JP2015146259A - 電線・ケーブル被覆用樹脂組成物およびそれを用いた電線・ケーブル - Google Patents

電線・ケーブル被覆用樹脂組成物およびそれを用いた電線・ケーブル Download PDF

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Abstract

【課題】押出成形機への負荷を低減することができ、しかも押出成形後の形状維持性にも優れる電線・ケーブル被覆用樹脂組成物、および、それを用いた電線・ケーブルを提供する。
【解決手段】メルトフローレート(190℃、21.18N)が2.0g/10分以下のエチレン−α−オレフィン共重合体(a)70〜92質量%、および、密度が0.945〜0.962g/cmであり、メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.2g/10分未満である高密度ポリエチレン(b)8〜30質量%を含有する電線・ケーブル被覆用樹脂組成物、ならびに、この電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を押出成形してなる押出被覆を有する電線・ケーブル。
【選択図】図1

Description

本発明は、電線・ケーブル被覆用樹脂組成物およびそれを用いた電線・ケーブルに関する。特に、エチレン−α−オレフィン共重合体をベースとした樹脂組成物であり、主に絶縁電線の絶縁被覆材またはケーブルシース材に用いられる樹脂組成物およびそれを用いた電線・ケーブルに関する。
電気・電子機器に用いられる電線(絶縁電線ともいう)、電力ケーブルおよび通信ケーブル等の各種ケーブルは、導体、導体束またはファイバ心線等の外周にポリエチレン樹脂からなる被覆を備えるものが汎用されている。
このような被覆を形成するための樹脂組成物として、「電線被覆用またはシース用樹脂組成物」が提案されている(特許文献1)。この電線被覆用またはシース用樹脂組成物は、下記要件(b1)〜(b4)の全てを充足するエチレン−α−オレフィン共重合体(I)と、下記要件(c1)〜(c2)を充足する高密度ポリエチレン(II)とを含み、下記要件(a1)〜(a5)の全てを充足することにより、「成形時の混練負荷が低く、かつ成形体としたときに加熱変形が小さい」樹脂組成物が記載されている。
(a1)メルトフローレート(MFR(2.16))が0.2〜2g/10分
(a2)密度が920〜940kg/m
(a3)110℃以下の融解成分割合(HL110)が30〜75%
(a4)流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上
(a5)分子量分布(Mw/Mn)が6〜25
(b1)メルトフローレート(MFR)が0.05〜2g/10分
(b2)密度が905〜935kg/m
(b3)流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上
(b4)分子量分布(Mw/Mn)が6〜25
(c1)メルトフローレート(MFR)が0.2〜20g/10分
(c2)密度が940〜975kg/m
ポリエチレン樹脂や樹脂組成物等からなる被覆を備えた電線・ケーブル(電線等ともいう)は、通常、導体、導体束またはファイバ心線等の外周にポリエチレン樹脂等を押出成形して被覆を形成することによって、製造される。
この場合、ポリエチレン樹脂等を押出成形するに当って、押出成形機にかかる負荷を低減するためには、ポリエチレン樹脂等の流動性を高めるのが望ましい。
この点につき、特許文献1には、エチレン−α−オレフィン共重合体(I)の「メルトフローレート(MFR(2.16))」と、高密度ポリエチレン(II)の「メルトフローレート(MFR(2.16))」が規定されている。特に実施例では、「メルトフローレート(MFR(2.16))」が「1g/10分」または「5g/10分」の高密度ポリエチレン(II)が用いられている。
従来、電線は、その断面が円形のものが主流であった。しかし、用途、機能等の多様化によって、円形以外の断面形状を有するものも用いられるようになってきた。このような断面形状としては、例えば、楕円形、長方形(平型)、切込み(ノッチ)を有するもの、これらを組み合わせたもの等が挙げられる。
また、通信ケーブルは、通常、ファイバ心線とともに、テンションメンバー、また用途等に応じて支持線等を、被覆内に備えている。したがって、一般に、断面が円形のものよりも複雑なものが用いられる。このような複雑な断面形状を有する通信ケーブルとしては、例えば、幹線ケーブルから宅内に引き込むのに使用する光ドロップケーブル、宅内や構内でのケーブルの取り回しに使用されるインドア光ケーブル等が挙げられる。
一方、屋外に布設する電線、ケーブルは、風等によって作用する張力等にも耐えられるように、支持線が埋設された支持線部を備えた自己支持型の電線、ケーブルも用いられる。
また、張力に対する耐性等の特性または機能上、さらには構造上の理由から、大径化したもの、または被覆の厚さを厚くしたもの(これらを大径・厚肉電線・ケーブルということがある)が用いられることもある。
特許第5163237号公報
ポリエチレン樹脂等を押出成形により電線等を製造する場合には、上記のように、流動性を高めて押出成形機への負荷を低減すること(押出容易性が優れるともいう)が望ましい。しかし、ポリエチレン樹脂等の流動性を高めると、ポリエチレン樹脂等が押し出された後の形状が崩れやすくなる。したがって、導体、導体束またはファイバ心線等の外周に押し出されたポリエチレン樹脂等が、少なくともガラス転移点より低温度に冷却されるまでの間、押し出された押出成形体の形状を維持できること(形状維持性が優れるともいう)も要求される。このように、押出成形されるポリエチレン樹脂等には、流動性に関して逆の特性となる、押出容易性と形状維持性が要求される。
特に、断面が円形でない電線・ケーブル、または、複雑な断面形状を有する電線・ケーブル(これらを異形電線・ケーブルということがある)の絶縁層またはケーブルシース(単にシースともいう)を形成する材料には、高い形状維持性が求められる。
高い形状維持性が求められるのは、大径・厚肉電線・ケーブル、および、自己支持型の電線、ケーブルについても、同様である。
しかし、特許文献1では、上記のように押出成形機への負荷低減については検討されているが、押出成形後の形状維持性については何ら検討されていない。
本発明は、押出成形機への負荷を低減することができ、しかも押出成形後の形状維持性にも優れる電線・ケーブル被覆用樹脂組成物、および、それを用いた電線・ケーブルを提供することを、課題とする。
