JP2015147208A - 水素分離膜の製造方法 - Google Patents

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小川 稔
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Abstract

【課題】優れた水素選択的透過性を有する水素分離膜の製造方法を提供する。【解決手段】パラジウム含有金属薄膜の一方面側にパラジウムが含まれない金属層を積層する金属膜形成ステップと、金属膜の金属層側に配置される溶質を溶解した溶媒と、金属膜のパラジウム含有金属薄膜側に配置される無電解めっき用触媒溶液との浸透圧によって、金属膜の金属層側にある欠陥部位に無電解めっき用触媒を付与する無電解めっき用触媒付与ステップと、無電解めっき用触媒が付与された金属膜の金属層側に配置される少なくとも還元剤を溶質として溶解した溶媒と、金属膜のパラジウム含有金属薄膜側に配置される金属イオンを含有する還元剤を含まないめっき液との浸透圧によって、めっき液を金属膜の金属層側に移動させ、金属膜の金属層側にある欠陥部位に金属イオンを還元・析出させる金属イオン還元・析出ステップとを備えた水素分離膜の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、水素分離膜の製造方法に関するものである。
パラジウム膜またはパラジウム合金膜は、水素や重水素の選択的透過性を有するものであり、この特性を利用して水素分離膜として用いられている。パラジウム膜またはパラジウム合金膜を水素分離膜として用いる場合には、膜厚が薄いほど水素の透過速度が向上し、しかも高価なパラジウム等の貴金属使用量が減少する。このため、通常、アルミナ等の多孔性セラミックスを支持体として用い、その表面に例えばめっき法によりパラジウム薄膜を形成したものを水素分離膜として使用している(下記特許文献1参照)。また、パラジウム合金膜を形成する場合、支持体上にパラジウム合金に含まれる個々の金属の薄膜を例えばめっき法によって層状に形成した後、加熱処理によって、この薄膜層を合金化することがよく行われる(下記特許文献2参照)。
通常、このような支持体となる多孔性セラミックスには欠陥が存在しており、通常のめっき法等の製膜方法によりパラジウム膜またはパラジウム合金膜を形成すると、膜が薄いほど膜に欠陥(ピンホール)が出来やすくなり、これが水素分離後の水素純度を低下させる(水素選択性が低い)原因となると共に膜の耐久性の劣化原因ともなる。また、パラジウム膜やパラジウム合金膜の製膜過程における不純物の混入、めっき中に発生した水素による水素脆化といった原因で欠陥が生じることもある。
この欠陥を解消するため、パラジウム合金膜を製膜する場合、パラジウム合金膜の前駆体となる金属膜の一方面側の溶質および還元剤を溶解した溶媒と、前記金属膜の他方面側にあるパラジウム合金膜を構成する金属のイオンを含有する還元剤を含まないめっき液との浸透圧によって、めっき液を前記金属膜の一方面側に移動させ、金属膜の一方面側で金属イオンを還元・析出させることを特徴とするパラジウム合金膜の欠陥の封止方法がある(下記特許文献2参照)。この方法においては一方面側の金属膜表面はパラジウム以外のパラジウム合金膜を形成する金属で構成されることが好ましい。これは一方面側に置かれた還元剤とパラジウムの直接接触によるパラジウムの水素脆化を防ぐためである。
金属の無電解めっきでは通常、めっき液中の還元剤がパラジウム等の触媒活性を有する金属と接触することにより活性化され、そして、めっき液中の当該金属イオンの析出が触媒活性を有する金属の近傍で生じる。上記の欠陥封止方法では一方面側にパラジウムが露出しておらず、還元剤の活性化が阻害されている。しかし、パラジウムイオンが含有される還元剤を含まないめっき液を使用した場合、通常、一方面側の金属膜表面は例えば銅のようなパラジウムより卑な、即ち電極電位が低い金属で覆われているので、パラジウムの置換めっきが欠陥付近の金属膜表面で生じ、先ず置換めっきで析出したパラジウムが触媒となってパラジウムの欠陥付近への堆積が開始される。よって、めっき液がパラジウムイオンを含有する場合、欠陥周囲の金属膜表面に主としてパラジウムの堆積が生じ、それが欠陥へと広がり欠陥が小さい場合、欠陥の封止に至る。しかし、欠陥が大きい場合、欠陥上で直接パラジウムが堆積せず、欠陥の外周でパラジウムの堆積が進行するので堆積したパラジウムで欠陥を完全に封止することができず欠陥が残留する結果となる。また、欠陥が大きい場合、めっき液の流出量が多くなって欠陥周囲以外の金属膜表面にも置換めっきが生じ、その結果、金属膜を脆弱化する恐れもあった。パラジウムイオン以外の金属イオンを含有するめっき液を用いた場合でも還元剤と一方面側の表面にある金属種を選択することにより、めっき液中に含まれる金属イオンの還元がめっき液と還元剤の会合する欠陥周囲の金属膜表面付近で生じるが、これも欠陥が大きい場合、欠陥上で直接に金属が堆積しないので有効に欠陥を封止できない結果となる。
特開平5−137979号公報 再公表特許WO2011/122414
