JP2015146482A - マルチバンドアンテナ - Google Patents
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Abstract
【課題】 小型で動作周波数の要件を容易に満たしうるマルチバンドアンテナを提供すること。
【解決手段】 複数の周波数帯で動作するマルチバンドアンテナは、給電点と、その給電点に接続される第1の導体部と、第1の導体部から分岐し、線状の形状を有する少なくとも2つの第2の導体部を有する。この少なくとも2つの第2の導体部は、第1の導体部に接続される側と逆の端部において開放端である。少なくとも2つの第2の導体部の少なくともいずれかは、スパイラル形状を含んで構成され、少なくともその一部において電磁的に結合する。
【選択図】 図16
【解決手段】 複数の周波数帯で動作するマルチバンドアンテナは、給電点と、その給電点に接続される第1の導体部と、第1の導体部から分岐し、線状の形状を有する少なくとも2つの第2の導体部を有する。この少なくとも2つの第2の導体部は、第1の導体部に接続される側と逆の端部において開放端である。少なくとも2つの第2の導体部の少なくともいずれかは、スパイラル形状を含んで構成され、少なくともその一部において電磁的に結合する。
【選択図】 図16
Description
本発明はマルチバンドアンテナに関する。
近年、様々な電子機器に無線通信機能が搭載されている。また、一つの電子機器に複数の無線通信の規格を搭載する機器も増えてきており、これらの機器においては、それぞれの規格に対応した複数の周波数帯で動作するアンテナを実装する必要がある。また、機器の小型化に応じて、このような複数の周波数帯で動作するアンテナをできるだけ小さいスペースに配置することが要求される。このため、1つのアンテナが複数の動作帯域を持ち、かつ所望のアンテナ動作帯域幅を有することが求められている。
例えば、二つの周波数帯で動作するデュアルバンドアンテナとして、無給電素子を付加することで構成する方法が提案されている(特許文献1)。また、例えば、デュアルバンドアンテナまたはマルチバンドアンテナとして、広帯域なアンテナ特性をもつアンテナの構成が提案されている。
一般に、電子機器は小型化が要求されるため、電子機器の部品であるアンテナについても当然小型化することが要求される。また、無線に関する法律は各国で異なるため、同じ無線通信規格であっても各国で使用する周波数は異なる。そのため、電子機器が世界各国で販売されることを想定すると、例えば無線LANにおける5GHz帯では、主な国に対応するためには5GHzから6GHz程度の非常に広い動作帯域幅を達成するアンテナが要求される。しかし、従来のアンテナは、小型で、かつ複数の周波数帯で動作し、また無線規格によっては広帯域で動作するという要件を十分に満足するものではないという課題があった。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、小型で動作周波数の要件を容易に満たしうるマルチバンドアンテナを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明によるマルチバンドアンテナは、複数の周波数帯で動作するマルチバンドアンテナであって、給電点と、前記給電点に接続される第1の導体部と、前記第1の導体部から分岐し、線状の形状を有する少なくとも2つの第2の導体部であって、当該少なくとも2つの第2の導体部の前記第1の導体部に接続される側と逆の端部は開放端である、少なくとも2つの第2の導体部と、を有し、前記少なくとも2つの第2の導体部の少なくともいずれかがスパイラル形状を含んで構成され、前記少なくとも2つの第2の導体部のうちの2つの第2の導体部は、少なくともその一部において電磁的に結合する、ことを特徴とする。
本発明によれば、小型で動作周波数の要件を容易に満たすことができるマルチバンドアンテナを提供することができる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本実施形態では、無線LAN(IEEE802.11a/b/g/n)の規格に準拠した無線通信機能で用いられるアンテナについて考える。IEEE802.11a/b/g/nの全てに対応するためには、2.4GHz帯と5GHz帯の両周波数帯で動作するデュアルバンドアンテナが要求される。ここで、上述のように、無線装置である電子機器の筺体に組み込むアンテナは小型化が要求される。また無線通信機能を電子機器に組み込む場合、無線モジュール基板の各層、各面から導体を取り除いてアンテナ領域を確保し、アンテナ領域にパターンアンテナをプリントして実装することが一般的である。また、アンテナはアンテナ周辺に物体が存在すると、電磁波の放射を妨げることになる。このため、アンテナの周囲にできるだけ物体が存在しない状態にするために、電子機器に組み込まれるアンテナは、周辺物体よりも飛び出した状態で実装されることが要求される。しかし、その電子機器を使用するユーザーの利便性の観点からは、そのような突起部分は少なくすることが重要である。
図1は、無線LAN通信機能を持つ無線LANカード102が、ノートPC101のカードスロットに挿しこまれている状態を示す図である。この場合、無線LANカードに実装されるアンテナがノートPC101内に入り込むと、アンテナから放射される電磁波の放射が妨げられる。このため、図1では、無線LANカード102のアンテナ実装部分がノートPC101外にある状態となっている。しかし、このようなアンテナによる突起部が存在すると、例えばユーザーが、何らかの作業中に、その突起部にひっかかってしまう可能性がある。したがって、無線LANカード102に実装されるアンテナは、ノートPC101より外に出るアンテナ突起部分を極力少なくすることが求められる。
このように、電子機器に組み込まれるアンテナには、小さい形状が求められる場合がある。また、小型アンテナにおいては、アンテナに与えられる面積が小さいため、設計の自由度を十分に高く確保することが重要である。このため、以下では、モジュール基板上(平面上)にパターンで構成される、小型で設計自由度の高いデュアルバンドアンテナの実施形態について説明する。
[アンテナの基本構成]
まず、本実施形態に係るアンテナの構成について説明するのに先立って、同様の原理を得るためのアンテナの基本構成について説明する。
まず、本実施形態に係るアンテナの構成について説明するのに先立って、同様の原理を得るためのアンテナの基本構成について説明する。
