以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。なお、この明細書において、「前」とはクローラ式不整地作業車両の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれクローラ式不整地作業車両の「上下」方向を意味するものとする。図1は、本発明の実施形態に係るクローラ式不整地作業車両(以下作業車両と称する)の一例を示す左側面図である。図2は、図1の平面図である。図3は、主に車体フレームと懸架装置の構成を示す左側面図である。図4は、図3の平面図である。図5は、後方の斜め上方から見る車体フレームの斜視図である。
図1〜図4に示されるように、クローラ式不整地作業車両(作業車両)1は、車体フレーム10と、前部に備える左右一対の前クローラ走行装置30と、この左右一対の前クローラ走行装置30を車体フレーム10に懸架する前懸架装置40と、後部に備える左右一対の後クローラ走行装置60と、この左右一対の後クローラ走行装置60を車体フレーム10に懸架する後懸架装置70と、回動装置400とを備える。また、作業車両1は、原動機としてのエンジンEと、エンジンEによって駆動するポンプPと、各装置を制御する制御部90なども備える。
車体フレーム10の上には、本体カバー100を被せる。本体カバー100は、車体フレーム10を覆うものである。本体カバー100は、前クローラ走行装置30の上方にフロントフェンダ101を備え、後クローラ走行装置60の上方にリアフェンダ102を備える。
前クローラ走行装置30と後クローラ走行装置60との間で本体カバー100上には、運転シート103を備える。
運転シート103の前方には、作業車両1の走行操作をするためのハンドル104を備える。ハンドル104は、ステアリングシャフト105と、ステアリングシャフト105の上端に設けられた左右の外方に突出するハンドルバー106と、ハンドルバー106の一端に設けられるアクセルグリップ107などから構成される。
ステアリングシャフト105は、車体フレーム10に対して回動自在に支持される。ステアリングシャフト105の下端には、ステアリングシャフト105の回動角度を検出するハンドルセンサ108を備える。
アクセルグリップ107は、ハンドルバー106に回動自在に支持される。アクセルグリップ107は、アクセルグリップの回動角度を検出する不図示のアクセルグリップセンサを備える。
運転シート103とハンドル104との間には、左右のステップフロア110を備える。作業車両1は鞍乗型作業車両である。乗員は運転シート103に跨って座り、左右のステップフロア110に足を乗せて乗車する。
次に、車体フレーム10について説明する。なお、車体フレーム10は、左右対称形状であるため、必要に応じて、右側を構成する部材には符号R、左側を構成する部材には符号Lを適宜付す。
図3〜図5に示すように、車体フレーム10は、複数の鋼材を溶接などによって結合して構成される。鋼材は円筒状のパイプである。車体フレーム10は、前後に延設された左右一対のメインフレーム11(11R,11L)と、フロントフレーム12と、リアフレーム13と、左右一対のフロントアッパーフレーム14(14R,14L)と、左右一対のリアアッパーフレーム15(15R,15L)と、フロントロアフレーム16と、リアロアフレーム17と、前懸架装置40が取り付けられるフロントサポートフレーム18と、後懸架装置70が取り付けられるリアサポートフレーム19などを備える。
メインフレーム11は、フロント部20と、リア部21と、フロント部20とリア部21より下方に位置するセンター部22と、フロント部20とセンター部22との間で前高後低に傾斜するフロントスロープ部23と、センター部22とリア部21との間で前低後高に傾斜するリアスロープ部24とからなる。フロントスロープ部23とリアスロープ部24は、正面視において、上方から下方に向けて作業車両1の内方へも傾斜している。
フロントフレーム12は、左右のメインフレーム11R,11Lのフロント部20R,20Lの各々の前端に連結した正面視逆U字形状である。
リアフレーム13は、左右のメインフレーム11R,11Lのリア部21R,21Lの各々の後端に連結した背面視逆U字形状である。
フロントアッパーフレーム14は、メインフレーム11のフロント部20とフロントスロープ部23との間と、フロントフレーム12とに連結したL字形状である。この左右のフロントアッパーフレーム14R,14Lとフロントフレーム12とによって、後述する前懸架装置40の揺動アーム42の回動スペースを確保し、前懸架装置40を保護している。
リアアッパーフレーム15は、メインフレーム11のリア部21とリアスロープ部24の間と、リアフレーム13とに連結したL字形状である。この左右のリアアッパーフレーム15R,15Lとリアフレーム13とによって、後述する後懸架装置70の揺動アーム72の回動スペースを確保し、後懸架装置70を保護している。
フロントロアフレーム16は、中空の四角柱部材であり、左右のメインフレーム11R,11Lのセンター部22R,22Lの各々の前端に連結する。
リアロアフレーム17は、中空の四角柱部材であり、左右のメインフレーム11R,11Lのセンター部22R,22Lの各々の後端に連結する。
フロントサポートフレーム18は、中空の四角柱部材であり、左右のメインフレーム11R,11Lのフロント部20R,20Lの各々の中央に連結する。また、フロントサポートフレーム18は、中央に垂下された支持部25を備える。この支持部25に前懸架装置40が取り付く。
