JP2015150574A - セラミック焼結体の製造方法およびセラミック焼結体 - Google Patents

セラミック焼結体の製造方法およびセラミック焼結体 Download PDF

Info

Publication number
JP2015150574A
JP2015150574A JP2014025101A JP2014025101A JP2015150574A JP 2015150574 A JP2015150574 A JP 2015150574A JP 2014025101 A JP2014025101 A JP 2014025101A JP 2014025101 A JP2014025101 A JP 2014025101A JP 2015150574 A JP2015150574 A JP 2015150574A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molded body
ceramic
graft
body element
sintered body
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014025101A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6347400B2 (ja
Inventor
英子 福島
Hideko Fukushima
英子 福島
伊達 正芳
Masayoshi Date
正芳 伊達
山本 剛
Takeshi Yamamoto
剛 山本
周平 岩垣
Shuhei Iwagaki
周平 岩垣
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP2014025101A priority Critical patent/JP6347400B2/ja
Priority to US14/907,762 priority patent/US10040116B2/en
Priority to EP15748444.5A priority patent/EP3106245A4/en
Priority to PCT/JP2015/053791 priority patent/WO2015122445A1/ja
Publication of JP2015150574A publication Critical patent/JP2015150574A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6347400B2 publication Critical patent/JP6347400B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】従来のインサート成形法の接合面を起点とする割れや亀裂の課題を解決し、内部に複雑な冷却孔を有するタービン翼などの中空構造を有する鋳物の鋳造に用いるセラミック焼結体の製造方法およびセラミック焼結体を提供する。【解決手段】セラミック粉末とバインダを含む成形材料を用いて成形体要素を形成する工程、成形体要素を少なくとも一つ型内に配置し、型内にセラミック粉末とバインダを含む成形材料を射出し、成形体要素にグラフト成形体要素をグラフト成形したセラミック成形体を形成する工程、セラミック成形体を脱脂焼結してセラミック焼結体を形成する工程を含み、グラフト成形体要素がグラフト成形される成形体要素のグラフト接合面の表面粗さをRaで2μm以上に形成するセラミック焼結体の製造方法。その製法による、常温曲げの強制破壊形態がグラフト接合面に起因しない破壊形態であるセラミック焼結体。【選択図】図2