図2は本基本構成に係るデュアルバンドアンテナの例を示す正面図である。基本構成におけるデュアルバンドアンテナは、給電点201、第1の導体部202、及び第1の導体部から分岐する2つの第2の導体部203並びに204で構成され、アンテナグランド205を備える。以下では、簡単のため、特に区別する必要がない場合は第1〜第2の導体部202〜204について、単に「導体部」と呼ぶ。図2において、第1の導体部202と、第2の導体部203及び204とを黒色部分で示す。また、導体で構成されるアンテナグランド205を斜線部分で示す。アンテナグランド205には、実際には、無線機能を実現するための各種部品が実装されるが、ここではそれらの各種部品については考慮しない。2つの第2の導体部203及び204は、線状の形状を有し、第1の導体部202と接続されない側の端部は開放端である。また、2つの第2の導体部203及び204は、開放端近辺において近接し、結合する。ここでの「結合」とは、静電結合(容量結合)、磁気結合(誘導結合)、又はこれらの両方が混在する電磁結合を含む電磁的な結合を表す。なお、第1の導体部202、第2の導体部203及び204は、実際には基板の平面上にパターンで形成されるため、詳細に観察すると薄い板状の形状を有する。本明細書及び特許請求の範囲において、このような形状を含めて「線状の形状」と表現する。
デュアルバンドアンテナの各導体部およびアンテナグランドの上には、レジスト(絶縁体の保護被膜)がある。また、本基本構成では、2つの第2の導体部203及び204の開放端に対向する位置に、所定の距離だけ離してアンテナグランド205の一部が設けられるようにしている。これは、第2の導体部203及び204の開放端の少なくともいずれかとアンテナグランド205との距離(開放端とアンテナグランド205の領域との最短距離)が所定長以下となるようにアンテナグランド205を設けたものである。このようにすることで、図2のデュアルバンドアンテナの特性を向上させることができる。例えば、上述のように、第2の導体部203(及び204)の開放端とアンテナグランド205との距離を所定長以下とすることで、その範囲にアンテナグランド205がない場合と比べて、給電点201から電力を入力した場合の反射係数を小さくできる。そして、その結果、アンテナの動作周波数帯域の幅を広げることができる。なお、本基本構成では、2つの第2の導体部203及び204の開放端に対向する位置にアンテナグランド205を設けたが、これに限られない。すなわち、第2の導体部203及び204の開放端と、アンテナグランド205が占める領域との最小距離が所定長以下となるのであれば、開放端に対向する位置にアンテナグランド205が設けられなくてもよい。
各導体は、誘電体基板(FR4基板)206の平面上にパターンで形成されている。誘電体基板(FR4基板)206は、比誘電率は例えば4.2である。誘電体基板(FR4基板)206上で、アンテナグランド205が無い部分がアンテナ領域であり、図2では、アンテナ領域のサイズは15mm×5.5mmである。また、誘電体基板、導体部、レジスト全てを合わせた基板の厚さは、0.878mmである。このアンテナ領域のサイズは、IEEE802.11a/b/g/nで用いられる2.4GHz帯と5GHz帯のパターンアンテナとしては従来技術と比較して小型サイズであり、またアンテナ領域は短辺が長辺に比較して十分短い薄い長方形となっている。
図3は、図2に示すデュアルバンドアンテナの反射特性(S11)の、シミュレーション結果を示す図である。図に示されるように、IEEE802.11a/b/g/nで用いられる2.4GHz帯と5GHz帯の両周波数帯において十分な反射特性が得られ、図2の基本構成に係るデュアルバンドアンテナは、これらの帯域でアンテナとして動作する。
また、2.4GHz帯に関しては、反射特性が−6dB以下の帯域幅が約100MHzである。したがって、本基本構成のデュアルバンドアンテナは、無線LANで必要となる帯域幅は約70MHzであるため、無線LANで要求される動作帯域幅を確保できている。一方、5GHz帯においては、無線LANのために広い動作帯域幅(約1GHz)が要求される。これに対して、本基本構成のデュアルバンドアンテナは、反射特性が−10dB以下の帯域幅が約1.8GHzである。したがって、本基本構成に係るデュアルバンドアンテナは、無線LANで要求される動作帯域幅と比較して非常に広い動作帯域幅を確保できている。
(基本構成に係るアンテナの動作)
続いて、本基本構成に係るデュアルバンドアンテナの動作について説明する。
続いて、本基本構成に係るデュアルバンドアンテナの動作について説明する。
(各導体の役割)
まず、第1の導体部202と、第1の導体部202から分岐している2つの第2の導体部203及び204の役割を説明する。まず、2つの第2の導体部203及び204のいずれかを含まない構成での、本基本構成に係るアンテナの挙動を示す。導体部204を含まない構成は、図4に示すように、給電点201、導体部202、導体部203、アンテナグランド205、誘電体基板(FR4基板)206で構成されるアンテナとなる。この反射特性(S11)のシミュレーション結果は図5に示す通りであり、共振周波数は約3.25GHzとなる。
まず、第1の導体部202と、第1の導体部202から分岐している2つの第2の導体部203及び204の役割を説明する。まず、2つの第2の導体部203及び204のいずれかを含まない構成での、本基本構成に係るアンテナの挙動を示す。導体部204を含まない構成は、図4に示すように、給電点201、導体部202、導体部203、アンテナグランド205、誘電体基板(FR4基板)206で構成されるアンテナとなる。この反射特性(S11)のシミュレーション結果は図5に示す通りであり、共振周波数は約3.25GHzとなる。
次に、導体部203を含まない構成は、図6に示すように、給電点201、導体部202、導体部204、アンテナグランド205、誘電体基板(FR4基板)206で構成されるアンテナとなる。この反射特性(S11)のシミュレーション結果は図7に示す通りであり、共振周波数は約6.25GHzである。以上のことから、図2に示すデュアルバンドアンテナにおいて、導体部202〜導体部203の経路は主に低域側のアンテナ特性に寄与しており、導体部202〜導体部204の経路は主に高域側のアンテナ特性に寄与していることが分かる。
(導体間距離とアンテナ特性)
次に、導体部203及び204の導体間距離とアンテナ特性の変化の関係について説明する。デュアルバンドアンテナにおいて、図8に示すように、高域側のアンテナ特性に寄与する導体部204の長さaを変化させ、導体部203及び204の導体間距離dの距離を変化させたときの反射特性のシミュレーション結果を図9に示す。
次に、導体部203及び204の導体間距離とアンテナ特性の変化の関係について説明する。デュアルバンドアンテナにおいて、図8に示すように、高域側のアンテナ特性に寄与する導体部204の長さaを変化させ、導体部203及び204の導体間距離dの距離を変化させたときの反射特性のシミュレーション結果を図9に示す。