リアサポートフレーム19は、中空の四角柱部材であり、左右のメインフレーム11R,11Lのリア部21R,21Lの各々の中央に連結する。また、リアサポートフレーム19は、中央に垂下された支持部26を備える。この支持部26に後懸架装置70が取り付く。
なお、車体フレーム10は、上述の構成に限定されるものではない。車体フレーム10は、前懸架装置40および後懸架装置70の取り付けが可能であり、作業車両としての十分な剛性を備えるものであればよい。例えば、車体フレーム10は、円筒状のパイプの替わりに、中空の四角柱部材や断面がL字形状やH字形状の鋼材などから構成されるものであっても良い。
次に、左右一対の後クローラ走行装置60について説明する。なお、左右の後クローラ走行装置60は左右対称形状であるため、以下では左の後クローラ走行装置60を取り上げて説明を行う。右の後クローラ走行装置60の構成については説明を省略する。また、必要に応じて、右の後クローラ走行装置には符号R、左の後クローラ走行装置には符号Lを適宜付す。図6は後クローラ走行装置60の左側面図であり、図7は後方から見た後クローラ走行装置60の主要部拡大図である。
図6、図7に示すように、後クローラ走行装置60は、上部に駆動輪61と、下部に2つの従動輪62と、この2つの従動輪62の間に3つの補助ローラ63と、クローラベルト64と、取付フレーム65と、油圧モータ66と、シリンダー67などを備える。
クローラベルト64は、駆動輪61、2つの従動輪62、3つの補助ローラ63に外接するように掛け回されている。
取付フレーム65は、略三角形状であり、駆動輪61、従動輪62、補助ローラ63が回動自在に支持される。
後クローラ走行装置60の駆動装置としての油圧モータ66は、駆動輪61の車両内側に位置する。この油圧モータ66によって駆動輪61を回転させる。油圧モータ66は、U字形状のブラケット120に固定されており、このブラケット120に後懸架装置70が連結される。
シリンダー67は、一端にピストンヘッドを有するピストンロッドと、シリンダーライナーなどから構成される。シリンダー67の一端は取付けフレーム65に左右方向を軸として回動自在に支持され、他端はブラケット120に左右方向を軸として回動自在に支持されている。
後クローラ走行装置60は、2つの従動輪62の間にあるクローラベルト64が地面と接地する。つまり、後クローラ走行装置60は、底辺が接地部68となる上向き三角形状である。なお、この三角形状は、駆動輪61が位置する頂点が前方に偏った形状である。
後クローラ走行装置60は、上述のような構成にすることで、クローラベルト64の接地部68を広くすることができ、安定した走行が可能となる。
また、後クローラ走行装置60の上部に駆動輪61が位置しており、駆動輪61を回転させる油圧モータ66は駆動輪61と同軸上に配設され、油圧モータ66の車両内方への突出を少なくしている。つまり、油圧モータ66は、駆動輪61に対して、インホイール状に配設されている。したがって、左右の後クローラ走行装置60R,60L間での車体フレーム10の下方には大きな空間を形成することができる。そして、後述する斜面横断走行時において、油圧モータ66や後懸架装置70の連結部が斜面と当接することを低減できる。
また、シリンダー67は、後クローラ走行装置60自体の左右方向を軸とした回動を抑制している。後クローラ走行装置60は、この抑制部材としてのシリンダー67を備えることで、安定して接地することができ、走行性が向上する。また、後クローラ走行装置60が不正地の凹凸と当接する際、後懸架装置70との連結部へのねじれや衝撃などの負荷をシリンダー67によって低減することができ、耐久性が向上する。
なお、後クローラ走行装置60は、取付フレーム65に対する従動輪62の位置を移動させることでクローラベルト64のテンションを調節する不図示のテンション調節装置、駆動輪61の回転を止める不図示のブレーキ装置なども備える。
次に、左右一対の前クローラ走行装置30について説明する。なお、左右の前クローラ走行装置30は左右対称形状であるため、以下では左の前クローラ走行装置30を取り上げて説明を行う。右の前クローラ走行装置30の構成については説明を省略する。また、必要に応じて、右の後クローラ走行装置には符号R、左の後クローラ走行装置には符号Lを適宜付す。図8は前クローラ走行装置30の左側面図である。
図8に示すように、前クローラ走行装置30は、上部に駆動輪31と、下部に2つの従動輪32と、この2つの従動輪32の間に3つの補助ローラ33と、クローラベルト34と、取付フレーム35と、油圧モータ36と、シリンダー37などを備える。
ここで、前クローラ走行装置30は、上述の後クローラ走行装置60とは側面視の形状が異なるものであり、後クローラ走行装置60と同じ構成については説明を省略する。
前クローラ走行装置30は、2つの従動輪32の間が下方に彎曲した形状である。駆動輪31は、前クローラ走行装置30における前後方向の中央に位置している。そして、この下方に彎曲した2つの従動輪32の間にあるクローラベルト34が地面と接地する。つまり、前クローラ走行装置30は、後クローラ走行装置60より接地部38が少ない構成である。また、前方の従動輪32が接地部38より上方に位置している。
前クローラ走行装置30は、上述のような構成にすることで、地面の上方に隆起した凸部を乗り越える際、凸部にクローラベルト34が引っかかり易くなり、走行が安定する。