Description

本発明は、中空構造を有する鋳物を鋳造する際に用いられるセラミック焼結体およびその製造方法に関する。
従来、中空構造を有する鋳物は多方面で使用されている。例えば、ガスタービンのタービン翼に設けられている冷却孔は特に、形状が複雑であり、高い寸法精度が必要とされる中空構造として知られている。ある種のタービン翼は、ダブテイル部(継手部)から翼部まで、冷却孔が設けられる。また、大きなタービン翼は、さらにシャンク部(胴部)を有し、ダブテイル部からシャンク部を通って翼部まで、冷却孔が設けられる。このような中空構造を有する鋳物は、ロストワックス精密鋳造法などを適用し、その中空構造に対応する形状のセラミック焼結体を中子に用いて製造することができる。
図1に、中空構造を有する鋳物を鋳造する際に用いられるセラミック焼結体の一例として、タービン翼のダブテイル部(継手部)から翼部に設けられる冷却孔に対応する形状を有するセラミック焼結体(セラミック中子1)を示す。このセラミック中子1は、プラットフォーム部4によって継がる翼部2とダブテイル部3に大別できる。翼部2には、特に薄肉に形成されたピンフィン部5を有し、このピンフィン部5に限らず、曲面や曲線を含む形状やテーパ状の厚みを有する部分が多くある。なお、中空構造を有する鋳物が、シャンク部を有するタービン翼である場合は、そのシャンク部に対応する形状を有するセラミック中子を使用することができる。
このようなタービン翼の冷却孔などの複雑な中空構造に対応する形状を有するセラミック焼結体を、複数の個片を接合して一体に形成する技術が開示されている。例えば、特許第3802095号公報(特許文献1)には、鋳物が後縁部分と本体部分とを有する中空のガス冷却されるガスエンジンタービンブレイドであって、そのブレイドの後縁部分に対応する第1コア部分と、本体部分に対応する第2コア部分とを接合して一体に形成する技術が開示されている。この第1コア部分と第2コア部分は、一方のコア部分に舌状要素、他方のコア部分に溝要素が設けられ、互いが噛み合うことにより接合される(特許文献1の図2等)。また、第1コア部分と第2コア部分の熱的な特性が略同等である場合は、上述した噛み合い要素を設けずに、熱可塑性バインダを加熱して接着剤として用いて接合できるとされる(特許文献1の請求項15等)。このようにして接合された第1コア部分と第2コア部分は、そのまま一体で焼結されてセラミック焼結体に形成される。
加えて、特許文献1(請求項15等)には、接合面に一方の噛み合い要素(例えば舌状要素)を有する第1コア部分を射出成形用型内に載置し、その型内の残余部分に第2コア部分に対応するセラミック材を射出することにより、一体のセラミック成形体に形成する技術(以下、「インサート成形法」という。)が開示されている。このようなインサート成形法によれば、噛合要素の箇所において、第1コア部分に対して後から射出成形した第2コア部分を隙間のない状態で接合することができる。従って、第1コア部分と第2コア部分とが一体に形成された焼結前のセラミック成形体、あるいは焼結後のセラミック焼結体において、第1コア部分と第2コア部分の分離や相対位置の狂いが起こり難くなると考えられる。
特許第3802095号公報
本発明者は、内部に複雑な中空構造(冷却孔)を有するガスタービン用鋳造ブレード(タービン翼)を製造するに際し、図1に示す形状のセラミック焼結体(セラミック中子1)を特許文献1に開示されるインサート成形法を適用して形成する検討を行った。
具体的には、図1に示す形状のセラミック中子を複数の個片に区分して形成するに際し、図2に示すセラミック成形体10のように、翼部12のピンフィン部15を特許文献1の第1コア部分に相当する個片(以下、「ピンフィン部コア16」という。)と考えて接合面11a、11b(接合部11)で区分し、その他の翼部12、ダブテイル部13、プラットフォーム部14を含む残余部分を特許文献1の第2コア部分に相当する部分(以下、「本体部コア17」という。)と考えた。
ピンフィン部コア16は、その形状に対応するキャビティを備えた射出成形用型内に、セラミック粉末とバインダを含む成形材料を射出して形成した。その際、図3に示すように、残余部分である本体部コア17が接合されるピンフィン部コア16(図3中に斜線で示す)の接合面11a、11bには、噛み合い要素としての舌状の凸部16aを形成した。これにより、接合面11a、11b(接合部11)において、ピンフィン部コア16の凸部16aと本体部コア17の凹部17aとが、互いに噛み合う構造で一体になる。なお、接合面11a、11bを含む全表面が型のキャビティ面の転写により形成されるピンフィン部コア16は、その表面の表面粗さが射出成形用型としては標準的なRaで1μm以下になっていた。
また、セラミック成形体10において残余部分である本体部コア17は、ピンフィン部コア16を射出成形用型内の所定の位置に配置し、ピンフィン部コア16と同じ成形材料を用いてインサート成形して形成した。つまり、ピンフィン部コア16(射出成形用型内に配置されるもの、以下「成形体要素」ともいう)に対して本体部コア17(成形体要素を配置した射出成形型内に成形材料を射出して形成されるもの、以下「グラフト成形体要素」ともいう)をインサート成形(成形体要素にグラフト成形体要素をインサート成形することを以下、「グラフト成形」ともいう)することにより、ピンフィン部コア16の凸部16aと本体部コア17の凹部17aとが互いに噛み合って接合された構成を有する、図1に示すセラミック中子1に対応する形状を有する一体のセラミック成形体10を形成した。
次いで、上述のように形成したセラミック成形体10を、適切と考える処理条件により脱脂および焼結することにより、セラミック焼結体すなわちセラミック中子に形成した。この脱脂および焼結において問題となったのは、セラミック成形体10からハンドリングできる程度にバインダを除去した状態の脱脂体に発生した亀裂や割れである。割れに近い亀裂の形態を模式的に図4に示すが、この脱脂体に発生した割れ18の起点は、ピンフィン部コア16と本体部コア17の図4中に点線で示す接合部(接合面11a)の端部11cおよびその近傍であることが確認された。この例の他、同様に脱脂した後の脱脂体において割れに到らない亀裂が発生したり、脱脂および焼結した後のセラミック焼結体において割れていたりといった不具合が発生することがあった。こうした脱脂体や焼結体の割れや亀裂の起点は、概ね成形体要素とグラフト成形体要素との接合面やその端部であった。
本発明の目的は、従来のインサート成形法を適用し、上述した成形体要素とグラフト成形体要素との接合面を起点とする割れや亀裂の課題を解決し、内部に複雑な冷却孔を有するタービン翼などの中空構造を有する鋳物を鋳造する際に用いるセラミック焼結体の製造方法およびセラミック焼結体を提供することである。
本発明者は、セラミック焼結体を常温曲げによって強制破壊し、成形体要素とグラフト成形体要素の接合面が略露出しなかったものについて調査し、グラフト成形体要素を接合する成形体要素の接合面が粗化していると機械的強度(接合強度)が高まることを見出し、本発明に想到した。
すなわち本発明のセラミック焼結体の製造方法は、セラミック粉末とバインダを含む成形材料を用いて成形体要素を形成する工程と、前記成形体要素を少なくとも一つ射出成形型内に配置し、前記射出成形型内の空間にセラミック粉末とバインダを含む成形材料を射出して、前記成形体要素に対してグラフト成形体要素をグラフト成形したセラミック成形体を形成する工程と、前記セラミック成形体を脱脂および焼結してセラミック焼結体を形成する工程と、を含み、前記グラフト成形体要素がグラフト成形される前記成形体要素のグラフト接合面の表面粗さをRaで2μm以上に形成する。
本発明のセラミック焼結体の製造方法において、前記グラフト成形体要素をグラフト成形する前に、前記成形体要素に含まれるバインダの融点よりも5℃以上低い温度に前記成形体要素の温度を高めておくことが好ましい。
本発明のセラミック焼結体の製造方法は、中空構造を備えたタービン翼の鋳造に使用され、前記タービン翼の前記中空構造に対応する形状を備えたセラミック中子の製造方法として適用することができる。その場合、前記成形体要素の少なくとも一部は、前記タービン翼の翼部の前記中空構造に対応する形状に形成されていることが好ましい。
