JP2015137220A - Czts半導体粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】組成ずれを抑制することが可能な、CZTS半導体粒子の製造方法を提供する。【解決手段】銅イオン源と、亜鉛イオン源と、錫イオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子と、水とを混合して、カチオン混合液を作製する工程と、該カチオン混合液と硫黄イオン源とを混合して前駆体溶液を作製する工程と、該前駆体溶液を容器に入れ、前駆体溶液が収容された前記容器を密閉する工程と、密閉された容器内で水熱合成反応を生じさせる水熱合成反応工程と、を有し、硫黄イオン源がチオウレアであり、前駆体溶液のpHが0.7以下であり、且つ、水熱合成反応における前駆体溶液の温度が170℃以上である、CZTS半導体粒子の製造方法とする。【選択図】図1
Description
本発明は、CZTS半導体粒子の製造方法に関する。
CZTS系薄膜太陽電池は、シリコンの代わりにCu、Zn、Sn、及び、S(以下において、これらをまとめて「CZTS」ということがある。)を光吸収層に使用する太陽電池である。CZTSは入手しやすく安価であるため、薄膜太陽電池の光吸収層の材料として有望視されている。
このようなCZTS系薄膜太陽電池に関する技術として、例えば特許文献1には、銅イオン源と、亜鉛イオン源と、錫イオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子と、水とを混合して、カチオン混合液を作製する工程と、作製したカチオン混合液と、硫黄イオン源とを混合して前駆体溶液を作製する工程と、作製した前駆体溶液を入れた容器を密閉する工程と、密閉された容器内で水熱合成反応を生じさせる工程と、を有する半導体粒子の製造方法が開示されている。そして、この特許文献1には、明細書の段落0021に、イオン同士の結合反応を抑制する配位子として、チオアセトアミドが例示されている。
本発明者は、硫黄イオン源としてチオアセトアミドを用い、水熱合成反応を生じさせる過程を経てCZTS半導体粒子の製造を試みた。その結果、銅イオン源、亜鉛イオン源、錫イオン源、及び、硫黄イオン源の混合比率、前駆体溶液のpH、並びに、水熱合成反応の温度を工夫することにより、X線回折測定結果ではCZTSとは異なる物質に起因するピークを確認できない、CZTSと思われる物質を合成できた。しかしながら、この物質を、電子線マイクロアナライザ(以下において、「EPMA」という。)で分析した結果、前駆体溶液を作製するときに用いたイオン源の混合比率と、合成した物質を構成している各元素の比率とが大きくずれることを知見した。ここで、前駆体溶液を作製するときに用いる各イオン源の混合比率は、合成すべきCZTSを構成する各元素の比率に合うように決定しているため、前駆体溶液を作製するときに用いたイオン源の混合比率と、合成した物質の構成元素の比率とが大きくずれることは、狙った組成とは異なるCZTSが合成されたことを意味する。このようにしてCZTSの組成がずれると、合成したCZTS粒子を用いて作製したCZTS層のバンドギャップが、狙った組成のCZTS粒子を用いて作製したCZTS層のバンドギャップからずれるため、所望の性能を発現するCZTS系薄膜太陽電池を製造し難いという問題があった。それゆえ、前駆体溶液を作製するときに用いる各イオン源の混合比率と、合成されたCZTS半導体粒子を構成する各元素の比率とのずれ(以下において、「組成ずれ」ということがある。)を抑制することが可能な、CZTS半導体粒子を製造方法の開発が望まれていた。
そこで本発明は、組成ずれを抑制することが可能な、CZTS半導体粒子の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、硫黄イオン源としてチオウレアを用い、且つ、前駆体溶液のpH及び水熱合成反応を生じさせるときの加熱温度を制御することにより、組成ずれが抑制されたCZTS半導体粒子を製造可能であることを知見した。本発明は、この知見に基づいて完成させた。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明は、銅イオン源と、亜鉛イオン源と、錫イオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子と、水とを混合して、カチオン混合液を作製するカチオン混合液作製工程と、作製したカチオン混合液と、硫黄イオン源とを混合して、前駆体溶液を作製する前駆体溶液作製工程と、作製した前駆体溶液を容器に入れ、前駆体溶液が収容された容器を密閉する密閉工程と、密閉された容器内で水熱合成反応を生じさせる水熱合成反応工程と、を有し、硫黄イオン源がチオウレアであり、前駆体溶液のpHが0.7以下であり、且つ、水熱合成反応における前駆体溶液の温度が170℃以上であることを特徴とする、CZTS半導体粒子の製造方法である。
本発明は、銅イオン源と、亜鉛イオン源と、錫イオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子と、水とを混合して、カチオン混合液を作製するカチオン混合液作製工程と、作製したカチオン混合液と、硫黄イオン源とを混合して、前駆体溶液を作製する前駆体溶液作製工程と、作製した前駆体溶液を容器に入れ、前駆体溶液が収容された容器を密閉する密閉工程と、密閉された容器内で水熱合成反応を生じさせる水熱合成反応工程と、を有し、硫黄イオン源がチオウレアであり、前駆体溶液のpHが0.7以下であり、且つ、水熱合成反応における前駆体溶液の温度が170℃以上であることを特徴とする、CZTS半導体粒子の製造方法である。