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、欠陥が極めて少なく、優れた水素の選択的透過性を有する水素分離膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、パラジウム合金膜形成過程で金属の無電解めっきの核となる触媒微粒子をパラジウム合金膜前駆体の他方面側にあるパラジウムイオン等を含有する触媒液を浸透圧により欠陥を通じてパラジウム合金膜前駆体の一方面側に移動させ、欠陥部位に触媒を選択的に付着させ、次に金属イオンを含有する還元剤を含まないめっき液をパラジウム合金膜前駆体の他方面側に置き、浸透圧により欠陥を通じてパラジウム合金膜前駆体の一方面側に供給し、触媒が付着した欠陥部位で金属を析出させることにより欠陥部位を直接閉塞できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の前記目的は、水素分離膜の製造方法であって、パラジウムを含有するパラジウム含有金属薄膜の一方面側にパラジウムが含まれない金属層を積層して、水素分離膜の前駆体となる金属膜を形成する金属膜形成ステップと、前記金属膜の金属層側に配置される溶質を溶解した溶媒と、前記金属膜のパラジウム含有金属薄膜側に配置される無電解めっき用触媒溶液との浸透圧によって、前記無電解めっき用触媒溶液を前記金属膜の金属層側に欠陥を通じて移動させ、前記金属膜の金属層側にある欠陥部位に無電解めっき用触媒を付与する無電解めっき用触媒付与ステップと、前記無電解めっき用触媒が付与された前記金属膜の金属層側に配置される少なくとも還元剤を溶質として溶解した溶媒と、前記金属膜のパラジウム含有金属薄膜側に配置される金属イオンを含有する還元剤を含まないめっき液との浸透圧によって、前記めっき液を前記金属膜の金属層側に移動させ、前記金属膜の金属層側にある欠陥部位に前記金属イオンを還元・析出させる金属イオン還元・析出ステップとを備えた水素分離膜の製造方法により達成される。
この水素分離膜の製造方法において、前記金属膜形成ステップにおいて金属の析出・溶解を周期的に繰り返すことで欠陥を解消する析出・溶解ステップが含まれることが好ましい。
また、前記欠陥部位に前記金属イオンを還元・析出させた後、前記金属膜の金属層側を金属薄膜で被覆する被覆ステップを更に備えるとより好ましい。
前記被覆ステップにおいて金属の析出・溶解を周期的に繰り返すことで欠陥を解消する析出・溶解ステップが含まれることが好ましい。
また、前記金属膜における金属層の金属種、前記金属イオンの金属種、および前記金属薄膜の金属種が同一であることが好ましい。
金属膜形成ステップは、パラジウムを含有するパラジウム含有金属薄膜の一方面側に、一以上の金属層を積層する工程であり、前記一以上の金属層の最上層は、前記パラジウムが含まれない金属層として構成され、前記最上層の金属層の金属種、前記金属イオンの金属種、および前記金属薄膜の金属種が同一であることが好ましい。
また、前記金属種が銅であると特に好ましい。
本発明によれば、欠陥が極めて少なく、優れた水素の選択的透過性を有する水素分離膜の製造方法を提供することができる。
本発明に係る水素分離膜の製造方法により封止された欠陥部分のデジタルマイクロスコープ像である。 図1の線1−1間における表面高さ分布を示す高低図である。
本発明の対象となる水素分離膜は、パラジウムを含有する金属膜(パラジウム含有金属膜;パラジウム合金膜を含む)、あるいは、多孔性物質を支持体とし該支持体上にパラジウムを含有する金属膜を積層した積層膜である。支持体となる多孔性物質の材質としては、イットリア安定化ジルコニア、ジルコニア、セリア、ジルコニア−セリア、アルミナ、シリカ、チタニア等のセラミックス及び/または焼結金属や金属メッシュ等の多孔性金属が例示できる。多孔性金属の材質としては、ステンレス、ハステロイ合金、インコネル合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金等を例示できる。多孔性物質の表面細孔径は好ましくは0.01〜1.0μm、更に好ましくは0.05〜0.5μmである。このような多孔性物質からなる支持体は、更に粗い多孔性基材により支持されても良く、多孔性基材としてはイットリア安定化ジルコニア、ジルコニア、セリア、ジルコニア−セリア、アルミナ、シリカ、チタニア等のセラミックスの他に、焼結金属や金属メッシュ等の多孔性金属でも差し支えない。なお、多孔性物質からなる支持体の形状について特に限定はなく、例えば、板状、中空の管状、有底筒状等の形状を採用することができる。この多孔性物質からなる支持体の表面には往々にして、ひび割れ、表面層の部分的欠損といった欠陥が存在することがある。そこで、無電解めっきを用いて欠陥上に選択的に金属を析出させ、多孔性物質表面の一方面に開口する欠陥を金属で閉塞及び/または被覆した支持体を用いても良い。また、パラジウム合金膜はその前駆体となる金属薄膜の積層体を加熱することにより合金化されたものである。パラジウム合金膜としては、パラジウムと、銀、金、銅、ニッケル、コバルト、白金、ロジウムおよびルテニウムからなる群から選ばれる一種または二種以上の金属との合金が好ましい。特に本発明では少なくとも銅を含有するパラジウム合金膜がより好ましい。この様なパラジウム合金中におけるパラジウムの割合は、40重量%以上であることが好ましい。パラジウム合金膜の平均膜厚は0.2〜10μmが好ましく、0.4〜5μmがより好ましい。膜厚がこれより小さいと膜の欠陥が増加して水素分離膜としての水素選択性を低くし、膜厚がこれより大きいと水素透過速度が小さくなって実用性を失う。