上述した本発明のセラミック焼結体の製造方法により、内部に複雑な冷却孔を有するタービン翼などの中空構造を有する鋳物を鋳造する際に用いるセラミック焼結体を形成することができる。
すなわち、本発明のセラミック焼結体は、セラミック粉末とバインダを含む成形材料により形成された少なくとも一つの成形体要素と、前記成形体要素に対してグラフト成形されたグラフト成形体要素と、を含むセラミック成形体が脱脂および焼結されたセラミック焼結体であって、常温(25℃)曲げによる強制破壊形態が前記成形体要素と前記グラフト成形体要素とのグラフト接合面に起因しない破壊形態である。
また、前記成形体要素の少なくとも一つは、前記セラミック成形体の所定形状の外周の一部を備えていることが好ましい。
本発明のセラミック焼結体は、中空構造を備えたタービン翼の鋳造に使用され、前記タービン翼の前記中空構造に対応する形状を備えたセラミック中子に適用することができる。また、前記成形体要素の少なくとも一部が、前記タービン翼の翼部の前記中空構造に対応する形状に対応していることが好ましい。
ここで、「グラフト」は「接ぐ物」または「接がれる物」もしくは「肉盛物」の意を含み、本発明でいう「グラフト成形体要素」は、予め形成されている1以上の成形体要素に対して接合される新たに形成される成形体要素を意図する。また、本発明でいう「グラフト成形」は、射出成形用型のキャビティ内に1以上の成形体要素を配置して成形材料を注入することにより、キャビティ内の既存の成形体要素に対して新たな成形体要素(グラフト成形体要素)を付加する射出成形法を意図する。
本発明によれば、特に上述したグラフト接合面において割れや亀裂のない複雑な形状を有するセラミック焼結体を得ることができる。よって、本発明を適用し、鋳物の複雑な中空構造に対応する形状を有するセラミック焼結体を得て、これをセラミック中子として用いることにより、例えば内部に複雑な冷却孔を有するタービン翼などの中空構造を有する鋳物を鋳造する際に、セラミック中子の割れや亀裂に起因する凸欠陥などの発生を抑制することができる。
セラミック中子の一例(外観)を模式的に示す図である。 図1に示すセラミック中子を2つの個片で区分するときの一例(外観)を模式的に示す図である。 図2中に線分AAで示す箇所の断面において、ピンフィン部コア16の接合面11a近傍を示す模式図である。 従来(特許文献1)のインサート成形法を適用したセラミック成形体(脱脂体)に発生した割れの一例を模式的に示す図である。 実施例1のセラミック成形体および脱脂成形体の接合部の近傍を示す図(写真)である。 比較例1の脱脂成形体の接合部の近傍を示す図(写真)である。 実施例1のセラミック焼結体の強制破壊形態の一例を示す図(写真)である。 比較例2のセラミック焼結体の強制破壊形態の一例を示す図(写真)である。
まず、本発明のセラミック焼結体の製造方法に関して説明する。
本発明のセラミック焼結体は、セラミック粉末とバインダを含む成形材料を用いて成形体要素を形成する工程と、前記成形体要素を少なくとも一つ射出成形型内に配置し、前記射出成形型内の空間にセラミック粉末とバインダを含む成形材料を射出して、前記成形体要素に対してグラフト成形体要素をグラフト成形したセラミック成形体を形成する工程と、前記セラミック成形体を脱脂および焼結してセラミック焼結体を形成する工程と、を含む。
上述した本発明のセラミック焼結体の製造方法における重要な特徴は、少なくとも一つの前記成形体要素に対してグラフト成形体要素をグラフト成形するに際し、前記成形体要素の前記グラフト成形体要素がグラフト成形されるグラフト接合面の表面粗さをRaで2μm以上に形成することである。既存の成形体要素側の接合面、すなわちグラフト成形体要素がグラフト成形されるグラフト接合面を粗化し、具体的にはグラフト接合面の表面粗さをRaで2μm以上に形成する。
このグラフト接合面の粗化により、その粗化分だけ成形体要素に対するグラフト成形体要素の接合に寄与する実質的な表面積を大きくすることができる。そして、その接合面における表面積の増加分だけ成形体要素に対するグラフト成形体要素の接合強度を高めることができる。したがって、成形体要素とグラフト成形体要素の接合面やその端部の接合構造が強固になり、従来のインサート成形法において問題となっていた脱脂体や焼結体における接合面やその端部を起点とする割れや亀裂の発生を抑制することができる。
(成形体要素形成工程)
本発明のセラミック焼結体の製造方法において、前記「セラミック粉末とバインダを含む成形材料を用いて成形体要素を形成する工程」とは、従来の射出成形法を適用したセラミック成形体の形成プロセスと同等と考えてよい。具体的には、射出成形する個々の前記成形体要素に合せて、所定のセラミック粉末とバインダ原料を準備し、それらを混合して射出成形用の成形材料にするプロセスと、個々の前記成形体要素に対応する形状を有するキャビティを備えた個々の射出成形用型を準備し、そのキャビティ内に加熱して好適に軟化させた所定の前記成形材料を射出(注入)し、型内で固化した成形体を取り出して個々の前記成形体要素を得るプロセスを含む。
ここで重要になるのは、グラフト成形体要素との接合に寄与する成形体要素のグラフト接合面の表面積をより大きく形成することであり、そのために成形体要素のグラフト接合面の表面粗さをRaで2μm以上に形成する。なお、本発明の技術思想からして、グラフト接合面の表面粗さの上限値を規定する必要はないと考えるが、実用上、成形材料に用いるセラミック粉末の平均粒径(一般的にはメジアン径d50で代表される)と同等であることが好ましく、グラフト成形時のグラフト接合面における気泡の残留を十分に抑制することができる。また、成形体要素のグラフト接合面の表面粗さをRaで2μm以上に形成する手段としては、例えば、適切なサンドペーパーや研磨剤を用いて射出成形体の成形肌を研磨する手段は簡易で好ましい。その他、射出成形用型のキャビティ内のグラフト接合面に対応する面を、成形肌への転写を考慮した上で、予め所定の表面粗さに形成しておく手段などの適用が可能である。
また、成形体要素とグラフト成形体要素の接合をより強固にするために、従来のように噛み合い要素としての凸部または凹部を備えることが好ましい。噛み合い要素の形成手段としては、例えば、射出成形体のグラフト接合面に対応する部分を、所定の凸部または凹部の形状に機械加工する手段の適用が可能である。また、予め射出成形用型のキャビティ内のグラフト接合面に対応する部分を、所定の凸部または凹部の形状に形成しておく手段が適用可能であり、個々の射出成形体を機械加工する必要がないため好ましい。
(セラミック成形体形成工程)
本発明のセラミック焼結体の製造方法において、前記「前記成形体要素を少なくとも一つ射出成形型内に配置し、前記射出成形型内の空間にセラミック粉末とバインダを含む成形材料を射出して、前記成形体要素に対してグラフト成形体要素をグラフト成形したセラミック成形体を形成する工程」とは、上述した成形体要素を形成する工程と同様に、所定のセラミック粉末とバインダ原料を準備し、それらを混合して射出成形用の成形材料にするプロセスと、前記セラミック成形体に対応する形状を有するキャビティを備えた射出成形用型を準備し、そのキャビティ内に加熱して好適に軟化させた前記成形材料を注入し、型内で固化した成形体を取り出してセラミック成形体を得るプロセスを含む。この際、キャビティ内の所定の位置に既製の成形体要素を配置し、そのキャビティの残余空間に成形材料を射出(注入)してそのまま固化させた後に取り出すグラフト成形により、既製の成形体要素に対して新たにグラフト成形体要素を接合して一体化し、所定の形状を有するセラミック成形体を得る。
この工程(2)において好ましくは、グラフト成形体要素をグラフト成形する前に、成形体要素の温度を、キャビティ内に配置する成形体要素に含まれるバインダの融点よりも5℃以上低い温度に、予め高めておくことである。キャビティ内に配置する既製の成形体要素の温度を高めておいた場合、その成形体要素に含まれるバインダが常温時よりも軟化し、グラフト成形される成形材料に含まれるバインダとの温度差が小さくなるため、成形体要素に含まれるバインダとグラフト成形される成形材料に含まれるバインダとの接着性が高まる。このため、その接着性が高まった分だけ成形体要素とグラフト成形体要素の接合面やその端部の接合構造がさらに強固になり、接合強度を大きくすることができる。