硫黄イオン源としてチオウレアを用いることにより、硫黄イオン源としてチオアセトアミドを使用する場合に観察された、硫黄イオン及び銅イオンが、硫黄イオンと他のイオンとの反応よりも優先的に反応する事態を抑制できるので、組成ずれを抑制することが可能になる。また、前駆体溶液のpHを0.7以下にすることにより、CZTS半導体粒子とともに生成される不純物の量を低減することが可能になり、且つ、組成ずれを抑制することが可能になる。また、水熱合成反応中の前駆体溶液の温度を170℃以上にすることにより、CZTS半導体粒子とともに生成される不純物の量を低減することが可能になり、且つ、組成ずれを抑制することが可能になる。したがって、このような形態にすることにより、組成ずれが抑制された、CZTS半導体粒子を製造することが可能になる。
また、上記本発明において、水熱合成反応における前駆体溶液の温度が170℃であり、且つ、前駆体溶液のpHが0.5以下であっても良い。温度が170℃である前駆体溶液中で水熱合成反応を生じさせることによりCZTS半導体粒子を合成する場合には、前駆体溶液のpHを0.5以下にすることにより、組成ずれが抑制されたCZTS半導体粒子を製造しやすくなる。
また、上記本発明において、水熱合成反応における前駆体溶液の温度が180℃以上であることが好ましい。水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液の温度を180℃以上にすることにより、組成ずれが抑制されたCZTS半導体粒子を製造しやすくなる。
本発明によれば、組成ずれを抑制することが可能な、CZTS半導体粒子の製造方法を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。
図1は本発明の半導体粒子の製造方法を説明する図である。図1に示した本発明は、カチオン混合液作製工程(S1)と、前駆体溶液作製工程(S2)と、密閉工程(S3)と、水熱合成反応工程(S4)と、洗浄工程(S5)と、分離工程(S6)と、を有している。
カチオン混合液作製工程(以下において、「S1」ということがある。)は、銅イオン源と、亜鉛イオン源と、錫イオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子と、水とを混合して、カチオン混合液を作製する工程である。S1では、例えば、水に溶けて銅イオンを発生させる物質を銅イオン源として用いることができ、水に溶けて亜鉛イオンを発生させる物質を亜鉛イオン源として用いることができ、水に溶けて錫イオンを発生させる物質を錫イオン源として用いることができる。S1は、例えば、配位子を添加した水へ、水に溶けて銅イオンを発生させる物質、水に溶けて亜鉛イオンを発生させる物質、及び、水に溶けて錫イオンを発生させる物質を添加して攪拌することにより、カチオン混合液を作製する形態、とすることができる。このほか、S1は、水に溶けて銅イオンを発生させる物質(銅イオン源)及び配位子を水に添加して攪拌することにより銅源を作製し、水に溶けて亜鉛イオンを発生させる物質(亜鉛イオン源)及び配位子を水に添加して攪拌することにより亜鉛源を作製し、水に溶けて錫イオンを発生させる物質(錫イオン源)及び配位子を水に添加して錫源を作製した後、銅源、亜鉛源、及び、錫源を混合して攪拌することにより、カチオン混合液を作製する形態、とすることも可能である。
S1で使用可能な、水に溶けて銅イオンを発生させる物質(銅イオン源)としては、例えば、塩化銅(I)、塩化銅(II)、塩化銅(II)二水和物、硫化銅(I)、硫化銅(II)、硫化銅(II)一水和物、硫化銅(II)三水和物、硫化銅(II)五水和物、酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、臭化銅(I)、硫酸銅(I)、硫酸銅(II)、及び、硝酸銅(II)等を挙げることができる。
また、S1で使用可能な、水に溶けて亜鉛イオンを発生させる物質(亜鉛イオン源)としては、例えば、塩化亜鉛、硫化亜鉛、酢酸亜鉛、酢酸亜鉛二水和物、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、及び、硝酸亜鉛等を挙げることができる。
また、S1で使用可能な、水に溶けて錫イオンを発生させる物質(錫イオン源)としては、例えば、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、塩化錫(II)二水和物、塩化錫(IV)五水和物、硫化錫(II)、硫化錫(IV)、酢酸錫(II)、酢酸錫(IV)、臭化錫(II)、臭化錫(IV)、硫酸錫(II)、硫酸錫(IV)、硝酸錫(II)、及び、硝酸錫(IV)等を挙げることができる。
また、S1で使用可能な、イオン同士の結合反応を抑制する配位子としては、例えば、メルカプト酢酸(TGA)、2−メルカプトエタノール(TG)、メルカプトプロピオン酸(MPA)、L−システイン(LCS)、チオ乳酸(TLA)、メルカプトこはく酸(MSA)、及び、2−メルカプトエチルアミン(MA)等を挙げることができる。これらの配位子は、硫黄(S)の部分が水に溶けているカチオンに配位することにより、反応速度をコントロールすることが可能である。
前駆体溶液作製工程(以下において、「S2」ということがある。)は、S1で作製したカチオン混合液と硫黄イオン源とを混合する過程を経て、pHが0.7以下である前駆体溶液を作製する工程である。S2で作製される前駆体溶液には、銅イオン源と、亜鉛イオン源と、錫イオン源と、配位子と、硫黄イオン源とが含まれる。S2では、チオウレア(NH2CSNH2)を硫黄イオン源として用いる。S2は、例えば、チオウレアを水に添加して作製した液体を、S1で作製したカチオン混合液へと加え、攪拌することにより、銅イオンに配位子を配位させた銅イオン源と、亜鉛イオンに配位子を配位させた亜鉛イオン源と、錫イオンに配位子を配位させた錫イオン源と、硫黄イオンとを含む前駆体溶液を作製し、さらに、公知の酸を添加することにより、pHが0.7以下である前駆体溶液を作製する工程、とすることができる。S2で前駆体溶液のpHを調整する際に使用する酸としては、塩酸水溶液等の公知の酸を適宜用いることができる。
