JP2015149060A - 周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法、及びそのモデルを用いた機器の故障診断方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の周期的な運動を行う機構を備える機器4のモデルの作成方法は、周期的な運動を行う機構を備える機器の特性を示す機器のモデルの作成方法において、入力側の位相θと機器の出力yとを表現するモデルを構築し、モデル化誤差が所定値以下の条件下で位相差に対する出力値の変化量(dy/dθの絶対値の大きさ)が最小となる、位相差に対する出力値の変化量(dy/dθの絶対値の大きさ)が所定値以下の条件下でモデル化誤差が最小となる、モデル化誤差と位相差に対する出力値の変化量とからなる評価関数が最小となる、のいずれか一つとなるように、モデル内の係数を決定する。
【選択図】図1
Description
回転機器における特性を把握するにあたっては、回転機器の回転速度の時系列データを計測し、その計測した時系列データを高速フーリエ変換(FFT)して、回転機器の周波数特性を取得する手法がとられる(例えば、特許文献1を参照)。
非特許文献1は、回転機器の出力軸のトルクτを入力軸の回転位相θ、慣性項J、粘性項Dをパラメータとした式で表現したモデル、すなわち「角速度とトルク(電流)を計測して、角加速度との関係を表すモデル(回転機器の特性を示すモデル)を作る技術」を開示している。
すなわち、モデル化の誤差が許容範囲内となるように、モデルのパラメータの連続性(滑らかさ)を最適化し、解を求めるようにしている。
とはいえ、係る最適化計算は非常に複雑であり、データのサンプリング点数が大きくなるに従い、計算量が莫大なものとなる。
本発明に係る周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルを作成する方法は、周期的な運動を行う機構を備える機器の特性を示す機器のモデルの作成方法において、入力側の位相θと前記機器の出力yとを表現するモデルを構築し、モデル化誤差が所定値以下の条件下で位相差に対する出力値の変化量(dy/dθの絶対値の大きさ)が最小となる、位相差に対する出力値の変化量(dy/dθの絶対値の大きさ)が所定値以下の条件下でモデル化誤差が最小となる、モデル化誤差と位相差に対する出力値の変化量とからなる評価関数が最小となる、のいずれか一つとなるように、前記モデル内の係数を決定することを特徴とする。
好ましくは、前記モデルが、式(1)で表現されるとよい。
好ましくは、前記角度伝達誤差項fが、式(2)で表現されるとよい。特に、減速機の場合、正転・逆転のギヤのかみ合いの違いなどの特性を表現するため、前記角度伝達誤差項fが、式(2)で表現されるとよい。
好ましくは、前記モデルが、前記機器の回転の位相θを基に、前記回転θに依存しない成分を角速度ωから取り除いた値、前記回転θに依存しない成分を角加速度αから取り除いた値、前記回転θに依存しない成分をトルクτから取り除いた値、前記回転θに依存し
ない成分を吐出圧力Pから取り除いた値、前記回転θに依存しない成分を吐出流量Qから取り除いた値、のいずれかを表現するものであるとよい。
好ましくは、前記モデル内の角度伝達誤差項f又は回転位相θに応じて値が変動する非線形項fを用いて、前記機器の故障状態及び/又は劣化状態を推定するとよい。
なお、以下の説明では、周期的な運動を行う機構を備える機器4における特性を示すモデルを作成する対象として、多関節ロボットに備えられた減速機を例示する。その上で、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
例えば、溶接用の多関節ロボットは、垂直多関節型であって6関節を備え、先端軸に溶接トーチが設けられ、溶接トーチから送り出される溶接ワイヤによりアーク溶接が行われる。この多関節ロボットは、溶接開始点と溶接終了点とを結ぶ溶接線方向に移動しつつ、(ウィービング動作)を行うように教示されている。
図1に示すように、1つの関節軸1は、モータ2(電動モータ)と、そのモータ2により回動されるアーム3と、モータ2とアーム3とを接続する減速機4とを含んで構成される。
このような関節軸1を複数(6個)備える多関節ロボットは、以下に示すコントローラ5(制御装置)で制御される。
