JP2015138707A - リチウム二次電池及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】リチウム二次電池の出入力特性及び寿命特性の向上を両立させるリチウム二次電池及びその製造方法を提供すること。【解決手段】リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離し得る活物質(1)を含有する正極及び負極と、正極及び負極の間に設けられたセパレータと、非水電解液とを有するリチウム二次電池であって、負極は、負極集電体(1)と、負極集電体の表面上に形成された活物質からなる負極活物質層(6)とを備え、負極活物質は炭素材料から構成されており、アルゴンレーザーラマンスペクトルにおける1570〜1620cm−1のピークの高さ強度(G)に対する1350〜1370cm−1のピークの高さ強度(D)の比であるR値(D/G)の割合は、(セパレータ側である負極活物質層表面のR値)/(集電体側である負極活物質層内部のR値)<1.0であること。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム二次電池及びその製造方法に関する。
リチウム二次電池は既存の電池に比べ、小型、軽量かつ高エネルギー密度であって、出力密度に優れる。このため、近年、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や、ハイブリッド車両等の車両駆動用電源として好ましく用いられている。そして、このようなリチウム二次電池においては、更なる高エネルギー密度や高出力密度を目指し、その正極及び負極における活物質の研究が種々なされている。
例えば特許文献1では、負極活物質層において、リチウムとの反応開始電圧が最も貴な第1負極活物質を含む第1負極活物質層と、リチウムとの反応開始電圧が第1負極活物質よりも卑な第2負極活物質を含む第2負極活物質層とを設けることが開示されている。これにより、まず第1負極活物質との反応によってジュール熱を発生させ、次にこの熱により第1負極活物質よりも卑な第2負極活物質を適切に反応させることにより、低温環境下においてもリチウム二次電池の電池容量を向上させている。
しかしながら、特許文献1は、負極活物質として電位の貴な材料を用いているため、電圧低下を招き、エネルギー密度の低下といった問題が存在する。また、放電末期には負極集電体付近の第1負極活物質層からの放電となるため、正極へのリチウムイオンの拡散距離が長くなってしまい、出力特性が低下するという問題も存在してしまう。
特開2010−20912号公報
ところで、リチウム二次電池の初期充放電処理の際には、非水電解質の一部が負極にて還元分解され、負極活物質の表面にSEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜が形成されることが知られている。かかるSEI被膜の形成によりそれ以降の非水電解質の分解を抑制し得るため、所定量の被膜の形成は電池特性の劣化や過充電等を抑制し電池性能(例えばサイクル特性等)を向上させることができる。しかし、上記反応によって消費される電荷担体は不可逆容量となるため、かかる被膜の形成が電池容量低下の原因ともなり得る。そこで、非水電解液中にあらかじめ非水電解液の分解電位以下で分解して負極活物質の表面に被膜を形成し得る添加剤を添加しておくことにより、負極活物質の表面に安定的な被膜を形成させる手法が広く用いられている。
本発明者らは、このSEI被膜の特性に着目し鋭意検討を行った結果、非水電解液に接する側の負極活物質層表面の負極活物質に形成されるSEI被膜を、集電体側の負極活物質層内部の負極活物質に形成されるSEI被膜よりも薄く制御することで、電池反応性を向上させつつ、寿命向上を図ることを見い出した。
すなわち、本発明の目的とするところは、リチウム二次電池の出入力特性及び寿命特性の向上を両立させるリチウム二次電池及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のリチウム二次電池は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離し得る活物質を含有する正極及び負極と、正極及び負極の間に設けられたセパレータと、非水電解液とを有するリチウム二次電池であって、負極は、負極集電体と、負極集電体の表面上に形成された活物質からなる負極活物質層とを備え、負極活物質は炭素材料から構成されており、アルゴンレーザーラマンスペクトルにおける1570〜1620cm-1のピークの高さ強度(G)に対する1350〜1370cm-1のピークの高さ強度(D)の比であるR値(D/G)の割合は、(セパレータ側である負極活物質層表面のR値)/(集電体側である負極活物質層内部のR値)<1.0であることを特徴とする。
本発明のリチウム二次電池において、負極活物質層表面のSEI被膜は、異なる2種以上の添加剤を非水電解液に注入する等の方法により、負極活物質層内部のSEI被膜より薄くできる。負極活物質層表面と内部におけるSEI被膜の厚さの相違は、負極活物質層表面におけるアルゴンレーザーラマンスペクトルのR値(R1)と負極活物質層内部のアルゴンレーザーラマンスペクトルのR値(R2)との割合において確認することができる。すなわち、R1/R2<1.0である本発明のリチウム二次電池において、負極活物質層表面のSEI被膜は負極活物質層内部のSEI被膜より薄くなっていることがわかる。
負極活物質層の表面は、非水電解液に近いためリチウムイオンの授受に与える影響が大きい。そのため、集電体に近い内部よりも電池反応への寄与が大きい。そこで、負極活物質層表面ではSEI被膜を内部よりも相対的に薄くすることにより出力特性を向上できる。
一方、負極活物質層内部は、負極活物質層全体の安定性、すなわち電池寿命に寄与する割合が表面よりも大きい。そこで、負極活物質層内部ではSEI被膜を表面よりも相対的に厚くする。これにより、集電体に近い内部の負極活物質層が、相対的に厚いSEI被膜を形成することにより安定して存在することができる。従って、負極活物質層内部から表面側に向けての導電パスや形態の維持が可能になり、電池寿命が向上する。
