JP2015135621A - 演算装置、演算方法および無線通信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】発散を抑えつつ並列効率の向上を図ること。【解決手段】演算装置10は、無線通信システムにおける無線信号の等化処理を行うイコライザの重みを演算する。演算装置10は、演算部11と、切換部12と、を備える。演算部11は、並列演算器を用いた繰り返し演算により一次方程式の近似解を得る。切換部12は、繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、演算部11による繰り返し演算の第1アルゴリズムと、第1アルゴリズムより発散しやすく並列演算効率が高い第2アルゴリズムと、を切り換える。【選択図】図1B
Description
本発明は、演算装置、演算方法および無線通信装置に関する。
従来、連立一次方程式を反復法で解く手法として、ガウス−ザイデル法やガウス−ヤコビ法が知られている。また、回路シミュレータによる水道管網の解析において、ガウス−ザイデル法を用いて仮想状態方程式を解く技術が知られている(たとえば、下記特許文献1参照。)。
しかしながら、上述した従来技術では、並列演算器を用いた繰り返し演算により一次方程式の近似解を得る場合に、近似解が発散しにくい反復法を用いると並列演算の効率が低く、並列演算の効率が高い反復法を用いると近似解が発散する場合がある。
1つの側面では、本発明は、発散を抑えつつ並列効率の向上を図ることができる演算装置、演算方法および無線通信装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一側面によれば、並列演算器を用いた繰り返し演算により一次方程式の近似解を得る場合に、前記繰り返し演算を、前記繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、第1アルゴリズムと、前記第1アルゴリズムより発散しやすく並列演算効率が高い第2アルゴリズムと、に交互に切り換える演算装置、演算方法および無線通信装置が提案される。
本発明の一側面によれば、発散を抑えつつ並列効率の向上を図ることができるという効果を奏する。
以下に図面を参照して、本発明にかかる演算装置、演算方法および無線通信装置の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1Aは、実施の形態1にかかる演算装置の一例を示す図である。図1Bは、図1Aに示した演算装置における信号の流れの一例を示す図である。図1A,図1Bに示すように、実施の形態1にかかる演算装置10は、演算部11と、切換部12と、を備える。
図1Aは、実施の形態1にかかる演算装置の一例を示す図である。図1Bは、図1Aに示した演算装置における信号の流れの一例を示す図である。図1A,図1Bに示すように、実施の形態1にかかる演算装置10は、演算部11と、切換部12と、を備える。
演算部11は、並列演算器を用いた繰り返し演算により(連立)一次方程式の近似解を得る演算部である。演算部11は、たとえば繰り返し演算のたびに、得られた近似解を出力する。
切換部12は、演算部11による繰り返し演算を、繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、第1アルゴリズムと第2アルゴリズムとに交互に切り換える切換部である。切り換えは、たとえば、一回の演算ごとの切り換えや、複数回の演算ごとの切り換えなどを含む。また、たとえば第1アルゴリズム、第2アルゴリズム、第2アルゴリズム、第1アルゴリズム、第2アルゴリズム、第2アルゴリズム、…のように、異なる回数ずつ交互に切り換えてもよい。また、第1アルゴリズムおよび第2アルゴリズムのみを用いる場合に限らず、たとえば第3アルゴリズムをさらに用いるようにしてもよい。
第2アルゴリズムは、第1アルゴリズムより発散しやすい(収束性が悪い)並列演算効率が高い更新アルゴリズムである。発散しやすい更新アルゴリズムとは、たとえば、反復行列のスペクトル半径が大きい更新アルゴリズムである。反復行列のスペクトル半径については後述する。また、並列演算効率が高い更新アルゴリズムとは、たとえば、並列演算器により同時実行が可能な演算の数が多い更新アルゴリズムである。
このように、繰り返し演算の繰り返し回数に応じて収束性および並列演算効率が異なる複数のアルゴリズムを交互に切り換えることにより、近似解の発散を抑えつつ、並列演算効率の向上を図ることができる。
<更新アルゴリズムの一例>
一例としては、第1アルゴリズムをガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムとし、第2アルゴリズムをガウス−ヤコビ法の更新アルゴリズムとすることができる。繰り返し演算の繰り返し回数に応じてガウス−ザイデル法およびガウス−ヤコビ法の各更新アルゴリズムを切り換えることにより、近似解の発散を抑えつつ、並列演算効率の向上を図ることができる。
一例としては、第1アルゴリズムをガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムとし、第2アルゴリズムをガウス−ヤコビ法の更新アルゴリズムとすることができる。繰り返し演算の繰り返し回数に応じてガウス−ザイデル法およびガウス−ヤコビ法の各更新アルゴリズムを切り換えることにより、近似解の発散を抑えつつ、並列演算効率の向上を図ることができる。
または、第1アルゴリズムを、近似解を示す1つのベクトルに対応する演算式を用いる更新アルゴリズムとし、第2アルゴリズムを、近似解を示すベクトルを分割した複数のベクトルに対応する各演算式を用いる更新アルゴリズムとしてもよい。近似解を示す1つのベクトルに対応する演算式を用いる更新アルゴリズムは、一例としてはガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムである。
近似解を示すベクトルを分割した複数のベクトルに対応する各演算式を用いる更新アルゴリズムは、たとえばガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムを変形したものとすることができる。近似解を示すベクトルを分割した複数のベクトルに対応する各演算式を用いる更新アルゴリズムは、近似解を示す1つのベクトルに対応する演算式を用いる更新アルゴリズムに比べて、発散しやすく並列演算効率が高い更新アルゴリズムとなる。また、たとえばガウス−ヤコビ法の更新アルゴリズムより収束しやすい更新アルゴリズムとなる。このため、近似解の発散をより抑えつつ、並列演算効率の向上を図ることができる。
<変形例>
また、切換部12は、第2アルゴリズムを用いた繰り返し演算による近似解が常に収束する所定条件を一次方程式が満たしているか否かを判定してもよい。そして、切換部12は、判定結果に基づいて、所定条件を一次方程式が満たしている期間は、演算部11の繰り返し回数に関わらず第2アルゴリズムを維持する。これにより、第2アルゴリズムを用いても近似解が発散しない状況において並列演算効率をより向上させることができる。
また、切換部12は、第2アルゴリズムを用いた繰り返し演算による近似解が常に収束する所定条件を一次方程式が満たしているか否かを判定してもよい。そして、切換部12は、判定結果に基づいて、所定条件を一次方程式が満たしている期間は、演算部11の繰り返し回数に関わらず第2アルゴリズムを維持する。これにより、第2アルゴリズムを用いても近似解が発散しない状況において並列演算効率をより向上させることができる。