ここで、前クローラ走行装置30および後クローラ走行装置60は、エンジンEの駆動力によって駆動する。エンジンEの駆動力は、ポンプPに伝達され、さらに不図示の比例電磁弁を介して油圧モータ36,66に伝達される。そして、油圧モータ36,66を駆動させることで前クローラ走行装置30および後クローラ走行装置60が駆動し、作業車両1を走行させることができる。なお、前後のクローラ走行装置30,60への駆動力の伝達は、柔軟性のある部材、例えばホースによって伝達することが望ましい。前後のクローラ走行装置30,60は、後述する前後の懸架装置40,70によって上下方向へ大きく揺動可能である。そこで、駆動力の伝達に柔軟性のある部材を用いることで、この上下方向の揺動を阻害することがなく、駆動力を前後のクローラ走行装置30,60に伝達することができる。
なお、前クローラ走行装置30および後クローラ走行装置60は、上述の構成に限定されるものではない。例えば、側面視の形状が四角形状や台形状のクローラ走行装置であってもよい。また、前クローラ走行装置30と後クローラ走行装置60とが同じ形状であってもよく、部品点数が少なくなり、生産性が向上する。
また、駆動輪31,61と油圧モータ36,66との間に変速装置を備え、油圧モータ36,66の駆動力をこの変速装置を介して駆動輪31,66に伝達する構成であってもよい。このような構成にすることで、前後のクローラ走行装置30,60を所望の出力で駆動することがさらに容易にできる。
また、前後のクローラ走行装置30,60自体の左右方向を軸とした回動を抑制する抑制部材は、上述のシリンダー37,67の構成に限定されるものではない。例えば、スプリングから構成されるものであってもよい。
また、前後のクローラ走行装置30,60の駆動装置は、油圧モータ36,66によるものに限定されるものではない。例えば、油圧モータに替わって電動モータで駆動輪31,61を回転する構成であってもよい。この電動モータを用いる場合、エンジンEからクローラ走行装置への駆動力は、電気(電力)によって伝達されるものであり、柔軟性のある部材、例えば、フレキシブルなワイヤーハーネスを用いて伝達する。このような構成にすることで、上述のホースと同様に、前後のクローラ走行装置の上下方向の揺動を阻害することがない。
次に、前懸架装置40および後懸架装置70について説明する。なお、前懸架装置40と後懸架装置70とは、前後対称形状であるため、以下では後懸架装置70を取り上げて説明を行い、前懸架装置40の構成については説明を省略する。また、後懸架装置70は左右対称形状であるため、必要に応じて、右側を構成する部材には符号R、左側を構成する部材には符号Lを適宜付す。図9は後懸架装置70を説明する背面図であり、図10は後方の斜め上方から見た牽引アーム71の斜視図であり、図11は前方の斜め上方から見た揺動アーム72の斜視図である。
後懸架装置70は、左右一対の牽引アーム71(71R,71L)と、揺動アーム72と、左右一対の連結アーム73(73R,73L)などを備える(図3,図4,図9参照)。
図10に示すように、前後に延設された牽引アーム71(71R,71L)は、後端に左右方向に貫通した貫通孔74(74R,74L)を有し、前端に車両の内方に向かって垂設された円筒状の支持部材75(75R,75L)を有する。また、牽引アーム71と支持部材75とに筋交い状に連結する補強部材76(76R,76L)を設ける。
左右の牽引アーム71R,71Lは、円筒状の支持部材75に回動シャフト77が挿通される。この回動シャフト77は、ブラケット121R,121Lを介して、左右のメインフレーム11R,11Lのセンター部22R,22Lの後端の間に取り付けられる。したがって、左右の牽引アーム71R,71Lは、前端が車体フレーム10に左右方向を軸として回動自在に支持される。
また、左の牽引アーム71Lは、後端の貫通穴74Lに回動シャフト78Lが挿通される(図7参照)。回動シャフト78Lはブラケット122Lを介して左の後クローラ走行装置60Lの油圧モータ66Lを支持するブラケット120Lに取り付けられる。ここで、回動シャフト78Lは、左の後クローラ走行装置60Lの油圧モータ66Lの回動シャフトと同軸上に位置している。右の牽引アーム71Rは、上述の左の牽引アーム71Lと同様に、右の後クローラ走行装置60Rの油圧モータ66Rを支持するブラケット120Rに取り付けられる。
したがって、左右の牽引アーム71R,71Lは、後端が後クローラ走行装置60R,60Lにそれぞれ左右方向を軸として回動自在に支持されている。
ここで、牽引アーム71は上述の構成に限定されるものではない。牽引アーム71は、前後方向に延設され、一端が車体フレーム10に左右方向を軸として回動自在に支持され、他端が後クローラ走行装置60に左右方向を軸として回動自在に支持されるものであればよい。
例えば、牽引アーム71は、補強部材76を備えない構成であってもよい。また、牽引アーム71は、支持部材75を備えない構成であってもよく、前端と後端とにそれぞれ左右方向に貫通した貫通孔を有する構成であってもよい。しかし、牽引アーム71の強度を高くするためには、円筒状の支持部材75や補強部材76を備えることが好ましい。
図11に示すように、揺動アーム72は、左右方向に延設された角柱部材であり、中央には上下方向に幅広に形成された支持部78を有する。揺動アーム72の左右方向の中心(支持部78)には、前後方向に貫通した貫通孔を有する。ここで、リアサポートフレーム19の支持部26は、前方に向かって垂設された回動シャフト79を備える。そして、この回動シャフト79は、揺動アーム72の貫通孔に挿通される。したがって、揺動アーム72は、左右方向の中心で車体フレーム10に前後方向を軸として回動自在に支持されている。