ここで、本明細書におけるSEI被膜が「厚い」「薄い」とは、前述のR値の大小に対応する。つまり、R値が相対的に大きいことを「SEI被膜が厚い」、小さいことを「SEI被膜が薄い」と称する。R値が大きい場合には炭素材料から構成される負極活物質が、表面に形成されたSEI被膜により覆われている程度が高いことを意味する。SEI被膜が厚い、密度が高いなどの場合にR値が大きくなるが、以下「SEI被膜が厚い」と記載する。
さらに、本発明の構成によれば、負極活物質層表面の抵抗は低くなる。これは、負極活物質層の表面におけるSEI被膜を薄く制御することに起因する。一般に、エネルギー密度を向上させるために、負極活物質層を厚くし活物質を多く充填する方法が採用されている。しかし、負極活物質層を厚くすることにより、Liイオンの拡散距離が大きくなってしまい、すなわち、抵抗が高くなってしまうこともある。このように負極活物質層を厚くした場合においても、本発明の負極活物質層表面の抵抗は低く制御することができるため、エネルギー密度を良好に向上させることもできる。
また、本発明のリチウム二次電池の製造方法は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離し得る活物質を含有する正極及び負極と、正極及び負極の間に設けられたセパレータと、非水電解液とを準備する準備工程と、正極と負極とセパレータとを非水電解液に浸漬させる電解液浸漬工程と、リチウム二次電池を充電する充電工程とを有し、充電工程は、非水電解液に第1添加剤を混合した第1混合液を充電する第1充電工程と、第1充電工程後、非水電解液に第2添加剤を混合した第2混合液を充電する第2充電工程とを備えることを特徴とする。
本発明のリチウム二次電池の製造方法において、充電工程は、非水電解液に第1添加剤を混合した第1混合液を充電する第1充電工程と、第1充電工程後、非水電解液に第2添加剤を混合した第2混合液を充電する第2充電工程との2段階充電の製造工程を備えることが望ましい。このように、2段階充電工程を備えることにより、電池反応に寄与する負極活物質層表面はリチウムイオンの出入力特性向上に貢献でき、一方、負極活物質層内部は寿命特性の向上に貢献することができる負極活物質層を有するリチウム二次電池を製造することができる。
本発明のリチウム二次電池における負極を模式的に示した断面図である。 実施例1における負極活物質層表面のXPS測定を示す図である。 コイン型のリチウム二次電池の構成を示した図である。
以下、本発明の実施形態に係るリチウム二次電池及びその製造方法について、図1〜図3を参照して詳しく説明する。本明細書において「リチウム二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。一般にリチウムイオン電池(もしくはリチウムイオン二次電池)、リチウムポリマー電池、リチウム−空気電池、リチウム−硫黄電池等と称される二次電池は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含され得る。また、本明細書において「活物質」とは、正極側又は負極側において蓄電に関与する物質(化合物)をいう。すなわち、電池の充放電時において電子の吸蔵および放出に関与する物質をいう。
なお、本発明におけるリチウム二次電池及びその製造方法は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できる。
[リチウム二次電池]
(負極)
負極は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離し得る負極活物質と、必要に応じて混合される導電材及び結着材を含む負極合材を適切な溶媒に懸濁させて混合し、スラリーとしたものを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥することで作製することができる。
負極活物質は、炭素材料から構成されている。炭素材料は難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、黒鉛(グラファイト)等が用いられ得るが、特に黒鉛が好ましい。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズを始めとして、ピッチ系、ポリアクリロニトリル系、メソフェーズピッチ系、気相成長系の黒鉛化炭素繊維を粉末状に加工したものも用いることができる。また、単体でも、これら二種以上を混合して用いてもよい。
負極活物質の炭素材料は、表面が改質処理されている表面改質黒鉛とすることが望ましい。炭素材料表面を改質処理することにより、炭素材料表面は電解液に濡れやすくなり、良好なSEI被膜を生成することができる。ゆえに、高温サイクル特性やエネルギー密度が向上する。負極活物質である炭素材料表面の改質方法は、フッ素処理、酸処理、アルカリ処理、プラズマ処理等、特に限定されない。
導電材は、通常リチウム二次電池に用いられるものであれば特に限定されず、必要に応じて混合される。例えば、炭素材料、金属粉、導電性ポリマー等を用いることができる。導電性と安定性の観点から、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック等の炭素材料を使用することが好ましい。
結着材は、通常リチウム二次電池に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素樹脂共重合体(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体等)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル系ゴム、フッ素系ゴム、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン・マレイン酸樹脂、ポリアクリル酸塩、カルボキシルメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。