(実施の形態2)
(実施の形態2にかかる演算装置)
図2Aは、実施の形態2にかかる演算装置の一例を示す図である。図2Bは、図2Aに示した演算装置における信号の流れの一例を示す図である。図2A,図2Bに示すように、実施の形態2にかかる演算装置20は、更新部セレクタ21(Updater Selection)と、ガウス−ザイデル更新部22(Gauss−Seidel Updater)と、ガウス−ヤコビ更新部23(Gauss−Jacobi Updater)と、並列MAC演算部24と、重み保持部25(w(n))と、を備える。演算装置20は、たとえば無線受信機に設けられ、受信信号の等化処理を行うイコライザの合成重みを算出する演算装置である。
(実施の形態2にかかる演算装置)
図2Aは、実施の形態2にかかる演算装置の一例を示す図である。図2Bは、図2Aに示した演算装置における信号の流れの一例を示す図である。図2A,図2Bに示すように、実施の形態2にかかる演算装置20は、更新部セレクタ21(Updater Selection)と、ガウス−ザイデル更新部22(Gauss−Seidel Updater)と、ガウス−ヤコビ更新部23(Gauss−Jacobi Updater)と、並列MAC演算部24と、重み保持部25(w(n))と、を備える。演算装置20は、たとえば無線受信機に設けられ、受信信号の等化処理を行うイコライザの合成重みを算出する演算装置である。
図1A,図1Bに示した演算装置10は、たとえば演算装置20によって実現することができる。図1A,図1Bに示した演算部11は、たとえばガウス−ザイデル更新部22、ガウス−ヤコビ更新部23および並列MAC演算部24によって実現することができる。図1A,図1Bに示した切換部12は、たとえば更新部セレクタ21によって実現することができる。
更新部セレクタ21には、重み保持部25から出力された重みベクトルw(n)と、重みベクトルw(n)の演算の繰り返し回数nと、が入力される。更新部セレクタ21は、ガウス−ザイデル更新部22およびガウス−ヤコビ更新部23のいずれかを繰り返し回数nに応じて周期的に選択する。そして、更新部セレクタ21は、選択した更新部へ、重み保持部25から出力された重みベクトルw(n)を出力する。
ガウス−ザイデル更新部22は、更新部セレクタ21から重みベクトルw(n)が出力されると、並列MAC演算部24における繰り返し演算における演算データを、正方行列R、ステアリングベクトルhおよび重みベクトルw(n)に基づいて更新する。また、ガウス−ザイデル更新部22は、演算データをガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムによって更新する。そして、ガウス−ザイデル更新部22は、更新した演算データに基づいて並列MAC演算部24によって算出された重みベクトルw(n+1)を取得し、取得した重みベクトルw(n+1)を重み保持部25へ出力する。
ガウス−ヤコビ更新部23は、更新部セレクタ21から重みベクトルw(n)が出力されると、並列MAC演算部24における繰り返し演算における演算データを、正方行列R、ステアリングベクトルhおよび重みベクトルw(n)に基づいて更新する。また、ガウス−ヤコビ更新部23は、演算データをガウス−ヤコビ法の更新アルゴリズムによって更新する。そして、ガウス−ヤコビ更新部23は、更新した演算データに基づいて並列MAC演算部24によって算出された重みベクトルw(n+1)を取得し、取得した重みベクトルw(n+1)を重み保持部25へ出力する。
並列MAC演算部24は、並列のMAC(Multiply and ACcumulation:積和)演算器を備える。並列MAC演算部24は、並列のMAC演算器を用いて、ガウス−ザイデル更新部22またはガウス−ヤコビ更新部23によって更新された演算データに基づく重みベクトルw(n+1)を算出する。そして、算出結果をガウス−ザイデル更新部22またはガウス−ヤコビ更新部23へ返す。
重み保持部25は、ガウス−ザイデル更新部22またはガウス−ヤコビ更新部23から出力された重みベクトルw(n+1)を保持する。そして、重み保持部25は、保持した重みベクトルw(n+1)を、つぎの演算周期において重みベクトルw(n)として出力する。重み保持部25から出力された重みベクトルw(n)は、演算装置20による演算結果として出力されるとともに更新部セレクタ21へ入力される。
図2A,図2Bに示す演算装置20によれば、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムと、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズムと、を周期的に切り換えることができる。これにより、ガウス−ヤコビ法の更新アルゴリズムを部分的に用いることにより並列演算の効率を上げることができる。また、ガウス−ヤコビ法では発散してしまうような条件においても、途中でガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムを用いることにより、安定に収束する状態を維持することができる。このため、並列演算の効率および収束性を向上させることができる。
(演算装置の動作)
図2Cは、演算装置の動作の一例を示すフローチャートである。図2A,図2Bに示した演算装置20は、たとえば図2Cに示す各ステップを実行する。まず、演算装置20は、繰り返し回数nおよび重みベクトルw(0)を初期化(n=0,w(0)=(0,0,…,0)T)する(ステップS201)。
図2Cは、演算装置の動作の一例を示すフローチャートである。図2A,図2Bに示した演算装置20は、たとえば図2Cに示す各ステップを実行する。まず、演算装置20は、繰り返し回数nおよび重みベクトルw(0)を初期化(n=0,w(0)=(0,0,…,0)T)する(ステップS201)。
つぎに、演算装置20は、更新部セレクタ21がガウス−ザイデル(ガウス−ザイデル更新部22)を選択したか否かを判断する(ステップS202)。更新部セレクタ21がガウス−ザイデルを選択した場合(ステップS202:Yes)は、演算装置20は、ガウス−ザイデル更新部22で重みベクトルw(n)より重みベクトルw(n+1)を求め(ステップS203)、ステップS205へ移行する。更新部セレクタ21がガウス−ヤコビ(ガウス−ヤコビ更新部23)を選択した場合(ステップS202:No)は、演算装置20は、ガウス−ヤコビ更新部23で重みベクトルw(n)より重みベクトルw(n+1)を求める(ステップS204)。
つぎに、演算装置20は、並列MAC演算部24において、ステップS203またはステップS204によって求めた重みベクトルw(n+1)によって重みベクトルw(n)を更新する(ステップS205)。つぎに、演算装置20は、繰り返し回数nをインクリメント(n=n+1)する(ステップS206)。
つぎに、演算装置20は、所定の終了条件を満たしたか否かを判断する(ステップS207)。所定の終了条件は、たとえば、繰り返し回数nが所定回数に達したこととすることができる。所定の終了条件を満たしていない場合(ステップS207:No)は、演算装置20は、ステップS202へ戻る。終了条件を満たした場合(ステップS207:Yes)は、演算装置20は、重みベクトルw(n)を出力し(ステップS208)、一連の動作を終了する。