多孔性物質からなる支持体上へ金属膜を製膜する場合、支持体表面への直接の金属薄膜の製膜は例えば無電解めっき法、化学蒸着法、マグネトロンスパッタリングといった公知の方法によれば良いが、無電解めっき法によるのが最も簡便である。ここで、製膜された金属薄膜がパラジウムを含まない、即ち、水素透過性を有しない金属であれば、直ちに本発明の無欠陥化方法を適用し、そして更に1以上の金属薄膜の積層を行い合金化することにより水素分離膜とすることができる。この金属薄膜の積層では例えば電気めっき法、無電解めっき法、化学蒸着法、マグネトロンスパッタリングといった公知の方法を用いればよい。しかし、パラジウム以外の水素透過性のない金属が支持体に直接接触している場合、製膜後の合金化工程で支持体細孔内に合金化されていない、あるいは合金化が不十分である金属が残留する可能性があるため、その金属に水素透過性がないと水素の透過阻害要因となる。そこで、支持体上へは先ずパラジウムを含有する金属薄膜(パラジウム含有金属薄膜)を製膜するのが通常である。本発明の無欠陥化に係る方法では還元剤を含む溶液を金属薄膜表面に接触させるので、パラジウム含有金属薄膜が表面にあるとパラジウムの水素吸収による脆化が生じ新たな欠陥が発生する可能性がある。
これを防止するため、パラジウム含有金属薄膜の表面に、引き続き更に1以上の金属層を製膜し、その最上層をパラジウムが含まれない金属層として水素分離膜の前駆体となる金属膜を形成し(金属膜形成ステップ)、これに対して本発明の無欠陥化に係る方法を適用する。この金属層の積層では例えば電気めっき法、無電解めっき法、化学蒸着法、マグネトロンスパッタリングといった公知の方法を用いればよい。最上層にある金属層に含まれる金属種は目的とするパラジウム合金膜に含まれるパラジウム以外の金属種であって銅、金、銀、ニッケル、コバルト、白金、ロジウムおよびルテニウムからなる群から選択される1以上の金属種である。また、電気めっき法を用いる場合、パルスめっき、あるいはPRめっきを行っても良い。パルスめっき及びPRめっきでは電気めっきに使用する直流電源の電圧を周期的に変化させてめっきを行う。電気めっきでは通常、電圧を印加することにより金属の析出が生じるが、PRめっきにおいては析出が生じる電流(正電流)の方向へのめっき電圧の印加の他に逆方向の電流(逆電流)を流して金属の溶解を生じせしめるめっき電圧の印加も行い、析出・溶解を繰り返しながらめっきを行う。パルスめっき及びPRめっきでは、めっき条件の選択によりピンホールが少なくなる効果があることが知られている。更に電気めっき中に所定の時間、例えば10分から1時間程度、正電流による金属析出量と逆電流による金属溶解量がほぼ同量となるように周期的にめっき電圧を変化させること(析出・溶解ステップ)により、より欠陥部分の閉塞が生じ易くなる。また、電気めっきにおけるめっき液は金属層側に置かれるが、本発明の金属膜形成ステップでは同時に支持体側(水素分離膜の前駆体となる金属膜におけるパラジウム含有金属薄膜側)にも置いても良い。電気めっきの対極(アノード)は金属層側に置かれるので金属層側の表面が完全に金属で覆われていれば支持体側内部は等電位となるので金属析出は生じない。しかし、金属層側の欠陥部位においてはめっき液が支持体側からも供給される形態となるので欠陥部位での金属析出が促進され欠陥部位の解消に有効な結果となる。
本発明の無欠陥化に係る方法では、先ず、水素分離膜の前駆体となる金属膜の表面にある欠陥部位への選択的な無電解めっき用触媒の付与を行う。金属薄膜の無電解めっきでは通常、被めっき物への無電解めっき用触媒付与、および、めっき用触媒の還元が、金属イオンおよび還元剤を含む無電解めっき液中での無電解めっきに先駆けて行われる。無電解めっき液中の被めっき物表面では付与した触媒によって金属イオンの還元反応が最初に生じ、触媒粒子が核となって、めっきする金属の成長が生じる。
選択的に金属膜表面(水素分離膜の前駆体となる金属膜におけるパラジウムが含まれない金属層の表面)にある欠陥部位への触媒微粒子付与を行うため、支持体側(水素分離膜の前駆体となる金属膜におけるパラジウム含有金属薄膜側)に無電解めっき用触媒付与のための無電解めっき用触媒溶液を置き、金属膜表面側(パラジウムが含まれない金属層側)に欠陥を通じて、この溶液が流出するようにする(無電解めっき用触媒付与ステップ)。この溶液の移動は、支持体側の圧力を金属膜表面の圧力より高くすることでも行えるが、金属膜表面側に溶質を溶解した溶媒を置き、浸透圧を発生させると簡便にしかも効率的に行える。この工程により金属膜表面にある欠陥部位に触媒が付与されるのみならず、欠陥内部にも触媒を付与することができる。溶媒としては使用する無電解めっき用触媒溶液と相溶性があり、触媒付与に悪影響を与えないものであれば差し支えなく、水やメタノール、エタノール、プロパノールといったアルコール類やその混合物が例示できる。溶質としては溶媒への溶解度が高く、触媒付与に悪影響を与えないものであれば差し支えなく、グルコース、スクロースといった糖類、塩化ナトリウム、塩化カリウムといった塩類が例示できる。溶液の濃度は無電解めっき用触媒溶液の欠陥への供給速度を考慮して決定すれば良いが、通常、0.3〜10mol/L、好ましくは0.5〜7mol/L程度とすれば良い。
