以下、系統連系用電力変換装置の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における太陽光発電システム10を示す。太陽光発電システム10は、太陽光発電パネルPVで発電した直流電力を、パワーコンディショナ(パワコン)11にて系統周波数(50Hz又は60Hz)の三相交流電力に変換し、変換した交流電力を商用電力系統Lsに出力するものである。パワコン11は、例えば電圧型電流制御方式を採用している。
パワコン11は、配線用遮断器(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)12と、直流−交流電力変換器であるインバータ13と、平滑用フィルタ14と、スイッチ15と、MCCB16とを有している。また、パワコン11は、電流検出器17と、電圧検出器18と、これら電流検出器17及び電圧検出器18の検出結果に基づいて、インバータ13を制御する制御装置20とを有している。
MCCB12は、太陽光発電パネルPVとインバータ13との間の電路に介在して設けられている。MCCB12は、パワコン11を太陽光発電パネルPVに接続、又はパワコン11を太陽光発電パネルPVから切断するための遮断器である。MCCB12は、例えば、太陽光発電パネルPVの故障や制限を超えた劣化等を検出したときに、太陽光発電パネルPVとインバータ13との間の電路を遮断する。
インバータ13は、半導体スイッチング素子(図示略)を複数用いた三相ブリッジ回路にて構成されている。インバータ13には、MCCB12の電路が導通状態のときに、発電にて得られた太陽光発電パネルPVからの直流電力がコンデンサC1を経て入力される。コンデンサC1は、例えば電解コンデンサである。インバータ13は、制御装置20から出力される制御パルスPWMによるスイッチング制御(PWM制御)に基づいて、入力された直流電力をその時々の電力系統Lsの状況に応じた三相交流電力に変換し、その三相交流電力を平滑用フィルタ14に出力する。
平滑用フィルタ14は、インバータ13とスイッチ15との間に直列に接続されたリアクトルL1,L2と、それらリアクトルL1,L2間の接続点に接続されたコンデンサC2とを有するT型フィルタ(L−C−Lフィルタ)である。平滑用フィルタ14は、インバータ13から入力する三相交流電力の高周波成分を除去し、正弦波電圧波形を生成する。そして、平滑用フィルタ14は、高周波成分を除去した三相交流電力を、スイッチ15及びMCCB16を介して電力系統Lsに出力する。
スイッチ15及びMCCB16は、平滑用フィルタ14と電力系統Lsとの間の電路に介在して設けられている。また、スイッチ15とMCCB16とは直列に接続されている。スイッチ15は、パワコン11を電力系統Lsに接続、又はパワコン11を電力系統Lsから切断するためのスイッチである。スイッチ15は、例えば、電力系統Lsの電圧が設定値よりも高い場合や停電などで電力系統Lsの電圧が設定値よりも低い場合に、パワコン11と電力系統Lsとの間の電路を遮断する。なお、スイッチ15は、例えばマグネットスイッチである。
MCCB16は、パワコン11の制御電源を含めて電力系統Lsから完全に切り離すための遮断器である。
電流検出器17は、インバータ13から出力される三相の出力電流Iiを所定のサンプリング周期で検出し、検出した出力電流Iiを制御装置20に出力する。電流検出器17としては、例えば変流器(CT:Current Transformer)を用いることができる。なお、電流検出器17におけるサンプリング周波数は、例えば6kHz程度とすることができる。
電圧検出器18は、平滑用フィルタ14(スイッチ15)の後段、つまり電力系統Lsとの連系点における三相の系統電圧Vs(三相系統電圧Vsa,Vsb,Vsc)を所定のサンプリング周期で検出し、検出した系統電圧Vsを制御装置20に出力する。電圧検出器18としては、例えば計器用変圧器(VT:Voltage Transformer)を用いることができる。電圧検出器18におけるサンプリング周波数は、例えば6kHz程度とすることができる。なお、上記電力系統Lsとの連系点には、三相の系統電流Is(三相系統電流Isa,Isb,Isc)が流れる。
制御装置20には、太陽光発電パネルPVとインバータ13との間に設けられたコンデンサC1の充電電圧Vdcが入力される。制御装置20は、直流電圧である充電電圧Vdcと、電流検出器17からの出力電流Iiと、電圧検出器18からの系統電圧Vsとに基づいて、インバータ13をPWM制御する制御パルスPWMを生成する。
図2に示すように、制御装置20では、上記電圧検出器18で検出された系統電圧VsがΔ−Y変換部21にサンプリング周期毎に入力される。Δ−Y変換部21は、系統電圧VsをΔ−Y変換して相電圧Vu,Vv,Vwを生成し、相電圧Vu,Vv,Vwを三相/二相(3Φ/2Φ)変換部22に出力する。
三相/二相変換部22は、相電圧Vu,Vv,Vwを、αβ軸の固定座標系の二相電圧値Vsα,Vsβに変換する(αβ変換)。三相/二相変換部22は、上記二相電圧値Vsα,Vsβを、バンドパスフィルタ(BPF)23と演算器38とに出力する。
BPF23は、二相電圧値Vsα,Vsβから特定の周波数帯域を通過させるフィルタ回路である。例えば、BPF23は、二相電圧値Vsα,Vsβからひずみ(ここでは、高周波成分)を除去し、その信号を瞬時正相変換部24に出力する。BPF23では、例えば、系統周波数が50Hzである場合には中心周波数が50Hzに設定され、系統周波数が60Hzである場合には中心周波数が60Hzに設定される。また、BPF23では、Q値を例えば1.0程度に設定することができる。
瞬時正相変換部24は、BPF23を通過した二相電圧値Vsα,Vsβを瞬時正相電圧Vpα,Vpβに変換する(瞬時正相変換)。瞬時正相変換部24は、瞬時正相電圧Vpα,Vpβを極座標変換部25に出力する。以下に、瞬時正相変換部24による瞬時正相変換について簡単に説明する。ここでは、説明の便宜上、BPF23から入力する二相電圧値をVsα,Vsβとして説明する。
瞬時正相変換部24は、BPF23から入力する二相電圧値Vsα,Vsβと、二相電圧値Vsα,Vsβの位相を系統周波数(例えば、50Hz)で90度遅らせた電圧値Vsα’,Vsβ’とから、以下の変換式を用いて瞬時正相電圧Vpα,Vpβを算出する。
極座標変換部25は、極座標変換により瞬時正相電圧Vpα,Vpβから位相情報θ1と振幅情報V1とを算出する。例えば、極座標変換部25は、以下の式(2)を用いて振幅情報V1を算出するとともに、以下の式(3)を用いて位相情報θ1を算出する。
そして、極座標変換部25は、振幅情報V1を電圧低下検出部26に出力する一方、位相情報θ1を位相変動検出部27及び位相置換部28に出力する。
このように、本例の制御装置20では、Δ−Y変換、αβ変換、瞬時正相変換及び極座標変換を用いて、系統電圧Vsから位相情報θ1(位相瞬時値)及び振幅情報V1が算出される。
電圧低下検出部26は、サンプリング周期毎に入力される上記振幅情報V1に基づいて、電力系統Lsにて瞬時電圧低下(瞬低)を含む所定レベル以上の電圧低下異常が生じているか否かを検出する。例えば、電圧低下検出部26は、電力系統Lsにて第1基準値以上第2基準値未満の電圧低下異常が生じているか否かを検出し、その検出結果に応じた信号レベルを持つ検出信号S1を位相置換部28に出力する。また、電圧低下検出部26は、電力系統Lsにて上記第2基準値以上の電圧低下異常が生じているか否かを検出し、その検出結果に応じた信号レベルを持つ検出信号S2を位相置換部29に出力する。電圧低下検出部26は、例えば、位相検出が困難な電圧レベルまで系統電圧Vsが低下する電圧低下異常を検出したときにHレベルの検出信号S2を生成するとともに、位相検出が可能な程度の電圧レベルまで系統電圧Vsが低下する電圧低下異常を検出したときにHレベルの検出信号S1を生成する。例えば、電圧低下検出部26は、系統電圧Vsの残電圧が10%未満となる電圧低下異常を検出したときにHレベルの検出信号S2を生成し、系統電圧Vsの残電圧が10%以上70%未満となる電圧低下異常を検出したときにHレベルの検出信号S1を生成する。
位相変動検出部27は、サンプリング周期毎に入力される上記位相情報θ1に基づいて、電力系統Lsにて所定レベル以上の位相変動異常が生じているか否かを検出する。例えば、位相変動検出部27は、系統電圧Vsにおける位相変動量が判定値以上であるか否かを検出し、その検出結果に応じた信号レベルを持つ検出信号S3を位相置換部28に出力する。
位相置換部28は、上記検出信号S1,S3に基づいて、位相情報の切り替えを指令する切替信号S4(図4参照)を生成する。また、位相置換部28は、Hレベルの切替信号S4が生成される前の正常時の位相情報(つまり、電力系統Lsにおける位相が安定している時に算出された位相情報)を一定期間分だけ保持する。そして、位相置換部28は、切替信号S4に基づいて、サンプリング周期毎に入力される上記位相情報θ1、又は上記保持している位相情報から位相情報θ2を生成し、その位相情報θ2を位相置換部29に出力する。位相置換部28は、例えば、位相変動異常が検出されておらず上記切替信号S4がLレベルである場合には、入力値である位相情報θ1をそのまま位相情報θ2として位相置換部29に出力する。また、位相置換部28は、例えば、瞬低発生後や瞬低復帰直後に位相変動異常が検出されて上記切替信号S4がHレベルになると、位相情報θ1(ここでは、位相変動が生じている位相情報)を、上記保持した正常時の位相情報に置換して、その置換後の位相情報を位相情報θ2として出力する。
位相置換部29は、電圧低下検出部26から入力する検出信号S2を所定時間遅延させた検出信号S2d(図5参照)を生成する。また、位相置換部29は、第2基準値以上の電圧低下異常が検出される時までの正常時の位相情報(つまり、第2基準値以上の電圧低下異常が検出されていない正常時(系統健全時)に算出された位相情報)を一定期間分だけ保持する。そして、位相置換部29は、位相置換部28からの位相情報θ2と、上記保持した系統健全時の位相情報と、検出信号S2dとに基づいて、その時々の電流指令値位相θcを設定し、設定した電流指令値位相θcを座標変換部30に出力する。ここで、電流指令値位相θcは、出力電流Iiの目標電流値を指令する電流指令値の位相情報である。位相置換部29は、例えば、検出信号S2dがLレベルである場合に、入力値である位相情報θ2に基づいて電流指令値位相θcを設定する。また、位相置換部29は、例えば、検出信号S2dがHレベルである場合に、上記保持した系統健全時の位相情報に基づいて電流指令値位相θcを設定する。