上記した多関節ロボットを用いてアーク溶接により複数の母材の溶接を行う際には、溶接電極を溶接方向に進ませつつ、溶接線の左右方向にウィービング動作をさせながら溶接するウィービング溶接が採用される。このウィービング溶接は、従来から、溶接トーチ自体を左右に揺動させるか、または溶接トーチ自体を中心として左右に傾動させることによ
り行っている。このようなウィービング溶接を多関節ロボットに行わせる場合、高い軌跡精度が要求される。このようなウィービング溶接を行わせる多関節ロボットにおいては、ロボットの動力伝達系における減速機4の特性、言い換えれば減速機4における動力伝達状況を把握することは、ロボットの動作状況を知る上で非常に重要である。
このような減速機4における特性を解析するにあたっては、減速機4の回転速度の時系列データを計測し、その計測した時系列データを高速フーリエ変換(FFT)して、減速機4の周波数特性を取得する手法(例えば、特許文献1)や、角速度とトルクτを計測して、角加速度との関係を表すモデル(回転機器4の特性を示すモデル)を作る技術(例えば、非特許文献1)などが用いられている。
そこで、本願出願人らは、鋭意研究を重ねた結果、多関節ロボットなどに備えられた減速機4のような周期的な運動を行う機構を備える回転機器の特性を正確に表現するモデルを作成する方法を発明した。
まず、第1実施形態に係る減速機4における特性を示すモデルを作成する方法について、図を基に説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態に係る周期的な運動を行う機構を備える機器(減速機4)の特性を示す機器のモデルの作成方法は、入力側の位相θと前記機器の出力yとを表現するモデルを構築し、モデル化誤差が所定値以下の条件下で位相差に対する出力値の変化量(dy/dθの絶対値の大きさ)が最小となる、位相差に対する出力値の変化量(dy/dθの絶対値の大きさ)が所定値以下の条件下でモデル化誤差が最小となる、モデル化誤差と位相差に対する出力値の変化量とからなる評価関数が最小となる、のいずれか一つとなるように、前記モデル内の係数を決定する方法である。
第1実施形態の角度伝達誤差項fは、角度誤差の伝達状況を表現する項である。例えば、減速機4の減速比を1/100とした場合、減速機4が動力を伝達する際には、減速機4を構成する歯車の加工誤差などに起因し、減速機4の減速比が瞬間的に1/99や1/101などごくわずかに変動することがある。このような変動を角度伝達誤差とし、この誤差を表現するものとして角度伝達誤差項fとしている。第1実施形態では、角度伝達誤差項fは、減速機4の入力軸の回転位置(回転位相θ)に応じて滑らかに変化する項としている。
よい。
つまり、慣性項J及び粘性項Dは、減速機4の入力軸又は出力軸の回転にほとんど依存しないものとしている。
また、正回転と逆回転で減速機4の特性が変わらないもの、すなわち回転位相θのみによって減速機4の特性が決まるものについては、単にf(θ)とされ、式(1’)で表現される。
パラメータである(バックラッシュ、ガタ、ヒステリシスなどの影響が含まれるので、α≠β)。
前述の如く、例えば、実作業中の多関節ロボットから得られたデータ(計測データ)を用いて、減速機4の特性を解析しようとした場合、減速機4の回転速度が一定であることは希であり、多くの場合、回転速度は大きく変化する。そのため、時間サンプリング点kでの減速機4の計測値が、回転位相θにおけるバラバラの位置(一対一に対応しない位置)にプロットされる。例えば、減速機4の入力軸又は出力軸の回転を1000回転分計測すると、膨大(数万点程度)な時間サンプリング点kでの計測データがバラバラにプロットされるようになる。また、式(3)のαやβのパラメータが、回転位置に対して等間隔にならないと、αやβが回転に対して滑らかに変化するということを表現する評価関数が式(4)で表現できなくなり、もっと複雑な式になってしまう。このように対応関係が未確定で且つ膨大なデータを用いたモデル計算は複雑なものとなり、計算量が膨大となってしまう。
次に、以上述べた式(1)、式(2)からなる減速機4のモデルを用いて、減速機4の特性を求める方法、具体的には、モデル内の慣性項J、及び粘性項Dを求める方法を述べる。