密閉工程(以下において、「S3」ということがある。)は、S2で作製した前駆体溶液を容器に入れ、容器を密閉する工程である。S3で前駆体溶液を入れる容器は、後述する水熱合成反応工程における水熱合成反応の圧力に耐え得る公知の耐圧容器を適宜用いることができる。
水熱合成反応工程(以下において、「S4」ということがある。)は、S3で密閉された容器内で攪拌しながら水熱合成反応を生じさせる工程である。S4で水熱合成反応を生じさせることにより、CZTS半導体粒子を合成する。S4において、水熱合成反応の温度(水熱合成反応を生じさせる際の前駆体溶液の温度。以下において同じ。)は170℃以上とし、水熱合成反応の温度に応じて、S2で作製する前駆体溶液のpHを変更することができる。具体的には、水熱合成反応の温度を170℃にする場合には、S2で作製する前駆体溶液のpHを0.5以下にすることが好ましく、水熱合成反応の温度を180℃以上にする場合には、S2で作製する前駆体溶液のpHを0.7以下にすれば良い。また、S4において、水熱合成反応の時間は、前駆体溶液に含まれているカチオンやアニオンの濃度に応じて適宜変更することができ、組成が均一なCZTS半導体粒子を合成可能な時間であれば特に限定されない。S4における水熱合成反応の時間は、例えば、水熱合成反応の温度を170℃にする場合には24時間以上72時間以下にすることができ、水熱合成反応の温度を180℃にする場合には18時間以上72時間以下にすることができる。
洗浄工程(以下において、「S5」ということがある。)は、S4の後に、容器内に含まれている不要な物質を除去する工程である。S5は、例えば、容器を開けて上澄み液を破棄した後、容器内に洗浄液(例えばpHが1以下の洗浄液)を入れて超音波洗浄する工程、とすることができる。
分離工程(以下において、「S6」ということがある。)は、S5の後に、CZTS半導体粒子を分離する工程である。S6は、例えば、S5で洗浄されたCZTS半導体粒子及び液体を収容した容器へ、液体のpHを9程度にまで増大させる物質を添加することにより、CZTS半導体粒子の周囲に存在している液体のpHを増大させた後、遠心分離により沈殿物(CZTS半導体粒子)を得、上澄み液を破棄した後に分散剤を添加し、さらに遠心分離により沈殿物(CZTS半導体粒子)を得た後、これを乾燥することにより、乾燥したCZTS半導体粒子を得る工程、とすることができる。S6における乾燥は、CZTS半導体の酸化を防止しながら表面に付着している液体を取り除くことが可能であれば、その形態は特に限定されない。例えば、CZTS半導体粒子を40℃に加温することにより液体を取り除く形態や、CZTS半導体粒子を減圧雰囲気下に配置することにより液体を取り除く形態や、窒素雰囲気やアルゴン雰囲気等の不活性雰囲気又は減圧雰囲気下でCZTS半導体粒子を40℃に加温することにより液体を取り除く形態等にすることができる。
本発明では、例えばS1乃至S6を経ることにより、CZTS半導体粒子を製造することができる。本発明では、カチオン(銅イオン、亜鉛イオン、及び、錫イオン)の表面に配位子を配位させたものとアニオン(硫黄イオン)とを水熱合成反応させることにより、CZTS半導体粒子を製造する。カチオンの表面に配位子を配位させたものとアニオンとを反応させることにより、組成が均一なCZTS半導体粒子を製造することが可能になる。また、水熱合成反応を用いることにより、固相合成の場合と比較して、反応時に必要な熱を大幅に低減することができる。さらに、固相合成よりも低温で反応させることにより、組成の均一化を図りやすくなる。加えて、水熱合成反応を用いる形態とすることにより、真空装置を用いずにCZTS半導体粒子を製造することができるので、真空装置を用いる形態と比較して、CZTS半導体粒子を安価に製造することができる。
さらに、本発明では、硫黄イオン源としてチオウレアを用いる。これにより、硫黄イオン源としてチオアセトアミドを使用する場合に観察された、硫黄イオンと銅イオンや亜鉛イオンが、硫黄イオンと錫イオンとの反応よりも優先的に反応する事態を抑制でき、銅イオン、亜鉛イオン、及び、錫イオンと硫黄イオンとを均等に反応させることが可能になるので、組成ずれを抑制することが可能になる。また、S2でpHが0.7以下である前駆体溶液を作製することにより、S4でCZTS半導体粒子とともに生成され得る不純物の量を低減することが可能になり、且つ、CZTS半導体粒子の組成ずれを抑制することが可能になる。また、S4で前駆体溶液の温度を170℃以上にすることにより、CZTS半導体粒子とともに生成され得る不純物の量を低減することが可能になり、且つ、CZTS半導体粒子の組成ずれを抑制することが可能になる。したがって、本発明によれば、組成ずれを抑制することが可能な、CZTS半導体粒子の製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法に関する上記説明では、攪拌して前駆体溶液を作製するS2を例示したが、本発明の製造方法は当該形態に限定されない。ただし、CZTS半導体粒子の収率を高めやすい形態にする等の観点からは、攪拌して前駆体溶液を作製する形態の前駆体溶液作製工程を有することが好ましい。
また、本発明の製造方法に関する上記説明では、攪拌しながら水熱合成反応を生じさせるS4を例示したが、本発明の製造方法は当該形態に限定されない。ただし、半導体粒子の収率を高めやすい形態にする等の観点からは、攪拌しながら水熱合成反応を生じさせる形態の水熱合成反応工程を有することが好ましい。
