(ハイブリッド車両の説明)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の摩擦ブレーキユニットB(車両用制動装置)が搭載されるハイブリッド車両(以下、単に車両と略す)は、図1に示すように、ハイブリッドシステムによって駆動輪例えば左右前輪Wfl、Wfrを駆動させる車両である。車両は、エンジン501及びモータ502を備えている。エンジン501の駆動力は、動力分割機構503及び動力伝達機構504を介して駆動輪に伝達されるようになっており、モータ502の駆動力は、動力伝達機構504を介して駆動輪に伝達されるようになっている。
車両は、インバータ506を備えている。インバータ506は、モータ502及び発電機505と直流電源としてのバッテリ507との間で電圧を変換するものである。エンジンECU8は、ハイブリッドECU9からの指令に基づいてエンジン501の回転数を調整する。ハイブリッドECU9は、インバータ506を通してモータ502及び発電機505を制御する。ハイブリッドECU9は、バッテリ507が接続されており、バッテリ507の充電状態、充電電流などを監視している。
上述した発電機505、インバータ506、及びバッテリ507から回生ブレーキ装置Aが構成されている。回生ブレーキ装置Aは、後述する「目標回生制動力」に基づき、発電機505による回生制動力を、左右前輪Wfl、Wfrに発生させるものである。図1に示した実施形態では、モータ502と発電機505は別体であるが、モータと発電機が一体となった、モータジェネレータであっても差し支え無い。
各車輪Wfl、Wfr、Wrl、Wrrの近傍には、各車輪Wfl、Wfr、Wrl、Wrrと一体回転するブレーキディスクDRfl、DRfr、DRrl、DRrrと、ブレーキディスクDRfl、DRfr、DRrl、DRrrにブレーキパッド(不図示)を押し付けて摩擦制動力を発生させる摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrが設けられている。摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrには、後述のマスタシリンダ装置1(図2示)により生成されるマスタ圧により、上記ブレーキパッドをブレーキディスクDRfl、DRfr、DRrl、DRrrに押し付けるホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrが設けられている。
車両には、アクセルペダル20及びアクセルセンサ73が設けられている。アクセルセンサ73は、アクセルペダル20の操作量(以下「アクセル操作量」と略す)を検出し、その検出信号をハイブリッドECU9に出力する。ハイブリッドECU9は、アクセルセンサ73によって検出された「アクセル操作量」に基づいて、「要求駆動力」を演算する。
(車両用制動装置の説明)
本実施形態の摩擦ブレーキユニットB(車両用制動装置)は、図2に示すように、主に、マスタシリンダ装置1と、反力発生装置2と、離間室弁22と、反力室弁3と、サーボ圧発生装置4と、調圧装置53と、ブレーキECU6と、ブレーキECU6と通信可能な各種センサ72〜75と、を備えている。
また、摩擦ブレーキユニットBは、図1に示すように、車輪速センサSfl、Sfr、Srl、Srrを備えている。車輪速センサSfl、Sfr、Srl、Srrは、各車輪Wfl、Wfr、Wrl、Wrrの付近にそれぞれ設けられており、各車輪Wfl、Wfr、Wrl、Wrrの回転に応じた周波数のパルス信号をブレーキECU6及びハイブリッドECU9に出力している。
(マスタシリンダ装置の説明)
図2に示すように、マスタシリンダ装置1は、配管52、51及び調圧装置53を介して、ホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに接続されている。マスタシリンダ装置1は、ブレーキ液を調圧装置53に供給して、ホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに供給するものであり、主に、メインシリンダ11と、カバーシリンダ12と、入力ピストン13と、第一出力ピストン14と、第二出力ピストン15と、を有している。
メインシリンダ11は、一端に開口を有し他端に底面を有する有底略円筒状のシリンダである。以下、マスタシリンダ装置1については、メインシリンダ11の開口側を後方、メインシリンダ11の底面側(閉塞側)を前方として説明する。メインシリンダ11は、内部に、メインシリンダ11の開口側(後側)と底面側(前側)とを分離するための中間壁111を有している。言い換えると、メインシリンダ11の内周面の軸線方向中間部には、周方向全周に渡って軸線方向に突出する中間壁111が形成されている。中間壁111の内周面は、軸線方向(前後方向)に貫通する貫通孔111aとなっている。
また、メインシリンダ11の内部には、中間壁111よりも前方に、内径が小さくなっている小径部位112(前方)、小径部位113(後方)が存在する。つまり、小径部位112、113は、メインシリンダ11内周面の軸線方向の一部全周から突出している。メインシリンダ11内部には、後述する両出力ピストン14、15が軸線方向に摺動可能に配設されている。なお、内部と外部とを連通させるポート等については後述する。
カバーシリンダ12は、略円筒状のシリンダ部121と、カップ状のカバー部122と、を有している。シリンダ部121は、メインシリンダ11の後端側に配設され、メインシリンダ11の開口に同軸的に嵌合されている。シリンダ部121の前方部位121aの内径は、後方部位121bの内径よりも大きい。また、前方部位121aの内径は、中間壁111の貫通孔111aの内径よりも大きい。
カバー部122は、メインシリンダ11の開口及びシリンダ部121の後端側開口を塞ぐように、メインシリンダ11の後端部及びシリンダ部121の外周面に組み付けられている。カバー部122の底壁には貫通孔122aが形成されている。カバー部122は、軸線方向に伸縮可能な弾性部材からなり、底壁が後方に付勢されている。
入力ピストン13は、ブレーキペダル10の操作に連動してカバーシリンダ12内を摺動するピストンである。入力ピストン13は、後述する第一出力ピストン14の突出部142の後方に、突出部142と離間してカバーシリンダ12内に軸線方向摺動可能に配設されている。入力ピストン13は、前方に底面を有し後方に開口を有する有底略円筒状のピストンである。入力ピストン13の底面を構成する底壁131は、入力ピストン13の他の部位よりも径が大きくなっている。入力ピストン13は、底壁131がシリンダ部121の前方部位121a内後端に位置するように配設されている。入力ピストン13は、シリンダ部121の後方部位121b内に軸線方向に摺動可能且つ液密的に配設されている。
入力ピストン13の内部には、入力ピストン13の後端から前方にブレーキペダル10の操作ロッド10aが挿通し、操作ロッド10aの先端(前端)に形成されたピボット10bによって操作ロッド10aと入力ピストン13が連結されている。操作ロッド10aは、入力ピストン13の開口及びカバー部122の貫通孔122aを通って外部に突出し、ブレーキペダル10に接続されている。操作ロッド10aは、ブレーキペダル10の操作に連動して移動し、ブレーキペダル10踏み込み時にはカバー部122を軸線方向に押し潰しながら前進する。このように、ブレーキペダル10は、自身に加えられた運転者からの操作力(踏力)を入力ピストン13に伝達する。操作ロッド10aの前進に伴って、入力ピストン13も前進する。
第一出力ピストン14は、入力ピストン13前方のメインシリンダ11内に軸線方向に摺動可能に配設されている。具体的に、第一出力ピストン14は、第一加圧ピストン部141と、突出部142と、から構成されている。第一加圧ピストン部141は、メインシリンダ11内において、中間壁111の前方側に同軸的に配設されている。第一加圧ピストン部141は、前方に開口を有し後方にサーボ圧受部141aを有する有底略円筒状に形成されている。つまり、第一加圧ピストン部141は、サーボ圧受部141aと、周壁部141bと、から構成されている。
サーボ圧受部141aは、中間壁111の前方でメインシリンダ11内に軸線方向に摺動可能且つ液密的に配設されている。言い換えると、サーボ圧受部141aは、第一加圧ピストン部141の外周面に、外周側に周方向全周に渡って突出形成されている。サーボ圧受部141aは中間壁111前方端面と対向している。周壁部141bは、サーボ圧受部141aよりも小径の円筒状に形成され、サーボ圧受部141a前方端面から前方に同軸的に延伸している。周壁部141bの前方部位は、小径部位112に軸線方向に摺動可能且つ液密的に配設されている。周壁部141bの後方部位は、メインシリンダ11の内周面から離間している。