ここで、揺動アーム72は上述の構成に限定されるものではない。揺動アーム72は、左右方向に延設され、左右方向の中心で車体フレーム10に前後方向を軸として回動自在に支持されるものであればよい。
例えば、揺動アーム72は、上方に彎曲した円弧状であって、両端が回動中心よりも下方に位置するものであってもよい。逆に、下方に彎曲した円弧状であって、両端が回動中心よりも上方に位置するものであってもよい。
また、揺動アーム72が後方に向かって垂設された回動シャフトを備え、車体フレーム10がこの回動シャフトを回動自在に支持する構成としてもよい。また、揺動アーム72は、上下方向に幅広に形成された支持部78を備えない構成であってもよい。しかし、揺動アーム72の強度を高くするために、この支持部78を備えることが好ましい。
連結アーム73は、スプリング80とシリンダー81などから構成される伸縮自在な棒状の防振装置であり、いわゆるダンパーである。
左の連結アーム73Lの一端は自在継手としてのボールジョイント82Lを介して揺動アーム72の左側端部に連結される(図11参照)。左の連結アーム73Lの他端は、自在継手としてのボールジョイント83Lを介して、左の後クローラ走行装置60Lの油圧モータ66Lを支持するブラケット120Lに連結される(図7参照)。
右の連結アーム73Rは、上述の左の連結アーム73Lと同様に、一端が自在継手としてのボールジョイント82Rを介して揺動アーム72の右側端部に連結される。また、右の連結アーム73Rの他端は、自在継手としてのボールジョイント83Rを介して、右の後クローラ走行装置60Rの油圧モータ66Rを支持するブラケット120Rに連結される。
つまり、連結アーム73は、一端がボールジョイント82を介して揺動アーム72に連結され、他端がボールジョイント83を介して後クローラ走行装置60に連結されている。
ここで、連結アーム73は上述の構成に限定されるものではない。連結アーム73は、一端が自在継手を介して揺動アーム72に連結され、他端が自在継手を介して後クローラ走行装置60に連結されるものであればよい。
例えば、自在継手のボールジョイントの替わりに、十字軸式の自在継手を用いてもよい。また、連結アーム73は、伸縮自在な防振装置でなくてもよく、鋼材からなるアームであってもよい。しかし、安定して走行するとともに乗り心地を向上させるためには、連結アーム73はダンパーの役割を果たす防振装置であることが好ましい。また、このような構成にすることで、車体フレームとクローラ走行装置との間に別途防振装置を設けることがなくなり、部品点数の削減や生産性が向上する。
次に、回動装置400について説明する。回動装置400は、後懸架装置70の揺動アーム72を車体フレーム10に対して強制的に回動させるものである。図12に示すように、回動装置400は、ピストンヘッドを有するピストンロッド401と、このピストンヘッドを内部に挿入可能とする有底筒状のシリンダーライナー402などから構成されるシリンダーである。シリンダー(回動装置)400の一端は、左の牽引アーム71Lに左右方向を軸として回動自在に取り付ける。シリンダー400の他端は、車体フレーム10の左のメインフレーム11Lのリア部21に左右方向を軸として回動自在に取り付ける。このシリンダー400を伸縮させることにより、牽引アーム71Lを上下方向に揺動させ、牽引アーム71Lに連結する揺動アーム72を車体フレーム10に対して回動させる。
なお、このシリンダー400は、右の牽引アーム71Rと右のメインフレーム11Rのリア部21との間に備える構成でもよい。また、前懸架装置40と後懸架装置70とのそれぞれに備えてもよく、前懸架装置40のみに備えてもよい。また、シリンダー400の駆動源は特に限定されるものではなく、例えば、ポンプPを駆動源としてシリンダー400を駆動させる。ポンプPとシリンダー400とを不図示の比例電磁弁を介して接続し、この比例電磁弁を制御することによって、シリンダー400を制御する。
次に、前懸架装置40および後懸架装置70の動作について説明する。なお、前懸架装置40と後懸架装置70とは、前後対称形状であるため、以下では後懸架装置70を取り上げて説明を行い、前懸架装置40については説明を省略する。
まず、左右方向で高低差(段差)を有する不整地の走行時について説明する。図13は、不整地走行時の後懸架装置70の状態を説明する背面図である。地面G1は、基準面G2と、基準面G2から上方に隆起した凸部を有し、基準面G2と凸部の上面G3との高低差はHである。基準面G2と凸部の上面G3は、それぞれ水平である。そして、右の後クローラ走行装置60Rが凸部の上面G3に接地し、左の後クローラ走行装置60Lが基準面G2に接地している。図14、図15には、図13における左側面図と右側面図をそれぞれ示す。
図13に示すように、右の後クローラ走行装置60Rが凸部にさしかかると、右の後クローラ走行装置60Rは上方に移動する。右の後クローラ走行装置60Rが上方に移動することにより、右の連結アーム73Rは上方へ移動する。右の連結アーム73Rが上方へ移動することにより、揺動アーム72は反時計周り回動する。揺動アーム72が反時計回りに回動することにより、左の連結アーム73Lには下方へ押す力が加わる。左の連結アーム73Lは、地面G1に接地している左の後クローラ走行装置60Lに連結しているため、上下方向へは移動しない。したがって、揺動アーム72が反時計回りに回動する際、車体フレーム10が上方へ移動する。そして、左右の後クローラ走行装置60R,60Lの高低差がHとなり、車体フレーム10はH/2だけ上方へ移動している。
このように後懸架装置70によって左右の後クローラ走行装置60R,60Lが上下方向に揺動することによって、左右方向で高低差を有する不整地を安定して走行することができる。
