JP2015143201A - ジヒドロピラン誘導体組成物、ポリイミド前駆体組成物およびポリイミド樹脂の製造方法 - Google Patents

ジヒドロピラン誘導体組成物、ポリイミド前駆体組成物およびポリイミド樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】塗工性および貯蔵安定性に優れるとともに、硬化物の耐溶剤性および耐水性にも優れるポリイミド前駆体の水性組成物、ならびにポリイミド樹脂(硬化物)の製造方法を提供する。【解決手段】下記式(1)で表されるジヒドロピラン誘導体と、下記式(C)で表されるポリアミンと、水性媒体とを含有するポリイミド前駆体組成物、およびそのポリイミド前駆体組成物を加熱処理して、硬化させるポリイミド樹脂の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ジヒドロピラン誘導体組成物、ポリイミド前駆体組成物およびポリイミド樹脂の製造方法に関する。
ポリイミドはスーパーエンジニアリング・プラスチックの一つであり、他の高分子材料に比べて高い耐熱性を誇るうえ、機械強度や耐薬品性の面でも極めて優れた性能を持っている。また、低誘電率であり電気絶縁性に優れ、伸び特性に富み、熱膨張係数が小さいため、従来から電子回路の絶縁層、導電材を担持するバインダーなど、工業製品に多く利用されている。
一般に、ポリイミドは溶媒への溶解性に乏しく加工が困難なため、前駆体を含有する組成物の状態で使用して所望の形状に成形加工し、その後、加熱を行うことでポリイミドとする場合が多い。
このような組成物は、通常、塗工を介して扱われることが多く、経時で塗工時の造膜性に支障をきたす粘度変性や析出を避けるため、高極性で溶解力の高い溶媒が必要となり、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどが広く使用されている。一方、これら溶媒には生殖毒性や焼却時に窒素酸化物や硫黄酸化物を生じるなど環境負荷の大きさが指摘され、特殊な設備や防護装備がないと取り扱えない、という問題が内在されている。
ポリイミド前駆体は水に対し不安定な場合が多いため、溶媒または分散媒として水を用いた水系組成物とした場合、ゲル化や析出を起こさずに塗工に適した性状を保つことが難しく、組成物を塗工、乾燥する際の加工性や貯蔵安定性に問題が生じてしまう。
しかし、ポリイミド前駆体を含有する組成物の媒体として用いられるN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒は、極性基に由来した皮膚浸透性の高さがあり生体毒性を有する、燃焼時に窒素酸化物を生じるなど、環境負荷の高い溶媒にあたる。また、これらの有機溶媒は比較的高価な溶媒であるために、製造コストを上昇させる原因ともなる。
そのため、ポリイミド前駆体を水性媒体に溶解または分散させて水系組成物とすることが検討されてきた。例えば、特許文献1〜3には、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)と特定のアミンとの塩を形成させてポリイミド前駆体の水性樹脂組成物を製造する手段が開示されているが、常温で長時間放置すると凝集物や沈殿物、ゲルが生じ、良好な塗工ができないなど、十分な貯蔵安定性が得られない。
一方、特許文献4には、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸のカルボキシ基と2級のビニルエーテル化合物との反応により、ヘミアセタールエステル結合を介して保護基を導入することが開示されているが、ヘミアセタールエステル結合は、水分子の存在下では、たとえ室温であっても容易に分解が進み、アセトアルデヒドとアルコールへの変質が起こるため、実用レベルの貯蔵安定性が得られない。
特公昭43−13387 特開昭58−162658 特開2003−13351 特開2009−242539
そこで、本発明は、塗工性および貯蔵安定性に優れるとともに、硬化物の耐溶剤性および耐水性にも優れるポリイミド前駆体の水性組成物、ならびにポリイミド樹脂(硬化物)の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、特定のジヒドロピラン化合物の五員環の二重結合に特定のテトラカルボン酸を付加させて得られるジヒドロピラン誘導体と、特定のポリアミンとを水性媒体中で混合して得られるポリイミド前駆体の水性組成物(ポリイミド前駆体組成物)は、塗工性および貯蔵安定性が優れるとともに、硬化させて得られるポリイミド樹脂の耐溶剤性および耐水性にも優れることを知得し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(4)である。
(1)下記式(1)で表されるジヒドロピラン誘導体と水性媒体とを含有するジヒドロピラン誘導体組成物。
[式(1)中、Xは4価の有機基(アミノ基と反応性を有する基を含むものを除く。)であり、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基(アミノ基またはカルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。)である。R、R、RおよびRは、それぞれ互いに結合して環状構造を示していてもよい。]
(2)下記式(1)で表されるジヒドロピラン誘導体と、下記式(C)で表されるポリアミンと、水性媒体とを含有するポリイミド前駆体組成物。
[式(1)中、Xは4価の有機基(アミノ基と反応性を有する基を含むものを除く。)であり、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基(アミノ基またはカルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。)である。R、R、RおよびRは、それぞれ互いに結合して環状構造を示していてもよい。式(C)中、Yはm価の有機基(カルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。)であり、mは2以上の整数である。]