上述したように成形体要素の温度を予め高めておくと、成形体要素に含まれるバインダが膨張し、成形体要素が変形する可能性がある。特に、成形体要素の温度をバインダの融点よりも5℃低い温度を超えて、つまり「バインダの融点−5」℃を超えて高めると、成形体要素に含まれるバインダの軟化による流動性が大きくなるため、成形体要素の保形性が損なわれることがある。例えば、成形体要素が熱膨張変形してもセラミック成形体の形状精度への影響が少ない後述する内包成形の場合には、バインダ融点下5℃が好ましい。また、成形体要素の一部またはグラフト接合面を除く全部を露出させてセラミック成形体に形成する場合には、成形体要素の熱膨張変形を考慮し、バインダの融点よりも10℃以上低い温度、つまり「バインダの融点−10」℃以下が好ましい。バインダの種類によっては成形体要素の熱膨張変形の可能性が高まることがあるため、バインダの融点よりも15℃以上低い温度、つまり「バインダの融点−15」℃以下が好ましく、バインダの融点よりも20℃以上低い温度、つまり「バインダの融点−20」℃以下がより好ましい。
また、形成しようとしているセラミック成形体の所定形状の外周の一部を備える成形体要素を使用することが好ましい。つまり、上述した工程(1)において、成形体要素の少なくとも一部または全部を、セラミック成形体の所定形状の外周の一部を備えるように形成しておくことが好ましい。特に、セラミック成形体における薄肉部分は、射出成形時に成形材料の不廻りが発生しやすいため、また射出成形後に変形しやすいため、その薄肉部分の一部または全部の形状を備えた成形体要素を使用することが好ましい。
また、成形体要素の外周をセラミック成形体の外周の一部に使用せず、その成形体要素を内部に包み込むように成形体材料を射出(注入)することにより、成形体要素の周りにグラフト成形体要素を形成する(内包成形)ことができる。内容成形の場合は、成形体要素の全周がグラフト接合面になるため、その全周にグラフト成形によりグラフト成形体要素を接合することになる。形成しようとするセラミック成形体に特段の厚肉部分がある場合は、その肉厚部分に気泡が巻き込まれて残留しやすいため、上述した内包成形のt形容により、セラミック成形体の厚肉部分を容易に形成することができる。また、そのような肉厚部分は焼結による収縮量が大きく形状精度が低下しやすいため、その厚肉部分にグラフト成形体要素に用いた成形材料よりも収縮量が小さい別の成形材料を用いた成形体要素を予め内包することが好ましい。
このような構成では、成形体要素の全表面がグラフト接合面に相当することになるが、そのような成形体要素であっても全表面の表面粗さをRaで2μm以上に形成することが好ましい。また、接合面が大きいため、成形体要素の表面の適切な一部表面の表面粗さを選択的にRaで2μm以上に形成することも可能である。その場合、表面粗さをRaで2μm以上に形成した前記一部表面以外については粗化しないことも可能である。これは、接合に寄与する表面積を大きくする技術的観点からして、グラフト成形に必要な一部表面が粗化されていることによって、本発明の作用効果を十分に得ることができるからである。
(セラミック焼結体形成工程)
本発明のセラミック焼結体の製造方法において、前記「前記セラミック成形体を脱脂および焼結してセラミック焼結体に形成する工程」とは、従来の射出成形法において適用されるセラミック成形体の脱脂プロセスおよび焼結プロセスと同等と考えてよい。但し、グラフト接合部の機械的強度や、成形材料を構成するセラミック粉末やバインダなどの諸元を考慮し、より好適な脱脂条件および焼結条件を見出すことが好ましい。セラミック粉末に係る諸元としては、例えば、セラミック粉末を構成する各種粉末の化学成分やBET比表面積、配合比、粒径分布などがある。また、バインダなどに係る諸元としては、例えば、成形材料中のバインダや他の添加剤の配合比、バインダなどの軟化温度、融点、分解温度、熱膨張特性、各種溶媒への可溶性などがある。
この工程(3)において好ましくは、セラミック成形体の脱脂プロセスを、バインダが分解し始めてから所定の目標温度に到達するまでの低温脱脂工程と、この低温脱脂工程よりも高い温度による高温脱脂工程との2段階に分けることが好ましい。この場合、高温脱脂からそのまま焼結を行うこともできる。ここで、低温脱脂とは、バインダの分解開始温度を超えて、バインダが着火されず、バインダが容易に分解される目標温度まで雰囲気温度を昇温する過程において、あるいは昇温から目標温度到達後にその温度を保持する過程において、セラミック成形体に含まれるバインダを除去する処理を意図する。また、高温脱脂とは、セラミック粉末が焼結されない範囲で低温脱脂よりも雰囲気温度の目標を高く設定し、その目標温度に昇温する過程において、あるいは前記目標温度に到達後に適正な時間保持する過程において、低温脱脂を経て半脱脂状態になったセラミック成形体に残存するバインダをさらに除去する処理を意図する。
脱脂プロセスにおいて、セラミック成形体に含まれるバインダは、昇温に伴って膨張し、分解温度を超えると急激に膨張しつつ気化し始める。このため、セラミック成形体をバインダの気化温度を超える高温域に急激に昇温すると、セラミック成形体の大きな変形を誘発し、グラフト接合面を含むセラミック成形体が予測外の好ましくない形状に形成される可能性が高まる。この対策として、第1段階の低温脱脂によりセラミック成形体の変形を抑制しながらバインダを融かして半脱脂状態とし、第2段階の高温脱脂により内部に空隙が増えた半脱脂状態からその形状が崩壊しない程度に残存するバインダを気化させて略脱脂状態のセラミック成形体(脱脂成形体)を得ることが好ましいのである。この2段階の脱脂プロセスは、セラミック成形体の寸法が大きくなるほど効果的である。
以上述べた本発明のセラミック焼結体の製造方法は、中空構造を備えたタービン翼の鋳造に使用され、前記タービン翼の前記中空構造に対応する形状を備えたセラミック中子の製造方法として適用することができる。また、この場合、前記成形体要素の少なくとも一部は、前記タービン翼の翼部の前記中空構造に対応する形状に形成されていることが好ましい。上述したタービン翼の翼部または翼部の一部分は特に薄肉部分であるため、その薄肉部分の一部または全部の形状を備える1つ、または複数の成形体要素を使用することにより、インサート成形において不廻りが発生しやすい薄肉部分へのグラフト成形材料の注入を行う必要がなくなる。
次に、本発明のセラミック焼結体に関して説明する。
本発明のセラミック焼結体は、上述したように、セラミック粉末とバインダを含む成形材料により形成された少なくとも一つの成形体要素と、前記成形体要素に対してグラフト成形されたグラフト成形体要素と、を含むセラミック成形体が脱脂および焼結されたセラミック焼結体である。例えば、図2に示すような、1つのビンフィン部コア16と、これにグラフト成形された本体部コア17と、を含むセラミック形成体10が脱脂および焼結されてなるセラミック焼結体である。
本発明における重要な特徴は、常温(25℃)曲げによるセラミック焼結体の強制破壊形態が、成形体要素とグラフト成形体要素とのグラフト接合面に起因しない破壊形態であることである。ここで、「グラフト接合面に起因しない破壊形態」とは、脱脂後のセラミック成形体(脱脂成形体)やセラミック焼結体における割れや亀裂の起点が成形体要素とグラフト成形体要素とのグラフト接合面やその端部ではない破壊形態であって、その破壊面においてはグラフト接合面が全く露出していないか、あるいはグラフト接合面の一部が露出しているに過ぎない場合であって、グラフト接合面が主体的にその破壊に作用していないと解される場合を意図する。