以上のように、複数の時間サンプリング点k(k=1〜N)における、式(1)及び式(2)で表現されたトルクτに関する関係式を求め、それらを行列とベクトルからなる式の形にまとめたものが、式(3)である。
式(3)を解くことで、モデル内の慣性項J、及び粘性項D、α1〜αm、β1〜βmを求めることができ、ひいては、減速機4の特性を求めることが可能となる。
の作成方法を用いることで、回転機器4(減速機4)の入力軸又は出力軸の回転位相θと、慣性項Jと、粘性項Dと、角度伝達誤差項fとを基に、減速機4の出力軸のトルクτ(減速機4の特性)を表現するモデルを作成することができ、多関節ロボットなどの動作状況を把握することが可能となる。
さて、多関節ロボットなどの備えられている減速機4(回転機器)は、実作業を続けて行くうちに劣化乃至は故障するようになってくる。従来、減速機4の劣化や故障を診断する際には、減速機4を多関節ロボットから取り外したり、減速機4を所定の回転数にして診断をしなければならなかった。つまり、多関節ロボットの実作業を中断して、減速機4の劣化や故障の診断をしなければならない状況であった。
第1実施形態に係る減速機4のモデルは、減速機4の入力軸又は出力軸の回転位相θと、慣性項J及び粘性項D(共に一定値)と、モデル誤差を表現した角度伝達誤差項fとを基に、減速機4の出力軸のトルクτを表現している。
ところで、減速機4を構成するハーモニックドライブ(登録商標)は、モータ2(電動モータ)などに備えられた回転駆動軸に連結する断面視で楕円形状のボス部と、ボス部が摺動自在に嵌め込まれ、且つ下流側に動力を伝達する歯車部と、歯車部が内挿されると共に内周壁に内歯が形成されたリング状のケーシング部と、を有している。すなわち、ハーモニックドライブ(登録商標)は、ボス部が楕円形であるため、ケーシング部の内歯と歯車部の長径側の外歯とが、常に2カ所(ボス部の長径の両側)で歯合され、動力を伝達するものとなっている。
図3(a)は、減速機4が慣らし運転を行う前に、加減速や定速回転などの動作などを付与した上で、第1実施形態のモデルを計算し、そのモデル内の角度伝達誤差項fが時間と共に変化する様子を示した図である。図の中の横軸は、入力軸が回転角度(0〜360°)を示し、縦軸は、角度伝達誤差項fの値を示している。ここでは、回転角度1°ごとにα、βの値を設定した。すなわち、α1〜αm、β1〜βmに示すmの値を360とした。
次に、図3(b)には、慣らし運転を始めて一定期間後の角度伝達誤差項fの波形が示されている。この図から明らかなように、慣らし運転から一定期間経た後の角度伝達誤差項fは、図3(a)に示す波形よりも小さな振幅となっている。この状況は、慣らし運転により減速機4がスムーズに動作するようになったことを示すものであり、このことから
も、第1実施形態のモデルが減速機4の特性を忠実に再現していると思われる。
図3(c)〜図3(f)を見てみると、劣化後(さらに一定期間後)の角度伝達誤差項fの波形は、図3(a)や図3(b)に比べて角度伝達誤差項fの波形が不定周期となっていることがわかる。つまり、多関節ロボットに搭載の減速機4が劣化し始めた状態であると推定することができる。それゆえ、減速機4をこの状態のままにしておくと、故障する状況に陥る可能性がある。
図4は、減速機4(ハーモニックドライブ(登録商標))が特殊な状況下になった場合におけるモデルの角度伝達誤差項fの変化を示す図である。
図4(b)には、検証のため、意図的に組み付け不良を起こした場合を再現したときにおける、角度伝達誤差項fの波形が示されている。すなわち、減速機4を一度分解して、再組み立てた後の条件をモデルに付与し、計算を行った結果を示している。
上記のことから明らかなように、減速機4が劣化状態及び/又は故障状態になると、その状況に連動して、モデルの出力(特に、角度伝達誤差項fの値)が正常値から外れるものとなる。そのため、モデル内の角度伝達誤差項fを回転機器4(減速機)における信頼性を評価する指標として用いることができる。例えば、モデル内の角度伝達誤差項fが予め設定されている範囲内であれば、あるいは、同一機種の他の個体に比べて大きく外れているようであれば、回転機器4の信頼性が高い(故障していない)と判断することができる。
[第2実施形態]
次に、2つ目の事例、すなわち第2実施形態の説明では、回転機器4の特性を示すモデルを作成する対象として、エンジン(図示せず)を例示する。なお、油圧モータ、圧縮機、空圧ポンプ、油圧ポンプ、モータなどを、回転機器4における特性を示すモデルを作成する対象としてもよい。