(3)下記式(A)で表されるジヒドロピラン化合物と、下記式(B)で表されるテトラカルボン酸と、水性媒体とを混合し、撹拌するジヒドロピラン誘導体組成物製造工程、
前記ジヒドロピラン誘導体組成物製造工程で得られたジヒドロピラン誘導体と、下記式(C)で表されるポリアミンとを混合し、撹拌するポリイミド前駆体組成物製造工程、および
前記ポリイミド前駆体組成物製造工程で得られたポリイミド前駆体と水性媒体とを含有するポリイミド前駆体組成物を加熱処理して、硬化させるポリイミド樹脂製造工程を備えるポリイミド樹脂の製造方法。
[式(A)中、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基(アミノ基またはカルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。)であり、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに結合して環状構造を示していてもよい。式(B)中、Xは4価の有機基(アミノ基と反応性を有する基を含むものを除く。)である。式(C)中、Yはm価の有機基(カルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。)であり、mは2以上の整数である。]
(4)上記(3)の製造方法によって得られるポリイミド樹脂。
本発明によれば、塗工性および貯蔵安定性が優れるとともに、ポリイミド樹脂の耐溶剤性および耐水性にも優れる、ポリイミド前駆体の水性組成物、ならびにポリイミド樹脂の製造方法を提供することができる。
本発明の特徴の一つは、ポリイミド前駆体において、テトラカルボン酸に由来するカルボキシ基が、ジヒドロピラン化合物との付加反応によりヘミアセタールエステル結合が形成されている点にある。
ジヒドロピラン化合物とカルボキシ基との反応により形成されたヘミアセタール結合は、加水分解への耐性を有し、カルボキシ基の保護基が脱離することによる脱保護が起きにくいため、水性媒体中でのポリイミド前駆体の安定性が高く、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性が優れる。発明者は、このような加水分解への耐性について、特許文献4に記載されているようなビニルエーテル化合物とカルボキシ基との反応により形成されたヘミアセタールエステル結合は平面構造をとることができ、水が付加しやすいことにより加水分解への耐性が低いが、ジヒドロピラン化合物とカルボキシ基との反応により形成されたヘミアセタールエステル結合は、ジヒドロピラン化合物の五員環による立体障害のため、ヘミアセタール結合が平面構造をとることができず、水が付加しにくいことにより加水分解への耐性が高くなっていると推定している。さらには、水性媒体中での安定性が高いのみならず、有機溶媒中での安定性も高くなっていると考えている。
また、ジヒドロピラン化合物とカルボキシ基との反応により形成されたヘミアセタール結合は、170℃以上に加熱することによって速やかに分解され、ジヒドロピラン化合物が脱離するため、200℃以上で加熱するイミド化処理の直前までカルボキシ基を保護することができる。さらに、脱離したジヒドロピラン化合物は加熱中に気化するため、イミド化後のポリイミドにジヒドロピラン化合物の残存が極めて少なく、ポリイミド樹脂の耐溶剤性および耐水性を損なわない。
これにより、保存時はカルボキシ基が保護され安定な状態であるにもかかわらず、イミド化後にはほぼ純粋なポリイミド樹脂となるポリイミド前駆体を得ることができる。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のポリイミド樹脂の製造方法は、ジヒドロピラン誘導体組成物製造工程、ポリイミド前駆体組成物製造工程、およびポリイミド樹脂製造工程を備える。
ジヒドロピラン誘導体組成物製造工程において、ジヒドロピラン誘導体と水性媒体とを含有するジヒドロピラン誘導体組成物が製造され、ポリイミド前駆体組成物製造工程において、ジヒドロピラン誘導体組成物とポリアミンと水性媒体とを含有するポリイミド前駆体組成物が製造される。
1.ジヒドロピラン誘導体組成物製造工程
ジヒドロピラン誘導体組成物製造工程は、ジヒドロピラン化合物と、テトラカルボン酸と、水性媒体とを混合し、撹拌してジヒドロピラン誘導体の水性組成物(ジヒドロピラン誘導体組成物)を製造する工程である。
〈ジヒドロピラン化合物およびテトラカルボン酸〉
ジヒドロピラン誘導体組成物製造工程において使用されるジヒドロピラン化合物は下記式(A)で表されるものであり、テトラカルボン酸は下記式(B)で表されるものである。
式(A)中、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基であり、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに結合して環状構造を示していてもよい。R、R、R、RおよびRは、ジヒドロピラン化合物に依存して定まる。
1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基等が挙げられる。これらの中でもアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基から選択されるC1−3アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。これら1価の有機基は、任意の水素原子がハロゲン原子や水酸基によって置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。しかし、これらに限定されるものではない。