このような「グラフト接合面に起因しない破壊形態」であるセラミック焼結体は、成形体要素のグラフト接合面の表面粗さをRaで2μm以上に形成する上述した本発明のセラミック焼結体の製造方法により形成することができる。また、このようなセラミック焼結体はグラフト接合面からの優先的な破壊が抑制される。このため、本発明のセラミック焼結体を中子に用いた鋳物において、グラフト接合面に起因する中子の割れや亀裂による凸欠陥(差し込み)の発生を抑制することができる。よって、本発明のセラミック焼結体を、形状が複雑であり、高い寸法精度が必要とされる中空構造、例えばガスタービンのタービン翼に設けられている冷却孔などを形成するための中子として使用することにより、健全な中空構造を有するガスタービン用タービン翼などの鋳物を得ることができる。
本発明に係るセラミック焼結体の製造方法およびセラミック焼結体の作用効果を確認するために、ピンフィン部コア16を成形体要素とし、本体部コア17をグラフト成形体要素として、グラフト成形による図2に示す2つの個片が接合されたセラミック成形体10を作製した。このとき、成形体要素となるピンフィン部コア16は、グラフト接合面となる凸部16aを含む接合面11aを研磨して粗化させたもの(実施例)と、研磨しない平滑なもの(比較例)とを作製した。この後に、作製した成形体を脱脂および焼結し、必要に応じて仕上げ加工し、図1に示すセラミック中子1(セラミック焼結体)を作製した。以下、具体的に説明するが、本発明の範囲をここに述べる具体例に限定するものではない。
(成形体要素とグラフト成形体要素)
セラミック成形体10を2つの個片に区分するにあたり、接合面11a、11b(接合部11)で区分し、翼部12のピンフィン部15を含むピンフィン部コア16を予め形成する1つの成形体要素とした。また、ピンフィン部コア16以外の本体部コア17を、つまり、その他の翼部12、ダブテイル部13、プラットフォーム部14を含む残余部分を、グラフト成形によりピンフィン部コア16に接合するグラフト成形体要素とした。
(成形材料)
ピンフィン部コア16と本体部コア17は、本発明の作用効果を明確化するために略同質の成形材料を用いたが、異質の成形材料も使用できる。準備した成形材料は、68体積%のセラミック粉末と、32体積%のパラフィンワックスやスチレン系熱可塑性エラストマーを含むバインダ他(バインダ融点は略50℃)からなる射出成形用組成物であって、混合攪拌機を用いて十分に混合して準備した。セラミック粉末は、アルミナ粉末(Al)を1mol%(1.5質量%)、ジルコン粉末(ZrSiO)を7mol%(18.6質量%)、残部を溶融シリカ粉末(SiO)、さらにカリウム分およびナトリウム分を合計0.1質量%以下に調整する水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムを混合した混合粉である。この混合粉の粒子構成は、粒子の積算体積粒度分布曲線において、粒径が50μmを超える粗粉末の累積百分率が19%、粒径が5μm以下の微粉末の累積百分率が28%、粒径が1μm以下の極微粉末の累積百分率が2%未満である。
(成形体要素形成工程)
ピンフィン部コア16(成形体要素)は、その形状に対応するキャビティ面を備えた射出成形用の常温(25℃)の型内に、好適に軟化させた前記成形材料を7MPa程度の圧力で射出(注入)し、そのまま型内で成形材料を固化して作製した。このとき、ピンフィン部コア16の本体部コア17を接合する接合面11a、11bに、図3中に斜線で示すような舌状の凸部16aが形成されるようにしておいた。こうして得たピンフィン部コア16は、そのキャビティ面に対応する形状および表面粗さを有するものになる。
(グラフト接合面の表面粗さ)
得られたピンフィン部コア16は、凸部16aを含む接合面11aがキャビティ面の平滑な表面粗さに対応し、いずれの表面粗さもRaで1.0〜1.2μmだった。このうち幾つかを任意に選び、凸部16aを含む接合面11aをスポンジ研磨材により一定方向に研磨して粗化した。表1に、一般的な触針式デジタル表面粗さ計により測定したピンフィン部コア16の接合面11aの表面粗さを示す。実施例1〜4は研磨したもの、比較例1、2は研磨しないものを表す。粗さの測定方向は、触針を研磨方向と略平行に移動したか、略直交して移動したかを表す。表面粗さは、JIS−B0601:1994により規定された算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Ry)、十点平均粗さ(Rz)であり、接合面11a内の複数の箇所を測定した平均値である。
(セラミック成形体形成工程)
セラミック成形体10は、その形状に対応するキャビティ面を備えた射出成形用の常温(25℃)の型内に、好適に軟化させた前記成形材料を7MPa程度の圧力で射出(注入)し、そのまま型内で成形材料を固化して作製した。このとき、そのキャビティ面の表面粗さを成形体要素形成工程で用いた型のキャビティ面の表面粗さと同等になるようにしておいた。また、ピンフィン部コア16は、特に温度を高めておく処理を行わないで、そのキャビティ内の所定に配置しておいた。こうして、予め形成されたピンフィン部コア16(成形体要素)に対して本体部コア17(グラフト成形体要素)をグラフト成形することにより、ピンフィン部コア16の凸部16aと本体部コア17の凹部17aが噛み合って接合(接合部11)されたセラミック成形体10を得た。このようにして得られたセラミック成形体10は、用いたキャビティ面に対応する形状および表面粗さを有するものになった。
(セラミック焼結体形成工程)
上述のようにして得たセラミック成形体10を脱脂および焼結することによりセラミック焼結体を得た。このようにして得られたセラミック焼結体は、グラフト接合面を含むものの、図1に示すセラミック中子1と同等の外観を有し、セラミック中子として使用することができる。脱脂および焼結に係る工程は、第1段階として、目標温度を240℃とし、セラミック成形体10に含まれるバインダの除去量が低温脱脂前後の質量比で80〜90%の範囲になるように低温脱脂を行った。第2段階として、低温脱脂後の半脱脂成形体を設定温度400℃で2h保持し、高温脱脂を行った。この後、設定温度1300℃で2h保持し、セラミック粉末を焼結させた。このようにして、表1に実施例1〜4および比較例1、2として示すセラミック焼結体(セラミック中子1)を作製した。実施例1〜4および比較例1、2は、いずれも相対密度が68〜72%で焼結されていた。
(亀裂と割れ)
実施例1〜4および比較例1、2について、上述した製造工程の途中段階のピンフィン部コアと、グラフト成形後のセラミック成形体と、脱脂後の脱脂成形体と、最終的に得られたセラミック焼結体について、目視や拡大鏡を用いて観察可能な全表面を観察し、亀裂や割れの有無を調べた。その結果を表2に示す。
実施例1〜4は、ピンフィン部コアからセラミック焼結体まで、いずれの段階においても割れや亀裂が発生していなかった。一例として、実施例1のグラフト成形後のセラミック成形体の接合部11(接合面11a)の近傍を図5(a)に、実施例1の高温脱脂後の脱脂成形体の接合部11(接合面11a)の近傍を図5(b)に示す。図5(a)中において、接合部11は二点鎖線の囲み内に線状跡のように見える。また、図5(b)中において、接合部11は二点鎖線の囲み内に一部がやや溝状のような線状跡のように見える。この図5(b)中に見える接合部11は亀裂ではなく、これをセラミック中子に形成して鋳造に用いても鋳物の中空構造に凸状欠陥(差し込み)を発生させることはない。
比較例1は、高温脱脂後の脱脂成形体において、図6中の二点鎖線の囲み内に見えるように接合部11(接合面11a)から伸長している割れに近い亀裂19が発生していた。この亀裂19は接合部11の一部(図6中の亀裂19の左方部分)にも発生しており、その後の焼結を経て割れに到った。よって、このような亀裂19を有する脱脂成形体は、セラミック中子としては使用することができない。また、比較例2は、セラミック焼結体において、図6に示す亀裂19よりも程度が軽微であったが、同様に亀裂が発生していた。これをセラミック中子に形成して鋳造に用いた場合、鋳造に際して高温に曝された亀裂が割れに到る可能性が高く、鋳物の中空構造に凸状欠陥(差し込み)を発生させやすい。よって、このような割れに到る可能性が高いセラミック中子は、常識的に不良品として取り扱われるため、鋳造に用いえられることはない。
(強制破壊形態)