無電解めっき用触媒付与の方法としては、一般にスズイオン等の金属イオンを含んだ溶液に被めっき物を入れ、被めっき物表面にスズイオン等の金属イオンを吸着させ、その後、パラジウムイオンを含んだ触媒溶液に入れて表面に付着したスズイオン等の金属イオンをパラジウムイオンに交換し、その後、これを還元する方法や、スズイオンやパラジウムイオン等が共存する溶液に被めっき物を入れ、その後、これを還元する方法、および、パラジウムイオンを直接、被めっき物に付着させる溶液(アルカリ触媒)に入れ、その後、これを還元する方法などがある。本発明の無欠陥化方法では、何れの方法を用いて触媒付与を行っても差し支えないが、簡便性からパラジウム錯体を含むアルカリ触媒溶液を支持体側に置くのが好ましい。これらの無電解めっき用触媒溶液は公知のものを用いれば良い。また、この溶液が水を溶媒として用いている場合、その表面張力を低下させるため、触媒付与に悪影響を与えない限り、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、アセトンといった水と相溶性のある有機溶媒を添加しても良い。
次に無電解めっき用触媒付与ステップにおいて欠陥部位に付与された触媒を還元する触媒還元ステップを行う。還元には公知の還元剤を用いれば良い。欠陥部位に触媒が付与された金属膜表面に還元剤を含む溶液を置き触媒を還元する。還元剤としてはアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ジメチルアミノボラン、トリメチルアミノボラン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ギ酸、ギ酸ナトリウム、タンニン酸、グリオキシル酸、ジボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、等を例示できるが、パラジウムイオンを還元する能力のある薬剤であれば特に制限されない。
その後、金属を欠陥上に選択的に析出させることにより欠陥の閉塞を行う(金属イオン還元・析出ステップ)。そのために、還元剤を含まないめっき液を支持体側に置き、金属膜表面側に還元剤と共に浸透圧を発生するための溶質を溶解した溶媒を置く。しかし、還元剤が浸透圧を発生するための溶質としても機能する場合、他の溶質は必ずしも必要でない。めっき液中に還元剤が含まれると、支持体側において不要な金属の析出や水素の発生によるパラジウム薄膜の脆化が生じることがあり好ましくない。場合によって、この金属膜表面側に置いた還元剤によって欠陥部位に付与された触媒の還元が生じるので前記の触媒還元ステップを省略しても良い。還元された触媒により還元剤が活性化し、欠陥を通じて支持体側から金属膜表面側に流出しためっき液中の金属イオンの還元が触媒粒子近傍で選択的に生じ、その結果として欠陥内部および表面欠陥部位への金属の析出が生じる。
析出する金属は金属膜表面の金属と同一の金属種であるか、または電気化学的に卑である、即ち、電極電位が小さい金属種であることが好ましく、同一の金属種であることがより好ましい。還元剤を含まないめっき液中には、その金属のイオンが含まれる。同一の金属種である場合、金属膜表面と析出した金属の親和性が高く、欠陥の解消がより効率的に行える。析出する金属が電気化学的に金属膜表面の金属より貴である、即ち、電極電位が大きいと金属膜表面への置換めっきが生じ、金属膜表面を脆弱化する可能性があるので好ましくない。析出する金属としては標準電極電位の小さい順にコバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、銀、白金、パラジウム、金が例示される。ここで、パラジウム合金膜に水素透過性能の低下といった悪影響を及ばさない限り、析出する金属は目的とするパラジウム合金膜を構成する金属以外であっても良い。通常、欠陥を通じての金属の析出量は小さいので、析出した金属は合金化処理により膜中に拡散して不純物として存在することとなる。
金属膜表面側の溶媒としては、使用する還元剤を含まないめっき液と相溶性があり、金属の析出に悪影響を与えないものであれば差し支えなく、水やメタノール、エタノール、プロパノールといったアルコール類やその混合物が例示できる。溶質としては溶媒への溶解度が高く、めっき液中の金属イオンの還元析出に悪影響を与えないものであれば差し支えなく、グルコース、スクロースといった糖類、塩化ナトリウム、塩化カリウムといった塩類が例示できる。還元剤としてはアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ジメチルアミノボラン、トリメチルアミノボラン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ギ酸、ギ酸ナトリウム、タンニン酸、グリオキシル酸、ジボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、等を例示できるが、めっき液中の金属イオンを還元する能力のある薬剤であれば特に制限されない。この還元剤は使用するめっき液に応じ適宜選択すれば良い。溶液の濃度は金属イオンを含有する溶液の欠陥への供給速度を考慮して決定すれば良いが、通常、0.3〜10mol/L、好ましくは0.5〜7mol/L程度とすれば良い。