上記1価の有機基からは、アミノ基またはカルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。アミノ基と反応性を有する基としては、例えば、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、カルボニル基、アルデヒド基、ハロゲノカルボニル基等が挙げられるがこれらに限定されない。また、カルボキシ基と反応性を有する基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ビニルオキシ基等が挙げられるがこれらに限定されない。
ジヒドロピラン化合物としては、具体的には、例えば、1−ジヒドロピラン(2,3−ジヒドロピラン)、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−エタノール、2,3−ジメチルジヒドロピラン、プソラレン、アングリシン等が挙げられる。これらの中でも、1−ジヒドロピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−エタノールまたは2,3−ジメチルジヒドロピランが好ましく、3,4−ジヒドロ−2H−ピランまたは3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−エタノールがより好ましい。
ジヒドロピラン化合物は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
式(B)中、Xは4価の有機基である。Xはテトラカルボン酸に依存して定まる。
4価の有機基としては、例えば、エチレン、プロパン等の鎖式炭化水素を基本骨格に有する化合物、シクロヘキサン等の環式炭化水素を基本骨格に有する化合物、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素を基本骨格に有する化合物、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン骨格を有する化合物、ジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル骨格を有する化合物、ジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン骨格を有する化合物、ビフェニル等のビフェニル骨格を有する化合物などから任意の4個の水素原子を除去した基が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。
上記4価の有機基からは、アミノ基と反応性を有する基を含むものを除く。アミノ基と反応性を有する基としては、例えば、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、カルボニル基、アルデヒド基、ハロゲノカルボニル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
テトラカルボン酸としては、具体的には、例えば、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸(メロファン酸)、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド等が挙げられる。
テトラカルボン酸としては、ポリイミド前駆体組成物を乾燥、硬化させて得られるポリイミド樹脂の耐熱性、線熱膨張係数などの観点から、芳香族テトラカルボン酸が好ましく、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸(メロファン酸)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、またはビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルが好ましい。
テトラカルボン酸としては、ヘミアセタールエステル結合の安定性の観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、またはビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルが好ましい。
テトラカルボン酸は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
〈水性媒体〉
水性媒体は水を主成分とする媒体である。水は、イオン交換水、蒸留水、脱イオン蒸留水、RO水等を使用することができる。ここで、水を主成分とするとは、水を60質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上含むことをいう。
水性媒体を使用することにより、環境負荷を低減することができる。
水性媒体には、基材への濡れ性の付与、防腐効果を目的に、環境負荷が小さく水の揮発性、乾燥性に悪影響を与えない公知のアルコールまたはエーテルが含まれていてもよい。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
これらのアルコールまたはエーテルは、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
水性媒体にアルコールを添加する場合の水性媒体中のアルコールの比率は、1質量%以上40質量%以下とすることが好ましく、5質量%以上25質量%以下とすることがより好ましい。アルコールの比率が1質量%以上であると、塗工組成物の基材に対する濡れ性の改善効果が発揮され基材上で塗工組成物のハジキが抑制される。また、アルコールの比率が40質量%以下であると、ポリイミド前駆体組成物に結晶が析出したりせず、塗工組成物を基材上に膜状に配することが容易でとなる。アルコールの比率が1質量%未満であると、アルコールを添加することによる改善効果が不十分となり、所望の効果が得られない。また、アルコールの比率が40質量%超であると、ポリイミド前駆体組成物に結晶が析出することがあり、塗工組成物を基材上に膜状に配することが困難となるおそれがある。
〈ジヒドロピラン誘導体組成物の製造方法〉
ジヒドロピラン化合物と、テトラカルボン酸と、水性媒体とを混合し、撹拌することにより、ジヒドロピラン誘導体の水性組成物を製造する。