図9のシミュレーション結果から、低域側および高域側のそれぞれの共振周波数は、距離dが減少するにつれて低い方へシフトすることが分かる。このことから、導体部203及び204の導体間距離dを短くするにつれて、導体部203と導体部204との間の結合が強くなり、高域側と低域側のそれぞれの共振周波数を低い方へシフトすることができることが分かる。なお、この場合、図9の2.4GHz帯の特性に着目すると、導体部203及び204の導体間距離dを短くするにつれて、アンテナ動作帯域幅が狭くなっていることが分かる。なお、図2のデュアルバンドアンテナのdは、0.1mmである。
(結合位置とアンテナ特性)
次に、導体部203と導体部204とが結合する結合位置とアンテナ特性の変化の関係について説明する。
次に、導体部203と導体部204とが結合する結合位置とアンテナ特性の変化の関係について説明する。
図10に示すように、導体部204の長さbを変化させ、導体部203と導体部204との結合位置を変化させる。図11は、図10の距離tを、1.0mm、2.0mm、3.0mmと変化させたときの反射特性の変化を示す図である。図11から、距離tが増加するにつれて、すなわち、導体部203と導体部204との結合位置が、低域側の第2の導体部203の開放端から離れるにつれて、2.4GHz帯の共振周波数が低い方へのシフト量が減っていることが分かる。また、図11から、距離tを増加するにつれて、2.4GHz帯のアンテナ動作帯域幅が広くなっていることが分かる。これは、2.4GHz帯での導体部203における導体部204との間の結合が弱まるからであると考えられる。すなわち、開放端に近い位置で結合させることにより、共振周波数を大きく低い方へシフトさせることができるという効果を得ることができる。なお、図1記載のデュアルバンドアンテナのtは、2.0mmである。
一方、5GHz帯の共振周波数には大きな変化はない。これは、tを変化させても、結合位置に導体部204の開放端が含まれる状況には変わりがないからであると考えられる。ただし、距離tを変化させると、主に5GHz帯で動作する導体部202、導体部204の経路が変化することになるため、この経路長の変化により5GHz帯の特性は、若干ではあるが変動する。
以上のように、本基本構成のデュアルバンドアンテナでは、tを変化させることにより、5GHz帯の動作周波数を大きく変化させずに、2.4GHz帯の動作周波数を大きく変化させることが可能である。
(結合部分の長さとアンテナ特性)
次に、導体部203と導体部204とが結合する、結合部分の長さとアンテナ特性の変化との関係について説明する。本説明では、図12に示すように、導体部204の長さcを変化させ、導体部203と導体部204との結合部分の長さを変化させ、その場合のアンテナ特性を示す。図13は、図12における結合部分の長さcを、1.5mm、2.5mm、3.5mmと変化させたときの反射特性を示す図である。図13から、長さcが長くなるにつれて、共振周波数が低い方へシフトしていることが分かる。つまり、導体部203と導体部204との結合部分の長さが増加するにつれて、導体部203と導体部204との間の結合が強まり、結合が強まるにつれて共振周波数は低い方へシフトしていると考えられる。また、2.4GHz帯の特性に着目すると、導体部204の長さcを長くするにつれてアンテナ動作帯域が狭くなっていることが分かる。一方で、5GHz帯で動作する導体部202、導体部204の経路は、距離cを変化させると大きく変化することになる。このため、5GHz帯の特性においては、結合部分の長さの変化と共に、経路長の変化が共振周波数に影響を与えていると考えられる。なお、図1記載のデュアルバンドアンテナのcは、2.5mmである。
次に、導体部203と導体部204とが結合する、結合部分の長さとアンテナ特性の変化との関係について説明する。本説明では、図12に示すように、導体部204の長さcを変化させ、導体部203と導体部204との結合部分の長さを変化させ、その場合のアンテナ特性を示す。図13は、図12における結合部分の長さcを、1.5mm、2.5mm、3.5mmと変化させたときの反射特性を示す図である。図13から、長さcが長くなるにつれて、共振周波数が低い方へシフトしていることが分かる。つまり、導体部203と導体部204との結合部分の長さが増加するにつれて、導体部203と導体部204との間の結合が強まり、結合が強まるにつれて共振周波数は低い方へシフトしていると考えられる。また、2.4GHz帯の特性に着目すると、導体部204の長さcを長くするにつれてアンテナ動作帯域が狭くなっていることが分かる。一方で、5GHz帯で動作する導体部202、導体部204の経路は、距離cを変化させると大きく変化することになる。このため、5GHz帯の特性においては、結合部分の長さの変化と共に、経路長の変化が共振周波数に影響を与えていると考えられる。なお、図1記載のデュアルバンドアンテナのcは、2.5mmである。
ここで、図12において、導体部204の長さcを延ばしていき、導体部204の開放端部が導体部203の開放端部を超えた場合、導体部203においては、導体部204との結合部分の長さおよび結合位置は変化しないこととなる。このため、この場合には、2.4GHz帯の動作周波数は大きく変化しない。しかし、導体部204においては、導体部203との結合位置は開放端から外れることになり結合位置が変化する。また導体部204の経路長も変化する。これを利用し、5GHz帯側の動作周波数を調整することができると考えられる。ただし、単にcの長さを変化させると、アンテナグランド205との結合の変化により、高域側及び低域側において、動作周波数の変動が生じうることに留意されたい。
上述の通り、導体部203と導体部204との結合が強固なものになるほど、それぞれの導体部に対応するアンテナの動作周波数が低い方へシフトする。そして、本基本構成では、この結合の強さを調整するために、導体間距離、結合をさせる導体の位置関係、及び結合部分の長さの少なくともいずれかを用いることができる。
アンテナは、一般に、動作する周波数が低周波になるほどサイズ(長さ)が大きくなる。一方で、本基本構成によれば、2つの導体間の結合により、低域側と高域側のそれぞれの共振周波数が低い方へシフトする。すなわち、結合により、アンテナは、その実際のサイズより大きいアンテナと同様の共振周波数を得ることができる。本基本構成のアンテナはこの効果を利用し、アンテナサイズの小型化を実現し、かつ、5GHz帯の動作帯域幅は、必要な動作帯域よりもはるかに大きな動作帯域を確保している。基本的なアンテナであるモノポールアンテナにおいては、アンテナ長は動作周波数帯の波長のおよそ4分の1にすることが知られている。一方で、本基本構成のようなデュアルバンドアンテナにより、導体部202と導体部203の長さの和は低域側の動作周波数の波長の4分の1より短く、導体部202と導体部204の長さの和は高域側の動作周波数の波長の4分の1より短くなる。なお、ここで述べた「波長」とは、アンテナが構成される空間における波長である。例えば、アンテナが自由空間中に構成される場合は自由空間中の波長であり、アンテナが無限に大きな誘電体中に構成される場合は誘電体中の波長である。また、本基本構成のように誘電体基板上にアンテナを構成する場合には、空気層、誘電体層に基づき求められる実効誘電率を用いて算出される波長である。
