JP2015147701A - 水硬性材料用強度増進剤及び水硬性材料 - Google Patents

水硬性材料用強度増進剤及び水硬性材料 Download PDF

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Abstract

【課題】強度を高いレベルで発現する水硬性材料を与えることができる水硬性材料用強度増進剤、及び、これを含む水硬性材料を提供する。【解決手段】不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とがブロック結合してなる(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含む水硬性材料用強度増進剤。【選択図】なし

Description

本発明は、水硬性材料用強度増進剤及び水硬性材料に関する。
セメントペーストやモルタル、コンクリート等の水硬性材料には、各種物性を付与するために種々の添加剤が使用される。例えば、セメント分散性(減水性)等を付与するためのセメント混和剤用途に、(ポリ)アルキレングリコール鎖と、エチレン系不飽和モノマー化合物等による重合部位とを有するブロック共重合体を用いることが開示されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
米国特許第7425596号明細書 特許第4399574号明細書 特開2012−233075号公報 特開2012−233076号公報
近年では、硬化初期及び硬化後の長期にわたり水硬性材料に強度を付与・向上させる技術が求められている。しかし、このような要望に充分に応えることができる技術は未だ開発されていないのが現状である。なお、特許文献1〜4には、セメント分散性(減水性)や流動保持性等の発揮が期待されるセメント混和剤用途に、(ポリ)アルキレングリコール鎖と、エチレン系不飽和モノマー化合物等による重合部位とを有するブロック共重合体を用いることが開示されているが、これらブロック共重合体が水硬性材料の強度増進剤用途に特に有用であるとの記載や示唆はない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、強度を高いレベルで発現する水硬性材料を与えることができる水硬性材料用強度増進剤、及び、これを含む水硬性材料を提供することを目的とする。
本発明者は、水硬性材料の添加剤について種々検討したところ、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とがブロック結合してなる(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が、水硬性粒子の分散性(減水性)を発揮できるのみならず、理由は定かではないものの、水硬性材料に高い強度を付与できることを見いだし、水硬性材料の強度増進剤に特に有用なものとなることを見いだした。中でも特に、当該共重合体が、高分子鎖(B)の少なくとも一つの末端部位に、結合部位(X)(好ましくは、非エステル結合を含む結合部位)を介して高分子鎖(A)がブロック結合してなる形態であると、ブロック構造においてシンプルな構造となり、工業的に効率よく製造できるとともに、強度増進性能及び分散性能がより発揮されることを見いだし、本発明に到達したものである。
ここで、従来、重合体の添加量(使用量)が多いと、材料分離が起こりやすい傾向にあり、これらを含む水硬性材料の強度が充分とはならないと考えられてきた。そのため、重合体を水硬性材料の強度増進剤として使用する場合には、重合体を水硬性粒子の分散剤として使用する場合よりも、重合体の添加量を少量に設定する必要があった。しかし、本発明では、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とがブロック結合した構造の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を用いることにより、該共重合体の添加量が多くても、充分な強度を発現することができ、しかも、場合によっては、早期強度と長期強度という従来は両立が困難であった強度の向上を可能にしたものである。
すなわち本発明は、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とがブロック結合してなる(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含む水硬性材料用強度増進剤である。
本発明はまた、上記水硬性材料用強度増進剤を含む水硬性材料でもある。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の水硬性材料用強度増進剤は、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(以下、単に「ブロック共重合体」又は「本発明のブロック共重合体」とも称す)を含む限り、必要に応じて他の成分(例えば、後述する添加剤等)を含んでもよい。
本発明のブロック共重合体は、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とがブロック結合した構造を有する。より具体的には、高分子鎖(B)の少なくとも一つの末端部位に、結合部位(X)を介して高分子鎖(A)がブロック結合してなることが好ましい。
上記ブロック共重合体としては、その取り扱い性や水硬性材料の流動保持性等を考慮すると、重量平均分子量(Mw)が100万以下であることが好適である。より好ましくは50万以下、更に好ましくは30万以下、更により好ましくは20万以下、特に好ましくは15万以下、特により好ましくは10万以下、最も好ましくは5万以下である。また、ある程度、水硬性粒子に吸着した方が性能を発揮しやすく、Mwが大きいほど吸着力が大きくなるという観点から、Mwは1000以上であることが好ましい。より好ましくは5000以上、更に好ましくは1万以上、特に好ましくは2万以上、最も好ましくは3万以上である。
上記ブロック共重合体はまた、数平均分子量(Mn)が、50万以下であることが好ましい。より好ましくは25万以下、更に好ましくは15万以下、更により好ましくは10万以下、特に好ましくは75000以下、最も好ましくは35000以下である。また、Mnは1000以上であることが好ましい。より好ましくは2500以上、更に好ましくは5000以上、特に好ましくは10000以上、最も好ましくは15000以上である。
本明細書中、化合物の重量平均分子量、数平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
<高分子鎖(A)>
上記ブロック共重合体は、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)を有する。
上記不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)とは、不飽和アニオン系単量体を含む単量体成分が重合した構造のものであることが好適である。不飽和アニオン系単量体単位とは、不飽和アニオン系単量体に由来する構成単位(不飽和アニオン系単量体由来の構成単位)であればよいが、該構成単位と同じ構造となるのであれば、他の単量体に由来する構成単位を変性したものであってもよい。なお、不飽和アニオン系単量体単位は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
ここで、不飽和アニオン系単量体由来の構成単位とは、重合反応によって該単量体に含まれる重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記不飽和アニオン系単量体としては、不飽和カルボン酸系単量体(以下、単に「単量体(a)」ともいう)、不飽和スルホン酸系単量体(以下、単に「単量体(b)」ともいう)、及び、不飽和リン酸系単量体(以下、単に「単量体(c)」ともいう)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体であることが好ましい。なお、上記高分子鎖(A)が、不飽和アニオン系単量体を含む単量体成分が重合した構造であって、該不飽和アニオン系単量体は、不飽和カルボン酸系単量体、不飽和スルホン酸系単量体及び不飽和リン酸系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記単量体(a)としては、例えば、下記式(1):
Figure 2015147701
(式中、R、R、R及びRは、その少なくとも一つが−COOMであり、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、−(CH)zCOOM(−(CH)zCOOMは、COOM又はその他の−(CH)zCOOMと無水物を形成していてもよい)を表す。zは、0〜2の整数を表す。M及びMは、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第四級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で表される化合物が好適である。すなわち単量体(a)は、炭素炭素二重結合(C=C)に結合した少なくとも一つのカルボキシル基又はその塩(−COOM)を有する、不飽和カルボン酸系単量体である。