この方法によれば、環境負荷の高い有機溶媒を使用する必要がなく、しかも水性媒体中でジヒドロピラン化合物とテトラカルボン酸とが反応してジヒドロピラン誘導体の水性組成物を得ることができるため、反応生成物であるジヒドロピラン誘導体を回収して水性媒体中に混合する必要がなく、工程数を削減できる。
ジヒドロピラン化合物のモル数は、通常、テトラカルボン酸のモル数に対し、0.5〜4倍のモル数とするのが好ましく、さらには、1〜2倍のモル数とするのが好ましい。
ジヒドロピラン化合物と、テトラカルボン酸と、水性媒体とを混合する方法は特に限定されず、例えば、ジヒドロピラン化合物と水性媒体とを含有する水性組成物と、テトラカルボン酸と水性媒体とを含有する水性組成物とを混合し、撹拌する方法、テトラカルボン酸と水性媒体とを含有する水性組成物にジヒドロピラン化合物を添加し、撹拌する方法、ジヒドロピラン化合物と水性媒体とを含有する水性組成物にテトラカルボン酸を添加し、撹拌する方法などが挙げられる。
混合および撹拌をする際の温度(反応温度)は、付加反応を行うことができる温度であれば特に限定されないが、5〜45℃が好ましく、20〜30℃がより好ましく、約25℃がさらに好ましい。
撹拌時間は、付加反応が十分に行われる時間であれば特に限定されないが、30分間〜6時間が好ましく、1時間〜3時間がより好ましく、約2時間がさらに好ましい。
ジヒドロピラン誘導体組成物の製造の際の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、窒素雰囲気、不活性ガス雰囲気等の雰囲気を用いることができる。
また、ジヒドロピラン誘導体組成物を製造するための形式は、連続式であってもよいし、バッチ式であってもよい。
〈触媒〉
ジヒドロピラン化合物と、テトラカルボン酸と、水性媒体とを混合した混合液中には、さらに、ジヒドロピラン化合物とテトラカルボン酸との反応を促進するための触媒を含有してもよい。
ジヒドロピラン化合物とテトラカルボン酸との反応を促進するための触媒としては、例えば、ジヒドロピラン化合物の五員環の二重結合とテトラカルボン酸のカルボキシ基との付加反応を促進するための触媒が挙げられる。このような触媒は、特に限定されないが、具体例としては、カルボン酸より酸性度の高い四塩化チタン、四塩化錫などのエノール形成を促すものを挙げることができる。
触媒は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
〈ジヒドロピラン誘導体組成物〉
上述したジヒドロピラン誘導体組成物の製造方法により、下記式(1)で表されるジヒドロピラン誘導体と水性媒体とを含有するジヒドロピラン誘導体組成物が製造される。
式(1)中、R、R、R、RおよびRは、それぞれ、式(A)におけるR、R、R、RおよびRと同義であり、Xは、式(B)におけるXと同義である。
ジヒドロピラン誘導体組成物は、式(1)で表されるジヒドロピラン誘導体および水性媒体の他に、未反応のジヒドロピラン化合物やテトラカルボン酸、テトラカルボン酸1分子に対してジヒドロピラン化合物が2〜4分子付加したジヒドロピラン誘導体などが含有されていてもよい。
2.ポリイミド前駆体組成物製造工程
ポリイミド前駆体組成物製造工程は、ジヒドロピラン誘導体と、ポリアミンと、水性媒体とを混合し、撹拌してポリイミド前駆体の水性組成物(ポリイミド前駆体組成物)を製造する工程である。
〈ジヒドロピラン誘導体/水性媒体〉
ジヒドロピラン誘導体は、ジヒドロピラン誘導体組成物製造工程で合成されたものであり、水性媒体中で反応を行った場合には、水性組成物となっている。
水性媒体は、前述したものである。
〈ポリアミン〉
ポリイミド前駆体組成物製造工程において使用されるポリアミンは下記式(C)で表されるものである。
式(C)中、Yはm価の有機基であり、mは2以上の整数である。mの上限値は特に限定されないが、好ましくは2000、より好ましくは600である。Yおよびmは、ポリアミンに依存して定まる。
m価の有機基としては、例えば、エチレン、プロパン等の鎖式炭化水素を基本骨格に有する化合物、シクロヘキサン等の環式炭化水素を基本骨格に有する化合物、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素を基本骨格に有する化合物、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン骨格を有する化合物、ジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル骨格を有する化合物、ジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン骨格を有する化合物、ビフェニル等のビフェニル骨格を有する化合物などから任意のm個の水素原子を除去した基などが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。
上記m価の有機基からは、カルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。カルボキシ基と反応性を有する基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ビニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリアミンとしては、具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス[2−(アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロポキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。
ポリアミンとしては、また、上記したポリアミンの芳香環上の水素原子の一部または全部をフッ素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基およびトリフルオロメトキシ基からなる群から選択される置換基で置換したポリアミンを使用することもできる。
