JP2007192849A - 反射防止フィルム用ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 反射防止膜の基材として使用するのに十分な光学特性を有し、かつポリエステルフィルムの両面加工後の取り扱い性、滑り性、巻き取り性にも優れ、保護フィルム等の存在がなくてもキズ、機能層の剥がれの発生等による品質低下を防止できる優れたポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも片側の表面のRaが10〜25nmの範囲であり、Rtが50〜500nmの範囲であり、ヘーズ値が10%以下であることを特徴とする反射防止フィルム用ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、表面に反射防止層を設けてなる反射防止フィルムの構成部材の基材として用いられるポリエステルフィルムに関する。詳しくは、本発明は、特にプラズマディスプレイの前面フィルターの最表面に配置される反射防止フィルムの基材として用いたときに高品質の画像が得られ、かつ片面に反射防止層を設け、その反対面に近赤外遮蔽層などの機能層を設けた際の滑り性、巻き取り性、取り扱い性に優れた反射防止フィルム用ポリエステルフィルムに関する。
明るい環境下でCRT、PDP、LCDなどのディスプレイに画像を表示すると、ディスプレイが表示している光と、ディスプレイ表面で反射する外光とが混ざり合い、ディスプレイ表示色の色純度劣化やコントラストの低下など、表示品質が著しく低下する。この表示品質の低下を抑える手段として、ディスプレイの最表面に低屈折率と高屈折率材料の積層体からなる反射防止層を設置し、外光のディスプレイ表面での反射を低減する方法が提案されている(特許文献1)。
かかる反射防止層の基材として用いられるフィルムには、表面の平滑性・機械的強度・コストの観点からポリエステルフィルムが好ましく用いられる。通常、ポリエステルフィルムは、取り扱い性や滑り性、巻き取り性などを改良するため表面に微細な突起を形成させる方法が用いられている。しかしながら、このような表面突起はフィルムのヘーズ上昇の起因となるため、反射防止層の基材として用いられるフィルムには可能な限り、表面突起をつけない設計のフィルムが用いられるのが通常であった。
近年はディスプレイ業界が目覚しく発展しており、生産性向上、軽量化・部材数低減の観点から反射防止加工をした面の裏面にも近赤外遮蔽などの機能を持たせる複合フィルムが主流となってきた。このような複合フィルムは、両面加工後さらにロール状に巻き取られ、次工程に送られる場合がほとんどであるが、ロール状に巻き取る際に反射防止加工面とその反対面の加工面が密着する形となるため、ブロッキングによるキズ、機能層の剥がれなどの欠陥発生防止のため保護フィルム等をかける必要がある。
特開平5−307104号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、反射防止膜の基材として好適に用いることのできるポリエステルフィルムを提供することであって、具体的には、特に反射防止膜の基材として使用するのに十分な光学特性を有し、かつポリエステルフィルムの両面加工後の取り扱い性、滑り性、巻き取り性にも優れ、保護フィルム等の存在がなくてもキズ、機能層の剥がれの発生等による品質低下を防止できる優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、特定の構成を採用することによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも片側の表面のRaが10〜25nmの範囲であり、Rtが50〜500nmの範囲であり、ヘーズ値が10%以下であることを特徴とする反射防止フィルム用ポリエステルフィルムに存する。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト(PEN)等が例示される。
また、本発明で用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体である。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、および、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または、二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
本発明にいうポリエステルフィルムとは、例えば、上記したポリエステルを押出口金から溶融押し出される、いわゆる押出法により、押し出されたポリエステルフィルムであって、必要に応じ、縦方向および横方向の二軸方向に配向させたフィルムである。また、フィルムは2台以上の押出機を用いて、いわゆる共押出法を用いて積層構造とされたものであってもよい。かかる積層構造は、A/Bの2層構造、A/B/AまたはA/B/Cの3層構造、あるいはさらに積層数の多い構造であってもよい。