本発明者らは、被覆用樹脂組成物を構成する樹脂の物性、組み合わせおよび組成について鋭意検討したところ、特定のメルトフローレート(MFR)を持つ樹脂を特定の組み合わせで2種併用することにより、押出容易性および形状維持性を両立できること、とりわけ、MFRが特定の小さな値を持つエチレン−α−オレフィン共重合体をベース成分とし、これにMFRがさらに小さな特定の高密度ポリエチレンを特定の割合で組み合わせて用いると、樹脂組成物の流動性を高めて押出成形機への負荷を低減できるにもかかわらず、高い形状維持性をも兼ね備える被覆用樹脂組成物が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づき、なされたものである。
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>メルトフローレート(190℃、21.18N)が2.0g/10分以下のエチレン−α−オレフィン共重合体(a)70〜92質量%、および、密度が0.945〜0.962g/cmであり、メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.2g/10分未満である高密度ポリエチレン(b)8〜30質量%を含有することを特徴とする電線・ケーブル被覆用樹脂組成物。
<2>メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.2〜0.6g/10分であり、かつ、JIS K 7199に基づき、測定温度220℃、せん断速度15/secの条件下のキャピラリダイ法によって計測された溶融粘度が2500〜6000Pa・sであることを特徴とする<1>に記載の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物。
<3>酸化防止剤(c)およびカーボンブラック(d)を含有することを特徴とする<1>または<2>に記載の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物。
<4>前記酸化防止剤(c)が、フェノール系酸化防止剤(c1)およびリン系酸化防止剤(c2)を前記エチレン−α−オレフィン共重合体(a)および前記高密度ポリエチレン(b)の合計100質量部に対して、いずれも0.01〜2.0質量部含み、前記カーボンブラック(d)の含有量が前記合計100質量部に対して1.5〜5.0質量部であることを特徴とする<3>に記載の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物。
<5><1>〜<4>のいずれか1項に記載の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を押出成形してなる押出被覆を有することを特徴とする電線・ケーブル。
本発明により、押出成形機への負荷を低減でき、しかも押出成形後の形状維持性にも優れる電線・ケーブル被覆用樹脂組成物、および、それを用いた電線・ケーブルを提供することが可能になった。
本発明の好ましい電線・ケーブルとしてのスロット型光ケーブルを示す概略図である。 本発明の別の好ましい電線・ケーブルとしての漏洩同軸ケーブルの形状および構造を示す概略説明図である。
<<電線・ケーブル被覆用樹脂組成物>>
本発明の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物(以下、本発明の樹脂組成物ということがある)は、MFR(190℃、21.18N)が2.0g/10分以下のエチレン−α−オレフィン共重合体(a)(以下、共重合体(a)ということがある)と、密度が0.945〜0.962g/cmであり、MFR(190℃、21.18N)が0.2g/10分未満である高密度ポリエチレン(b)とを含有する。
共重合体(a)の含有率は、共重合体(a)と高密度ポリエチレン(b)との合計質量中、70〜92質量%であり、高密度ポリエチレン(b)の含有率は、上記合計質量中、8〜30質量%である。
上記成分(a)および(b)を上記範囲の含有率で含有する本発明の樹脂組成物は、好ましくは、MFR(190℃、21.18N)が0.2〜0.6g/10分であり、かつ、JIS K 7199に基づき、測定温度220℃、せん断速度15/secの条件下のキャピラリダイ法によって計測された溶融粘度が2500〜6000Pa・sである。
本発明に用いる各成分について説明する。
なお、各成分および本発明の樹脂組成物において、密度、MFR(190℃、21.18N)および溶融粘度の測定方法は、実施例にて、詳細に説明する。
<(a)エチレン−α−オレフィン共重合体>
本発明に用いるエチレン−α−オレフィン共重合体(a)は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であればよく、好ましくは、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体である。
このようなα−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、1−ブテン、1−へキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。なかでも、形状維持性や外観、コストの点で、1−ブテン、1−ヘキセンが好ましい。
共重合体(a)において、エチレン構成成分の含有率は、特に限定されないが、形状維持性の点で、共重合体(a)の全構成成分中、50〜99.9質量%が好ましく、75〜99.9質量%がより好ましい。エチレン構成成分の含有率は、例えば赤外分光光度法によって、求めることができる。
共重合体(a)としては、特に限定されないが、例えば、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、メタロセン触媒存在下に合成されたポリエチレン樹脂等が挙げられる。なかでも、廉価に、入手または製造でき、しかも環境応力により亀裂が発生しにくい(耐環境応力亀裂性が優れる)点で、LLDPEが好ましい。
共重合体(a)の密度は、特に限定されないが、0.880〜0.935g/cmが好ましい。密度が0.880〜0.935g/cmの範囲内にあると、絶縁電線またはケーブルの柔軟性と剛性のバランスが優れるとともに、低温衝撃性をも得ることができる。
共重合体(a)の密度は、0.915〜0.935g/cmがより好ましく、0.915〜0.925g/cmがさらに好ましい。密度を上記範囲内に抑えると、柔軟性、剛性および低温衝撃性がより優れるものにできる。また、押出成形機への負荷の低減効果が大きく、形状維持性にも優れる。さらに、共重合体(a)を廉価に入手または製造でき、本発明の樹脂組成物、ひいては本発明の電線・ケーブルの製造コストを低減できる。