金属膜表面の欠陥への金属の析出を行った後、直ちに膜の合金化を行っても良いが、更にその金属膜表面上に他の金属薄膜を製膜することがより好ましい(被覆ステップ)。この工程により、欠陥に析出した金属も他の金属薄膜で覆うことができるので欠陥の封止がより良くできる。製膜する他の金属薄膜の金属種は目的とするパラジウム合金膜を構成する金属種であれば良いが、析出する金属と同一の金属種であると析出した金属との親和性が高く、欠陥の解消が効率的に行える。特にその金属種が銅である場合、パラジウム等の金属に対する銅の拡散性が高いので欠陥の解消がより効率的に行える。この金属薄膜の積層では例えば電気めっき法、無電解めっき法、化学蒸着法、マグネトロンスパッタリングといった公知の方法を用いればよい。また、電気めっき法を用いる場合、パルスめっき、あるいはPRめっきを行っても良い。更に、被覆ステップにおいて、電気めっき中に所定の時間、例えば10分から1時間程度、上述の析出・溶解ステップ(正電流による金属析出量と逆電流による金属溶解量がほぼ同量となるように周期的にめっき電圧を変化させる工程)を加えると欠陥部分の閉塞が生じ易くなる。電気めっきにおけるめっき液は金属層側に置かれるが、本発明の被覆ステップでは同時に支持体側にも置いても良い。その結果、更に欠陥部位での金属析出が促進され欠陥部位の解消に有効な結果となる。
なお、必要があれば、更にその上に異なる被覆ステップを実施しても良い。ここで製膜する金属薄膜の金属種は目的とするパラジウム合金膜を構成する金属種であれば良い。
次に、得られた金属薄膜の積層体を熱処理することにより合金化を行い、無欠陥化されたパラジウム合金膜を得る。この熱処理は通常、還元ガス雰囲気下、あるいは不活性ガス雰囲気下で加熱することによって行うことができる。還元ガスとしては、例えば水素、一酸化炭素、メタノール等の還元性を有する気体を用いることができる。不活性ガスとしてはヘリウム、窒素、アルゴン等が例示できる。あるいは、真空下で行ってもよい。処理温度は適宜設定することができるが、300〜800℃程度とすることが好ましく、400〜700℃とすることが特に好ましい。熱処理の上限温度は、支持体を構成する多孔性セラミックスや多孔性金属の耐熱性も考慮して決定される。処理中に水素分離膜表面に付着した有機物を取り除くため、酸素あるいは酸素を含んだ気体と接触させても差し支えない。
このようにして無欠陥化された水素分離膜は、常法に従って、水素を含有する混合気体から水素のみを分離するために使用できる。本発明により得られた水素分離膜は水素以外の気体の透過が極めて少ないので、水素分離によって高純度な水素を容易に得ることが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
以下に示す工程1〜工程8に従い、ステンレス製多孔性金属に支持された、外表面に開口する欠陥を金属で閉塞及び/または被覆したセラミックス多孔体薄膜(多孔性セラミックス支持体)を支持体として本発明に係る水素分離膜を製造した。この支持体は内部と外部が隔離された有底筒状のステンレス製焼結金属フィルター(フィルター長:5cm、フィルター直径:1cm、厚み:約1mm、平均細孔径:2μm)に支持され、ステンレス製焼結金属フィルター外表面にイットリア安定化ジルコニア粒子をコーティングして製膜された層厚30μm、平均細孔径0.1μmのセラミックス多孔体薄膜である。ここで、膜の表面観察及び断面観察により、セラミックス多孔体薄膜は金属フィルターの隙間を完全に被覆していることが確認されている。上記の多孔性セラミックス支持体は市販のアルカリ触媒液(奥野製薬工業株式会社、OPC−50インデューサー)中に50℃で浸漬して、その外表面にパラジウムイオンを付着させ、引き続き、市販のジメチルアミノボランを含有する還元液(奥野製薬工業株式会社、OPC−150クリスターMU)に浸漬してパラジウムイオンを還元することにより、その外表面にパラジウムを付与した後、市販の無電解パラジウムめっき液(奥野製薬工業株式会社、パラトップ)を支持体の内部に満たし、多孔性セラミックス支持体の外表面をグルコース濃度4mol/Lの水溶液中に50℃で浸漬し、浸透圧によって無電解パラジウムめっき液を支持体の内側から外側にセラミックス多孔体薄膜の欠陥部位を通じて流出させることにより、セラミックス多孔体薄膜の欠陥部にパラジウム金属を析出させ外表面に開口する欠陥を金属で閉塞および/または被覆したものである。
<工程1>
前記の多孔性セラミックス支持体を水洗後、市販のアルカリ触媒液中に50℃で浸漬して、外表面にパラジウムイオンを付着させ、引き続き、市販のジメチルアミノボランを含有する還元液中で還元して、パラジウムを付与した。
<工程2>
次に、工程1が完了した支持体の外表面を50℃の市販の無電解パラジウムめっき液中に浸漬し、多孔性フィルター外表面にパラジウムを析出させ、支持体の外表面をパラジウム薄膜前駆体で覆った。
<工程3>
更に、パラジウム薄膜前駆体に残存する貫通欠陥をなくすために、外表面を50℃の前記無電解パラジウムめっき液中に浸漬した状態で、支持体内部を、真空ポンプにより0.1気圧まで減圧して、無電解パラジウムめっきを行った。得られたパラジウム薄膜の平均膜厚は、1.0μmであった。
<工程4>
工程3を経た支持体外表面上に形成されたパラジウム薄膜を銅のエチレンジアミン錯体からなる電気めっき液に浸漬し、パラジウム薄膜上に銅の電気めっきを行い、パラジウム薄膜上に平均膜厚0.1μmの銅保護薄膜を形成した(金属膜形成ステップ)。
<工程5>