本発明のポリエステルフィルムには、表面の滑り性を向上してブロッキング等の問題が起こらず取り扱い性を良好とするために、フィルム中に微粒子を含有させて適度な突起を形成させる。かかる微粒子の例としては、シリカ、アルミナ、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、フッ化リチウム等の無機粒子、テレフタル酸カルシウム、シュウ酸カルシウムなどの有機粒子、スチレン系、アクリル系などの架橋高分子粒子、ポリエステル製造工程において触媒、助剤を析出させて得られるいわゆる析出粒子などが挙げられる。また配合する微粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、通常0.01μm〜5μm、好ましくは0.02μm〜3μm、さらに好ましくは0.05μm〜3μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の粒子を用いた場合には、フィルム表面に有効な高さの突起を形成することができず、平坦化し、フィルム製造工程における巻き特性が劣ったり、フィルム製造工程でフィルム表面に傷が発生したりする等の問題が発生することがある。また、平均粒径が5μmを超える場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎる。傷が発生したり、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなると、反射板の基材として使用した時の光反射特性が悪化したりすることがある。
また本発明においては、上記した粒子を粒子種として2種類以上添加したり、平均粒径として2種類以上添加したりする方法を用いることができる。特に、表面の滑り性を向上して取り扱い性を良好にするために、小さい粒径の粒子を添加し、かつ巻き取り性をさらに向上するために、小さい粒子よりも少ない量の大きな粒子を配合する方法が好ましく採用される。この場合、いずれの粒子も平均粒径は上記した範囲とするが、小さい粒子は、その平均粒径が1.0μm以下のものが好ましく、0.8μm以下がさらに好ましい。一方、大きい粒子の平均粒径は1μmを超えることが好ましく、1.3μm以上がさらに好ましい。また粒子の配合量については、フィルム中に通常0.001〜5重量%の範囲、好ましくは0.01〜3重量%の範囲、さらに好ましくは0.05〜1重量%の範囲とする。2種類以上の粒子を含有する場合は、その合計量が上記した範囲であることが好ましい。またフィルムを共押出法などによる積層構造とした場合は、表面を形成する層の粒子含有量が上記した範囲であることが望ましい。
本発明においては、かかる方法で表面に突起を形成したり、後述する塗布層に粒子を配合したりするなどの方法で表面に粗度を与えたフィルムとするが、その表面粗度はRaが10〜25nmの範囲、好ましくは10〜18nm、さらに好ましくは10nm〜15nmの範囲である。また、Rtが50〜500nmの範囲、好ましくは100〜300nmの範囲、さらに好ましくは100〜200nmの範囲である。フィルムのRaが大きくなると、フィルムのヘーズ値が上昇し、反射防止フィルムとしての透明性が低下することになり、ディスプレイに設置したときの表示品位が悪化する。一方、Rtが小さすぎる場合は、特に両面加工後のフィルムの取り扱い性が劣るようになるので、加工後の巻き取り時にブロッキングを起こしたり、フィルム走行時に表面に傷が入り、その結果、ディスプレイに設置したときに表示品位が劣ったりする等の問題が発生することがある。
また、フィルムの反射防止層を設ける面の、高さ0.27μm以上0.54μm未満の大突起の個数は、通常100個/mm以下、好ましくは70個/mm以下、さらに好ましくは50個/mm以下であり、高さ0.54μm以上0.81μm未満の大突起の個数は、通常30個/mm以下、好ましくは20個/mm以下、さらに好ましくは15個/mm以下である。これらの条件を満足する場合、反射板用基材フィルムのヘーズを低く保つことができ、さらに高品質の反射防止フィルムを得ることができる。
フィルムのかかる表面形状を得るために、フィルムに配合する粒子を上記した粒径範囲とすることに加え、粒度分布値を3.0以下、好ましくは2.2以下、さらには2.0以下とすることが好ましい。粒径分布がシャープなのものであれば、粗大突起が生成せず、支持体として極めて高度な効果を発揮することができる。
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
以下、本発明のポリエステルフィルムに関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
本発明においては、ポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることもできる。層の構成としては、A原料とB原料とを用いたAB構成、またはABA構成、さらにC原料を用いてABC構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。例えばA原料として特定の粒子を用いてA層の表面形状を設計し、B原料としては粒子を含有しない原料を用い、ABまたはABA構成のフィルムとすることができる。この場合、表面の層に存在する粒子によりフィルムの滑り性・巻き取り性などの取り扱い性は向上するが、中間層にはヘーズ上昇の主因である粒子を含まないため、フィルムの取り扱い性を向上させつつ、ヘーズを大きく上昇させないというフィルムの取り扱い性と光学特性の両立が可能となる。