直流電圧制御部31は、上記コンデンサC1(図1参照)の充電電圧Vdcを太陽光発電パネルPVの発電電圧として入力し、充電電圧Vdcが定常電圧となるようにその時々の電流指令値振幅Icを設定し、設定した電流指令値振幅Icを座標変換部30に出力する。ここで、電流指令値振幅Icは、出力電流Iiの目標電流値を指令する電流指令値の振幅情報である。
座標変換部30は、位相置換部29から入力する電流指令値位相θcと、直流電圧制御部31から入力する電流指令値振幅Icとに基づいて、その時々で適切な振幅及び位相の出力電流値(電流指令値)の算出を行う。座標変換部30は、例えば、上記電流指令値位相θcと上記電流指令値振幅Icとからなる極座標を直交座標に変換し、例えば、αβ軸の固定座標系の二相電流値Icα,Icβを生成する。そして、座標変換部30は、生成した二相電流値Icα,Icβ(電流指令値)を演算器32,33に出力する。
座標変換部30から出力された二相電流値Icα,Icβは、演算器32及び電圧変換器34でjωLが乗算され、下記式で示す二相電圧値Vicα,Vicβ(電流指令値)に変換される。
ここで、上記式3において、Lは系統上に設けられたリアクトル(ここでは、リアクトルL1,L2)のインダクタンス値、ωは上記リアクトルの角周波数、jは虚数である。すなわち、演算器32では二相電流値Icα,Icβの位相がπ/2[rad]だけ進められ、その結果に対して電圧変換器34でωLが乗算される。このように生成された二相電圧値Vicα,Vicβは、演算器35に供給される。
一方、上記演算器33には、三相/二相変換部36から二相電流値Isα,Isβが供給される。三相/二相変換部36には、上記電流検出器17(図1参照)で検出された三相の出力電流Iiがサンプリング周期毎に入力される。三相/二相変換部36は、三相の出力電流Iiを、αβ軸の固定座標系の二相電流値Isα,Isβに変換し、それら二相電流値Isα,Isβを演算器33に出力する。
演算器33は、電流指令値位相θc及び電流指令値振幅Icに基づく電流値Icαと、実値(出力電流Ii)に基づく電流値Isαとを用いて偏差を演算し、その演算結果をα軸側の偏差電流値として電圧変換器37に出力する。また、演算器33は、電流指令値位相θc及び電流指令値振幅Icに基づく二相電流値Icβと、実値に基づく二相電流値Isβとを用いて偏差を演算し、その演算結果をβ軸側の偏差電流値として電圧変換器37に出力する。
電圧変換器37は、演算器33の演算結果である偏差電流値を偏差電圧値に変換し、その偏差電圧値を演算器35に出力する。具体的には、電圧変換器37は、α軸側の偏差電流値を電圧値に変換し、α軸側の偏差電圧値として演算器35に出力する。また、電圧変換器37は、β軸側の偏差電流値を電圧値に変換し、β軸側の偏差電圧値として演算器35に出力する。
演算器35は、電圧変換器37からの偏差電圧値を、電圧変換器34からの二相電圧値Vicα,Vicβに反映し、二相電圧値Vα,Vβとして演算器38に出力する。具体的には、演算器35は、電圧値Vicαにα軸側の偏差電圧値を加算して電圧値Vαを生成するとともに、電圧値Vicβにβ軸側の偏差電圧値を加算して電圧値Vβを生成する。
演算器38は、三相/二相変換部22からの二相電圧値Vsα,Vsβに、演算器35からの二相電圧値Vα,Vβを加算することにより、二相出力電圧値Vcα,Vcβを生成する。具体的には、演算器38は、電圧値Vsαに電圧値Vαを加算して出力電圧値Vcαを生成するとともに、電圧値Vsβに電圧値Vβを加算して出力電圧値Vcβを生成する。そして、演算器38は、二相出力電圧値Vcα,Vcβを二相/三相(2Φ/3Φ)変換部39に出力する。
二相/三相変換部39は、αβ軸の固定座標系の二相出力電圧値Vcα,Vcβを三相出力電圧値Vca,Vcb,Vccに変換する。二相/三相変換部39は、三相出力電圧値Vca,Vcb,VccをPWM制御部40に出力する。
PWM制御部40は、インバータ13(図1参照)のPWM制御を実施する際に用いる制御パルスPWMを設定するものであり、入力された三相出力電圧値Vca,Vcb,Vccに基づいて制御パルスPWMのオンパルス幅(デューティ)を適切値に決定する。そして、PWM制御部40は、その時々で決定される制御パルスPWMに基づいて、インバータ13の適切なスイッチング動作を行っている。
次に、電圧低下検出部26の内部構成例について説明する。
図3に示すように、電圧低下検出部26は、判定器51と判定器52とを有している。電圧低下検出部26では、極座標変換部25(図2参照)からの振幅情報V1が判定器51,52に入力される。ここで、振幅情報V1は、上記極座標変換部25において瞬時正相電圧Vpα,Vpβに基づいて算出された、その時々の電圧振幅値を示す情報である。
判定器51には、系統電圧Vsの定格電圧に応じた電圧値Vr1,Vr2が入力される。判定器51は、振幅情報V1と電圧値Vr1,Vr2との比較を行い、比較結果に応じた検出信号S1を生成する。例えば、電圧値Vr1は、系統電圧Vsの定格電圧の70%の電圧値に設定することができ、電圧値Vr2は、系統電圧Vsの定格電圧の10%の電圧値に設定することができる。判定器51は、振幅情報V1が電圧値Vr1以上であるとき、及び振幅情報V1が電圧値Vr2未満であるときに、Lレベルの検出信号S1を生成する。また、判定器51は、振幅情報V1が電圧値Vr2以上であって電圧値Vr1未満のときに、Hレベルの検出信号S1を生成する。すなわち、本例の判定器51は、系統電圧Vsの残電圧が10%以上70%未満となる電圧低下異常(つまり、第1基準値以上第2基準値未満の電圧低下異常)が生じたことを検出し、それを検出したときにHレベルの検出信号S1を生成する。この検出信号S1は、図2に示した位相置換部28に供給される。
一方、判定器52は、振幅情報V1と電圧値Vr2との比較を行い、比較結果に応じた検出信号S2を生成する。判定器52は、振幅情報V1が電圧値Vr2以上であるときにLレベルの検出信号S2を生成し、振幅情報V1が電圧値Vr2未満であるときにはHレベルの検出信号S2を生成する。すなわち、本例の判定器52は、系統電圧Vsの残電圧が10%未満となる電圧低下異常(第2基準値以上の電圧低下異常)が生じたことを検出し、それを検出したときにHレベルの検出信号S2を生成する。この検出信号S2は、図2に示した位相置換部29に供給される。
次に、位相変動検出部27及び位相置換部28の内部構成例について説明する。
図4に示すように、位相変動検出部27は、演算器61と、比較位相生成部62と、位相変動判定部63とを有している。また、位相置換部28は、オンディレイタイマ70と、オフディレイタイマ71と、アンド回路72と、オンディレイタイマ73と、オフディレイタイマ74と、位相情報切替部75と、位相保持部76と、位相抽出部77と、位相選択部78と、位相情報保持部79とを有している。
位相変動検出部27では、極座標変換部25(図2参照)で算出された位相情報θ1がサンプリング周期毎に演算器61に入力される。すなわち、演算器61には、今回のサンプリングで算出された位相情報θ1が入力される。また、演算器61には、比較位相生成部62から比較位相θ3が入力される。
比較位相生成部62は、位相置換部28から出力される位相情報θ2を入力し、一定期間分、具体的には電力系統Lsの基本波(系統基本波)の整数倍サイクル分(ここでは、系統基本波の3サイクル分)の位相情報の更新及び保持を行っている。比較位相生成部62は、保持した位相情報の中から最古の位相情報、つまり3サイクル前(3周期前)のサンプリング時に位相置換部28から出力された位相情報を上記比較位相θ3として出力する。例えば、系統周波数が50Hz、サンプリング周波数が6kHzである場合には、1サイクルで120個のサンプリング点が存在することになるため、比較位相生成部62は、360個前のサンプリング時に保持した位相情報を上記比較位相θ3として出力する。
そして、演算器61は、今回のサンプリングで算出された現時点の位相情報θ1と、現時点よりも3サイクル前の位相情報である比較位相θ3とを入力し、両値の差分から位相変動量Δθ(=θ1−θ3)の算出を行う。演算器61は、算出した位相変動量Δθを位相変動判定部63に出力する。
位相変動判定部63は、入力された位相変動量Δθと予め設定された判定値θdとを比較し、その比較結果に応じた信号レベルを持つ検出信号S3を生成する。例えば、位相変動判定部63は、位相変動量Δθが判定値θd未満であるときはLレベルの検出信号S3を生成し、位相変動量Δθが判定値θd以上となったときにはHレベルの検出信号S3を生成する。すなわち、位相変動判定部63は、位相情報θ1と比較位相θ3との差分を用いて、系統電圧Vsにおいて判定値θd以上の位相変動異常が生じているか否かの判定を行っている。そして、位相変動判定部63は、生成した検出信号S3を位相置換部28内のオンディレイタイマ70に出力する。なお、上記判定値θdは、例えば±5deg程度に設定することができる。
オンディレイタイマ70は、検出信号S3がLレベルからHレベルに遷移してから所定時間経過したときに、Hレベルの出力信号をオフディレイタイマ71に出力する。この所定時間は、例えば1ms程度に設定することができる。その一方で、オンディレイタイマ70は、検出信号S3がHレベルからLレベルになると、直ちにLレベルの出力信号をオフディレイタイマ71に出力する。
オフディレイタイマ71は、オンディレイタイマ70の出力信号がLレベルからHレベルになると、直ちにそのHレベルの出力信号を検出信号S3dとしてアンド回路72に出力する。その一方で、オフディレイタイマ71は、オンディレイタイマ70の出力信号がHレベルからLレベルに遷移したから所定時間経過したときに、検出信号S3dをHレベルからLレベルに遷移する。この所定時間は、例えば、系統基本波の1サイクル分(1周期分)の時間に設定することができる。このときの所定時間は、系統周波数が50Hzの場合には20ms程度に設定することができる。
このように、オンディレイタイマ70は、検出信号S3のオンするタイミング(ここでは、検出信号S3dがLレベルからHレベルに遷移するタイミング)を所定時間遅延させるタイマである。また、上記オフディレイタイマ71は、検出信号S3のオフするタイミング(ここでは、検出信号S3dがHレベルからLレベルに遷移するタイミング)を所定時間遅延させるタイマである。位相置換部28では、オンディレイタイマ70を設けたことにより、系統電圧Vsにおいて判定値θd以上の位相変動異常が所定時間(ここでは、1ms)継続して発生した場合に初めてHレベルの検出信号S3dが出力される。また、オフディレイタイマ71を設けたことにより、位相変動量Δθが判定値θd未満となって検出信号S3がHレベルからLレベルになり、そのLレベルの状態が所定時間(ここでは、20ms)継続した場合に初めて、検出信号S3dがHレベルからLレベルに遷移される。