または、ステップS207とステップS208の順序を入れ替え、演算装置20は所定の終了条件を満たすまで、繰り返し演算のたびに重みベクトルw(n)を出力するようにしてもよい。
更新部セレクタ21はガウス−ザイデル更新部22およびガウス−ヤコビ更新部23のいずれかを繰り返し回数nに応じて選択するため、以上の各ステップにより、繰り返し回数nに応じて各更新アルゴリズムを切り換えることができる。
(演算装置を適用した無線受信機)
図3Aは、演算装置を適用した無線受信機の一例を示す図である。図3Bは、図3Aに示した無線受信機における信号の流れの一例を示す図である。図2A,図2Bに示した演算装置20は、たとえば図3A,図3Bに示す無線受信機30に適用することができる。無線受信機30は、アンテナ31と、AGCアンプ32と、A/Dコンバータ33と、復調部34と、復号部35と、を備える無線通信装置である。
図3Aは、演算装置を適用した無線受信機の一例を示す図である。図3Bは、図3Aに示した無線受信機における信号の流れの一例を示す図である。図2A,図2Bに示した演算装置20は、たとえば図3A,図3Bに示す無線受信機30に適用することができる。無線受信機30は、アンテナ31と、AGCアンプ32と、A/Dコンバータ33と、復調部34と、復号部35と、を備える無線通信装置である。
アンテナ31は、無線送信された信号を受信し、受信した信号をAGCアンプ32へ出力する。AGCアンプ32は、アンテナ31から出力された信号を一定利得で増幅するAGC(Automatic Gain Control:利得一定制御)を行う。そして、AGCアンプ32は、増幅した信号をA/Dコンバータ33へ出力する。
A/Dコンバータ33は、AGCアンプ32から出力された信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する。そして、A/Dコンバータ33は、ディジタル信号に変換した信号を復調部34へ出力する。
復調部34は、A/Dコンバータ33から出力された信号の復調処理を行う。そして、復調部34は、復調処理によって得られた軟判定ビット列を復号部35へ出力する。復調部34による復調処理には、たとえば等化処理が含まれる。たとえば、復調部34は、チャネル推定部36と、相関行列算出部37と、イコライザ重み算出部38と、イコライザ39と、を備える。
チャネル推定部36は、A/Dコンバータ33から出力された信号に基づくチャネル推定を行う。そして、チャネル推定部36は、チャネル推定結果を上述したステアリングベクトルhとしてイコライザ重み算出部38へ出力する。
相関行列算出部37は、A/Dコンバータ33から出力された信号に基づく相関行列を算出する。そして、相関行列算出部37は、算出した相関行列を上述した正方行列Rとしてイコライザ重み算出部38へ出力する。
イコライザ重み算出部38は、チャネル推定部36から出力されたステアリングベクトルhと、相関行列算出部37から出力された正方行列Rと、に基づいて、イコライザ39における合成重みを算出する。そして、イコライザ重み算出部38は、算出した合成重みをイコライザ39へ出力する。図2A,図2Bに示した演算装置20は、たとえばイコライザ重み算出部38に適用することができる。
イコライザ39は、A/Dコンバータ33から出力された信号に対して、イコライザ重み算出部38から出力された合成重みに基づく等化処理を行う。そして、イコライザ39は、等化処理を行った信号を復号部35へ出力する。
復号部35は、復調部34から出力された軟判定ビット列に基づく復号処理を行う。復号部35による復号処理には、たとえば誤り訂正処理などが含まれる。復号部35は、復号処理によって得られた“0”,“1”のビット列を出力する。
なお、無線受信機30は、たとえばアンテナ31とA/Dコンバータ33との間に、デュプレクサ、フィルタ、ダウンコンバータ、LNA(Low Noise Amplifier)などのアナログ素子をさらに備えていてもよい。
(各アルゴリズムによる一次方程式の近似解法)
つぎに、一次方程式であるRw=hのガウス−ザイデル法およびガウス−ヤコビ法による近似解法を説明する。wは、たとえば近似解となる重みベクトル(たとえばイコライザの合成重みベクトル)である。Rは、相関行列であってN×Nの正方行列である。hはステアリングベクトルである。相関行列Rおよびステアリングベクトルhは、たとえば演算装置20の外部から与えられる。
つぎに、一次方程式であるRw=hのガウス−ザイデル法およびガウス−ヤコビ法による近似解法を説明する。wは、たとえば近似解となる重みベクトル(たとえばイコライザの合成重みベクトル)である。Rは、相関行列であってN×Nの正方行列である。hはステアリングベクトルである。相関行列Rおよびステアリングベクトルhは、たとえば演算装置20の外部から与えられる。
図4Aは、一次方程式のブロック分割の一例を示す図である。一次方程式Rw=hは、たとえば図4Aに示す式41によって示すことができる。式41のDは、相関行列Rの対角成分のみを取り出した対角行列である。Eは、相関行列Rの上三角行列である。Fは、相関行列Rの下三角行列である。
<ガウス−ザイデル法による近似解法>
まず、一次方程式Rw=hのガウス−ザイデル法による近似解法について説明する。ガウス−ザイデル法においては、式41を下記(1)式のように変換した重みベクトルwの更新式(演算式)が用いられる。そして、適当な初期値の重みベクトルw(0)からはじめて、重みベクトルw(n)を順次算出することにより近似的に重みベクトルwが求められる。
まず、一次方程式Rw=hのガウス−ザイデル法による近似解法について説明する。ガウス−ザイデル法においては、式41を下記(1)式のように変換した重みベクトルwの更新式(演算式)が用いられる。そして、適当な初期値の重みベクトルw(0)からはじめて、重みベクトルw(n)を順次算出することにより近似的に重みベクトルwが求められる。
上記(1)式の更新式は、重みベクトルw(n)から左辺の重みベクトルw(n+1)を求める式である一方、右辺に重みベクトルw(n+1)が含まれている。ここで、上記(1)式は下記(2)式のように変形することができる。w0 (n+1),w1 (n+1),w2 (n+1),…は、重みベクトルw(n+1)の要素である。
上記(2)式に示すように、たとえば重みw0 (n+1)は、右辺に重みwx (n+1)が含まれていないため算出可能である。また、重みw1 (n+1)は、右辺に重みw0 (n+1)を含むが、重みw0 (n+1)の算出後であれば算出できる。
このように、ガウス−ザイデル法においては、上記(2)式の各式を上から順次計算することにより、右辺に重みベクトルw(n+1)を含む上記(1)式であっても重みベクトルw(n)の算出が可能である。ただし、上記(2)式の各式を順次計算する必要があるということは同時に計算できないということを意味するため、並列演算器による並列演算の効率は低い。
<ガウス−ヤコビ法による近似解法>
つぎに、一次方程式Rw=hのガウス−ヤコビ法による近似解法について説明する。ガウス−ヤコビ法においては、式41を下記(3)式のように変換した重みベクトルwの更新式が用いられる。そして、適当な初期値の重みベクトルw(0)からはじめて、重みベクトルw(n)を順次算出することにより近似的に重みベクトルwが求められる。