突出部142は、第一加圧ピストン部141の後端面中央から後方に突出した円柱状の部位である。突出部142は、第一加圧ピストン部141より小径となっている。突出部142は、中間壁111の貫通孔111aに貫通し、軸線方向に摺動可能に配設されている。なお、突出部142の外周面と貫通孔111aの内周面とは、貫通孔111aに取り付けられ突出部142の外周面と全周に渡って接触するシール部材によって液密となっている。突出部142の後方部位は、貫通孔111aから後方にシリンダ部121内部に突出している。突出部142の後方部位は、シリンダ部121内周面と離間している。突出部142の後端面は、入力ピストン13の底壁131と所定距離だけ離間している。第一出力ピストン14は、バネ等からなる付勢部材143により後方に付勢されている。
ここで、第一加圧ピストン部141のサーボ圧受部141a後方端面、中間壁111前方端面、中間壁111前方側のメインシリンダ11内周面、及び突出部142外周面により、ブレーキ液が満たされるサーボ室1Aが区画される。また、中間壁111後方端面、入力ピストン13外表面、シリンダ部121の前方部位121a内周面、及び突出部142外表面により、ブレーキ液が満たされる「離間室1B」が区画される。また、小径部位112後端面(シール部材91を含む)、周壁部141bの外周面、サーボ圧受部141a前方端面、周壁部141b、及びメインシリンダ11内周面により「反力圧室1C」が区画されている。
第二出力ピストン15は、メインシリンダ11内において、第一出力ピストン14の前方側に同軸的に配設されている。第二出力ピストン15は、前方に開口を有し後方に底壁(第二加圧ピストン部151)を有する有底略円筒状に形成されている。つまり、第二出力ピストン15は、円柱状の第二加圧ピストン部151と、第二加圧ピストン部151から前方に突出する周壁部152と、から構成されている。第二加圧ピストン部151は、第一出力ピストン14の前方で、小径部位112、113間に配設されている。第二加圧ピストン部151を含む第二出力ピストン15の後方部位は、メインシリンダ11の内周面から離間している。周壁部152は、円筒状であって、第二加圧ピストン部151の外縁から前方に同軸的に延伸している。周壁部152は、小径部位113に軸線方向に摺動可能且つ液密的に配設されている。第二出力ピストン15は、バネ等からなる付勢部材153により後方に付勢されている。
ここで、第二出力ピストン15外側表面、第一出力ピストン14前端面、第一出力ピストン14内側表面、小径部位112前端面(シール部材92を含む)、小径部位113後端面(シール部材93を含む)、及び小径部位112、113間(中間壁111の前方)のメインシリンダ11内周面により、ブレーキ液が満たされる「第一マスタ室1D」が区画される。また、メインシリンダ11内底面111d、第二出力ピストン15前端面、第二出力ピストン15内側表面、小径部位113前端面(シール部材94を含む)、及びメインシリンダ11内周面により、ブレーキ液が満たされる「第二マスタ室1E」が区画される。
第一出力ピストン14は、サーボ室1A内の液圧によって駆動されて、「第一マスタ室1D」の容積を変化させる。更に、第二出力ピストン15は、「第一マスタ室1D」内の液圧(サーボ室1A内の液圧)によって駆動されて、「第二マスタ室1E」の容積を変化させる。
マスタシリンダ装置1には、内部と外部を連通するポート11a〜11iが形成されている。ポート11aは、メインシリンダ11のうち中間壁111より後方に形成されている。ポート11bは、ポート11aと軸線方向の同様の位置に、ポート11aに対向して形成されている。ポート11aとポート11bは、メインシリンダ11内周面とシリンダ部121の外周面との間の空間を介して連通している。ポート11aは配管161に接続されている。ポート11bは、リザーバ171に接続されている。つまり、ポート11aは、リザーバ171と連通している。
また、ポート11bは、シリンダ部121及び入力ピストン13に形成された通路18により離間室1Bに連通している。通路18は、入力ピストン13が前進すると分断される。つまり、入力ピストン13が前進すると、離間室1Bとリザーバ171とは分断される。
ポート11cは、ポート11aより前方に形成され、離間室1Bと配管162とを連通させている。ポート11dは、ポート11cより前方に形成され、サーボ室1Aと配管163とを連通させている。ポート11eは、ポート11dより前方に形成され、反力圧室1Cと配管164とを連通させている。
ポート11fは、小径部位112の両シール部材91、92間に形成され、リザーバ172とメインシリンダ11内部とを連通させている。ポート11fは、第一出力ピストン14に形成された通路144を介して第一マスタ室1Dに連通している。通路144は、第一出力ピストン14が前進するとポート11fと第一マスタ室1Dが分断されるように、シール部材92の若干後方位置に形成されている。
ポート11gは、ポート11fより前方に形成され、第一マスタ室1Dと配管51とを連通させている。ポート11hは、小径部位113の両シール部材93、94間に形成され、リザーバ173とメインシリンダ11内部とを連通させている。ポート11hは、第二出力ピストン15に形成された通路154を介して第二マスタ室1Eに連通している。通路154は、第二出力ピストン15が前進するとポート11hと第二マスタ室1Eが分断されるように、シール部材94の若干後方位置に形成されている。ポート11iは、ポート11hより前方に形成され、第二マスタ室1Eと配管52とを連通させている。
また、マスタシリンダ装置1内には、適宜、Oリング等のシール部材(図面黒丸部分)が配設されている。シール部材91、92は、小径部位112に配設され、第一出力ピストン14の外周面に液密的に当接している。同様に、シール部材93、94は、小径部位113に配設され、第二出力ピストン15の外周面に液密的に当接している。また、入力ピストン13とシリンダ部121との間にもシール部材が配設されている。
ストロークセンサ72は、ブレーキペダル10の近傍に配設され、ブレーキペダル10の操作量(踏み込み量)を検出するセンサであり、検出結果をブレーキECU6に送信する。なお、ブレーキペダル10は、入力ピストン13の後端に連結されているので、ストロークセンサ72は、結果として入力ピストン13の軸線方向の移動量(軸線方向の位置)を検出する。
(反力発生装置2)
反力発生装置2は、ストロークシミュレータ21を備えている。ストロークシミュレータ21は、ブレーキペダル10の操作に応じて離間室1B及び反力圧室1Cに反力圧を発生させることにより、ブレーキペダル10に作用する踏力に対抗する操作反力を発生させ、通常のブレーキ装置の操作感(踏力感)を再現する装置である。一般的に、ストロークシミュレータ21は、シリンダ211にピストン212が摺動可能に嵌合され、圧縮スプリング213によって前方に付勢されたピストン212の前面側に反力室214が形成されて構成されている。ストロークシミュレータ21は、配管164及びポート11eを介して反力圧室1Cに接続され、配管164を介して離間室弁22及び反力室弁3に接続されている。
(離間室弁22)
離間室弁22は、常閉型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉及び開度が制御される。離間室弁22は、配管164と配管162とに接続され、両配管162、164とを接続/非接続させる。離間室弁22は、離間室1Bと反力圧室1Cとを接続/非接続させるための弁である。言い換えると、離間室弁22は、離間室1Bとストロークシミュレータ21とを接続する配管162、164を開放又は閉塞し、開弁により離間室1Bを開放し、閉弁により離間室1Bを閉鎖する弁である。
圧力センサ73は、主に離間室1B及び反力圧室1Cの液圧(反力圧)を検出するセンサであり、配管164に接続されている。圧力センサ73は、離間室弁22が開状態の場合、離間室1B及び反力圧室1Cの液圧を検出し、離間室弁22が閉状態の場合、反力圧室1Cの液圧を検出する。
(反力室弁3)
反力室弁3は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。反力室弁3は、配管164と配管161とに接続され、両配管161、164とを接続/非接続させる。反力室弁3は、離間室1B及び反力圧室1Cとリザーバ171との間の流路を開放又は閉塞させる弁である。
(離間室弁22及び反力室弁3の制御)