アンド回路72は、2入力型であり、一方の入力端子に検出信号S3dが入力され、他方の入力端子に上記検出信号S1がオンディレイタイマ73及びオフディレイタイマ74を介して入力される。
オンディレイタイマ73には、上記電圧低下検出部26から検出信号S1が入力される。オンディレイタイマ73は、検出信号S1がLレベルからHレベルに遷移してから所定時間経過したときに、Hレベルの出力信号をオフディレイタイマ74に出力する。この所定時間は、例えば、上記オンディレイタイマ70における遅延時間と同じ時間(ここでは、1ms)に設定することができる。その一方で、オンディレイタイマ73は、検出信号S1がHレベルからLレベルになると、直ちにLレベルの出力信号をオフディレイタイマ74に出力する。
オフディレイタイマ74は、オンディレイタイマ73の出力信号がLレベルからHレベルになると、直ちにそのHレベルの出力信号を検出信号S1dとしてアンド回路72に出力する。その一方で、オフディレイタイマ74は、オンディレイタイマ73の出力信号がHレベルからLレベルに遷移したから所定時間経過したときに、検出信号S1dをHレベルからLレベルに遷移する。この所定時間は、例えば、上記オフディレイタイマ71における遅延時間と同じ時間(ここでは、20ms)に設定される。
このように、オンディレイタイマ73は、検出信号S1のオンするタイミング(ここでは、検出信号S1dがLレベルからHレベルに遷移するタイミング)を所定時間遅延させるタイマである。また、上記オフディレイタイマ74は、検出信号S1のオフするタイミング(ここでは、検出信号S1dがHレベルからLレベルに遷移するタイミング)を所定時間遅延させるタイマである。位相置換部28では、オンディレイタイマ73を設けたことにより、系統電圧Vsの残電圧が10%以上70%未満となる電圧低下異常が所定時間(ここでは、1ms)継続して発生した場合に初めてHレベルの検出信号S1dが出力される。また、オフディレイタイマ74を設けたことにより、電圧低下異常が発生した後に系統電圧Vsが正常電圧レベルに復帰して検出信号S1がHレベルからLレベルに遷移した後も所定時間(ここでは、20ms)だけ検出信号S1dがHレベルに維持される。
そして、アンド回路72は、検出信号S1dと検出信号S3dとを論理積演算した結果を持つ切替信号S4を生成する。すなわち、アンド回路72は、検出信号S1dがHレベルであって、検出信号S3dがHレベルである場合に、Hレベルの切替信号S4を生成する。換言すると、検出信号S1dがHレベルとなる期間(例えば、瞬低期間中及び瞬低復帰直後)において、系統電圧Vsにて判定値θd以上の位相変動異常が発生した場合に、Hレベルの切替信号S4が生成される。なお、それ以外の場合には、アンド回路72は、Lレベルの切替信号S4を生成する。この切替信号S4は、位相情報切替部75及び位相選択部78に供給される。
位相情報切替部75は、制御端子a0と、第1及び第2入力端子a1,a2とを有している。制御端子a0には、上記アンド回路72から切替信号S4が入力される。第1入力端子a1には、極座標変換部25から今回のサンプリングで算出された位相情報θ1が入力される。第2入力端子a2には、位相情報保持部79から出力される位相情報θ4が位相選択部78を介して入力される。例えば、位相情報切替部75は、Lレベルの切替信号S4に基づいて第1入力端子a1が選択される場合には、今回のサンプリングで算出された現時点の位相情報θ1をそのまま位相情報θ2として後段の位相置換部29(図2参照)に出力する。その一方で、位相情報切替部75は、Hレベルの切替信号S4に基づいて第2入力端子a2が選択される場合には、位相情報保持部79から出力される位相情報θ4を位相情報θ2として出力する。
位相保持部76は、位相情報切替部75から出力される位相情報θ2(位相瞬時値)を入力し、一定期間分の位相情報の更新及び保持を行っている。なお、上記一定期間、つまり位相情報θ2の保存間隔は、例えば系統基本波の整数倍サイクル分(例えば、2サイクル以上分)とすることが好ましい。本例の位相保持部76における保存間隔は3サイクル分に設定されている。
位相抽出部77は、位相保持部76に保存された位相情報の中から時間的に最も古い最古の位相情報(ここでは、3サイクル前の位相情報)を抽出し、抽出した位相情報を位相選択部78に出力する。この位相抽出部77にて位相情報を抽出する間隔(つまり、位相抽出部77で抽出する位相情報量)は、例えば、上記最古の位相情報を基準として上記保存間隔よりも短く、且つ系統基本波の整数倍サイクル分とすることが好ましい。本例では、位相抽出部77は、上記最古の位相情報から1サイクル分の位相情報を位相保持部76から抽出し、抽出した位相情報を位相選択部78に出力する。
位相選択部78は、制御端子b0と、第1及び第2入力端子b1,b2とを有している。制御端子b0には、上記アンド回路72から切替信号S4が入力される。第1入力端子b1には、位相抽出部77から出力される位相情報が入力される。第2入力端子b2には、位相情報保持部79から位相情報θ4が入力される。位相選択部78は、Lレベルの切替信号S4に応答して、位相抽出部77から入力される位相情報を位相情報切替部75及び位相情報保持部79に出力する。また、位相選択部78は、Hレベルの切替信号S4に応答して、位相情報保持部79から入力される位相情報θ4を位相情報切替部75及び位相情報保持部79に出力する。
位相情報保持部79は、位相選択部78から出力される位相情報を入力し、系統基本波の整数倍サイクル分(ここでは、1サイクル分)の位相情報の更新及び保持を行っている。例えば、切替信号S4がLレベルである場合、位相情報保持部79には、位相抽出部77で抽出された1サイクル分の位相情報が保持される。すなわち、切替信号S4がLレベルである場合の位相情報保持部79には、現時点の周期よりも3周期前の1サイクル分の位相情報が保持される。なお、切替信号S4がLレベルである場合には、位相情報保持部79に保持された位相情報θ4が、位相抽出部77における抽出間隔(ここでは、系統基本波の1周期)毎に更新される。
一方、Hレベルの切替信号S4に応答して位相選択部78で第2入力端子b2が選択される場合、位相情報保持部79には、第2入力端子b2に切り替わる前までに当該位相情報保持部79に保持されていた1サイクル分の位相情報θ4が繰り返し更新されつつ保持される。すなわち、切替信号S4がHレベルである場合、位相情報保持部79では、その位相情報保持部79と位相選択部78との接続態様から同一情報(つまり、位相情報保持部79から出力される位相情報θ4)にて繰り返し更新される。このように、切替信号S4がHレベルである場合には、第2入力端子b2に切り替わった周期よりも3周期前の位相正常時における1サイクル分の位相情報が位相情報保持部79に継続して保持される。すなわち、切替信号S4がHレベルである場合の位相情報保持部79には、位相変動異常が検出されていない正常時(位相正常時)の位相情報が継続して保持される。
そして、切替信号S4がHレベルである場合には、位相情報保持部79に保持されている位相情報θ4が位相選択部78を介して位相情報切替部75に出力され、さらに位相情報切替部75から上記位相情報θ4が位相情報θ2として出力される。このように、位相置換部28では、切替信号S4がHレベルになると、位相変動の生じている位相情報θ1が、位相正常時における位相情報θ4に置換され、その置換後の位相情報が位相情報θ2として出力される。
次に、位相置換部29の内部構成例について説明する。
図5に示すように、位相置換部29は、位相情報切替部82と、オンディレイタイマ83と、オフディレイタイマ84と、位相保持部85と、位相抽出部86と、位相選択部87と、位相情報保持部88とを有している。位相情報切替部82は、制御端子c0と、第1及び第2入力端子c1,c2とを有している。制御端子c0には、上記電圧低下検出部26からの検出信号S2がオンディレイタイマ83及びオフディレイタイマ84により所定時間遅延されて検出信号S2dとして入力される。第1入力端子c1には、位相情報切替部75からの位相情報θ2が入力される。第2入力端子c2には、位相情報保持部88から出力される位相情報θ5が位相選択部87を介して入力される。例えば、位相情報切替部82は、Lレベルの検出信号S2dに基づいて第1入力端子c1が選択される場合には、位相置換部28からの位相情報θ2をそのまま電流指令値位相θcとして出力する。その一方で、位相情報切替部82は、Hレベルの検出信号S2dに基づいて第2入力端子c2が選択される場合には、位相情報保持部88から出力される位相情報θ5を電流指令値位相θcとして出力する。
オンディレイタイマ83には、検出信号S2のオンするタイミング(ここでは、検出信号S2dがLレベルからHレベルに遷移するタイミング)を所定時間遅延させるタイマである。また、オフディレイタイマ84は、検出信号S2のオフするタイミング(ここでは、検出信号S2dがHレベルからLレベルに遷移するタイミング)を所定時間遅延させるタイマである。なお、オンディレイタイマ83における所定時間は、例えば1ms程度に設定することができ、オフディレイタイマ84における所定時間は、例えば20ms程度に設定することができる。
位相保持部85は、位相情報切替部82から出力される電流指令値位相θc(位相瞬時値)を入力し、一定期間分の位相情報の更新及び保持を行っている。なお、上記一定期間、つまり電流指令値位相θcの保存間隔は、例えば系統基本波の整数倍サイクル分(例えば、2サイクル以上分)とすることが好ましい。本例の位相保持部85における保存間隔は、位相保持部76における保存間隔と同様の3サイクル分に設定されている。
位相抽出部86は、位相保持部85に保存された位相情報の中から時間的に最も古い最古の位相情報(ここでは、3サイクル前の位相情報)を抽出し、抽出した位相情報を位相選択部87に出力する。この位相抽出部86にて位相情報を抽出する間隔は、例えば、上記最古の位相情報を基準として上記保存間隔よりも短く、且つ系統基本波の整数倍サイクル分とすることが好ましい。本例では、位相抽出部86は、位相抽出部77と同様に、位相保持部85における最古の位相情報から1サイクル分の位相情報を抽出し、抽出した位相情報を位相選択部87に出力する。
位相選択部87は、制御端子d0と、第1及び第2入力端子d1,d2とを有している。制御端子d0には、上記オフディレイタイマ84から検出信号S2dが入力される。第1入力端子d1には、位相抽出部86から出力される位相情報が入力される。第2入力端子d2には、位相情報保持部88から位相情報θ5が入力される。位相選択部87は、Lレベルの検出信号S2dに応答して、位相抽出部86から入力される位相情報を位相情報切替部82及び位相情報保持部88に出力する。また、位相選択部87は、Hレベルの検出信号S2dに応答して、位相情報保持部88から入力される位相情報θ5を位相情報切替部82及び位相情報保持部88に出力する。