つぎに、一次方程式Rw=hのガウス−ヤコビ法による近似解法について説明する。ガウス−ヤコビ法においては、式41を下記(3)式のように変換した重みベクトルwの更新式が用いられる。そして、適当な初期値の重みベクトルw(0)からはじめて、重みベクトルw(n)を順次算出することにより近似的に重みベクトルwが求められる。
上記(3)式の更新式は、右辺に重みベクトルw(n+1)が含まれていない。したがって、ガウス−ヤコビ法においては、重みベクトルw(n+1)の要素w0 (n+1),w1 (n+1),w2 (n+1),…の演算の順序に制約がない。このため、並列演算器による並列演算の効率が高い。ただし、ガウス−ヤコビ法は、ガウス−ザイデル法に比べて発散しやすい。
<更新アルゴリズムの収束性>
たとえば上記(1)式に示したガウス−ザイデル法の更新式は、たとえばM(N+1)=Mw(n)+C(ただしM=−(D+F)-1E)のように変換することができる。このMを反復行列、Mの最大固有値の絶対値を「スペクトル半径」と称する。「スペクトル半径」が1より小さければwは収束する。また、スペクトル半径が小さいほど、速くwは収束する。したがって、発散しやすい更新アルゴリズムとは、たとえば反復行列のスペクトル半径が大きい更新アルゴリズムである。
たとえば上記(1)式に示したガウス−ザイデル法の更新式は、たとえばM(N+1)=Mw(n)+C(ただしM=−(D+F)-1E)のように変換することができる。このMを反復行列、Mの最大固有値の絶対値を「スペクトル半径」と称する。「スペクトル半径」が1より小さければwは収束する。また、スペクトル半径が小さいほど、速くwは収束する。したがって、発散しやすい更新アルゴリズムとは、たとえば反復行列のスペクトル半径が大きい更新アルゴリズムである。
(各アルゴリズムにおける近似解)
図4Bは、各アルゴリズムにおける近似解の一例を示す図である。図4Bにおいて、横軸(Number of Iterations)は、演算の繰り返し回数nを示している。縦軸(Weight value)は、近似解として算出された合成重みを示している。演算結果42,43は、たとえば図3A,図3Bに示した無線受信機30のイコライザ重み算出部38に各アルゴリズムを適用した場合において、伝搬環境が3パス等レベルのときの、繰り返し回数に対する近似解(合成重み)の演算結果を示している。
図4Bは、各アルゴリズムにおける近似解の一例を示す図である。図4Bにおいて、横軸(Number of Iterations)は、演算の繰り返し回数nを示している。縦軸(Weight value)は、近似解として算出された合成重みを示している。演算結果42,43は、たとえば図3A,図3Bに示した無線受信機30のイコライザ重み算出部38に各アルゴリズムを適用した場合において、伝搬環境が3パス等レベルのときの、繰り返し回数に対する近似解(合成重み)の演算結果を示している。
演算結果42(Gauss−Seidel)は、ガウス−ザイデル法における演算結果を示している。演算結果43(Gauss−Jacobi)は、ガウス−ヤコビ法における演算結果を示している。演算結果42,43に示すように、ガウス−ヤコビ法では、ガウス−ザイデル法に比べて近似解が発散しやすい。このため、仮に、ガウス−ザイデル法またはガウス−ヤコビ法のみを用いる場合は、近似解の収束性と並列演算の効率を両立できない。
これに対して、演算装置20は、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムと、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズムと、を繰り返し回数に応じて周期的に切り換えることができる。これにより、近似解の収束性と並列演算の効率を向上させることができる。
(演算装置のハードウェア構成)
図5Aは、演算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図5Bは、図5Aに示した演算装置のハードウェア構成における信号の流れの一例を示す図である。図2A,図2Bに示した演算装置20は、たとえば図5A,図5Bに示すDSP50(Digital Signal Processor)によって実現することができる。
図5Aは、演算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図5Bは、図5Aに示した演算装置のハードウェア構成における信号の流れの一例を示す図である。図2A,図2Bに示した演算装置20は、たとえば図5A,図5Bに示すDSP50(Digital Signal Processor)によって実現することができる。
DSP50は、制御回路51と、MAC演算器52〜54と、メモリ55(Memory)と、を備える。図2A,図2Bに示した更新部セレクタ21、ガウス−ザイデル更新部22およびガウス−ヤコビ更新部23は、たとえば制御回路51によって実現することができる。図2A,図2Bに示した並列MAC演算部24は、たとえばMAC演算器52〜54によって実現することができる。図2A,図2Bに示した重み保持部25は、たとえばメモリ55によって実現することができる。制御回路51の制御により、メモリ55に格納されたデータがMAC演算器52〜54によって演算され、演算結果がメモリ55に格納される。
ここでは演算装置20を実現する回路としてDSPを用いる例について説明したが、演算装置20は、DSPに限らず、FPGA(Field Programmable Gate Array)など各種のプロセッサによって実現することができる。また、ここでは3個のMAC演算器52〜54を備える構成について説明したが、並列演算器は2個の演算器であってもよいし、4個以上(たとえば64個)の演算器であってもよい。また、DSP50がMAC演算器52〜54を備える構成について説明したが、MAC演算器52〜54はDSP50の外部に設けられていてもよい。
(更新アルゴリズムの切り換え)
図6Aは、更新アルゴリズムの切り換えの一例を示す図である。図6Aに示す切り換え順序61は、更新部セレクタ21による、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムと、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズムと、の切り換えの順序を示している。
図6Aは、更新アルゴリズムの切り換えの一例を示す図である。図6Aに示す切り換え順序61は、更新部セレクタ21による、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムと、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズムと、の切り換えの順序を示している。
切り換え順序61に示す例では、更新部セレクタ21は、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズム(GS)1回と、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズム(GJ)2回と、を交互に切り換える。これにより、ガウス−ヤコビ法をそのまま用いたときに発散していた状況でも、途中に挟んだガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムにより近似解が収束半径に留まり、結果も収束することが期待できる。