ここで、車体フレーム10を基準とすると、右の後クローラ走行装置60Rは上方へ移動し、左の後クローラ走行装置60Lは下方へ移動している。また、図示しないが、上述とは逆に、左の後クローラ走行装置60Lが凸部の上面G3に接地し、右の後クローラ走行装置60Rが基準面G2に接地する場合、右の後クローラ走行装置60Rが下方に移動し、左の後クローラ走行装置60Lは上方へ移動する。つまり、左右の後クローラ走行装置60R,60Lは、上下方向にそれぞれ逆向きに連動して揺動する。
これは、左右の後クローラ走行装置60R,60Lが、車体フレーム10に前後方向の軸AX1を回動軸として支持される揺動アーム72を介して、連結されているためである。
なお、後クローラ走行装置60は、左右方向へ移動することなく、また、前後方向を軸とて回動することなく、上下方向に揺動する。そして、後クローラ走行装置60の接地部68は、車体フレーム10に対して、常に平行状態に保たれている。つまり、後クローラ走行装置60は、背面視において、車体フレーム10に対して、上下方向にスライド移動する。
これは、左右の後クローラ走行装置60R,60Lが、一端が車体フレーム10に左右方向の軸AX2を回動軸として支持され、他端が後クローラ走行装置60に左右方向の軸AX3を回動軸として支持される牽引アーム71R,71Lにそれぞれ連結しているためである。
なお、図14、図15に示すように、左右方向からみた後クローラ走行装置60の移動軌跡(軸AX3の軌跡)は、軸AX2を中心とする円弧69R,69Lとなる。そして、後クローラ走行装置60は前後方向へも移動することとなる。この後クローラ走行装置60の前後方向の移動による連結アーム73へのねじれを吸収するために、連結アーム73の両端には自在継手としてのボールジョイント82,83を備えている。
ここで、左右の後クローラ走行装置60R、60Lは、車体フレーム10を基準とすると、高低差がない状態からそれぞれ上下逆方向にH/2だけ移動することでその高低差がHとなっている。つまり、車体フレーム10を基準とすると、左右の後クローラ走行装置60R、60Lの上下方向の移動量は、基準面G2と凸部の上面G3との高低差Hの半分である。また、車体フレーム10の上下方向の移動量は、基準面G2と凸部の上面G3との高低差Hの半分である。
したがって、地面Gの凹凸の変化に対する後クローラ走行装置60の上下方向の追従性が速く、走行性や操作性や乗り心地が良い。また、前後の懸架装置40,70は、左右のクローラ走行装置30R,30L,60R,60Lを一体として車体フレーム10に懸架する構成であり、それぞれのクローラ走行装置を独立して懸架する構成よりも簡易であり、部品定数が削減され、生産性やメンテナンス性が良い。
ここで、上述のシリンダー400を伸縮させて揺動アーム72を回動させることにより、左右の後クローラ走行装置60R,60Lを上下方向に揺動させてもよい。しかし、左右の後クローラ走行装置60R,60Lを地面G1の凸部に沿わせるようにシリンダー400を操作することは困難な場合がある。したがって、このような左右方向で高低差を有する不整地の走行時には、シリンダー400は作動させないことが好ましい。つまり、シリンダー400は、伸縮自在な状態とする。
次に、斜面の横断走行時について説明する。図16、図17は、斜面の横断走行時の後懸架装置70の状態を説明する概略模式図である。ここで、地面G4は、右側が山であり、左側が谷である斜面である。また、ボールジョイント82、83はボールジョイントの回動中心を示すものである。
まず、図16に示すように、斜面の横断走行時には、車体フレーム10は斜面の傾斜に沿って(左側下がりに)傾斜する。この状態で走行すると、作業車両1は谷の方向へ横転や横滑りをする場合がある。
このような状態の時、上述のシリンダー400を伸縮させることによって、車体フレーム10の左右方向の傾きをなくす(水平に近づけるようにする)。シリンダー400を伸長させると、図17に示すように、右の後クローラ走行装置60Rは上方移動し、左の後クローラ走行装置60Lは下方へ移動する。そして、車体フレーム10は、右側に傾き、水平状態に近づく。これは、左右の後クローラ走行装置60R,60Lが、車体フレーム10に前後方向の軸AX1を回動軸として支持される揺動アーム72を介して、連結されているためである。左の後クローラ走行装置60Lが連結している左の牽引アーム71Lをシリンダー400によって下方に押し下げることで、揺動アーム72は背面視反時計周りに回動し、右の後クローラ走行装置60Rが上方に移動する(図13参照)。
この時、後クローラ走行装置60の接地部68は車体フレーム10に対して常に平行状態に保たれるため、後クローラ走行装置60の接地部68の山側部が斜面にエッジとして食い込むことになる。また、左右の後クローラ走行装置60R,60Lは連動して上下方向逆向きに揺動するため、素早く水平に近づけることができる。したがって、車体フレーム10の左右方向の傾きを小さくできるとともに、後クローラ走行装置60が横滑りをしにくくり、斜面横断走行を安定してでき、走行性や操作性や乗り心地が良い。
ここで、前クローラ走行装置30と後クローラ走行装置60は、それぞれの接地部38,68の山側部をエッジとして斜面に食い込ませることになる。斜面が硬い場合などでは、左右の前クローラ走行装置30R,30Lと左右の後クローラ走行装置60R,60Lをそれぞれ上下方向に揺動させることが難しい場合がある。