常温(25℃)において、グラフト接合面である接合部11(接合面11a)の近傍で破壊するように、実施例1〜4および比較例2のセラミック焼結体を強制的に曲げて破壊し、それぞれの強制破壊形態を目視や拡大鏡を用いて観察した。一例として、実施例1のセラミック焼結体の破壊部分を図7に、比較例2のセラミック焼結体の破壊部分を図8に示す。
図7に示す実施例1のセラミック焼結体(本体部コア17側)において、接合部11は二点鎖線の囲み内に線状跡のように残っていることが視認できる。また、接合部11を含む破壊面20では、接合面11aの露出は視認できず、接合部11を跨ぐような破壊形態が視認できる。また、図7中、上方の平面状に見える破壊部分は、接合面11aの露出ではなく、接合面11aの手前側(ピンフィン部コア16側)で破壊されたものであり、グラフト接合面に略起因しない破壊形態であることが分る。よって、実施例1のセラミック焼結体の常温(25℃)曲げによる強制破壊形態は、グラフト接合面に略起因しない破壊形態であり、成形体要素であるピンフィン部コア16とグラフト成形体要素である本体部コア17のグラフト成形による接合強度が高いことが確認できた。
図8に示す比較例2のセラミック焼結体(本体部コア17側)において、接合部11は2つの二点鎖線の囲み内に露出するグラフト接合面が視認できる。図8中、唯一、2つの二点鎖線の囲みの間に接合面11aの手前側(ピンフィン部コア16側)で破壊された部分が視認できるが、下方の破壊面21では手前側の一部に欠けが見えるものの略円滑な平面状の接合面11aが視認できる。また、上方の破壊部分では、ピンフィン部コア16の凸部16aと本体部コア17の凹部17aとのグラフト接合面が視認でき、その左方と右方ともに略円滑な平面状の接合面11aが視認できる。よって、グラフト接合面である接合面11aの露出が多い比較例1のセラミック焼結体の常温(25℃)曲げによる強制破壊形態はグラフト接合面に起因する破壊形態であり、成形体要素であるピンフィン部コア16とグラフト成形体要素である本体部コア17のグラフト成形による接合強度が低いことが確認できた。
なお、セラミック成形体形成工程において、予めピンフィン部コア16の温度をバインダの融点(50℃)よりも5℃低い45℃(ケースA)、10℃低い40℃(ケースB)、20℃低い30℃(ケースC)に高めておく場合についても、同様に調べて評価した。なお、ピンフィン部コア16の温度は、それを射出成形用の型内に配置した際に、一般的な表面温度計を使用して測定した温度である。その結果、ケースAでは、破壊面においてグラフト接合面の露出が全く確認できない破壊形態になった。なお、ケースAでは、グラフト接合面から遠い位置にあるピンフィン部コア16の最も薄肉部分において、セラミック中子として使用可能な範囲であるが、微小な変形が発生していた。ケースB、Cでは、ケースAと同様な破壊形態になった。なお、ケースB、Cの破壊面において、ケースAの破壊面との相違点を確認することができなかった。
以上述べたように、従来のインサート成形法における接合面を起点とする割れや亀裂の課題は、成形体要素のグラフト接合面の表面粗さをRaで2μm以上に形成することを含む本発明のセラミック焼結体の製造方法によって解決できた。これにより、タービン翼などの中空構造を有する鋳物の製造に用いるセラミック中子として有用な、常温(25℃)曲げによる強制破壊形態が成形体要素とグラフト成形体要素とのグラフト接合面に略起因しない破壊形態となるセラミック焼結体が得られた。よって、例えば、内部に複雑な冷却孔を有するタービン翼などの中空構造を有する鋳物を鋳造する際に、セラミック中子の割れや亀裂に起因する凸欠陥などの発生を抑制することができる。
1.セラミック中子、2.翼部、3.ダブテイル部、4.プラットフォーム部、5.ピンフィン部、10.セラミック成形体、11.接合部、11a.接合面、11b.接合面、11c.端部、12.翼部、13.ダブテイル部、14.プラットフォーム部、15.ピンフィン部、16.ピンフィン部コア、16a.凸部、17.本体部コア、17a.凹部、18.割れ、19.亀裂、20.破壊面、21.破壊面
このセラミック成形体形成工程において好ましくは、グラフト成形体要素をグラフト成形する前に、成形体要素の温度を、キャビティ内に配置する成形体要素に含まれるバインダの融点よりも5℃以上低い温度に、予め高めておくことである。キャビティ内に配置する既製の成形体要素の温度を高めておいた場合、その成形体要素に含まれるバインダが常温時よりも軟化し、グラフト成形される成形材料に含まれるバインダとの温度差が小さくなるため、成形体要素に含まれるバインダとグラフト成形される成形材料に含まれるバインダとの接着性が高まる。このため、その接着性が高まった分だけ成形体要素とグラフト成形体要素の接合面やその端部の接合構造がさらに強固になり、接合強度を大きくすることができる。
上述したように成形体要素の温度を予め高めておくと、成形体要素に含まれるバインダが膨張し、成形体要素が変形する可能性がある。特に、成形体要素の温度をバインダの融点よりも5℃低い温度を超えて、つまり「バインダの融点−5」℃を超えて高めると、成形体要素に含まれるバインダの軟化による流動性が大きくなるため、成形体要素の保形性が損なわれることがある。例えば、成形体要素が熱膨張変形してもセラミック成形体の形状精度への影響が少ない後述する内包成形の場合には、「バインダの融点−5」℃以下が好ましい。また、成形体要素の一部またはグラフト接合面を除く全部を露出させてセラミック成形体に形成する場合には、成形体要素の熱膨張変形を考慮し、バインダの融点よりも10℃以上低い温度、つまり「バインダの融点−10」℃以下が好ましい。バインダの種類によっては成形体要素の熱膨張変形の可能性が高まることがあるため、バインダの融点よりも15℃以上低い温度、つまり「バインダの融点−15」℃以下が好ましく、バインダの融点よりも20℃以上低い温度、つまり「バインダの融点−20」℃以下がより好ましい。
また、形成しようとしているセラミック成形体の所定形状の外周の一部を備える成形体要素を使用することが好ましい。つまり、上述した成形体要素形成工程において、成形体要素の少なくとも一部または全部を、セラミック成形体の所定形状の外周の一部を備えるように形成しておくことが好ましい。特に、セラミック成形体における薄肉部分は、射出成形時に成形材料の不廻りが発生しやすいため、また射出成形後に変形しやすいため、その薄肉部分の一部または全部の形状を備えた成形体要素を使用することが好ましい。
また、成形体要素の外周をセラミック成形体の外周の一部に使用せず、その成形体要素を内部に包み込むように成形体材料を射出(注入)することにより、成形体要素の周りにグラフト成形体要素を形成する(内包成形)ことができる。内容成形の場合は、成形体要素の全周がグラフト接合面になるため、その全周にグラフト成形によりグラフト成形体要素を接合することになる。形成しようとするセラミック成形体に特段の厚肉部分がある場合は、その肉厚部分に気泡が巻き込まれて残留しやすいため、上述した内包成形の適用により、セラミック成形体の厚肉部分を容易に形成することができる。また、そのような肉厚部分は焼結による収縮量が大きく形状精度が低下しやすいため、その厚肉部分にグラフト成形体要素に用いた成形材料よりも収縮量が小さい別の成形材料を用いた成形体要素を予め内包することが好ましい。
このセラミック焼結体形成工程において好ましくは、セラミック成形体の脱脂プロセスを、バインダが分解し始めてから所定の目標温度に到達するまでの低温脱脂工程と、この低温脱脂工程よりも高い温度による高温脱脂工程との2段階に分けることが好ましい。この場合、高温脱脂からそのまま焼結を行うこともできる。ここで、低温脱脂とは、バインダの分解開始温度を超えて、バインダが着火されず、バインダが容易に分解される目標温度まで雰囲気温度を昇温する過程において、あるいは昇温から目標温度到達後にその温度を保持する過程において、セラミック成形体に含まれるバインダを除去する処理を意図する。また、高温脱脂とは、セラミック粉末が焼結されない範囲で低温脱脂よりも雰囲気温度の目標を高く設定し、その目標温度に昇温する過程において、あるいは前記目標温度に到達後に適正な時間保持する過程において、低温脱脂を経て半脱脂状態になったセラミック成形体に残存するバインダをさらに除去する処理を意図する。