上記一般式(1)において、M及びMが表し得る金属(金属原子)としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の一価金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の二価金属原子;アルミニウム、鉄等の三価金属原子;等が挙げられる。また、有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が挙げられる。
上記一般式(1)で示される不飽和カルボン酸系単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、メチレングルタル酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体;これらのジカルボン酸無水物;これらの塩(例えば、一価金属、二価金属、三価金属、第四級アンモニウムまたは有機アミンの塩);等が挙げられる。中でも、重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩が特に好ましい。
上記単量体(b)としては、例えば、スチレンスルホン酸、又は、これのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩若しくは置換アミン塩;スルホンエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、スルホブチルメタクリレート、スルホエチルアクリレート、スルホプロピルアクリレート若しくはスルホブチルアクリレート等のスルホアルキル(メタ)アクリレート、又は、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩若しくは置換アミン塩;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又は、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩若しくは置換アミン塩等が使用される。好ましくは、スチレンスルホン酸若しくはスルホアルキル(メタ)アクリレート、又は、これらの塩である。塩としては、アルカリ金属塩が好ましい。
上記単量体(c)としては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートモノリン酸エステル、ヒドロキシエチルプロピルメタクリレートモノリン酸エステル、ヒドロキシエチルブチルメタクリレートモノリン酸エステル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノリン酸エステル、又は、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩若しくは置換アミン塩等が使用される。
上記ブロック共重合体において、高分子鎖(A)における不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数は、1以上であることが好ましい。
ここで、不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数の値とは、例えば、上記ブロック共重合体が後述する一般式(I−1)で表される場合は、共重合体全体中の不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数を意味し、また、上記ブロック共重合体が、後述する一般式(I−2)で表されるような、高分子鎖(B)を有する枝状部を3つ以上含む多分岐構造であれば、枝状部1つに含まれる、不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数を意味する。
上記平均導入モル数としてより好ましくは2以上であり、これにより、高分子鎖(A)に基づく性能をより充分に発揮させることが可能となる。更に好ましくは5以上、特に好ましくは15以上である。また、100以下であることが好ましい。100を超える場合には、上記ブロック共重合体全体における不飽和アニオン系単量体単位の導入割合が多くなり、その結果、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位の割合が少なくなりすぎるために、水硬性粒子の分散性能や、水硬性材料の強度増進性能をより向上させることができないおそれがある。より好ましくは50以下、更に好ましくは35以下である。
なお、このように適切に不飽和アニオン系単量体単位と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位の比率を設定することが好適である。
上記ブロック共重合体において、結合部位(X)と結合していない高分子鎖(A)の末端は、化学的に安定に結合し得る構造を有する部位であればその構造は特に限定されるものではない。好ましくは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基である。また、重合溶媒や重合開始剤の分解物も末端に結合することもある。
上記高分子鎖(A)の構成単位として、不飽和アニオン系単量体以外のその他の不飽和単量体由来の構成単位を1種又は2種以上、本願の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
上記その他の不飽和単量体由来の構成単位としては、例えば、(ポリ)アルキレングリコール系単量体単位が挙げられる。(ポリ)アルキレングリコール系単量体単位を含むと、水硬性材料に、充分な強度のみならず、より充分な流動性能を付与することができるため、好適である。すなわち上記高分子鎖(A)は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体単位を更に含むことが好適である。
上記(ポリ)アルキレングリコール系単量体単位を更に含む高分子鎖(A)とは、不飽和アニオン系単量体及び(ポリ)アルキレングリコール系単量体を含む単量体成分が重合した構造を有するものが好適である。(ポリ)アルキレングリコール系単量体単位とは、(ポリ)アルキレングリコール系単量体に由来する構成単位((ポリ)アルキレングリコール系単量体由来の構成単位)であればよいが、該構成単位と同じ構造となるのであれば、他の単量体に由来する構成単位を変性したものであってもよい。なお、(ポリ)アルキレングリコール系単量体単位は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
ここで、(ポリ)アルキレングリコール系単量体由来の構成単位とは、重合反応によって該単量体に含まれる重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記(ポリ)アルキレングリコール系単量体としては、例えば、下記式(2);
Figure 2015147701
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。AOは、同一若しくは異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を表す。なお、AOで表されるオキシアルキレン基が2種以上ある場合、当該基は、ブロック状に導入されていてもよく、ランダム状に導入されていてもよい。yは、0〜2の整数である。xは、0又は1である。r1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。)で表される化合物が好適である。
上記一般式(2)において、Rで表される末端基のうち、炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、炭素数3〜20の脂環式アルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基等が挙げられる。
上記Rで表される末端基としては、分散性等の観点から、親水性基であることが好適である。具体的には、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基、特に好ましくは、水素原子又はメチル基である。
また上記一般式(2)において、(AO)r1で表される(ポリ)アルキレングリコール鎖は、炭素数2のオキシエチレン基(エチレンオキシド)を主体として構成されるものであることが好適である。これにより、上記ブロック共重合体に、より充分な水溶性及び水硬性粒子の分散性能が付与されることとなる。
ここでいう「主体」の意味は、高分子鎖(B)に関して後述するのと同様である。
上記(AO)r1で表される(ポリ)アルキレングリコール鎖が2種以上のアルキレンオキシドにより構成される場合、2種以上のアルキレンオキシドがランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で付加したものであってもよい。