またB層の原料を自由に選択できることからコスト的な利点などが大きい。さらに当該フィルムの再生原料をB層に配合しても表層であるA層により表面粗度の設計ができるので、さらにコスト的な利点が大きくなる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、反射防止層との密着性を高めることや、その反対面の加工層との接着性改良を目的として、表面に塗布層を設けることができる。かかる塗布層の形成に当たっては、フィルムを製造する工程内、特に縦方向に延伸した後、横方向の延伸の前に行う方法が、極めて薄い塗布層を形成できる点、塗布液の乾燥や硬化反応を製膜工程内で実施できることなどの点で好ましい。かかる塗布層としては、架橋剤と各種バインダー樹脂との組み合わせからなるものが好ましく、バインダー樹脂としては接着性の観点から、通常ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系の中から選ばれたポリマーを採用する。上記のポリマーは、それぞれそれらの誘導体をも含むものとする。ここでいう誘導体とは、他のポリマーとの共重合体、官能基に反応性化合物を反応させたポリマーを指す。
架橋剤樹脂としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられるが、塗布性、耐久接着性の点で、メラミン系樹脂が特に好ましい。メラミン系樹脂は、特に限定されるものではないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させることができる。塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、10重量%を超えると、フィルムの平滑性を阻害し、反射板に使用した場合、支障となる場合がある。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。
有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
また、塗布層は、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
塗布層は、ポリエステルフィルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面にのみ形成した場合、その反対面には必要に応じて上記の塗布層と異なる塗布層を形成して他の特性を付与することもできる。なお、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.02〜0.5μm、好ましくは0.03〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.02μm未満の場合は、本発明の効果が十分に発揮されない恐れがある。塗布層の厚さが0.5μmを超える場合は、フィルムが相互に固着しやすくなったり、特にフィルムの高強度化のために塗布処理フィルムを再延伸する場合は、工程中のロールに粘着しやすくなったりする傾向がある。上記の固着の問題は、特にフィルムの両面に同一の塗布層を形成する場合に顕著に現れる。
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、蛍光増白剤、潤滑剤、遮光剤、マット化剤、および染料、顔料などの着色剤等を配合してもよい。
本発明のフィルムを用いた反射防止フィルムの作成方法については、公知の方法を採用できる。すなわち密着性改良を目的とした塗布層が設けられたフィルムに傷擦傷性、耐溶剤性、耐熱性などの物理特性向上を目的としたハードコート層を積層する。このハードコート層には、ウレタン系、アクリレート系、エポキシ系など透明性良好な硬化性樹脂のうちから選択するのが好ましい。ハードコード層の形成は、硬化性樹脂モノマーまたはオリゴマー、反応開始剤、添加剤、希釈剤から調整された塗布液を塗布し、乾燥後、紫外線照射等により硬化させればよい。ハードコート層の厚さは特に限定されないが、1〜5μmの範囲が好ましい。
このようにして形成したハードコート層の上に反射防止層を形成する。この反射防止層には、通常、無機化合物、有機化合物で従来から公知のものを使用することができる。これらの反射防止層の形成は、蒸着・スパッタリングなどによるドライコーティング法、溶剤などを使用して塗設するウェットコーティング法の何れでもよいが、生産性を考慮するとウェットコーティング法による塗設が好適である。
また本発明のフィルムを用いた反射防止フィルムの反対面に近赤外遮蔽層などの機能層を作成する。近赤外遮蔽層などの機能層を作成する方法については、公知の方法を採用できる。具体例としては特開平10−78509号公報に記載の方法などを挙げることができる。
以上詳述したように、本発明のフィルムを反射防止フィルムの基材として用いた場合、好適な光学特性を与えることができ、さらに反射防止膜の反対面に近赤外遮蔽などの機能層を付与したときにおいても、滑り性、巻き取り性などの取り扱い性が良好であり、その工業的価値は高い。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50)および粒径分布値(d25/d75)