すなわち、エンジンの特性を示すモデルの作成方法は、入力側の回転位相θとエンジン
の出力yとを表現するモデルを構築し、モデル化誤差が所定値以下の条件下で位相差に対する出力値の変化量(dy/dθの絶対値の大きさ)が最小となる、位相差に対する出力値の変化量(dy/dθの絶対値の大きさ)が所定値以下の条件下でモデル化誤差が最小となる、モデル化誤差と位相差に対する出力値の変化量とからなる評価関数が最小となる、のいずれか一つとなるように、モデル内の係数を決定する点が同じである。
すなわち、トルクτと角速度ω、角加速度αの関係を表す物理法則に基づくモデル(運動方程式)をベースに角度伝達誤差項fの特性を抽出しようとしている第1実施形態に対し、第2実施形態では、物理モデルベースではなく、位相θによって変化する特性をそのまま抽出しようとしている。
エンジンの特性を示すモデルを作成するにあたっては、まず、時間サンプリング点k毎に、エンジンにおける回転位相θ(k=1〜N)、角速度ω(k=1〜N)、角加速度α(k=1〜N)、トルクτ(k=1〜N)を求める。なお、油圧ポンプの特性を示すモデルを作成するにあたっては、時間サンプリング点k毎に、油圧ポンプにおける吐出圧力P(k=1〜N)、吐出流量Q(k=1〜N)を求めるようにするとよい。
第2実施形態における角速度ωのモデルは、式(6)で表現される。
式(6)で表現されたモデルは、例えば、一定の回転数で回転している(回転させようとしている)際のエンジンにおける、回転位相θ毎の回転速度のばらつきを捉えようとするものである。なお、仮に回転速度のばらつきがなければ、回転位相θに関わらず、角速度ωは一定となるので、f(θ)は定数となる。
式(7)で表現されたモデルは、例えば、一定回転数で回転している状態のエンジンにおける、回転位相θ毎の角加速度αのばらつきを捉えようとするものである。
また、第2実施形態におけるトルクτのモデルは、式(8)で表現される。
式(8)で表現されたモデルは、例えば、一定回転数で回転している状態のエンジンにおける、回転位相θ毎のトルクτのばらつきを捉えようとするものである。
一方、油圧ポンプの吐出圧力Pのモデルは、式(9)で表現される。
式(9)で表現されたモデルは、例えば、一定回転数で回転している(回転させようとしている)際の油圧ポンプにおける、回転位相θ毎の吐出圧力Pのばらつきを捉えようとするものである。
式(10)で表現されたモデルは、例えば、一定回転数で回転している(回転させようとしている)際の油圧ポンプにおける、回転位相θ毎の吐出流量Qのばらつきを捉えようとするものである。
なお、第2実施形態においては、角速度ωのモデルの求め方(式(13)乃至は、式(14)の左辺)について例示したが、式(13)乃至は、式(14)は、角加速度α、トルクτ、吐出圧力P、吐出流量Qのモデルにも適用可能である。
式(13)乃至は、式(14)を解くにあたっては、最適化手法を採用することとする。すなわち、複数の時間サンプリング点における、式(6)〜式(8)、式(11)、式(12)で表現されたエンジンの特性に関するモデルを求め、得られた複数のモデルからなる式(13)乃至は、式(14)を求め、その求めた式に対して最適化手法を用いて、式(15)の制約条件を満たし、かつ式(16)乃至は式(17)の評価関数をできるだけ小さくするようなβ1〜βm、γ1〜γmを求めることとしている。
また、油圧ポンプの回転位相θと、回転位相θに応じて値が変動する非線形項fとを基に、油圧ポンプの吐出圧力P、吐出流量Q(油圧ポンプの特性)を表現するモデルを作成
することができ、油圧ポンプの動作状況を把握することも可能となる。
以下に、油圧ポンプの特性を示すモデルの作成方法の実験例、言い換えれば油圧ポンプの現在の状況を把握(推定)する方法の実験例について、説明する。
[実験例1]
まず、回転位相θに応じて値が変動する非線形βの値を回転角度1°ごとに設定した場合、すなわち、油圧ポンプの一回転を360等分(m=360)して、回転位相θのサンプル点β1〜βmを求めた場合について述べる。
ここで、図5に示すデータから、図6に示すような油圧ポンプの総回転数に対する油圧ポンプの吐出圧力Pの関係を求める場合について考える(θ=0〜2π)。なお、図6中の横軸は、油圧ポンプの総回転数(回転速度の積分値[rad])を示し、縦軸は吐出圧力Pを無次元化したものを示している。
