JP2015136935A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 セラミック積層コンデンサー製造時に使用するのに好適なポリエステルフィルム基材であり、表面が平滑かつ高品質に保たれており、薄膜グリーンシートを製造するときに使用されても高品質なグリーンシートを製造することができる積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも3層以上の積層構造を有する積層ポリエステルフィルムであり、一方の表面の表面粗度(Ra)が0.002μm以下であり、当該表面を構成する表層の厚さが5μm以上であり、もう一方の表面の表面粗度(Ra)が0.002μmを超えることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、特にセラミック積層コンデンサー製造時の基材として用いられる離型フィルムの基材として好適に使用することができる積層ポリエステルフィルムに関するものである。
近年、セラミック積層コンデンサーの小型化・大容量化が進むに伴い、グリーンシートの厚さも益々薄膜化する傾向にある。グリーンシートの薄膜化に伴い、グリーンシートの特性に与える支持基材であるポリエステルフィルムの表面特性の影響がより大きくなってきており、表面特性をより平滑に設計されたポリエステルフィルムが必要とされる状況にある(特許文献1)。
基材として使用されるポリエステルフィルムの表面を平滑に設計すればするほど、ポリエステルフィルムの平滑面の品質が加工後のグリーンシート製品の品質にも影響を与えやすくなる傾向にあり、従来のポリエステルフィルム使用時は問題とならなかったような小さな突起であっても、平滑なポリエステルフィルムを適用する場合は、その突起形状がグリーンシート製品に転写し問題となるような状況が起こるようになってきている。
特開2003−291291号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、セラミック積層コンデンサー製造時に使用するのに好適なポリエステルフィルム基材であり、表面が平滑かつ高品質に保たれており、薄膜グリーンシートを製造するときに使用されても高品質なグリーンシートを製造することができる積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者は、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定構成のポリエステルフィルムによれば上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも3層以上の積層構造を有する積層ポリエステルフィルムであり、一方の表面の表面粗度(Ra)が0.002μm以下であり、当該表面を構成する表層の厚さが5μm以上であり、もう一方の表面の表面粗度(Ra)が0.002μmを超えることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、セラミック積層コンデンサー製造時に使用するのに好適なポリエステルフィルム基材であり、表面が平滑かつ高品質に保たれており、薄膜グリーンシートを製造するときに使用されても高品質なグリーンシートを製造することができる積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムは、少なくとも3層以上の多層フィルムであることを必須の要件とするものである。本発明にいう光学用積層ポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押し出される、いわゆる押出法により、押し出されたポリエステルフィルムであって、必要に応じ、縦方向および横方向の二軸方向に配向させたフィルムである。
本発明において、ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト(PEN)等が例示される。
また、本発明で用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体である。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、および、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または、二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノーネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる
本発明のフィルムの全フィルム厚さは、10〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは10〜38μm、さらに好ましくは10〜35μmの範囲である。全フィルム厚さが1す0μm未満の場合、離型層およびグリーンシート塗設時のポリエステルフィルムのハンドリングが難しくなる。また、50μmより厚い場合、フィルムの厚さムラの絶対値が大きくなり、この影響でグリーンシートを均一に塗設することが難しくなる傾向にある。
本発明のフィルムは、平滑面側の最表層の厚さを5μm以上とすることを必須の条件とし、より好ましくは6μm以上、さらに好ましくは7μm以上である。最表層の厚さが5μm未満の場合、ポリエステルの表面特性に内層の影響が現れ、小さな突起形状として発現してしましまう可能性がある。このような表面に小さな突起形状が存在すると、グリーンシートに加工後のグリーンシートの平滑性が落ちる。