負極活物質等が分散する溶媒は、通常結着材を溶解する有機溶剤が使用される。例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、水に分散剤、増粘剤などを加えてPTFEなどで活物質をスラリー化する場合もある。
集電体は、通常リチウム二次電池に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等のように導電性の良い金属を主体に構成された部材を使用することができる。集電体の形状は、得られた電極を用いて構築される電池の形状等に応じて異なり得るため特に限定されず、棒状、板状、箔状、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等を用いることができる。
ここで、本発明の実施形態における負極活物質についてさらに説明を加える。図1は、本発明の実施形態の負極を模式的に示した断面図である。負極集電体5の表面上に設けられた負極活物質層6は、活物質層表面を構成する被膜形成活物質7と活物質層内部を構成する被膜形成活物質8からなる。ここで、被膜形成活物質とは、SEI被膜が形成された負極活物質のことを意味する。活物質層表面とは、負極活物質層6が非水電解液と接する側の最表面を意味し、活物質層内部とは活物質層表面よりも集電体側を意味する。被膜形成活物質7は、活物質である黒鉛1と、表面改質層2と、SEI被膜3からなる。被膜形成活物質8は、活物質である黒鉛1と、表面改質層2と、SEI被膜4からなる。被膜形成活物質7と8の違いは、SEI被膜3の厚さがSEI被膜4の厚さよりも薄いことにある。
一般に、SEI被膜は更なる電解液の分解を抑制する機能性膜として作用する一方、SEI膜の量の増加(厚さの増加)はエネルギー密度等の電池性能低下に繋がることが知られている。しかし、本発明の実施形態によれば、電池反応に寄与する活物質層表面の被膜形成活物質7は相対的に薄いSEI被膜を持つため、リチウムイオンの出入力特性向上に貢献できる。かつ、活物質層内部の被膜形成活物質8は相対的に厚いSEI被膜を持つため、SEI被膜の活物質保護効果がより高く発揮され、寿命向上に繋がる。従って、本発明は出入力特性を向上させ、ひいてはエネルギー密度に優れ、なおかつ寿命特性の向上をも成し遂げることができる。
SEI被膜3と4の厚さは、初期充電において注入する添加剤によって制御することができる。本発明の実施形態において初期充電は、第1充電工程と第2充電工程の2段階の充電工程を備える。まず、正極と負極とセパレータとを、非水電解液に第1添加剤を混合した第1混合液に浸漬させ、充電を行う(第1充電工程)。この際第1添加剤は、活物質層表面を構成する被膜形成活物質7のSEI被膜3を形成する。従って、第1添加剤は薄いSEI被膜を形成する化合物を選択する。この条件に合う第1添加剤として、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、オキサラト錯体化合物、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、酪酸リチウム、吉草酸リチウム、カプロン酸リチウム、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸リチウム、テトラヒドロフラン、アセトン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、キノン、アントラキノン、トルエン、キシレン、クレゾール、酢酸エチル、酢酸メチル及びアクリロニトリルからなる群より選択される1又は2以上の化合物が好ましい。特に、FECは薄いSEI被膜を形成することに優れており、かつ安定性にも優れているため好ましい。
オキサラト錯体化合物としては、例えば、下記(I)又は(II)で表されるような、少なくとも一つのシュウ酸イオン(C 2-)がホウ素原子(B)に配位した構造部分を有するオキサラト錯体化合物(B原子含有オキサレート塩)が好ましい。
Figure 2015138707
Figure 2015138707
ここで、式(I)中のRおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br。好ましくはF)および炭素原子数1〜10(好ましくは1〜3)のパーフルオロアルキル基から選択される。式(I)、(II)中のAは、無機カチオンおよび有機カチオンのいずれでもよい。無機カチオンの具体例としては、Li、Na、K等のアルカリ金属のカチオン、Be、Mg、Ca等のアルカリ土類金属のカチオン、その他、Ag、Zn、Cu、Co、Fe、Ni、Mn、Ti、Pb、Cr、V、Ru、Y、ランタノイド、アクチノイド等の金属のカチオン等が挙げられる。有機カチオンの具体例としては、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン等のテトラアルキルアンモニウイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン等のトリアルキルアンモニウムイオン、その他、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、トリエチルスルホニウムイオン等が挙げられる。好ましいカチオンの例として、リチウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオンが挙げられる。
また、他の例として、下記式(III)または(IV)で表されるような、少なくとも一つのシュウ酸イオン(C 2-)がリン(P)に配位した構造部分を有するオキサラト錯体化合物(P原子含有オキサレート塩)が例示される。具体的には、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等が挙げられる。
Figure 2015138707
Figure 2015138707