たとえば、更新部セレクタ21は、切り換え順序61を示す情報(テーブル等)を記憶しており、記憶した情報に基づいて、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムと、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズムと、を切り換える。
図6Bは、更新アルゴリズムの切り換えの別の例を示す図である。図6Bに示す切り換え順序62は、更新部セレクタ21による、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムと、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズムと、の切り換えの順序を示している。
切り換え順序62に示す例では、更新部セレクタ21は、所定期間Tの前半でガウス−ザイデル法の更新アルゴリズム(GS)を多く用い、所定期間Tの後半ではガウス−ヤコビ法の更新アルゴリズム(GJ)を多く用いる。これにより、所定期間Tの前半である程度近似解を収束させることができれば、後半は収束性の悪いガウス−ヤコビ法を用いても正しく収束できることが期待できる。所定期間Tは、たとえば無線受信機による等化処理の一周期である。
たとえば、更新部セレクタ21は、切り換え順序62を示す情報(テーブル等)を記憶しており、記憶した情報に基づいて、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムと、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズムと、を切り換える。
(ガウス−ザイデル法とガウス−ヤコビ法とを切り換える場合の近似解)
図7は、ガウス−ザイデル法とガウス−ヤコビ法とを切り換える場合の近似解の一例を示す図である。図7において、横軸(Number of Iterations)は、演算の繰り返し回数nを示している。縦軸(Weight value)は、近似解として算出された合成重みを示している。演算結果71,72のそれぞれは、繰り返し回数に対する近似解(合成重み)の演算結果を示している。
図7は、ガウス−ザイデル法とガウス−ヤコビ法とを切り換える場合の近似解の一例を示す図である。図7において、横軸(Number of Iterations)は、演算の繰り返し回数nを示している。縦軸(Weight value)は、近似解として算出された合成重みを示している。演算結果71,72のそれぞれは、繰り返し回数に対する近似解(合成重み)の演算結果を示している。
演算結果71(Gauss−Seidel)は、ガウス−ザイデル法における演算結果を参考として示している。演算結果72(GS1+GJ2)は、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズム(GS)1回と、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズム(GJ)2回と、を交互に切り換えた場合(たとえば図6A参照)における演算結果を示している。
演算結果71,72に示すように、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズム(GS)と、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズム(GJ)と、を交互に切り換えることにより、ガウス−ザイデル法単体の場合と同様に良好な収束性を得ることができる。そして、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズム(GS)と、ガウス−ヤコビ法による更新アルゴリズム(GJ)と、を交互に切り換えることにより、ガウス−ザイデル法単体の場合に比べて並列演算の効率を向上させることができる。
このように、実施の形態2によれば、繰り返し演算の繰り返し回数に応じてガウス−ザイデル法およびガウス−ヤコビ法の各更新アルゴリズムを交互に切り換えることにより、近似解の発散を抑えつつ、並列演算効率の向上を図ることができる。
(実施の形態3)
図8Aは、実施の形態3にかかる演算装置の一例を示す図である。図8Bは、図8Aに示した演算装置における信号の流れの一例を示す図である。図8A,図8Bにおいて、図2A,図2Bに示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図8Aは、実施の形態3にかかる演算装置の一例を示す図である。図8Bは、図8Aに示した演算装置における信号の流れの一例を示す図である。図8A,図8Bにおいて、図2A,図2Bに示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図8A,図8Bに示すように、実施の形態3にかかる演算装置20は、図2A,図2Bに示したガウス−ヤコビ更新部23に代えて変形ガウス−ザイデル更新部81(Modified Gauss−Seidel Updater)を備える。変形ガウス−ザイデル更新部81は、たとえば図5A,図5Bに示した制御回路51によって実現することができる。
変形ガウス−ザイデル更新部81は、更新部セレクタ21から重みベクトルw(n)が出力されると、並列MAC演算部24における繰り返し演算における演算データを、正方行列R、ステアリングベクトルhおよび重みベクトルw(n)に基づいて更新する。また、変形ガウス−ザイデル更新部81は、演算データを変形ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムによって更新する。変形ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムについては後述する(たとえば図9参照。)そして、変形ガウス−ザイデル更新部81は、更新した演算データに基づいて並列MAC演算部24によって算出された重みベクトルw(n+1)を取得し、取得した重みベクトルw(n+1)を重み保持部25へ出力する。
(変形ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムによる一次方程式の近似解法)
図9は、一次方程式のブロック分割の一例を示す図である。一次方程式Rw=hは、たとえば図9に示す式90によって示すことができる。変形ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムにおいては、重みベクトルwが重みベクトルz1,z2の2つのブロックに分割される。これに対応して、ステアリングベクトルhも2つのブロックに分割される。また、相関行列Rは4つのブロックに分割される。
図9は、一次方程式のブロック分割の一例を示す図である。一次方程式Rw=hは、たとえば図9に示す式90によって示すことができる。変形ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムにおいては、重みベクトルwが重みベクトルz1,z2の2つのブロックに分割される。これに対応して、ステアリングベクトルhも2つのブロックに分割される。また、相関行列Rは4つのブロックに分割される。
変形ガウス−ザイデル法においては、式90を下記(4)式および下記(5)式のように変換した重みベクトルz1,z2の更新式が用いられる。そして、適当な初期値の重みベクトルz1 (0),z2 (0)からはじめて、重みベクトルz1 (n),z2 (n)を順次算出することにより近似的に重みベクトルwが求められる。