しかしながら、図5、図6を参照するに、時間サンプリング点kでの油圧ポンプの計測値(吐出圧力P)は、回転位相θにおけるバラバラの位置(一対一に対応しない位置)にプロットされている。このような図5、図6に示す吐出圧力Pの計測データから、回転位相θに対する吐出圧力Pの関係(モデル)を抽出しようとしても、その計測データがバラバラの位置にプロットされ且つ膨大な量なので、困難を極める。
時間サンプリング点k毎に、油圧ポンプにおける回転位相θ(k=1〜N)、吐出圧力P(k=1〜N)を求める。その際、回転位相θに応じて値が変動する非線形項fに関しては、油圧ポンプの入力軸又は出力軸の1回転分を複数の位相サンプリング点q(q=1〜m、m=360)に分割して、1°ごとの回転位相θに応じて値が変動する関数βを線形補間することで、時間サンプリング点kにおける回転位相θに応じて値が変動する非線形項f(つまり、βm(k))を求める。
図7に示すように、式(16)の評価関数を最小化した結果、回転位相θと吐出圧力P
の関係を表すモデルが得られる。図7の横軸は回転位相θ[rad]であり、縦軸は吐出圧力Pの変動である。
[実験例2]
次に、回転位相θに応じて値が変動する関数βの値を回転角度2°ごとに設定した場合、すなわち、油圧ポンプの一回転を180等分(m=180)して、回転位相θのサンプル点β1〜βmを求めた場合について述べる。
時間サンプリング点k毎に、油圧ポンプにおける回転位相θ(k=1〜N)、吐出圧力P(k=1〜N)を求める。その際、回転位相θに応じて値が変動する非線形項fに関しては、油圧ポンプの入力軸又は出力軸の1回転分を複数の位相サンプリング点q(q=1〜m、m=180)に分割して、2°ごとの回転位相θに応じて値が変動する関数βを線形補間することで、時間サンプリング点kにおける回転位相θに応じて値が変動する非線形項f(つまり、βm(k))を求める。
その式(13’)を解いて、吐出圧力Pのモデル内のβ1〜βmを求める(m=180)。すなわち、式(13’)を解くにあたっては、最適化手法を用いて、式(15)の制約条件(p=1)の元で、式(16)の評価関数(p=2)をできるだけ小さくするようなβ1〜βm、γ1〜γmを求める。
また、エンジンの特性を示すモデルの作成方法の実験例、言い換えれば油圧ポンプ及びエンジンの現在の状況を把握(推定)する方法の実験例について、説明する。
[実験例3]
さらに、エンジンの故障診断方法、言い換えればエンジンの現在の状況を推定する方法について、説明する。
回転位相θに応じて値が変動する関数βの値を回転角度3°ごとに設定した場合、すなわち、エンジンの一回転を120等分(m=120)して、回転位相θのサンプル点β1〜βmを求める。
ることで、時間サンプリング点kにおける回転位相θに応じて値が変動する非線形項f(つまり、βm(k))を求める。
その式(13)を解いて、角加速度ωのモデル内のβ1〜βmを求める(m=120)。すなわち、式(13)を解くにあたっては、最適化手法を用いて、式(15)の制約条件(p=2)の元で、式(16)の評価関数(p=2)をできるだけ小さくするようなβ1〜βm、γ1〜γmを求める。
以上述べたように、第2実施形態に係る本発明のモデルの作成方法を用いることで、図10に示すような外乱やノイズの非常に大きな計測データからでも、図11に示すような回転位相θに対する角速度ωの微小な変化の特徴を把握することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 モータ
3 アーム
4 減速機(回転機器)
5 コントローラ
6 計測用センサ
Claims (14)
- 周期的な運動を行う機構を備える機器の特性を示す機器のモデルの作成方法において、
入力側の位相θと前記機器の出力yとを表現するモデルを構築し、
モデル化誤差が所定値以下の条件下で位相差に対する出力値の変化量(dy/dθの絶対値の大きさ)が最小となる、位相差に対する出力値の変化量(dy/dθの絶対値の大きさ)が所定値以下の条件下でモデル化誤差が最小となる、モデル化誤差と位相差に対する出力値の変化量とからなる評価関数が最小となる、のいずれか一つとなるように、前記モデル内の係数を決定する