共重合体(a)のMFR(190℃、21.18N)は、2.0g/10分以下である。MFRが2.0g/10分以下を超えると、高密度ポリエチレン(b)と混合されても、形状維持性が低下することがある。特に、異形電線・ケーブル、大径・厚肉電線・ケーブル、または、自己支持型の電線、ケーブルを製造する場合に、その断面形状が崩れやすくなる。負荷低減効果を大きく損なわずに形状維持性が優れる点で、MFR(190℃、21.18N)は、1.0g/10分以下が好ましく、0.8g/10分以下がさらに好ましい。
MFR(190℃、21.18N)は、特に限定されないが、0.5g/10分以上が実際的である。
少なくとも上記範囲のMFRを有する共重合体(a)は、上記の特性を満たす市販品を用いてもよく、適宜、常法に基づいて合成して用いてもよい。
市販品としては、例えば、「カーネル」(商品名、日本ポリエチレン社製)、「エボリュー」(商品名、プライムポリマー社製)、「モアテック」(商品名、プライムポリマー社製)、「NUC」(商品名、日本ユニカー社製)、「ノバテック」(商品名、日本ポリエチレン社製)等を挙げることができる。
共重合体(a)を合成する場合は、エチレンおよびα−オレフィンを、例えば、気相重合装置あるいは液相重合装置を用いて、チーグラー・ナッタ触媒存在下、あるいはメタロセン触媒存在下で共重合させる。
このとき、密度は、例えば、α−オレフィンの種類や導入量等によって、調整できる。また、MFRは、例えば、平均分子量等によって、調整できる。
共重合体(a)は、通常、溶融粘度が小さく、特に異形電線・ケーブル等を製造する場合には形状維持性に劣る。
しかし、共重合体(a)を高密度ポリエチレン(b)と併用し、かつ、共重合体(a)の、本発明の樹脂組成物中の含有率を、共重合体(a)と高密度ポリエチレン(b)との合計質量中、70〜92質量%にすると、形状維持性が改善され、しかも優れた押出容易性をも有する樹脂組成物となる。含有率が70質量%未満であると、押出成形機への負荷が増大し、場合によっては押出成形できないことがある。一方、92質量%を超えると、形状維持性が低下する。
形状維持性を低下させることなく、押出成形機への負荷を低減できる点で、共重合体(a)の含有率は、上記合計質量中、75〜88質量%が好ましく、78〜85質量%がより好ましく、80〜85質量%がさらに好ましい。
共重合体(a)は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する場合、MFR、好ましくは密度を、共重合体それぞれが満たしているのがよいが、2種以上の共重合体のブレンド物が全体として満たしていてもよい。
<(b)高密度ポリエチレン>
本発明に用いる高密度ポリエチレン(b)は、構成成分としてエチレン成分を含む重合体または共重合体であればよく、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
高密度ポリエチレン(b)としてのエチレンとα−オレフィンとの共重合体において、α−オレフィンは、上記共重合体(a)と同じであり、好ましいものも同じである。
該共重合体において、エチレン構成成分の含有率は、特に限定されないが、強度特性や形状維持性の点で、共重合体の全構成成分中、95質量%以上が好ましく、97〜100質量%がより好ましい。エチレン構成成分の含有率は上記方法で求めることができる。
高密度ポリエチレン(b)は、単独重合体、および、エチレンとα−オレフィンとの共重合体のうち、単独重合体が好ましい。
高密度ポリエチレン(b)の密度は、0.945〜0.962g/cmである。密度が0.945g/cm未満であると、形状維持性が低下することがある。一方、0.962g/cmを超えると、電線・ケーブルの外観低下や押出成形機への負荷も大きくなる。
押出成形機への負荷を低減し、しかも形状維持性等を改善できる点で、密度は、0.950〜0.960g/cmが好ましい。
高密度ポリエチレン(b)のMFR(190℃、21.18N)は、0.2g/10分未満である。MFRが0.2g/10分以上であると、共重合体(a)が共存していても、形状維持性が低下して押出成形体の形状維持が困難になることがある。
製造設備(押出成形機)のモーター負荷を低減することができ、しかも形状維持性に加えて電線・ケーブルの外観にも優れる点で、MFR(190℃、21.18N)は、0.05〜0.15g/10分が好ましく、0.06〜0.10g/10分がより好ましい。
上記範囲の密度およびMFRを有する高密度ポリエチレン(b)は、上記の特性を満たす市販品を用いてもよく、適宜、常法に基づいて合成して用いてもよい。
市販品としては、例えば、「ハイゼックス」(商品名、プライムポリマー社製)、「ニポロンハード」(商品名、東ソー社製)、「ノバテック」(商品名、日本ポリエチレン社製)等を挙げることができる。
高密度ポリエチレン(b)を合成する場合は、エチレン、所望によりα−オレフィンを、例えば、チーグラー・ナッタ触媒を用いた低圧法等により、重合または共重合させる。
このとき、密度およびMFRは、共重合体(a)と同様にして、調整できる。
高密度ポリエチレン(b)の、本発明の樹脂組成物中の含有率は、共重合体(a)と高密度ポリエチレン(b)との合計質量中、8〜30質量%である。この含有率が30質量%を超えると、押出成形機への負荷が増大し、場合によっては押出成形できないことがある。一方、8質量%未満であると、形状維持性が低下する。
形状維持性を低下させることなく、押出成形機への負荷を低減できる点で、高密度ポリエチレン(b)の含有率は、12〜25質量%が好ましく、15〜22質量%がより好ましく、15〜20質量%がさらに好ましい。
高密度ポリエチレン(b)は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する場合、それぞれが密度およびMFRを満たしているのがよいが、2種以上のポリエチレンブレンド物が全体として密度およびMFRを満たしていてもよい。
<添加剤等>
本発明の樹脂組成物は、電線、ケーブル、コード、チューブ、電線部品、シート等において、一般的に使用されている各種の添加剤、または、溶媒等を、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜含有することができる。
添加剤としては、特に限定されず、例えば、酸化防止剤、充填剤(補強剤)、金属不活性剤、難燃(助)剤、滑剤等が挙げられる。
((c)酸化防止剤)
酸化防止剤(c)は、本発明の樹脂組成物に好ましく含有される。