上記(4)式は、下記(6)式のように変形することができる。また、上記(5)式は、下記(7)式のように変形することができる。なお、K=N/2である。
上記(6)式に示すように、重みベクトルwの前半の重みベクトルz1を算出する各式には未知の変数は含まれていないため、全て並列で実行することが可能である。また、上記(7)式に示すように、重みベクトルwの後半の重みベクトルz2を算出する各式には未知の変数は含まれるが、これらの未知の変数は上記(6)式で求められる値である。このため、上記(6)式の演算後であれば、重みベクトルwの後半の重みベクトルz2を算出する各式は全て並列で実行することが可能である。
このように、変形ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムは、近似解を示すベクトルを分割した複数のベクトルに対応する各更新式を用いる更新アルゴリズムである。変形ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムによれば、通常のガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムに比べて多くの演算を同時に実行できるようになり、並列演算の効率が向上する。また、変形ガウス−ザイデル法は、ガウス−ヤコビ法よりも重みベクトルwの更新を速く行うことができるため収束が速い。ただし、変形ガウス−ザイデル法は、単体では発散することもある。
(更新アルゴリズムの切り換え)
図10は、更新アルゴリズムの切り換えの一例を示す図である。図10に示す切り換え順序100は、実施の形態3にかかる更新部セレクタ21による、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムと、変形ガウス−ザイデル法による更新アルゴリズムと、の切り換えの順序を示している。
図10は、更新アルゴリズムの切り換えの一例を示す図である。図10に示す切り換え順序100は、実施の形態3にかかる更新部セレクタ21による、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムと、変形ガウス−ザイデル法による更新アルゴリズムと、の切り換えの順序を示している。
切り換え順序100に示す例では、更新部セレクタ21は、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズム(GS)1回と、変形ガウス−ザイデル法による更新アルゴリズム(M−GS)2回と、を交互に切り換える。これにより、変形ガウス−ザイデル法をそのまま用いたときに発散していた状況でも、途中に挟んだガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムにより近似解が収束半径に留まり、結果も収束することが期待できる。
たとえば、更新部セレクタ21は、切り換え順序100を示す情報(テーブル等)を記憶しており、記憶した情報に基づいて、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムと、変形ガウス−ザイデル法による更新アルゴリズムと、を切り換える。
(ガウス−ザイデル法と変形ガウス−ザイデル法とを切り換える場合の近似解)
図11は、ガウス−ザイデル法と変形ガウス−ザイデル法とを切り換える場合の近似解の一例を示す図である。図11において、図7に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。演算結果111は、演算結果71,72と同様に、繰り返し回数に対する近似解(合成重み)の演算結果を示している。
図11は、ガウス−ザイデル法と変形ガウス−ザイデル法とを切り換える場合の近似解の一例を示す図である。図11において、図7に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。演算結果111は、演算結果71,72と同様に、繰り返し回数に対する近似解(合成重み)の演算結果を示している。
また、演算結果111(GS1+M−GS2)は、ガウス−ザイデル法の更新アルゴリズム(GS)1回と、変形ガウス−ザイデル法による更新アルゴリズム(M−GS)2回と、を交互に切り換えた場合(たとえば図10参照)における演算結果を示している。
演算結果72,111に示すように、ガウス−ザイデル法と変形ガウス−ザイデル法の各更新アルゴリズムを切り換えることにより、ガウス−ザイデル法とガウス−ヤコビ法の各更新アルゴリズムを切り換える場合より、収束にかかる時間を短縮することができる。
このように、実施の形態3によれば、繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、ガウス−ザイデル法と変形ガウス−ザイデル法の各更新アルゴリズムを交互に切り換えることができる。すなわち、近似解を示す1つのベクトルに対応する更新式を用いる更新アルゴリズムと、近似解を示すベクトルを分割した複数のベクトルに対応する各更新式を用いる更新アルゴリズムと、を交互に切り換えることができる。これにより、近似解の発散を抑えつつ、並列演算効率の向上を図ることができる。
(実施の形態4)
(実施の形態4にかかる演算装置)
図12Aは、実施の形態4にかかる演算装置の一例を示す図である。図12Bは、図12Aに示した演算装置における信号の流れの一例を示す図である。図12A,図12Bにおいて、図2A,図2Bに示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図12A,図12Bに示すように、実施の形態4にかかる演算装置20は、図2A,図2Bに示した構成に加えて絶対収束判定部121を備える。絶対収束判定部121は、たとえば図5A,図5Bに示した制御回路51によって実現することができる。
(実施の形態4にかかる演算装置)
図12Aは、実施の形態4にかかる演算装置の一例を示す図である。図12Bは、図12Aに示した演算装置における信号の流れの一例を示す図である。図12A,図12Bにおいて、図2A,図2Bに示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図12A,図12Bに示すように、実施の形態4にかかる演算装置20は、図2A,図2Bに示した構成に加えて絶対収束判定部121を備える。絶対収束判定部121は、たとえば図5A,図5Bに示した制御回路51によって実現することができる。
絶対収束判定部121は、ガウス−ザイデル更新部22およびガウス−ヤコビ更新部23へ入力される相関行列Rに基づいて、ガウス−ヤコビ法において常に収束する条件(絶対収束条件と称する)を満たしているか否かを判定する。
絶対収束条件は、たとえば、相関行列Rの各行について、その行の対角成分の絶対値が、それ以外の成分の絶対値の和よりも大きいという条件である。たとえば、絶対収束判定部121は、下記(8)式に示す条件が満たされているか否かを判断する。絶対収束判定部121は、判定結果を更新部セレクタ21へ出力する。
更新部セレクタ21は、絶対収束判定部121から出力された判定結果に基づいて、絶対収束条件が満たされている場合は、繰り返し回数nに関わらずにガウス−ヤコビ更新部23(ガウス−ヤコビ法)を選択する。これにより、ガウス−ヤコビ法であっても常に収束する状況においてはガウス−ヤコビ法を用いることにより、並列演算の効率を向上させることができる。