次に市販のアルカリ触媒液を、工程4における銅保護薄膜を最上層に製膜した支持体内部に満たし、その外表面をグルコース濃度4mol/Lの水溶液中に室温で7日間浸漬して、銅保護薄膜に残存する欠陥部分にパラジウムイオンを付着させた(無電解めっき用触媒付与ステップ)。
<工程6>
次いで、還元剤を含まない市販の銅めっき液(奥野製薬工業株式会社、OPCカッパーT)を、工程5を経た支持体内部に満たし、その外表面を市販の還元液を含有するグルコース濃度4mol/Lの水溶液中に室温で1日間浸漬し、浸透圧によって還元剤を含まない銅めっき液を支持体の外表面に形成された銅保護薄膜の欠陥部位に流出させ、欠陥部に銅の析出を生じさせた(金属イオン還元・析出ステップ)。
<工程7>
工程6を経た銅保護薄膜の外表面を硫酸銅を含む銅のエチレンジアミン錯体からなる電気めっき液に浸漬し、電気めっきにより銅薄膜を形成した(被覆ステップ)。図1に銅の析出および引き続く銅の電気めっきにより閉塞した欠陥部位のデジタルマイクロスコープ像を示す。本方法で閉塞した欠陥部位は、銅の析出により図2に示すように隆起しており、選択的に欠陥が効率的に閉塞できることがわかる。
<工程8>
これを洗浄・乾燥後にアルゴン気流下で400℃まで昇温し、引き続き、水素気流下400℃で50時間、加熱処理して多孔性フィルターを支持体とするパラジウム・銅合金膜からなる水素分離膜を得た。得られた合金の平均銅含有量は47重量%、合金の平均膜厚は2.1μmであった。
パラジウムを主成分とする水素分離膜の水素透過速度(k)は一般にシーベルト則に従う。即ち、
k=J/(p10.5−p20.5
となる。ここでJは水素透過流速(mmol/s/m)、p1は入口側水素分圧(Pa)、p2は出口側水素分圧(Pa)である。
また、水素以外の気体では、一般にガス透過速度(k’)は、
k’=J’/(p3−p4)
と、なる。ここでJ’はガス透過流速(mmol/s/m)、p3は入口側ガス分圧(Pa)、p4は出口側ガス分圧(Pa)である。
水素選択性の目安としては例えば、差圧1気圧における水素透過流速と水素以外のガス透過流速の比(水素選択比、R)が挙げられる。即ち、
R = J/J’= k×1013250.5/(k’×101325)
この数値が高いほど水素選択性が高いと判定される。
そこで、上記方法で得られた水素分離膜の性能を評価するため、水素差圧0〜2気圧、アルゴン差圧0〜4気圧の範囲でガス透過試験を行った結果、400℃において1.5mmol/s/m/Pa0.5の水素透過速度を得ると共に0.01nmol/s/m/Paのアルゴンの透過速度を得た。また、水素選択比は約14万であった。
(実施例2)
実施例2では、上記工程3のめっき時間、及び、工程4のめっき時間を変更して、パラジウム薄膜の平均膜厚を0.6μm、銅保護薄膜の平均膜厚を0.3μmとした以外は、実施例1と同様の操作でステンレス製多孔性金属に支持された外表面に開口する欠陥を金属で閉塞及び/または被覆したセラミックス多孔体薄膜を支持体とするパラジウム・銅合金膜からなる水素分離膜を得た。得られた合金の平均銅含有量は45重量%、合金の平均膜厚は1.3μmであった。
上記方法で得られた水素分離膜の性能を評価するため、水素差圧0〜2気圧、アルゴン差圧0〜4気圧の範囲でガス透過試験を行った結果、400℃において3.2mmol/s/m/Pa0.5の水素透過速度を得ると共に0.5nmol/s/m/Paのアルゴンの透過速度を得た。また、水素選択比は約2万であった。
(実施例3)
実施例3では、実施例1における上記工程3のめっき時間を変更してパラジウム薄膜の平均膜厚を0.6μmとした以外は、実施例1と同様の操作で多孔性フィルターを支持体とするパラジウム・銅合金膜からなる水素分離膜を得た。得られた合金の平均銅含有量は44重量%、合金の平均膜厚は1.3μmであった。
上記方法で得られた水素分離膜の性能を評価するため、水素差圧0〜2気圧、アルゴン差圧0〜4気圧の範囲でガス透過試験を行った結果、400℃において2.7mmol/s/m/Pa0.5の水素透過速度を得ると共に0.3nmol/s/m/Paのアルゴンの透過速度を得た。また、水素選択比は約3万であった。
(実施例4)
実施例4では、実施例1における上記工程3のめっき時間、及び、工程4のめっき時間を変更して、パラジウム薄膜の平均膜厚を0.6μm、銅保護薄膜の平均膜厚が0.2μmとし、更に、上記工程5及び6の工程内容を下記に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様の操作で、ステンレス製多孔性金属に支持された外表面に開口する欠陥を金属で閉塞及び/または被覆したセラミックス多孔体薄膜を支持体とするパラジウム・銅合金膜からなる水素分離膜を得た。得られた合金の平均銅含有量は45重量%、合金の平均膜厚は1.3μmであった。
<実施例4における工程5の内容>
市販のアルカリ触媒液を、工程4における銅保護薄膜を最上層に製膜した支持体内部に満たし、その外表面をグルコース濃度4mol/Lの水溶液中に室温で7日間浸漬して、銅保護薄膜に残存する欠陥部分にパラジウムイオンを付着させた(無電解めっき用触媒付与ステップ)。これを水洗後、引き続き、市販の還元液中で還元した(触媒還元ステップ)。
<実施例4における工程6の内容>