また、本発明において、カチオン混合液作製工程、前駆体溶液作製工程、及び、密閉工程を行う環境は、特に限定されない。ただし、酸素含有量が少なく光吸収層の性能を高めやすいCZTS半導体粒子を製造しやすい形態にする等の観点からは、少なくともカチオン混合液作製工程、前駆体溶液作製工程、及び、密閉工程を不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。ここで、不活性ガス雰囲気下としては、アルゴンガス雰囲気下、窒素ガス雰囲気下、及び、ヘリウムガス雰囲気下等を例示することができる。
また、本発明において、カチオン混合液作製工程で使用される水や前駆体溶液作製工程で使用され得る水の形態は、特に限定されない。ただし、酸素含有量が少なく光吸収層の性能を高めやすいCZTS半導体粒子を製造しやすい形態にする等の観点からは、溶存酸素が除去された水を用いることが好ましい。
また、本発明において、カチオン混合液作製工程の原料として用いられる各イオン源の種類(塩化物、塩化物の水和物、硫化物、硫化物の水和物、酢酸化合物、臭化物、硫酸化合物、硝酸化合物等の数)は、特に限定されない。例えば、水に溶けて銅イオンを発生させる銅イオン源として塩化銅(I)を用いた場合、水に溶けて亜鉛イオンを発生させる亜鉛イオン源は、塩化物であっても良く、塩化物以外の形態であっても良い。同様に、水に溶けて錫イオンを発生させる錫イオン源は、塩化物や塩化物の水和物であっても良く、塩化物や塩化物の水和物以外の形態であっても良い。本発明におけるカチオン混合液作製工程は、イオン源として、例えば、塩化銅(I)と硝酸亜鉛と硫化錫(IV)とを用いる形態とすることも可能と考えられる。ただし、容器内に含まれている不要な物質を除去しやすい形態の洗浄工程とすることにより、CZTS半導体粒子の製造効率を高めやすい形態にする等の観点からは、容器内に含まれる不要な物質が水溶性の物質になるようなイオン源を用いることが好ましい。
本発明によって製造したCZTS半導体粒子は、後述するように、X線回折でCZTS以外の物質に由来するピークが確認されない。また、本発明によって製造したCZTS半導体粒子は、前駆体溶液を作製する際に用いた銅イオン源と錫イオン源の混合比率(CS1=銅イオン源のモル数/錫イオン源のモル数)及び亜鉛イオン源と錫イオン源の混合比率(ZS1=亜鉛イオン源のモル数/錫イオン源のモル数)と、合成したCZTSの構成元素の組成比(CS2=Cu/Sn、ZS2=Zn/Sn)から計算される組成ずれG=[(CS2−CS1)2+(ZS2−ZS1)2]0.5が、0.1以下である。したがって、本発明によれば、組成ずれがG≦0.1に低減されたCZTS半導体粒子を提供することができる。換言すれば、本発明では、組成ずれがG≦0.1となるように、S2で作製する前駆体溶液のpHを決定し、且つ、S4における水熱合成反応の温度を決定する。
1.CZTS半導体粒子の製造
<実施例1>
カチオン原料として塩化銅(II)二水和物(CuCl2・2H2O、関東化学株式会社製)、塩化亜鉛(ZnCl2、関東化学株式会社製)、及び、塩化錫(IV)五水和物(SnCl4・5H2O)を、配位子としてメルカプト酢酸(キシダ化学株式会社製)を、アニオン原料としてチオウレア(NH2CSNH2、キシダ化学株式会社製)を用い、以下の手順でCZTS半導体粒子を製造した。
<実施例1>
カチオン原料として塩化銅(II)二水和物(CuCl2・2H2O、関東化学株式会社製)、塩化亜鉛(ZnCl2、関東化学株式会社製)、及び、塩化錫(IV)五水和物(SnCl4・5H2O)を、配位子としてメルカプト酢酸(キシダ化学株式会社製)を、アニオン原料としてチオウレア(NH2CSNH2、キシダ化学株式会社製)を用い、以下の手順でCZTS半導体粒子を製造した。
(1)蒸留水からの溶存酸素の除去
蒸留水を窒素ガスで約3時間に亘ってバブリングすることにより、蒸留水に含まれている溶存酸素を除去した。
蒸留水を窒素ガスで約3時間に亘ってバブリングすることにより、蒸留水に含まれている溶存酸素を除去した。
(2)カチオン混合液の作製
上記(1)で溶存酸素を除去した蒸留水20mlにメルカプト酢酸を37.5mmol入れ、攪拌することにより、メルカプト酢酸水溶液を得た。その後、メルカプト酢酸水溶液に、CuCl2・2H2O、ZnCl2、及び、SnCl4・5H2Oを、それぞれ、3.56mmol、2.06mmol、及び、1.88mmol加え、攪拌することにより、カチオン混合液を作製した。カチオン混合液は、アルゴン雰囲気中で作製した。
上記(1)で溶存酸素を除去した蒸留水20mlにメルカプト酢酸を37.5mmol入れ、攪拌することにより、メルカプト酢酸水溶液を得た。その後、メルカプト酢酸水溶液に、CuCl2・2H2O、ZnCl2、及び、SnCl4・5H2Oを、それぞれ、3.56mmol、2.06mmol、及び、1.88mmol加え、攪拌することにより、カチオン混合液を作製した。カチオン混合液は、アルゴン雰囲気中で作製した。
(3)カチオン混合液のpH調整
上記(2)で作製したカチオン混合液に、アンモニア水溶液を適量添加して攪拌することにより、カチオン混合液のpHを5に調整した。このpH調整は、アルゴン雰囲気中で実施した。
上記(2)で作製したカチオン混合液に、アンモニア水溶液を適量添加して攪拌することにより、カチオン混合液のpHを5に調整した。このpH調整は、アルゴン雰囲気中で実施した。
(4)硫黄源溶液の作製
上記(1)で溶存酸素を除去した蒸留水45mlにNH2CSNH2を45mmol加えて、NH2CSNH2を溶解させることにより、硫黄源溶液を作製した。この硫黄源溶液は、アルゴン雰囲気中で作製した。
上記(1)で溶存酸素を除去した蒸留水45mlにNH2CSNH2を45mmol加えて、NH2CSNH2を溶解させることにより、硫黄源溶液を作製した。この硫黄源溶液は、アルゴン雰囲気中で作製した。
(5)前駆体溶液の作製