本発明のフィルムの平滑面側の最表層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、酸化アルミニウム粒子を配合することが好ましい。添加する酸化アルミニウム粒子の平均一次粒子径は5〜100nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜100nmの範囲である。平均一次粒子径が5nm未満の場合は、平滑面の微細な凹凸構造を発現させることができない。また平均一次粒径が100nmを超える場合は、本発明の請求の範囲の表面粗度を達成できない恐れがある。
また、酸化アルミニウム粒子の添加量は1000〜15000ppmの範囲が好ましく、さらに好ましくは2000〜5000ppmの範囲である。酸化アルミニウム粒子の添加量が1000ppm未満の場合は、平滑面の微細な凹凸構造を発現させることができないのみでなく、併せて十分な耐擦傷性も実現できない恐れがある。また、添加量が15000ppmを超える場合は酸化アルミナ粒子同士が凝集体を生成し、フィルム表面の表面突起となり、後工程で塗設するグリーンシートの表面の平滑性に悪影響を与える恐れがある。
また、本発明のフィルムの平滑面側の表面粗さ(Ra)は、0.002μm以下であることを必須の条件とする。平滑面側の表面粗さ(Ra)が0.002μmを超える場合は、グリーンシート製品の表面に転写するポリエステルフィルムの表面形状の影響が大きく、最終的にセラミック積層コンデンサー製品としたときに所望の特性が達成できない。
本発明のフィルムの平滑面の反対側(粗面側)の最表層中も、易滑性の付与を主たる目的として、易滑性付与可能な粒子を添加する。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。添加する粒子の平均一次粒子径は5〜500nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜500nmの範囲である。平均一次粒子径が5nm未満の場合は所望の表面粗度を達成できず、ポリエステルフィルム製品とした際に巻ずれ等の不具合が発生する恐れがあり、また500nmを超える場合は、本発明のポリエステルフィルムを用いてグリーンシート塗工、乾燥し製品として巻き上げた際にポリエステルフィルムの平滑面の反対側の表面の影響がグリーンシートに転写し、グリーンシートの製品品質に悪影響を与える可能性がある。
また、粒子の粗面側に添加する粒子の添加量は1000〜30000ppmの範囲が好ましく、さらに好ましくは2000〜10000ppmの範囲である。粒子の添加量が1000ppm未満の場合は、フィルムの十分な巻き取り性を実現させることができない可能性がある。また、添加量が30000ppmを超える場合は粒子濃度が高くなりすぎ、粒子同士が凝集体を生成し、フィルム表面に突起形状が形成され、表面欠陥となる恐れがある。
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
本発明のフィルムの粗面側の表面粗さ(Ra)は、0.002μmを超えることを必須とし、0.010〜0.030μmの範囲であることが好ましい。粗面側の表面粗さ(Ra)が0.010未満である場合は、ポリエステルフィルム製造時および当該ポリエステルフィルムの加工時にフィルム表面が平滑すぎて巻き取り工程で巻きずれ等の不具合が発生する可能性があり、粗面側の表面粗さ(Ra)が0.030μmを超える場合は、当該ポリエステルフィルム巻取り時に粗面側の突起形状が平滑面側に転写し、グリーンシートの表面品質に悪影響を与える可能性がある。
また、本発明において、ポリエステルフィルムに含有されるカルシウム化合物、珪素化合物の含有量は100ppm以下であることが好ましい。これら化合物はポリエステルフィルム製造工程中にポリエステルフィルム表面からの脱離することがあり、特に100ppm以上含有される場合は、積層ポリエステルフィルムの製造時に、これらの化合物の脱離物がフィルムへの巻き込まれることが高い頻度で発生し、ポリエステルフィルムの当該部分は表面平坦性を失うこととなり、該フィルムを加工して製造した製品の欠陥となる可能性がある。
また、本発明において、ポリエステルフィルムに含有されるアンチモン化合物の含有量は100ppm以下であることが好ましい。アンチモン化合物はポリエステルフィルム製造時にポリエステルフィルム内で塊となる傾向にあり、特に100ppm以上含有される場合は高い頻度でアンチモン化合物の塊が発生することとなり、該塊は積層ポリエステルフィルム表面に突起形状の欠陥を発生させることとなり、当該欠陥部分はグリーンシートの表面に転写し、欠陥となる可能性がある。
本発明のポリエステルフィルムは延伸工程中および、またはその後のフィルムに接着性、帯電防止性、滑り性、離形性等の機能を付与するために、フィルムの片面または両面に塗布層を形成したりコロナ処理等の表面処理を施したりしてもよい。
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムにおいて、その上に加工される層との密着性の向上、加工時の滑り性向上などを目的として塗布層を設けてもよい。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であることから、インラインコーティングが好ましく用いられる。