本発明に用いることができる酸化防止剤は、通常、電線等に用いられるものであればよく、例えば、フェノール系酸化防止剤(c1)、リン系酸化防止剤(c2)、アミン系酸化防止剤(c3)、イオウ系酸化防止剤(c4)等が挙げられる。なかでも、フェノール系酸化防止剤(c1)、リン系酸化防止剤(c2)が好ましく、フェノール系酸化防止剤(c1)およびリン系酸化防止剤(c2)を併用するのがより好ましい。
本発明において、酸化防止剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤(c)の、本発明の樹脂組成物中の合計含有量は、特に限定されず、上記共重合体(a)および高密度ポリエチレン(b)の合計100質量部に対して、0.01〜2.0質量部が好ましく、0.05〜1.0質量部がより好ましい。
フェノール系酸化防止剤(c1)としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤(c1)の市販品としては、例えば「イルガノックス」(商品名、BASF社製)等を挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤(c1)の含有量は、上記合計含有量の範囲内であれば特に限定されない。例えば、上記合計100質量部に対して、0.01〜2.0質量部が好ましく、0.01〜1.0質量部がより好ましく、0.05〜0.5質量部がさらに好ましく、0.1〜0.3質量部が特に好ましい。
リン系酸化防止剤(c2)としては、特に限定されないが、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチル−ホスファイト等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤(c2)の市販品としては、例えば「イルガフォス」(商品名、BASF社製)等を挙げることができる。
リン系酸化防止剤(c2)の含有量は、上記合計含有量の範囲内であれば特に限定されない。例えば、上記合計100質量部に対して、0.01〜2.0質量部が好ましく、0.01〜1.0質量部がより好ましく、0.05〜0.5質量部がさらに好ましく、0.1〜0.3質量部が特に好ましい。
アミン系酸化防止剤(c3)としては、特に限定されないが、例えば、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等が挙げられる。アミン系酸化防止剤(c3)の含有量は、上記合計含有量の範囲内であれば特に限定されない。
イオウ系酸化防止剤(c4)としては、特に限定されないが、例えば、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)等が挙げられる。イオウ系酸化防止剤(c4)の含有量は、上記合計含有量の範囲内であれば特に限定されない。
(充填剤(補強剤))
充填剤としては、通常、電線等に用いられるものであればよく、例えば、カーボンブラック(d)、無機酸化物、シリカ、タルク等が挙げられる。なかでも、補強性、耐候性等が優れる点で、カーボンブラック(d)が好ましい。
本発明において、充填剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
本発明に用いることができるカーボンブラック(d)としては、その種類は特に限定されず、種々のものを用いることができる。例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック等の補強用カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラック等が挙げられる。
カーボンブラックの平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは10〜500nmである。
カーボンブラック(d)としては、例えば「旭カーボン」、「SUNBLACK」(商品名、いずれも旭カーボン社製)等を挙げることができる。
充填剤の、本発明の樹脂組成物中の合計含有量は、特に限定されない。機械的特性や外観が優れる点で、上記共重合体(a)および高密度ポリエチレン(b)の合計100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
特に充填剤がカーボンブラック(d)である場合は、機械的特性や外観が優れるうえ、屋外で使用され、紫外線に曝されても長期間機械的特性を維持できる(耐候性に優れる)点で、上記合計100質量部に対して、1.5〜5.0質量部が好ましく、1.5〜2.5質量部がより好ましい。
金属不活性剤としては、特に限定されず、例えば、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。
難燃(助)剤としては、特に限定されず、例えば、金属水和物(水酸基または結晶水を有する金属化合物)、臭素系化合物、三酸化アンチモン、メラミンシアヌレート、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
滑剤としては、特に限定されず、例えば、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、エステル系滑剤、アルコール系滑剤、金属石けん系滑剤、シリコーンガム等が挙げられる。
<本発明の樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物は、上記共重合体(a)および高密度ポリエチレン(b)を特定の質量割合で含有することにより、以下の特性を有するのが好ましい。これにより、形状維持性および負荷低減効果を改善できる。また、電線・ケーブルに求められる特性、例えば機械的強度、柔軟性、耐衝撃性、耐摩耗性、耐寒性、耐環境応力亀裂特性等をも兼ね備えることができる。
(メルトフローレート(190℃、21.18N))
MFR(190℃、21.18N)は、0.2〜0.6g/10分が好ましく、0.3〜0.5g/10分がより好ましい。MFRが0.6g/10分を超えると、形状維持性が低下し、特に、異形電線・ケーブル、大径・厚肉電線・ケーブル、または、自己支持型の電線、ケーブルを製造する場合に、その断面形状が崩れることがある。一方、0.2g/10分未満であると、製造設備のモーター負荷が高くなって製造できなくなることがある。
(溶融粘度)
溶融粘度は、2500〜6000Pa・sが好ましい。溶融粘度が2500Pa・s未満であると、形状維持性が低下し、特に異形電線・ケーブル等を製造する場合に、その断面形状が崩れることがある。一方、6000Pa・sを超えると、製造設備への負荷が大きくなって押出成形が困難となることがある。すなわち、溶融粘度が上記範囲内にあると、押出成形機への負荷低減効果および形状維持性を高い水準で両立できる。したがって、電線またはケーブルを製造する場合はもちろん、異形電線・ケーブル等を製造する場合にも、溶融粘度が上記範囲内にある本発明の樹脂組成物を異形電線・ケーブル等の被覆材料として使用すると、押出成形機への負荷低減効果および形状維持性に優れた効果を発現する。この効果がより優れる点で、溶融粘度は、3000〜5000Pa・sが好ましく、3500〜5000Pa・sがより好ましい。
本発明において、本発明の樹脂組成物の溶融粘度は、真のせん断速度に対する真のせん断応力の比で定義される。この溶融粘度は、JIS K 7199:1999に基づき、測定温度220℃、せん断速度15/secの条件下のキャピラリダイ法(方法A2)によって、測定される粘度である。
(密度)
密度は、特に限定されないが、電線・ケーブルとしての機械的強度および柔軟性を両立できる点で、0.925〜0.940g/cmが好ましく、0.925〜0.935g/cmがより好ましい。
本発明の樹脂組成物において、上記MFR、溶融粘度および密度は、例えば、共重合体(a)および高密度ポリエチレン(b)の種類、含有率もしくはこれらの組み合わせ、または、添加剤の種類もしくは含有量等により、調整できる。例えば、高密度ポリエチレン(b)を少なくすると、MFR、溶融粘度、密度が小さくなる傾向がある。なお、本発明において、MFR等の特性を調整する方法は、これに限定されない。
上記のような特性を有する本発明の樹脂組成物は、電線・ケーブルの被覆用として好ましく用いられ、特に、異形電線・ケーブル、大径・厚肉電線・ケーブル、または、自己支持型の電線、ケーブルの被覆用として好ましく用いられる。
<本発明の樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、共重合体(a)および高密度ポリエチレン(b)、所望により添加剤を、上記含有率または含有量となる割合で、混合機、混練機等を用いて、溶融混練(混合を含む)して、製造できる。
このとき、溶融混練する際の混合順は、特に限定されず、上記成分をどのような順で混合してもよい。好ましい混合順としては、例えば、添加剤を用いる場合、高密度ポリエチレン(b)、酸化防止剤(c)、カーボンブラック(d)及び所望により他の添加剤を溶融混練した後、最後に共重合体(a)を溶融混練すると、カーボンブラック(d)や添加剤の分散が良好になる傾向にある。
上述の成分を溶融混合する混練温度は、少なくとも共重合体(a)および高密度ポリエチレン(b)が溶融する温度以上であれば特に限定されない。例えば、160〜250℃挙げられ、好ましくは180〜220℃である。
また、混練時間等の混練条件も、特に限定されず、上記成分が混合されればよく、適宜に設定することができる。
混練方法としては、通常用いられる方法であればよく、混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーまたは各種のニーダー等が用いられる。なかでも、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等がカーボンブラックや添加剤の分散性の点で、好ましい。
<<電線・ケーブル>>
本発明の電線・ケーブル(以下、本発明の電線等という)は、導体、芯線、導体束またはファイバ心線等(導体等ということがある)の外周に、本発明の樹脂組成物を押出成形してなる押出被覆を絶縁層またはシース等として有する。
本発明の樹脂組成物が押し出される導体等は、特に限定されず、本発明の電線等の種類、用途等に応じて適宜に選択される。また、導体等の材質、形状、寸法等も、従来のものを適宜選択して用いることができる。
電線等は、電気・電子機器に用いられるものであれば特に限定されず、電気・電子機器の内部および外部配線に使用されるものを含む。
また、ケーブルとしては、各種ケーブルが特に限定されずに適用でき、屋内に配設されるケーブルおよび屋外に配設されるケーブルを含む。例えば、電力ケーブル、通信ケーブル等が好ましく挙げられる。
なかでも、本発明の電線等は、異形電線・ケーブル、大径・厚肉電線・ケーブル、または、自己支持型の電線、ケーブルが好ましい。このような電線・ケーブルとしては、例えば、電力用捻回電線、通信ケーブル用テープ心線、通信ケーブル等が挙げられる。通信ケーブルとしては、例えば、スロット型光ケーブル、漏洩同軸ケーブル、スロットレス光ケーブル、中間分岐型架空光ケーブル、光ドロップケーブル、インドア光ケーブル等が挙げられる。
これらのなかでも、形状維持性が求められる、大径・厚肉の、スロット型光ケーブル、漏洩同軸ケーブルが好ましく、また、自己支持型の電線、ケーブルも好ましい。
以下に、本発明の好ましい電線等を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の好ましい電線等として、図1に示されるスロット型光ケーブル1が挙げられる。図1(a)はスロット型光ケーブル1の端面輪郭を示す端面図であり、図1(b)はスロット型光ケーブル1の概略斜視図であり、図1(c)はスロット型光ケーブル1のケーブル部11の端面を示す概略端面図である。
スロット型光ケーブル1は、被覆、すなわちシース12b、19および首部13(図1(b)参照)が本発明の樹脂組成物で形成されていること以外は、従来のスロット型光ケーブルと同様の形状および構成等をとることができる。
すなわち、スロット型光ケーブル1は、自己支持型(SSW型)の光ケーブルであり、図1に示されるように、端面(断面)形状が略円形の支持線部12と断面形状が略円型のケーブル部11とが複数の首部(連結部)13で連結された断面形状を有している。このように、スロット型光ケーブル1の断面形状は、単純な形状ではなく、複雑な形状になっている。
ケーブル部11は、図1(c)に示されるように、テンションメンバー14の周面上にスロット15が被覆され、そのスロット15の軸線に沿って形成された5本の収納溝15aに光ファイバ心線16が所定の数落とし込まれ、引き裂き紐17、押さえ巻きテープ18とともに被覆材(シースともいう)19に埋設されている。
支持線部12は、図1(b)に示されるように、複数の支持線12aと、支持線12aを被覆する被覆材(シース)12bを有している。
スロット型光ケーブル1は、ケーブル部11の外径が大きく、シース19の厚さが厚くなっている。一概にはいえないが、一例を挙げると、ケーブル部11の外径は8〜35mmである。なお、シース19の厚さは後述する。
シース12b、19および首部13は、いずれも、本発明の樹脂組成物で形成されている。したがって、ケーブル部11の外径が大きく、シース19の厚さが厚くても、また、スロット型光ケーブル1が自己支持型で支持線部12および首部13を有する複雑な断面形状であっても、シース12b、19および首部13は所定の形状を保持している。
なお、スロット型光ケーブル1において、支持線12a、テンションメンバー14、スロット15、光ファイバ心線16、引き裂き紐17および押さえ巻きテープ18は、通常の光ケーブルに用いられるものであれば、特に限定されることなく、用いることができる。
本発明の別の好ましい電線等として、図2に示される漏洩同軸ケーブル2が挙げられる。図2に、漏洩同軸ケーブル2の端面形状および構造等を示す。
漏洩同軸ケーブル2は、被覆、すなわち、シース22b、28および首部23が本発明の樹脂組成物で形成されていること以外は、従来の漏洩同軸ケーブルと同様の形状および構成等をとることができる。
すなわち、漏洩同軸ケーブル2は、自己支持型(SSW型)のケーブルであり、図2に示されるように、端面(断面)形状が略円形の支持線部22と断面形状が略円型のケーブル部21とが複数の首部(連結部)23で連結された断面形状を有している。このように、漏洩同軸ケーブル2の断面形状は、単純な形状ではなく、複雑な形状になっている。
ケーブル部21は、内部導体24上に絶縁体ポリエチレン紐25および絶縁体ポリエチレンパイプ26にて覆われ、その上に外部導体27を有し、一括して被覆材(シース)28に埋没されている。
支持線部22は、複数の支持線22aと、支持線22aを被覆する被覆材(シース)22bを有している。
漏洩同軸ケーブル2は、ケーブル部21の外径が大きく、シース28の厚さが厚くなっている。一概にはいえないが、一例を挙げると、ケーブル部21の外径は20〜60mmである。なお、シース28の厚さは後述する。
シース22b、28および首部23は、いずれも、本発明の樹脂組成物で形成されている。したがって、ケーブル部21の外径が大きく、シース28の厚さが厚くなっていいても、また、漏洩同軸ケーブル2が自己支持型で支持線部22および首部23を有する複雑な形状であっても、シース22b、28および首部23は所定の形状を保持している。
なお、漏洩同軸ケーブル2において、支持線22a、内部導体24、絶縁体ポリエチレン紐25、絶縁体ポリエチレンパイプ26および外部導体27は、通常の漏洩同軸ケーブルに用いられるものであれば、特に限定されることなく、用いることができる。
スロット型光ケーブル1および漏洩同軸ケーブル2において、ケーブル部11、21および支持線部12、22は、いずれも、断面形状が略円形になっているが、これ以外にも、略矩形、楕円形のようなものもある。
本発明の電線等は、導体等の外周に、例えば押出成形機、押出し被覆装置内で本発明の樹脂組成物を溶融混練しながら被覆させる等により、製造することができる。
このとき、本発明の樹脂組成物を導体等とともに押し出すと、電線・ケーブルの断面形状に対応する複雑な断面形状を崩すことなく、この形状を保持したまま成形できる。したがって、形状の再現性がよく、高い歩留まりで、本発明の電線等を製造できる。
しかも、本発明の樹脂組成物は、押出成形機に過大な負荷をかけることがなく、生産性もよい。
本発明に用いることができる導体としては、電線の導体となりうるものであれば特に限定されず、例えば、軟銅の単線または撚線(導体束ともいう)等が挙げられる。この導体は、裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するもの(芯線ともいう)を用いることもできる。
本発明に用いうるファイバ心線、テンションメンバーおよび支持線は上記した通りである。
本発明の樹脂組成物で形成される被覆の厚さは、用途等に応じて、適宜に決定される。
絶縁層の厚さ(最大厚さ)は、特に限定されないが、通常、0.15〜5mm程度である。
シースの厚さは、特に限定されないが、通常、0.15〜30mm程度である。
本発明の樹脂組成物を押出成形する際の条件は、本発明の樹脂組成物を押出すことができれば特に限定されないが、押出成形機への負荷を低減でき、しかも形状維持性をも確保できる点で、押出温度(ヘッド部)が140〜240℃であるのが好ましく、160〜210℃であるのがより好ましい。
また、押出成形の他の条件として、スクリュー回転数が2〜50rpmであり、線速が2〜100m/分であることが好ましい。
なお、押出成形機のスクリュー構成は、特に限定されず、通常のフルフライトスクリュー、ダブルフライトスクリュー、先端ダブルフライトスクリュー、マドックスクリュー等を使用できる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表1および表2の各配合の数値は質量部を表す。
各例に用いた成分を以下に示す。
下記エチレン−α−オレフィン共重合体(a2)〜(a5)および(aa1)は、エチレンと1−ブテンを、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒の存在下、気相重合装置または液相重合装置を用い、70〜150℃で共重合して、合成した。用いた触媒濃度は、重合が十分に進行する濃度で良いが、重合反応器内容物の質量を基準として、0.0001〜5質量%用いた。
<エチレン−α−オレフィン共重合体(a)>
エチレン−α−オレフィン共重合体(a1):「NUCG7641」(商品名、NUC社製、エチレン−1−ブテン共重合体、MFR(190℃、21.18N)0.70g/10分、密度0.922g/cm
エチレン−α−オレフィン共重合体(a2):エチレン−1−ブテン共重合体(MFR(190℃、21.18N)1.00g/10分、密度0.920g/cm
エチレン−α−オレフィン共重合体(a3):エチレン−1−ブテン共重合体(MFR(190℃、21.18N)2.00g/10分、密度0.920g/cm
エチレン−α−オレフィン共重合体(a4):エチレン−1−ブテン共重合体(MFR(190℃、21.18N)1.00g/10分、密度0.900g/cm
エチレン−α−オレフィン共重合体(a5):エチレン−1−ブテン共重合体(MFR(190℃、21.18N)1.00g/10分、密度0.933g/cm
エチレン−α−オレフィン共重合体(aa1):チレン−1−ブテン共重合体(MFR(190℃、21.18N)2.50g/10分、密度0.922g/cm
<高密度ポリエチレン(b)>
下記高密度ポリエチレン(b3)〜(b5)および(bb1)〜(bb4)は、エチレンを、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒の存在下、気相重合装置または液相重合装置を用い、70〜150℃で重合して、合成した。用いた触媒濃度は、重合が十分に進行する濃度で良いが、重合反応器内容物の質量を基準として、0.0001〜5質量%用いた。
高密度ポリエチレン(b1):「ハイゼックス5000H」(商品名、プライムポリマー社製、エチレン単独重合体、MFR(190℃、21.18N)0.10g/10分、密度0.958g/cm
高密度ポリエチレン(b2):「ハイゼックス7800M」(商品名、プライムポリマー社製、エチレン単独重合体、MFR(190℃、21.18N)0.04g/10分、密度0.954g/cm
高密度ポリエチレン(b3):単独重合体(MFR(190℃、21.18N)0.10g/10分、密度0.948g/cm
高密度ポリエチレン(b4):単独重合体(MFR(190℃、21.18N)0.10g/10分、密度0.962g/cm
高密度ポリエチレン(b5):単独重合体(MFR(190℃、21.18N)0.10g/10分、密度0.938g/cm
高密度ポリエチレン(bb1):単独重合体(MFR(190℃、21.18N)0.10g/10分、密度0.943g/cm
高密度ポリエチレン(bb2):単独重合体(MFR(190℃、21.18N)0.10g/10分、密度0.964g/cm
高密度ポリエチレン(bb3):単独重合体(MFR(190℃、21.18N)0.25g/10分、密度0.951g/cm
高密度ポリエチレン(bb4):単独重合体(MFR(190℃、21.18N)5.00g/10分、密度0.964g/cm
<添加剤>
フェノール系酸化防止剤(c1):「イルガノックス1010」(商品名、BASF社製、化学名ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
リン系酸化防止剤(c2):「イルガフォス168」(商品名、BASF社製、化学名トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト)
カーボンブラック(d):「旭カーボン#70」(商品名、旭カーボン社製、平均粒径20nm)
実施例1
本例では、図1(a)に示す端面輪郭を有する、所謂「眼鏡状」の簡易試験ケーブルを製造して、下記項目を評価した。この簡易試験ケーブルはスロット型光ケーブルの簡易試験体である。以下、簡易試験ケーブルを構成する部材のうち、図1に示すスロット型光ケーブル1を構成する部材に対応するものには、便宜的に、これと同一の符号を付す。
エチレン−α−オレフィン共重合体(a1)80質量部、高密度ポリエチレン(b1)20質量部、フェノール系酸化防止剤(c1)0.1質量部、リン酸系酸化防止剤(c2)0.1質量部およびカーボンブラック(d)2質量部を、バンバリーミキサーを用いて、200℃で、溶融混練した後、ペレット化して、本発明の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を得た。
次に、得られた電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を、L/D(スクリュー有効長Lと直径Dとの比)が25で、スクリュー直径が40mmφの電線用押出成形機(聖製作所社製、モーター負荷限界:80A)、および、断面形状が眼鏡状である押出ダイスを用いて、下記押出温度条件により、並行に並べた1.0mmφの導体(軟銅線)の上に、下記のようにして一体的に押出・被覆して、簡易試験ケーブルを製造した。
ケーブル部11として、電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を、一方の導体の外周に、外径5.0mmφ、被覆厚さ2.0mmとなるように押し出した。また、支持線部12として、他方の導体の外周に、外径2.0mmφ、被覆厚さ0.5mmとなるように押し出した。さらに、ケーブル部11および支持線部12として押し出された電線・ケーブル被覆用樹脂組成物それぞれが厚さ1.0mmの連結部13によって繋がれるように、電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を連結部13として押出した。
押出条件(温度)は、押出成形機のシリンダー部分における温度制御をフィーダー側からダイス側に向けて3ゾーンC1、C2、C3に分け、C1ゾーンを170℃、C2ゾーンを190℃、C3ゾーンを200℃、ダイス温度200℃に、設定した。
スクリューの回転数を40rpm、線速を10m/分に設定した。
実施例2〜12
表1および表2に示す各成分を表1および表2に示す配合量で溶融混練したこと以外は実施例1と同様にして、それぞれ、本発明の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を得た。
得られた電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして、それぞれ、本発明の電線を製造した。
実施例13
まず、テンションメンバー14、スロット15、光ファイバ心線16、引き裂き紐17および押さえ巻きテープ18として通常用いられるものを用いて、シース19を有しないケーブル部11を、公知の方法により、作製した。
実施例1で調製した電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を、実施例1と同様にして、シース19を有しないケーブル部11および支持線12aの外周に押出して、図1に示すスロット型光ケーブル1を製造した。
なお、ケーブル部11の外径を21mm、シース19の厚さを1.5mm、支持線部12の外径を5mm、シース12bの厚さを1.5mmとした。
比較例1〜7
表2に示す各成分を表2に示す配合量で溶融混練したこと以外は実施例1と同様にして、それぞれ、比較のための電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を得た。
得られた比較のための電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして、それぞれ、比較のための簡易試験ケーブルを製造した。
各成分および得られた電線・ケーブル被覆用樹脂組成物の密度、MFR(190℃、21.18N)および溶融粘度を下記方法により測定した。結果を表1および表2に示す。
<密度>
密度は、JIS K 7112:1999に規定の「A法(水中置換法)」に基づいて、測定した。
<MFRの測定>
MFR(190℃、21.18N)は、JIS K 7210に規定の「A法(手動切り落とし法)」基づき、190℃、21.18Nの条件Dで計測した。
<溶融粘度の測定>
JIS K 7199:1999に基づき、測定温度220℃、せん断速度15/secの条件下のキャピラリダイ法(方法A2)によって、測定した。
<形状維持性>
上記簡易試験ケーブルまたはスロット型光ケーブル1を製造した各例において、上記押出成形機により押し出された各電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を冷水等で冷却することなく大気中に最大20秒放置し、所定の形状を保持しているか否かを目視にて、確認し、下記基準により、評価した。
形状維持性は、評価が「B」であると許容でき、「A」以上であると望ましいレベルにある。
AA:20秒放置しても形状維持していた場合
A :10秒放置しても形状維持していた場合
B :5秒放置しても形状維持していた場合
C :5秒未満で形状が崩れた場合
<押出容易性>
上記簡易試験ケーブルまたはスロット型光ケーブル1を製造した各例において、上記押出成形機により各電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を押出成形した際の、押出成形機のモーターに作用した負荷値の最大値を読み取った。
読み取った値をモーター負荷限界値で除して、モーター負荷限界に対する負荷率(%)を算出した。電線・ケーブル被覆用樹脂組成物の押出容易性を、上記負荷率を指標として、下記基準により、評価した。
押出容易性は、評価が「B」であると押出機にかかる負荷が許容でき、「A」以上であると望ましいレベルにある。
AA:74%以下
A :74%を超え、85%以下
B :85%を超え、100%以下
C :100%を超える
Figure 2015146259
Figure 2015146259
表1および表2の結果から明らかなように、特定の共重合体(a)と特定の高密度ポリエチレン(b)を含有する実施例1〜13の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、いずれも、MFR(190℃、21.18N)および溶融粘度が上記範囲にあり、形状維持性と押出容易性を両立していた。このように、溶融粘度が2500Pa・s以上であると、押出機から押し出された押出成形体(溶融した電線・ケーブル被覆用樹脂組成物)が冷却されるまでの間、重力で垂れ落ちることがなく、形状維持性に優れることがわかった。また、6000Pa・s以下であると、押出負荷に問題がなく、汎用の押出成形機でも電線・ケーブルを製造できることがわかった。
特に、スロット型光ケーブル1を実際に製造してみたところ(実施例13)、形状維持性と押出容易性を両立でき、実施例1と同様の結果が得られた。
また、密度が上記範囲内にあるものは電線・ケーブルに要求される機械的強度および柔軟性等を有することが分かった。
これに対して、共重合体(a)の含有率が高い比較例1の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、そのMFRが大きく、形状維持性が劣り、押出容易性と形状維持性とを両立できなかった。一方、高密度ポリエチレン(b)の含有率が高い比較例2の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、押出容易性が劣り、押出容易性と形状維持性とを両立できなかった。
共重合体(aa1)のMFRが大きい比較例3の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、そのMFRが大きく、形状維持性が劣った。また、高密度ポリエチレン(bb1)の密度が小さい比較例4の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、形状維持性が劣り、押出容易性と形状維持性とを両立できなかった。一方、高密度ポリエチレン(bb2)の密度が大きい比較例5の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、押出容易性に劣った。
さらに、高密度ポリエチレン(bb3)のMFRが大きい比較例6の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、そのMFRが大きく、形状維持性が劣り、押出容易性と形状維持性とを両立できなかった。また、高密度ポリエチレン(bb4)の密度およびMFRが共に大きい比較例7の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、そのMFRが大きく、溶融粘度が小さく、形状維持性が劣っていた。
1 スロット型光ケーブル
2 漏洩同軸ケーブル
11、21 ケーブル部
12、22 支持線部
12a、22a 支持線
12b、22b 被覆材(シース)
13、23 首部
14 テンションメンバー
15 スロット
15a 収納溝
16 光ファイバ心線
17 引き裂き紐
18 押さえ巻きテープ
19、28 被覆材(シース)
24 内部導体
25 絶縁体ポリエチレン紐
26 絶縁体ポリエチレンパイプ
27 外部導体

Claims (5)

  1. メルトフローレート(190℃、21.18N)が2.0g/10分以下のエチレン−α−オレフィン共重合体(a)70〜92質量%、および、密度が0.945〜0.962g/cmであり、メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.2g/10分未満である高密度ポリエチレン(b)8〜30質量%を含有することを特徴とする電線・ケーブル被覆用樹脂組成物。
  2. メルトフローレート(190℃、21.18N)が0.2〜0.6g/10分であり、かつ、JIS K 7199に基づき、測定温度220℃、せん断速度15/secの条件下のキャピラリダイ法によって計測された溶融粘度が2500〜6000Pa・sであることを特徴とする請求項1に記載の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物。
  3. 酸化防止剤(c)およびカーボンブラック(d)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物。
  4. 前記酸化防止剤(c)が、フェノール系酸化防止剤(c1)およびリン系酸化防止剤(c2)を、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(a)および前記高密度ポリエチレン(b)の合計100質量部に対して、いずれも、0.01〜2.0質量部含み、
    前記カーボンブラック(d)の含有量が、前記合計100質量部に対して1.5〜5.0質量部であることを特徴とする請求項3に記載の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のずれか1項に記載の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を押出成形してなる押出被覆を有することを特徴とする電線・ケーブル。
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