上記一般式(2)中、r1は、1〜300の数である。300以下であることで、製造上の不具合がより解消されるとともに、水硬性材料の粘性がより好適なものとなって水硬性材料の作業性をより向上することができる。好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは100以下、特に好ましくは75以下、最も好ましくは50以下である。また、分散性等の観点から、r1は4以上であることが好ましい。より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上、特に好ましくは25以上である。
上記(ポリ)アルキレングリコール系単量体の具体例としては、例えば、不飽和アルコール(ポリ)アルキレングリコール付加物、(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体が好適である。
上記不飽和アルコール(ポリ)アルキレングリコール付加物としては、不飽和基を有するアルコールに(ポリ)アルキレングリコール鎖が付加した構造を有する化合物であればよい。例えば、ビニルアルコールアルキレンオキシド付加物、(メタ)アリルアルコールアルキレンオキシド付加物、3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、イソプレンアルコール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキシド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物等が好適である。重合時の反応性と経済性の観点から、好ましくは、(メタ)アリルアルコールアルキレンオキシド付加物、3−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物である。
上記(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体としては、不飽和基と(ポリ)アルキレングリコール鎖とがエステル結合を介して結合された構造を有する単量体であればよい。具体的には、不飽和カルボン酸と(ポリ)アルキレングリコールとのエステル化物である、不飽和カルボン酸(ポリ)アルキレングリコールエステル系化合物が好適である。中でも、(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好適であり、より好ましくは(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノメタクリレートである。上記不飽和カルボン酸とエステル化させる(ポリ)アルキレングリコールとしては、例えば、重量平均分子量が200〜20000のものが好適である。
上記高分子鎖(A)において、(ポリ)アルキレングリコール系単量体単位の含有量は、高分子鎖(A)を構成する全単量体成分100質量%に対する、当該(ポリ)アルキレングリコール系単量体の含有量として、0〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0〜5質量%である。
上記その他の不飽和単量体としてはまた、例えば、以下の化合物等も挙げられる。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18のアルキル基を有するアルコールとのエステルである、アルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;等。
<高分子鎖(B)>
上記ブロック共重合体はまた、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を有するが、このような高分子鎖(B)は、1種又は2種以上のアルキレンオキシドから構成される高分子鎖((ポリ)アルキレンオキシド又は(ポリ)アルキレングリコールとも称す)であればよい。(ポリ)アルキレングリコールを「PAG」ともいう。
上記高分子鎖(B)を構成するアルキレンオキシドは、炭素数2〜18のアルキレンオキシドであることが好ましい。より好ましくは炭素数2〜8のアルキレンオキシドである。このように上記高分子鎖(B)がアルキレンオキシドから構成されるものであって、該アルキレンオキシドが炭素数2〜8であり、該アルキレンオキシドの平均付加モル数が1〜1000の範囲である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド等が好適である。また、ジペンタンエチレンオキシド、ジヘキサンエチレンオキシド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキシド等の脂環エポキシド;スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等の芳香族エポキシド;等を用いることもできる。
上記高分子鎖(B)は、水硬性粒子との親和性の観点から、炭素数2〜8程度の比較的短鎖のアルキレンオキシド(オキシアルキレン基)を主体とするものであることが好適である。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドが主体であることであり、更に好ましくは、エチレンオキシドが主体であることである。
ここでいう「主体」とは、高分子鎖(B)が2種以上のアルキレンオキシドにより構成されるときに、全アルキレンオキシドの存在数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全アルキレンオキシド100モル%中のエチレンオキシドのモル%で表すとき、50〜100モル%が好ましい。これにより、本発明のブロック共重合体がより高い親水性を有することとなる。より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
上記高分子鎖(B)が2種以上のアルキレンオキシドにより構成される場合、2種以上のアルキレンオキシドがランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で付加したものであってもよい。
上記高分子鎖(B)はまた、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含む場合には、本発明のブロック共重合体にある程度の疎水性を付与することが可能となるため、水硬性粒子に若干の構造(ネットワーク)をもたらし、水硬性材料の粘性やこわばり感を低減することができる。その一方で、炭素数3以上のアルキレンオキシドを導入し過ぎると、ブロック共重合体の疎水性が高くなり過ぎることから、かえって水硬性粒子を分散させる性能が充分とはならないおそれがある。このため、全アルキレンオキシド100質量%に対する炭素数3以上のアルキレンオキシドの含有量は、30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
上記ブロック共重合体において、高分子鎖(B)におけるアルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数とも称す)は、1〜1000であることが好ましい。1000を超えると、粘性が増大したり、反応性がより充分とはならなかったりする等、作業性の点でより好適なものとはならないおそれがある。より好ましくは2以上、一層好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、更により好ましくは50以上、特に好ましくは75以上、特により好ましくは80以上、最も好ましくは100以上である。また、より好ましくは800以下、更に好ましくは700以下、特に好ましくは600以下、最も好ましくは500以下である。
なお、アルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、共重合体1分子に付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値を意味する。
<結合部位(X)>
上記ブロック共重合体における結合部位(X)、すなわち高分子鎖(A)と高分子鎖(B)とのブロック結合部位としては、エステル結合や、非エステル結合が挙げられる。中でも、非エステル結合を含むことが好適であり、これにより、分散性をより発揮でき、かつ水硬性材料の強度をより発現させることができる。このように上記結合部位(X)が非エステル結合を含む形態や、上記結合部位(X)が非エステル結合である形態は、本発明の好適な形態である。
ここで、上述した特許文献1〜4に記載のブロックポリマーでは全て、ポリアルキレングリコール部位とビニル系単量体の重合部位とのブロック結合部位はエステル結合である。ブロック結合部位がエステル結合であると、アルカリ水溶液中でブロック結合部位(エステル結合)が急速に分解しやすく、分散性をより充分に発揮できない。その一方で、少なくとも非エステル結合を含むと、分散性をより充分に発揮でき、しかも、理由は定かではないが、水硬性材料の早期強度及び/又は長期強度をより大幅に向上することができる。
上記ブロック共重合体が有する結合部位(X)が非エステル結合を含む場合、該結合部位(X)は、高分子鎖(A)と高分子鎖(B)とを化学的に安定に結合し得る構造を有する部位であることが好ましく、その他の構造は特に限定されるものではない。