ことを特徴とする周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。 - 前記モデルが、前記機器の入力側又は出力側の回転の位相θと、慣性項Jと、粘性項Dと、角度伝達誤差項fとを基に、前記機器の出力側のトルクτを表現するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。 - 前記モデルが、式(1)で表現されることを特徴とする請求項2に記載の周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。
- 前記角度伝達誤差項fを算出するに際しては、
前記回転の位相θでのサンプリング点における角度伝達誤差α,βを線形補間することで、時間サンプリング点における角度伝達誤差項fを求めるようにしている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。 - 前記角度伝達誤差項fが、式(2)で表現されることを特徴とする請求項4に記載の周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。
- 複数の時間サンプリング点における、式(1)及び式(2)で表現されたトルクτに関するモデルを求め、
得られた複数のモデルからなる式(3)を求め、
求めた式(3)に対して最適化手法を用いて、式(4)の制約条件を満たし、且つ式(5)の評価関数を満たす慣性項Jと粘性項Dとα1〜αm、β1〜βmを求めることを特徴とする請求項5に記載の周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。
- 前記モデルが、前記機器の回転の位相θを基に、前記機器の角速度ω、角加速度α、トルクτ、吐出圧力P、吐出流量Qのいずれかを表現するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。 - 前記モデルが、前記機器の回転の位相θを基に、
前記回転θに依存しない成分を角速度ωから取り除いた値、
前記回転θに依存しない成分を角加速度αから取り除いた値、
前記回転θに依存しない成分をトルクτから取り除いた値、
前記回転θに依存しない成分を吐出圧力Pから取り除いた値、
前記回転θに依存しない成分を吐出流量Qから取り除いた値、
のいずれかを表現するものである
ことを特徴とする請求項7に記載の周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。 - 前記モデルが、式(6)〜(10)のいずれかで表現される
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。
- 前記回転位相θに応じて値が変動する非線形項fを算出するに際しては、
前記回転の位相θでのサンプリング点における正転時の回転位相θに応じて値が変動する非線形β、及び逆転時の回転位相θに応じて値が変動する非線形γを線形補間することで、時間サンプリング点における回転位相θに応じて値が変動する非線形項fを求めるようにしている
ことを特徴とする請求項9に記載の周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。 - 式(15)の制約条件の下で、式(16)乃至は(17)の評価関数を満たすようにする
ことを特徴とする請求項10に記載の周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法。
- 請求項1〜11のいずれかに記載された周期的な運動を行う機構を備える機器のモデルの作成方法で作成されたモデルを用いて、
前記機器の故障状態及び/又は劣化状態を推定することを特徴とする機器の故障診断方法。 - 前記モデル内の角度伝達誤差項f又は前記回転位相θに応じて値が変動する非線形項fを用いて、
前記機器の故障状態及び/又は劣化状態を推定することを特徴とする請求項12に記載の機器の故障診断方法。 - 前記モデル内の角度伝達誤差項f又は前記回転位相θに応じて値が変動する非線形項fを周期的な運動を行う機構を備える機器における信頼性を評価する指標として用いることを特徴とする請求項12又は13に記載の機器の故障診断方法。
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