上記(3)でpHを調整したカチオン混合液に、上記(4)で作製した硫黄源溶液を加え、攪拌することにより、前駆体溶液を作製した。次に、この前駆体溶液のpHを0.5にするため、塩酸水溶液を適量添加して攪拌した。前駆体溶液の作製及び前駆体溶液のpH調整は、アルゴン雰囲気中で行った。
上記(3)でpHを調整したカチオン混合液に、上記(4)で作製した硫黄源溶液を加え、攪拌することにより、前駆体溶液を作製した。次に、この前駆体溶液のpHを0.5にするため、塩酸水溶液を適量添加して攪拌した。前駆体溶液の作製及び前駆体溶液のpH調整は、アルゴン雰囲気中で行った。
(6)水熱合成反応
上記(5)でpHを調整した前駆体溶液を、アルゴン雰囲気中で、容量300mLのオートクレーブ(テフロン(登録商標)内筒型のステンレス鋼(SUS)製容器)に入れ、密封した。その後、密封された容器を恒温槽に入れ、容器内の温度が180℃になるように加熱し、容器内の温度が180℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせた。そして、加熱終了後に、徐冷した。
上記(5)でpHを調整した前駆体溶液を、アルゴン雰囲気中で、容量300mLのオートクレーブ(テフロン(登録商標)内筒型のステンレス鋼(SUS)製容器)に入れ、密封した。その後、密封された容器を恒温槽に入れ、容器内の温度が180℃になるように加熱し、容器内の温度が180℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせた。そして、加熱終了後に、徐冷した。
(7)分離
上記(6)の徐冷後に、液体を遠心瓶に移して遠心分離機(H−36、株式会社コクサン製)にかけることにより、沈殿物(CZTS半導体粒子)と上澄みとに分離し、上澄みを捨てた。
上記(6)の徐冷後に、液体を遠心瓶に移して遠心分離機(H−36、株式会社コクサン製)にかけることにより、沈殿物(CZTS半導体粒子)と上澄みとに分離し、上澄みを捨てた。
上記沈殿物(CZTS半導体粒子)が収容されている遠心瓶に、蒸留水を添加し、さらに塩酸を添加することにより、洗浄液のpHを1に調整した。その後、CZTS半導体粒子とpHが1の洗浄液を収容した遠心瓶を遠心分離機にかけることにより、沈殿物と上澄みとに分離し、上澄みを捨てた。次に、上澄みを捨てることによりCZTS半導体粒子が残された遠心瓶に、蒸留水を添加し、さらに塩酸を添加することにより、洗浄液のpHを1に調整した。その後、CZTS半導体粒子とpHが1の洗浄液を収容した遠心瓶を遠心分離機にかけることにより、沈殿物と上澄みとに分離し、上澄みを捨てた。以下同様にして、遠心瓶へ蒸留水を添加、遠心瓶へ塩酸を添加、遠心分離機による分離、及び、上澄みの除去を、さらに2回に亘って繰り返すことにより、CZTS半導体粒子を洗浄した。
合計で4回に亘って遠心分離機にかけられることにより、pH1の洗浄液で洗浄されたCZTS半導体粒子が残された遠心瓶に、蒸留水を添加し、さらにアンモニアを添加することにより、遠心瓶に収容されている液体のpHを9に調整した。その後、CZTS半導体粒子とpHが9の液体を収容した遠心瓶を遠心分離機にかけることにより、沈殿物と上澄みとに分離し、上澄みを捨てた。
その後、CZTS半導体粒子を収容した遠心瓶へ、2−プロパノールを添加し、2−プロパノールが添加された遠心瓶を遠心分離機にかけることにより、沈殿物(CZTS半導体粒子)と上澄みとに分離し、上澄みを捨てた。そして、分離されたCZTS半導体粒子の表面に付着している2−プロパノールを除去するために、CZTS半導体粒子を40℃に加温して乾燥することにより、実施例1のCZTS半導体粒子を得た。
<実施例2>
前駆体溶液のpHを0.7にしたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、実施例2のCZTS半導体粒子を製造した。
前駆体溶液のpHを0.7にしたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、実施例2のCZTS半導体粒子を製造した。
<実施例3>
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が170℃になるように加熱し、容器内の温度が170℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、実施例3のCZTS半導体粒子を製造した。
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が170℃になるように加熱し、容器内の温度が170℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、実施例3のCZTS半導体粒子を製造した。
<比較例1>
チオウレアに代えてチオアセトアミド(CH3CSNH2、キシダ化学株式会社製)を用い、前駆体溶液のpHを7.8に調整し、さらに、水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が80℃になるように加熱し、容器内の温度が80℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例1のCZTS半導体粒子を製造した。
チオウレアに代えてチオアセトアミド(CH3CSNH2、キシダ化学株式会社製)を用い、前駆体溶液のpHを7.8に調整し、さらに、水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が80℃になるように加熱し、容器内の温度が80℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例1のCZTS半導体粒子を製造した。
<比較例2>
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が180℃になるように加熱し、容器内の温度が180℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記比較例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例2のCZTS半導体粒子を製造した。
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が180℃になるように加熱し、容器内の温度が180℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記比較例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例2のCZTS半導体粒子を製造した。
<比較例3>
前駆体溶液のpHを0.5にしたほかは、上記比較例2のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例3のCZTS半導体粒子の製造を試みた。しかしながら、比較例3では前駆体が溶液にならなかったため、CZTS半導体粒子を製造できなかった。
前駆体溶液のpHを0.5にしたほかは、上記比較例2のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例3のCZTS半導体粒子の製造を試みた。しかしながら、比較例3では前駆体が溶液にならなかったため、CZTS半導体粒子を製造できなかった。
<比較例4>
前駆体溶液のpHを1にしたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例4のCZTS半導体粒子を製造した。
前駆体溶液のpHを1にしたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例4のCZTS半導体粒子を製造した。
<比較例5>
前駆体溶液のpHを3にしたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例5のCZTS半導体粒子を製造した。
前駆体溶液のpHを3にしたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例5のCZTS半導体粒子を製造した。
<比較例6>
前駆体溶液のpHを5にしたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例6のCZTS半導体粒子を製造した。
前駆体溶液のpHを5にしたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例6のCZTS半導体粒子を製造した。
<比較例7>
前駆体溶液のpHを8にしたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例7のCZTS半導体粒子を製造した。
前駆体溶液のpHを8にしたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例7のCZTS半導体粒子を製造した。
<比較例8>
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が160℃になるように加熱し、容器内の温度が160℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例8のCZTS半導体粒子を製造した。
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が160℃になるように加熱し、容器内の温度が160℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例8のCZTS半導体粒子を製造した。
<比較例9>
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が150℃になるように加熱し、容器内の温度が150℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例9のCZTS半導体粒子を製造した。
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が150℃になるように加熱し、容器内の温度が150℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例9のCZTS半導体粒子を製造した。
<比較例10>
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が140℃になるように加熱し、容器内の温度が140℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例10のCZTS半導体粒子を製造した。
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が140℃になるように加熱し、容器内の温度が140℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例10のCZTS半導体粒子を製造した。
<比較例11>
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が80℃になるように加熱し、容器内の温度が80℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例11のCZTS半導体粒子の製造を試みた。しかしながら、比較例11では、加熱温度が低くチオウレアの分解による硫黄放出反応が起きなかったため、CZTS半導体粒子を製造できなかった。
水熱合成反応を生じさせる前駆体溶液を収容した容器内の温度が80℃になるように加熱し、容器内の温度が80℃に到達してから24時間に亘って加熱を継続することにより、水熱合成反応を生じさせたほかは、上記実施例1のCZTS半導体粒子の製造方法と同様にして、比較例11のCZTS半導体粒子の製造を試みた。しかしながら、比較例11では、加熱温度が低くチオウレアの分解による硫黄放出反応が起きなかったため、CZTS半導体粒子を製造できなかった。
2.分析
2.1.X線回折
実施例1〜3のCZTS半導体粒子、比較例1〜2のCZTS半導体粒子、及び、比較例4〜10のCZTS半導体粒子を、X線回折装置(RINT−TTR III、株式会社リガク製)を用いてX線回折することにより、CZTSとは異なる物質に由来するピークを確認できるか否かを調査した。実施例1のCZTS半導体粒子のX線回折パターンを図2Aに、比較例1のCZTS半導体粒子のX線回折パターンを図3Aに、比較例2のCZTS半導体粒子のX線回折パターンを図4Aに、比較例6のCZTS半導体粒子のX線回折パターンを図5Aに、それぞれ示す。また、CZTSとは異なる物質に由来するピークの存否の確認結果を、表1にまとめて示す。表1の「結晶構造」欄において、「○」はCZTSとは異なる物質に由来するピークが確認されなかったことを意味し、「×」はCZTSとは異なる物質(具体的にはZnS)に由来するピークが確認されたことを意味する。
2.1.X線回折
実施例1〜3のCZTS半導体粒子、比較例1〜2のCZTS半導体粒子、及び、比較例4〜10のCZTS半導体粒子を、X線回折装置(RINT−TTR III、株式会社リガク製)を用いてX線回折することにより、CZTSとは異なる物質に由来するピークを確認できるか否かを調査した。実施例1のCZTS半導体粒子のX線回折パターンを図2Aに、比較例1のCZTS半導体粒子のX線回折パターンを図3Aに、比較例2のCZTS半導体粒子のX線回折パターンを図4Aに、比較例6のCZTS半導体粒子のX線回折パターンを図5Aに、それぞれ示す。また、CZTSとは異なる物質に由来するピークの存否の確認結果を、表1にまとめて示す。表1の「結晶構造」欄において、「○」はCZTSとは異なる物質に由来するピークが確認されなかったことを意味し、「×」はCZTSとは異なる物質(具体的にはZnS)に由来するピークが確認されたことを意味する。
2.2.EPMA分析
組成ずれの程度を確認するため、EPMA分析装置(EPMA−1610、株式会社島津製作所製)により、実施例1〜3のCZTS半導体粒子、比較例1〜2のCZTS半導体粒子、及び、比較例4〜10のCZTS半導体粒子の組成比率を測定した。そして、前駆体溶液を作製する際に用いた銅イオン源と錫イオン源の混合比率(CS1=銅イオン源のモル数/錫イオン源のモル数)及び亜鉛イオン源と錫イオン源の混合比率(ZS1=亜鉛イオン源のモル数/錫イオン源のモル数)と、CZTS半導体粒子の組成比率(CS2=Cu/Sn、ZS2=Zn/Sn)から計算される組成ずれG=[(CS2−CS1)2+(ZS2−ZS1)2]0.5を算出した。実施例1のCZTS半導体粒子のCS2及びZS2の算出結果を図2Bに、比較例1のCZTS半導体粒子のCS2及びZS2の算出結果を図3Bに、比較例2のCZTS半導体粒子のCS2及びZS2の算出結果を図4Bに、比較例6のCZTS半導体粒子のCS2及びZS2の算出結果を図5Bに、それぞれ示す。図2B、図3B、図4B、及び、図5Bに示した点線は、Cu/Snの結果に重ねて記載した点線がCS1に相当し、Zn/Snの結果に重ねて記載した点線がZS1に相当する。また、CS2、ZS2、及び、組成ずれの算出結果を表1に、硫黄イオン源にチオウレアを用い且つ水熱合成反応の温度を180℃とした場合における組成ずれと前駆体溶液のpHとの関係を図6に、硫黄イオン源にチオウレアを用い且つ前駆体溶液のpHを0.5にした場合における組成ずれと水熱合成反応の温度との関係を図7に、それぞれ示す。表1において、「TU」はチオウレアを意味し、「TA」はチオアセトアミドを意味する。なお、すべての実施例及び比較例において、CS1=1.90であり、ZS1=1.10であった。
組成ずれの程度を確認するため、EPMA分析装置(EPMA−1610、株式会社島津製作所製)により、実施例1〜3のCZTS半導体粒子、比較例1〜2のCZTS半導体粒子、及び、比較例4〜10のCZTS半導体粒子の組成比率を測定した。そして、前駆体溶液を作製する際に用いた銅イオン源と錫イオン源の混合比率(CS1=銅イオン源のモル数/錫イオン源のモル数)及び亜鉛イオン源と錫イオン源の混合比率(ZS1=亜鉛イオン源のモル数/錫イオン源のモル数)と、CZTS半導体粒子の組成比率(CS2=Cu/Sn、ZS2=Zn/Sn)から計算される組成ずれG=[(CS2−CS1)2+(ZS2−ZS1)2]0.5を算出した。実施例1のCZTS半導体粒子のCS2及びZS2の算出結果を図2Bに、比較例1のCZTS半導体粒子のCS2及びZS2の算出結果を図3Bに、比較例2のCZTS半導体粒子のCS2及びZS2の算出結果を図4Bに、比較例6のCZTS半導体粒子のCS2及びZS2の算出結果を図5Bに、それぞれ示す。図2B、図3B、図4B、及び、図5Bに示した点線は、Cu/Snの結果に重ねて記載した点線がCS1に相当し、Zn/Snの結果に重ねて記載した点線がZS1に相当する。また、CS2、ZS2、及び、組成ずれの算出結果を表1に、硫黄イオン源にチオウレアを用い且つ水熱合成反応の温度を180℃とした場合における組成ずれと前駆体溶液のpHとの関係を図6に、硫黄イオン源にチオウレアを用い且つ前駆体溶液のpHを0.5にした場合における組成ずれと水熱合成反応の温度との関係を図7に、それぞれ示す。表1において、「TU」はチオウレアを意味し、「TA」はチオアセトアミドを意味する。なお、すべての実施例及び比較例において、CS1=1.90であり、ZS1=1.10であった。