還元剤を含まないアンミン銅溶液を、工程5を経た支持体内部に満たし、その外表面をアスコルビン酸ナトリウムを2mol/L含有する水溶液中に50℃で5時間浸漬し、浸透圧によってアンミン銅溶液を支持体の外表面に形成された銅保護薄膜の欠陥部位に流出させ、欠陥部に銅の析出を生じさせた(金属イオン還元・析出ステップ)。
上記方法で得られた水素分離膜の性能を評価するため、水素差圧0〜2気圧、アルゴン差圧0〜4気圧の範囲でガス透過試験を行った結果、400℃において3.6mmol/s/m/Pa0.5の水素透過速度を得ると共に0.2nmol/s/m/Paのアルゴンの透過速度を得た。また、水素選択比は約5万であった。
(実施例5)
実施例5では、実施例1における上記工程3のめっき時間、及び、工程4のめっき時間を変更して、パラジウム薄膜の平均膜厚を0.3μm、銅保護薄膜の平均膜厚を0.1μmとし、更に、上記工程5及び6の工程内容を下記に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様の操作で、ステンレス製多孔性金属に支持された外表面に開口する欠陥を金属で閉塞及び/または被覆したセラミックス多孔体薄膜を支持体とするパラジウム・銅合金膜からなる水素分離膜を得た。得られた合金の平均銅含有量は40重量%、合金の平均膜厚は0.6μmであった。
<実施例5における工程5の内容>
市販のアルカリ触媒液を、工程4における銅保護薄膜を最上層に製膜した支持体内部に満たし、その外表面をグルコース濃度4mol/Lの水溶液中に室温で7日間浸漬して、銅保護薄膜に残存する欠陥部分にパラジウムイオンを付着させた(無電解めっき用触媒付与ステップ)。これを水洗後、引き続き、市販の還元液中で還元した(触媒還元ステップ)。
<実施例5における工程6の内容>
還元剤を含まないアンミン銅溶液を、工程5を経た支持体内部に満たし、その外表面をアスコルビン酸を含有するグルコース濃度4mol/Lの水溶液中に50℃で5時間浸漬し、浸透圧によってアンミン銅溶液を支持体の外表面に形成された銅保護薄膜の欠陥部位に流出させ、欠陥部に銅の析出を生じさせた(金属イオン還元・析出ステップ)。
上記方法で得られた水素分離膜の性能を評価するため、水素差圧0〜2気圧、アルゴン差圧0〜4気圧の範囲でガス透過試験を行った結果、400℃において2.9mmol/s/m/Pa0.5の水素透過速度を得ると共に1.6nmol/s/m/Paのアルゴンの透過速度を得た。また、水素選択比は約6千であった。
(実施例6)
実施例6では、実施例1における上記工程3のめっき時間を変更し、パラジウム薄膜の平均膜厚を1.2μmとし、更に、上記工程4〜7の工程内容を下記に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様の操作で、ステンレス製多孔性金属に支持された外表面に開口する欠陥を金属で閉塞及び/または被覆したセラミックス多孔体薄膜を支持体とするパラジウム・銅・金合金膜からなる水素分離膜を得た。得られた合金の平均銅含有量は36重量%、平均金含有量は11%、合金の平均膜厚は3.0μmであった。
<実施例6における工程4の内容>
工程3を経た支持体外表面上に形成されたパラジウム薄膜を市販の金めっき液(小島化学薬品株式会社、CF−01)に浸漬しパラジウム薄膜上に金の電気めっきを行い、パラジウム薄膜上に平均膜厚0.2μmの金薄膜を形成し、その後、銅のエチレンジアミン錯体からなる電気めっき液に浸漬し、金薄膜上に銅の電気めっきを行い、金薄膜上に平均膜厚0.4μmの銅保護薄膜を形成した(金属膜形成ステップ)。
<実施例6における工程5の内容>
市販のアルカリ触媒液を、工程4における銅保護薄膜を最上層に製膜した支持体内部に満たし、その外表面をグルコース濃度4mol/Lの水溶液中に室温で7日間浸漬して、銅保護薄膜に残存する欠陥部分にパラジウムイオンを付着させた(無電解めっき用触媒付与ステップ)。これを水洗後、引き続き、市販の還元液中で還元した(触媒還元ステップ)。
<実施例6における工程6の内容>
還元剤を含まないアンミン銅溶液を、工程5を経た支持体内部に満たし、その外表面をアスコルビン酸ナトリウム(1mol/L)を含有する水溶液中に50℃で5時間浸漬した。浸透圧によってアンミン銅溶液を支持体の外表面に形成された金属薄膜の欠陥部位に流出させ、欠陥部に銅の析出を生じさせた(金属イオン還元・析出ステップ)。
<実施例6における工程7の内容>
欠陥部に銅の析出を生じさせた銅保護薄膜の外表面を銅のエチレンジアミン錯体からなる電気めっき液に浸漬し、電気めっきにより平均膜厚0.2μmの銅薄膜を形成し(被覆ステップ)、その後、正電流を3秒、逆電流を9秒の周期で30分間、銅の析出量と溶解量がほぼ同じとなるように銅の析出・溶解を繰り返し(析出・溶解ステップ)、引き続き銅の電気めっきにより更にその表面に銅薄膜を形成した(被覆ステップ)。この時、支持体内部にも銅の電気めっき液を満たした。
上記方法で得られた水素分離膜の性能を評価するため、水素差圧0〜2気圧、アルゴン差圧0〜4気圧の範囲でガス透過試験を行った結果、400℃において0.8mmol/s/m/Pa0.5の水素透過速度が得られ、アルゴン透過は認められなかった。
比較例
(比較例1)
比較例1では、実施例1における上記工程3のめっき時間、及び、工程4のめっき時間を変更して、パラジウム薄膜の平均膜厚を1.2μm、銅保護薄膜の平均膜厚を0.5μmとし、更に、上記工程6を削除した以外は、実施例1と同様の操作で、ステンレス製多孔性金属に支持された外表面に開口する欠陥を金属で閉塞及び/または被覆したセラミックス多孔体薄膜を支持体とするパラジウム・銅合金膜からなる水素分離膜を得た。得られた合金の平均銅含有量は41重量%、合金の平均膜厚は2.3μmであった。