ポリアミンとしては、上記したポリアミンのほか、1分子中に2個以上の第一級アミノ基を有するポリマーを使用してもよい。このようなポリアミンとしては、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド等の主鎖または側鎖が2個以上の第一級アミノ基により修飾されたものが挙げられる。より具体的には、ポリマー側鎖のカルボキシ基とエチレンイミンとの反応性を利用して、アクリル酸系コポリマーの側鎖にポリエチレンイミンをグラフトした第一級アミノ基含有アクリル系ポリマー、テトラカルボン酸二無水物を過剰量のジアミンやトリアミンで伸長したポリアミック酸樹脂、ウレタンプレポリマーを過剰量のジアミンやトリアミンで伸長したポリウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂を過剰量のジアミンやトリアミンで伸長した変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記1分子中に2個以上の第一級アミノ基を有するポリマーからは、第一級アミノ基以外にカルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。カルボキシ基と反応性を有する基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ビニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリアミンには、さらに目的に応じ、ポリイミド生成後に架橋反応を行う際の架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ポリアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
ポリアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、最終的に得られるポリイミドは低膨張率となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。また、ポリアミンのようなデンドリマーを用いてもよい。
さらに、ポリアミンとして、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接又は置換基の一部として結合しているポリアミンが挙げられ、具体例としては、ベンジジン、トルイジン等が挙げられる。
さらに、ポリアミンとして、ベンゼン環に置換基を有するポリアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
一方、ポリアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有する化合物を用いると、最終的に得られる樹脂組成物の弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させることができる。
ここで、選択されるポリアミンは耐熱性の観点より芳香族ポリアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
なお、ポリアミンはハロゲン化水素酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩等の塩を形成していてもよい。
ポリアミンは、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアミンとしては、例えば、水溶性を示すアミノエチル化アクリルポリマー等を使用することができる。
〈ポリイミド前駆体組成物の製造方法〉
ジヒドロピラン誘導体と、ポリアミンと、水性媒体とを混合し、撹拌することにより、ポリイミド前駆体の水性組成物を製造する。
この方法によれば、ジヒドロピラン誘導体組成物の製造方法と同様に、環境負荷の高い有機溶媒を使用する必要がなく、しかも工程数を削減できる。
ジヒドロピラン誘導体と、ポリアミンと、水性媒体とを混合する方法は特に限定されず、例えば、ジヒドロピラン誘導体と水性媒体とを含有する水性組成物と、ポリアミンと水性媒体とを含有する水性組成物とを混合し、撹拌する方法、ジヒドロピラン誘導体と水性媒体とを含有する水性組成物にポリアミンを添加し、撹拌する方法などが挙げられる。
混合および撹拌をする際の温度は、特に限定されないが、5〜45℃が好ましく、20〜30℃がより好ましく、約25℃がさらに好ましい。
撹拌時間は、特に限定されないが、30分間〜6時間が好ましく、1時間〜3時間がより好ましく、約2時間がさらに好ましい。
ポリイミド前駆体組成物の製造の際の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、窒素雰囲気、不活性ガス雰囲気等の雰囲気を用いることができる。
また、ポリイミド前駆体組成物を製造するための形式は、連続式であってもよいし、バッチ式であってもよい。
〈ポリイミド前駆体組成物〉
本発明のポリイミド前駆体組成物は、上記式(1)で表されるジヒドロピラン誘導体と上記式(C)で表されるポリアミンと水性媒体とを含有するものである。本発明のポリイミド前駆体組成物は、これらの混合物であってもよく、カルボキシラートとアンモニウムを対とした下記式(2)のような塩構造であってもよい。
(揮発性アミン)
ポリイミド前駆体組成物は、水中での組成物の安定性を補う目的で、少量の揮発性アミンを含有していてもよい。
このような揮発性アミンは、ジヒドロピラン化合物とテトラカルボン酸との付加反応に使用されないカルボキシ基のモル数を越えない量とするのが望ましく、例えばアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどが好ましい。
揮発性アミンは、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
(その他含有してもよい成分)