位相情報保持部88は、位相選択部87から出力される位相情報を入力し、系統基本波の整数倍サイクル分(ここでは、1サイクル分)の位相情報の更新及び保持を行っている。例えば、検出信号S2dがLレベルである場合、位相情報保持部88には、位相抽出部86で抽出された1サイクル分の位相情報が保持される。すなわち、検出信号S2dがLレベルである場合の位相情報保持部88には、現時点の周期よりも3周期前の1サイクル分の位相情報が保持される。なお、検出信号S2dがLレベルである場合には、位相情報保持部88に保持された位相情報θ5が、位相抽出部86における抽出間隔(ここでは、系統基本波の1周期)毎に更新される。
一方、Hレベルの検出信号S2dに応答して位相選択部87で第2入力端子d2が選択される場合、位相情報保持部88には、第2入力端子d2に切り替わる前までに当該位相情報保持部88に保持されていた1サイクル分の位相情報θ5が繰り返し更新されつつ保持される。すなわち、検出信号S2dがHレベルである場合、位相情報保持部88では、その位相情報保持部88と位相選択部87との接続態様から同一情報(つまり、位相情報保持部88から出力される位相情報θ5)にて繰り返し更新される。このように、検出信号S2dがHレベルである場合には、第2入力端子d2に切り替わった周期よりも3周期前の系統健全時における1サイクル分の位相情報が位相情報保持部88に継続して保持される。すなわち、検出信号S2dがHレベルである場合の位相情報保持部88には、電圧低下異常が検出されていない正常時(系統健全時)の位相情報が継続して保持される。
そして、検出信号S2dがHレベルである場合には、位相情報保持部88に保持されている位相情報θ5が位相選択部87を介して位相情報切替部82に出力され、さらに位相情報切替部82から上記位相情報θ5が電流指令値位相θcとして出力される。このように、位相置換部29では、振幅情報V1が電圧値Vr2未満となる電圧低下異常が発生して検出信号S2dがHレベルに切り替わると、位相情報θ2が、位相情報保持部88に保持されている系統健全時の位相情報θ5に置換され、その置換後の位相情報が電流指令値位相θcとして出力される。これにより、例えば、瞬低発生により系統電圧Vsの残電圧が10%未満となって系統電圧Vsから位相情報を検出することが困難になった場合であっても、電力系統Lsが安定した正常時の位相情報θ5に基づいて電流指令値位相θcを設定することができる。
次に、図6に従って、電圧低下検出部26、位相変動検出部27及び位相置換部28,29の動作について説明する。なお、図6において、縦軸及び横軸は、説明を簡潔にするため、適宜拡大、縮小して示している。
今、時刻t2では、電力系統Lsに瞬低(ここでは、系統電圧Vsの残電圧が20%)が発生している(瞬低期間)。この瞬低期間では、上記瞬低による電圧低下異常が電圧低下検出部26内の判定器51で検出されているため、その判定器51からHレベルの検出信号S1が出力されている。
その一方で、上記瞬低期間では、系統電圧Vsの位相が安定しているため、位相変動検出部27からはLレベルの検出信号S3が出力され、オフディレイタイマ71からはLレベルの検出信号S3dが出力されている。このため、アンド回路72からLレベルの切替信号S4が出力される。このときの位相変動検出部27の動作を以下に説明する。
まず、時刻t2の比較位相生成部62には、時刻t2の3サイクル前(3周期前)の時刻t0で取得した位相情報から3サイクル分の位相情報が保持されている。時刻t2において、比較位相生成部62は、保持した位相情報の中から最古の位相情報、ここでは時刻t0で取得した位相情報(位相瞬時値)を比較位相θ3として演算器61に出力する。演算器61は、時刻t2のサンプリングで算出された現時点の位相情報θ1と、時刻t2よりも3サイクル前の時刻t0における比較位相θ3とを比較する。このとき、系統電圧Vsの位相が安定しており、位相情報θ1と比較位相θ3との差分が0(ゼロ)に近いため、位相変動検出部27からはLレベルの検出信号S3が出力される。このため、アンド回路72からはLレベルの切替信号S4が出力される。
そして、上記Lレベルの切替信号S4に応答して、時刻t2のサンプリングで算出された位相情報θ1がそのまま位相情報θ2として出力される。ここで、系統電圧Vsの残電圧が20%である本例では、電圧低下検出部26内の判定器52からLレベルの検出信号S2が出力され、位相情報切替部82で位相情報θ2が入力される第1入力端子c1が選択される。このため、位相置換部28から出力される位相情報θ2(ここでは、時刻t2のサンプリングで算出された位相情報θ1)がそのまま電流指令値位相θcとして出力される。
なお、時刻t2を含む周期T4の開始時(時刻t1参照)には、位相保持部76に、位相置換部28から出力される位相情報θ2の過去3サイクル分(過去3周期分)の位相情報が保持されている。すなわち、時刻t1における位相保持部76には、時刻t1よりも前の3周期T1〜T3で出力された3サイクル分の位相情報θ2が保存されている。また、時刻t1では、位相保持部76に保持された位相情報の中の最古の位相情報から1サイクル分の位相情報(ここでは、周期T1における位相情報)が位相抽出部77により抽出され、その1サイクル分の位相情報が位相情報保持部79に保持される。
その後、時刻t3において、上記周期T4の次の周期T5が開始される。この時刻t3における位相保持部76には、時刻t3よりも前の3周期T2〜T4で出力された3サイクル分の位相情報θ2が保持されている。また、時刻t3では、位相保持部76の位相情報の中から周期T2における位相情報が位相抽出部77により抽出され、その1サイクル分の位相情報が位相情報保持部79に保持される。すなわち、時刻t3では、位相情報保持部79に保持された位相情報が、周期T1における位相情報から周期T2における位相情報に更新される。このため、周期T5では、位相情報保持部79から、その位相情報保持部79に保持された位相情報、つまり周期T2における位相情報が位相情報θ5として位相選択部78に順次出力される。
そして、上記時刻t3直後に、系統電圧Vsが瞬低状態から正常電圧レベルまで復帰すると、振幅情報V1が電圧値Vr1以上となるため、判定器51から出力される検出信号S1がHレベルからLレベルに切り替わる。
このLレベルに切り替わった検出信号S1は、オフディレイタイマ74に入力される。そして、オフディレイタイマ74による遅延時間Td(ここでは、20ms)経過した後に、検出信号S1dがHレベルからLレベルに切り替わる。すなわち、アンド回路72に入力される検出信号S1dは、検出信号S1がHレベルからLレベルに切り替わってから上記遅延時間Td(ここでは、20ms)経過後に、HレベルからLレベルに切り替わる。換言すると、瞬低復帰してから20ms間は、検出信号S1dがHレベルに維持される。
一方、上記時刻t3において系統電圧Vsに急峻な電圧変動が発生すると、その電圧変動に伴って系統電圧Vsの位相が大きく変動し、位相変動量Δθが大きくなる。その後、位相変動量Δθが判定値θd以上となると(時刻t4参照)、位相変動判定部63から出力される検出信号S3がLレベルからHレベルに切り替わる。そして、オンディレイタイマ70による遅延時間(ここでは、1ms)経過後に、検出信号S3dがLレベルからHレベルに切り替わる(時刻t5参照)。このとき、アンド回路72に入力される検出信号S1dがHレベルとなっていることから、検出信号S3dがHレベルになることで、アンド回路72から出力される切替信号S4がLレベルからHレベルに切り替わる。
このHレベルの切替信号S4に応答して、位相選択部78では第2入力端子b2が選択され、位相情報切替部75では第2入力端子a2が選択される。このため、位相情報保持部79から出力される位相情報θ4が位相選択部78を介して位相情報切替部75に順次入力され、その位相情報θ4が位相情報θ2として位相情報切替部75から出力される。すなわち、切替信号S4がHレベルである期間では、その時の系統電圧Vsに基づいて算出された位相情報θ1の代わりに、位相情報保持部79に保持されている位相情報θ4が位相情報θ2として出力される。ここで、上述したように、周期T5における位相情報保持部79には、位相変動異常が検出されていない位相正常時(ここでは、周期T2)における位相情報が保持されている。このため、切替信号S4がHレベルとなった後の周期T5では、位相情報θ1が周期T2における位相情報(位相正常時の位相情報)に置換され、その置換後の位相情報が位相情報θ2として出力される。そして、この位相情報θ2は電流指令値位相θcとして座標変換部30に入力され、その座標変換部30での出力電流値(電流指令値)の設定に用いられる。したがって、瞬低復帰などのように急峻な電圧変動(電圧上昇)が発生した場合であっても、その直後に位相正常時の位相情報を用いて電流指令値の設定を行うことができる。ここでは、説明を省略したが、瞬低発生時のような急峻な電圧変動(電圧低下)が発生した場合にも、上記瞬低復帰時と同様に、瞬低発生直後に位相正常時の位相情報を用いて電流指令値の設定を行うことができる。
なお、時刻t6において、検出信号S1dがHレベルからLレベルに切り替わると、アンド回路72から出力される切替信号S4もHレベルからLレベルに切り替わる。すると、位相情報切替部75で第1入力端子a1が選択され、極座標変換部25から入力される位相情報θ1がそのまま位相情報θ2として出力されるようになる。
次に、図7に従って、系統電圧Vsの残電圧が10%未満となる瞬低が電力系統Lsに発生した場合における、電圧低下検出部26、位相変動検出部27及び位相置換部28,29の動作について説明する。なお、図7において、縦軸及び横軸は、説明を簡潔にするため、適宜拡大、縮小して示している。
今、時刻t7〜t8の期間では、系統電圧Vsが正常電圧レベルで推移している。この期間では、電圧低下異常が発生していないため、電圧低下検出部26からLレベルの検出信号S1,S2が出力されている。また、この期間では、系統電圧Vsの位相が安定しているため、位相変動検出部27からはLレベルの検出信号S3が出力されている。このときの位相変動検出部27の動作は、先の図6に示した時刻t0〜t2における動作と同様であるため、ここでは説明を省略する。