なお、実際のアンテナ設計時には、上述のように、導体部203及び204の導体間距離、導体部203と導体部204との結合部分の長さおよび位置を調整して結合の強さが調整される。それによって、2.4GHz帯および5GHz帯のインピーダンスを調整することが可能となり、自由度の高い設計が可能となる。この場合、上述のように結合を強めて共振周波数を低い方へシフトさせた場合、アンテナの動作帯域幅が狭くなる現象も起こるため、設計時には必要なアンテナ動作帯域幅を満たしながら小型化を図るように設計することが重要となる。また、アンテナ領域が狭くなり、アンテナ領域の短辺がさらに短くなると、導体部203及び204が給電点201付近のアンテナグランド205に近付くことで、そのアンテナグランド205と結合し、アンテナ特性に影響を与えうる。ただし、本基本構成に係るアンテナ構成は、アンテナ領域の短辺が短くなっても、導体部203および導体部204の開放端は、給電点201付近のアンテナグランド205から離れて平行に配置されている。このため、本基本構成に係るアンテナは、アンテナグランド205との結合が抑制される構成となっている。
また、本基本構成に係るデュアルバンドアンテナは、結合部分において、給電点201から導体部203の開放端へ向かう方向と、給電点201から導体部204の開放端へ向かう方向とが、同一又は略同一となっている。これにより、結合部分の長さや位置を、他のアンテナ導体と干渉することなく容易に変更することができ、このため、設計の自由度をさらに高めることが可能となる。
以上のように、図2に示すデュアルバンドアンテナの構成により、導体部203と導体部204との間で生じる結合の大きさを調整して所望のアンテナ特性を得ることで、薄型で小型、かつ設計自由度の高いデュアルバンドアンテナを実現することが可能となる。
本基本構成に係るデュアルバンドアンテナは、図2に示した形状以外の形状で実現することもできる。例えば、図14に、図2とは異なる基板上に設計した場合のデュアルバンドアンテナの正面図を示す。図14の例では、誘電体基板(FR4基板)の比誘電率は4.4である。誘電体基板(FR4基板)上でアンテナグランドが無い部分がアンテナ領域であり、アンテナ領域の形状は長方形ではない。アンテナ領域の寸法は、図14中に記載の通り、短辺の最大幅は8mmであり、長辺の幅は11.5mmである。図14においても、図2と同様に、黒色部分が導体部であり、斜線部分がアンテナグランドである。また、デュアルバンドアンテナの各導体部およびアンテナグランドの上には、レジストがある。誘電体基板、導体部、レジスト全てを合わせた基板の厚さは、0.7675mmである。
図15は、図14に示すデュアルバンドアンテナの反射特性(S11)のシミュレーション結果を示す図である。図15に示すように、図14のデュアルバンドアンテナは、2.4GHz帯において反射特性が−6dB以下の帯域幅が約120MHzで、5GHz帯において反射特性が−10dB以下の帯域幅が約1.2GHzという反射特性を得られる。したがって、図14のデュアルバンドアンテナは、IEEE802.11a/b/g/nで用いられる2.4GHz帯と5GHz帯の両周波数帯で、要求される動作帯域幅と比較して非常に広い動作帯域幅を確保できている。すなわち、図14のような形態のデュアルバンドアンテナは、IEEE802.11a/b/g/nで用いるアンテナとして動作可能である。
なお、本基本構成ではIEEE802.11a/b/g/nに用いる2.4GHz帯と5GHz帯で動作するデュアルバンドアンテナに関して述べたが、これ以外の周波数帯のデュアルバンドアンテナも同様に設計可能である。また本基本構成では、二つの動作周波数帯をもつデュアルバンドアンテナに関して述べたが、アンテナの導体部を増加させることで、さらに多くの動作周波数帯で動作するマルチバンドアンテナとすることもできる。具体的には、上述の説明では2つの第2の導体部203及び204を有する例を示したが、第2の導体部の数を3つ以上にすることによりマルチバンドアンテナとすることができる。この場合、マルチバンドアンテナを構成する複数の第2の導体部のうち、2つの第2の導体部を結合させることで、第2の導体部が2つの場合と同様の効果が得られる。また、例えば複数の第2の導体部を1つの結合部分で結合させても、2つの導体部間の結合の場合と同様の効果が得られる。
また、本基本構成では、デュアルバンドアンテナをFR4基板上に形成するパターンで実現したが、それ以外の例えば板金あるいは導線で構成されてもよいし、あるいはセラミック等の高誘電体部材内の導線で構成されてもよい。さらに、本基本構成では、デュアルバンドアンテナへの給電に関しては給電点のみを示しており、給電点までの給電線を詳細に説明していない。しかしながら、このような給電線は特に制限されるものではなく、例えば、マイクロストリップ線路・スロット線路・コプレーナ線路等に代表される平面回路、あるいは同軸線路、あるいは導波管等々の、電磁波を伝送する伝送線路であってもよい。
また、本基本構成では、導体部203及び204は、結合部分において、給電点201からそれぞれの導体部の開放端へ向かう方向が同一又は略同一であり、かつ平行又は略平行に配置されたが、それに限られない。すなわち、導体部203及び204は、互いに少なくとも一部が結合をし、かつ、結合部分の長さや位置を変更しても他のアンテナ導体へ干渉しない位置に配置されていればよい。例えば、導体部203及び204の距離が所定値以下である領域を結合部分として確保し、その部分では、例えば導体部203及び204の少なくともいずれかが波状や湾曲した形状をしていてもよい。
なお、この場合も、導体部203及び204の給電点から開放端へ向かう方向が、全体として反対の方向を向かないようにする。すなわち、少なくとも結合部分の一部において、導体の中心を通る線における給電点から開放端へ向かう方向により定められる、導体部203及び204のそれぞれに対する2つのベクトルの内積が正の値となるようにする。内積が正の値となるということは、2つの導体が延びる方向のなす角が90度未満であることを意味し、概ね同様の方向に2つの導体部が延びていることを示す。結合部分において2つの導体の給電点から開放端へ向かう方向が反対方向とならないことで、2つのアンテナ素子をそれぞれ構成する2つの導体の形状の設計の自由度が大きく向上する。すなわち、2つのアンテナの形状が互いの長さなどを制限することが少なくなり、アンテナ設計の自由度を高めることが可能となる。
また、本基本構成では、導体部203及び204の開放端付近で結合させたが、結合部分が開放端でない部分にあってもよい。すなわち、導体部203及び204の端部においては結合させず、それ以外の箇所で結合させてもよい。このようにすることにより、さらに設計の自由度を高めることが可能となる。
[実施形態に係るアンテナ構成]