ここで、「非エステル結合を含む」とは、上記ブロック共重合体における、高分子鎖(A)と高分子鎖(B)との結合部位(ブロック結合部位)のうち少なくとも1つが、非エステル結合であることを意味する。例えば、上記ブロック共重合体が後述する一般式(I−1)で表される場合のように、高分子鎖(A)と高分子鎖(B)との結合部位が共重合体中に1箇所のみである場合は、当該結合部位が非エステル結合であればよい。
上記非エステル結合の含有割合は、上記ブロック共重合体中の結合部位(X)の総量100モル%に対して、上記非エステル結合が50モル%以上であることが好ましい。これにより、水硬性材料の分散性、及び、強度をより高めることができる。より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最も好ましくは、実質的に、結合部位(X)の全てが非エステル結合であることである。
上記結合部位(X)の好ましい構造としては、重合反応に用いられる連鎖移動剤となる構造に由来する有機残基が挙げられる。連鎖移動剤となる構造に由来する有機残基(連鎖移動剤に由来する有機残基)としては、例えば、硫黄原子を含む有機残基、リン原子を含む有機残基が挙げられる。なお、結合部位(X)として、異なった分子中に存在する有機残基の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
後述する一般式(I−1)及び(I−2)においては、結合部位(X)としての有機残基を「X」で示している。
上記結合部位(X)は、硫黄原子を有することが好適である。これにより、後述するような好適な製造方法を適用することによって工業的により効率よく本発明のブロック共重合体を調製することができるため、好ましい。
このような硫黄原子を有する結合部位(X)としては、例えば、下記式(3):
Figure 2015147701
(式中、Rは、有機残基を表す。)で示される構造が挙げられる。有機残基として好ましくは、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、又は、チアゾール等の芳香族基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等で一部置換されていてもよい。)が挙げられる。
上記式(3)中、Rは、高分子鎖(B)と結合する部位であり、硫黄原子(S)は、高分子鎖(A)と結合する部位である。
上記式(3)で示される結合部位は、後述するように、高分子鎖(B)の末端の水酸基をトシル化し、チオ酢酸によってチオアセチル化した後、加水分解して得られる末端のチオール基を、連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和アニオン系単量体(好ましくは不飽和カルボン酸系単量体)を含む単量体成分をブロック重合させることにより、形成することができる。
上記結合部位(X)が硫黄原子を有する非エステル結合であるとは、上記式(3)におけるRが、高分子鎖(B)の末端酸素原子と結合し、下記式(4):
Figure 2015147701
(式中、Rは、上記と同様である。)で示される部位を形成することになるが、この部位においてエステル結合を含まないことである。
なお、結合部位(X)が硫黄原子を有する非エステル結合である場合、後述する一般式(I−1)及び(I−2)においては、結合部位(X)が、高分子鎖(B)の(ポリ)アルキレングリコール系構成単位の末端酸素原子と結合し、上記式(4)で示されるような部位を形成することになる。
一方、上記ブロック共重合体が結合部位(X)としてエステル結合を有する場合、すなわち例えば、上記ブロック共重合体が、メルカプトカルボン酸のカルボキシル基と高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基との間で脱水エステル化反応を起こし、それによって得られたチオールエステルを連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和アニオン系単量体をブロック重合させて得られる場合、該結合部位(X)は、下記式(5):
Figure 2015147701
(式中、Rは、メルカプトカルボン酸残基を表す。)で示される構造となる。メルカプトカルボン酸残基とは、メルカプト基とカルボキシル基を除いた二価の有機基を意味し、好ましくは、炭素数1〜18の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾール等の芳香族基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等で一部置換されていてもよい。)等が挙げられる。
この場合、上記式(5)で表される結合部位は、高分子鎖(B)の末端酸素原子と、下記式(6):
Figure 2015147701
(式中、Rは、上記と同様である。)で示される部位を形成することになり、この部位においてエステル結合を含むことになる。
上記ブロック共重合体において、硫黄原子の含有量は、該共重合体全体100質量%のうち、0.1質量%以上であることが好適である。より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。また、硫黄原子の含有量が10質量%以下となることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは、3質量%以下である。
硫黄原子の含有量は、例えば、末端にチオール基(SH基)を有する高分子鎖(B)(「PAGチオール化合物」ともいう)における硫黄原子の含有量(後述する実施例では、PAGチオール化合物一分子あたりのSH導入数)、高分子鎖(A)における不飽和アニオン系単量体単位のチオール基(SH)1個に対する個数の平均値(後述する実施例では、MAA個/SH)から計算することができる。
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の好ましい構造>
上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を有する。このような構造の例として、例えば、下記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造が挙げられる。すなわち上記ブロック共重合体は、下記一般式(I−1)又は(I−2)で表されるものが好適である。
Figure 2015147701
式中、(B)nは、同一又は異なって、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を表し、Bは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、同一又は異なって、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、共重合体1分子あたりの総数として1〜1000の数である。Xは、同一又は異なって、有機残基を表す。Aは、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖を表す。Zは、活性水素を2個以上有する化合物の残基を表す。Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。m及びpは、それぞれ0以上の数であり、m及びpの合計は、2以上である。
上記一般式(I−1)及び(I−2)で表されるブロック共重合体のいずれも、水硬性材料において強度を充分に発揮させることができるという本発明の作用効果をより充分に発揮することができる。中でも、一般式(I−2)で表されるブロック共重合体は、早期強度をより一層高めることができるため好ましく、特に、一般式(I−2)中、Zが、活性水素を3個以上有する化合物の残基を表し、かつm及びpの合計が3以上である形態が好適である。
なお、上記一般式(I−2)中、Zが、活性水素を3個以上有する化合物の残基を表し、かつm及びpの合計が3以上である形態のブロック共重合体は、3つ以上の枝状部が、活性水素を有する化合物の残基(Z)を基点として枝分かれした構造を有する。すなわち当該一般式(I−2)で表されるブロック共重合体は、多分岐構造を有するものとなる。
上記一般式(I−1)において、式中のXは、結合部位(X)であり、Xを介して、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖Aが、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)nに結合している。
上記一般式(I−1)及び(I−2)において、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表すが、これらの中でも、水素原子を表すことが好適である。
上記一般式(I−2)において、一部の高分子鎖(B)nの隣に位置するXは、結合部位(X)であり、Xを介して、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖Aが、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)nに結合している。