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に、延伸後のポリエステルフィルムの熱処理工程で、塗布層を高温で処理することができるため、塗布層上に形成され得る各種の表面機能層との接着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。また、延伸前にコーティングを行う場合は、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜で均一な塗工を行うことができる。すなわち、インラインコーティング、特に延伸前のコーティングにより、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。
また、本発明のフィルムの塗布層は、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが必要である。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。
これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
また、必要に応じ、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は、水系または水分散系が好ましい。
本発明において用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
塗布液の固形分濃度には特に制限はないが、通常0.3〜65重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。濃度がこれらの範囲より高すぎる場合も低すぎる場合も、機能を十分に発現するために必要な厚さの塗布層を設けることが困難となることがある。
塗布層の厚さは乾燥厚さで、通常0.003〜1.5μm、好ましくは0.01〜0.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.3μmである。塗布層の厚さが0.003μm未満の場合は十分な性能が得られない恐れがあり、1.5μmを超えるとフィルム同士のブロッキングが起こりやすくなる。
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させることが好ましい。塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、10重量%を超えると、粒子の凝集体が生成する可能性があり、フィルムの表面欠陥となる恐れがある。
無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。
有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は、透明性を阻害しない適切な添加量として10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。
また、塗布層は、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
また、本発明のポリエステルフィルムに関して、着色剤、導電材料等を加えてもよく、さらにその上に静電気による電撃、ゴミ付着防止、さらには電磁波シールドを目的とした機能性多層薄膜を形成してもよい。
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、蛍光増白剤、潤滑剤、遮光剤、マット化剤、および染料、顔料などの着色剤等を配合してもよい。また、必要に応じ、フィルムの滑り性や耐摩耗性を改良する目的などのために、ポリエステルに対し、不活性な無機または有機の微粒子などを配合することもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)積層ポリエステル層の平坦面側の最表層厚さ
フィルム小片を平坦面側が上側となるようにエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を平坦面側の最表層厚さとした。
(3)積層ポリエステルフィルムの表面粗さ(Ra)
(株)小坂研究所製表面粗さ測定機「SE−3F」によって得られた断面曲線から、基準長さ(2.5mm)だけ抜き取った部分(以下、抜き取り部分という)の平均線に平行2直線で抜き取り部分を挟んだ時、この2直線の間隔を断面曲線の縦倍率の方向に測定してその値をマイクロメートル(μm)単位で表したものを抜き取り部分の最大高さとした。最大高さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の最大高さの平均値で表した。なお、この時使用した触針の半径は2.0μmとし、荷重は30mg、カットオフ値は0.08mmとした。
(4)耐擦傷性
太平理化工業(株)社製のRUBBING TESTERを使用し、専用のフェルトで試料表面を荷重200gで10往復摩擦させた。摩擦後の表面を目視で観察し、以下の評価基準で耐擦傷性を評価した。
○:キズが確認できない
△:キズが少し確認できる
×:キズが多く確認できる
(5)巻取り性
ポリエステルフィルム製造時のフィルムのロール巻取り性を以下の評価基準で評価した。
○:巻取り性は良好
△:フィルムの滑り性はやや不足し、巻取り性は多少劣る
×:フィルムの滑り性は不足し、巻きズレ等発生し、巻取り性に問題がある
(6)グリーンシートスラリーの塗工性
ポリエステルフィルムの表面に、硬化型シリコーン樹脂(信越化学工業(株)社製「KS−779H」)100部、硬化剤(信越化学工業(株)社製「CAT−PL−8」1部、メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒(混合比率1:1)2200部よりなる離型剤を乾燥後の塗布量が0.1g/mとなるように塗布し、離型フィルムを得た。