ここで、ブレーキ操作時において、反力室弁3と離間室弁22とのブレーキECU6による制御について説明する。ブレーキペダル10が踏まれると、入力ピストン13が前進し、通路18が分断されてリザーバ171と離間室1Bは遮断される。後述する「リニアモード」では、反力室弁3が閉状態であり、離間室弁22は開状態である。反力室弁3が閉状態であるので、反力圧室1Cとリザーバ171とが遮断されている。離間室弁22が開状態であるので、離間室1Bと反力圧室1Cとが連通している。つまり、入力ピストン13が前進し且つ反力室弁3が閉状態となることで、離間室1B及び反力圧室1Cは、リザーバ171から遮断される。反力圧室1Cには、第一出力ピストン14の移動に応じて離間室1Bから突出部142により流入出される液量と同じ液量が流入出される。そして、ストロークシミュレータ21は、離間室1B及び反力圧室1Cに、ストローク量に応じた反力圧を発生させる。つまり、ストロークシミュレータ21は、入力ピストン13に連結しているブレーキペダル10に、入力ピストン13のストローク量(ブレーキペダル10の操作量)に応じた反力圧を付与する。
なお、突出部142先端面の面積と、サーボ圧受部141aが反力圧室1Cに臨む面の面積は、同一となっている。このため、反力室弁3が閉状態、離間室弁22が開状態である場合には、離間室1Bと反力圧室1Cの内圧は同一であることから、離間室1Bの反力圧が突出部142先端面に作用する力と、反力圧室1Cの反力圧が反力圧室1Cに臨む面に作用する力が同一となり、運転者がブレーキペダル10を踏み込んで、離間室1B及び反力圧室1Cの内圧が高くなったとしても、第一出力ピストン14が移動しない。また、突出部142先端面の面積と、サーボ圧受部141aが反力圧室1Cに臨む面の面積は、同一となっていることから、第一出力ピストン14が移動したとしても、ストロークシミュレータ21内に、流入するフルード液の量が変化しないことから、離間室1Bの反力圧が変化せず、ブレーキペダル10に伝達される反力も変化しないようになっている。
(サーボ圧発生装置4)
サーボ圧発生装置4は、主に、減圧弁41と、増圧弁42と、圧力供給部43と、レギュレータ44と、を備えている。減圧弁41は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により流路の開口面積が制御されることにより、減圧弁41の下流の流路の液圧が制御される。減圧弁41の一方は配管411を介して配管161に接続され、減圧弁41の他方は配管413に接続されている。つまり、減圧弁41の一方は、配管411、161、及びポート11a、11bを介してリザーバ171に連通している。増圧弁42は、常閉型の電磁弁であり、ブレーキECU6により流路の開口面積が制御されることにより、増圧弁42の下流の流路の液圧が制御される。増圧弁42の一方は配管421に接続され、増圧弁42の他方は配管422に接続されている。
圧力供給部43は、ブレーキECU6の指示に基づいて、レギュレータ44に高圧のブレーキ液を提供する手段である。圧力供給部43は、主に、アキュムレータ431と、液圧ポンプ432と、モータ433と、リザーバ434と、を有している。
アキュムレータ431は、液圧ポンプ432により発生した液圧を蓄圧するものである。アキュムレータ431は、配管431aにより、レギュレータ44、圧力センサ75、及び液圧ポンプ432と接続されている。液圧ポンプ432は、モータ433及びリザーバ434と接続されている。液圧ポンプ432は、リザーバ434に溜まったブレーキ液を、モータ433が駆動することでアキュムレータ431に供給する。圧力センサ75は、アキュムレータ431の圧力を検出するが、その値は、アキュムレータ431に蓄圧されるブレーキ液の消費量に相関する値である。他にブレーキ液消費量相関値に相当するのは、アキュムレータ431のブレーキ液を使用して増圧されるサーボ圧、又はそのサーボ圧が上昇することで上昇する反力圧が挙げられる。
アキュムレータ圧が所定値以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、ブレーキECU6からの制御信号に基づいてモータ433が駆動され、液圧ポンプ432は、アキュムレータ431にブレーキ液を供給してアキュムレータ431に圧力エネルギーを補給する。
図3に示すように、レギュレータ44は、一般的なレギュレータに対して、主にサブピストン446を加えたものである。つまり、レギュレータ44は、主に、シリンダ441と、ボール弁442と、付勢部443と、弁座部444と、制御ピストン445と、サブピストン446と、を備えている。
シリンダ441は、一方(図面右側)に底面をもつ略有底円筒状のシリンダケース441aと、シリンダケース441aの開口(図面左側)を塞ぐ蓋部材441bと、で構成されている。なお、図面上、蓋部材(441b)は断面コの字状に形成されているが、本実施形態では、蓋部材441bを円柱状とし、シリンダケース441aの開口を塞いでいる部位を蓋部材441bとして説明する。シリンダケース441aには、内部と外部を連通させる複数のポート4a〜4hが形成されている。
ポート4aは、配管431aと接続している。ポート4bは、配管422と接続している。ポート4cは、配管163と接続している。ポート4dは、配管411を介して配管161に接続している。ポート4eは、リリーフバルブ423を介して配管422に通じる配管424に接続している。ポート4fは、配管413に接続している。ポート4gは、配管421に接続している。ポート4hは、配管51から分岐した配管511に接続されている。
ボール弁442は、その先端がボール形状を有する弁であり、シリンダ441内部において、シリンダケース441aの底面側(以下、シリンダ底面側とも称する)に、シリンダケース441aの長手方向に摺動可能に配設されている。付勢部443は、ボール弁442をシリンダケース441aの開口側(以下、シリンダ開口側とも称する)に付勢するバネ部材であって、シリンダケース441aの底面に設置されている。弁座部444は、シリンダケース441aの内周面に設けられた壁部材であり、シリンダ開口側とシリンダ底面側を区画している。弁座部444の中央には、区画したシリンダ開口側とシリンダ底面側を連通させる貫通路444aが形成されている。貫通路444aのシリンダ底面側の開口部には、ボール弁442が当接する円錐台形状の面である弁座面444bが形成されている。弁座面444bに付勢されたボール弁442が当接して、ボール弁442によって貫通路444aが閉塞されている。
ボール弁442、付勢部443、弁座部444、及びシリンダ底面側のシリンダケース441aの内周面で区画された空間を第一室4Aとする。第一室4Aは、ブレーキ液で満たされており、ポート4aを介して配管431aに接続され、ポート4bを介して配管422に接続されている。
制御ピストン445は、略円柱状の本体部445aと、本体部445aよりも径が小さい略円柱状の突出部445bとから構成されている。本体部445aは、シリンダ441内において、弁座部444のシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的に、軸線方向に摺動可能に配設されている。本体部445aは、図示しない付勢部材によりシリンダ開口側に付勢されている。本体部445aのシリンダ軸線方向略中央には、両端が本体部445a周面に開口した周方向(図面上下方向)に延びる通路445cが形成されている。通路445cの開口の配設位置に対応したシリンダ441の一部内周面は、ポート4dが形成されているとともに、凹状に窪み、本体部445aとにより第三室4Cを形成している。
突出部445bは、本体部445aのシリンダ底面側端面の中央からシリンダ底面側に突出している。突出部445bの径は、弁座部444の貫通路444aよりも小さい。突出部445bは、貫通路444aと同軸上に配設されている。突出部445bの先端は、ボール弁442からシリンダ開口側に所定間隔離れている。突出部445bには、突出部445bのシリンダ底面側端面中央に開口したシリンダ軸線方向に延びる通路445dが形成されている。通路445dは、本体部445a内にまで延伸し、通路445cに接続している。
本体部445aのシリンダ底面側端面、突出部445bの外表面、シリンダ441の内周面、弁座部444、及びボール弁442によって区画された空間を第二室4Bとする。第二室4Bは、通路445c、445d、及び第三室4Cを介してポート4d、4eに連通している。
サブピストン446は、サブ本体部446aと、第一突出部446bと、第二突出部446cとから構成されている。サブ本体部446aは、略円柱状に形成されている。サブ本体部446aは、シリンダ441内において、本体部445aのシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的、軸線方向に摺動可能に配設されている。
第一突出部446bは、サブ本体部446aより小径の略円柱状であり、サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面中央から突出している。第一突出部446bは、本体部445aのシリンダ開口側端面に当接している。第二突出部446cは、第一突出部446bと同形状であり、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面中央から突出している。第二突出部446cは、蓋部材441bと当接している。
サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面、第一突出部446bの外表面、制御ピストン445のシリンダ開口側の端面、及びシリンダ441の内周面で区画された空間を圧力制御室4Dとする。圧力制御室4Dは、ポート4f及び配管413を介して減圧弁41に連通し、ポート4g及び配管421を介して増圧弁42に連通している。
一方、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面、第二突出部446cの外表面、蓋部材441b、及びシリンダ441の内周面で区画された空間を第四室4Eとする。第四室4Eは、ポート4h及び配管511、51を介してポート11gに連通している。各室4A〜4Eは、ブレーキ液で満たされている。図2に示すように、圧力センサ74は、サーボ室1Aの液圧(サーボ圧)を検出するためのセンサであり、配管163に接続されている。
(ブレーキ配管)
マスタシリンダ圧を発生する第一マスタ室1D、第二マスタ室1Eには、配管51、52、調圧装置53を介してホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrが連通されている。具体的には、第一マスタ室1Dのポート11g及び第二マスタ室1Eのポート11iには、それぞれ配管51、52を介して、公知のABS(Antilock Brake System)53が連結されている。調圧装置53には、車輪Wfl、Wfr、Wrl、Wrrを制動する摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrを作動させるホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrが連結されている。
ここで、調圧装置53について、4輪のうち1つ(5FR)の構成について説明し、他の構成については同様であるため説明を省略する。調圧装置53は、保持弁531、減圧弁532、リザーバ533、ポンプ534、及びモータ535を備えている。保持弁531は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。保持弁531は、一方が配管52に接続され、他方がホイールシリンダWCfr及び減圧弁532に接続されるよう配設されている。つまり、保持弁531は、調圧装置53の入力弁である。
減圧弁532は、常閉型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。減圧弁532は、一方がホイールシリンダWCfr及び保持弁531に接続され、他方がリザーバ533に接続されている。減圧弁532が開状態となると、ホイールシリンダWCfrとリザーバ533が連通する。
リザーバ533は、ブレーキ液を貯蔵するものであり、減圧弁532、及びポンプ534を介して配管52に接続されている。ポンプ534は、吸い込み口がリザーバ533に接続され、吐出口が逆止弁zを介して配管52に接続されるよう配設されている。ここでの逆止弁zは、ポンプ534から配管52(第二マスタ室1E)への流れを許容し、その逆方向の流れを規制する。ポンプ534は、ブレーキECU6の指令に応じたモータ535の作動によって駆動されている。ポンプ534は、ABS制御の減圧モード時においては、ホイールシリンダWCfr内のブレーキ液又はリザーバ533内に貯められているブレーキ液を吸い込んで第二マスタ室1Eに戻している。なお、ポンプ534が吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために、ポンプ534の上流側にはダンパ(図示せず)が配設されている。
このように構成された調圧装置53において、ブレーキECU6は、マスタシリンダ圧、車輪速度の状態、及び前後加速度に基づき、各電磁弁531、532の開閉を切り換え制御し、モータ535を必要に応じて作動してホイールシリンダWCfrに付与するブレーキ液圧すなわち車輪Wfrに付与する制動力を調整するABS制御(アンチロックブレーキ制御)や横滑り防止制御を実行する。調圧装置53は、マスタシリンダ装置1から供給されたブレーキ液を、ブレーキECU6の指示に基づいて、量やタイミングを調整して(つまり、マスタ圧を調節して)、ホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに供給する装置である。
後述する「リニアモード」では、サーボ圧発生装置4のアキュムレータ431から送出された液圧が増圧弁42及び減圧弁41によって制御されてサーボ圧がサーボ室1Aに発生することにより、第一出力ピストン14及び第二出力ピストン15が前進して第一マスタ室1D及び第二マスタ室1Eが加圧される。第一マスタ室1D及び第二マスタ室1Eの液圧はポート11g、11iから配管51、52及び調圧装置53を経由してホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrへマスタシリンダ圧として供給され、車輪Wfl、Wfr、Wrl、Wrrに液圧制動力が付与される。
(ブレーキECU6)
ブレーキECU6は、電子制御ユニットであり、マイクロコンピュータ(不図示)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、及びROMや不揮発性メモリー等の「記憶部」を備えている。CPUは、図4に示すフローチャートに対応したプログラムを実行する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、「記憶部」は前記プログラムを記憶している。
ブレーキECU6は、各種センサ72〜75と通信し、各電磁弁22、3、41、42、531、532、及びモータ433、535などを制御する。また、ブレーキECU6は、ハイブリッドECU9(図1示)に互いに通信可能に接続されており、回生ブレーキ装置Aと摩擦ブレーキユニットBの協調制御(回生協調制御)を行なう。ブレーキECU6は、「リニアモード」と「フェードモード」を切り替える。
「リニアモード」は、後で詳細に説明するように、通常のブレーキ制御であり、離間室弁22を開弁させ、反力室弁3を閉弁させた状態で、減圧弁41及び増圧弁42を制御してサーボ室1Aの「サーボ圧」を制御するモードである。この「リニアモード」において、ブレーキECU6は、ストロークセンサ72で検出されたブレーキペダル10の操作量(入力ピストン13の移動量)から、運転者の「要求制動力」を算出する。そして、ブレーキECU6は、運転者の「要求制動力」から「目標回生制動力」を算出し、「目標回生制動力」をハイブリッドECU9に出力する。ハイブリッドECU9は、「目標回生制動力」に基づいて「実行回生制動力」を算出し、「実行回生制動力」をブレーキECU6に出力する。ブレーキECU6は、「要求制動力」から「実行回生制動力」を減算して、「目標摩擦制動力」を算出する。そして、ブレーキECU6は、算出した「目標摩擦制動力」に基づいて、減圧弁41及び増圧弁42を制御することによりサーボ室1Aの「サーボ圧」を制御して、摩擦ブレーキユニットBでの摩擦制動力が、「目標摩擦制動力」となるように制御する。
「フェードモード」は、後で詳細に説明するように、フェード条件が成立し、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrがフェード状態又はフェードしそうな状態の場合に、離間室弁22及び反力室弁3を非通電状態にして、離間室1Bを液密状態とし、運転者によるブレーキペダル10の操作力を、離間室1B内のブレーキ液を介して、直接第一出力ピストン14に作用させるモードである。
(リニアモード)
ブレーキペダル10が踏まれていない状態では、上記のような状態、すなわちボール弁442が弁座部444の貫通路444aを塞いでいる状態となる。また、減圧弁41は開状態、増圧弁42は閉状態となっている。つまり、第一室4Aと第二室4Bは隔離されている。
第二室4Bは、配管163を介してサーボ室1Aに連通し、互いに同液圧に保たれている。第二室4Bは、制御ピストン445の通路445c、445dを介して第三室4Cに連通している。したがって、第二室4B及び第三室4Cは、配管414、161を介してリザーバ171に連通している。圧力制御室4Dは、一方が増圧弁42で塞がれ、他方が減圧弁41を介してリザーバ171に連通している。圧力制御室4Dと第二室4Bとは同液圧に保たれる。第四室4Eは、配管511、51を介して第一マスタ室1Dに連通し、互いに同液圧に保たれる。