また上記一般式(I−2)において、式中のmは、高分子鎖Aと高分子鎖(B)nとが結合部位Xを介して結合した枝状部の数を表す。pは、Rと高分子鎖(B)nとが結合した枝状部の数を表す。高分子鎖(B)nを有する枝状部の数、すなわちm及びpの合計は、2以上であるが、上述のとおり、3以上であることが好適であり、5以上であることがより好ましい。また、20以下であることが好ましく、より好ましくは13以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは7以下、最も好ましくは6以下である。
なお、本明細書において、単に「枝状部」という場合には、高分子鎖Aと高分子鎖(B)nとが結合部位Xを介して結合した枝状部、及び、Rと高分子鎖(B)nとが結合した枝状部、の両方をいうものとする。
上記一般式(I−2)で表されるブロック共重合体は、高分子鎖(B)を有する枝状部のうちの一部の高分子鎖(B)の末端部位に、高分子鎖(A)を有することになる。すなわち本発明のブロック共重合体の全共重合体分子において、枝状部全部のモル数(100モル%)に対し、高分子鎖(A)が結合部位(X)を介して高分子鎖(B)に付加したモル数の割合の百分率が、100モル%未満となることである。残りの枝状部は、高分子鎖(A)が結合部位(X)を介して高分子鎖(B)に付加していないものとなる。
上記一般式(I−2)でいえば、m+pが、枝状部の高分子鎖(B)の全部の末端部位モル数となり、m/m+pが、高分子鎖(A)が結合部位(X)を介して付加したモル数の割合となる。{m/(m+p)}×100の好ましい範囲は、10〜100モル%であり、より好ましくは30〜100モル%、更に好ましくは40〜100モル%である。
上記枝状部の数(m+p)は、活性水素を2個以上有する化合物中の活性水素数に等しいことが好ましい。すなわち、上記活性水素を2個以上有する化合物中の活性水素の全てに上記枝状部が結合した構造を有することが好適である。これによって、水硬性材料用強度増進剤に、より優れた分散性能を付与することができる。中でも、上述したように、Zが活性水素を3個以上有する化合物の残基を表し、かつ該活性水素の全てに上記枝状部が結合した構造を有することが好適である。
ここで、例えば、上記枝状部の数が、上記活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素数に等しい場合の構造を模式的に示すと、下記式(7)又は(8)のように表すことができる。
Figure 2015147701
上記式(7)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がグリセリン残基(多価アルコール残基、活性水素3個)であり、グリセリンが有する活性水素全てに枝状部が結合し、3つの枝状部のうち、2つの枝状部の末端部位に高分子鎖(A)を有する構造を模式的に示したものである。
上記式(8)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がソルビトール残基(多価アルコール残基、活性水素6個)であり、ソルビトールが有する活性水素全てに枝状部が結合し、6つの枝状部のうち、3つの枝状部の末端部位に高分子鎖(A)を有する構造を模式的に示したものである。
上記活性水素を有する化合物の残基とは、活性水素を有する化合物から活性水素を除いた構造を有する基を意味し、該活性水素とは、アルキレンオキシドが付加できる水素を意味する。このような活性水素を有する化合物の残基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
上記活性水素を有する化合物の残基としては、具体的には、例えば、多価アルコールの水酸基から活性水素を除いた構造を有する多価アルコール残基;多価アミンのアミノ基から活性水素を除いた構造を有する多価アミン残基;多価イミンのイミノ基から活性水素を除いた構造を有する多価イミン残基;多価アミド化合物のアミド基から活性水素を除いた構造を有する多価アミド残基;等が好適である。中でも、多価アミン残基、多価アルコール残基、及び、多価イミン残基のうちポリアルキレンイミン残基が好ましい。すなわち、上記活性水素を3個以上有する化合物の残基は、多価アミン残基、ポリアルキレンイミン残基及び多価アルコール残基からなる群より選択される少なくとも1種の多価化合物残基であることが好適である。
なお、活性水素を有する化合物残基の構造としては、鎖状、分岐状、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。
上記活性水素を有する化合物の残基の好ましい具体例のうち、多価アミン(ポリアミン)としては、1分子中に平均2個以上のアミノ基を有する化合物であればよく、例えば、メチルアミン等のアルキルアミン;アリルアミン等のアルキレンアミン;アニリン等の芳香族アミン;アンモニア等のモノアミン化合物の1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体等が好適である。このような化合物により、多価アミン残基が形成されることになる。また、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の2価以上のアミン化合物や、それらの1種又は2種以上を重合して得られるポリアミンであってもよい。このようなポリアミンは、通常、構造中に第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。
また上記ポリアルキレンイミンとしては、1分子中に平均2個以上のイミノ基を有する化合物であればよく、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン等の炭素数2〜8のアルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体等が好適である。このような化合物により、ポリアルキレンイミン残基が形成されることになる。なお、ポリアルキレンイミンは重合により三次元に架橋され、通常、構造中に第3級アミノ基の他、活性水素原子を持つ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。これらの中でも、エチレンイミンを重合して得られるポリエチレンイミンがより好適である。
上記多価アミン及びポリアルキレンイミンの数平均分子量としては、100〜100000が好ましく、より好ましくは300〜50000、更に好ましくは600〜10000であり、特に好ましくは800〜5000である。
上記多価アルコールとしては、1分子中に平均2個以上の水酸基を含有する化合物であればよいが、1分子中に平均3個以上の水酸基を含有する化合物であることが好ましく、また、炭素、水素及び酸素の3つの元素から構成される化合物であることが好適である。具体的には、例えば、ポリグリシドール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、グルコース等の糖類、グルシット等の糖アルコール類、グルコン酸等の糖酸類等が好適である。このような化合物により、多価アルコール残基が形成されることになる。これらの中でも、工業的な生産効率の観点から、より好ましくは、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタンである。
上記一般式(I−2)で表されるブロック共重合体のうち、特に好ましくは、下記一般式(9)で表されるものである。
Figure 2015147701
式中、Z、m、pは、それぞれ上記と同様である。Rは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。rは、同一又は異なって、オキシエチレン基の平均付加モル数を表し、共重合体1分子あたりの総数として1〜500の数(好ましくは75〜500の数)である。qは、1〜100の数(好ましくは2〜50の数)である。
ここで、本発明のブロック共重合体は、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の少なくとも一方の末端部位に、結合部位(X)を介して、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)がブロック結合してなる形態であることが好ましいが、このうち、不飽和アニオン系単量体がアクリル酸又はメタクリル酸であり、(ポリ)アルキレングリコール鎖が(ポリ)エチレングリコール鎖であり、結合部位(X)が、チオ酢酸又はその金属塩に由来する硫黄原子を含む結合部位である形態の一例を、上記一般式(9)で表している。このような形態であることで、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。
なお、上記一般式(9)において、不飽和アニオン系単量体単位のR及びCOOH基の位置を末端の水素原子側に描いているが、単量体単位ごとにおけるR及びCOOH基の位置は、硫黄原子側に位置していてもよい。上記一般式(9)で示す構造では、単量体単位ごとに、R及びCOOH基の位置が水素原子側であるか又は硫黄原子側であるか、が、ランダムに決定される。