続いて、時刻t8において、周期T14が開始される。この時刻t8における位相保持部76,85には、時刻t8よりも前の3周期T11〜T13で出力された3サイクル分の位相情報が保持されている。時刻t8では、位相保持部76の位相情報の中から周期T11における位相情報が位相抽出部77により抽出され、その1サイクル分の位相情報が位相情報保持部79に保持される。また、時刻t8では、位相保持部85の位相情報の中から周期T11における位相情報が位相抽出部86により抽出され、その1サイクル分の位相情報が位相情報保持部88に保持される。このため、周期T14では、位相情報保持部79から位相選択部78に周期T11における位相情報が順次出力されるとともに、位相情報保持部88から位相選択部87に周期T11における位相情報が順次出力される。
そして、上記時刻t8直後に、系統電圧Vsの残電圧が10%未満(ここでは、残電圧が0%)となる瞬低が電力系統Lsに発生すると、振幅情報V1(電圧値)が低下する。このとき、図7に示すように、振幅情報V1の低下が瞬低(つまり、系統電圧Vsの振幅低下)から遅れる場合がある。このような振幅情報V1の振幅変化の遅延は、例えば、BPF23の時定数、及び瞬時正相変換部24や極座標変換部25における演算構成の影響を受けて発生する。また、図1及び図2では図示を省略しているが、電圧検出器18で検出された系統電圧Vsは、例えば、アナログローパスフィルタ、A/D変換器やデジタルローパスフィルタなどの回路を介してΔ−Y変換部21に供給される。このため、これらローパスフィルタの時定数によっても、振幅情報V1の振幅変化に遅延が生じるおそれがある。そして、振幅情報V1の振幅変化に遅延が生じると、残電圧が10%未満となる瞬低の検出が遅れる、つまりHレベルの検出信号S2が生成されるタイミングが遅れる。例えば、図示の例では、残電圧が0%となる瞬低の発生(時刻t8)から所定の期間P1経過後に(時刻t10参照)、Hレベルの検出信号S2が生成される。
このとき、仮に、位相置換部28を有さず、位相置換部29のみを有する制御装置であった場合には、期間P1において、Hレベルの検出信号S2が生成されないため、位相置換部29による位相置換が実施されない。但し、期間P1では、系統電圧Vsの過渡変動に伴って位相情報θ1が大きく変動している。このため、位相置換部29による位相置換が実施されないと、大きく変動した位相情報に基づいて電流指令値が設定されることになり、その電流指令値により制御されるインバータ13の出力電流Iiにも振動及び変動が発生するという問題が起こる。さらに、出力電流Iiの振動及び変動に伴って、系統電流Isにも振動及び変動が発生する。すなわち、位相置換部28を有さない場合には、残電圧が0%の瞬低に対する運転継続機能、つまりZVRT(Zero Voltage Ride Through)動作時における系統電流Isが不安定になるという問題がある。
これに対し、本実施形態の制御装置20では、位相置換部29と併せて、系統電圧Vsの残電圧が10%以上70%未満となる電圧低下異常が発生したときに動作する位相置換部28が設けられている。これにより、振幅情報V1の振幅変化の遅延に起因して、ZVRT動作時に系統電流Isが不安定になることを好適に抑制することができる。この点について以下に詳述する。
上記時刻t8において電力系統Lsに瞬低が発生すると、振幅情報V1が徐々に低下する。その後、時刻t9において、振幅情報V1が電圧値Vr1よりも低くなると、検出信号S1がLレベルからHレベルに切り替わる。なお、このとき、振幅情報V1が電圧値Vr2以上であるため、検出信号S2はLレベルに維持されている。
一方、時刻t8において系統電圧Vsに急峻な電圧変動が発生すると、その電圧変動に伴って系統電圧Vsの位相が大きく変動し、位相変動量Δθが大きくなる。そして、位相変動量Δθが判定値θd以上となると(時刻t9参照)、検出信号S3がLレベルからHレベルに切り替わる。このHレベルの検出信号S3とHレベルの検出信号S1に応答して、切替信号S4がLレベルからHレベルに切り替わる。
このHレベルの切替信号S4に応答して、位相置換部28による位相置換動作が開始される。すなわち、切替信号S4がHレベルである期間では、その時の系統電圧Vsに基づいて算出された位相情報θ1の代わりに、位相情報保持部79に保持されている位相情報θ4が位相情報θ2として出力される。これにより、切替信号S4がHレベルとなった後の周期T14及び周期T15では、位相情報θ1が周期T11における位相情報(位相正常時の位相情報)に置換され、その置換後の位相情報が位相情報θ2として出力される。したがって、振幅情報V1の振幅変化の遅延に伴って位相置換部29による位相置換が行われない期間P1が生じ、さらにその期間P1で位相変動異常が発生した場合であっても、瞬低発生直後に位相正常時の位相情報を用いて電流指令値の設定を行うことができる。
その後、振幅情報V1が電圧値Vr2よりも低くなると(時刻t10)、検出信号S1がHレベルからLレベルに切り替わると共に、検出信号S2がLレベルからHレベルに切り替わる。このLレベルの検出信号S1に応答して、切替信号S4がHレベルからLレベルに切り替わり、そのLレベルの切替信号S4に応答して位相置換部28による位相置換動作が行われないようになる。すなわち、Lレベルの切替信号S4に応答して、位相情報切替部75で位相情報θ1が入力される第1入力端子a1が選択されるため、極座標変換部25からの位相情報θ1がそのまま位相情報θ2として出力される。
一方、上述したように検出信号S2がHレベルに切り替わった後に、オンディレイタイマ83における遅延時間が経過すると、位相情報切替部82に入力される検出信号S2dがLレベルからHレベルに切り替わる。そして、このHレベルの検出信号S2dに応答して、位相置換部29による位相置換動作が開始される。詳述すると、Hレベルの検出信号S2dに応答して、位相選択部87では第2入力端子d2が選択され、位相情報切替部82では第2入力端子c2が選択される。このため、位相情報保持部88から出力される位相情報θ5が位相選択部87を介して位相情報切替部82に順次入力され、その位相情報θ5が電流指令値位相θcとして位相情報切替部82から出力される。すなわち、検出信号S2dがHレベルである期間では、位相置換部28から入力される位相情報θ2(ここでは、その時の系統電圧Vsに基づいて算出された位相情報θ1)の代わりに、位相情報保持部88に保持されている位相情報θ5が位相情報θ2として出力される。これにより、検出信号S2dがHレベルとなった後の瞬低期間では、位相情報θ2(位相情報θ1)が系統健全時の位相情報θ5に置換され、その置換後の位相情報が電流指令値位相θcとして出力される。したがって、検出信号S2dがHレベルとなった後の瞬低期間では、系統健全時の位相情報を用いて電流指令値の設定を行うことができる。
以上説明したように、系統電圧Vsの残電圧が10%未満となる瞬低が発生した場合には、まず、瞬低発生直後の位相変動に伴って位相置換部28による位相置換が行われ、その後、振幅情報V1が電圧値Vr2未満に低下したことに伴って位相置換部29による位相置換が行われる。これにより、振幅情報V1の振幅変化に遅延が生じた場合であっても、瞬低発生後の位相情報(電流指令値位相θc)の変動を抑制することができるため、ZVRT動作時に系統電流Isが不安定になることを好適に抑制することができる。
次に、上記制御装置20の制御によるパワコン11の動作(作用)を説明する。
まず、系統電圧Vsが正常電圧レベルで推移している場合の動作について説明する。この場合、インバータ13の動作を決定する電流指令値(出力電流値)は、その時々の充電電圧Vdcに基づいて算出される電流指令値振幅Icと、その時々の系統電圧Vsに基づいて算出される電流指令値位相θcとを用いて設定される。さらに、上記電流指令値に出力電流Iiをフィードバックして、その電流指令値を適切な値に調整している。こうして設定された電流指令値に基づいて動作するインバータ13により、太陽光発電パネルPVで発電された直流電力が電力系統Lsに合った交流電力に適切に変換されて、その電力系統Lsに出力される。
次に、図16に示した比較例の制御装置20Aの動作と比較しつつ、系統電圧Vsに瞬低等の急峻な電圧変動が発生した場合の動作について説明する。
まず、比較例として、電圧低下検出部26、位相変動検出部27及び位相置換部28,29を有さない制御装置20Aの制御によるパワコン11の動作について説明する。
ここでは、図10〜図12を参照して瞬低復帰時における比較例の制御装置20Aの動作について説明する。図10は、瞬低発生時及び瞬低復帰時における比較例の系統電圧Vs及び系統電流Isの波形を示している。図11は、図10に一点鎖線で示した枠部分を拡大した系統電圧Vs及び系統電流Isの波形を示している。図12は、瞬低復帰時における比較例の電流指令値位相(極座標変換部25の出力信号)、電圧変換器37の出力信号、及び電圧変換器34の出力信号の波形を示している。
図10に示すように、電力系統Lsに瞬低が発生すると、系統電圧Vsの電圧レベルが急激に低下する(この例では、系統電圧Vsの残電圧が20%)。やがて、系統電圧Vsが瞬低状態から正常電圧レベルに復帰すると、系統電圧Vsの電圧レベルが急激に上昇する。すると、インバータ13の出力電流Iiが急激に増加するため、平滑用フィルタ14(T型フィルタ)及び出力電流Iiのフィードバックループの過渡特性により、図12に示すように、電圧変換器37の出力信号に振動が発生する。この電圧変換器37の出力信号は電流指令値(電圧変換器34の出力信号)にフィードバックされるため、インバータ13の動作を決定する上記電流指令値にも振動が発生する。この電流指令値の振動により、インバータ13の出力電流Iiに振動が発生する。このとき、系統のインピーダンスが高いと、出力電流Iiの振動が系統電圧Vsにも発生する。なお、出力電流Iiの振動に伴って系統電流Isにも振動が発生する。
ここで、電流指令値の位相は上記系統電圧Vsから算出される。すなわち、振動が発生した状態の系統電圧Vsが電圧検出器18で計測され、図16に示すように、Δ−Y変換部21、三相/二相変換部22、BPF23、瞬時正相変換部24及び極座標変換部25により、上記計測された系統電圧Vsから電流指令値の位相が算出される。このため、上述のように系統電圧Vsに振動が発生すると、その振動に起因して電流指令値位相に歪みが発生する。この歪んだ電流指令値位相に基づいて電流指令値が生成されることになるため、その電流指令値(例えば、電圧変換器34の出力信号)が変動する。さらに、その電流指令値に基づいてインバータ13の出力電流Iiが制御されるため、出力電流Iiの変動及び振動が増長するとともに、出力電流Iiの振動が継続してしまう。このため、図11に示すように、瞬低復帰後に、長時間継続して系統電圧Vs及び系統電流Isに振動が発生するという問題がある。なお、ここでは説明を省略するが、瞬低発生時にも同様の問題が発生する。