しかし、このような場合であっても、上述の回動装置としてのシリンダー400によって揺動アーム72を回動させ、斜面の傾斜に合うように左右の後クローラ走行装置60R,60Lをそれぞれ上下方向に揺動させることが容易に行える。したがって、斜面の横断走行時の走行性や操作性が向上する。
また、左右の後クローラ走行装置60R,60Lは揺動アーム72を介して連結しているため、左右の後クローラ走行装置60R,60Lを個別に揺動させる必要はない。一つのシリンダー400の伸縮のみによって、揺動アーム72を回動させ、左右の後クローラ走行装置60R,60Lを上下方向に揺動することができる。
なお、上述の回動装置400の操作方法は特に限定されるものではなく、例えば、左右のステップフロア110にそれぞれ設けた不図示の左右のペダルの踏み込みによって行う。右のペダルを踏み込む場合に、シリンダー400を伸長し、揺動アーム72が背面視反時計周りに回動させる。左のペダルを踏み込む場合に、シリンダー400を収縮し、揺動アーム72が背面視時計周りに回動させる。このような操作方法にすると、乗員は車体フレーム10を傾かせたい側のペダルを踏みこむことでシリンダー400を操作できる。したがって、シリンダー400の操作は容易に行える。
なお、上述の斜面横断走行の説明では、図17に示すように、車体フレーム10の左右方向の傾きが小さくなる(水平に近づく)ようにすることで走行を安定させるが、安定した走行が可能であればよく、このような走行に限定されるものではない。斜面の表面の硬さ、斜面の傾斜角度、走行速度などの走行状況によって、車体フレーム10の左右方向の傾きは適宜調節するものである。
例えば、斜面の表面が硬い場合には、後クローラ走行装置60の接地部68の山側部が斜面にエッジとして食い込みにくくなる。そこで、図18に示すように、車体フレーム10を水平位置から斜面の山側(右側)へ角度θだけ傾けて走行する。ここで、直線L1は鉛直線、L2は水平線であり、地面G5は、右側が山であり、左側が谷である斜面である。このように走行することで、後クローラ走行装置60の接地部68の山側部が斜面にエッジとして食い込みやすくなり、斜面横断走行を安定してできる。また、山側に車体フレーム10を傾けて走行することで、谷側に横転する危険性を低減することができる。横滑りをするよりも谷側に横転する方が危険であり、より重大な危険を回避するように、あえて山側に車体フレーム10を傾けて走行してもよい。
ここで、左右の後クローラ走行装置60R,60Lは、上下方向にそれぞれ逆向きに連動して揺動するが、その揺動は揺動アーム72の形態に依存する。これは、後懸架装置70が揺動アーム72や連結アーム73などから構成されるクランク機構であるからである。そこで、揺動アーム72の形態による左右の後クローラ走行装置60R,60Lの上下方向の揺動について説明する。
図19〜図21には、上述の揺動アーム72の形態における左右の後クローラ走行装置60R,60Lの上下方向の揺動を説明する概略模式図を示す。図22には別の形態の揺動アームを、図23には更に別の形態の揺動アームを示す。なお、図19〜図23におけるボールジョイントは、ボールジョイントの回動中心を示すものである。
図19に示すように、揺動アーム72の回動軸AX1は、左右のボールジョイント82R,82Lの回動中心を結ぶ線上にある。なお、左右の後クローラ走行装置60R,60Lは、上下方向に移動していない状態である。
図19には、揺動アーム72が車体フレーム10に対して反時計回りにθ11回動した状態を示す。H1Rは、回動軸AX1と右の後クローラ走行装置60R(ボールジョイント83R)との上下方向の距離を示す。H1Lは、回動軸AX1と左の後クローラ走行装置60L(ボールジョイント83L)との上下方向の距離を示す。ここで、距離H1Rは、揺動アーム72の回動角度が増加するにしたがって減少する。距離H1Lは、揺動アーム72の回動角度が増加するにしたがって増加する。揺動アーム72の回動角度と距離H1R,H1Lの増加および減少との関係は、揺動アーム72や連結アーム73の長さなどによって決まる。
図21に、揺動アーム72を更に回動させた状態を示す。揺動アームの回動角度はθ12である。図20に示す状態から更に揺動アーム72を反時計回りに回動させると、距離H1Rは減少し、距離H1Lも減少する。したがって、左右のクローラ走行装置60R,60Lは、車体フレーム10を基準とした場合、どちらも上方に移動していることになる。
このように、揺動アーム72の回動角度がある角度以上になると、左右のクローラ走行装置60R,60Lが上下方向にそれぞれ逆向きに連動して揺動しない場合がある。この時、左右のクローラ走行装置60R,60Lは、不整地の凹凸に対してスムーズに追従しなくなってしまう。これは、揺動アーム72と連結アーム73とによってクランク機構が形成されているためである。この現象は、揺動アーム72の回動軸AX1と、連結アーム73の両端のボールジョイント82、83の回動中心が一直線上に位置する状態(変曲状態)を変曲点として起こる。
次に、図22に示す別の形態の揺動アーム272について説明する。揺動アーム272は、上方に彎曲した円弧状である。そして、揺動アーム272の回動軸AX21は、左右のボールジョイント282R,282Lの回動中心を結ぶ線より上方にある。また、ボールジョイント282の回動中心と回動軸AX21とを結ぶ線と、水平線とのなす角度は、α21である。
ボールジョイント282の回動中心は、回動軸AX21に対して下方に位置している。ここで、前述の揺動アーム72のボールジョイント82の回動中心は、回動軸AX1と同じ高さに位置している。したがって、揺動アーム272を反時計回りに回動させた場合、前述の揺動アーム72の場合よりも小さい回動量で上述の変曲状態となる。