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法>
本発明のブロック共重合体は、例えば、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を得る工程(i)と、該高分子鎖(B)の少なくとも一つの末端部位に不飽和アニオン系単量体を重合させる工程(ii)と、を含む製造方法により得ることができる。
(i)高分子鎖(B)の製造工程
上記高分子鎖(B)を得る工程は特に限定されず、通常の手法で1種又は2種以上のアルキレンオキシドから高分子鎖(B)を製造すればよい。
なお、例えば、上記ブロック共重合体が、高分子鎖(B)を有する枝状部を3つ以上含む形態である場合、すなわち多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体である場合には、活性水素を3個以上有する化合物に、1種又は2種以上のアルキレンオキシドを付加することが好ましい。
アルキレンオキシドの好ましい形態や、その平均繰り返し数の好ましい範囲については上述したとおりである。
(ii)重合工程
以下では、結合部位(X)がエステル結合による場合と、非エステル結合を含む場合とに分けて説明する。
(ii−1)結合部位(X)がエステル結合である場合
この場合、メルカプトカルボン酸(1分子中にカルボキシル基とメルカプト基とを有する化合物)を用い、該化合物が有するカルボキシル基と、高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基との間で脱水エステル化反応を行った後、この反応で得られたチオールエステル(末端にチオールエステル基を有する高分子鎖(B))を連鎖移動剤とし、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和アニオン系単量体をブロック重合させることが好適である。すなわち上記高分子鎖(B)に不飽和アニオン系単量体を重合する工程は、メルカプトカルボン酸と高分子鎖(B)とのエステル化工程、及び、ブロック重合工程を含み、この順で行うことが好ましい。
<エステル化工程>
上記エステル化工程で用いるメルカプトカルボン酸としては、例えば、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトイソブチル酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、メルカプトステアリン酸、メルカプト酢酸、メルカプト酪酸、メルカプトオクタン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトニコチン酸、システイン、N−アセチルシステイン、メルカプトチアゾール酢酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプトイソブチル酸、チオサリチル酸が好ましい。
上記エステル化反応は、通常の液相中におけるエステル反応の常法を用いて行うことができる。更に、例えば減圧したり、キシレン等のエントレーナーを用いて行ってもよい。また、必要により、硫酸、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒を用いて行ってもよい。
上記エステル化反応は、特開2010−070687号公報〔0051〕〜〔0056〕の記載を参照して行うことが好ましい。
<ブロック重合工程>
上記ブロック重合工程は、上記エステル化反応工程で得られたチオールエステル(末端にチオールエステル基を有する高分子鎖(B))を連鎖移動剤とし、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和アニオン系単量体をブロック重合させることになるが、下記(ii−2)に関して後述するブロック重合工程と同様の手順で行うことが好ましい。
(ii−2)結合部位(X)が非エステル結合を含む場合
上記結合部位(X)が非エステル結合を含む場合のブロック共重合体の製造方法の好ましい形態の一例として、上記一般式(I−2)で表される構造を有し、かつチオ酢酸(又はその金属塩)に由来する硫黄原子を含む結合部位を有する共重合体を製造する場合について、以下に説明する。
この場合、上記高分子鎖(B)に不飽和アニオン系単量体を重合する工程は、高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基末端に対してトシル化反応を行う工程(トシル化工程)、チオ酢酸又はその金属塩を反応させてチオアセチル化反応を行う工程(チオアセチル化工程)、チオアセチル化工程によって得られたチオアセチル基を加水分解する工程(加水分解工程)、末端にチオール基を有する高分子鎖(B)を連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和アニオン系単量体をブロック重合させる工程(ブロック重合工程)を含み、この順で行うことが好ましい。
以下、末端にチオール基(SH基)を有する高分子鎖(B)を「PAGチオール化合物」ともいう。
上記トシル化工程は、上記高分子鎖(B)のヒドロキシル基末端と、トシルクロライド(TsCl)等のトシル化剤とを反応させてトシル基を生成し、トシル化高分子鎖を得る工程である。
上記チオアセチル化工程は、トシル化工程によって得られた、ヒドロキシル基末端がトシル化されたトシル基を有する高分子鎖のトシル基と、チオ酢酸カリウム(CHCOSK)等のチオアセチル化剤とを反応させてチオアセチル基を生成し、チオアセチル化高分子鎖を得る工程である。
上記加水分解工程は、チオアセチル化工程によって得られた、トシル基末端がチオアセチル化された、少なくとも1つの末端にチオアセチル基を有する高分子鎖のチオアセチル基を加水分解してチオール基を生成し、チオール化高分子鎖(PAGチオール化合物)を得る工程である。
上記PAGチオール化合物は、その取り扱い性や水硬性材料の粘性等を考慮すると、重量平均分子量(Mw)が50万以下であることが好適である。より好ましくは30万以下、更に好ましくは10万以下、特に好ましくは5万以下、最も好ましくは3万以下である。また、ある程度Mwが大きい方が、水硬性材料の分散性が大きくなるという観点から、Mwは100以上であることが好ましい。より好ましくは300以上、更に好ましくは500以上、特に好ましくは1000以上、最も好ましくは2000以上である。
上記PAGチオール化合物はまた、数平均分子量(Mn)が50万以下であることが好ましい。より好ましくは30万以下、更に好ましくは10万以下、特に好ましくは5万以下、最も好ましくは3万以下である。また、100以上であることが好ましい。より好ましくは300以上、更に好ましくは500以上、特に好ましくは2000以上、最も好ましくは5000以上である。
上記PAGチオール化合物は、チオ酢酸又はその金属塩由来のメルカプト基を有することに起因して、ラジカル重合反応の連鎖移動剤として作用するものであり、ラジカル重合反応を用いた種々の重合体の製造に好適に用いることができる。
<ブロック重合工程>
上述したように、上記PAGチオール化合物は、連鎖移動剤としての機能を有するものであり、この化合物を連鎖移動剤として用いて、不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)を構成する単量体成分(好ましくは単量体(a)を含む)をラジカル重合することにより、本発明のブロック共重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造できる。
上記PAGチオール化合物を連鎖移動剤として用いてブロック共重合体を製造する場合、PAGチオール化合物の硫黄原子(S)を介して、不飽和アニオン系単量体を含む単量体成分が次々に付加して重合体部分が形成され、このようにして形成される重合体が主成分として生成することになる。
上記単量体成分には、上述のようにその他の不飽和単量体を含んでいてもよい。中でも、不飽和アニオン系単量体としては、不飽和カルボン酸系単量体が主体であることが好ましく、実質的に、不飽和アニオン系単量体のすべてが、不飽和カルボン酸系単量体であることが好ましい。
上記重合工程等の好ましい形態は、特願2014−002040号〔0079〕〜〔0095〕、特願2014−002041号〔0080〕〜〔0096〕に記載したとおりである。
本発明の水硬性材料用強度増進剤は、水硬性材料に添加して使用される。このような本発明の水硬性材料用強度増進剤を含む水硬性材料は、本発明の一つである。
上記水硬性材料において、水硬性材料用強度増進剤の添加割合は、必須成分であるブロック共重合体が、固形分換算で、水硬性粒子(例えば、セメント)の全量100質量部に対し、0.01〜10質量部となるように設定することが好ましい。0.01質量部未満では性能的により充分とはならないおそれがあり、逆に10質量部を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.02〜8質量部、更に好ましくは0.05〜6質量部である。