(株)島津製作所社製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いてストークスの抵抗則にもとづく沈降法によって粒子の大きさを測定した。測定された粒子の等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を用いて平均粒径(d50)とした。また同装置で測定された等価球形分布における大粒子側から積算を行い、下記の式から粒径分布値(d25/d75)を求めた。
粒径分布値=粒子の積算重量が25%のときの粒径/粒子の積算重量が75%のときの粒径
なお、粒径分布値は、1.0に近いほどシャープな粒径分布を有する。
(3)最大高さ(Rt)および中心線平均粗さ(Ra)(μm)
(株)小坂研究所製表面粗さ測定機(SE−3F)を用いて次のようにして求めた。すなわち、フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜きとり、この抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として粗さ曲線y=f(x)で表したとき、次式で与えられた値を中心線平均粗さ(Ra)とし、単位はμmで表した。
Ra=(1/L)∫ |f(x)|dx
最大高さ(Rt)は、上記で得られたフィルム断面曲線の抜き取り部分の、平均線に平行な2直線で抜き取り部分を挟んだ時、この2直線の間隔を断面曲線の縦倍率の方向に測定した値を最大高さ(Rt)とし、単位はμmで表した。最大高さ、中心線平均粗さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分のそれぞれの値の平均値で表した。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
(4)フィルム表面の粗大突起数
フィルム表面にアルミニウムを蒸着し、二光束干渉顕微鏡を用いて測定した。測定波長0.54μmで、1次の干渉縞を示すものを突起高さ0.27μm以上0.54μm未満、2次の干渉縞を示すものを0.54μm以上0.81μm未満として、それぞれ単位面積当たりに換算し、H1(個/mm)、H2(個/mm)として表した。
(5)フィルムヘーズ
JIS−K−7105に準じて日本電色工業社製積分球式濁度計「NDH−300A」により、フィルムヘーズを測定した。
(6)反射防止膜の設置
トルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒でアクリル系ハードコード剤(日本化薬製「KAYANOVA FOP−1700」を希釈し、これを硬化後の厚みで3μmとなるようにリバースグラビア方式で塗工した。次に110℃1分間乾燥して溶剤を除去した後、高圧水銀灯により出力120W/cm、照射距離15cm、ライン速度10m/分の条件で紫外線硬化させ、ハードコート層を形成した。このハードコート層の上に、パーフルオロブテニルビニルエーテルの重合体のパーフルオロ(2−ブチルテトラハイドロフラン)溶液を使用し、乾燥後の塗布厚さが100μmとなるようにマイクログラビア方式で塗工し、120℃で10分間乾燥し、反射防止層を積層した。
(7)近赤外遮蔽層の設置
トルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒で近赤外吸収色素「CIR−1085(日本カーリット製)」と樹脂バインダー「オプトレッツOZ1100(日立化成製)」を色素重量(対固形分濃度)6.2重量部となるように配合し、これを前記反射防止フィルムの反対面に乾燥後の厚みで6μmとなるようにマイクログラビア方式で塗工し、120℃で10分間乾燥し、フィルムをロール状に巻き取り、反射防止/近赤外遮蔽複合フィルムを得た。
(8)フィルムの巻き取り性評価
フィルムをゆっくりと巻きだした際にフィルム巻き取り特性を目視で観察し、下記基準で評価した。
・ランクA:極めてスムーズにフィルムを巻きだすことができる
・ランクB:部分的に密着している部分があるように見えるが、巻きだしの際、わずかに音を発するが、巻き出し後のフィルムにはキズなどの欠陥は確認されない
・ランクC:全体的に密着しており、巻き出しの際、音を発し、巻き出し後のフィルムには全面にキズ・近赤外遮蔽層の剥がれなどの欠陥が観察される
以下の実施例および比較例で用いたポリエステルの製造方法は次のとおりである。
〈ポリエステルの製造〉
[ポリエステル(A)の製造方法]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.03部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.66に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.66であった。
[ポリエステル(B)の製造方法]
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径0.68μm、粒度分布値1.70の合成炭酸カルシウム粒子を0.4部、三酸化アンチモン0.03部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は、極限粘度0.65であった。