このように、実施の形態4によれば、ガウス−ヤコビ法を用いた繰り返し演算による近似解が常に収束する絶対収束条件を一次方程式が満たしているか否かを判定することができる。そして、判定結果に基づいて、絶対収束条件を一次方程式が満たしている期間は、繰り返し回数に関わらず更新アルゴリズムをガウス−ヤコビ法に維持することができる。これにより、ガウス−ヤコビ法を用いても近似解が発散しない状況において並列演算効率をより向上させることができる。
なお、ここでは実施の形態2に示したようにガウス−ザイデル法およびガウス−ヤコビ法の各更新アルゴリズムを切り換える場合に、ガウス−ヤコビ法の絶対収束条件の判定を行う場合について説明した。ただし、これに限らず、たとえば実施の形態3のようにガウス−ザイデル法および変形ガウス−ザイデル法の各更新アルゴリズムを切り換える場合に変形ガウス−ザイデル法の絶対収束条件の判定を行うようにしてもよい。
この場合は、切換部12は、絶対収束条件を一次方程式が満たしている期間においては、繰り返し回数に関わらず更新アルゴリズムを変形ガウス−ザイデル法に維持する。これにより、変形ガウス−ザイデル法を用いても近似解が発散しない状況において並列演算効率をより向上させることができる。
(各更新アルゴリズムにおける並列演算の効率)
各更新アルゴリズムについて、30元の連立方程式を解く場合に要するクロック数について説明する。ここではMAC演算機を64個並列に実行でき、そのときのパイプライン処理のレイテンシが5[clock]であるとする。また、繰り返し回数nを3とする。
各更新アルゴリズムについて、30元の連立方程式を解く場合に要するクロック数について説明する。ここではMAC演算機を64個並列に実行でき、そのときのパイプライン処理のレイテンシが5[clock]であるとする。また、繰り返し回数nを3とする。
まずガウス−ザイデル法の計算について説明する。いずれの方法でも1回の更新演算に30×29=870回のMAC演算を要するが、ガウス−ザイデル法ではそのうちの約半分のみが並列に演算可能である。このため、870/2/64=6.79となり、7[clock]を要する。この全ての計算結果を得るにはさらにレイテンシの5[clock]を要するが、この場合はつぎの処理に隠されるため全体のクロック数への影響はない。
残りの並列に演算できない部分は、29行を1行ずつ、結果を確認しながら順番に実行することになるため、レイテンシの影響により(1+5)×29[clock]を要する。これを3回繰り返すと(7+(1+5)×29)×3=543[clock]となる。
つぎに、ガウス−ヤコビ法では、870回のMAC演算が全て並列に演算可能である。このため、870/64=13.59となり、14[clock]とレイテンシの5[clock]で演算が完了する。これを3回繰り返すと(14+5)×3=57[clock]となる。
変形ガウス−ザイデル法では、870回のMAC演算を半分ずつ並列に演算可能である。後半の演算では前半の演算結果を使うので、前半の結果が出るまで待つことになるため、前半も後半もそれぞれ(7+5)[clock]要する。これを3回繰り返すと((7+5)+(7+5))×3=72[clock]となる。
すなわち、ガウス−ザイデル法では543[clock]、ガウス−ヤコビ法では57[clock]、変形ガウス−ザイデル法では72[clock]となる。これらの結果を比べると、ガウス−ザイデル法とガウス−ヤコビ法とで処理ステップ数に10倍近い差が出ており、ガウス−ザイデル法が十分に並列演算器を活用できず、レイテンシの影響が大きく出ていることが分かる。一方、変形ガウス−ザイデル法は、ガウス−ヤコビ法よりはクロック数が多いものの、26%程度の増加である。
このように、ガウス−ヤコビ法や変形ガウス−ザイデル法を用いることにより所要ステップ数を削減でき、これらに加えてガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムも混在させて使用することにより収束特性を維持することができる。すなわち、所要ステップ数が少なく、収束性のよい方式が実現できる。
以上説明したように、演算装置、演算方法および無線通信装置によれば、発散を抑えつつ並列効率の向上を図ることができる。
たとえば、無線受信機におけるシングルキャリア信号向けのイコライザでは、イコライザ重みを求めるためにサイズの大きな一次方程式を解くことになる。携帯端末においてはこの演算量が消費電力に影響するため、厳密に一次方程式を解くのではなく、繰り返し演算により近似的に解を求める場合がある。この繰り返し演算として、ガウス−ザイデル法やガウス−ヤコビ法が知られている。両者の繰り返し1回あたりの演算量は同じだが、ガウス−ザイデル法は収束性がよい。
シングルキャリア信号をマルチパス環境下で受信する場合に、受信信号に適応等化処理を行うことにより受信感度を大きく向上できることが知られている。イコライザはFIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタによって実現されることが多いが、十分な性能を出すためにはFIRフィルタで用いられる合成重みを精度よく求めることが求められる。また携帯電話のような移動体通信の場合は、特に高速移動時に伝搬環境が急激に変化するため、比較的短時間で精度よく合成重みを求めることも求められる。
ところで、最近の半導体製品は動作クロックがあまり向上していない。これは半導体技術のかかえる課題ともなっている。そこで、最近では動作クロックを上げる代わりに並列処理数を増やすことにより処理能力を向上させる傾向がある。これは信号処理用に用いられるDSPなどでも同様であり、いかに並列処理を効率的に行うかが、演算効率向上のために求められている。
ガウス−ザイデル法などの数値演算のアルゴリズムでは、「かけ算」をした後で「足し算」をする計算が多く行われる。このため、DSPではかけ算と足し算をセットにしたMAC演算器が用いられる場合が多い。
ガウス−ザイデル法は比較的収束性のよい近似解法であるが、上述したように式を上から順番に求めることになるため、並列処理には向いていない。つまり、たとえ全ての行を同時に演算できる演算器を持っていたとしても、上から順番に計算しなければならないため、演算器が余ってしまう。すなわち、ガウス−ザイデル法では沢山ある演算器を十分に活用できない可能性がある。一方、ガウス−ヤコビ法は、上述したように、並列演算の効率は高いが、収束性がやや悪い。
これに対して、上述した各実施の形態によれば、並列演算器を用いた繰り返し演算により1次方程式を解く回路において、繰り返し回数に応じて複数の更新アルゴリズムを切り換えることにより、収束性と並列演算効率との両立を図ることができる。
なお、上述した各実施の形態においては、図1A,図1Bに示した演算装置10をイコライザの合成重みを演算する回路に用いる場合について説明したが、演算装置10の適用はこれに限らない。たとえば、演算装置10は、回路シミュレータ、画像処理、CT(Computed Tomography)スキャン画像生成、有限要素法解析など各種の演算に用いることができる。
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)並列演算器を用いた繰り返し演算により一次方程式の近似解を得る演算部と、
前記演算部による前記繰り返し演算を、前記繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、第1アルゴリズムと、前記第1アルゴリズムより発散しやすく並列演算効率が高い第2アルゴリズムと、に交互に切り換える切換部と、