なお、上記式(III)、(IV)では、カチオンがリチウムイオンである例を示しているが、式(I)、(II)におけるAと同様に、他のカチオンであってもよい。また、上記式(III)、(IV)におけるFは、式(I)におけるR、Rと同様、それぞれ独立に、Fおよび他のハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br。好ましくはF)および炭素原子数1〜10(好ましくは1〜3)のパーフルオロアルキル基から選択され得る。
ここで開示される好ましい一態様は、上記オキサラト錯体化合物として、式(II)で表されるB原子含有オキサレート塩(例えば、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート)を含む。オキサラト錯体化合物にホウ素原子(B)が含まれる場合、初期充放電処理の際に、負極合材層(負極活物質層)の表面にホウ素原子(B)を含む安定性に優れた薄いSEI被膜が形成される。なかでも好ましい例として、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)が挙げられる。LiBOBは、SEI被膜をより薄く、安定性に優れ良質なものにし得る。このように、活物質層表面の活物質に形成されるSEI被膜3は薄く制御されるため、活物質層表面は低抵抗となり、ゆえに本発明の出入力特性を向上させることができる。
第1添加剤の添加量は、活物質層表面の全活物質が第1添加剤由来のSEI被膜3を形成することができる量であることが望ましい。第1添加剤の添加量の下限値としては、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%が例示される。この下限値と組み合わせる第1添加剤の添加量の上限値としては、2.5質量%、2.3質量%、2.1質量%、2.0質量%、1.8質量%、1.6質量%、1.4質量%、1.2質量%が例示される。添加量が下限値以上であるとき、活物質層表面の活物質は第1添加剤由来のSEI被膜を形成し、SEI被膜を薄く制御することができる。添加量が上限値以下であるとき、活物質層表面の活物質は第1添加剤由来のSEI被膜を充分に形成することができる。
ここで、活物質層表面の活物質に第1添加剤由来のSEI被膜3を充分に形成させることが好ましい。その後に注入する第2添加剤に由来するSEI被膜が活物質層表面の活物質に形成することなく、活物質層内部の活物質に形成することができるからである。
第1充電工程の充電条件は、負極活物質層の面積を基準として電流密度0.8mA/cm2で3.3Vの電圧になるまで充電することが好ましい。
次に、第1充電工程後、非水電解液に第2添加剤を混合させ第2混合液とし、充電する(第2充電工程)。この際第2添加剤は、活物質層内部を構成する被膜形成活物質8のSEI被膜4を形成する。従って、第2添加剤は、SEI被膜3よりも厚いSEI被膜を形成する化合物を選択する。この条件に合う第2添加剤として、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、プロパンスルトン(PS)、リノール酸リチウム、リノレン酸リチウム、アラキドン酸リチウム、ドコサペンタエン酸リチウム、オレイン酸リチウム、アクリル酸リチウム及びアクリル酸ナトリウムからなる群より選択される1又は2以上の化合物が好ましい。特に、VCが形成するSEI被膜は安定性に優れ、かつ、より厚いSEI被膜を形成するため好ましい。このように、厚いSEI被膜4を備える本発明の負極活物質層6は、電極を保護する効果を向上させ、ひいては本発明の寿命向上に繋がる。
第2添加剤の添加量は、活物質層内部の活物質が充分に第2添加剤由来のSEI被膜を形成することができる量であることが望ましい。第2添加剤の添加量の下限値としては、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%が例示される。この下限値と組み合わせる第2添加剤の添加量の上限値としては、2.5質量%、2.3質量%、2.1質量%、2.0質量%、1.8質量%、1.6質量%、1.4質量%、1.2質量%が例示される。添加量が下限値以上であるとき、活物質層表面の活物質は第2添加剤由来のSEI被膜を形成し、SEI被膜を厚く制御することができる。添加量が上限値以下であるとき、活物質層表面の活物質は第2添加剤由来のSEI被膜を充分に形成することができる。
第2充電工程の充電条件は、負極活物質層の面積を基準として電流密度0.4mA/cm2で4.0Vの電圧になるまで充電することが好ましい。
本発明の負極活物質に形成されるSEI被膜の厚さは、アルゴンレーザーラマンスペクトルに基づいて判定する。炭素材料のラマンスペクトルには、黒鉛構造に由来するピーク(グラファイト由来のピーク)が1570〜1620cm-1の範囲に存在し、黒鉛構造の乱れに由来するピーク(アモルファス由来のピーク)が1350〜1370cm-1の範囲に存在する。1570〜1620cm-1の範囲に存在するグラファイト由来のピークの高さ強度をGとし、1350〜1370cm-1の範囲に存在するアモルファス由来のピークの高さ強度をDとしたとき、その比であるR値は、D/Gで表される。
表面改質処理された炭素材料は、その表面改質の進行に従い表面における黒鉛構造が乱れ結晶性が低くなる。一方、その内部は結晶性が高い。この炭素材料にアルゴンレーザーを照射し、ラマン分光分析を行うと、ピークの高さ強度GとDを検出することができ、その比であるR値を求める。
本発明は、この表面改質処理された炭素材料を負極活物質とし、負極活物質にSEI被膜が形成された被膜形成活物質をアルゴンレーザーラマンスペクトルで評価することが好ましい。
アルゴンレーザーラマンスペクトルによると、SEI被膜が薄い被膜形成活物質は、SEI被膜が厚い被膜形成活物質よりもグラファイト由来のピークの高さ強度Gの値が大きくなる。これは、ラマン分光分析におけるレーザーが物質表面の性質を評価するものであり比較的表面にしか入射しないことによる。つまり、SEI被膜が厚い分活物質内部のグラファイト由来のピークの高さ強度Gが小さくなると考えられる。従って、SEI被膜が薄い被膜形成活物質のR値は、SEI被膜が厚い被膜形成活物質のR値よりも小さくなる。