この離型フィルムの離型面に、チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)社製:平均粒径0.7μm)100部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)社製「エスレック BM−S」)30部、可塑剤(フタール酸ジオクチル)5部、トルエン/エタノール混合溶媒(混合比率:6:4)200部よりなるセラミックスラリーを塗布し、乾燥後の塗布量が0.5g/mとなるように塗布しグリーンシートを得た。この際、以下の評価基準でグリーンシートの塗工性について評価した。
○:スラリーのはじき、塗工ムラが発生しない
△:微小なスラリーのはじき、塗工ムラが発生する
×:スラリーのはじき、塗工ムラが顕著に発生する
(7)グリーンシート表面の平滑性評価
上記、(6)に記載の方法で得られたグリーンシートの表面(測定対象面積:100cm)を走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック(株)社製)による表面観察を行い以下の判定基準により判定を行った。
○:グリーンシート表面に深さ0.05μm以上の凹みが1個以下/100cm
△:グリーンシート表面に深さ0.05μm以上の凹みが1個以上5個未満/100cm
×:グリーンシート表面に深さ0.05μm以上の凹みが5個以上/100cm
〈ポリエステルの製造〉
[ポリエステル(A0)]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、4時間重縮合反応を行った。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.55に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップを得た。極限粘度は0.55であった。得られたポリエステルチップを220℃で固相重合し、極限粘度0.65のポリエステル(B0)を得た。
[ポリエステル(A1)の製造方法]
ポリエステル(A0)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、平均粒子径60nmのエチレングリコールに分散させた酸化アルミニウム粒子を粒子のポリエステルに対する含有量が3.0重量%となるように添加し、4時間重縮合反応を行い、ポリエステル(A1)を得た。
[ポリエステル(A2)の製造方法]
ポリエステル(A1)の製造方法において、添加する粒子種を平均粒子径0.4μmのジビニルベンゼン架橋ポリスチレン粒子とし、ポリエステルに対する含有量を0.5重量%とした以外は、ポリエステル(A1)の製造方法と同じ方法でポリエステル(A2)を得た。
実施例1:
上記ポリエステル(A0)、(A1)をそれぞれ95.0重量%、5.0重量%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(A0)100%の原料をB層の原料とし、ポリエステル(A0)、(A2)をそれぞれ50.0重量%、50.0重量%の割合で混合した混合原料をC層の原料とし、3台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、A層、C層を最外層(表層)、B層を中間層として、40℃に冷却したキャスティングドラム上に、3種3層(ABC)で、厚み構成比がA:B:C=8:15:2になるように共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムをテンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、フィルムをロール上に巻き上げ厚さ25μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
実施例2:
実施例1において、A層の原料としてポリエステル(A0)を100.0重量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
実施例3:
実施例1において、3種3層(ABC)の厚み構成比をA:B:C=5:18:2とした以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
比較例1:
実施例1において、3種3層(ABC)の厚み構成比をA:B:C=2:21:2とした以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
比較例2:
実施例1において、A層の原料として(A0)、(A1)をそれぞれ40.0重量%、60.0重量%の割合で混合した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
Figure 2015136935
本発明のフィルムは、特にセラミック積層コンデンサー製造時の基材として好適に利用することができる。

Claims (2)

  1. 少なくとも3層以上の積層構造を有する積層ポリエステルフィルムであり、一方の表面の表面粗度(Ra)が0.002μm以下であり、当該表面を構成する表層の厚さが5μm以上であり、もう一方の表面の表面粗度(Ra)が0.002μmを超えることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
  2. 表面粗度(Ra)が0.002μm以下である表面を構成する表層に酸化アルミニウム粒子を1000ppm以上含有する請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
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