この状態から、ブレーキペダル10が踏まれると、所定の回生期間の後、ブレーキECU6は、ストロークセンサ72からの情報に基づいて、「目標摩擦制動力」が発生するように、減圧弁41及び増圧弁42を制御する。すなわち、ブレーキECU6は、減圧弁41を閉じる方向に制御し、増圧弁42を開ける方向に制御する。
増圧弁42が開くことでアキュムレータ431と圧力制御室4Dとが連通する。減圧弁41が閉じることで、圧力制御室4Dとリザーバ171とが遮断される。アキュムレータ431から供給される高圧のブレーキ液により、圧力制御室4Dの液圧(パイロット圧)を上昇させることができる。圧力制御室4Dの液圧が上昇すると、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動する。そして、制御ピストン445の突出部445b先端がボール弁442に当接すると、通路445dがボール弁442により塞がれる。これにより、第二室4Bがリザーバ171から遮断される。
さらに、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動すると、ボール弁442が突出部445bによりシリンダ底面側に押されて移動し、弁座面444bから離間する。これにより、第二室4Bが弁座部444の貫通路444aを介して第一室4Aに連通する。第一室4Aには、アキュムレータ431から高圧のブレーキ液が供給されているため、上記連通により第二室4Bの液圧が上昇する。上記第二室4Bの液圧上昇の結果、制御ピストン445に作用する第二室4Bに対応する力が、制御ピストン445に作用するパイロット圧に対応する力よりも大きくなると、制御ピストン445がシリンダ開口側に摺動して、第二室4Bが第一室4Aから遮断される。このような作動により、第二室4Bの液圧はパイロット圧に応じた液圧になる。なお、ブレーキECU6は、「目標摩擦制動力」が大きくなる程、圧力制御室4Dのパイロット圧が高くなるように、減圧弁41や増圧弁42を制御する。つまり、「目標摩擦制動力」が大きくなる程、パイロット圧が高くなり、サーボ圧も高くなる。
第二室4Bの圧力上昇に伴って、それに連通するサーボ室1Aの液圧も上昇する。サーボ室1Aの液圧上昇により、第一出力ピストン14が前進し、第一マスタ室1Dの液圧が上昇する。そして、第二出力ピストン15も前進し、第二マスタ室1Eの液圧が上昇する。第一マスタ室1Dの液圧上昇により、高圧のブレーキ液が後述する調圧装置53及び第四室4Eに供給される。第四室4Eの液圧は上昇するが、圧力制御室4Dの液圧も同様に上昇しているため、サブピストン446は移動しない。このように、ホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに高圧(マスタシリンダ圧)のブレーキ液が供給され、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrが作動して車両が制動される。「リニアモード」において第一出力ピストン14を前進させる力は、サーボ圧に対応する力に相当する。
ブレーキ操作を解除する場合、反対に、減圧弁41を開状態とし、増圧弁42を閉状態として、リザーバ171と圧力制御室4Dとを連通させる。これにより、制御ピストン445が後退し、ブレーキペダル10を踏む前の状態に戻る。
(フェードモード)
「フェードモード」では、離間室弁22、及び反力室弁3が通電(制御)されず、離間室弁22は閉状態、反力室弁3は開状態となっていて、ブレーキペダル10が踏まれた後も非通電状態(無制御状態)が維持される。以下に、詳細に説明する。
(フェードモード制御処理)
以下に、図4に示すフローチャートを用いて、「フェードモード制御処理」について説明する。車両が発進可能な状態となり、ブレーキECU6が起動すると、プログラムは、S11に進む。
S11において、ブレーキECU6は、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrの少なくともいずれかがフェード状態にありフェード条件が成立したか否かを判定する。なお、本実施形態において、フェード状態には、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrの少なくともいずれかが、実際にフェードしている状態に加えて、フェードしそうな状態も含まれる。
フェード条件が成立したか否かを判定する手法は、種々の手法を用いることができる。例えば、特開2009−190475号公報に示されるように、ブレーキECU6は、ブレーキディスクDRfl、DRfr、DRrl、DRrrとブレーキパッドとの間に発生する摩擦力とブレーキディスクDRfl、DRfr、DRrl、DRrrの回転量とから仕事量を演算し、その仕事量とブレーキパッドの冷却モデルとから、パッド温度を推定する。そして、その推定したパッド温度に基づいて、例えばパッド温度が所定値以上の場合に、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrのフェード条件が成立したと判定する。なお、ブレーキディスクDRfl、DRfr、DRrl、DRrrの回転量は、車輪速センサSfl、Sfr、Srl、Srrによって検出される。
或いは、特開2002−193090号公報に示されるように、車輪速センサSfl、Sfr、Srl、Srrが検出した車輪速度から演算された車両減速度と、ブレーキペダルセンサによって検出されたブレーキペダル10の操作力や操作量とに基づいて摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrのフェード条件を判断することにしても差し支え無い。ブレーキECU6が、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrの少なくともいずれかがフェード状態にありフェード条件が成立したと判断した場合には(S11:YES)、プログラムをS12に進め、上記フェード条件が成立していないと判断した場合には(S11:NO)、「プリチャージ終了処理要求」(図5示)をONとし、プログラムをS50に進める。
S12において、ブレーキECU6が、車速Vが規定速度(例えば5km/h)以上であり、且つ、アクセルペダル20が踏まれていないと判断した場合には(S12:YES)、プログラムをS13に進め、車速Vが規定速度より低いと判断した場合、或いは、アクセルペダル20が踏まれていると判断した場合には(S12:ON)、「プリチャージ終了処理要求」(図5示)をONとし、プログラムをS50に進める。なお、ブレーキECU6は、車輪速センサSfl、Sfr、Srl、Srrからの検出信号に基づいて車速Vを演算し、ハイブリッドECU9からアクセルペダル20の開度情報を取得する。
S13において、ブレーキECU6は、後述の「プリチャージ制御」が完了していると判断した場合には(S13:YES)、プログラムをS31に進め、「プリチャージ制御」が完了していないと判断した場合には(S13:NO)、「プリチャージ実行要求」(図5示)をONとし、プログラムをS21に進める。
S21において、ブレーキECU6は、サーボ室1Aに「プリチャージ圧」が発生するように、減圧弁41及び増圧弁42を制御する「プリチャージ制御」を実行する。すなわち、ブレーキECU6は、減圧弁41を閉じる方向に制御し、増圧弁42を開ける方向に制御する。サーボ室1Aに「プリチャージ圧」が発生すると(図6の(1))、第一出力ピストン14及び第二出力ピストン15が入力ピストン13に対して所定距離だけ前方に移動し、ブレーキ液がマスタ室1D、1EからホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに供給される。
なお、「プリチャージ制御」を行う目的は、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrがフェード状態である場合に、予め、第一出力ピストン14及び第二出力ピストン15を入力ピストン13に対して前進させて、ホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrにブレーキ液を供給し、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrにおいてより大きな摩擦制動力を発生させるためである。ここで、「プリチャージ圧」は、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrがフェード状態である場合に、必要とされる摩擦制動力が許容される範囲内のブレーキペダル10の操作で得られるように設定されている。ブレーキECU6は、発生させた「プリチャージ圧」を記憶する。