続いて、上述のデュアルアンテナを基本とする、本実施形態に係るアンテナ構成について説明する。以下では、上述の基本構成に係るアンテナ構成より小型化されたデュアルバンドアンテナの構成と動作について説明する。
続いて、上述のデュアルアンテナを基本とする、本実施形態に係るアンテナ構成について説明する。以下では、上述の基本構成に係るアンテナ構成より小型化されたデュアルバンドアンテナの構成と動作について説明する。
(アンテナの構成)
本実施形態で用いるデュアルバンドアンテナの正面図を図16(a)に、斜視図を図16(b)に、それぞれ示す。
本実施形態で用いるデュアルバンドアンテナの正面図を図16(a)に、斜視図を図16(b)に、それぞれ示す。
図16(a)及び(b)に係るデュアルバンドアンテナでは、誘電体基板(FR4基板)1606、及びレジストとして、上述の基本構成に係るデュアルバンドアンテナと同様のものが用いられている。なお、本実施形態で述べるデュアルバンドアンテナは小型化されており、上述の基本構成のデュアルバンドアンテナとアンテナの大きさが異なる。そのため、アンテナグランド1605の形状も、基本構成のデュアルバンドアンテナにおけるアンテナグランドの形状と比べると、アンテナ領域の部分の形状において異なる。なお、本実施形態で述べるアンテナ領域のサイズは7.5mm×5.5mmであり、基本構成のデュアルバンドアンテナのアンテナ領域の約半分の面積でデュアルバンドアンテナが構成されている。
また、誘電体基板、導体部、レジスト全てを合わせた基板の厚さも基本構成のデュアルバンドアンテナと同様で、0.878mmである。図16(a)及び(b)の構成は、基本構成のデュアルバンドアンテナと比べて、導体部1603の構成が特に異なる。図16(a)及び(b)に示すように、導体部1603は、導体部1602から分岐し、誘電体基板表面に構成される導体部と、誘電体基板の裏面に構成されるスパイラル状の導体部を、ビア1607で接続する構成となっている。なお、電磁的に結合する導体部1604が基板の表面に形成されるのに対して、導体部1603のスパイラル形状を裏面に形成しているが、これに限られない。すなわち、導体部1603のスパイラル形状も、その一部において導体部1604と結合する構成であれば、基板の表面に形成されてもよい。ただし、図16(a)及び(b)のようにスパイラル形状を基板の裏面に形成することにより、導体部同士が交差することを容易に防ぐことができる。また、スパイラル形状の導体を裏面に配置することにより、導体部1603の開放端と、導体部1604の開放端とを電磁的に結合させることが可能となる。上述の効果を得るためには、導体部1604と、導体部1603のスパイラル形状は、それぞれ別々の面に構成されればよい。例えば、導体部1604を誘電体基板の表面(裏面)に、導体部1603のスパイラル形状を多層誘電体基板の表面(裏面)でない、2つの層に挟まれた面に構成してもよい。また、例えば、導体部1604および導体部1603のスパイラル形状を、それぞれ、多層誘電体基板の表面及び裏面とは異なる第1の層と第2の層との間の面と第2の層と第3の層との間の面とに、それぞれ構成してもよい。なお、導体部が形成される面は、平面であってもよいし曲面であってもよい。ここで述べた「層」とは、基板の誘電体層(絶縁層)であり、「面」とはパターンが形成される、基板の金属層である。
図16(a)及び(b)のアンテナでは、このように、導体部1603をスパイラル形状とすることで導体の経路長を長くして、アンテナ全体のサイズの小型化を図っている。なお、本実施形態では、導体部1602から導体部1604とは反対方向に分岐した、ビア1607を含む導体部の全体を、導体部1603と呼ぶことにする。なお、図16(a)及び(b)の構成では、導体部1603は、その一部が導体部1604と同一面(基板の表面)に形成され、その同一面に形成された部分からビア1607を通じて裏面のスパイラル形状の導体に接続されている。しかし、本実施形態に係るデュアルバンドアンテナは、このような構成に限られない。例えば、導体部1602に直接ビアを接続して裏面のスパイラル形状の導体に接続してもよく、この場合、導体部1603は、全ての部分が基板の表面には存在しないこととなる。また、導体部1603のうち、電磁的に結合する他の導体部1604と同一の面に形成される部分がスパイラル形状を有してもよいし、図16(a)及び(b)のように、導体部1604と異なる面に形成される部分がスパイラル形状であってもよい。また、導体部1603は、導体部1604が形成される面と同一の面と異なる面との両方において、スパイラル形状を有していてもよい。
図17は、図16(a)及び(b)に示すデュアルバンドアンテナの反射特性(S11)のシミュレーション結果を示す図である。図17から分かるように、IEEE802.11a/b/g/nで用いられる2.4GHz帯と5GHz帯の両周波数帯において十分な反射特性が得られ、図16(a)及び(b)に示す構成が、これらの帯域でアンテナとして動作することが分かる。
(アンテナの動作)
続いて、本実施形態に係るデュアルバンドアンテナの動作について説明する。
続いて、本実施形態に係るデュアルバンドアンテナの動作について説明する。
(各導体の役割)
まず、導体部1602と、導体部1602から分岐している2つの導体部1603及び1604の役割について説明する。まず、2つの導体部1603及び1604のいずれかを含まない構成での、本実施形態に係るアンテナの挙動を示す。導体部1604を含まない構成は、図18(a)及び(b)に示すように、給電点1601、導体部1602、導体部1603、アンテナグランド1605、誘電体基板(FR4基板)1606、及びビア1607により構成されるアンテナとなる。
まず、導体部1602と、導体部1602から分岐している2つの導体部1603及び1604の役割について説明する。まず、2つの導体部1603及び1604のいずれかを含まない構成での、本実施形態に係るアンテナの挙動を示す。導体部1604を含まない構成は、図18(a)及び(b)に示すように、給電点1601、導体部1602、導体部1603、アンテナグランド1605、誘電体基板(FR4基板)1606、及びビア1607により構成されるアンテナとなる。
図19に、図18(a)及び(b)に示すアンテナの反射特性(S11)のシミュレーション結果を示す。このアンテナの共振周波数は、図19に示されるように、約2.7GHzとなった。この結果から、図18(a)及び(b)に示す構成が、1つの周波数帯域(本実施形態では2.7GHz帯域)で動作する小型なシングルバンドアンテナとして動作させることが可能であることが分かる。また、この結果から、例えば図4のアンテナの大きさを考慮すれば、導体部1603をスパイラル状にしてアンテナの導体部の経路長を長くすることによって、サイズを小型化できていることが分かる。
次に、導体部1603を含まない構成は、図20(a)及び(b)に示すように、給電点1601、導体部1602、導体部1604、アンテナグランド1605、及び誘電体基板1606によって構成されるアンテナとなる。