上記水硬性材料の中でも、水硬性粒子としてセメント粒子を含む、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物が好適である。
上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含むものが好適であり、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
上記セメント組成物の1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)としては、例えば、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量200〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好適であり、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65とすることである。このように、本発明の水硬性材料用強度増進剤は、貧配合から富配合に至るまでの幅広い範囲で使用可能であり、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域でも使用可能であり、更に、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
上記水硬性材料用強度増進剤は、高減水率領域においてもその性能を発揮できるため、例えば、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等にも有効に使用することが可能である。更に、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
上記水硬性材料用強度増進剤はまた、必要に応じて、以下に示すようなセメント添加剤(材)等の1種又は2種以上を含んでもよいし、これらと組み合わせて用いてもよい。中でも、オキシアルキレン系消泡剤やAE剤を含む又は併用することが特に好ましい。これら添加剤の使用割合は、本発明の水硬性材料用強度増進剤の必須成分であるブロック共重合体の固形分100質量部に対し、0.0001〜10質量部であることが好適である。
上記セメント添加剤(材)としては、例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、その他界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材等が挙げられ、これらは、特開2012−131997号に記載のものと同様のものを用いることができる。また、その他のセメント添加剤(材)として、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等も挙げられる。
本発明の水硬性材料用強度増進剤は、上述の構成よりなり、強度を高いレベルで発現させることができるうえ、水硬性粒子の分散性にも優れ、水硬性材料の作業性等を良好にすることができるため、水硬性材料の強度増進剤として極めて有用なものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味するものとする。
なお、下記の実施例等では、不飽和アニオン系単量体としてメタクリル酸(MAA)を用いているため、高分子鎖(A)における不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数が「MAA個/SH(チオール末端に結合したMAAの重合度)」にて示されている。
実施例における各種測定は、以下のようにして行った。
<GPC分析法>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー社製、TSKguardcolumnsα+TSKgelα5000+α4000+α3000
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水15076g、アセトニトリル3800gの混合溶媒にホウ酸93.98gと水酸化ナトリウムを30.4g溶解したもの
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL
試料濃度:溶離液で1%に調整した。
<LC分析法>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:Waters社製 Atlantis dC18 ガードカラム+カラム(粒径5μm、内径4.6mm×250mm×2本)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:アセトニトリル/100mM酢酸イオン交換水溶液=40/60(質量%)の混合物に30%NaOH水溶液を加えてpH4.0に調整したもの
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL
試料濃度:溶離液で1%に調整した。
<CE分析法>
装置:ベックマンコールター MDQ
解析ソフト:32Karat
使用キャピラリー:シリカ素管、50cm
EfectiveLength、75μm I.D、375μm O.D
溶離液:ホウ酸1.546gをイオン交換水498.45gに溶解させたもの
検出器:UV
電圧:20kV
キャピラリー温度:25℃
測定時間:60分
試料濃度:溶離液で2%に調整した。
製造例1(PAGチオール化合物1の合成)
1.トシル化工程
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、エチレンオキシドの平均付加モル数50のポリエチレングルコール(PEG50)を22.19部、トシルクロライド(TsCl)を4.576部、トリエチルアミン(EtN)を3.036部、ジクロロメタン(CHCl)を100.0部仕込んだ。反応系内を撹拌しながら、24時間反応を行った後、ろ過により塩を取り除き、ろ液を減圧下で脱溶媒を実施し、PEG50の両末端トシル化体(PEG50−2OTs)を得た。
2.チオアセチル化工程
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、PEG50−2OTsを25.27部、チオ酢酸カリウム(CHCOSK)を2.741部、アセトニトリル(CHCN)を100.0部仕込んだ。反応系内を撹拌しながら、24時間反応を行った後、ろ過により塩を取り除き、減圧下で脱溶媒を実施しPEG50の両末端チオアセチル化体(PEG50−2SAc)を得た。
3.加水分解工程
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、合成したPEG50−2SAcを23.35部、メタノール(MeOH)を50.00部仕込みPEG50−2SAcを溶解させ、1Nの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を25.00部投入し10分間撹拌した後、1Nの塩酸(HCl)を25.00部投入しさらに10分間撹拌し、ジクロロメタンを投入し抽出を行い、有機層を回収し、減圧下で脱溶媒を実施しPAGチオール化合物1を得た。
得られた目的化合物のNMR分析結果は、PEG50一分子に対する平均SH導入数は2.0個であった。
製造例2〜4(PAGチオール化合物2〜4の合成)
製造例1と同様にしてPAGチオール化合物2〜4を合成した。各原料の仕込み量は表1〜3に示す通りである。
Figure 2015147701
Figure 2015147701
Figure 2015147701
表1〜3中、下記の略号は以下のとおりである。
PEG50:エチレンオキシドの平均付加モル数50のポリエチレングルコール
PEG50−2OTs:PEG50のジトシル化体
PEG50−2SAc:PEG50のジチオアセチル化体
MPEG75:エチレンオキシドの平均付加モル数75のメトキシポリエチレングルコール
MPEG75−OTs:MPEG75のトシル化体
MPEG75−SAc:MPEG75のチオアセチル化体
SB450:ソルビトールにエチレンオキシドを平均付加モル数で450モル付加させた6分岐型ポリエチレングリコール
SB450−6Ts:SB450のすべての末端のトシル化体
SB450−6SAc:SB450のすべての末端のチオアセチル化体
SB450−3Ts:SB450の3つの末端のトシル化体
SB450−3SAc:SB450の3つの末端のチオアセチル化体
製造例1(共重合体1の製造)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水15.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、そこへメタクリル酸(MAA)1.390部とイオン交換水(PW)5.56部からなる水溶液(A)(酸水溶液)を4.0時間かけ滴下し、(A)を滴下し始めると同時に、PAGチオール化合物1を3.610部とイオン交換水8.423部からなる水溶液(B)(PAGチオール水溶液)を4.0時間かけ滴下し、(A)を滴下し始めると同時に、アゾ開始剤2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩[2,2'-azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride](和光純薬工業社製、V−50)0.0877部とイオン交換水11.017部からなる開始剤水溶液(C)を5.0時間かけ滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、冷却して、重合を終了し、共重合体1(共重合体水溶液)を得た。この共重合体1の物性を表4に示す。