[ポリエステル(C)の製造方法]
ポリエステル(B)の製造方法において、添加する粒子を平均粒径0.38μm、粒度分布値1.90のスチレン系架橋高分子粒子とし、添加量を0.3部としたこと以外は、ポリエステル(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は、極限粘度0.65であった。
[ポリエステル(D)の製造方法]
ポリエステル(B)の製造方法において、添加する粒子を平均粒径2.3μm、粒度分布値2.5の無定形シリカ粒子とし、添加量を0.1部としたこと以外は、ポリエステル(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(D)を得た。得られたポリエステル(D)は、極限粘度0.67であった。
実施例1:
上記ポリエステル(B)をA層の原料とし、ポリエステル(A)をB層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、40℃に冷却したキャスティングドラム上に、2種3層(A/B/A)の層構成で共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度81℃で縦方向に3.3倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で3.6倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、10/105/10μmであった。
実施例2:
実施例1において、A層の原料を、ポリエステル(A)とポリエステル(C)とを30:70の重量比で混合した原料としたこと以外は実施例1と同様にして、合計厚み125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
実施例3:
実施例1において、A層の原料を、ポリエステル(A)とポリエステル(C)とポリエステル(D)とを30:65:5の重量比で混合した原料としたこと、B層の原料として、実施例2で製造したフィルム端部のスリット部分を再生原料30部とポリエステル(A)とを30:70の重量比で混合した原料としたこと以外は実施例1と同様にして、合計厚み125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
実施例4:
実施例3において、A層の厚みを、片側を5μm、もう一方を15μmとし、原料は両表面層とも実施例3と同じとしたA/B/Aの構成でそれぞれのA層が異なる厚みとし、合計厚みを100μmとしたこと以外は実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。この場合厚み5μmの層を、反射防止層を形成する面とした。
比較例1:
ポリエステル(A)とポリエステル(C)とを40:60の重量比で混合した原料を用いて、1台の押出機を用いて溶融押出し、延伸および熱処理の条件は実施例1と同様にして厚み100μmの単層のフィルムを作成した。このフィルムを使用して得た反射防止フィルムはヘーズの高い白っぽいフィルムとなりディスプレイ用途には不適のものであった。
比較例2:
実施例1において、A層原料をポリエステル(A)と(D)とを98:2の重量比で混合した原料としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み125μmのポリエステルフィルムを得た。この場合、反射防止膜のフィルムの巻き取り性は良好であったが、近赤外遮蔽膜の設置後の滑り性、巻き取り性が不良となり、フィルムにキズ、近赤外層の剥がれなどの欠陥が全面に発生するという問題が発生した。
比較例3:
実施例1において、A層原料をポリエステル(A)と(D)とを40:60の重量比で混合した原料としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み125μmのポリエステルフィルムを得た。この場合、フィルムの表面粗度が大きすぎるため、このフィルムを使用して得た反射防止フィルムはヘーズの高い白っぽいフィルムとなりディスプレイ用途には不適のものであった。
以上、得られた結果をまとめて下記表1に示す。実施例のフィルムは、高品質の反射防止フィルムとして利用できるものであった。
Figure 2007192849
本発明のフィルムは、例えば、反射防止フィルムの構成部材の基材として好適に利用することができる。

Claims (1)

  1. 少なくとも片側の表面のRaが10〜25nmの範囲であり、Rtが50〜500nmの範囲であり、ヘーズ値が10%以下であることを特徴とする反射防止フィルム用ポリエステルフィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011140608A (ja) * 2010-01-09 2011-07-21 Mitsubishi Plastics Inc ポリエステルフィルム
JP2011178902A (ja) * 2010-03-02 2011-09-15 Mitsubishi Plastics Inc ポリエステルフィルム

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