図21に、図20(a)及び(b)に示すアンテナの反射特性(S11)のシミュレーション結果を示す。このアンテナの共振周波数は、図21に示されるように、約5.7GHzとなった。以上のことから、図16(a)及び(b)に示すデュアルバンドアンテナにおいて、導体部1602〜導体部1603の経路は主に低域側のアンテナ特性に寄与していることが分かる。また、図16(a)及び(b)に示すデュアルバンドアンテナにおいて、導体部1602〜導体部1604の経路は主に高域側のアンテナ特性に寄与していることが分かる。
なお、上述したように、本実施形態で述べる図16に示すデュアルバンドアンテナでは、誘電体基板の端部に沿って配置された導体部1604が高域側のアンテナ特性に寄与している。一方、上述の基本構成に係る図2に示すデュアルバンドアンテナでは、誘電体基板の端部に沿って配置された導体部203が低域側のアンテナ特性に寄与している。すなわち、図2の構成と図16(a)及び(b)の構成では、各々の周波数帯で寄与する導体部の位置関係が逆になっている。これは、本実施形態のアンテナでは、図2における低域側のアンテナに対応する導体部203を高域側のアンテナとして使用して、低域側のアンテナをスパイラル形状として経路長を長くすることにより、全体のサイズを小型化したためである。すなわち、図2のような構成では、原理上、誘電体基板の端部に沿って配置された導体部203の方が経路長を長くとることができるが、例えば、この導体部203が寄与する動作周波数帯を2倍にすると、必要な経路長は概ね1/2となる。このため、図2のような構成で、導体部203の長さを例えば1/2にすることにより、アンテナ全体のサイズが小さくなる。一方、他方の導体部204については、スパイラル形状によって構成することで、その経路長を長くとることができる。すなわち、他方の導体部を、スパイラル形状で構成しながら、導体部203と電磁的に結合するように配置することで、上述の基本構成と同様の原理で動作周波数を調節しながら、かつ、小型化されたアンテナを実現することができる。そして、このような構成の一例が、図16(a)及び(b)に示された構成である。
(結合とアンテナ特性)
図16(a)及び(b)に示されるように、本実施形態で用いるデュアルバンドアンテナは、導体部1603と導体部1604とが開放端部において近接しており、電磁的な結合が生じる。この2つの導体部の間で生じる結合が、アンテナ特性に与える影響に関しては、上述の基本構成の説明で述べたとおりである。すなわち、図16(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナの反射特性(図17)と、図18(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナの反射特性(図19)とを比較すると、低域側の共振周波数が約2.7GHzから約2.45GHzにシフトしている。また、図16(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナの反射特性(図17)と、図20(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナの反射特性(図21)とを比較すると、高域側の共振周波数が約5.7GHzから約5.55GHzにシフトしている。
図16(a)及び(b)に示されるように、本実施形態で用いるデュアルバンドアンテナは、導体部1603と導体部1604とが開放端部において近接しており、電磁的な結合が生じる。この2つの導体部の間で生じる結合が、アンテナ特性に与える影響に関しては、上述の基本構成の説明で述べたとおりである。すなわち、図16(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナの反射特性(図17)と、図18(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナの反射特性(図19)とを比較すると、低域側の共振周波数が約2.7GHzから約2.45GHzにシフトしている。また、図16(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナの反射特性(図17)と、図20(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナの反射特性(図21)とを比較すると、高域側の共振周波数が約5.7GHzから約5.55GHzにシフトしている。
すなわち、本実施形態のデュアルバンドアンテナでは、導体間の結合により、基本構成の説明で述べた効果と同様の効果を得ることができ、結合によってアンテナを小型化することができる。なお、本実施形態のデュアルバンドアンテナでは、導体部の経路長を長くするために、導体部の形状をスパイラル形状としたが、スパイラル形状と例えばメアンダライン形状とを組み合わせて導体部を構成してもよい。また、これらの他にも、2つの導体間の電磁的な結合を得ながら、経路長を長くできる形状であればその他の形状を用いてもよい。
また、図16(a)及び(b)に示されるように、電磁的に結合する部分である導体部1603と導体部1604とのそれぞれの開放端部は、誘電体基板の表面と裏面とのそれぞれに構成されている。これにより、例えば、導体部1603及び導体部1604の結合部分における導体幅によって、電磁的な結合の強さを調整することができる。すなわち、結合部分の導体幅を大きくとることにより結合を強くし、結合部分の導体幅を狭くすることにより結合を弱めることができる。また、2つの導体部の結合部分のそれぞれを誘電体基板の両面にそれぞれ構成することにより、結合部分の導体間距離は誘電体基板の厚さに保たれる。したがって、このような構成により、例えば基本構成において導体間の距離を調整することにより電磁的結合の強さを調整するのに比べて、低精度の製造プロセスで比較的容易に本実施形態に示すようなアンテナを構成することが可能となる。また、一定の厚さを有する誘電体基板を挟んで2つの電磁的に結合する導体部を構成することにより、導体間距離を容易に一定に保つことができ、誘電体基板がない場合と比較してアンテナ特性が劣化する要因を少なくすることができる。また、誘電体基板には、電磁界を集中させる効果がある。そのため、2つの導体部の結合部分のそれぞれを誘電体基板の両面にそれぞれ構成することで、結合部分となる2つの導体部の間に生じる結合を強くし、サイズを小型化することができる。