ポリイミド前駆体組成物は、必要に応じてさらに補強材、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、スコーチ防止剤、他の架橋遅延剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤、界面活性剤などの添加剤を配合することができる。
さらに、ポリイミド前駆体組成物の特性を損なわない限り、他の高分子・エラストマーなどの樹脂成分を必要に応じて配合することもできる。
本発明のポリイミド前駆体組成物においては、前記各成分を、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、撹拌混合などの適宜の混合方法により配合することによって調製することができる。
(有機溶媒)
ポリイミド前駆体組成物は、水性媒体に含まれるアルコール、エーテル等の有機溶媒、揮発性アミンに含まれる有機溶媒、および不可避的に混入する微量の有機溶媒を除き、有機溶媒を実質的に含有しない。このような有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタム、アセトン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の環境負荷の高い有機溶媒が挙げられる。
(ポリイミド前駆体組成物の粘度)
本発明に係るポリイミド前駆体組成物の粘度は、塗工性を損なわない範囲内であれば特に限定されるものではないが、20℃における粘度は50mPa・s以上200Pa・s以下の範囲に、22℃における粘度は10mPa・s以上200Pa・s以下の範囲に調製することが、実用上好適である。
3.ポリイミド樹脂製造工程
ポリイミド樹脂製造工程は、ポリイミド前駆体と水性媒体とを含有するポリイミド前駆体組成物を加熱処理して、硬化させ、ポリイミド樹脂を製造する工程である。
〈ポリイミド前駆体/水性媒体〉
ポリイミド前駆体は、ポリイミド前駆体組成物製造工程で得られたものであり、水性媒体中で混合、撹拌を行った場合には、水性組成物となっている。
水性媒体は、前述したものである。ポリイミド前駆体組成物製造工程で製造したポリイミド前駆体組成物が含有する水性媒体であってもよい。
〈加熱処理/硬化〉
加熱処理により、ポリイミド前駆体組成物の乾燥、ジヒドロピラン誘導体のカルボキシ基の脱保護(すなわち、ジヒドロピラン誘導体からのジヒドロピラン化合物の脱離)およびテトラカルボン酸とポリアミンのイミド化(ポリアミド酸生成と脱水閉環によるポリイミド生成)による硬化を行う。
加熱処理は、ポリイミド前駆体組成物の乾燥を行う段階と、ジヒドロピラン誘導体のカルボキシ基の脱保護、およびテトラカルボン酸とポリアミンのイミド化(ポリアミド酸生成と脱水閉環によるポリイミド生成)による硬化を行う段階の2段階、またはポリイミド前駆体組成物の乾燥を行う段階と、ジヒドロピラン誘導体のカルボキシ基の脱保護を行う段階と、テトラカルボン酸とポリアミンのイミド化(脱水閉環)による硬化を行う段階の3段階とすることが好ましい。
ポリイミド前駆体組成物の乾燥を行う段階では、加熱温度は、通常80℃以上であり、80〜100℃が好ましい。加熱時間は数分〜1時間が好ましく、15分間〜45分間がより好ましい。乾燥を行うことにより、組成物の成形性を高めることができる。
ジヒドロピラン誘導体のカルボキシ基の脱保護を行う段階では、加熱温度は、170℃以上200℃未満が好ましい。加熱時間は数分〜1時間が好ましく、15分間〜45分間がより好ましい。
ジヒドロピラン誘導体のカルボキシ基の脱保護とテトラカルボン酸とポリアミンのイミド化(脱水閉環)による硬化とを行う段階、またはテトラカルボン酸とポリアミンのイミド化(脱水閉環)による硬化を行う段階では、200〜400℃が好ましい。加熱時間は数分〜数時間が好ましく、10〜50分間がより好ましい。
加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などの適宜の方法を採用することができるが、通常、所定形状でプレス加熱して反応させたのち、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などによりさらに反応させる。
本発明は、ジヒドロピラン化合物とカルボキシ基との反応によって形成されるヘミアセタールエステル結合を介して保護基が導入されたジヒドロピラン誘導体とポリアミンをポリイミド原料として使用することにより、貯蔵安定性を向上させる点、およびこれらを加熱することにより、ジヒドロピラン誘導体のカルボキシ基の脱保護(すなわち、ジヒドロピラン誘導体からのジヒドロピラン化合物の脱離)およびテトラカルボン酸とポリアミンのイミド化(脱水閉環:すなわち、ポリアミド酸生成後のポリイミド生成)による硬化を行い最終的に、ジヒドロピラン化合物が脱離したポリイミド樹脂を得る点に特徴がある。
本発明の製造方法により製造されるポリイミド樹脂は、例えば自動車などの輸送機械、一般機器・装置、電子・電気、建築などの幅広い分野において、シール材、緩衝・保護材、電線被覆材、工業用ベルト類、ホース類、シート類などとして有用である。
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(1)ポリイミド前駆体組成物の製造
撹拌機を備えたセパラブルフラスコ(200mL;筒型)に、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(11.1g)および水(45.1g)を加え、25℃にて10分間撹拌混合した後、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(4.6g)を加え、さらに25℃にて30分間撹拌混合し、ジヒドロピラン誘導体の水分散液を得た。
得られたジヒドロピラン誘導体の水分散液に、スチレンアクリル型ポリアミン(日本触媒社製,ポリメント(R)NK−200PM;不揮発残分 56質量%,アミン価 2.55mmol/g−solid;m=60)(71.6g)を加え、25℃にて2時間撹拌混合し、ポリイミド前駆体の水分散液(ポリイミド前駆体組成物)を得た。
(2)粘度測定