次に、図8及び図9を参照して瞬低復帰時における本実施形態の制御装置20の動作について説明する。図8は、瞬低復帰時における本実施形態の系統電圧Vs及び系統電流Isの波形を示している。図9は、瞬低復帰時における本実施形態の電流指令値位相θc、電圧変換器37の出力信号、及び電圧変換器34の出力信号の波形を示している。
上記比較例に対し、本実施形態の制御装置20では、極座標変換部25の後段に、電圧低下検出部26、位相変動検出部27及び位相置換部28を設けるようにした。これにより、制御装置20では、瞬低復帰時における系統電圧Vsの位相変動異常を検出したときに、その時の系統電圧Vsから算出した位相情報θ1の代わりに、上記位相変動異常が検出されていない位相正常時の位相情報(つまり、位相情報保持部79に保持されている位相情報θ4)が電流指令値位相θcとして座標変換部30に出力される。また、上記位相正常時の位相情報θ4が位相情報保持部79に1サイクル分保持されていることから、切替信号S4がHレベルとなる期間において継続して、上記位相情報θ4が電流指令値位相θcとして座標変換部30に出力される。このため、図9に示すように、瞬低復帰直後であっても、電流指令値位相θcが安定した位相情報に維持されている、つまり電流指令値位相θcに歪みが発生することが好適に抑制されている。これにより、座標変換部30及び電圧変換器34等では、安定した位相情報θ4(電流指令値位相θc)を用いて電流指令値が設定される。このため、電圧変換器34の出力信号(電流指令値)が変動することを好適に抑制することができる。さらに、この電圧変換器34の出力信号に基づいてインバータ13が制御されるため、インバータ13の動作を位相正常時と同様に安定したものとすることができる。これにより、本実施形態のパワコン11では、瞬低復帰後、インバータ13の出力電流Iiに変動及び振動が発生することが即座に抑制される。したがって、本実施形態のパワコン11では、図8に示すように、瞬低復帰後、系統電圧Vs及び系統電流Isに変動及び振動が発生することを即座に抑制することができる。なお、瞬低復帰した後に出力電流Iiに変動及び振動が発生することが即座に抑制されるため、図9に示すように、電圧変換器37の出力信号に変動及び振動が発生することも瞬低復帰した後即座に抑制することができる。
ここでは説明を省略するが、瞬低発生時も上記瞬低復帰時と同様に、インバータ13の出力電流Iiに変動及び振動が発生することが即座に抑制され、系統電圧Vs及び系統電流Isに変動及び振動が発生することが即座に抑制される。
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)位相置換部28に位相情報保持部79が備えられ、Hレベルの切替信号S4が生成される前の正常時の位相情報が系統基本波の整数倍サイクル分(本例では、1サイクル分)だけ上記位相情報保持部79に更新されつつ保持される。また、位相変動異常が検出されておらず切替信号S4がLレベルである場合には、極座標変換部25で都度抽出される位相情報θ1に基づいて出力電流値(電流指令値)の設定が行われる。その一方で、瞬低期間中や瞬低復帰直後に位相変動異常が検出されて上記切替信号S4がHレベルになると、上記位相情報保持部79に保持された位相情報θ4に基づいて電流指令値の設定が行われる。すなわち、位相変動異常が生じてHレベルの切替信号S4が生成された場合、位相情報保持部79に保持された正常時の安定した位相情報を用いて電流指令値が設定されるため、インバータ13の動作は正常時と同様に安定したものとなる。結果、インバータ13から出力される出力電流Iiに変動及び振動が発生することを低減でき、一層の電力系統Lsの安定化に寄与することができる。
(2)電力系統Lsにおける電圧低下異常を検出したときにHレベルの検出信号S1を生成する電圧低下検出部26が備えられ、検出信号S1のオンするタイミングを所定時間遅延させるオンディレイタイマ73と、オンディレイタイマ73の出力信号のオフするタイミングを所定時間遅延させるオフディレイタイマ74とが位相置換部28に備えられる。そして、オフディレイタイマ74から出力される検出信号S1dがHレベルの期間内(つまり、瞬低期間内又は瞬低復帰からの所定期間内)に、位相変動異常が検出されたときに、位相情報の切り替えを指令する切替信号S4が生成される。これにより、インバータ13の出力電流Iiに変動及び振動が生じやすい過渡変動時にHレベルの切替信号S4を生成することができるため、その過渡変動時において、位相情報保持部79に保持している正常時の位相情報を用いて電流指令値を設定することができる。換言すると、電圧低下異常が発生していないときにノイズ等に起因して位相変動異常が発生した場合などに、Hレベルの切替信号S4が生成されることを抑制することができる。
(3)位相置換部29に位相情報保持部88が備えられ、振幅情報V1が電圧値Vr2未満となる電圧低下異常(第2基準値以上の電圧低下異常)が検出される前の正常時の位相情報が系統基本波の整数倍サイクル分(本例では、1サイクル分)だけ上記位相情報保持部88に更新されつつ保持される。また、第2基準値以上の電圧低下異常が検出されていない場合には、位相置換部28から都度入力される位相情報θ2に基づいて電流指令値の設定が行われる。その一方で、第2基準値以上の電圧低下異常が検出された場合には、上記位相情報保持部88に保持された正常時の安定した位相情報θ5に基づいて電流指令値の設定が行われる。これにより、例えば系統電圧Vsの残電圧が10%未満となる電圧低下異常が発生して系統電圧Vsからの位相情報の抽出が困難となる場合であっても、位相情報保持部88に保持された正常時の安定した位相情報θ5を用いて電流指令値が設定されるため、インバータ13の動作は正常時と同様に安定したものとなる。換言すると、上記手法を用いれば、系統電圧Vsの残電圧が0%になった場合であっても、電流指令値の設定に安定した位相情報θ5を用いることができるため、位相を喪失しない点で優れている。
(4)第1基準値以上の電圧低下異常の検出と位相変動異常の検出とに基づいて位相置換を実施する位相置換部28と、第1基準値よりも高い第2基準値以上の電圧低下異常の検出のみに基づいて位相置換を実施する位相置換部29との2つの位相置換部を設けるようにした。さらに、それら位相置換部28と位相置換部29を縦続接続するようにした。これにより、系統電圧Vsの残電圧が10%未満となる瞬低が発生したときに、振幅情報V1の振幅変化に遅延が生じた場合であっても、瞬低発生後の期間P1における位相情報(電流指令値位相θc)の変動を抑制することができる。このため、ZVRT動作時に系統電流Isが不安定になることを好適に抑制することができる。
(5)ここで、例えば、位相置換部29を省略して位相置換部28のみで位相情報の置換を行う場合、つまり系統電圧Vsの残電圧が0〜70%となる電圧低下異常を検出したときに位相置換部28のみで位相情報の置換を行う場合について考える。この場合には、系統電圧Vsの残電圧が10%未満となる場合(つまり、位相情報θ1の抽出が困難である場合)にも、位相変動異常の検出に基づいて位相置換部28で位相情報の置換が行われることになる。系統電圧Vsの残電圧が10%未満となる電圧低下異常が発生している場合には、位相情報θ1が大幅に変動するため、位相情報の置換が実施されることが望ましい。ただし、上述した電圧低下異常が発生している期間では、位相情報θ1がランダムに乱れる。このため、位相情報θ1が大幅に乱れるにも関わらず、位相変動量Δθが判定値θdよりも小さくなる期間が発生する場合がある。このような期間が発生すると、位相置換部28で位相情報の置換を実施することができなくなる。
これに対し、本例では、位相置換部28とは別に、電圧低下異常の検出のみに基づいて位相置換を実施する位相置換部29を設けるようにした。詳述すると、振幅情報V1が電圧値Vr2未満となる電圧低下異常、つまり系統電圧Vsから位相情報の抽出が困難となる電圧低下異常が検出されたときにはHレベルの検出信号S2が生成され、そのHレベルの検出信号S2に基づいて位相置換部29にて位相情報θ2が位相情報θ5に置換される。すなわち、系統電圧Vsからの位相情報θ1の抽出が困難である場合には、電圧低下異常の検出のみに基づいて、位相置換部29にて位相情報の置換が実施される。これにより、位相変動量Δθの正常な算出が困難となる場合であっても、位相情報保持部88に保持された正常な安定した位相情報を用いて電流指令値位相θcの設定を行うことができる。
(6)2つの位相置換部28,29を、電圧低下異常の程度に応じて使い分けるようにした。これにより、位相置換部28による位相置換と、位相置換部29による位相置換とが同時に実施されないため、位相置換部28による位相置換動作と位相置換部29による位相置換動作とが互いに干渉することを好適に抑制することができる。
ここで、例えば、系統電圧Vsの残電圧が0〜70%となる電圧低下異常を検出したときに位相置換部29による位相置換が行われる場合、つまり系統電圧Vsの残電圧が10〜70%となる電圧低下異常を検出したときに2つの位相置換部28,29による位相置換が行われる場合について考える。この場合には、例えば、系統電圧Vsの残電圧が20%となる電圧低下異常が発生したときであっても、位相情報保持部88に保持された位相情報を用いて電流指令値が設定されることになる。すなわち、系統電圧Vsから位相情報が抽出可能な場合であっても、電圧低下異常が発生している期間中(瞬低期間中)は常に、位相情報保持部88に保持された位相情報を用いて電流指令値が設定されることになる。このため、瞬低発生前後で系統電圧Vsの周波数及び位相の変動を伴う場合であっても、瞬低期間中(位相変動後)は、瞬低発生前(位相変動前)の位相情報を用いて電流指令値が設定されることになる。このように位相変動前の位相情報を用いて電流指令値が設定されると、パワコン11の出力電圧の位相が電力系統Ls側の位相に対してずれるという問題がある。例えば、パワコン11の出力電圧の位相が電力系統Ls側の位相に対して遅れ位相でずれる場合には、電力系統Ls側から有効電力がパワコン11に流入し、パワコン11の直流側の電圧(つまり、充電電圧Vdc)の電圧が上昇してしまう。
これに対し、本例では、2つの位相置換部28,29を、電圧低下異常の程度に応じて使い分けるようにした。詳述すると、振幅情報V1が電圧値Vr2以上電圧値Vr1未満となる電圧低下異常、つまり系統電圧Vsから位相情報の抽出が可能な程度の電圧低下異常が検出された場合には、位相変動異常が検出されたときに初めて、位相置換部28にて位相情報θ1が位相情報θ4に置換され、その置換後の位相情報が位相情報θ2として出力される。換言すると、位相置換部28では、系統電圧Vsの残電圧が10〜70%となる電圧低下異常を検出した後でも、位相変動異常が検出されるまでは、極座標変換部25等で都度抽出される位相情報θ1がそのまま位相情報θ2として出力される。また、この場合には、位相置換部29による位相置換は行われず、位相置換部28から出力される位相情報θ2がそのまま電流指令値位相θcとして出力される。このため、瞬低発生前後で系統電圧Vsの周波数及び位相の変動を伴う場合であっても、瞬低発生後(位相変動後)の位相情報θ1に基づいて電流指令値の設定を行うことができる。したがって、パワコン11の出力電圧の位相と電力系統Ls側の位相との間にずれが生じることを好適に抑制することができる。