また、本実施形態では、結合部分を有する2つの第2の導体部を、誘電体基板の表面と裏面とのそれぞれに配置して構成する場合について説明したがこれに限られない。例えば、多層誘電体基板などの多層構造の基板において、2つの導体部の結合部分を別々の面に構成することにより、同様の効果を得ることができる。すなわち2つの導体部の結合部分はお互いが対向していればよいのであって、誘電体基板の表面及び裏面でなくとも、互いが対向することが可能な別々の面に構成されればよい。例えば、電磁的に結合する2つの導体部のうちの1つを誘電体基板の表面(裏面)に、その2つの導体部のうちの別の1つを多層誘電体基板の表面(裏面)でない、2つの層に挟まれた面に構成してもよい。また、例えば、電磁的に結合する2つの導体部を、それぞれ、多層誘電体基板の表面及び裏面とは異なる第1の層と第2の層との間の面と第2の層と第3の層との間の面とに、それぞれ構成してもよい。なお、導体部が形成される面は、平面であってもよいし曲面であってもよい。
また、誘電体基板の異なる面(例えば表面と裏面)にその一部において電磁結合する2つの導体部が形成される、本実施形態のデュアルバンドアンテナであっても、結合部分(例えば開放端部分)が基板の異なる面に配置されていなくてもよい。すなわち、電磁的に結合する部分について、同一面に構成されてもよい。すなわち、本実施形態のデュアルバンドアンテナは、例えば、図22(a)及び(b)に示されるように構成してもよい。図22(a)及び(b)に示すデュアルバンドアンテナでは、図16(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナの導体部1603がビア1608をさらに含み、導体部1604が配置された誘電体基板の面と同一面に導体部1603の開放端部が配置されている。図23に、図22(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナの反射特性(S11)を示す。図23から分かるように、IEEE802.11a/b/g/nで用いられる2.4GHz帯と5GHz帯の両周波数帯において十分な反射特性が得られている。このように、図23により、図22(a)及び(b)のデュアルバンドアンテナが、これらの帯域でアンテナとして動作することを確認できた。
なお、本実施形態のデュアルバンドアンテナにおいても、上述の基本構成における電磁的な結合の強さの調整を行うことができる。すなわち、電磁的結合を有する2つの導体部の間の、導体間距離、結合をさせる部分の位置関係、及び結合部分の長さの少なくともいずれかを、電磁的結合の強さの調整に用いることができる。さらに、電磁的結合を有する2つの導体部とアンテナグランドとの位置関係を上述の基本構成のように構成することができる。すなわち、電磁的結合を有する2つの導体部の少なくともいずれかの開放端と、アンテナグランドとの距離が所定長以下となるように、アンテナグランドを構成してもよい。
また、上述した本実施形態のデュアルバンドアンテナの場合においても、基本構成と同様に、アンテナの分岐した導体部を3つ以上に増加させることにより、さらに多くの動作周波数帯で動作するマルチバンドアンテナとすることができる。そして、必要に応じて、各導体部の一部を例えば多層誘電体基板の別々の面に構成し、又は1つの面において近接させて構成して、電磁的に結合させることで、上述の効果を得ることができる。
なお、本実施形態では導体部1603のみをスパイラル形状としたが、導体部1604のみ、または、導体部1603と導体部1604との両方をスパイラル形状とすることでも同様の効果を得ることが可能である。これにより、上述の実施形態では、低域側のアンテナの経路長を長くしたが、広域側のアンテナの経路長を長くすることが可能となり、結果として、広域側の動作周波数を調整することができる。また、本実施形態では、誘電体基板の1つの面に構成される導体部のみをスパイラル形状としたが、誘電体基板の複数面に構成される導体部の全てをスパイラル形状に構成してもよい。また、アンテナの導体部の本数を増加させる場合には、複数の導体部のうち、スパイラル形状を用いてその一部の導体部を構成してもよいし、全ての導体部をスパイラル形状で形成してもよい。
また、上述の実施形態では、結合部分を有する2つの導体部の線幅は同じ太さである場合について説明したが、線幅は異なる太さであってもよい。すなわち、電磁的に結合する2つ(以上)の導体部のうち1つの線幅が、別の1つの線幅と異なってもよい。また、上述の実施形態では、結合部分を有する2つの導体部は、基板面の垂直方向から見て、互いが重なり合う構造である場合について説明したが、重なり合わない構造であっても、電磁的な結合が生じる関係にあれば、どのような構造をとってもよい。例えば、2つの導体部の結合部分が、ねじれの関係にあってもよい。また2つの導体部の結合部分の一部が重なり合い、残りの部分が重なり合っていなくてもよい。
デュアルバンドアンテナを、電子機器の筺体内に組み込む場合、電子機器の筺体の影響を受けて、2.4GHz帯と5GHz帯のアンテナ動作周波数がシフトすることがある。そこで、上述のデュアルバンドアンテナに誘電体物質を接触又は近接させて付加し、アンテナ特性を調整してもよい。誘電体物質は、例えば、比誘電率が1よりも大きいシート状の誘電体シートである。誘電体シートは、電磁的に結合する2つ(以上)の導体部の少なくともいずれかに、例えば貼り付けられ、又は近接して配置される。誘電体シートを付加することにより、アンテナ近傍の電磁波の波長を短縮することができ、それにより共振周波数を低い方へシフトさせることができる。電磁波の波長短縮の割合は、誘電体シートの比誘電率、厚さおよび面積の少なくともいずれかにより制御することができる。誘電体シートの比誘電率を高くすると、アンテナの共振周波数はさらに低い方へシフトする。また、誘電体シートの厚みを大きくすると、アンテナの共振周波数はさらに低い方へシフトする。また誘電体シートの面積を大きくして、アンテナに誘電体シートが貼りつけられる面積が大きくなると、アンテナの共振周波数はさらに低い方へシフトする。
ここで、例えば2.4GHz帯の共振周波数を低い方へシフトするためにアンテナ全体を覆う誘電体シートを用いると、5GHz帯の共振周波数まで低い方へシフトする。このため、例えば、低い方へシフトさせたい周波数帯に応じて、誘電体シートの貼りつける箇所を選んでもよい。これにより、より効果的に動作周波数帯の調整を行なうことができる。例えば、2.4GHz帯を低域にシフトさせる場合には、アンテナ全体ではなく、図16(a)及び(b)の誘電体基板の裏面、すなわち導体部1603に対してのみ誘電体シートを貼りつけてもよい。
また、基板にシート状の誘電体物質を貼りつける場合について述べたが、誘電体シートは大きな厚みを持つ誘電体物質でもよい。また誘電体シートおよび誘電体物質は、アンテナへ貼りつけるだけでなく所定距離の範囲内で離して配置させることでもアンテナ特性を調整することができる。誘電体シートおよび誘電体物質をアンテナに所定距離の範囲内で離して配置してアンテナ特性を調整する場合の所定距離は、アンテナが動作する周波数に依存する。本実施形態のような2.4GHz帯および5GHz帯で動作する無線LAN用のデュアルバンドアンテナにおいては、約10mm以内にすればアンテナ特性の調整を効率良く行なうことができる。また上述の説明では、誘電体シートあるいは誘電体物質を貼りつける場合について述べたが、誘電体シートまたは誘電体物質を、比透磁率が1よりも大きい磁性体シートまたは磁性体物質としても、同様の効果を得ることができる。また、アンテナが無線装置の筺体に内蔵される場合、上述の誘電体物質または磁性体物質として、誘電体物質または磁性体物質で構成される無線装置の筺体の一部を利用してもよい。