を備えることを特徴とする演算装置。
前記演算部による前記繰り返し演算を、前記繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、第1アルゴリズムと、前記第1アルゴリズムより発散しやすく並列演算効率が高い第2アルゴリズムと、に交互に切り換える切換部と、
を備えることを特徴とする演算装置。
(付記2)前記第2アルゴリズムは、前記第1アルゴリズムより反復行列のスペクトル半径が大きい更新アルゴリズムであることを特徴とする付記1に記載の演算装置。
(付記3)前記第2アルゴリズムは、前記第1アルゴリズムより同時実行が可能な演算の数が多い更新アルゴリズムであることを特徴とする付記1または2に記載の演算装置。
(付記4)前記第1アルゴリズムはガウス−ザイデル法の更新アルゴリズムであり、
前記第2アルゴリズムはガウス−ヤコビ法の更新アルゴリズムである、
ことを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の演算装置。
前記第2アルゴリズムはガウス−ヤコビ法の更新アルゴリズムである、
ことを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の演算装置。
(付記5)前記切換部は、前記第1アルゴリズムへ周期的に切り換えることを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の演算装置。
(付記6)前記第1アルゴリズムは、前記近似解を示す1つのベクトルに対応する演算式を用いる更新アルゴリズムであり、
前記第2アルゴリズムは、前記近似解を示すベクトルを分割した複数のベクトルに対応する各演算式を用いる更新アルゴリズムである、
ことを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の演算装置。
前記第2アルゴリズムは、前記近似解を示すベクトルを分割した複数のベクトルに対応する各演算式を用いる更新アルゴリズムである、
ことを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の演算装置。
(付記7)前記切換部は、前記第2アルゴリズムを用いた場合に前記近似解が常に収束する条件を前記一次方程式が満たしているか否かを判定し、前記条件を前記一次方程式が満たしている期間は、前記繰り返し回数に関わらず前記第2アルゴリズムに維持することを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の演算装置。
(付記8)無線通信システムにおける無線信号の等化処理を行うイコライザの重みを演算する演算装置が、並列演算器を用いた繰り返し演算により一次方程式の近似解を得る演算方法であって、
前記繰り返し演算を、前記繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、第1アルゴリズムと、前記第1アルゴリズムより発散しやすく並列演算効率が高い第2アルゴリズムと、に交互に切り換えることを特徴とする演算方法。
前記繰り返し演算を、前記繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、第1アルゴリズムと、前記第1アルゴリズムより発散しやすく並列演算効率が高い第2アルゴリズムと、に交互に切り換えることを特徴とする演算方法。
(付記9)並列演算器を用いた繰り返し演算により一次方程式の近似解を得る演算装置であり、前記繰り返し演算を、前記繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、第1アルゴリズムと、前記第1アルゴリズムより発散しやすく並列演算効率が高い第2アルゴリズムと、に交互に切り換える演算装置と、
前記演算装置によって得られた前記近似解に基づく重みにより無線信号の等化処理を行うイコライザと、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
前記演算装置によって得られた前記近似解に基づく重みにより無線信号の等化処理を行うイコライザと、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
10,20 演算装置
11 演算部
12 切換部
21 更新部セレクタ
22 ガウス−ザイデル更新部
23 ガウス−ヤコビ更新部
24 並列MAC演算部
25 重み保持部
41,90 式
42,43,71,72,111 演算結果
50 DSP
51 制御回路
52〜54 MAC演算器
55 メモリ
61,62,100 切り換え順序
81 変形ガウス−ザイデル更新部
121 絶対収束判定部
11 演算部
12 切換部
21 更新部セレクタ
22 ガウス−ザイデル更新部
23 ガウス−ヤコビ更新部
24 並列MAC演算部
25 重み保持部
41,90 式
42,43,71,72,111 演算結果
50 DSP
51 制御回路
52〜54 MAC演算器
55 メモリ
61,62,100 切り換え順序
81 変形ガウス−ザイデル更新部
121 絶対収束判定部
Claims (5)
- 並列演算器を用いた繰り返し演算により一次方程式の近似解を得る演算部と、
前記演算部による前記繰り返し演算を、前記繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、第1アルゴリズムと、前記第1アルゴリズムより発散しやすく並列演算効率が高い第2アルゴリズムと、に交互に切り換える切換部と、
を備えることを特徴とする演算装置。 - 前記第1アルゴリズムは、前記近似解を示す1つのベクトルに対応する演算式を用いる更新アルゴリズムであり、
前記第2アルゴリズムは、前記近似解を示すベクトルを分割した複数のベクトルに対応する各演算式を用いる更新アルゴリズムである、
ことを特徴とする請求項1に記載の演算装置。 - 前記切換部は、前記第2アルゴリズムを用いた場合に前記近似解が常に収束する条件を前記一次方程式が満たしているか否かを判定し、前記条件を前記一次方程式が満たしている期間は、前記繰り返し回数に関わらず前記第2アルゴリズムに維持することを特徴とする請求項1または2に記載の演算装置。
- 無線通信システムにおける無線信号の等化処理を行うイコライザの重みを演算する演算装置が、並列演算器を用いた繰り返し演算により一次方程式の近似解を得る演算方法であって、
前記繰り返し演算を、前記繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、第1アルゴリズムと、前記第1アルゴリズムより発散しやすく並列演算効率が高い第2アルゴリズムと、に交互に切り換えることを特徴とする演算方法。 - 並列演算器を用いた繰り返し演算により一次方程式の近似解を得る演算装置であり、前記繰り返し演算を、前記繰り返し演算の繰り返し回数に応じて、第1アルゴリズムと、前記第1アルゴリズムより発散しやすく並列演算効率が高い第2アルゴリズムと、に交互に切り換える演算装置と、
前記演算装置によって得られた前記近似解に基づく重みにより無線信号の等化処理を行うイコライザと、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
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