ここで、本発明の負極活物質層6は、その表面は薄いSEI被膜3の被膜形成活物質7からなり、その内部は厚いSEI被膜4の被膜形成活物質8からなる。すなわち、負極活物質層表面と内部のアルゴンレーザーラマンスペクトルにおけるR値の割合は、(セパレータ側である負極活物質層表面のR値)/(集電体側である負極活物質層内部のR値)<1.0となる。なお、表面改質処理された炭素材料とは、結晶性の高い黒鉛の表面に結晶性の低い非晶質黒鉛を機械的操作等により物理的乃至化学的に結合したものも含まれる。
また、本発明の被膜形成活物質(7,8)において、負極活物質層表面及び内部の活物質1は異なる炭素材料から構成されることが望ましい。特に、負極活物質層6は、その内部を構成する第1層とその表面を構成する第2層の二層構造とすることが好ましい。この場合、第1層の被膜形成活物質8の活物質1はソフトカーボンであり、第2層の被膜形成活物質7の活物質1はグラファイトであることが好ましい。この構成によれば、ソフトカーボンに比べより結晶性が高く真密度が高いグラファイトが負極活物質層表面を構成するため、Liイオンの高い充填性が得られる。従って、本発明はエネルギー密度を向上させることができる。
また、本発明の被膜形成活物質(7,8)の活物質1の体積平均粒径は、異なることが望ましい。特に、負極活物質層6は、その内部を構成する第1層とその表面を構成する第2層の二層構造とすることが好ましい。この時、第2層の被膜形成活物質8の活物質1における体積平均粒径は、第1層の被膜形成活物質7の活物質1における体積平均粒径よりも小さい。具体的には、前者の体積平均粒径は5〜10μmであり、後者の体積平均粒径は15〜20μmであることが好ましい。この構成によれば、電解液と接する第2層における被膜形成活物質7の比表面積を大きくすることが可能となる。従って、本発明は、エネルギー密度の向上や出入力特性の向上にさらに効果的である。
(正極)
正極は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離し得る正極活物質と、導電材及び結着材からなる正極合材を適用な溶媒に懸濁させて混合し、スラリーとしたものを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥することで作製することができる。
正極活物質としては、種々の酸化物、硫化物、リチウム含有酸化物、導電性高分子などを用いることができる。例えば、MnO、TiS、TiS、MoS、FeS、Li-MnO、Li-Mn、Li-CoO、Li-NiO、LiV、V、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリチオフェン、ポリピロール、及びそれらの誘導体、安定ラジカル化合物、が挙げられる。なお、これらの正極活物質におけるxは0〜1の数を示す。各々にLi、Mg、Al、またはCo、Ti、Nb、Cr等の遷移金属を添加または置換した材料等であってもよい。また、これらのリチウム−金属複合酸化物を単独で用いるばかりでなくこれらを複数種類混合して用いることもできる。このなかでもリチウム−金属複合酸化物としては、層状構造またはスピネル構造のリチウムマンガン含有複合酸化物、リチウムニッケル含有複合酸化物及びリチウムコバルト含有複合酸化物のうちの1種以上であることが好ましい。
導電材、結着材、正極活物質等が分散する溶媒、集電体は、それぞれ負極で例示したものから適宜選択することができる。
(非水電解液)
非水電解液は、一般に使用される非水系溶媒に電解質を溶解したものを用いることができ、特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネートと、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネートとの混合溶媒や、環状カーボネートと1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル系溶媒との混合溶媒を使用することができる。
電解質は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF、LiBF、LiClO及びLiAsFから選ばれる無機塩、これらの無機塩の誘導体、LiSOCF、LiC(SOCF及びLiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、から選ばれる有機塩、並びにこれらの有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが望ましい。これらの電解質は、電池性能をさらに優れたものとすることができ、かつその電池性能を室温以外の温度域においてもさらに高く維持することができる。電解質の濃度についても特に限定されるものではなく、用途に応じ、電解質及び有機溶媒の種類を考慮して適切に選択することが好ましい。
(セパレータ)
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。例えば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。なおセパレータの大きさは、正極と負極との絶縁を担保するため、正極及び負極よりもさらに大きいものとするのが好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、上記の要素以外に、その他必要に応じた要素とからなる。本発明のリチウム二次電池は、その形状には特に制限を受けず、コイン型、円筒型、角型等、種々の形状の電池として使用できる。また、本発明のリチウム二次電池のケースについても限定されるものではなく、金属製あるいは樹脂製のその外形を保持できるケース、ラミネートパック等の軟質のケース等、種々の形態の電池として使用できる。図3は、本発明の非水電解液二次電池のコイン型電池の一例を示したものである。
図3に示すコイン型のリチウム二次電池Aにおいて、11はリチウムイオンを放出できる正極、11aは正極集電体、12は正極から放出されたリチウムイオンを吸蔵、放出できる炭素質材料よりなる負極、12aは負極集電体、13は非水電解液、14はステンレス製の正極ケース、15はステンレス製の負極ケース、16はポリプロピレン製のガスケット、17はポリエチレン製のセパレータである。
(リチウム二次電池の製造方法)
本実施形態のリチウム二次電池の製造方法は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離し得る活物質を含有する正極及び負極と、正極及び負極の間に設けられたセパレータと、非水電解液とを準備する準備工程と、正極と負極とセパレータとを非水電解液に浸漬させる電解液浸漬工程と、リチウム二次電池を充電する充電工程とを有し、充電工程は、非水電解液に第1添加剤を混合した第1混合液を充電する第1充電工程と、第1充電工程後、非水電解液に第2添加剤を混合した第2混合液を充電する第2充電工程とを備えるリチウム二次電池を製造する方法である。
正極及び負極は正極活物質及び負極活物質とその他必要な部材とを有する。正極活物質及び負極活物質についてはリチウム二次電池の欄にて説明したものが適用できる。電解液についても先に説明したものが適用できる。その他必要な部材としては先に説明したリチウム二次電池の欄にて述べたように導電材、結着材、集電体などがそのまま採用できる。また、リチウム二次電池を形成するためのその他必要な部材(セパレータ、ケース、電極端子など)を用いることができる。
このようにして形成されたリチウム二次電池は初期充電を行うことにより活性化される。初期充電条件としてはリチウム二次電池の欄にて述べた条件以外は、特に限定されない。正負極間の電位差が、活物質の種類や電解液などにより適正に決定される上限電位(例えば4.1V以上)に至るまで充電を行うことができる。充電は定電流充電、定電圧充電、定電流−定電圧充電など一般的な充電方法が採用できる。そして、初期充電は一回で終了させなくても放電操作を加えて2回以上繰り返すこともできる。初期充電を2回以上行う場合には充電操作毎にリチウム源を正極内に添加することもできる。初期充電を行った後に電池内に存在するガス(リチウム源由来のもの)を除去するために電池内外を連通させたり、電池を封止する前の状態にて初期充電を行ったりすることができる。封止前に充電を行ったり、充電後に電池内外を連通させる場合には低湿度雰囲気にて行うことが望ましい。
以下、本発明のリチウム二次電池について実施例に基づき詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明の説明を目的としており本発明の範囲を限定するものではない。
[リチウム二次電池の製造]
EC:DMC=3:7の質量比に混合した溶媒に、電解質としてLiPFを添加し、1.0MのLiPF溶液である非水電解液を製造した。
正極活物質としてのLiFePOを78質量%と、導電材としてのアセチレンブラックを18質量%とを、水に分散させ、更に結着材としてのPVDFを4質量%追加し分散させ、スラリーとした。このスラリーをアルミニウム製の正極集電体表面に塗布し、乾燥後、プレス成型して、正極板とした。その後、この正極板を所定の大きさにカットし、電流取り出し用のリードタブ溶接部となる部分の電極合剤を掻き取ることで、正極集電体に正極活物質層が形成されたシート状正極を作製した。
負極活物質としてのグラファイト粉末を98質量%と、CMCナトリウム塩(CMC−Na)を1質量%とを、水に分散させ、さらに結着材としてのSBRを1質量%追加し分散させ、スラリーとした。このスラリーを銅製の負極集電体表面に塗布し、乾燥後、プレス成型して、負極板とした。その後、この負極板を所定の大きさにカットし、電流取り出し用のリードタブ溶接部となる部分の電極合材を掻き取ることで、負極集電体に負極活物質層が形成されたシート状負極を作製した。なお、負極活物質のグラファイトは、表面改質処理されているものを用いる。
製造されたシート状の正極及び負極と、ポリプロピレン製多孔質セパレータとを非水電解液に浸漬し、CR2032型コインセルとして電池を組み立てた。
実施例1は、上記組み立てたCR2032型コインセルの初期充電において、非水電解液に第1添加剤としてFECを1.0質量%混合し第1混合液としたものを、電流密度0.8mA/cm2で3.3Vの電圧になるまで定電流充電をする第1充電工程を行った。その後、非水電解液に第2添加剤としてVCを1.0質量%混合し第2混合液としたものを、電流密度0.4mA/cm2で4.0Vの電圧になるまで定電流充電をする第2充電工程を行った。
実施例2は、実施例1の第1添加剤であるFECの代わりにLiBOBを使用したことを除いては、実施例1と同様の条件により算出した。
実施例3は、実施例1の第2充電工程後、さらに電流密度2.0mA/cm2、2.0〜3.6Vの電圧範囲において20サイクルの充放電を行った。
比較例1は、上記組み立てたCR2032型コインセルの初期充電において、非水電解液に第1添加剤としてFECを1.0質量%と第2添加剤としてVCを1.0質量%混合し、電流密度0.4mA/cm2で4.0Vの電圧になるまで定電流充電を行った。
比較例2は、比較例1の第1添加剤であるFECの代わりにLiBOBを使用したことを除いては、比較例1と同様の条件により算出した。
比較例3は、実施例1の第1充電工程において電流密度を0.8mA/cm2に代えて0.2mA/cm2としたことを除いては、実施例1と同様の条件により算出した。
比較例4は、比較例1の第1添加剤の量を1.0質量%に代えて3.0質量%とし、第2添加剤の量を1.0質量%に代えて2.0質量%としたことを除いては、比較例1と同様の条件により算出した。
比較例5は、実施例1の第1添加剤の量を1.0質量%に代えて3.0質量%とし、第2添加剤の量を1.0質量%に代えて2.0質量%としたことを除いては、実施例1と同様の条件により算出した。
Figure 2015138707
[評価]
実施例及び比較例の二次電池の評価を表1に示した。
表1においてX値は、波長514.5nmのアルゴンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析により求めた。すなわち、アルゴンレーザーラマンスペクトルにおいて、1570〜1620cm-1の範囲に存在するグラファイト由来のピークの高さ強度(G)に対する1350〜1370cm-1の範囲に存在するアモルファス由来のピークの高さ強度(D)の比(D/G)であるR値を用い、(負極活物質層表面のR値)/(負極活物質層内部のR値)で表される値である。負極活物質層表面のR値は、実験後の負極表面を試料として取り出し、ラマン分光分析により測定した値である。負極活物質層内部のR値は、実験後の負極を機械的に粉砕した粉末状の電極を試料として用い、ラマン分光分析により測定した値である。つまり、活物質層内部のR値は、負極活物質層を構成する活物質の平均R値により求めたものである。
表1のX値を見ると、実施例1〜3のX値は1.0より小さいのに対し、比較例1〜5のX値は1.0より大きい。すなわち、実施例1〜3は負極活物質層表面のSEI被膜は内部のSEI被膜より薄く制御されていることが表1のX値より分かる。これは、実施例は活物質層表面の活物質に形成されるSEI被膜を薄く制御するために、異なる添加剤を注入するごとに充電条件を変える2段階充電工程としていることに起因するものと考えられる。
また、比較例3及び5は、2段階充電工程を経ているものの、負極活物質層表面のSEI被膜が薄く制御されていない。この理由は次のように考えられる。
比較例3においては、第1充電工程の電流密度が実施例に比べて小さい。このため、充電時間が長く、第1添加剤由来のSEI被膜が形成され過ぎることにより、第2添加剤由来のSEI被膜が形成されにくかったものと考えられる。
比較例5においては、第1添加剤及び第2添加剤の量が実施例に比べて多い。このため、第1添加剤由来のSEI被膜が形成され過ぎることにより、第2添加剤由来のSEI被膜が形成されにくかったものと考えられる。
表1において入力値とは、10秒間定電流充電した際の10秒後の電圧が3.6Vに到達する電流値を測定し、比較例1における電流値を100としたときの比(%)である。
また、表1においてサイクル容量維持率とは、電流密度0.8mA/cm2、2.0〜3.6Vの電圧範囲で50サイクルの充放電を行う前後の容量維持率を測定し、比較例1における容量維持率を100としたときの比(%)である。
表1の入力値及びサイクル容量維持率を見ると、実施例1〜3は比較例1〜3に比べて、優れた入力値及びサイクル容量維持率を示すことが分かる。また、実施例1〜3は比較例4及び5に比べて、サイクル容量維持率は低下するものの優れた入力値を示すことがわかる。比較例4〜5においては、第1添加剤及び第2添加剤の量が実施例に比べて多い。このため、第1添加剤由来のSEI膜が形成され過ぎることにより、サイクル容量維持率は優れるものの、入力値は劣ったと考えられる。
すなわち、本発明によれば、負極におけるLiイオンの出入力特性及びサイクル容量維持率を同時に向上させることが可能である。
表1の実施例3は、第2充電後、さらに電流密度2.0mA/cm2、2.0〜3.6Vの電圧範囲において20サイクルの充放電を行った結果を示す。この入力値から、充放電を行うことにより、本発明の負極におけるLiイオンの出入力特性がより向上することが分かる。これは、充放電により、負極活物質層表面の活物質に形成される第1添加剤由来のSEI被膜がその抵抗を低くしたものであると考えられる。
さらに、負極活物質層を2層とする2層塗工試験を行った。
実施例4は、負極活物質としてのソフトカーボンを98質量%と、CMC−Naを1質量%とを、水に分散させ、さらに結着材としてのSBRを1質量%追加し分散させ、スラリーとした。このスラリーを銅製の負極集電体表面に塗布し、乾燥後、プレス成型して、第1層とした。次に、負極活物質としてのグラファイト粉末を98質量%と、CMC−Naを1質量%とを、水に分散させ、さらに結着材としてのSBRを1質量%追加し分散させ、スラリーとした。このスラリーを前記第1層上に塗布し、乾燥後、プレス成型して、第2層として負極板とした。その他については実施例1と同様の条件により算出した。
比較例6は、実施例4の負極板を使用し、その他の条件は比較例1と同様の条件により算出した。
実施例5は、負極活物質として粒径D50が20μmのグラファイト粉末を98質量%と、CMC−Naを1質量%とを、水に分散させ、さらに結着材としてのSBRを1質量%追加し分散させ、スラリーとした。このスラリーを銅製の負極集電体表面に塗布し、乾燥後、プレス成型して、第1層とした。次に、負極活物質として粒径D50が10μmのグラファイト粉末を98質量%と、CMC−Naを1質量%とを、水に分散させ、さらに結着材としてのSBRを1質量%追加し分散させ、スラリーとした。このスラリーを前記第1層上に塗布し、乾燥後、プレス成型して、第2層として負極板とした。その他については実施例1と同様の条件により算出した。
比較例7は、実施例5の負極板を使用し、その他の条件は比較例1と同様の条件により算出した。
Figure 2015138707
表2のX値は、表1のX値と同様の条件により算出した。表2のX値を見ると、実施例4及び5のX値は1.0より小さいのに対し、比較例6及び7のX値は1.0より大きい。すなわち、実施例4及び5では、負極活物質層表面のSEI被膜は内部のSEI被膜より薄く制御されていることが表2のX値より分かる。
表2の入力値及びサイクル容量維持率は、実施例4においては比較例6を、実施例5においては比較例7を100としたときの比(%)であることを除いて、表1と同様の条件により算出した。表2の入力値及びサイクル容量維持率を見ると、実施例4及び5共に比較例に比べて優れた入力値及びサイクル容量維持率を示すことが分かる。すなわち、本発明によれば、負極におけるLiイオンの出入力特性及びサイクル容量維持率を同時に向上させることが可能である。
図2は、実施例1における負極活物質層表面をX線光電子分光法(XPS)に基づいて測定し、結果を示す図である。図2の横軸は光電子のエネルギー、縦軸は観測された光電子の個数を示す。XPS測定はArエッチングをしながらXPSによりデプスプロファイルを測定した。
図2から分かるように、負極活物質層最表面ではカーボネート(FEC)由来のピークを示し、負極活物質層最表面より深部では黒鉛由来のピークを示した。すなわち、負極活物質層表面を構成する黒鉛(活物質)がカーボネート(FEC)由来のSEI被膜を形成していることが確認できる。なお、図示しないが、実施例2〜5においても同様のピークをXPS測定にて確認できた。
1:活物質(黒鉛) 2:表面改質層 3、4:SEI被膜 5:集電体
6:負極活物質層 7、8:被膜形成活物質
A:リチウム二次電池 11:正極 11a:正極集電体
12:負極 12a:負極集電体 13:非水電解液
14:正極ケース 15:負極ケース 16:ガスケット 17:セパレータ




Claims (8)

  1. リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離し得る活物質(1)を含有する正極及び負極と、前記正極及び前記負極の間に設けられたセパレータと、非水電解液とを有するリチウム二次電池であって、
    前記負極は、負極集電体(5)と、前記負極集電体の表面上に形成された前記活物質からなる負極活物質層(6)とを備え、
    前記負極活物質は炭素材料から構成されており、
    アルゴンレーザーラマンスペクトルにおける1570〜1620cm-1のピークの高さ強度(G)に対する1350〜1370cm-1のピークの高さ強度(D)の比であるR値(D/G)の割合は、(前記セパレータ側である負極活物質層表面のR値)/(前記集電体側である負極活物質層内部のR値)<1.0であることを特徴とするリチウム二次電池。
  2. リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離し得る活物質を含有する正極及び負極と、前記正極及び前記負極の間に設けられたセパレータと、非水電解液とを準備する準備工程と、
    前記正極と前記負極と前記セパレータとを前記非水電解液に浸漬させる電解液浸漬工程と、
    前記リチウム二次電池を充電する充電工程とを有し、
    前記充電工程は、前記非水電解液にフルオロエチレンカーボネート(FEC),リチウムビスオキサラトボレート(LiBOB)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、酪酸リチウム、吉草酸リチウム、カプロン酸リチウム、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸リチウム、テトラヒドロフラン、アセトン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、キノン、アントラキノン、トルエン、キシレン、クレゾール、酢酸エチル、酢酸メチル及びアクリロニトリルからなる群より選択される1又は2以上の化合物である第1添加剤を混合した第1混合液を充電する第1充電工程と、前記第1充電工程後、前記非水電解液にビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、プロパンスルトン(PS)、リノール酸リチウム、リノレン酸リチウム、アラキドン酸リチウム、ドコサペンタエン酸リチウム、オレイン酸リチウム、アクリル酸リチウム及びアクリル酸ナトリウムからなる群より選択される1又は2以上の化合物である第2添加剤を混合した第2混合液を充電する第2充電工程とを備える製造方法により製造され得るリチウム二次電池。
  3. 前記負極活物質は表面改質黒鉛である請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
  4. 前記負極活物質層表面の負極活物質に形成されるSEI被膜(3)は、前記負極活物質層内部の負極活物質に形成されるSEI被膜(4)よりも薄くなる請求項1〜3の何れか1項に記載のリチウム二次電池。
  5. 前記負極活物質層において、前記負極活物質層表面及び前記負極活物質層内部の活物質は異なる炭素材料から構成される請求項1〜4の何れか1項に記載のリチウム二次電池。
  6. 前記負極活物質層において、前記負極活物質層表面の活物質の体積平均粒径は、前記負極活物質層内部の活物質の体積平均粒径よりも小さい請求項1〜5の何れか1項に記載のリチウム二次電池。
  7. 請求項1〜6のうち何れか1項に記載のリチウム二次電池の製造方法であって、
    リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離し得る活物質を含有する正極及び負極と、前記正極及び前記負極の間に設けられたセパレータと、非水電解液とを準備する準備工程と、
    前記正極と前記負極と前記セパレータとを前記非水電解液に浸漬させる電解液浸漬工程と、
    前記リチウム二次電池を充電する充電工程とを有し、
    前記充電工程は、前記非水電解液に第1添加剤を混合した第1混合液を充電する第1充電工程と、前記第1充電工程後、前記非水電解液に第2添加剤を混合した第2混合液を充電する第2充電工程とを備えることを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
  8. 前記第1添加剤は、FEC,LiBOB、DFEC、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、酪酸リチウム、吉草酸リチウム、カプロン酸リチウム、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸リチウム、テトラヒドロフラン、アセトン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、キノン、アントラキノン、トルエン、キシレン、クレゾール、酢酸エチル、酢酸メチル及びアクリロニトリルからなる群より選択される1又は2以上の化合物であり、
    前記第2添加剤は、VC、VEC、PS、リノール酸リチウム、リノレン酸リチウム、アラキドン酸リチウム、ドコサペンタエン酸リチウム、オレイン酸リチウム、アクリル酸リチウム及びアクリル酸ナトリウムからなる群より選択される1又は2以上の化合物である請求項7に記載のリチウム二次電池の製造方法。
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