この「プリチャージ制御」によって、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrにおいて、摩擦制動力は発生しない。或いは、摩擦制動力が発生したとしても、その摩擦制動力は極小である。S21が終了すると、プログラムはS11に戻る。
S31において、ブレーキECU6は、離間室弁22が閉弁し、且つ反力室弁3が開弁していると判断した場合には(S31:YES)、プログラムをS41に進め、離間室弁22が開弁していると判断した場合、或いは、反力室弁3が閉弁していると判断した場合には(S31:NO)、プログラムをS32に進める。
S32において、ブレーキECU6は、離間室弁22を閉弁し、プログラムをS33に進める。S33において、ブレーキECU6が、所定時間経過したと判断した場合には(S33:YES)、プログラムをS34に進め、所定時間経過していないと判断した場合には、(S33:NO)、S33の処理を繰り返す。
S34において、ブレーキECU6は、反力室弁3を開弁し、プログラムをS35に進める。
S35において、ブレーキECU6は、摩擦ブレーキユニットBの制御モードを「フェードモード」に変更し、プログラムをS11に戻す。
S41において、ブレーキECU6は、圧力センサ74からの検出信号に基づき、サーボ室1Aのサーボ圧が、図6に示す所定の制限値を以下であると判断した場合には(S141:YES)、プログラムをS42に進め、サーボ室1Aのサーボ圧が、図6に示す所定の制限値を越えていると判断した場合には(S41:NO)、プログラムをS43に進める。
S41において、ブレーキECU6は、「サーボ圧リニア制御」を実行する。具体的には、上述した「リニア制御」で説明したように、ブレーキECU6は、ブレーキペダル10が踏まれると、ストロークセンサ72からの検出信号に基づいて、減圧弁41及び増圧弁42を制御する。すなわち、ブレーキECU6は、図6に示すように、ストロークセンサ72で検知された入力ピストン13の移動量(ブレーキペダル10の操作量)が大きくなる程、パイロット圧が高くなるように、増圧弁42及び減圧弁41を制御して、サーボ圧を制御する。
「サーボ圧リニア制御」では、離間室弁22が閉弁されていて、離間室1Bが液密状態であることから、第一出力ピストン14には、離間室1B内のブレーキ液を介して、運転者による入力ピストン13に作用する操作力も作用する。従って、第一出力ピストン14には、サーボ圧に加えて、入力ピストン13に作用する操作力も作用する。第一出力ピストン14に作用するサーボ圧及び操作力により、第一出力ピストン14は前進し、第一マスタ室1Dの液圧が上昇する。そして、第二出力ピストン15も前進し、第二マスタ室1Eの液圧が上昇する。その結果、第一マスタ室1D及び第二マスタ室1Eから高圧(マスタシリンダ圧)のブレーキ液が調圧装置53を介してホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに供給され、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrによって、車両に摩擦制動力が付与される。
なお、第一マスタ室1Dの液圧上昇により、高圧のブレーキ液が後述する調圧装置53及び第四室4Eに供給される。そして、第四室4Eの液圧は上昇するが、圧力制御室4Dの液圧も同様に上昇しているため、サブピストン446は移動しない。S41が終了すると、プログラムはS11に戻る。
S43において、ブレーキECU6は「サーボ圧制限制御」を実行する。具体的には、図6に示すように、ブレーキECU6は、ストロークセンサ72で検知されたブレーキペダル10の操作量に関わらず、サーボ圧が制限値を越えないように、減圧弁41及び増圧弁42を制御して、パイロット圧を制御する。このように、「サーボ圧制限制御」では、ブレーキペダル10の操作量の増大に対するサーボ圧の上昇が制限される。本実施形態では、「サーボ圧制限制御」では、減圧弁41及び増圧弁42が閉弁される。
「サーボ圧制限制御」では、離間室弁22が閉弁されていて、離間室1Bが液密状態であることから、第一出力ピストン14には、サーボ圧に加えて、入力ピストン13に作用する操作力も作用する。但し、第一出力ピストン14に作用するサーボ圧は制限される。第一出力ピストン14の前進に伴って、第一出力ピストン14に作用するサーボ圧及び操作力により、第一出力ピストン14は前進し、第一マスタ室1D及び第二マスタ室1Eの液圧は上昇する。そして、第一マスタ室1Dの液圧上昇により、第四室4Eの液圧も上昇する。その結果、第一マスタ室1D及び第二マスタ室1Eから高圧(マスタシリンダ圧)のブレーキ液が調圧装置53を介してホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに供給され、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrによって、車両に摩擦制動力が付与される。
なお、第一マスタ室1Dの液圧上昇により、高圧のブレーキ液が後述する調圧装置53及び第四室4Eに供給される。そして、第四室4Eの液圧は上昇するが、第四室4Eの液圧が、圧力制御室4Dの液圧を超えていない場合には、サブピストン446は移動しない。一方で、第四室4Eの液圧が、圧力制御室4Dの液圧を超えると、サブピストン446はシリンダ底面側に摺動する。同時に、制御ピストン445は、第一突出部446bに押されてシリンダ底面側に摺動する。これにより、突出部445bはボール弁442に当接し、ボール弁442はシリンダ底面側に押されて移動する。つまり、第一室4Aと第二室4Bは連通し、サーボ室1Aとリザーバ171は遮断され、アキュムレータ431による高圧のブレーキ液がサーボ室1Aに供給され、サーボ室1Aに作用するサーボ圧が上昇し、この結果マスタ圧も上昇する。S43が終了すると、プログラムはS11に戻る。
このように、「フェードモード」では、まず、「サーボ圧リニア制御」によりマスタ圧が上昇し(図7の(1))、次いで、「サーボ圧制限制御」が開始されて、制限されたサーボ圧及び操作力によりマスタ圧が徐々に上昇(図7の(2))する。そして、マスタ圧の上昇に伴い第四室4Eの液圧が、圧力制御室4Dの液圧を超えると(図7の(3))、制御ピストン445が更にシリンダ底面側に移動し、サーボ圧発生装置4によってサーボ室1Aに作用するサーボ圧が上昇し、これに伴いマスタ圧も上昇する(図7の(4))。マスタ圧が、マスタ圧がサーボ圧発生装置4(アキュムレータ431)によって発生させることができる最大圧力(図7の(6))が越えたとしても、「フェードモード」では離間室1Bが液密状態となっているので、離間室1B内のブレーキ液によって、入力ピストン13に入力される運転者の操作力が直接出力ピストン14、15に伝達され、上記最大圧力を越えてマスタ圧を発生させることができる(図7の(5))。
S50において、ブレーキECU6は、摩擦ブレーキユニットBの制御モードを「リニアモード」に変更し、プログラムをS51に進める。
S51において、ブレーキECU6は、反力室弁3を閉弁する(図5のT3)。S51が終了すると、プログラムは、S52に進む。
S52において、ブレーキECU6は、ストロークセンサ72によって検出されたブレーキペダル10の踏み込み速度に基づいて、図8に示すマッピングデータを参照することにより、「離間室弁開弁開始時間」を演算する。図8に示すマッピングデータは、ブレーキペダル10の踏み込み速度が速くなるに従って、「反力室弁閉弁開始時間」が短くなるように設定されている。次に、ブレーキECU6は、反力室弁3の閉弁を開始させてから「離間室弁開弁開始時間」が経過したと判断した場合には(S52:YES)、プログラムをS53に進め、反力室弁3の閉弁を開始させてから「離間室弁開弁開始時間」が経過していないと判断した場合には(S52:NO)、S52の処理を繰り返す。
S53において、ブレーキECU6は、離間室弁22の開弁を開始する。なお、ブレーキペダル10の踏み込み速度が速い程、離間室弁22の開弁速度が速くなるように、離間室弁22が制御される。具体的には、ブレーキECU6は、ストロークセンサ72によって検出されたブレーキペダル10の操作量に基づいて、ブレーキペダル10の踏み込み速度を演算し、当該ブレーキペダル10の踏み込み速度に基づいて、図9に示すマッピングデータを参照して、離間室弁22の供給される電流増加勾配を演算する。そして、ブレーキECU6は、上記電流増加勾配となるように、離間室弁22に電流を供給する。図9に示すマッピングデータは、ブレーキペダル10の踏み込み速度が速くなるに従って、離間室弁22の供給される電流増加勾配が大きくなるように設定されている。なお、図10に示すように、「離間室弁開弁開始時間」によっては、反力室弁3が完全に閉弁していない状態で、離間室弁22の開弁が開始される場合がある。S53が終了すると、プログラムはS54に進む。