GPC、LC及びCEにより反応率(消費率)を求めたところ、PAGチオール化合物1の反応率(表中では消費率(%)のチオールの欄に示した)は95.00%、メタクリル酸の反応率(表中では消費率(%)の酸の欄に示した)は95.00%であった。
製造例2〜8(共重合体2〜8の製造)
製造例1と同様にして共重合体2〜8を合成した。各原料の仕込み量は表4に示す通りである。共重合体2〜8の物性を表4に示す。
なお、共重合体6〜8について、高分子鎖(B)を有する枝状部の末端部位モル数に対する、高分子鎖(A)が結合部位(X)を介して付加したモル数の割合(m/(m+p))は、0.5である。
比較製造例1(比較共重合体1の製造)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水1698部を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数:25個)1668部、メタクリル酸332部及び水500部を混合し、更に連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸16.7部を均一に混合することにより、単量体混合物水溶液を調製した。この単量体混合物水溶液及び10%過硫酸アンモニウム水溶液184部をそれぞれ4時間で滴下し、滴下終了後更に10%過硫酸アンモニウム水溶液46部を1時間で滴下した。その後1時間引き続いて80℃に温度を維持し、溶液重合反応を完結させた。そして、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して重量平均分子量(GPCによるポリエチレングリコール換算;以下、同様とする。)23800、ピークトップ分子量18200の重合体水溶液からなる比較用ポリカルボン酸系共重合体(比較共重合体1)を得た。
Figure 2015147701
表4中、「MAA個/SH」は、チオール末端に結合したMAAの重合度を示す。例えば上記式(I−2)でいえば、(不飽和カルボン酸系単量体の個数)/(SHの個数)の値が「m」となり、1つのSHあたりの不飽和カルボン酸系単量体の平均重合個数となる。
また、PAGチオール水溶液におけるPAGチオール化合物の量を、PAGチオール水溶液の「チオール」欄に記載し、酸水溶液におけるメタクリル酸の量を、酸水溶液の「酸」欄に記載した。
「S含有量」とは、共重合体全体100質量%に対する硫黄原子の含有量(%)である。
実施例、比較例
実施例では、各製造例で得た共重合体を各々用いてモルタル試験を行った。
比較例では、比較製造例1で得られた比較共重合体1を用いてモルタル試験を行った。この比較共重合体1は、セメント分散剤として公知の重合体であり、不飽和カルボン酸系単量体と(ポリ)アルキレングリコール系単量体とを用いて得られる共重合体であるが、本発明のブロック共重合体の構造を有さない。
モルタル試験方法は、以下のとおりである。
<モルタル試験方法>
1.混練方法
JIS−R5201−1997に準拠した機械練り用練混ぜ機、さじ、フローテーブル、フローコーン及び突き棒を使用した。この際、特記しない限りは、JIS−R5201−1997に準拠してモルタル試験を行った。
試験に使用した材料及びモルタルの配合は、太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント587g、JIS−R5201−1997に準拠したセメント強さ試験用標準砂1350g、共重合体水溶液と消泡剤とを含むイオン交換水264.1g、である。
共重合体水溶液中の固形分(不揮発成分)は、適量の共重合体水溶液を130℃で加熱乾燥することにより揮発成分を除去して測定し、セメントと配合する際に所定量の固形分(不揮発成分)が含まれるように共重合体水溶液を計量して使用した。
表5〜8に、セメント100質量%に対する、共重合体(重合体1〜8又は比較共重合体1)の添加量(固形分)を示す。
消泡剤は、気泡がモルタル組成物の分散性に及ぼす影響を避けることを目的に添加し、空気量が3.0%以下になるようにした。具体的にはオキシアルキレン系消泡剤を、共重合体に対して0.1%になるような量で使用した。なお、モルタルの空気量が3.0%より大きい場合には、空気量が3.0%以下になるように消泡剤の添加量を調節した。
モルタルは、室温(20±2℃)にてホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)を用いて、4分30秒間で調製した。具体的には、以下のように調製した。
練り鉢に規定量のセメントを入れ、練混ぜ機に取り付け低速で始動させる。パドルを始動させて15秒後に規定量のセメント混和剤用共重合体及び消泡剤を含んだ水を15秒間で入れる。その後、砂を入れ、低速で30秒間練混ぜた後、高速にして、引き続き30秒間練混ぜを続ける。練り鉢を練混ぜ機から取り外し、120秒間練混ぜを休止した後、再度練り鉢を練混ぜ機へ取り付け、高速で60秒間練混ぜた後(1番始めに低速で始動させてから4分30秒後)、さじで左右各10回かき混ぜる。練混ぜたモルタルをフローテーブル上に置いたフローコーンに2層に分けて詰める。各層は、突き棒の先端がその層の約1/2の深さまで入るように、全面にわたって各々15回突き、最後に不足分を補い、表面をならし、1番始めに低速で始動させてから6分後に、フローコーンを垂直に持ち上げた後、テーブルに広がったモルタルの直径を2方向について測定し、この平均値をフロー値とした。このフロー値を表5〜8に示す。
2.強度測定方法
混練後、フロー値と空気量を測定し、圧縮強度試験用試料を作成し、以下の条件にて24時間後、及び、28日後の圧縮強度を測定した。結果を表5〜8に示す。
供試体作成:50mm×100mm
供試体養生(24時間):温度20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生
供試体養生(28日):温度20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生を24時間行った後、27日間水中で養生
供試体研磨:供試体面 研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
Figure 2015147701
Figure 2015147701
Figure 2015147701
Figure 2015147701

Claims (7)

  1. 不飽和アニオン系単量体単位を含む高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とがブロック結合してなる(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含むことを特徴とする水硬性材料用強度増進剤。
  2. 前記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、前記高分子鎖(B)の少なくとも一つの末端部位に、結合部位(X)を介して前記高分子鎖(A)がブロック結合してなる
    ことを特徴とする請求項1に記載の水硬性材料用強度増進剤。
  3. 前記高分子鎖(A)は、不飽和アニオン系単量体を含む単量体成分が重合した構造であって、
    該不飽和アニオン系単量体は、不飽和カルボン酸系単量体、不飽和スルホン酸系単量体及び不飽和リン酸系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水硬性材料用強度増進剤。
  4. 前記高分子鎖(B)は、アルキレンオキシドから構成されるものであって、
    該アルキレンオキシドは、炭素数が2〜8であり、
    該アルキレンオキシドの平均付加モル数は、1〜1000の範囲である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水硬性材料用強度増進剤。
  5. 前記結合部位(X)は、非エステル結合を含む
    ことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の水硬性材料用強度増進剤。
  6. 前記高分子鎖(A)は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体単位を更に含む
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水硬性材料用強度増進剤。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の水硬性材料用強度増進剤を含む
    ことを特徴とする水硬性材料。
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