得られたポリイミド前駆体組成物の製造直後の22℃における粘度を、E型粘度計(東機産業株式会社製,型番TV−22)を用いて測定した。
測定結果を表1の「初期粘度(22℃)」の欄に示す。
(3)貯蔵安定性試験
製造直後のポリイミド前駆体組成物(30.0g)をガラス瓶に採取し、直ちに25℃の恒温室内に静置した。静置した日から起算して1日後、3日後、および7日後に、22℃における粘度を測定するとともに、目視により外観を観察した。
粘度の測定結果を表2の「貯蔵安定性(25℃)」の「粘度(22℃)」の欄に、外観の観察結果を表2の「貯蔵安定性(25℃)」の「外観(目視)」の欄に、それぞれ示す。
(4)耐溶剤性試験
製造直後のポリイミド前駆体組成物をガラス瓶に採取し、直ちに25℃の恒温室内に静置した。静置した日から起算して1日後、3日後、および7日後のポリイミド前駆体組成物を使用して、以下の手順により硬化膜付きガラス基材を作製し、耐溶剤性試験を行った。
ガラス基材の一方の表面上に、ポリイミド前駆体組成物を、乾燥塗膜の厚みが40μmとなるように塗布した。塗布後、ホットプレートを用いて、90℃にて30分間の加熱処理を行った後、恒温乾燥炉を使用して、250℃にて30分間の加熱処理行い、ガラス基材の一方の表面上にポリイミド樹脂からなる硬化膜を形成した。
硬化膜の表面を、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)を含ませた布でラビングし、硬化膜の耐溶剤性を以下の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表3の「耐溶剤性試験」の欄に示す。
(評価基準)
A:変化なし
B:硬化膜に膨潤や浸食が発生している
C:ガラス基材の少なくとも一部が剥き出しになっている、または塗工不良である
(5)耐水性試験(熱水含浸試験)
製造直後のポリイミド前駆体組成物をガラス瓶に採取し、直ちに25℃の恒温室内に静置した。静置した日から起算して1日後、3日後、および7日後のポリイミド前駆体組成物を使用して、以下の手順により硬化膜付きガラス基材を作製し、耐水性試験を行った。
ガラス基材の一方の表面上に、ポリイミド前駆体組成物を、乾燥塗膜の厚みが40μmとなるように塗布した。塗布後、ホットプレートを用いて、90℃にて30分間の加熱処理を行った後、恒温乾燥炉を使用して、250℃にて30分間の加熱処理行い、ガラス基材の一方の表面上にポリイミド樹脂からなる硬化膜を形成した。
硬化膜を形成したガラス基材を90℃の熱水に浸して10分間放置した後、硬化膜を目視にて観察し、硬化膜の耐水性を以下の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表3の「耐水性試験」の欄に示す。
(評価基準)
A:変化なし
B:硬化膜に白化または膨潤が発生している
C:ガラス基材の少なくとも一部が剥き出しになっている、または塗工不良である
[実施例2]
(1)ポリイミド前駆体の製造
攪拌機を備えたセパラブルフラスコ(200mL;筒型)に、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(11.1g)および水(45.2g)を加え、25℃にて10分間撹拌混合した後、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−メタノール(4.8g)を加え、さらに25℃にて30分間撹拌混合し、ベンゾフラン誘導体の水分散液を得た。
得られたベンゾフラン誘導体の水分散液に、スチレンアクリル型ポリアミン(日本触媒社製,ポリメント(R)NK−200PM;不揮発分 56質量%,アミン価 2.55mmol/g−solid;m=60)(71.6g)を加え、25℃にて2時間撹拌混合し、ポリイミド前駆体の水分散液(ポリイミド前駆体組成物)を得た。
(2)粘度測定、貯蔵安定性試験、耐溶剤性試験、耐水性試験
得られたポリイミド前駆体組成物を用いて、実施例1と同様にして、粘度測定、貯蔵安定性試験、耐溶剤性試験、耐水性試験を行った。結果を表1、表2、表3に示す。
[比較例1]
(1)撹拌機を備えたセパラブルフラスコ(200mL;筒型)に、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(11.1g)および水(50.0g)を加え、25℃にて10分間撹拌混合した後、スチレンアクリル型ポリアミン(日本触媒社製,ポリメント(R)NK−200PM;不揮発残分 56%,アミン価 2.55mmol/g−solid;m=60)(71.6g)を加え、25℃にて2時間撹拌混合し、ポリイミド前駆体の水分散液(ポリイミド前駆体組成物)を得た。
(2)粘度測定、貯蔵安定性試験、耐溶剤性試験、耐水性試験
得られたポリイミド前駆体組成物は流動性を失っていたため、粘度測定、貯蔵安定性試験、耐溶剤性試験、および耐水性試験のいずれも行わなかった。
[比較例2]
(1)ポリイミド前駆体組成物
撹拌機を備えたセパラブルフラスコ(200mL;筒型)に、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(11.1g)および水(45.9g)を加え、25℃にて10分間撹拌混合した後、ブチルビニルエーテル(4.1g)を加え、さらに25℃にて30分間撹拌混合し、ブチルビニルエーテル誘導体の水分散液を得た。
得られたブチルビニルエーテル誘導体の水分散液に、スチレンアクリル型ポリアミン(日本触媒社製,ポリメント(R)NK−200PM;不揮発残分 56質量%,アミン価 2.55mmol/g−solid;m=60)(71.6g)を加え、25℃にて2時間撹拌混合し、ポリイミド前駆体の水分散液(ポリイミド前駆体組成物)を得た。
(2)粘度測定および貯蔵安定性試験
得られたポリイミド前駆体組成物を用いて、実施例1と同様にして粘度測定および貯蔵安定性試験を行った。ただし、貯蔵安定性試験の恒温室内静置後7日目に、ポリイミド前駆体組成物がゲル化したため、粘度測定を行うことができなかった。