次に、図23に示す別の形態の揺動アーム372について説明する。揺動アーム372は、下方に彎曲した円弧状である。そして、揺動アーム372の回動軸AX31は、左右のボールジョイント382R,382Lの回動中心を結ぶ線より上方にある。また、ボールジョイント382の回動中心と回動軸AX31とを結ぶ線と、水平線とのなす角度は、α31である。
ボールジョイント382の回動中心は、回動軸AX31に対して上方に位置している。したがって、揺動アーム372を反時計回りに回動させた場合、前述の揺動アーム72の場合よりも大きい回動量で上述の変曲状態となる。
ここで、左右の後クローラ走行装置60R,60Lを上下方向にそれぞれ逆向きに連動して揺動可能な揺動量(後クローラ走行装置60の上下方向の移動量)をより大きくするためには、上述の変曲状態となりにくくする必要がある。
変曲状態となる条件は、揺動アーム72や連結アーム73の長さなどによって決まるものであり、複雑なものとなる。しかし、揺動アームの回動角度と変曲状態との関係は、揺動アームに連結するボールジョイントの回動中心と揺動アームの回動軸とを結ぶ線と、水平線とのなす角度α21,α31によっておおよその表現をすることができる。
揺動アームに連結するボールジョイントの回動中心が揺動アームの回動軸より上方にある時を正とし、揺動アームに連結するボールジョイントの回動中心が揺動アームの回動軸より下方にある時を負とする。経験則から、この角度α21,α31は、−45°以上かつ45°以下であること好ましく、ゼロであることがさらに好ましい。なお、図19に示す揺動アーム72におけるこの角度は、ゼロである。
この角度が−45°未満の場合、揺動アームの回動量を大きくすることができず、左右のクローラ走行装置の上下方向の移動量を大きくすることができない。また、揺動アームの回動量に対する左右のクローラ走行装置の上下方向の移動量が小さくなってしまう。また、この角度が45°を超える場合、揺動アームの回動量に対する左右のクローラ走行装置の上下方向の移動量が小さくなってしまう。
また、上述の前後の懸架装置40,70における牽引アーム41,71は、一端が車体フレーム10に支持され、他端がクローラ走行装置30,60に支持される。しかし、前後の懸架装置40,70は、この牽引アーム41,71に替わって、公知のダブルウィッシュボーン式サスペンションで用いられる上下2組のアーム(アッパーアームとロワアーム)を車体フレーム10とクローラ走行装置30,60との間に設ける構成であってもよい。このような構成にすることで、車体フレーム10とクローラ走行装置30,60との間の連結の強度が高くなる。しかし、このような構成にすることで、クローラ走行装置30,60の上下方向の揺動可能量(上下方向への移動可能量)が小さくなってしまうため、上述の牽引アーム41,71による構成の方が好ましい。
なお、シリンダー(回動装置)400は、上述の構成に限定されるものではない。揺動アーム72を車体フレーム10に対して回動させるものであればよく、例えば、図24に示すような構成であってもよい。図24に示す回動装置410は、ピストンヘッドを有するピストンロッド411と、このピストンヘッドを内部に挿入可能とする有底筒状のシリンダーライナー412などから構成されるシリンダーである。なお、図5に示す車体フレーム10において、リアサポートフレーム19の上方であって、左右のリアアッパーフレーム15R,15Lの各々に接続するフレーム413を設ける。
シリンダー(回動装置)410の一端は、揺動アーム72に前後方向を軸として回動自在に取り付ける。シリンダー410の他端は、フレーム413に前後方向を軸として回動自在に取り付ける。このシリンダー410を伸縮させることにより、揺動アーム72を車体フレーム10に対して回動させる。ここで、シリンダー410の伸縮する力の一部は、揺動アーム72の回動方向と垂直の方向に逃げてしまう。したがって、回動装置は、上述のシリンダー400の構成の方が好ましい。
また、図25に示すような構成の回動装置420であってもよい。回動装置420は、油圧モータ421とギアボック422などから構成される。ここで、揺動アーム423は、上述の揺動アーム72とは、車体フレーム10への支持の構成が異なる。揺動アーム423は、後方に向かって垂設された回動シャフト424を備える。また、リアサポートフレーム425は、上述のリアサポートフレーム19における回動シャフト79に替わって前後方向に貫通した貫通孔を備える。この貫通孔に回動シャフト424を挿通することで、揺動アーム423は、リアサポートフレーム425(車体フレーム10)に前後方向を軸として回動自在に支持される。
回動シャフト424は、ギヤボックス422内の不図示のギヤを介して、油圧モータ421と連結している。油圧モータ421を回動させることにより、回動シャフト424が回動し、揺動アーム423が回動する。回動装置420は、油圧モータ421が電動モータである構成であってもよい。
なお、上述の回動装置400,410,420は、乗員が操作する構成であってもよいが、例えば、制御部90が回動装置400,410,420を制御する構成であってもよい。車体フレーム10の水平に対する左右方向の傾斜量を検出する不図示の傾斜センサを備え、この傾斜センサの検出値に基づいて制御部90が回動装置400,410,420を制御する構成であってもよい。このような構成にすることで、車体フレーム10の水平に対する左右方向の傾斜量に基づいて、左右の後クローラ走行装置60R,60Lをそれぞれ上下方向に自動で揺動させることができ、車体フレーム10を自動で水平に保持する(近づける)ことができ、斜面の横断走行時の走行性や操作性が向上する。また、傾斜センサの検出値に基づく制御のため、作業車両1の走行状態(斜面の横断走行時や左右方向で高低差を有する不整地の走行時など)における操作の切り替えが不要となり、操作性が向上する。