上記方法で得られた水素分離膜の性能を評価するため、水素差圧0〜2気圧、アルゴン差圧0〜4気圧の範囲でガス透過試験を行った結果、400℃において2.1mmol/s/m/Pa0.5の水素透過速度を得ると共に0.2nmol/s/m/Paのアルゴンの透過速度を得た。また、水素選択比は約3万であった。比較例1と上述の実施例1とを比較すると、合金膜厚が比較例1の方が高いにもかかわらず実施例1の水素選択比は14万であり、本発明の金属イオン還元・析出ステップを有さない比較例1の水素選択比は明らかに小さい。よって、本発明に係る水素分離膜が、優れた水素の選択的透過性を有し、水素以外の気体が透過することを効果的に防止できていることがわかる。
(比較例2)
比較例2では、実施例1における上記工程3のめっき時間、及び、工程4のめっき時間を変更して、パラジウム薄膜の平均膜厚を0.6μm、銅保護薄膜の平均膜厚を0.1μmとし、更に、上記工程5を削除すると共に、上記工程6の内容を下記に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様の操作で、ステンレス製多孔性金属に支持された外表面に開口する欠陥を金属で閉塞及び/または被覆したセラミックス多孔体薄膜を支持体とするパラジウム・銅合金膜からなる水素分離膜を得た。得られた合金の平均銅含有量は45重量%、合金の平均膜厚は1.3μmであった。
<比較例2における工程6の内容>
還元剤を含まない市販の無電解パラジウムめっき液を、工程4を経た多孔性フィルター内部に満たし、その外表面を前記の還元剤を含有するグルコース濃度4mol/Lの水溶液中に室温で17時間浸漬、浸透圧によって還元剤を含まないパラジウムめっき液を多孔性フィルターの外表面に形成された銅保護薄膜の欠陥部位に流出させ、欠陥部にパラジウムの析出を生じさせた。
上記方法で得られた水素分離膜の性能を評価するため、水素差圧0〜2気圧、アルゴン差圧0〜4気圧の範囲でガス透過試験を行った結果、400℃において2.3mmol/s/m/Pa0.5の水素透過速度を得ると共に2.4nmol/s/m/Paのアルゴンの透過速度を得た。また、水素選択比は約3千であった。比較例2と上述の実施例2〜4とを比較すると、合金膜厚は同一(1.3μm)にもかかわらず実施例2は水素選択比が2万、実施例3は3万、実施例4は5万であり、また、実施例5と比較しても実施例5の膜厚は0.6μmであるにもかかわらず水素選択比は6千であり、特許文献2に記載された方法を用いた比較例2のアルゴン透過速度は明らかに小さい。
よって、本発明に係る水素分離膜が、優れた水素の選択的透過性を有し、水素以外の気体が透過することを効果的に防止できていることがわかる。

Claims (7)

  1. 水素分離膜の製造方法であって、
    パラジウムを含有するパラジウム含有金属薄膜の一方面側にパラジウムが含まれない金属層を積層して、水素分離膜の前駆体となる金属膜を形成する金属膜形成ステップと、
    前記金属膜の金属層側に配置される溶質を溶解した溶媒と、前記金属膜のパラジウム含有金属薄膜側に配置される無電解めっき用触媒溶液との浸透圧によって、前記無電解めっき用触媒溶液を前記金属膜の金属層側に欠陥を通じて移動させ、前記金属膜の金属層側にある欠陥部位に無電解めっき用触媒を付与する無電解めっき用触媒付与ステップと、
    前記無電解めっき用触媒が付与された前記金属膜の金属層側に配置される少なくとも還元剤を溶質として溶解した溶媒と、前記金属膜のパラジウム含有金属薄膜側に配置される金属イオンを含有する還元剤を含まないめっき液との浸透圧によって、前記めっき液を前記金属膜の金属層側に移動させ、前記金属膜の金属層側にある欠陥部位に前記金属イオンを還元・析出させる金属イオン還元・析出ステップと
    を備えた水素分離膜の製造方法。
  2. 前記金属膜形成ステップにおいて金属の析出・溶解を周期的に繰り返すことで欠陥を解消する析出・溶解ステップが含まれる請求項1に記載の水素分離膜の製造方法。
  3. 前記欠陥部位に前記金属イオンを還元・析出させた後、前記金属膜の金属層側を金属薄膜で被覆する被覆ステップを更に備える請求項1又は2に記載の水素分離膜の製造方法。
  4. 前記被覆ステップにおいて金属の析出・溶解を周期的に繰り返すことで欠陥を解消する析出・溶解ステップが含まれる請求項3に記載の水素分離膜の製造方法。
  5. 前記金属膜における前記金属層の金属種、前記金属イオンの金属種、および前記金属薄膜の金属種が同一である請求項3又は4に記載の水素分離膜の製造方法。
  6. 金属膜形成ステップは、パラジウムを含有するパラジウム含有金属薄膜の一方面側に、一以上の金属層を積層する工程であり、前記一以上の金属層の最上層は、前記パラジウムが含まれない金属層として構成され、前記最上層の金属層の金属種、前記金属イオンの金属種、および前記金属薄膜の金属種が同一である請求項3又は4に記載の水素分離膜の製造方法。
  7. 前記金属種が銅である請求項5又は6に記載の水素分離膜の製造方法。
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