能に取り付けられている。バケット213は、遠心機への取付部材214を有し、バケット213を第一の収容部21から取り外し、そのまま遠心機に取り付けることが可能である。血清分離器具1は、連結チューブなどの接続部を上にして、直立した状態でバケット213に収容される。バケット213の内部には、血清分離器具1とバケット内壁との間の空隙に緩衝材212が充填されている。第一の収容部21には蓋211が備えられており、内部を外界から遮蔽することができる。第一の収容部21には、運搬時に把持するハンドル23が備えられている。また、第一の収容部21の側面には、収容した全血および細胞に関する情報を表示する表示部24が備えられている。第二の収容部22は、シャーレ型の細胞収容容器3の収容に適した形状を有しており、第二の収容部22の内壁と、細胞収容容器3との間の空隙に緩衝材222が充填されている。第二の収容部22には蓋221が備えられており、内部を外界から遮蔽することができる。第一の収容部21と第二の収容部22とは、連結具25で分離可能に連結されている。運搬容器2は、冷蔵装置などの冷所に収容して運搬すること意図したものであり、冷却手段は備えておらず、熱伝導性の高い素材で構成されている。
当該態様は本発明の運搬容器の一例にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。また、本発明において、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意の他の構成と置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
以下に、本発明を実施例を参照してより詳細に説明するが、これは本発明の特定の具体例を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 血清の調製
ヒト対象から全血を100mL採取し、これを採血容器(テルモ分離バッグ、テルモ製)に導入した。採血容器にMAP液(テルモ血液バッグMAP液、テルモ株式会社)を全血に対して4.5〜19v/v%の濃度で注入し、緩やかに転倒混和した。採血容器を5℃に冷蔵したまま、24〜72時間、徒歩および車両で輸送した。血清調製場所に到着後、採血容器内の状況を観察すると、血餅が形成され、血清が分離していることが確認された。また、可視的な溶血は認められなかった。採血容器を遠心機にて、1200rpmで10分間遠心し、上清として分離された血清を別の容器に移し、使用するまで−30℃で保存した。なお、48時間の冷蔵輸送後に得られた血清中のHb濃度を、MAP液を19v/v%の濃度で添加した血液と、MAP液未添加血液とで比較したところ、MAP液未添加血液由来の血清では12.0mg/dLであったのに対し、MAP液添加血液由来の血清では2.0mg/dLと、Hb濃度による評価でも溶血が認められなかったことが確認された。
実施例2 シート状細胞培養物の作製
全血を採取したのと同じ対象から採取した筋組織から分離した骨格筋芽細胞を、300,000個/cm以上の濃度で培養皿(UpCell(R)、セルシード製)に播種し、実施例1で調製した血清を20%含むDMEM/F12培地中、37℃、5%COで12時間培養し、単層のシートを形成させた後、培養皿の温度を20℃に降下させてシート状細胞培養物を培養皿から剥離した。剥離したシート状細胞培養物は、白色、円形であり、破れがなく、臨床適用可能な品質であることが外観検査にて確認された。
1 血清分離容器
11 採血容器(採血バッグ)
12 血清貯蔵容器(血清バッグ)
13 連結手段(連結チューブ)
14 採血針
15 血液導入用連結手段(採血チューブ)
16 混注ポート
17 流路閉鎖手段
18 キャップ
2 運搬容器
21 第一の収容部
211 蓋
212 緩衝材
213 バケット
214 取付部材
22 第二の収容部
221 蓋
222 緩衝材
23 ハンドル
24 表示部
25 連結具
3 細胞収容容器

Claims (12)

  1. 全血と赤血球保存剤とを混合するステップ、および
    前記ステップで得た全血と赤血球保存剤との混合物において血液凝固反応を生じさせるステップ、
    を含む、血清を調製する方法。
  2. 赤血球保存剤が、糖アルコールおよび/または二糖類と、グルコースと、アデニンおよび/またはイノシンと、塩化ナトリウムと、抗凝固剤とを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 血液凝固反応が12〜120時間の間に行われる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 血液凝固反応が、混合物の温度調節により制御される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 血液凝固反応が、混合物を採血場所から血清調製場所へ運搬中に行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 赤血球保存剤を含有する採血容器と、該採血容器と気密に連結された血清貯蔵容器とを備えた、血清分離器具。
  7. 第一の対象から採取した全血と赤血球保存剤とを混合するステップ、
    前記ステップで得た全血と赤血球保存剤との混合物において血液凝固反応を生じさせるステップ、
    前記混合物から血清を回収するステップ、および
    第二の対象から採取した細胞を、前記回収した血清の存在下でインキュベートするステップ
    を含む、医療用細胞培養物の製造方法。
  8. 請求項7に記載の方法で製造された医療用細胞培養物。
  9. 対象において疾患を処置する方法であって、請求項8に記載の細胞培養物の有効量をそれ必要とする対象に投与するステップを含む、前記方法 。
  10. 対象から採取した血清調製用全血を運搬する方法であって、前記全血と赤血球保存剤との混合物を、該混合物において血液凝固反応を生じさせながら運搬するステップを含む、前記方法。
  11. 運搬するステップにおいて、全血が、対象から採取した、医療用細胞培養物の材料となる細胞と一緒に運搬される、請求項10に記載の方法。
  12. 請求項6に記載の血清分離器具を収容する第一の収容部と、対象から採取した細胞を収容する容器を収容する第二の収容部とを備えた、細胞培養物製造材料の運搬容器。
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