(7)検出信号S3のオンするタイミングがオンディレイタイマ70にて所定時間遅延され、そのオンディレイタイマ70の出力信号のオフするタイミングがオフディレイタイマ71にて所定時間遅延される。そして、オフディレイタイマ71から出力される検出信号S3dに基づいて切替信号S4が生成される。例えばオンディレイタイマ70を設けたことにより、系統電圧Vsにて位相変動異常が所定時間(ここでは、1ms)継続して発生した場合に初めてHレベルの検出信号S3dが生成される。このため、ノイズなどに起因して位相変動異常が瞬間的に発生した場合において、Hレベルの検出信号S3dが生成されることが好適に抑制され、Hレベルの切替信号S4が生成されることが好適に抑制される。したがって、ノイズなどに起因した位相置換部28の誤動作の発生を抑制することができる。
(8)検出信号S1のオンするタイミングがオンディレイタイマ73にて所定時間遅延され、そのオンディレイタイマ73の出力信号のオフするタイミングがオフディレイタイマ74にて所定時間遅延される。そして、オフディレイタイマ74から出力される検出信号S1dに基づいて切替信号S4が生成される。また、検出信号S2のオンするタイミングがオンディレイタイマ83にて所定時間遅延され、そのオンディレイタイマ83の出力信号のオフするタイミングがオフディレイタイマ84にて所定時間遅延される。そして、オフディレイタイマ84から出力される検出信号S2dに基づいて、位相情報切替部82における位相情報の置換が実施される。例えば、オンディレイタイマ73,83を設けたことにより、系統電圧Vsにて電圧低下異常が所定時間継続して発生した場合に初めてHレベルの検出信号S1d又はHレベルの検出信号S2dが生成される。このため、計測ノイズ等に起因して電圧低下異常が瞬間的に発生した場合において、Hレベルの検出信号S1d,S2dが生成されることが好適に抑制され、計測ノイズ等に起因して位相情報の置換が実施されることが好適に抑制される。例えば、瞬低及び瞬低復帰における電圧変化が緩慢であるときに、計測ノイズによって振幅情報V1に計測ノイズが乗ると、瞬低時の電圧変化にノイズが重畳される。このとき、オンディレイタイマ73,83が無いと、位相置換が実施される期間と位相置換が実施されない期間とを繰り返すハンチングが発生するおそれがある。さらに、例えば、瞬低発生前後で系統電圧Vsの電圧値及び周波数の変動を伴うときに上記ハンチングが発生すると、電圧値及び周波数の変動前の位相置換によって、位相置換結果が不連続になる場合がある。これに対し、本例では、オンディレイタイマ73,83を設けたことにより、上記ハンチングの発生を好適に抑制することができるため、位相置換結果が不連続になることを好適に抑制することができる。これにより、インバータ13の出力安定化、一層の電力系統Lsの安定化に寄与することができる。
(9)Hレベルの切替信号S4が生成される前の正常時の位相情報が系統基本波の整数倍サイクル分(本実施形態では、1サイクル分)保持可能な位相情報保持部79が備えられる。そして、Hレベルの切替信号S4が生成された場合に、保持した1サイクル分の位相情報が位相情報切替部75に順次出力される。これにより、Hレベルの切替信号S4が生成された場合の適切な位相情報の出力を演算不要で容易に行うことができる。
(10)三相の相電圧Vu,Vv,Vwをαβ変換して二相電圧値Vsα,Vsβを生成し、それら二相電圧値Vsα,Vsβを瞬時正相変換部24で瞬時正相変換するようにした。これにより、二相電圧値Vsα,Vsβに対して瞬時正相変換が行われるため、三相の相電圧Vu,Vv,Vwを直接瞬時正相変換する場合に比べて、瞬時正相変換部24における演算量を少なくすることができる。結果、振幅情報V1の振幅変化の遅延を抑制することができる。
(11)電圧低下検出部26では、振幅情報V1と系統電圧Vsの定格電圧に応じた電圧値Vr1,Vr2とを比較して電圧低下異常を検出するようにした。これにより、時間的に前の電圧値(振幅情報V1)に影響されることなく、系統電圧Vsの残電圧が所定レベル(ここでは、10%以上70%未満や10%未満)となったことを検出することができる。
尚、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、電圧低下検出部26を図3のように構成した。すなわち、上記実施形態の電圧低下検出部26は、系統電圧Vsの定格電圧に応じた電圧値Vr1,Vr2と振幅情報V1との比較結果に基づいて第1基準値以上第2基準値未満の電圧低下異常の検出を行い、振幅情報V1と電圧値Vr2との比較結果に基づいて第2基準値以上の電圧低下異常の検出を行う構成とした。これに限らず、電圧低下検出部26の内部構成は適宜変更してもよい。例えば、図13に示すような電圧低下検出部26Aの構成としてもよい。
図13に示すように、電圧低下検出部26Aは、振幅変化分算出部53と、判定器54A,54Bと、電圧低下判定部55A,55Bと、判定器56と、アンド回路57A,57Bとを有している。
電圧低下検出部26Aでは、極座標変換部25(図2参照)からの振幅情報V1が振幅変化分算出部53及び判定器56に入力される。ここで、振幅情報V1は、上記極座標変換部25において瞬時正相電圧Vpα,Vpβに基づいて算出された、その時々の電圧振幅値|V|(ここでは、絶対値)を示す情報である。
振幅変化分算出部53では、上記振幅情報V1(電圧振幅値|V|)が演算器53a及び遅延回路53bに入力される。遅延回路53bは、入力した振幅情報V1を所定時間(例えば、系統基本波の1サイクル分の時間)だけ遅延させ、その遅延信号を演算器53aに出力する。演算器53aは、今回のサンプリングで算出された電圧振幅値|V|と、系統基本波の1サイクル前(1周期前)のサンプリングで算出された電圧振幅値|V|とを入力し、両値の差分から電圧振幅変化分|ΔV|の算出を行う。演算器53aは、算出した電圧振幅変化分|ΔV|を判定器54A,54Bに出力する。
判定器54Aは、入力された電圧振幅変化分|ΔV|と予め設定された基準値ΔVr3,ΔVr4との比較を行う。例えば、判定器54Aは、電圧振幅変化分|ΔV|が基準値ΔVr3未満であるとき、及び電圧振幅変化分|ΔV|が基準値ΔVr4以上であるときは出力信号をLレベル、電圧振幅変化分|ΔV|が基準値ΔVr3以上であって基準値ΔVr4未満のときには出力信号をHレベルに切り替える。すなわち、判定器54Aは、電圧振幅変化分|ΔV|を用いて、瞬低を含む電圧低下異常のうち、系統電圧Vsの電圧低下レベルが第1基準値(ここでは、基準値ΔVr3)以上第2基準値(ここでは、基準値ΔVr4)未満となる電圧低下異常が生じたか否かの判定を行っている。本例の判定器54Aでは、系統電圧Vsの残電圧が10%以上70%未満となる電圧低下異常が検出可能なように上記基準値ΔVr3,ΔVr4が設定されている。そして、判定器54Aの出力信号は、電圧低下判定部55Aに供給される。
電圧低下判定部55Aは、例えば、RSフリップフロップである。電圧低下判定部55AのS端子(セット端子)には、判定器54Aの出力信号が入力される。また、電圧低下判定部55AのR端子(リセット端子)には、判定器56の出力信号がアンド回路57Aを介して入力される。
判定器56は、入力された振幅情報V1と予め設定された電圧値Vr1との比較を行う。例えば、判定器56は、振幅情報V1が電圧値Vr1未満のときは出力信号をLレベル、振幅情報V1が電圧値Vr1以上になったときには出力信号をHレベルに切り替える。すなわち、判定器56は、振幅情報V1を用いて、瞬低を含む電圧低下異常が生じた後に系統電圧Vsが正常電圧レベルに復帰(例えば、瞬低復帰)したか否かの判定を行っている。本例の判定器56では、系統電圧Vsが正常電圧レベルに復帰したことが検出可能なように上記電圧値Vr1が設定されている。そして、判定器56の出力信号は、アンド回路57A,57Bに供給される。
アンド回路57Aは、2入力型であり、一方の入力端子に判定器56の出力信号が入力され、他方の入力端子に電圧低下判定部55Aの出力信号が入力される。アンド回路57Aは、判定器56の出力信号と電圧低下判定部55Aの出力信号とを論理積演算した結果を持つ出力信号を電圧低下判定部55AのR端子に出力する。
そして、電圧低下判定部55Aは、R端子とS端子とに入力される入力信号に基づいてQ端子(出力端子)から出力する上記検出信号S1の論理レベルを変更する。例えば、電圧低下判定部55Aは、系統電圧Vsの残電圧が10%以上70%未満となる電圧低下異常が発生して判定器54AからHレベルの出力信号がS端子に入力されると、セット状態となって検出信号S1をHレベルに切り替える。また、電圧低下判定部55Aは、上記電圧低下異常が発生した後に系統電圧Vsが正常電圧レベルに復帰して判定器56からHレベルの信号がR端子に入力されると、リセット状態となって検出信号S1をLレベルに切り替える。なお、この検出信号S1は、上記実施形態と同様に、図2に示した位相置換部28に供給される。
一方、判定器54Bは、入力された電圧振幅変化分|ΔV|と予め設定された基準値ΔVr4との比較を行う。例えば、判定器54Bは、電圧振幅変化分|ΔV|が基準値ΔVr4未満であるときは出力信号をLレベル、電圧振幅変化分|ΔV|が基準値ΔVr4以上のときには出力信号をHレベルに切り替える。すなわち、判定器54Bは、電圧振幅変化分|ΔV|を用いて、瞬低を含む電圧低下異常のうち、系統電圧Vsの電圧低下レベルが第2基準値(ここでは、基準値ΔVr4)以上となる電圧低下異常が生じたか否かの判定を行っている。本例の判定器54Bでは、系統電圧Vsの残電圧が10%未満となる電圧低下異常が検出可能なように上記基準値ΔVr4が設定されている。そして、判定器54Bの出力信号は、電圧低下判定部55Bに供給される。
電圧低下判定部55Bは、例えば、RSフリップフロップである。電圧低下判定部55BのS端子には、判定器54Bの出力信号が入力される。また、電圧低下判定部55BのR端子(リセット端子)には、判定器56の出力信号がアンド回路57Bを介して入力される。