Claims (8)

  1. セラミック粉末とバインダを含む成形材料を用いて成形体要素を形成する工程と、
    前記成形体要素を少なくとも一つ射出成形型内に配置し、前記射出成形型内の空間にセラミック粉末とバインダを含む成形材料を射出して、前記成形体要素に対してグラフト成形体要素をグラフト成形したセラミック成形体を形成する工程と、
    前記セラミック成形体を脱脂および焼結してセラミック焼結体を形成する工程と、を含み、
    前記グラフト成形体要素がグラフト成形される前記成形体要素のグラフト接合面の表面粗さをRaで2μm以上に形成する、セラミック焼結体の製造方法。
  2. 前記グラフト成形体要素をグラフト成形する前に、前記成形体要素に含まれるバインダの融点よりも5℃以上低い温度に前記成形体要素の温度を高めておく、請求項1に記載のセラミック焼結体の製造方法。
  3. 中空構造を備えたタービン翼の鋳造に使用され、前記タービン翼の前記中空構造に対応する形状を備えたセラミック中子の製造方法として適用される、請求項1または2に記載のセラミック焼結体の製造方法。
  4. 前記成形体要素の少なくとも一部は、前記タービン翼の翼部の前記中空構造に対応する形状に形成されている、請求項3に記載のセラミック焼結体の製造方法。
  5. セラミック粉末とバインダを含む成形材料により形成された少なくとも一つの成形体要素と、前記成形体要素に対してグラフト成形されたグラフト成形体要素と、を含むセラミック成形体が脱脂および焼結されたセラミック焼結体であって、常温(25℃)曲げによる強制破壊形態が前記成形体要素と前記グラフト成形体要素とのグラフト接合面に起因しない破壊形態である、セラミック焼結体。
  6. 前記成形体要素の少なくとも一つは、前記セラミック成形体の所定形状の外周の一部を備えている、請求項5に記載のセラミック焼結体。
  7. 中空構造を備えたタービン翼の鋳造に使用され、前記タービン翼の前記中空構造に対応する形状を備えたセラミック中子に適用される、請求項5または6に記載のセラミック焼結体。
  8. 前記成形体要素の少なくとも一部が、前記タービン翼の翼部の前記中空構造に対応する形状に対応している、請求項7に記載のセラミック焼結体。
JP2014025101A 2014-02-13 2014-02-13 セラミック焼結体の製造方法 Expired - Fee Related JP6347400B2 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014025101A JP6347400B2 (ja) 2014-02-13 2014-02-13 セラミック焼結体の製造方法
US14/907,762 US10040116B2 (en) 2014-02-13 2015-02-12 Method of manufacturing ceramic sintered body and ceramic sintered body
EP15748444.5A EP3106245A4 (en) 2014-02-13 2015-02-12 Method for producing ceramic sintered body and ceramic sintered body
PCT/JP2015/053791 WO2015122445A1 (ja) 2014-02-13 2015-02-12 セラミック焼結体の製造方法およびセラミック焼結体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014025101A JP6347400B2 (ja) 2014-02-13 2014-02-13 セラミック焼結体の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015150574A true JP2015150574A (ja) 2015-08-24
JP6347400B2 JP6347400B2 (ja) 2018-06-27