得られたポリイミド前駆体組成物の製造直後の粘度の測定結果を表1の「初期粘度(22℃)」の欄に、貯蔵安定試験における粘度の測定結果を表2の「貯蔵安定性(25℃)」の「粘度(22℃)」の欄に、外観の観察結果を表2の「貯蔵安定性(25℃)」の「外観(目視)」の欄に、それぞれ示す。
(3)耐溶剤性試験および耐水性試験
得られたポリイミド前駆体組成物を用いて、実施例1と同様にして耐溶剤性試験および耐水性試験を行った。耐溶剤性の評価結果を表3の「耐溶剤性試験」の欄に、耐水性の評価結果を表3の「耐水性試験」の欄に、それぞれ示す。
[比較例3]
(1)ポリイミド前駆体の製造
(1)ポリイミド前駆体の製造
攪拌機を備えたセパラブルフラスコ(200mL;筒型)に、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(11.1g)およびN−メチル−2−ピロリドン(50.0g)を加え、25℃にて10分間撹拌混合した後、スチレンアクリル型ポリアミン(日本触媒社製,ポリメント(R)NK−200PM;不揮発分 56質量%,アミン価 2.55mmol/g−solid;m=60)(71.6g)を加え、25℃にて2時間撹拌混合し、ポリイミド前駆体のN−メチル−2−ピロリドン溶液(ポリイミド前駆体組成物)を得た。
(2)粘度測定、貯蔵安定性試験、耐溶剤性試験、耐水性試験
得られたポリイミド前駆体組成物を用いて、実施例1と同様にして、粘度測定、貯蔵安定性試験、耐溶剤性試験、耐水性試験を行った。結果を表1、表2、表3に示す。
本発明のポリイミド前駆体組成物は低粘度で塗工性に優れている。
比較例2の、ジヒドロピラン化合物ではなく、ビニルエーテル化合物を付加したポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物も低粘度で塗工性に優れている。
本発明のポリイミド前駆体組成物は、貯蔵安定性に優れ、製造後期間を経過しても低粘度で塗工性が損なわれていない。
一方、比較例2の、ジヒドロピラン化合物ではなく、ビニルエーテル化合物を付加したポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物は、貯蔵安定性に劣り、初期粘度は低く塗工性に優れるものの、製造後期間を経過すると、外観が変化するとともに、粘度が上昇し、塗工性が損なわれる。
実施例1および実施例2のポリイミド前駆体組成物は、貯蔵安定性に優れ、製造後期間を経過しても、加熱処理して得られたポリイミド樹脂は、耐溶剤性および耐水性に優れる。
一方、比較例2の、ジヒドロピラン化合物ではなく、ビニルエーテル化合物を付加したポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物は、貯蔵安定性に劣り、製造後期間を経過すると、加熱処理して得られたポリイミド樹脂は、耐溶剤性および耐水性が劣っている。
また、比較例3の、ポリイミド前駆体の水分散液ではなく、N−メチル−2−ピロリドン溶液としたポリイミド前駆体組成物は、調製3日後には結晶が析出してしまい、使用に耐えられなくなるが、調製1日後の組成物を加熱処理して得られたポリイミド樹脂は、耐溶剤性および耐水性に優れる。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表されるジヒドロピラン誘導体と水性媒体とを含有するジヒドロピラン誘導体組成物。
    [式(1)中、Xは4価の有機基(アミノ基と反応性を有する基を含むものを除く。)であり、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基(アミノ基またはカルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。)である。R、R、RおよびRは、それぞれ互いに結合して環状構造を示していてもよい。]
  2. 下記式(1)で表されるジヒドロピラン誘導体と、下記式(C)で表されるポリアミンと、水性媒体とを含有するポリイミド前駆体組成物。
    [式(1)中、Xは4価の有機基(アミノ基と反応性を有する基を含むものを除く。)であり、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基(アミノ基またはカルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。)である。R、R、RおよびRは、それぞれ互いに結合して環状構造を示していてもよい。式(C)中、Yはm価の有機基(カルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。)であり、mは2以上の整数である。]
  3. 下記式(A)で表されるジヒドロピラン化合物と、下記式(B)で表されるテトラカルボン酸と、水性媒体とを混合し、撹拌するジヒドロピラン誘導体組成物製造工程、
    前記ジヒドロピラン誘導体組成物製造工程で得られたジヒドロピラン誘導体と、下記式(C)で表されるポリアミンと、水性媒体とを混合し、撹拌するポリイミド前駆体組成物製造工程、および
    前記ポリイミド前駆体製造工程で得られたポリイミド前駆体組成物と水性媒体とを含有するポリイミド前駆体組成物を加熱処理して、硬化させるポリイミド樹脂製造工程
    を備えるポリイミド樹脂の製造方法。
    [式(A)中、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基(アミノ基またはカルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。)であり、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに結合して環状構造を示していてもよい。式(B)中、Xは4価の有機基(アミノ基と反応性を有する基を含むものを除く。)である。式(C)中、Yはm価の有機基(カルボキシ基と反応性を有する基を含むものを除く。)であり、mは2以上の整数である。]
  4. 請求項3に記載の製造方法によって得られるポリイミド樹脂。
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