1601:給電点
1602、1603、1604:導体部
1605:アンテナグランド
1606:誘電体基板
1602、1603、1604:導体部
1605:アンテナグランド
1606:誘電体基板
Claims (21)
- 複数の周波数帯で動作するマルチバンドアンテナであって、
給電点と、
前記給電点に接続される第1の導体部と、
前記第1の導体部から分岐し、線状の形状を有する少なくとも2つの第2の導体部であって、当該少なくとも2つの第2の導体部の前記第1の導体部に接続される側と逆の端部は開放端である、少なくとも2つの第2の導体部と、
を有し、
前記少なくとも2つの第2の導体部の少なくともいずれかがスパイラル形状を含んで構成され、
前記少なくとも2つの第2の導体部のうちの2つの第2の導体部は、少なくともその一部において電磁的に結合する、
ことを特徴とするマルチバンドアンテナ。 - 前記2つの第2の導体部はそれぞれ長さが異なり、それぞれ寄与する動作周波数が異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記2つの第2の導体部のうちの1つの前記動作周波数は2.4GHz帯であり、前記2つの第2の導体部のうちの別の1つの前記動作周波数は5GHz帯である、
ことを特徴とする請求項2に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記2つの第2の導体部のうちの1つと前記第1の導体部との長さの和は、当該2つの第2の導体部のうちの当該1つが寄与する動作周波数における波長の4分の1より短い、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記2つの第2の導体部のうち、寄与する前記動作周波数を低くすべき、前記2つの第2の導体部のうちの1つの前記開放端が、前記一部として含まれる、
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記マルチバンドアンテナは、前記一部において、前記2つの第2の導体部のうちの1つが第1の面に配置されると共に、前記2つの第2の導体部のうちの別の1つが前記第1の面とは異なる第2の面に配置される、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記第1の面は前記マルチバンドアンテナが構成される基板の表面であり、前記第2の面は前記基板の裏面である、
ことを特徴とする請求項6に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記第1の面は前記マルチバンドアンテナが構成される多層の基板の第1の層と第2の層との間の面であり、前記第2の面は前記基板の前記第2の層と第3の層との間の面である、
ことを特徴とする請求項6に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記第1の面は前記マルチバンドアンテナが構成される多層の基板の表面であり、前記第2の面は前記基板の裏面ではないいずれかの層に挟まれた面である、
ことを特徴とする請求項6に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記基板は誘電体基板である、
ことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記第1の面に配置される前記2つの第2の導体部のうちの1つと、前記第2の面に配置される前記2つの第2の導体部のうちの別の1つとが、前記一部において対向する位置に配置される、
ことを特徴とする請求項6から10のいずれか1項に記載のマルチバンドアンテナ。 - 比誘電率が1より大きい誘電体物質であって、前記マルチバンドアンテナに接触させて、または所定距離の範囲内で離して配置して付加される誘電体物質をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記誘電体物質はシート状の誘電体シートであり、前記マルチバンドアンテナの全体に貼り付けられる、
ことを特徴とする請求項12に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記誘電体物質は、前記2つの第2の導体部のうち、動作周波数を低い方へシフトすべき1つにのみ接触させて、または所定距離の範囲内で離して配置して付加される、
ことを特徴とする請求項12に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記誘電体物質は、無線装置の筺体の一部である、
ことを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載のマルチバンドアンテナ。 - 比透磁率が1より大きい磁性体物質であって、前記マルチバンドアンテナに接触させて、または所定距離の範囲内で離して配置して付加される磁性体物質をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記磁性体物質はシート状の磁性体シートであり、前記マルチバンドアンテナの全体に貼り付けられる、
ことを特徴とする請求項16に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記磁性体物質は、前記2つの第2の導体部のうち、動作周波数を低い方へシフトすべき1つにのみ接触させて、または所定距離の範囲内で離して配置して付加される、
ことを特徴とする請求項16に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記磁性体物質は、無線装置の筺体の一部である、
ことを特徴とする請求項16から18のいずれか1項に記載のマルチバンドアンテナ。 - 前記2つの第2の導体部の開放端の少なくとも1つと、アンテナグランドとの距離が所定長以下となるように、前記アンテナグランドが設けられる、
ことを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載のマルチバンドアンテナ。 - 誘電体基板において構成されるアンテナであって、
給電点と、
前記給電点に接続される第1の導体部と、
前記第1の導体部に接続されるビアと、
前記ビアに接続される第2の導体部と、
を有し、
前記第1の導体部と前記第2の導体部との少なくともいずれかの少なくとも一部においてスパイラル形状を有する、
ことを特徴とするアンテナ。
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