電圧低下判定部55Bは、R端子とS端子とに入力される入力信号に基づいてQ端子(出力端子)から出力する上記検出信号S2の論理レベルを変更する。例えば、電圧低下判定部55Bは、系統電圧Vsの残電圧が10%未満となる電圧低下異常が発生して判定器54BからHレベルの出力信号がS端子に入力されると、セット状態となって検出信号S2をHレベルに切り替える。また、電圧低下判定部55Bは、上記電圧低下異常が発生した後に系統電圧Vsが正常電圧レベルに復帰して判定器56からHレベルの信号がR端子に入力されると、リセット状態となって検出信号S2をLレベルに切り替える。この検出信号S2は、上記実施形態と同様に、図2に示した位相置換部29に供給される。
以上説明した構成に変更しても、上記実施形態の(1)〜(10)の効果と同様の効果を奏することができる。
・上記実施形態の判定器51において、振幅情報V1と、電圧値Vr1との比較結果に応じて検出信号S1を生成するようにしてもよい。この場合、判定器51は、振幅情報V1が電圧値Vr1以上であるときにLレベルの検出信号S1を生成し、振幅情報V1が電圧値Vr1未満であるときにHレベルの検出信号S1を生成する。この構成では、系統電圧Vsの残電圧が10%未満となった場合に、検出信号S1及び検出信号S2の双方がHレベルになるため、位相置換部28,29による位相置換が同時に実施されることになる。このとき、位相置換部29では、位相置換部28による位相置換動作に関わらず、Hレベルの検出信号S2に基づいて、位相置換部28からの位相情報θ2が系統健全時の位相情報θ5(つまり、位相情報保持部88に保持された位相情報θ5)に置換される。このため、位相置換部28の位相置換動作によって、位相置換部29の位相置換動作が影響を受けることはほとんどない。
・図13に示した判定器54Aにおいて、電圧振幅変化分|ΔV|と基準値ΔVr3のみとを比較するようにしてもよい。すなわち、判定器54Aにおいて、瞬低を含む電圧低下異常のうち、系統電圧Vsの電圧低下レベルが第1基準値(ここでは、基準値ΔVr3)以上となる電圧低下異常が生じたか否かの判定を行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、位相置換部28の後段に位相置換部29を設けるようにした。これに限らず、例えば位相置換部29の後段に位相置換部28を設けるようにしてもよい。この場合には、極座標変換部25から出力される位相情報θ1が位相置換部29に入力され、その位相置換部29において、検出信号S2に基づいて上記位相情報θ1と位相情報保持部88に保持された位相情報θ5との切り替えが行われる。そして、位相置換部29から出力される位相情報が位相置換部28に入力され、その位相置換部28において、切替信号S4に基づいて上記位相置換部29からの位相情報と位相情報保持部79に保持された位相情報θ4との切り替えが行われる。このような構成としても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
・上記実施形態における位相置換部29を省略してもよい。この場合には、例えば、第1基準値以上第2基準値未満の電圧低下異常ではなく、第1基準値以上の電圧低下異常を検出したときにHレベルの検出信号S1を生成し、その検出信号S1と検出信号S3とに基づいて切替信号S4を生成するようにしてもよい。例えば、系統電圧Vsの残電圧が70%となる電圧低下異常を検出したときにHレベルの検出信号S1を生成し、その検出信号S1と検出信号S3とに基づいて切替信号S4を生成するようにしてもよい。このような構成としても、上記実施形態の(1),(2),(7),(8),(9),(10),(11)と同様の効果を奏することができる。
・上記実施形態では、電圧低下異常を検出したときに生成される検出信号S1と、位相変動異常を検出したときに生成される検出信号S3とに基づいて切替信号S4を生成するようにした。これに限らず、例えば、検出信号S1の生成を省略し、検出信号S3のみに基づいて切替信号S4を生成するようにしてもよい。例えば、オフディレイタイマ71から出力される検出信号S3dを切替信号S4として利用するようにしてもよい。この場合であっても、オンディレイタイマ70及びオフディレイタイマ71を設けたことにより、ノイズなどに起因した位相置換部28の誤動作の発生を抑制することができる。また、位相変動判定部63における判定値θdに上限値及び下限値を設定するようにしてもよい。これにより、位相置換部28の誤動作の発生をより好適に抑制することができる。
・上記実施形態の位相変動検出部27及び位相置換部28では、比較位相生成部62と位相保持部76とを別に設けるようにし、それぞれに系統基本波の整数倍サイクル分(ここでは、3サイクル分)の位相情報を保持するようにした。これに限らず、例えば、比較位相生成部62及び位相保持部76の一方(例えば、位相保持部76)のみに3サイクル分の位相情報を保持し、他方の比較位相生成部62は位相保持部76に保持された位相情報を利用して比較位相θ3を生成するようにしてもよい。
・上記実施形態では、位相置換部28を図4のように構成したが、適宜変更してもよい。例えば、図14に示すような位相置換部28Aの構成としてもよい。
図14に示す位相置換部28Aは、系統基本波の整数倍サイクル分の位相情報を保持する位相情報保持部79の代わりに、位相情報保持部79Aと、位相カウンタ80と、演算器81とを有している。本例における位相抽出部77は、位相保持部76に保持された位相情報の中の最古の位相情報を抽出し、その抽出した位相情報を位相選択部78に順次出力する。位相情報保持部79Aは、位相抽出部77から出力される位相情報を入力し、所定個(例えば、1個)の位相情報の更新及び保持を行う。また、位相情報保持部79Aには、切替信号S4が入力される。そして、位相情報保持部79Aは、Hレベルの切替信号S4が入力されると、位相選択部78が第2入力端子b2に切り替わる直前の第1入力端子b1から入力された正常時の位相情報(つまり、位相抽出部77から出力された位相情報)が例えば1個保持され、Hレベルの切替信号S4が生成されている期間中はその更新が禁止される。位相カウンタ80は、サンプリング毎に系統周波数を考慮した位相変化分を算出する。そして、演算器81では、位相情報保持部79Aで保持された正常時の位相情報に対しその時々のサンプリング毎の位相変化分が加えられ、正常時の位相情報が順次出力可能となっている。この演算器81で算出された位相情報が位相選択部78を介して位相情報切替部75に出力され、その位相情報切替部75から上記算出された位相情報が位相情報θ2として出力される。このように構成しても、位相変動異常が生じた場合の適切な位相情報の出力を容易に行うことができる。また、位相情報保持部79Aにて保持する位相情報が少なくて済む。
・上記実施形態では、系統電圧Vsから振幅情報V1及び位相情報θ1の抽出を行うための系統電圧情報抽出部として、Δ−Y変換部21、三相/二相変換部22、BPF23、瞬時正相変換部24、極座標変換部25を設けるようにした。これに限らず、例えば、Δ−Y変換部21を省略してもよい。この場合には、電圧検出器18で検出された三相の系統電圧Vsが三相/二相変換部22に入力され、その三相/二相変換部22で三相の系統電圧Vsがαβ軸の固定座標系の二相電圧値Vsα,Vsβに変換される。また、三相/二相変換部22では、αβ変換を用いるようにしたが、例えばdq変換を用いるようにしてもよい。
あるいは、BPF23を省略してもよい。この場合には、三相/二相変換部22から出力される二相電圧値Vsα,Vsβが瞬時正相変換部24に直接入力される。さらに、瞬時正相変換部24を省略してもよい。この場合には、三相/二相変換部22から出力される二相電圧値Vsα,Vsβが極座標変換部25に入力され、その極座標変換部25にて二相電圧値Vsα,Vsβから振幅情報V1及び位相情報θ1が算出される。
あるいは、三相/二相変換部22を省略してもよい。この場合には、例えば、電圧検出器18で検出された三相の系統電圧Vs(三相系統電圧Vsa,Vsb,Vsc)が瞬時正相変換部24に入力され、その瞬時正相変換部24にて三相系統電圧Vsa,Vsb,Vscが瞬時正相電圧に変換される。この場合には、上記瞬時正相変換部24に替えて、例えば図15に示すような瞬時正相変換部24Aを用いてもよい。
図15に示すように、瞬時正相変換部24Aは、演算器91a〜91dと、遅延部92a〜92cと、回転演算器93a,93bとを有している。系統電圧Vsaは、その実部(Re)が演算器91aに入力されるとともに、同実部(Re)が1/4サイクル遅延(つまり、90度遅延)を行う遅延部92aを介して虚部(Im)として演算器91bに入力される。系統電圧Vsbは、その実部(Re)が演算a(=ej2π/3)を行う回転演算器93aを介して演算器91cに入力されるとともに、同実部(Re)が1/4サイクル遅延を行う遅延部92bと回転演算器93aとを介して虚部(Im)として演算器91dに入力される。系統電圧Vscは、その実部(Re)が演算a2を行う回転演算器93bを介して演算器91cに入力されるとともに、同実部(Re)が1/4サイクル遅延を行う遅延部92cと回転演算器93bとを介して虚部(Im)として演算器91dに入力される。演算器91c,91dの演算結果は、演算器91a,91bにそれぞれ入力される。演算器91aからは実部側の演算結果として第1電圧値Vp1が、演算器91bからは虚部側の演算結果として第2電圧値Vp2がそれぞれ極座標変換部25に出力される。そして、極座標変換部25において、振幅情報を含む第1電圧値Vp1及び位相情報を含む第2電圧値Vp2から振幅情報V1及び位相情報θ1の抽出が行われる。このような瞬時正相変換部24Aを用いた場合であっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
・上記実施形態の位相情報の保持する個数や保持のタイミング等、位相情報の保持態様を適宜変更してもよい。
・上記実施形態におけるオンディレイタイマ70,73,83及びオフディレイタイマ71,74,84における遅延時間(所定時間)を適宜変更してもよい。
・上記実施形態におけるオンディレイタイマ70,73,83及びオフディレイタイマ71,74,84を省略してもよい。
・上記実施形態では、平滑用フィルタ14をT型フィルタとしたが、その他のフィルタと置換してもよい。例えば、平滑用フィルタ14からリアクトルL2を省略したフィルタを平滑用フィルタとして用いるようにしてもよい。
・上記実施形態では、電力変換器としてインバータ13を備えていたが、その他の電力変換器と置換してもよく、その他の電力変換器と組み合わせてもよい。
・上記実施形態では、太陽光発電システム10のパワコン11に適用したが、その他の分散電源システムのパワコン11、例えば風力発電システム、コージェネレーションシステム等のパワコンに適用してもよい。