S54において、ブレーキECU6が、離間室弁22が開弁したと判断した場合には(S54:YES)、プログラムをS55に進め、離間室弁22が開弁していないと判断した場合には(S54:NO)、S54の処理を繰り返す。
S55において、ブレーキECU6は、S21で記憶したサーボ室1Aに作用している「プリチャージ圧」分の液圧の減圧を開始する「プリチャージ終了処理」を実行する(図5のT5)。まず、ブレーキECU6は、車速Vに基づいて、図11Aに示すマッピングデータを参照して、「プリチャージ圧減圧勾配」を演算する。なお、図11Aに示すマッピングデータは、車速Vが速くなるに従って、「プリチャージ圧減圧勾配」が大きくなるように設定されていて、規定速度Aに達すると「プリチャージ圧減圧勾配」が一定になるように設定されている。
ブレーキECU6は、車速Vに基づいて車両の減速度を演算し、当該減速度に基づいて、図11Bに示すマッピングデータを参照して、「プリチャージ圧減圧勾配」を演算する。なお、図11Bに示すマッピングデータは、減速度が大きくなるに従って「プリチャージ圧減圧勾配」が大きくなるように設定されていて、規定減速度Bに達すると「プリチャージ圧減圧勾配」が一定になるように設定されている。
ブレーキECU6は、車速Vによって演算された「プリチャージ圧減圧勾配」と、減速度によって演算された「プリチャージ圧減圧勾配」のうち、より勾配が小さい「プリチャージ圧減圧勾配」を選択する。次に、ブレーキECU6は、サーボ室1Aに作用している「プリチャージ圧」(S21で記憶)分の液圧が上記選択した「プリチャージ減圧勾配」で漸減されるように、増圧弁42及び減圧弁41を制御する(図5の(1))。S55が終了すると、プログラムはS11に戻る。
なお、リニア制御においてストロークセンサ72によって演算されたサーボ圧が、図6に示す制限値以下である場合には、上述したように、S55において、サーボ室1Aの液圧が「プリチャージ圧」分減圧される(図6の(2))。一方で、リニア制御においてストロークセンサ72によって演算されたサーボ圧が、図6に示す制限値を越えている場合には、S50〜S55において、サーボ室1Aの液圧が、上記リニア制御においてストロークセンサ72によって演算されたサーボ圧に昇圧される(図6の(3))。
(本実施形態の効果の説明)
上述した説明から明らかなように、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrがフェード状態であると判定されている場合には、離間室弁22によって離間室1Bが閉塞される。これにより、離間室1Bが液密状態となり、離間室1B内のブレーキ液が剛体となるため、第一出力ピストン14はブレーキペダル10(ブレーキ操作部材)に連動する入力ピストン13のストローク量だけ移動し、マスタ室1D、1Eの容積は当該ストローク量分だけ変化する。このように、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrのフェード状態において、入力ピストン13が第一出力ピストン14に対して相対移動してしまうことを防止することにより、ブレーキペダル10の操作量に応じた分だけマスタ室1D、1Eからブレーキ液をホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに送り出して、所望の摩擦制動力を確保することができる。
つまり、ブレーキECU6(フェード状態判定部)が、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrのいずれかがフェード状態であると判定した場合には(図4のS11でYESと判定)、ブレーキECU6は、離間室弁22を閉塞して(S32)、「フェードモード」に変更する(S35)。これにより、離間室1Bが液密状態となるので、離間室1B内のブレーキ液によって、入力ピストン13に入力される運転者の操作力が直接出力ピストン14、15に伝達され、図7の(5)に示すように、「リニアモード」と比較して、アキュムレータ431(蓄圧部)が発生する最大液圧に関わらず、所望のマスタ圧を発生させることができる。このため、ブレーキフェード時において、ホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに所望の摩擦制動力を得るためのマスタ圧を付与させることができ、ブレーキフェード時に所望の摩擦制動力を得ることができる。
また、ブレーキECU6(プリチャージ制御部)は、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrのいずれかがフェード状態であると判定した場合には(図4のS11でYESと判定)、S21において、サーボ圧発生装置4によってサーボ室1A内に「プリチャージ圧」を発生させる「プリチャージ制御」を実行する。これにより、出力ピストン15、14が前進して、マスタ室1E、1Dからブレーキ液がホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに供給される(図12の(1))。
これにより、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrのいずれかがフェード状態であるときに、「プリチャージ制御」を実行しない場合においてマスタ室1E、1DからホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに供給されるブレーキ液よりも多いブレーキ液をマスタシリンダ装置1からホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに供給することができる。このため、「プリチャージ制御」を実行しない場合と比較して、ホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに作用する液圧(ホイールシリンダ圧)の最大値が上昇し(図12の(2))、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrにおいてより大きな摩擦制動力を発生させることができる。
また、予め、マスタ室1E、1Dからブレーキ液がホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrに供給されるので、ブレーキペダル10が踏まれた場合の摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrにおける摩擦制動力の発生がより迅速となる。
また、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrがフェード状態である場合に必要とされる摩擦制動力が、ブレーキペダル10の操作が許容される範囲内の操作で得られるように、「プリチャージ圧」が設定されているため、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrがフェード状態である場合に必要とされる制動力を、ブレーキペダル10の操作が許容されている範囲内の操作で確実に発生させることができる。
また、ブレーキECU6(プリチャージ制御部)は、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrの状態がフェード状態から非フェード状態に遷移したことに伴って、サーボ室1A内の液圧が「プリチャージ圧」分だけ減少される「プリチャージ終了処理」(図4のS55)を実行する(図5の(1))。これにより、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrが非フェード状態である場合に、サーボ室1A内の液圧が「プリチャージ圧」分だけ大きいことに起因する余剰な制動力の発生が防止される。
また、ブレーキECU6は、「プリチャージ終了処理」(図4のS55)において、増圧弁42及び減圧弁41を制御することにより、サーボ室1A内の液圧を漸減させる(図5の(1))。これにより、「プリチャージ終了処理」において、サーボ室1A内の液圧が急激に減少することに起因する急激な制動力の減少、つまり、車両の減速度の急激な減少が緩和される。このため、車両の減速度減少に起因する運転者が覚える違和感が緩和される。
車両の速度や減速度が低い程、「プリチャージ終了処理」における車両の減速度減少に起因する運転者が覚える違和感は増大する。上述したように、ブレーキECU6(減少量設定部)は、図4のS55の「プリチャージ終了処理」において、車速Vに基づいて図11Aに示すマッピングデータを参照し、車両の減速度に基づいて図11Bに示すマッピングデータを参照して、「プリチャージ減圧勾配」を設定する。このため、サーボ室1A内の液圧の単位時間当たりの減少量が、車両の速度や減速度が低い程小さい量に設定され、車両の減速度の低下が減少するので、運転者が覚える違和感が緩和される。