なお、傾斜センサは特に限定されるものではなく、例えば、ジャイロセンサなどを用いることができる。また、傾斜センサは、前後の懸架装置40,70にそれぞれ対応して備えることが望ましい。前懸架装置40と後懸架装置70とはそれぞれ独立しており、車体フレーム10の水平に対する左右方向の傾斜は前部と後部とで異なるためである。このように、前後の懸架装置40,70にそれぞれ対応して傾斜センサを備えることで、さらに斜面の横断走行時の走行性や操作性を向上することができる。
また、回動装置400,410,420は、上述の傾斜センサに加えて、左右方向における乗員の体重移動を検出する不図示の荷重センサを備える構成であってもよい。傾斜センサと荷重センサの検出値に基づいて制御部90が回動装置400,410,420を制御する。したがって、乗員の乗車姿勢などを考慮して斜面の傾斜に合わせて左右の後クローラ走行装置60R,60Lをそれぞれ上下方向に自動で揺動させることができ、車体フレーム10を自動で水平に保持する(近づける)ことができ、斜面の横断走行時の走行性や操作性がさらに向上するとともに、安全性も向上する。
なお、作業車両1は、上述の構成に限定されるものではない。例えば、揺動アーム72の車体フレーム10に対する回動角度を検出する不図示の角度センサと、制御部90によって制御可能な不図示の警報装置とを備える構成であってもよい。
揺動アーム72の車体フレーム10に対する回動角度が所定角度を超える時、制御部90が警報装置を作動させる。所定角度は、例えば、左右のクローラ走行装置60R,60Lを結ぶ直線と水平面とのなす角度が30°の際の揺動アーム72の回動角度とする。
このような構成にすることで、警報装置によって、乗員に走行中の斜面が危険であることを警告することができ、横転などの事故を未然に防ぐことができ、安全性が向上する。
なお、上述の所定角度は30°が好ましい。経験則から、傾斜が30°以上である斜面を横断走行すると横滑りや横転する危険性が格段に高くなるためである。
ここで、警報装置は特に限定されるものではなく、乗員に警告することが可能なものであればよい。例えば、音や光によって乗員に警告するものである、警報音発生装置やランプ点滅装置などであってもよい。また、警報装置は、前後クローラ走行装置30,60を停止する非常停止装置であってもよい。
また、回動装置400,410,420は、後懸架装置70の揺動アーム72を回動させるものに限定されるものではない。例えば、前懸架装置40の揺動アーム42を回動させる構成であってもよく、前後の懸架装置40,70の揺動アーム42,42をそれぞれ回動させる構成であってもよい。
また、作業車両1は、前後左右4つのクローラ走行装置30R,30L,60R,60Lで走行するものに限定されるものではない。少なくとも左右一対のクローラ走行装置で走行すればよい。例えば、後部に左右一対のクローラ走行装置と前部に従動輪としての左右一対の車輪を備える構成であってもよい。
また、作業車両1は、鞍乗型作業車両に限定されるものではなく、図26に示すように、キャビン111を備え、乗車時に乗員が座席112に腰掛けて着座する作業車両2などであってもよい。座席112の前方には、ステアリングシャフトの上端に円形状のハンドルバーを有するハンドル113を備える。ハンドル113の下方には、足で操作するアクセルペダル114を備える。このような構成にすることによって、キャビン111によって乗員の安全が確保される。
また、上述の作業車両1の操舵は、ステアリングシャフト105の回動角度をハンドルセンサ108で検出するとともに、アクセルグリップ107の回動角度をアクセルグリップセンサで検出し、これらの検出した値に基づいて、前後左右のクローラ走行装置30R,30L,60R,60Lをそれぞれ駆動することによって行うものである。しかし、操舵機構は、この構成に限定されるものではない。
例えば、公知のステアリング機構によって操舵する構成であってもよく、例えば、図24に示すように、ステアリングシャフト105の下端に連結したギヤボックス130と、ギヤボックス130から左右に延設されたロッド131と、前クローラ走行装置30を上下方向を軸として回動自在に支持するとともにロッド131と連結する連結部材132とを備える構成とする。ギヤボックス130は、不図示のラックやピニオンを備え、ステアリングシャフト105の回動を直線運動に変換してロッド131に伝達する。そして、ハンドル104の回動操作によってロッド131を左右方向に移動させ、このロッド131の移動によって前クローラ走行装置30を上下方向を軸として回動させる。このようにして前クローラ走行装置30の向きを変えることで操舵する構成であってもよい。しかし、この構成は車体フレーム10と前クローラ走行装置30との間に剛体であるロッド131を備えるため、ロッド131を自在継手などを介して連結部材132に連結しても、前クローラ走行装置30を大きく上下方向に揺動させることは困難であるとともに、その構成が複雑になる。したがって、作業車両1の操舵は、上述のように前後左右のクローラ走行装置30R,30L,60R,60Lをそれぞれ駆動することによって行う構成の方が好ましい。
また、本発明は上述の例に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内であらゆる形態を取ることができる。