3.結果
3.1.X線回折
表1、図2A、図3A、図4A、及び、図5Aに示したように、実施例1〜3のCZTS半導体粒子、比較例1のCZTS半導体粒子、比較例4のCZTS半導体粒子、及び、比較例8〜9のCZTS半導体粒子からは、CZTSとは異なる物質に由来するピークを確認できなかった。しかしながら、比較例2のCZTS半導体粒子、比較例5〜7のCZTS半導体粒子、及び、比較例10のCZTS半導体粒子からは、CZTSとは異なる物質に由来するピークが確認された。具体的には、比較例2のCZTS半導体粒子、比較例5〜7のCZTS半導体粒子、及び、比較例10のCZTS半導体粒子は、CZTSとZnSとの混相であった。
3.1.X線回折
表1、図2A、図3A、図4A、及び、図5Aに示したように、実施例1〜3のCZTS半導体粒子、比較例1のCZTS半導体粒子、比較例4のCZTS半導体粒子、及び、比較例8〜9のCZTS半導体粒子からは、CZTSとは異なる物質に由来するピークを確認できなかった。しかしながら、比較例2のCZTS半導体粒子、比較例5〜7のCZTS半導体粒子、及び、比較例10のCZTS半導体粒子からは、CZTSとは異なる物質に由来するピークが確認された。具体的には、比較例2のCZTS半導体粒子、比較例5〜7のCZTS半導体粒子、及び、比較例10のCZTS半導体粒子は、CZTSとZnSとの混相であった。
3.2.EPMA分析
表1、図2B、図3B、図4B、図5B、図6、及び、図7に示したように、実施例1〜3のCZTS半導体粒子は、組成ずれが0.1以下であった。これに対し、比較例1〜2のCZTS半導体粒子、及び、比較例4〜10のCZTS半導体粒子は、組成ずれが0.1を超えた。
表1、図2B、図3B、図4B、図5B、図6、及び、図7に示したように、実施例1〜3のCZTS半導体粒子は、組成ずれが0.1以下であった。これに対し、比較例1〜2のCZTS半導体粒子、及び、比較例4〜10のCZTS半導体粒子は、組成ずれが0.1を超えた。
以上の結果から、本発明によれば、X線回折でCZTSとは異なる物質に由来するピークが確認されず、且つ、組成ずれが0.1以下に抑制されたCZTS半導体粒子を製造可能であることが分かった。
Claims (3)
- 銅イオン源と、亜鉛イオン源と、錫イオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子と、水とを混合して、カチオン混合液を作製する、カチオン混合液作製工程と、
作製した前記カチオン混合液と、硫黄イオン源とを混合して、前駆体溶液を作製する、前駆体溶液作製工程と、
作製した前記前駆体溶液を容器に入れ、前記前駆体溶液が収容された前記容器を密閉する、密閉工程と、
密閉された前記容器内で水熱合成反応を生じさせる、水熱合成反応工程と、を有し、
前記硫黄イオン源がチオウレアであり、
前記前駆体溶液のpHが0.7以下であり、且つ、
前記水熱合成反応における前記前駆体溶液の温度が170℃以上である
ことを特徴とする、CZTS半導体粒子の製造方法。 - 前記水熱合成反応における前記前駆体溶液の温度が170℃であり、且つ、前記前駆体溶液のpHが0.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載のCZTS半導体粒子の製造方法。
- 前記水熱合成反応における前記前駆体溶液の温度が180℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載のCZTS半導体粒子の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014011215A JP2015137220A (ja) | 2014-01-24 | 2014-01-24 | Czts半導体粒子の製造方法 |
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Publications (1)
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JP2014011215A Pending JP2015137220A (ja) | 2014-01-24 | 2014-01-24 | Czts半導体粒子の製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107681009A (zh) * | 2017-08-25 | 2018-02-09 | 广东工业大学 | 一种铜锌锡硫硒半导体薄膜的制备方法及其应用 |
CN108689611A (zh) * | 2018-06-01 | 2018-10-23 | 上海大学 | 片状C2ZnSnS4薄膜的制备方法 |
-
2014
- 2014-01-24 JP JP2014011215A patent/JP2015137220A/ja active Pending
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---|---|---|---|---|
CN107681009A (zh) * | 2017-08-25 | 2018-02-09 | 广东工业大学 | 一种铜锌锡硫硒半导体薄膜的制备方法及其应用 |
CN108689611A (zh) * | 2018-06-01 | 2018-10-23 | 上海大学 | 片状C2ZnSnS4薄膜的制备方法 |
CN108689611B (zh) * | 2018-06-01 | 2021-07-06 | 上海大学 | 片状Cu2ZnSnS4薄膜的制备方法 |
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