また、図4のS51〜S53の処理において、ブレーキECU6は、図10に示すように、反力室弁3の閉弁の開始から「離間室弁開弁開始時間」が経過してから離間室弁22の開弁を開始する。これにより、反力室弁3が閉弁してから、又は反力室弁3が殆ど閉弁してから離間室弁22の開弁が開始される。このため、反力室弁3が開弁している状態、又は反力室弁3が殆ど開いている状態で、離間室弁22が開弁されて離間室1Bが開放されていることに起因する入力ピストン13の前方への摺動が防止され、入力ピストン13の摺動と連動するブレーキペダル10の踏面の前方への移動が防止される。このため、ブレーキペダル10踏面に足を載せている運転者の違和感の発生が防止される。
離間室弁22が閉弁している状態では、離間室1Bとストロークシミュレータ21の反力室214は連通しておらず、離間室1Bは液密な状態であるので、ブレーキペダル10の操作速度が速い程、運転者はブレーキペダル10の操作感が重いと感じる。そこで、ブレーキECU6は、図4のS51〜S53の処理において、ブレーキペダル10の踏み込み速度が速い程、反力室弁3の閉弁が開始されてから離間室弁22の開弁が開始される時間である「離間室弁開弁開始時間」(図10示)を短くしている。これにより、運転者がブレーキペダル10の操作感が重いと感じる時間がより短くなり、運転者が覚える違和感が緩和される。
また、ブレーキECU6は、図4のS53において、離間室弁22を開弁させるに際し、離間室弁22の開度を徐々に大きくする。これにより、離間室弁22が急激に開弁され、離間室1Bが急激にストロークシミュレータ21の反力室214と連通することによる、運転者が感じるブレーキペダル10の操作感の急激な減少が防止され、運転者が覚える違和感が軽減される。
また、ブレーキECU6は、図4のS53において、ブレーキペダル10の踏み込み速度が速くなるに従って、離間室弁22の供給される電流増加勾配を大きくする。これにより、ブレーキペダル10の踏み込み速度が速くなるに従って、離間室弁22が全開になるまでの時間が短縮される。これにより、運転者がブレーキペダル10の操作感が重いと感じる時間がより短くなり、運転者が覚える違和感が緩和される。
なお、車両の速度が低くなるに従って、「プリチャージ制御」の実行に起因する車両の減速に伴う違和感を運転者が覚えやすい。本実施形態では、フェード条件が成立していたとしても(図4のS11でYESと判断)、車速Vが規定速度よりも低い場合には(S12でNOと判断)、「プリチャージ制御」が実行されないので、運転者が強く違和感を覚えない。また、車両が規定速度より低い速度で走行している場合には、車両を減速又は停車させるために必要な制動力は大きくないので、「プリチャージ制御」は必要とされない。
なお、アクセルペダル20が踏まれ、車両が加速している場合に、「プリチャージ制御」が実行されると、サーボ室1Aへの「プリチャージ圧」の入力により、ブレーキパッドがブレーキディスクDRfl、DRfr、DRrl、DRrrに押し付けられ、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrが昇温し、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrのフェード状態がより悪化してしまう場合がある。本実施形態では、フェード条件が成立していたとしても(図4のS11でYESと判断)、アクセルペダル20が踏まれている場合には(S12でNOと判断)、「プリチャージ制御」が実行されず、既に「プリチャージ制御」が実行されている場合には、S55において「プリチャージ終了処理」が実行されるので、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrの昇温が防止される。
また、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrのいずれかがフェード状態であると判定されている場合に(図4のS11でYESと判定)、ブレーキペダル10(ブレーキ操作部材)の操作量に応じたサーボ圧をサーボ室1A内に発生させる。このように、摩擦ブレーキ装置Bfl、Bfr、Brl、Brrのいずれかのフェード状態において、運転者の操作力に加えて、サーボ圧に対応する力も出力ピストン14、15に作用させることにより、すなわち、運転者の操作力をサーボ圧に対応する力でアシストすることにより、より、大きな摩擦制動力を確保することができる。つまり、図7の(1)に示すように、運転者がブレーキペダル10を踏み始めた初期の状態で、マスタ圧を素早く発生させることができ、摩擦制動力の発生の遅延を防止することができる。また、図7の(1)や(2)に示すように、摩擦制動力の発生初期において、サーボ圧が出力ピストン14、15に作用するので、運転者の操作力だけが出力ピストン14、15に作用する場合と比較して、より大きな摩擦制動力を発生させることがきる。
また、ブレーキECU6(フェードモード制御部)は、サーボ圧が制限値(図6示)を越えたと判断した場合に(図4のS43でYESと判断)、ブレーキペダル10の操作量の増加に対するサーボ圧の上昇を制限する。これにより、「フェードモード」時において、離間室1Bが閉塞され、且つ、サーボ室1A内にブレーキペダル10の操作量に応じたサーボ圧を発生させることに起因するブレーキペダル10の剛性感の低下を抑制することができる。つまり、仮に「フェードモード」時に、サーボ圧の上昇が制限されないとすると、運転者によりブレーキペダル10が踏まれると、ストロークセンサ72により検出されるブレーキペダル10のストローク量が増大するため、レギュレータ44によりサーボ室1Aに発生されるサーボ圧が上昇する。その結果、ブレーキペダル10に対応する操作力(踏力)が運転者により低減されない限り、ブレーキペダル10の操作量は増大する。すると、上記サーボ圧が更に上昇するため、踏力が運転者により低減されない限り、ブレーキペダル10の操作量は更に増大する。こうして、踏力が運転者により低減されない限り、ブレーキペダル10の操作量が増大すること(ブレーキペダル10の操作の剛性感が低下すること)が考えられる。これに対して、本実施形態では、サーボ圧の上昇を制限することにしたので、ブレーキペダル10の剛性感の低下を抑制することができる。
また、離間室弁22が開弁され、離間室1Bが液密で無い状態で「プリチャージ終了処理」が実行される。これにより、「プリチャージ終了処理」に伴い、サーボ室1Aのサーボ圧が減少することに起因する振動がブレーキペダル10に伝達されない。このため、ブレーキペダルに足を載せている運転者が違和感を覚えない。
(別の実施形態)
なお、以上説明した実施形態では、図4の示すS43の処理において、図6の実線に示すように、ブレーキECU6は、ストロークセンサ72で検知された入力ピストン13の移動量(ブレーキペダル10の移動量)に関わらず、サーボ圧が制限値を越えないように、減圧弁41及び増圧弁42を制御して、パイロット圧を制御している。しかし、これに限定されず、図6の点線で示すように、ブレーキECU6は、制限値を越えるが、「サーボ圧リニア制御」と比較して、入力ピストン13の移動量の増大に対するサーボ圧の増大量を制限する制御を行っても差し支え無い。この実施形態の場合には、上述したブレーキペダル10の剛性感の低下を抑制することができるとともに、より大きなサーボ圧をサーボ室1Aに作用させることができ、より大きな摩擦制動力を発生させることができる。
また、以上説明した実施形態では、ブレーキ操作量検出部であるストロークセンサ72は、ブレーキペダル10のストローク量を検出するセンサである。しかし、ブレーキ操作量検出部は、入力ピストン13のストローク量や、ブレーキペダル10に対する操作力(踏力)を検出するセンサであっても差し支え無い。また、本発明では、「フェードモード」で離間室1Bを閉塞するため、ブレーキペダル10の操作量に応じたストローク量だけ第一出力ピストン14が移動する。反力圧室1Cの液圧(反力圧)は第一出力ピストン14のストローク位置に応じた液圧になる。そのため、反力圧はブレーキペダル10の操作量に応じた液圧になる。よって、ブレーキ操作量検出部は、圧力センサ73であっても差し支え無い。
また、以上説明した実施形態では、離間室弁22は、供給される電流が大きくなるに従って、開度が大きくなるリニア弁である。しかし、離間室弁22は、電流が供給されると直ちに開弁する非リニア式の電磁弁であっても差し支え無い。
また、以上説明した実施形態では、入力ピストン13に運転者の操作力を伝達するブレーキ操作部材は、ブレーキペダル10である。しかし、ブレーキ操作部材は、ブレーキペダル10に限定されず、例えば、ブレーキレバーやブレーキハンドルであっても差し支え無い。そして、本実施形態の車両用制動装置(摩擦ブレーキユニットB)を、自動二輪車やその他車両に適用しても、本発明の技術的思想が適用可能なことは言うまでもない。