Family

ID=53893380

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014025101A Expired - Fee Related JP6347400B2 (ja) 2014-02-13 2014-02-13 セラミック焼結体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6347400B2 (ja)

Citations (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05185181A (ja) * 1992-01-14 1993-07-27 Naniwa Seisakusho:Kk 接着剤により一体に連結、接着された砂鋳型組立体及びその接着方法
JPH079085A (ja) * 1993-06-22 1995-01-13 Masamichi Tanaka 部分改質したアルミニウム製鋳造用中子の製造法
JPH10230344A (ja) * 1996-12-20 1998-09-02 Ngk Insulators Ltd 分割型中子
JPH11171660A (ja) * 1997-12-15 1999-06-29 Tokyo Tungsten Co Ltd 多孔質体電極部品
JP2000274238A (ja) * 1999-03-25 2000-10-03 Hitachi Metals Ltd タービンハウジング一体排気マニホールド及びその製造方法
JP2001232445A (ja) * 2000-02-23 2001-08-28 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 単結晶精密鋳造用鋳型の製造方法
JP2003500212A (ja) * 1999-05-25 2003-01-07 ホッティンガー・マシーンバウ・ゲーエムベーハー あらゆる種類の部品を接合するための装置
JP2003048783A (ja) * 2001-08-02 2003-02-21 Toshiba Ceramics Co Ltd アルミナセラミックス接合体及びその製造方法
JP2004504945A (ja) * 1999-10-26 2004-02-19 ハウメット リサーチ コーポレイション 多層中子及びその製造方法
JP2007253237A (ja) * 2006-03-21 2007-10-04 United Technol Corp <Utc> 取り付け方法およびインベストメント鋳造方法
WO2013018393A1 (ja) * 2011-08-03 2013-02-07 日立金属株式会社 セラミック中子およびその製造方法
JP2013125825A (ja) * 2011-12-14 2013-06-24 Nissan Motor Co Ltd 半導体装置

Patent Citations (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05185181A (ja) * 1992-01-14 1993-07-27 Naniwa Seisakusho:Kk 接着剤により一体に連結、接着された砂鋳型組立体及びその接着方法
JPH079085A (ja) * 1993-06-22 1995-01-13 Masamichi Tanaka 部分改質したアルミニウム製鋳造用中子の製造法
JPH10230344A (ja) * 1996-12-20 1998-09-02 Ngk Insulators Ltd 分割型中子
JPH11171660A (ja) * 1997-12-15 1999-06-29 Tokyo Tungsten Co Ltd 多孔質体電極部品
JP2000274238A (ja) * 1999-03-25 2000-10-03 Hitachi Metals Ltd タービンハウジング一体排気マニホールド及びその製造方法
JP2003500212A (ja) * 1999-05-25 2003-01-07 ホッティンガー・マシーンバウ・ゲーエムベーハー あらゆる種類の部品を接合するための装置
JP2004504945A (ja) * 1999-10-26 2004-02-19 ハウメット リサーチ コーポレイション 多層中子及びその製造方法
JP2001232445A (ja) * 2000-02-23 2001-08-28 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 単結晶精密鋳造用鋳型の製造方法
JP2003048783A (ja) * 2001-08-02 2003-02-21 Toshiba Ceramics Co Ltd アルミナセラミックス接合体及びその製造方法
JP2007253237A (ja) * 2006-03-21 2007-10-04 United Technol Corp <Utc> 取り付け方法およびインベストメント鋳造方法
WO2013018393A1 (ja) * 2011-08-03 2013-02-07 日立金属株式会社 セラミック中子およびその製造方法
JP2013125825A (ja) * 2011-12-14 2013-06-24 Nissan Motor Co Ltd 半導体装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP6347400B2 (ja) 2018-06-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN105592956B (zh) 在注蜡期间使用柔性蜡模模具沿其长度支撑陶瓷型芯的熔模铸造
CN104493081B (zh) 用于空心涡轮叶片熔模铸造的注蜡模具及其快速制造方法
JPWO2009069716A1 (ja) 内歯車の製造方法および金属ガラス製の内歯車
KR20120106790A (ko) 중공 구성 요소용 인베스트먼트 주조 프로세스
US10465532B2 (en) Core positioning
CN107640963B (zh) 一种梯度陶瓷型芯材料的制备方法
JP2008260065A (ja) ターボ機械ブレードのためのセラミック鋳造コアを製作するための装置
CN102775673A (zh) 一种粉末微注射成形用热塑性粘结剂的制备及使用方法
WO2013018393A1 (ja) セラミック中子およびその製造方法
TWI611814B (zh) 鑄造用包埋材組成物及使用其之鑄件之鑄造方法
EP1769862A1 (en) Method for manufacturing a pattern and core assembly for a cast hollow component
WO2015122445A1 (ja) セラミック焼結体の製造方法およびセラミック焼結体
US9839957B2 (en) Ceramic core, manufacturing method for the same, manufacturing method for casting using the ceramic core, and casting manufactured by the method
JP2012161805A (ja) セラミック中子およびその製造方法
JP6347400B2 (ja) セラミック焼結体の製造方法
US20170361490A1 (en) Process for manufacturing a ceramic turbine blade
CN103386703B (zh) 一种陶瓷型芯的成型方法
JP2015188916A (ja) セラミック焼結体の製造方法およびセラミック焼結体
KR102411137B1 (ko) 강도 및 리칭성이 우수한 세라믹 코어 및 이의 제조 방법
US20200246861A1 (en) Method of investment casting chaplet
JP2010241129A (ja) 粉体成形体の製造方法
JPH1192803A (ja) 複雑形状の中空部を有する金属及びセラミック粉 末射出成形部品の製造
US8794297B1 (en) Molding apparatus and method of forming a moldable article
KR20100034470A (ko) 압축기용 일체형 중공 피스톤 및 그 제조방법
CN104010582B (zh) 用于降低加工成本的模具设计方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180223

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180419

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180507

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6347400

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180520

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees