JP2015145075A - 長尺の含浸物及び架橋性樹脂成形体の製造方法、並びに架橋性樹脂成形体の製造装置 - Google Patents

長尺の含浸物及び架橋性樹脂成形体の製造方法、並びに架橋性樹脂成形体の製造装置 Download PDF

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健次 大野
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Abstract

【課題】繊維状支持体の強度が低い場合や、高粘度の塗工液を用いる場合であっても、繊維状支持体が破損することなく、該繊維状支持体に塗工液が含浸されてなる長尺の含浸物を効率よく製造することができる、長尺の含浸物の製造方法の提供。【解決手段】樹脂成分又は重合性単量体及び重合触媒を含有し、粘度・粘弾性測定装置を用いて23℃で測定した粘度が20〜5000cPである塗工液を、長尺の繊維状支持体8を一定方向に搬送しながら、繊維状支持体8の表裏面に、それぞれ、塗工液の塗膜付フィルム6a,6bを、塗膜付フィルム6a,6bの塗膜が前記繊維状支持体8に対向するように貼合する工程を有し、かつ、2枚の塗膜付フィルム6a,6bが、長尺のフィルムを一定方向に搬送しながら、前記フィルムの一方の面に、塗工液をずり速度が100〜6000(1/s)になる条件で塗工して得られたものであることを特徴とする長尺の含浸物10の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂成分又は重合性モノマー及び重合触媒を含有し、特定の粘度を有する塗工液が長尺の繊維状支持体に含浸されてなる長尺の含浸物の製造方法、前記塗工液として、シクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を用いる架橋性樹脂成形体の製造方法、及び、この架橋性樹脂成形体の製造装置に関する。
近年の電子部品・電子機器等の小型化・薄膜化に伴って、これらに用いられる回路基板等にも小型化・薄膜化が要求されている。そのため、回路基板には、より高密度の回路配線パターンを形成することが必要となっている。
従来、このような高密度の回路配線パターンを形成するために、多層構造の回路基板を用い、回路基板を構成する各層の厚みを薄くすることが行われている。そして、このような多層構造の回路基板を薄膜化した場合であっても、回路基板の機械強度を維持できるという観点から、多層構造の回路基板の層間絶縁層を形成する材料として、ガラス繊維等の繊維状支持体を含有するプリプレグを用いる方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、ガラスクロスを一定方向に搬送しながら、このガラスクロスの両面に重合性組成物を連続塗工して、重合性組成物をガラスクロスに含浸させて含浸物を得た後、この含浸物の両面にポリエチレンナフタレートフィルムを重ね合わせ、次いで、このものを加熱することで樹脂シート(プリプレグ)を得る方法が記載されている。
しかしながら、塗工液をガラスクロスに直接塗工して含浸物を得る場合、用いるガラスクロスの強度が低い場合や、充填剤等を含有する高粘度の塗工液を塗工する場合等において、ガラスクロスの表面が引きちぎられ、ガラスクロスが破損することがあった。
このため、従来の方法では、ガラスクロスに高粘度の塗工液が含浸された含浸物を効率よく製造することができないという問題があった。
特開2007−270083号公報
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、繊維状支持体の強度が低い場合や、高粘度の塗工液を用いる場合であっても、繊維状支持体が破損することなく、該繊維状支持体に塗工液が含浸されてなる長尺の含浸物を効率よく製造することができる、長尺の含浸物の製造方法、前記塗工液として、シクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を用いる架橋性樹脂成形体の製造方法、及びこの架橋性樹脂成形体の製造装置を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、長尺の含浸物の製造方法について鋭意検討した。その結果、2枚の長尺のフィルムに、樹脂成分又は重合性モノマー及び重合触媒を含有し、特定の粘度を有する塗工液をずり速度が特定値となる条件で塗工して、長尺の塗膜付フィルムを得た後、これらの塗膜付フィルムを長尺の繊維状支持体の両面に貼合し、塗膜を構成する塗工液を前記繊維状支持体に含浸させることで、繊維状支持体が破損することなく、長尺の含浸物を効率よく製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、下記〔1〕〜〔4〕の含浸物の製造方法、下記〔5〕の架橋性樹脂成形体の製造方法、及び下記〔6〕の架橋性樹脂成形体の製造装置が提供される。
〔1〕樹脂成分又は重合性単量体及び重合触媒を含有し、粘度・粘弾性測定装置を用いて23℃で測定した粘度が20〜5000cPである塗工液が、長尺の繊維状支持体に含浸されてなる長尺の含浸物の製造方法であって、前記長尺の繊維状支持体を一定方向に搬送しながら、前記繊維状支持体の表裏面に、それぞれ、前記塗工液の塗膜付フィルムを、該塗膜付フィルムの塗膜が前記繊維状支持体に対向するように貼合する工程を有し、かつ、前記2枚の塗膜付フィルムが、長尺のフィルムを一定方向に搬送しながら、前記フィルムの一方の面に、前記塗工液をずり速度が100〜6000(1/s)になる条件で塗工して得られたものであることを特徴とする長尺の含浸物の製造方法。
〔2〕前記塗工液が、さらに、充填剤を含有するものである、〔1〕に記載の含浸物の製造方法。
〔3〕前記塗工液中の充填剤の含有量が、塗工液全体に対して40〜75重量%である、〔2〕に記載の含浸物の製造方法。
〔4〕前記塗工液が、シクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の含浸物の製造方法。
〔5〕前記〔4〕で得られた含浸物中の重合性組成物を塊状重合させる工程を有する架橋性樹脂成形体の製造方法。
〔6〕前記〔5〕に記載の架橋性樹脂成形体の製造装置であって、2枚の長尺のフィルムをそれぞれ一定方向に搬送しながら、それぞれのフィルムの一方の面に、シクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を、ずり速度が100〜6000(1/s)になる条件で塗工し、2枚の長尺の塗膜付フィルムを製造する塗膜付フィルム製造部と、長尺の繊維状支持体を一定方向に搬送しながら、前記繊維状支持体の表裏面に、それぞれ、前記2枚の塗膜付フィルムを、それらの塗膜が前記繊維状支持体に対向するように貼り合わせ、長尺のフィルム付含浸物を製造するフィルム貼合部と、及び、前記フィルム付含浸物中の重合性組成物を塊状重合させることで、架橋性樹脂成形体を製造する塊状重合部と、を備える架橋性樹脂成形体の製造装置。
本発明によれば、繊維状支持体の強度が低い場合や、高粘度の塗工液を用いる場合であっても、繊維状支持体が破損することなく、該繊維状支持体に塗工液が含浸されてなる長尺の含浸物を効率よく製造することができる、長尺の含浸物の製造方法、前記塗工液として、シクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を用いる架橋性樹脂成形体の製造方法、及びこの架橋性樹脂成形体の製造装置が提供される。
本発明の長尺の含浸物を製造する際に用いられる装置(100)を示す模式図である。 本発明の架橋性樹脂成形体の製造装置(200)を示す模式図である。 本発明の架橋性樹脂成形体の製造装置(300)を示す模式図である。 従来の架橋性樹脂成形体の製造装置(400)を示す模式図である。
以下、本発明を、1)長尺の含浸物の製造方法、2)架橋性樹脂成形体の製造方法、及び、3)架橋性樹脂成形体の製造装置、に項分けして詳細に説明する。
1)長尺の含浸物の製造方法
本発明の長尺の含浸物(以下、単に「含浸物」ということがある。)の製造方法は、樹脂成分又は重合性単量体及び重合性触媒を含有し、粘度・粘弾性測定装置を用いて23℃で測定した粘度が20〜5000cPである塗工液が、長尺の繊維状支持体に含浸されてなる長尺の含浸物の製造方法であって、前記長尺の繊維状支持体を一定方向に搬送しながら、前記繊維状支持体の表裏面に、それぞれ、前記塗工液の塗膜付フィルムを、該塗膜付フィルムの塗膜が前記繊維状支持体に対向するように貼合する工程を有し、かつ、前記2枚の塗膜付フィルムが、長尺のフィルムを一定方向に搬送しながら、前記フィルムの一方の面に、前記塗工液をずり速度が100〜6000(1/s)になる条件で塗工して得られたものであることを特徴とする。
〔塗工液〕
本発明に用いる塗工液は、樹脂成分又は重合性単量体及び重合性触媒を含有する。樹脂成分としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。重合性単量体及び重合触媒としては、後述するシクロオレフィンモノマー等の塊状重合反応性モノマー等とその重合触媒が挙げられる。
本発明は、塗工液として、粘度・粘弾性測定装置を用いて23℃で測定した粘度が、20〜5000cP、好ましくは100〜4000cP、より好ましくは500〜3000cPのものを用いる。
多量の充填剤を含有する塗工液のような高粘度の塗工液を用いて含浸物を製造する場合、塗工液を繊維状支持体に直接塗工する従来の方法を用いると、繊維状支持体が破損することがある。しかしながら、本発明の方法によれば、高粘度の塗工液を用いる場合であっても、繊維状支持体が破損することなく、目的の含浸物を効率よく製造することができる。
塗工液が、充填剤を含有するものである場合、用いる充填剤としては、一般的に使用されるものであれば特に限定されない。充填剤としては、無機充填剤及び有機充填剤のいずれも用いることができるが、無機充填剤が好ましい。充填剤を含有する含浸物を用いて形成された樹脂成形体は、機械強度と耐熱性に優れたものとなる。
無機充填剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物系充填剤;シリカバルーン、アルミナ、酸化鉄、酸化スズ、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、酸化マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化ケイ素(シリカ)等の金属酸化物系充填剤;塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の金属塩化物系充填剤;硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム等の金属硫酸塩系充填剤;硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム等の金属硝酸塩系充填剤;リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の金属リン酸塩系充填剤;チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の金属チタン酸塩系充填剤;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等の金属炭酸塩系充填剤;炭化硼素、炭化ケイ素等の炭化物系充填剤;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物系充填剤;アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、鉄、金、銀、鉛、タングステン等の金属粒子系充填剤;タルク、クレー、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラスバルーンマイカ、カオリン、フライアッシュ等のケイ酸塩系充填剤;ガラス粉末;カーボンブラック、グラファイト、活性炭、炭素バルーン等の炭素粒子;等が挙げられる。
有機充填剤としては、木粉;デンプン;有機顔料;ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の化合物粒子;等が挙げられる。
これらの充填剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
塗工液が充填剤を含有する場合、その含有量は、塗工液全体に対して、好ましくは40〜75重量%、より好ましくは50〜70重量%である。
前記塗工液は、溶媒、難燃剤、酸化防止剤又はその他の配合剤をさらに含有していてもよい。
いずれの成分も、それぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その添加量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択すればよい。
溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン等の鎖状脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;水;等が挙げられる。
難燃剤としては、工業的に使用されるものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリエチレン、高塩素化ポリプロピレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールS、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニルプロパン)、ペンタブロモトルエン等のハロゲン系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物系難燃剤;含リン難燃剤;含窒素難燃剤;三酸化アンチモン等のアンチモン化合物等の非ハロゲン系難燃剤;等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でも、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤がより好ましい。
その他の配合剤としては、着色剤、光安定剤、及び発泡剤等を用いることができる。着色剤としては、染料や顔料等が用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。
塗工液は、上記成分の所定量を混合することにより調製することができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、所定の容器内で上記成分を混合し、攪拌する方法が挙げられる。
後述するように、塗工液として、シクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を用いる場合、プリプレグとして有用な架橋性樹脂成形体を得ることができる。
〔長尺の繊維状支持体〕
本発明に用いる長尺の繊維状支持体(以下、単に「繊維状支持体」ということがある。)は、得られる含浸物を補強するための基材であり、繊維の編物、織布、および不織布等のシート状に形成された部材である。「長尺」とは、その形状が、幅方向に比べて、長手方向が長い(好ましくは10倍以上の長さ)帯状であることをいう(後述する、「長尺のフィルム」、「長尺の含浸物」等においても、同じ意味を表す。)
繊維状支持体の長さ(長手方向の長さ)は、特に限定されないが、通常、400〜2000mである。繊維状支持体の幅(幅方向の長さ)は、特に限定されないが、通常、450〜1300mm、好ましくは530〜1280mmである。繊維状支持体の厚みは、特に限定されないが、通常、5〜150μm、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。
繊維状支持体を構成する繊維としては、無機系及び/又は有機系の繊維が使用できる。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、及び液晶ポリエステル繊維等の有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、及びシリカ繊維等の無機繊維;等が挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、及びHガラス等の繊維を好適に用いることができる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
ガラス繊維から構成される繊維状支持体としては、プリント配線基板用のガラスクロスとして公知のものを用いることができる。ガラスクロスの織り組織としては、平織り、ななこ織り、綾織り、朱子織り、模紗織り、からみ織り等が好ましい。
また、繊維状支持体は、誘電率の面内バラツキを抑える観点から、開繊処理がなされていることが好ましい。開繊度は、特に限定されないが、JIS規格 R 3420に定める通気度において、通常、10cm/cm/s以下、好ましくは、5cm/cm/s以下である。
〔長尺のフィルム〕
本発明の製造方法においては、塗工液からなる塗膜が長尺のフィルム(以下、単に「フィルム」ということがある。)上に形成された塗膜付フィルムを用いる。この塗膜付フィルムを繊維状支持体に貼合し、その塗工液(塗膜)を繊維状支持体に含浸させることで、繊維状支持体に過度の負荷をかけることなく、含浸物を得ることができる。含浸後は、このフィルムは、保護フィルムとしても機能する。
フィルムの長さ(長手方向の長さ)は、特に限定されないが、通常、400〜2000mである。フィルムの幅(幅方向の長さ)は、特に限定されないが、通常、450〜1300mm、好ましくは530〜1280mmである。フィルムの厚みは、特に限定されないが、通常、5〜150μm、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。
フィルムは、一方の面に塗工液を塗工することにより、塗膜を形成することができるものである限り、特に限定されない。フィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、及びナイロン等からなる樹脂フィルム;鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、及び銀等の金属材料からなる金属箔;等が挙げられる。これらの中でも、樹脂フィルムが好ましい。
〔長尺の含浸物の製造方法〕
本発明の長尺の含浸物の製造方法は、前記長尺の繊維状支持体を一定方向に搬送しながら、前記繊維状支持体の表裏面に、それぞれ、前記塗工液の塗膜付フィルムを、該塗膜付フィルムの塗膜が前記繊維状支持体に対向するように貼合する工程を有し、かつ、前記2枚の塗膜付フィルムが、長尺のフィルムを一定方向に搬送しながら、前記フィルムの一方の面に、前記塗工液をずり速度が100〜6000(1/s)になる条件で塗工して得られたものであることを特徴とするものである。
本発明の長尺の含浸物は、例えば、図1に示す含浸物製造装置(100)を用いて製造することができる。なお、この含浸物製造装置(100)は、後述する架橋性樹脂成形体の製造装置の一部を構成するものである。
含浸物製造装置(100)において、(1)は塗工液を貯蔵する塗工液タンク、(2)は、小型チューブポンプである。小型チューブポンプ(2)により、塗工液タンク(1)中の塗工液を、塗工装置(3a)、(3b)に送液する。
一方で、長尺のフィルム送り出し部(4a)、(4b)から、長尺のフィルム(5a)、(5b)を送り出し、長尺のフィルム(5a)、(5b)をそれぞれ搬送しながら、塗工装置(3a)、(3b)により、長尺のフィルム(5a)、(5b)の一方の面に、塗工液を連続的に塗工し、長尺の塗膜付フィルム(6a)、(6b)を形成する。
一方で、長尺の繊維状支持体送り出し部(7)から長尺の繊維状支持体(8)を所定の速度で送り出し、長尺の繊維状支持体(8)を搬送しながら、長尺の繊維状支持体(8)に、長尺の塗膜付フィルム(6a)、(6b)を、それらの塗膜が長尺の繊維状支持体(8)に対向する向きに重ね、これらを加圧ロール(9a)、(9b)の間を通過させて、塗工液(塗膜)を長尺の繊維状支持体(8)に含浸させ、フィルム付含浸物(10)を得る。
塗工装置(3a)、(3b)としては、特に限定されず、塗工ロール、ダイ等が挙げられる。
塗工装置(3a)、(3b)の位置は、含浸処理(加圧ロールの通過)の前に塗工液を塗工することができる限り、特に限定されない。例えば、図1に示すように、長尺のフィルム(5a)、(5b)を搬送する途中で、塗工液を塗工するように設置してもよいし、塗工直後に貼合工程が行われるように、加圧ロール(9a)、(9b)に対向する位置(図1中のXで表される位置)に塗工装置(3a)、(3b)を設置してもよい。
形成される塗膜の厚みは、目的に合わせて適宜決定することができる。塗膜の厚みは、通常、5〜150μm、好ましくは10〜100μmである。
長尺のフィルム(5a)、(5b)の搬送速度は、塗工液を塗工する際のずり速度が所定の値になるように定められる。
塗工液を塗工する際のずり速度は、100〜6000(1/s)、好ましくは、200〜5000(1/s)、より好ましくは500〜3000(1/s)である。ずり速度が、上記範囲であることで、連続的にムラなく塗工液を塗工することができる。
本発明において、ずり速度は、塗膜の厚みを(X)、長尺のフィルムの搬送速度をYとしたときに、Y/Xで求められる。ずり速度が上記範囲内であることで、効率よく、安定的に含浸物を製造することができる。
長尺の繊維状支持体(8)の搬送速度は、通常、長尺のフィルム(5a)、(5b)の搬送速度に合わせて適宜決定される。
加圧ロール(9a)、(9b)の材質は特に限定されない。例えば、ゴム、合成樹脂、金属等が挙げられる。これらのなかでも、耐久性に優れることから金属が好ましく、ステンレスがより好ましい。
加圧ロール(9a)、(9b)の間隙幅は、特に限定されず、目的の含浸物の厚みに合わせて適宜決定することができる。加圧ロール(9a)、(9b)の間隙幅は、通常、0.03〜0.5mm、好ましくは0.05〜0.3mmである。
本発明の方法により得られた長尺の含浸物は、目的に合わせて、適宜、乾燥処理、塊状重合反応処理等を行うことができる。
本発明の長尺の含浸物の製造方法は、塗工液を長尺の繊維状支持体に直接塗工するものではなく、長尺のフィルムに塗工液を塗工し、得られた長尺の塗膜付フィルムを長尺の繊維状支持体に貼合することで、塗膜を構成する塗工液を繊維状支持体に含浸させるものである。したがって、繊維状支持体の強度が低いときや、高粘度の塗工液を用いるときであっても、繊維状支持体が破損することがなく、長尺の含浸物を製造することができる。
2)架橋性樹脂成形体の製造方法
本発明の架橋性樹脂成形体の製造方法は、本発明の長尺の含浸物の製造方法において、塗工液としてシクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を用い、得られた含浸物を塊状重合させる工程を有する。
〔重合性組成物〕
(i)シクロオレフィンモノマー
シクロオレフィンモノマーは、炭素原子で構成される脂環式構造を有し、かつ該脂環式構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有する化合物である。
本明細書において、「重合性の炭素−炭素二重結合」とは、開環重合可能な炭素−炭素二重結合をいう。開環重合には、イオン重合、ラジカル重合、及びメタセシス重合等、種々の形態のものが存在するが、本発明においては、メタセシス重合であるのが好ましい。
シクロオレフィンモノマーが有する脂環式構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらの組み合わせ多環等が挙げられる。各脂環式構造を構成する炭素数に特に限定はないが、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。なかでも、得られる樹脂成形体の誘電特性と耐熱性とを高度にバランスさせる観点から、多環構造が好ましい。
多環構造を有するシクロオレフィンモノマーとしては、ノルボルネン系モノマーが好ましい。ここで、「ノルボルネン系モノマー」とは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーをいう。例えば、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類等が挙げられる。
シクロオレフィンモノマーは、任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、及びアリール基等の炭素数1〜30の炭化水素基;カルボキシル基、酸無水物基等の極性基;等が挙げられる。
シクロオレフィンモノマーは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、本発明においては、シクロオレフィンモノマーとして、分子内に脂環式構造を有し、かつ、該脂環式構造内に、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を有するシクロオレフィンモノマー(a)と、分子内に、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキリデン基、及び、ビニリデン基から選ばれる少なくとも1つの基と、脂環式構造を有し、かつ、該脂環式構造内に、炭素−炭素二重結合を有するシクロオレフィンモノマー(b)(シクロオレフィンモノマー(a)を除く。)とからなるモノマー混合物、又は、シクロオレフィンモノマー(b)であるのが好ましい。
シクロオレフィンモノマー(a)とシクロオレフィンモノマー(b)とを混合して用いる場合、モノマー混合物中における、シクロオレフィンモノマー(a)の含有割合は、モノマー混合物を構成する全単量体中、5〜99.9重量%であることが好ましく、20〜95重量%であることがより好ましく、40〜90重量%であることが更に好ましく、50〜80重量%であることが特に好ましい。モノマー混合物中における、シクロオレフィンモノマー(b)の含有割合は、モノマー混合物を構成する全単量体中、0.1〜95重量%であることが好ましく、5〜80重量%であることがより好ましく、10〜60重量%であることが更に好ましく、20〜50重量%であることが特に好ましい。
シクロオレフィンモノマー(a)の含有割合が少なすぎると、得られる樹脂成形体のピール強度が低下するおそれがあり、多すぎると、得られる樹脂成形体の耐熱性が低下するおそれがある。
シクロオレフィンモノマー(a)において、「架橋性の炭素−炭素不飽和結合」とは、開環重合には関与せず、架橋反応に関与可能な炭素−炭素不飽和結合をいう。架橋反応とは橋架け構造を形成する反応であり、縮合反応、付加反応、ラジカル反応、メタセシス反応等種々の形態のものが存在するが、本発明においては、通常、ラジカル架橋反応またはメタセシス架橋反応、特にラジカル架橋反応をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合としては、芳香族炭素−炭素不飽和結合を除く炭素−炭素不飽和結合、すなわち、脂肪族炭素−炭素二重結合または脂肪族炭素−炭素三重結合が挙げられ、本発明においては、通常、脂肪族炭素−炭素二重結合をいう。
このようなシクロオレフィンモノマー(a)としては、脂環式構造内に架橋性の炭素−炭素不飽和結合を有する単環シクロオレフィンモノマー、脂環式構造内に架橋性の炭素−炭素不飽和結合を有するノルボルネン系モノマー等が挙げられ、脂環式構造内に架橋性の炭素−炭素不飽和結合を有するノルボルネン系モノマーが好ましい。
シクロオレフィンモノマー(a)の具体例としては、ジシクロペンタジエン、メチル−ジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、エチルジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−メチル−2,5−ノルボルナジエン、5−フェニル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン等の脂環式構造内に炭素−炭素不飽和結合を2つ有する化合物が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シクロオレフィンモノマー(b)は、分子内に、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキリデン基、及び、ビニリデン基から選ばれる少なくとも1つの基と、脂環式構造を有し、かつ、脂環式構造内に、炭素−炭素二重結合を有する脂環式オレフィンモノマーである。ただし、前記シクロオレフィンモノマー(a)は除かれる。
前記炭素数2〜6のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、ビニル基、1−プロペニル基が好ましい。
炭素数1〜6のアルキリデン基としては、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基等が挙げられる。
シクロオレフィンモノマー(b)が有する脂環式構造は、前記シクロオレフィンモノマー(a)が有する脂環構造と同様のものが挙げられる。
シクロオレフィンモノマー(b)の具体例としては、9−メチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−10−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−10−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−10−イソプロピルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−10−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン;
9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−10−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−10−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−10−イソプロピルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−10−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン;
9−n−プロピリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−プロピリデン−10−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−プロピリデン−10−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−プロピリデン−10−イソプロピルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−プロピリデン−10−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン;
9−イソプロピリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−イソプロピリデン−10−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−イソプロピリデン−10−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−イソプロピリデン−10−イソプロピルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−イソプロピリデン−10−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン;
9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン;
9−イソプロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン;
9−アリルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン;
9−(1−プロペニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン;等のテトラシクロドデセン類;
5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネン、n−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−(1−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−アリル−2−ノルボルネン;等のノルボルネン類;等が挙げられる。
これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、本発明の作用効果がより顕著なものとなるという点より、テトラシクロドデセン類が好ましく、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)が特に好ましい。
重合性組成物には、前記シクロオレフィンモノマー(a)、シクロオレフィンモノマー(b)以外に、その他のシクロオレフィンモノマー(c)を含有していてもよい。
その他のシクロオレフィンモノマー(c)としては、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、1−メチル−2−ノルボルネン、7−メチル−2−ノルボルネン、5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロ−2−ノルボルネン、5,5−ジクロロ−2−ノルボルネン、5−フルオロ−2−ノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチル−2−ノルボルネン、5−クロロメチル−2−ノルボルネン、5−メトキシ−2−ノルボルネン、5,6−ジカルボキシル−2−ノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノ−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて、用いることができる。
シクロオレフィンモノマー(c)を用いる場合における、シクロオレフィンモノマー(c)の含有割合は、全単量体中、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
(ii)メタセシス重合触媒
前記重合性組成物は、上述したシクロオレフィンモノマーをメタセシス開環(共)重合させるためのメタセシス重合触媒を含有する。
用いるメタセシス重合触媒としては、通常、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては、例えば、タンタルが挙げられ、6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。これらの中でも、8族のルテニウムやオスミウムの錯体をメタセシス重合触媒として用いることが好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、架橋性樹脂成形体の生産性に優れ、得られる架橋性樹脂成形体は、未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、作業性に優れる。ルテニウムカルベン錯体は、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活し難いので、これを用いることにより、大気下での生産を可能とすることができる。
ルテニウムカルベン錯体としては、下記一般式(i)又は(ii)で表されるものが挙げられる。
Figure 2015145075
上記一般式(i)及び(ii)において、R11及びR12は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
11及びX12は、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子を示す。アニオン性配位子とは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、ハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボキシル基等を挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
及びLはそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物又はヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物を表す。ヘテロ原子とは、周期律表15族及び16族の原子を意味し、具体的には、N、O、P、S、As、及びSe原子等を挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、及びS原子等が好ましく、N原子が特に好ましい。
中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。その具体例としては、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類等が挙げられ、ホスフィン類が好ましく、トリアルキルホスフィンがより好ましい。
なお、上記一般式(i)及び(ii)において、R11とR12は互いに結合して環を形成してもよく、さらに、R11、R12、X11、X12、L及びLは、任意の組合せで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよい。
本発明においては、架橋性樹脂成形体等の生産効率を高める観点から、前記ヘテロ原子含有カルベン化合物としてはヘテロ環構造を有する化合物が好ましい。ヘテロ環構造を構成するヘテロ原子としては、例えば、O原子やN原子等が挙げられ、好ましくはN原子である。また、ヘテロ環構造としては、イミダゾリン構造やイミダゾリジン構造が好ましい。
かかるヘテロ環構造を有する化合物としては、下記一般式(iii)又は一般式(iv)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2015145075
式中、R13〜R16は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい炭素数1〜20個の炭化水素基を表す。また、R13〜R16は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
ヘテロ環構造を有する化合物の具体例としては、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン等が挙げられる。
このようなヘテロ環構造を有する化合物を配位子として有するルテニウムカルベン錯体としては、上記一般式(i)又は(ii)で表され、L又はLとしてヘテロ環構造を有する化合物からなる配位子を有するルテニウムカルベン錯体が挙げられる。
ヘテロ環構造を有する化合物からなる配位子を有するルテニウムカルベン錯体の具体例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド等の、配位子としてヘテロ環構造を有する化合物と当該化合物以外の中性電子供与性化合物とが結合したルテニウムカルベン錯体が挙げられる。
これらのメタセシス重合触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。メタセシス重合触媒の使用量は、(触媒中の金属原子:全単量体)のモル比で、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
メタセシス重合触媒は、所望により、少量の不活性溶剤に溶解又は懸濁して使用することができる。このような溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリット等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;インデン、テトラヒドロナフタレン等の脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の含酸素炭化水素;等が挙げられる。これらの中では芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及び脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。
(iii)架橋剤
前記重合性組成物は架橋剤を含有するのが好ましい。
架橋剤を含有させることで、得られる架橋性樹脂成形体は後架橋可能な熱可塑性樹脂となりうる。ここで「後架橋可能な」とは、該樹脂を加熱することにより架橋反応を進行させて架橋樹脂になし得ることを意味する。
架橋剤としては、ラジカル発生剤が好適に用いられる。ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、ジアゾ化合物、及び非極性ラジカル発生剤等が挙げられ、好ましくは有機過酸化物である。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン等のジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等のペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート等のペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナート等のペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシド等のアルキルシリルペルオキシド類;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン、3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトロキサン等の環状パーオキサイド類;が挙げられる。これらのなかでも、重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシド類、ペルオキシケタール類、及び環状パーオキサイド類が好ましい。
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン等が挙げられる。
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタン等が挙げられる。
架橋剤として、ラジカル発生剤を使用する場合、ラジカル発生剤の1分間半減期温度は、架橋の条件により適宜選択されるが、通常、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃の範囲である。ラジカル発生剤の1分間半減期温度は、例えば、各ラジカル発生剤メーカー(例えば、日本油脂社)のカタログやホームページを参照すればよい。
架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤を用いる場合、重合性組成物中の架橋剤の含有量としては、全単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
(iv)連鎖移動剤
重合性組成物は、さらに連鎖移動剤を含有するのが好ましい。重合性組成物に連鎖移動剤を配合させることにより、該組成物を塊状重合して得られる架橋性樹脂成形体の表面では、加熱溶融時の追従性がより向上し得る。それゆえ、連鎖移動剤を配合してなる重合性組成物を用いて得られた架橋性樹脂成形体を積層し、加熱して溶融、架橋して得られる積層体では、層間の密着性が一層高まり、ピール強度がより向上するので好ましい。連鎖移動剤は、架橋性炭素−炭素不飽和結合をさらに1以上有するものであってもよい。かかる架橋性炭素−炭素不飽和結合としては、ビニル基又はビニリデン基として存在するのが好ましい。
連鎖移動剤の具体例としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン等のヘテロ原子を持たない炭化水素化合物;アリルアミン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、4−ビニルアニリン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸スチリル、エチレングリコールジアクリレート、アリルトリビニルシラン、テトラアリルシラン等のヘテロ原子を有する炭化水素化合物;等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、得られる積層体を、ピール強度、耐クラック性により優れたものとすることができるという観点から、ヘテロ原子を持たない炭化水素化合物が好ましく、スチレン、ジビニルベンゼンがより好ましい。
連鎖移動剤の配合量としては、シクロオレフィンモノマー1モルに対して、好ましくは0.2〜10モルであり、より好ましくは0.5〜6モルである。連鎖移動剤の配合量が少なすぎると、得られる架橋性樹脂成形体の積層性が低下する傾向にあり、一方、多すぎると、得られる積層体のピール強度が低下する傾向にある。
(v)他の添加剤
重合性組成物は、上記成分の他、所望により、他の添加剤として、重合調整剤、重合反応遅延剤、架橋助剤、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、又はその他の配合剤をさらに含有していてもよい。
いずれの成分も、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その添加量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択すればよい。
重合調整剤は、重合活性を制御したり、重合反応率を向上させたりする目的で配合される。重合調整剤としては、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウム等が挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合調整剤を用いる場合における、重合調整剤の配合量は、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合調整剤)で、好ましくは1:0.05〜1:100、より好ましくは1:0.2〜1:20、さらに好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
重合反応遅延剤は、本発明に用いる重合性組成物の粘度増加を抑制し、該組成物の強化繊維へのより均一な含浸を図る目的で使用される。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;アニリンやピリジン等のルイス塩基;等が挙げられる。
本発明において、架橋剤としてラジカル発生剤を用いる場合、その架橋反応を促進させるために、架橋助剤を併用するのが好ましい。架橋助剤としては、例えば、p−キノンジオキシム等のジオキシム化合物;ラウリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクレート等のメタクリレート化合物;ジアリルフマレート等のフマル酸化合物:ジアリルフタレート等のフタル酸化合物、トリアリルシアヌレート等のシアヌル酸化合物;マレイミド等のイミド化合物;等が挙げられる。
架橋助剤の使用量は特に制限されないが、全単量体100重量部に対して、通常0〜100重量部、好ましくは0〜50重量部である。
充填剤、難燃剤、酸化防止剤、又はその他の配合剤としては、長尺の含浸物の製造方法における塗工液の成分として、先に示したものが挙げられる。
重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、メタセシス重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を調製し、別にシクロオレフィンモノマー、及び架橋剤等の必須の成分、ならびに所望によりその他の配合剤等を配合した液(モノマー液)を調製し、該モノマー液に触媒液を添加し、攪拌することによって調製することができる。
〔架橋性樹脂成形体の製造方法〕
本発明の架橋性樹脂成形体の製造方法は、本発明の含浸物の製造方法において、塗工液としてシクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を使用して得られた含浸物中の重合性組成物を塊状重合させる工程を有するものである。
塊状重合反応は、通常、含浸物を所定の温度に加熱することで行われる。含浸物の加熱方法としては特に制約されず、加熱プレート上に載せて加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス)する方法、加熱したローラーで押圧する方法、加熱炉内で加熱する方法等が挙げられる。
加熱温度は、通常、30〜250℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは90〜150℃であって、かつ架橋剤、通常、ラジカル発生剤の1分間半減期温度以下、好ましくは1分間半減期温度の10℃以下、より好ましくは1分間半減期温度の20℃以下である。また、反応時間は適宜選択すればよいが、通常、1秒間から20分間、好ましくは10秒間から5分間である。含浸物をかかる条件で加熱することにより未反応モノマーの少ない架橋性樹脂成形体を得ることができる。
以上のようにして得られる架橋性樹脂成形体を構成する重合体は、実質的に架橋構造を有さず、例えば、トルエンに可溶である。当該重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(溶離液:テトラヒドロフラン)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲である。
得られる架橋性樹脂成形体を構成する重合体は、後架橋可能な樹脂成形体であるが、その構成樹脂の一部分が架橋されたものであってもよい。
架橋性樹脂成形体を構成する重合体は、塊状重合を完結させて得られるものであり、保管中にさらに重合反応が進行するというおそれがない。また、架橋性樹脂成形体は、通常、架橋剤を含有してなるが、架橋反応を起す温度以上に加熱しない限り、表面硬度が変化する等の不具合を生じず、保存安定性に優れる。
本発明により得られる架橋性樹脂成形体は、回路基板製造用のプリプレグ等として好ましく用いられる。
3)架橋性樹脂成形体の製造装置
本発明の架橋性樹脂成形体の製造装置は、2枚の長尺のフィルムをそれぞれ一定方向に搬送しながら、それぞれのフィルムの一方の面に、シクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を、ずり速度が100〜6000(1/s)になる条件で塗工し、2枚の長尺の塗膜付フィルムを製造する塗膜付フィルム製造部と、長尺の繊維状支持体を一定方向に搬送しながら、前記繊維状支持体の表裏面に、それぞれ、前記2枚の塗膜付フィルムを、それらの塗膜が前記繊維状支持体に対向するように貼り合わせ、長尺のフィルム付含浸物を製造するフィルム貼合部と、及び、前記フィルム付含浸物中の重合性組成物を塊状重合させることで、架橋性樹脂成形体を製造する塊状重合部と、を備えるものである。
本発明の架橋性樹脂成形体の製造装置としては、例えば、図2に示す架橋性樹脂成形体の製造装置(200)が挙げられる。
塗膜付フィルム製造部は、塗工液タンク(1)、小型チューブポンプ(2)、塗工装置(3a)、(3b)、長尺のフィルム送り出し部(4a)、(4b)等から構成され、フィルム貼合部は、長尺の繊維状支持体送り出し部(7)、加圧ロール(9a)、(9b)等から構成される。これらの役割や好ましい態様は、それぞれ、先に、長尺の含浸物の製造方法の中で説明したものと同じである。
塊状重合部は、加熱装置(11)等から構成される。加熱装置(11)としては、加熱プレート、熱プレス機、加熱ローラー、加熱炉等が挙げられる。
長尺のフィルム付含浸物を、塊状重合部を通過させることで、含浸物中の重合性組成物を塊状重合させ、フィルム付架橋性樹脂成形体(12)を得ることができる。フィルム付架橋性樹脂成形体(12)は、巻き取りロール(13)で巻き取り、保管、運搬することができる。
反応性の高い重合性組成物を用いて、連続的に架橋性樹脂成形体を製造する場合、図3に示す架橋性樹脂成形体の製造装置(300)を用いることが好ましい。
架橋性樹脂成形体の製造装置(300)は、架橋性樹脂成形体の製造装置(200)の塗工液タンク(1)の代わりに、モノマー液タンク(14)及び触媒液タンク(15)を有する。モノマー液タンク(14)及び触媒液タンク(15)には、それぞれ、小型チューブポンプ(16)、(17)が連結され、それぞれのタンクから、モノマー液及び触媒液をスタティックミキサー(18)に所定の流速で送液し、両者を混合して重合性組成物を調製する。そして、調製した重合性組成物を塗工装置(3a)、(3b)にそれぞれ送液する。
本発明の架橋性樹脂成形体の製造装置によれば、多量の充填剤を含有し、粘度が高い重合性組成物を用いる場合であっても、効率よく架橋性樹脂成形体を製造することができる。
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、下記の実施例および比較例において、「部」および「%」は特に断りのない限り、重量基準である。
以下において、製造例2〜4で得た重合性組成物1〜3の粘度は、粘度・粘弾性測定装置(英弘精機社製、レオストレスRS6000)を用いて23℃で測定した。
〔製造例1〕
ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド0.05部と、トリフェニルホスフィン0.01部とを、インデン1.51部に溶解させて触媒液を調製した。
〔製造例2〕
重合性単量体として、エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)60部、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(TCD)40部、酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン0.28部、連鎖移動剤として、ジビニルベンゼン1.8部、架橋剤として、ジ−t−ブチルパ−オキサイド1.14部、充填剤として、シリカ(アドマテックス社製、製品名:SO−E2、シランカップリング剤処理品 平均粒径0.5μm)100部、難燃剤として、アンチモン酸化物(日本精鉱社製、製品名:PATOX−M)60部を混合し、モノマー液1を調製した。
次いで、このモノマー液1に製造例1で得た触媒液を、重合性単量体100部あたり1.6mlの割合で混合し、重合性組成物1を得た。
重合性組成物1の粘度は、200cPであった。
〔製造例3〕
重合性単量体として、エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)60部、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(TCD)40部、酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン0.28部、連鎖移動剤として、ジビニルベンゼン1.8部、架橋剤として、ジ−t−ブチルパ−オキサイド1.14部、難燃剤として、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、製品名:Kisuma8)240部を混合し、モノマー液2を調製した。
次いで、このモノマー液2に製造例1で得た触媒液を、重合性単量体100部あたり1.6ml混合し、重合性組成物2を得た。
重合性組成物2の粘度は、800cPであった。
〔製造例4〕
重合性単量体として、エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)60部、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(TCD)40部、酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン0.28部、連鎖移動剤として、ジビニルベンゼン1.8部、架橋剤として、ジ−t−ブチルパ−オキサイド1.14部、充填剤として、シリカ(アドマテックス社製、製品名:SO−E2、シランカップリング剤処理品 平均粒径0.5μm)80部、難燃剤として、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、製品名:Kisuma8)280部を混合し、モノマー液3を調製した。
次いで、このモノマー液3に製造例1で得た触媒液を、重合性単量体100部あたり1.6ml混合し、重合性組成物3を得た。
重合性組成物3の粘度は、200cPであった。
〔実施例1〕
以下に示すように、図2に示す構成を有する装置を用いて、塗工条件を変えて架橋性樹脂成形体を製造し、塗工液の粘度やずり速度が、生産性に与える影響を調べ、以下の基準で評価した。
○:架橋性樹脂成形体を連続的に製造することができた。
×:ガラスクロスの破損等が原因で、途中で生産を中断しなければならなかった。
塗工液としては、製造例2〜4で得た重合性組成物1〜3を用いた。
長尺の繊維状支持体としては、ガラスクロス(日東紡績社製 IPC 品番#1078)を用いた。
長尺のフィルムとしては、厚さ50μmのPETフィルムを用いた。
評価結果を第1表に示す。
〔比較例1〕
図4に示す構成を有する、繊維状支持体に塗工液を直接塗工する架橋性樹脂成形体の製造装置を用いて、実施例1と同様にして架橋性樹脂成形体を製造し、生産性を評価した。評価結果を第1表に示す。
Figure 2015145075
第1表から以下のことが分かる。
実施例1の方法によれば、高粘度の塗工液を用いる場合であっても、生産性よく、含浸物及び架橋性樹脂成形体を製造することができる。
一方、ガラスクロスに直接塗工する比較例1の方法によれば、塗工液の粘度が高い場合、ずり速度が小さい塗工条件を用いなければ、含浸物を連続的に製造することができず、生産性に劣っている。
1・・・塗工液タンク
2・・・小型チューブポンプ
3a、3b・・・塗工装置
4a、4b・・・長尺のフィルム送り出し部
5a、5b・・・長尺のフィルム
6a、6b・・・長尺の塗膜付フィルム
7・・・長尺の繊維状支持体送り出し部
8・・・長尺の繊維状支持体
9a、9b・・・加圧ロール
10・・・フィルム付含浸物
11・・・加熱装置
12・・・フィルム付架橋性樹脂成形体
13・・・巻き取りロール
14・・・モノマー液タンク
15・・・触媒液タンク
16・・・小型チューブポンプ
17・・・小型チューブポンプ
18・・・スタティックミキサー
100・・・含浸物製造装置
200・・・架橋性樹脂成形体の製造装置
300・・・架橋性樹脂成形体の製造装置
400・・・従来の架橋性樹脂成形体の製造装置

Claims (6)

  1. 樹脂成分又は重合性単量体及び重合触媒を含有し、粘度・粘弾性測定装置を用いて23℃で測定した粘度が20〜5000cPである塗工液が、長尺の繊維状支持体に含浸されてなる長尺の含浸物の製造方法であって、
    前記長尺の繊維状支持体を一定方向に搬送しながら、前記繊維状支持体の表裏面に、それぞれ、前記塗工液の塗膜付フィルムを、該塗膜付フィルムの塗膜が前記繊維状支持体に対向するように貼合する工程を有し、かつ、
    前記2枚の塗膜付フィルムが、長尺のフィルムを一定方向に搬送しながら、前記フィルムの一方の面に、前記塗工液をずり速度が100〜6000(1/s)になる条件で塗工して得られたものであること
    を特徴とする長尺の含浸物の製造方法。
  2. 前記塗工液が、さらに、充填剤を含有するものである、請求項1に記載の含浸物の製造方法。
  3. 前記塗工液中の充填剤の含有量が、塗工液全体に対して40〜75重量%である、請求項2に記載の含浸物の製造方法。
  4. 前記塗工液が、シクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物である、請求項1〜3のいずれかに記載の含浸物の製造方法。
  5. 請求項4で得られた含浸物中の重合性組成物を塊状重合させる工程を有する架橋性樹脂成形体の製造方法。
  6. 請求項5に記載の架橋性樹脂成形体の製造装置であって、
    2枚の長尺のフィルムをそれぞれ一定方向に搬送しながら、それぞれのフィルムの一方の面に、シクロオレフィンモノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を、ずり速度が100〜6000(1/s)になる条件で塗工し、2枚の長尺の塗膜付フィルムを製造する塗膜付フィルム製造部と、
    長尺の繊維状支持体を一定方向に搬送しながら、前記繊維状支持体の表裏面に、それぞれ、前記2枚の塗膜付フィルムを、それらの塗膜が前記繊維状支持体に対向するように貼り合わせ、長尺のフィルム付含浸物を製造するフィルム貼合部と、及び、
    前記フィルム付含浸物中の重合性組成物を塊状重合させることで、架橋性樹脂成形体を製造する塊状重合部と、
    を備える架橋性樹脂成形体の製造装置。
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